JP2023147709A - 樹脂封止シートおよび太陽電池モジュール - Google Patents

樹脂封止シートおよび太陽電池モジュール Download PDF

Info

Publication number
JP2023147709A
JP2023147709A JP2022055380A JP2022055380A JP2023147709A JP 2023147709 A JP2023147709 A JP 2023147709A JP 2022055380 A JP2022055380 A JP 2022055380A JP 2022055380 A JP2022055380 A JP 2022055380A JP 2023147709 A JP2023147709 A JP 2023147709A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ethylene
resin sealing
solar cell
sealing sheet
sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022055380A
Other languages
English (en)
Inventor
達弥 坂井
Tatsuya Sakai
公憲 野田
Kiminori Noda
聖人 土屋
Kiyoto TSUCHIYA
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsui Chemicals Inc filed Critical Mitsui Chemicals Inc
Priority to JP2022055380A priority Critical patent/JP2023147709A/ja
Publication of JP2023147709A publication Critical patent/JP2023147709A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Sealing Material Composition (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
  • Photovoltaic Devices (AREA)

Abstract

【課題】PID耐性に優れた太陽電池モジュールを提供すること。【解決手段】内層と、前記内層の両面に位置する表面層とを含む3層以上で構成され、前記表面層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、及びエチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種類のエチレン系樹脂を含み、前記内層は、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含み、JIS K6911に準拠し、温度60℃、印加電圧1000Vで測定される樹脂封止シートの体積固有抵抗値が、1.0×1015~1.0×1018Ω・cmである樹脂封止シート。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂封止シートおよび該樹脂封止シートを用いた太陽電池モジュールに関する。
地球環境問題、エネルギー問題等が深刻さを増す中、クリーンかつ枯渇のおそれが無いエネルギー生成手段として太陽電池が注目されている。太陽電池を建物の屋根部分等の屋外で使用する場合、太陽電池モジュールの形で使用することが一般的である。
上記の太陽電池モジュールは、一般に、以下の手順によって製造される。まず、多結晶シリコン、単結晶形シリコン等により形成される結晶型太陽電池素子(以下「発電素子」あるいは「セル」と表記する場合もある。)、あるいはアモルファスシリコンや結晶シリコン等を、ガラス等の基板の上に数μmの非常に薄い膜を形成して得られる薄膜型太陽電池素子等を製造する。
次に、結晶型太陽電池モジュールを得るには、太陽電池モジュール用保護シート(表面側透明保護部材)/樹脂封止シート/結晶型太陽電池素子/樹脂封止シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面側保護部材)の順に積層する。一方、薄膜型太陽電池モジュールを得るには、薄膜型太陽電池素子/樹脂封止シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面側保護部材)の順に積層する。その後、これらを真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等を利用することにより、太陽電池モジュールが製造される。このようにして製造される太陽電池モジュールは、耐候性を有し、建物の屋根部分等の屋外での使用にも適したものとなっている。
樹脂封止シートとして、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)膜は、透明性、柔軟性、および接着性等に優れていることから、広く用いられている。例えば、特許文献1では、架橋剤およびトリメリット酸エステルを含むEVA組成物からなる、接着性と製膜性の双方に優れた封止膜が開示されている。しかしながら、EVA組成物を樹脂封止シートの構成材料として使用する場合、EVAが分解して発生する酢酸ガス等の成分が、太陽電池素子に影響を与える可能性が懸念されていた。
これに対して、ポリオレフィン系の材料、特にエチレン系材料も絶縁性に優れることから、封止膜材料として用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、剛性と架橋特性のバランスと押出成形性に優れるエチレン・α-オレフィン共重合体を用いた太陽電池封止材用樹脂組成物も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2010-53298号公報 特開2006-210906号公報 特開2010-258439号公報
しかしながら、本発明者らの検討に拠れば、ポリオレフィン系組成物は、透明性、耐ブロッキング性、および押出加工時の成形性といった各種特性を同時に満たすのが困難であった。また、特許文献2に記載されたポリオレフィン系共重合体は、架橋特性が不十分である、あるいは架橋に伴って生ずる歪みが大きくなる等の問題があるため、ガラス基板の変形や割れを生じる可能性がある。さらに、特許文献3に記載されたエチレン・α-オレフィン共重合体からなる太陽電池封止材用樹脂組成物は、電気特性と架橋特性のバランスが不十分である。
また、近年の太陽光発電の普及に伴い、メガソーラー等発電システムの大規模化が進んでおり、伝送損失を下げる等の目的で、システム電圧の高電圧化の動きもある。システム電圧が上昇することにより、太陽電池モジュールにおいては、フレームとセルの間の電位差が大きくなることとなる。すなわち、太陽電池モジュールのフレームは一般に接地されており、太陽電池アレイのシステム電圧が600~1000Vとなると、最も電圧が高くなるモジュールにおいては、フレームとセル間の電位差がそのままシステム電圧の600~1000Vとなり、高電圧が印加された状態で日中の発電を維持することとなる。
また、ガラスは封止材に比較して電気抵抗が低く、フレームを介してガラスとセル間にも高電圧が発生することとなる。すなわち、日中発電している状況下において、直列接続されたモジュールはセルとモジュール間およびセルとガラス面との電位差が接地側から順次電位差が大きくなり、最も大きいところではほぼシステム電圧の高電圧の電位差が維持さることとなる。このような状態で用いられた太陽電池モジュールの中には、出力が大きく低下し、特性劣化が起こるPID(Potential Induced Degradation)現象が発生した結晶系発電素子を用いたモジュールの例も報告されている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題はPID耐性に優れた太陽電池モジュールを提供することである。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、JIS K6911に準拠して測定される体積固有抵抗が特定の範囲にあり、さらに、種々の材料物性を兼ね備えた樹脂封止シートを用いることにより、太陽電池モジュールのフレームとセル間に高電圧を印加した状態を維持しても太陽電池モジュールの出力低下を抑えることができ、PID現象の発生を大幅に抑制できる(PID耐性に優れる)ことを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、たとえば以下の[1]~[5]に関する。
[1] 内層と、前記内層の両面に位置する表面層とを含む3層以上で構成される樹脂封止シートであって、
前記表面層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、及びエチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種類のエチレン系樹脂を含み、
前記内層は、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含み、
JIS K6911に準拠し、温度60℃、印加電圧1000Vで測定される樹脂封止シートの体積固有抵抗値が、1.0×1015~1.0×1018Ω・cmである、
樹脂封止シート。
[2] 前記エチレン・α-オレフィン共重合体が、下記要件(a1)~(a4)を満たす、[1]に記載の樹脂封止シート:
(a1)エチレンに由来する構成単位を80~90mol%含有し、炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構成単位を10~20mol%含有する(ただし、エチレン由来の構成単位とα-オレフィン由来の構成単位との合計は100mol%である。);
(a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~50g/10分である;
(a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が、0.865~0.884g/cm3である;
(a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が、60~85である。
[3] JIS K6911に準拠し、温度60℃、印加電圧1000Vで測定される樹脂封止シートの体積固有抵抗値が、1.0×1016~1.0×1018Ω・cmである、[1]または[2]に記載の樹脂封止シート。
[4] 前記内層の厚さが、前記樹脂封止シートの全体の厚さに対し20%以上90%以下の範囲にある、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂封止シート。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の樹脂封止シートにより太陽電池素子が封止されてなる、太陽電池モジュール。
本発明によれば、JIS K6911に準拠して測定される体積固有抵抗が特定の範囲にある樹脂封止シートを用いれば、太陽電池に組み込んだ際に、得られる太陽電池モジュールのPID現象の発生を効果的に抑制できる。また、樹脂封止シートに特定のエチレン・α-オレフィン共重合体を用いることにより、該樹脂封止シートは透明性、柔軟性、接着性、耐熱性、外観、架橋特性、電気特性および成形性等の諸特性のバランスに優れる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、数値範囲の「~」はとくに断りがなければ、以上から以下を表す。
[樹脂封止シート]
本実施形態の樹脂封止シートは、内層と、前記内層の両面に位置する表面層とを含む3層以上で構成され、前記表面層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、及びエチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種類のエチレン系樹脂を含み、前記内層は、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含む。さらに、本実施形態の樹脂封止シートは、JIS K6911に準拠し、温度100℃、印加電圧1000Vで測定される体積固有抵抗値が、1.0×1015~1.0×1018Ω・cmである。
<体積固有抵抗値>
本実施形態の樹脂封止シートは、JIS K6911に準拠し、温度60℃、印加電圧1000Vで測定される体積固有抵抗値が、1.0×1015~1.0×1018Ω・cmであり、好ましくは5.0×1015~1.0×1018Ω・cm、より好ましくは1.0×1016~1.0×1018Ω・cmである。体積固有抵抗値が前記下限値以上であると、85℃、85%RHでの恒温恒湿試験において、1日程度の短期間におけるPID現象の発生を抑制することができる。体積固有抵抗値が前記上限値以下であると、シートに静電気が発生しにくくなるので、ゴミの吸着を防ぐことができ、太陽電池モジュール内にゴミが混入して、発電効率や長期信頼性の低下を招くことを抑制することができる。
なお、体積固有抵抗値が、1.0×1016Ω・cm以上であると、85℃、85%RHでの恒温恒湿試験において、PID現象の発生をさらに長期的に抑制できる傾向にあり、望ましい。
体積固有抵抗が大きい樹脂封止シートは、PID現象の発生を抑制するという特性を有する傾向にある。さらに、太陽光が照射される時間帯には、従来の太陽電池モジュールではモジュール温度が、例えば60℃以上になることがあるので、長期信頼性の観点から、従来報告されている常温(23℃)での体積固有抵抗より高温条件下での体積固有抵抗が求められており、温度60℃での体積固有抵抗が重要となる。
体積固有抵抗は、樹脂封止シートに成形した後、真空ラミネーター、熱プレス、架橋炉等で架橋および平坦なシートに加工された後に測定される。また、モジュール積層体中のシートは、他の層を除去して測定する。
<層構造>
本実施形態の樹脂封止シートは、表面層と当該表面層に隣接する内層を含む、3層以上の多層構造を有する。ここで、本実施形態の樹脂封止シートの、表面の層と裏面の層を形成する2層を「表面層」といい、それ以外の層を「内層」という。例えば、3層構造の樹脂封止シートの場合、表面層/内層/表面層の構造となる。すなわち、表面層と隣接する層は内層となる。
前記表面層の厚さは、樹脂封止シートの全体の厚さに対し40%以下であることが好ましく、10%以上35%以下であることがより好ましく、15%以上30%以下であることがさらに好ましい。表面層の厚さが樹脂封止シートの全体の厚さに対し40%以下であることにより、樹脂封止シートへの水蒸気透過度を小さく抑制できる傾向にある。表面層の厚さが樹脂封止シートの全体の厚さに対し10%以上であることにより、セル割れが起こりにくくなるという効果が得られる。
本実施形態の樹脂封止シートにおいて、表面層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、及びエチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含み、好ましくはエチレン-酢酸ビニル共重合体より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む。
当該表面層に含まれる樹脂中のエチレンモノマーの含有率は80質量%以上であり、82質量%以上がより好ましく、84質量%以上がさらに好ましい。エチレンモノマーの含有率が前記範囲内であることにより、水分透過性が低くなるとともに水分による樹脂封止シートの分解が抑えられ、結果として得られる樹脂封止シートが長期的に安定に出力供給できるという効果が得られる。なお、エチレンモノマーの含有率は、JIS K7192に準拠して測定することができる。
前記内層の厚さは、樹脂封止シートの全体の厚さに対し20%以上90%以下であることが好ましく、25%以上85%以下であることがより好ましく、30%以上80%以下であることがさらに好ましい。内層の厚さが樹脂封止シートの全体の厚さに対し90%以下であることにより、セル割れが起こりにくくなるという効果が得られる。内層の厚さが樹脂封止シートの全体の厚さに対し20%以上であることにより、樹脂封止シートへの水蒸気透過度を小さく抑制できる傾向にあり、また、体積固有抵抗を大きくできて、PID現象の発生を抑制できる傾向にもある。
(エチレン・α-オレフィン共重合体)
本実施形態の樹脂封止シートにおいて、内層は、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含む。
前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとを共重合することによって得られる。中でも好ましくは、炭素数3~10のα-オレフィンであり、より好ましいくは炭素数3~8のα-オレフィンである。前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、1種類単独で、または2種類以上であってもよい。
前記炭素数3~20のα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等を挙げることができる。中でも、入手の容易さからプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましい。前記共重合体は、炭素数3~20のα-オレフィンを1種類単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、エチレン・α-オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、柔軟性の観点からランダム共重合体が好ましい。
また、本実施形態の樹脂封止シートにおいて、前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、下記要件(a1)~(a4)を満たすことが好ましい。以下、下記要件(a1)~(a4)について説明する。
(a1)エチレンに由来する構成単位を80~90mol%含有し、炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構成単位を10~20mol%含有する(ただし、エチレン由来の構成単位とα-オレフィン由来の構成単位との合計は100mol%である。)。
(a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~50g/10分である。
(a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が、0.865~0.884g/cm3である。
(a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が、60~85である。
・要件(a1)
エチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる、エチレンに由来する構成単位(以下「エチレン単位」ともいう。)の含有割合は、好ましくは80~90mol%であり、より好ましくは80~88mol%、さらに好ましくは82~88mol%、特に好ましくは82~87mol%であり、エチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる、炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構成単位(以下「α-オレフィン単位」ともいう。)の割合は、好ましくは10~20mol%であり、より好ましくは12~20mol%、さらに好ましくは12~18mol%、特に好ましくは13~18mol%である(ただし、エチレン由来の構成単位とα-オレフィン由来の構成単位との合計は100mol%である。)。
エチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるα-オレフィン単位の含有割合が上記下限値以上であると、高い透明性が得られる。また、低温での押出成形を容易に行うことができ、例えば130℃以下での押出成形が可能である。このため、エチレン・α-オレフィン共重合体に有機過酸化物を練り込む場合においても、押出機内での架橋反応が進行することを抑制でき、樹脂封止シートにゲル状の異物が発生して、シートの外観が悪化するのを防ぐことができる。また、適度な柔軟性が得られるため、太陽電池モジュールのラミネート成形時に太陽電池素子の割れや、薄膜電極のカケ等の発生を防ぐことができる。
エチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるα-オレフィン単位の含有割合が上記上限値以下であると、エチレン・α-オレフィン共重合体の結晶化速度が適度になるため、押出機より押し出されたシートがベタつかず、冷却ロールでの剥離が容易であり、樹脂封止を効率的に得ることができる。また、シートにベタツキが発生しないのでブロッキングを防止でき、シートの繰り出し性が良好になる。また、耐熱性の低下を防ぐこともできる。
・要件(a2)
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるエチ
レン・α-オレフィン共重合体のメルトフローレ-ト(MFR)は、好ましくは0.1~50g/10分であり、より好ましくは1~50g/10分、さらに好ましくは2~40g/10分、特に好ましくは3~30g/10分、とりわけ好ましくは3~27g/10分、最も好ましくは3~25g/10分である。エチレン・α-オレフィン共重合体のMFRは、後述する重合反応の際の重合温度、重合圧力、並びに重合系内のエチレンおよびα-オレフィンのモノマー濃度と水素濃度のモル比率等を調整することにより、調整することができる。
MFRが0.1g/10分以上10g/10分未満であると、カレンダー成形によってシートを製造することができる。MFRが前記範囲内にあると、エチレン・α-オレフィン共重合体を含む樹脂組成物の流動性が低いため、シートを電池素子とラミネートする際にはみ出した溶融樹脂によるラミネート装置の汚れを防止できる点で好ましい。
押出成形によってシートを製造する場合、MFRが2g/10分以上、好ましくはMFRが10g/10分以上であると、エチレン・α-オレフィン共重合体を含む樹脂組成物の流動性が向上し、シート押出成形時の生産性を向上させることができる。
また、MFRが50g/10分以下であると、分子量が大きくなるため、チルロール等のロール面への付着を抑制できるため、剥離を不要とし、均一な厚みのシートに成形することができる。さらに、「コシ」がある樹脂組成物となるため、0.1mm以上の厚いシートを容易に成形することができる。また、太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋特性が向上するため、十分に架橋させて、耐熱性の低下を抑制することができる。さらに、MFRが27g/10分以下であると、シート成形時のドローダウンを抑制でき幅の広いシートを成形でき、また架橋特性および耐熱性がさらに向上し、最も良好な樹脂封止シートを得ることができる。
なお、後述する太陽電池モジュールのラミネート工程において樹脂組成物の架橋処理を行わない場合は、溶融押出工程において有機過酸化物の分解の影響が小さいため、MFRが0.1g/10分以上10g/10分未満、好ましくは0.5g/10分以上8.5g/10分未満の樹脂組成物を用い、押出成形によってシートを得ることもできる。樹脂組成物の有機過酸化物の含有量が0.15質量部以下である場合には、MFRが0.1g/10分以上10g/10分未満の樹脂組成物を用い、シラン変性処理、または微架橋処理を行いつつ170~250℃の成形温度で押出成形によってシートを製造することもできる。MFRがこの範囲にあるとシートを太陽電池素子とラミネートする際にはみ出した溶融樹脂によるラミネート装置の汚れを防止できる点で好ましい。
・要件(a3)
ASTM D1505に準拠して測定されるエチレン・α-オレフィン共重合体の密度は、好ましくは0.865~0.884g/cm3であり、より好ましくは0.866~0.883g/cm3、さらに好ましくは0.866~0.880g/cm3、特に好ましくは0.867~0.880g/cm3である。エチレン・α-オレフィン共重合体の密度は、エチレン単位の含有割合とα-オレフィン単位の含有割合とのバランスにより調整することができる。すなわち、エチレン単位の含有割合を高くすると結晶性が高くなり、密度の高いエチレン・α-オレフィン共重合体を得ることができる。一方、エチレン単位の含有割合を低くすると結晶性が低くなり、密度の低いエチレン・α-オレフィン共重合体を得ることができる。
エチレン・α-オレフィン共重合体の密度が上記上限値以下であると、結晶性が低くなり、透明性を高くすることができる。さらに、低温での押出成形が容易となり、例えば130℃以下で押出成形を行うことができる。このため、エチレン・α-オレフィン共重合体に有機過酸化物を練り込んでも、押出機内での架橋反応が進行するのを防ぎ、樹脂封止シートにゲル状の異物の発生を抑制し、シートの外観の悪化を抑制することができる。また、柔軟性が高いため、太陽電池モジュールのラミネート成形時に太陽電池素子であるセルの割れや薄膜電極のカケ等の発生を防ぐことができる。
一方、エチレン・α-オレフィン共重合体の密度が上記下限値以上であると、エチレン・α-オレフィン共重合体の結晶化速度を速くできるため、押出機より押し出されたシートがベタつきにくく、冷却ロールでの剥離が容易になり、樹脂封止シートを容易に得ることができる。また、シートにベタツキが発生しにくくなるのでブロッキングの発生を抑制し、シートの繰り出し性を向上させることができる。また、十分に架橋させられるため、耐熱性の低下を抑制することができる。
・要件(a4)
ASTM D2240に準拠して測定されるエチレン・α-オレフィン共重合体のショアA硬度は、好ましくは60~85であり、より好ましくは62~83、さらに好ましくは62~80、特に好ましくは65~80である。エチレン・α-オレフィン共重合体のショアA硬度は、エチレン・α-オレフィン共重合体のエチレン単位の含有割合や密度を後述の数値範囲に制御することにより、調整することができる。すなわち、エチレン単位の含有割合が高く、密度が高いエチレン・α-オレフィン共重合体は、ショアA硬度が高くなる。一方、エチレン単位の含有割合が低く、密度が低いエチレン・α-オレフィン共重合体は、ショアA硬度が低くなる。なおショアA硬度は、試験片シートに荷重後、15秒以上経過してから測定する。
ショアA硬度が上記下限値以上であると、エチレン・α-オレフィン共重合体の結晶化速度が適度になるため、押出機より押し出されたシートがベタつかず、冷却ロールでの剥離が容易であり、太陽電池封止シートを効率的に得ることができる。また、シートにベタツキが発生しないのでブロッキングを防止でき、シートの繰り出し性が良好にある。また、耐熱性の低下を防ぐこともできる。
一方、ショアA硬度が上記上限値以下であると、高い透明性が得られる。また、低温での押出成形を容易に行うことができ、例えば130℃以下での押出成形が可能である。このため、エチレン・α-オレフィン共重合体に有機過酸化物を練り込む場合においても、押出機内での架橋反応が進行することが抑制でき、太陽電池封止シートの外観を良好にすることができる。また、適度な柔軟性が得られるため、太陽電池モジュールのラミネート成形時に太陽電池素子の割れや、薄膜電極のカケ等の発生を防ぐことができる。
また、本実施形態樹脂封止シートにおいて、前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、上記要件(a1)~(a4)を満たすと同時に、下記要件(a5)さらに満たすことがより好ましい。
(a5)アルミニウム元素の含有量が5~500ppmである。
・要件(a5)
エチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる、アルミニウム元素(以下「Al」ともいう。)の含有量(残渣量)が好ましくは5~500ppmであり、より好ましくは10~400ppm、さらに好ましくは10~300ppmである。Al含有量は、エチレン・α-オレフィン共重合体の重合過程において添加する有機アルミニウムオキシ化合物や有機アルミニウム化合物の濃度に依存する。
Al含有量が上記下限値以上の場合は、エチレン・α-オレフィン共重合体の重合過程において有機アルミニウムオキシ化合物や有機アルミニウム化合物が、メタロセン化合物の活性を十分発現させられる程度の濃度で添加できるので、メタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物の添加が不要となる。該イオン対を形成する化合物が添加される場合、該イオン対を形成する化合物がエチレン・α-オレフィン共重合体中に残留することにより、電気特性の低下を起こすことがある(例えば、100℃等の高温での電気特性が低下する傾向にある)が、こうした現象を防ぐことが可能である。また、Al含有量を少なくするためには、酸やアルカリでの脱灰処理が必要となり、得られるエチレン・α-オレフィン共重合体中に残留する酸やアルカリが電極の腐食を起こす傾向にあり、脱灰処理を施すために、エチレン・α-オレフィン共重合体のコストも高くなるが、こうした脱灰処理が不要となる。また、Al含有量が上記上限値以下であると、押出機内での架橋反応の進行を防止できるため、太陽電池封止シートの外観を良好にすることができる。
上記のような、エチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム元素をコントロールする手法としては、例えば、後述のエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法に記載の(II-1)有機アルミニウムオキシ化合物および(II-3)有機アルミニウム化合物の製造工程における濃度、または、エチレン・α-オレフィン共重合体の製造条件のメタロセン化合物の重合活性を調整することによって、エチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム元素をコントロールすることができる。
・融解ピーク
さらに、エチレン・α-オレフィン共重合体の、示差走査熱量(DSC)測定に基づく融解ピークは、30~90℃の範囲に存在することが好ましく、33~90℃の範囲に存在することがさらに好ましく、33~88℃の範囲に存在することがとくに好ましい。
融解ピークが上記上限値以下であると、結晶性が適度であり、透明性が良好である。また、柔軟性も適度であり、太陽電池モジュールのラミネート成形時に太陽電池素子の割れや、薄膜電極のカケ等が抑制できる傾向にある。融解ピークが上記下限値以上であると、樹脂組成物のベタつきが小さくシートブロッキングを抑制でき、シートの繰り出し性が良好である。また、架橋が十分となり、耐熱性も良好である。
(エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法)
エチレン・α-オレフィン共重合体共重合体は、以下に示す種々のメタロセン化合物を触媒として用いて製造することができる。メタロセン化合物としては、例えば、特開2006-077261号公報、特開2008-231265号公報、特開2005-314680号公報等に記載のメタロセン化合物を用いることができる。ただし、これらの特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用してもよいし、二種以上のメタロセン化合物を組み合わせて使用してもよい。
メタロセン化合物を用いる重合反応としては、例えば以下に示す態様を好適例として挙
げることができる。
従来公知のメタロセン化合物(I)と、(II-1)有機アルミニウムオキシ化合物、(II-2)上記メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物、および(II-3)有機アルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(II)(以下「助触媒(II)」ともいう。)と、からなるオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンとα-オレフィン等から選ばれる一種以上のモノマーを供給する。
(II-1)有機アルミニウムオキシ化合物(以下単に「化合物(II-1)」ともいう。)、(II-2)上記メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物(以下単に「化合物(II-2)」ともいう。)、および(II-3)有機アルミニウム化合物(以下単に「化合物(II-3)」ともいう。)としても、例えば、特開2006-077261号公報、特開2008-231265号公報、特開2005-314680号公報に記載のメタロセン化合物を用いることができる。ただし、これらの特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用してもよい。これら化合物は、個別に、あるいは予め接触させて重合雰囲気に投入してもよい。さらに、例えば特開2005-314680号公報に記載の微粒子状無機酸化物担体に担持して用いてもよい。
なお、前述の化合物(II-2)を実質的に使用せずに製造することで、電気特性の優れるエチレン・α-オレフィン共重合体を得ることができ、好ましい。
エチレン・α-オレフィン共重合体の重合は、従来公知の気相重合法、およびスラリー重合法、溶液重合法等の液相重合法のいずれでも行うことができる。好ましくは溶液重合法等の液相重合法により行われる。上記のようなメタロセン化合物を用いて、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合を行ってエチレン・α-オレフィン共重合体を製造する場合、メタロセン化合物(I)は、反応容積1リットル当り、好ましくは10-9~10-1モル、より好ましくは10-8~10-2モルになるような量で用いられる。
前記化合物(II-1)は、化合物(II-1)と、化合物(I)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(II-1)/M]が、好ましくは1~10000、より好ましくは10~5000となるような量で用いられる。前記化合物(II-2)は、化合物(II-2)と、化合物(I)中の全遷移金属(M)とのモル比[(II-2)/M]が、好ましくは0.5~50、より好ましくは1~20となるような量で用いられる。化合物(II-3)は、重合容積1リットル当り、好ましくは0~5ミリモル、より好ましくは0~2ミリモルとなるような量で用いられる。
溶液重合法では、上述のようなメタロセン化合物の存在下に、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合を行うことによって、コモノマー含量が高く、組成分布が狭く、分子量分布が狭いエチレン・α-オレフィン共重合体を効率よく製造できる。ここで、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとの仕込みモル比は、好ましくはエチレン:α-オレフィン=10:90~99.9:0.1、より好ましくはエチレン:α-オレフィン=30:70~99.9:0.1、さらに好ましくはエチレン:α-オレフィン=50:50~99.9:0.1である。
炭素数3~20のα-オレフィンとしては、直鎖状または分岐状のα-オレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等を挙げることができる。溶液重合法において使用できるα-オレフィンの例には、極性基含有オレフィンも包含される。
極性基含有オレフィンとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸類、およびこれらのナトリウム塩等の金属塩類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のα,β-不飽和カルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の不飽和グリシジル類等を挙げることができる。
また、芳香族ビニル化合物、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン類;3-フェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルスチレン等を反応系に共存させて高温溶液重合を進めることも可能である。
以上述べたα-オレフィンの中では、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-チル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましく用いられる。また、溶液重合法においては、炭素数が3~20の環状オレフィン類、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン等を併用してもよい。
「溶液重合法」とは、後述の不活性炭化水素溶媒中にポリマーが溶解した状態で重合を
行う方法の総称である。溶液重合法における重合温度は、好ましくは0~200℃、より好ましくは20~190℃、さらに好ましくは40~180℃である。溶液重合法においては、重合温度が0℃に満たない場合、その重合活性は極端に低下し、重合熱の除熱も困難となり生産性の点で実用的でない。また、重合温度が200℃を超えると、重合活性が極端に低下するので生産性の点で実用的でない。
重合圧力は、好ましくは常圧~10MPaゲージ圧、より好ましくは常圧~8MPaゲージ圧の条件下である。共重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。反応時間(共重合反応が連続法で実施される場合には、平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度等の条件によっても異なり、適宜選択することができるが、好ましくは1分間~3時間、より好ましくは10分間~2.5時間である。
さらに、重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。得られるエチレン・α-オレフィン共重合体の分子量は、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する前記化合物(II)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は、生成するエチレン・α-オレフィン共重合体1kgあたり0.001~5,000NL程度が適当である。また、得られるエチレン・α-オレフィン共重合体の分子末端に存在するビニル基およびビニリデン基は、重合温度を高くすること、水素添加量を極力少なくすることで調整できる。
溶液重合法において用いられる溶媒は、通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50~200℃の飽和炭化水素である。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素が挙げられる。なお、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素も前記不活性炭化水素溶媒の範疇に入り、その使用を制限するものではない。
上述したように、溶液重合法においては、従来繁用されてきた芳香族炭化水素に溶解する有機アルミニウムオキシ化合物のみならず、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解するMMAOのような修飾メチルアルミノキサンを使用できる。この結果、溶液重合用の溶媒として脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素を採用すれば、重合系内や生成するエチレン・α-オレフィン共重合体中に芳香族炭化水素が混入する可能性をほぼ完全に排除することが可能となる。すなわち、溶液重合法は、環境負荷を軽減化でき、人体健康への影響を最小化できるという特徴も有する。なお、物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン・α-オレフィン共重合体、および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒等を施されるのが好ましい。
(エチレン系樹脂組成物)
本実施形態の樹脂封止シートは、前述のエチレン・α-オレフィン共重合体100質量部と、エチレン性不飽和シラン化合物等のシランカップリング剤0.1~5質量部と、有機過酸化物等の架橋剤0.1~3質量部とを含有するエチレン系樹脂組成物からなることが好ましい。
さらに、前記エチレン系樹脂組成物は、より好ましくはエチレン・α-オレフィン共重合体100質量部に対し、前記シランカップリング剤を0.1~4質量部、および前記架橋剤を0.2~3質量部含有し、さらに好ましくはエチレン・α-オレフィン共重合体100質量部に対し、シランカップリング剤を0.1~3質量部、および前記架橋剤を0.2~2.5質量部含有する。
シランカップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、接着性が向上する。一方、シランカップリング剤の含有量が上記上限値以下であると、樹脂封止シートのコストと性能のバランスがよく、また、シランカップリング剤を太陽電池モジュールのラミネート時にエチレン・α-オレフィン共重合体にグラフト反応させるための有機過酸化物の添加量を抑制できる。このため、エチレン系樹脂組成物を押出機でシート状にして得る際にゲル化を抑制でき、押出機のトルクを抑制でき、押出シート成形が容易となる。また、押出機内で発生したゲル物によりシートの表面に凹凸が発生するのを抑制できるため、外観の低下を防止することができる。また、電圧をかけたとき、シート内部におけるクラックの発生を防止できるため、絶縁破壊電圧の低下を防ぐことができる。さらに、透湿性の低下も防止できる。また、シート表面に凹凸が発生するのを抑制できるため、太陽電池モジュールのラミネート加工時に表面側透明保護部材、セル、電極、裏面側保護部材との密着性が良好となり、接着性も向上する。また、シランカップリング剤自体が縮合反応を起こし、樹脂封止シートに白い筋として存在し、製品外観が悪化することを抑制できる。さらに、有機過酸化物の量が少ない場合は、エチレン・α-オレフィン共重合体の主鎖へのグラフト反応が不十分となって接着性が低下することを抑制できる。
前記シランカップリング剤は、従来公知のものが使用でき、とくに制限はない。具体的には、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシシラン)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が使用できる。好ましくは、接着性が良好なγ-グリシドキシプロピルメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが挙げられる。前記シランカップリング剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
前記架橋剤である有機過酸化物は、シランカップリング剤とエチレン・α-オレフィン共重合体とのグラフト変性の際のラジカル開始剤として、さらに、エチレン・α-オレフィン共重合体の太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋反応の際のラジカル開始剤として働く。エチレン・α-オレフィン共重合体に、シランカップリング剤をグラフト変性することにより、ガラス、バックシート、セル、電極との接着性が良好な太陽電池モジュールが得られる。さらに、エチレン・α-オレフィン共重合体を架橋することにより、耐熱性、接着性に優れた太陽電池モジュールを得ることができる。
好ましく用いられる有機過酸化物は、エチレン・α-オレフィン共重合体にシランカップリング剤をグラフト変性したり、エチレン・α-オレフィン共重合体を架橋したりすることが可能なものであればよいが、押出シート成形での生産性と太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋速度のバランスから、有機過酸化物の1分間半減期温度が100~170℃であることが好ましい。
有機過酸化物の1分間半減期温度が上記下限値以上であると、シート成形時に樹脂組成物から得られる太陽電池封止シートにゲルが発生しにくくなる。また、発生したゲル物によりシートの表面に凹凸が発生するのを抑制できるため、外観の低下を防止することができる。また、電圧をかけたとき、シート内部におけるクラックの発生を防止できるため、絶縁破壊電圧の低下を防ぐことができる。さらに、透湿性の低下も防止できる。また、シート表面に凹凸が発生するのを抑制できるため、太陽電池モジュールのラミネート加工時に表面側透明保護部材、セル、電極、裏面側保護部材との密着性が良好となり、接着性も向上する。
有機過酸化物の1分間半減期温度が上記上限値以下であると、太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋速度の低下を抑制できるため、太陽電池モジュールの生産性の低下を防ぐことができる。また、樹脂封止シートの耐熱性、接着性の低下を防ぐこともできる。さらに、ラミネート加工後やオーブンでの架橋を適度にでき、ラミネート装置やオーブンの汚れを抑制することができる。
有機過酸化物としては公知のものが使用できる。1分間半減期温度が100~170℃の範囲にある有機過酸化物の好ましい具体例としては、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-アミル-パーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソノナノエート、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、等が挙げられる。好ましくは、ジラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソノナノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。前記有機過酸化物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
有機過酸化物の含有量は、前述のエチレン・α-オレフィン共重合体100質量部に対して、通常0.005~5.0質量部であり、0.1~3.0質量部であることが好ましく、0.2~3.0質量部であることがより好ましく、0.2~2.5質量部であることがさらに好ましい。
エチレン系樹脂組成物には、さらに、紫外線吸収剤、光安定化剤、および耐熱安定剤からなる群より選択される少なくとも一種の添加剤が含有されることが好ましい。これらの添加剤の配合量は、エチレン・α-オレフィン共重合体100質量部に対して、0.005~5質量部であることが好ましい。さらに、上記三種から選ばれる少なくとも二種の添加剤を含有することが好ましく、とくに、上記三種の全てが含有されていることが好ましい。上記添加剤の配合量が上記範囲にあると、高温高湿への耐性、ヒートサイクルの耐性、耐候安定性、および耐熱安定性を向上する効果を十分に確保し、かつ、樹脂封止シートの透明性やガラス、バックシート、セル、電極、アルミニウムとの接着性の低下を防ぐことができるので好ましい。
紫外線吸収剤としては、具体的には、2-ヒドロキシ-4-ノルマル-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-N-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアリゾール系紫外線吸収剤;フェニルサルチレート、p-オクチルフェニルサルチレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤等が用いられる。前記紫外線吸収剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
光安定化剤としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系光安定化剤、ヒンダードピペリジン系光安定化剤等が好ましく使用される。前記光安定化剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
耐熱安定剤としては、具体的には、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4'-ジイルビスホスフォナイト、およびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のホスファイト系耐熱安定剤; 3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物等のラクトン系耐熱安定剤;3,3',3",5,5',5"-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a"-(メチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ベンジルベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のヒンダードフェノール系耐熱安定剤;硫黄系耐熱安定剤;アミン系耐熱安定剤等を挙げることができる。また、これらを一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることもできる。中でも、ホスファイト系耐熱安定剤、およびヒンダードフェノール系耐熱安定剤が好ましい。
・その他の添加剤
樹脂封止シートを構成するエチレン系樹脂組成物には、以上詳述した諸成分以外の各種成分を、本発明の目的を損なわない範囲において、適宜含有させることができる。例えば、エチレン・α-オレフィン共重合体以外の各種ポリオレフィン、スチレン系やエチレン系ブロック共重合体、プロピレン系重合体等が挙げられる。これらは、上記エチレン・α-オレフィン共重合体100質量部に対して、0.0001~50質量部、好ましくは0.001~40質量部含有されていてもよい。また、ポリオレフィン以外の各種樹脂、および/または各種ゴム、可塑剤、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤、架橋助剤、および分散剤等から選ばれる一種以上の添加剤を適宜含有することができる。
とくに、架橋助剤を含有させる場合において、架橋助剤の配合量は、エチレン・α-オレフィン共重合体100質量部に対して、0.05~5質量部であると、適度な架橋構造を有することができ、耐熱性、機械物性、接着性を向上できるため好ましい。
架橋助剤としては、オレフィン系樹脂に対して一般に使用される従来公知のものが使用できる。このような架橋助剤は、分子内に二重結合を二個以上有する化合物である。具体的には、t-ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート等のモノアクリレート;t-ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、メトキシエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等のモノメタクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等のジアクリレート; 1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレートネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のテトラアクリレート;ジビニルベンゼン、ジ-i-プロペニルベンゼン等のジビニル芳香族化合物;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌレート;ジアリルフタレート等のジアリル化合物;トリアリル化合物;p-キノンジオキシム、p-p'-ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム;フェニルマレイミド等のマレイミドが挙げられる。前記架橋助剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
これらの架橋助剤の中でより好ましいのは、ジアクリレート、ジメタクリレート、ジビニル芳香族化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のテトラアクリレート;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌレート;ジアリルフタレート等のジアリル化合物;トリアリル化合物;p-キノンジオキシム、p-p'-ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム;フェニルマレイミド等のマレイミドである。さらにこれらの中でとくに好ましいのは、トリアリルイソシアヌレートであり、ラミネート後の樹脂封止シートの気泡発生や架橋特性のバランスが最も優れる。
本実施形態の樹脂封止シートは、ガラス、バックシート、薄膜電極、アルミニウム、太陽電池素子等の各種太陽電池部材との接着性、耐熱性、押出成形性および架橋特性のバランスに優れ、さらに、透明性、柔軟性、外観、耐候性、体積固有抵抗、電気絶縁性、透湿性、電極腐食性、プロセス安定性のバランスに優れている。このため、従来公知の太陽電池モジュールの樹脂封止シートとして好適に用いられる。本実施形態の樹脂封止シートの製造方法としては、通常用いられている方法が利用できるが、ニーダー、バンバリミキサー、押出機等により溶融ブレンドすることにより製造することが好ましい。とくに、連続生産が可能な押出機での製造が好ましい。
樹脂封止シートは、前述のエチレン系樹脂組成物からなるシートを少なくとも一層有する、他の層と複合化された樹脂封止シートも好適に用いることができる。樹脂封止シートの層の厚さは、好ましくは0.01~2mm、より好ましくは、0.05~1.5mm、さらに好ましくは0.1~1.2mm、特に好ましくは0.2~1mm、とりわけ好ましくは0.3~0.9mm、最も好ましくは0.3~0.8mmである。樹脂封止シートの層の厚さがこの範囲内であると、ラミネート工程における、ガラス、太陽電池素子、薄膜電極等の破損が抑制でき、かつ、十分な光線透過率を確保することにより高い光発電量を得ることができる。さらには、低温での太陽電池モジュールのラミネート成形ができるので好ましい。
樹脂封止シートの成形方法にはとくに制限は無いが、公知の各種の成形方法(キャスト成形、押出シート成形、カレンダー成形、インフレーション成形、射出成形、圧縮成形等)を採用することが可能である。とくに、押出機中でエチレン・α-オレフィン共重合体と、シランカップリング剤、有機過酸化物、紫外線吸収剤、光安定化剤、耐熱安定剤、および必要に応じてその他添加剤を、例えば、ポリ袋等の袋の中で人力でのブレンドや、ヘンシェルミキサー、タンブラー、スーパーミキサー等の攪拌混合機を用いてブレンドしたエチレン・α-オレフィン共重合体と各種添加剤を配合した組成物を、押出シート成形のホッパーに投入し、溶融混練を行いつつ押出シート成形を行い、樹脂封止シートを得ることが最も好ましい実施形態である。
なお、配合した組成物にて一度押出機にてペレット化を行い、さらに押出成形やプレス成形でシート化を行う際は、一般的に水層をくぐらせるあるいはアンダーウォーターカッター式の押出機を用いてストランドを冷却しカットしてペレットを得ている。そのため、水分が付着するので添加剤、とくにシランカップリング剤の劣化が起り、例えば再度押出機でシート化を行う際に、シランカップリング剤同士の縮合反応が進行し、接着性が低下する傾向にあるため好ましくはない。また、エチレン・α-オレフィン共重合体と有機過酸化物やシランカップリング剤を除く添加剤(耐熱安定剤、光安定化剤、紫外線吸収剤等の安定剤)を事前に押出機を用いてマスターバッチ化した後、有機過酸化物やシランカップリング剤をブレンドし再度押出機等でシート成形する場合も、耐熱安定剤、光安定化剤、紫外線吸収剤等の安定剤は二度押出機を介しているため、安定剤が劣化し耐候性や耐熱性等の長期信頼性が低下する傾向にあり、好ましくない。
押出温度範囲としては、好ましくは100~130℃である。押出温度を上記下限値以上にすると、樹脂封止シートの生産性を向上させることができる。押出温度を上記上限値以下にすると、エチレン系樹脂組成物を押出機でシート化して樹脂封止シートを得る際にゲル化を起こしにくくなる。そのため、押出機のトルクの上昇を防ぎ、シート成形を容易にできる。また、シートの表面に凹凸が発生しにくくなるため、外観の低下を防ぐことができる。また、電圧をかけたときシート内部におけるクラックの発生を抑制できるため、絶縁破壊電圧の低下を防止することができる。さらに、透湿性の低下も抑制できる。また、シート表面に凹凸が発生しにくくなるため、太陽電池モジュールのラミネート加工時に表面側透明保護部材、セル、電極、裏面側保護部材との密着性が良好になり、接着性に優れる。
また、樹脂封止シート(または層)の表面には、エンボス加工が施されてもよい。樹脂封止シート表面を、エンボス加工によって装飾することで、樹脂封止シート同士、または樹脂封止シートと他のシート等とのブロッキングを防止しうる。さらに、エンボスが、樹脂封止シートの貯蔵弾性率を低下させるため、樹脂封止シートと太陽電池素子とをラミネートする時に太陽電池素子等に対するクッションとなって、太陽電池素子の破損を防止することができる。
樹脂封止シートは、前記樹脂組成物を含有する層のみで構成されていてもよいし、前記樹脂組成物を含有する層以外の層(以下、「その他の層」とも記す)を有していてもよい。その他の層の例としては、目的で分類するならば、表面または裏面保護のためのハードコート層、接着層、反射防止層、ガスバリア層、防汚層等を挙げることができる。材質で分類するならば、紫外線硬化性樹脂からなる層、熱硬化性樹脂からなる層、ポリオレフィン樹脂からなる層、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる層、フッ素含有樹脂からなる層、環状オレフィン(共)重合体からなる層、無機化合物からなる層等を挙げることができる。
前記樹脂組成物を含有する層と、その他の層との位置関係にはとくに制限はなく、本発明の目的との関係で好ましい層構成が適宜選択される。すなわち、その他の層は、2以上の前記樹脂組成物を含有する層の間に設けられてもよいし、樹脂封止シートの最外層に設けられてもよいし、それ以外の箇所に設けられてもよい。また、前記樹脂組成物を含有する層の片面にのみその他の層が設けられてもよいし、両面にその他の層が設けられてもよい。その他の層の層数にとくに制限はなく、任意の数のその他の層を設けることができるし、その他の層を設けなくともよい。
構造を単純にしてコストを下げる観点、および界面反射を極力小さくし光を有効に活用する観点等からは、その他の層を設けず、前記樹脂組成物を含有する層のみで樹脂封止シートを作製すればよい。ただし、目的との関係で必要または有用なその他の層があれば、適宜そのようなその他の層を設ければよい。その他の層を設ける場合における、前記樹脂組成物を含有する層と他の層との積層方法についてはとくに制限はないが、キャスト成形機、押出シート成形機、インフレーション成形機、射出成形機等の公知の溶融押出機を用いて共押出して積層体を得る方法、あるいは予め成形された一方の層上に他方の層を溶融または加熱ラミネートして積層体を得る方法が好ましい。
また、適当な接着剤(例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(三井化学社製「アドマー(登録商標)」、三菱化学社製「モディック(登録商標)」等)、不飽和ポリオレフィン等の低(非)結晶性軟質重合体、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸三元共重合体(住化シーディエフ化学社製「ボンダイン(登録商標)」)をはじめとするアクリル系接着剤、エチレン/酢酸ビニル系共重合体、またはこれらを含む接着性樹脂組成物等)を用いたドライラミネート法、あるいはヒートラミネート法等により積層してもよい。接着剤としては、120~150℃程度の耐熱性があるものが好ましく使用され、ポリエステル系あるいはポリウレタン系接着剤等が好適なものとして例示される。また、両層の接着性を改良するために、例えば、シラン系カップリング処理、チタン系カップリング処理、コロナ処理、プラズマ処理等を用いてもよい。
[太陽電池モジュール]
太陽電池モジュールとしては、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン等により形成された太陽電池素子を樹脂封止シートで挟み積層し、さらに、表裏両面を保護シートでカバーした結晶型太陽電池モジュールが挙げられる。すなわち、典型的な太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用保護シート(表面側透明保護部材)/樹脂封止シート/太陽電池素子/樹脂封止シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面側保護部材)という構成になっている。
本発明の太陽電池モジュールは、上記の構成のように前述した樹脂封止シートにより太陽電池素子が封止されてなることが好ましい。ただし、本発明の好ましい実施形態の1つである太陽電池モジュールは、上記の構成には限定されず、本発明の目的を損なわない範囲で、上記の各層の一部を適宜省略、または上記以外の層を適宜設けることができる。上記以外の層としては、例えば接着層、衝撃吸収層、コーティング層、反射防止層、裏面再反射層、および光拡散層等を挙げることができる。これらの層は、とくに限定はないが、各層を設ける目的や特性を考慮して、適切な位置に設けることができる。
太陽電池モジュールは、任意の製造方法で得ることができる。太陽電池モジュールは、例えば、裏面側保護部材、樹脂封止シート、複数の太陽電池素子、樹脂封止シート、および表面側透明保護部材をこの順に積層した積層体を得る工程;該積層体を、ラミネーター等により加圧し貼り合わせ、同時に必要に応じて加熱する工程;上記工程の後、さらに必要に応じて積層体を加熱処理し、上記封止材を硬化する工程により得ることができる。
太陽電池素子には、通常、発生した電気を取り出すための集電電極が配置される。集電電極の例には、バスバー電極、フィンガー電極等が含まれる。一般に、集電電極は、太陽電池素子の表面と裏面の両面に配置した構造をとるが、受光面に集電電極を配置すると、集電電極が光を遮ってしまうため発電効率が低下するという問題が生じうる。
近年、発電効率を向上させるために、受光面に集電電極を配置する必要のないバックコンタクト型太陽電池素子を用いることが考えられる。バックコンタクト型太陽電池素子の一態様では、太陽電池素子の受光面の反対側に設けられた裏面側に、pドープ領域とnドープ領域とを交互に設ける。バックコンタクト型太陽電池素子の他の態様では、貫通孔(スルーホール)を設けた基板にp/n接合を形成し、スルーホール内壁および裏面側のスルーホール周辺部まで表面(受光面)側のドープ層を形成し、裏面側で受光面の電流を取り出す。
一般に太陽電池システムにおいては、前述の太陽電池モジュールを直列数台から数十台につないでおり、住宅用の小規模のものでも50~500V、メガソーラーと呼ばれる大規模のものでは600~1000Vでの運用がなされる。太陽電池モジュールの外枠には、強度保持等を目的にアルミフレーム等が使用され、安全上の観点からアルミフレームはアース(接地)される場合が多い。その結果太陽電池が発電することで、封止材に比較して電気抵抗の低いガラス面と太陽電池素子の間には、発電による電圧差が生じることになる。その結果、発電セルとガラスまたはアルミフレームとの間に封止される、樹脂封止シートには、高い電気絶縁性、高抵抗等の良好な電気特性が求められる。
とくに、太陽電池モジュ-ルを構成する光起電力素子の下に積層する封止層は、光起電力素子の上部に積層される封止層・電極・裏面保護層との接着性を有することが必要である。また、光起電力素子としての太陽電池素子の裏面の平滑性を保持するために、熱可塑性を有することが必要である。さらに、光起電力素子としての太陽電池素子を保護するために、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。
上記封止層としては、耐熱性を有することが望ましい。とくに、太陽電池モジュ-ル製造の際、真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等における加熱作用や、太陽電池モジュ-ル等の長期間の使用における太陽光等の熱の作用等により、封止層を構成するエチレン系樹脂組成物が変質したり、劣化ないし分解したりしないことが望ましい。仮に、該エチレン系樹脂組成物に含まれる添加剤等が溶出したり、分解物が生成したりすると、それらが太陽電池素子の起電力面(素子面)に作用し、その機能、性能等を劣化させてしまうことになる。このため、耐熱性は、太陽電池モジュ-ルの封止層の有する特性として必要不可欠なものである。さらに、上記封止層は、防湿性に優れていることが好ましい。この場合、太陽電池モジュールの裏面側からの水分の透過を防ぐことができ、太陽電池モジュールの光起電力素子の腐食、劣化を防ぐことができる。
上記封止層は、光起電力素子の上に積層する封止層と異なり、必ずしも透明性を有することを必要としない。本実施形態の樹脂封止シートは、上記の特性を有しており、結晶型太陽電池モジュールの裏面側の樹脂封止シート、水分浸透に弱い薄膜型太陽電池モジュールの樹脂封止シートとして好適に用いることができる。
本実施形態の太陽電池モジュールは、本発明の目的を損なわない範囲で、任意の部材を適宜有してもよい。典型的には、接着層、衝撃吸収層、コーティング層、反射防止層、裏面再反射層、光拡散層等を設けることができるが、これらに限定されない。これらの層を設ける位置にはとくに限定はなく、そのような層を設ける目的、および、そのような層の特性を考慮し、適切な位置に設けることができる。
<太陽電池モジュール用表面側透明保護部材>
太陽電池モジュールに用いられる太陽電池モジュール用表面側透明保護部材は、とくに制限はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、耐候性、撥水性、耐汚染性、機械強度をはじめとして、太陽電池モジュールの屋外暴露における長期信頼性を確保するための性能を有することが好ましい。また、太陽光を有効に活用するために、光学ロスの小さい、透明性の高いシートであることが好ましい。
太陽電池モジュール用表面側透明保護部材の材料としては、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン(共)重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等からなる樹脂フィルムやガラス基板等が挙げられる。樹脂フィルムは、好ましくは、透明性、強度、コスト等の点で優れたポリエステル樹脂、とくにポリエチレンテレフタレート樹脂や、耐侯性のよいフッ素樹脂等である。フッ素樹脂の例としては、四フッ化エチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)がある。耐候性の観点ではポリフッ化ビニリデン樹脂が優れているが、耐候性および機械的強度の両立では四フッ化エチレン-エチレン共重合体が優れている。また、封止材層等の他の層を構成する材料との接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理を表面側透明保護部材に行うことが望ましい。また、機械的強度向上のために延伸処理が施してあるシート、例えば2軸延伸のポリプロピレンシートを用いることも可能である。
太陽電池モジュール用表面側透明保護部材としてガラス基板を用いる場合、ガラス基板は、波長350~1400nmの光の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。かかるガラス基板としては、赤外部の吸収の少ない白板ガラスを使用するのが一般的であるが、青板ガラスであっても厚さが3mm以下であれば太陽電池モジュールの出力特性への影響は少ない。また、ガラス基板の機械的強度を高めるために熱処理により強化ガラスを得ることができるが、熱処理無しのフロート板ガラスを用いてもよい。また、ガラス基板の受光面側に反射を抑えるために反射防止のコーティングをしてもよい。
<太陽電池モジュール用裏面側保護部材>
太陽電池モジュールに用いられる太陽電池モジュール用裏面側保護部材は、とくに制限はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、上述の表面側透明保護部材と同様に、耐候性、機械強度等の諸特性を求められる。したがって、表面側透明保護部材と同様の材質で太陽電池モジュール用裏面側保護部材を構成してもよい。すなわち、表面側透明保護部材として用いられる上述の各種材料を、裏面側保護部材としても用いることができる。とくに、ポリエステル樹脂、およびガラスを好ましく用いることができる。また、裏面側保護部材は、太陽光の通過を前提としないため、表面側透明保護部材で求められる透明性は必ずしも要求されない。そこで、太陽電池モジュールの機械的強度を増すために、あるいは温度変化による歪、反りを防止するために、補強板を張り付けてもよい。補強板は、例えば、鋼板、プラスチック板、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)板等を好ましく使用することができる。
さらに、本実施形態の樹脂封止シートが、太陽電池モジュール用裏面側保護部材と一体化していてもよい。樹脂封止シートと太陽電池モジュール用裏面側保護部材とを一体化させることにより、モジュール組み立て時に樹脂封止シートおよび太陽電池モジュール用裏面側保護部材をモジュールサイズに裁断する工程を短縮できる。また、樹脂封止シートと太陽電池モジュール用裏面側保護部材とをそれぞれレイアップする工程を、一体化したシートでレイアップする工程にすることで、レイアップ工程を短縮・省略することもできる。樹脂封止シートと太陽電池モジュール用裏面側保護部材とを一体化させる場合における、樹脂封止シートと太陽電池モジュール用裏面側保護部材の積層方法は、とくに制限されない。積層方法には、キャスト成形機、押出シート成形機、インフレーション成形機、射出成形機等の公知の溶融押出機を用いて共押出して積層体を得る方法や;予め成形された一方の層上に、他方の層を溶融あるいは加熱ラミネートして積層体を得る方法が好ましい。
また、適当な接着剤、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(三井化学社製「アドマー(登録商標)」、三菱化学社製「モディック(登録商標)」等)、不飽和ポリオレフィン等の低(非)結晶性軟質重合体、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸三元共重合体(住化シーディエフ化学社製「ボンダイン(登録商標)」等)をはじめとするアクリル系接着剤、エチレン/酢酸ビニル系共重合体、またはこれらを含む接着性樹脂組成物等を用いたドライラミネート法、あるいはヒートラミネート法等により積層してもよい。
前記接着剤としては、120~150℃程度の耐熱性があるものが好ましく、具体的にはポリエステル系接着剤またはポリウレタン系接着剤等が好ましい。また、二つの層の接着性を向上させるために、少なくとも一方の層に、例えばシラン系カップリング処理、チタン系カップリング処理、コロナ処理、プラズマ処理等を施してもよい。
<太陽電池素子>
太陽電池素子は優れた特性を有しているが、外部からの応力、衝撃等により破損し易いことで知られている。本実施形態の樹脂封止シートは、柔軟性に優れているので、太陽電池素子への応力、衝撃等を吸収して、太陽電池素子の破損を防ぐ効果が大きい。したがって、本実施形態の太陽電池モジュールにおいては、本実施形態の樹脂封止シートの前記樹脂組成物を含有する層が、太陽電池素子と直接的に接合されていることが望ましい。
<電極>
太陽電池モジュールに用いられる電極の構成および材料は、とくに限定されないが、具体的な例では、透明導電膜と金属膜の積層構造を有する。透明導電膜は、SnO2、ITO、ZnO等からなる。金属膜は、銀、金、銅、錫、アルミニウム、カドミウム、亜鉛、水銀、クロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、バナジウム等の金属からなる。これらの金属膜は、単独で用いられてもよいし、複合化された合金として用いられてもよい。透明導電膜と金属膜とは、CVD、スパッタ、蒸着等の方法により形成される。
<太陽電池モジュールの製造方法>
本実施形態の太陽電池モジュールの製造方法は、(i)表面側透明保護部材と、本実施形態の樹脂封止シートと、太陽電池素子(セル)と、樹脂封止シートと、裏面側保護部材とをこの順に積層して積層体を形成する工程と、(ii)得られた積層体を加圧および加熱して一体化する工程と、を含むことを特徴とする。
工程(i)において、樹脂封止シートの凹凸形状(エンボス形状)が形成された面を太陽電池素子側になるように配置することが好ましい。
工程(ii)において、工程(i)で得られた積層体を、常法に従って真空ラミネーター、または熱プレスを用いて、加熱および加圧して一体化(封止)する。封止において、本実施形態の樹脂封止シートは、クッション性が高いため、太陽電池素子の損傷を防止することができる。また、脱気性が良好であるため空気の巻き込みもなく、高品質の製品を歩留り良く製造することができる。
太陽電池モジュールの製造するときに、樹脂封止シートを構成するエチレン系樹脂組成物を架橋硬化させる。この架橋工程は、工程(ii)と同時に行ってもよいし、工程(ii)の後に行ってもよい。
架橋工程を工程(ii)の後に行う場合、工程(ii)において温度125~160℃、真空圧10Torr以下の条件で3~6分間真空・加熱し;次いで、大気圧による加圧を1~15分間程度行い、上記積層体を一体化する。工程(ii)の後に行う架橋工程は、一般的な方法により行うことができ、例えば、トンネル式の連続式架橋炉を用いてもよいし、棚段式のバッチ式架橋炉を用いてもよい。また、架橋条件は、通常、130~155℃で20~60分程度である。
一方、架橋工程を工程(ii)と同時に行う場合、工程(ii)における加熱温度を145~170℃とし、大気圧による加圧時間を6~30分とすること以外は、架橋工程を工程(ii)の後に行う場合と同様にして行うことができる。本実施形態の樹脂封止シートは特定の有機過酸化物を含有することで優れた架橋特性を有しており、工程(ii)において二段階の接着工程を経る必要はなく、高温度で短時間に完結することができ、工程(ii)の後に行う架橋工程を省略してもよく、モジュールの生産性を格段に改良することができる。
いずれにしても、本実施形態の太陽電池モジュールの製造は、架橋剤が実質的に分解せず、かつ本実施形態の樹脂封止シートが溶融するような温度で、太陽電池素子や保護材に樹脂封止シートを仮接着し、次いで昇温して十分な接着と封止材の架橋を行えばよい。諸条件を満足できるような添加剤処方を選べばよく、例えば、上記架橋剤および上記架橋助剤等の種類および含浸量を選択すればよい。
また、上記架橋は、架橋後の樹脂封止シートのゲル分率が50~95%となる程度にまで行うことが好ましい。ゲル分率は、より好ましくは50~90%、さらに好ましくは60~90%、最も好ましくは65~90%である。ゲル分率の算出は下記の方法で行い得る。例えば、太陽電池モジュールより封止材シートのサンプルを1g採取し、沸騰トルエンでのソックスレー抽出を10時間行う。抽出液を、30メッシュでのステンレスメッシュでろ過し、メッシュを110℃にて8時間減圧乾燥を行う。メッシュ上に残存した残存物の重量を測定し、処理前のサンプル量(1g)に対する、メッシュ上に残存した残存物の重量の比(%)をゲル分率とする。
上記ゲル分率が上記下限値以上であると、樹脂封止シートの耐熱性が良好となり、例えば85℃、85%RHでの恒温恒湿試験、ブラックパネル温度83℃での高強度キセノン照射試験、-40~90℃でのヒートサイクル試験、耐熱試験での接着性の低下を抑制することができる。一方、ゲル分率が上記上限値以下であると、高い柔軟性を有する樹脂封止シートとなり、-40~90℃でのヒートサイクル試験での温度追従性が向上するため、剥離の発生を防止することができる。
<発電設備>
本実施形態の太陽電池モジュールは、生産性、発電効率、寿命等に優れている。このため、この様な太陽電池モジュールを用いた発電設備は、コスト、発電効率、寿命等に優れ、実用上高い価値を有する。上記の発電設備は、家屋の屋根に設置する、キャンプ等のアウトドア向けの移動電源として利用する、自動車バッテリーの補助電源として利用する等の、屋外、屋内を問わず長期間の使用に好適である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。
(1)測定方法
[体積固有抵抗値]
作製した架橋後の樹脂封止シートの体積固有抵抗値(Ω・cm)を、JIS K6911に準拠し、印加電圧1000Vで測定した。なお、測定時、高温測定チャンバー「12708」(アドバンスト社製)を用いて温度60±2℃とし、微小電流計「R8340A」(アドバンスト社製)を使用した。
[エチレン単位およびα-オレフィン単位の含有割合]
試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させて得られた溶液をグラスフィルター(G2)濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入した。日本電子社製のJNM GX-400型NMR測定装置を使用し、120℃で13C-NMR測定を行った。積算回数は8000回以上とした。得られた13C-NMRスペクトルより、共重合体中のエチレン単位の含有割合、およびα-オレフィン単位の含有割合を定量した。
[メルトフローレート(MFR)]
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件にてエチレン・α-オレフィン共重合体のMFRを測定した。
[密度]
ASTM D1505に準拠して、エチレン・α-オレフィン共重合体の密度を測定した。
[ショアA硬度]
エチレン・α-オレフィン共重合体を190℃、加熱4分、10MPaで加圧した後、10MPaで常温まで5分間加圧冷却して、厚さ3mmのシートを得た。得られたシートを用いて、ASTM D2240に準拠してエチレン・α-オレフィン共重合体のショアA硬度を測定した。
[アルミニウム元素の含有量]
エチレン・α-オレフィン共重合体を湿式分解した後、純水にて定容し、ICP発光分析装置(島津製作所社製、ICPS-8100)により、アルミニウムを定量し、アルミニウム元素の含有量を求めた。
(2)エチレン・α-オレフィン共重合体の製造
[合成例1]
撹拌羽根を備えた内容積130Lの連続重合器の一つの供給口に、ビス(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロジベンズ(b,h)-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのヘキサンスラリーを0.0037mmol/hr、メチルアルミノキサンのヘキサン溶液をアルミニウム換算で1.9mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を3.0mmol/hrの割合で供給し、触媒溶液と重合溶媒の合計が28L/hrとなるように、さらにノルマルヘキサンを15.1L/hr連続的に供給した。同時に重合器の別の供給口に、エチレンを8.1kg/hr、1-ブテンを9.8kg/hr、水素を350NL/hrの割合で連続供給し、重合温度115℃、全圧3.3MPaG、滞留時間36分の条件下で連続溶液重合を行った。重合器で生成したエチレン・α-オレフィン共重合体のノルマルヘキサン溶液は、重合器の底部に設けられた排出口を介して連続的に排出させ、エチレン・α-オレフィン共重合体のノルマルヘキサン溶液が150~190℃となるように、ジャケット部が3~25kg/cm2スチームで加熱された連結パイプに導いた。なお、連結パイプに至る直前には、触媒失活剤であるメタノールが注入される供給口が付設されており、約0.75L/hrの速度でメタノールを注入してエチレン・α-オレフィン共重合体のノルマルヘキサン溶液に合流させた。スチームジャケット付き連結パイプ内で約190℃に保温されたエチレン・α-オレフィン共重合体のノルマルヘキサン溶液は、約4.3MPaGを維持するように、連結パイプ終端部に設けられた圧力制御バルブの開度の調整によって連続的にフラッシュ槽に送液された。なお、フラッシュ槽内への移送においては、フラッシュ槽内の圧力が約0.1MPaG、フラッシュ槽内の蒸気部の温度が約180℃を維持するように溶液温度と圧力調整バルブ開度設定が行われた。その後、ダイス温度を10℃に設定した単軸押出機を通し、水槽にてストランドを冷却し、ペレットカッターにてストランドを切断し、ペレットとしてエチレン・α-オレフィン共重合体Aを得た。収量は8.3kg/hrであった。得られた共重合体Aは、エチレン単位の含有割合が84mol%、α-オレフィン(1-ブテン)単位の含有割合が16mol%、MFRが8g/10分、密度が870g/cm3、ショアA硬度が70、Al含有量が18ppmであった。
[合成例2]
合成例1において、(ビス(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロジベンズ(b,h)-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドに替えて[ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロライドを0.057mmol/hr、メチルアルミノキサンに替えてトリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートを0.063mmol/h、トリイソブチルアルミニウムに替えてメチルアルミノキサンを8.0mmol/hr、ノルマルヘキサンを17.0L/hr、エチレンを6.7kg/hr、1-ブテンを9.0kg/hr、水素を12.5NL/hr、重合温度を120℃、全圧を2.7MPaG、滞留時間を35分に変更したこと以外は、合成例1と同様にしてエチレン・α-オレフィン共重合体Bを得た。収量は7.6kg/hrであった。得られた共重合体Bは、エチレン単位の含有割合が84mol%、α-オレフィン(1-ブテン)単位の含有割合が16mol%、MFRが3.6g/10分、密度が870g/cm3、ショアA硬度が70、Al含有量が9ppmであった。
(3)エチレン系樹脂組成物の製造
[合成例3]
エチレン・酢酸ビニル共重合体(エバフレックス(登録商標)EV250、三井ダウ・ポリケミカル社製)100質量部に対し、シランカップリング剤としてビニルトリメトキシシラン(DOWSIL SZ6300、ダウ・ケミカル日本株式会社製)を0.2質量部、有機過酸化物としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(パーブチル(登録商標)E、日本油脂株式会社製、1分間半減期温度:161.4℃)を0.5質量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル製)を0.4質量部、光安定化剤としてビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Tinuvin 770、BASF社製)を0.2質量部配合し、6インチロールミル LRM-S-150/T3E(LAB TECH ENGINNERING COMPANY LTD製)を用いて混錬し、厚さ500μmのシート状の組成物(I)を得た。
[合成例4]
合成例3において、エチレン・酢酸ビニル共重合体をエチレン・α-オレフィン共重合体Aに変更したこと以外は、合成例3と同様にしてシート状の組成物(II)を得た。
[合成例5]
合成例3において、エチレン・酢酸ビニル共重合体をエチレン・α-オレフィン共重合体Bに変更したこと以外は、合成例3と同様にしてシート状の組成物(III)を得た。
(4)樹脂封止シートの製造
[実施例1]
プレス機(関西ロール社製)を用いて、組成物(I)を100℃で6分間加熱プレスし、厚さ0.1mmの表面層シートを2枚作製した。同様に、組成物(II)を100℃で6分間加熱プレスし、厚さ0.3mmの内層シートを作製した。表面層シート/内層シート/表面層シートの順に作製したシートを積層し、100℃で6分間加熱プレスした。さらに160℃で15分間加熱プレスし、シートを架橋させて厚さ0.5mmの樹脂封止シートを作製した。得られた樹脂封止シートについて、体積固有抵抗値を測定したところ、1.5×10-16Ω・cmであった。
[比較例1]
実施例1において、内層シートに用いた組成物(II)を組成物(I)に変更したこと以外は、実施例1と樹脂封止シートを得た。得られた樹脂封止シートについて、体積固有抵抗値を測定したところ、1.3×10-13Ω・cmであった。
[比較例2]
実施例1において、内層シートに用いた組成物(II)を組成物(III)に変更したこと以外は、実施例1と樹脂封止シートを得た。得られた樹脂封止シートについて、体積固有抵抗値を測定したところ、2.7×10-14Ω・cmであった。
上記実施例および比較例の結果から、表面層にエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む組成物(I)、内層にエチレン・α-オレフィン共重合体Aを含む組成物(II)を用いて得られた樹脂封止シート(実施例1)は、内層にエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む組成物(II)を用いて得られた樹脂封止シート(比較例1)、および内層にエチレン・α-オレフィン共重合体Bを含む組成物(III)を用いて得られた樹脂封止シート(比較例2)と比較して、体積固有抵抗値が大きく、PID耐性に優れた太陽電池モジュールを形成し得る樹脂封止シートであるといえる。

Claims (5)

  1. 内層と、前記内層の両面に位置する表面層とを含む3層以上で構成される樹脂封止シートであって、
    前記表面層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、及びエチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種類のエチレン系樹脂を含み、
    前記内層は、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含み、
    JIS K6911に準拠し、温度60℃、印加電圧1000Vで測定される樹脂封止シートの体積固有抵抗値が、1.0×1015~1.0×1018Ω・cmである、
    樹脂封止シート。
  2. 前記エチレン・α-オレフィン共重合体が、下記要件(a1)~(a4)を満たす、請求項1に記載の樹脂封止シート:
    (a1)エチレンに由来する構成単位を80~90mol%含有し、炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構成単位を10~20mol%含有する(ただし、エチレン由来の構成単位とα-オレフィン由来の構成単位との合計は100mol%である。);
    (a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~50g/10分である;
    (a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が、0.865~0.884g/cm3である;
    (a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が、60~85である。
  3. JIS K6911に準拠し、温度60℃、印加電圧1000Vで測定される樹脂封止シートの体積固有抵抗値が、1.0×1016~1.0×1018Ω・cmである、請求項1または2に記載の樹脂封止シート。
  4. 前記内層の厚さが、前記樹脂封止シートの全体の厚さに対し20%以上90%以下の範囲にある、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂封止シート。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂封止シートにより太陽電池素子が封止されてなる、太陽電池モジュール。
JP2022055380A 2022-03-30 2022-03-30 樹脂封止シートおよび太陽電池モジュール Pending JP2023147709A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022055380A JP2023147709A (ja) 2022-03-30 2022-03-30 樹脂封止シートおよび太陽電池モジュール

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022055380A JP2023147709A (ja) 2022-03-30 2022-03-30 樹脂封止シートおよび太陽電池モジュール

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023147709A true JP2023147709A (ja) 2023-10-13

Family

ID=88288652

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022055380A Pending JP2023147709A (ja) 2022-03-30 2022-03-30 樹脂封止シートおよび太陽電池モジュール

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023147709A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5016153B2 (ja) 太陽電池封止材および太陽電池モジュール
JP5877593B2 (ja) 太陽電池封止材および太陽電池モジュール
JP5859633B2 (ja) 太陽電池封止材および太陽電池モジュール
JP5405699B1 (ja) 太陽電池封止材および太陽電池モジュール
JP5444039B2 (ja) 樹脂組成物、太陽電池封止材及びそれを用いた太陽電池モジュール
US20150171247A1 (en) Solar cell module
WO2014080856A1 (ja) 太陽電池封止材および太陽電池モジュール
WO2013102984A1 (ja) 太陽電池封止材および太陽電池モジュール
JP5830600B2 (ja) 太陽電池封止材および太陽電池モジュール
JP5801733B2 (ja) 太陽電池封止材および太陽電池モジュール
JP2013229410A (ja) 太陽電池封止材および太陽電池モジュール
WO2016084681A1 (ja) 太陽電池モジュール
JP5940661B2 (ja) 太陽電池モジュール
JP2023147709A (ja) 樹脂封止シートおよび太陽電池モジュール
JP2016136628A (ja) 太陽電池モジュール及びその製造方法