JP2023156533A - コロナウイルスによる感染症治療用の医薬組成物 - Google Patents

コロナウイルスによる感染症治療用の医薬組成物 Download PDF

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浩之 飯田
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Abstract

【課題】コロナウイルス感染症、とりわけSARS-CoV-2による感染症の患者を治療する医薬組成物の提供。【解決手段】下記の構造を有するカモスタットメシル酸塩の特定の用法用量による投与により、コロナウイルス感染症、とりわけSARS-CoV-2による感染症の患者を安全かつ速やかに治療する。TIFF2023156533000004.tif44126【選択図】なし

Description

本開示は、コロナウイルス、とりわけSARS-CoV-2による感染症を治療するための、カモスタットメシル酸塩を含む医薬組成物に関する。
カモスタットメシル酸塩は、タンパク質分解酵素であるプラスミンやトリプシンに対して阻害作用を有するセリンプロテアーゼ阻害剤として知られており、慢性膵炎などの治療に用いられている(特許文献1)。カモスタットメシル酸塩は、日本においてフオイパンの名称で医薬品として承認されている(非特許文献1)。
SARS-CoV-2(SARSコロナウイルス2)による感染症(COVID-19;Coronavirus disease 2019)は、2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において始めて確認された、新型のコロナウイルスによる感染症である。COVID-19の臨床的な特徴として、潜伏期間は平均的に5~6日(範囲:1~14日)であり(非特許文献2)、発熱、咳を始めとする呼吸器症状および全身倦怠感といった感冒様症状が1週間前後持続することである。病勢が更に進行した患者では、サイトカインストームによる全身性の炎症反応や呼吸困難等の生命を脅かす重篤な症状を呈し、胸部X線や胸部CTなどの検査で典型的な重症急性肺炎像が認められる。
セリンプロテアーゼ阻害剤であるカモスタットメシル酸塩は、SARS-CoV-2の有するスパイクタンパク質の宿主酵素による切断を阻害することにより、ウイルス感染を制御し得ることが、SARS-CoVやMARS-CoVなどのコロナウイルス、またはインフルエンザウイルスで報告されてきた(非特許文献3~5)。最近、SARS-CoV-2の感染にはアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)とII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)が気道上皮細胞において必須であること、およびカモスタットメシル酸塩がTMPRSS2の作用を阻害し、SARS-CoV-2のヒト気道上皮細胞由来細胞株への感染を阻害することが報告された(非特許文献6)。
COVID-19は、パンデミック(世界的な大流行)と認知され、人類全体の脅威と位置付けられ、その治療薬が切望されている。現在、カモスタットメシル酸塩を用いた臨床試験が複数行われているが(例えば、非特許文献7)、カモスタットメシル酸塩を用いたCOVID-19治療における最適な臨床での用法用量を報告した例はない。
特公昭57-14670号公報
フオイパン(登録商標)添付文書 WHO, Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19). [reported 2020 Feb 28]. Available from: https://www.who.int/publications-detail/report-of-the-who-china-joint-mission-on-coronavirus-disease-2019-(covid-19) Shirato K et al., "Middle East respiratory syndrome coronavirus infection mediated by the transmembrane serine protease TMPRSS2" J Virol. 2013; 87(23):12552-61 山谷睦雄ら:日呼吸誌, 2016;5(4):172-82 Kawase M et al., "Simultaneous treatment of human bronchial epithelial cells with serine and cysteine protease inhibitors prevents severe acute respiratory syndrome coronavirus entry" J Virol. 2012; 86(12):6537-45 Hoffmann M et al. "SARS-CoV-2 cell entry depends on ACE2 and TMPRSS2 and is blocked by a clinically proven protease inhibitor" Cell. 2020; 181:1-10 ClinicalTrials.gov Identifier:NCT04353284
本開示の目的の1つは、コロナウイルス感染症の治療方法を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するため、コロナウイルス、特にSARS-CoV-2に感染した患者における、カモスタットメシル酸塩の安全かつ最適な臨床での用法用量を見出した。
従って、ある態様では、コロナウイルス、特にSARS-CoV-2に感染した患者を治療するための、カモスタットメシル酸塩を含む医薬組成物が提供される。
本開示により、コロナウイルス、特にSARS-CoV-2に感染した患者において、カモスタットメシル酸塩によるコロナウイルス感染症、特にCOVID-19の安全かつ迅速な治療が可能になる。
特に具体的な定めのない限り、本明細書で使用される用語は、有機化学、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野における当業者に一般に理解されるとおりの意味を有する。以下にいくつかの本明細書で使用される用語についての定義を記載するが、これらの定義は、本明細書において、一般的な理解に優先する。
本明細書では、数値が「約」の用語を伴う場合、その値の±10%の範囲を含むことを意図する。例えば、「約10」は、「9~11」を含むものとする。数値の範囲は、両端点の間の全ての数値および両端点の数値を含む。範囲に関する「約」は、その範囲の両端点に適用される。従って、例えば、「約10~20」は、「9~22」を含むものとする。
カモスタットメシル酸塩は、下記の構造を有する、ジメチルカルバモイルメチル 4-(4-グアニジノベンゾイルオキシ)フェニル酢酸のメシル酸塩である。その薬理作用は、タンパク質分解酵素阻害剤であり、生体内のキニン生成系、線溶系、凝固系および補体系に作用し、その酵素活性をすみやかに阻害し異常亢進を抑制させる効果を有する。その特徴は公知であり、例えば、出典明示により本明細書の一部とする特許文献1および非特許文献1に記載されている。また、近年、カモスタットメシル酸塩が、SARS-CoV-2のヒト気道上皮細胞由来細胞株への感染を阻害することが報告されたが、後述する実施例により立証される通り、SARS-CoV-2に感染した患者に対して安全かつ速やかにCOVID-19を治療することができる。
Figure 2023156533000001
本開示において、コロナウイルスとしては、ヒトコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)、重症呼吸器症候群ウイルス(Severe acute respiratory syndrome coronavirus: SARS-CoV)、中東呼吸器症候群ウイルス(Middle East respiratory syndrome coronavirus: MERS-CoV)等が挙げられる。
本開示において、ヒトコロナウイルスとしては、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1、HCoV-229E等が挙げられる。
本開示において、重症呼吸器症候群ウイルスとしては、SARS-CoV、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)等が挙げられる。
本開示において、COVID-19は、SARS-CoV-2感染症を意味する。COVID-19の症状としては、発熱、呼吸器症状(咳嗽、咽頭痛、鼻汁、鼻閉、呼吸困難等)、頭痛、倦怠感、嗅覚障害、味覚障害等が挙げられる。また、COVID-19の合併症としては、脳梗塞、血栓症、川崎病等が挙げられる。
本開示において、COVID-19は、SARS-CoV-2陽性と判断されることも含む。その方法としては、喀痰、気道吸引液、肺胞洗浄液、鼻咽頭ぬぐい液ならびに剖検材料等を用いて、ウイルス分離またはPCR法、LAMP法におる病原体遺伝子検出を行い、SARS-CoV-2の陽性または陰性を判断される。したがって、上述の明らかなCOVID-19の症状が認められない場合、すなわち無症状であっても、SARS-CoV-2陽性と判断されることにより、COVID-19と診断され得る。
本開示において、COVID-19は、以下の通り、重症度分類される。(1)軽症:酸素飽和度(SpO2)≧96%、呼吸器症状なし、咳のみ息切れなし、(2)中等症I:93%<SpO2<96%、息切れ、肺炎所見、(3)中等症II:SpO2≦93%、酸素投与が必要、(4)重症:ICUに入室または人工呼吸器が必要。
本開示において、「治療」は、疾患を有する患者において、疾患の原因を軽減または除去すること、その進行を遅延または停止させること、その症状を軽減、緩和、改善または除去すること、ウイルスの陰性化を早めること、および/または、その症状の悪化を抑制すること等を意味する。COVID-19患者にあっては、COVID-19の症状を抑制すること、SARS-CoV-2の陰性化を早めること、SARS-CoV-2のウイルス量を減少させること、および/または重症度を軽減させることも意味する。本開示において、患者は例えば、ヒトである。
カモスタットメシル酸塩の投与方法は、投与対象の年齢、体重、健康状態等によって適宜選択され得る。投与経路は、経口投与であっても非経口投与であってもよく、経口投与が好ましい。
カモスタットメシル酸塩の用法用量は、適宜選択され得る。例えば、カモスタットメシル酸塩を経口投与する際の用量としては、1日当たり、約100~3200mg、約300~2800mg、約600~2400mg、約800~約2400mg、約1200~約2400mgが挙げられる。カモスタットメシル酸塩の具体的な用量としては、約100mg×1回/日(1日当たり約100mg)、約100mg×2回/日(1日当たり約200mg)、約100mg×3回/日(1日当たり約300mg)、約100mg×4回/日(1日当たり約400mg)、約200mg×1回/日(1日当たり約200mg)、約200mg×2回/日(1日当たり約400mg)、約200mg×3回/日(1日当たり約600mg)、約200mg×4回/日(1日当たり約800mg)、約300mg×1回/日(1日当たり約300mg)、約300mg×2回/日(1日当たり約600mg)、約300mg×3回/日(1日当たり約900mg)、約300mg×4回/日(1日当たり約1200mg)、約400mg×1回/日(1日当たり約400mg)、約400mg×2回/日(1日当たり約800mg)、約400mg×3回/日(1日当たり約1200mg)、約400mg×4回/日(1日当たり約1600mg)、約500mg×1回/日(1日当たり約500mg)、約500mg×2回/日(1日当たり約1000mg)、約500mg×3回/日(1日当たり約1500mg)、約500mg×4回/日(1日当たり約2000mg)、約600mg×1回/日(1日当たり約600mg)、約600mg×2回/日(1日当たり約1200mg)、約600mg×3回/日(1日当たり約1800mg)、約600mg×4回/日(1日当たり約2400mg)、約700mg×1回/日(1日当たり約700mg)、約700mg×2回/日(1日当たり約1400mg)、約700mg×3回/日(1日当たり約2100mg)、約700mg×4回/日(1日当たり約2800mg)、約800mg×1回/日(1日当たり約800mg)、約800mg×2回/日(1日当たり約1600mg)、約800mg×3回/日(1日当たり約2400mg)、約800mg×4回/日(1日当たり約3200mg)が挙げられる。
カモスタットメシル酸塩の経口投与時の投与タイミングとしては、1日に投与される回数に応じて適宜選択され得る。当業者であれば明らかなように、「食前」とは各食事の摂取の約30分~約1時間以上前に投与されることを意味し、「食間」とは各食事の間、すなわち各食事の摂取後約2時間に投与されることを意味し、「食後」とは各食事の摂取後約30分に投与されることを意味する。カモスタットメシル酸塩を1日1回経口投与する場合には、例えば、起床時、朝食前、朝食後、朝食と昼食の間、昼食前、昼食後、昼食と夕食の間、夕食前、夕食後、就寝前のいずれか1回を選択することができる。カモスタットメシル酸塩を1日2回経口投与する場合には、例えば、起床時、朝食前、朝食後、朝食と昼食の間、昼食前、昼食後、昼食と夕食の間、夕食前、夕食後、就寝前のうち任意の2回を組み合わせて選択することができる。その組み合わせとしては、食前、食間または食後を合わせることに加え、1回目の投与および2回目の投与の間隔を少なくとも約5時間以上空けることが好ましく、例えば、朝食後および夕食後の2回が挙げられる。カモスタットメシル酸塩を1日3回経口投与する場合には、例えば、起床時、朝食前、朝食後、朝食と昼食の間、昼食前、昼食後、昼食と夕食の間、夕食前、夕食後、就寝前のうち任意の3回を組み合わせて選択することができる。その組み合わせとしては、食前、食間または食後を合わせることに加え、1回目の投与、2回目の投与および3回目の投与の間隔をそれぞれ少なくとも約4時間以上空けることが好ましく、例えば、朝食前、昼食前および夕食前の3回が挙げられる。カモスタットメシル酸塩を1日4回経口投与する場合には、例えば、起床時、朝食前、朝食後、朝食と昼食の間、昼食前、昼食後、昼食と夕食の間、夕食前、夕食後、就寝前のうち任意の4回を組み合わせて選択することができる。その組み合わせとしては、食前、食間または食後を合わせることに加え、1回目の投与、2回目の投与、3回目の投与および4回目の投与の間隔をそれぞれ少なくとも約3時間以上空けることが好ましく、ある実施態様では空腹時に投与されることが好ましく、例えば、朝食前、昼食前、夕食前および就寝前、または起床時、朝食と昼食の間、昼食と夕食の間および就寝前等の4回が挙げられる。さらに、ある実施態様では、朝食、昼食および夕食の各食前の約1時間以上前、ならびに就寝前の4回の投与タイミングが挙げられる。また、カモスタットメシル酸塩の投与タイミングとして、起床時、食前、食間、食後および/または就寝前のいずれも好ましいが、起床時、食前、食間および/または就寝前がより好ましく、食前および/または就寝前がさらに好ましい。
カモスタットメシル酸塩のSARS-CoV-2陽性と診断された患者に投与されるタイミングとしては、適宜選択され得る。例えば、COVID-19の症状発現から約7日以内、約6日以内、約5日以内、約4日以内、約3日以内、約2日以内、約1日以内等が挙げられる。また、無症状患者の場合、SARS-CoV-2陽性確認に係る検体採取日から約7日以内、約6日以内、約5日以内、約4日以内、約3日以内、約2日以内、約1日以内等が挙げられる。
カモスタットメシル酸塩の投与期間は、適宜選択され得る。例えば、投与期間は、少なくとも約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日であり得る。ある実施態様では、投与期間は約3日間~約21日間であり、好ましくは約7日間~約15日間、より好ましくは約10日間~約14日間である。
カモスタットメシル酸塩は、常法により製剤化することができる。製剤は、製剤上の必要に応じて、医薬的に許容し得る各種の製剤用添加剤を含んでもよい。製剤用添加剤は製剤の剤形により適宜選択することができるが、例えば、緩衝化剤、界面活性剤、安定化剤、防腐剤、賦形剤、希釈剤、添加剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑沢剤、可溶化剤等が挙げられる。例えば、カモスタットメシル酸塩は、内服用固形剤として製剤化され得る。例えば、カモスタットメシル酸塩を界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等)、賦形剤(例えば、ラクトース、乳糖水和物、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、カルメロースカルシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合し、常法に従って製剤化される。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
カモスタットメシル酸塩は、既存の他の有効成分と併用し得る。他の有効成分としては、COVID-19に対する抗ウイルス薬として承認または臨床試験・研究が進められている薬剤が挙げられる。例えば、RNA合成酵素阻害薬(例えば、レムデシビル、ファビピラビル等)、ステロイド薬(例えば、シクレソニド、ステロイドホルモン(例えば、デキサメタゾン等)等)、タンパク質分解酵素阻害薬(例えば、ナファモスタット等)、抗IL-6抗体(例えば、トシリズマブ、サリルマブ等)、HIVプロテアーゼ阻害薬(例えば、ロピナビル・リトナビル配合剤、ネルフィナビル等)、免疫調整剤(例えば、ヒドロキシクロロキン等)、駆虫剤(例えば、イベルメクチン等)、抗生物質(例えば、アジスロマイシン等)等が挙げられる。カモスタットメシル酸塩と他の有効成分は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤で投与してもよい。別々の製剤で投与する場合には、各製剤を同時に投与してもよく、時間差で投与してもよい。それぞれの投与経路は同じでも異なっていてもよい。また、複数の他の有効成分を併用してもよい。
ある態様では、カモスタットメシル酸塩を含む、コロナウイルス感染症の治療剤が提供される。
ある態様では、コロナウイルス感染症の患者にカモスタットメシル酸塩を有効量で投与することを含む、コロナウイルス感染症の治療方法が提供される。
ある態様では、コロナウイルス感染症の治療において使用するための、カモスタットメシル酸塩が提供される。
ある態様では、コロナウイルス感染症を治療するための医薬組成物の製造における、カモスタットメシル酸塩の使用が提供される。
ある態様では、カモスタットメシル酸塩を含む、COVID-19の治療剤が提供される。
ある態様では、COVID-19の患者にカモスタットメシル酸塩を有効量で投与することを含む、COVID-19の治療方法が提供される。
ある態様では、COVID-19の治療において使用するための、カモスタットメシル酸塩が提供される。
ある態様では、COVID-19を治療するための医薬組成物の製造における、カモスタットメシル酸塩の使用が提供される。
本願は、例えば、下記の実施態様を提供する。
[1] カモスタットメシル酸塩を含有してなる、COVID-19の予防および/または治療剤。
[2] カモスタットメシル酸塩を1日当たり、約1200~約2400mgの範囲で経口投与することを特徴とする、第1項に記載の剤。
[3] カモスタットメシル酸塩を1日当たり、約2400mgで経口投与することを特徴とする、第1項または第2項に記載の剤。
[4] カモスタットメシル酸塩を1日当たり、約2400mgを1日4回に分けて経口投与することを特徴とする、第3項に記載の剤。
[5] 空腹時に投与されることを特徴とする、第3項または第4項に記載の剤。
[6] 朝食前、昼食前、夕食前および就寝前に投与されることを特徴とする、第4項に記載の剤。
[7] 起床時、朝食と昼食の間、昼食と夕食の間および就寝前に投与されることを特徴とする、第4項に記載の剤。
[8] COVID-19の症状発現から約7日以内に投与されることを特徴とする、第1項~第7項のいずれかに記載の剤。
[9] SARS-CoV-2の陽性確認に係る検体採取日から約7日以内に投与されることを特徴とする、第1項~第7項のいずれかに記載の剤。
[10] 約10日間~約14日間にわたって投与される第1項~第9項のいずれかに記載の剤。
[11] さらに、RNA合成酵素阻害薬、ステロイド薬、タンパク質分解酵素阻害薬、抗IL-6抗体、HIVプロテアーゼ阻害薬、免疫調整剤、駆虫剤、および抗生物質からなる群から選択される1つ以上のCOVID-19に対する抗ウイルス薬と組み合わせて投与されることを特徴とする、第1項~第10項のいずれかに記載の剤。
[12] カモスタットメシル酸塩を含有してなる、コロナウイルス感染症の予防および/または治療剤。
本明細書で引用するすべての文献は、出典明示により本明細書の一部とする。
上記の説明は、すべて非限定的なものであり、本発明は添付の特許請求の範囲において定義され、その技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下、実施例にて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]日本人健康成人男性を対象にカモスタットメシル酸塩(以下、単に「カモスタット」または「治験薬」と記載する場合がある。)を反復経口投与したときの安全性、忍容性および薬物動態を検討する(以下、「本治験1」と記載する場合がある。)。
1.試験の種類・デザイン
カモスタットを反復経口投与する非対照非盲検試験として実施する。
14名(各コホート7名、2コホート)。治験薬投与直前までの各種検査結果による治験参加不適合者および辞退者が発生した場合の被験者数確保を目的として、上記被験者数以外に、スクリーニング検査にて適格と判定された被験者の中から治験薬投与直前まで待機する予備被験者を設ける。予備被験者との入替えは、治験責任医師または治験分担医師の判断により行う。
2.試験の方法
本試験は非盲検試験であり、治験薬の割付、盲検化は実施しない。
1)評価項目
1)-1:安全性の評価項目
・診察:診察で異常が認められた場合、治験薬投与開始前までに認められた異常は現病歴、治験薬投与開始後に認められた異常は有害事象として収集する。
・自覚症状:入院時から最終の検査終了まで
・理学的検査:血圧・脈拍数(仰臥位)、体温、SpO2
・体重
・心電図検査:12誘導心電図、モニター心電図
・臨床検査
Figure 2023156533000002

・有害事象
1)-2:薬物動態の評価項目
血漿中活性代謝物濃度
2)探索的項目
カモスタットの薬理作用および安全性を探索的に解析するため、以下の解析項目を検討する(ただし、これらに限定されない)。なお、各解析を実施した後の残余検体についても同様の取り扱いとする。血液凝固系因子、血液線溶系因子、キニン・カリクレイン系などに関連するタンパク質
3.治験方法
3-1:対象
選択基準
下記のすべての基準を満たす被験者を選択する。
・日本人の健康成人男性
・年齢(同意取得時):18歳以上、45歳以下
・BMI(スクリーニング検査時):18.5 kg/m2以上、25.0 kg/m2未満(小数点第2位を切捨て)
・治験薬投与開始~退院時検査終了迄の禁欲に同意した者
・本治験1の内容を理解し、署名による本治験1への参加の同意が得られた者
除外基準
下記のいずれかの基準に該当する被験者は除外する。
・呼吸器系、循環器系、精神系、神経系、消化器系、免疫系、肝臓、腎臓、造血機能または内分泌機能などの疾患に対し治療を受けている者またはこれらの既往を有する者
ただし、該当する場合であっても、治験責任医師または治験分担医師が本治験1の対象として問題ないと判定した場合(季節性アレルギー性鼻炎を有しているが抗原の飛散期ではなく、治験期間中に治療を行う予定がない場合など)は組入れを可能とする。
・薬物若しくは食物に対する重度のアレルギーを有する者または既往のある者
・薬物若しくはアルコール依存の者または既往のある者
・本剤の成分に対し過敏症の既往のある者
・QT/QTc間隔の著明な延長若しくはそれを示唆する症状(原因が特定されていない失神、めまいなど)の既往のある者またはその家族歴を有する者
・日常的に胃腸症状(下痢、悪心および胸やけなど)が認められる者または治験薬投与開始前7日以内に急性の胃腸症状を呈した者
・日常的な飲酒量が過度である者[過度の目安:1日2単位(例:日本酒2合またはビール中瓶2本)以上]
・他のすべての未承認薬の投与(臨床研究による投与、未承認の配合薬および新剤形薬も含む)終了後から治験薬投与開始までに120日を経過していない者
・治験薬投与開始前90日以内に週10本を超える喫煙をした者
・治験薬投与開始前90日以内に400 mL以上の採血(献血を含む)、30日以内に200 mL以上の採血(献血を含む)若しくは14日以内に血漿・血小板成分献血をした者または治験薬投与開始前90日以内に輸血をした者
・治験薬投与開始前14日以内に治験薬以外の薬剤(ビタミンおよび栄養補助剤を含む)を使用した者または理学療法などの治療を受けた者
ただし、該当する場合であっても、治験責任医師または治験分担医師がカモスタットの安全性および薬物動態を評価する上で、本治験1の対象として問題ない(眼の疲労感に対する目薬の使用や虫さされに対するかゆみ止めの使用などで全身への影響が想定されない場合など)と判断した場合は組入れを可能とする。
・治験薬投与開始前7日以内にグレープフルーツ、オレンジ、リンゴ若しくはセント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)またはこれらのいずれかを含有する飲食物を摂取した者
・治験責任医師または治験分担医師が、スクリーニング検査の結果から本治験1の対象として不適当と判定した者
・その他、治験責任医師または治験分担医師が治験対象として不適当と判断した者
3-2:投与計画
3-2-1:用法用量および投与期間
カモスタット600mg(100mg錠×6錠)を1日4回、朝(9時頃)、昼(13時頃)、夕(17時頃)、夜(21時頃)に投与する。治験薬の投与は1日目および3~9日目とし、治験薬投与3日目の投与前までの各被験者の安全性を確認した後、7日間の反復投与を実施する。
コホート1における治験薬は、朝・昼・夕は規定の食事(標準食)摂取後(1日目の朝のみ空腹で)に、夜は規定の時間に、それぞれ200mLの水(目安)とともに服用する。コホート2における治験薬は、朝・昼・夕は規定の食事摂取前(1日目は摂取開始30分前、3~9日目は摂取開始60分前)に、夜は規定の時間に、それぞれ200 mLの水(目安)とともに服用する。治験薬投与1日目、3日目および9日目の朝投与前10時間から夜投与後1時間まで規定の食事以外の食物の摂取を禁止(コホート1の1日目のみ朝の食事も禁止)し、治験薬投与前後1時間は規定の食事摂取時および投与時以外の水分摂取も禁止する。各投与日の規定の食事(朝・昼・夕投与時)は、コホート1では治験薬投与前30分から摂取を開始し、治験薬投与までに終了し、コホート2では1日目は治験薬投与後30分から、3~9日目は治験薬投与後60分から摂取を開始し、摂食開始30分以内に終了する。
なお、治験薬投与1日目、3日目および9日目の治験薬投与後2時間までは、検査などの必要な場合を除き、背もたれに寄りかかった状態または座った状態を維持する。
4.結果
本開示において、カモスタットメシル酸塩を既承認の用法用量よりも高い用量で投与するにもかかわらず、安全かつ適切な血中濃度を維持することが示される。
[実施例2]SARS-CoV-2による感染症(COVID-19)患者に対して、カモスタットメシル酸塩の有効性および安全性を、プラセボ群を対照とした多施設共同二重盲検無作為化並行群間比較試験(以下、「本治験2」と記載する場合がある。)により検証する。
1.試験の種類・デザイン
多施設共同二重盲検無作為化並行群間比較試験として実施する。
本治験2は治験薬を投与しない最大3日間の観察期、二重盲検下で治験薬を投与する最大14日間の二重盲検期、および治験薬を投与しない2週間の後観察期で構成される。被験者は、年齢(65歳以上vs65歳未満)および基礎疾患[慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満(BMI30 kg/m2以上)](ありvsなし)を割付因子とした動的割付により、二重盲検下でカモスタット群とプラセボ群に1:1で無作為化される。
本治験2では、被験者の登録期間中にCOVID-19の感染が収束してさらなる登録に難渋すると判断された場合はその時点で、無作為化された被験者を対象として、有効判断若しくは無効判断を目的とした中間解析を1回計画している。
2.試験の方法
1)治験薬の割付方法
動的割付は下記を割付因子とする最小化法を用いて行われる。
・実施医療機関
・年齢(65歳未満、65歳以上)
・基礎疾患[慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満(BMI30 kg/m2以上)]の有無
2)評価項目
本治験2の有効性の主たる解析対象集団は、modified Intention-to-Treat集団(mITT)とし、mITTは無作為化されDay1のSARS-CoV-2検査(実施医療機関測定)において陽性と判定された被験者の集団とする。本治験2の安全性の解析対象集団は、Safety Set(SAF)とし、SAFは治験薬が1回以上投与された被験者の集団とする。
2)-1:有効性の評価項目・主要評価項目
実施医療機関測定によるSARS-CoV-2が陰性化するまでの期間
2)-1-1:主要評価項目の解析方法
割付因子の年齢および基礎疾患[慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満(BMI30 kg/m2以上)]、およびDay1のSARS-CoV-2のウイルス量を層別因子とした層別Cox比例ハザードモデルを用いて、カモスタット群のプラセボ群に対するハザード比の事後平均およびその両側95%信用区間を算出する。また、ハザード比が1.0を上回るベイズ流の事後確率およびハザード比が1.4を下回るベイズ流の事後確率(中間解析時のみ)を算出する。回帰係数の事前分布は、一様分布とする。
2)-2:有効性・副次評価項目
・中央測定結果によるSARS-CoV-2が陰性化するまでの期間
・SARS-CoV-2が陰性化した被験者の割合(実施医療機関測定および中央測定)
・重症度に関するordinal scale
・人工呼吸器を装着した被験者の割合
・生存状況
2)-3:有効性・探索的評価項目
・SARS-CoV-2のウイルス量(中央測定)
・胸部画像における肺病変の有無
・臨床症状消失までの期間および消失した被験者の割合
・抗体反応(IgMおよびIgG)(中央測定)
いずれの評価項目についてもカモスタット群、プラセボ群の2群で比較し、カモスタットの有効性を検討する。
2)-4:安全性
2)-4-1:安全性の評価項目
・有害事象
・臨床検査(血液学的検査、血液生化学的検査、尿定性検査)
・バイタルサイン[体温、酸素飽和度(SpO2)、収縮期血圧/拡張期血圧、脈拍数]
・12誘導心電図
2)-5:中間解析
本治験2では、被験者の登録期間中にCOVID-19が収束してさらなる登録に難渋すると判断された場合はその時点で、割付因子の年齢および基礎疾患[慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満(BMI30 kg/m2以上)]、Day1のSARS-CoV-2のウイルス量を層別因子とした層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定したカモスタット群のプラセボ群に対するハザード比に基づく、有効判断または無効判断を目的とした中間解析を1回計画している。本中間解析は、ベイズ流の中間モニタリング(手良向聡:二値エンドポイントの単群臨床試験におけるベイズ流デザイン、計量生物学、2008年、29 (2):111-124参照)を応用したものであり、中間解析および最終解析における意思判断基準を以下のように設定する。なお、中間解析を実施しない場合でも、最終解析における意思判断基準は同一とする。
Figure 2023156533000003

3.治験方法
本治験2は、SARS-CoV-2による感染症(COVID-19)患者を対象とし、プラセボ群を対照とした多施設共同二重盲検無作為化並行群間比較試験とする。
3-1.診断および組入れ基準
3-1-1:対象
SARS-CoV-2による感染症(COVID-19)
被験者数:各群55名 計110名
選択基準:
1.性別不問
2.18歳以上(同意取得時)
3.入院・外来の別:入院
4.RT-PCR検査、LAMP法または抗原検査でSARS-CoV-2陽性となった患者
5.SARS-CoV-2による感染症(COVID-19)の症状発現から登録日までの期間が5日以内の患者(無症状患者は、陽性確認に係る検体採取日から登録日までの期間が5日以内の患者)
6.妊娠する可能性のある女性(化学閉経などの医学的理由により月経がない患者も含む)の場合、同意取得時から治験薬最終投与後1カ月間の避妊に同意した患者
7.男性の場合、治験薬投与開始時から治験薬最終投与後1カ月間の避妊に同意した患者
除外基準:
登録時に下記のいずれかの基準に該当する患者は除外する。
1.酸素療法施行中の患者
2.経口剤の服用が困難な患者
3.SARS-CoV-2による感染症(COVID-19)の既往がある患者
4.血清カリウム値>5.5 mEq/Lの患者
5.総ビリルビンが3.0 mg/dL以上、またはAST(GOT)、ALT(GPT)が施設正常値の2.5倍以上(あるいは100 IU/L以上)の患者
6.血清クレアチニンが2.0 mg/dL以上の患者
7.過去にSARS-CoV-2による感染症(COVID-19)に対するワクチン(未承認のものも含む)を投与されたことがある患者
8.過去にSARS-CoV-2による感染症(COVID-19)に対してカモスタットメシル酸塩またはナファモスタットメシル酸塩を投与されたことがある患者
9.カモスタットメシル酸塩を服用中の患者
10.カモスタットメシル酸塩に対し過敏症の既往のある患者
11.妊娠中、授乳中並びに妊娠している可能性のある患者または治験期間中に妊娠を希望している患者
12.治験薬投与前に禁止される治療法および併用療法において規定される治療を受けた患者
13.重篤な薬物アレルギーの既往のある患者
14.認知症の合併などにより同意能力を欠く状態であると判断される患者
15.その他、治験責任医師または治験分担医師が治験対象として不適当と判断した患者
3-2:治験薬
カモスタット[一般名(JAN):カモスタットメシル酸塩)]
3-2-1:用量および投与方法
カモスタット600mg(100mg錠×6錠)またはプラセボ(プラセボ錠×6錠)を1日4回、朝食前、昼食前、夕食前、就寝前に経口投与する。なお、服薬後30分~1時間以上は絶食とする。また、投与期間は最大14日間とし、SARS-CoV-2検査において2回連続(24時間以上間隔をあけて実施)で陰性化が確認された場合は、その時点で治験薬投与は中止とする。なお、適格性が認められた段階で、上記の一番早い投与タイミングから治験薬の投与を開始することができる。投与期間は最大14日間であるが、投与初日に日の途中からの投与開始になった場合は、それ以降規定された用法・用量に従って最大15日間(最大56回)投与することとする。
4.結果
本開示において、カモスタットメシル酸塩を既承認の用法用量よりも高い用量で投与するにもかかわらず、COVID-19を安全かつ速やかに治療することが可能になることが示される。
本開示に従って、コロナウイルス感染症の患者において、カモスタットメシル酸塩の特定の用法用量によりコロナウイルス感染症を安全かつ速やかに治療することが可能になる。

Claims (8)

  1. カモスタットメシル酸塩を含有してなる、COVID-19の予防および/または治療剤。
  2. カモスタットメシル酸塩を1日当たり、約1200~約2400mgの範囲で経口投与することを特徴とする、請求項1に記載の剤。
  3. カモスタットメシル酸塩を1日当たり、約2400mgで経口投与することを特徴とする、請求項1または2に記載の剤。
  4. カモスタットメシル酸塩を1日当たり、約2400mgを1日4回に分けて経口投与することを特徴とする、請求項3に記載の剤。
  5. COVID-19の症状発現から約7日以内に投与されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の剤。
  6. SARS-CoV-2の陽性確認に係る検体採取日から約7日以内に投与されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の剤。
  7. 約10日間~約14日間にわたって投与される請求項1~6のいずれかに記載の剤。
  8. さらに、RNA合成酵素阻害薬、ステロイド薬、タンパク質分解酵素阻害薬、抗IL-6抗体、HIVプロテアーゼ阻害薬、免疫調整剤、駆虫剤、および抗生物質からなる群から選択される1つ以上のCOVID-19に対する抗ウイルス薬と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の剤。
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