JP2023176734A - 織機 - Google Patents

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Taiji Takagi
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Abstract

【課題】製織直後の織物の保管場所と、移送の手間と、精練または水洗工程に投入されるまでの時間とを削減して生産性を向上させるとともに、得られる織物の経時での機械強度低下や黄変、染色ムラの発生を抑制しやすい織機を提供する。【解決手段】製織部と、精練部または水洗部の少なくとも一方と、乾燥部とが、前記の順で配置されている織機である。【選択図】なし

Description

本発明は、織機に関するものである。
織機により織られた直後の織物は、蝋分、脂肪分、タンパク質、夾雑物、機械油、糊剤、オイリング剤などの異物が糸の表面に付着しており、そのまま染色すると染ムラの原因となってしまう。そのため、一般に織物は精練や水洗され、糸表面の異物を取り除いた状態で染色される。
織物を精練する装置として、例えば特許文献1には、反応塔中に布帛を堆積状態で滞留的に上部より下部へ順次移送する間に精練漂白等の各種処理を行うようにした繊維製品の処理装置が開示されている。
特開昭48-1277号公報
従来、製織された織物は、いったん保管庫で保管され、精練や水洗といった後加工を行う設備へ移送され、その後に前記後加工を行うための装置に織物が投入される。
しかし従来の方法では、製織直後の織物の保管場所の確保、移送の手間、精練や水洗工程に投入されるまでの待ち時間などが発生してしまう。
また、糸の表面に付着している異物は、経時によって変質していき、異物が付着している織物の部分の機械強度低下や黄変の原因になる。同時に、経時によって異物と糸との固着が強まり、精練や水洗ムラの原因ともなる。
以上より、製織後の織物の取り扱い上の動線を短くすると同時に、なるべく早く精練または水洗を行い、糸の表面から異物を除去することが望ましい。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、製織直後の織物の保管場所と、移送の手間と、精練または水洗工程に投入されるまでの時間とを削減して生産性を向上させるとともに、得られる織物の経時での機械強度低下や黄変、染色ムラの発生を抑制しやすい織機を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の本発明の一態様を完成するに至った。
(1)本発明に係る織機は、製織部と、精練部または水洗部の少なくとも一方と、乾燥部とが、前記の順で配置されている織機である。
(2)また、本発明にかかる織機は、前記製織部が、ウォータージェット方式、エアージェット方式、レピア方式、グリッパー方式、有杼方式からなる群より選ばれる方式により製織する製織部であるとよい。
(3)また、本発明にかかる織機は、前記精練部または水洗部の少なくとも一方に、超音波発生部を有するとよい。
(4)また、本発明にかかる織機は、前記精練部または水洗部の少なくとも一方に、加熱部を有するとよい。
(5)また、本発明にかかる織機は、前記乾燥部が、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ホットシリンダー乾燥機からなる群から選ばれる1つ以上の乾燥機であるとよい。
(6)また、本発明にかかる織機は、前記乾燥機の後部に、テンターが配置されているとよい。
(7)また、本発明にかかる織機は、糊剤が付着している糸を用いて製織するための織機であってもよい。
(8)さらに、前記糊剤が、アクリル糊剤またはでんぷん糊の少なくとも一方であるとよい。
(9)また、本発明にかかる織機は、オイリング剤が付着している糸を用いて製織するための織機であってもよい。
(10)また、本発明にかかる織機は、糊剤およびオイリング剤が付着していない糸を用いて製織するための織機であってもよい。
(11)また、本発明にかかる織機は、連続して製織、精練または水洗の少なくとも一方、乾燥をこの順で行う織機であるとよい。
本発明によれば、製織直後の織物の保管場所と、移送の手間と、精練または水洗工程に投入されるまでの時間とを削減して生産性を向上させるとともに、得られる織物の経時での機械強度低下や黄変、染色ムラの発生を抑制しやすい織機を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。また、本発明は、以下の態様のみに限定されるものではなく、本発明の精神と実施の範囲において多くの変形が可能である。
本実施の形態にかかる織機は、製織部と、精練部または水洗部の少なくとも一方と、乾燥部とが、前記の順で配置されている織機である。
<製織部>
本実施の形態にかかる製織部は、整経、ビーミングされた経糸を、製織部の後部や、製織部の後に設置される精練部や水洗部、乾燥部などに設けられ張力を掛けて引き取る装置により引き取りながら、綜絖により経糸を上下させて杼口を開口させ、杼口中に緯糸を通していく機構を有する。具体的には、一般的な自動織機や、手機の中でもクロスビームなどの製織直後の織物を巻き取る手段を有する織機が用いられる。
杼口を開口する方式による織機の分類において、タペット織機、ドビー織機、ジャカード織機のいずれであってもよいが、生産速度が速いとの観点から、タペット織機を用いることが好ましい。
緯糸を通す方式として、無杼方式、有杼方式のいずれであってもよい。無杼織機として、糸端を指でつかんで通す方式、水の噴射で緯糸を飛ばすウォータージェット方式、空気の噴射で緯糸を飛ばすエアージェット方式、糸端を棒(レピア)でつかんで通すレピア方式、糸端をつかんだ金属(グリッパー)を射出して通すグリッパー方式などが挙げられる。また、有杼方式で用いられる杼としては、おもり、棒、板、一般的なシャトルが用いられ、ボビンが収納されているものや、杼口中を通しやすいようにローラーを備えているものであってもよい。生産性の観点から、ウォータージェット方式、エアージェット方式、レピア方式、グリッパー方式、有杼方式のいずれかを選択するのが好ましい。また、ウォータージェット方式を用いる場合には、製織直後の織物を乾燥する工程が必要となるが、本実施の形態にかかる織機を用いれば、精練や水洗された後に乾燥されるため、従来の工程から製織直後の乾燥工程を省略することができる効果も発揮する。
緯糸が通された後、適宜筬打ちが行われることで織物となる。織物は経糸にかけられた張力に従って製織部の下流側に引き取られて行く。張力を掛け引き取る方法としては、一般的な織機でよく使用されている、製織された織物を直後に巻き取る装置であるクロスビームなどの軸に巻き取る方法の他に、フィードロールやコンベアと織物間との摩擦力にて織物を搬送する方法、ピンチロールやニップロールにて織物に圧を加えて搬送する方法、織物の耳部をピンやクリップで把持し搬送する方法などが挙げられ、これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。張力を一定に維持しやすいとの観点から、軸に巻き取る方法、圧を加えて搬送する方法、耳部を把持し搬送する方法を織機中の少なくとも1箇所に適用することが好ましい。なお張力は、緯糸を通す前の経糸に掛けてもよいし、製織された織物に掛けてもよいし、織機の途中で前記の一方から他方へ1回以上変わってもよい。
製織直後の織物は、クロスビームなどの軸に巻き取られてもよいし、巻き取らず次の精練部または水洗部へ連続して導入してもよい。クロスビームなどの軸に織物を巻き取る場合には、続いて行われる精練または水洗工程において、クロスビームなどの軸に織物の送り出し機能を担わせ、クロスビームなどの軸から巻物を移動させずに、製織部の直後に設置した精練部または水洗部へ導く構造とする。製織直後の織物を巻き取らず次の精練部または水洗部へ連続して導く場合には、まず製織部のみを運転して製織部の最後、精練部または水洗部の最初まで製織した織物と、加工前にあらかじめ製織部や水洗部のラインパスに沿って通しておいた導布とをミシンなどで接続する準備をしてから織機全体を運転してもよいし、整経した経糸を織機のラインパスの最初から最後まで通す準備をしてから織機を運転してもよい。生産性をより向上させるとの観点から、製織部から連続して精練部または水洗部へ導入することが好ましい。なお、ここで言う「連続」とは、織物を製造する際に、製織部と続く精練部や水洗部以降とが連動して運転され、製織部で製織直後の織物が物理的に連続して精練部または水洗部以降に導入される状態を指す。そのため、前記のように織物製造の準備段階で織機が止まっていても、トラブルが発生した際に織機を止めても、織物の製造の際に製織部で製織直後の織物が物理的に連続して精練部または水洗部以降に導入されていれば、連続であるとみなす。
製織部と精練部または水洗部との間には、アキュームレーターが設置されていてもよい。アキュームレーターとは、ラインパス上に軸の位置が可変するように設置されたガイドロール群を指す。順調に織物の製造を行っている際には、ガイドロール群の間隔を広くし、ラインパスを長くする一方、経糸が切れるなどのトラブルが発生した際、ガイドロール群の間隔を狭めることで、狭められた分だけラインパス上に織物を蓄積することができる。アキュームレーターの稼働により蓄積された織物の長さの分だけ、織機全体を連続で運転している最中であっても、糸のつなぎ直しなどトラブル対応の時間的余裕を作ることができ、トラブル対応の際に織機全体の停止を免れ、生産性を高めることができる。
<精練部および水洗部>
本実施の形態にかかる織機は、製織部にて得られた織物に対し、引き続き精練や水洗をする精練部または水洗部の少なくとも一方を有する。ここで「精練部」とは、適宜の薬剤を含む精練浴を中心とした装置のことを指し、一方「水洗部」とは、水のみからなる水洗浴を中心とした装置のことを指す。精練部と水洗部は、それぞれ単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
製織直後の織物を精練や水洗する目的は、糸の表面に付着している蝋分、脂肪分、タンパク質、夾雑物、機械油、糊剤、オイリング剤などの異物を除去し、付着している異物の経時変化を原因とする織物の機械強度低下や黄変の防止をすることと、後の染色工程での染ムラ発生を防止することである。
精練部や水洗部は、前述の通り製織部の直後に設置され、好ましくは製織部と連動して製織直後の織物を物理的に連続して精練部や水洗部に導入する機構とする。
糸に含まれるセリシンの除去や、製織時の機械強度や潤滑性の向上を目的に糸に人為的に付与された糊剤、オイリング剤を含む異物の除去が必要な場合には、アルカリ剤、界面活性剤、タンパク質分解酵素、分散剤、再汚染防止剤、消泡剤などを含む浴槽(精練浴)での精練と、多くの場合引き続き前記薬剤をすすぐ水洗浴での水洗を行う。一方、織物の設計段階で特に糸の表面から除去すべき異物が無い場合や、特段の薬剤を用いず水のみで糸の表面に付着している異物を除去する場合には、水や温水を有する浴槽(水洗浴)での水洗のみを行い、糸くずやスキンフレークなど環境由来の夾雑物などの異物を除去する。また、減量や割繊、脱硫、漂白、中和などを目的としたその他の浴を必要なだけ設けてもよいし、製造する織物の種類に応じて浴槽のサイズや浴槽の個数を変更できるよう、浴槽を換装可能としてもよい。なお、一般的に糸の表面に付着している糊剤やオイリング剤などの異物を除去する工程を「精練」と呼ぶことが多いが、本願においては、糸の表面に付着した前記のような異物を除去する工程においても、水以外の特段の薬剤を用いない場合を「水洗」と呼ぶ。
精練部や水洗部をなす浴槽には、前述の通り水や各種薬剤を含む浴液が供給されるが、浴液や水を浴槽に適宜追加し、オーバーフローさせながら加工することが好ましい。浴中で糸の表面から除去された油分は水よりも比重が小さく、浴液上部に浮く成分が多いため、浴液をオーバーフローさせることで浴液全体が連続運転によって汚れていくことを抑制しやすい。また、オーバーフローにより排出される浴液には油分が濃縮されているため、排出された浴液から効率よく油分を分離し、浴液として再利用しやすくなる効果も発揮する。
一方、アクリル糊剤やでんぷん糊などの水よりも比重が大きい異物を除去する場合には、浴液の排出口を浴槽の底部または底部直近の側面に設けることが好ましい。比重が大きいは異物は浴槽の底に沈降しやすいため、加工中の浴液を浴槽の底部から排出させることで浴液全体が連続運転によって汚れていくことを抑制しやすい。また、浴槽の底部から排出される浴液には比重が大きい異物が濃縮されているため、排出された浴液から効率よく比重が大きい異物を分離し、浴液として再利用しやすくなる効果も発揮する。
さらに、浴槽から排出された廃液は、分離や濃縮などの各種加工を行い、薬剤などの各種成分を回収して利用することもできる。薬剤などの各種成分を回収する際には、必要であれば酸やアルカリ、電解質などといった各種の分離促進剤の添加をしたうえで、ろ過、デカンテーション、沈降分離、遠心分離、透析、剪断力の付与、電圧の印可、クロマトグラフィー、蒸留、再結晶、昇華、抽出、乾燥などの各種成分の性質に合わせ適宜の手法によって浴液から回収すればよい。
精練部や水洗部に含まれる浴槽には、水洗効果の向上と浴中での水洗品質を均一化させるとの観点から、超音波発生部を有するとよい。超音波発生部の作用により浴に与える周波数は、10kHz~150kHzが好ましく、25kHz~130kHzがより好ましい。浴に与える周波数が10kHz以上であることにより、織物への機械的ダメージを抑制でき、150kHz以下であることにより、水洗能力を向上させる効果を強く発現させられる。また、単一の周波数のみを発振してもよいし、単一の周波数の発振で発生してしまうおそれがある定在波の腹と節を均す目的で、整数倍とならない複数の周波数の発振を組み合わせてもよい。
また、精練部や水洗部に含まれる浴槽には、水洗効果を向上させるとの観点から、加熱部を有するとよい。特に精練部に含まれる精練浴の温度は、加熱部の作用により60℃以上とすることにより、糸の表面に付着している異物を除去しやすく好ましい。
また、水や適宜の薬剤を含む薬液をノズルから噴射し、液流による剪断力を利用して糸の表面から異物を除去する能力を向上させてもよい。ノズルからの液の噴射は、浴槽の中で行ってもよいし、空気中で織物に対して吹き付けてもよい。
精練部や水洗部に含まれる浴槽を通過した織物は、引き続き乾燥部へ導かれるが、乾燥部の前にマングルロールを設け、濡れている織物を絞ることが好ましい。濡れている織物を絞ってから乾燥部へ導くことにより、乾燥効率を向上させられる効果と、乾燥ムラの発生を抑制できる効果と、製織中の経糸へ張力を掛け引き取る装置として作用する効果とが得られる。また、線状の開口ノズルを有する吸引機や、ロール上に開口ノズルを有するサクションロール、ロール表面で水分を吸収し軸部分から吸収した水を排出するスポンジロールなど、他の水分を吸引や吸収する機構と組み合わせてもよい。乾燥部に導入される前に織物からある程度の水分を取り除いておくことで、引き続き行われる乾燥の条件を弱めることができ、使用するエネルギーを削減する効果や、乾燥部において織物に与える温度や熱量の管理に融通性を持たせられる効果を得られる。
<乾燥部>
本実施の形態にかかる織機は、精練部または水洗部の少なくとも一方を通過した織物を乾燥させる乾燥部を有する。
乾燥部に用いられる乾燥機としては、織物にエアーノズルやファンを用いて風を吹き付ける熱風乾燥機、織物に赤外線を照射し水分子を振動させ加熱する赤外線乾燥機、織物にラジオ波やマイクロ波を照射し水分子の双極子回転を誘起し加熱する誘電体加熱乾燥機、シリンダー中の熱媒の加熱で全体が高温となっているシリンダーに織物を接触させ乾燥するホットシリンダー乾燥機などが挙げられ、これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。中でも、設備がコンパクトでかつ乾燥能力が高い熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ホットシリンダー乾燥機からなる群から選ばれる1つ以上の乾燥機を有しているとよい。なお本願における「熱風乾燥機」とは、常温の風を吹き付けて風乾する乾燥機も含む。また、後述するテンターを乾燥機に併設してもよい。
乾燥部に用いられる乾燥機の温度や構成としては、乾燥機中で十分に水分を乾燥できる温度や構成であれば特に限定されず、織物に与える温度や熱量を適切に管理できる手段を選択すればよい。例えば、比較的厚手の織物を乾燥させる場合には、赤外線乾燥機と他の乾燥機とを組み合わせる構成であれば乾燥効率を向上させられ好ましい。また、織物にヒートセット効果を与え、熱や洗濯などに対する寸法安定性が高い商品を製造する場合には、織物を構成する糸のガラス転移温度以上の温度で加熱すればよい。一方、さらに後の加工で織物の風合いやタッチを変化させたい場合や、織物にシボや表情と呼ばれる凹凸などの好ましい外観変化を発現させる場合などには、風乾などガラス転移温度未満の温度で比較的長時間乾燥する設計とすればよい。
ここで、一般的な自動織機の製織速度は毎分数十cm程度であるのに対し、精練や水洗、それに引き続く乾燥工程の加工速度は毎分数十m程度である場合が多い。従来の方法では長尺に製織した織物を、別の工場に設置された精練などの後加工を行う設備を用いて高速で加工することによりリードタイムの削減が図られていたが、本実施の形態にかかる織機を用いれば、製織直後の織物の保管場所、移送の手間、精練または水洗工程に投入されるまでの時間の削減が可能となり、リードタイムの律速となる製織工程の所要時間とほぼ同程度の時間で前記後加工までを完了させられる。さらに、製織の速度と同程度の加工速度で前記後加工も行うのであれば、従来の精練などの後加工の速度から大幅に加工速度が遅くなる、つまり精練部や水洗部に含まれる浴槽、乾燥部に含まれる乾燥機、後述するテンターのチャンバー内などに加工を受ける織物が滞留する時間が長くなる。このことを利用し、リードタイムにほぼ影響を与えず、かつ長時間精練や水洗することによって糸の表面に付着した異物を除去する能力が向上し、得られる織物の経時での機械強度低下や黄変、染色ムラの発生を一層抑制しやすくなる効果や、織物を比較的低温で長時間かけて乾燥させ、後加工の際に織物の風合いやタッチ、表情を調整しやすくなる効果、前記後加工装置の長さ、使用する水やエネルギーの量などを従来から大幅に削減する効果も発揮される。
加えて、糸の表面に付着している異物が除去された織物は、経時での機械強度低下や黄変の懸念を大幅に低下させられるため、本実施の形態にかかる織機で製造された織物は、従来では不可能だった大量に製造して長期間在庫として保管することも可能となる。各季節や1年ごとに移り行くファッショントレンドに対し、必要量だけ流行色に染色して市場に出すことが求められる繊維業界においては、大量の在庫からリードタイムなく染色工程に投入できる織物の価値は、非常に高いものとなる。また、織物を大量に在庫として保管が可能となることは、多彩なカラーバリエーションそのものが消費者への訴求力につながる繊維業界において、染色される色ごとの少量多品種生産を容易にする効果も発揮する。
乾燥部で乾燥された織物は、軸に巻き取ったり、かごの中などに振り落とされたりして、製織、精練や水洗、乾燥がなされた織物が得られる。ここで、精練や水洗後に乾燥工程を経ることで、得られる織物は引き取りの張力や湿潤による膨張、乾燥による収縮などが原因で、織物内部にひずみ(布目ズレ)が発生したり、設計段階での織物の幅、長さ、織密度、目付などの性量が変わったりしてしまうことが多い。そこで、織物をテンターで加工して織物の性量を設計通りに回復させてもよい。
<テンター>
製織部と、精練部や水洗部との配置で説明したものと同様の形態で、乾燥部の直後にテンターを設置してもよい。織物をテンターに導入する際には、乾燥部を通過した織物を一度軸に巻き取った後、改めてテンターに導入してもよいし、乾燥部から連続してテンターに導入してもよい。また、織物を構成する糸が後述する天然繊維や再生繊維である場合には、寸法安定性の確保や表面品位確保のため、乾燥部として、熱風乾燥機や赤外線乾燥機などの織物に接触せず乾燥させる乾燥機を用い、乾燥部にテンター設備を併設することで、濡れている織物の乾燥と同時にテンター加工を行ってもよい。一方、織物を構成する糸が合成繊維である場合には、濡れたまま乾燥と同時にテンター加工を行うと、乾燥中の水分蒸発による重量変化が原因で性量の調整が難しいという観点から、乾燥部とテンターとを分け、乾燥部の直後にテンターを設置するのが好ましい。
テンターに導かれた織物は、耳部を、レール上に配置したピンやクリップで把持される。織物を把持したピンやクリップがレール上を進むことにより織物の長さ方向の張力を調整しつつ搬送され、同時にピンやクリップの幅を適宜変化させることにより織物の幅方向の張力を調整する。長さ方向の張力や幅方向の張力の調整により、織物の性量を所望の値に調整する。また、自動織密度測定器や布目矯正機と連動させ、張力の調整や布目ズレの矯正を行ってもよい。
織物を構成する糸が合成繊維である場合において、レール上のピンやクリップで織物を搬送する際には、前記レールを100℃~220℃の高温となるチャンバー内を走行させるのが好ましい。織物に対して熱をかけることにより、性量の調整が容易になる。また、ヒートセット効果により、熱や洗濯などでの寸法変化を抑え、所望の性量を維持する形状記憶性を与える効果も発揮する。チャンバーの設定温度は、織物を構成する糸の種類により適宜選択すればよい。
<製織に用いる糸>
本実施の形態にかかる織機は、製織に用いる糸の素材として任意のものが用いられ特に限定されない。具体的には、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ乳酸、芳香族ポリアミド、ポリイミドまたはポリフェニレンサルファイドといった合成繊維、または、アセテートやプロミックスといった半合成繊維、キュプラ、レーヨンといった再生繊維、綿、麻、絹、羊毛といった天然繊維、あるいは、これらの素材の混繊糸、混紡糸を用いることができ、さらにこれらの糸を複数種用いて交織してもよい。
なかでもポリアミド糸は、糸の表面に付着した異物の影響を比較的早期に受け、織物の機械強度の低下や黄変が発生してしまいがちである。本実施の形態にかかる織機によれば、糸の表面に付着した異物が製織後速やかに除去されるため、ポリアミド糸を用いて製織するのに適している。
また、ポリアミド糸やポリエステル糸を含む織物は、織物に与える温度や熱量によって織物の風合いやタッチ、表情を調整しやすい織物であるため、比較的低温で長時間かけて乾燥することにより、さらなる後加工時にこれらの調整が行いやすく好ましい。本実施の形態にかかる織機を用いてポリアミド糸やポリエステル糸の製織を行えば、リードタイムにほぼ影響を与えず、かつ織物を比較的低温で長時間かけて乾燥させることが可能となると同時に、得られる織物の保管できる期間が長くなり、大量に確保した在庫からさらなる後加工へ随時投入することで、多種多様な風合いやタッチ、シボや表情を有する織物の少量多品種生産を行いやすい。そのため、本実施の形態にかかる織機は、ポリアミド糸やポリエステル糸を用いて製織するのにも適している。
また、本実施の形態にかかる織機は、糊剤が付着している糸を用いて製織するための織機であっても、オイリング剤が付着している糸を用いて製織するための織機であっても、糊剤およびオイリング剤が付着していない糸を用いて製織するための織機であっても構わない。
スパン糸やマルチフィラメント糸などの複数の単繊維を紡績や撚り合わせなどで1本の糸として取り扱われる糸を経糸に用いて製織する場合、引き取りの張力、綜絖の運動による急激な張力変化、緯糸を通す際の衝撃、製織部の金属部品との摩擦、隣り合った糸同士の摩擦などで毛羽立ちや毛玉の発生といった外観上の不具合や、繊維の脱落による機械強度の低下、最悪の場合には糸切れといった不具合が発生しがちで、高速での製織を行う際に特に発生しやすい。
そのため、これらの糸を経糸に用いて製織する際には、単繊維同士を互いに接着、集束させ、毛羽伏せや抱合力を向上させるための糊剤やオイリング剤の付与をするのが好ましい。具体的には、単繊維の繊度が6dtex以下または糸全体の繊度が280dtex以下の糸のうち、無撚糸や仮撚糸など強撚糸でないもの、または双糸や三子糸でない一般的な単糸については、糸として細くかつ特殊な強化がなされていない糸であるため、糊剤やオイリング剤の付与で糸の保護を行うとよい。また、強度が比較的高い強撚糸であっても、製織中のハンドリングによって解撚してしまい得られる織物の品位が望んだものとなりにくい糸に対しても、糊剤やオイリング剤の付与は有効である。本実施の形態にかかる織機によれば、糸に糊剤やオイリング剤を付着させて単繊維同士の抱合力を向上させ、高速で稼働する織機から受ける製織中のダメージやから糸を保護したり、ハンドリング中の毛羽立ちや解撚を抑制したりすることにより、生産性を向上させることができる。その一方、糸に付着している糊剤やオイリング剤などが糸の表面から早期に除去されるため、経時による織物の機械強度の低下や黄変の発生を抑制しやすい。同時に、糸の表面への異物の固着が強固となる前に異物を除去できるので、精練や水洗ムラ、後の染色ムラの発生を抑制しやすくなる。
糸への糊剤の付与(糊付け)に用いられる糊剤としては、ポリビニルアルコール、水溶性ウレタン、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸エステルからなるアクリル糊剤、フノリやコーンスターチなどからなるでんぷん糊が挙げられ、これらは製織に用いる糸の素材や製織部に用いる織機の方式に応じて、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。一般的に、アクリル糊剤やでんぷん糊は、糸の表面から除去しづらい糊剤であり、十分な除去のためには加工にかかる時間、設備、温度、浴液の濃度などの条件を強く設定する必要がある。本実施の形態にかかる織機によれば、前述の通りリードタイムにさほど影響を与えず精練加工時間を長くとりやすいため、アクリル糊剤やでんぷん糊が付着している糸を用いて製織するのに適している。
綿、麻、絹といった天然繊維やレーヨンなどの再生繊維、また合成繊維であっても短繊維を紡績したスパン糸といった糸に対しては、でんぷん糊やカルボキシメチルセルロースが、抱合力を高くしやすいために好ましい。特に、鹸化(アルカリ剤の作用の下でのエステル結合の加水分解)という化学反応を経ないで除去が可能なでんぷん糊は、糊剤を回収して再利用できる点から好ましい。一方、合成繊維のうち長繊維を撚り合わせられて製造されるフィラメント糸に対しては、ポリビニルアルコール糊剤やアクリル糊剤が好ましく用いられる。
本実施の形態にかかる製織部に、ウォータージェット方式の製織部を用いる場合には、水溶性が低く、緯糸を通すために用いる水によって抱合力が低下しないアクリル糊剤を用いることが好ましい。一方、その他の方式による製織部を用いる場合においては、アクリル糊剤の増粘による筬の目詰まりを防止するため、アクリル糊剤と他の種類の糊剤とを混合して用いることが好ましい。
さらに、前記の糊付けが必要ない糸を経糸に用いる場合や、緯糸についても、摩擦による製織の際の単繊維の脱落を原因とした機械強度の低下や、摩擦帯電の抑制、柔軟性の付与といった目的のために、糸にオイリング剤を付与してもよい。また、前記糊剤と併用してもよい。
本実施の形態にかかる織機によれば、前述の通りリードタイムにさほど影響を与えず精練加工時間を長くとりやすいため、オイリング剤が付着している糸を用いて製織するのに適している。
オイリング剤として用いられる薬剤としては、一般に用いられるオイリング剤が用いられ、具体的にはパラフィン、ワックスエステル、界面活性剤などが挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
前記のような糸の機械強度が十分に高い糸を製織に用いる場合や、中空糸や異形断面糸など、異物除去用の薬剤が糸の隙間に残留しやすい糸、絹糸のセリシンを除去する場合などでは、糊剤もオイリング剤も付与されていない糸を用いて製織してもよい。特に、中空糸や異形断面糸などの薬剤が糸の隙間に残留しやすい糸に対して付着した異物は、入念な水洗が必要となるが、本実施の形態にかかる織機によれば、前述の通りリードタイムにさほど影響を与えず水洗加工時間を長くとりやすいため、糊剤もオイリング剤も付与されていない糸を用いて製織するのに適してもいる。
(実施例)
以下、本実施の形態にかかる織機について、実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明の目的を逸脱しない範囲で変更を施すことは、全て本発明の技術的範囲に含まれる。
(実施例1)
<製織部>
筬と連動してクロスビームが回転することで、経糸への張力付加と製織直後の織物の巻き取りを行える足踏み式水平手機を製織部として用いた。
<水洗部>
前記製織部の前記クロスビームの直後に、横幅150cm×長さ280cm×深さ60cm(容積2520L)の浴槽を設置し、さらに前記浴槽中にガイドロールを7本設置した。加えて、前記浴槽の直後にマングルロールと、線状の開口ノズルを有する吸引機とを設置した。以上の装置全体を水洗部とした。
<乾燥部>
前記水洗部の前記マングルロールの直後に、ロール中に高沸点油とヒーターとを備えたステンレス製で直径30cmのホットシリンダーロールを16本設置し、さらに前記ホットシリンダーロールの直後に、加工された織物を巻き取るロールを設置した。以上の装置全体を乾燥部とした。
<糸>
132dtexのモノフィラメントからなるポリプロピレン製異形断面糸を準備し、整経した。
<製織部の準備>
前記製織部に対して、前記ポリプロピレン製異形断面糸をビーミング、綜絖通し、筬通しをし、クロスビームに結び付けることで、前記製織部に経糸を準備した。
<製織の実施>
前記製織部に準備した経糸とは別のボビンに巻かれた前記ポリプロピレン製異形断面糸の端を指でつかみながら緯糸を通し、その後に綜絖と筬を作動させる作業を繰り返すことで織物を製織した。また、筬と連動してクロスビームが回転し、経糸の張力が維持されると同時に、クロスビームに製織直後の織物が巻き取られていった。以上の作業により、クロスビームに巻き取られた25mの製織直後の織物を得た。製織の速度は約0.5cm/minであった。
<水洗部および乾燥部の準備>
あらかじめ、前記水洗部の最初から、前記乾燥部の前記最後の巻き取りロールまでに、加工する製織直後の織物を導入するための導布を、ラインパスに沿って通しておいた。次いで、前記水洗部の前記浴槽中に常温の水を満たした。さらに、前記乾燥部の前記ホットシリンダーロールを100℃に加熱した。
<水洗および乾燥の実施>
前記クロスビームに巻き取られている製織直後の織物の一端と、前記導布の前記水洗部の最初側の一端とを、ミシンを用いて結反した。
次いで、前記製織部の前記クロスビームから前記製織直後の織物を送り出し、前記乾燥部の前記最後に設置した巻き取りロールで巻き取りながら、ライン速30m/minで水洗と乾燥を行った。前記製織部の前記クロスビームから前記製織直後の織物が全て送り出される直前に、車輪を有し移動できるロールに巻いて用意しておいた導布の一端と、前記製織直後の織物の最後部となる一端とをミシンで結反し、加工を続け、前記製織直後の織物25mすべてに水洗および乾燥加工を実施した。
<織物の評価>
前記で得られた織物をポリエチレン製フィルムで養生して3年保管した。3年後、前記養生を解いて前記織物を構成する糸の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、糸の中空部分まできれいに洗浄できており、異物は確認されなかった。
(比較例1)
<製織部、水洗部、乾燥部>
実施例1で用いた製織部を製織工場に設置した。また、実施例1で用いた水洗部と乾燥部とを後加工工場に設置した。
<製織の実施>
実施例1の糸と同じ糸を用い、実施例1と同様にして製織を実施し、製織直後の織物を25m得た。
<織物の評価1>
前記製織直後の織物をポリエチレン製フィルムで養生、コンテナに梱包し、後加工工場へ移送した後、3年保管した。3年後、前記養生を解いて前記織物を構成する糸の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、糸のヒダの間や中空部分には複数のカビなどの異物が詰まっている状態が確認された。
<水洗および乾燥の実施、織物の評価2>
前記3年保管した後の織物を、実施例1と同様にして水洗および乾燥加工を実施した。前記で得られた織物を構成する糸の断面を再度走査型電子顕微鏡で観察したところ、除去しきれていない異物が複数確認された。
(実施例2)
<製織部>
ウォータージェット方式の自動織機を製織部として用いた。
<精練部および水洗部>
前記製織部の直後に、横幅200cm×長さ70cm×深さ60cm(容積840L)の浴槽を直列に2つ設置し、さらに前記浴槽中のそれぞれにガイドロールを1本設置した。また、前記浴槽のそれぞれに対し、浴温を一定に保つためのヒーターからなる加熱部も設置した。加えて、前記浴槽の直後にマングルロールと、線状の開口ノズルを有する吸引機とを設置した。以上の装置全体を精練部および水洗部とした。
<乾燥部>
前記水洗部の前記マングルロールの直後に、ヒーターで発生させた熱をファンで送風する長さ50cmの熱風乾燥機を設置し、さらに前記熱風乾燥機の直後に、加工された織物を巻き取るロールを設置した。以上の装置全体を乾燥部とした。
<糸>
1.15dtexのポリエステルフィラメントを72本仮撚して83dtexの単糸としたポリエステル糸を準備し、整経した。
前記ポリエステル糸のうち経糸として用いる糸には、アクリル糊剤からなる糊剤と、固形パラフィンと非イオン系界面活性剤とからなるオイリング剤との両方が分散している分散液を付与して乾燥することにより、糊剤とオイリング剤を付着させた。また、前記ポリエステル糸のうち緯糸として用いる糸には、前記オイリング剤の分散液を付与して乾燥することにより、オイリング剤を付着させた。
<織機への糸の設置>
前記製織部に対して、前記経糸として用いる糸をビーミング、綜絖通し、筬通しをした。さらに前記糸の端を、前記製織部の前記ウォータージェット方式の自動織機に備わっている乾燥機は通さず、前記精練部および水洗部、乾燥部のラインパスに沿って通し、前記乾燥部の前記最後の巻き取りロールに結びつけることで、前記製織部の最初に設置された経糸のボビンから前記乾燥部の前記最後の巻き取りロールまで連続した、前記経糸として用いる糸を織機に設置した。また、前記緯糸として用いる糸が巻かれたボビンを前記製織部の緯糸供給機に設置した。
<精練部および水洗部、乾燥部の準備>
前記精練部および水洗部に設置した前記浴槽のうち、前記製織部に近い第1浴(精練浴)には苛性ソーダからなるアルカリ剤と、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダからなる界面活性剤とが溶解した精練用浴液を、オーバーフローするように供給しながら、前記精練部に設置した前記加熱部を用いて80℃に加熱した。また、もう一方の第2浴(水洗浴)には水を、オーバーフローするように供給しながら、前記水洗部に設置した前記加熱部を用いて40℃に加熱した。さらに、前記乾燥部の前記ヒーターは運転せず、前記ファンのみを運転させた。
<製織、精練および水洗、乾燥の連続実施>
以上の準備が完了した後、織機全体を運転し、緯糸を1000rpmで通し、ライン速25cm/minで、製織、精練、水洗、乾燥の各加工を連続で行い、ポリエステル製の織物を25m得た。
<織物の評価>
前記で得られた織物の一部をローダミン染色液で染色したところ着色されず、糸の表面に付着していた糊剤をはじめとする異物を十分に除去できていることが確認された。
次いで、前記で得られた織物をポリエチレン製フィルムで養生して3年保管した。3年後、前記養生を解いて前記織物を確認したところ、黄変の発生はなかった。
前記3年保管した後の織物を、液流染色機により分散染料を用いて青色に染色したところ、織物の機械的な損傷や染色ムラは確認されず、青色に均一に染められた織物を得ることができた。
(比較例2)
<製織部、水洗部、乾燥部>
実施例2で用いた製織部を製織工場に設置した。また、実施例2で用いた水洗部と乾燥部とを後加工工場に設置した。
<製織部の準備、製織の実施>
実施例2の糸と同じ糸を用い、経糸をウォータージェット方式の自動織機に備わっている乾燥機を通したうえでクロスビームに結び付けたこと以外は、実施例2と同様にして製織を実施し、製織直後の織物を25m得た。
<織物の評価1>
前記製織直後の織物をポリエチレン製フィルムで養生、コンテナに梱包し、後加工工場へ移送した後、3年保管した。3年後、前記養生を解いて前記織物を確認したところ、多数の黄変が発生していた。
<水洗および乾燥の実施>
前記3年保管した後の織物を、乾燥部の最後の巻き取りロールで引き取るものを経糸に変えてラインパスに沿ってあらかじめ通しておいた導布とした以外は、実施例2と同様にして精練および水洗、乾燥加工を実施した。
<織物の評価2>
前記で得られた織物には、所々前記<織物の評価1>で確認された黄変している箇所が残っていた。また、前記で得られた織物の一部をローダミン染色液で染色したところ、赤色の呈色が見られ、経時で固着が強固になった糊剤の除去が十分に行えていないことが分かった。
さらに、前記で得られた織物を、液流染色機により分散染料を用いて青色に染色したところ、各所にほつれや染色ムラが発生していた。
(実施例3)
<製織部>
エアージェット方式の自動織機を製織部として用いた。
<精練部および水洗部、乾燥部>
実施例2と同様の精練部および水洗部と、乾燥部とを設置した。
<糸>
ポリエステル糸のうち経糸として用いる糸に対し、アクリル糊剤とポリビニルアルコール糊剤を等量ずつ配合した糊剤を用いたこと以外は実施例2と同様にして、経糸に用いる糊剤とオイリング剤が付着したポリエステル糸と、緯糸に用いるオイリング剤が付着したポリエステル糸とを準備し、整経した。
<製織部の準備>
前記製織部に対して、前記経糸に用いるポリエステル糸をビーミング、綜絖通し、筬通しをし、クロスビームに結び付けることで、前記製織部に前記経糸に用いる糸を準備した。また、前記緯糸として用いる糸が巻かれたボビンを前記製織部の緯糸供給機に設置した。
以上の準備を行った前記製織部のみを運転し、前記製織部の前記クロスビームに製織直後の織物の最初の部分が巻き取られるまで製織を進めた後、前記製織部の運転を停止した。
<精練部および水洗部、乾燥部の準備>
あらかじめ、前記精錬部の最初から、前記乾燥部の最後の巻き取りロールまでに、加工する製織直後の織物を導入するための導布を、ラインパスに沿って通しておいたこと以外は、実施例2と同様にして精練部および水洗部、乾燥部を準備した。
<製織、精練および水洗、乾燥の連続実施>
以上の準備が完了した後、織機全体を運転し、緯糸を1000rpmで通し、ライン速25cm/minで、製織、精練、水洗、乾燥の各加工を連続で行い、ポリエステル製の織物を25m得た。
<織物の評価>
前記で得られた織物の一部をローダミン染色液で染色したところ着色されず、糸の表面に付着していた糊剤をはじめとする異物を十分に除去できていることが確認された。
次いで、前記で得られた織物をポリエチレン製フィルムで養生して3年保管した。3年後、前記養生を解いて前記織物を確認したところ、黄変の発生はなかった。
前記3年保管した後の織物を、液流染色機により分散染料を用いて青色に染色したところ、織物の機械的な損傷や染色ムラは確認されず、青色に均一に染められた織物を得ることができた。
(実施例4)
<製織部、精練部および水洗部、乾燥部>
実施例3と同様の製織部と、精練部および水洗部と、乾燥部とを設置した。
<テンター>
前記乾燥部の熱風乾燥機の直後に、フィードロールと、布目矯正機と、レール上に配置され織物の耳部を把持しつつ幅を変更できるピンテンターと、前記ピンテンターが通る熱風式の長さ50cmの加熱チャンバーと、巻き取りロールとを設置した。以上の設備全体をテンターとした。
<糸>
実施例3と同様の経糸に用いる糊剤とオイリング剤が付着したポリエステル糸と、緯糸に用いるオイリング剤が付着したポリエステル糸とを準備し、整経した。
<製織、精練および水洗、乾燥、性量調整の連続実施>
導布のラインパスが前記乾燥部の熱風乾燥機から前記テンターを通り前記巻き取りロールまで通したこと、前記テンターの前記加熱チャンバーの温度を190℃としたこと以外は、実施例3と同様にして織機全体を運転し、製織、精練、水洗、乾燥、テンターによる性量調整の加工を連続で行い、ポリエステル製の織物を25m得た。
<織物の評価>
前記で得られた織物の一部を、JIS L1096 E法に記載の洗濯寸法変化率試験に準じて、前記得られた織物の洗濯による形状安定性を評価した。結果、経方向が-1.2%、緯方向が-1.7%と、形状安定性に優れた織物が得られたことがわかった。
(実施例5)
<製織部、精練部および水洗部、乾燥部>
実施例3と同様の製織部と、精練部および水洗部と、乾燥部とを設置した。
<糸>
1.29dtexのポリアミドフィラメントを34本仮撚して44dtexの単糸としたポリアミド糸を用いた以外は実施例3と同様にして、経糸に用いる糊剤とオイリング剤が付着したポリアミド糸と、緯糸に用いるオイリング剤が付着したポリアミド糸とを準備し、整経した。
<製織、精練および水洗、乾燥の連続実施>
実施例3と同様にして織機全体を運転し、製織、精練、水洗、乾燥の各加工を連続で行い、ポリアミド製の織物を25m得た。
<織物の評価>
前記で得られた織物の一部をローダミン染色液で染色したところ着色されず、糸の表面に付着していた糊剤をはじめとする異物を十分に除去できていることが確認された。
次いで、前記で得られた織物をポリエチレン製フィルムで養生して3年保管した。3年後、前記養生を解いて前記織物を確認したところ、黄変の発生はなかった。
前記で得られた織物を、液流染色機により酸性染料を用いて赤色に染色したところ、織物の機械的な損傷や染色ムラは確認されず、赤色に均一に染められた織物を得ることができた。同時に、織物の表面には細かな凹凸が発生しており、シボが付与された織物が得られた。
(実施例6)
<製織部>
実施例3と同様の製織部を設置した。
<水洗部>
前記製織部の直後に、横幅200cm×長さ70cm×深さ60cm(容積840L)の浴槽を直列に2つ設置し、さらに前記浴槽中のそれぞれにガイドロールを1本設置した。また、前記浴槽のそれぞれに対し、浴温を一定に保つためのヒーターからなる加熱部と、28kHzと75kHzの2周波を発振する超音波発振器からなる超音波発生部を設置した。加えて、前記浴槽の直後にマングルロールと、線状の開口ノズルを有する吸引機とを設置した。以上の装置全体を水洗部とした。
<乾燥部>
レール上に配置され織物の耳部を把持しつつ幅を変更できるクリップテンターを併設したこと以外は、実施例3と同様の乾燥部を設置した。
<糸>
34dtexの絹糸を準備し、整経した。
<製織、水洗、乾燥の連続実施>
前記水洗部に設置した浴槽のうち、前記製織部に近い第1浴に85℃の熱水を供給したこと、前記超音波発生部から2周波の超音波を前記それぞれの浴槽に発振したこと、前記乾燥部にて乾燥同時テンター加工したこと以外は、実施例3と同様にして織機全体を運転し、製織、水洗、乾燥の各加工を連続で行い、絹織物を25m得た。
<織物の評価>
前記で得られた絹織物は、白銀色の素晴らしい光沢と、柔らかな風合いを有しており、十分に精練された絹織物であった。
<セリシンの回収>
前記水洗部の前記第1浴でオーバーフローさせていた熱水を透析により精製した後、凍結乾燥することによって、機能性物質として注目されているセリシンを単離した。
以上の比較例からわかる通り、従来では糸の表面に異物が付着したまま長期間保管すると、得られる織物の機械強度の低下、黄変の発生や、長期保管後に異物を除去しようとしても、糸への異物の固着が強固になって精練や水洗ムラ、後の染色ムラの発生の原因となるおそれがあった。一方、本実施の形態にかかる織機により得られた織物は、糸の表面に付着した異物が製織後速やかに除去されるため、前記の欠点が発生しにくく、長期保管が可能となる。長期保管が可能となった織物は大量に在庫として保管され、染色などのさらなる後加工への投入のリードタイム削減や、少量多品種生産を容易に行える利点を有する。
さらに、本実施の形態にかかる織機によれば、製織直後の織物の保管場所と、移送の手間と、精練または水洗工程に投入されるまでの時間とを削減して生産性を向上させるとともに、リードタイムにさほど影響を与えず、かつ長時間精練や水洗することによって糸の表面に付着した異物を除去する能力が向上し、得られる織物の経時での機械強度低下や黄変、染色ムラの発生を一層抑制しやすくなる効果や、織物を比較的低温で長時間かけて乾燥させ、後加工の際に織物の風合いやタッチ、表情を調整しやすくなる効果、前記後加工装置の長さ、使用する水やエネルギーの量を従来から大幅に削減する効果も発揮される。これらの効果は、糸の表面に付着した異物の影響を比較的早期に受けてしまうポリアミド糸を用いて製織する場合や、さらなる後加工にて風合い、タッチ、シボや表情などの細かな調整が求められることが多いポリアミド糸やポリエステル糸を用いて製織する場合において特に高い効果を発揮する。

Claims (11)

  1. 製織部と、精練部または水洗部の少なくとも一方と、乾燥部とが、前記の順で配置されている織機。
  2. 前記製織部が、ウォータージェット方式、エアージェット方式、レピア方式、グリッパー方式、有杼方式からなる群より選ばれる方式により製織する製織部である
    請求項1に記載の織機。
  3. 前記精練部または水洗部の少なくとも一方に、超音波発生部を有する請求項1または請求項2に記載の織機。
  4. 前記精練部または水洗部の少なくとも一方に、加熱部を有する請求項1または請求項2に記載の織機。
  5. 前記乾燥部が、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ホットシリンダー乾燥機からなる群から選ばれる1つ以上の乾燥機である
    請求項1または請求項2に記載の織機。
  6. 前記乾燥機の後部に、テンターが配置されている
    請求項1または請求項2に記載の織機。
  7. 糊剤が付着している糸を用いて製織するための請求項1または請求項2に記載の織機。
  8. 前記糊剤が、アクリル糊剤またはでんぷん糊の少なくとも一方である
    請求項7に記載の織機。
  9. オイリング剤が付着している糸を用いて製織するための請求項1または請求項2に記載の織機。
  10. 糊剤およびオイリング剤が付着していない糸を用いて製織するための請求項1または請求項2に記載の織機。
  11. 連続して製織、精練または水洗の少なくとも一方、乾燥をこの順で行う
    請求項1または請求項2に記載の織機。
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