JP2023177246A - 乳がん患者の予後を予測する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】乳がんの予後不良群(乳がんの再発)を予測(予見)する検査方法を提供すること。【解決手段】乳がん患者の予後を判定するための検査方法であって、前記患者から採取された試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原を検出すること、およびシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原を発現している場合に患者の予後が不良である可能性があると判定することを含む、検査方法;シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原に対する抗体を含む、乳がん患者の予後予測用の試薬;並びにシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原に対する抗体と、前記抗体を検出するための試薬とを含む、乳がん患者の予後予測用の検査キット。【選択図】なし

Description

本発明は、乳がんの予後不良群(乳がんの再発)を予測(予見)する方法に関する。本発明はさらに、上記の検査方法を行うための抗体、および検査キットに関する。本発明により、治療法の選択をより早期に判断でき、患者である治療対象者の負担軽減につながると考えられる。
乳がんの診断および治療効果判定には、エコー、MRI等の画像診断の他、病理診断、遺伝子診断、血液腫瘍マーカー等が用いられている。これらのうち、治療効果判定に用いられるものは画像診断であり、補助的に血液腫瘍マーカーも用いられる。画像診断は侵襲性が低く技術的な発展も著しいが、判定には数値化が難しく、専門医の読図能力を必要とする。また石灰化症例等においては画像からは病勢を判断できない場合もある。新たな技術としてリキッドバイオプシーが期待されているが、依然、研究段階であり、臨床応用には至っていない。よって、画像診断よりもさらに向上した診断能を発揮することが期待できるものは、血液腫瘍マーカーとなる。
NCC-ST-439は、ヌードマウス移植ヒト胃低分化腺がん株ST-4を免疫原として国立がんセンターの広橋らにて作製されたモノクローナル抗体により認識される抗原である(非特許文献1)。NCC-ST-439は、分子量100万以上のムチン様高分子蛋白質であり、構造的には、ムチンのコア蛋白にN-アセチルガラクトサミンを介して直接II型糖鎖であるシアリルルイスX抗原が結合している腫瘍関連糖鎖抗原である(非特許文献2)。免疫組織化学的検討では、NCC-ST-439は、大腸がん、膵がんなどの消化器系がん、肺腺がんや乳がんの各組織での過剰発現が認められている(非特許文献3)。血中腫瘍マーカーとしては、NCC-ST-439は、乳がん、大腸がん、肺がんや膵がんでの高い陽性率が報告されている(非特許文献4及び5)。特に、乳がんの再発時には、NCC-ST-439は、他の腫瘍マーカーに先駆けて陽性化し、再発乳がんに対しての感度が比較的高く、CEAやCA15-3との同時測定により高い診断効率が得られること(非特許文献6及び7)や、再発乳がんや転移性乳がん治療効果を反映して変動することが報告されている(非特許文献8)。従って、NCC-ST-439は、臨床では主に再発乳がんや進行乳がんの治療効果判定の補助に用いられている。
NCC-ST-439抗体によって認識される抗原決定基は、シアル酸残基を末端に有するムチン型糖蛋白質であり、ムチンのコア蛋白質中のセリン/スレオニン残基にO-グリコシド結合したN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を介してII型糖鎖であるシアリルルイスXが結合した構造であることが明らかにされている(非特許文献2)。NCC-ST-439と構造の類似した糖鎖抗原には、CD15s(CSLEX-1),HECA-452などがある。
CD15s抗体は、患者胃癌細胞より調製した膜蛋白質画分を免疫することにより得られた抗体である。CD15s抗体が認識する抗原は,亜末端のフコース残基を含むシアリルルイスXであることが分かっている(非特許文献9)。
HECA-452抗体は、皮膚のリンパ球抗原(CLA)を認識するラットモノクローナル抗体である。HECA-452抗体が認識する抗原は、シアリルルイスXとシアリルルイスaであることが報告されている(非特許文献10)。
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乳がんの術後補助療法は、ホルモンレセプター陽性乳がんについてはホルモン療法が、ホルモンレセプター陰性乳がんについては化学療法が主に試みられているが、必ずしも奏功するとは限らない。乳がんの予後不良群(乳がんの再発)がある程度予測(予見)することができれば、ホルモン療法や化学療法による治療よりも、免疫チェックポイント阻害薬などのバイオ医薬品など新しい治療法をより早期に試みることが可能となる。そしてこの診断法を用いる患者である治療対象者の負担軽減につながると考えられる。そのため、本発明は、乳がんの予後不良群(乳がんの再発)を予測(予見)する検査方法を提供することを課題とする。本発明はさらに、上記の検査方法を行うための抗体、および検査キットを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、乳がん患者から採取された試料からシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原が検出された場合、患者の予後が不良となることを見出した。本開示は、以下の態様を含む。
<1> 乳がん患者の予後を判定するための検査方法であって、
前記患者から採取された試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原を検出すること、および
シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原を発現している場合に患者の予後が不良である可能性があると判定すること、
を含む、検査方法。
<2> 前記試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の発現割合または発現量が予め定められた参照値未満である場合に、患者の予後が良好である可能性があると判定し、前記試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の発現割合または発現量が予め定められた参照値以上である場合に、患者の予後が不良である可能性があると判定する、<1>に記載の検査方法。
<3> 予後が無再発生存期間である、<1>又は<2>に記載の検出方法。
<4> シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の検出を、糖鎖のエピトープを認識する抗体を用いた免疫学的方法により行う、<1>又は<2>に記載の方法。
<5> 免疫学的方法が、組織試料を用いた免疫組織化学法、又は血液試料を用いた免疫学的測定法である、<4>に記載の方法。
<6> 糖鎖のエピトープを認識する抗体が、下記式(X)に記載の糖鎖構造を有する糖タンパク質と反応する抗体である、<4>に記載の方法。
<7> シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原に対する抗体を含む、乳がん患者の予後予測用の試薬。
<8> シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原に対する抗体と、前記抗体を検出するための試薬とを含む、乳がん患者の予後予測用の検査キット。
本発明によれば、乳がん組織のシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原を検出することにより、乳がんを有する患者の予後を予測することができる。
図1は、各抗体の認識糖鎖構造を示す。 図2は、(A)乳がん組織のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色組織像。(B)乳がん組織のNCC-ST-439の免疫組織化学像を示す。倍率:× 50 図3は、全浸潤癌症例を対象としたNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を示す。 図4は、ホルモンレセプター陽性・陰性群のそれぞれを対象としたNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を示す。 図5は、バイオマーカー亜型分類のそれぞれを対象としたNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を示す。 図6は、全浸潤癌症例を対象とした各糖鎖抗原陽性患者群及び各糖鎖抗原陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を示す。 図7は、全浸潤癌症例を対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群(陽性判定基準:1.0 U/mL以上)及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を示す。 図8は、ホルモンレセプター陽性・陰性群のそれぞれを対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群(陽性判定基準:1.0 U/mL以上)及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を示す。 図9は、バイオマーカー亜型分類のそれぞれを対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群(陽性判定基準:1.0 U/mL以上)及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を示す。 図10は、全浸潤癌症例を対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群(陽性判定基準:男性および50歳以上の女性4.5 U/mL以上、50歳未満の女性7.0 U/mL以上)及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を示す。 図11は、ホルモンレセプター陽性・陰性群のそれぞれを対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群(陽性判定基準:男性および50歳以上の女性4.5 U/mL以上、50歳未満の女性7.0 U/mL以上)及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を示す。 図12は、バイオマーカー亜型分類のそれぞれを対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群(陽性判定基準:男性および50歳以上の女性4.5 U/mL以上、50歳未満の女性7.0 U/mL以上)及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を示す。 図13は、ホルモンレセプター陰性群を対象とした乳がん組織中及び血清中のNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を示す。
本発明は、乳がん患者の予後を判定するための検査方法であって、前記患者から採取された試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原を検出すること、およびシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原を発現している場合に患者の予後が不良である可能性があると判定すること、を含む、検査方法である。
前記乳がんとは、乳腺の組織にできるがんである。乳がんは各バイオマーカーの陽性/陰性によりサブタイプに分類され、サブタイプごとに治療方針が決められる。バイオマーカーとしては、ホルモンレセプター、HER2がある。ホルモンレセプター陰性HER2陰性の場合は、トリプルネガティブと分類される。
前記ホルモンレセプターとは、乳がんのホルモン療法の適応やその有効性を予測する指標となっており、エストロゲンが結合するエストロゲンレセプター(ER)とプロゲステロンが結合するプロゲステロンレセプター(PgR)である。ホルモンレセプターの陽性/陰性の判定は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、免疫組織化学染色法により陽性細胞の占有率を評価する方法や、陽性細胞率と染色強度をスコア化して評価する方法を用いることができる。陽性細胞率を評価する方法としてJ scoreがあり、陽性細胞率10%以上を陽性と判定する。陽性細胞率と染色強度をスコア化して評価する方法としてAllred scoreやH scoreがある。Allred scoreは、陽性細胞率と染色強度から8段階に分類し、3以上を陽性と判定する。ホルモン受容体の判定は、ASCO/CAPガイドラインに準拠して行うこともできる。
前記HER2とは、乳がんのトラスツズマブ適正使用選択のためのバイオマーカーである。HER2の陽性/陰性の判定は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、HER2タンパク質の過剰発現をみる免疫組織化学染色法、HER2遺伝子の増幅を検索する蛍光in situ hybridization(FISH)法などを用いることができる。IHC法による判定は、例えば、染色された陽性細胞が占める割合に基づくスコアによって行う。FISH法による判定は、例えば、細胞あたりのHER2遺伝子の数に基づき行うことができる。また第17染色体のセントロメア(CEP17)蛍光シグナルとHER2遺伝子の蛍光シグナルをカウントし、各々のシグナル総数の比率から行うこともできる。HER2の判定は、アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)およびアメリカ病理学会(CAP)によるガイドライン(ASCO/CAPガイドライン)に準拠して行うことができる。
前記検査方法において、前記がん患者とは乳がん患者のことであり、ホルモンレセプター陰性の乳がん患者であることが好ましく、ホルモンレセプター及びHER2ともに陰性である乳がん患者であることが好ましい。
前記患者から採取された試料とは、腫瘍の外科切除検体あるいは生検検体(以下、組織とも記す場合がある)又は血清であり、採取方法としては、外科切除あるいは生検又は採血等が挙げられる。前記患者から採取された試料としては、外科切除検体又は血清であることが好ましい。
前記糖タンパク質とは、シアル酸残基を末端に有するムチン型糖蛋白質であり、ムチンのコア蛋白質中のセリン/スレオニン残基にO-グリコシド結合したN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を介してII型糖鎖であるシアリルルイスXが結合した構造を持つタンパク質である。
前記シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の検出方法としては、糖鎖のエピトープを認識する抗体を用いた免疫学的方法が挙げられる。免疫学的方法としては、組織試料を用いた免疫組織化学法、又は血液試料を用いた免疫学的測定法が挙げられる。
糖鎖のエピトープを認識する抗体としては、好ましくは、下記式(X)に記載の糖鎖構造を有する糖タンパク質と反応する抗体である。前記糖タンパク質の検出に用いる抗体としては、NCC-ST-439抗体、CD15s抗体、HECA-452抗体、FH-6抗体、2H5抗体、GSC154-27抗体、及び国際公報WO2019/189882号公報に記載されているS18201R抗体、S18202R抗体、S18203R抗体、S18204R抗体等が挙げられる。その中でも、NCC-ST-439抗体、CD15s抗体が好ましい。下記式(Y)に記載の糖鎖構造を有する糖タンパク質と反応する抗体がより好ましく、下記式(Y)に記載の糖鎖構造を有する糖タンパク質と反応する抗体としてはNCC-ST-439抗体が挙げられる。
免疫学的方法に用いるキットとしては、EnVisionTM FLEX(アジレント・テクノロジー株式会社)、ベンタナ ultraView DAB ユニバーサルキット(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)、ベンタナ OptiView DAB ユニバーサルキット(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)、ラナザイム ST-439プレート(日本化薬株式会社)、ルミパルス ST-439「NK」(富士レビオ株式会社)、SLX「DP」IRMAキット(DENISファーマ株式会社)、N-テスト EIAプレート CSLEX-H ニットーボー(ニットーボーメディカル株式会社)等が挙げられる。
本発明の検査方法において、好ましくは、前記試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の発現割合または発現量が予め定められた参照値未満である場合に、患者の予後が良好である可能性があると判定し、前記試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の発現割合または発現量が予め定められた参照値以上である場合に、患者の予後が不良である可能性があると判定することができる。
本発明の検査方法において、好ましくは、前記乳がん患者の予後を判定するための検査方法は、前記患者から採取された試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の発現を検出することを含み、前記試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の発現が糖タンパク質を発現しているがん細胞が全がん細胞に対して1%未満である場合または血清中の糖タンパク質の濃度が1.0 U/mL未満の場合、前記患者の予後が良好である可能性があると判定し、前記試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の発現が糖タンパク質を発現しているがん細胞が全がん細胞に対して1%以上である場合または血清中の糖タンパク質の濃度が1.0 U/mL以上の場合、前記患者の予後が不良である可能性があると判定する、検査方法である。
前記試料が腫瘍の外科切除検体あるいは生検検体である場合は、前記シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の検出方法としては免疫組織化学法が好ましい。免疫組織化学法は、抗原抗体反応を利用して組織や細胞内に存在する抗原物質の局在を同定する手法である。
前記試料が腫瘍の外科切除検体あるいは生検検体である場合は、前記検出方法として、NCC-ST-439抗体を用いた免疫組織化学法が好ましい。免疫組織化学法とは、腫瘍の摘出手術において得られた腫瘍の外科切除検体あるいは生検検体をホルマリン固定パラフィン包埋組織薄切切片とし、シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原を認識する抗体を結合させ、その後、抗体を検出する試薬を反応させ、染色された陽性細胞の割合と陽性強度を測定する。
前記試料が腫瘍の外科切除検体あるいは生検検体である場合の前記がん患者の予後を予測する検査方法において、前記がん患者はホルモンレセプター陰性の乳がん患者であることが好ましく、ホルモンレセプター及びHER2ともに陰性である乳がん患者であることが好ましい。
前記抗体を検出する試薬としては、NCC-ST-439抗体、CD15s抗体、S18201R抗体、S18202R抗体、S18203R抗体、S18204R抗体が挙げられる。前記乳がん患者の予後予測用抗体としては、NCC-ST-439抗体、S18201R抗体、S18202R抗体、S18203R抗体及びS18204R抗体が好ましく、NCC-ST-439抗体がより好ましい。
前記免疫組織化学法において、測定に使用できる測定機器としては、自動免疫組織染色システムが挙げられる。
前記試料が血清である場合は、前記糖タンパク質の検出方法としては免疫学的測定法が好ましい。免疫学的測定法は、抗原抗体反応を利用して血清や尿等に含まれる抗原物質の濃度を測定する手法である。
前記試料が血清である場合は、前記検出方法として、NCC-ST-439抗体を用いた免疫学的測定法が好ましい。
前記糖タンパク質の発現が認められた場合、予後が不良であると可能性があると判定する。前記試料が腫瘍の外科切除検体あるいは生検検体である場合は、前記検出方法において、糖タンパク質を発現しているがん細胞が全がん細胞に対して1%以上であると、前記患者の予後が不良であると判定することができる。前記判定方法において、1%以上であることが予後が不良であると判定するためには適しており、10%以上であることがより予後が不良であると判定するためには適している。前記試料が血清である場合は、血清中の糖タンパク質の濃度が1.0 U/mL以上であると、前記患者の予後が不良であると判定することができる。前記判定方法において、1.0 U/mL以上であることが予後が不良であると判定するためには適しており、男性および50歳以上の女性4.5 U/mL以上、50歳未満の女性7.0 U/mL以上であることがより予後が不良であると判定するためには適している。前記判定方法において、試料が血清であることが予後が不良であると判定するためには適しており、組織であることがより予後が不良であると判定するためには適している。
前記予後とは、外科切除後の経過期間であり、予後が不良であるとは、外科切除後の経過期間にがんの再発又は死亡が起こることである。前記検出方法において予測できる予後としては、無再発生存期間(RFS:recurrence―free survival)が適している。
本発明はさらに、シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原に対する抗体を含む、乳がん患者の予後予測用の試薬に関する。シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原に対する抗体としては、例えば、NCC-ST-439抗体、CD15s抗体、HECA-452抗体、S18201R抗体、S18202R抗体、S18203R抗体及びS18204R抗体が挙げられる。前記乳がん患者の予後予測用の試薬として用いる抗体としては、NCC-ST-439抗体が好ましい。また、ホルモンレセプター陰性乳がん患者の予後予測用の試薬として用いる抗体としては、上記式(Y)に記載の糖鎖構造を有する糖タンパク質と反応するNCC-ST-439抗体を使用することが好ましい。
本発明はさらに、シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原に対する抗体と、前記抗体を検出するための試薬とを含む、乳がん患者の予後予測用の検査キットに関する。前記検査キットで用いる組織標本は、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、エタノールなどを用いる固定法により固定されたパラフィン切片、あるいは当該分野で常用されるその他の包埋材を用いて包埋された組織切片、または凍結組織切片などである。前記組織標本に前記抗体を添加し,組織標本中の抗原に抗体を結合させる。前記抗体を検出する試薬としては、酵素抗体法、蛍光抗体法、金コロイド法などにおいて使用する試薬が挙げられる。キットの形態としては、酵素抗体法、蛍光抗体法、金コロイド法を用いた免疫組織化学染色キットが挙げられ、酵素抗体法、蛍光抗体法を用いた免疫組織化学染色キットが好ましく、酵素抗体法を用いた免疫組織化学染色キットが特に好ましい。
以下の実施例により本発明を更に詳細に説明する。
1.患者の選択
原発性乳がんの術前診断にて2009年1月~12月に国立がん研究センター中央病院乳腺外科で外科切除された、両側性乳がん症例を除く、連続症例の336症例を患者として選択した。臨床病理データは診療録から情報を収集した。
予後解析は、術前化学療法を実施していない浸潤癌症例(n=260)および臨床的に浸潤癌と判断され術前化学療法実施後に外科切除された症例(n=44)の合計304症例について実施した。
2.病理学的解析
外科切除検体は、病変部を全割して病理学的に解析し、腫瘍は乳癌取り扱い規約第17版(金原出版、東京)およびWHO分類(WHO Classification of Tumours,5th ed.,Breast Tumours,WHO classification of tumours editorial board(ed.), IARC,Lyon,France)、UICC TNM分類8版(The TNM Classification of Malignant Tumours,8th edition,Brierley JD,Gospodarowicz MK,Wittekind c(eds.),John Wiley & Sons,Ltd.,New York,U.S.A.)に従って分類した。以下の解析には代表腫瘍組織である最大割面部分を使用した。
3.免疫組織化学
異なる糖鎖構造に付加するシアリルルイスXを特異的に認識する抗体として、CD15s抗体(CSLEX-1,BD Bioscience,Franklin Lakes, NJ,U.S.A.)、NCC-ST-439抗体(Cancer Res 1991;51:2199-204)ならびにHECA-452抗体を用いて免疫組織化学を実施した。4μm厚ホルマリン固定パラフィン包埋組織薄切切片を用意し、CD15s抗体、NCC-ST-439抗体の免疫組織化学には、Autostainer link 48(DAKO, Agilent Technologies,Santa Clara,CA,U.S.A.)を用い、HECA-452抗体を用いた免疫組織化学にはEnVision system(DAKO)を用いた。免疫組織化学の結果について、陽性細胞の割合と陽性強度により評価した。内部陽性コントロール非腫瘍乳管上皮細胞の陽性強度と同等以上の陽性強度を示すがん細胞が全がん細胞の10%以上存在するものを陽性と判断した。
4.免疫学的測定
NCC-ST-439抗原キット(ラナザイム ST-439プレート,日本化薬株式会社)を用いて血清中のNCC-ST-439抗原の測定を実施した。NCC-ST-439抗原濃度が1.0 U/mL以上を陽性と判断した。また,ラナザイム ST-439プレートの添付文書に記載の陽性判定基準である男性および50歳以上の女性4.5 U/mL以上、50歳未満の女性7.0 U/mL以上で再解析した。なお、抗原濃度の単位 U/mLは、ST-439をはじめに同定した際の濃度を基準としたものである(大倉久直ほか:各種癌・良性疾患患者血清によるNCC-ST-439EIAキットの臨床的検討(1).癌と化学療法 14:1901-1906,1987)。
5.ホルモン受容体解析
乳癌診療ガイドライン(科学的根拠に基づく 乳癌診療ガイドライン4.検診・診断 2008年版、日本乳癌学会編、金原出版、東京)に従って、ホルモン受容体(ER、PgR)の解析を行った。免疫組織化学的染色によりER、PgRの染色を行った。一次抗体として抗ER抗体(clone 1D5;DAKO)、抗PgR抗体(clone PgR636;DAKO)を用い、メーカー指定のプロトコールに則って染色を行った。腫瘍組織における陽性細胞の割合を判定し、10%以上をホルモン受容体陽性と判定した。
6.HER2解析
ハーセプチン適正使用選択のためのHER2検査ガイド第3版(ASCO/CAP HER2検査ガイドラインに準拠)(トラスツズマブ病理部会作成)にしたがって解析した。はじめに免疫組織化学的染色により評価を行い、境界域の症例についてはFISH法による評価を加えた。免疫組織化学法は、抗HER2抗体(polyclonal, HercepTest II, DAKO)を一次抗体として用い、メーカー指定のプロトコールに則って染色を行った。判定は浸潤巣を対象として行い、スコア0、1+は陰性、スコア3+は陽性と判定した。スコア2+の境界域症例についてはFISH法を行い、増幅がみられた症例(HER2/CEP17シグナル比2.0以上)を陽性と判定した。FISHプローブとしてパスビジョンHER2 DNAプローブキットを用いた。
7.統計学的解析
各因子の解析にはt検定、カイ2乗検定を、生存解析はKaplan―Meier生存解析、Cox比例ハザードモデルを用いて検討し、log-rank試験を用いて解析した。解析ソフトはJMPver.11(SAS institute,Cary,NC, U.S.A.)を使用した。解析においてp値<0.05の場合に有意差有り,p値<0.10の場合に有意傾向有りと判定した。
8.倫理事項
本研究は国立がん研究センター研究倫理審査委員会による承認を得たものである(研究課題番号2018-119)。研究に参加したすべての被験者からインフォームド・コンセントを得た。また全ての研究はヘルシンキ宣言の原則に沿って行われた。
9.結果
9-1 臨床病理学的因子
対象患者336症例の臨床病理学的情報を表1に示した。患者の年齢は、25歳から95歳であり、中央値は55.5歳であった。組織型は、非浸潤性乳管癌が35例(10.4%)、浸潤性乳管癌通常型が248例(73.8%)、浸潤性乳管癌特殊型が53例(15.8%)であった。核グレードは、1及び2が216例(64.3%)、3が120例(35.7%)であった。脈管侵襲は、なしが221例(65.8%)、ありが115例(34.2%)であった。ホルモンレセプターは、陽性が248例(81.6%)、陰性が56例(18.4%)であった。バイオマーカー亜型分類は、HR+/HER2-:250例(74.4%)、HR+/HER2+:24例(7.1%)、HR-/HER2+:22例(6.5%)、HR-/HER2-:40例(11.9%)であった。リンパ節転移は、なしが239例(71.1%),ありが97例(28.9%)であった。ステージは、0:35例(10.4%)、1:143例(42.6%)、2:99例(29.5%)、3:59例(17.6%)であった。化学療法は、なしが209例(62.2%)、術前化学療法ありが44例(13.1%)、術後補助化学療法ありが83例(24.7%)であった。ホルモン治療は、なしが99例(29.5%)、ありが237例(70.5%)であった。放射線治療は、なしが138例(41.1%)、ありが198例(58.9%)であった。
[実施例1]
9-2.免疫組織化学
表2に免疫染色化学の結果を示す。CD15sは陽性:133例(44%)、陰性171例(56%)であり、HECA-452は陽性:198例(65%)、陰性106例(35%)であり、NCC-ST-439は陽性:88例(29%)、陰性216例(71%)であった。各抗体の認識糖鎖構造を図1に示す。シアリルルイスXを認識するHECA-452抗体は、シアリルルイスAにも反応する。CD15s抗体は、亜末端のフコース残基を含むシアリルルイスXに反応する。NCC-ST-439抗体は、コア2O結合型糖鎖構造上のシアリルルイスXに反応する。
免疫染色でNCC-ST-439が陽性となった例を図2に示す。NCC-ST-439は乳がん細胞の細胞質・細胞膜に発現し、同一症例でも発現の強弱、有無にheterogeneityがしばしば認められた。
ホルモンレセプター陽性患者でCD15sの発現が「陽性」に分類されたのは、103例(42%)、「陰性」に分類されたのは、145例(58%)であった。ホルモンレセプター陰性患者でCD15sの発現が「陽性」に分類されたのは、30例(54%)、「陰性」に分類されたのは、26例(46%)であった。
ホルモンレセプター陽性患者でHECA-452の発現が「陽性」に分類されたのは、148例(60%)、「陰性」に分類されたのは、100例(40%)であった。ホルモンレセプター陰性患者でHECA-452の発現が「陽性」に分類されたのは、49例(87%)、「陰性」に分類されたのは、7例(13%)であった。
ホルモンレセプター陽性患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、74例(30%)、「陰性」に分類されたのは、174例(70%)であった。ホルモンレセプター陰性患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、14例(25%)、「陰性」に分類されたのは、42例(75%)であった。
バイオマーカー亜型分類で患者群を分けるとHR+/HER2-患者でCD15sの発現が「陽性」に分類されたのは、95例(42%)、「陰性」に分類されたのは、131例(58%)であった。HR+/HER2+患者でCD15sの発現が「陽性」に分類されたのは、9例(39%)、「陰性」に分類されたのは、14例(61%)であった。HR-/HER2-患者でCD15sの発現が「陽性」に分類されたのは、18例(49%)、「陰性」に分類されたのは、19例(51%)であった。HR-/HER2+患者でCD15sの発現が「陽性」に分類されたのは、12例(63%)、「陰性」に分類されたのは、7例(37%)であった。
バイオマーカー亜型分類で患者群を分けるとHR+/HER2-患者でHECA-452の発現が「陽性」に分類されたのは、134例(60%)、「陰性」に分類されたのは、91例(40%)であった。HR+/HER2+患者でHECA-452の発現が「陽性」に分類されたのは、14例(61%)、「陰性」に分類されたのは、9例(39%)であった。HR-/HER2-患者でHECA-452の発現が「陽性」に分類されたのは、32例(86%)、「陰性」に分類されたのは、5例(14%)であった。HR-/HER2+患者でHECA-452の発現が「陽性」に分類されたのは、18例(95%)、「陰性」に分類されたのは、1例(5%)であった。
バイオマーカー亜型分類で患者群を分けるとHR+/HER2-患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、70例(31%)、「陰性」に分類されたのは、155例(69%)であった。HR+/HER2+患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、4例(17%)、「陰性」に分類されたのは、19例(83%)であった。HR-/HER2-患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、11例(30%)、「陰性」に分類されたのは、26例(70%)であった。HR-/HER2+患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、3例(16%)、「陰性」に分類されたのは、16例(83%)であった。
9-3.乳がん細胞(がん組織内)のNCC-ST-439発現とRFSとの相関
乳がん細胞(がん組織内)のNCC-ST-439発現の有無と、患者のRFSとの関連性を検討した。
全浸潤癌症例を対象としたNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を図3に示す。統計解析の結果、NCC-ST-439陽性症例では陰性群に比して有意に短かった(p=0.005)。
ホルモンレセプター陽性・陰性群のそれぞれを対象としたNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を図4に示す。左のパネルはホルモンレセプター陽性群、右のパネルはホルモンレセプター陰性群を示したものである。統計解析の結果、ホルモンレセプター陰性群ではNCC-ST-439陽性症例は早期から再発し、NCC-ST-439陰性群に比して有意に短かった(p=0.002)。
バイオマーカー亜型分類のそれぞれを対象としたNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を図5に示す。左上のパネルはHR+/HER2-症例、左下のパネルはHR+/HER2+症例、右上のパネルはHR-/HER2+症例、右下のパネルはHR-/HER2-症例を示したものである。統計解析の結果、HR-/HER2+群及びHR-/HER2-群両症例において、NCC-ST-439陽性群は陰性群に比して有意に短かった(p=0.026及びp=0.022)。
9-4.乳がん細胞(がん組織内)の他の糖鎖抗原発現とRFSとの相関
乳がん細胞(がん組織内)の他の糖鎖抗原発現の有無と、患者のRFSとの関連性を検討した。
全浸潤癌症例を対象とした各糖鎖抗原陽性患者群及び各糖鎖抗原陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を図6に示す。パネルは上からCD15s、HECA-452を示したものである。統計解析の結果、CD15s陽性乳がん症例は陰性群に比して有意に短かった(p=0.037)。HECA-452陽性乳がん症例は陰性群に比して有意に短い傾向にあった(p=0.060)。NCC-ST-439(前記 9-3)と併せて、シアリルルイスX発現乳がんはRFSが短いと考えられる。
[実施例2]
9-5.免疫学的測定(陽性判定基準:1.0 U/mL以上)
表3に免疫学的測定(陽性判定基準:1.0 U/mL以上)の結果を示す。全浸潤癌症例を対象とした血清中のNCC-ST-439は陽性:169例(56%)、陰性134例(44%)であった。
ホルモンレセプター陽性患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、136例(55%)、「陰性」に分類されたのは、112例(45%)であった。ホルモンレセプター陰性患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、33例(60%)、「陰性」に分類されたのは、22例(40%)であった。
バイオマーカー亜型分類で患者群を分けるとHR+/HER2-患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、125例(56%)、「陰性」に分類されたのは、100例(44%)であった。HR+/HER2+患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、11例(48%)、「陰性」に分類されたのは、12例(52%)であった。HR-/HER2-患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、23例(62%)、「陰性」に分類されたのは、14例(38%)であった。HR-/HER2+患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、10例(56%)、「陰性」に分類されたのは、8例(44%)であった。
9-6.血清中のNCC-ST-439発現とRFSとの相関(陽性判定基準:1.0 U/mL以上)
血清中のNCC-ST-439発現の有無と、患者のRFSとの関連性を検討した。
全浸潤癌症例を対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を図7に示す。統計解析の結果、NCC-ST-439陽性乳がん症例は陰性群に比して有意に短い傾向にあった(p=0.066)。
ホルモンレセプター陽性・陰性群のそれぞれを対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を図8に示す。左のパネルはホルモンレセプター陽性群、右のパネルはホルモンレセプター陰性群を示したものである。統計解析の結果、ホルモンレセプター陰性群ではNCC-ST-439陽性症例は早期から再発し、NCC-ST-439陰性群に比して有意に短かった(p=0.033)。
バイオマーカー亜型分類のそれぞれを対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を図9に示す。左上のパネルはHR+/HER2-症例、左下のパネルはHR+/HER2+症例、右上のパネルはHR-/HER2+症例、右下のパネルはHR-/HER2-症例を示したものである。統計解析の結果、HR-/HER2-群において、NCC-ST-439陽性群は陰性群に比して、RFSが有意に短かった(p=0.039)。
[実施例3]
9-7.免疫学的測定(陽性判定基準:男性および50歳以上の女性4.5 U/mL以上、50歳未満の女性7.0 U/mL以上)
表4に免疫学的測定(陽性判定基準:男性および50歳以上の女性4.5 U/mL以上、50歳未満の女性7.0 U/mL以上)の結果を示す。全浸潤癌症例を対象とした血清中のNCC-ST-439は陽性:29例(10%)、陰性274例(90%)であった。
ホルモンレセプター陽性患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、24例(10%)、「陰性」に分類されたのは、224例(90%)であった。ホルモンレセプター陰性患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、5例(9%)、「陰性」に分類されたのは、50例(91%)であった。
バイオマーカー亜型分類で患者群を分けるとHR+/HER2-患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、24例(11%)、「陰性」に分類されたのは、201例(89%)であった。HR+/HER2+患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、0例(0%)、「陰性」に分類されたのは、23例(100%)であった。HR-/HER2-患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、4例(11%)、「陰性」に分類されたのは、33例(89%)であった。HR-/HER2+患者でNCC-ST-439の発現が「陽性」に分類されたのは、1例(6%)、「陰性」に分類されたのは、17例(94%)であった。
9-8.血清中のNCC-ST-439発現とRFSとの相関(陽性判定基準:男性および50歳以上の女性4.5 U/mL以上、50歳未満の女性7.0 U/mL以上)
血清中のNCC-ST-439発現の有無と、患者のRFSとの関連性を検討した。
全浸潤癌症例を対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を図10に示す。統計解析の結果、NCC-ST-439陽性症例では陰性群に比して有意に短かった(p<0.001)。
ホルモンレセプター陽性・陰性群のそれぞれを対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を図11に示す。左のパネルはホルモンレセプター陽性群、右のパネルはホルモンレセプター陰性群を示したものである。統計解析の結果、ホルモンレセプター陰性群ではNCC-ST-439陽性症例は早期から再発し、NCC-ST-439陰性群に比して有意に短かった(p<0.001)。ホルモンレセプター陽性群ではNCC-ST-439陽性乳がん症例は陰性群に比して有意に短い傾向にあった(p=0.082)。
バイオマーカー亜型分類のそれぞれを対象とした血清中のNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を図12に示す。左上のパネルはHR+/HER2-症例、左下のパネルはHR+/HER2+症例、右上のパネルはHR-/HER2+症例、右下のパネルはHR-/HER2-症例を示したものである。統計解析の結果、HR-/HER2+群及びHR-/HER2-群両症例において、NCC-ST-439陽性群は陰性群に比して有意に短かった(p<0.001及びp<0.001)。HR+/HER2-症例において、NCC-ST-439陽性乳がん症例は陰性群に比して有意に短い傾向にあった(p=0.087)。
[実施例4]
1.患者の選択
原発性乳がんcStage0―IIIの術前診断にて2010年~2012年に国立がん研究センター中央病院乳腺外科で根治切除目的に外科切除された、両側性乳がん症例を除く、ホルモンレセプター陰性と診断された連続症例の146症例を患者として選択した。臨床病理データは診療録から情報を収集した。
予後解析は、術前化学療法を実施していない浸潤癌症例(n=124)および臨床的に浸潤癌と判断され術前化学療法実施後に外科切除された症例(n=22)の合計146症例について実施した。
2.病理学的解析
外科切除検体は、病変部を全割して病理学的に解析し、腫瘍は乳癌取り扱い規約第17版(金原出版、東京)およびWHO分類(WHO Classification of Tumours,5th ed.,Breast Tumours,WHO classification of tumours editorial board(ed.), IARC,Lyon,France)、UICC TNM分類8版(The TNM Classification of Malignant Tumours,8th edition,Brierley JD,Gospodarowicz MK,Wittekind c(eds.),John Wiley & Sons,Ltd.,New York,U.S.A.)に従って分類した。以下の解析には代表腫瘍組織である最大割面部分を使用した。
3.免疫組織化学
NCC-ST-439抗体(Cancer Res 1991;51:2199-204)を用いて免疫組織化学を実施した。4μm厚ホルマリン固定パラフィン包埋組織薄切切片を用意し、Autostainer link 48(DAKO, Agilent Technologies,Santa Clara,CA,U.S.A.)を用いた。免疫組織化学の結果について、陽性細胞の割合と陽性強度により評価した。内部陽性コントロール非腫瘍乳管上皮細胞の陽性強度と同等以上の陽性強度を示すがん細胞が全がん細胞の10%以上存在するものを陽性と判断した。
4.免疫学的測定
NCC-ST-439抗原キット(ラナザイム ST-439プレート,日本化薬株式会社)を用いて血清中のNCC-ST-439抗原の測定を実施した。NCC-ST-439抗原濃度が4.5 U/mL以上(男性および50歳以上の女性)、7.0 U/mL以上(50歳未満の女性)を陽性と判断した。なお、抗原濃度の単位 U/mLは、ST-439をはじめに同定した際の濃度を基準としたものである(大倉久直ほか:各種癌・良性疾患患者血清によるNCC-ST-439EIAキットの臨床的検討(1).癌と化学療法 14:1901-1906,1987)。
5.ホルモン受容体解析
乳癌診療ガイドライン(科学的根拠に基づく 乳癌診療ガイドライン4.検診・診断 2008年版、日本乳癌学会編、金原出版、東京)に従って、ホルモン受容体(ER、PgR)の解析を行った。免疫組織化学的染色によりER、PgRの染色を行った。一次抗体として抗ER抗体(clone 1D5;DAKO)、抗PgR抗体(clone PgR636;DAKO)を用い、メーカー指定のプロトコールに則って染色を行った。腫瘍組織における陽性細胞の割合を判定し、10%以上をホルモン受容体陽性と判定した。
6.HER2解析
ハーセプチン適正使用選択のためのHER2検査ガイド第3版(ASCO/CAP HER2検査ガイドラインに準拠)(トラスツズマブ病理部会作成)にしたがって解析した。はじめに免疫組織化学的染色により評価を行い、境界域の症例についてはFISH法による評価を加えた。免疫組織化学法は、抗HER2抗体(polyclonal, HercepTest II, DAKO)を一次抗体として用い、メーカー指定のプロトコールに則って染色を行った。判定は浸潤巣を対象として行い、スコア0、1+は陰性、スコア3+は陽性と判定した。スコア2+の境界域症例についてはFISH法を行い、増幅がみられた症例(HER2/CEP17シグナル比2.0以上)を陽性と判定した。FISHプローブとしてパスビジョンHER2 DNAプローブキットを用いた。
7.統計学的解析
各因子の解析にはt検定、カイ2乗検定を、生存解析はKaplan―Meier生存解析、Cox比例ハザードモデルを用いて検討し、log-rank試験を用いて解析した。解析ソフトはSPSS ver.27(IBM, U.S.A.)を使用した。解析においてp値<0.05の場合に有意差有り,p値<0.10の場合に有意傾向有りと判定した。
8.倫理事項
本研究は国立がん研究センター研究倫理審査委員会による承認を得たものである(研究課題番号2018-119)。研究に参加したすべての被験者からインフォームド・コンセントを得た。また全ての研究はヘルシンキ宣言の原則に沿って行われた。
9.結果
9-1 臨床病理学的因子
対象患者146症例の臨床病理学的情報を表5に示した。患者の年齢は、29歳から89歳であり、中央値は58.5歳であった。組織型は、浸潤性乳管癌通常型が114例(78.1%)、浸潤性乳管癌特殊型が32例(21.9%)であった。核グレードは、1及び2が28例(19.2%)、3が118例(80.8%)であった。脈管侵襲は、なしが86例(58.9%)、ありが60例(41.1%)であった。バイオマーカー亜型分類は、HR-/HER2+:47例(32.2%)、HR-/HER2-:99例(67.8%)であった。術前のステージは、0:6例(4.1%)、1:41例(28.1%)、2:83例(56.8%)、3:16例(11.0%)であった。リンパ節転移は、なしが87例(59.6%),ありが59例(40.4%)であった。化学療法は、なしが37例(25.3%)、術前化学療法ありが22例(15.1%)、術後補助化学療法ありが98例(59.8%)であった。放射線治療は、なしが54例(36.7%)、ありが90例(63.3%)であった。
9-2.免疫組織化学
乳がん細胞(がん組織内)におけるNCC-ST-439陽性患者:58例(40%)、NCC-ST-439陰性患者:88例(60%)であった。
9-3.免疫学的測定
血清におけるNCC-ST-439陽性患者:16例(11%)、NCC-ST-439陰性患者:130例(89%)であった。
9-4.乳がん組織中及び血清中のNCC-ST-439発現とRFSとの相関
乳がん組織中及び血清中のNCC-ST-439発現の有無と、患者のRFSとの関連性を検討した。
乳がん組織中及び血清中のNCC-ST-439陽性患者群及びNCC-ST-439陰性患者群のKaplan―Meier生存曲線を図13に示す。左のパネルは乳がん組織中NCC-ST-439の陽性陰性で解析した結果、右のパネルは血清中NCC-ST-439の陽性陰性で解析した結果を示したものである。統計解析の結果、乳がん組織中のNCC-ST-439では、NCC-ST-439陽性症例は早期から再発し、NCC-ST-439陰性群に比して有意に短かった(p<0.001)。また、血清中のNCC-ST-439においてもNCC-ST-439陽性症例は早期から再発し、NCC-ST-439陰性群に比して有意に短かった(p=0.013)。
本発明の検査方法によれば、乳がんの予後不良群(乳がんの再発)を予見(予測)することができるので、化学療法による治療が良いのか、免疫チェックポイント阻害薬などのバイオ医薬品などによる新しい治療法が良いのかなど、治療法の選択をより早期に判断できる。そして、本発明の検査方法を用いることにより患者である治療対象者の負担軽減につながると考えられる。

Claims (8)

  1. 乳がん患者の予後を判定するための検査方法であって、
    前記患者から採取された試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原を検出すること、および
    シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原を発現している場合に患者の予後が不良である可能性があると判定すること、
    を含む、検査方法。
  2. 前記試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の発現割合または発現量が予め定められた参照値未満である場合に、患者の予後が良好である可能性があると判定し、前記試料におけるシアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の発現割合または発現量が予め定められた参照値以上である場合に、患者の予後が不良である可能性があると判定する、請求項1に記載の検査方法。
  3. 予後が無再発生存期間である、請求項1又は2に記載の検出方法。
  4. シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原の検出を、糖鎖のエピトープを認識する抗体を用いた免疫学的方法により行う、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 免疫学的方法が、組織試料を用いた免疫組織化学法、又は血液試料を用いた免疫学的測定法である、請求項4に記載の方法。
  6. 糖鎖のエピトープを認識する抗体が、下記式(X)に記載の糖鎖構造を有する糖タンパク質と反応する抗体である、請求項4に記載の方法。
  7. シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原に対する抗体を含む、乳がん患者の予後予測用の試薬。
  8. シアリルルイスX構造を持つ糖鎖抗原に対する抗体と、前記抗体を検出するための試薬とを含む、乳がん患者の予後予測用の検査キット。
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