JP2023507584A - 統合失調症処置方法 - Google Patents

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Abstract

本開示は、ルマテペロン42mg(ルマテペロントシル酸塩60mg)を含む医薬カプセル剤の投与を含む、成人における統合失調症の処置方法に関する。

Description

関連出願の相互参照
本願は、2019年12月19日に出願された米国仮出願第62/950,828号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)の優先権および利益を主張する国際出願である。
技術分野
本開示は、ルマテペロン42mg(ルマテペロントシル酸塩60mg)を含む医薬カプセル剤の投与を含む、成人における統合失調症の処置に関する。
化学名が4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オンである置換複素環縮合γ-カルボリンルマテペロンは、セロトニン受容体(5-HT2A)、ドパミン受容体(D1および/またはD2)、およびセロトニントランスポーター(SERT)リガンドであることが知られている。種々の中枢神経系障害の処置に有用であることが開示されている。それは、安定な結晶性モノトシル酸塩、ルマテペロントシル酸塩[4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オン・4-メチルベンゼンスルホン酸塩]として存在する。
ルマテペロンは、セロトニン-2A(5-HT2A)受容体のアンタゴニストとして、および/または重要な細胞内リンタンパク質のレベルでドパミン受容体シグナル伝達の調節剤として、開示されている。この化合物は、主に、統合失調症の陽性および陰性症状の処置に有用であることが知られている。この化合物は、ドパミンD2受容体において、二重の特性を有することが示されており、D2受容体のシナプス後アンタゴニストおよびシナプス前部分アゴニストの両方として作用する。また、中脳辺縁系に特異的にグルタミン酸作動性NMDA NR2BまたはGluN2B受容体のリン酸化を刺激する。抗精神病薬の効力を媒介すると考えられている脳領域におけるこの局所選択性は、セロトニン作動性、グルタミン酸作動性およびドパミン作動性相互作用とともに、統合失調症に関連する陽性症状、陰性症状、情動症状および認知症状に対する抗精神病薬効力をもたらし得ると考えられている。該化合物はまた、統合失調感情障害および併存性(co-morbid)うつ病の処置のための抗うつ活性をもたらす、セロトニン再取り込み阻害も示す。ルマテペロンは、低用量では5-HT2A受容体を選択的に標的とするが、一方、高用量ではD2受容体と徐々に相互作用するという、差次的用量依存的効果を示す。その結果、低用量では、睡眠、攻撃性および激越の処置に有効である。高用量では、急性増悪のおよび残遺型の統合失調症、双極性障害および気分障害を処置することができる。
ルマテペロンおよび関連化合物は、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5および特許文献6には、不安、うつ病、睡眠障害および統合失調症などの5-HT2A受容体調節に関連する障害の処置に有用な新規化合物として開示されている。特許文献7(出典明示により本明細書の一部とする)には、精神病とうつ病性障害の組合せ、ならびに精神病患者における睡眠障害、うつ病性障害および/または気分障害の処置のためのルマテペロンの使用が開示されている。特許文献8(出典明示により本明細書の一部とする)には、ルマテペロンのトルエンスルホン酸付加塩結晶の製造方法が開示されている。特許文献9には、ルマテペロンが現存の抗うつ薬と比較して作用発現が迅速なため、急性うつ病および急性不安の処置に特に有効であり得ることが開示されている。これは、従来のモノアミンシグナル伝達系とは別の神経伝達系を介したシグナル伝達によるものと考えられている。ルマテペロンは、mTOR(例えば、mTORC1)シグナル伝達経路の活性化と相まって、NMDA電流およびAMPA電流のドパミンD1受容体依存性増加をもたらす。
米国特許第6,548,493号 米国特許第7,238,690号 米国特許第6,552,017号 米国特許第6,713,471号 米国再発行特許発明第39680号 米国再発行特許発明第39679号 米国特許第8,598,119号 米国特許第8,648,077号 国際公開第2019/178484号
本開示は、成人における統合失調症の処置のための方法であって、該処置を必要とする患者にルマテペロン42mg(ルマテペロントシル酸塩60mg)を含む医薬カプセル剤を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、カプセル剤は食物とともに投与される。いくつかの実施態様において、患者は、中等度もしくは重度肝障害にかかっていない患者であるか、またはCYP3A4誘導剤もしくはCYP3A4阻害剤を付随して摂取していない患者であるか、または65歳以上でない患者であるか、または認知症関連精神病を有さない患者である。いくつかの実施態様において、患者は、認知症関連精神病、発作、起立性高血圧または失神、脳血管障害(例えば、脳卒中)、心血管障害(例えば、心筋梗塞または心不全)、遅発性ジスキネジア、高血糖症または真性糖尿病、脂質異常症、および体重維持困難のうち1つ以上の既往歴を有している。
ルマテペロン薬物動態に対する内在因子の影響。このグラフは、肝障害または腎障害を有する患者におけるCmax(最大血漿濃度)およびAUCt(血漿濃度対時間曲線下面積)の変化(倍率変化および90%信頼区間)を示す。
他の薬物がルマテペロン薬物動態に与える影響。このグラフは、イトラコナゾール、ジルチアゼムまたはリファンピンによる併用処置を受けている患者におけるCmax(最大血漿濃度)およびAUCt(血漿濃度対時間曲線下面積)の変化(倍率変化および90%信頼区間)を示す。
試験2における統合失調症患者のPANSS総スコアのベースラインからの経時変化(週)。
詳細な説明
ルマテペロン(ルマテペロントシル酸塩として投与される)は、成人の統合失調症の処置に適応される非定型抗精神病薬である。ルマテペロンは、現在、米国ではルマテペロントシル酸塩形態(ルマテペロンモノトシル酸塩)のみが規制当局の承認を得ている。この薬物の推奨用量は、ルマテペロントシル酸塩60mgに相当する、1日1回経口投与されるルマテペロン42mgである。ルマテペロンは、カプセルとして、好ましくは食物とともに、経口投与される。他の非定型抗精神病薬とは異なり、用量滴定は必要ない。
したがって、本開示は、成人患者において統合失調症を処置する方法であって、該処置を必要とする該患者に、ルマテペロン(例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態)42mg、またはルマテペロントシル酸塩60mgの経口一日量をカプセルの剤形で投与することを含む、方法(方法1)を提供する。方法1のさらなる実施態様において、本開示は、以下のものを提供する:
1.1. ルマテペロン42mg(ルマテペロントシル酸塩60mg)の経口一日量が1カプセルとして提供され、該経口一日量が食物とともに摂取されてもよい、方法1。
1.2. カプセルが青色のキャップと不透明な白色の本体を有している、方法1.1。
1.3. カプセルがブリスターパックまたは箱(例えば、30個入りの箱)で提供される、方法1.1または1.2。
1.4. カプセルが、さらに、クロスカルメロースナトリウム、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、タルク、および着色剤(例えば、二酸化チタン、FD&C Blue #1、および/またはFD&C Red #3)を含む、方法1.1~1.3のいずれか。
1.5. カプセルが、ルマテペロントシル酸塩、クロスカルメロースナトリウム、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、タルク、および着色剤(例えば、二酸化チタン、FD&C Blue #1、および/またはFD&C Red #3)で構成されている、方法1.4。
1.6. 患者が、65歳未満であり、および/または、認知症関連精神病にかかっていないかもしくは認知症関連精神病の既往歴を有していない、方法1、または1.1~1.5のいずれか。
1.7. 患者が、少なくとも65歳であり、および/または、認知症関連精神病にかかっているかもしくは認知症関連精神病の既往歴を有している、方法1、または1.1~1.5のいずれか。
1.8. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、認知症関連精神病の発症または発症リスクのために該処置が中止された、方法1.7。
1.9. 患者が、CYP3A4誘導剤(例えば、カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピン、セントジョーンズワート、ボセンタン、エファビレンツ、エトラビリン、モダフィニル、ナフシリン、アプレピタント、アルモダフィニル、ピオグリタゾン、プレドニゾン)、中程度もしくは強力なCYP3A4阻害剤(例えば、中程度:アンプレナビル、シプロフロキサシン、シクロスポリン、ジルチアゼム、エリスロマイシン、フルコナゾール、フルボキサミン、ベラパミル;強力:クラリスロマイシン、グレープフルーツジュース、イトラコナゾール、ボリコナゾール、ネファゾドン、リトナビル、ネルフィナビル)、および/またはUGT阻害剤(例えば、バルプロ酸、プロベネシド)との併用処置を受けていない、方法1、または1.1~1.8のいずれか。
1.10. 患者が、CYP3A4誘導剤、中程度または強力なCYP3A4阻害剤、および/またはUGT阻害剤との併用処置を受けている、方法1、または1.1~1.8のいずれか。
1.11. 患者が、以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、CYP3A4誘導剤、中程度もしくは強力なCYP3A4阻害剤、および/またはUGT阻害剤との併用処置を受ける必要性のために、またはCYP3A4誘導剤、中程度もしくは強力なCYP3A4阻害剤、および/またはUGT阻害剤との併用処置に起因する副作用のために、該処置が中止された、方法1.10。
1.12. 患者が中等度または重度肝障害(例えば、チャイルド・ピュー分類BまたはC)にかかっていないか、または患者が軽度肝障害(例えば、チャイルド・ピュー分類A)にかかっている、方法1、または1.1~1.11のいずれか。
1.13. 患者が中等度または重度肝障害(例えば、チャイルド・ピュー分類BまたはC)にかかっている、方法1、または1.1~1.11のいずれか。
1.14. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、中等度または重度肝障害の発症または発症のリスクのために該処置が中止された、方法1.13。
1.15. 患者が遅発性ジスキネジアにかかっていないかまたはその発症リスクを有していない、方法1、または1.1~1.14のいずれか。
1.16. 患者が遅発性ジスキネジアにかかっているかまたはその発症リスクを有している、方法1、または1.1~1.14のいずれか。
1.17. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、遅発性ジスキネジアの発症または発症リスクのために該処置が中止された、方法1.16。
1.18. 患者が高血糖症または真性糖尿病にかかっていないかまたはその発症リスクを有していない(例えば、患者が高血糖症または真性糖尿病の既往歴を有していない)、方法1、または1.1~1.17のいずれか。
1.19. 患者が高血糖症または真性糖尿病にかかっているかまたはその発症リスクを有している(例えば、患者が高血糖症または真性糖尿病の既往歴を有している)、方法1、または1.1~1.17のいずれか。
1.20. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、高血糖症または真性糖尿病の発症または発症リスクのために該処置が中止された、方法1.19。
1.21. 患者が脂質異常症にかかっていないかまたはその発症リスクを有していない(例えば、患者が脂質異常症の既往歴を有していない)、方法1、または1.1~1.20のいずれか。
1.22. 患者が脂質異常症にかかっているかまたはその発症リスクを有している(例えば、患者が脂質異常症の既往歴を有している)、方法1、または1.1~1.20のいずれか。
1.23. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、脂質異常症の発症または発症リスクのために該処置が中止された、方法1.22。
1.24. 患者が体重増加していないかまたはその発症リスクを有していない(例えば、患者が体重管理困難の既往歴を有していない)、方法1、または1.1~1.23のいずれか。
1.25. 患者が体重増加しているかまたはその発症リスクを有している(例えば、患者が体重管理困難の既往歴を有している)、方法1、または1.1~1.23のいずれか。
1.26. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、体重増加の発症または発症リスクのために該処置が中止された、方法1.25。
1.27. 患者が(例えば、WBCおよびANCを含むCBC試験によって決定される)白血球減少症、好中球減少症および/または無顆粒球症にかかっていないかまたはその発症リスクを有していない、方法1、または1.1~1.26のいずれか。
1.28. 患者が(例えば、WBCおよびANCを含むCBC試験によって決定される)白血球減少症、好中球減少症および/または無顆粒球症にかかっているかまたはその発症リスクを有している、方法1、または1.1~1.26のいずれか。
1.29. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、(例えば、WBCおよびANCを含むCBC試験によって決定される)白血球減少症、好中球減少症および/または無顆粒球症の発症または発症リスクのために該処置が中止された、方法1.28。
1.30. 患者が起立性高血圧または失神を起こしていないかまたはその発症リスクを有していない(例えば、患者が起立性高血圧または失神の既往歴を有していない)、方法1、または1.1~1.29のいずれか。
1.31. 患者が起立性高血圧または失神を起こしているかまたはその発症リスクを有している(例えば、患者が起立性高血圧または失神の既往歴を有している)、方法1、または1.1~1.29のいずれか。
1.32. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、起立性高血圧または失神の発症または発症リスクのために該処置が中止された、方法1.31。
1.33. 患者が発作を起こしていないかまたはその発症リスクを有していない(例えば、患者が発作または発作閾値低下の既往歴を有していない)、方法1、または1.1~1.32のいずれか。
1.34. 患者が発作を起こしているかまたはその発症リスクを有している(例えば、患者が発作または発作閾値低下の既往歴を有している)、方法1、または1.1~1.32のいずれか。
1.35. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、発作または発作閾値低下の発症または発症リスクのために該処置が中止された、方法1.34。
1.36. 患者が認知機能障害または運動機能障害にかかっていないかまたはその発症リスクを有していない(例えば、患者が認知機能障害または運動機能障害の既往歴を有していない)、方法1、または1.1~1.35のいずれか。
1.37. 患者が認知機能障害または運動機能障害にかかっているかまたはその発症リスクを有している(例えば、患者が認知機能障害または運動機能障害の既往歴を有している)、方法1、または1.1~1.35のいずれか。
1.38. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、認知機能障害または運動機能障害の発症または発症リスクのために該処置が中止された、方法1.37。
1.39. 患者が体温調節不全にかかっていないかまたはその発症リスクを有していない(例えば、患者が体温調節不全の既往歴を有していないか、または患者が、付随して激しい運動をしていないか、または極度の暑さまたは脱水状態にさらされていないか、または付随して抗コリン薬を摂取していない)、方法1、または1.1~1.38のいずれか。
1.40. 患者が体温調節不全にかかっているかまたはその発症リスクを有している(例えば、患者が体温調節不全の既往歴を有しているか、または患者が、付随して激しい運動をしているか、または極度の暑さまたは脱水状態にさらされているか、または付随して抗コリン薬を摂取している)、方法1、または1.1~1.38のいずれか。
1.41. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、体温調節不全の発症または発症リスクのために該処置が中止された、方法1.40。
1.42. 患者が別の非定型抗精神病薬による処置からルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)による処置へ切り替えようとしており、該切り替えが用量滴定を含まない、方法1、または1.1~1.41のいずれか。
1.43. 患者が以前にリスペリドン、アリピプラゾール、およびオランザピン、および/またはクエチアピンまたはジプラシドンなどの非定型抗精神病薬で処置されたことがある、いずれかの上記方法。
1.44. リスペリドン、アリピプラゾール、およびオランザピン、および/またはクエチアピンまたはジプラシドンなどの非定型抗精神病薬による患者の処置が禁忌である、いずれかの上記方法。
1.45. 該方法が患者に遅発性ジスキネジアの発症を生じさせない、いずれかの上記方法。
1.46. 該方法が患者に(例えば、空腹時の血漿中のグルコース値、インスリン値および/またはヘモグロビンA1c値をモニタリングすることによって示される)高血糖症または真性糖尿病の発症を生じさせない、いずれかの上記方法。
1.47. 該方法が患者に(例えば、コレステロール値、トリグリセリド値、VLDL値、LDL値およびHDL値を含む血漿脂質パネルのモニタリングによって示される)脂質異常症の発症を生じさせない、いずれかの上記方法。
1.48. 該方法が患者に(例えば、患者の処置前体重と比較して、および/または該患者と同じ身長の人の正常なボディ・マス・インデックスを基準として)体重増加の発症を生じさせない、いずれかの上記方法。
1.49. 該方法が患者に起立性高血圧または失神の発症を生じさせない、いずれかの上記方法。
1.50. 該方法が、さらに、ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)による処置の開始前に、脳血管疾患、心血管疾患、神経弛緩薬性悪性症候群、遅発性ジスキネジア、高血糖症、真性糖尿病、脂質異常症、体重増加、および/または起立性バイタルサインの徴候について患者を評価する工程を含む、いずれかの上記方法。
1.51. 該方法が、さらに、ルマテペロントシル酸塩による処置中に定期的に(例えば、1か月毎、2か月毎、3か月毎、4か月毎、6か月毎、9か月毎、12か月毎、18か月毎または24か月毎に)、脳血管疾患、心血管疾患、神経弛緩薬性悪性症候群、遅発性ジスキネジア、高血糖症、真性糖尿病、脂質異常症、体重増加、および/または起立性バイタルサインの徴候について患者を評価する工程を含む、いずれかの上記方法。
1.52. 該方法が、改善された睡眠(例えば、傾眠および/または鎮静の増加)を提供する、いずれかの上記方法。
1.53. 該方法が、処置開始から28日以内に、PANSS総スコアの有意な減少、例えば、PANSS総スコアの少なくとも4ポイントの減少、または少なくとも5ポイントの減少、または少なくとも7ポイントの減少、または少なくとも9ポイントの減少、または少なくとも10ポイントの減少、または少なくとも12ポイントの減少、または少なくとも14ポイントの減少を提供する、いずれかの上記方法。
1.54. 該方法が、処置開始から8日以内に、PANSS総スコアの有意な減少、例えば、PANSS総スコアの少なくとも4ポイントの減少、または少なくとも5ポイントの減少、または少なくとも6ポイントの減少、または少なくとも7ポイントの減少、または少なくとも8ポイントの減少を提供する、いずれかの上記方法。
1.55. 患者が、DSM-5基準に従って、またはDSM-IV-TR基準に従って、統合失調症と診断される、いずれかの上記方法。
1.56. 患者が、処置開始時に60~100のベースラインPANSS総スコア、例えば、80~90、または85~95、または88~90のPANSS総スコアを有する、いずれかの上記方法。
ルマテペロンは、セロトニン5-HT2A受容体に対して高い結合親和性(Ki=0.54nM)を有し、ドパミンD2受容体に対して中程度の結合親和性(Ki=32nM)を有する。ルマテペロンは、セロトニントランスポーターに対して中程度の結合親和性(Ki=33nM)を有する。ルマテペロンはまた、ドパミンD1受容体(Ki=41nM)およびドパミンD4受容体に対して中程度の結合親和性を有し、アドレナリンα1A受容体およびアドレナリンα1B受容体(Kiは<100nMで予測される)に対しても中程度の結合親和性を有するが、ムスカリン受容体およびヒスタミン作動性受容体に対しては低い結合親和性(100nMで50%未満の阻害)を有する。
したがって、ルマテペロンは、定型抗精神病薬であれ非定型抗精神病薬であれ、他の如何なる既存の抗精神病薬とも一致しない非常に独特な受容体結合プロファイルを有する。それにもかかわらず、ルマテペロンは、現在、非定型抗精神病薬クラスの一員として分類されている。
統合失調症の処置におけるルマテペロンの正確な作用機序は不明である。しかしながら、ルマテペロンの効力は、中枢性セロトニン5-HT2A受容体でのアンタゴニスト活性と中枢性ドパミンD2受容体でのシナプス後アンタゴニスト活性との組み合わせによって媒介され得る。
抗精神病薬で処置された認知症関連精神病の高齢患者は死亡リスクが高い。主に非定型抗精神病薬を服用している患者において、17のプラセボ対照試験(10週間のモーダル期間)の分析により、薬物処置患者の死亡リスクがプラセボ処置患者の1.6~1.7倍であることが明らかになった。典型的な10週間対照試験の間に、プラセボ処置患者の死亡率が約2.6%であったのに対して、薬物処置患者の死亡率は約4.5%であった。
死因は様々であったが、実際には、ほとんどの死は心血管性(例えば、心不全、突然死)または感染性(例えば、肺炎)のいずれかであると思われた。
認知症の高齢被験者におけるプラセボ対照試験において、リスペリドン、アリピプラゾールおよびオランザピンに無作為化された患者は致死性脳卒中を含む脳卒中および一過性脳虚血発作の発生率が高かった。
ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)は、高齢患者および認知症関連精神病患者において他の非定型抗精神病薬と同様のリスクを生じないと考えられる。それにもかかわらず、ルマテペロントシル酸塩は、現在、米国では、認知症関連精神病患者の処置には承認されていない。
潜在的に致死性の症状群である神経弛緩薬性悪性症候群(NMS)は、抗精神病薬の投与に関連して報告されている。NMSの臨床症状は、異常高熱、筋固縮、せん妄、および自律神経不安定である。さらなる徴候としては、クレアチニンホスホキナーゼの上昇、ミオグロビン尿(横紋筋融解)および急性腎不全を挙げることができる。患者にNMSが疑われる場合は、このような抗精神病薬は直ちに中止し、集中的な対症療法とモニタリングを提供する必要がある。
ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)は、他の非定型抗精神病薬と同様のNMSのリスクを生じないと考えられる。
潜在的に不可逆的で不随意なジスキネティック運動からなる症候群である遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬により処置された患者において発症し得る。リスクは、高齢者、特に高齢の女性で最も高いと思われるが、どの患者が該症候群を発症し易いかを予測することはできない。抗精神病薬製品によって遅発性ジスキネジアを引き起こす可能性に違いがあるかどうかは不明である。
遅発性ジスキネジアのリスクおよび不可逆的になる可能性は、処置の期間および累積投与量に伴って増加する。該症候群は、低用量であっても、比較的短い処置期間の後に発症することがある。また、処置の中止後に生じることもある。
遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬処置が中止された場合、部分的または完全に寛解し得る。しかしながら、抗精神病薬処置自体は、該症候群の徴候および症状を抑制(または、部分的に抑制)することができ、根底にあるプロセスを覆い隠す可能性がある。症状の抑制が遅発性ジスキネジアの長期経過に及ぼす影響は不明である。
したがって、抗精神病薬は、一般に、遅発性ジスキネジアのリスクを最も低下させる可能性が最も高い方法で処方される。慢性的な抗精神病薬処置は、一般に、1)抗精神病薬に反応することが知られている慢性疾患に罹患している患者、および2)有効で潜在的に害の少ない代替治療法が利用できないかまたは適切でない患者にのみ行われるべきである。慢性的な処置を必要とする患者では、満足のいく臨床反応をもたらす最低用量と最短処置期間を使用する。治療継続の必要性は、定期的に再評価されるべきである。
抗精神病薬処置中の患者に遅発性ジスキネジアの徴候および症状が現れた場合、薬物の中止を検討すべきである。しかしながら、患者によっては、該症候群が存在するにもかかわらず、抗精神病薬による治療が必要な場合がある。
抗精神病薬は、高血糖症、真性糖尿病、脂質異常症および体重増加を含む代謝変化を引き起こしている。このクラスの薬物はすべて何らかの代謝変化をもたらすことが示されているが、各薬物は独自の特定のリスクプロファイルを有している。
抗精神病薬で処置した患者において、場合によっては極度で、ケトアシドーシス、高浸透圧性昏睡または死亡に関連する、高血糖症が報告されている。ルマテペロントシル酸塩で処置した患者における高血糖症の報告がある。抗精神病薬の投与開始前または投与開始直後に空腹時血漿グルコースを評価し、長期処置中は定期的にモニターする必要がある。
成人の統合失調症患者の短期(4~6週間)のプラセボ対照試験からのプールデータでは、ルマテペロントシル酸塩で処置した患者において、ベースラインからの平均変化、および空腹時グルコース値が正常値からそれよりも高いレベルにシフトした患者の割合は、プラセボで処置した患者と同様であった。
安定統合失調症患者における最長1年間のルマテペロントシル酸塩の非対照非盲検試験において、空腹時グルコース値および空腹時インスリン値が正常値から高い値へシフトした患者の割合は、それぞれ8%および12%であった。ベースラインでヘモグロビンA1cが正常(<6.5%)であった患者の合計4.7%が、ベースライン後にレベル上昇(≧6.5%)を起こした。
抗精神病薬は、脂質の有害な変化を引き起こしている。抗精神病薬の投与開始前または投与開始直後、患者はベースライン時に空腹時脂質プロファイルを取得すべきであり、これは処置中にこれを定期的にモニターすべきである。
成人の統合失調症患者の短期(4~6週間)のプラセボ対照試験からのプールデータでは、ルマテペロントシル酸塩で処置した患者とプラセボで処置した患者において、ベースラインからの平均変化、および空腹時総コレステロールおよびトリグリセリドの高い値へシフトした患者の割合は同程度であった。
安定統合失調症患者における最長1年間のルマテペロントシル酸塩の非対照非盲検試験において、総コレステロール、トリグリセリドおよびLDLコレステロールが正常値から高い値へシフトした患者の割合は、それぞれ8%、5%および4%であった。
抗精神病薬の使用により体重増加が観察されている。患者は、ベースライン時およびその後頻繁に体重をモニターする必要がある。成人の統合失調症患者のプラセボ対照試験からのプールデータでは、ルマテペロントシル酸塩で処置した患者とプラセボで処置した患者において、ベースラインからの平均変化、およびベースラインから試験終了までに≧7%の体重増加を示した被験者の割合は同程度であった。
安定統合失調症患者における最長1年間のルマテペロントシル酸塩の非対照非盲検試験において、体重の平均変化は、175日目に約-2kg(SD 5.6)であり、350日目に約-3.2kg(SD 7.4)であった。
ルマテペロントシル酸塩を含む抗精神病薬による処置の間に、白血球減少および好中球減少症が報告されている。非定型抗精神病薬クラスにおける他の薬剤では、無顆粒球症(致死ケースを含む)が報告されている。
白血球減少症および好中球減少症の考えられるリスク因子としては、既存の低白血球数(WBC)または絶対好中球数(ANC)および薬物誘発性白血球減少症または好中球減少症の既往歴が挙げられる。既存の低WBCもしくはANCを有する患者または薬物誘発性白血球減少もしくは好中球減少症の既往歴のある患者では、治療の最初の数か月間、全血球計算(CBC)を頻繁に実施する必要がある。このような患者では、他の原因因子がない場合に、臨床的に有意なWBC減少の最初の徴候があった時点で、治療の中止を検討する必要がある。
臨床的に有意な好中球減少症を有する患者は、発熱または感染症の他の症状もしくは徴候についてモニタリングされるべきであり、そのような症状または徴候が現れた場合には速やかに処置されるべきである。絶対好中球数が<1000/mm3の患者においては処置を中止すべきであり、回復するまでWBC値を追跡する必要がある。
非定型抗精神病薬は起立性低血圧および失神を引き起こす。一般に、そのリスクは初回量投与時に最も高くなる。臨床試験において、ルマテペロントシル酸塩およびプラセボの起立性低血圧の頻度は、それぞれ0.7%および0%であった。ルマテペロントシル酸塩およびプラセボの失神率は、0.2%および0.2%であった。
低血圧症を起こしやすい患者(例えば、高齢患者、脱水状態にある患者、血液量減少にある患者、および降圧薬との併用処置を受けている患者)、既知の心血管疾患(心筋梗塞、虚血性心疾患、心不全または伝導異常の既往歴)を有する患者、および脳血管疾患患者においては、起立性バイタルサインをモニタリングする必要がある。ルマテペロントシル酸塩は、心筋梗塞または不安定心血管疾患の最近の既往歴がる患者においては評価されていない。このような患者は、市販前の臨床試験から除外された。
ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)を含む抗精神病薬は、傾眠、体位性低血圧症、ならびに運動および感覚の不安定を引き起こし得、これらは転倒、ひいては骨折およびその他の傷害につながる可能性がある。これらの影響を悪化させる可能性のある疾患、状態または薬剤服用を有する患者については、抗精神病薬処置の開始時、および長期処置中に定期的に、転倒リスク評価を完了させること。
他の抗精神病薬と同様に、ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)は、発作を引き起こす可能性がある。そのリスクは、発作の既往歴がある患者、または発作閾値を低下させる状態にある患者で最も高くなる。発作閾値を低下させる状態は、高齢患者でより一般的であり得る。
ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)は、他の抗精神病薬と同様に、傾眠を引き起こすことがあり、判断、思考および運動技能を損なう可能性がある。統合失調症患者の短期(すなわち、4~6週間)プラセボ対照臨床試験において、傾眠および鎮静が、プラセボ処置患者の10%で報告されたのに対してルマテペロントシル酸塩処置患者の24%で報告された。
ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)を服用している患者は、ルマテペロントシル酸塩による治療が該患者に悪影響を及ぼさないことが合理的に確認できるまで、自動車を含む危険な機械の操作について警告されるべきである。
非定型抗精神病薬は、深部体温を下げる身体能力を崩壊させ得る。激しい運動、激しい暑さおよび脱水状態への曝露、ならびに抗コリン薬服用は、深部体温の上昇に寄与し得る;ルマテペロントシル酸塩は、これらの状態を経験し得る患者において注意して使用すべきである。
食道運動障害および誤嚥は、抗精神病薬の使用に関連している。ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)を含む抗精神病薬は、誤嚥のリスクのある患者には注意深く使用すべきである。
ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)と中程度または強力なCYP3A4阻害剤との併用は、ルマテペロン曝露を増加させ、有害反応のリスクを高め得る。したがって、このような併用は避けるべきである。中程度のCYP3A4阻害剤としては、アンプレナビル、シプロフロキサシン、シクロスポリン、ジルチアゼム、エリスロマイシン、フルコナゾール、フルボキサミンおよびベラパミルが挙げられる。強力なCYP3A4阻害剤としては、クラリスロマイシン、グレープフルーツジュース、イトラコナゾール、ボリコナゾール、ネファゾドン、リトナビルおよびネルフィナビルが挙げられる。
ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)とCYP3A4誘導剤との併用は、ルマテペロンの曝露を減少させる。したがって、このような併用は避けるべきである。CYP3A4誘導剤としては、カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピン、セントジョーンズワート、ボセンタン、エファビレンツ、エトラビリン、モダフィニル、ナフシリン、アプレピタント、アルモダフィニル、ピオグリタゾンおよびプレドニゾンが挙げられる。
ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)とUGT阻害剤との併用は、ルマテペロンおよび/またはその代謝物の曝露を増加させ得る。したがって、このような併用は避けるべきである。UGT阻害剤としては、バルプロ酸およびプロベネシドが挙げられる。
ルマテペロントシル酸塩の対照臨床試験には、65歳以上の患者は含まれておらず、若い患者と異なる反応を示すかどうかを判断することはできなかった。
抗精神病薬は、認知症関連精神病の高齢患者の死亡リスクを高める。ルマテペロントシル酸塩は認知症関連精神病患者の処置には承認されていないが、ルマテペロントシル酸塩は、この点では他の非定型抗精神病薬と同様のリスクを示さないと考えられる。
ルマテペロン(例えば、ルマテペロントシル酸塩)の使用は、中等度肝障害(チャイルド・ピュー分類B)から重度肝障害(チャイルド・ピュー分類C)の患者には推奨されない。中等度肝障害および重度肝障害の患者は、ルマテペロンへの曝露が高くなる。軽度肝障害(チャイルド・ピュー分類A)の患者には用量調整は推奨されない。
用語「処置」および「処置すること」とは、疾患の症状の予防および治療または寛解および/または疾患の原因の処置を包含するものとして適宜理解されるべきである。特定の実施態様では、用語「処置」および「処置すること」とは、疾患の症状の予防または寛解をいう。
用語「患者」とは、ヒト患者を意味する。
用語「成人」とは、少なくとも18歳の患者を意味する。
さらに特定することなく本明細書で使用される用語「ルマテペロン」は、ルマテペロン遊離塩基、ならびに、ルマテペロントシル酸塩、ルマテペロンベシル酸塩、ルマテペロン塩酸塩、ルマテペロンシュウ酸塩、ルマテペロンアミノサリチル酸塩、ルマテペロンシクラミン酸塩、ルマテペロンノシル酸塩およびルマテペロンメシル酸塩が挙げられるがこれらに限定されないルマテペロンの全ての薬学的に許容される塩を包含すると解される。いくつかの実施態様において、遊離塩基形態または薬学的に許容される塩形態のルマテペロンは結晶形態である。
本明細書で使用する場合、特に指定しない限り、用語「ルマテペロントシル酸塩」とは、ルマテペロンモノトシル酸塩、ルマテペロンビストシル酸塩、またはトルエンスルホン酸を含むルマテペロンの他の酸付加塩形態(1:1未満の塩基対酸比を有する塩および他の酸アニオンを含む混合塩を含む)のいずれかをいう。いくつかの実施態様において、本明細書における「ルマテペロントシル酸塩」への言及は、ルマテペロンモノトシル酸塩を指し得る。現在、ルマテペロンモノトシル酸塩のみが、ヒト臨床試験で研究されており、ヒトへの投与について規制当局の承認を得ている。したがって、本明細書において、臨床試験結果および規制当局の承認に関する「ルマテペロントシル酸塩」への言及は、ルマテペロンモノトシル酸塩を指すと解される。
本明細書で使用する場合、副作用または障害を有するかまたは発症する「リスクのある」患者への言及は、当該副作用または障害の家族歴を有する当該患者を指し得るか、または当該副作用または障害を有するかまたは発症するリスクに合致する症状または臨床試験結果を有する当該患者を指し得る。このようなリスクの評価は、一般医または専門医の技能の範囲内である。例えば、糖尿病を有するかまたは発症するリスクのある患者は、空腹時血中グルコース値、空腹時血中インスリン値、グルコース負荷試験、血清ヘモグロビンA1c、糖尿病の家族歴、糖尿病の他のリスク因子(体重、心血管健康など)に基づいて評価することができる。これらの因子のいくつかについて、検査結果は、糖尿病の存在または糖尿病発症のリスクの増大のいずれかを示し得ることが理解される。同様に、脂質異常症を有するかまたは有するリスクのある患者は、空腹時血中脂質値(例えば、コレステロール;HDL、LDLおよびVLDLリポタンパク質;リポタンパク質比;トリグリセリド)、血中脂質値の上昇の過去の既往歴、ならびに脂質異常症もしくは心疾患(例えば、虚血性心疾患、冠動脈疾患)の家族歴、または脂質疾患に関連する遺伝子変異に基づいて評価され得る。同様に、肝障害(または肝障害の漸次的変化)を有するかまたは有するリスクのある患者は、肝酵素(例えば、ALT、AST、アルカリホスファターゼ)の血液中レベルもしくは肝生検レベル、または現在もしくは過去の肝炎のエビデンス(例えばA型、B型またはC型肝炎抗原に対する循環抗体)、肝障害の既知のリスク因子(例えば、慢性アルコール中毒)、または初期段階の肝疾患(例えば、脂肪肝疾患)のエビデンスに基づいて評価され得る。同様に、認知機能障害または運動機能障害を有するかまたは有するリスクのある患者は、患者の臨床検査(記憶検査、ならびにCTおよびMRIなどの画像診断、発作の既往歴を含む)、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの疾患の家族歴または診断、ならびに外傷の既往歴(急性頭部外傷または外傷性脳損傷のエビデンスなど)に基づいて評価され得る。
本明細書における「体重増加」への言及は、患者の体重の変化および/または患者のボディマスインデックス(BMI)と該患者の身長に対する正規化BMI範囲との比較を指し得る。
ルマテペロンおよび関連化合物の合成方法は、当該技術分野で知られており、米国特許第6,548,493号;米国特許第7,238,690号;米国特許第6,552,017号;米国特許第6,713,471号;米国特許第7,183,282号;米国特許第7,081,455号;米国特許第8,309,722号;米国再発行特許発明第39680号および米国再発行特許発明第39679号、ならびに米国特許出願公開第2017/183350号(各々の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に開示されている方法を含む。本発明の化合物の塩もまた、米国特許第6,548,493号;米国特許第7,238,690号;米国特許第6,552,017号;米国特許第6,713,471号;米国特許第7,183,282号;米国特許第8,648,077号;米国再発行特許発明第39680号;米国再発行特許発明第39679号(各々の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に記載されているのと同様に調製され得る。
実施例1: 臨床試験経験
臨床試験は大きく異なる条件下で実施されるため、ある薬物の臨床試験で観察された有害反応率は、別の薬物の臨床試験での率と直接比較することはできず、実際に観察される率を反映していない可能性がある。
ルマテペロントシル酸塩(具体的にはルマテペロンモノトシル酸塩)の安全性は、1回以上の投与にさらされた成人の統合失調症患者1724人において評価されている。これらの患者のうち、811人が14~84mg/日の用量で、短期間(4~6週間)のプラセボ対照試験に参加した。ルマテペロントシル酸塩60mg投与に、合計329人のルマテペロントシル酸塩曝露患者が少なくとも6か月曝露され、108人が少なくとも1年曝露された。
ルマテペロントシル酸塩処置患者において、>2%の割合で発生した中止の原因となる副反応は1つもなかった。
最も一般的な有害反応(ルマテペロントシル酸塩に曝露された被験者の少なくとも5%であってプラセボの2倍を超える発生率)は、傾眠/鎮静および口渇であった。
ルマテペロントシル酸塩に関連する副反応(ルマテペロントシル酸塩に曝露された患者における少なくとも2%であってプラセボより大きい発現率)を下記の表に示す。以下の知見は、ルマテペロントシル酸塩を一日量42mgで投与した成人の統合失調症患者におけるプールされた短期(4~6週間)プラセボ対照試験(N=406)に基づくものである。
Figure 2023507584000001
ジストニア: ジストニアの症状、筋肉群の異常収縮の長期化は、感受性者では処置の最初の数日間に起こり得る。ジストニア症状としては、頚筋痙攣、時に咽喉絞扼感へ進行、嚥下困難、呼吸困難および/または舌突出が挙げられる。これらの症状は低用量でも起こり得るが、第一世代抗精神病薬の効力が高く、用量が多いほど、より頻繁に発生し、重症度が高くなる。急性ジストニアのリスクの上昇は、男性および若年層で観察されている。
錐体外路症状: 4~6週間のプラセボ対照試験において、アカシジア、錐体外路障害、筋痙攣、不穏状態、筋骨格硬直、ジスキネジア、ジストニア、筋攣縮、遅発性ジスキネジア、振戦、流涎および不随意筋収縮を包含する錐体外路症状(EPS)に関するイベントの報告頻度はルマテペロントシル酸塩で6.7%、プラセボで6.3%であった。
4~6週間の試験において、EPSについてはシンプソンアンガススケール(SAS)(総スコアは0~40の範囲である)、アカシジアについてはバーンズアカシジア評価尺度(BARS)(総スコアは0~14の範囲である)、ジスキネジアについては異常不随意運動評価尺度(AIMS)(総スコアは0~28の範囲である)を用いてデータを収集した。ルマテペロントシル酸塩処置患者とプラセボ処置患者のベースラインからの平均変化は、それぞれ、SASが0.1と0、BARSが-0.1と0、AIMSが0.1と0であった。
QTcF間隔は、統合失調症患者33人における濃度-QTc効果モデリングを利用したプラセボおよび活性(モキシフロキサシン400mg)対照無作為化4群クロスオーバー試験において評価された。1日1回5日間経口投与したルマテペロントシル酸塩42mgおよび超治療用量(supratherapeutic dose)126mg(推奨一日量の3倍)についてそれぞれ4.9(8.9)および15.8(19.8)msのプラセボ補正後のベースラインからのQTcF変化量(90%両側上側信頼区間)。
具体的には、ルマテペロントシル酸塩を、2つのプラセボ対照試験において統合失調症の処置について評価した。
試験1(NCT01499563)は、DSM-IV-TR基準に従って統合失調症と診断された成人患者における4週間の無作為化二重盲検プラセボ対照多施設試験であった。主要有効性項目(primary efficacy measure)は、陽性および陰性症候群尺度(PANSS)総スコアであった。PANSSは、統合失調症の症状を測定するために使用される30項目の尺度である。各項目は、臨床医によって7段階評価で評価される。スコア1は症状がないことを示し、スコア7は非常に重度の症状を示す。PANSS総スコアは30~210の範囲であり得、スコアが高いほど全体的な症状の重症度が高いことを反映している。
合計335人の患者を、ルマテペロントシル酸塩42mg、ルマテペロントシル酸塩84mg(推奨一日量の2倍)、活性対照薬、またはプラセボを受けるように無作為化した。本試験は、ルマテペロントシル酸塩と活性対照薬の有効性を比較できるようには設計されていない。ルマテペロントシル酸塩群、活性対照薬群およびプラセボ群についての人口統計学的特性およびベースライン疾患特性は類似していた。年齢中央値は42歳(範囲20~55歳)であった。17%が女性で、19%が白人で、78%がアフリカ系アメリカ人であった。
ルマテペロントシル酸塩42mgに無作為化された患者は、プラセボ群と比較して、ベースラインから28日目までPANSS総スコアの統計的に有意な減少を示した。ルマテペロントシル酸塩84mg群における治療効果(対プラセボ)は、統計学的に有意ではなかった。
試験2(NCT02282761)は、DSM-5基準に従って統合失調症と診断された成人患者における4週間の無作為化二重盲検プラセボ対照多施設試験であった。主要有効性項目はPANSS総スコアであった。
合計450人の患者を、ルマテペロントシル酸塩28mg(推奨一日量の3分の2)、ルマテペロントシル酸塩42mg、またはプラセボを受けるように無作為化した。ルマテペロントシル酸塩群およびプラセボ群についての人口統計学的特性およびベースライン疾患特性は類似していた。年齢中央値は44歳(範囲19~60歳)で、女性は23%で、白人は26%で、アフリカ系アメリカ人は66%であった。
ルマテペロントシル酸塩42mgに無作為化された患者は、プラセボ群と比較して、ベースラインから28日目までPANSS総スコアの統計的に有意な減少を示した。ルマテペロントシル酸塩28mg群における治療効果(対プラセボ)は、統計的に有意ではなかった。
試験1および試験2の結果を下記の表に示す:
Figure 2023507584000002
PANSS総スコアは30~210の範囲であり得;スコアが高いほど症状の重症度が高いことを反映する。SD:標準偏差;SE:標準誤差;LS平均:最小二乗平均;CI:未調整信頼区間。 非盲検中間解析後のサンプルサイズ増加について調整されていないベースラインからのLS平均変化の差(薬物-プラセボ)。 プラセボよりも統計学的に有意に優れている。
試験1および2には、65歳以上の患者は含まれていなかった。人種および性別によるサブグループの検討は、いずれの試験においても反応の差異を示唆しなかった。
試験2における統合失調症患者のPANSS総スコアのベースラインからの経時変化を図3に示す。
実施例2: 薬物動態試験
ルマテペロントシル酸塩の1日1回の経口投与後、ルマテペロンの定常状態は約5日で達成される。定常状態曝露の増加は、21mg~56mgの範囲でほぼ用量比例的である。ルマテペロンPKパラメータの被験者間の大きな変動が観察され、Cmax(ピーク血漿中濃度)およびAUC(濃度対時間曲線下面積)の変動係数は、定常状態で68%~97%の範囲であった。
吸収: ルマテペロンカプセルの絶対バイオアベイラビリティは約4.4%である。ルマテペロンのCmaxは、ルマテペロントシル酸塩の投与後約1~2時間で到達する。
食物効果: ルマテペロントシル酸塩とともに高脂肪食を摂取すると、ルマテペロン平均Cmaxが33%低下し、平均AUCが9%増加した。Tmaxの中央値は約1時間遅くなった(絶食状態での1時間から食物存在下での2時間まで)。
分布: ルマテペロンのタンパク質結合は、ヒト血漿中5μM(治療濃度の約70倍高い)において97.4%である。静脈内投与後のルマテペロンの分布容積は約4.1L/kgである。
排出: ルマテペロンのクリアランスは約27.9L/時であり、終末相半減期は静脈内投与後約18時間である。
代謝: ルマテペロンは、広範囲に代謝され、インビボで20種類を超える代謝物が同定されている。単回の14C標識経口投与後、ルマテペロンおよびグルクロン酸抱合代謝物は、それぞれ総血漿放射能の約2.8%および約51%を占める。インビトロ研究では、ウリジン5'-ジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ、UGT)1A1、1A4および2B15、アルドケトレダクターゼ(AKR)1C1、1B10および1C4、ならびにシトクロムP450(CYP)3A4、2C8および1A2が挙げられるがこれらに限定されない複数の酵素が、ルマテペロンの代謝に関わっていることを示している。
排泄: ヒトのマスバランス試験では、放射能線量の58%および29%がそれぞれ尿および糞便中で回収された。投与量の1%未満が尿中で未変化のルマテペロンとして排泄された。
特定の集団: ルマテペロン曝露に対する肝障害または腎障害の影響を図1に示す。年齢、性別または人種によるルマテペロンの薬物動態の臨床的な有意な差は観察されなかった。
薬物相互作用試験: ルマテペロンの曝露に対する他の薬物の影響を図2に示す。CYP3A4基質: 統合失調症患者においてルマテペロンの単回投与または複数回投与と併用した場合、ミダゾラム(CYP3A4基質)またはその代謝物である1-ヒドロキシミダゾラムの薬物動態の臨床的に有意な差は観察されなかった。
インビトロ試験: ルマテペロンは、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6またはCYP3A4/5の阻害をほとんど示さなかった。また、CYP1A2、CYP2B6またはCYP3A4の誘導は示されなかった。ルマテペロンはP-gpまたはBCRP基質ではないようだった。OCT2、OAT1、OAT3、OATP1B3またはOATP1B1の阻害をほとんど示さなかった。

Claims (17)

  1. 成人患者における統合失調症の処置方法であって、該方法が、該処置を必要とする患者にルマテペロン42mgまたはルマテペロントシル酸塩60mgの経口一日量をカプセル剤形で投与することを含み、該経口一日量が食物とともに摂取されてもよい、方法。
  2. ルマテペロン42mg(ルマテペロントシル酸塩60mg)の経口一日量が1カプセルとして提供される、請求項1記載の方法。
  3. カプセルが、さらに、クロスカルメロースナトリウム、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、タルクおよび着色剤(例えば、二酸化チタン、FD&C Blue #1および/またはFD&C Red #3)を含む、請求項1または2記載の方法。
  4. 患者が、65歳未満であり、および/または、認知症関連精神病にかかっていないかまたは認知症関連精神病の既往歴を有していない、請求項1~3いずれか1項記載の方法。
  5. 患者が、CYP3A4誘導剤(例えば、カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピン、セントジョーンズワート、ボセンタン、エファビレンツ、エトラビリン、モダフィニル、ナフシリン、アプレピタント、アルモダフィニル、ピオグリタゾン、プレドニゾン)、中程度または強力なCYP3A4阻害剤(例えば、中程度:アンプレナビル、シプロフロキサシン、シクロスポリン、ジルチアゼム、エリスロマイシン、フルコナゾール、フルボキサミン、ベラパミル;強力:クラリスロマイシン、グレープフルーツジュース、イトラコナゾール、ボリコナゾール、ネファゾドン、リトナビル、ネルフィナビル)、および/またはUGT阻害剤(例えば、バルプロ酸、プロベネシド)との併用処置を受けていない、請求項1~4いずれか1項記載の方法。
  6. 患者が、中等度または重度肝障害(例えば、チャイルド・ピュー分類BまたはC)にかかっていないか、または患者が軽度肝障害(例えば、チャイルド・ピュー分類A)にかかっている、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
  7. 患者が、高血糖症または真性糖尿病にかかっているかまたはその発症リスクを有している(例えば、患者が高血糖症または真性糖尿病の既往歴を有している)、請求項1~6いずれか1項記載の方法。
  8. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、高血糖症または真性糖尿病の発症または発症リスクのために該処置が中止された、請求項1~6いずれか1項記載の方法。
  9. 患者が体重増加しているかまたはその発症リスクを有している(例えば、患者が体重管理困難の既往歴を有している)、請求項1~8いずれか1項記載の方法。
  10. 患者が以前に別の非定型抗精神病薬で処置されていたが、体重増加の発症または発症リスクのために該処置が中止された、請求項1~9いずれか1項記載の方法。
  11. 患者が別の非定型抗精神病薬による処置からルマテペロントシル酸塩による処置に切り替えようとしており、該切り替えが用量滴定を含まない、請求項1~10いずれか1項記載の方法。
  12. 患者が以前にリスペリドン、アリピプラゾールおよびオランザピンなどの非定型抗精神病薬で処置されたことがある、請求項1~11いずれか1項記載の方法。
  13. リスペリドン、アリピプラゾールおよびオランザピンなどの非定型抗精神病薬による患者の処置が禁忌である、請求項1~12いずれか1項記載の方法。
  14. 該方法が患者に体重増加の発症を生じさせない、請求項1~13いずれか1項記載の方法。
  15. 該方法が、処置開始から28日以内に、PANSS総スコアの有意な減少、例えば、PANSS総スコアの少なくとも4ポイントの減少、または少なくとも5ポイントの減少、または少なくとも7ポイントの減少、または少なくとも9ポイントの減少、または少なくとも10ポイントの減少、または少なくとも12ポイントの減少、または少なくとも14ポイントの減少を提供する、請求項1~14いずれか1項記載の方法。
  16. 該方法が、処置開始から8日以内に、PANSS総スコアの有意な減少例えば、PANSS総スコアの少なくとも4ポイントの減少、または少なくとも5ポイントの減少、または少なくとも6ポイントの減少、または少なくとも7ポイントの減少、または少なくとも8ポイントの減少を提供する、請求項1~15いずれか1項記載の方法。
  17. 患者が、処置開始時に60~100のベースラインPANSS総スコア、例えば、80~90、または85~95、または88~90のPANSS総スコアを有する、請求項1~16いずれか1項記載の方法。
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