JP2023135882A - 空気電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】容量が高く、且つ、サイクル性能に優れた空気電池を提供すること。【解決手段】実施形態によれば、負極と、酸素が供給される空気極と、負極と空気極との間に位置する固体電解質層と、固体電解質層と空気極との間に位置する水系電解質層と、水系電解質層と空気極との間に位置するプロトン伝導層とを具備する空気電池が提供される。水系電解質層は、カルボキシル基を2つ以上有する多価酸と電解質塩と水とを含んだ水系電解質を含む。【選択図】 図1

Description

本発明の実施形態は、空気電池に係る。
近年、携帯電話や電子メール端末などの携帯型情報機器の市場は急速に拡大しつつある。これらの機器の小型軽量化が進むにつれて、電源にも小型かつ軽量であることが求められるようになった。現在これらの携帯機器には主として高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が使用されているが、さらに高容量化が求められている。
空気中の酸素を正極活物質に用いる空気電池は、正極における活物質の内蔵が不要であるため、体積や重量当たりの高容量化が期待できる。例えば、負極活物質に金属リチウム、正極活物質に酸素を用いるリチウム二次電池として、リチウム空気電池が知られている。
国際公開第2013/028574号 特開2016-58211号公報 特開2017-27735号公報
Philippe Stevens et al 2010 ECS Trans. 28 1
容量が高く、且つ、サイクル性能に優れた空気電池を提供することを目的とする。
実施形態によれば、負極と、酸素が供給される空気極と、負極と空気極との間に位置する固体電解質層と、固体電解質層と空気極との間に位置する水系電解質層と、水系電解質層と空気極との間に位置するプロトン伝導層とを具備する空気電池が提供される。水系電解質層は、カルボキシル基を2つ以上有する多価酸と電解質塩と水とを含んだ水系電解質を含む。
実施形態に係る空気電池の一例を表す概念図。 実施形態に係る空気電池の他の例を表す概念図。 実施形態に係る空気電池の一例を概略的に示す斜視図。 図3のIV-IV線に沿って切断した概略断面図。 実施例1に係る空気電池の初回放電曲線および二回目放電曲線を示すグラフ。 比較例1に係る空気電池の初回放電曲線および二回目放電曲線を示すグラフ。
リチウム空気電池は、重量当たりのエネルギー密度が高く次世代高容量電池として期待されている。しかし従来型のリチウム空気電池では、放電時に溶解度の低い放電生成物が固体として析出してしまう。放電生成物による正極の細孔の閉塞や正極が含む触媒の被毒により、容量やサイクル性能が低下する。例えば、酸性条件で作動する非水系リチウム空気電池では、放電に伴ってLi2O2が非水電解質中に析出する。非酸性条件で作動する水系リチウム空気電池では、例えば、放電に伴ってLiOHが生成される。放電の進行とともに水系電解質中のLiOH濃度が上昇し、電解質の塩基性が増加する。水系空気電池において電解質中のLiOHの溶解限界に達するまでに得られる容量は、143 mAh/mL程度である。
液状電解質としてクエン酸のような多価カルボン酸を含んだ水溶液を用いて、放電生成物の溶解度を向上させることで上記の問題を解決できる。クエン酸リチウムの溶解限界に達するまでに得られる容量は285 mAh/mLであり、クエン酸の使用により容量が2倍近くまで向上し得る。しかしながら、多価カルボン酸は空気電池の作動する電圧範囲では、正極(空気極)上で分解されてしまう。多価カルボン酸の分解に起因して、サイクル性能の改善に限界がある。
以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる箇所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
実施形態に係る空気電池は、負極と、酸素が供給される空気極(正極)と、固体電解質層と、水系電解質を含む水系電解質層と、プロトン伝導層とを具備する。固体電解質層は、負極と空気極との間に位置する。水系電解質層は、固体電解質層と空気極との間に位置し、水系電解質を含む。水系電解質は、カルボキシル基を2つ以上有する多価酸と電解質塩と水とを含んでいる。プロトン伝導層は、水系電解質層と空気極との間に位置する。
カルボキシル基を2つ以上有する多価酸の塩は、水に対する溶解性が高い。そのため、このような多価酸を用いることで、LiOH等の放電生成物の固体析出を抑制するとともに、当該多価酸の塩自体が析出しにくいため、放電容量を大きく向上させることができる。多価酸の具体例として、クエン酸を挙げることができる。クエン酸はカルボキシル基を2つ以上有した多価酸である。
多価酸(RH)は、水系溶媒中でプロトン(H+)及びアニオン(R-)に解離した状態で水系電解質中に溶解され得る。また、空気電池の放電時に負極から供給されるキャリアイオン(Li+等のカチオン)と多価酸との反応によりプロトンが生じ得る。プロトンは、プロトン伝導層を通過して空気極に到達することができる。空気電池の放電時には、電池外部から空気極側に供給される酸素が、プロトン伝導層を通過して供給されるプロトン及び負極から外部回路(及び負荷)を介して供給される電子(e-)との還元反応により空気極にて還元される。また、充電時に空気極での水の電気分解により発生するプロトンは、プロトン伝導層を介して水系電解質層に供給されることができる。プロトン伝導層は、プロトンに対する選択的伝導性を示す。具体的には、多価酸のアニオンはプロトン伝導層を通過できない。多価酸アニオンが空気極に到達しないので、空気極上でのアニオンの分解が防止される。即ち、実施形態に係る空気電池は、水系電解質層と空気極との間に位置するプロトン伝導層を備えていることにより、多価酸の分解が抑制されている。そのため、係る空気電池は優れたサイクル性能を示すことができる。
負極は、負極活物質を含むことができる。負極活物質は、例えば、リチウム(Li)などのアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はこれら金属元素を含有する合金を含む。また、負極活物質は、例えば、アルミニウムや亜鉛などの他の金属またはそれら金属元素を含有する合金を含み得る。或いは、負極活物質は、例えば、上記金属元素が挿入-脱離される材料を含む。
具体的な空気電池の例では、負極活物質は、リチウム金属、リチウム合金、及びリチウムが挿入-脱離される材料からなる群より選択される1以上を含む。即ち、係る空気電池は、リチウム空気電池であり得る。負極活物質が含むリチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のカチオンは、空気電池の充放電に伴って負極と空気極との間を移動するキャリアイオンとして働く。リチウムイオン(Li+)以外のキャリアイオンの具体例として、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、セシウムイオン(Cs+)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、アルミニウムイオン(Al3+)、及び亜鉛イオン(Zn2+)を挙げることができる。即ち、実施形態に係る空気電池は、リチウム空気電池に限られず、例えば、ナトリウム空気電池などの他の空気電池や金属空気電池であり得る。
固体電解質層は、負極と空気極との間に、より具体的には、負極と水系電解質層との間に位置する。固体電解質層は、負極から空気極までのキャリアイオン(Li等)の移動を妨げずに空気極と負極とを電気的に絶縁するセパレータとして機能する。固体電解質層は、例えば、イオン伝導性を有し得る。また、金属リチウムのように水との反応性が高い活物質を負極に用いた場合には、固体電解質層により負極を水系電解質から遮断することができる。
係る空気電池は、負極と固体電解質層との間に位置する中間層をさらに具備し得る。負極と固体電解質層とが接触すると、固体電解質の劣化の原因となる反応が生じ得る。中間層を設けることで、負極と固体電解質層との反応を防ぐことができる。中間層は、負極側電解質として非水電解質を含み得る。
負極と、固体電解質層と、水系電解質層と、プロトン伝導層と、空気極と、任意の中間層とは、電極群を構成し得る。空気電池は、電極群を収容する外装部材を具備することができる。
加えて、係る空気電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び空気極(正極)に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
また、空気電池は、外装部材の外部から空気極へ酸素を含んだ空気の供給路として機能する空気拡散層をさらに具備し得る。空気拡散層は、外装部材と空気極との間に設けられ得る。或いは、外装部材の一部が空気拡散層を構成し得る。
実施形態に係る空気電池の一例の概要を図1に示す。図1は、実施形態に係る空気電池の一例を表す概念図である。また、図1は空気電池の放電時の動作を表している。
図示する空気電池1は、負極3と、中間層4と、固体電解質層5と、水系電解質層6と、プロトン伝導層7と、空気極8とを含んだ電極群2を有している。電極群2において、これら負極3等は、上記順に配置されている。
図示する例では、負極3は、リチウムを含んだ金属または合金、又はリチウム(リチウムイオン)を挿入脱離する材料を負極活物質として含む。また、水系電解質層6は、溶質として多価酸(RH)と電解質塩とを含んだ水系電解質を含んでいる。図示する例では、水系電解質層6は、例えば、電解質塩としてリチウム塩を含む。即ち、例示する空気電池1は、水溶液系のリチウム空気電池またはリチウムイオン空気電池である。多価酸は溶媒として水系電解質に含まれている水に溶解しており、プロトン(H+)及びアニオン(R-)に解離した状態で水系電解質中に含まれ得る。また、電解質塩として含まれているリチウム塩も、水に溶解してリチウムイオン(Li+)及びカウンターアニオンに解離した状態であり得る。
水系電解質層6が含む水系電解質は、少なくとも空気電池1が充電された状態では酸性条件(pH<7)にある。このように酸性条件の水系電解質を備えた水系の空気電池1では、充放電の際の空気極8側の反応(正極反応)及び負極3側の反応は下記のとおりになる。空気電池1の放電時は各電極反応が右方向へ進行し、充電時は各電極反応が左方向へ進行する。
空気電池1の放電時の動作の一例を説明する。外部から空気極8へ酸素(O)を供給でき、且つ、負極3と空気極8とが外部回路(図示せず)によって電気的に接続されて電気回路が閉じた状態にあるときに、空気電池1を放電することができる。
負極3から中間層4及び固体電解質層5を介してリチウムイオン(Li)が水系電解質層6に供給される。また、負極3から外部回路(及び負荷)を介して空気極8へ電子(e)が供給される(図示せず)。例えば、負極3が負極活物質として含むリチウム金属のLi原子が解離することによりLiイオン及び電子が生じ得る。又は、負極活物質からの脱離反応によりLiイオン及び電子が取り出され得る。
空気極8には、外部から酸素(O)が供給され、プロトン(H)が水系電解質層6からプロトン伝導層7を介して選択的に供給される。また、上述したとおり外部回路を経由して電子(e)が空気極8に供給される。空気極8にて上記空気極側の反応が進行し、酸素が還元されて水(HO)が生成される。生成した水は、空気極8から水系電解質層6へ移動し得る。
上記のとおり、多価酸由来のプロトンはプロトン伝導層7を通過して水系電解質層6から空気極8へ移動できるため、空気極8にて放電反応に参加できる。これに対し多価酸アニオン(R)はプロトン伝導層7によって遮られるため、空気電池1の充放電に伴う空気極8での多価酸の分解反応を抑えることができる。
水系電解質中の多価酸の溶解度が高いため、上記負極側反応に示す放電生成物である多価酸のリチウム塩は、水系電解質層6内で多価酸アニオン及びリチウムイオンに溶解した状態に留まりやすい。即ち、水系電解質層6にて放電生成物が固体として析出しにくい。そのため、空気電池1の容量を高くすることができる。また、放電生成物の濃度が高くなっても放電生成物が析出しにくいため、水系電解質層6の容積を少なくしても高い容量を発揮でき、エネルギー密度を向上できる。さらに、放電生成物の溶解性が高いことで、プロトン伝導層7により水系電解質層6と空気極8を隔てることによって生じ得る性能低下を避けることができる。
係る空気電池は高エネルギー密度を示すことができるため、軽量および小型な電源として好適に使用できる。空気電池の用途は従来公知の用途を含めて限られるものではないが、例えば、電動航空機を挙げることができる。電動航空機には、ドローン等の無人航空機が含まれる。
中間層4は、負極3と固体電解質層5とを隔てることで、固体電解質層5が含む固体電解質の負極活物質による還元反応を防止する。固体電解質層5を構成する材料が、高い耐還元性を有している場合は、中間層4を省略してもよい。
中間層4は、負極3と固体電解質層5との接触を妨げるものの、リチウムイオン等のキャリアイオンの移動を阻害しない。例えば、中間層4はリチウムイオン伝導性を有し得る。一つの態様によれば、中間層4は非水電解質を含み得る。非水電解質の詳細は、後述する。
他の態様によれば、中間層4は複数のサブレイヤを含み得る。そのような中間層を含む空気電池1の例を、図2に示す。図2の例では、中間層4の態様が図1の例と異なる。その他の詳細は同一のため、説明を省略する。
図2の空気電池1では、中間層4は非水電解質層4aと金属酸化物層4bとを含む。非水電解質層4a及び金属酸化物層4bは、それぞれ負極3側および固体電解質層5側に配置されている。このような構成を有する中間層4を含んでいることで、リチウム金属等の負極活物質と固体電解質との反応をより良く抑制することができ、サイクル性能向上につながる。
上記例では、水系電解質を用いるリチウム空気電池の例を説明したが、実施形態に係る空気電池はリチウム空気電池に限られない。例えば、キャリアイオンとしてリチウムイオンの代わりにナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、及びアルミニウムイオンを用いることができる。即ち、実施形態に係る空気電池は、例えば、負極活物質としてナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、又はアルミニウムを含むと共に、電解質塩としてナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、又はアルミニウムイオンがそれぞれ水溶液に溶解された水系電解質を含んだ水系電解質空気電池であり得る。
次に、負極、空気極、固体電解質層、水系電解質層、プロトン伝導層、中間層、外装部材、正極端子、及び正極端子、について詳しく説明する。
1)負極
負極は、負極活物質を含むことができる。負極は、負極活物質を含んだ負極活物質層を含み得る。負極は、負極活物質層を担持する負極集電体をさらに含み得る。負極は、負極活物質層から構成され得る。
負極活物質としては、例えばリチウムイオンなどのキャリアイオンを吸蔵放出することが可能な金属や合金を使用することができる。具体例には、リチウム金属およびリチウム合金などリチウム電池にて電極に用いられる材料が含まれる。その他、アルミニウム金属、亜鉛金属、アルミニウム合金、及び亜鉛合金を負極活物質の例として挙げることができる。また、負極活物質の他の例としてキャリアイオンの挿入-脱離(インタカレーション)が可能な材料を挙げることができる。具体例として、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、アルカリ金属含有複合酸化物、アルカリ土類金属含有複合酸化物、キャリアイオンが挿入脱離される炭素質物などを挙げることができる。例えば、リチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池などの二次電池にて電極活物質として慣用されている材料を空気電池の負極活物質として使用可能である。上記の金属、合金、金属化合物、複合酸化物、及び炭素質物の1つを負極活物質として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて負極活物質として用いてもよい。
合金としては、例えば、アルミニウム合金、スズ合金、鉛合金、及びケイ素合金などを挙げることができる。具体例は、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、及びリチウムケイ素合金などのリチウム合金を含む。
金属酸化物としては、例えば、スズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウム含有チタン酸化物、チタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物などを挙げることができる。負極活物質としての金属酸化物を、第1金属酸化物と呼ぶことがあり得る。
金属硫化物としては、例えば、スズ硫化物、チタン硫化物などを挙げることができる。
金属窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、及びリチウムマンガン窒化物などを挙げることができる。
リチウムイオンの挿入-脱離が可能な炭素質物としては、例えば、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素などの黒鉛質材料もしくは炭素質材料、熱硬化性樹脂、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズ小球体などに500℃から3000℃で熱処理を施すことにより得られる黒鉛質材料または炭素質材料を挙げることができる。
負極活物質層には、負極活物質と併せて結着剤を含有させることができる。結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン-プロピレン-ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などを用いることができる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
負極活物質層中の負極活物質および結着剤の配合割合は、負極活物質80質量%以上98質量%以下および結着剤2質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましい。
負極集電体としては、多孔質構造の導電性基板、又は無孔の導電性基板を用いることができる。これら導電性基板は、例えば、銅、ステンレス、またはニッケルから形成することができる。多孔質構造の導電性基板には、例えば、メッシュ、パンチドメタル、エクスパンディドメタル等を用いることができる。又は、金属箔に負極活物質層を担持させた後、当該金属箔に貫通孔を開けたものを多孔質構造の導電性基板として用いることができる。負極集電体は、省略してもよい。
負極は、例えば、次のとおり作製することができる。負極活物質と結着剤とを溶媒の存在下で混練し、得られた懸濁物を集電体に塗布し、乾燥する。その後、得られた積層体を所望の圧力で1回のプレスもしくは2回から5回の多段階プレスに供することにより、負極を作製することができる。
また、負極活物質として、上述した金属や合金を使用すれば、これらの金属系の材料は単独でもシート形状に加工することが可能なため、結着剤を使用せずに負極活物質層を形成することができる。また、これらの金属系材料で形成された負極活物質層は、負極集電体を介さずに直接負極端子に接続することもできる。
2)空気極
空気極(正極)は、酸素反応層(正極反応層)を含むことができる。空気極は、酸素反応層を担持する正極集電体をさらに含み得る。空気極は、酸素反応層から構成され得る。空気極は、電池外部から酸素反応層に供給される酸素を活物質として用いる。
酸素反応層は、導電性を有する材料を含み、且つ、ガス拡散性を示す構造を有する。例えば、酸素反応層として、カーボンペーパー、カーボンクロス、及びカーボン不織布などの炭素繊維を含んだシート材料を用いることができる。又は、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、及び鉄などの金属で形成された多孔質材料を酸素反応層として用いることができる。加えて、導電性材料を用いて層形状の多孔体を形成し、酸素反応層として用いることもできる。導電性材料で形成した酸素反応層は、結着剤を含み得る。
層状に形成して酸素反応層に用いる導電性材料は、導電性を有するものであればとくに限定することなく使用可能である。導電性材料としては、水系電解質に溶解せず、酸素で酸化されにくいものが好ましい。具体的には、炭素質物、導電性セラミクス、金属などを挙げることができる。炭素質物としては、天然黒鉛、人造黒鉛、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、ファーネスブラック、活性炭、活性炭素繊維、及び木炭類等を挙げることができる。導電性セラミクスとしては、In及びSn等の金属の酸化物、SiC等の炭化物などを挙げることができる。金属としては、Al及びTi等の金属や、SUS等の合金を挙げることができる。
酸素反応層は、酸素の酸化還元・発生過電圧を低下させて酸素の酸化還元・発生反応を促進する触媒をさらに含んでもよい。触媒は、例えば、酸素反応層を構成する多孔質材料の外表面や孔内壁面に担持され得る。又は、触媒は、例えば、酸素反応層が含む導電性材料の表面に担持され得る。
触媒は、例えば、空気電池用の正極触媒、或いは燃料電池・水電解用の正極触媒として従来用いられている、触媒活性を示す金属、金属酸化物、錯体などから選択することができる。触媒活性を示す金属としては、Au、Pt、Pd、Ir、Ru及びAgからなる群より選択される少なくとも一つが好ましい。触媒活性を示す金属酸化物としては、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Sn、Co、Rh、Ni、Cu、Ag、In、Sn、La、及びCeからなる群より選択される少なくとも一つの金属を含む酸化物が好ましい。空気極の触媒に用いる金属酸化物を、第2金属酸化物と呼ぶことがあり得る。触媒活性を示す錯体としては、中心金属にFe,Ni,及びCoからなる群より選択される少なくとも一つの金属を有し、且つ、フタロシアニン、ポルフィリン、及びサレン等の平面4座配位子を有する錯体が好ましい。
カーボンペーパー等の炭素繊維を含んだシート材料や金属製の多孔質材料は、それ自体が物理的強度と導電性との両方を備えている。従って、集電体を省略し、これら材料を用いた酸素反応層を単体で空気極として使用することもできる。
結着剤は、炭素質物などの導電性材料を層状に形状維持するとともに、集電体に付着させることができる。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン-プロピレン-ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)などを用いることができる。
酸素反応層中の導電性材料および結着剤の配合割合は、導電性材料70質量%以上98質量%以下および結着剤2質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましい。
触媒を含む場合、酸素反応層中の触媒、導電性材料、及び結着剤の配合割合は、触媒1質量%以上20質量%以下、導電性材料1質量%以上90質量%以下、及び結着剤1質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましい。
酸素反応層には、水または水系溶媒が保持され得る。水系電解質層からプロトン伝導層を通過して、酸素反応層まで水系電解質が含む水および水系溶媒の一部が浸透し得る。また、放電反応の際に生じる水が酸素反応層に含まれ得る。
また、酸素反応層の厚さ(集電体を除く)は、2μm以上600μm以下の範囲内であることが好ましい。
正極集電体としては、酸素の拡散を速やかに行わせるために多孔質の導電性基板を用いることが好ましい。具体例として、メッシュ、パンチドメタル、及びエクスパンディドメタル等を挙げることができる。導電性基板の材質としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタンなどを挙げることができる。なお、集電体の表面を、酸化を抑制するために耐酸化性の金属または合金で被覆しても良い。
酸素反応層は、例えば、炭素質物などの導電性材料と結着剤とを混合し、この混合物をフィルム状に圧延して製膜し、乾燥することで形成することができる。
或いは、空気極を次のとおり作製することもできる。炭素質物などの導電性材料と結着剤とを溶媒中で混合し、これを集電体に塗布し、乾燥する。その後、得られた積層体を圧延することで空気極を得ることができる。
3)固体電解質層
固体電解質層は、水系電解質に溶解及び膨潤しないリチウムイオン等のキャリアイオンに対するイオン伝導性を有する材料を含む。固体電解質層は、無孔性で、キャリアイオンを選択的に透過するものであることが望ましい。負極の劣化を抑制する観点から、水を透過させない固体電解質層を用いることがより望ましい。
イオン伝導性を有する材料として、例えば、有機高分子と電解質塩との複合体、酸化物および硫化物からなる群より選択される1以上の固体電解質を用いることができる。これらの材料は、固体状態でイオン伝導性を示すため、無孔性でキャリアイオンを選択的に透過する固体電解質層を実現することができる。
有機高分子は、電解質塩と共に使用する。有機高分子は、具体的には、ポリエチレンオキサイド含有高分子や、ポリビニル含有高分子を挙げることができる。ポリエチレンオキサイド含有高分子は、ポリエチレンオキサイドを主鎖として含み、一部が分岐していてもよい。ポリエチレンオキサイドの末端は、水酸基がエーテルやエステル結合で保護されていることが好ましい。ポリビニル含有高分子は、ポリビニル鎖を主鎖として含み、主鎖から分岐した側鎖にはエステル結合や炭酸エステル結合を含む官能基を含有することが好ましい。特に、ポリエチレンオキサイド含有高分子が、リチウムイオンのホッピング伝導性に優れるため、望ましい。有機高分子には、ジブチルフタレートなど少量の柔軟剤を含んでいてもよい。
有機高分子と共に使用する電解質塩には、例えば、リチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池などの二次電池に用いることが可能な電解質塩(支持電解質)を用いることができる。具体的には、後述する水系電解質に含むことができる電解質塩を使用できる。
酸化物としては、例えば、酸化物ガラス、酸化物結晶をあげることができる。いずれも有機高分子と異なり電解質塩と併用しなくてもイオン伝導性を示す。酸化物ガラスには、B,Si及びPからなる群より選択される1以上の元素とLiとを含む酸化物を挙げることができ、具体的にはLiSiO-LiBO系酸化物を挙げることができる。酸化物結晶の例は、Al,Ti,P,La,N,Si,In及びNbからなる群より選択される1以上の元素とLiとを含む酸化物を含む。
酸化物系固体電解質としては、NASICON型構造を有し、一般式LiMe2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMeは、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)から成る群より選択される少なくとも一つの元素であることが好ましい。元素Meは、Ge、Zr及びTiの何れか1つの元素と、Alとを含むことがより好ましい。
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、LATP(Li1+x+yAlxTi2-xSiyPO12;0<x≦2、0≦y<3)、Li1+z+yAlzGe2-zSiyPO12で表され0≦z≦2及び0≦y<3である化合物、Li1+zAlzZr2-z(PO4)3で表され0≦z≦2である化合物、及びLi1+2wCawZr1-w(PO4)3で表され0≦w<1である化合物を挙げることができる。
また、酸化物系固体電解質としては、上記リチウムリン酸固体電解質の他にも、LiaPObcで表され2.6≦a≦3.5、1.9≦b≦3.8、及び0.1≦c≦1.3であるアモルファス状のLIPON化合物(例えば、Li2.9PO3.30.46);ガーネット型構造のLi5+ddLa3-dMα212で表されXはCa,Sr,及びBaから成る群より選択される1以上でMαはNb及びTaから成る群より選択される1以上であり0≦d≦0.5である化合物;Li3Mβ2-d212で表されMγはTa及びNbから成る群より選択される1以上でありLはZrを含み得0≦d≦0.5である化合物;Li7-3dAldLa3Zr312で表され0≦d≦0.5である化合物;及びLi5+eLa3Mγ2-eZre12で表されMγはNb及びTaから成る群より選択される1以上であり0≦e≦2であるLLZ化合物(例えば、Li7La3Zr212)が挙げられる。
また、固体電解質としては、ナトリウム含有固体電解質を用いてもよい。ナトリウム含有固体電解質は、ナトリウムイオンのイオン伝導性に優れている。ナトリウム含有固体電解質としては、β-アルミナ、ナトリウムリン硫化物、ナトリウムリン酸化物、及びNaZrSiPO12などを挙げることができる。ナトリウムイオン含有固体電解質は、ガラスセラミックスの形態にあることが好ましい。
硫化物としては、例えば、硫化物ガラス、硫化物結晶をあげることができる。いずれも有機高分子と異なり電解質塩と併用しなくてもイオン伝導性を示す。具体例は、LiPS,LiSiS,LiGeS-LiPS、LiS-SiS系、SiS-P系、LiS-B系、LiS-SiS-LiSiO系などを含む。中でも、LiS-P,Li3.25Ge0.250.75などはイオン伝導率が高く、好ましい。
固体電解質層には、上記固体電解質を1つ用いても良く、或いは、上記固体電解質を2つ以上用いてもよい。
固体電解質層は、固体電解質を含む固体電解質複合膜であってもよい。固体電解質複合膜は、例えば、固体電解質の粒子を高分子結着剤を用いて膜状に成形したものである。固体電解質複合膜は、固体電解質と高分子結着剤とを含む膜を担持する多孔質自立膜をさらに含み得る。多孔質自立膜には、例えば、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、或いは、セルロースからなる自立膜が含まれる。
高分子結着剤の例は、ポリビニル系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリエチレン系、シリコーン系及びポリスルフィド系を含む。
上述したとおり酸化物系および硫化物系の固体電解質は、電解質塩が無くてもキャリアイオンに対する伝導性を示す。これら酸化物や硫化物を用いた固体電解質層にも、電解質塩を添加してもよい。固体電解質層が電解質塩を含んでいると、例えば、固体電解質層のアルカリ金属イオン伝導性をより高めることができる。
固体電解質層は、例えば、100μm以下の厚さを有し得る。また固体電解質層の厚さは、例えば、20μm以上であり得る。
4)水系電解質層
水系電解質層は、固体電解質層とプロトン伝導層との間に位置し、水系電解質を含む。
水系電解質層は、水系電解質を保持する多孔体をさらに含むことができる。多孔体としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、又はポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、セルロース製不織布、合成樹脂製不織布、及びガラス繊維製不織布などを用いることができる。
多孔体の多孔度は、30%以上90%以下の範囲にすることが好ましい。多孔度が30%以上であると、高い電解質の保持性を示すことができる。多孔度が90%以下であると、高い強度を得られる。多孔度のより好ましい範囲は、35%以上60%以下である。
水系電解質は、例えば、多価酸と、水系溶媒と、電解質塩とを含む液状水系電解質であり得る。電解質は、液状水系電解質と高分子材料とを複合化したゲル状水系電解質であってもよい。
液状水系電解質は、例えば、多価酸を1mol/L~14mol/Lの濃度、及び電解質塩を0.1mol/L~14mol/Lの濃度で水系溶媒に溶解することにより調製される。
水系電解質が含む多価酸は、クエン酸のようにカルボキシル基を2つ以上有する。そのような多価酸は、クエン酸に限られない。カルボキシル基を2つ以上有する多価酸の例として、クエン酸、マレイン酸、及びフタル酸を挙げることができる。
水系溶媒は、水を含む溶媒であり、水単独、又は、水と水以外の溶媒からなり得る。水以外の溶媒として、水溶性の有機溶媒が挙げられる。水溶性の有機溶媒には、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、アルコール類、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。水以外の溶媒を1つ水系溶媒に含んでもよく、或いは、水以外の溶媒を2つ以上組合わせてもよい。水系溶媒では、水以外の溶媒の含有量は、20質量%以下にすることが望ましい。
水系電解質が含むことのできる電解質塩として、例えば、リチウム塩およびナトリウム塩を挙げることができる。ここで、水系電解質に含ませる電解質塩を第1電解質塩と呼ぶことがある。第1電解質塩としてのリチウム塩を第1リチウム塩、第1電解質塩としてのナトリウム塩を第2ナトリウム塩、とそれぞれ呼ぶことがある。
第1リチウム塩の例は、LiCl、LiBr、LiOH、Li2SO4、LiNO3、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI:LiN(SO2CF3)2)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI:LiN(SO2F)2)、及びリチウムビスオキサレートボラート(LiBOB:LiB[(OCO)2]2)などを含む。第1電解質塩として上記リチウム塩を1つ用いてもよく、或いは、上記リチウム塩の2つ以上を組あわせて用いてもよい。
第1ナトリウム塩の例は、NaCl、Na2SO4、NaOH、NaNO3及びNaTFSA(ナトリウムトリフルオロメタンスルホニルアミド)などを含む。第1電解質塩として上記ナトリウム塩を1つ用いてもよく、或いは、上記ナトリウム塩の2つ以上を組あわせて用いてもよい。
また、上記第1リチウム塩および第1ナトリウム塩のそれぞれの1以上を組合わせて第1電解質塩として水系電解質に含ませてもよい。第1電解質塩は、リチウム塩およびナトリウム塩以外の電解質塩を含むこともできる。キャリアイオンに応じて、適切な電解質塩を選択することができる。
高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。電解質中の高分子材料の含有量は、例えば、0.5質量%以上10質量%以下の範囲内にある。
水系電解質層は、例えば、250μm以上1000μm以下の厚さを有し得る。放電生成物が固体析出する系では空気極側の電解質を収容する部材が厚く容積が大きい方が、放電生成物を収容する空間を確保できるため放電容量を大きくできる。但し、電池の軽量化や小型化の観点からは、電解質が占める容積を小さくすることが望ましい。実施形態に係る空気電池では、水系電解質が上記多価酸を含んでいるので放電生成物が析出しにくい。そのため、水系電解質層を薄くしても高い容量を発揮できる。
水系電解質に水が含まれていることは、GC-MS(ガスクロマトグラフィー-質量分析;Gas Chromatography - Mass Spectrometry)測定により確認できる。また、水系電解質中の塩濃度および水含有量は、例えばICP(誘導結合プラズマ;Inductively Coupled Plasma)発光分析などで測定できる。水系電解質を規定量はかり取り、含まれる塩濃度を算出することで、モル濃度(mol/L)を算出できる。また水系電解質の比重を測定することで、溶質と溶媒のモル数を算出できる。
水系電解質に含まれている多価酸については、例えば、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)により定性的な分析を行うことで測定できる。また、キャピラリ電気泳動法により、多価酸の定量分析を行うことができる。
5)プロトン伝導層
プロトン伝導層は、水系電解質層と空気極との間でプロトンを選択的に伝導させる。プロトン伝導層は、水系電解質から空気極への多価酸アニオンの移動を遮る。
プロトン伝導層は、例えば、スルホン酸基を有するフッ素樹脂(例えば、ナフィオン(登録商標;デュポン社)及びフレミオン(登録商標;旭化成社)など)や、タングステン酸やリンタングステン酸などのプロトン伝導性を有する材料を用いて形成される。
プロトン伝導層は、上記プロトン伝導性材料に加え、結着剤をさらに含み得る。結着剤としては、空気極や負極に含むことのできる上述した結着剤を用いることができる。
プロトン伝導層には、水または水系溶媒が保持され得る。水系電解質層から、水系電解質が含む水および水系溶媒の一部がプロトン伝導層に浸透し得る。また、空気極における放電反応の際に生じる水がプロトン伝導層に供給され得る。
プロトン伝導層は、例えば、100μm以下の厚みを有し得る。
6)中間層
固体電解質層に酸化物及び/又は硫化物を用いた場合、それら酸化物及び/又は硫化物が耐還元性に劣り得る。そのような場合、負極と固体電解質層との間に、負極と固体電解質層との反応を防ぐための中間層を設けることが好ましい。上記中間層を設けることにより負極と固体電解質層とが接触しなくなる。そのため、固体電解質層に含まれる酸化物及び/又は硫化物が負極との接触により還元分解されて固体電解質層が劣化するのを回避することができる。
中間層として、例えば、多孔質膜や不織布などの多孔性の材料を設けることができる。多孔質膜または不織布としては、ポリエチレン製多孔質膜、ポリプロピレン(PP)製多孔質膜、セルロース製不織布など、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いることが可能なものを使用することができる。多孔質膜または不織布に非水電解質を含浸させてもよい。
また、中間層として、例えば、金属酸化物層を設けることができる。金属酸化物層には、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛などの金属酸化物を用いることができる。非水電解質に不溶の金属酸化物を用いる場合は、金属酸化物とともに非水電解質を中間層に含ませてもよい。中間層に用いる金属酸化物を、第3金属酸化物と呼ぶことがあり得る。
中間層として、非水電解質を含んだ非水電解質層と金属酸化物層とを併用してもよい。この場合、非水電解質層を負極側に、金属酸化物層を固体電解質層側に、それぞれ配置することが望ましい。非水電解質層としては、例えば、上記多孔質膜や不織布に非水電解質を含浸させたもの、及びゲル状非水電解質で形成した非水電解質層などを用いることができる。
固体電解質層に含まれる酸化物及び/又は硫化物が耐還元性に優れている場合は、体積エネルギー密度の向上の観点から、中間層を省略することが好ましい。なお、有機高分子は耐還元性に優れている傾向がある。
非水電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。ここで、非水電解質が含む電解質塩を第2電解質塩と呼ぶことがある。
第2電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩(第2リチウム塩)、及び、これらの混合物が含まれる。第2リチウム塩のうち、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、及びLiN(CF3SO2)2が特に好ましい。
第2電解質塩は、リチウム塩以外の電解質塩を含むこともできる。キャリアイオンに応じて、適切な電解質塩を選択することができる。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
7)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。このような金属製容器を備えた電池では、高温環境下での長期信頼性および放熱性を飛躍的に向上させることが可能となる。
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型、シート型、積層型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
8)負極端子
負極端子は、負極活物質によるキャリアイオンの吸蔵-放出反応または挿入-脱離反応が進行する電位範囲において電気的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
9)正極端子
正極端子は、酸素の酸化還元反応が進行する電位範囲において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
図3及び図4を参照しながら、実施形態に係る空気電池の構造の一例を説明する。図3は、実施形態に係る空気電池の一例を概略的に示す斜視図である。図4は、図3のIV-IV線に沿って切断した概略断面図である。
図3及び図4に示す空気電池1は、ラミネートフィルムからなる外装部材10及び外装部材10に収容されている電極群2を含む。外装部材10は、ラミネートフィルムをその熱可塑性樹脂層を用いてヒートシールで袋状に張り合わせることにより形成されたものである。電極群2は、例えば多孔質な導電性基板からなる負極集電体3aに負極活物質層3bが担持された構造を有する負極3と、例えば多孔質な導電性基板からなる正極集電体8aに酸素反応層8bが担持された構造を有する空気極8と、負極3及び空気極8の間に配置されている固体電解質層5、水系電解質層6、及びプロトン伝導層7とから構成される。固体電解質層5、水系電解質層6、及びプロトン伝導層7は、負極3側から空気極8側へこの順で配置されている。図示する例では、負極3と固体電解質層5との間に、負極3と固体電解質層5との反応を防止するための中間層4がさらに設けられている。また、図示する例では、水系電解質層6が含む水分の漏出および負極3との接触を防止するためのシール部材12が設けられている。
外装部材10の空気極8側の主面には、空気を取り入れるための空気孔11が複数開口されている。
負極3は、負極集電体3aと負極集電体3a上に設けられた負極活物質層3bとを含む。負極集電体3aは省略することもできる。空気極8(正極)は、正極集電体aと正極集電体8a上に設けられた酸素反応層8bとを含む。正極集電体8aは省略することもできる。
負極端子13は、一端が負極集電体3aに電気的に接続されており、かつ他端が外装部材10の外部に突き出ている。正極端子14は、一端が正極集電体8aに電気的に接続されており、かつ他端が外装部材10の外部に突き出ている。
さらに、外装部材10の外表面には、空気孔11を閉塞するシールテープを本図には記載していないが、電池未使用時には配置しておく。
以上説明したような構成を有する空気電池では、空気孔11から外装部材10内に空気が供給される。供給された空気はさらに空気極8の酸素反応層8bに供給され、水系電解質層6から供給されるプロトン(H+)との放電反応を生じる。
なお、前述した図1~図4では、電極群2の片面のみに空気極が設けられた例を説明したが、例を図示しないものの電極群の両面を正極とすることも可能である。
上記実施形態に係る空気電池は、負極と、酸素が供給される空気極と、負極と空気極との間に在る固体電解質層と、固体電解質層と空気極との間に在る水系電解質層と、水系電解質層と空気極との間のプロトン伝導層とを具備する。水系電解質層は、水に対する溶解性が高いアニオンを含む上述の多価酸と電解質塩と水とを含んだ水系電解質を含む。係る空気電池は、容量が高く、且つ、サイクル性能に優れている。
以下に実施例を説明するが、本発明の主旨を超えない限り、実施形態は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
(実施例1)
ポリプロピレン製の熱可塑性樹脂層とアルミニウム層を含有するアルミニウム含有ラミネートフィルムを用意した。アルミニウム含有ラミネートフィルムを蓋付のカップ状に成形した。空気極との対向面である蓋部に直径2mmの空気孔を5箇所開けた。こうして作製した電池容器を、外装部材として用意した。この際、ポリプロピレン層が電池容器の内面となるようにした。次いで、蓋部の外表面にシールテープを貼り付けて空気孔を塞いだ。
負極端子の一端が電気的に接続されたニッケル製メッシュを負極集電体として準備した。この負極集電体に、負極活物質層として金属リチウム箔を圧着した。こうして、負極を準備した。
酸化物結晶固体電解質LATP(Li1.5Al0.5Ti1.5(PO43)粒子と、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂と、NMPとを混合して、混合液を得た。LATP粒子と、ポリビニルブチラール樹脂との質量比は、9:1とした。混合液中の固形分濃度は、60質量%であった。
次いで、この混合液に対しボールミル混合を行い、スラリーを得た。次いで、このスラリーを厚さ25μmの多孔質PPフィルムの一方の主面上にドクターブレード法により塗工し、塗膜を乾燥させて、固体電解質層を形成した。PPフィルム上に形成された固体電解質層の膜厚は、およそ20μmであった。
非水電解質を次のとおり調製した。エチレンカーボネート50体積%とプロピレンカーボネート50体積%とを混合して、非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒に1.0モル/Lの濃度で電解質塩としてLiClを溶解させることにより、液状の非水電解質を調製した。
PPフィルムの表面に液状非水電解質を滴下することで、フィルム内に非水電解質を含浸させた。これにより、PPフィルムと非水電解質とを含む中間層を得た。
中間層が負極の金属リチウム箔(負極活物質層)の表面に面するように、負極の上に固体電解質層と中間層との複合体を積層させた。この積層物を電池容器のカップ部に収納した。この際、負極端子の先端は、カップ部の外部に延出させた。
水系電解質を次のとおり調製した。クエン酸を3Mの濃度およびLiClを1Mの濃度で水に溶解し、水溶液を得た。
電池容器のカップ部に収納した積層物の固体電解質層の上に、厚さ1 mmのガラス繊維ろ紙を乗せ、その周囲に枠形状のシール部材を設置した。ガラス繊維ろ紙に水系電解質として調整した上記水溶液を注ぎ含浸させることで、水系電解質層を得た。
プロトン伝導層として、Nafion(登録商標)製プロトン交換膜を準備した。
正極端子の一端が電気的に接続されたニッケル製メッシュを正極集電体として準備した。この正極集電体に、酸素反応層としてカーボンペーパーを圧着した。こうして、空気極(正極)を準備した。
水系電解質層をプロトン伝導層で覆い、プロトン伝導層にカーボンペーパーが接するように正極をその上に重ねた。この際、正極端子の先端は、カップ部の外部に延出させた。電池容器のカップ部を蓋部で閉じ、電池容器を封止することで空気電池を製造した。
(実施例2)
1.5Mの1,2,3-プロパントリカルボン酸をクエン酸の代わりに空気極側の水系電解質に用いたことを除き、実施例1と同様の手順で空気電池を作成した。
(実施例3)
3Mのマレイン酸をクエン酸の代わりに空気極側の水系電解質に用いたことを除き、実施例1と同様の手順で空気電池を作成した。
(比較例1)
プロトン伝導層を省略したことを除き、実施例1と同様の手順で空気電池を製造した。
(比較例2)
空気極側の水系電解質の組成を次のとおり変更したことを除き、実施例1と同様の手順で空気電池を製造した。クエン酸3M及びLiCl1Mの代わりに、LiClを12M濃度およびLiOHを1Mの濃度で水に溶解し、水溶液を得た。
上記のとおり製造した各々の空気電池について、次のように容量を評価した。各電池に対し、空気極1cm2当たり0.01mAのレートの定電流で2.0Vまで連続放電を行なった後、2.0Vの定電圧放電を行ない、各電池についての初回放電容量を測定した。但し、放電容量の上限値を40.0 mAhに制限し、放電時の容量が40.0 mAhに達した時点で放電をカットした。その結果を下記表1に示す。表1には、各電池において水系電解質に添加した溶質およびその濃度、並びにプロトン交換膜の材料も併せて示す。水系電解質の溶質としては、多価酸および電解質塩を示す。
表1に示すとおり、実施例1、2、3及び比較例1でそれぞれ製造した電池では、容量制限の40.0 mAhまで放電が続いた。これに対し、比較例2で製造した電池では、容量制限に達する前に作動停止し、17.8 mAhの放電容量しか得られなかった。実施例1及び比較例2では、水系電解質にクエン酸を含んでいたことにより放電生成物であるLiOHの析出が防止され、固体析出に起因する電池作動の妨げが生じなかった。比較例2では、LiOHの析出によって電池作動が妨げられ、放電の途中で電池が停止してしまった。
また、実施例1及び比較例1でそれぞれ製造した空気電池について、寿命性能を次のように評価した。先ず、放電容量が8 mAhに達した時点で放電をカットしたことを除き上記容量評価と同じ条件で放電し、初回放電容量を測定した。電池を充電した後再度放電し、その際の放電容量を測定した。その結果を図5及び図6にそれぞれ示す。
図5は、実施例1に係る空気電池の初回放電曲線および二回目放電曲線を示すグラフである。図5における実線101は実施例1における初回放電曲線を示し、破線102は実施例1における再充電後の二回目の放電の際の放電曲線を示す。図6は、比較例1に係る空気電池の初回放電曲線および二回目放電曲線を示すグラフである。図6における実線201は比較例1における初回放電曲線を示し、破線202は比較例1における再充電後の二回目の放電の際の放電曲線を示す。
図6に示すとおり、比較例1では、初回放電と比べて二回目の放電の際に電池電圧の大きな低下が見られた。放電末期における電圧の減少が特に顕著だった。これに対し、実施例1では、初回放電と二回目の放電との間で、電圧変化にほとんど差が見られない。即ち、実施例1で製造した空気電池は、比較例1の空気電池よりもサイクル寿命性能が優れ、比較例2の空気電池よりも容量が高かった。実施例1では、水系電解質層と空気極との間にプロトン伝導層としてNafion(登録商標)が設けられていたため、水系電解質中のクエン酸アニオン([C6H7O7]-)の空気極(カーボンペーパー)への移動を防ぎ空気極上でのクエン酸アニオンの分解を抑えられた。これに対し、比較例1ではプロトン伝導層を含んでいなかったため、充放電の際にクエン酸アニオンが空気極上で分解され、電池性能が劣化してしまった。
以上説明した1以上の実施形態および実施例によれば、負極と、酸素が供給される空気極と、固体電解質層と、水系電解質を含む水系電解質層と、プロトン伝導層とを具備する、空気電池が提供される。固体電解質層は、負極と空気極との間に位置する。水系電解質層は、固体電解質層と空気極との間に位置する。プロトン伝導層は、水系電解質層と空気極との間に位置する。水系電解質は、カルボキシル基を2つ以上有する多価酸と、電解質塩と、水とを含む。当該空気電池は、高容量および優れたサイクル寿命性能を示す。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…空気電池、2…電極群、3…負極、3a…負極集電体、3b…負極活物質層、4…中間層、4a…非水電解質層、4b…金属酸化物層、5…固体電解質層、6…水系電解質層、7…プロトン伝導層、8…空気極、8a…正極集電体、8b…酸素反応層、10…外装部材、11…空気孔、12…シール部材、13…負極端子、14…正極端子。

Claims (6)

  1. 負極と、
    酸素が供給される空気極と、
    前記負極と前記空気極との間に位置する固体電解質層と、
    前記固体電解質層と前記空気極との間に位置し、カルボキシル基を2つ以上有する多価酸と電解質塩と水とを含んだ水系電解質を含む水系電解質層と、
    前記水系電解質層と前記空気極との間に位置するプロトン伝導層と
    を具備する、空気電池。
  2. 前記負極は、リチウム金属、リチウム合金及び、リチウムが挿入-脱離される材料からなる群より選択される1以上の負極活物質を含む、請求項1記載の空気電池。
  3. 前記負極と前記固体電解質層との間に位置する中間層をさらに具備する、請求項1又は2に記載の空気電池。
  4. 前記中間層は非水電解質を含む、請求項3に記載の空気電池。
  5. 前記中間層は金属酸化物を含む、請求項3又は4に記載の空気電池。
  6. 前記中間層は、前記負極側に配置された非水電解質層と前記固体電解質層側に配置された金属酸化物層とを含む、請求項3に記載の空気電池。
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