JP2023508831A - 切削インサート・アダプタ及び工具組立体 - Google Patents

Abstract

インサート・ポケット（３８）のための切削インサート・アダプタ（１４）は、１対又は複数対の対向するインサート当接面（７２Ａ、７２Ｂ）と、鋭角（ａ）で収束するポケット当接面（７０Ａ、７０Ｂ）とを含む。複数のインサート当接面（７２Ａ、７２Ｂ）は全て、対のポケット当接面（７０Ａ、７０Ｂ）に対して同じ方向で回転し、対のポケット当接面（７０Ａ、７０Ｂ）は、切削インサート（１６）が、切削インサート・アダプタ（１４）ではなく、インサート・ポケット（３８）に当接する場合にのみ切削インサート（１６）が取る向きに対して、切削インサート・アダプタ（１４）に当接する切削インサート（１６）を回転させる。【選択図】図２Ｂ

Description

本発明は、インサート・ホルダ（「切削工具」とも呼ばれる）のインサート・ポケット内に挿入されるように構成された切削インサート・アダプタに関する。詳細には、本発明は、インサート・ホルダのポケットを、より小型の切削インサートを保持するように構成されたポケットに適合するように構成された切削インサート・アダプタに関する。

最近の技術及び規格によれば、インサート・ポケットは、典型的には、一般に超硬合金から製造された、単一形状及びサイズの切削インサートを固着するように設計されている。

インサート・ポケットが単一形状及びサイズのインサート用に設計されるという慣例にもかかわらず、当然、少なくとも理論上、特許文献では例外がある。例えば、米国特許第８，８０７，８８４号明細書は、異なる形状を有する２つの切削インサートを収容するように設計されたインサート・ポケットを開示している。

本発明は、とりわけ、本発明が工具のインサート・ホルダ自体と一体に形成されるインサート・ポケットを対象にするものではなく、切削インサートとインサート・ポケットとの間で、インサート・ポケットに挿入されるように設計された切削インサート・アダプタを対象とするという点で、米国特許第８，８０７，８８４号明細書とは実質的に異なる。

米国特許第４，７２２，６４２号明細書は、切削インサートを旋削工具のインサート・ポケットの壁から分離するように構成された離間アダプタを開示している。切削インサートをポケット壁から分離する離間アダプタの部分は、傷が付いた又は寸法が低減し得る脆弱部分によって接続される。製造時のアダプタは、凹部壁からインサートを分離するように適合された部分を接続する脆弱部分と面一であり、アダプタが様々なインサート構成に一致することを可能にするように設けられる。凹部の壁から切削インサートの表面を分離するアダプタの部分は、１回又は複数回の繰り返し研削動作でインサート表面から除かれた材料の量に等しい厚さを有する。

本発明は、とりわけ、本発明がインサートの摩耗を補償するように設計された平坦な等しい壁厚さのスペーサを対象としていないという点で、米国特許第４，７２２，６４２号明細書から実質的に異なる。特に、切削インサートの繰返し研削は、現代の高精度機械加工産業ではもはや一般的ではない。本発明は、高精度産業の構成要素に関し、米国特許第４，７２２，６４２号明細書で開示される種類の基本的な屈曲可能金属スペーサと呼び得るものに関するものではない。

米国特許第４，６００，３４１号明細書は、規格（Ａ．Ｎ．Ｓ．Ｉ．）のインサート・ホルダのための切削インサート・アダプタを開示している。切削インサート・アダプタは、規格のインサート・ポケットが、同様又は異なる形状のより小型のインサートを収容可能にするように構成されている。米国特許第４，６００，３４１号明細書は、様々なサイズのインサートのための特殊な締付け組立体を更に開示している。

本発明の初期の開発は、米国特許第４，６００，３４１号明細書に記載される機能と同様の機能のために開発された切削インサート・アダプタに対し、類似性を共有していたが、今や、米国特許第４，６００，３４１号明細書の発明者等が想到していない、完全に新たな機械加工用途を促進するものである。

本発明の一目的は、改良された切削インサート・アダプタ、及びこの切削インサート・アダプタを備える工具組立体を提供することである。

典型的には、適切なインサート・ホルダ及び切削インサートは、所望の機械加工動作のために選択される。複数の動作、例えば、荒削り動作、その後、仕上げ動作を必要とする場合、それぞれ、それぞれの異なるインサート・ホルダに組み付け得る２つの異なる切削インサート種を使用することが一般的である。

異なる切削インサート（及び典型的には、異なるインサート・ホルダ）が使用される第１の理由は、特定の動作のために最適化された製品が、２つ以上の異なる動作に向けて設計された製品よりも良好な性能をもたらすことは自明であるためである。というのは、物事の常道によって異なる機械加工要件は、設計特徴の妥協を必要とするためである。

第２の理由は、切削インサート・アダプタ等の更なる構成要素は、更なる費用であることである。

第３の理由は、工具の構成要素の数が増大すると、工具に対するユーザの使いやすさを低下させることである。というのは、組立て又は分解中、小さな構成要素が脱落する可能性がより大きいためである（当技術分野では「脱落部品」として公知である）。

最後に、一般原則として、更なる（即ち、一体ではない）構成要素は、典型的には、インサート・ホルダに固着されるインサートの剛性を低下させ、これにより、機械加工の安定性を低下させ、したがって、被機械加工部品の仕上がりの質を低下させる。

近年、付加製造に対する技術が著しく進歩しており、これまでは製造が困難又は高額であった構成要素の実際的な製造を可能にしている。

付加製造構成要素の費用は、比較的高額であり、精度は、従来の除去方法の基準にまだ到達していないが、付加製造構成要素の費用は、構成要素が著しく小型で、金属機械加工構成要素で典型的な精度ほどの精度を必要としない場合、下がる。本発明は、多くの異なる製造方法で製造し得るが、１つの好ましい方法は、付加製造である。

規格の旋削工具に、（所与の機械加工用途に適している場合、より経済的に効率的である）より小さなインサートを収容可能にする切削インサート・アダプタは、今や、適切なサイズのインサートのために更なるインサート・ホルダを単に購入するという規格製品の選択を相殺する費用で製造し得るという理論が立てられた。とはいえ、「脱落部品」に関する上述の問題は、依然として克服する必要があり、インサートがポケットに固着されていない場合でさえ構成要素がポケット内に留まることを保証するため、切削インサート・アダプタを磁化することが決定された。このことは、既存のインサート・ホルダの修正に関する問題も克服した。しかし、本発明は、規格／既存のホルダに限定されず、したがって、限定はしないが、（インサート・ポケット内のねじ穴のための）ねじ等の他の締付け手段を代替的に使用し得ることを理解されたい。

本発明は、小型で費用対効果の高い切削インサート・アダプタが、設計された機械加工動作とは異なる機械加工動作で、同じインサート・ホルダ及び同じ切削インサートを使用可能にするという発見に関する。

したがって、本発明の第１の態様によれば、インサート・ポケットのための切削インサート・アダプタが提供され、切削インサート・アダプタは、反対のアダプタ上面及び底面と、上面及び底面を接続するアダプタ外周面とを備え、アダプタ外周面は、後向き副面と、後向き副面に対してアダプタ外周面の反対側に位置する前向き副面とを備え、後向き副面は、少なくとも１つのポケット当接面を備え、前向き副面は、少なくとも１つのインサート当接面を備え、切削インサート・アダプタの上面図において、対向するインサート当接面及びポケット当接面の各対は、条件：０°≦α≦３０°を満たすアダプタ角度αで収束し、各インサート当接面は、対向するポケット当接面に対して同じ回転方向で回転する。

ポケット当接面は、インサート・ポケットに当接することを意図し、インサート当接面は、切削インサートに当接することを意図することは理解されよう。したがって、インサート当接面を回転させることによって、インサート当接面に当接する切削インサートは、「回転位置」と呼ばれる位置に回転させられる、即ち、「非回転位置」と呼ばれる位置に相対的に向けられる。「非回転位置」とは、（現在、切削インサート・アダプタのポケット当接面によって当接される）切削インサートがインサート・ポケットのポケット支持面に直接当接する場合に切削インサートが取る位置である。

対向する面の各対（明確にすると、「各対」は「全ての対」を意味する）の回転方向は、切削インサートを回転させるために同じ回転方向でなければならないことは理解されよう。しかし、厳密な量の回転（即ち、アダプタ角度α）は、様々な対で同一である必要がない。というのは、インサートは、例えば、前切削コーナ付近で下方向にわずかに傾斜させることができ、当接面の様々な対の間にわずかな差のアダプタ角度をもたらすためである。とはいえ、アダプタ角度は、ほぼ同じ大きさを有し、上記の主な態様において定義されるように、互いに対して約３０°以内であり、好ましい実施形態では、以下で定義されるように、約３０°よりも小さい範囲内である。詳述すると、０°という厳密な値は、ゼロ回転であり、したがって、影響が一切ない。３０°を超えると、インサートが回転しすぎる可能性があり、インサート・ポケットのポケット支持面が、滑りのためにインサートを所定の位置に保持できない可能性がある。３０°という値は、推定された理論値であり、本発明にも適用されるかなり多数のインサート形状があることに注目すると、値がより高い場合があることを考えられなくはないことに留意されたい。

更なる点として、「各対」は、各対が特定の実施形態で存在する全てである場合、単一の対を含み得ることを理解されたい。

上記は、いくつかの当接面（特に、インサート当接面及びポケット当接面）に関して述べているが、以下で述べる他の対の当接面も、様々な対の同じ種類の面に対して様々な値を有してよく、特定の実施形態では、単一の対のみであってもよいことを理解されたい。

本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて述べるアダプタ角度、工具角度及びインサート角度の全ては、語「鋭（角）」が述べられているか否かにかかわらず、鋭角の値を指すことにも留意されたい。

本発明は、回転後、異なる機械加工動作をもたらさない非円形インサート形状に特定の適用範囲を有することにも留意されたい。

したがって、切削インサートは、今や、非回転位置ではなく、回転位置で異なる機械加工動作をもたらし得る。

切削インサート・アダプタの使用のために、おそらく、より小型のインサートが使用され、これにより、切削インサートで用いられる比較的高価な材料の量を低減することも理解されたい。

代替的に、（例えば、対向するポケット当接面と平行であるインサート当接面を備える）異なる切削インサート・アダプタを、同じインサート・ポケット内で使用し得る、したがって、同じ切削インサートを、インサート・ポケットが専用に設計されている元の機械加工動作で使用し得る（より小型の切削インサートを使用可能であるという利益を伴う）ことを理解されよう。この切削インサート・アダプタの使用は公知であるが、新たな利点は、同じインサート・ホルダ及びそのインサート・ポケット、並びに同じ切削インサートが、今や、インサート・ポケットに対して回転する（即ち、非平行）当接面を有する切削インサート・アダプタをもたらすだけで、同じ機械加工動作及び異なる機械加工動作をもたらし得ることである。

切削インサート・アダプタは、単一のポケット当接面を有することが可能であるが、より良好な安定性は、厳密に２つのポケット当接面により達成し得る。特に、２つ以上の種類の当接面があると言う場合、これらの当接面は離間する、即ち、ある種の非線形面、典型的には、（インサート・ポケットの平面内にあるか、コーナにあるかにかかわらず）逃げ凹部によって間が隔たられていることを意味する。

安定性のためのインサートの接触に関し、切削インサート・アダプタが厳密に３つのインサート当接面を有することも好ましい。この理由は、３つの当接領域を有することが、典型的には、最も安定な構成であるためである。図面で例示される好ましい実施形態では、実際に４つのインサート当接面がある。このことにより、２つのみ（即ち、１つの脚部につき１つ）ある場合よりも安定性を可能にし、切削インサート・アダプタを可逆的にすることも可能にする。このことは、切削インサートが全ての４つのインサート当接面に接触しない可能性があるが、これまでの試験では、この発生は発見されていない。理論に拘束されるものではないが、この点について、以下で説明するように、非常に大きな（非対称形状の）凹部が２つの脚部の間にもたらされるという利益があることが考えられる。

上記に鑑みて、切削インサート・アダプタは、厳密に２つのポケット当接面、好ましくは、３又は４つのインサート当接面を備えることが好ましい。しかし、他の数の当接面が好ましい場合、いくつかのインサート形状（及び更にはいくつかのポケット形状）があり得ることを理解されたい。

切削インサート・アダプタは、最も好ましい構成では、非線形形状を有する。例えば、切削インサート・アダプタは、第１の脚部と、第１の脚部に接続され、第１の脚部と非平行に延在する第２の脚部とを更に備えることができ、第１の脚部は、前記インサート当接面の少なくとも１つと、前記ポケット当接面の少なくとも１つとを備え、第２の脚部は、前記インサート当接面の少なくとも１つと、前記ポケット当接面の少なくとも１つとを備える。そのような場合、切削インサート・アダプタは、厳密に３つ又は厳密に４つの離間するインサート当接面を備えることが好ましい。合計３つの離間するインサート当接面が存在する場合、第１の脚部は、好ましくは、厳密に２つの離間するインサート当接面を備え、第２の脚部は、厳密に１つのインサート当接面を備える。

本発明は、切削インサート・アダプタがあらゆる所望のアダプタ角度を有することを可能にすることは理解されよう。そうは言っても、所与のインサート・ホルダが切削力を適切に支持できるように、大きすぎないアダプタ角度が好ましい。したがって、アダプタ角度αは、条件：２°≦α≦１５°、より好ましくは、２°≦α≦１０°を満たすことが好ましい。後者の範囲の上限値（１０°）は、アダプタ角度αがゼロに近づくほど、インサート・ホルダが力をより良好に支持できるため（インサート・ホルダはゼロ角度に設計されているため）、より好ましい。範囲の下限値（２°）は、十分にゼロを上回る。というのは、インサートに著しい回転がなければ、機械加工の差は、依然として実現可能であるものの、あまり有用ではない可能性があるためである。

図示のように、１つの好ましいオプションは、少なくとも以下の理由のため、切削インサート・アダプタが、切削インサート・アダプタに取り付けられる１つ又は複数の磁石を備えることである。このことにより、例えば、切削インサートを交換する際、インサート・ホルダをさかさまにした場合でさえ、切削インサート・アダプタを所定の位置に保持することを可能にする。このことにより、専用のインサート・ポケット形状部（例えば、ねじ穴）を伴わずに、切削インサート・アダプタをインサート・ホルダに保持することを可能にする。このことにより、切削インサートをポケットに固着せずに、インサート・ホルダを例えば空気噴射によりきれいにすることも可能にする。

好ましくは、切削インサート・アダプタは、後向き副面及び前向き副面を通じて延在する交換軸回りに１８０°回転させて交換可能である。切削インサートという用語を使用して言い方を変えれば、切削インサート・アダプタは、可逆的とし得る。このことにより、切削インサートが、インサート・ポケット内で第１の角度の向きを有し、切削インサート・アダプタがインサート・ポケットに対して第１の向きを有する際に第１の機械加工動作を実施することを可能にする。切削インサート・アダプタを逆にした後（即ち、さかさまにした後）、インサート・ポケットのポケット基部面と前に当接していた切削インサート・アダプタの底面は、今や、ポケット基部面と同じ基本方向に面し、ポケット基部面から離間することになり、切削インサートを、インサート・ポケット内で第２の（異なる）機械加工動作のための第２の角度向きに至らせることができる。

本出願の第２の態様によれば、インサート・ホルダと切削インサート・アダプタとを備える切削工具組立体が提供され、インサート・ホルダは、反対の上側及び底側と、上側及び底側を接続する反対の第１の横側及び第２の横側と、上側、底側、第１の横側及び第２の横側を接続する反対の前側及び後側と、伸長軸を画定する細長いシャンク部分と、シャンク部分に接続される切削部分と、伸長軸と平行に、シャンク部分から切削部分に向かって延在する前方向、及び前方向とは反対の後方向と、底側から上側に向かって延在し、伸長軸に直交して画定される上方向、及び上方向とは反対の下方向と、第１の横側から第２の横側に延在し、伸長軸及び上方向の両方に直交する第１の横方向、並びに第１の横方向とは反対の第２の横方向と、上側、前側及び第１の横側の交線で切削部分内に形成されるインサート・ポケットとを備え、インサート・ポケットは、ポケット基部面と、ポケット基部面から上方に延在する少なくとも１つのポケット支持面とを備え、切削インサート・アダプタは、反対のアダプタ上面及び底面と、上面及び底面を接続するアダプタ外周面とを備え、アダプタ外周面は、後向き副面と、後向き副面に対してアダプタ外周面の反対側に位置する前向き副面とを備え、後向き副面は、少なくとも１つのポケット当接面を備え、前向き副面は、少なくとも１つのインサート当接面を備え、切削インサート・アダプタは、少なくとも１つのポケット当接面が少なくとも１つのポケット支持面に当接するように、インサート・ポケットに組み付けられ、インサート・ホルダの上面図において、対向するインサート当接面及びポケット当接面の各対は、条件：０°≦β≦３０°を満たす工具角度βで収束し、各インサート当接面は、対向するポケット支持面に対して同じ回転方向で回転する。

本発明は、切削インサート・アダプタがあらゆる所望の工具角度を有することを可能にすることは理解されよう。切削インサート・アダプタの対向する当接面に関する上記説明と類似するが、所与のインサート・ホルダが切削力を適切に支持できるように、工具角度βも、大きすぎないことが好ましい。したがって、工具角度βは、条件：２≦β≦１５°、より好ましくは、２≦β≦１０°を満たすことが好ましい。

１つの切れ刃を使用して第１の機械加工方向で稼働し、同じ切削インサートの異なる切れ刃を使用して第２の機械加工方向で稼働するように構成された標準的な工具組立体があることは理解されよう。したがって、切れ刃は、工具組立体と共に、両方の機械加工方向で工作物に対して同じ角度を呈するように構成し得る。本発明の１つの新機軸によれば、１つの切れ刃により最適な向き（例えば、より良好な仕上がりのためのより小さな角度）を１つの機械加工方向でもたらし、他の切れ刃はそれほど最適な角度ではないままにすることができる。利点（例えば、一方向でのより良好な仕上がり）及び欠点（例えば、他方向ではより劣った仕上がり）があるが、このことは、依然として、全体的な利点であると考えられる。というのは、多数の機械加工作業において、１つの機械加工方向が、他の機械加工方向よりもはるかに多く使用される場合がある、又は他の機械加工方向があまり仕上がりに重要ではない場合があるためである。例えば、仕上がりが依然として他の方向で重要である場合、切削インサート・アダプタを逆にし、依然として同じ切削インサートを使用しながら、有利な効果を他の方向にもたらし得る。このことは、第１のインサート鋭角ε１及び第２のインサート鋭角ε２の観点から以下で定義し、第１のインサート鋭角ε１及び第２のインサート鋭角ε２は、インサート・ホルダの側部の観点から定義されるが、本質は、上記で説明した概念であることを理解されたい。代替的に、本発明は、機械加工すべき工作物に対して定義し得る。即ち、切れ刃の副切れ刃による特定の方向における機械加工方法を以下で定義する。

上記から明らかになるように、所望の機械加工方向において改良された仕上がりが、上述のように、本出願で想到される有利な用途であるとはいえ、他の所望の組合せ（例えば、９０°又は９０°に近い機械加工角度で同じ切削インサートを使用する）であっても、切削インサート・アダプタを交換してもよい（又は異なる切削インサート・アダプタを使用し、同じ切削インサートが、例えば４５°の面取り角度をもたらすことを可能にする、等）。

本発明の主な利点は、製造業者が、２つ以上の異なる種類／形状の切削インサートではなく、単一の切削インサートのみを在庫にし、依然として、様々な機械加工動作をもたらすことができ、購入ロジスティックス、在庫管理等を容易にし得ることを理解されたい。更なる１つ又は複数の部品が新たに必要である、即ち、切削インサート・アダプタがこの利点のために必要とされるが、そのような構成要素は工作物の機械加工に直接関与しないため、切削インサート・アダプタは、長期の工具寿命を有し、したがって、交換は切削インサートほど滅多にないことが予期される。

工具組立体は、インサート・ポケットに組み付けられる切削インサートを備え得る。切削インサートは、あらゆる所望の形状を有し得る。上記の概念を定義すると、切削インサートは、インサート上面及びインサート底面と、インサート上面及びインサート底面を接続するインサート外周面と、インサート上面及びインサート外周面の交線に沿って形成された切れ刃とを備え、インサート外周面は、複数のインサート外周側面と、インサート外周側面を接続する複数の外周コーナとを備え、切れ刃は、複数のインサート外周側面の第１のインサート外周側面に沿って延在する第１の副切れ刃と、複数のインサート外周側面の第２のインサート外周側面に沿って延在する第２の副切れ刃であって、第２の外周側面は、第１の外周側面に隣接する、第２の副切れ刃と、第１の副切れ刃及び第２の副切れ刃を接続し、第１の外周側面と第２の外周側面との間に位置する前記外周コーナの１つに沿って延在するコーナ副切れ刃とを備える。

好ましい実施形態によれば、工具組立体の上面図において、第１のインサート鋭角ε１は、第１の副切れ刃と後方向との間に定められ、第２のインサート鋭角ε２は、第２の副切れ刃と第１の横方向との間に定められ、第１のインサート角度ε１及び第２のインサート角度ε２は、条件：ε１≠ε２を満たす。

前方向におけるより良好な仕上がりの機械加工に関し、第１のインサート角度ε１は、ワイパ角度を形成すべきである。したがって、好ましくは、第１のインサート角度ε１は、条件：０°≦ε１≦２°、より好ましくは、０°≦ε１≦１°、及び最も好ましくは、０．２５°≦ε１≦０．７５°を満たす。

代替的に、横方向におけるより良好な仕上がりの機械加工に関し、第２のインサート角度ε２は、ワイパ角度を形成すべきである。したがって、好ましくは、第２のインサート角度ε２は、条件：０°≦ε２≦２°、より好ましくは、０°≦ε２≦１°、及び最も好ましくは、０．２５°≦ε２≦０．７５°を満たす。

切削インサート・アダプタは、可逆的であってよく、これにより、同じ切削インサート・アダプタ、切削インサート及びインサート・ホルダによって、切削インサート・アダプタをインサート・ポケット内で単に逆にすることによって、そのようなワイパ角度をもたらすことを可能にすることは理解されよう。

上記から、本発明による工作物を機械加工する固有の方法を達成し得ることがわかる。

例えば、本出願の第３の態様によれば、以下のステップ：切削インサート・アダプタを、初期の位置でインサート・ポケット内に組み付ける（より正確には、切削インサート・アダプタの１つ又は複数のポケット当接面が、インサート・ポケットの１つ又は複数のポケット支持面に当接する）第１のステップ、切削インサートをインサート・ポケットに締め付ける（より正確には、少なくとも１つの切削インサートの外周面が、切削インサート・アダプタの少なくとも１つのインサート当接面に当接する）第２のステップ、機械加工が第１の方向で実行される第２のステップ、切削インサートをインサート・ポケットから外し、切削インサート・アダプタを逆にする第３のステップ、異なる切削インサート又は好ましくは同じ切削インサートをインサート・ポケットに組み付ける第４のステップ、及び第１の方向とは異なる第２の方向で機械加工を実行する第５のステップを含む１つのそのような方法が提供される。

したがって、言い方を変えれば、そのような方法は、１つの移動方向で最初の仕上げ切削を行い、次に、異なる移動方向で次の仕上げ切削を行うことを促進し得る。

次に、本発明をより良好に理解し、本発明をどのように実際に実行し得るかを示すため、添付の図面を参照する。

インサート・ホルダと、切削インサートと、レバーと、シムと、ねじと、本発明による切削インサート・アダプタとを含む工具組立体の等角分解図である。 図１Ａの切削工具の等角図である。 図Ａ１内のインサート・ホルダの背面図である。 図２Ａのインサート・ホルダの上面図である。 図２Ａのインサート・ホルダの正面図である。 図２Ｂに示すインサート・ホルダの底左手部分の概略上面図である。 図２Ｂに示すインサート・ホルダの底右手部分の概略上面図である。 本発明によるものではない、説明の目的でのみ示す設計の概略上面図である。 工作物を更に示す図１Ａの工具組立体の上面図であり、工具組立体は、横方向で工作物を機械加工する。 工作物を更に示す図１Ａの工具組立体の上面図であり、工具組立体は、前方向で工作物を機械加工し、切削インサート・アダプタは、図４Ａに示す位置に対して逆にされている（裏返されている）。 工具組立体が、前方向及び横方向の両方で同時に工作物を機械加工することを除き、図４Ｂと同様の図である。

例示的工具組立体１０を示す図１Ａ及び図１Ｂに注意を向けられたい。好ましいが、非限定的な図示の実施形態では、例示される工具組立体１０は、旋削工具組立体１０である。

ポケットを有するあらゆる種類の工具を考えられる限り使用し得るが、動作の変更は、作業方向がより線形であるため、回転工具よりも旋削工具に特に適用可能及び／又は有利であることは理解されよう。

工具組立体１０は、インサート・ホルダ１２と、切削インサート・アダプタ１４とを備える。

本明細書において、単に適切な特許請求の範囲の目的で、用語「工具組立体」は、切削インサート１６を必要とせずに定義されるが、切削インサート１６及び締付け手段１８（「レバー１８」等）は、工具組立体１０によって含まれる要素として含め得る。

しかし、理論上は、レバー又はトップクランプ（トップクランプは図示せず）等の締付け手段は、実行可能なねじ締付け手段（図示せず）のオプションよりも好ましい場合があることに留意されたい。というのは、締付け手段が、（例えば、オフセット穴により偏倚し得る）ねじよりも、切削インサートを切削インサート・アダプタの方に強力に偏倚し、安定性を改善し得るためである。

ポケット基部のシム２０等の他の標準／任意の物品は詳細に説明しない。

例示するインサート・ホルダ１２は、反対の上側２２及び底側２４と、反対の第１の横側２６及び第２の横側２８と、反対の前側３０及び後側３２とを備える。例示するシャンク部分は、正方形断面を有するが、円形、長方形等の異なる断面とし得ることを理解されたい。とはいえ、方向は、本発明を理解するためのものであり、特許請求の範囲を特定の工具に限定するためのものではない。

インサート・ホルダ１２は、伸長軸Ａ_Ｅを画定する細長いシャンク部分３４と、インサート・ポケット３８と共に形成される切削部分３６とを更に備える。

伸長軸と平行に延在するのは、反対の前方向Ｄ_Ｆ及び後方向Ｄ_Ｒであり、反対の上方向Ｄ_Ｕ及び下方向Ｄ_Ｄ、反対の第１の横方向Ｄ_ＬＦ及び第２の横方向Ｄ_ＬＳも示される。

例示するインサート・ポケット３８は、上側２２、前側３０及び第１の横側２６の交線に形成される。

第１の横側は、代替的に、工具がいわゆる右きき用工具であるか左きき用工具であるかに応じて、反対側にあってよく、例示する位置は、概念的な目的のためにすぎないことは理解されよう。

インサート・ポケット３８は、ポケット基部面４０と、ポケット基部面４０から上方に延在する第１のポケット支持面４２及び第２のポケット支持面４４とを備える。ポケット支持面の一方、この例では第２のポケット支持面４４は、第１の副支持面４４Ａと第２の副支持面４４Ｂとを備え、第１の副支持面４４Ａ及び第２の副支持面４４Ｂは、切削インサートに標準的な３点接触をもたらすように、逃げ凹部４６によって隔てられている。第１の副支持面４４Ａ及び第２の副支持面４４Ｂは、これらが同一平面上にあり、互いに隣接するため、単一ポケット支持面４４の一部とみなされる。

単一ポケット支持面のみによって支持されるいくつかのインサート形状、及び３つのポケット支持面によって支持されるいくつかのインサート形状があることは理解されよう。本発明の例は、２つのポケット支持面という最も一般的な構成を対象とし、２つのポケット支持面は、この場合、標準的な正方形形状切削インサートのために構成される。

したがって、ここで例示する切削インサート１６は、標準的な正方形形状切削インサートである。

切削インサート１６は、インサート上面４８及びインサート底面５０と、インサート外周面５２とを備える。

切れ刃５４は、インサート上面４８及びインサート外周面５２の交線に沿って形成される。

切削インサート１６は、インサート底面５０及びインサート外周面５２の交線に更なる切れ刃も有し得ることは理解されよう。また、他の種類のインサートは、外周面に沿って切れ刃を有し得るが、ここでの主な目的は本発明をより良好に理解することであるため、上記切れ刃５４のみを詳述する。

インサート外周面５２は、複数のインサート外周側面５２Ａ、５２Ｂ、５２Ｃ、５２Ｄ（即ち、副面）と、複数の外周コーナ５４Ａ、５４Ｂ、５４Ｃ、５４Ｄとを備える。

切れ刃５２は、コーナ副切れ刃５６Ｃによって接続される第１の副切れ刃５６Ａと第２の副切れ刃５６Ｂとを備える。

切削インサート１６は、締付け貫通孔５８と共に形成される。例えば、トップクランプによって締め付けられる切削インサート等の切削インサートは、締付け貫通孔を必要としないことは理解されよう。

図１Ｂに示すように、切削インサート・アダプタ１４は、上方に延在するシムの外観をもたらす。このことにより、インサート・ポケット３８内でより小型の切削インサート１６を使用可能にする。

図２Ａ～図２Ｃも参照すると、切削インサート・アダプタ１４は、反対のアダプタ上面６０及びアダプタ底面６２と、アダプタ外周面６４とを備える。

アダプタ外周面６４は、後向き副面６６と、前向き副面６８とを備える。後向き副面６６は、「ポケット壁の方を向く」副面と呼び得る一方で、前向き副面６８は、「インサートの方を向く」副面と呼び得る。

後向き副面６６は、インサート・ポケット３８に当接させる第１のポケット当接面７０Ａと第２のポケット当接面７０Ｂとを備える。

前向き副面６８は、切削インサート１６に当接させる第１のインサート当接面７２Ａと第２のインサート当接面７２Ｂと第３のインサート当接面７２Ｃと第４のインサート当接面７２Ｄとを備える。

より正確には、切削インサート・アダプタは、互いに非平行に延在する（即ち、屈曲部７６で接続される）第１の脚部７４Ａと第２の脚部７４Ｂとを備える。図２Ｂの上面図において、切削インサート・アダプタ１４は、矢羽根形状であり、屈曲部７６で交わる第１の脚部７４Ａと第２の脚部７４Ｂとを備える。屈曲部７６は、接続壁を画定する凹部７７を備え、第１の脚部７４Ａと第２の脚部７４Ｂとの間に所定量の湾曲を可能にする。

凹部７７は、可撓性を可能にするように設けられる。初期の設計は、標準的な対称凹部を有した。その後、付加製造部品は、同じ材料であるが従来の除去製造方法によって製造した同様の設計部品よりも可撓性を必要とすることが発見された。したがって、凹部７７を非対称に成形することが好ましいことが見出された。より正確には、好ましい形状は、凹部７７が細長い形状である。この例では、凹部７７は、一方の脚部（この例では第２の脚部７４Ｂ）と平行な方向で細長い。

この例では、屈曲部７６は、切削インサート・アダプタの中心にあり、屈曲部７６を通過する交換軸Ａ_Ａを有する。

この例では、切削インサート・アダプタは、３つの磁石７８Ａ、７８Ｂ、７８Ｃを備え、有利には、（最適な安定性のために）少なくとも１つの磁石が各脚部にある。この例では、磁石は、第１の磁石凹部８０Ａ、第２の磁石凹部８０Ｂ及び第３の磁石凹部８０Ｃ内に接着剤によって固着される。追加の強度のため、より大型の磁石７８Ａを第１の脚部７４Ａ内に埋め込み、より小型の２つの磁石７８Ｂ、７４Ｃを第２の脚部７４Ｂ内に埋め込んだ。

例示的実施形態の詳細を上記で説明した後、次に、図２Ｂで示す上面図を特に参照して、本発明の基本概念を説明する。

図示のように、対向するインサート当接面及びポケット当接面は、非平行である。この文脈において、「対向する」インサート当接面及びポケット当接面は、同じ脚部７４Ａ、７４Ｂの両側に形成され、厳密ではないが、概ね反対方向で面する。

この特定の例のために詳述すると、第１の脚部７４Ａ上に２対の対向する当接面がある。即ち、第１のインサート当接面７２Ａ及び第１のポケット当接面７０Ａは、第１の対の対向する当接面を構成し、第２のインサート当接面７２Ｂ及び同じ第１のポケット当接面７０Ａは、第２の対の対向する当接面を構成する。

この例では、第１のポケット当接面７０Ａは、第１の当接面７２Ａ及び第２の当接面７２Ｂの両方の反対側で、途切れなく延在し、したがって、第１のポケット当接面７０Ａは、第１の当接面７２Ａ及び第２の当接面７２Ｂの両方と対にされる。このことが当てはまらない場合、例えば、第１のポケット当接面７０Ａの中間部が中心部に逃げ凹部（図示せず）を備えるか、又は直線で延在しない場合、第１のインサート当接面７２Ａは、理解のために「８２Ａ」と単に示される第１のポケット当接面７０Ａの対向する部分と対にされ、第２のインサート当接面７２Ｂは、「８２Ｂ」と示される、対向する部分と対にされる。しかし、対が最初に説明したものであるような所与の例では、第１の当接面７２Ａ及び第２の当接面７２Ｂの両方が共通平面内に延在するため、第１の対及び第２の対の両方は、４．５°の値を有する同一のアダプタ鋭角α１、α２を形成する。

全ての図面における角度は、一定の縮尺ではなく、見やすさを容易にするために人工的に拡大し得ることを留意されたい。

第２の脚部７４Ｂにも、上記の理解（第２のポケット当接面７０Ｂ内に形成された逃げ面がある場合等）が適用可能であり、繰り返さない。第３のインサート当接面７２Ｃ及び第２のポケット当接面７０Ｂは、第３の対の対向する当接面を構成し、第４のインサート当接面７２Ｄ及び同じ第２のポケット当接面７０Ｂは、第４の対の対向する当接面を構成する。第３の対及び第４の対の両方は、３．５°の値を有する同一のアダプタ鋭角α３、α４を形成する。

したがって、アダプタ角度の全て（α１＝４．５°、α２＝４．５°、α３＝３．５°、α４＝３．５°）は、条件０≦ａ≦３０°を満たす。

切削インサート・アダプタ１４の上面図（図２Ｂ）に示すように、第１の脚部７４Ａ及び第２の脚部７４Ｂは、屈曲部７６に対して先細になっている。したがって、第１の脚部７４Ａ上では、第１のインサート当接面７２Ａ及び第２のインサート当接面７２Ｂ並びに対向する第１のポケット当接面７０Ａは、屈曲部７６から離れる方向で収束する。一方、第２の脚部７４Ｂ上では、第３のインサート当接面７２Ｃ及び第４のインサート当接面７２Ｄ並びに対向する第２のポケット当接面７０Ｂは、屈曲部７６から離れる方向で収束する。

次に図２Ｄを参照し、すぐ後に図２Ｅをしながら、同じ（即ち、共通）回転方向で測定した際にアダプタ角度の全てが特定の角度範囲内にあることによって意味されるものを説明する。

図２Ｄをまず参照すると、対向する対の当接面７０Ｂ、７２Ｄは、非平行である（第４の対がこの例では例示されるが、各対に対して同じものが正しい）。より詳細には、第４のインサート当接面７２Ｄ及びその対向する第２のポケット当接面７０Ｂは、図面シートの上部に向かって収束する。言い方を変えれば、第１の幅Ｗ１は、第２の幅Ｗ２よりも大きく、第２の幅Ｗ２は、図面シートの上部により近い。

（インサート当接面は、切削インサートに新たな回転位置をもたらすように回転する面であるので）第２のポケット当接面７０Ｂを基準として使用すると、第４のインサート当接面７２Ｄは、対向する第２のポケット当接面７０Ｂに対して反時計回り方向Ｄ_ＣＣで回転することがわかる（即ち、第４のインサート当接面７２Ｄが直線を辿ることに注目すると、第２の幅Ｗ２は、第１の幅Ｗ１よりも小さい）。

図２Ｅを参照すると、第１のインサート当接面７２Ａも、基準の対向する第１のポケット当接面７０Ａに対して同じ方向、即ち、反時計回り方向Ｄ_ＣＣで回転する。図示のように、第３の幅Ｗ３は、第４の幅Ｗ４よりも大きく、第３の幅Ｗ３は、図面シートの上部により近い。

対向する面の対の全てが同じ方向で回転すること（即ち、インサート当接面が、対の対向するポケット当接面に対して同じ方向で回転すること）の重要性は、本発明が意図しないものを例示する図３の図で理解されよう。

インサート当接面１７２Ｄは、同じ面を有する図２Ｄで示すものと同様に、対向するポケット当接面１７０Ｂに対して反時計回り方向Ｄ_ＣＣで回転する。

しかし、インサート当接面１７２Ｄは、図２Ｅで示す方向とは反対の回転方向で、対向するポケット当接面１７０Ａに対して時計回り方向Ｄ_Ｃで回転する。

したがって、インサート当接面１７２Ａ、１７２Ｄと当接する状態で組み付けられる切削インサート（図示せず）は、回転せず、むしろ、圧迫される。また、切削インサートは剛体であるため、より薄い切削インサートのみが、そのようなアダプタのインサートでの使用に適している。しかも、本発明の目的は、異なる形状の切削インサートを単に使用することではなく、切削インサート・アダプタを伴わないインサート・ポケット単独でもたらされる向きとは異なる機械加工の向きで、切削インサートを回転させることである。

本発明の本質は、様々な回転位置で同じ切削インサートを支持するように構成された切削インサート・アダプタを提供することであり、各回転位置は、異なるインサート角度を特徴とし、異なる種類及び／又は方向の機械加工に適していることを理解されたい。

回転する工作物により良好な仕上がりをもたらすように構成された切削インサート・アダプタの具体的な例を理解するため、図４Ａ～図４Ｃに注意を向けられたい（この構成が好ましい構成であるが、回転は相対的であることを留意されたい。工作物を静止させたまま、工具を回転させることが可能であることは理解されよう）。

まず、切削インサート・アダプタ１４が図２Ｂのように上面図と同じ向きで示され、工具組立体１０が「８６Ａ」として示される工作物を機械加工している図４Ａを参照する。したがって、この図では、切削インサート１６は、切削インサート１６が占有していた非回転位置に対して反時計回り方向Ｄ_ＣＣでわずかに回転しており、切削インサート１６は、切削インサート・アダプタ１４が介在せずにインサート・ポケットのポケット支持面４２、４４に直接当接する。

理論的に詳述すると、非回転位置において、切れ刃の第１の副切れ刃５６Ａは、第１の副切れ刃５６Ａと後方向Ｄ_Ｒとの間に定められる５°の第１のインサート鋭角ε１を呈する（後方向Ｄ_Ｒは、工具ホルダの伸長軸Ａ_Ｅと平行である）。

しかし、本発明によれば、（切削インサート１６も前コーナでインサート・ポケット３８内で下方に傾斜することによる、わずかな不一致に注目すると）切削インサート１６が反時計回り方向Ｄ_ＣＣで約３．５°回転するため、この非限定例における第１のインサート鋭角ε１は、約８．５°である。

同様に、理論上は、非回転位置において、切れ刃の第２の副切れ刃５６Ｂは、第２の副切れ刃５６Ｂと第１の横方向Ｄ_ＬＦとの間に定められる５°の第２のインサート鋭角ε２を呈する。

しかし、３．５°の反時計回り回転のために、第２のインサート鋭角ε２は、この非限定的な例では、約１．５°である。

したがって、工具組立体１０は、第１の機械加工方向Ｄ_Ｍ１（この例では、第２の横方向Ｄ_ＬＳと同じ方向である）で移動するため、わずかな第２のインサート鋭角ε２は、機械加工面８４Ａ（即ち、一次機械加工面８４Ａ）を非回転位置における場合よりも良好な仕上がりにする。

より良好な仕上がりのために、第２のインサート鋭角ε２は、より好ましくは、上記で詳述したように、好ましい範囲内でより小さくてもよい。

切れ刃５４の図は、工作物８６Ａによってわずかに覆い隠されていることを留意されたい。工作物８６Ａは、説明の目的のために概略的であることは理解されよう。

上記は、一次機械加工方向（「一次」は、特定の被機械加工部品のために機械加工動作で最も使用される機械加工方向を意味する）が、図４Ａに示す工作物の回転軸Ａ_Ｒに平行である場合、より詳細には、第２の横方向Ｄ_ＬＳ（又は工具がもう一方のきき手用である場合、反対方向の第１の横方向Ｄ_ＬＦ）と同じである場合、機械加工の適用に最も適用可能である。

言い方を変えれば、上記は、一次機械加工面８４Ａが、基本的に工作物８６Ａの回転軸Ａ_Ｒと平行である（即ち、この例では回転軸Ａ_Ｒと直交する二次機械加工方向とは反対である）場合、最も適用可能である。このことは、前方向Ｄ_Ｆでの機械加工（即ち、この例では、基本的に、工作物８６Ａの回転軸Ａ_Ｒに直交して延在する二次機械加工面８４Ｂに沿った機械加工）が、より劣った仕上がりをもたらすことが予期されるという点で妥協があるためである。というのは、第１のインサート鋭角ε１は、今や、非回転位置での場合の角度よりも大きいためである。しかし、多くの適用例が一次機械加工方向を有するため、妥協は全体として有益であると考えられるという理論が立てられる。

更に、切削インサート・アダプタ１４を逆にした場合、前方向Ｄ_Ｆでの機械加工に対してより良好な仕上がりを達成し得る。

異なる工作物８６Ｂが機械加工される図４Ｂを参照すると、全く同じ切削インサート・アダプタ１４が、図４Ａに示す位置に対して逆の位置で組み付けられていることが示される。逆にすることによって、切削インサート・アダプタ１４が交換軸Ａ_Ａ（図２Ａ）回りに１８０°回転しており、いわゆる「底面６０」が今や上向きであり、いわゆる「上面６２」が今やシム２０（図１Ａ）に当接している、即ち、切削インサート・アダプタ１４は、「さかさまに」ひっくり返され、ポケット当接面７０Ａ、７０Ｂ及び対応する脚部７４Ａ、７４Ｂは、周囲で切り換わることが意味される。

したがって、角度の値は、逆になり、第１のインサート鋭角ε１は、約１．５°であり、第２のインサート鋭角ε２は、約８．５°である。工具組立体１０が主に機械加工方向Ｄ_Ｍ２（この例では、前方向Ｄ_Ｆと同じ方向である）で移動するため、わずかな第１のインサート鋭角ε１により、機械加工面８８Ａ（この例では、一次面は８８Ａで示され、工作物の回転軸Ａ_Ｒに直交する表面である）が非回転位置における場合よりも良好な仕上がりとなる。

図４Ｂにおいて、二次機械加工面８８Ｂは、場合によっては、回転軸Ａ_Ｒに対して望ましくない傾斜又は面取りを伴って生成される場合があることにも留意されたい。

図４Ｃを参照すると、そのような傾斜した二次機械加工面８８Ｂは、この例では、前方向Ｄ_Ｆ及び第１の横方向Ｄ_ＬＦの両方に同時に工具組立体１０を移動させて機械加工方向Ｄ_Ｍ３をもたらすことによって、典型的にはより望ましい直角面として、即ち、第１の横方向Ｄ_ＬＦと平行である面として形成し得る。したがって、必要な場合、この例では、回転軸Ａ_Ｒと平行な所望の表面を達成し得る。

完全にする目的のため、説明した回転は、伸長軸Ａ_Ｅに対して参照される第１のインサート角度ε１及び第２のインサート角度ε２の観点から行われたが、回転は、異なる様式で記載し得ることを理解されたい。

例えば、図４Ｃを参照すると、インサート１６は、図２Ａ～図２Ｅに関して上記した異なるアダプタ角度α１、α２、α３、α４だけ回転することを理解されたい。

同様に、次に図１Ａ、図２Ｂ及び図４Ａを参照すると、回転は、工具角度の点で表すこともできる。

詳述すると、この特定の例の場合、第１の脚部７４Ａ及びインサート・ポケットの第２のポケット支持面４４に関連して、２つの対の対向する当接面がある、即ち、対向する第１のインサート当接面７２Ａ及び第２の副支持面４４Ｂは、第１の工具角度β１（図４Ａ）で収束する第１の対を構成し、対向する第２のインサート当接面７２Ｂ及び第１の副支持面４４Ａは、第２の工具角度β２（図４Ａ）で収束する第２の対を構成する。

第１のインサート当接面７２Ａ及び第２のインサート当接面７２Ｂの両方は共通平面内に延在するため、第２のポケット支持面４４が第１のポケット当接面７０Ａと平行である所与の例では、第１の工具角度β１及び第２の工具角度β２は、アダプタ角度α１、α２と同一であり、４．５°の値も有する。

第２の脚部７４Ｂに関し、第３の対及び第４の対がある。即ち、対向する第３のインサート当接面７２Ｃ及び第１のポケット支持面４２は、第３の工具角度β３（図４Ａ）で収束する第３の対を構成し、対向する第４のインサート当接面７２Ｄ及び第１のポケット支持面４２は、第４の工具角度β４（図４Ａ）で収束する第４の対を構成する。

第３のインサート当接面７２Ｃ及び第４のインサート当接面７２Ｄの両方が共通平面内に延在するため、第１のポケット支持面４２が第２のポケット支持面７０Ｂと平行である所与の例では、第３の工具角度β３及び第４の工具角度β４は、アダプタ角度α３、α４と同一であり、３．５°の値も有する。

本発明は、（インサート・ポケットが専用に設計されている切削インサートのサイズと比較して）低減したサイズの切削インサートを使用し、一種類の切削インサートのみを必要とすると同時に、切削インサート・アダプタを逆にすることによって、又は異なる切削インサート・アダプタを使用することによって、所望の機械加工方向での仕上げ用途、又は代替的に、異なる機械加工方向での仕上げ用途を実現を可能にするために想到されたことを理解されたい。上述のように、所望の用途は、異なる向き（即ち、仕上げではなく、例えば、面取り）のためとすることができ、したがって、選択される角度範囲は、著しく異なる。

図示する切削インサート・アダプタの実施形態は、可逆的である（即ち、後向き副面及び前向き副面を通じて延在する交換軸回りに１８０°回転させて交換可能である）一方で、このことは、好ましいオプションにすぎないことも理解されよう。

Claims (18)

1. インサート・ポケットのための切削インサート・アダプタであって、前記切削インサート・アダプタは、
   反対のアダプタ上面及び底面と、
   前記上面及び前記底面を接続するアダプタ外周面と
   を備え、前記アダプタ外周面は、
   後向き副面と、
   前記後向き副面に対して前記アダプタ外周面の反対側に位置する前向き副面と
   を備え、
   前記後向き副面は、少なくとも１つのポケット当接面を備え、
   前記前向き副面は、少なくとも１つのインサート当接面を備え、
   前記切削インサート・アダプタの上面図において、
   対向する前記インサート面及び前記ポケット当接面の各対は、条件：０°≦α≦３０°を満たすアダプタ角度αで収束し、
   各前記インサート当接面は、対向する前記ポケット当接面に対して同じ回転方向で回転する、切削インサート・アダプタ。
2. 厳密に２つのポケット当接面がある、請求項１に記載の切削インサート・アダプタ。
3. 厳密に３つのポケット当接面がある、請求項１又は２に記載の切削インサート・アダプタ。
4. 厳密に４つのポケット当接面がある、請求項１～３のいずれか１項に記載の切削インサート・アダプタ。
5. 第１の脚部と、前記第１の脚部に接続され、前記第１の脚部と非平行に延在する第２の脚部とを更に備え、前記第１の脚部は、前記インサート当接面の少なくとも１つと、前記ポケット当接面の少なくとも１つとを備え、前記第２の脚部は、前記インサート当接面の少なくとも１つと、前記ポケット当接面の少なくとも１つとを備える、請求項１～４のいずれか１項に記載の切削インサート・アダプタ。
6. 前記切削インサート・アダプタは、厳密に４つのポケット当接面を備える、請求項５に記載の切削インサート・アダプタ。
7. 前記アダプタ角度αは、条件：２°≦α≦１５°を満たす、請求項１～６のいずれか１項に記載の切削インサート・アダプタ。
8. 前記アダプタ角度αは、条件：２°≦α≦１０°を満たす、請求項７に記載の切削インサート・アダプタ。
9. 前記切削インサート・アダプタに取り付けられる１つ又は複数の磁石を更に備える、請求項１～８のいずれか１項に記載の切削インサート・アダプタ。
10. 更に、前記後向き副面及び前記前向き副面を通じて延在する交換軸回りに１８０°回転させて交換可能である、請求項１～９のいずれか１項に記載の切削インサート・アダプタ。
11. インサート・ホルダと切削インサート・アダプタと
    を備える切削工具組立体であって、
    前記インサート・ホルダは、
    反対の上側及び底側と、
    前記上側及び前記底側を接続する反対の第１の横側及び第２の横側と、
    前記上側、前記底側、前記第１の横側及び前記第２の横側を接続する反対の前側及び後側と、
    伸長軸を画定する細長いシャンク部分と、
    前記シャンク部分に接続される切削部分と、
    前記伸長軸と平行に、前記シャンク部分から前記切削部分に向かって延在する前方向、及び前記前方向とは反対の後方向と、
    前記底側から前記上側に向かって延在し、前記伸長軸に直交して画定される上方向、及び前記上方向とは反対の下方向と、
    前記第１の横側から前記第２の横側に延在し、前記伸長軸及び前記上方向の両方に直交する第１の横方向、並びに前記第１の横方向とは反対の第２の横方向と、
    前記上側、前記前側及び前記第１の横側の交線で前記切削部分内に形成されるインサート・ポケットと
    を備え、前記インサート・ポケットは、
    ポケット基部面と、
    前記ポケット基部面から上方に延在する少なくとも１つのポケット支持面と
    を備え、前記切削インサート・アダプタは、
    反対のアダプタ上面及び底面と、
    前記上面及び前記底面を接続するアダプタ外周面と
    を備え、前記アダプタ外周面は、
    後向き副面と、
    前記後向き副面に対して前記アダプタ外周面の反対側に位置する前向き副面と
    を備え、
    前記後向き副面は、少なくとも１つのポケット当接面を備え、
    前記前向き副面は、少なくとも１つのインサート当接面を備え、
    前記切削インサート・アダプタは、前記少なくとも１つのポケット当接面が前記少なくとも１つのポケット支持面に当接するように、前記インサート・ポケットに組み付けられ、
    前記インサート・ホルダの上面図において、
    対向する前記インサート当接面及び前記ポケット当接面の各対は、条件：０°≦β≦３０°を満たす工具角度βで収束し、
    各前記インサート当接面は、対向する前記ポケット支持面に対して同じ回転方向で回転する、工具組立体。
12. 前記工具角度βは、条件：２°≦β≦１５°を満たす、請求項１１に記載の工具組立体。
13. 前記工具角度βは、条件：２°≦β≦１０°を満たす、請求項１２又は１３に記載の工具組立体。
14. 前記インサート・ポケットに組み付けられる切削インサートを更に備え、前記切削インサートは、
    インサート上面及びインサート底面と、
    前記インサート上面及び前記インサート底面を接続するインサート外周面と、
    前記インサート上面及び前記インサート外周面の交線に沿って形成される切れ刃と
    を備え、
    前記インサート外周面は、複数のインサート外周側面と、前記インサート外周側面を接続する複数の外周コーナとを備え、
    前記切れ刃は、
    前記複数のインサート外周側面の第１のインサート外周側面に沿って延在する第１の副切れ刃と、
    前記複数のインサート外周側面の第２のインサート外周側面に沿って延在する第２の副切れ刃であって、前記第２の外周側面は、前記第１の外周側面に隣接する、第２の副切れ刃と、
    前記第１の副切れ刃及び前記第２の副切れ刃を接続し、前記第１の外周側面と前記第２の外周側面との間に位置する前記外周コーナの１つに沿って延在するコーナ副切れ刃と
    を備え、
    前記工具組立体の上面図において、
    第１のインサート鋭角ε１は、前記第１の副切れ刃と前記後方向との間に定められ、
    第２のインサート鋭角ε２は、前記第２の副切れ刃と前記第１の横方向との間に定められ、
    前記第１のインサート鋭角ε１及び前記第２のインサート鋭角ε２は、条件：ε１≠ε２を満たす、請求項１３に記載の工具組立体。
15. 前記第１のインサート鋭角ε１は、条件：０°≦ε１≦２°を満たす、請求項１４に記載の工具組立体。
16. 前記第１のインサート鋭角ε１は、条件：０．２５°≦ε１≦０．７５°を満たす、請求項１５に記載の工具組立体。
17. 前記第２のインサート鋭角ε２は、条件：０°≦ε２≦２°を満たす、請求項１４～１６のいずれか１項に記載の工具組立体。
18. 前記第２のインサート鋭角ε２は、条件：０．２５°≦ε２≦０．７５°を満たす、請求項１７に記載の工具組立体。
    

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