JP2023136468A - 飛行体 - Google Patents

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【課題】迎角が小さい状態であっても係留飛行体の飛行を安定させることを可能とする技術を提供できる。【解決手段】線状部材によって係留される飛行体は、揚力を受けて飛行する飛行部と、飛行部の下面側に設けられており、下面における流体の流れを抑制する抑制部と、を備え、抑制部は、飛行部の長さ方向において、飛行部の前端部の位置と、前端部から全長の1/4の位置との間に設けられている。【選択図】図4

Description

本発明は、飛行体に関する。
従来より、ワイヤおよび糸などの線状部材によって係留されながら飛行する飛行体(「係留飛行体」ともいう。)が知られている。例えば、特許文献1には、風圧から揚力を発生させる翼部と、線状部材上に設けられる起点部と翼部とを接続する接続部と、を備える飛行体が記載されている。
特開2021-154976号公報
ところで、飛行体の翼部の性能の一つである抗力を下げるためには、定性的には、飛行体の長さ方向と空気の流れの方向とのなす角である迎角が小さい状態で飛行体を飛行させればよい。しかしながら、迎角が小さい状態では、風によって飛行体の飛行が不安定となることがある。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、迎角が小さい状態であっても係留飛行体の飛行を安定させることを可能とする技術を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の飛行体は、線状部材によって係留される飛行体であって、揚力を受けて飛行する飛行部と、上記飛行部の下面側に設けられており、上記下面における流体の流れを抑制する抑制部と、を備え、上記抑制部は、上記飛行部の長さ方向において、上記飛行部の前端部の位置と、上記前端部から全長の1/4の位置との間に設けられている。
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、迎角が小さい状態であっても係留飛行体の飛行を安定させることを可能とする技術を提供できる。
本発明の一実施形態に係る飛行システムの概略構成図である。 本実施形態に係る飛行体を斜め上から見た図であり、 本実施形態に係る飛行体を斜め下から見た図である。 飛行体を側面視した概略構成図である。 飛行体を正面視した概略構成図である。 抑制部を備えない飛行体において、迎角が小さいとき飛行体の下面に発生する負圧を説明するための図である。 抑制部を備えない飛行体において生じるピッチ振動現象を説明するための図である。 本実施形態に係る抑制部を備える飛行体において、迎角が小さいときに生じる負圧を説明するための図である。 飛行体を断面視したときの流速分布を解析した結果を示す図である。 飛行体の下面における圧力分布を解析した結果を示す図である。 飛行体の模型を用いて、風洞試験を行った結果を示す図である。 第1変形例に係る飛行体の概略構成図である。 第2変形例に係る飛行体が備える抑制部を説明するための図である。
[実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、複数の構成要素の各々に同一符号のみを付する。例えば、抑制部720aおよび抑制部720bのそれぞれを特に区別しないとき、これらを単に「抑制部720」と称する。
図1は、本発明の一実施形態に係る飛行システム1の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る飛行システム1は、飛行体10、線状部材15、モータ20および制御装置22を備える。
飛行体10は、線状部材15によって係留された状態で飛行する。本実施形態に係る飛行体10は、インフレータブル構造を有するカイトである。なお、飛行体10は、これに限らず、バルーンまたは気球などの揚力によって飛行できる各種の物体であってよい。
線状部材15(「テザー」ともいう。)は、飛行体10とモータ20とを接続する部材である。本実施形態に係る線状部材15は、飛行体10に接続された紐部150と、一端が紐部150に接続されており、他端がモータ20に接続されたケーブル152とを有する。
モータ20は、回転可能に構成されており、制御装置22の制御に応じてトルクを発生させて、モータ20に接続された線状部材15を巻き取ったり、線状部材15の張力を変化させたりできる。これにより、飛行体10の高度およびピッチ角などを調整できる。
制御装置22は、モータ20を制御し、例えばモータ20のトルクおよび回転速度などを制御できる。制御装置22は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Read Only Memory)およびROM(Random Access Memory)などを備えてよい。
図2および図3を参照して、本実施形態に係る飛行体10の構成をより詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る飛行体10を斜め上から見た図であり、図3は、本実施形態に係る飛行体10を斜め下から見た図である。図2および図3に示すように、飛行体10は、飛行部100、抑制部120および接続部140a,140bを備える。
飛行部100は、空気などの気体の流れによって発生する揚力を受けて飛行する。本実施形態に係る飛行部100は、翼状の形状を有しており、チューブなどを気体によって膨らませた構造であるインフレータブル構造を有する。本実施形態に係る飛行部100は、第1チューブ102、第2チューブ103およびシート104を有する。
第1チューブ102および第2チューブ103のそれぞれは、気体の注入によって膨らんで構成されている。第1チューブ102は、飛行部100の前方に配置されており、その中央は、飛行部100の前端部110(「前縁」ともいう。)を構成する。また、第2チューブ103は、第1チューブ102の後ろ側に配置されている。シート104は、第2チューブ103の上面を覆うように、第1チューブ102および第2チューブ103に固定されている。
本実施形態では、飛行部100の右側の後縁114と左側の後縁116とを結ぶ直線が後端部113を構成する。前端部110から後端部113に向かう方向は、前端部110と後端部113の中点112とを結ぶ方向として定義され、前端部110と後端部113との間の距離を飛行部100の全長(「翼弦長」ともいう。)とする。
抑制部120(「スポイラ」ともいう。)は、飛行部100の下面側に設けられており、飛行部100の下面における流体(例えば、空気など)の流れを抑制する。後述するように、飛行体が抑制部を備えない場合には、迎角が小さいとき、流体の流れによって飛行体の下面に負圧が発生する。本実施形態に係る抑制部120は、飛行部100の下面における流体の流れを抑制することにより、飛行部100の下面に負圧が発生することを抑えることができる。このため、本実施形態に係る飛行体10は、迎角が小さい状態でも安定した飛行を維持できる。
本実施形態に係る抑制部120は、第1チューブ102から下方に突出した突起部として形成され、第1チューブ102に沿って延びる円柱状の形状を有する。なお、抑制部120の形状はこれに限定されるものではなく、板状など任意の形状を有してよい。また、本実施形態で、抑制部120は、飛行部100の第1チューブ102に直接的に固定されているが、これに限らず、抑制部120は、飛行部100と離間した位置に設けられ、他の部材を介して飛行部100に固定されてよい。
また、抑制部120は、動かないように固定されてもよいし、動作可能に構成されてもよい。抑制部120が動作可能である場合には、例えば、抑制部120は、通常時には第1チューブ102の内部に配置され、必要に応じて第1チューブ102の下面から突出するように動作してもよい。例えば、抑制部120は、飛行部100の迎角が所定の角度になった場合、あるいは飛行部100の下面における流速または負圧が所定の値以上になった場合に、第1チューブ102の下面から突出するように動作してもよい。
接続部140は、線状部材15が接続される部材であり、飛行部100のシート104に固定されている。線状部材15は、飛行部100に直接的に接続されてもよく、例えば第1チューブ102に接続されてもよい。
図4を参照して、本実施形態に係る抑制部120の配置および構成について、より詳細に説明する。図4は、飛行体10を側面視した概略構成図である。図4では、飛行体10が備える飛行部100および抑制部120を簡略的に示している。
抑制部120は、飛行部100の前端部110から、飛行部100の長さ方向において、飛行部100の全長の1/4までの範囲に設けられている。より詳細には、抑制部120は、前端部110から長さ方向に翼弦長の1/4離れた位置118を含む、長さ方向に垂直な面119よりも前方側に設けられている。抑制部120を前端部110から翼弦長の1/4までの範囲に設けることにより、飛行部100の下面に負圧が生じることを抑制し、飛行体10の飛行を安定させることができる。
本発明者らは、シミュレーション解析により、前端部110から翼弦長の1/4(25%)までの範囲であれば、抑制部120の効果が得られるという知見を得ている。さらに、翼弦長の1/4よりも前方に抑制部120を設けることにより、負圧の発生をより確実に抑制できるという知見を得ている。この知見によれば、例えば、抑制部120の位置は、前端部110から翼弦長の13%までの範囲であってよい。これにより、飛行部100の下面における負圧の発生をより確実に抑制できる。
ここで、飛行部100について、長さ方向および幅方向に垂直な方向の長さを飛行部100の厚みと定義し、飛行部100の厚み方向と同じ方向の抑制部120の長さを抑制部120の高さと定義する。このとき、抑制部120の高さHは、飛行部100の最大の厚みをTとしたとき、例えば0.1<H/T<0.4を満たす高さであってよい。H/Tを0.1より大きくすることにより、飛行部100の下面における負圧の発生をより確実に抑制できる。また、H/Tを0.4未満とすることにより、抑制部120が大きくなり過ぎ、抑制部にかかる力が大きくなることによって、別の空力的に不安定な現象が発生することを抑制できる。
図5は、飛行体10を正面視した概略構成図である。図5に示すように、飛行部100および抑制部120は、飛行部100を正面視した場合に、左右対称となるように配置されている。これにより、飛行体10が受ける風圧が左右対称となり、また、飛行体10の重量バランスが左右でとれるため、飛行体10の飛行がより安定する。
以上、本実施形態に係る飛行体10について説明した。本実施形態に係る飛行体10は、線状部材15によって係留される飛行体10であって、揚力を受けて飛行する飛行部100と、飛行部100の下面側に設けられており、下面における流体の流れを抑制する抑制部120と、を備える。抑制部120は、飛行部100の前端部110から、長さ方向において、飛行部100の長さ方向において、飛行部100の前端部110の位置と、前端部110から全長の1/4の位置との間に設けられている。
この態様によれば、抑制部120が飛行部100の下面における流体の流れを抑制できるため、飛行部100の下面における負圧の発生が抑制される。この結果、飛行体の迎角が小さい場合であっても、飛行体の飛行を安定させることが可能となる。
[ピッチ振動現象]
係留飛行体は、線状部材によって地上に係留され、空力面に生じる空気力と線状部材による張力とが釣り合うことにより、一定の場所に滞空する。風速が低いときには、係留飛行体は、定性的に大きい迎角の形態(高揚力形態)で飛翔し、十分な揚力を発生させる。また、風速が高いときには、係留飛行体は、線状部材および地上設備を保護するために、小さい迎角の形態(低揚力形態)で滞空するのに十分な揚力を発生させる。つまり、風速が高い環境では、迎角が小さい状態で係留飛行体を飛行させることが好ましい。
一方、迎角が小さい状態では、後述するように、係留飛行体にはピッチ方向の上下振動(「ピッチ振動」ともいう。)が発生する。この上下振動は、飛行体10のサイズおよび風速などによって変化するが、飛行体に対して、10G以上(1G=9.81m/s)の大きな加速度・加重を発生させ、係留飛行体およびその搭載物に強い負荷をかける。
係留飛行体を構成する平面形状あるいは翼断面形状の翼は、小さい正の迎角~小さい負の迎角の領域において、係留飛行体に頭下げモーメントを発生させる。また、自然環境では、水平方向および上下方向に風の乱れが常に発生しており、確率的に翼に入射する相対迎角および相対速度が変動するため、頭下げモーメントを発生させる。
係留飛行体は、自身の対地速度が非常に小さいため、風の乱れによる変動の影響を受け、頭下げモーメントを発生させやすい。特に、迎角が小さい状態で飛行している係留飛行体が下方への風の外乱を受けることにより、容易に頭下げモーメントが係留飛行体に発生する。これにより、係留飛行体は、急激に揚力を失い、下降状態に遷移する。このとき、係留飛行体は、地上に係留する線状部材との運動練成により、下降および上昇を繰り返す振動的な運動を持続する状態に陥る傾向がある。
係留飛行体が高い速度(例えば、約14m/s以上)の風を受けると、飛行体が空力的に不安定となる。具体的には、係留飛行体にピッチ方向の強い振動が発生し、係留飛行体の飛行が困難となる場合がある。このとき、係留飛行体に取り付けられたハーネス、配管類の損傷およびテザー、ウインチへの振動による負荷が大きくなる。
係留飛行体の翼の性能の一つである揚抗比を向上させていくと(すなわち、抗力を小さく、あるいは揚力を大きくしていくと)、係留飛行体は、エレベーション角が大きく、小さい外乱で落ちてしまう凧(いわゆる天井凧)となる。このとき、揚抗比が高く、また、翼において揚力が抗力に比べて大きく発生している状態では迎角が定性的に小さい。このため、小さな外乱でピッチングモーメントが、負の領域、すなわち頭下げモーメントの領域に入り込む。この結果、一気に係留飛行体のピッチ角が下がり、揚力が負になって、係留飛行体が急降下し始める。
図6および図7を参照して、係留飛行体のピッチ振動現象について、より詳細に説明する。図6は、抑制部を備えない飛行体40において、迎角が小さいとき飛行体40の下面に発生する負圧を説明するための図である。また、図7は、抑制部を備えない飛行体40において生じるピッチ振動現象を説明するための図である。
図6に示すように、飛行体40の飛行部400の前端部402(前縁)と後端部404(後縁)とを結ぶ直線と、風の流れる向きとのなす角を迎角αとする。この迎角αが小さいとき、飛行部400の下面の前方において負圧が発生し、また、飛行部400の後端部404付近において正圧が生じる。これにより、飛行体40には、頭下げモーメントがはたらく。
このとき、図7(a)に示すように、飛行体40の下面の領域408における負圧によって飛行体40が頭を下げるように回転し、飛行体40が下降する。すると、図7(b)に示すように、飛行体40に設けられた線状部材410が緩む。そこで、線状部材410の張力を強めると、図7(c)に示すように、飛行体40の前方が上向きとなるように回転し、飛行体40が上昇する。しかし、飛行体40の迎角が小さくなると、飛行体40の下面には負圧が発生するため、図7(a)に示すように、飛行体40が頭を下げるように回転し、飛行体40が下降する。このように飛行体40の下降と上昇を繰り返すピッチ振動現象が生じると、飛行体40に大きな負荷がかかる。
図8は、本実施形態に係る抑制部を備える飛行体10において、迎角βが小さいときに生じる負圧を説明するための図である。本実施形態に係る飛行体10は、図8に示すように、飛行部100の下面に抑制部120が設けられている。抑制部120は、飛行部100の下面における空気の流れを剥がすことにより、飛行体10の前端部110の下面側に通常発生する負圧を緩和して、飛行体10のピッチングモーメントを正に増加させる。この結果、飛行体10が頭を下げるように回転することが抑制され、ピッチ振動が抑えられるため、迎角βが小さい場合であっても、飛行体10は安定して飛行できる。
[解析]
図9および図10を参照して、実施例および比較例に係る飛行体について、CFD(Computational Fluid Dynamics)により解析した結果を説明する。ここで、実施例に係る飛行体は、上述した抑制部を下面に備える飛行体であり、比較例に係る飛行体は、抑制部を備えない飛行体である。図9は、飛行体を断面視したときの流速分布を解析した結果を示す図である。また、図10は、飛行体の下面における圧力分布を解析した結果を示す図である。
図9は、飛行体の断面視において、迎角が5°のときの抑制部の有無による流速分布の差を、CFDにより解析した結果を示している。図9(a)は、比較例に係る流速分布を示し、図9(b)は、実施例に係る流速分布を示している。図9では、圧力分布をグレースケールで示しており、色が濃いほど流速が速いことを示している。図9(a)に示す2つの円502,504は、比較例に係る飛行体の2つのチューブの断面を示し、図9(b)に示す2つの円522,524は、実施例に係る飛行体の2つのチューブの断面を示している。
図9(a)に示すように、比較例に係る飛行体の下面側の領域R3において、速い流速の領域が、特に前縁側(領域R3の左側)に偏って生じていることがわかる。一方、図9(b)に示すように、実施例に係る飛行体の下面側の領域R4では、流体の流れが剥がされ、比較例の領域R3よりも、飛行体の下面における流速が低下していることがわかる。
図10において、中央の線Lよりも左側は、比較例に係る飛行体50の下面における圧力分布の解析結果を示し、線Lよりも右側は、実施例に係る飛行体52の下面における圧力分布の解析結果を示している。図10では、飛行体の下面における圧力の分布をグレースケールで示しており、色が濃いほど負圧が強いことを示しており、黒い領域は負圧の領域であり、白い領域は正圧の領域である。
図10に示すように、比較例に係る飛行体50の下面では、飛行体50の前方の領域R1の黒い領域において、負圧が発生していることが分かる。一方、実施例に係る飛行体52の下面では、前縁付近の領域R2において負圧が消失し、前縁から飛行体52の中央を過ぎる領域までにおいて圧力分布が均一となっている。したがって、実施例では、抑制部によって頭下げモーメントが抑えられていることがわかる。このように、実施例に係る飛行体では、抑制部によって飛行体の下面における空気の流れを抑制し、頭下げモーメントを抑えられることがいえる。
[風洞試験]
図11は、飛行体の模型を用いて、風洞試験を行った結果を示す図である。実施例に係る飛行体は、係留飛行体を模した風洞試験模型の飛行体の前縁の下面に、抑制部として機能する突起(スポイラ)を配置した飛行体である。また、比較例に係る飛行体は、突起を有しない風洞試験模型の飛行体である。
図11において、横軸は飛行体の迎角を示し、縦軸は飛行体のピッチングモーメント係数を示す。図11に示すように、比較例では、小さい迎角においてピッチングモーメント係数が小さく、頭を下げやすい特性が示されている。一方、実施例に係る飛行体のピッチングモーメント係数は、迎角が0°~15°の範囲において、比較例に係る飛行体のピッチングモーメント係数よりも大きくなっている。したがって、実施例に係る飛行体は、0°~15°という小さい迎角において、比較例に係る飛行体よりも、急激に頭が下がらない特性を得ていることがわかる。このため、実施例に係る飛行体は、比較例に係る飛行体よりも安定して飛行できるといえる。
[フライト試験]
本発明者らは、同日・同時間帯に、実施例に係る飛行体および比較例に飛行体を飛行させる比較試験を実施した。比較試験を実施したときの地上風速は、15m/sであった。実施例に係る飛行体では、比較例に係る飛行体に比べて、顕著にピッチ振動が抑制されることが確認された。比較例に係る飛行体の飛行ではピッチ振動が確認されたが、実施例に係る飛行体は安定して飛行していることが確認された。
[第1変形例]
図12は、第1変形例に係る飛行体60の概略構成図である。第1変形例に係る飛行体60は、飛行部600、突起部602、可動部604および制御装置606を備える。
第1変形例に係る飛行体60では、突起部602は、可動部604を介して飛行部600に接続されている。可動部604は、動作可能に構成されており、例えば、飛行部600の幅方向の回転軸を中心に回転可能に構成されてよく、ヒンジなどで構成されてよい。可動部604が回転すると、突起部602は可動部604と一体となって回転する。
制御装置606は、可動部604を制御する装置である。制御装置606は、CPU、RAMおよびROMなどを備えてよい。
制御装置606は、突起部602が飛行部600の下面から突出して、抑制部として機能するように可動部604を制御してよいし、突起部602の一部または全体が飛行部600の内部に収容されるように可動部604を制御してもよい。また、制御装置606は、飛行体60の状態に応じて、可動部604を制御してよい。例えば、制御装置606は、飛行部600の下面において所定の大きさの負圧が検出された場合、あるいは飛行部600の迎角が所定の角度であることが検出された場合に、飛行部600の下面から突起部602が突出するように、可動部604を制御してよい。
第1変形例に係る飛行体60によれば、突起部602は可動部604によって、飛行部600に接続されている。このため、突起部602を状況に応じた位置に設けることが可能となる。
なお、第1変形例では、可動部604が飛行部600と密着している例について説明した。これに限らず、可動部604は、飛行部600から離間して配置されてもよい。この場合、飛行部600と可動部604とを接続する部材が別途設けられてよい。
[第2変形例]
図13は、第2変形例に係る飛行体が備える抑制部720を説明するための図である。第2変形例では、インフレータブル構造の飛行体の前縁を構成するチューブ70の下面に沿って、飛行体の幅方向に2つの抑制部720a,720bが並べて配置されている。
第2変形例に係る抑制部720aは、2つの支持部722a,722bと、支持部722a,722bによって両端を支持されたシート部724aとを有する。また、支持部722bは、支持部722c,722dと、支持部722c,722dによって両端を支持されたシート部724bとを有する。
シート部724は、剛体であってもよいし、柔軟な(変形可能な)構造であってもよい。シート部724は、例えば、旗のように風によって振動する部材で構成されてよい。また、第2変形例に係るシート部724は、チューブ70と接触しないように設けられている。このように抑制部720の少なくとも一部が飛行部と接触しない場合であっても、抑制部720は、飛行部の下面における流体の流れを抑制し、迎角が小さいときに飛行部の下面に負圧が発生することを抑えることができる。
[補足]
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
1 飛行システム、10,60 飛行体、15 線状部材、100,600 飛行部、102 第1チューブ、103 第2チューブ、104 シート、110 前端部、113 後端部、120,720 抑制部、140 接続部、602 突起部、604 可動部、724 シート部。

Claims (4)

  1. 線状部材によって係留される飛行体であって、
    揚力を受けて飛行する飛行部と、
    前記飛行部の下面側に設けられており、前記下面における流体の流れを抑制する抑制部と、を備え、
    前記抑制部は、前記飛行部の長さ方向において、前記飛行部の前端部の位置と、前記前端部から全長の1/4の位置との間に設けられている、
    飛行体。
  2. 前記抑制部は、動作可能に構成されている、
    請求項1に記載の飛行体。
  3. 前記飛行部は、インフレータブル構造を有し、
    前記抑制部は、前記インフレータブル構造のチューブの形状に沿って、前記チューブの下面側に設けられている、
    請求項1または2に記載の飛行体。
  4. 前記抑制部は、前記飛行部を正面視した場合に左右対称となるように配置されている、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の飛行体。
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