JP2023150373A - 水素の分離または濃縮方法、水素の分離または濃縮装置 - Google Patents

水素の分離または濃縮方法、水素の分離または濃縮装置 Download PDF

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Abstract

【課題】含水量の多い水素を含む混合ガスから、水素を分離または濃縮する方法、および、該方法を実現するための装置を提供する。【解決手段】ゼオライト膜を用いて、少なくとも水素および水蒸気を含む気体混合物から、水素を透過して分離する方法であって、前記気体混合物の水蒸気分圧を0.6kPa以上12.4kPa以下とし、前記ゼオライト膜を透過する際の前記気体混合物の温度を80℃以上200℃以下とする、水素の分離または濃縮方法。【選択図】なし

Description

本発明は、水素の分離または濃縮方法、水素の分離または濃縮装置に関する。
近年、気体(ガス)の混合物の分離方法として、高分子膜やゼオライト膜などの膜を用いた膜分離、濃縮方法が提案されている。高分子膜、例えば平膜や中空糸膜などは、加工性に優れるが、耐熱性が低いという欠点がある。また高分子膜は、耐薬品性が低く、特に有機溶媒や有機酸といった有機化合物との接触で膨潤するものが多いため、分離、濃縮対象の適用範囲が限定的である。ゼオライト膜は、通常、無機材料よりなる支持体上に、膜状にゼオライトを形成させたゼオライト膜複合体として分離、濃縮に用いられている。無機材料の膜を用いた分離、濃縮は、高分子膜よりも広い温度範囲で分離、濃縮を実施でき、更に有機化合物を含む混合物の分離にも適用できる。
膜による気体混合物(ガス)の分離方法としては、1970年代から高分子膜を用いた方法が提案されている。しかし、高分子膜は加工性に優れる特徴をもつ一方で、熱や化学物質、圧力により劣化して性能が低下することが問題であった。近年、これらの問題を解決すべく耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性が良好な種々の無機膜が提案されてきている。その中でもゼオライトは、サブナノメートルの規則的な細孔を有しているため、分子ふるいとしての働きをもつので選択的に特定の分子を透過でき、高分離性能を示すことが期待されている。
特許文献1には、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含むゼオライト膜複合体を用いて、乾燥ガス中でのH、CH、COのパーミエンスについての評価が行われている。
特許文献2では、COGガスをメタン化してゼオライト膜で0~500℃で水素分離する方法が記載されている。なお、水素分離における最適温度は0~100℃とされている(段落[0053])。
特許文献3には、CHAゼオライト分離膜が記載されており、CO/N、および、CO/CH、の分離について記載されている。
特許文献4には、CHAとDDRゼオライト結晶構造を同時に有する異種ゼオライト分離膜が記載されている。CO/N、または、CO/CHの混合ガスについて、乾燥条件、または、水分条件において、分離性能が評価されている。
特開2017-64716号公報 特開2016-108256号公報 特開2019-89058号公報 特開2020-151709号公報
水素の製造法として主要なものに天然ガスの水蒸気改質によるものがあり、この場合、出口ガスに含まれる成分は、水素以外には主にメタン、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気である。水素を使用する場合、これらの成分を除去する必要があるが、極性の観点からは、水素とメタンの分離が一番の課題であり、水素とメタンの分離はゼオライト膜により可能である。改質後のガスからはまず過剰な水蒸気が除去されるが、この際に通常は室温程度の水蒸気圧まで落とされる。これ以上の脱水には冷却設備が必要であるが、改質設備が高圧ガス設備となることから、冷却設備の設置は好ましくない。そのため、水素分離にゼオライト膜を用いる場合には、含水量の多い水素を含む混合ガスがゼオライト膜に供給されることとなる。
また、水素の原料としてコークス炉での排ガス(COG)を用いることも好ましいが、COGには、水素以外に、メタン、一酸化炭素、C2以上の炭化水素成分等が含まれている。COG中のC2以上の炭化水素成分は、ゼオライト膜の閉塞を招く可能性があるため、COGをガス分離する前に、水蒸気改質工程を行い、C2以上の炭化水素成分を分解することが好ましい。このCOGの水蒸気改質ガスからゼオライト膜を用いて水素分離する場合にも、先述の天然ガスの水蒸気改質ガスと同様に含水量の多い水素を含む混合ガスがゼオライト膜に供給されることとなる。
本発明者らが検討したところによると、含水量の多いガスがゼオライト膜に供給された場合、水素のパーミエンスが阻害されるという問題生じることが判明した。上記した分離膜(特許文献1~4)は、このような問題に対処できるものではなかった。
以上より、本発明は、含水量の多い水素を含む混合ガスから、水素を効率的に分離または濃縮する方法、および、該方法を実現するための装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、従来認識されていなかった上記課題に直面し、これを解決すべく、鋭意検討を行い、以下の事項を見出した。
・混合ガスから水素を分離する際に、混合ガス中に水が存在すると、該水がゼオライト膜に吸着して、ガスの透過量が低下する。
・混合ガスの温度を所定の温度にすることで、上記水がゼオライト膜に吸着する影響を小さくすることができる。
以上を基に、本発明者らは、以下の本発明の完成に至った。
[1] ゼオライト膜を用いて、少なくとも水素および水蒸気を含む気体混合物から、水素を透過して分離する方法であって、
前記ゼオライト膜を透過する際の前記気体混合物の温度を80℃以上200℃以下とする、水素の分離または濃縮方法。
[2] 前記気体混合物の水蒸気分圧が0.6kPa以上12.4kPa以下とする、[1]記載の水素の分離または濃縮方法。
[3] 前記ゼオライト膜が、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含み、膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=17.9°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の0.5倍未満の値を有するものであり、かつ2θ=9.6°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の2.0倍以上4.0倍未満の値を有するものである、[1]または[2]に記載の水素の分離または濃縮方法。
[4] 前記ゼオライトのSiO/Alが、20以上500以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法。
[5] 前記ゼオライト膜が、シリル化処理されている、[1]~[4]のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法。
[6] 前記気体混合物が、炭化水素成分を含む気体を水蒸気改質したものである、[1]~[5]のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法。
[7] 前記気体混合物が、水素とメタンと炭素数2以上の炭化水素成分を含む気体を水蒸気改質したものである、[1]~[6]のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法。
[8] 前記水蒸気改質が、600℃以下の温度で行われる、[6]または[7]に記載の水素の分離または濃縮方法。
[9] 前記水蒸気改質の後に、前記気体混合物の脱水工程をさらに含む、[6]~[8]のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法。
[10] 前記ゼオライト膜を備えた膜分離器を備え、[1]~[9]のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法を行う、水素の分離または濃縮装置。
[11] さらに、改質器を備える、[10]に記載の水素の分離または濃縮装置。
[12] さらに、脱水機を備える、[10]または[11]に記載の水素の分離または濃縮装置。
本発明によれば、含水量の多い水素を含む混合ガスから、水素を効率的に分離または濃縮する方法、および、該方法を実現するための装置を提供することができる。
図1は、実験例1において作製した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体の表面XRDである。 図2は、CHA型ゼオライトの粉末のXRDである。 図3は、ガス分離に用いる装置の一実施形態の模式図である。 図4(a)は、実験例1における乾燥混合ガスの水素のパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。図4(b)は、実験例1における乾燥混合ガスのメタンのパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。 図5(a)は、実験例1における水蒸気含有混合ガスの水素のパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。図5(b)は、実験例1における水蒸気含有混合ガスのメタンのパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。 図6(a)は、実験例2における乾燥混合ガスの水素のパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。図6(b)は、実験例2における乾燥混合ガスのメタンのパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。 図7(a)は、実験例2における水蒸気含有混合ガスの水素のパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。図7(b)は、実験例2における水蒸気含有混合ガスのメタンのパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。 図8(a)は、実験例3における乾燥混合ガスの水素のパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。図8(b)は、実験例3における乾燥混合ガスのメタンのパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。 図9(a)は、実験例3における水蒸気含有混合ガスの水素のパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。図9(b)は、実験例3における水蒸気含有混合ガスのメタンのパーミエンスと理想分離係数の温度依存性を示すグラフである。 図10は、ガス分離に用いる装置の他の実施形態の模式図である。
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<水素の分離または濃縮方法>
本発明の水素の分離または濃縮方法は、ゼオライト膜を用いて、少なくとも水素および水蒸気を含む気体混合物から、水素を透過して分離する方法であって、前記気体混合物の水蒸気分圧を0.6kPa以上12.4kPa以下とし、前記ゼオライト膜を透過する際の前記気体混合物の温度を80℃以上200℃以下とする。
本発明において、ゼオライト膜は、単体のゼオライト膜であってもよいし、多孔質支持体上にゼオライト膜が形成された、ゼオライト膜複合体であってもよいが、強度の点から、ゼオライト膜複合体であることが好ましい。
(ゼオライト膜)
本発明において、ゼオライト膜は、ゼオライト膜を構成する成分としては、ゼオライト以外にシリカ、アルミナなどの無機バインダー、ポリマーなどの有機物、あるいはゼオライト表面を修飾するシリル化剤などを必要に応じ含んでいてもよい。
ゼオライト膜は、一部アモルファス成分などが含有されていてもよいが、好ましくは実質的にゼオライトのみで構成されるゼオライト膜である。
ゼオライト膜に含まれるCHA型アルミノ珪酸塩の割合は、通常10体積%以上、好ましくは30体積%以上、より好ましくは60体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上である。ゼオライト膜がCHA型アルミノ珪酸塩のみで構成されるものが、ガスの透過性、分離性において最も優れるために最も好ましい。
ゼオライト膜の厚さは特に限定されないが、通常0.1μm以上、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは1.0μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲である。膜厚が大きすぎると透過量が低下する傾向があり、小さすぎると選択性が低下したり、膜強度が低下したりする傾向がある。
ゼオライト膜を形成するゼオライトの粒子径は特に限定されないが、小さすぎると粒界が大きくなるなどして透過選択性などを低下させる傾向がある。それ故、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、上限は膜の厚さ以下である。さらに、ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じである場合がより好ましい。ゼオライトの粒子径が膜の厚さと同じであるとき、ゼオライトの粒界が最も小さくなる。後に述べる水熱合成で得られたゼオライト膜は、ゼオライトの粒子径と膜の厚さが同じになる場合があるので好ましい。
ゼオライト膜の形状は特に限定されず、管状、中空糸状、モノリス型、ハニカム型などあらゆる形状を採用できる。また大きさも特に限定されず、例えば、管状の場合は、通常長さ2cm以上200cm以下、内径0.5cm以上2cm以下、支持体を含む厚さ0.5mm以上4mm以下が実用的で好ましい。
(ゼオライト)
本発明において、ゼオライト膜はCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含む。好ましくはゼオライト膜を構成するゼオライトはCHA型アルミノ珪酸塩である。アルミノ珪酸塩は、SiとAlの酸化物を主成分とするものであり、本発明の効果を損なわない限り、それ以外の元素が含まれていてもよい。
本発明において、アルミノ珪酸塩のSiO/Alモル比は特に限定されないが、通常6以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上、特に好ましくは40以上である。上限は、通常Alが不純物程度の量であり、SiO/Alモル比としては、通常500以下、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは80以下、特に好ましくは70以下、最も好ましくは50以下である。SiO/Alモル比が前記下限未満ではゼオライト膜の緻密性が低下する場合があり、また耐久性が低下する傾向がある。
SiO/Alモル比は、後に述べる水熱合成の反応条件により調整することができる。
なお、SiO/Alモル比は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により得られた数値である。数ミクロンの膜のみの情報を得るために通常はX線の加速電圧を10kVで測定する。
(CHA型ゼオライト)
本発明において、CHA型ゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでCHA構造のものを示す。天然に産出するチャバサイトと同等の結晶構造を有するゼオライトである。CHA型ゼオライトは0.38×0.38nmの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
CHA型ゼオライトのフレームワーク密度(T/nm)は14.5である。また、SiO/Alモル比は上記と同様である。
ここで、フレームワーク密度(T/nm)とは、ゼオライトのnm(1000Å)あたりの、骨格を構成する酸素以外の元素(T元素)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なお、フレームワーク密度とゼオライトの構造との関係はATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Fifth Revised Edition 2001 ELSEVIERに示されている。
(無機多孔質支持体)
無機多孔質支持体は、その表面などにゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性がある多孔質の無機物質であれば如何なるものであってもよい。具体的には、例えば、シリカ、α-アルミナ、γ-アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体、鉄、ブロンズ、ステンレスなどの焼結金属や、ガラス、カーボン成型体などが挙げられる。
無機多孔質支持体の中で、セラミックス焼結体は、その一部がゼオライト膜合成中にゼオライト化することで界面の密着性を高める効果がある。
さらに、アルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体は、支持体の部分的なゼオライト化が容易であるため、支持体とゼオライトの結合が強固になり緻密で分離性能の高い膜が形成されやすくなるのでより好ましい。
支持体の形状は、気体混合物や液体混合物を有効に分離できるものであれば特に制限されず、具体的には、例えば、平板状、管状のもの、または円筒状、円柱状や角柱状の孔が多数存在するハニカム状のものやモノリス状のものなどが挙げられる。
本発明において、無機多孔質支持体の表面などにゼオライト膜を形成、好ましくはゼオライトを膜状に結晶化させる。
支持体が有する平均細孔径は特に制限されないが、細孔径が制御されているものが好ましい。細孔径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。細孔径が小さすぎると透過量が小さくなる傾向があり、大きすぎると支持体自体の強度が不十分になったり、緻密なゼオライト膜が形成されにくくなったりする傾向がある。
支持体の平均細孔径は、水銀圧入法により測定できる。
支持体の表面は必要に応じて表面をやすり等で研磨してもよい。なお、支持体の表面とはゼオライト膜を形成させる支持体の表面部分を意味し、表面であればそれぞれの形状のどこの表面であってもよく、複数の面であっても良い。例えば円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってよい。
また、支持体の気孔率は特に制限されず、また特に制御する必要は無いが、気孔率は、通常20%以上60%以下であることが好ましい。気孔率は、気体や液体を分離する際の透過流量を左右し、前記下限未満では透過物の拡散を阻害する傾向があり、前記上限超過では支持体の強度が低下する傾向がある。
支持体の気孔率は、水銀圧入法により測定できる。
(ゼオライト膜複合体)
ゼオライト膜複合体とは、支持体の表面などにゼオライトが膜状に固着しているものであり、場合によっては、ゼオライトの一部が、支持体の内部にまで固着している状態のものが好ましい。
ゼオライト膜複合体としては、例えば、支持体の表面などにゼオライトを水熱合成により膜状に結晶化させたものが好ましい。
ゼオライト膜の支持体上の位置は特に限定されず、管状の支持体を用いる場合、外表面にゼオライト膜をつけてもよいし、内表面につけてもよく、さらに適用する系によっては両面につけてもよい。また、支持体の表面に積層させてもよいし、支持体の表面層の細孔内を埋めるように結晶化させてもよい。この場合、結晶化した膜層の内部に亀裂や連続した微細孔が無いことが重要であり、いわゆる緻密な膜を形成させることが分離性を向上させることになる。
本発明においてゼオライト膜複合体は、膜表面にX線を照射して得たX線回折のパターンにおいて、2θ=17.9°付近のピークの強度が、2θ=20.8°付近のピークの強度の0.5倍未満であることが好ましい。
ここで、ピークの強度とは、測定値からバックグラウンドの値を引いたものをさす。(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比A」ということがある。)でいえば、通常0.5未満、好ましくは0.48以下である。下限は特に限定されないが、通常0.001以上である。
また、本発明においてゼオライト膜複合体は、X線回折のパターンにおいて、2θ=9.6°付近のピークの強度が、2θ=20.8°付近のピークの強度の2.0倍以上4.0倍未満の大きさであることが好ましい。
(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比B」ということがある。)でいえば、通常2.0以上、好ましくは2.1以上、より好ましくは2.3以上、特に好ましくは2.5以上である。上限は、通常4.0未満、好ましくは3.9以下、より好ましくは3.7以下、特に好ましくは3.5以下である。
ここでいうX線回折パターンとは、ゼオライトが主として付着している側の表面にCuKαを線源とするX線を照射して、走査軸をθ/2θとして得るものである。測定するサンプルの形状としては、膜複合体のゼオライトが主として付着している側の表面にX線が照射できるような形状なら何でもよく、膜複合体の特徴をよく表すものとして、作製した膜複合体そのままのもの、あるいは装置によって制約される適切な大きさに切断したものが好ましい。
ここでいうX線回折パターンは、ゼオライト膜複合体の表面が曲面である場合には自動可変スリットを用いて照射幅を固定して測定してもかまわない。自動可変スリットを用いた場合のX線回折パターンとは、可変→固定スリット補正を実施したパターンを指す。
ここで、2θ=17.9°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち17.9°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
2θ=20.8°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち20.8°±0.6°の範囲に存在するピークで最大のものを指す。
2θ=9.6°付近のピークとは、基材に由来しないピークのうち9.6°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
X線回折パターンで2θ=9.6°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
Figure 2023150373000001
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(1,0,0)の面に由来するピークである。
また、X線回折パターンで2θ=17.9°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
Figure 2023150373000002
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(1,1,1)の面に由来するピークである。
X線回折パターンで2θ=20.8°付近のピークは、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIERによればrhombohedral settingで空間群を
Figure 2023150373000003
(No.166)とした時にCHA構造において指数が(2,0,-1)の面に由来するピークである。
CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜における(1,0,0)面由来のピークの強度の(2,0,-1)の面に由来のピーク強度の典型的な比(ピーク強度比B)は、Halil Kalipcilar et al., “Synthesis and Separation Performance of SSZ―13 Zeolite Membranes on Tubular Supports”, Chem. Mater. 2002, 14, 3458―3464によれば2未満である。
そのため、この比が2.0以上4.0未満であるということは、例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,0,0)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるように、ゼオライト結晶が中程度に配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト膜複合体においてゼオライト結晶が配向して成長することは分離性能の高い緻密な膜が出来るという点で有利である。
ここでいう中程度の配向とは、(1,0,0)面が膜複合体の表面と平行に近い向きに向いた結晶子が全体の結晶子に対して中程度の割合で存在するということであり、この割合は、粉末のCHA型アルミノ珪酸塩のような結晶子の向きがランダムなものよりも大きく、ピーク強度比Bが4以上のような、多くの結晶子の(1,0,0)面が表面と平行に近い向きに向いたCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜よりも低い。
CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜における(1,1,1)面由来のピークの強度と(2,0,-1)の面に由来のピーク強度の典型的な比(ピーク強度比A)は、上記文献(Halil Kalipcilar et al.,)によれば0.5未満である。
そのため、この比が0.5未満であるということは、例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長している程度が低いことを意味すると考えられる。
ここでいうゼオライト結晶が配向して成長している程度が低いとは、(1,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きに向いたゼオライト結晶子の、全体の結晶子に対する存在割合が低いということであり、結晶子の(1,1,1)面の向きはほぼランダムであるということである。
このように、ピーク強度比A、Bが、上記した特定の範囲の値であるということは、ゼオライト結晶が中程度に配向して成長し、分離性能の高い緻密な膜が形成されていることを示すものである。
CHA型ゼオライト結晶が中程度に配向して成長している緻密なゼオライト膜は、次に述べる通り、ゼオライト膜を水熱合成法により形成する際に、例えば、特に好ましくは特定の有機テンプレートを用い、水性反応混合液中にK+イオンを共存させることにより達成することができる。
また、本発明において、ゼオライト膜複合体の水蒸気吸着等温線より求めた、相対圧0.8におけるゼオライト膜複合体の水吸着量は、相対圧0.2における水吸着量の2倍以上10倍以下であることが好ましい。
ここで、吸着等温線とは、材料を一定温度にし、圧力と吸着量の変化を測定したグラフである。一般的に横軸には平衡圧力を飽和蒸気圧で割った相対圧(P/P0)とし0~1の値を取る。本発明においては、相対圧0.8と相対圧0.2におけるゼオライト膜複合体への水(水蒸気)吸着量(g/g)を指標とする。
上記のとおり、本発明のゼオライト膜複合体は、相対圧0.2における水吸着量に対する相対圧0.8における水吸着量の比が2以上10以下の値をもつことが好ましいが、この値は、好ましくは2.1以上、より好ましくは2.2以上であり、また、好ましくは8以下、より好ましくは5以下である。
この値は、一般的にゼオライト膜中のメソ孔への水の吸着と相関しているものであり、値が大きいほど、親水的なメソ孔容積が大きい傾向があることを意味し、値が小さいほど、親水的なメソ孔容積が小さい傾向があることを意味する。この値が大きすぎるものでは、メソ孔が多く存在する緻密度の小さい膜となり、透過量は高いが、分離性能の低い膜となる傾向があり、一方、この値が小さすぎるものではメソ孔がほとんど存在しない緻密度が高い膜となり、分離性能は高いが透過量が低い膜となる傾向がある。この値を2以上10以下とすることにより、分離性能が良好で透過量が高い膜とすることが可能となる。
(ゼオライト膜複合体の製造方法)
本発明において、ゼオライト膜の形成方法は、上記した特定のゼオライト膜が支持体上に形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、(1)支持体上にゼオライトを膜状に結晶化させる方法、(2)支持体にゼオライトを無機バインダー、あるいは有機バインダーなどで固着させる方法、(3)ゼオライトを分散させたポリマーを固着させる方法、(4)ゼオライトのスラリーを支持体に含浸させ、場合によっては吸引させることによりゼオライトを支持体に固着させる方法などの何れの方法も用いることができる。これらの方法により無機多孔質支持体-ゼオライト膜複合体を得ることができる。
これらの中で、無機多孔質支持体にゼオライトを膜状に結晶化させる方法が特に好ましい。結晶化の方法に特に制限はないが、支持体を、ゼオライト製造に用いる水熱合成用の反応混合物(以下これを「水性反応混合物」ということがある。)中に入れて、直接水熱合成することで支持体表面などにゼオライトを結晶化させる方法が好ましい。
具体的には、例えば、組成を調整して均一化した水性反応混合物を、支持体を内部に緩やかに固定した、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器に入れて密閉して、一定時間加熱すればよい。
水性反応混合物としては、Si元素源、Al元素源、アルカリ源および水を含み、さらに必要に応じて有機テンプレートを含むものが好ましい。
水性反応混合物に用いるSi元素源としては、例えば、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形アルミノシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメチルエトキシシラン等を用いることができる。
Al元素源としては、例えば、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酸化アルミニウム、無定形アルミノシリケートゲル等を用いることができる。なお、Al元素源以外に他の元素源、例えばGa、Fe、B、Ti、Zr、Sn、Znなどの元素源を含んでいてもよい。
アルカリ源として用いるアルカリの種類は特に限定されず、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
金属水酸化物の金属種は、通常Na、K、Li、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Ba等が挙げられ、好ましくはNa、Kであり、より好ましくはKである。また、金属水酸化物の金属種は2種類以上を併用してもよく、具体的には、NaとK、あるいはLiとKを併用するのが好ましい。
具体的には、アルカリ源としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を用いることができる。
水性反応混合物に用いるアルカリ源として、次に述べる有機テンプレートのカウンターアニオンの水酸化物イオンを用いることができる。
ゼオライトの結晶化において、必要に応じて有機テンプレート(構造規定剤)を用いることができるが、有機テンプレートを用いて合成したものが好ましい。有機テンプレートを用いて合成することにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、結晶性が向上する。
有機テンプレートとしては、所望のゼオライト膜を形成しうるものであれば種類は問わず、如何なるものであってもよい。また、テンプレートは1種類でも、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
有機テンプレートとしては、通常、アミン類、4級アンモニウム塩類が用いられる。例えば、米国特許第4544538号明細書、米国特許公開第2008/0075656号明細書に記載の有機テンプレートが好ましいものとして挙げられる。
具体的には、例えば、1-アダマンタンアミンから誘導されるカチオン、3-キナクリジナールから誘導されるカチオン、3-exo-アミノノルボルネンから誘導されるカチオン等の脂環式アミンから誘導されるカチオンが挙げられる。これらの中で、1-アダマンタンアミンから誘導されるカチオンがより好ましい。1-アダマンタンアミンから誘導されるカチオンを有機テンプレートとしたとき、緻密な膜を形成しうるCHA型ゼオライトが結晶化する。
1-アダマンタンアミンから誘導されるカチオンのうち、N,N,N-トリアルキル-1-アダマンタンアンモニウムカチオンがさらに好ましい。N,N,N-トリアルキル-1-アダマンタンアンモニウムカチオンの3つのアルキル基は、通常、それぞれ独立したアルキル基であり、好ましくは低級アルキル基、より好ましくはメチル基である。それらの中で最も好ましい化合物は、N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムカチオンである。
このようなカチオンは、CHA型ゼオライトの形成に害を及ぼさないアニオンを伴う。このようなアニオンを代表するものには、Cl-、Br-、I-などのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、およびカルボン酸塩が含まれる。これらの中で、水酸化物イオンが特に好適に用いられ、水酸化物イオンの場合には上記のようにアルカリ源として機能する。
その他の有機テンプレートとしては、N,N,N-トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンも用いることができる。この場合もアルキル基は、それぞれ独立したアルキル基であり、好ましくは低級アルキル基、より好ましくはメチル基である。それらの中で、最も好ましい化合物は、N,N,N-トリメチルベンジルアンモニウムカチオンである。また、このカチオンが伴うアニオンは上記と同様である。
水性反応混合物中のSi元素源とAl元素源の比は、通常、それぞれの元素の酸化物のモル比、すなわちSiO/Alモル比として表わす。
このSiO/Al比は、上記したSiO/Al比をもつゼオライトが形成可能な比であれば特に限定されないが、通常5以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上、特に好ましくは50以上である。また上限は、通常500以下、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは140以下である。SiO/Al比がこの範囲にあるとき、緻密な膜を形成しうるCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを結晶化させることができる。
水性反応混合物中のシリカ源と有機テンプレートの比は、SiOに対する有機テンプレートのモル比(有機テンプレート/SiO比)で、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、通常1以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.2以下である。この範囲にあるとき緻密なゼオライト膜が生成しうることに加えて、生成したゼオライトが耐酸性に強くAlが脱離しにくい。また、この条件において、特に緻密で耐酸性のCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを形成させることができる。
Si元素源と金属水酸化物の比は、M(2/n)O/SiO(ここで、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、nはその価数1または2を示す。)モル比で、通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。
CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜を形成する際、アルカリ金属の中でカリウム(K)が含まれる場合がより緻密で結晶性の高い膜を生成させるという点で好ましい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計に対するKのモル比は、通常0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上であり、上限は通常1以下である。
本発明の好ましい範囲で構成された水性反応混合物中へのKの添加は、前記のとおり、rhombohedral settingで空間群を
Figure 2023150373000004
(No.166)とした時に、CHA構造において指数が(1,0,0)の面に由来するピークである2θ=9.6°付近のピーク強度と指数が(2,0,-1)の面に由来するピークである2θ=20.8°付近のピーク強度の比を中程度に大きくする傾向がある。
Si元素源と水の比は、SiOに対する水のモル比(HO/SiOモル比)で、通常10以上、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、特に好ましくは50以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは200以下、特に好ましくは150以下である。
水性反応混合物中の物質のモル比がこれらの範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成しうる。水の量は緻密なゼオライト膜の生成においてとくに重要であり、粉末合成法の一般的な条件よりも水がシリカに対して多い条件のほうが緻密な膜ができやすい傾向にある。
一般的に、粉末のCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを合成する際の水の量は、HO/SiOモル比で、15~50程度である。HO/SiOモル比が高い(50以上1000以下)、すなわち水が多い条件にすることにより、支持体の表面などにCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトが緻密な膜状に結晶化した分離性能の高いゼオライト膜複合体を得ることができる。
さらに、水熱合成に際して、必ずしも反応系内に種結晶を存在させる必要は無いが、種結晶を加えることで、支持体上にゼオライトの結晶化を促進できる。種結晶を加える方法としては特に限定されず、粉末のゼオライトの合成時のように、水性反応混合物中に種結晶を加える方法や、支持体上に種結晶を付着させておく方法などを用いることができる。ゼオライト膜複合体を製造する場合は、支持体上に種結晶を付着させておくことが好ましい。支持体上に予め種結晶を付着させておくことで緻密で分離性能良好なゼオライト膜が生成しやすくなる。
使用する種結晶としては、結晶化を促進するゼオライトであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためには形成するゼオライト膜と同じ結晶型であることが好ましい。CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜を形成する場合は、CHA型ゼオライトの種結晶を用いることが好ましい。
種結晶の粒子径は小さいほうが望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。粒径は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、通常5μm以下である。
支持体上に種結晶を付着させる方法は特に限定されず、例えば、種結晶を水などの溶媒に分散させて、その分散液に支持体を浸けて表面に種結晶を付着させるディップ法や、種結晶を水などの溶媒と混合してスラリー状にしたものを支持体上に塗りこむ方法などを用いることができる。種結晶の付着量を制御し、再現性良く膜複合体を製造するにはディップ法が望ましい。
種結晶を分散させる溶媒は特に限定されないが、特に水、アルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ性水溶液の種類は特に限定されないが、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液が好ましい。またこれらのアルカリ種は混合されていてもよい。アルカリ濃度は特に限定されず、通常0.0001mol%以上、好ましくは0.0002mol%以上、より好ましくは0.001mol%以上、さらに好ましくは0.002mol%以上である。また、通常1mol%以下、好ましくは0.8mol%以下、より好ましくは0.5mol%以下、さらに好ましくは0.2mol%以下である。
分散させる種結晶の量は特に限定されず、分散液の全質量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。また、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
分散させる種結晶の量が少なすぎると、支持体上に付着する種結晶の量が少ないため、水熱合成時に支持体表面に部分的にゼオライトが生成しない箇所ができ、欠陥のある膜となる可能性がある。分散液中の種結晶の量が多すぎると、ディップ法によって支持体上に付着する種結晶の量がほぼ一定となるため、種結晶の無駄が多くなりコスト面で不利である。
支持体にディップ法あるいはスラリーの塗りこみによって種結晶を付着させ、乾燥した後にゼオライト膜の形成を行うことが望ましい。
支持体上に予め付着させておく種結晶の量は特に限定されず、基材1mあたりの質量で、通常0.01g以上、好ましくは0.05g以上、より好ましくは0.1g以上であり、通常100g以下、好ましくは50g以下、より好ましくは10g以下である。
種結晶の量が下限未満の場合には、結晶ができにくくなり、膜の成長が不十分になる場合や、膜の成長が不均一になったりする傾向がある。また、種結晶の量が上限を超える場合には、表面の凹凸が種結晶によって増長されたり、支持体表面から落ちた種結晶によって自発核が成長しやすくなって支持体上の膜成長が阻害されたりする場合がある。何れの場合も、緻密なゼオライト膜が生成しにくくなる傾向となる。
水熱合成により支持体上にゼオライト膜を形成する場合、支持体の固定化方法に特に制限はなく、縦置き、横置きなどあらゆる形態をとることができる。この場合、静置法でゼオライト膜を形成させてもよいし、水性反応混合物を攪拌させてゼオライト膜を形成させてもよい。
ゼオライト膜を形成させる際の温度は特に限定されないが、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。反応温度が低すぎると、ゼオライトが結晶化し難くなることがある。また、反応温度が高すぎると、本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
加熱(反応)時間は特に限定されないが、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上であり、通常10日間以下、好ましくは5日以下、より好ましくは3日以下、さらに好ましくは2日以下である。反応時間が短すぎるとゼオライトが結晶化し難くなることがある。反応時間が長すぎると、本発明におけるゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
ゼオライト膜形成時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた水性反応混合物を、この温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えても差し支えない。
水熱合成により得られたゼオライト膜複合体は、水洗した後に、加熱処理して、乾燥させる。ここで、加熱処理とは、熱をかけてゼオライト膜複合体を乾燥又はテンプレートを使用した場合にテンプレートを焼成することを意味する。
加熱処理の温度は、乾燥を目的とする場合は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。また、テンプレートの焼成を目的とする場合は、通常350℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは430℃以上、さらに好ましくは450℃以上であり、通常900℃以下、好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下、特に好ましくは750℃以下である。
加熱処理の時間は、ゼオライト膜が十分に乾燥、またはテンプレートが焼成する時間であれば特に限定されず、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上である。上限は特に限定されず、通常200時間以内、好ましくは150時間以内、より好ましくは100時間以内、特に好ましくは24時間以内である。
水熱合成を有機テンプレートの存在下で行った場合、得られたゼオライト膜複合体を、水洗した後に、例えば、加熱処理や抽出などにより、好ましくは加熱処理、すなわち焼成により有機テンプレートを取り除くことが適当である。
焼成温度が低すぎると有機テンプレートが残っている割合が多くなる傾向があり、ゼオライトの細孔が少なく、そのために分離・濃縮の際のガスの透過量が減少する場合がある。
焼成温度が高すぎると支持体とゼオライトの熱膨張率の差が大きくなるためゼオライト膜に亀裂が生じやすくなる可能性があり、ゼオライト膜の緻密性が失われ分離性能が低くなることがある。
焼成時間は、昇温速度や降温速度により変動するが、有機テンプレートが十分に取り除かれる時間であれば特に限定されず、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上である。上限は特に限定されず、例えば、通常200時間以内、好ましくは150時間以内、より好ましくは100時間以内、特に好ましくは24時間以内である。焼成は空気雰囲気で行えばよいが、空気に酸素や不活性ガスを付加した雰囲気で行ってもよい。
焼成の際の昇温速度は、支持体とゼオライトの熱膨張率の差がゼオライト膜に亀裂を生じさせることを少なくするために、なるべく遅くすることが望ましい。昇温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、さらに好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
また、焼成後の降温速度もゼオライト膜に亀裂が生じることを避けるためにコントロールする必要がある。昇温速度と同様、遅ければ遅いほど望ましい。降温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、さらに好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。通常、作業性を考慮し0.1℃/分以上である。
ゼオライト膜は、必要に応じてイオン交換しても良いし、シリル化処理を施しても良い。
イオン交換は、テンプレートを用いて合成した場合は、通常、テンプレートを除去した後に行う。イオン交換するイオンとしては、プロトン、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオン、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+などの第2族元素イオン、Fe、Cu、Zn、Ag、Al、Ga、Laなどの遷移金属のイオンなどが挙げられる。これらの中で、プロトン、Na、Mg2+、Ca2+およびFe、Al、Ga、Laイオンが好ましい。
イオン交換は、焼成後(テンプレートを使用した場合など)のゼオライト膜を、NHNO、NaNOなどアンモニウム塩あるいは交換するイオンを含む水溶液、場合によっては塩酸などの酸で、通常、室温から100℃の温度で処理後、水洗する方法などにより行えばよい。さらに、必要に応じて200℃~500℃で焼成してもよい。
シリル化処理については、後述する。
加熱処理後のゼオライト膜複合体の空気透過量は、通常10L/(m・h)以上、好ましくは20L/(m・h)以上、より好ましくは30L/(m・h)以上、さらに好ましくは35L/(m・h)以上であり、特に好ましくは100L/(m・h)以上である。透過量の上限は特に限定されないが、好ましくは1000L/(m・h)以下、より好ましくは800L/(m・h)以下、さらに好ましくは700L/(m・h)以下である。
ここで、空気透過量とは、実施例の項で詳述するとおり、ゼオライト膜複合体を大気圧下におき、ゼオライト膜複合体の内側を5kPaの真空ラインに接続した時の空気の透過量[L/(m・h)]である。
空気透過量はガス透過量に繋がる数値である。空気透過量が多いものはガス透過量も多くなるが、空気透過量が多すぎるものは分離が低くなる傾向にある。本発明のゼオライト膜は、上記のとおり空気透過量が適度に多く、ガス透過量が多く、かつ良好な分離性能をもつものであり、特に気体成分の分離に好適な性能をもつものである。
かくして製造されるゼオライト膜複合体は、優れた特性をもつものであり、本発明における気体混合物の膜分離手段として好適に用いることができる。
(シリル化処理)
続いて、ゼオライト膜複合体を、Si元素源と接触させることも好ましい(以下これを「シリル化処理」と称することがある。)。これにより、ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されて、特定の物理化学的性質を有するものとすることができる。例えば、ゼオライト膜表面にSi-OHを多く含む層を形成することで膜表面の親水性が向上し、分離性能を向上させることが出来ると考えられる。またゼオライト膜表面をSi化合物により修飾することで膜表面に存在する微細な欠陥をふさぐ効果が副次的に得られることがある。
シリル化処理に用いるシリカ源は液体としてゼオライト膜複合体に接触させることもできるし、気体として接触させることもできる。
液体として接触させる場合、シリル化処理に用いる液体は、シリル化処理の条件下でゼオライト膜複合体が浸漬可能な状態のものであれば特に制限されず、Si元素源、例えばSi化合物に溶媒を加えた溶液であってもよく、溶媒を加えない液体であってもよく、ゾルまたはゲルであってもよい。ここで、溶媒は、水であっても有機溶媒であってもよい。また、沸点以上の温度では、加圧下で液状となっているものも溶媒に含まれる。この場合の圧力は、自生圧でも加圧でもよい。さらに、シリル化処理用の液体には、少なくともSi化合物を含んでいれば良く、その他の元素源(化合物)として、例えばAl化合物を含んでいてもよい。
先ず、溶媒として水を用いる場合について説明する。
水を溶媒として用いる場合、溶液の温度は、通常20℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。温度が上記下限値以上だと、Si化合物と膜表面およびSi化合物間で行われる脱水縮合反応、加水分解反応の進行が十分でSi化合物による修飾が十分に行われ膜表面の親水性が十分に向上する。温度が上記上限値以下だと、ゼオライトが一部水中に溶出してゼオライト膜が壊れる可能性が低い。
浸漬時間は、通常1時間以上、好ましくは4時間以上、より好ましくは8時間以上であり、通常100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下である。浸漬時間が上記下限値以上であると、膜表面の変化が十分に進行し、十分な効果が得られる。浸漬時間が上記上限値以下であると、ゼオライトが一部水中に溶出してゼオライトが壊れる可能性が低い。
シリル化処理時の圧力は特に限定されず、大気圧あるいは、密閉容器中に入れた処理溶液を、上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えても差し支えない。
Si化合物としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、無定形シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、シリケートオリゴマー、シリカゾルなどを用いることができる。これらの中で、反応性の面でアルコキシシランが好ましく、アルキル基が少なく、加水分解後の親水性の高いテトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、シリケートオリゴマーが特に好ましい。
Al化合物としては、例えば、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミナゾル、無定形アルミノシリケートゲル、アルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウムアルコキサイド等を用いることができる。これらの中で、アルミニウムアルコキサイドが好ましい。
これらのSi化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて使用してもよい。Al化合物はSi化合物と組み合わせて使用すれば、1種を用いてもよく、2種類以上を組み合せて使用してもよい。
溶液中のSi化合物やAl化合物の含有量は、Si元素及びAl元素の合計の濃度として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。また、Si元素の場合の濃度としては、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
溶液中には、ゼオライト表面OH基とSi化合物、Si化合物間の脱水縮合反応、アルコキシ基の加水分解反応の触媒として、酸または塩基を存在させることが好ましい。従って、溶液のpHは、酸であれば通常0~5、好ましくは0.5~4、より好ましくは1~3程度であればよく、塩基であれば通常8~13、好ましくは9~13、より好ましくは10~12程度であればよい。
水中に例えば、NaOH、KOH、アミン等の塩基性物質を添加することで微量のOH-1イオンを積極的に存在させてもよく、その場合、水溶液中のOH-1イオン濃度は、通常0.01mol/l以下、より好ましくは0.005mol/l以下であり、通常0.0001mol/l以上、好ましくは0.0005mol/l以上、より好ましくは0.001mol/l以上である。水中にOH-1イオンが存在することによって、存在しない場合よりも短時間で同等の効果を得ることが可能になる。水中のOH-1イオン濃度が上記上限値以下であると、ゼオライト膜が溶解して破壊され難くなり処理時間の厳密なコントロールが不要となる。
水溶液中に存在させる酸としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸などの有機酸や、硫酸、燐酸などの無機酸等が挙げられる。これらの中で、特にカルボン酸、無機酸が好ましい。
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フタル酸、乳酸、クエン酸、アクリル酸などが好ましく、ギ酸、酢酸、乳酸がより好ましく、酢酸が特に好ましい。無機酸としては、例えば、硫酸、硝酸、燐酸、塩酸などが好ましく、硫酸、硝酸、燐酸がより好ましい。
水溶液中の酸性物質の濃度は、好ましくは0.01mol/l以上、より好ましくは0.05mol/l以上であり、好ましくは10mol/l以下、より好ましくは1mol/l以下である。
また、H濃度は、通常1×10-10mol/l以上、好ましくは1×10-8mol/l以上、より好ましくは1×10-7mol/l以上、特に好ましくは1×10-5mol/l以上であり、通常10mol/l以下、好ましくは5mol/l以下、より好ましくは1mol/l以下である。
濃度が上記の範囲となるように塩基性物質を共存させてもよい。塩基性物質としては、例えば、NaOH、KOH、アミン等が挙げられる。
次に有機溶媒を用いる浸漬処理について説明する。
この場合、溶液の温度は、通常20℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは110℃以下である。温度が上記下限値以上であると、Si化合物と膜表面およびSi化合物間で行われる脱水縮合反応、加水分解反応の進行が十分でSi化合物による修飾が十分に行われ膜表面の親水性が十分に向上する。温度が上記上限値以下であると、ゼオライトが一部水中に溶出してゼオライト膜が壊れる可能性が低い。
浸漬時間は、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上であり、通常50時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下である。浸漬時間が上記下限値以上であると、膜表面の変化が十分に進行し、十分な効果が得られる。浸漬時間が上記上限値以下であると、ゼオライトが一部水中に溶出してゼオライトが壊れる可能性が低い。
シリル化処理時の圧力は特に限定されず、必要に応じて還流条件下で大気圧行うことが出来る。あるいは必要に応じて密閉容器中に入れた処理溶液を、上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力下で処理を行ってもよい。さらに必要に応じて、窒素などの不活性ガス加えても差し支えない。
用い得る有機溶媒としては、例えば、トルエン、ヘキサン等の非極性溶媒、アニソール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒、および、アセトンなどの極性溶媒が挙げられる。これらの中で、トルエン、イソプロピルアルコールが特に好ましい。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合せて用いてもよい。
さらに、有機溶媒を用いる場合には、水を系内に添加してもよい。添加し得る水の濃度は、通常0.001質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
用い得るSi化合物やAl化合物の種類は、水を溶媒として用いる場合と同様であるが、Si化合物としては、アルコキシシランが好ましく、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、シリケートオリゴマーが特に好ましい。また、Al化合物としては、アルミニウムアルコキサイドが特に好ましい。
これらSi化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて使用してもよい。Al化合物はSi化合物と組み合わせて使用すれば、1種を用いてもよく、2種類以上を組み合せて使用してもよい。
溶液中のSi化合物の含有量は、Si元素濃度として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。また、Al化合物の含有量は、Al元素濃度として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
シリル化処理においては、Si元素源、例えばSi化合物を少なくとも含む液体に浸漬する際に、溶媒をさらに加えずに処理することも出来る。特に、Si化合物としてシリケートオリゴマーを用いる場合には、溶媒をさらに加えなくてもよい。溶媒をさらに加えない場合においてもその他の元素源(化合物)として、例えばAl化合物を含んでいてもよい。
溶媒を加えずにシリル化処理を行う場合の浸漬温度は、通常1℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、特に好ましくは15℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、特に好ましくは100℃以下、最も好ましくは80℃以下である。温度が上記下限値以上であると、Si化合物の流動性が高くなり、ゼオライト膜複合体表面に均一にSi化合物やAl化合物が付着し、修飾が部分的にならない。温度が上記上限値以下であると、Si化合物同士やAl化合物同士、Si化合物とAl化合物との反応が遅く進行し、ゼオライト膜複合体表面への付着、反応が十分進行する。
浸漬時間は、通常0.5秒以上、好ましくは1秒以上、より好ましくは2秒以上、特に好ましくは3秒以上であり、通常10時間以下、好ましくは7時間以下、より好ましくは5時間以下、さらに好ましくは3時間以下、特に好ましくは1時間以下である。
Si化合物を含む液体に溶媒を加えない場合には、溶媒を加える場合に比べSi化合物の濃度が高いので一般に溶媒を加える場合よりも低温、短時間で十分にシリル化処理が行われる傾向がある。
シリル化処理時の圧力は特に限定されず、大気圧、あるいは密閉容器中に入れた処理溶液を、上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えても差し支えない。
溶媒を加えずにシリル化処理を行う場合には、ゼオライト膜複合体を、Si化合物を含む液体に浸漬する際に、管状のゼオライト膜複合体の場合、下のみあるいは上下をシリコンゴム栓やテフロン(登録商標)テープなどでふさぐことにより、支持体に多量のSi化合物、Al化合物が浸透するのを妨げることが望ましい。ゼオライト膜の表面のみにSi化合物、Al化合物を接触させ、支持体部分への浸透を防ぐことで、高い透過量を維持したまま、効率的にゼオライト膜の表面をシリル化処理できる。
溶媒を加えずにシリル化処理を行う場合には、ゼオライト膜複合体を、上記したSi元素源、例えばSi化合物を少なくとも含む液体、ゾルまたはゲルに浸漬した後に加熱してもよい。加熱温度としては、通常30℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。温度が上記下限値以上の場合には、ゼオライト膜表面のSi化合物、Al化合物による修飾が十分に固定化される。温度が上記上限値以下の場合には、修飾によって生成したSi-OHが縮合してSi-O-Si結合にならず膜表面の親水性が十分に向上する。
浸漬後に加熱する際には、加熱時間は通常30分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは1.5時間以上、さらに好ましくは2時間以上であり、通常30時間以下、好ましくは25時間以下、より好ましくは20時間以下、さらに好ましくは15時間以下である。時間が上記下限値以上の場合には、ゼオライト膜表面のSi化合物、Al化合物による修飾が十分に固定化される。時間が上記上限値以下の場合には、Si化合物、Al化合物による修飾が十分に固定化される範囲内で加熱することになりエネルギー的に有利である。
浸漬後に加熱する際には、加熱する系内に水を共存させても良い。水を共存させることでシリケートオリゴマーなどに含まれるアルコキシシランの加水分解が進行しやすくなり、ゼオライト膜表面の修飾が十分に行われやすくなる。
浸漬後の加熱は通常の乾燥機などで行うことも出来るし、密閉容器中に浸漬後の膜を入れて加熱してもよい。密閉容器中に浸漬後の膜を入れる際には少量の水を膜に接触しないように共存させても良い。
次にシリカ源を気体として接触させる場合について説明する。シリル化処理に用いるシリカ源は蒸気圧を持つものであれば特に制限されない。Si原子を含むSi化合物を気体状にして、条件によっては水蒸気とともにゼオライト膜複合体のゼオライト膜部分に供給し、反応させる。これによりゼオライト膜表面にシリカ層が形成される。その効果は先述のシリカ源を液体として接触させる場合同様である。
この処理に用いるSi原子を有するSi化合物としては、気体状の原料の気化前の液体原料として、例えば、メチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、1,1,3,3-テトラメトキシ-1,3-ジメチルプロパンジシロキサンなどのアルキルアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサンを有する有機ケイ素化合物、ヘキサメチルジシラザンのようなシラザンを有する有機ケイ素化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのシリケート、メチルシリケートオリゴマー、エチルシリケートオリゴマーなどのシリケートオリゴマーなどを用いることができる。
これらの中で、反応性の面でシリケートまたはシリケートオリゴマーが好ましく、テトラエトキシシラン、メチルシリケートオリゴマーが特に好ましい。さらに、メチルシリケートオリゴマーが好ましく、ポリメトキシシロキサンが最も好ましい。
これらのSi化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて使用してもよい。
Si化合物を気体状にする方法は加熱によるSi化合物液からの気化でもよく、またSi化合物液を容器に入れ窒素やヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトンなどの運搬のための不活性な気体をバブリングさせて発生した気体でもよい。
処理の方法としては、ゼオライト膜複合体に原料気体を供給して反応させることができれば特に制限されない。例えば、ゼオライト膜複合体をSi化合物液と水とともに密閉式反応器に封入し、加熱して、密閉式反応容器で発生するSi化合物からの気化による気体と、水から高温により発生した水蒸気をゼオライト膜複合体上で反応させる方法がある。密閉された反応容器は特に限定されず、ゼオライト膜複合体の形状、寸法を収納できる容器であればよい。例えば、テフロン(登録商標)内筒容器をもったステンレス製のオートクレーブが使用できる。内筒容器をもったステンレス製オートクレーブを所望の温度の恒温槽内に設置すれば、その温度とその温度における水蒸気とSi原料の供給源から発生した気体の飽和蒸気圧が実現され、容器内にSi原料から発生した気体と水蒸気の飽和蒸気が生成される。水蒸気とSi原料の供給源は密閉された反応容器に入れば形状などは限定されない。水や液状Si原料をそれぞれ小さな器に入れてもよいし、多孔材料に含浸させてもよい。
処理温度は、通常20℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。温度が上記下限値以上であると、Si化合物とゼオライト膜およびSi化合物間で行われる脱水縮合反応、加水分解反応の進行が十分となり、Si化合物による修飾処理が十分に行われ、ゼオライト膜の親水性が十分に向上する。一方、温度が上記上限値以下であると、ゼオライト膜の反応が進行し過ぎることがなく、透過抵抗が低くなり、透過性能が高い膜試料が得られる。
なお、本発明の製造方法においては、全工程が200℃以下で行われることが好ましい。
処理時間は、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上であり、通常24時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは5時間以下である。処理時間が上記下限値以上であると、ゼオライト膜の反応が十分進行し、十分な効果が得られる。一方、処理時間が上記上限値以下であると、ゼオライト膜の反応が進行し過ぎることがなく、透過抵抗が低くなり、透過性能が高い膜試料が得られる。
かくして製造されるゼオライト膜複合体は、上記のとおり優れた特性をもつものであり、本発明の分離または濃縮方法における膜分離手段として好適に用いることができる。
(少なくとも水素および水蒸気を含む気体混合物)
本発明の水素の分離または濃縮方法において、分離または濃縮の対象となる気体混合物は、少なくとも、水素および水蒸気を含む。
本発明の水素の分離または濃縮方法において、気体混合物中の水蒸気分圧は、0.6kPa以上12.4kPa以下であることが好ましい。本発明者らが検討したところによると、気体混合物中の含水量がこのように高い場合、該水が分離膜であるゼオライトに吸着してしまい、水素のパーミエンスが阻害されることが分かった。本発明はこのような問題を解決するものである。
気体混合物中の水蒸気分圧は、より好ましくは、1.2kPa以上7.4kPa以下である。
気体混合物はメタンを含むガスを水蒸気改質したガスから過剰の水蒸気を除去したものであることが好ましい。先述のように天然ガスを原料とした水素製造の際に利用可能であるが、他にもコークス炉ガス(COGガス)を原料とすることもできる。
(改質工程)
コークス炉ガスは、石炭をコークス炉で乾留したときに得られるガスであり、その主要な成分は水素、メタン、一酸化炭素、炭化水素(炭素数2以上の炭化水素成分を含む)等である。コークス炉ガスは水素を多く含むことから、水素原料として好ましいものであるが、炭素数2以上の炭化水素成分を含むコークス炉ガスを、分離膜であるゼオライト膜に透過させると、炭素数2以上の炭化水素成分がゼオライト膜の閉塞をもたらす可能性がある。
このため、本発明の水素の分離または濃縮方法は、気体混合物の前処理工程として、炭素数2以上の炭化水素成分が分解される程度の、天然ガスの水蒸気改質よりは低温での水蒸気改質工程を含むことが好ましい。該水蒸気改質工程においては、炭素数2以上の炭化水素成分が分解され、水素、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素の平衡状態となる。この平衡状態は温度が高い程水素の生成には有利であるが、この平衡状態における水素の生成は吸熱反応であり、使用する熱量が多く必要となる。この場合、改質後の気体混合物には、上記したように、水蒸気が多量に含まれている。
コークス炉ガスの水蒸気改質工程は、600℃以下の温度で行われることが好ましい。水蒸気改質工程を600℃以下とすることで、使用する熱量を抑えつつ、炭素数2以上の炭化水素成分を効率よく分解することができる。なお、温度の下限としては、400℃以上とすることが好ましい。
(脱水工程)
本発明の水素の分離または濃縮方法は、上記した改質工程の後に、気体混合物の脱水工程をさらに含むことが好ましい。上記した改質工程における水蒸気改質を経た後、気体混合物には多量の水分が含まれている。脱水工程では、気体混合物を膜分離工程に供する前に、気体混合物中の水分が、ある程度まで除去される。
例えば、高圧ガス設備においては、冷却器の設置は制限されている。よって、脱水工程は、室温にて行う必要が生じる。このような場合、十分な脱水を行うことができず、脱水後であっても、気体混合物中には、上記した所定の水蒸気分圧の水蒸気が残存している。本発明の水素の分離または濃縮方法は、このような場合であっても、水素のパーミエンスを低下させずに、水素の分離または濃縮を行うことが可能となる。
(膜分離工程)
本発明の水素の分離または濃縮方法では、上記したゼオライト膜に、複数の気体成分からなる気体混合物を接触させ、該気体混合物から、水素を透過して分離・濃縮する。本発明におけるゼオライト膜の分離機能の一つは、分子ふるいとしての分離であり、用いるゼオライトの有効細孔径以上の大きさを有する気体分子とそれ以下の気体分子とを好適に分離することができる。
従って、本発明における透過性の高い気体成分とは、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト結晶相の細孔を通過しやすい気体分子からなる気体成分であり、分子径が概ね0.38nm程度より小さい気体分子からなる気体成分が好ましい。
ゼオライトの有効細孔径は導入する金属種やイオン交換、酸処理、シリル化処理などによって制御することが可能である。有効細孔径を制御することによって、分離性能を向上させることも可能である。
ゼオライト骨格に導入する金属種の原子径によって、細孔径はわずかに影響を受ける。ケイ素よりも原子径が小さな金属、具体的には、例えばホウ素(B)等を導入した場合には細孔径は小さくなり、ケイ素よりも大きな原子径の金属、具体的には、例えばスズ(Sn)等を導入した場合には細孔径は大きくなる。また、酸処理によって、導入されている金属を骨格から脱離することによって、細孔径が影響される場合がある。
イオン交換により、イオン半径の大きな1価のイオンで交換した場合には、有効細孔径は小さくなる方向となり、一方イオン半径の小さな1価のイオンで交換した場合には有効細孔径は、CHA構造がもつ細孔径に近い値となる。またカルシウムのような2価のイオンの場合にも交換サイトの位置によっては、有効細孔径が、CHA構造がもつ細孔径に近い値となる。
シリル化処理によっても、ゼオライトの有効細孔径を小さくすることが可能である。外表面の末端シラノールをシリル化し、さらに、シリル化層を積層することによって、ゼオライトの外表面に面した細孔の有効細孔径は小さくなる。
また、本発明のゼオライト膜複合体のもうひとつの分離機能は、ゼオライトの表面物性の制御により気体分子のゼオライト膜への吸着性を制御することである。すなわち、ゼオライトの極性を制御することによりゼオライトへの吸着性の大きな分子を透過させやすくすることもできる。
ゼオライト骨格のSiをAlで置換することにより極性を大きくすることが可能であり、これにより、極性の大きい気体分子を積極的にゼオライト細孔に吸着、透過させることができる。また、Alの置換量が減少すると極性の小さいゼオライト膜となり、極性の小さい気体分子を透過させるに有利となる。また、Ga、Fe、B、Ti、Zr、Sn、ZnをAl元素源以外に他の元素源にいれて、極性を制御することも可能である。
このほか、イオン交換によって、分子の吸着性能や、ゼオライトの細孔径を制御し、透過性能をコントロールすることもできる。
本発明においては、ゼオライト膜に供する気体混合物の温度を、80℃以上200℃以下とする必要がある。下限は好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上であり、上限は好ましくは180℃以下、より好ましくは140℃以下である。このように、気体混合物の温度を設定することで、気体混合物が所定の水蒸気分圧にて水蒸気を含む場合であっても、所定の水素のパーミエンスを確保することができる。
供給ガスの圧力は、分離対象のガスが高圧であればそのままの圧力でもよく、適宜圧力を減圧調整して所望の圧力にして用いても良い。分離対象のガスが、分離に用いる圧力より低い場合は、圧縮機などで増圧して用いることができる。
供給ガスの圧力は特に制限されないが、通常大気圧若しくは大気圧より大きく、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.15MPa以上、さらに好ましくは2MPa以上である。また上限値は、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは6MPa以下である。
供給側の水素ガスと透過側の水素ガスの差圧は特に制限されないが、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは8MPa以下、さらに好ましくは6MPa以下である。また、通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.02MPa以上である。
ここで、差圧とは、当該ガスの供給側の分圧と透過側の分圧の差をいう。また、圧力[Pa]は、特に断りのない限り、絶対圧を指す。
透過側の圧力は特に制限されないが、通常10MPa以下、好ましくは5MPa以下、より好ましくは1MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。下限値は特に制限なく、0MPa以上であればよい。0MPaとした時に、透過性の低いガス中の透過性の大きい気体の濃度を最も低い状態となるまで分離することができる。透過側ガスを高い圧力のまま使用する用途があれば、透過側圧力は高く設定すればよい。
供給ガスの流速は、透過するガスの減少を補うことが可能である程度の流速で、また供給ガスにおいて透過性の小さなガスの膜のごく近傍における濃度とガス全体における濃度が一致するように、ガスを混合できるだけの流速であればよく、分離ユニットの管径、膜の分離性能にもよるが、通常0.5mm/sec以上、好ましくは1mm/sec以上であり、上限は特に制限なく、通常2m/sec以下、好ましくは1m/sec以下である。
本発明の気体混合物の分離または濃縮方法において、スイープガスを用いてもよい。スイープガスを用いた方法とは、透過側に供給ガスとは異なる種類のガスを流し、膜を透過したガスを回収するものである。
スイープガスの圧力は、通常大気圧であるが特に制限はなく、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下であり、下限は、好ましくは0.09MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上である。場合によっては、減圧にして用いても良い。
スイープガスの流速は、特に制限はないが、透過するガスを十分置換できればよく、通常0.5mm/sec以上、好ましくは1mm/sec以上であり、上限は特に制限なく、通常1m/sec以下、好ましくは0.5m/sec以下である。
ガス分離に用いる装置は、特に限定されないが、通常はモジュールにして用いる。膜モジュールは、例えば、図3及び図10に模式的に示したような装置でもよいし、例えば「ガス分離・精製技術」(株)東レリサーチセンター2007年発行22頁等に例示されている膜モジュールを用いてもよい。
ガスの膜分離を行う際には膜を多段にして用いてもよい。すなわち、膜モジュールに分離を行うガスを供給して、膜を透過しなかった非透過側のガスをさらに別の膜モジュールに供給する、あるいは、透過したガスを別の膜モジュールに供給してもよい。前者の方法では、非透過側の透過性の低い成分の濃度をさらに上げることなどができ、後者の方法では透過したガス中の透過性の高い成分の濃度をさらに上げることなどができる。
多段の膜で分離する場合には、後段の膜にガスを供給する際に、必要に応じてガス圧力を昇圧器などで調整してもよい。
また多段で使用する場合には、各段に性能が異なる膜を設置してもよい。通常、膜の性能として、透過性能が高い膜では分離性能が低く、一方、分離性能が高い膜では透過性能が低い傾向がある。このため、分離あるいは濃縮したい気体成分が所定の濃度になるまで処理する際に、透過性が高い膜では、必要膜面積は小さくなる一方、非透過側に濃縮したい透過性の低い成分が透過側へ透過しやすい傾向があり、分離性能が高い膜では、非透過側に濃縮したい透過性の低い成分の透過側へ透過は起こりにくいが、必要膜面積が大きくなる傾向がある。1種類の膜による分離では、必要膜面積と濃縮目的ガスの透過量の関係は制御しにくいが、異なる性能の膜を使用することで、制御が容易になる。膜コストと分離・回収するガスの価格によって、最適な膜面積と濃縮目的ガスの透過量の関係になるよう膜を設置し、全体としてのメリットを最大化できる。
本発明における、ゼオライト膜複合体は、耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性に優れかつ、高い透過性能、分離性能を発揮し、耐久性に優れた性能を持つ。
ここでいう高い透過性能とは、十分な処理量を示すが、本発明の水素の分離または濃縮方法では、分離対象の気体混合物が所定の水蒸気分圧の水蒸気を含んでいた場合であっても、所定以上のパーミエンス(Permeance)[mol・(m・s・Pa)-1]を示すことをいう。
例えば、水素を、温度100℃、差圧0.098MPaで透過させた場合、パーミエンスは、好ましくは1×10-8以上、より好ましくは3×10-8以上、さらに好ましくは5×10-8以上、特に好ましくは7×10-8以上、最も好ましくは1×10-7以上である。上限は特に限定されず、通常3×10-4以下である。
また、例えば、メタンを同条件にて透過させた場合は、パーミエンス[mol・(m・s・Pa)-1]は、好ましくは3×10-7以下、好ましくは3×10-8以下、より好ましくは1×10-8以下であり、理想的にはパーミエンスは0であるが、実用上10-9~10-14程度以上のオーダーとなる場合がある。
ここで、パーミエンス(Permeance、「透過度」ともいう)とは、透過する物質量を、膜面積と時間と透過する物質の供給側と透過側の分圧差の積で割ったものであり、単位は、[mol・(m・s・Pa)-1]であり、実施例の項において述べる方法により算出される値である。
また、ゼオライト膜の選択性は理想分離係数、分離係数により表される。理想分離係数、分離係数は膜分離で一般的に用いられる選択性を表す指標であり、理想分離係数は実施例の項において述べる方法により、分離係数は以下に述べる方法により算出される値である。
また混合ガスの分離において、分離係数を求める場合は下記式(2)により算出する。
分離係数=(Q’1/Q’2)/(P’1/P’2) (2)
〔式(2)中、Q’1およびQ’2は、それぞれ、透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの透過量[mol・(m・s)-1]を示し、P’1およびP’2は、それぞれ、供給ガス中の透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの分圧[Pa]を示す。〕
分離係数は、また下記式(3)のように算出できる。
分離係数=(C’1/C’2)/(C1/C2) (3)
〔式(3)中、C’1およびC’2は、それぞれ、透過ガス中の透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの濃度[mol%]を示し、C1およびC2は、それぞれ、供給ガス中透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの濃度[mol%]を示す。〕
理想分離係数は、例えば、二酸化炭素とメタンを温度50℃、差圧0.1MPaで透過させた場合、通常10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上、特に好ましくは50以上である。理想分離係数の上限は完全に二酸化炭素しか透過しない場合でありその場合は無限大となるが、実用上、分離係数は10万程度以下となる場合がある。
分離係数は、例えば、二酸化炭素とメタンの体積比1:1の混合ガスを、温度100℃、差圧0.098MPaで透過させた場合、通常10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上、特に好ましくは50以上である。分離係数の上限は完全に二酸化炭素しか透過しない場合でありその場合は無限大となるが、実用上、分離係数は10万程度以下となる場合がある。
本発明のゼオライト膜複合体は、上記のとおり、耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性に優れかつ、高い透過性能、分離性能を発揮し、耐久性に優れるものであり、例えば次のようなガス分離技術として特に好適に用いることができる。
水素分離技術としては、石油精製工業における水素回収、化学工業の各種反応プロセスにおける水素回収・精製(水素、一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素等の混合物)、燃料電池用の高純度水素の製造などがある。燃料電池用の水素製造は、メタンの水蒸気改質反応により得られ、H、CO、CH、HOの混合ガスから水素の分離が必要とされている。
中でも、本発明の方法は、天然ガスやコークス炉ガス(COG)を水蒸気改質して、所定量の水蒸気が含まれているガス、特に、高圧ガス設備において使用する観点から、冷却器を用いた脱水機を設置できない状態における、所定の水蒸気が含まれてた状態の気体混合物から、水素を分離・濃縮する用途において、特に、好適に適用することができる。
<水素の分離または濃縮装置>
(膜分離器)
本発明の水素の分離または濃縮装置は、必須構成要素として、膜分離器を備えている。膜分離器としては、例えば、図3で示したような装置を挙げることができる。
(改質器)
本発明の水素の分離または濃縮装置は、好ましくは、さらに改質器を備えている。改質器は、原料ガスを、改質炉においてスチームと反応させて、水素を生成する、さらには炭素数2以上の炭化水素成分を分解する装置である。改質触媒としては、たとえば、Ni触媒、Ru触媒等が使用される。
(脱水器)
本発明の水素の分離または濃縮装置は、好ましくは、さらに脱水器を備えている。脱水機としては、公知の気液分離器を使用可能である。上記したように、高圧ガス設備においては、冷却器を設置できないという制限がある。このため、常温にて脱水をする必要があり、脱水機としては、冷却機能を備えていない脱水機が、好ましくは使用される。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
また、以下の実験例において、ゼオライト膜の物性及び分離性能は、次の方法で測定した。
(1)X線回折(XRD)
XRD測定は以下の条件に基づき行った。
・装置名:オランダPANalytical社製X’PertPro MPD
・光学系仕様 入射側:封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit (0.04rad)
Divergence Slit (Valiable Slit)
試料台:XYZステージ
受光側:半導体アレイ検出器(X’ Celerator)
Ni-filter
SollerSlit (0.04rad)
ゴニオメーター半径:240mm
・測定条件 X線出力(CuKα):45kV、40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0-70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°
計数時間:99.7sec
自動可変スリット(Automatic-DS):1mm(照射幅)
横発散マスク:10mm(照射幅)
なお、X線は円筒管の軸方向に対して垂直な方向に照射した。またX線は、できるだけノイズ等がはいらないように、試料台においた円筒管状の膜複合体と、試料台表面に平行な面とが接する2つのラインのうち、試料台表面に接するラインではなく、試料台表面より上部にあるもう一方のライン上に主にあたるようにした。
また、照射幅を自動可変スリットによって1mmに固定して測定し、MaterialsData, Inc.のXRD解析ソフトJADE 7.5.2(日本語版)を用いて可変スリット→固定スリット変換を行ってXRDパターンを得た。
(2)SEM-EDX
・装置名:SEM:FE-SEM Hitachi:S-4800
EDX:EDAX Genesis
・加速電圧:10kV
倍率5000倍での視野全面(25μm×18μm)を走査し、X線定量分析を行った。
(3)SEM
SEM測定は以下の条件に基づき行った。
・装置名:SEM:FE-SEM Hitachi:S-4100
・加速電圧:10kV
(4)空気透過量
大気圧下で、ゼオライト膜複合体の一端を封止し、他端を、気密性を保持した状態で5kPaの真空ラインに接続して、真空ラインとゼオライト膜複合体の間に設置したマスフローメーターでゼオライト膜複合体を透過した空気の流量を測定し、空気透過量[L/(m・h)]とした。マスフローメーターとしてはKOFLOC社製8300、Nガス用、最大流量500ml/min(20℃、1気圧換算)を用いた。KOFLOC社製8300においてマスフローメーターの表示が10ml/min(20℃、1気圧換算)以下であるときはLintec社製MM-2100M、Airガス用、最大流量20ml/min(0℃、1気圧換算)を用いて測定した。
(5)混合ガス透過試験
混合ガス透過試験は、図3に模式的に示す装置を用いて、以下のとおり行った。
図3において、円筒形のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料ガスの温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒形のゼオライト膜複合体1の一端は、円柱状のエンドピン3で密封されている。他端は接続部4で接続され、接続部4の他端は、耐圧容器2と接続されている。円筒形のゼオライト膜複合体1の内側と、透過ガス8を排出する配管(透過ガス排出用配管)11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。耐圧容器2に通ずるいずれかの箇所には、試料ガスの供給側の圧力を測る圧力計5が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
図3の装置において、混合ガス透過試験を行う場合は、試料ガス(供給ガス7)を、一定の圧力で耐圧容器2とゼオライト膜複合体1の間に供給し、ゼオライト膜複合体1を透過した透過ガス8を、配管11に接続されている流量計(図示せず)にて測定し、またガスクロマトグラフィー等(図示せず)で組成分析する。
なお、図7に模式的に示す装置においても、次のとおり単成分ガス透過試験を行うことができる。
図7において、円筒形のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で、恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料ガスの温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒形のゼオライト膜複合体1の一端は、円形のエンドピン3で密封されている。他端は、接続部4で接続され、接続部4の他端は耐圧容器2と接続されている。円筒形のゼオライト膜複合体1の内側と透過ガス8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。また、ゼオライト膜複合体1には、配管11を経由して、スイープガス9を供給する配管(スイープガス導入用配管)12が挿入されている。さらに、耐圧容器2に通ずるいずれかの箇所には、試料ガスの供給側の圧力を測る圧力計5、供給側の圧力を調整する背圧弁6が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
図7の装置において、単成分ガス透過試験を行う場合は、試料ガス(供給ガス7)を、一定の流量で耐圧容器2とゼオライト膜複合体1の間に供給し、背圧弁6により供給側の圧力を一定とする。配管11から排出される排出ガス10の流量を測定する。
さらに具体的には、水分や空気などの成分を除去するため、測定温度以上での乾燥、及び、排気若しくは使用する供給ガスによるパージ処理をした後、試料温度及びゼオライト膜複合体1の供給ガス7側と透過ガス8側の差圧を一定として、透過ガス流量が安定したのちに、ゼオライト膜複合体1を透過した試料ガス(透過ガス8)の流量を測定し、ガスのパーミエンス[mol・(m・s・Pa)-1]を算出する。パーミエンスを計算する際の圧力は、供給ガスの供給側と透過側の圧力差(差圧)を用いる。
上記測定結果に基づき、理想分離係数αを下記式(1)により算出する。
α=(Q1/Q2)/(P1/P2) (1)
〔式(1)中、Q1およびQ2は、それぞれ、透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの透過量[mol・(m・s)-1]を示し、P1およびP2は、それぞれ、透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの供給側と透過側の圧力差[Pa]を示す。
これは、各ガスのパーミエンスの比率を示しており、従って、各ガスのパーミエンスを算出し、その比率から求めることができる。
[実験例1(ゼオライト膜(シリル化処理なし))]
特開2017-64716の実施例1と同様の操作で、無機多孔質支持体上にCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを直接水熱合成することにより無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。
生成したゼオライト膜のXRDパターンを図1に示す。図中の「*」は支持体由来のピークである。XRD測定からCHA型ゼオライトが生成していることがわかった。また(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=3.0、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=0.47であった。
粉末のCHA型ゼオライト(米国特許第4544538号明細書においてSSZ-13と一般に呼称されるゼオライト、以下これを「SSZ-13」と称する。)のXRDパターンを図2に示す。(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=0.91、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=0.32であった。
粉末のCHA型ゼオライトに比べて、実施例1で得られたゼオライト膜は(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)は同程度にあるのに対して(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)は高く、rhombohedral settingにおける(1,0,0)面への配向が推測された。
また、SEM-EDXにより測定した、ゼオライト膜のSiO/Alモル比は66であった。
上記で作製したCHA型ゼオライト膜複合体を用いて、図3に示した装置を用いて混合ガス透過試験を行った。前処理として、ゼオライト膜複合体を、120℃で、供給ガス7としてCOを、耐圧容器2とゼオライト膜複合体1との円筒の間に導入して、流量を0.3L/min、圧力を約0.15MPaに保ち、ゼオライト膜複合体1の円筒の内側を0.10MPa(大気圧)として、約30分間乾燥した。評価したガスは、水素/メタン混合ガス(水蒸気なし)、および、水素/メタン混合ガス(水蒸気あり)である。水素流量、メタン流量はいずれも0.5L/minとし、水蒸気は、水を入れた耐圧容器を用いて評価ガスを室温でバブリングすることにより供給した。0.4MPaの供給ガス中の水蒸気分圧は3.3kPaであった。水蒸気分圧は、露点計(VAISALA社製ハンディタイプ露点計DM70)で供給ガスの大気圧での露点を測定し、その露点での飽和蒸気圧を求め、0.4MPaでの圧力に換算することで求めた。
その後、供給側の圧力を0.4MPaとし、供給ガスを水素/メタン混合ガス(水蒸気なし)に変更し、透過ガスの流量を測定、組成を分析した。このとき、ゼオライト膜複合体1の供給ガス7側と透過ガス8側の差圧は、0.3MPaであった。次いで供給ガスを水素/メタン混合ガス(水蒸気あり)として同様の評価を行った。その後、再度膜を乾燥して、、温度を50℃とし、温度が安定した後に同様の評価を行った。50℃での評価後に、膜の乾燥を実施して、温度を80℃、100℃、120℃、140℃、180℃に変更して、同様にして測定を行った。
表1の左欄に、水蒸気なし(dry)の混合ガスを用いた場合における、各温度での、水素、および、メタンの各パーミエンス、ならびに、理想分離係数(H/CH)を示す。
また、表1の右欄に、水蒸気あり(wet)の混合ガスを用いた場合における、各温度での、水素、および、メタン、水蒸気の各パーミエンス、ならびに、理想分離係数(H/CH)を示す。
また、図4(a)、(b)、図5(a)、及び(b)に、各温度での水素またはメタンのパーミエンスのグラフを示す。これより、水蒸気なし(dry)では、温度の上昇とともに、水素のパーミエンスは減少する傾向がみられたが、水蒸気あり(wet)では、温度の上昇と共に、水素のパーミエンスは増加する傾向がみられ、80℃~180℃の間で、高いパーミエンスを維持できることが示された。
[実験例2(ゼオライト膜(シリル化処理あり))]
実験例1と同じ条件で無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。このゼオライト膜複合体に室温で水蒸気を飽和した空気を供給し、ゼオライト膜複合体に水蒸気を吸着させた。次いで、このゼオライト膜複合体を、内容積200mlのテフロン(登録商標)製内筒容器に直立させ設置した。この内筒容器には、予めシリカ原料となるメチルシリケートオリゴマーであるポリメトキシシロキサン(MKC(登録商標)シリケート、MS-56、三菱ケミカル社製)を0.3g含侵させた多孔管状体が直立して設置されている。この内筒容器をオートクレーブに封入して、恒温槽において90℃、4時間保持した。その後、放冷した後で、ゼオライト膜複合体を取出し、恒温槽で130℃で3時間加熱処理した。以下、この処理を「シリル化処理1」という。
シリル化処理1を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、実験例1と同様に、水素/メタン混合ガス(水蒸気なし)、および、水素/メタン混合ガス(水蒸気あり)について、50℃、100℃、120℃、および、140℃における各パーミエンスを測定した。水蒸気ありの場合の水蒸気分圧は3.0kPaであった。結果を表2、図6(a)、(b)、図7(a)、及び(b)に示す。
これより、水蒸気なし(dry)では、水素のパーミエンスに対し温度の影響は比較的小さいが、水蒸気あり(wet)では、温度の上昇と共に、水素のパーミエンスは増加する傾向がみられ、100℃~140℃の間で、高い水素のパーミエンスと高い水素/メタン選択性を維持できることが示された。
実験例2について、シリル化処理により、水蒸気ありの場合での水素のパーミエンスの向上が、温度を上げることで顕著に見られた。このことから、温度を上げることが水素のパーミエンス向上に効果的であることがわかる。
[実験例3(ゼオライト膜(シリル化処理あり))]
実験例1と同じ条件で無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。このゼオライト膜複合体にシリカ原料としてメチルシリケートオリゴマーであるポリメトキシシロキサン(MKC(登録商標)シリケート、MS-51、三菱ケミカル社製)を用いた以外は実験例2と同様にシリル化処理を行った。以下、この処理を「シリル化処理2」という。
シリル化処理2を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、実験例1と同様に、水素/メタン混合ガス(水蒸気なし)、および、水素/メタン混合ガス(水蒸気あり)について、100℃、120℃、140℃、160℃、および、180℃における各パーミエンスを測定した。水蒸気ありの場合の水蒸気分圧は3.0kPaであった。結果を表3、図8(a)、(b)、図9(a)、及び(b)に示す。
これより、水蒸気なし(dry)では、水素のパーミエンスに対し温度の影響は比較的小さいが、水蒸気あり(wet)では、温度の上昇と共に、水素のパーミエンスは増加する傾向がみられ、100℃~180℃の間で、高い水素のパーミエンスと高い水素/メタン選択性を維持できることが示された。

Claims (12)

  1. ゼオライト膜を用いて、少なくとも水素および水蒸気を含む気体混合物から、水素を透過して分離する方法であって、
    前記ゼオライト膜を透過する際の前記気体混合物の温度を80℃以上200℃以下とする、
    水素の分離または濃縮方法。
  2. 前記気体混合物の水蒸気分圧が0.6kPa以上12.4kPa以下とする、請求項1に記載の水素の分離または濃縮方法。
  3. 前記ゼオライト膜が、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含み、膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=17.9°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の0.5倍未満の値を有するものであり、かつ2θ=9.6°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の2.0倍以上4.0倍未満の値を有するものである、請求項1または2に記載の水素の分離または濃縮方法。
  4. 前記ゼオライトのSiO/Alが、20以上500以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法。
  5. 前記ゼオライト膜が、シリル化処理されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法。
  6. 前記気体混合物が、炭化水素成分を含む気体を水蒸気改質したものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法。
  7. 前記気体混合物が、水素とメタンと炭素数2以上の炭化水素成分を含む気体を水蒸気改質したものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法。
  8. 前記水蒸気改質が、600℃以下の温度で行われる、請求項6または7に記載の水素の分離または濃縮方法。
  9. 前記水蒸気改質の後に、前記気体混合物の脱水工程をさらに含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法。
  10. 前記ゼオライト膜を備えた膜分離器を備え、請求項1~9のいずれか1項に記載の水素の分離または濃縮方法を行う、水素の分離または濃縮装置。
  11. さらに、改質器を備える、請求項10に記載の水素の分離または濃縮装置。
  12. さらに、脱水機を備える、請求項10または11に記載の水素の分離または濃縮装置。
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