JP2023508528A - 大麻カッティングを増殖させる方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は大麻カッティングを増殖させる方法に関するものであり、硬化したバインダ組成物に接合された人造ガラス質繊維(MMVF)を含んでいて60kg/m3~70kg/m3の範囲の密度を持つコヒーレントな成長基板を用意する工程;前記大麻カッティングを前記成長基板の中に、その成長基板が種子穴を持たない位置で挿入する工程;1.6~2.4mS/cmの電気伝導度(EC)値を持つ養液を前記成長基板の中の前記大麻カッティングに提供する工程を含む。本発明の方法の結果として、より速い増殖プロセスを持つことによる増加した出力、より一様な増殖したカッティング、および次の成長段階へと進むことのできるより多数の増殖した大麻カッティングが得られる。

Description

本発明は、硬化されたバインダ組成物に接合された人造ガラス質繊維を含む成長基板の中で大麻カッティングを増殖させる方法に関する。
大麻はアサ科の中の顕花植物の1つの属であり、知られている3つの種、すなわちカンナビス・サティバ;カンナビス・インディカ、およびカンナビス・ルデラリスがある。近年、大麻は薬用の目的で研究され、使用されてきた。大麻は薬用として使用できるカンナビノイド(テトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)が含まれる)を含有する。大麻は特に吐き気と嘔吐(例えば化学療法の間)、慢性疼痛と筋肉痙攣、およびてんかんの治療に使用されてきた。
成長条件を最適化し、よい収率を得るため、大麻を室内と大規模な温室で育てることが知られている。US2017/0283333A1には、野菜と薬用植物(薬用大麻など)を水耕栽培で育てることが開示されている。
大麻は、そのライフサイクルを1年以下で完了する一年生植物であり、雌雄異体であるため雄性植物と雌性植物の両方を持つ。薬用大麻は有性生殖または無性生殖が可能である。種子は有性生殖の産物であり、カッティング(クローンとも呼ばれる)は無性生殖の結果である。クローニングには、成長中の枝を切断して「カッティング」を取得し;そのカッティングを生育培地の中に配置して成長させ、根を発達させることが含まれる。クローンは、マザープラントと呼ばれる望ましい医用品質を持つ雌性植物から採取される。本質的に、クローニングは、1つの植物の1個の細胞を採取し、その成長を促進して1つの植物にすることである。この新たな植物は同じDNAを共有しているため、マザープラントのコピーである。
無性生殖(クローニングとも呼ばれる)は、予測可能であることと一様であることが理由で薬用大麻にとって特に好ましい。薬用大麻に関する規制に合わせるため、管轄下で非常に注意深く制御された成長条件が必要とされることがしばしばある。例えば最終的に回収される製品は、望ましくない成分(殺虫剤または細菌など)が存在しないことと、カンナビノイドが必要なレベルを満たしていることが保証されていることを調べる必要がある。
典型的には、増殖は薬用大麻を成長させる第1段階である。カッティングを採取し、十分な数の根が発達するまで成長させる。次に、増殖したカッティングを次の成長相に移す。これは別の成長プロセスであると見なされる。増殖の間、必要な数のカッティング(すなわち次世代に必要な根の発達)を最高の成功率で実現することが望ましい。増殖したカッティングが正しい時期に用意されることも望ましい。こうすることで、最大数の増殖したカッティングをまとめて、しかも正しい時期に、次の成長段階に進ませることが保証される。
したがって健康かつ成長性のある増殖したカッティングの数を最大にすることで、増加した割合のカッティングが根を発達させ、次の成長段階での使用が可能になることが望ましいと考えられる。すると最終的に、最終製品(例えば薬用大麻)のより高い収率につながるであろう。
それに加え、増殖されたカッティングの一様性を増大させることが望ましかろう。というのもそうすると最終製品(例えば薬用大麻)の品質が向上するからである。
さらに、増殖プロセスを加速することが望ましかろう。というのも典型的には、そのプロセスが遅いほど、増殖したカッティングの品質が低下するからである。したがって高い成功率のカッティングとより一様なカッティングを達成するため増殖を加速することが望ましいと考えられる。
WO2016/061672A1には、薬用大麻の収率を最適化し、増殖を加速する方法が開示されている。しかしこの方法は込み入っており高価である。というのもこの方法は、陰圧下で気候制御された微気候を含む成長室を必要とするからである。
したがって本発明の1つの目的は、大麻カッティングを増殖させる方法を提供し、その結果として、より速い増殖プロセスによる増加した出力、より一様な増殖したカッティング、および次の成長段階へと進むことのできるより多数の増殖した大麻カッティングを得ることである。効率的かつ経済的なそのような方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
本発明の第1の側面では、大麻カッティングを増殖させる方法が開示され、この方法は、
- 硬化したバインダ組成物に接合された人造ガラス質繊維(MMVF)を含んでいて60kg/m3~70kg/m3の範囲の密度を持つコヒーレントな成長基板を用意する工程;
- 前記大麻カッティングを前記成長基板の中に、その成長基板が種子穴を持たない位置で挿入する工程;
- 1.6~2.4mS/cmの電気伝導度(EC)値を持つ養液を前記成長基板の中の前記大麻カッティングに提供する工程を含む。
本発明の第2の側面では、大麻カッティングを増殖させるためのコヒーレントな成長基板の利用が開示され、この利用は、
- 前記大麻カッティングを前記成長基板の中に、その成長基板が種子穴を持たない位置で挿入する工程;
- 1.6~2.4mS/cmの電気伝導度(EC)値を持つ養液を前記成長基板の中の前記大麻カッティングに提供する工程を含み;
前記コヒーレントな成長基板は、硬化したバインダ組成物に接合された人造ガラス質繊維(MMVF)を含み;前記成長基板は60kg/m3~70kg/m3の範囲の密度を持つ。
本発明の発明者は、本発明の方法が、次の成長段階へと進むことのできる増殖したカッティングの数を増加させ、その結果としてより高い収率になることを発見した。さらに、本発明の方法はカッティングの一様性を増大させるため、最終的により一様でしたがってより高品質の最終製品につながる。医薬製品には高い基準が要求されるため、一様性と品質は薬用大麻にとって特に重要である。それに加え、本発明の方法により、増殖の工程をより短時間で実現することが可能になり、その結果としてより高品質でより一様な最終製品になる。特に、これらの利点は、密度が60~70kg/m3の範囲の成長基板を用意し、カッティングをその基板の種子穴がない位置に挿入することによって実現される。それに加え、これは、成長基板と大麻カッティングに1.6~2.4mS/cmのECを持つ養液を供給することによって実現される。
図1A~1Dは、さまざまな密度の成長基板での実験の結果を示す。 図2A~2Cは、成長基板で異なる養液を用いた実験の10日後の結果を示す。 図3A~3Cは、成長基板で異なる養液を用いた実験の12日後の結果を示す。 図4A~4Cは、成長基板で異なる養液を用いた実験の14日後の結果を示す。 図5は、大麻カッティングの写真を示す。 図6は、増殖した大麻カッティングの写真を示す。
本発明は、大麻カッティングを増殖させる方法に関するものであり、この方法は、
- 硬化したバインダ組成物に接合された人造ガラス質繊維(MMVF)を含んでいて60kg/m3~70kg/m3の範囲の密度を持つコヒーレントな成長基板を用意する工程;
- 前記大麻カッティングを前記成長基板の中に、その成長基板が種子穴を持たない位置で挿入する工程;
- 1.6~2.4mS/cmの電気伝導度(EC)値を持つ養液を前記成長基板の中の前記大麻カッティングに提供する工程を含む。
本発明では、「増殖の方法」という表現は、植物成長基板の分野における通常の意味を持つ。増殖は大麻が成長する第1段階である。増殖が完了してカッティングが次の成長段階の準備ができている状態にあるのは、根系が発達したときである。根系では、根は成長基板を通って成長し、少なくとも3本の根が基板の側面または底面から突起する。増殖という用語は、成長基板の分野で非常によく理解されている。
図6は、次の成長段階の準備ができている増殖した大麻カッティングの写真を示す。すべてのカッティングが根系を発達させ、少なくとも3本の根が成長基板の側面または底面から突起した。
典型的には、増殖は3~4週間継続する。しかし本発明では、増殖は好ましくは2~3週間、好ましくは2週間以下継続する。これは、より一様な増殖したカッティングへとつながり、その結果としてより高品質の最終製品になるという大きな利点を持つ。それに加え、増殖プロセスの加速は、より多くのカッティングを1年で生産することが可能になり、したがって収量が増加することを意味する。
「大麻」という用語は、アサ科からの任意の植物(カンナビス・サティバ;カンナビス・インディカ、およびカンナビス・ルデラリスなど)を意味する。大麻植物はマリファナまたはヘンプとも呼ばれる。本発明は薬用大麻に関係することが好ましい。薬用大麻とは、いくつかの状態の治療に使用するための必要な規制に合致する大麻を意味する。
本発明では、「カッティング」という用語は本分野で通常の意味を持つ。この用語は、成長している枝または茎から切断された植物の部分を意味する。カッティングは、最初に植物から切断されるとき、根をまったく持たない。カッティングは、増殖されると、そのカッティングが切断された植物(マザープラントと呼ばれる)のクローンになる。
マザープラントから採取されるカッティングは10~14日齢であることが好ましい。すなわちカッティングが採取される茎は、切断工程の前に10~14日間成長している。マザープラントは10~14日齢を超えていてもよい。カッティングは、好ましくは長さが8~15cm、より好ましくは長さが10~12cmである。カッティングは、茎の直径が好ましくは3~8mm、最も好ましくは5mmである。発明者らは、カッティングが上記の長さ、および/または直径、および/または日齢を持つとき、根の速い成長につながることを発見した。最終製品の一様性と品質を最大にするには、すべてのカッティングが同じ高さと日齢を持つことが好ましい。
好ましい一実施形態では、カッティングはマザープラントから180°の角度で切断して水平面に平らに載ることができるようにし、好ましくはマザープラントからカッティングを採取した後に下方と上方の葉を除去して蒸発による損失を最少にする。
図5は、1つの大麻マザープラントからの4つのカッティングを示す。カッティングAは、マザープラントから採取されたままのカッティングである。カッティングBは、平坦な切断面を持つ茎頂である。カッティングCは、下方の茎をすべて除去した加工済みのカッティングである。カッティングDは、蒸発を制限するためより大きな葉が除去された加工済みのカッティングである。
本発明では、人造ガラス質繊維(MMVF)を含むコヒーレントな成長基板を用意する。MMVFは、MMVF成長基板製品の製造に関して当業者に知られている任意の方法によって製造することができる。一般に、無機装填物を用意し、それを炉の中で溶融させて無機溶融物を形成する。次にこの溶融物を回転繊維化によって繊維にする。コヒーレントな成長基板は人造ガラス質繊維で形成されることが好ましい。
溶融物を外部遠心分離により、例えばカスケード式紡績機を利用して繊維にし、雲状の繊維を形成することができる。その代わりに溶融物を内部遠心分離繊維化により、例えば回転カップを利用して繊維にし、雲状の繊維を形成することができる。
典型的には、その後これらの繊維を集めて一次フリースまたはウェブを形成し、この一次フリースまたはウェブをその後クロスラップさせて二次フリースまたはウェブを形成する。この二次フリースまたはウェブをその後硬化させて成長基板を形成する。
バインダと場合により湿潤剤が、通常は繊維化段階で、形成されつつある雲状の繊維の中にスプレーすることによって添加される。これらの方法は本分野で周知である。
MMVFは、既知のMMVF成長基板の形成に用いられる通常のタイプのものが可能である。それはグラスウールまたはスラグウールにすることが可能だが、通常はストーンウールである。ストーンウールは一般に、酸化鉄の含量が少なくとも3%、アルカリ土類金属(酸化カルシウムと酸化マグネシウム)の含量が10~40%であり、それに加えてミネラルウールの他の通常の酸化物成分を含む。その中に含まれるのは、シリカ;アルミナ;アルカリ金属(酸化ナトリウムと酸化カリウム)、チタニア、および他の少量の酸化物である。一般に、MMVFとして、成長基板の製造に関して通常知られている任意のタイプの人造ガラス質繊維が可能である。
繊維の直径の幾何平均はしばしば1.5~10ミクロンの範囲であり、特に2~8ミクロン、好ましくは従来通り3~6ミクロンである。
成長基板製品は、成長基板の全固形含有物の重量を基準にして少なくとも90重量%の人造ガラス質繊維を含むことが好ましい。成長基板製品の中にそのような量の繊維が存在することの1つの利点は、繊維間に形成される十分な数の孔があることで、植物の根が成長基板製品に侵入する能力を維持しつつ、成長基板製品がカッティングのための水と栄養素を保持できるようにすることである。残る固形含有物は主にバインダと湿潤剤で構成することができる。
成長基板製品はコヒーレントな塊の形態である。すなわち成長基板は一般に人造ガラス質繊維のコヒーレントなマトリックスであり、そのような状態で製造されるが、ミネラルウールのスラブを粒状にし、その粒状材料を統合することによって形成することもできる。コヒーレントな塊は単一の一体化された基板である。
成長基板製品は硬化されたバインダ組成物を含み、それは有機バインダであることがしばしばあり、一般に熱硬化可能である。成長基板製品は、成長基板製品の重量を基準にして1~10重量%のバインダを含むことが好ましい。より好ましいのは、それが2~6重量%のバインダを含むことであり、最も好ましいのは、それが3~5重量%のバインダを含むことである。
バインダ組成物は、
a)糖成分と、
b)ポリカルボン酸成分とアルカノールアミン成分の反応生成物を含むことが好ましく、硬化前の前記バインダ組成物は、バインダ成分の全重量(乾燥物質)を基準にして少なくとも42重量%の糖成分を含有するを本発明で使用することができる。このバインダはホルムアルデヒドを含まず、経済的に製造されるという利点を持つ。
バインダとして有機疎水性バインダが可能であり、特に、MMVF基板(と、他のMMVF系製品)で長年にわたって使用されてきた従来の熱による硬化が可能な(熱硬化性)タイプのバインダが可能である。これは、便利で経済的であるという利点を持つ。したがってバインダは、フェノールホルムアルデヒド樹脂または尿素ホルムアルデヒド樹脂、特にフェノール尿素ホルムアルデヒド(PUF)樹脂であることが好ましい。
バインダとして、WO2004/007615に開示されているように、少なくとも1つのアルカノールアミンを少なくとも1つの無水カルボン酸と反応させ、場合によりこの反応生成物を塩基で処理することによって得られるバインダ成分(A)と、少なくとも1つの炭水化物を含むバインダ成分(B)を含む無ホルムアルデヒド水性バインダ組成物が可能である。このタイプのバインダは親水性である。
WO97/07664には、バインダとしてフラン樹脂を使用することから親水性特性が得られる親水性基板が開示されている。このタイプのバインダを本発明で使用することができる。
WO07129202には、硬化可能な親水性の水性組成物が開示されており、前記硬化可能な水性組成物は、以下の成分、すなわち
(a)ヒドロキシ含有ポリマー、
(b)ポリ酸、その塩、および無水物からなるグループから選択される少なくとも1つである多機能性架橋剤、および
(c)親水性改変剤
を組み合わせること(ただし(a):(b)の比は95:5~約35:65である)を含むプロセスで形成される。
親水性改変剤として、糖アルコール、単糖、二糖、またはオリゴ糖が可能である。与えられている例に含まれるのは、グリセロール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、グルコースシロップ、およびフルクトースシロップである。このタイプのバインダを本発明で使用することができる。
バインダとして、WO2017/114724に記載されているものが可能であり、その中の硬化前のバインダ組成物は、以下の成分、すなわち
- 下記の式の化合物とその任意の塩:
Figure 2023508528000002
(ただしR1は、H、アルキル、モノヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、アルキレン、アルコキシ、アミンに対応する)
- 下記の式の化合物とその任意の塩:
Figure 2023508528000003
(ただしR2は、H、アルキル、モノヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、アルキレン、アルコキシ、アミンに対応する)
から選択される1つ以上の化合物の形態の成分(i);
アンモニア、アミン、またはその任意の塩から選択される1つ以上の化合物の形態の成分(ii);
1つ以上の炭水化物の形態の成分(iii)を含む。
バインダ組成物としてWO2017/114723に記載されているようなものが可能であり、硬化前のそのバインダ組成物は、以下の成分、すなわち
- 1つ以上の炭水化物の形態の成分(i);
- スルファミン酸、スルファミン酸の誘導体、またはその任意の塩から選択される1つ以上の化合物の形態の成分(ii)を含む。
バインダ組成物として、硬化前に少なくとも親水コロイドに関するを含む組成物が可能である。その少なくとも1つの親水コロイドの選択は、ゼラチン、ペクチン、デンプン、アルギン酸塩、寒天、カラギーナン、ジェランガム、グアーガム、アラビアガム、イナゴマメガム、キサンタンガム、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースなど)、アラビノキシラン、セルロース、カードラン、β-グルカンからなるグループからなされることが好ましい。
成長基板製品は場合により湿潤剤を含むことができる。これは、成長基板製品が吸収できる水の量を増やす。湿潤剤を疎水性バインダと組み合わせて使用すると親水性成長基板製品になる。したがってバインダが疎水性であるとき、成長基板製品は湿潤剤を含むことが好ましい。
バインダは親水性であることが可能である。親水性バインダは、疎水性バインダほど多くの湿潤剤を使用する必要がない。しかし本発明で湿潤剤を使用し、疎水性バインダと組み合わせたときのその作用と同様に親水性バインダの親水性を増加させることができる。これは、湿潤剤が存在しない場合と比べてMMVF基板がより多い体積の水を吸収することを意味する。
湿潤剤は、カチオン性、アニオン性、または非イオン性が可能である。
成長基板製品は非イオン性湿潤剤(Rewopal(登録商標)など)を含むことができる。
成長基板製品は好ましくはイオン性界面活性剤を含み、より好ましくはアルキルエーテル硫酸塩界面活性湿潤剤を含む。湿潤剤として、アルキルエーテル硫酸アルカリ金属、またはアルキルエーテル硫酸アンモニウムが可能である。湿潤剤はアルキルエーテル硫酸ナトリウムであることが好ましい。市販の1つのアルキルエーテル硫酸塩界面活性湿潤剤はTexapon(登録商標)である。湿潤剤として、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩アニオン性界面活性剤も可能である。これらの好ましい湿潤剤は、有利な効果、特にバインダ系の親水性の改善をもたらすことが見いだされている。
いくつかの非イオン性湿潤剤は時間が経つとMMVF基板から洗い流される可能性がある。したがってイオン性湿潤剤、特にアニオン性湿潤剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩またはTexapon(登録商標)など)を用いることが好ましい。これらはMMVF基板から同程度に洗い流されることはない。
好ましいのは成長基板製品が0.01~1重量%の湿潤剤を、好ましくは0.05~0.5重量%の湿潤剤を、より好ましくは0.1~0.3重量%の湿潤剤を含むことである。
MMVF基板のサンプルの親水性は、サンプルの沈降時間を求めることによって測定できる。100×100×65mmのサイズを持つMMVF基板のサンプルが、沈降時間を求めるのに必要とされる。最小サイズが200×200×200mmの容器に水を満たす。沈降時間は、サンプルが最初に水の表面に接触してからその試験試料が完全に沈むまでの時間である。サンプルを水と接触させるとき、100×100mmの断面が最初に水に接触するようにする。次に、サンプルは、完全に沈むためにはちょうど65mmを超える距離を沈む必要がある。サンプルが速く沈むほど、サンプルはより親水性である。MMVF基板は、沈降時間が120秒未満である場合に親水性であると見なされる。沈降時間は60秒未満であることが好ましい。実際には、MMVF基板は数秒(10秒未満など)の沈降時間を持つ可能性がある。
成長基板製品は3~300 cm3の範囲の体積を持つことが好ましい。
成長基板製品は、プラグとして一般に知られるタイプの製品に一般的なサイズを持つことができる。成長基板製品は立方体であることが好ましい。成長基板製品は、30~50mmの高さ、30~50mmの幅、および25~45mmの深さを持つことが好ましい。
あるいは成長基板として、われわれの公開WO2010/003677に最初のコヒーレントなMMVF成長基板として記載されているタイプのプラグが可能である。この場合、成長基板製品の体積は10~40cm3の範囲であることが最も好ましい。
別の一実施形態では、成長基板製品は4cm×4cm×4cmのサイズを持つ立方体であることが好ましい。この製品は、側面の周囲だけを覆う液体非透過性のプラスチック製カバーを持つこと、すなわち底面と頂面が覆われていないことが好ましい。
代わりの一実施形態では、成長基板製品は円筒形であることが好ましい。それは、50mmの長さと直径または46mm、または40mmの長さと36mmの直径、または27mmの長さと22mmの直径を持つことが好ましい。
本発明では、「高さ」という用語は、基板を使用するときの底面から頂面までの距離を意味する。頂面は、製品を使用が想定される位置にしたときに上方を向いている面であり、底面は、製品を使用が想定される位置にしたときに下方を向いている(そして製品が載る)面である。「長さ」という用語は、基板を使用するときの2つの側面間の最長の距離、すなわち一端から他端までの距離を意味する。「幅」という用語は、長さに垂直な2つの側面間の距離である。これらの用語は本分野における通常の意味を持つ。
本発明の方法では、成長基板製品は60kg/m3~70kg/m3の範囲の密度を持つ。発明者らは、驚くべきことに、密度がこの範囲であるとき、カッティングの根の成長が改善され、次の成長段階に進むことのできるカッティングの数が改善されることを発見した。それに加え、本発明の発明者らは、成長基板製品の密度がこの範囲にあるとき、大麻カッティングを基板の中に直接挿入できることを発見した。すると種子穴を設ける必要がなくなるため、下記のように顕著な利点につながる。
好ましい一実施形態では、成長基板の密度は65kg/m3である。
本発明の方法では、大麻カッティングを成長基板の中に、成長基板が種子穴を持たない位置で挿入する。これは、カッティングが種子穴の中に挿入されないことを意味する。成長基板がカッティングを挿入するのとは異なる位置に種子穴を持つことは排除されない。しかし成長基板は種子穴を持たないことが好ましい。
種子穴という用語は本分野で通常の意味を持ち、植物用の穴または窪みと呼ぶこともできる。種子穴は成長基板の頂面にある凹みであり、その中に種子またはカッティングを配置する。成長基板が種子穴のない位置に挿入されるとは、それが、成長基板上のいかなる顕著な凹みもない位置、すなわち3mm超、より好ましくは1mm超、最も好ましくは0.5mm超の深さのいかなる凹みもない位置に挿入されることを意味する。
発明者は驚くべきことに、大麻カッティングを成長基板上で種子穴のない位置に挿入するとき、根の成長が改善され、次の成長段階に進むことのできるカッティングの数が改善されることを発見した。本発明の成長基板の密度が理由で、カッティングは成長基板に直接挿入することが可能であり、根を最適に発達させることができる。理論に囚われることなく、カッティングは成長基板の中により適したやり方で保持され、したがってより適した成長条件が可能になると考えられる。
本発明の方法は、大麻カッティングを成長基板の中に挿入する工程を含む。MMVF成長基板は多孔性であり、60~70kg/m3の密度であるため、大麻カッティングは、そのカッティングの切断端を頂面に押し込むだけで挿入することができる。これは、手作業によって、または自動装置を使用することによって実現できる。カッティングは成長基板の頂面に5~10mm挿入することが好ましい。カッティングは頂面の中心に挿入することが好ましい。こうすることで、カッティングが根をあらゆる方向に最大の長さで発達できるようにすることを保証する。したがってカッティングは成長基板の体積を最大限に利用する。
好ましい一実施形態では、カッティングを成長基板製品の中に挿入する前に、カッティングの切断端を発根ホルモン(例えばインドール-3-酪酸根ホルモン)に浸す。
本発明の方法では、成長基板の中の大麻カッティングに1.6~2.4mS/cmの電気伝導度(EC)値を持つ養液を供給する。養液は、1.8~2.2mS/cm、最も好ましくは2.0mS/cmのEC値を持つことが好ましい。
EC値はISO78881985に従って測定することができる。EC(電気伝導度)は、固定された距離だけ離された2つ以上の電極の間の溶液(基板の中の栄養素と水)の抵抗を求めることによって測定される。ECはWO2014122284に記載されている含水計を用いて測定することができる。
養液はebb floodシステムを利用して供給されることが好ましい。これは当業者に周知である。例えば成長基板をベンチまたは床の上に置き、養液を流し、5~15分間そのままにした後、排出させる。ebb floodシステムは、あらかじめ計算した時間にわたって培養テーブルを一時的に「満たされすぎた」(すなわち過剰な)養液の状態にした後、その養液をリザーバに戻すことによって作動する。還流される養液は検査され、再び栄養素を豊富にされた後、定期的にポンピングして培養テーブルに戻すことによって再利用される。
成長基板製品は、最初に、水と、1.6~2.4mS/cmのEC値を持つ養液が飽和した状態にされることが好ましい。飽和したとは、成長基板製品の含水値が100%に近いこと、すなわち95~100%であること、すなわち成長基板が可能な最大量の水を保持していることを意味する。これは、成長基板を養液浴の中に浸すことによって実現でき、その中の養液は1.6~2.4mS/cmのEC値を持つ。成長基板は5~15分間浸すことが好ましい。あるいは成長基板は、ebb floodベンチまたは床を使用して飽和させることができる。
成長基板製品はカッティングを挿入する前または後に飽和させることができる。カッティングを挿入する前に成長基板製品を飽和させることが好ましい。
初期飽和の後、成長基板に灌漑して含水値を30~80%(基板を飽和させるのに必要な水の総量に対する割合として表わされる)の範囲に維持することが好ましい。
カッティングに水を与えるのをできるだけ長時間待ち、根が栄養素と水を求めて発達するようにすることが望ましい。必要な量の酸素を確実に実現するには基板内の含水値を100%に近く維持することは望ましくない。そうすることで確実に、根が水浸しになることや、根腐れが進行して植物の壊死に至ることがなくなる。
1.6~2.4mS/cmの電気伝導度(EC)値を持つ養液を、大麻カッティングを含む成長基板製品に2~12日ごとに供給することが好ましい。冬には、12日目まで待った後、増殖期間の終わりに1回水を与えることが可能である。夏に温度が高くて太陽の照射が多いときには、水を2回以上与えることが好ましい。
本発明の方法の間、基板に3回、または2回、または1回灌漑することが好ましい。
成長基板はさらなる添加剤(制御放出される肥料)を含むことができる。
本発明は、大麻カッティングを増殖させるためのコヒーレントな成長基板の利用として、- 前記大麻カッティングを前記成長基板の中に、その成長基板が種子穴を持たない位置で挿入する工程;
- 1.6~2.4mS/cmの電気伝導度(EC)値を持つ養液を前記成長基板の中の前記大麻カッティングに提供する工程を含み;
前記コヒーレントな成長基板が、硬化したバインダ組成物に接合された人造ガラス質繊維(MMVF)を含み;前記成長基板が60kg/m3~70kg/m3の範囲の密度を持つ利用も開示している。
本発明のこの実施形態は、本発明の方法に関して上に記載した追加の特徴のいずれかを持つことができる。
実験1
比較実験を設計し、成長基板が種子穴を持たない位置に大麻カッティングを挿入する効果を明確にした。
65kg/m3の密度を持つMMVF成長基板を種子/植物穴ありとなしで比較した。
大麻の2つの株、すなわちPowerplantとAfghaniを調べた。
最初に、それぞれの株について同じマザープラントからカッティングを取得した。次にそれらカッティングを成長基板の中に挿入した。種子/植物穴を持つ成長基板については、カッティングをその穴の中に挿入した。種子/植物穴のない成長基板については、カッティングを基板の頂面に挿入した。
カッティングに、EC値が2.4mS/cmでpHが5.5の供給液を供給した。
成長基板を13日後に解析し、以下の3つの選択肢に従って分類した:
□根が見えない=根なし
□1~3本の根が見える=根端
□3本以上の根=準備完了
Figure 2023508528000004
13日後、大麻の両方の株について、次の段階の準備が完了していたカッティングの割合は、種子/植物穴のない基板で有意に大きかったことがわかる。同様に、いかなる根も発達させなかったカッティングの数は、種子/植物穴を持つ成長基板で有意に多かった。したがってデータは、種子/植物穴を持たないことの効果が、次の成長段階に進むことのできる根の成長とカッティングの数の改善であることを示す。
実験2
実験を1つ設計し、60~70kg/m3の範囲の密度を持つことの効果を調べた。
65kg/m3の密度を持つMMVF成長基板(「GC65」)を75kg/m3の密度を持つMMVF成長基板(「GC75」)と比較した。
結果が図1A~1Dに示されている。図1Aと1Bは10日後の結果を示しており、図1Cと1Dは14日後の結果を示している。成長基板を10日後と14日後に以下の項目に従って分類した:
□根が見えない=根なし
□1~3本の根が見える=根端
□3本以上の根=根系
65kg/m3の密度を持つ本発明の成長基板は、10日後に根系と根端を持つカッティングの割合がより多かった。同じことが、14日後に当てはまった。
したがってデータは、60~70kg/m3の範囲の密度の効果が、次の成長段階に進むことのできる根の成長とカッティングの数の改善であることを示している。
実験3
1つの実験を実施して異なる養液の効果を調べた。3つの溶液、すなわちEC=1.5;EC=2.0;EC=2.5mS/cmを試験した。
カッティングを65kg/m3の密度を持つ成長基板の中に挿入した。カッティングを最初に根ホルモン(Clonex(登録商標)IBAゲル0.3%)に浸した後、基板の中に挿入した。それらの基板を2、4、6、8、10、および12日目に異なる溶液(EC1.5、2.0、2.5mS/cm)で灌漑し、人工光を1日に18時間供給した。
それらの基板を10日後、12日後、および14日後に解析し、結果を図2~4に示してある。図2A~Cは、10日後の結果を示す;図3A~Cは12日後の結果を示す;図4A~Cは14日後の結果を示す。
成長基板を10日後、12日後、および14日後に以下のようにして分類した:
□根が見えない=根なし
□1~3本の根が見える=根端
□3本以上の根=根系
図2~4の結果から、EC=2.0mS/cmの養液を供給した成長基板は各段階の後に根系と根端の割合が最大であったことを見て取れる。
したがってデータは、EC値1.6~2.4mS/cmの効果が、次の成長段階へと進むことのできる根の発達とカッティングの数の改善であることを示している。

Claims (16)

  1. 大麻カッティングを増殖させる方法であって、
    硬化したバインダ組成物に接合された人造ガラス質繊維(MMVF)を含むコヒーレントな成長基板を用意する工程、ここで前記成長基板は60kg/m3~70kg/m3の範囲の密度を有する;
    前記大麻カッティングを前記成長基板の中に、成長基板が種子穴を有さない位置で挿入する工程;
    1.6~2.4mS/cmの電気伝導度(EC)値を有する養液を前記成長基板の中の前記大麻カッティングに提供する工程、を含む方法。
  2. 前記バインダ組成物が、
    a)糖成分と、
    b)ポリカルボン酸成分とアルカノールアミン成分の反応生成物を含み、
    硬化前の前記バインダ組成物が、バインダ成分の全重量(乾燥物質)を基準にして前記糖成分を少なくとも42重量%含有する、請求項1に記載の方法。
  3. 2~3週間、最も好ましくは2週間未満継続する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記成長基板の中に挿入される前記大麻カッティングが、マザープラントから切断されるとき10~14日齢である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記成長基板の中に挿入される前記大麻カッティングが、8~15cm、好ましくは10~12cmの長さを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記成長基板の中に挿入される前記大麻カッティングが、3~8mm、好ましくは5mmの茎直径を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記大麻カッティングを前記成長基板製品の中に、そのカッティングが頂面の下5~10mmに位置するように挿入する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記成長基板が立方体の形である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記成長基板が65kg/m3の密度を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 1.6~2.4mS/cmの電気伝導度(EC)値を有する前記養液を2回提供する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記成長基板を1.6~2.4mS/cmの電気伝導度(EC)値を有する養液で飽和させる追加工程を含み、好ましくはこの追加工程が、前記大麻カッティングを前記成長基板の中に挿入する前に起こる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記成長基板製品を飽和させる前記追加工程の後、その成長基板製品の含水量を30~80%に維持する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記成長基板製品が、アルキルエーテル硫酸塩界面活性アニオン性界面活性湿潤剤を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記成長基板が種子穴を含まない、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 大麻カッティングを増殖させるためのコヒーレントな成長基板の利用であって、
    前記大麻カッティングを前記成長基板の中に、その成長基板が種子穴を持たない位置で挿入する工程;
    1.6~2.4mS/cmの電気伝導度(EC)値を有する養液を前記成長基板の中の前記大麻カッティングに提供する工程を含み;
    前記コヒーレントな成長基板が、硬化したバインダ組成物に接合された人造ガラス質繊維(MMVF)を含み;前記成長基板が60kg/m3~70kg/m3の範囲の密度を有する、利用。
  16. 請求項2~14の中の追加の特徴のいずれかを含有する、請求項15に記載の利用。
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