JP2023175486A - 繊維強化プラスチック成形材料の製造方法及び繊維強化プラスチック成形体の製造方法 - Google Patents

繊維強化プラスチック成形材料の製造方法及び繊維強化プラスチック成形体の製造方法 Download PDF

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健一 藤野
Kenichi Fujino
浩之 ▲高▼橋
Hiroyuki Takahashi
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Abstract

【課題】マトリックス樹脂組成物粉末を一括して塗工する場合に比べ、曲げ特性及び外観に優れた繊維強化プラスチック成形材料を製造することができる繊維強化プラスチック成形材料の製造方法及び繊維強化プラスチック成形体の製造方法を提供する。【解決手段】50質量%以上が熱可塑性樹脂である樹脂成分を含むマトリックス樹脂組成物粉末を、複数の段階に分けて強化繊維基材に塗工する粉体塗工工程を含み、粉体塗工工程により強化繊維基材に塗工するマトリックス樹脂組成物粉末全体のうち少なくとも熱可塑性樹脂の一部を含む樹脂組成物粉末を粉体塗工工程の1段目で塗工し、マトリックス樹脂組成物粉末の残部である樹脂組成物粉末を粉体塗工工程の2段目以降で塗工する、繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。製造した繊維強化プラスチック成形材料を複数枚積層して金型を用いて加熱加圧成形して繊維強化プラスチック成形体を製造する。【選択図】なし

Description

本開示は、繊維強化プラスチック成形材料の製造方法及び繊維強化プラスチック成形体の製造方法に関する。
ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化プラスチック(FRP)は、軽量で力学特性に優れることから、民生分野から産業用途まで広く利用されている。
繊維強化プラスチックの製造方法として、熱可塑性樹脂を含むマトリックス樹脂の粉末(粒子)を強化繊維基材に付着させて繊維強化プラスチック成形材料(FRPプリプレグとも呼ばれる)を製造する方法が知られている。
例えば特許文献1では、160~220℃の温度域のいずれかにおいて溶融粘度が3000Pa・s以下である常温固形のフェノキシ樹脂を全樹脂成分の50wt%以上含むマトリックス樹脂の微粉末を、粉体塗装法によって強化繊維基材に付着させ、マトリックス樹脂割合を20~50wt%にする繊維強化プラスチック成形用材料の製造方法が開示されている。
また、特許文献2では、熱可塑性樹脂粒子を流動床法を用いて強化繊維基材に付着させて繊維強化プラスチック成形材料を製造する方法が開示されている。
特許6440823号公報 特表2017-507045号公報
静電塗工法、流動床法などの粉体塗工法によりマトリックス樹脂組成物の粉末(粒子)を用いて繊維強化プラスチック成形材料を製造する場合、所定の繊維体積含有率(Vf)となるように、マトリックス樹脂組成物の粉末を強化繊維基材に塗工する。
しかし、粉体塗工法により繊維強化プラスチック成形材料を製造すると、塗工および固定の際に強化繊維の目空きや繊維の乱れが生じて強化繊維基材に機械物性の低下が生じる場合がある。また、厚手の強化繊維基材を用いた場合も樹脂が十分含浸せず、外観不良が生じる場合がある。
そこで、本開示は、マトリックス樹脂組成物粉末を一括して塗工する場合に比べ、曲げ特性及び外観に優れた繊維強化プラスチック成形材料を製造することができる繊維強化プラスチック成形材料の製造方法及び繊維強化プラスチック成形体の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 50質量%以上が熱可塑性樹脂である樹脂成分を含むマトリックス樹脂組成物粉末を、複数の段階に分けて強化繊維基材に塗工する粉体塗工工程を含み、
前記粉体塗工工程により前記強化繊維基材に塗工する前記マトリックス樹脂組成物粉末全体のうち少なくとも前記熱可塑性樹脂の一部を含む樹脂組成物粉末を前記粉体塗工工程の1段目で塗工し、前記マトリックス樹脂組成物粉末の残部である樹脂組成物粉末を前記粉体塗工工程の2段目以降で塗工する、繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
<2> 前記1段目の塗工後、前記強化繊維基材に付与されている樹脂組成物粉末を固定する固定工程をさらに含む<1>に記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
<3> 前記1段目に塗工する前記樹脂組成物粉末は、前記粉体塗工工程により前記強化繊維基材に付与される前記熱可塑性樹脂全体の10~60質量%の熱可塑性樹脂を含む<1>又は<2>に記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
<4> 前記1段目に塗工する前記樹脂組成物粉末に含まれる前記熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点のいずれかが、前記2段目以降に塗工する前記樹脂組成物粉末に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点よりも高い<1>~<3>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
<5> 前記樹脂成分の50質量%以上である前記熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂である<1>~<4>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
<6> 前記強化繊維基材が、不織布又は一方向強化繊維基材である<1>~<5>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法によって繊維強化プラスチック成形材料を製造する工程と、
前記繊維強化プラスチック成形材料を複数枚積層して金型を用いて加熱加圧成形する加熱加圧成形工程とを含む、繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
本開示によれば、マトリックス樹脂組成物粉末を一括して塗工する場合に比べ、曲げ特性及び外観に優れた繊維強化プラスチック成形材料を製造することができる繊維強化プラスチック成形材料の製造方法及び繊維強化プラスチック成形体の製造方法が提供される。
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。
なお、本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、ある段階的な数値範囲の下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
[繊維強化プラスチック成形材料の製造方法]
本開示に係る繊維強化プラスチック成形材料の製造方法は、50質量%以上が熱可塑性樹脂である樹脂成分を含むマトリックス樹脂組成物粉末を、複数の段階に分けて強化繊維基材に塗工する粉体塗工工程を含む。そして、粉体塗工工程により強化繊維基材に塗工するマトリックス樹脂組成物粉末全体のうち少なくとも熱可塑性樹脂の一部を含む樹脂組成物粉末を粉体塗工工程の1段目で塗工し、マトリックス樹脂組成物粉末の残部である樹脂組成物粉末を粉体塗工工程の2段目以降で塗工する。
本開示に係る繊維強化プラスチック成形材料の製造方法は、粉体塗工工程における1段目の塗工後、強化繊維基材に付与されている樹脂組成物粉末を固定する固定工程をさらに含んでもよい。
まず、本開示に係る繊維強化プラスチック成形材料の製造方法で用いるマトリックス樹脂組成物粉末と強化繊維基材について説明する。
(マトリックス樹脂組成物粉末)
本開示に係る繊維強化プラスチック成形材料の製造方法では、繊維強化プラスチック成形材料においてマトリックス樹脂を形成するための材料として、50質量%以上が熱可塑性樹脂である樹脂成分を含むマトリックス樹脂組成物粉末(以下、単に「マトリックス樹脂組成物粉末」又は単に「マトリックス樹脂組成物」と称する場合がある。)を用いる。
マトリックス樹脂組成物は、強化繊維基材に粉体塗工されて繊維強化プラスチック成形材料におけるマトリックス樹脂を形成する。マトリックス樹脂組成物は、樹脂成分と、必要に応じて樹脂以外の成分を含み、樹脂成分の総量の50質量%以上が熱可塑性樹脂であればよく、熱可塑性樹脂または反応性(架橋性)を有する熱可塑性樹脂組成物が好ましく、反応性を有する熱可塑性樹脂組成物が好ましい。
マトリックス樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルやポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリアリールエーテルスルフォン(ポリスルホンやポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン)、酸変性ポリプロピレン、フッ素樹脂(PTFEやETFE)及びこれらの混合物などが挙げられる。
特に、マトリックス樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総量の50質量%以上がフェノキシ樹脂であることが好ましい。以下、熱可塑性樹脂として好ましいフェノキシ樹脂(A)を含むマトリックス樹脂組成物について説明する。
フェノキシ樹脂(A)は、常温において固形であり、かつ160~220℃の温度域のいずれかにおいて3,000Pa・s以下の溶融粘度を示すものが挙げられる。溶融粘度は、好ましくは30~2,900Pa・sであり、より好ましくは100~2,800Pa・sである。
160~220℃の温度域のいずれにおいても溶融粘度が3,000Pa・s以下であれば、成形加工時のフェノキシ樹脂の流動性が良く、成形物の機械物性の向上を図ることができる。
フェノキシ樹脂(A)は、2価フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応、あるいは2価フェノール化合物と2官能エポキシ樹脂との重付加反応から得られる熱可塑性樹脂であり、溶液中あるいは無溶媒下に従来公知の方法で得ることができる。平均分子量は、質量平均分子量(Mw)として、通常10,000~200,000であるが、好ましくは20,000~100,000であり、より好ましくは30,000~80,000である。Mwが低すぎると成形体の強度が劣り、高すぎると作業性や加工性に劣るものとなり易い。なお、Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
また、フェノキシ樹脂(A)の水酸基当量(g/eq)は、通常50~1000であるが、好ましくは50~750であり、特に好ましくは50~500である。水酸基当量は低すぎると水酸基が増えることで吸水率が上がるため、機械物性が低下する懸念がある。水酸基当量が高すぎると水酸基が少ないので強化繊維基材を構成する炭素繊維との濡れ性が低下するほか、架橋剤を使用しても架橋密度を低いため機械物性が上がらない。ここで、本明細書でいう水酸基当量は2級水酸基当量を意味する。
フェノキシ樹脂(A)のガラス転移点(Tg)は、例えば65℃~160℃が適するが、好ましくは70℃~150℃である。フェノキシ樹脂のガラス転移点が65℃以上であれば、粉体の貯蔵安定性やプリフォームのタック性が良好であり、160℃以下であれば溶融粘度が低く、成形性や繊維への充填性が良好であり、比較的低温のプレス成形が可能となる。なお、フェノキシ樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量測定装置を用い、10℃/分の昇温条件で、20~280℃の範囲で測定し、セカンドスキャンのピーク値より求められる数値である。
フェノキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製フェノトートYP-50、YP-50S、YP-55U)、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製フェノトートFX-316)、ビスフェノールAとビスフェノールFの共重合型フェノキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製YP-70)、前記以外の特殊フェノキシ樹脂(例えば日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製フェノトートYPB-43C、FX293等)等が挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して使用することができる。
マトリックス樹脂組成物には、フェノキシ樹脂(A)と共に、エポキシ樹脂(C)を配合することができる。エポキシ樹脂を配合することによって、マトリックス樹脂組成物の溶融粘度の低減による強化繊維基材への含浸性の向上や、マトリックス樹脂組成物の硬化物の架橋密度の向上を通じた耐熱性を図ることができる。特に、耐熱性の向上についてはフェノキシ樹脂(A)のTgを大きく超えることが可能であり、より高い耐熱性を要求される用途、例えば自動車材料などへの展開も可能となる。
エポキシ樹脂(C)としては、固形のエポキシ樹脂であれば適用可能であり、例えば2官能性以上のエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社株式会社製エポトートYD-011、YD-7011、YD-900)、ビスフェノールFタイプエポキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社株式会社製エポトートYDF-2001)、ジフェニルエーテルタイプエポキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社株式会社製YSLV-80DE)、テトラメチルビスフェノールFタイプエポキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社株式会社製YSLV-80XY)、ビスフェノールスルフィドタイプエポキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社株式会社製YSLV-120TE)、ハイドロキノンタイプエポキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社株式会社製エポトートYDC-1312)、フェノールノボラックタイプエポキシ樹脂、(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社株式会社製エポトートYDPN-638)、オルソクレゾールノボラックタイプエポキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社株式会社製エポトートYDCN-701、YDCN-702、YDCN-703、YDCN-704)、アラルキルナフタレンジオールノボラックタイプエポキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社株式会社製ESN-355)、トリフェニルメタンタイプエポキシ樹脂(例えば、日本化薬株式会社製EPPN-502H)等が挙げられる。なお、エポキシ樹脂(C)はこれらに限定されるものではなく、2種類以上混合して使用してもよい。
マトリックス樹脂組成物を粉体として保存するために、エポキシ樹脂(C)についても、好ましくは室温で固体であり、融点が75℃~145℃で、160℃における粘度が1.0Pa・s以下である結晶性エポキシ樹脂が好ましい。結晶性エポキシ樹脂は、溶融粘度が低く、取り扱いが容易であり、フェノキシ樹脂を含むマトリックス樹脂組成物の溶融粘度を低下させることができる。上記粘度が1.0Pa・s以下であることで、マトリックス樹脂組成物の強化繊維基材への充填性が優れ、得られる繊維強化プラスチック成形物(繊維強化プラスチック成形体)の均質性が高くなる。
マトリックス樹脂組成物中には、フェノキシ樹脂(A)とともに、マトリックス樹脂組成物のTgの向上を目的に、架橋剤(B)を配合することができる。架橋剤(B)はエポキシ樹脂(C)の配合の有無を問わず、配合することができる。
架橋剤としては、フェノキシ樹脂が有するOH基と反応する官能基を2以上有するものが使用できるが、好ましくは酸無水物である。酸無水物は加水分解により2つのカルボキシ基を生じるので、上記官能基を2つ有すると理解される。
なお、架橋剤としてはフェノキシ樹脂の2級水酸基と反応性の官能基を2以上有するものであれば使用できるが、酸無水物は、フェノキシ樹脂の2級水酸基とエステル結合を形成することによって、フェノキシ樹脂を三次元架橋させる。一方、架橋硬化した場合であっても、架橋剤が酸無水物系であれば、マトリックス樹脂組成物の硬化にフェノキシ樹脂(A)と架橋剤(B)のエステル結合を利用しているため、加水分解反応によりFRP成形物を強化繊維とマトリックス樹脂組成物に分別し、リサイクルすることも可能である。
架橋剤としての酸無水物は、常温で固体であり、昇華性が無いものであれば特に限定されるものではなく、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物(BTDA)、またはテトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(a-ODPA)、3,4’-オキシジフタル酸無水物(s-OPDA)、ビスフェノールA型酸二無水物(BisDA)などが挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して使用することができる。
成形物の耐熱性付与や反応性の点からフェノキシ樹脂の2級水酸基と反応する酸無水物を2つ以上有する芳香環を有する酸無水物が好ましく、特に、ピロメリット酸無水物のように2つの酸無水物基を有する芳香族化合物は、トリメリット酸無水物に水酸基と比べて架橋密度が向上し、耐熱性が向上するのでより好ましい。さらにフェノキシ樹脂やエポキシ樹脂との相溶性や耐吸湿性からODPA、BisDAが最も好ましい。
なお、酸無水物基は2級水酸基と反応するが、COOH基は反応性が弱いので、フェノキシ樹脂と酸無水物のみで架橋を十分に生じさせるためには、2つの酸無水物基を有する酸無水物化合物を使用する。
架橋剤は酸無水物の酸無水物基とフェノキシ樹脂中の2級水酸基とのエステル化反応によって3次元化架橋構造を形成するため、マトリックス樹脂組成物のTgが向上する。
エポキシ樹脂(C)が存在する場合は、フェノキシ樹脂(A)、架橋剤(B)及びエポキシ樹脂(C)の反応は、フェノキシ樹脂(A)中の2級水酸基と架橋剤(B)の酸無水物基とのエステル化反応、更にはこのエステル化反応により生成したカルボキシル基とエポキシ樹脂(C)のエポキシ基との反応によって架橋、硬化される。フェノキシ樹脂(A)と架橋剤(B)との反応によってフェノキシ樹脂架橋体を得ることができるが、エポキシ樹脂(C)の共存によって、酸無水物基フェノキシ樹脂の水酸基と反応して生じるカルボキシ基がエポキシ樹脂のエポキシ基と結合して架橋反応の促進や、架橋密度の向上が生じる他、マトリックス樹脂組成物の溶融粘度を低減化して強化繊維基材への含浸性を高められる。それにより、機械強度の向上など優れた繊維強化プラスチック成形体を得るために好適な繊維強化プラスチック成形材料となる。
架橋剤(B)として使用される酸無水物とエポキシ樹脂(C)、フェノキシ樹脂(A)が共存する場合、2級水酸基との反応が先ず起こり、次いで未反応の架橋剤や酸無水物基が開環して生じるカルボキシル基とエポキシ樹脂(C)とが反応することで更なる架橋密度の向上を図ることができる。
マトリックス樹脂組成物は、樹脂成分として、熱可塑性樹脂を50質量%より多く含む。好ましくは55質量%以上含む。ここで、「樹脂成分」は、フェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含むが、架橋剤等の非樹脂成分は含まれない。本開示におけるマトリックス樹脂組成物は、樹脂成分の他に、架橋剤を含んでもよい。
エポキシ樹脂(C)が存在する場合のマトリックス樹脂組成物は、硬化時間の短縮、架橋密度の向上などの観点から、フェノキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(C)の配合量を、フェノキシ樹脂(A)100質量部に対して、エポキシ樹脂(C)を9~85質量部となるように配合することが好ましい。エポキシ樹脂(C)の配合量はより好ましくは、9~83質量部であり、さらに好ましくは10~80質量部である。
架橋剤(B)の配合量は、架橋密度の観点から、通常、フェノキシ樹脂(A)の2級水酸基1モルに対して酸無水物基0.5~1.3モルの範囲の量であり、好ましくは0.7~1.3モルの範囲の量であり、より好ましくは1.1~1.3モルの範囲である。
また、架橋剤(B)の配合量に応じて、エポキシ樹脂(C)の配合量を調整することが好ましい。具体的には、エポキシ樹脂(C)により、フェノキシ樹脂の2級水酸基と架橋剤の酸無水物基との反応による生じるカルボキシル基を反応させることを目的に、エポキシ樹脂(C)の配合量を架橋剤(B)との当量比で0.5~1.2の範囲内となるようにするとよい。更に好ましくは、架橋剤とエポキシ樹脂の当量比が、0.7~1.0モルである。
架橋剤(B)をフェノキシ樹脂とエポキシ樹脂を含む樹脂組成物に配合すれば、架橋フェノキシ樹脂成形物を得ることができるが、架橋反応が確実に行われるように触媒としての硬化促進剤(D)を更に添加してもよい。
硬化促進剤は、常温で固体であり、昇華性が無いものであれば特に限定はされるものではなく、例えば、トリエチレンジアミン等の3級アミン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルフォスフィン等の有機フォスフィン類、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
硬化促進剤としては、触媒活性温度が130℃以上である常温で固体のイミダゾール系の潜在性触媒を用いることが好ましい。
硬化促進剤(D)を使用する場合、硬化促進剤(D)の配合量はフェノキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(C)及び架橋剤(B)の合計量100質量部に対して、0.1~5質量部とする。その他の添加剤については、マトリックス樹脂組成物粉末の強化繊維基材への付着や、成形物の特性を損なわない範囲内となるよう適宜調整して添加される。
マトリックス樹脂組成物には、難燃剤、難燃助剤が含まれていてもよい。難燃剤は、常温で固体であり、昇華性が無いものであればよく、例えば水酸化カルシウムといった無機系難燃剤や、リン酸アンモニウム類やリン酸エステル化合物といった有機系および無機系のリン系難燃剤、トリアジン化合物等の含窒素系難燃剤、臭素化フェノキシ樹脂等の含臭素系難燃剤などが挙げられる。
なかでも臭素化フェノキシ樹脂やリン含有フェノキシ樹脂は、難燃剤兼樹脂成分として好ましく使用することができる。
難燃剤(および難燃助剤)の配合量については、難燃剤の種類や所望の難燃性の程度によって適宜選択されるが、マトリックス樹脂組成物100質量部に対して概ね0.01~50質量部の範囲内で、マトリックス樹脂組成物の付着性や繊維強化プラスチック成形体の物性を損なわない程度で配合することが好ましい。
さらに、マトリックス樹脂組成物は、強化繊維基材への良好な付着性や成形後の繊維強化プラスチック成形体の物性を損なわない範囲において、フェノキシ樹脂以外の熱可塑性樹脂粉末、例えば、ポリ塩化ビニリデン樹脂、天然ゴム、合成ゴム等の粉末や、種々の無機フィラー、グラフェンやカーボンナノチューブ、気相合成炭素繊維などのナノカーボンやセルロースナノファイバー、体質顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線防止剤等その他添加物を配合することもできる。
本開示に係る繊維強化プラスチック成形材料の製造方法では、上記マトリックス樹脂組成物の粉体(マトリックス樹脂組成物粉末)を用いる。
マトリックス樹脂組成物の粉体化は、低温乾燥粉砕機(セントリドライミル)等の粉砕混合機の使用が好適であるが、これらに制限されるものではない。また、マトリックス樹脂組成物の粉砕に際しては、各成分を粉砕してから混合してもよいし、あらかじめ各成分を配合した後に粉砕してもよい。この場合、各粉体が後述の平均粒子径になるように、粉砕条件を設定するとよい。このようにして得られる粉体としては、強化繊維基材への付着率の向上、粉末の飛散抑制の観点から、平均粒子径が好ましくは10~150μm、より好ましくは40~100μmであり、さらに好ましくは40~80μmである。
(強化繊維基材)
次に、強化繊維基材について説明する。
強化繊維基材を構成する繊維としては、炭素繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイト繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが挙げられる。2種以上の繊維を混合した強化繊維基材を用いてもよい。
また、強化繊維基材の形態は特に制限されず、連続繊維系(一方向強化繊維基材、クロス材)でも不織布のいずれでもよい。例えば一方向材、平織りや綾織などのクロス、三次元クロス、チョップドストランドマット、数千本以上のフィラメントよりなるトウ、あるいは不織布等を使用することができる。なお、本開示では、強化繊維基材として、一方向強化繊維基材又は不織布基材を用いることが好ましい。
一方向強化繊維基材(UD材とも呼ばれる)は、クロス材と異なり緯糸が無いために一括塗工を行うと、塗工した樹脂の固定工程で基材の幅方向に大きく収縮し、塗工ムラと相まって繊維の配列が大きく乱れて目空き部が生じてしまう。しかし、多段階回に分けた第1段目の粉体塗工で予め強化繊維間に樹脂を存在させることによって、樹脂の固定工程で基材の幅方向の収縮、繊維配列の乱れを抑制し、厚物基材における樹脂の含浸性を高める効果が得られる。
一方向強化繊維基材は、開繊処理された強化繊維基材を使用してもよい。開繊処理により、粉体塗工およびその後の成形加工時において、マトリックス樹脂組成物の強化繊維基材の内部への含浸がより行われやすくなるため、より高い物性を期待することができる。
不織布基材は繊維の交絡があるので一方向強化繊維基材のような収縮による不具合は生じないものの、一方向強化繊維基材やクロス材よりも基材自体が厚いため、塗工した樹脂組成物の含浸性が低く、ボイドなどの欠陥が生じ易い。しかし、粉体塗工を複数の段階に分けて行い、強化繊維基材に対し、1段目の塗工で予め樹脂の含浸を行っておくことで、一括塗工の様に一度に大量の樹脂を塗工することが不要となる。これにより、含浸不良に起因するボイドなどの欠陥の発生を低減することができる。
(粉体塗工)
本開示における粉体塗工工程では、樹脂成分の50質量%以上が熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂組成物粉末を粉体塗工法により複数の段階に分けて強化繊維基材に塗工する。このとき、粉体塗工工程により強化繊維基材に塗工するマトリックス樹脂組成物粉末全体のうち少なくとも熱可塑性樹脂の一部を含む樹脂組成物粉末を粉体塗工工程の1段目で塗工し、マトリックス樹脂組成物粉末の残部である樹脂組成物粉末を粉体塗工工程の2段目以降で塗工する。
なお、「複数の段階に分けて強化繊維基材に塗工する」とは、各段階の塗工間に時間的もしくは物理的な間隔をあけることを意味し、例えば2段階で塗工する場合は、1段目の塗工を行った後、塗工を一旦停止して2段目の塗工を行うことを意味する。または、連続的なプロセスにおいて1段目の塗工を第1塗工チャンバーで行った後、第1塗工チャンバーとは別の第2塗工チャンバーで2段目の塗工を行うことを意味する。マトリックス樹脂組成物粉末の一部である樹脂組成物粉末を1段目で塗工して一旦塗工を停止することで、塗工された樹脂組成物粉末が強化繊維基材の細部に入り込みやすくなる。3段階以上で塗工する場合、2段目以降の塗工についても同様である。
粉体塗工工程における粉体塗工法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、静電塗工法、流動床法、及び堆積法が挙げられる。いずれの粉体塗工法を適用する場合でも、マトリックス樹脂組成物を複数の段階に分けて強化繊維基材に粉体塗工する。
なお、粉体塗工は、強化繊維基材の片面又は両面に行うが、第1段の塗工を表面に、第2段の塗工を裏面に行うこともできる。製造する繊維強化プラスチック成形材料の表裏の区別を不要とする観点、容易に製造する観点などから、片面のみよりも両面に行うことが好ましい。
粉体塗工を分ける回数は、2段階以上であれば特に限定されないが、生産性の観点から2~4段階に分けることが好ましく、2段階又は3段階がより好ましく、2段階が特に好ましい。以下、本開示における好ましい粉体塗工の一実施形態として、マトリックス樹脂組成物粉末を2段階に分けて塗工(2段粉体塗工)する場合について説明する。
本開示の一実施形態における2段粉体塗工では、所定のVfとなるのに必要な量のマトリックス樹脂組成物粉末の一部を強化繊維基材に塗工(1段目粉体塗工)し、次いで残りの量のマトリックス樹脂組成物粉末を塗工(2段目粉体塗工)する。
1段目の塗工量は、少なくとも熱可塑性樹脂の一部を含み、粉体塗工工程による全体塗工量の一部であればよいが、第1段目の塗工によって強化繊維基材の収縮の抑制、含浸不良の抑制などの観点から、1段目の樹脂組成物は、2段粉体塗工全体で強化繊維基材に塗工するマトリックス樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂全体の10~60質量%の範囲内の熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、より好ましくは熱可塑性樹脂全体の25~50質量%である。
1段目の粉体塗工と2段目の粉体塗工では、同じ樹脂組成物粉末を用いてもよいし、熱可塑性樹脂の種類、含有量などが異なる樹脂組成物粉末を用いることもできる。
1段目の粉体塗工と2段目の粉体塗工で異なる熱可塑性樹脂を用いる場合、1段目に用いる熱可塑性樹脂と2段目に用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点の差が20℃程度であれば、その塗工順序については特に制限はない。一方、各熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点の差が20℃を超える場合は、1段目に塗工する樹脂組成物粉末に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点のいずれかが、2段目(又は2段目以降)に塗工する樹脂組成物粉末に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点よりも高いことが好ましい。1段目の粉体塗工で用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点が、2段目以降の粉体塗工で用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点よりも高ければ、強化繊維基材に付与された熱可塑性樹脂を加熱して固定する場合、1段目の塗工で付与された熱可塑性樹脂を高い温度で熱融着させ、2段目で塗工した熱可塑樹脂を低い温度で熱融着させることで強化繊維基材への樹脂含浸に偏りが起きにくくなるため、繊維強化プラスチック成形材料の曲げ特性、外観をより向上させることができる。また、熱可塑性樹脂同士が架橋性を有する場合においては、加熱による固定工程で架橋反応を誘発させてしまい、強化繊維基材への含浸不良を起こす恐れもない。
1段目の粉体塗工と2段目の粉体塗工では、それぞれ粒度が異なる樹脂粉末を使用してもよい。
粉体塗工工程全体として、強化繊維基材へのマトリックス樹脂組成物の塗工量(樹脂割合:RC)は、含浸性、機械物性などの観点から、好ましくは、20~50質量%となるように塗工されるが、より好ましくは25~45質量%であり、さらに好ましくは25~40質量%である。
(固定工程)
1段目と2段目の粉体塗工は、1段目の塗工後、塗工を一旦停止して1段目に塗工した樹脂組成物粉末を強化繊維基材に馴染ませる。そして、1段目の塗工後、2段目の塗工を行うが、1段目の塗工と2段目の塗工の間に、強化繊維基材に付与されている樹脂組成物粉末を固定する固定工程を行ってもよい。固定工程としては、樹脂粉末の融着固定や熱ロールを用いたカレンダー処理などが挙げられる。
なお、固定工程は、1段目の塗工後であればよく、例えば、1段目の塗工後、所定の間隔をあけて2段目の塗工を行い、2段目の塗工後に、強化繊維基材に付与されている樹脂組成物粉末を加熱溶融して、各段階の塗工により強化繊維基材に付与された樹脂組成物粉末を一括して固定してもよい。
また、強化繊維基材へのマトリックス樹脂の含浸の向上、ボイドの発生抑制などの観点から、各段階の塗工ごとに固定工程を行うこと、すなわち、1段目の塗工後に固定工程を行い、2段目の塗工後に固定工程を行うことが好ましい。
なお、予め加熱された強化繊維基材に対し、複数の段階に分けて粉体塗工することによりマトリックス樹脂組成物粉末の強化繊維基材への塗工と同時に融着してもよい。
このように強化繊維基材を予め加熱溶融によって、強化繊維基材に付与されたマトリックス樹脂組成物粉末を溶融させることで、基材への密着性を高め、塗装された樹脂粉末の脱落が抑制される。
<繊維強化プラスチック成形材料及び繊維強化プラスチック成形体>
上記のような工程を経て、外観に優れた本開示に係る繊維強化プラスチック成形材料を得ることができる。
そして、本開示に係る繊維強化プラスチック成形材料を、単独でもしくは複数枚積層し、金型等を用いて加熱かつ加圧することにより、繊維強化プラスチック成形体を製造することができる。
また、積層に際してアルミやステンレス等の金属箔などを層間や最外層に積層することもできる。本開示に係る繊維強化プラスチック成形材料は、熱プレスによる加圧成形により、賦形とマトリックス樹脂組成物の架橋と硬化を同時に行うことが可能である。
繊維強化プラスチック成形材料を使用した成形は、加熱加圧成形である限り、目的とする繊維強化プラスチック成形体の大きさや形状に合わせて、オートクレーブ成型や金型を使用した熱プレス成型等の各種成形法を適宜選択して実施することができる。
熱プレス温度は160~300℃であるが、マトリックス樹脂組成物としてフェノキシ樹脂粉体を単独で使用する場合、成形温度は、例えば160~250℃、好ましくは180℃~240℃、より好ましくは180℃~230℃である。また、フェノキシ樹脂粉末とその他熱可塑性樹脂粉末を併用する場合は、240~300℃、好ましくは240~280℃である。さらに、マトリックス樹脂組成物としてフェノキシ樹脂粉体と共にエポキシ樹脂や架橋剤の粉体を併用する場合、成形温度は、例えば150~240℃、好ましくは160℃~220℃、より好ましくは180℃~200℃である。成形時間については、通常30~60分で行うことができる。
マトリックス樹脂組成物粉末としてフェノキシ樹脂粉体と共にエポキシ樹脂や架橋剤の粉体を併用する場合、10分程度の短時間であっても、主成分としてのフェノキシ樹脂(A)の2級水酸基を利用した架橋剤(B)との反応によって、脱型を行える強度を得ることができる。エポキシ樹脂(C)の硬化反応を完結させるためには、例えば200~250℃で30~60分程度、ポストキュアすることが好ましい。
製造された繊維強化プラスチック成形体の脱型温度は、マトリックス樹脂組成物の種類や生産性などを考慮して設定される。例えば、100~120℃である。なお、フェノキシ樹脂のTgの向上を目的に架橋剤を使用した場合は、脱型後に別途各種オーブンで100~200℃でポストキュアを実施することにより、架橋を確実に進められることができるので好ましい。
以下、本開示に係る複合部材について実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した材料は、以下のとおりである。
フェノキシ樹脂(A)
(A-1):フェノトートYP-50S(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、Mw=60,000、水酸基当量=284)、Tg=84℃、200℃における溶融粘度=400Pa・s
(A-2):フェノトートYP-70(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製ビスフェノールA/ビスフェノールFの共重合型フェノキシ樹脂、Mw=55,000、水酸基等量=270)、Tg=70℃、200℃における溶融粘度=140Pa・s
架橋剤(B)
(B-1):BISDA(SHPPジャパン合同会社製、ビスフェノールA型酸二無水物、酸無水物当量;260、融点;184℃)、平均粒子径=65μm
エポキシ樹脂(C)
(C-1):YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製テトラメチルビスフェノールF型結晶性エポキシ樹脂、エポキシ当量=192、融点=72℃)
(作製例1)
フェノキシ樹脂(A-1)44質量部とエポキシ樹脂(C-1)17質量部をそれぞれ粉砕、分級して平均粒子径D50が100μm以下である粉体とした。次いで、(A-1)の44質量部のうち33質量部と(C-1)の全量に酸無水物(B-1)を39質量部配合して乾式粉体混合機によってドライブレンドすることによって樹脂組成物E1と、樹脂組成物E1とは混合していない(A-1)11質量部からなる粉体P1を調製した。
(作製例2)
フェノキシ樹脂(A-1)44質量部とエポキシ樹脂(C-1)17質量部をそれぞれ粉砕、分級して平均粒子径D50が100μm以下である粉体とした。次いで、(A-1)の44質量部のうち22質量部と(C-1)の全量に酸無水物(B-1)を39質量部配合して乾式粉体混合機によってドライブレンドすることによって樹脂組成物E2と、樹脂組成物E2とは混合していない(A-1)22質量部からなる粉体P2を調製した。
(作製例3)
フェノキシ樹脂(A-1)33質量部と(A-2)11質量部、エポキシ樹脂(C-1)17質量部をそれぞれ粉砕、分級して平均粒子径D50が100μm以下である粉体とした。次いで、(A-1)33質量部と(C-1)の全量に酸無水物(B-1)を39質量部配合して乾式粉体混合機によってドライブレンドすることによって樹脂組成物E3と、樹脂組成物E3とは混合していない(A-2)11質量部からなる粉体P3を調製した。
(作製例4)
フェノキシ樹脂(A-1)22質量部と(A-2)22質量部、エポキシ樹脂(C-1)17質量部をそれぞれ粉砕、分級して平均粒子径D50が100μm以下である粉体とした。次いで、(A-1)22質量部と(C-1)の全量に酸無水物(B-1)を39質量部配合して乾式粉体混合機によってドライブレンドすることによって樹脂組成物E4と、樹脂組成物E4とは混合していない(A-2)22質量部からなる粉体P4を調製した。
(作製例5)
フェノキシ樹脂(A-1)44質量部とエポキシ樹脂(C-1)17質量部をそれぞれ粉砕、分級して平均粒子径D50が100μm以下である粉体とした。次いで、酸無水物(B-1)を39質量部配合して乾式粉体混合機によってドライブレンドすることによって樹脂組成物E5を調製した。
[実施例1]
(繊維強化プラスチック成形材料:CFRPプリプレグの作製)
リサイクル炭素繊維(アイカーボン株式会社製、平均繊維長50mm)を用いてニードルパンチ法で作製した短繊維状炭素繊維基材(目付量200g/m、表1において「短繊維CF、不織布」と表記)を準備した。
短繊維状炭素繊維基材に第1段階の塗工として、粉体塗工装置を用いて電荷60kV、吹き付け空気量60L/minの条件で、作製例1で得た粉末P1の粉体塗装を行った。
塗工後の短繊維状炭素繊維基材をオーブンで240℃、1間加熱して樹脂組成物を炭素繊維に熱融着させた。
次いで、第2段階の塗工として樹脂組成物E1の粉体塗工を行った。その後、オーブンで160℃、20秒間加熱して再度熱融着を行うことによって厚み8mmのランダムマットからなるCFRPプリプレグを作製した。なお、第1段階と第2段階の粉体塗工条件は、塗工した粉体が異なること以外は同一条件とした。
(CFRP成形体の作製)
得られたCFRPプリプレグを3枚重ねで積層し、200℃に加熱したプレス機で、5MPaで10分間プレスすることで積層板(CFRP成形体)を作製した。
(評価)
製造したCFRPプリプレグ及びCFRP成形体の機械物性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
なお、各種物性の試験及び測定方法は、以下のとおりである。
[平均粒子径(D50)]
平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3300EX、日機装社製)により、体積基準で累積体積が50%となるときの粒子径を測定した。
[繊維体積含有率(Vf)]
プリプレグから0.1~0.2gに切断した試料(n=5)をそれぞれ蓋つきのるつぼに入れ、マッフル炉で500℃、2時間保持させ、樹脂分を焼成する。プリプレグの加熱前重量と加熱後重量を測定し、加熱後重量を繊維重量とし、減少重量を樹脂重量とし、繊維密度と樹脂密度でそれぞれを体積に変換し、加熱後体積を加熱前体積で割った値の百分率の平均値を、繊維体積含有率(Vf)とした。
成形体のVfも同様にして求めた。
[曲げ強度・曲げ弾性率]
JIS K 7074:1988 炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法に基づいて、得られたCFRP成形体の曲げ強度及び曲げ弾性率を機械強度として測定した。
[荷重たわみ温度]
JIS K 7191プラスチック-荷重たわみ温度の求め方を参考に、試験片となる繊維強化プラスチックの荷重たわみ温度を測定した。
[プリプレグ外観]
粉体塗工後の繊維強化プラスチック成形材料を、240℃に設定した大気オーブン中で1分間静置したのち、目視にてその外観を観察した。
粉体塗工したマトリックス樹脂組成物が均一に融着固定されており、強化繊維の目空き部や繊維の乱れがない状態を「良好」であるとして「○」とし、強化繊維基材の表面に樹脂だまりが形成されていたり、強化繊維に目空き部や乱れが生じた状態を「×」とした。
[実施例2]
短繊維状炭素繊維基材への塗工に作製例2の粉末P2と樹脂組成物E2をそれぞれ使用して第1の塗工と第2の塗工を行ったこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維強化プラスチック成形材料を得て、同様にして積層板(CFRP成形体)を作製し、機械物性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
[実施例3]
短繊維状炭素繊維基材への塗工に作製例3の粉末P3と樹脂組成物E3それぞれ使用して第1の塗工と第2の塗工を行ったこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維強化プラスチック成形材料を得て、同様にして積層板(CFRP成形体)を作製し、機械物性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
[実施例4]
短繊維状炭素繊維基材への塗工に作製例4の粉末P4と樹脂組成物E4それぞれ使用して第1の塗工と第2の塗工を行ったこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維強化プラスチック成形材料を得て、同様にして積層板(CFRP成形体)を作製し、機械物性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
[実施例5]
開繊して一方向に引き揃えた連続炭素繊維束(三菱ケミカル製パイロフィルTRW40-50L-KN)を複数本型枠に隙間なく並べて固定して一方向強化繊維基材(表1において「CF、開繊CF」と表記)とした。
一方向強化繊維基材に第1段階の塗工として、粉体塗工装置を用いて電荷60kV、吹き付け空気量60L/minの条件で、作製例3で得た粉末P3の粉体塗装を行った。
塗工後の一方向強化繊維基材を、表面温度170℃の熱ローラーで加熱圧着し樹脂組成物を炭素繊維に熱融着させた。
次いで、第2段階の塗工として樹脂組成物E3の粉体塗工を行った。その後、オーブンで160℃、20秒間加熱して再度熱融着を行うことによって厚み1mmの一方向繊維強化プラスチック成形材料(UDプリプレグ)を作製した。なお、第1段階と第2段階の粉体塗工条件は、塗工した粉体が異なること以外は同一条件とした。
得られたCFRPプリプレグを9枚重ねで積層し、200℃に加熱したプレス機で、5MPaで10分間プレスすることでCFRP成形体を作製した。
[実施例6]
作製例4で得た粉末P4および樹脂組成物E4それぞれ使用して第1の塗工と第2の塗工を行ったこと以外は実施例5と同様にして繊維強化プラスチック成形材料を得て、同様にして積層板(CFRP成形体)を作製し、機械物性の評価を行った。これらの結果を表1示す。
[比較例1]
短繊維状炭素繊維基材への塗工に作製例5の樹脂組成物E5を使用して一括で塗工を行ったこと以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形材料を得て、同様にして積層板(CFRP成形体)を作製し、機械物性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。なお、一括塗工の樹脂組成物については、表1において「2段目塗布」に記載した。
[比較例2]
作製例5の樹脂組成物E5を使用して一括で塗工を行ったこと以外は実施例5と同様にして一方向繊維強化プラスチック成形材料(UDプリプレグ)と積層板(CFRP成形体)を作製し、機械物性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。

実施例では、いずれもプリプレグの外観に優れた結果となった。また、実施例1と比較例1では、強化繊維基材が同じものであり、マトリックス樹脂組成物も全体として同じ種類、配合量であるが、曲げ強度及び曲げ弾性率が実施例1の方が優れていることわかる。

Claims (10)

  1. 50質量%以上が熱可塑性樹脂である樹脂成分を含むマトリックス樹脂組成物粉末を、複数の段階に分けて強化繊維基材に塗工する粉体塗工工程を含み、
    前記粉体塗工工程により前記強化繊維基材に塗工する前記マトリックス樹脂組成物粉末全体のうち少なくとも前記熱可塑性樹脂の一部を含む樹脂組成物粉末を前記粉体塗工工程の1段目で塗工し、前記マトリックス樹脂組成物粉末の残部である樹脂組成物粉末を前記粉体塗工工程の2段目以降で塗工する、繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
  2. 前記1段目の塗工後、前記強化繊維基材に付与されている樹脂組成物粉末を固定する固定工程をさらに含む請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
  3. 前記1段目に塗工する前記樹脂組成物粉末は、前記粉体塗工工程により前記強化繊維基材に付与される前記熱可塑性樹脂全体の10~60質量%の熱可塑性樹脂を含む請求項1又は請求項2に記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
  4. 前記1段目に塗工する前記樹脂組成物粉末に含まれる前記熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点のいずれかが、前記2段目以降に塗工する前記樹脂組成物粉末に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点よりも高い請求項3に記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
  5. 前記樹脂成分の50質量%以上である前記熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂である請求項4に記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
  6. 前記強化繊維基材が、不織布又は一方向強化繊維基材である請求項5に記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
  7. 請求項6に記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法によって繊維強化プラスチック成形材料を製造する工程と、
    前記繊維強化プラスチック成形材料を複数枚積層して金型を用いて加熱加圧成形する加熱加圧成形工程とを含む、繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
  8. 前記樹脂成分の50質量%以上である前記熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂である請求項3に記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
  9. 前記強化繊維基材が、不織布又は一方向強化繊維基材である請求項8に記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法。
  10. 請求項9に記載の繊維強化プラスチック成形材料の製造方法によって繊維強化プラスチック成形材料を製造する工程と、
    前記繊維強化プラスチック成形材料を複数枚積層して金型を用いて加熱加圧成形する加熱加圧成形工程とを含む、繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
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