JP2023502389A - ウィルソン病患者における神経損傷を低下させるための方法 - Google Patents

ウィルソン病患者における神経損傷を低下させるための方法 Download PDF

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Abstract

本開示は、概して、銅代謝関連疾患又は障害において観察される銅誘発性神経損傷を処置するための方法に関する。本開示は、ウィルソン病(WD)における銅誘発性神経損傷を低下させることに関する。【選択図】図1B

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月21日に提出された米国仮特許出願第62/938,585号及び2020年10月2日に提出された米国仮特許出願第63/086,768号の優先権の利益を主張し、これらはともに、全体が参照によって援用される。
開示の背景
発明の分野
本開示は、概して、銅代謝関連疾患又は障害において観察される銅誘発性神経損傷を処置するための方法に関する。本開示は、詳細には、ウィルソン病(WD)における銅誘発性神経損傷を低下させることに関する。
技術背景
1912年、サミュエル・アレクサンダー・キニア・ウィルソンは、加えて肝硬変とも関連する、レンズ核の進行性の変性によって特徴づけられる致死的神経疾患を報告した。今日では、WDは、主に肝臓に存在している銅輸送ATPアーゼATP7Bの欠損に関係していることが知られている。ATP7B異常は、血液循環中にあふれ出すかもしれない大量の肝銅蓄積を引き起こし得るということで、現在、意見が一致している。WD患者において、過剰銅は、銅運搬血漿タンパク質セルロプラスミンへの組み込みがしっかりとしておらず、可能性として、脳などの周辺の器官に蓄積されやすい。WD患者において、蓄積から数年後又はさらに数十年後、脳の銅濃度は、最高450μg/g乾燥重量に達するかもしれず(コントロールにおける7~60μg/g乾燥重量に対して)、脳病変及び神経症状(例えば構音障害及びパーキンソニズム)を引き起こし得る、最重視すべき毒性状態と見なされる。それにもかかわらず、神経型WDの病態生理の多くの側面は、今もなお、状況に基づくものであったり、知られていないものであったりする。とりわけ、非セルロプラスミン結合銅(NCC)がどうやって脳に入って、蓄積するかが問題とされている。
WD患者において、血中の銅は、主にアルブミン及びアミノ酸に結合する。血漿タンパク質が豊富だと(35~50g/L;500~750μM)、アルブミンの銅結合能は非常に高く、pH7.4で最高5つの銅イオンに結合するかもしれない。そういうわけで、第1の銅イオンは、N末端にかなりしっかりと結合し(K=0.9×10-12M~6.7×10-17M)、第2の銅イオンは、中程度の親和性で多重金属結合部位(MBS)に結合し(K=1.91×10-7M)、残りの3つの銅イオンは、今のところ特徴づけられていない部位に比較的ゆるく結びつけられる(K=6.25×10-6M)。この点で、アミノ酸ヒスチジンが果たす役割は、その比較的低い血漿濃度(≒100μM)及び中程度の銅親和性(K≒10-9)のために、小さいかもしれない。このように、血漿には、銅に対するいくつかの結合パートナーが存在しており、高い受容力及び/又は高い親和性を有している。WD患者において、総血中銅濃度は、0.5~16.6μMと決定されており、そのうち、交換可能であるかもしれない銅は、EDTA(K=1.26×10-16M)キレート化実験によって決定されるように、濃度が比較的低く、1~5μMである。
これにより、過剰な脳銅蓄積がどうやって起こり得るかといった問題が持ち上がる。1つメカニズムは、銅に対する一定の競合及びおそらくATP7B異常による血液中への銅再排出不良に関連づけられる、高親和性輸送体CTR1(K≒10-14M)を介した脳への銅の取込みであるかもしれない。CTR1及びATP7Bは、星状細胞及び周皮細胞と一緒に血液脳関門(BBB)を形成する内皮細胞の血液に面している膜に存在する。比較的低い血中銅でのこのような競合は、神経型WD患者において観察される数十年もの長い臨床上の沈黙を説明するかもしれない。さらなる、相互排他的でない可能性として、銅誘発性の肝臓組織の死の時期に、激しい「血中銅の急変」が引き起こされ、それによって、脳の銅蓄積及び損傷を引き起こすかもしれないということがある。実際に、神経症状の重症度がよく変動し、時には同じ日に変動すること及び症状が、ストレス、合併している病気、又は医薬品によって増悪するかもしれないことが、臨床的に重要であると認められている。このような脳損傷は、BBBでスタートするかもしれず、これは、次いで、脳へのさらなる無秩序な銅流入を助長するかもしれない。同じような考えで、Stuerenburgは、脳脊髄液中に存在するアルブミン対血清中に存在するアルブミンの比の増加によって示される、神経型ウィルソン病患者におけるBBBの乱れについて記載した。
WDのための現在の処置は、Cuをキレート化し、尿Cu排出を促進する一般的なキレート剤による療法D-ペニシラミン(DPA)及びトリエンチン並びに腸管メタロチオネインのアップレギュレーションを通してCuの食事による摂取をブロックする亜鉛(Zn)である。DPAによる神経型WD患者の処置は、処置を開始してすぐなど、患者の19~52%において報告されるように、結果として、劇的な症状の悪化につながり得る。このような神経症状の悪化は、テトラチオモリブデート(TTM)処置患者においてほとんど報告されない。DPAは、TTM(K=2.3×10-20M)よりも銅親和性が低い(K=2.4×10-16M)ので、そのしっかりとした結合により、血液中の銅に対する競合は、TTMによって減弱するかもしれず、おそらく、結果として、より小さなBBB及び/又は脳の損傷につながる。
そのため、すでに存在している銅誘発性神経損傷を逆転させるためだけでなく、今後の銅誘発性神経損傷からの永続的な保護を提供するための、銅代謝関連疾患又は障害と関連する銅誘発性神経損傷の有効な処置の必要性が残っている。
本開示の概要
本開示は、概して、対象における銅誘発性神経損傷を処置するのに有用な方法を提供する。例えば、銅誘発性神経損傷は、ウィルソン病などの特異的疾患又は障害と関連していてもよい。
本開示の一態様は、銅誘発性神経損傷を処置するための方法を提供する。このような方法は、本明細書において記載されるビスコリンテトラチオモリブデートの治療有効量を対象に投与することを含む。この態様のある実施形態において、方法は、銅誘発性神経損傷を低下させる。
ある実施形態において、銅誘発性神経損傷は、以下の1つ以上を含む:銅誘発性細胞毒性、銅誘発性血液脳関門損傷、及び銅誘発性ミトコンドリア損傷。このように、ある態様において、本開示はまた、それを必要とする対象において、銅誘発性細胞毒性を低下させるための方法をも提供する。このような方法は、本明細書において記載されるビスコリンテトラチオモリブデートの治療有効量を対象に投与することを含む。
本開示の別の態様は、それを必要とする対象において、銅誘発性血液脳関門損傷を低下させるための方法を提供する。このような方法は、本明細書において記載されるビスコリンテトラチオモリブデートの治療有効量を対象に投与することを含む。
本開示の別の態様は、それを必要とする対象において、銅誘発性ミトコンドリア損傷を低下させるための方法を提供する。このような方法は、本明細書において記載されるビスコリンテトラチオモリブデートの治療有効量を対象に投与することを含む。
本開示の別の態様は、それを必要とする対象において、細胞銅含有量を低下させるための方法を提供する。このような方法は、本明細書において記載されるビスコリンテトラチオモリブデートの治療有効量を対象に投与することを含む。
本開示の別の態様は、本明細書において記載される方法において使用するための、治療有効量のビスコリンテトラチオモリブデートを含む組成物を提供する。
本開示のさらなる態様は、本明細書における本開示から明瞭になるであろう。
図面の簡単な説明
添付の図面は、本開示の方法のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本開示の1つ以上の実施形態を例示し、説明と共に、本開示の原理及び実施の説明を果たす。
図1A~1Eは、ALXN1840及びDPAが血中銅レベルを増加させることを示す。図1A及び1Eは、64Cuをi.v.又はi.p.注射した野生型ラットのPETスキャンを示す。静脈内注射は、脳の付近で高いシグナル強度をもたらしたのに対して、i.p.注射したラットにおいて検出可能な64Cuシグナルはなかった。図1Bは、4日間連続のALXN1840によるAtp7b-/-の処置が、屠殺後、血清銅レベルの増加をもたらしたのに対して、血清銅レベルは、DPAによる処置後に変化していなかった(N=3)ことを示す。図1Cは、DPAによるAtp7b-/-ラットの処置が、処置の間に、尿銅排出における有意な増加をもたらしたことを示す(N=3)。図1Dは、糞便銅排出が、処置の間に、ALXN1840及びDPA処置動物において変化していなかったことを示す(N=3)。ダネットの多重比較検定ありの一元配置ANOVAを、統計解析のために使用した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 図2A~2Cは、ALXN1840がアルブミン及び銅と安定した複合体を形成することを示す。図2Aは、銅-アルブミン複合体の形成及び非結合銅に相当する第2の銅のピークを実証する、750μMの銅及び250μMアルブミンのサイズ排除クロマトグラフィーを示す。ALXN1840の存在下において、アルブミン、モリブデン、及び銅は、同じ画分中に存在した。ALXN1840ではなくDPAの存在下において、銅の分布は、変化していなかった(N=2)。図2Bは、アルブミンの構造におけるSudlow部位I(SsI)の内容物の解析を示す。図2B、左のパネルは、示されるSudlow部位Iを有するアルブミンの全体的な構造を示す。図2B、右上のパネルは、精密化の前の、算出した差マップ(difference map)を有するSsIのクローズアップ画像を示す。差マップは、この領域におけるさらなる分子の存在を示す。図2B、右下のパネルは、精密化の後のSsIの同じ部位を示す。ALXN1840及び銅原子は、算出した2Fobs-Fcalcマップによっておおわれており、SsI内部にこれらの分子が存在することを示す。図2Cは、電子常磁性共鳴による測定が、アルブミン、銅、及びALXN1840からなる三部複合体における銅の部分的な還元を明らかにしたことを示す。しかしながら、銅の完全な還元は、過剰な亜二チオン酸ナトリウム(Na)によってのみ、達成された。 図3A~3Dは、ALXN1840が、HepG2、EA.hy926、U87MG、及びSHSY5Y細胞を銅毒性から防いだことを示す。すべての調査した細胞株は、250μMアルブミン及び250~2500μMの範囲の増加性の量の銅による処置によって、CellTiterGlo(登録商標)により評価した細胞生存率において、用量依存的な減少を示した。750μM DPAの存在下において、この細胞毒性の影響は、Cu-アルブミンのみと比較して、有意に増加しなかった。対照的に、750μM ALXN1840の存在は、主にHepG2、EA.hy926、及びU87MG細胞を細胞死から保護した(N=3~5、n=6~10)。ダネットの多重比較検定ありの二元配置ANOVAを、統計解析のために使用した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。図3E~3Hは、低用量のALXN1840が、銅毒性から部分的に救ったことを示す。低用量のALXN1840(250μM)は、CellTiterGlo(登録商標)アッセイによって評価したHepG2及びEA.hy926細胞においてCu-アルブミン誘発性の細胞毒性から部分的に救った。対照的に、低用量のDPAは、銅及びBSAのみにより処置した細胞と比較して、細胞生存率に対する効果がないことを示した(N=3~5、n=6~10)。ダネットの多重比較検定ありの二元配置ANOVAを、統計解析のために使用した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 図4A~4Bは、高親和性キレート剤が細胞の除銅によって細胞生存率を低下させたことを示す。図4Aは、すべての調査した細胞株が、高親和性キレート剤ALXN1840の存在下において、CellTiterGlo(登録商標)によって評価される細胞生存率の用量依存的な低下を示したことを示し、これは、DPAの存在下において観察されない(N=3、n=6)。図4Bは、複合体IV活性が、すべての細胞株において無毒性ALXN1840濃度(200μM)ですでに低下していたのに対して、200μM DPAは、複合体IV活性に対して影響を有していなかったことを示す(N=3~4、n=6~10)。 図5は、ALXN1840が、結果として、EA.hy926細胞及びU87MG細胞において細胞銅含有量の減少につながったことを示す。図5、左のパネルは、750μM銅及び250μMアルブミンとのインキュベーションが、結果として、すべて調査された細胞株において大量の金属の蓄積につながったことを示す。ALXN1840の存在下において、U87MG細胞及びEA.hy926細胞は、Cu-アルブミンのみと比較して、(有意に)低い銅含有量を示した。しかしながら、この効果は、HepG2細胞及びSHSY5Y細胞にはなかった。対照的に、DPAの存在は、すべての細胞株において、銅取込みの量を変化させなかった(N=4~12)。ダネットの多重比較検定ありの一元配置ANOVAを、統計解析のために使用した。図5、右のパネルは、HepG2、EA.hy926、U87MG、及びSHSY5Yのトリパンブルーにより評価した細胞生存率が、750μM銅及び250μMアルブミンの存在下において有意に減少したことを示す。DPAではなく、750μM ALXN1840が、銅関連性の細胞毒性からすべての細胞株を保護した(N=4~12)。シダックの多重比較検定ありの一元配置ANOVAを、統計解析のために使用した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 図6A~6Bは、高精度呼吸測定法にかけたEA.hy926細胞及びU87MG細胞の細胞パラメーターを示す。図6Aは、トリパンブルーによって評価した細胞生存率(N=5~13)、細胞サイズ(N=5~13)、及び細胞タンパク質(N=3、n=9)含有量は、EA.hy926細胞及びU87MG細胞について、それぞれ、ALXN1840又はDPAの非存在下又は存在下において、未処置及びCu-アルブミン処置細胞において変化していなかったことを示す。対照的に、細胞銅含有量は、Cu-アルブミンのみにより処置した細胞と比較して、ALXN1840の存在下におけるCu-アルブミン処置EA.hy926細胞及びU87MG細胞において有意に低かった(N=5~13)。図6Bは、ミトコンドリア呼吸量が、Cu-アルブミンの存在下において、EA.hy926細胞及びU87MG細胞において減少し、EA.hy926細胞においてALXN1840の存在下において有意に増加したことを示す(N=4~7;ETS、電子伝達系の能力)。ダネットの多重比較検定ありの二元配置ANOVAを、統計解析のために使用した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 図7A~7Bは、銅誘発性のミトコンドリアの変化を、DPAではなく、ALXN1840によって保護することができることを示す。図7Aは、EA.hy926細胞及びU87MG細胞のミトコンドリアの構造が、Cu-アルブミンの存在下において変化したことを示す。ALXN1840の存在下において、これらの変化は、部分的に逆転したのに対して、DPAは、両方の細胞株においてミトコンドリアの構造に対するプラスの効果を有していなかった。スケールバーは、500nmに等しい。図7Bは、ルーチン対リーク呼吸(R/L)又はETS対リーク呼吸(E/L)として定義される呼吸調節比(RCR)を示す。EA.hy926において、E/L比は、Cu-アルブミン処置細胞と比較して、ALXN1840処置細胞において有意に増加した。この効果は、U87MG細胞において、それほどはっきりしていなかった(N=4~7)。ダネットの多重比較検定ありの二元配置ANOVAを、統計解析のために使用した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 図8A~8Cは、無毒性の銅濃度が、結果として、PBCEC単層のTEER値の低下につながったことを示す。図8Aは、増加性のCu-アルブミン(1:3の銅:アルブミン比)の存在下におけるブタ脳大脳内皮細胞(PBCEC)単層の経内皮電気抵抗(TEER)及び電気容量の変化の例証的な曲線を示す。TEERは、用量依存的に減少したのに対して、電気容量における増加は、最も高いCu-アルブミン濃度でのみ検出可能であった。図8Bは、PBCECのニュートラルレッドアッセイが、48時間後、250μM銅(及び83.3μMアルブミン)未満で毒性がないことを示す。しかしながら、750μM銅(及び250μMアルブミン)は、結果として、細胞生存率の劇的な低下につながり、これは、750μM ALXN1840の存在によって救うことができた(N=3、n=12)。図8Cは、PBCEC単層の電気容量値が、ALXN1840又はDPAの非存在下又は存在下において、Cu-アルブミン処置による影響を受けなかったことを示す(N=2、n=4)。 図9A~9Bは、銅誘発性血液脳関門損傷を、DPAではなく、ALXN1840によって救うことができることを示す。図9Aは、Cu-アルブミン(250μM銅及び83.3μMアルブミン)が、結果として、初代ブタ脳毛細血管内皮細胞(PBCEC)単層の経上皮電気抵抗(TEER)の低下につながったことを示す。これは、それぞれ、250μM ALXN1840によって救うことができたのに対して、DPAの存在が、結果として、TEERの低下につながることがあり、これは、Cu-アルブミン処置のみと同等であった(N=2、n=4)。図9Bは、側底コンパートメント(脳実質に似ている)における銅の定量により、48時間後、高親和性キレート剤ALXN1840の存在下において、このコンパートメントにおける銅の量が有意に低いことが示されたことを示す(N=2、n=4)。ダネットの多重比較検定ありの二元配置ANOVAを、統計解析のために使用した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 図10は、Cu-アルブミンが、結果として、PBCEC単層における密着結合の破壊につながったことを示す。密着結合タンパク質クローディン-5に対する免疫細胞化学染色は、コントロール細胞において、細胞周縁部の切れ目のない染色を示した。このパターンは、Cu-アルブミン(250μM銅及び83.3μMアルブミン)により処置した初代ブタ脳毛細血管内皮細胞(PBCEC)において破壊された。250μM ALXN1840の存在下において、これらの形態学的変化は、それほどはっきりしていなかったのに対して、DPAの存在は、銅誘発性の間隙の形成を防がなかった。密着結合関連タンパク質Zonula occludens-1(ZO-1)に対する染色は、コントロールとCu-アルブミン処置細胞との間の差がそれほど鮮明ではないことを明らかにし、Cu-アルブミン処置細胞は、ZO-1の不規則な細胞質分布によって特徴づけられた。これは、ALXN1840によって防がれたが、DPA処置PBCEC単層においてなお存在した。スケールバーは、10μmに等しい。銅処置PBCECの電子顕微鏡写真は、DPAではなく、ALXN1840によって防ぐことができる細胞間の境界での高電子密度タンパク質複合体の損失によって示されるように、密着結合完全性に対する金属の影響を明らかにした。スケールバーは、250nmに等しい。
詳細な説明
開示されるプロセス及び材料について記載する前に、本明細書において記載される態様は、特定の実施形態に限定されず、よって、当然、変えることができることが理解されるべきである。本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明するためだけのものであり、本明細書において特に定義されない限り、限定することを意図するものではないこともまた、理解されるべきである。
本開示を考慮し、本明細書において記載される方法及び組成物は、所望の必要性を満たすように当業者によって構成することができる。全般的に、開示される方法は、銅代謝関連疾患又は障害において観察される銅誘発性神経損傷の処置における改善を提供する。
このように、本開示の一態様は、それを必要とする対象において銅誘発性神経損傷を低下させるための方法を提供する。
ある実施形態において、銅誘発性神経損傷を低下させることは、1つ以上の神経学的症状又は精神症状を改善する、低下させる、又は排除する。例えば、改善されてもよい、低下させてもよい、又は排除されてもよい神経学的症状は、振戦、構音障害、異緊張症、及び歩行障害を含むが、これらに限定されない。改善されてもよい、低下させてもよい、又は排除されてもよい精神症状は、うつ、社会不安障害、パニック障害、外傷後ストレス障害、前頭葉実行機能能力及び/又は視空間処理の欠損、並びに記憶喪失を含むが、これらに限定されない。
銅誘発性神経損傷の低下は、投与後0日目~24週目の範囲にわたる時間間隔の範囲内で生じてもよい。例えば、1つ以上の神経学的症状又は精神症状の改善、低下、又は排除は、投与後0日目~24週目の範囲にわたる時間間隔の範囲内で生じてもよい。ある実施形態において、銅誘発性神経損傷の低下の最も高いレベルは、投与後0日目~7週目の範囲にわたる時間間隔の範囲内であってもよい。
銅誘発性神経損傷は、以下の1つ以上として示されてもよい:銅誘発性細胞毒性、銅誘発性血液脳関門損傷、及び銅誘発性ミトコンドリア損傷。このように、ある実施形態において、銅誘発性神経損傷を低下させることは、銅誘発性細胞毒性、銅誘発性血液脳関門損傷、及び/又は銅誘発性ミトコンドリア損傷を低下させることによるものである。
本開示の方法のある実施形態は、銅誘発性細胞毒性を低下させることを含む。例えば、銅誘発性細胞毒性は、肝細胞、内皮細胞、ニューロン、及び星状細胞の少なくとも1つにおいて低下させてもよい。銅誘発性細胞毒性は、ビスコリンテトラチオモリブデートの投与を伴わない銅誘発性細胞毒性に比べて、少なくとも10%、例えば、少なくとも15%又は少なくとも20%又は少なくとも25%又は少なくとも30%又は少なくとも35%又は少なくとも40%又は少なくとも45%又は少なくとも50%又はさらに少なくとも100%、低下させてもよい。
ある実施形態において、銅誘発性細胞毒性を低下させることは、ビスコリンテトラチオモリブデートの投与を伴わない細胞生存率と比較して、細胞生存率を改善する。例えば、細胞生存率は、少なくとも10%、例えば、少なくとも15%又は少なくとも20%又は少なくとも25%又は少なくとも30%又は少なくとも35%又は少なくとも40%又は少なくとも45%又は少なくとも50%又はさらに少なくとも100%、改善されてもよい。
本開示の方法のある実施形態において、銅誘発性血液脳関門損傷を低下させることを含む。銅誘発性血液脳関門損傷は、ビスコリンテトラチオモリブデートの投与を伴わない銅誘発性血液脳関門損傷に比べて、少なくとも10%、例えば、少なくとも15%又は少なくとも20%又は少なくとも25%又は少なくとも30%又は少なくとも35%又は少なくとも40%又は少なくとも45%又は少なくとも50%又はさらに少なくとも100%、低下させてもよい。
ある実施形態において、銅誘発性血液脳関門損傷は、以下の1つ以上によって低下させてもよい:(a)経上皮電気抵抗(TEER)を維持すること、(b)電気容量を維持すること、及び(c)銅誘発性形態学的変化を低下させること。例えば、ある実施形態において、TEERは、健康な対象と同じレベルに維持される。同様に、ある実施形態において、電気容量は、健康な対象と同じレベルに維持される。ある実施形態において、例えば、銅誘発性形態学的変化は、以下の通りである:ミトコンドリアクリステの損失若しくは構造上の方向性の欠落並びに/又は膜状の封入体(membranous inclusion)並びに/又は脳毛細血管内皮細胞の細胞境界でのクローディン-5の継続的で絶え間ない存在及び/若しくはZonula Occludens-1の存在。
本開示の方法のある実施形態は、銅誘発性神経損傷を低下させることが、銅誘発性ミトコンドリア損傷を低下させることによるものであることを含む。例えば、ある実施形態において、銅誘発性ミトコンドリア損傷の低下は、すべて未処置の対象と比較した、以下の1つ以上を含む:(a)銅誘発性膜封入体(membrane inclusion)の存在を低下させること、(b)クリステの組織化を増加させること又は維持すること、(c)高電子密度マトリックスを増加させること又は維持すること、及び(d)ミトコンドリア呼吸量を増加させること又は維持すること。
本明細書において記載される本開示の方法のある実施形態において、銅誘発性神経損傷は、ウィルソン病と関連する。例えば、ある実施形態において、対象は、ウィルソン病に罹患している。
本開示の銅誘発性神経損傷は、別の銅代謝関連疾患又は障害に起因してもよい。このように、ある実施形態において、銅代謝関連疾患又は障害は、銅毒性である(例えば、硫酸銅殺菌剤への高度な曝露、銅が高度な飲料水を取り入れること、銅サプリメントの取り過ぎ等に由来する)。ある実施形態において、銅代謝関連疾患又は障害は、銅欠乏症、メンケス病、又は無セルロプラスミン血症である。ある実施形態において、銅代謝関連疾患又は障害は、学業不振、ざ瘡、注意欠陥多動性障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アテローム性動脈硬化症、自閉症、アルツハイマー病、カンジダの異常増殖、慢性疲労、肝硬変、うつ、アドレナリン活性上昇、銅タンパク質(cuproprotein)上昇、ノルエピネフリン活性上昇、情動性の崩壊、線維筋痛、頻繁に怒る、老人関連性銅排出不良、不安が大きい、脱毛、肝疾患、多動、甲状腺機能低下症、エストロゲンに対する不耐性、経口避妊薬に対する不耐性、カイザー-フライシャー輪、学習障害、低ドーパミン活性、多発性硬化症、神経学的な問題、酸化ストレス、パーキンソン病、集中力低下、集注力の低下、免疫機能低下、耳鳴り、アレルギー、食用色素に対する過敏性、甲殻類に対する過敏性、皮膚金属不耐性、皮膚過敏性、睡眠の問題、及び指の爪の白斑から選択される少なくとも1つである。
上記に提供される通りに、ビスコリンテトラチオモリブデート(ALXN1840、BC-TTM、チオモリブデン酸コリン、チオモリブデン酸(tiomolibdic acid)としても知られており、以前はWTX101として知られていた)は、本開示の方法において投与される。ビスコリンテトラチオモリブデートは、以下の構造を有する:
Figure 2023502389000002
ALXN1840は、WDの処置のために開発中である、ファースト・イン・クラスのCuタンパク質結合剤であり、国際公開第2019/110619号(全体が本明細書において参照によって援用される)において詳細に記載された。先の研究は、ALXN1840が、Cu-テトラチオモリブデート-アルブミン三部複合体(TPC)の速やかで不可逆的な形成により、Cuのコントロールを改善することを示唆した。ALXN1840単独療法は、WDを有する28人の患者において判定され、ALXN1840が、ベースラインと比較して、平均血清非セルロプラスミン結合Cu(NCC)を24週目に72%低下させることが示された。ALXN1840による処置は、概して、忍容性良好であり、最も報告された有害事象(AE)は、軽度(グレード1)~中等度(グレード2)であった。最も頻繁に報告された薬剤関連性のAEは、血液学的パラメーターにおける変化、疲労、硫黄臭のするおくび(sulphur eructation)、及び他の胃腸症状であった。可逆的な肝機能検査の上昇が、患者の39%において観察された;これらの上昇は、軽度~中等度で、無症状であり、ビリルビンにおける目立った増加を伴わず、用量低下又は処置中断により、常態に戻った。奇異な神経症状の悪化は、ALXN1840による処置開始の際に観察されなかった。
ある実施形態において、銅誘発性神経損傷の低下は、ALXN1840による安定したCu-テトラチオモリブデートアルブミン三部複合体(TPC)の形成によるものである。ある実施形態において、TPCは、輸送及び/又は排除のために、対象における体循環において役に立つ。
ALXN1840の治療有効量は、以前に確立された。例えば、ある実施形態において、ALXN1840は、1日当たり約15~60mgの範囲で投与されてもよい。ある実施形態において、ALXN1840は、毎日約15mgの量で投与される。ある実施形態において、ALXN1840は、毎日約30mgの量で投与される(例えば、1日2回約15mgを服用又は毎日1回15mg錠剤を2錠服用)。ある実施形態において、ALXN1840は、毎日約45mgの量で投与される(例えば、1日2回約15mgを服用又は毎日1回15mg錠剤を3錠服用)。ある実施形態において、ALXN1840は、毎日約60mgの量で投与される(例えば、毎日4回約15mgを服用又は毎日1回15mg錠剤を4錠服用)。
ある他の実施形態において、ALXN1840は、隔日で約15~60mgの範囲で投与されてもよい。ある実施形態において、ALXN1840は、隔日で約60mgの量で投与されるある実施形態において、ALXN1840は、隔日で約15mgの量で投与される。ある実施形態において、ALXN1840は、隔日で約30mgの量で投与される。ある実施形態において、ALXN1840は、隔日で約45mgの量で投与される。ある実施形態において、ALXN1840は、隔日で約60mgの量で投与される。
本開示のある実施形態において、処置の間にALXN1840の治療有効量を増加させることは、さらなる利益を提供してもよい。このように、ある実施形態において、ALXN1840の治療有効量は、処置の6週間後に(すなわち42日後に)増加させる。例えば、ある実施形態において、ALXN1840の初期の治療有効量(すなわち1~42日目)は、毎日約15mgである。ALXN1840の増加させた、続く治療有効量(すなわち、43日目などのように、42日目の後)は、ある実施形態において、毎日約30mgである。ある実施形態において、ALXN1840の増加させた、続く治療有効量は、毎日約45mgである。ある実施形態において、ALXN1840の増加させた、続く治療有効量は、毎日約60mgである。例えば、ある他実施形態において、ALXN1840の初期の治療有効量は、毎日約30mgである。ALXN1840の増加させた、続く治療有効量は、ある実施形態において、毎日約45mgである。ある実施形態において、ALXN1840の増加させた、続く治療有効量は、毎日約60mgである。
本開示のある実施形態において、処置の間にALXN1840の治療有効量を減少させることは、さらなる利益を提供してもよい。このように、ある実施形態において、ALXN1840の治療有効量は、処置の6週間後に(すなわち42日後に)減少させる。例えば、ある実施形態において、ALXN1840の初期の治療有効量(すなわち1~42日目)は、毎日約60mgである。ALXN1840の減少させた、続く治療有効量(すなわち、43日目などのように、42日目の後)は、ある実施形態において、毎日約45mgである。ある実施形態において、ALXN1840の減少させた、続く治療有効量は、毎日約30mgである。ある実施形態において、ALXN1840の減少させた、続く治療有効量は、毎日約15mgである。例えば、ある他実施形態において、ALXN1840の初期の治療有効量は、毎日約30mgである。ALXN1840の減少させた、続く治療有効量は、ある実施形態において、毎日約15mgである。
本開示の方法は、一次治療として有用である。このように、本開示の方法のある実施形態において、対象は、ウィルソン病のための処置を以前に受けていない(すなわち、処置未経験の対象)。
本開示の方法はまた、WDの二次治療及び/又は一次維持療法として有用である。このように、本開示の方法のある実施形態において、対象は、WDのための標準治療(SoC)による処置を以前に受けたことがある。例えば、ある実施形態において、対象は、トリエンチンを以前に受けたことがある(トリエチレンテトラアミン;N’-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチル]エタン-1,2-ジアミンとしても知られている)。トリエンチンは、CUPRIOR(登録商標)(GMP-Orphan United Kingdom Ltd)、SYPRINE(登録商標)(Aton Pharma,Inc.)、又はCufence(Univar,Inc.)という名称で販売されていてもよい。ある実施形態において、対象は、D-ペニシラミンを以前に受けたことがある(ペニシラミン;(2S)-2-アミノ-3-メチル-3-スルファニルブタン酸としても知られている)。D-ペニシラミンは、CUPRIMINE(登録商標)(Valeant Pharmaceuticals)又はDEPEN(登録商標)(Meda Pharmaceuticals)という名称で販売されていてもよい。ある実施形態において、対象は、亜鉛を以前に受けたことがある。ある実施形態において、対象は、トリエンチン、D-ペニシラミン、及び/又は亜鉛を以前に受けたことがある。ある他の実施形態において、対象は、トリエンチン及び/又はD-ペニシラミンを以前に受けたことがある。
本開示の方法のある実施形態において、対象は、24週間以下の間、WDのための標準治療による処置を受けたことがある。ある実施形態において、標準治療による処置は、12週間以下又は6週間以下又は4週間以下であった。標準治療による処置は、継続的である必要はない。例えば、対象は、合計して24週間以下(例えば12週間以下又は6週間以下又は4週間以下)の処置になる断続的な処置を受けてもよい。しかしながら、ある実施形態において、標準治療による処置は、継続的である。
本開示の方法のある実施形態において、対象は、4週間以下の間、WDのための標準治療による処置を受けたことがある。
本開示の方法のある実施形態において、対象は、少なくとも4週間の間、WDのための標準治療による処置を受けたことがある。ある実施形態において、標準治療による処置は、少なくとも6週間又は少なくとも12週間又は少なくとも24週間又は少なくとも36週間又は少なくとも48週間又は少なくとも52週間の長さであった。標準治療による処置は、継続的である必要はない。例えば、対象は、合計して少なくとも4週間(例えば少なくとも6又は少なくとも12又は少なくとも24又は少なくとも36又は少なくとも48又は少なくとも50又は少なくとも52週間又は少なくとも103週間)の処置になる断続的な処置を受けてもよい。しかしながら、ある実施形態において、標準治療による処置は、継続的である。
本開示の方法のある実施形態において、対象は、処置を以前に受けていない又は対象は、ウィルソン病のためなどの、銅代謝関連疾患若しくは障害のための4週間以下の標準治療による処置を以前に受けた。
本明細書において記載される本開示の方法において、対象は、ビスコリンテトラチオモリブデートを投与する少なくとも2週間前に、標準治療による処置を終了した。ある実施形態において、対象は、ビスコリンテトラチオモリブデートを投与する少なくとも3週間、少なくとも4週間、又は少なくとも6週間前に、標準治療による処置を終了した。
本明細書において使用されるように、用語「個人」、「患者」、又は「対象」は、区別なく使用され、哺乳動物を含む任意の動物、少なくとも1つの実施形態においてヒトを指す。ある実施形態において、対象は、健康な対象である。ある実施形態において、対象は、WDに罹患している。本明細書において記載される本開示の方法のある実施形態において、対象は、肝硬変を有する。ある他の実施形態において、対象は、肝硬変を有していない。
ある実施形態において、「約」を前に使用することによって、値が近似値として表される場合、特定の値が、1つの可能な実施形態を形成し、与えられた値を変動させることが可能であることが理解されるであろう(例えば、約80は、80±10%を含んでいてもよい)。それぞれの範囲の端点は、他方の終点と関連して及び他方の終点とは無関係に両方で有効であることがさらに理解されるであろう。
本明細書において使用されるように、「総銅」は、血中の(例えば血清又は血漿中の)すべての銅種の合計を指す。総銅は、セルロプラスミン(Cp)結合銅及びすべての種の非セルロプラスミン結合銅の両方を含む。全般的に、総銅は、誘導結合プラズマ-マススペクトロメトリー(ICP-MS)などのように、質量分析によって高い感度及び特異性で、直接測定されてもよい。
用語「NCC」は、セルロプラスミンに結合しておらず(すなわち「非セルロプラスミン結合銅」)、血液(例えば血清又は血漿など)中の総銅及びCpの直接的な測定並びに以下の式を使用して推定される総銅のうちの画分を指す。
Figure 2023502389000003

計算は、6つの銅原子が、常に単一のCp分子に結合している並びにNCC及びセルロプラスミンの濃度が、直接相関しているという仮定を前提とする。現実には、Cpは、Cp1分子当たりに結合する銅原子の数においてかなりの不均一性を示すかもしれない。この式は、6つの銅原子が、Cp1分子当たりに結合することを仮定するが、銅/Cp比は、疾患の状態により変動する。実際に、6~8個の銅原子が、実際のところCpと結合することができ、WDでは、普通、6つよりも少ない銅原子が、Cp1分子当たりに結合する。
非セルロプラスミン結合銅は、アルブミン、トランスキュプレイン(transcuprein)、及び他のそれほど豊富ではない血漿タンパク質に結合した又はテトラチオモリブデート-Cu-アルブミン三部複合体(TPC)における、総銅のうちの画分を含む。TPCの濃度は、直接測定することができないが、ある実施形態において、TPCの濃度は、代わりにモリブデン濃度を使用して推定されてもよい。
本開示の方法は、以下の実施例によってさらに例示され、これらの実施例は、本開示を、範囲又は精神において、実施例において記載される特定の手順及び化合物に限定するものとして解釈されるべきではない。
材料及び方法
MicroPET/MRI
野生型ラットは、解剖学的磁気共鳴画像法(MRI)1T及びダイナミック陽電子放射断層撮影(PET)(Mediso Medical Imaging Systems、Budapest、Hungary)を受けた。イソフルランによる麻酔を始め、ラットをアクリルガラスチャンバー中に置き、スキャンの間、マスクで呼吸を維持した。1回分の64Cu(≒10MBq/動物)を、尾静脈カテーテルを介して又は腹腔内に注射した。PETスキャニングを、注射後最初の120分に実行し、その後、25分のT1強調MRIスキャンを続けた。
PET画像は、三次元ordered subset expectationアルゴリズム(Tera-Tomo 3D;Mediso Medical Imaging Systems、Budapest、Hungary)により、繰り返し(iteration)4及びサブセット6並びに0.6×0.6×0.6mmのvoxelサイズで再構成した。データは、遅延同時計数窓(delayed coincidence window)を使用して、不感時間、減衰、及び偶発同時計数(random)について補正し、減弱及び散乱については補正しなかった。120分のダイナミックPETスキャンを、15分の8フレームとして再構成した。
コントロールAtp7b+/-及びWD Atp7b-/-ラットに、通常の固形飼料(1314;13.89mg Cu/kg;Altromin Spezialfutter GmbH、Seelenkamp、Germany)及び水道水を適宜与えた。ラットはすべて、処置スタート時に健康で、急性肝障害のサインを示さなかった(血清AST<200U/L及び血清ビリルビン<0.5mg/dl)。Atp7b-/-ラット(年齢:79~96日)を、毎日1回2.5mg/kg体重(bw)ビス-コリンTTM(ALXN1840)又は毎日1回100mg/kg bw D-ペニシラミン(DPA)により、4日間連続で腹腔内処置した。未処置Atp7b+/-及びAtp7b-/-ラットは、コントロールとして果たした。尿及び糞便を、24時間間隔で収集し、このために、ラットを、4日間、代謝ケージ中に個々に収容した。通常のケージにおいてグループで収容した、処置を止めた2日間の静止期の後、ラットを、血清収集のために屠殺した。尿、血清、及び糞便中の銅レベルを、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-OES、ARCOS、SPECTRO Analytical Instruments、Kleve、Germany)によって、以前に記載される通りに(Zischka,H.,et al.,J Clin Invest,2011.121(4):p.1508-18)、分析した。
ゲルろ過クロマトグラフィー
10mgの脂肪酸不含ウシ血清アルブミン(以降アルブミンと称される、Carl Roth、Karlsruhe、Germany)を、10mM Tris-HClバッファー(pH7.4)中に再懸濁し、45μLの10mM塩化銅と混合した。記載がある場合は、45μLの10mM ALXN1840又はDPAを、Superdex 75 10/300 GLカラム(GE Healthcare、Chicago、USA)にサンプルをロードする前に、Cu-アルブミン複合体に追加した。1mL画分を、Bradfordアッセイによって、タンパク質含有量を(Bradford,M.M.,Anal Biochem,1976.72:p.248-54)、ICP-OESによってモリブデン及び銅レベルを(Zischka,H.,et al.,J Clin Invest,2011.121(4):p.1508-18)、並びに1,2-ナフトキノン-4-スルホナート(NQS)を使用してDPA含有量を、少し変更したが、以前に記載される通りに(Elbashir,A.,PharmacoVigilance Review,Vol.01:2.2013)、分析した。手短に言えば、50μLの各画分を、透明な96-ウェルプレートにおいて、10μL 0.2%NQS、10μLの0.2Mリン酸ナトリウムバッファー(pH12.0)、及び30μL ddHOと混合した。サンプルを20分間インキュベートし、吸光度を452nmで測定した。DPAの絶対的レベルを、等しく処置したDPA標準溶液(25μM~250μM)を使用して算出した。
三部複合体アルブミン-銅-ALXN1840(TPC)のX線結晶解析
100mgアルブミンを、50mMリン酸カリウム及び150mM塩化ナトリウム(pH7.5)を含有するバッファー中に懸濁した。塩化銅及びALXN1840を、2倍のモル過剰で追加し、混合物を、37℃で30分間インキュベートした。Cu-アルブミン-ALXN1840混合物を、PBS(pH7.4)により平衡にしたS200ゲルろ過カラムにロードした。モノマーの状態のCu-アルブミン-ALXN1840(TPC)タンパク質に相当する画分をプールし、タンパク質を、100mg/mLまで濃縮した。結晶化条件のスクリーニングは、0.2μLのタンパク質複合体溶液及び0.2μLの緩衝液を混合することによって、シッティングドロップ蒸気拡散法で、市販されているバッファーセットを使用して実行した。結晶は、0.1M SPGバッファー(pH7.0)及び0.25% PEG1500を含有する溶液から室温で得られた。結晶は、母液中30%グリセロールにおいて凍結保護し、液体窒素において瞬間冷却した。回折データは、ESRF(Grenoble、France)でID23-2ビームラインで収集した。データは、XDを使用して指数付けして、積分し(Krug,M.,et al.,Journal of Applied Crystallography,2012.45(3):p.568-572;Kabsch,W.,Acta Crystallogr D Biol Crystallogr,2010.66(Pt 2):p.125-32)、Scalaを使用してスケーリングして、マージした(Evans,P.Acta Crystallogr D Biol Crystallogr,2006.62(Pt 1):p.72-82)。初期位相は、Phaser(McCoy,A.J.,Methods Mol Biol,2017.1607:p.421-453)並びに検索モデルとしてアルブミン構造(PDB 4F5S及び(Bujacz,A.,Acta Crystallogr D Biol Crystallogr,2012.68(Pt 10):p.1278-89)を使用して算出される分子置換によって得た。初期モデルは、Cootを使用して、結果として生じる電子密度マップにより手動で再構築した(Emsley,P.,et al.,Acta Crystallogr D Biol Crystallogr,2010.66(Pt 4):p.486-501)。低解像度のデータのために、精密化した構造は、0.40未満のRfree値に達しなかった。それにもかかわらず、ALXN1840の存在に関する最終的なモデルは、強い検出可能なシグナルをもたらすモリブデン錯体の大きな散乱因子により、分析することが可能であった。
電子常磁性共鳴(EPR)
EPR測定のために、Cu-アルブミン(2mM/1mM)、Cu-アルブミン-ALXN1840(TPC、2mM/1mM/1mM)、及びアルブミン-ALXN1840(1mM/1mM)の複合体を、10mM Tris/HCl(pH7.4)バッファーにおいて調製し、記載がある場合は、測定の直前に、過剰量の亜二チオン酸ナトリウムにより還元した(Merck、Darmstadt、Germany)。EPRスペクトルは、約9.5GHzのXバンドで作動するECS106スペクトロメーター(Brucker BioSpin、Karlsruhe、Germany)を使用して、77Kで記録した。
細胞培養
SHSY5Y(ヒト神経芽細胞腫)細胞、U87MG(ヒト星状細胞腫)細胞、EA.hy926(ヒト内皮)細胞、及びHepG2(ヒト肝細胞癌)細胞は、ATCC(Wesel、Germany)から購入し、10%FCS(Biochrom、Berlin、Germany)及び1%抗生物質-抗真菌剤(Life Technologies、Carlsbad、USA)を補足したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)において培養した。細胞はすべて、5%COを有する湿潤雰囲気において37℃に維持した。
細胞毒性アッセイ
2×10細胞を、96-ウェルプレートの各ウェルに播種し、一晩インキュベートした。翌日、細胞を、増加性の銅濃度(0~2500μM)及び250μMアルブミン(1:1、2:1、3:1、4:1、及び10:1のCu-アルブミンモル比をもたらす)により、DMEM(2%FCS)中750μM ALXN1840又はDPAの非存在下又は存在下において、24時間処置した。細胞毒性は、CellTiter-Glo(登録商標)アッセイ(Promega、Madison、USA)又はトリパンブルー色素排除法によって決定した。
細胞銅含有量
2×10細胞を、750μM銅及び250μMアルブミンと共に(すなわち、3:1のCu-アルブミンモル比で)、DMEM(2%FCS)中それぞれ750μM ALXN1840又はDPAの非存在下又は存在下において、24時間インキュベートした。その後、細胞を、トリプシン処理し、カウントした。細胞生存率を、トリパンブルー色素排除法によって決定した。細胞の銅及びモリブデン含有量を、ICP-OES(Ciros Vision、SPECTRO Analytical Instruments、Kleve、Germany)によって、以前に記載される通りに(Zischka,H.,et al.,J Clin Invest,2011.121(4):p.1508-18)、分析した。
電子顕微鏡法
細胞の電子顕微鏡法は、以前に記載される通りに(Einer,C.,et al.,Cell Mol Gastroenterol Hepatol,2018.7(3):p.571-596)、1200EX電子顕微鏡(JEOL、Akishima、Japan)により、60kvで行った。画像は、KeenView IIデジタルカメラ(Olympus、Hamburg、Germany)により撮影し、iTEMソフトウェアパッケージ(analySIS FIVE、Olympus、Hamburg、Germany)によって処理した。
ミトコンドリア機能
U87MG細胞及びEA.hy926細胞は、DMEM(2%FCS)のみにより又は750μM塩化銅及び250μMアルブミンを含有するDMEM(2%FCS)により、750μM ALXN1840又はDPAの非存在下又は存在下において、24時間、前処置した。酸素消費量は、高精度呼吸測定(HRR)によって、Oxygraph-2k及びDatLab 7.0(Oroboros Instruments GmbH、Innsbruck、Austria)を使用して、以前に記載される通りに(Pesta,D.and E.Gnaiger,Methods Mol Biol,2012.810:p.25-58)、評価した。チャンバーごとに、1.5~2×10生細胞を、2mLのMiR05バッファー(0.5mM EGTA、3mM MgCl、60mMラクトビオン酸、20mMタウリン、10mM KHPO、20mM HEPES、110mMスクロース、1g/Lアルブミン、pH7.1)において供給し、ルーチン呼吸を、測定した。2.5μMオリゴマイシン(F-ATPアーゼの阻害剤)の追加は、リーク呼吸の測定を可能にし、CCCPの少しずつの追加(1mM原液から1μLずつ)は、最大酸素流量、それによって電子伝達系(ET)の能力の定量を可能にした。酸素流量は、2.5μMの複合体III-阻害剤アンチマイシンAの追加によって、非ミトコンドリア酸素消費プロセス(ROX)に対してベースライン補正した。
複合体IV活性測定のために、細胞を、DMEM(2%FCS)のみにより又は750μM塩化銅及び250μMアルブミンを含有するDMEM(2%FCS)により、750μM ALXN1840又はDPAの非存在下又は存在下において、24時間、前処置した。複合体IV活性を、以前に記載される通りに測定した(Spinazzi,M.,et al.,Nat Protoc,2012.7(6):p.1235-46)。手短に言えば、約2.5×10細胞を、剥離し、遠心分離によってPBSにより2回洗浄し、細胞ペレットを、200μLの20mM低張カリウムバッファー中に再懸濁した。3回の凍結融解サイクルの後に、複合体IV活性は、10μLのサンプルを、0.3mM KCNを有する又は有していない50μM還元型シトクロムcを含有する90μLの50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)に追加することによって、測定した。吸光度は、プレートリーダーにおいて10分間550nmで測定し(Synergy 2、BioTek Instruments, Inc.、Bad Friedrichshall、Germany)、複合体IV活性は、非特異的活性(KCNの存在下における)について補正した初速度の直線の傾きから算出し、Bradfordアッセイによって決定されるタンパク質含有量に対して標準化した。
内皮血液脳関門モデル
経上皮抵抗(TEER)実験のために(Srinivasan,B.,et al.,J Lab Autom,2015.20(2):p.107-26)、凍結保存した初代ブタ脳毛細血管内皮細胞(PBCEC)を、解凍し、ニュートラルレッドアッセイを使用する細胞毒性試験のために、ラット尾コラーゲンコーティング96-ウェルプレート(Repetto,G.,A.del Peso,and J.L.Zurita,Nat Protoc,2008.3(7):p.1125-31)又は関門の完全性についての研究のためにTranswell(登録商標)インサート(面積:1.12cm、孔径:0.4μm;Corning、New York、USA)に接種した。細胞は、10%FCS、50Uペニシリン/mL、50μg/mLストレプトマイシン、100μg/mLゲンタマイシン、及び0.7mM l-グルタミンを補足したEarle培地199において48時間培養し、5%COを有する湿潤雰囲気において37℃に維持した。続いて、培地を、50Uペニシリン/mL、50μg/mLストレプトマイシン、100μg/mLゲンタマイシン、及び4.1mM L-グルタミン並びに550nMヒドロコルチゾンを含有するDMEM/ハムF12(1:1)に変え、さらに48時間して、培地を、それぞれ250μM DPA又はALXN1840の非存在下又は存在下において、250μM銅(及び83.3μMアルブミン、Cu-アルブミンモル比3:1)を含有する処置溶液に変えた。TEER及び電気容量値は、CellZscope装置を使用して、48時間にわたって継続的にモニターした(nanoAnalytics、Munster、Germany)。初期TEER値>600Ωcm及び0.45~0.6μF/cmの間の電気容量値を有するPBCEC単層のみを、透過性の研究に使用した(Bornhorst,J.,et al.,J Biol Chem,2012.287(21):p.17140-51)。関門の完全性は、TEER値をそれぞれのスタート値に対して標準化することによって算出した。
処置スタート時、試験物質への曝露のおよそ24及び48時間後、20μLの頂端培地及び40μLの側底培地を、続く銅の定量のために収集した。総銅は、ICP-MS/MSによって、以前に記載される通りに決定した(Kopp,J.F.,et al.,J Trace Elem Med Biol,2019.54:p.221-225)。密着結合タンパク質の免疫細胞化学的染色のために、Transwell(登録商標)膜インサート上で培養したコンフルエントなPBCECを、以前に記載される通りに処理した(Muller,S.M.,et al.,Archives of Toxicology 2018.92(2):p.823-832)。手短に言えば、PBCECを、ホルムアルデヒドにより固定し、Triton X-100を使用して透過化処理した。アルブミンによる非特異的結合部位のブロッキングの後に、細胞を、抗クローディン5又は抗ZO-1抗体(Zytomed Systems GmbH、Berlin、Germany)と共にインキュベートした。第2のブロッキングステップ後に、細胞を、二次抗体にコンジュゲートされたAlexa Fluor(登録商標)488(Invitrogen、Molecular Probes Inc.、Eugene、USA)により処置した。Hoechst33258(Merck、Darmstadt、Germany)を、細胞核を染色するために使用した。続いて、膜を、インサートから切り離し、Aqua Poly/Mount中に封入した(Polysciences Inc.、Washington、USA)。24時間の固化期間の後、サンプルを、Leica Application Suite Xと組み合わせたLeica Microsystems CMS GmbH(Wetzlar、Germany)のDM6 B蛍光顕微鏡を使用して判定した。
Transwell(登録商標)インサート上で成長させたPBCECの電子顕微鏡法は、少し変更したが、以前に記載される通りに実行した(Ye,D.,K.A.Dawson,and I.Lynch,Analyst,2015.140(1):p.83-97)。手短に言えば、2.5%グルタルアルデヒドによる固定後、細胞単層を、30分間、1%四酸化オスミウムにより後固定し、エタノールによって脱水した。細胞単層を、エタノール中エポキシ樹脂(1:2、1:1、2:1、各20分)に段階的に包埋し、最終的に、カッティング及び画像獲得の前の前包埋標識(pre-embedding)なしで、60℃で48時間、100%エポキシ樹脂に包埋した。
その他/統計
細胞タンパク質レベルは、BCAアッセイによって決定した(Smith,P.K.,et al.,Anal Biochem,1985.150(1):p.76-85)。細胞サイズは、LUNA-II(商標)Automated Cell Counter(Logos biosystems、Anyang、South Korea)を使用して決定した。
本開示の全体にわたって、「N」は、生物学的反復の数を示し、「n」は、技術的反復の数を示す。データは、標準偏差(SD)と平均値とする。統計的有意差は、GraphPad Prism 7を使用して、図面の説明において示されるそれぞれの検定により解析した(GraphPad Software Inc.、La Jolla、USA)。
実施例1:銅キレート剤は血中銅を特異に上昇させる
キレート化は、ウィルソン病(WD)において治療法となる。過剰な銅の流動化が、キレート化された銅の腎クリアランスに必要であるかもしれないが、それにもかかわらず、流動化は、結果として、可能性として望ましくない全身性の銅の影響、例えば「神経症状の悪化」につながり得る。実際に、静脈内64Cu注射の際に、数分以内に、金属は、野生型ラットにおける脳を支える血管において、PETによって多量にトレースすることができる(図1A)。対照的に、腹腔内64Cu注射は、栄養としての銅の摂取を模倣しており、数時間後でさえ、脳を支える血管において、ほとんど銅を増加させない(図1A及び1E)。
どの程度の銅が、未処置Atp7b+/-コントロール及びAtp7b-/-ラット(その代わりにWDラットと称される)における、さらにまた、DPA又はALXN1840により処置したAtp7b-/-ラットにおける血清中に現れるのかを調査した(図1B)。WD患者のように、WDラットは、セルロプラスミンへの銅の組み込みを欠き、そのため、未処置Atp7b-/-動物は、非常に低い血清銅レベルを有する。しかしながら、ALXN1840による処置に際して、WDラットの血清銅レベルは、有意に増加した(ALXN1840-Cu-アルブミン三部複合体の形成によるものと考えるのが妥当である、下記を参照)が、DPAによる処置の際は増加しなかった(図1B)。DPAによって増加しなかったのは、素速い腎銅クリアランスによるものかもしれないので、尿(図1C)、さらにまた糞便を介した銅の排出について調査した(図1D)。未処置Atp7b+/-及びAtp7b-/-ラットは、24時間にわたって収集した尿又は糞便において低い銅レベルを有したが、WDラットのDPAによる処置は、結果として、尿への銅排出の有意な増加につながり、WD患者における典型的な診断所見と一致した。対照的に、正味の銅排出の著しい上昇は、選んだ条件(すなわち、96時間の観察期間)下でのALXN1840処置に際して示されなかった。このように、これらのキレート剤は、血中銅レベルを様々な程度に上昇させるかもしれない。DPAの場合、速やかな腎クリアランス(投薬後1~3時間の間の血中ピーク)は、その検出を阻止したかもしれないが、銅血清レベルの有意な上昇が、WDラットにおけるALXN1840処置の際に観察された。
実施例2:ALXN1840は銅及びアルブミンと安定した複合体を形成する
WD患者において、銅は、アルブミンへの結合がゆるいかもしれない。実際に、750μM銅を250μMアルブミンと(すなわちモル比3:1)混合した際に、続くゲルろ過によって、アルブミンから、約半分~2/3の銅が分離した(図2A上のパネル)。DPAと共にインキュベートした場合(モル比3:1:3のCu-アルブミン-DPAで)、銅の一部は、アルブミンと共にとどまり、これは、高親和性アルブミン結合部位と比較して、DPAの低い銅親和性によると考えるのが妥当であり(K(DPA)=2.4×10-16M対K(アルブミンのN末端)=6.7×10-17M)、それに対してその残りの銅は、DPAと一緒に移動した(図2A下のパネル)。このように、DPAが、アルブミンから銅を解離させる能力は、適用されたモル比でゆるく結合した銅に限られるかもしれないように思われる。
興味深いことに、高親和性キレート剤ALXN1840(K=2.3×10-20M)と共にコインキュベートした場合、アルブミンから銅が完全には解離せず、むしろ、タンパク質及び大部分の銅並びにALXN1840(モリブデンとして検出される)を含む1つの顕著なゲルろ過ピークが現れた(図2A中央のパネル)。この特徴は、TTMについて記載されており(TTMは、ALXN1840中の活性分子である)、以前に「三部複合体」(TPC)と称されたCu-アルブミン-ALXN1840/TTM複合体の形成によるものである。
単一のTPCゲルろ過ピークは、TPCタンパク質への銅のしっかりとした結合を示した。従って、TPCのX線結晶解析を用い(図2B)、データ精密化に際して、ALXN1840について調べると、His241、Tyr149、Arg256、Lys237、Ala290によって形成されるアルブミンにおける深いくぼみである、いわゆるSudlow部位1に2つの銅イオンが結合していた(図2B)。このように、アルブミン、銅、及びALXN1840が同時に存在した際に、キレート剤に結合した銅が、タンパク質の中に深く埋め込まれた。腎アルブミンクリアランスが非常にわずかであるので、この発見は、ALXN1840処置WDラットにおいて尿による銅の排出がないことを説明するかもしれない(図1C)。加えて、電子常磁性共鳴(EPR)研究は、TPC対Cu-アルブミンにおいて銅レドックスステータスにおける変化を実証した(図2C)。Cu-アルブミンは、典型的な第二銅Cu(II)シグナルを示すが、ALXN1840の存在下において、EPRアクティブ第二銅銅シグナル強度は、約50%下落し、一方の第二銅銅イオンのEPRサイレント第一銅Cu(I)への還元を示唆した(図2C第2のトレース)。実際、Cu(II)をCu(I)に完全に還元する亜二チオン酸ナトリウムの追加により、EPRシグナルは、Cu-アルブミン及びTPCにおいて検出されなかった(図2C、下のトレース)。
要約すると、上記のモル比を使用すると、しっかりと結合した銅のみが、アルブミンと共にとどまったのに対して、ゆるく結合した銅は、ゲルろ過に際して遊離し、DPAに結合した又はALXN1840によってアルブミンのSudlow部位に移転し、TPCを形成した。
実施例3:高親和性キレート化はCu-アルブミン誘発性の細胞毒性を妨げる
EA.hy926(ヒト内皮)細胞、U87MG(ヒト星状細胞腫)細胞、及びSHSY5Y(ヒト神経芽細胞腫)細胞などの代用の脳細胞型並びに加えて、HepG2細胞(ヒト肝細胞癌)を、Cu-アルブミンに対するそれらの脆弱性について試験した(図3)。アルブミンは、250μMの濃度とし、Cu対アルブミンの増加性のモル比(1:1~10:1)を、進行性の銅負荷を模倣するために用いた。1:1のモル比では、銅はアルブミンにかなりしっかりと結合したが、高い比では(≧3:1の場合など)、ゆるく結合した銅の量が、増加した(3:1の比については、図2A上のパネルにおいて例証的に示される)。
すべての試験した細胞株は、24時間のインキュベーションに際してCellTiterGlo(登録商標)アッセイによって評価されるように、ゆるくアルブミンに結合したCuの用量依存的な増加に対する細胞毒性を実証した(図3)。750μMの濃度の高親和性キレート剤ALXN1840は、4:1のCu-アルブミン比まで、このような毒性を完全に回避した(図3)。対照的に、DPAは、有効性がはるかに低かった。HepG2細胞においてのみ、また、750μMの高用量でのみ、中程度の救出効果が、DPA追加の際に観察された(図3)が、それは、例えば内皮EA.hy926細胞において、全く不在であった。これは、とりわけ内皮細胞が、Cu-アルブミンに対して脆弱であるかもしれないこと及びDPAが、このCu毒性をブロックすることができないことを示す。注意すべきことに、銅がない設定において、2mMに及ぶDPA濃度でさえ、無毒性であるとわかったので、DPAによる救出がないことは、DPA自体の毒性によるものではない(図4)。このような設定で、すなわち、外因的なCu-アルブミンの追加なしでは、むしろ、高親和性キレート剤ALXN1840が、おそらく、シトクロムcオキシダーゼなどの銅を含有する不可欠な酵素に対する干渉により(図4B)、高濃度で毒性になる(図4A)。
実施例4:ALXN1840はその桁はずれの銅親和性によって銅毒性を妨げる
図5から分かるように、高用量のCu-アルブミン(ここでは3:1の比)は、すべての試験した細胞型において、細胞銅含有量を100倍超、増加させ(図5、左のパネル)、大量の細胞死が平行し、SHSY5Y細胞は受けた影響が最も小さく、EA.hy926細胞及びHepG2細胞は最も影響を受けた(図5、右のパネル)。この銅毒性は、高用量の、すなわち銅と等モルのDPAによってでさえ、回避することができなかった(図3及び図5、右のパネル)。そのうえ、細胞株のいずれにおいても、EA.hy926細胞及びSHSY5Y細胞においていくらかの低銅含有量の傾向があったにもかかわらず、有意な除銅は、DPAの併用処置の際に、示されなかった(図5、左のパネル)。対照的に、高親和性キレート剤ALXN1840による併用処置は、EA.hy926細胞及びU87MG細胞において、銅含有量を有意に減少させ、細胞生存度は、有意に維持された(図5、右のパネル)。それにもかかわらず、これらのデータは、高親和性キレート剤によって発動される細胞生存率の保護が、しかしながら、部分的に、細胞銅含有量を下げるその能力によるものであることにすぎないことを示す。HepG2細胞において、例えば、非常に類似した細胞銅含有量が、ALXN1840、DPAによって併用処置した又はCu-アルブミンのみによって処置した細胞において見出された(図5、左上のパネル)。この等しい銅負荷量にもかかわらず、ALXN1840は、HepG2細胞を救ったのに対して、DPAはそうではなかった(図5、右上のパネル)。そのため、細胞の外部か内部かにかかわらず、そのしっかりとした結合によって銅毒性を回避したのは、ALXN1840の桁はずれの銅親和性(K≒10-20)であることが、はるかに妥当と思われる。実際、可能性として考えられる細胞結合パートナーの最も高い既知の銅親和性でさえ、桁が小さい(K≒10-16)。対照的に、その解離定数がちょうどこの後者の範囲にあるので、これはまた、DPAが、細胞生存度を確保することができなかった又は細胞生存度の増加の傾向があっただけであった理由を説明するかもしれない。
実施例5:ALXN1840はCu-アルブミン誘発性のミトコンドリア損傷を軽減する
本実施例は、Cu-アルブミンが、血液脳関門(BBB)を構成する細胞、すなわち内皮細胞及び星状細胞中のミトコンドリアに対して構造上の及び/又は機能的な損傷を負わせ得るのかどうかについて調査した。銅誘発性の細胞の死の第2の影響としてのミトコンドリア欠損を除外するために、Cu-アルブミン濃度(比3:1)は、細胞生存率が未処置コントロールと同等となるように調整した(図6A)。この他、細胞タンパク質含有量も細胞サイズも、このような設定によって影響を受けなかったが、未処置コントロールと比較して細胞銅含有量における桁はずれの増加を引き起こした(図6A)。
Cu-アルブミン対未処置細胞の電子顕微鏡写真は、EA.hy926細胞における顕著なミトコンドリア構造の変化及びU87MG細胞における存在するが、より中程度の変化を実証した(図7A)。ミトコンドリアクリステの損失又は構造上の方向性の欠落及び膜状の封入体が、観察された(図7Aの矢印)。ALXN1840併用処置は、これらの構造上の異常を部分的に回避し、ミトコンドリアが、未処置コントロール細胞と同様の高電子密度マトリックス及び明確な構造をもつクリステを有することを実証する。対照的に、DPAは、ミトコンドリアが、短く、明確な構造をもたないクリステ並びに膜状の封入体を示したので、効果がなかった/わずかであった(図7A)。
これらの構造上の欠乏は、機能的なミトコンドリアの欠損が平行し(図7B)、これらは、完全非共役条件下(すなわち、ミトコンドリアの呼吸量を最大に引き上げる、ETS、図6B)での、処置細胞の高精度呼吸測定法において明らかであった。「ルーチン」(R、すなわちADPの存在下)又は完全非共役状態(ETS、すなわちFCCP滴定)酸素消費速度を、いわゆるリーク状態(L、すなわちADPなしの呼吸)によって割ることによって、呼吸調節比(ミトコンドリアの完全性及び機能性についての典型的なマーカー)を算出する場合、E/L比は、明らかなミトコンドリア生物エネルギー論的欠乏を実証し、これは、ここでも、EA.hy926細胞の場合は有意に又はU87MG細胞の場合は傾向として、DPAによってではなく、ALXN1840の存在下において回避することができた(図7B)。
実施例6:Cu-アルブミンによる血液脳関門のしっかりとした内皮細胞層の破壊はDPAによってではなくALXN1840によって妨げられる
ヒトEA.hy926内皮(及びU87MG星状細胞腫)細胞は、増加性のCu-アルブミン暴露に対して非常に脆弱であり(図3B)、顕著なミトコンドリアの構造上の及び機能的な欠乏を実証した(図7)。
Transwell(登録商標)インサート上で培養した初代ブタ脳毛細血管内皮細胞(PBCEC)を使用する内皮BBBの十分に特徴づけられたインビトロモデル(Muller,S.M.,et al.,Arch Toxicol,2018.92(2):p.823-832;Hoheisel,D.,et al.,Biochem Biophys Res Commun,1998.244(1):p.312-6)を使用した。BBBでのように、これらの初代細胞は、細胞の完全性についての判断基準としてのそれらの経上皮電気抵抗(TEER)及びそれらの単層電気容量の継続的な測定によって評価することができるように、単細胞性のしっかりとした上皮性関門を形成する。
Cu-アルブミン濃度を増加させることにより(すべて3:1のモル比)、TEERが次第に減少した(図8A)ことについて立証した。注意すべきことに、用いた最大のCu-アルブミン濃度(300μM銅/100μMアルブミン)のみが、36時間のインキュベーションの後に、大量の電気容量の増加、すなわち細胞死を引き起こし(図8A)、これは、加えて、ニュートラルレッドアッセイを介して立証された(図8B)。このように、低Cu-アルブミン濃度によって誘発されるBBBの内皮細胞層の漏れやすさは、単なる細胞死の誘発によるものではなく、内皮細胞ストレスの明らかなサインである。
次に、このようなCu-アルブミン誘発性の内皮BBB損傷を妨げる銅キレート剤ALXN1840及びDPAの能力を、決定した(図9)。BBBを直ちに漏出性にした(すなわち、TEERを減少させる、図9A)が、PBCEC単層の時間的に安定した電気容量(図8C)によって証明されるように、観察された時間枠内で細胞死を誘発しなかったCu-アルブミン濃度(250μM Cu/83.3μMアルブミン、3:1のモル比)を、選んだ。DPA併用処置は、銅誘発性TEER損失を妨げることが可能ではなかった(図9A)。対照的に、ALXN1840の存在下においてCu-アルブミンにより処置したPBCEC単層は、48時間、安定したTEER値を実証し、未処置の単層と区別がつかなかった(図9A)。これは、しっかりとしたPBCEC単層(図9Bのコントロール)において直接到達できない、Transwell(登録商標)システムの側底コンパートメントへの銅の流入を決定することによって、さらに立証した。実際に、銅の流入は、Cu-アルブミン処置に際して次第に生じ、DPAによって回避することはできなかったが、ALXN1840併用処置によって完全に回避された(図9B)。このように、Cu-アルブミンの上昇は、そうでなければ遮蔽されているコンパートメントへの銅の流入に関連する内皮細胞死の非存在下において早くも内皮BBB層の漏れやすさを引き起こし、これは、DPAによってではなく、ALXN1840の存在下において回避することができる。
最後になるが、Cu-アルブミン誘発性のPBCEC単層損傷は、免疫細胞化学又は電子顕微鏡法によって視覚化することができる(図10)。第1に、密着結合ストランドの膜内在性タンパク質であるクローディン-5は、未処置コントロール細胞における細胞周縁部で継続的で絶え間ない分布を実証した。対照的に、Cu-アルブミン処置PBCECは、細胞間での間隙形成並びにギザギザした、散在性のクローディン-5の存在を示した。注意すべきことに、核構造の損失/変化は、観察できず、これらの実験において細胞死がなかったことを立証した。ALXN1840の存在下において、クローディン-5発現は、継続的で絶え間なかったのに対して、DPAの存在は、銅誘発性の間隙形成を妨げることができなかった(図10、左のパネル)。第2に、細胞内密着結合関連タンパク質であるZonula occludens-1(ZO-1)は、未処置コントロールPBCEC単層において、細胞境界で継続的に存在し、絶え間ないように思われた(図10、中央のパネル)。Cu-アルブミン処置に際して、ZO-1のはっきりした散在性の染色が生じ、DPAによってではなく、ALXN1840併用処置によって完全に保護することができた(図10、中央のパネル)。密着結合でのこのようなタンパク質損失はまた、3番目の電子顕微鏡写真から明らかであった。コントロールPBCEC単層において、タンパク質が豊富な部分でのコントラスト剤の沈着により、これらの構造は、高電子密度であるように思われる。しかしながら、Cu-アルブミン処置に際して、これらの構造は、はるかに電子許容的(electron permissive)となり、DPAによって保護されなかったが、ALXN1840によって保護された(図10、右のパネル)。
実施例7:考察
本開示は、静脈内に存在する銅が、脳を支える血管に到達し得ること(図1)及び増加に際して、銅が、次第に、アルブミンにゆるく結合するようになるかもしれないこと(図2)を実証する。Cu-アルブミンは、細胞毒性となり得(図3、5)、脳を保護するためにしっかりとした関門を構成する内皮細胞は、とりわけ脆弱である。しかし、早くも、細胞死をすぐには発動しないようなCu-アルブミン量で、ミトコンドリアは、脆弱な標的となり(図7)、内皮関門の影響を受けた細胞は、漏出性の密着結合を実証し、進行性の銅の横断移行をもたらす(図9、10)。これらの特徴はすべて、DPAではなく、高親和性銅キレート剤ALXN1840による併用処置によって、大いに回避された(図2~10)。
推定では、18~68%のWD患者が、神経学的症状、例えば振戦、構音障害、及び異緊張症に罹患していると報告されている。銅の脳レベルが、WD患者において大幅に上昇していることが決定された。銅が脳にどうやって蓄積し得るのか(時には数十年間にわたって)についての1つの可能な説明は、例えば部分的な突然の肝臓の死に際して、銅の激しい急変が繰り返され、高い結合力の(affine)血漿結合部位を一時的に圧倒して、脳への銅の取込みを可能にするといったものとすることができるかもしれない。実際、Atp7b-/-ラット肝臓において、銅は、均一に分布しておらず、むしろ、周囲の肝臓組織よりも銅濃度が3.5倍高い「銅ホットスポット」中に存在する。このようなホットスポットの死は、おそらく、一時的な銅の急変をもたらし得る。さらに、ATP7Bは、脳内皮の血液に面している膜に存在するので、突然変異は、結果として、過剰な銅の血液中への差し迫った再輸送の低下/ブロックにつながり、それによって、脳実質への金属の一方向の移入を引き起こし得る。ここでは、CSFを介して体循環に戻すATP7A媒介性の銅輸送のみが、脳銅を下げることを可能にすると思われる。
発明者らは、様々な銅対アルブミン比を試験することによって、ゆるくアルブミンに結合した銅をもたらすと思われる、このような銅の急変を模倣しようとした。実際に、低い比(1:1)を用いた場合、試験した細胞型のいずれにおいても細胞毒性はみられなかった。しかしながら、このCu対アルブミン比を上げた場合、細胞生存率は下がり、内皮細胞はとりわけ脆弱であった。ミトコンドリア欠損の増加及びBBBの第1の関門に似ている内皮細胞層の細胞結合性の破壊は、このようなCu-アルブミン毒性の初期のサインとして、すなわち細胞死が始まることなく、現れる。さらに、このような初期の損傷は、早くも、進行性の経上皮/傍上皮の(para-epithelial)銅通過を可能にした。内皮BBB損傷は、ゆるくタンパク質に結合した銅の上昇に際して、神経型WDにおける可能性として考えられる1つの初期の損傷メカニズムとして、続いて銅の脳への移入の促進を可能にすることが示唆される。
神経症状の悪化は、DPA処置の際に頻繁に生じることが報告されている。高親和性銅キレート剤ALXN1840は、ゆるく結合した銅のアルブミンからの分離及びタンパク質自体の深部のくぼみへのその埋め込み(三部複合体TPCと称される)を引き起こした。従って、Cu-アルブミン毒性のサインは、TPC形成に際して、本研究においてほとんどみられなかった。これは、低細胞銅レベルをもたらす低い細胞TPC取込み対ゆるく結合した銅によるもの又は1~2日間の研究した時間枠における細胞内でも、銅及びALXN1840が強い継続的な結合をしていることによるものであるかもしれない。対照的に、DPAは、銅を尿に送り、血液中へのその通過及び腎クリアランスを実証した。しかしながら、このようなDPAによって始められる銅の尿による排出は、Atp7b-/-ラットの正味の銅摂取量の10%しか、このようなDPA処置に際して尿中に見つけられないので、量的に限られたものであった(すなわち、3.95μモル/24時間の正味の総取込みのうち0.4μモル/24時間、未公開の観察)。それにもかかわらず、DPAによる腎銅クリアランスは、素速く生じ、処置停止の3日後であり、血中銅の上昇は、観察されなかった。Cu-アルブミンのみと同様に、有益な効果は、DPAの存在に際してほとんどみられなかった。
神経損傷は、WD患者において頻繁に生じる。初めの頃の研究は、ネコの脳において、さらにまた他の種でも、直接的な銅毒性を実証した。銅は、これらの患者において最重視すべき、原因となっている神経毒であるということで、現在、意見が一致している。実際、代用の神経細胞及びアストロサイト細胞を含むすべての試験した細胞株は、手が空いている銅に対して非常に脆弱である。以前に報告されたように、ニューロンは、比較的非常に低い、保護的メタロチオネインしか有しておらず、これらの細胞は、銅の攻撃に対して比較的無防備であるように思われる。この点で、本研究において実証されるように、保護的関門細胞に対する銅誘発性の損傷は、脳への比較的野放図な銅の移入を引き起こし得る。DPA処置下で神経症状の増悪を示す4人の神経型WD患者における血液脳関門の関与は、BBB損傷の増加が平行した。DPA併用処置による内皮BBBの救出が観察されなかったので、これは、2つの不利益な結果を招き得るかもしれない。第1に、以前に損傷を受けたBBBを有する神経型WD患者は、DPA処置下で非常に脆弱になり得るかもしれず、第2に、DPA処置は、既存のBBB損傷を悪化させ得るかもしれない。これは、神経型の患者を、DPA処置を始める前に、BBB損傷について試験することができるかもしれないことを示唆する(例えば、血中のS100Bレベル又は脳脊髄液/血清のアルブミン比の定量によって)。このような損傷又は漏れやすさは、早くも無毒性の用量で生じ、内皮細胞のミトコンドリアを1つの脆弱な標的として特定したことが分かった。ミトコンドリアは、BBB透過性において鍵となるプレイヤーとして以前に記載された。本研究と一致して、ミトコンドリア呼吸量の操作は、BBB透過性における速やかな増加及び密着結合の破壊と平行した。
血液脳関門は、銅過負荷に対して非常に感受性の構造である。加えて、DPA併用処置に際しての神経症状の悪化の発生は、DPAがこのような損傷から救うことができないことに関連づけられた。対照的に、高親和性キレート剤は、この点で、はるかに保護的であるように見える。実際、ALXN1840は、ゆるく結びついたアルブミン銅に有効に結合することがわかり(この場合、三部複合体を形成する)、血液脳関門銅毒性を大いに回避した。
本明細書において記載される実施例及び実施形態は、例示的な目的のみのためのものであり、それを考慮した様々な修飾又は変更は、当業者らに示唆され、本出願の精神及び範囲並びに添付される請求項の範囲内に組み込まれることが理解される。本明細書において引用されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、これによって、あらゆる目的において、参照によって、本明細書に援用される。

Claims (38)

  1. それを必要とする対象において銅誘発性神経損傷を低下させるための方法であって、治療有効量のビスコリンテトラチオモリブデートを前記対象に投与することを含む方法。
  2. 前記対象は、ウィルソン病を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 銅誘発性神経損傷を低下させることは、対象における1つ以上の神経学的症状又は精神症状を改善する、低下させる、又は排除する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
  4. 前記1つ以上の神経学的症状又は精神症状は、以下:振戦、構音障害、異緊張症、歩行障害、うつ、社会不安障害、パニック障害、外傷後ストレス障害、前頭葉実行機能能力及び/又は視空間処理の欠損、並びに記憶喪失から選択される、請求項3に記載の方法。
  5. 銅誘発性神経損傷を低下させることは、安定したCu-テトラチオモリブデートアルブミン三部複合体の形成によるものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記Cu-テトラチオモリブデートアルブミン三部複合体は、輸送及び/又は排除のために、前記対象における体循環において役に立つ、請求項5に記載の方法。
  7. 前記銅誘発性神経損傷は、以下:銅誘発性細胞毒性、銅誘発性血液脳関門損傷、及び銅誘発性ミトコンドリア損傷の1つ以上を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 銅誘発性神経損傷を低下させることは、銅誘発性細胞毒性を低下させることによるものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記銅誘発性細胞毒性は、肝細胞、内皮細胞、ニューロン、及び星状細胞の少なくとも1つにおいて低下する、請求項8に記載の方法。
  10. 銅誘発性細胞毒性を低下させることは、細胞生存率を改善する(ビスコリンテトラチオモリブデートの投与を伴わない前記細胞生存率と比較して)、請求項8又は請求項9に記載の方法。
  11. 銅誘発性神経損傷を低下させることは、銅誘発性血液脳関門損傷を低下させることによるものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記銅誘発性血液脳関門損傷の低下は、以下:(a)経上皮電気抵抗(TEER)を維持すること、(b)電気容量を維持すること、及び(c)銅誘発性形態学的変化を低下させることの1つ以上を含む、請求項11に記載の方法。
  13. TEERは、健康な対象と同じレベルに維持される、請求項12に記載の方法。
  14. 電気容量は、健康な対象と同じレベルに維持される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
  15. 前記銅誘発性形態学的変化は、ミトコンドリアクリステの損失若しくは構造上の方向性の欠落及び/又は膜状の封入体である、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 銅誘発性形態学的変化を低下させることは、脳毛細血管内皮細胞の細胞境界でのクローディン-5の継続的で絶え間ない存在及び/又はZonula Occludens-1の存在をもたらす、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 銅誘発性神経損傷を低下させることは、銅誘発性ミトコンドリア損傷を低下させることによるものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記銅誘発性ミトコンドリア損傷の低下は、すべて未処置の対象と比較した、以下:(a)銅誘発性膜封入体の存在を低下させること、(b)クリステの組織化を増加させること又は維持すること、(c)高電子密度マトリックスを増加させること又は維持すること、及び(d)ミトコンドリア呼吸を増加させること又は維持することの1つ以上を含む、請求項17に記載の方法。
  19. 銅誘発性神経損傷を低下させることは、投与後0日目~24週目の範囲にわたる時間間隔の範囲内で生じる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
  20. 最も高いレベルの低下は、投与後0日目~7週目の範囲にわたる時間間隔の範囲内にある、請求項19に記載の方法。
  21. 前記対象は、ウィルソン病のためなどの、銅代謝関連疾患又は障害のための処置を以前に受けていない(すなわち、処置未経験の対象)、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記対象は、ウィルソン病のためなどの、銅代謝関連疾患又は障害のための標準治療による処置を以前に受けた、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記標準治療による処置は、トリエンチン、D-ペニシラミン、及び/又は亜鉛を含む、請求項22に記載の方法。
  24. 前記標準治療による処置は、D-ペニシラミンを含む、請求項22に記載の方法。
  25. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記治療有効量は、1日当たり約15mg~約60mgの範囲にある、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
  26. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記治療有効量は、毎日約15mgである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
  27. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記治療有効量は、毎日約30mgである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
  28. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記治療有効量は、隔日で約15mgである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
  29. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記治療有効量は、隔日で約30mgである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
  30. 1つ以上の神経学的症状又は精神症状における変化に基づいて、ビスコリンテトラチオモリブデートの前記治療有効量を、ビスコリンテトラチオモリブデートの第2の治療有効量に調整することをさらに含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
  31. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記第2の治療有効量は、ビスコリンテトラチオモリブデートの第1の治療有効量よりも低い、請求項30に記載の方法。
  32. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記第2の治療有効量は、ビスコリンテトラチオモリブデートの前記第1の治療有効量よりも高い、請求項30に記載の方法。
  33. 請求項1~24及び30~32のいずれか一項に記載の方法において使用するための、ビスコリンテトラチオモリブデートの治療有効量を含む組成物。
  34. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記治療有効量は、1日当たり約15mg~約60mgの範囲にある、請求項33に記載の組成物。
  35. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記治療有効量は、毎日約15mgである、請求項33に記載の組成物。
  36. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記治療有効量は、毎日約30mgである、請求項33に記載の組成物。
  37. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記治療有効量は、隔日で約15mgである、請求項33に記載の組成物。
  38. ビスコリンテトラチオモリブデートの前記治療有効量は、隔日で約30mgである、請求項33に記載の組成物。
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