JP2023180969A - 封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法 - Google Patents

封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法 Download PDF

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Mika Tanaka
勇磨 竹内
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Abstract

【課題】硬化物の誘電正接が低く、優れた流動性を有する封止用樹脂組成物、これを用いて封止された電子部品装置、及びこれを用いて封止することを含む電子部品装置の製造方法の提供。【解決手段】分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂と、上記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂と、活性エステル硬化剤と、無機充填材と、を含む、封止用樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本開示は、封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法に関する。
通信のために発信された電波が誘電体において熱変換されることで発生する伝送損失の量は、周波数と比誘電率の平方根と誘電正接との積として表される。つまり伝送信号は周波数に比例して熱に変わりやすいので、伝送損失を抑制するために高周波帯ほど通信部材の材料に低誘電特性が要求される。
エポキシ樹脂及びフェノール系硬化剤を含む封止用樹脂組成物は、電子部品用途において広く用いられており、近年、封止用樹脂組成物の硬化物には、比誘電率及び誘電正接が低いことが要求されている。
例えば、特許文献1においては、硬化物の比誘電率が低い封止用樹脂組成物の検討が行われており、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、を含む封止用樹脂組成物が開示される。
特開2001-40182号公報
本発明者らは、特許文献1において開示される封止用樹脂組成物の硬化物の比誘電率には、更なる改善の余地があることを見出した。また、本発明者らは、特許文献1において開示される封止用樹脂組成物には、その流動性に改善の余地があることを見出した。
本開示一実施形態が解決しようとする課題は、硬化物の誘電正接が低く、優れた流動性を有する封止用樹脂組成物、これを用いて封止された電子部品装置、及びこれを用いて封止することを含む電子部品装置の製造方法を提供することである。
<1> 分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂と、上記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂と、活性エステル硬化剤と、無機充填材と、を含む、封止用樹脂組成物。
<2> 上記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂が、下記式(E1)で表される分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂を含む、上記<1>に記載の封止用樹脂組成物。
式(E1)中、Rは1つ又は2つのエポキシ基を有する1価の基を表し、R及びRはそれぞれ独立に脂肪族基を表し、且つ少なくとも一方は、分岐型脂肪族基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。
<3> 式(E1)中、R及びRがそれぞれ独立に炭素数3~20の分岐型脂肪族基である、上記<2>に記載の封止用樹脂組成物。
<4> 封止用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対する、上記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂の含有率が、5質量%~20質量%である、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
<5> 支持部材と、
上記支持部材上に配置された素子と、
上記素子を封止している上記<1>~<4>のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、
を備える、電子部品装置。
<6> 素子を支持部材上に配置する工程と、
上記素子を上記<1>~<4>のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物で封止する工程と、
を含む、電子部品装置の製造方法。
本開示によれば、硬化物の誘電正接が低く、優れた流動性を有する封止用樹脂組成物、これを用いて封止された電子部品装置、及びこれを用いて封止することを含む電子部品装置の製造方法を提供することができる。
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明表した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。 本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい
また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
[封止用樹脂組成物]
本開示の封止用樹脂組成物は、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂と、上記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂と、活性エステル硬化剤と、無機充填材と、を含む。
本開示の封止用樹脂組成物は、硬化物の誘電正接が低く、流動性に優れている。上記効果が奏される理由は明らかではないが、以下のように推察される。
本開示の封止用樹脂組成物は、立体障害の大きい分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂を含む。この分岐型脂肪族エポキシ樹脂は、嵩高い構造を有しており、分子鎖の動きが立体障害により制限されるため、硬化物の誘電正接が低下すると推察される。
また、本開示の封止用樹脂組成物は、活性エステル硬化剤を含み、これにより、硬化物中に生成する極性の大きい2級水酸基の量が低減され、硬化物の誘電正接及び比誘電率が低下すると推察される。
封止用樹脂組成物は、25℃において固体であることが好ましい。25℃において封止用樹脂組成物が固体である場合、その形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。封止用樹脂組成物がタブレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取り扱い性の観点から好ましい。
<分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂>
本開示において、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂とは、分岐型の脂肪族鎖を有するエポキシ樹脂を意味する。本開示の封止用樹脂組成物は、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂を2種以上含んでもよい。
硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減させ、且つ封止用樹脂組成物の流動性を向上する観点から、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂は、下記式(E1)で表される分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂(以下、特定エポキシ樹脂ともいう。)を含むことが好ましい。硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減させ、且つ封止用樹脂組成物の流動性を向上する観点から、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂の総質量に対する特定エポキシ樹脂の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。
式(E1)中、Rは1つ又は2つのエポキシ基を有する1価の基を表す。
式(E1)中、R及びRはそれぞれ独立に脂肪族基を表し、少なくとも一方は、分岐型脂肪族基を表す。
式(E1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、水素原子を表すことが好ましい。
一実施形態において、Rは、1価のグリシジル基である。
他の実施形態において、Rは、下記式で表される1価の基であってもよい。
式:*-(CRCR[(CROG)]
式中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す。
式中、Gはグリシジル基を表す。
式中、m及びnはそれぞれ独立に0~5の整数を表す。
式中、*は式(E1)中の酸素原子との結合部位を表す。
~Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1若しくは2のアルキル基であることがより好ましい。
mは1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
nは1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減させ、且つ封止用樹脂組成物の流動性を向上する観点から、式(E1)中、R及びRで表される脂肪族基の炭素数の合計は10~30であることが好ましく、13~25であることがより好ましい。
及びRはそれぞれ独立に炭素数3~20の分岐型脂肪族基であることが好ましく、炭素数3~15の分岐型脂肪族基であることがより好ましく、炭素数5~10の分岐型脂肪族基であることがさらに好ましい。
分岐型脂肪族基が有する分岐鎖の炭素数は、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。
硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減させ、且つ封止用樹脂組成物の流動性を向上する観点から、R及びRはそれぞれ独立に極性置換基を有しない脂肪族基であることが好ましい。本開示において極性置換基とは、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ホウ素原子、リン原子、ケイ素原子等)を有する置換基を表す。
及びRで表される脂肪族基は置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。ここで、脂肪族基に対する置換基としては、ハロゲン原子等が挙げられる。なお、本開示において、脂肪族基に対する置換基にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の脂肪族基は含まれない。
硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減させ、且つ封止用樹脂組成物の流動性を向上する観点から、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂の分子量は、100~1000であることが好ましく、150~750であることがより好ましく、180~500であることがさらに好ましい。
分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂が分子量分布を有する化合物である場合、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂の重量平均分子量は、200~1050であることが好ましく、250~950であることがより好ましい。
本開示において、重量平均分子量は、下記測定条件において、下記GPC測定装置を使用して測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算した値である。また、検量線の作成は、標準ポリスチレンとして5サンプルセット(「PStQuick MP-H」及び「PStQuick B」、東ソー株式会社製)を用いた。
但し、分子量が小さいためにGPCでは正確なMw又はMnを測定できない化合物については、化合物の化学構造から求められる分子量を、その化合物のMw又はMnとして採用する。
(GPC測定装置)
・GPC装置 :高速GPC装置「HCL-8320GPC」、検出器は示差屈折計又はUV、東ソー株式会社製
・カラム :カラムTSKgel SuperMultipore HZ-H(カラム長さ:15cm、カラム内径:4.6mm)、東ソー株式会社製
(測定条件)
・溶媒 :テトラヒドロフラン(THF)
・測定温度 :40℃
・流量 :0.35mL/分
・試料濃度 :10mg/THF5mL
・注入量 :20μL
分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、成形性、耐リフロー性、電気的信頼性、硬化物の誘電正接等の各種特性バランスの観点からは、80g/eq~500g/eqであることが好ましく、200g/eq~400g/eqであることがより好ましい。
本開示において、エポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂は、25℃において、固体であってもよく、液体であってもよい。25℃において分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂が固体である場合、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。
成形性と耐熱性とのバランスの観点からは、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂の軟化点又は融点は、40℃~180℃であることが好ましい。また、取扱い性の観点からは、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂の軟化点又は融点は、50℃~130℃であることが好ましい。
本開示において、軟化点は、JIS K 7234:1986の環球法により測定された値をいう。
本開示において、融点は、JIS K 0064:1992の目視による方法に則って測定された値をいう。
硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減させ、且つ封止用樹脂組成物の流動性を向上する観点から、封止用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対する、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂の含有率は、1質量%~50質量%であることが好ましく、3質量%~40質量%であることがより好ましく、3質量%~30質量%であることがさらに好ましく、5質量%~20質量%であることが特に好ましく、5質量%~9質量%であることが最も好ましい。
<分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂>
本開示の封止用樹脂組成物は、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を2種以上含んでもよい。
分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはアクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。
硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減する観点から、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の分子量は、100~1000であることが好ましく、150~750であることがより好ましく、180~500であることがさらに好ましい。
分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、成形性、耐リフロー性、電気的信頼性、硬化物の誘電正接等の各種特性バランスの観点からは、80g/eq~300g/eqであることが好ましく、90g/eq~250g/eqであることがより好ましい。
分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂は、25℃において、固体であってもよく、液体であってもよい。25℃において分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂が固体である場合、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。
成形性と耐熱性とのバランスの観点からは、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の軟化点又は融点は、40℃~180℃であることが好ましい。また、取扱い性の観点からは、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の軟化点又は融点は、50℃~130℃であることが好ましい。
硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減する観点から、封止用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対する、分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の含有率は、50質量%~99質量%であることが好ましく、60質量%~97質量%であることがより好ましく、70質量%~97質量%であることがさらに好ましく、85質量%~95質量%であることが特に好ましく、91質量%~95質量%であることが最も好ましい。
硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減する観点から、封止用樹脂組成物の総質量に対する、エポキシ樹脂の含有率は、5質量%~30質量%であることが好ましく、6質量%~25質量%であることがより好ましく、6質量%~20質量%であることがさらに好ましく、7質量%~15質量%であることが特に好ましい。
<活性エステル硬化剤>
本開示において活性エステル硬化剤とは、エポキシ基と反応しうるエステル基(活性エステル基)を1分子中に1個以上有する化合物を意味する。
本開示の封止用樹脂組成物は、硬化剤として活性エステル硬化剤を含む。本開示の封止用樹脂組成物は、活性エステル硬化剤を2種以上含んでもよい。
活性エステル硬化剤は、エポキシ基と反応するエステル基を分子中に1個以上有する化合物であればその種類は特に制限されない。
活性エステル硬化剤としては、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N-ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化物等が挙げられる。
活性エステル硬化剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸の少なくとも1種と脂肪族ヒドロキシ化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の少なくとも1種とから得られるエステル化合物が挙げられる。脂肪族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、脂肪族鎖を有することによりエポキシ樹脂との相溶性に優れる傾向にある。芳香族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、芳香環を有することにより耐熱性に優れる傾向にある。
活性エステル硬化剤の具体例としては、芳香族カルボン酸と芳香族ヒドロキシ化合物のフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが挙げられる。中でも、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン酸等の芳香環の水素原子の2~4個をカルボキシ基で置換した芳香族カルボン酸成分と、前記した芳香環の水素原子の1個を水酸基で置換した1価フェノールと、前記した芳香環の水素原子の2~4個を水酸基で置換した多価フェノールとの混合物を原材料として、芳香族カルボン酸と芳香族ヒドロキシ化合物のフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが好ましい。すなわち、上記芳香族カルボン酸成分由来の構造単位と上記1価フェノール由来の構造単位と上記多価フェノール由来の構造単位とを有する芳香族エステルが好ましい。
活性エステル硬化剤の具体例としては、特開2012-246367号公報に記載されている、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール化合物が結節された分子構造を有するフェノール樹脂と、芳香族ジカルボン酸又はそのハライドと、芳香族モノヒドロキシ化合物とを反応させて得られる構造を有する活性エステル樹脂が挙げられる。当該活性エステル樹脂としては、下記の構造式(1)で表される化合物が好ましい。
構造式(1)中、Rは炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xはベンゼン環、ナフタレン環、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環、又はビフェニル基であり、Yはベンゼン環、ナフタレン環、又は炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環であり、kは0又は1であり、nは繰り返し数の平均を表し、0.25~1.5である。
構造式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(1-1)~(1-10)が挙げられる。構造式中のt-Buは、tert-ブチル基である。
活性エステル硬化剤の別の具体例としては、特開2014-114352号公報に記載されている、下記の構造式(2)で表される化合物及び下記の構造式(3)で表される化合物が挙げられる。
構造式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zはベンゾイル基、ナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。
構造式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zはベンゾイル基、ナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。
構造式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(2-1)~(2-6)が挙げられる。
構造式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(3-1)~(3-6)が挙げられる。

活性エステル硬化剤のエステル当量(分子量/活性エステル基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、150g/eq~400g/eqが好ましく、170g/eq~300g/eqがより好ましく、200g/eq~250g/eqがさらに好ましい。
活性エステル硬化剤のエステル当量は、JIS K 0070(1992)に準じた方法により測定される値とする。
硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減させ、且つ封止用樹脂組成物の流動性を向上する観点から、本開示の封止用樹脂組成物の総質量に対する活性エステル硬化剤の含有率は、1質量%~20質量%であることが好ましく、3質量%~15質量%であることがより好ましく、5質量%~10質量%であることがさらに好ましい。
<無機充填材>
封止用樹脂組成物は、無機充填材を含む。
無機充填材としては、シリカフィラー(例えば、溶融シリカ、結晶シリカ)、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。
上記した中でも、硬化物の誘電正接を低減する観点からは、無機充填材は、シリカフィラーであることが好ましい。
無機充填材の形状は、特に限定されず、粒子状であってもよく、繊維状等の非粒子状であってもよい。
封止用樹脂組成物は、無機充填材を2種以上は含んでいてもよい。
無機充填材の形状が粒子状である場合、平均粒径は、0.1μm~100μmであることが好ましく、0.3μm~50μmであることがより好ましく、0.5μm~10μmであることがさらに好ましい。平均粒径が0.1μm以上であると、封止用樹脂組成物の粘度の上昇が抑制される傾向にある。平均粒径が100μm以下であると、充填性が向上する傾向にある。
無機充填材の平均粒径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置により、体積平均粒径(D50)として求める。
流動性の観点から、無機充填材の比表面積は、1.3m/g~10.0m/gであることが好ましく、2.0m/g~8.0m/gであることがより好ましく、2.5m/g~7.5m/gであることがさらに好ましい。
封止用樹脂組成物の成形性の向上と、硬化物の比誘電率及び誘電正接の低減との両立の観点から、封止用樹脂組成物の総質量に対する無機充填材の含有率は、60質量%以上であることが好ましく、60質量%~80質量%であることがより好ましく、60質量%~75質量%であることがさらに好ましい。
封止用樹脂組成物の流動性、並びに硬化物の比誘電率及び誘電正接の観点から、封止用樹脂組成物全体に対する無機充填材の体積割合は、60体積%~80体積%であることが好ましく、63体積%~78体積%であることがより好ましく、65体積%~75体積%であることがさらに好ましい。
<硬化促進剤>
本開示の封止用樹脂組成物は、1種又は2種以上の硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されない。
硬化促進剤の種類は、特に制限されず、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;エチルホスフィン、フェニルホスフィン等の一級ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の二級ホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の三級ホスフィンなどの、有機ホスフィン;前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン、アントラキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-t-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート等のテトラ置換ホスホニウムのテトラフェニルボレート塩、テトラ置換ホスホニウムとフェノール化合物との塩などの、テトラ置換ホスホニウム化合物;ホスホベタイン化合物;ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物などが挙げられる。硬化促進剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記した中でも、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとキノン化合物との付加物が好ましい。
本開示の封止用樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、樹脂成分100質量部(分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂と、前記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂と、活性エステル硬化剤と、活性エステル硬化剤以外の硬化剤との合計量)に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。
<活性エステル硬化剤以外の硬化剤>
封止用樹脂組成物は、活性エステル硬化剤以外の硬化剤を含んでいてもよい。具体的には、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減する観点から、封止用樹脂組成物の総質量に対するフェノール系硬化剤以外の硬化剤の含有率は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
<各種添加剤>
封止用樹脂組成物は、上述の成分に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、着色剤、可塑剤等の各種添加剤を含んでもよい。封止用樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。
<カップリング剤>
封止用樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。樹脂成分と無機充填材との接着性を高める観点からは、封止用樹脂組成物はカップリング剤を含むことが好ましい。カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、ジシラザン等のシラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。
封止用樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~5質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.5質量部であることがより好ましい。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上であると、リードフレーム等の電子部品装置との接着性がより向上する傾向にある。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して5質量部以下であると、パッケージの成形性がより向上する傾向にある。
<イオン交換体>
封止用樹脂組成物は、イオン交換体を含んでもよい。封止用樹脂組成物を封止用樹脂組成物として使用する場合、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物はイオン交換体を含むことが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
Mg(1-X)Al(OH)(COX/2・mHO……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
封止用樹脂組成物がイオン交換体を含む場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに充分な量であれば特に制限はない。例えば、樹脂成分100質量部(分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂と、前記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂と、活性エステル硬化剤と、活性エステル硬化剤以外の硬化剤との合計量)に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~10質量部であることがより好ましい。
<離型剤>
封止用樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含んでもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
封止用樹脂組成物が離型剤を含む場合、その量は樹脂成分100質量部(分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂と、前記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂と、活性エステル硬化剤と、活性エステル硬化剤以外の硬化剤との合計量)に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。離型剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。10質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。
<難燃剤>
封止用樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
封止用樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その量は、所望の難燃効果を得るのに充分な量であれば特に制限されない。例えば、樹脂成分100質量部(分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂と、前記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂と、活性エステル硬化剤と、活性エステル硬化剤以外の硬化剤との合計量)に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
<着色剤>
封止用樹脂組成物は、着色剤を含んでもよい。着色剤としてはカーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[封止用樹脂組成物の調製方法]
封止用樹脂組成物の調製方法は、特に制限されない。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に攪拌及び混合し、予め70℃~140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。
[電子部品装置]
本開示の電子部品装置は、支持部材と、支持部材上に配置された素子と、素子を封止している上記封止用樹脂組成物の硬化物と、を備える。
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、素子(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子など)を搭載して得られた素子部を封止用樹脂組成物で封止したもの(例えば高周波デバイス)が挙げられる。
より具体的には、リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング、バンプ等で接続した後、封止用樹脂組成物を用いてトランスファ成形等によって封止した構造を有するDIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した素子を封止用樹脂組成物で封止した構造を有するTCP(Tape Carrier Package);支持部材上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した素子を、封止用樹脂組成物で封止した構造を有するCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等;裏面に配線板接続用の端子を形成した支持部材の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と支持部材に形成された配線とを接続した後、封止用樹脂組成物で素子を封止した構造を有するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。また、プリント配線板においても封止用樹脂組成物を好適に使用することができる。
上記支持部材の種類は特に制限されず、電子部品装置の製造に一般的に用いられる支持部材を使用できる。
上記電子部品は、アンテナを含んでもよく、アンテナ及びアンテナ以外の素子を含んでもよい。上記アンテナは、アンテナの役割を果たすものであれば限定されるものではなく、アンテナ素子であってもよく、配線であってもよい。
また、本実施形態の電子部品装置では、必要に応じて、支持部材上における上記電子部品が配置された面と反対側の面に、他の電子部品が配置されていてもよい。他の電子部品は、前述の成形用樹脂組成物により封止されていてもよく、他の樹脂組成物により封止されていてもよく、封止されていなくてもよい。
[電子部品装置の製造方法]
本開示の電子部品装置の製造方法は、素子を支持部材上に配置する工程と、素子を上記封止用樹脂組成物で封止する工程と、を含む。
上記各工程を実施する方法は特に制限されず、一般的な手法により行うことができる。また、電子部品装置の製造に使用する支持部材及び素子の種類は特に制限されず、電子部品装置の製造に一般的に用いられる支持部材及び素子を使用できる。
上記封止用樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。これらの中では、低圧トランスファ成形法が一般的である。
以下に、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。また、表中の数値は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
(実施例1~2及び比較例1)
下記に示す成分を表1に示す配合割合(質量部)で混合し、実施例と比較例の封止用樹脂組成物を調製した。この封止用樹脂組成物は、常温常圧下において固体であった。
また、実施例及び比較例の封止用樹脂組成物全体に対する無機充填材の体積割合はいずれも約72体積%とした。
・分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂:分子量341、下記化学式で表される化合物
分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂:オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂
・硬化促進剤:トリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加物
・カップリング剤:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
・無機充填材A:シリカフィラー、平均粒径3.0μm、比表面積3.0m/g
・無機充填材B:シリカフィラー、平均粒径0.5μm、比表面積6.6m/g
・着色剤:カーボンブラック
<<比誘電率Dk及び誘電正接Dfの測定>>
実施例及び比較例において得られた封止用樹脂組成物を真空ハンドプレス機に仕込み、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間600秒の条件で成形し、後硬化を180℃で6時間行い、板状の硬化物(縦12.5mm、横25mm、厚さ0.2mm)を得た。
この板状の硬化物を試験片として、比誘電率測定装置(アジレント・テクノロジー社、品名「ネットワークアナライザN5227A」)を用いて、温度25±3℃下、約5GHzでの比誘電率Dkと誘電正接Dfを測定し、それぞれについて下記評価基準に基づいて、評価した。結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:比誘電率Dkが3.48未満であった。
C:比誘電率Dkが3.48以上であった。
(評価基準)
A:誘電正接Dfが0.0022未満であった。
B:誘電正接Dfが0.0022以上であった。
<<流動性評価>>
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、封止用樹脂組成物を金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、流動距離(cm)を求め、下記評価基準に基づいて、評価した。結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:流動距離が125cm以上であった。
B:流動距離が125cm未満であった。
<<ゲルタイムの測定>>
封止用樹脂組成物0.5gを175℃に熱した熱板上に乗せ、治具を用いて20回転/分~25回転/分の回転速度で、2.0cm~2.5cmの円状に均一に広げた。
封止用樹脂組成物を熱板に乗せてから、封止用樹脂組成物の粘性がなくなり、ゲル状態となって熱板から剥がれるようになるまでの時間を計測し、これをゲルタイム(秒)として測定し、結果を表1にまとめた。ゲルタイムの短いものほど、硬化性に優れることを示す。
<<曲げ強さ評価>>
封止用樹脂組成物を、トランスファ成形機を用い、成形温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、175℃で5時間後硬化を行い、板状の硬化物(縦127mm、横12.7mm、厚さ4mm)を得た。
上記硬化物を用いオートグラフ(株式会社島津製作所製、曲げ試験機AG-500)により曲げ強さ(MPa)を測定し、下記評価基準に基づいて、評価した。結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:曲げ強さが125MPa以上であった。
B:曲げ強さが125MPa未満であった。
<<成形収縮率測定>>
封止用樹脂組成物を、トランスファ成形機を用い、成形温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、板状の成形品(縦127mm、横12.7mm、厚さ6.4mm)を得た。
予め測定した25℃における金型のキャビティの長さDと、室温(25℃)における成形品の長さdと、から下記式により成形収縮率A(%)を求めた。結果を表1にまとめた。
成形収縮率A(%)=((D-d)/D)×100
封止用樹脂組成物を、トランスファ成形機を用い、成形温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、板状の成形品(縦127mm、横12.7mm、厚さ6.4mm)を得た。その成形品を175℃で5時間後硬化を行い、板状の硬化物を得た。
予め測定した25℃における金型のキャビティの長さDと、室温(25℃)における硬化物の長さdと、から下記式により成形収縮率B(%)を求めた。結果を表1にまとめた。
成形収縮率B(%)=((D-d)/D)×100
Figure 2023180969000011

表1から明らかなように、実施例の封止用樹脂組成物は、比較例の封止用樹脂組成物に比べて、硬化物の比誘電率及び誘電正接が低く、流動性に優れていることがわかる。また、実施例の封止用樹脂組成物は、比較例の封止用樹脂組成物に比べて、ゲルタイム、曲げ強さ及び成形収縮率が同程度であることが分かる。

Claims (6)

  1. 分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂と、前記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂と、活性エステル硬化剤と、無機充填材と、を含む、封止用樹脂組成物。
  2. 前記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂が、下記式(E1)で表される分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。

    式(E1)中、Rは1つ又は2つのエポキシ基を有する1価の基を表し、R及びRはそれぞれ独立に脂肪族基を表し、且つ少なくとも一方は、分岐型脂肪族基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。
  3. 式(E1)中、R及びRがそれぞれ独立に炭素数3~20の分岐型脂肪族基である、請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
  4. 封止用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対する、前記分岐型脂肪族鎖エポキシ樹脂の含有率が、5質量%~20質量%である、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
  5. 支持部材と、
    前記支持部材上に配置された素子と、
    前記素子を封止している請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、
    を備える、電子部品装置。
  6. 素子を支持部材上に配置する工程と、
    前記素子を請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物で封止する工程と、
    を含む、電子部品装置の製造方法。
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