JP2023135989A - レール破断の検知装置及びレール破断の検知方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】無次元特徴パラメータを使用することで、レール破断を車両側から精度よく検知させることが可能なレール破断の検知装置を提供する。【解決手段】レール破断を車両側から検知させるレール破断の検知装置である。そして、車両1に取り付けられる加速度センサ3と、加速度センサによって測定された加速度データを記録するデータレコーダ4と、加速度データに低周波バンドパスフィルタ処理を施す低周波フィルタ処理部と、低周波フィルタ処理部によって抽出された低周波成分の絶対値の最大値を加速度閾値と比較する最大値判定部と、低周波フィルタ処理部によって抽出された低周波成分から求められる無次元特徴パラメータを閾値と比較するパラメータ判定部と、最大値判定部及びパラメータ判定部の判定結果に基づいてレール破断の有無を判定する破断判定部とを備えている。【選択図】図1
Description
本発明は、レール破断を車両側から検知させるレール破断の検知装置及びレール破断の検知方法に関するものである。
鉄道におけるレール破断は、繰り返しの車両走行によってレールが損傷することで発生し、車両の走行安全性を著しく低下させる。そのため、特許文献1に開示されているように、鉄道事業者は軌道回路と呼ばれる車両の位置検知を目的としたレールに流している信号電流によって、レール破断を検知している。
軌道回路を利用した検知方法は、レールが破断した際に、破断したレールが開口して電流が短絡することで検知する方法である。軌道回路は、レールに信号電流を流すことで実現しているシステムであるため、その信号電流をき電する装置や、電車線から車両へ電力を供給し、その下のレールを使って変電所に返す電流等の軌道回路の信号電流と異なる電流を回路で分ける役割があるインピーダンスボンド等の地上設備のメンテナンスに、多大なコストを要している。
一方、車両の位置検知を無線で行う技術の開発が進んでおり、軌道回路を維持する必要性が低下している。また、信頼性の観点から見ると、軌道回路を利用した検知方法は、レールが破断しても開口しない場合や金属が介在すると電流が流れる等の原因で、誤検知を起こすこともある。
そこで、特許文献2に開示されているように、軌道回路を利用しない既存の鉄道車両(保守用車を含む)の車上からレール破断を検知する手法の開発が進んでいる。例えば特許文献2には、上下方向の軸箱振動加速度(以下、「軸箱加速度」という。)を利用する手法が開示されており、レール破断部を列車が走行した際に発生する軸箱加速度の測定値に基づいて、レール破断部を検出している。
ここで、鉄道の軌道には、継目やまくらぎの浮きや締結装置の不良箇所などが存在し、車両にレール破断を検知させるためのセンサを取り付けて測定を行った場合、レール破断だけでなく、継目などにおいても類似する検出値が出力されることがある。
こうした類似状態とレール破断とを区別するために、特許文献2では、軸箱加速度の高周波成分及び低周波成分を閾値を基準に判定する方法を採用しているが、より検知精度を高めるために、さらなる開発が望まれている。
そこで、本発明は、無次元特徴パラメータを使用することで、レール破断を車両側から精度よく検知させることが可能なレール破断の検知装置及びレール破断の検知方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明のレール破断の検知装置は、レール破断を車両側から検知させるレール破断の検知装置であって、車両に取り付けられる加速度センサと、前記加速度センサによって測定された加速度データを記録する記憶部と、前記加速度データに低周波バンドパスフィルタ処理を施す低周波フィルタ処理部と、前記低周波フィルタ処理部によって抽出された低周波成分の絶対値の最大値を加速度閾値と比較する最大値判定部と、前記低周波フィルタ処理部によって抽出された低周波成分から求められる無次元特徴パラメータを閾値と比較するパラメータ判定部と、前記最大値判定部及び前記パラメータ判定部の判定結果に基づいてレール破断の有無を判定する破断判定部とを備えたことを特徴とする。
ここで、前記無次元特徴パラメータは、歪度、尖度及び波高率の少なくとも1つであることが好ましい。また、前記最大値判定部によりレール破断と判定され、かつ前記パラメータ判定部によりレール破断と判定された場合に、前記破断判定部ではレール破断が有ると判定することができる。さらに、前記加速度センサは、前記車両の軸箱支持装置に取り付けられて上下加速度を測定する構成とすることができる。
また、レール破断の検知方法の発明は、レール破断を車両側から検知させるレール破断の検知方法であって、加速度センサを備えた車両をレールに沿って走行させることで加速度データを取得するステップと、前記加速度データに低周波バンドパスフィルタ処理を施すステップと、前記低周波バンドパスフィルタ処理によって抽出された低周波成分の絶対値の最大値及び無次元特徴パラメータを求めるステップと、前記最大値及び前記無次元特徴パラメータの値に基づいて、前記レール破断の有無を判定するステップとを備えたことを特徴とする。
このように構成された本発明のレール破断の検知装置は、車両に取り付けられた加速度センサによって測定された加速度データに低周波バンドパスフィルタ処理を施し、それによって抽出された低周波成分の絶対値を利用するだけでなく、低周波成分から求められる無次元特徴パラメータも利用して、レール破断の有無を判定する。
このような構成であれば、地上側に何の設備を設けなくても、レール破断を車両側から検知させることができる。また、無次元特徴パラメータも併せて使用することで、レール破断を精度よく検知させることができるようになる。
無次元特徴パラメータとしては、歪度、尖度、波高率が利用できる。また、加速度センサは、車両の軸箱支持装置に検査用に取り付けることも、もともと取り付けられている加速度センサを利用することもできる。
また、レール破断の検知方法の発明は、加速度センサを備えた車両をレールに沿って走行させて加速度データを取得し、測定された加速度データに低周波バンドパスフィルタ処理を施した結果の絶対値と無次元特徴パラメータとを利用することで、レール破断の有無を精度よく判定することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態のレール破断の検知装置の構成を模式的に示した説明図である。
軌道を構成するレール2は、レール2に沿って走行する車両1の車輪12との接触が繰り返されることで、レール破断が起きることがある。レール破断箇所21として開口が生じると、状態によっては図3(a)に示すような沈み込み箇所211となる場合もある。要するにレール2は、まくらぎ22上に差し渡されて締結装置23で固定されているが、まくらぎ22,22間にレール破断が起きると、片持ち梁状となったレール2が沈み込み箇所211となることがある。
一方、車両1は、保守用車両であっても、列車などを構成する一般的な鉄道車両であってもよい。以下では、直方体状の箱型の車体に、前後方向に間隔を置いて台車11が配置される車両1を例に説明する。
台車11は、平面視長方形状の台車枠111を備え、一対のレール2のそれぞれを走行する車輪12が車軸によって連結されている。また、1台の台車11には、前後方向に2組の車輪12及び車軸の組み合わせ(輪軸)が設けられる。さらに、車軸の端部には、軸箱112及び軸箱支持装置が設けられる。
このように構成された台車11の台車枠111及び軸箱支持装置などの少なくとも1箇所には、加速度センサ3が取り付けられる。この加速度センサ3は、上下方向の加速度(上下加速度)が測定できるように取り付けられる。
加速度センサ3は、有線又は無線によって車両1に搭載されたデータレコーダ4に接続される。データレコーダ4は、加速度センサ3によって測定された加速度データを記録する記憶部となる。
そして、データレコーダ4に記録された加速度データは、演算処理部を備えたパーソナルコンピュータなどのPC部5によって解析される。このPC部5は、車両1に搭載されていてもよいし、車両1とは別の管理棟などに設置されていてもよい。また、PC部5が車両1以外にある場合は、データレコーダ4からリアルタイム又は定期的にデータが転送される構成であってもよいし、データレコーダ4又はそれに挿し込まれたフラッシュメモリ等の記憶媒体を接続したときにデータが転送される構成であってもよい。
PC部5は、加速度データに低周波バンドパスフィルタ処理を施す低周波フィルタ処理部と、低周波成分の絶対値の最大値を加速度閾値と比較する最大値判定部と、低周波成分から求められる無次元特徴パラメータを閾値と比較するパラメータ判定部と、レール破断の有無を判定する破断判定部とを備えている。
低周波フィルタ処理部では、加速度センサ3で測定された加速度データに、低周波バンドパスフィルタ(BPF:Band pass filter)処理を施す。低周波バンドパスフィルタは、輪軸の質量と軸ばね及び軌道ばねとに起因して発生する応答(加速度)を抽出するためのフィルタである。低周波バンドパスフィルタとしては、0.001Hz - 30Hzの範囲の周波数帯のものが使用できる。
低周波バンドパスフィルタ処理の周波数帯を設定するためには、例えばレール破断を検査する線区を走行する車両1及び軌道に基づいて解析を行うことができる。本実施の形態では、30Hzの低周波バンドパスフィルタを適用する。
最大値判定部では、低周波フィルタ処理部によって抽出された低周波成分の絶対値の最大値を抽出する。そして、その絶対値の最大値(MFABA:Maximum of Filtered axle-box acceleration)を、任意に設定可能な閾値となる加速度閾値と比較する。
さらに、パラメータ判定部では、低周波フィルタ処理部によって抽出された低周波成分から無次元特徴パラメータを算出する。無次元特徴パラメータとしては、歪度、尖度、波高率などが使用できる。
無次元特徴パラメータとなる歪度(skewness)は、データの分布が正規分布からどれだけ歪んでいるかを表す統計量である。あるデータXの平均値がμ、標準偏差がσの時に、Xの歪度αは、次の式で求めることができる。
α=E[(X - μ)3]/σ3
ここに、E(X)はXの期待値である。歪度は、データの非対称性を表す指標であり、Xの分布が左にずれているときはαが大きくなり、右にずれているときはαが小さくなる。
α=E[(X - μ)3]/σ3
ここに、E(X)はXの期待値である。歪度は、データの非対称性を表す指標であり、Xの分布が左にずれているときはαが大きくなり、右にずれているときはαが小さくなる。
無次元特徴パラメータとなる尖度(kurtosis)は、データの分布が正規分布からどれだけ尖っているかを表す統計量である。あるデータXの平均値がμ、標準偏差がσの時に、Xの尖度βは、次の式で求めることができる。
β=E[(X - μ)4]/σ4 - 3
尖度は、データが平均近傍に鋭いピークを持って集中し、データの裾が狭い場合に大きな値を取る。
β=E[(X - μ)4]/σ4 - 3
尖度は、データが平均近傍に鋭いピークを持って集中し、データの裾が狭い場合に大きな値を取る。
無次元特徴パラメータとなる波高率(crest factor)は、波形の最大値を実効値で割った値である。ある波形Xの波高率γは、波形のピーク値max(X)を実効値rms(X)で除した値である。
γ=max(X)/rms(X)
γ=max(X)/rms(X)
ここで、図2は、異常のないレール(健全部)に沿って車両1を走行させたときの加速度波形を説明するための図である。図2(a)は、健全部のレールの状態と、その上を走行する車両1の加速度センサ3が取り付けられた台車11を示している。
そして、図2(b)は、レール2の健全部を走行した車両1の加速度センサ3によって測定された加速度データを例示した図である。この図には、加速度データによって作成される加速度波形RDと振幅中心RD1とを示している。
鉄道の軌道には、継目、まくらぎ22の浮き、段違い箇所、締結装置23の不良箇所、欠線部又は分岐器がある箇所などが存在する。このような箇所を車両1が走行した際に、健全部と異なる応答を軸箱支持装置や台車枠111の上下加速度として示すことになる。
図3は、レール破断が起きているときの加速度波形を説明するための図である。図3(a)は、レール破断によって沈み込み箇所211が発生している状態を示している。また、図3(b)は、沈み込み箇所211を走行した車両1の加速度センサ3によって測定された加速度データを例示した図である。
上述した継目やまくらぎ22の浮きなどだけでなく、レール破断箇所21や沈み込み箇所211を車両1が走行した際にも、健全部と異なる応答が軸箱支持装置や台車枠111の上下加速度として示されることになる。レール破断を検知するためには、こういった様々な応答からレール破断部の応答を区別する必要がある。
そこで、レール破断箇所21を模擬したレール開口部やレール継目部などが設けられたレール2を使って、軸箱支持装置に加速度センサ3が取り付けられた車両1を走行させる走行試験を行った。
走行試験は、車両1の最大走行速度を40km/hとして行った。また、レール開口部の模擬は、一対のレール2の一方に遊間0mmのレール破断箇所21を設けるとともに、その下に通常の長さの半分の半まくらぎを挿入して支持させた。この実験条件は、半まくらぎによって変位やこの部分の軌道の支持剛性の低下が抑制されることなどから、レール破断として検知することが最も難しい条件と言える。
図4は、走行試験によって得られた加速度データの低周波成分の絶対値の最大値(m/s2)を、走行速度との関係で示したグラフである。走行区間には「×印」で示したレール開口部(R0s)の他に、7箇所のレール継目部(1J-6J,9J)が設けられている。
黒塗りのプロットで示した4箇所のレール継目部(1J-4J)は、状態が良好な継目部である。一方、白抜きのプロットで示した残りの3箇所(5J,6J,9J)は、段違い(5Jは-1mm,6Jは+1mm,9Jは+2mm)や浮きまくらぎ(5J,6J)が存在する、状態が不良な継目部である。
図4を見ると分かるように、状態が良好なレール継目部(1J-4J)については応答が小さいが、不良な3箇所(5J,6J,9J)のレール継目部については、レール開口部(R0s)よりも大きな応答が得られている。
図4には、レール開口部(R0s)を通過した時に得られた軸箱加速度の低周波成分の絶対値の最大値のデータを、速度を変数として線形回帰した回帰式を破線で示した。この回帰式の破線に基づいて、最大値判定部の加速度閾値を設定することができる。
しかしながら、上述したように、不良な状態のレール継目部では、レール開口部よりも大きな絶対値の最大値となっているものもあるので、この低周波成分の絶対値の最大値の回帰式では、状態が良好なレール継目部とレール破断とを区別することしかできないことが分かる。
一方、図5は、走行試験によって得られた加速度データの低周波成分から求められる歪度を、走行速度との関係で示したグラフである。図5を見ると分かるように、無次元特徴パラメータである歪度を縦軸とすることで、レール継目部の不良状態によっては、レール破断と区別できるようになる。
詳細には、レール開口部(R0s)を通過した時に得られた軸箱加速度の低周波成分から求められる歪度を、速度を変数として線形回帰した回帰式(破線)を作成して、それを基準にしてパラメータ判定部の閾値を設定することができる。この結果、不良な2箇所(6J,9J)のレール継目部については、レール開口部(R0s)と区別することができるようになる。
図6は、走行試験によって得られた加速度データの低周波成分から求められる尖度を、走行速度との関係で示したグラフである。図6を見ると分かるように、無次元特徴パラメータである尖度を縦軸とすることでも、レール継目部の不良状態によっては、レール破断と区別できるようになる。
詳細には、レール開口部(R0s)を通過した時に得られた軸箱加速度の低周波成分から求められる尖度を、速度を変数として線形回帰した回帰式(破線)を作成して、それを基準にしてパラメータ判定部の閾値を設定することができる。この結果、不良な1箇所(9J)のレール継目部については、レール開口部(R0s)と区別することができるようになる。
図7は、走行試験によって得られた加速度データの低周波成分から求められる波高率を、走行速度との関係で示したグラフである。図7を見ると分かるように、無次元特徴パラメータである波高率を縦軸とすることでも、レール継目部の不良状態によっては、レール破断と区別できるようになる。
詳細には、レール開口部(R0s)を通過した時に得られた軸箱加速度の低周波成分から求められる波高率を、速度を変数として線形回帰した回帰式(破線)を作成して、それを基準にしてパラメータ判定部の閾値を設定することができる。この結果、不良な1箇所(6J)又は2箇所(6J,9J)のレール継目部については、レール開口部(R0s)と区別することができるようになる。
そこで、上述した回帰式に基づいて設定された閾値を、ある路線において40km/h以下で通過した202箇所のレール継目部で得られた軸箱加速度の低周波成分と比較することで、誤検知数の評価を行った。まず、絶対値の最大値を単独で使用した場合には、30箇所のレール継目部がレール破断として誤検知された。要するに、誤検知率は、14.85%であった。
一方、歪度を単独で使用して評価した場合には、6箇所のレール継目部がレール破断として誤検知された。要するに、誤検知率は、2.97%であった。そこで、絶対値の最大値と歪度の両方が回帰式の値を超過するレール継目部を調べると3箇所となり、誤検知率は1.49%まで減少することが判明した。
同様に、尖度を単独で使用して評価した場合には、24箇所のレール継目部がレール破断として誤検知された。要するに、誤検知率は、11.88%であった。そこで、絶対値の最大値と尖度の両方が回帰式の値を超過するレール継目部を調べると14箇所となり、誤検知率は6.93%まで減少することが判明した。
また、波高率を単独で使用して評価した場合には、81箇所のレール継目部がレール破断として誤検知された。要するに、誤検知率は、40.10%であった。そこで、絶対値の最大値と波高率の両方が回帰式の値を超過するレール継目部を調べると24箇所となり、誤検知率は11.88%まで減少することが判明した。
次に、本実施の形態のレール破断の検知方法について、図8に示したフローチャートを参照しながら説明する。
まず上述したように、加速度センサ3を車両1の台車11の台車枠111の側面や軸箱112まわりの軸箱支持装置に取り付ける。加速度センサ3は、少なくとも1箇所に、上下加速度が測定できるように取り付けられていればよい。加速度センサ3は、車両1に搭載されたデータレコーダ4に接続される。
ステップS1では、車両1を処理区間のレール2に沿って走行させることで、軸箱支持装置の上下加速度である軸箱加速度、台車11(台車枠111)の上下加速度である台車加速度などの加速度データを検出させる。
加速度センサ3によって検出された加速度データは、距離程などの位置情報に換算できる情報とともにデータレコーダ4に記録される。例えば一定速度で車両1を走行させる場合は、加速度データに測定時刻を紐付けておくことで、位置情報に変換することができる。また、GPS(Global Positioning System)に基づく位置情報を、測定された加速度データに紐付けることもできる。
データレコーダ4に記録された加速度データは、PC部5に転送される。PC部5の低周波フィルタ処理部では、加速度データに30Hzの低周波バンドパスフィルタ処理が施される。
ステップS2では、低周波バンドパスフィルタ処理が施された加速度波形から得られる絶対値の最大値(MFABA)を抽出するとともに、低周波バンドパスフィルタ処理が施された加速度波形から無次元特徴パラメータを算出する。ここでは、無次元特徴パラメータとして、歪度を算出する。
続いて、ステップS3では、絶対値の最大値(MFABA)と加速度閾値とを比較する。この加速度閾値は、例えば図4の回帰式を基準にして標準偏差σ分だけ下方に平行に引かれる線とすることができる。この例では、絶対値の最大値(MFABA)が加速度閾値より小さい場合には、良好なレール継目部などでレール破断でない、と判定される。判定の際には、設備データの継目位置と照合することなどを併せて行ってもよい。そして、ステップS7に移行して、「問題なし」とデータレコーダ4に記録される。
これに対して、絶対値の最大値(MFABA)が加速度閾値以上となる場合は、無次元特徴パラメータと閾値とを比較する(ステップS4)。この閾値は、例えば図5の歪度の回帰式を基準にして標準偏差σ分だけ下方に平行に引かれる線とすることができる。この例では、歪度が閾値より小さくなる場合には、状態不良のレール継目部などでレール破断でない、と判定される。判定の際には、設備データの継目位置と照合することなどを併せて行ってもよい。そして、ステップS6に移行して、「状態不良の継目部」とデータレコーダ4に記録される。
これに対して、歪度が閾値以上となる場合は、レール破断が有る、と判定される。そして、ステップS5に移行して、「レール破断」とデータレコーダ4に記録される。このような破断判定部によるレール破断の有無などの判定結果は、PC部5に接続されたモニタなどに出力させることができる。
そして、ある処理区間で測定された加速度データに対して、破断判定部によっていずれかの判定がなされた後には、車両1は、次の処理区間に移動することになる(ステップS8)。
次に、本実施の形態のレール破断の検知装置及びレール破断の検知方法の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態のレール破断の検知装置は、車両1に取り付けられた加速度センサ3によって測定された加速度データに低周波バンドパスフィルタ処理を施し、それによって抽出された低周波成分の絶対値を利用するだけでなく、低周波成分から求められる無次元特徴パラメータも利用して、レール破断の有無を判定する。
このように構成された本実施の形態のレール破断の検知装置は、車両1に取り付けられた加速度センサ3によって測定された加速度データに低周波バンドパスフィルタ処理を施し、それによって抽出された低周波成分の絶対値を利用するだけでなく、低周波成分から求められる無次元特徴パラメータも利用して、レール破断の有無を判定する。
このような構成であれば、地上側に何の設備を設けなくても、レール破断を車両1側から検知させることができる。また、無次元特徴パラメータも併せて使用することで、上述したように、誤検知数を減らしてレール破断を精度よく検知させることができるようになる。
無次元特徴パラメータとしては、歪度、尖度、波高率が利用できる。特に、歪度による判定を併用した場合に、大幅に誤検知率を減少させることができる。3種類の無次元特徴パラメータは、それぞれ低周波成分の絶対値による判定と組み合わせることもできるし、複数の無次元特徴パラメータを併せて使用することもできる。
また、加速度センサ3は、車両1の軸箱支持装置に取り付けることができるが、レール破断検知以外の目的で予め取り付けられている加速度センサ3があれば、それを利用することもできる。
さらに、加速度データが位置情報に関するデータとともにデータレコーダ4に記録されていれば、車両走行後にデータレコーダ4に記録された加速度データを検証してレール破断が検知された場合でも、距離程などで軌道の位置を特定することができ、補修などの対応を迅速にとることができる。
また、レール破断の検知方法の発明は、加速度センサ3を備えた車両1をレール2に沿って走行させて加速度データを取得し、測定された加速度データに低周波バンドパスフィルタ処理を施した結果の絶対値と無次元特徴パラメータとを利用することで、レール破断の有無を精度よく判定することができる。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば前記実施の形態では、軸箱支持装置と台車枠111の両方に加速度センサ3を取り付ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、いずれか一方であっても、3箇所以上から得られた測定結果を統計処理して使用するものであってもよい。また、例示した箇所とは別の位置に取り付けて加速度データを測定させてもよい。
1 :車両
2 :レール
21 :レール破断箇所(レール破断)
211 :沈み込み箇所(レール破断)
3 :加速度センサ
4 :データレコーダ(記憶部)
2 :レール
21 :レール破断箇所(レール破断)
211 :沈み込み箇所(レール破断)
3 :加速度センサ
4 :データレコーダ(記憶部)
Claims (5)
- レール破断を車両側から検知させるレール破断の検知装置であって、
車両に取り付けられる加速度センサと、
前記加速度センサによって測定された加速度データを記録する記憶部と、
前記加速度データに低周波バンドパスフィルタ処理を施す低周波フィルタ処理部と、
前記低周波フィルタ処理部によって抽出された低周波成分の絶対値の最大値を加速度閾値と比較する最大値判定部と、
前記低周波フィルタ処理部によって抽出された低周波成分から求められる無次元特徴パラメータを閾値と比較するパラメータ判定部と、
前記最大値判定部及び前記パラメータ判定部の判定結果に基づいてレール破断の有無を判定する破断判定部とを備えたことを特徴とするレール破断の検知装置。 - 前記無次元特徴パラメータは、歪度、尖度及び波高率の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載のレール破断の検知装置。
- 前記最大値判定部によりレール破断と判定され、かつ前記パラメータ判定部によりレール破断と判定された場合に、前記破断判定部ではレール破断が有ると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のレール破断の検知装置。
- 前記加速度センサは、前記車両の軸箱支持装置に取り付けられて上下加速度を測定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレール破断の検知装置。
- レール破断を車両側から検知させるレール破断の検知方法であって、
加速度センサを備えた車両をレールに沿って走行させることで加速度データを取得するステップと、
前記加速度データに低周波バンドパスフィルタ処理を施すステップと、
前記低周波バンドパスフィルタ処理によって抽出された低周波成分の絶対値の最大値及び無次元特徴パラメータを求めるステップと、
前記最大値及び前記無次元特徴パラメータの値に基づいて、前記レール破断の有無を判定するステップとを備えたことを特徴とするレール破断の検知方法。
Priority Applications (1)
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