JP2023132276A - オイル漏れ止め剤組成物及び該オイル漏れ止め剤組成物を含有する潤滑油組成物並びにオイル漏れ止め剤組成物の使用方法 - Google Patents

オイル漏れ止め剤組成物及び該オイル漏れ止め剤組成物を含有する潤滑油組成物並びにオイル漏れ止め剤組成物の使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
潤滑系統内に装着されているシール材に膨潤性を付与し、密封性を維持することが可能なオイル漏れ止め剤組成物及びその使用方法を提供する。
【解決手段】
潤滑油組成物の成分として用いられるオイル漏れ止め剤組成物であって、少なくとも成分A及び成分Bが含有されてなるオイル漏れ止め剤組成物であり、前記成分Aが、トリメリット酸無水物のポリオールエステルを含有するものであり、前記成分Bが、(a)置換基を有するスルホラン、及び(b)炭化水素基置換チオフェンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有するものであることを特徴とするオイル漏れ止め剤組成物及びその使用方法が提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は、オイル漏れ止め剤組成物、前記オイル漏れ止め剤組成物を含有する潤滑油組成物及びオイル漏れ止め剤の使用方法に関するものであり、さらに詳しくは、内燃機関用潤滑油、電気自動車駆動用潤滑油、自動変速機用潤滑油、ギア油、タービン油等に対し添加剤として使用されるオイル漏れ止め剤組成物及び前記オイル漏れ止め剤組成物を含有する潤滑油組成物並びに潤滑系統内に装着されたシール材の膨潤による密封性を維持するためのオイル漏れ止め剤組成物の使用方法に関するものである。
従来、潤滑油は、その性能を向上させるため、鉱油系及び/又は合成油系の潤滑油基油に対し、用途により相違するが、各種の添加剤が配合されている。
かかる添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐摩耗剤、摩擦低減剤、無灰分散剤、金属清浄剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤等が挙げられる。かかる添加剤は、通常、各種添加剤を組み合わせた添加剤パッケージとして使用される場合が多い。
一方、かかる添加剤を含有する潤滑油が使用される潤滑機構系統内においては、通常、接続部間にはO-リングシール、ガスケットシール、ピストンシール等の形態で多数のシール材が使用されている。かかるシール剤としては、例えば、フルオロエラストマーゴム(Viton(登録商標))、ポリテトラフルオロエチレンエラストマー(PTFE)、シリコーンゴム、ポリアクリレートゴム、ニトリルブタジエンゴム等を挙げることができる。
前記の潤滑油基油と添加剤との配合により潤滑油の性能の多くは改善されるが、シール剤との適合性に問題が生じる場合もあることが指摘されており、潤滑油基油については、そのなかでも高度精製基油、例えば、水素化分解・水素化処理により得られる基油等の非極性基油との接触により前記の如きゴムシール材が硬化又は収縮し、添加剤との接触によりさらに収縮が増大することが指摘されている。シール材が収縮することになれば、接続面に間隙が生じ、充填された潤滑油の漏出が生じ、その結果、エンジン等の機関の稼働に支障をきすことになる。
かかる状況下において、従来からシール材の膨潤作用を有するシール膨潤添加剤の使用が提案されており、例えば、フタル酸エステル等が知られている。
特許文献1によれば、シール材膨潤剤として、脂肪族アミンの使用結果が記載されている。
また、特許文献2によれば、ソルビトールエステル等の有機酸エステルもシール膨潤剤として提案されている。
しかしながら、かかるシール材膨潤剤の使用によってもゴムシール材の硬度変化については十分な検討がされておらず、また、プラスの方向への硬度変化が大きく、その点において膨潤性はまだ十分でなく、密封性には改善の余地が残されている。
従って、オイル漏れ止め剤の無添加の潤滑油に比較して相対的にプラスの方向へのシール材の硬度変化が小さく、膨潤性が改善され密封効果に優れたオイル漏れ止め剤の開発が切望されてきた。
特開平11-181461公報 特表2015-503673号公報
従って、本発明の課題は、第一に、潤滑系統内におけるシール材に対して膨潤性を付与することにより、シール性能を維持し、潤滑系統からの潤滑油の滲み漏れ防止可能なオイル漏れ止め剤組成物を提供することにあり、第二に、機関内の潤滑系統内におけるシール材の密封性を維持するためのオイル漏れ止め剤の使用方法を提供することにある。
そこで、本発明者らは、前記の如き本発明の課題を解決するために従来のエステル系シール膨潤剤について分析すると共に、改良について鋭意検討を重ねた結果、シール剤の化学構造と相溶性の高いエステル成分に着目し、さらに、かかるエステル成分と複素環状構造成分との組み合わせが、シール材に適度な膨潤性を付与し、密封効果に優れた高分子成分と狭部への浸透性に優れた低分子成分をバランスさせることにより、前記課題を解決できることに着目し、かかる知見に基いて、本発明に想到するに至った。
かくして、本発明の要旨は、次の(1)~(9)に示す通りのものである。
(1)潤滑油組成物の成分として用いられるオイル漏れ止め剤組成物であって、
少なくとも成分A及び成分Bが含有されてなるオイル漏れ止め剤組成物であり、
前記成分Aが、トリメリット酸無水物のポリオールエステルを含有するものであり、
前記成分Bが、
(a)置換基を有するスルホラン、及び
(b)炭化水素基置換チオフェン
からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有するものであることを特徴とするオイル漏れ止め剤組成物。
(2)前記成分A及び前記成分Bに、さらに成分Cが配合されてなる前記(1)に記載のオイル漏れ止め剤組成物。
(3)前記成分Cが、オイル漏れ止め剤組成物を構成する基油及び少なくともその他の添加剤である前記(2)に記載のオイル漏れ止め剤組成物。
(4)前記成分A及び前記成分Bの含有量が前記オイル漏れ止め剤組成物の全質量基準で、前記成分Aの含有量が0.1~30質量%であり、前記成分Bの含有量が0.05~20質量%である前記(1)に記載のオイル漏れ止め剤組成物。
(5)前記成分Aと前記成分Bとの混合割合が、前記成分A1質量部に対し、前記成分Bが0.05~5質量部の範囲である前記(1)に記載のオイル漏れ止め剤組成物。
(6)潤滑油基油と、前記潤滑油基油に配合された前記(1)~(5)のいずれかの1項に記載のオイル漏れ止め剤組成物と、任意に選択された少なくとも一種の他の潤滑油添加剤組成物とからなることを特徴とする潤滑油組成物。
(7)前記オイル漏れ止め剤組成物の前記潤滑油組成物に対する配合量が、潤滑油組成物の全質量を基準として1~30質量%である前記(6)に記載の潤滑油組成物。
(8)前記潤滑油組成物の用途が、内燃機関用潤滑油、ハイブリッド自動車用潤滑油、電気自動車用潤滑油、自動変速機用潤滑油及び無段変速機用潤滑油、その他の駆動系潤滑油である前記(6)に記載の潤滑油組成物。
(9)潤滑油組成物に(1)~(5)に記載のオイル漏れ止め剤組成物を有効量配合し、得られた新規潤滑油組成物を潤滑機構系統内に注入し、又は潤滑機構系統内の潤滑油に(1)~(5)に記載のオイル漏れ止め剤組成物を添加することにより、潤滑機構系統内のシール材の密封性を維持することを特徴とするオイル漏れ止め剤の使用方法。
本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物の配合により、フルオロポリマーエラストマー(FRM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)等のシール材に対し、密封性の維持に十分な膨潤性を付与することができる。
特に、オイル漏れ止め剤組成物を構成する成分Aのトリメリット酸無水物のポリオールエステルと成分Bの置換スルホランが併用される場合において、体積変化率及び硬さ変化の両者を改善するゴム膨潤性に関し顕著な効果を奏するものであり、成分A又は成分Bのいずれかを欠く場合は後述の実施例、比較例に示すように所望の効果を奏することができない。後述の実施例及び比較例により示すように成分Aと成分Bの併用、特に特定割合の併用により著しく顕著な膨潤性が得られることは予期せざる効果を奏するものである。
オイル漏れ止め剤組成物
本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物は、少なくとも成分A及び成分Bを含有するものからなるものであり、
前記成分Aが、トリメリット酸無水物のポリオールエステルを含有するものであり、
前記成分Bが、
(a)置換基を有するスルホラン、及び
(b)炭化水素基置換チオフェン
からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有するものである。
成分A
トリメリット酸無水物のポリオールエステル
本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物を構成する成分Aのトリメリット酸無水物のポリオ-ルエステルは、下記の式(1-1)及び式(1-2)で示される化合物からなる群より選択される一種の化合物を少なくとも含有するものである。

前記式(1-1)において、Xは、2価の炭素数2~12のアルケニル基である。

前記式(1-2)において、Rは水素原子及び炭素数1~3のアルキル基の群から選択される基である。
前記式(1-1)において(-O-X-O-)基は、脂肪族飽和炭化水素の群から誘導されたものであり、Xは、両末端ヒドロキシル基の間のポリオールを構成する骨格原子からなるものである。
前記式(1-1)において、Xは二価の炭素数2~12のアルケニル基であり、式(1-2)においてRは水素原子及び炭素数1~3のアルキル基から選択される。
前記炭素数2~12のアルケニル基としては、具体的には、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基等及びこれらの異性体が挙げられる。また、前記Rの炭素数1~3のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基及びプロピル基の異性体が挙げられる。
前記式(1-1)及び(1-2)の化合物は、いずれの方法で製造してもよいが、トリメリット酸無水物をアルカンポリオールの有機酸エステルと反応させることにより得ることが提案されている。アルカンポリオールは、末端にヒドロキシル基を有するものであり、炭素数1~12を有するものが好ましい。具体的には、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオ-ル、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,12-ドデカンジオール等を挙げることができる。
アルカンポリオールとしては、3個のヒドロキシル基を有するものも使用することができる。例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリエチロールプロパン等を挙げることができる。また、ペンタエリスリトール等のテトラヒドロキシンアルカンポリオールも挙げることができる。
本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物の構成成分の成分Aとして好適なトリメリット酸無水物のポリオールエステルは、下記の動粘度を有するように一般式(1-1)におけるXが選択される。好ましいポリオールは、1,4-ブタンジオ-ル、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオールからなる群より選択することができる。
また、一般式(1-2)におけるRとしては、水素原子又はメチル基を選択することができる。
本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物を構成する成分Aは、前記の通りのトリメリット酸無水物のポリオールエステルを含有する流体であり、APIカテゴリーグループVフルードに属するものである。粘度としては、40℃動粘度:280~360mm2/s、100℃動粘度:18~25mm2/sのものが好ましい。また粘度指数は70以上のものを採用することができる。かかるポリオールエステルを含有する市販品としては、PALUBシリーズを入手することができる。
成分B
置換基を有するスルホラン
本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物の構成成分として特定された置換基を有するスルホランは、次の一般式(2):

で表される置換スルホランを含有するものが好ましい。
式(1)において、R1は、炭素数4以上を有する炭化水素基であり、例えば、アルキル基及びアルケニル基等の脂肪族基、シクロアルキル基又はシクロアルケニル基等の脂環式基、芳香族基、脂肪族基-及び脂環式基-置換芳香族基、芳香族基-置換脂肪族基及び脂環式基等を挙げることができる。例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシルデシル基、エイコシル基、デセニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、ヘプチルフェニル基、イソプロペニルフェニル基及びナフチル基等の各基並びにこれらの各異性体を挙げることができる。
本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物の成分Bとして、好適な置換スルホランは、R1が、炭素数4~50の炭化水素基であり、具体的には、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンタニル基、ブテニル基、ドデセニル基、フェニル基、ナフチル基、トリル基、ドデシルフェニル基、テトラプロペン-アルキル化フェニル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等の炭化水素基を選択してもよい(炭化水素基は各々の異性体も包含するものである。)。かかる炭化水素基のなかで炭素数4~30のアルキル基又はアルケニル基(奥性体を含む)が好ましい。
また、式(1)において、Xは、酸素原子又は硫黄原子が好ましい。
R2及びR3は、それぞれ、水素原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群より選択される。
本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物の構成成分である成分Bとしてさらに好適な置換スルホランは、R1が炭素数4~12のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の混合体又は、デシル基、イソデシル基等のアルキル基、分岐アルキル基である。また、R2及びR3は、それぞれ水素原子であり、Xとしては酸素原子又は硫黄原子が好ましい。かかる観点から置換基としては、3-アルコキシ基又は3-アルキチオ基を有するものが好ましい。
前記の如き置換基を有するスルホランを含有する添加剤は、市販品として入手することができる。
炭化水素基置換チオフェン
本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物の成分Bとして使用される炭化水素基置換チオフェンは、チオフェンのなかの水素原子を炭化水素基で置き換えられた誘導体であり、その具体例としては、次の一般式(3)を有する化合物を挙げることができる。

式(3)において、R4は、炭化水素基であり、炭化水素基としては、例えば、アルキル基またはアルケニル基等の脂肪族基、シクロアルキル基又はシクロアルケニル基等の脂環式基、芳香族基、脂肪族基-及び脂環式基-置換芳香族基、芳香族基-置換脂肪族基及び脂環式基等を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、エイコシル基、デセニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、ヘプチルフェニル基、イソプロペニルフェニル基、及びナフチル基等の各基並びにこれらの各異性体を挙げることができる。
本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物の構成成分の成分Bとして好適な炭化水素基置換チオフェンは、R4が炭素数1~50の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、フェニル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等及びこれらの各異性体を挙げることができる。
また、式(3)において、置換基の数nは1以上であり、4以下のいずれでもよいが1又は2が好ましい。また、五員環への置換位置は、いずれの位置でもよいが、2または3の位置が好ましい。
以上の観点から、本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物の成分Bとして、さらに好適な炭化水素基置換チオフェンは、R4が炭素数1~10のアルキル基又はアルケニル基及びこれらの異性体であり、特に好ましくは、炭素数4~10であり、具体的には、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基であり、例えば、3-ブチルチオフェン、3,4-ジブチルチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-オクチルチオフェン、3-デシルチオフェン等を挙げることができる。さらに好ましくは、炭素数4以上であり、下記の式(4)で示す2-n-オクチルチオフェン、及び式(5)の3-n-オクチルチオフェンを挙げることができる。

本発明にかかるオイル漏れ止め剤組成物を構成する成分A及び成分Bの含有量は、成分Cを含有するオイル漏れ止め剤組成物の全質量基準で成分Aの含有量が0.1~30質量%であり、好ましくは、1~20質量%である。さらに好ましくは、2~15質量%であり、特に好ましくは、5~12質量%である。
成分Aの含有量が0.1質量%未満の場合は、膨潤性を確保することができないおそれがある。一方、成分Aの含有量が30質量%を超えると増加に応じた膨潤性を付与する可能性が小さくなり、また、体積変化と硬さ変化のバランスがとれなくなるおそれがある。
一方、成分Bの含有量は0.05~20質量%であり、好ましくは、0.1~15質量%であり、さらに好ましくは、0.05~10質量%であり、特に好ましくは、1~8質量%である。
成分Bの含有量が0.05質量%未満であるとシール材に与える体積変化が小さく、十分な膨潤性を付与することができないおそれがある。一方、20質量%を超えると硬さ変化が過度に進展するおそれが生ずる。
成分Aと成分Bとの混合割合は、成分A1質量部に対して成分Bが0.05~5質量部の範囲が好適であり、好ましくは0.1~2質量部であり、さらに好ましくは0.3~1.5質量部である。
成分A1質量部に対し、成分Bが0.05質量部に満たない場合においては、シール材に対する膨潤効果がほとんど得られないおそれがあり、体積変化が小さく、十分な密封性を維持することができないおそれがある。一方、5質量部を超えると成分Bの増量に伴う相応の膨潤性を得ることができず、特に体積変化と硬さ変化のバランスを損なうおそれが生ずる。
成分A1質量部に対し、成分Bが0.05~5質量部の混合範囲において、シール材に対する体積変化及び硬さ変化の改善がバランスのとれたものとなる相乗的効果を奏することができる。
成分C
成分Cは、成分A及び成分Bの媒体としてのベース油であり、潤滑油組成物との粘度調整のために採用される。また、ベース油と共に、成分A及び成分Bのシール材膨潤効果を助長する性能を有する添加剤のほか、少なくとも一種の他の潤滑油添加剤が配合される。かかるシール材膨潤効果を助長する性能を有する添加剤としては、任意に選択することができるが、ジチオカルバミン酸金属塩、具体的にはZnDTCを挙げることができる。ZnDTCは、ゴムシール材との適合性を有することが指摘されており、本発明に係るオイル漏れ止め剤組成物の成分として用いることにより、膨潤性の改善に寄与することができることに着目している。
ベース油として、後述の潤滑油基油と同一のものを、用途に応じて任意に選択することができるが、各種鉱油、植物油及び合成油を用いることができる。鉱油としては、例えば、通常、潤滑油基油として用いられる石油精製工程において製造される潤滑油留分を用いることができる。具体的には、潤滑油原料油を溶剤精製、水素化分解、水素化精製、溶剤脱蝋、接触脱蝋等の精製工程を選択することにより得られる溶剤精製鉱油、水素化分解鉱油、水素化精製鉱油、ワックスの水素化分解鉱油又はこれらの混合油を用いることができる。植物油としては菜種油等を挙げることができる。合成油としては、ポリアルファオレフィン(PAO)、二塩基酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、オレイン酸、アゼライン酸、スペリン酸、セバチン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー等)と各種アルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシンアルコール、2-エチルヘキシンアルコール、ドデシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等)とのエステル、炭素数5~18のモノカルボン酸とポリオール(例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等)とのエステル等を挙げることができる。市場で入手することができる。かかる成分Cの粘度としては、本発明にかかる潤滑油添加剤組成物の用途によるものであり、潤滑油基油の粘度に対応して決定されるが、通常100℃動粘度:4~35mm2/sの範囲のものが好ましい。
成分Cの含有量は、成分Aと成分B及びその他の添加剤との合計量の残量であり、成分A及び成分Bの含有量により変動するが、50質量%以上、好ましくは、65質量%以上である。
潤滑油組成物
本発明にかかる潤滑油組成物は、潤滑油基油と、前記潤滑油基油に配合された前記オイル漏れ止め剤組成物と、さらに必要に応じて配合される他の潤滑油添加剤とから構成されるものである。
潤滑油基油
本発明にかかる潤滑油組成物を構成する潤滑油基油は、通常の潤滑油基油として使用され、また使用が可能なものであれば、特に限定されるものではないが、本発明にかかる潤滑油組成物の構成成分として用いられるオイル漏れ止め剤組成物を完全に溶解させることができるものが好適である。具体的には、かかる要求を満たす鉱油系基油、GTL(Gas to liquid)系基油、合成油系基油またはこれらの混合油系基油等が用いられる。
鉱油系基油としては、パラフィン系、中間基系またはナフテン系原油の常圧蒸留装置の残渣油の減圧蒸留による留出油として得られる潤滑油留分または残渣油を溶剤精製、水素化分解、水素化処理、水素化精製、溶剤脱蝋、接触脱蝋、白土処理等の各種精製工程を任意に選択して用いることにより処理して得られる溶剤精製鉱油または水素化処理鉱油及び溶剤精製と水素化処理を組み合わせた工程により得られる鉱油、または減圧蒸留残渣油の溶剤脱瀝処理により得られる脱瀝油を前記の精製工程により処理して得られる鉱油、またはワックス分の異性化により得られる鉱油等、これらの混合油を基油基材として用いることができる。
前記の如くして得られる精製基油基材として粘度レベルの異なる軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油、ブライトストック等を挙げることができ、これらの基材を潤滑油製品の各用途に応じて動粘度等の要求性状を満たすように適宜調合することにより鉱油系基油を製造することができる。
また、GTL油系基油としては、GTLプロセスにより天然ガス等を原料として得られる液体生成物から分離される潤滑油留分、または生成ワックスの水添異性化または水素化分解により得られる潤滑油留分等を挙げることができる。さらには、アスファルト等の重質残油成分を原料とするATL(Asphalt to Liquid)プロセスにより得られる液状生成油から分離される潤滑油留分等も用いることができる。
一方、合成油系基油としては、ポリアルファオレフィンオリゴマー(例えば、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)等及びこれらの混合物。);ポリブテン;エチレン-アルキレンコポリマー;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン、ジノニルベンゼン等。);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、アルキル化ポリフェニル等。);アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド及びこれらの誘導体;二塩基酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スペリン酸、セバチン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー等。)と各種アルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2ーエチルヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等。)とのエステル;炭素数5~18のモノカルボン酸とポリオール(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等。)とのエステル;その他、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、リン酸エステル等を挙げることができる。
潤滑油基油は、前記の鉱油系基油、合成油系基油及びGTL油系基油を潤滑油組成物の用途に応じて所望の粘度及びその他の性状を満たすように単独でまたは二種以上の基油を混合することにより製造される。
潤滑油基油としては、特に合成油系基油と鉱油系基油との混合油系基油が好適であり、GTL油系基油と鉱油系基油との混合油系基油、二種以上の鉱油系基油からなる混合油系基油または二種以上のGTL油系基油からなる混合油系基油等が好ましく、さらに、GTL油系基油と鉱油系基油との混合油系基油及び二種以上の鉱油系基油からなる混合油系基油が粘度特性と経済性とのバランスを図る点から好適である。
本発明にかかる潤滑油組成物中の構成成分としての潤滑油基油の粘度は、潤滑油組成物の用途に応じて決定されるが、環境保全の観点から低粘度化油が求められる状況下にあり、潤滑油基油の100℃における動粘度が2~10mm2/sの範囲にあり、好ましくは3~7mm2/sの範囲に制御される。
潤滑油基油の粘度が高すぎると、摩擦抵抗が大きくなり、また流体潤滑域における摩擦係数が高くなり、省燃費特性が悪化するという問題がある。一方、粘度が低すぎると、摺動部分、例えば内燃機関の動弁系、ピストンリング及び軸受等において摩耗が増加するという難点が生ずる。
潤滑油基油の含有量は、潤滑油組成物の全質量基準で99.5~50質量%、好ましくは99~60質量%、さらに好ましくは95~70質量%である。
本発明にかかる潤滑油組成物は、潤滑油基油と、該潤滑油基油に配合された前記オイル漏れ止め剤組成物とからなるものであり、潤滑油組成物の用途に応じて要求される性能を満たすためにさらに他の各種添加剤が任意に配合される。
潤滑油基油と該潤滑油基油に配合された成分A及び成分Bを含有するオイル漏れ止め剤組成物とからなる潤滑油組成物において、オイル漏れ止め剤組成物の含有量は、潤滑油組成物全質量基準で、0.1~30質量%の範囲で採用される。好ましくは、0.15~20質量%、さらに好ましくは、0.2~15質量%である。オイル漏れ止め剤組成物の含有量が0.1質量%に満たないとゴムシール材に十分な膨潤性を付与することができず、潤滑油の滲み出しを防止することができないおそれが生ずる。一方、30質量%を超えるとオイル漏れ止め剤組成物が添加されて得られる潤滑油組成物の性状がアンバランスになり、潤滑性が低下するおそれが生ずる。
また、本発明にかかる潤滑油組成物中の成分Aの含有量は、潤滑油組成物の全質量基準で0.01~6質量%、好ましくは、0.05~5質量%、さらに好ましくは、0.1~4質量%、特に好ましくは、0.15~3質量%の範囲である。
成分Bの含有量は、0.01~5質量%、好ましくは0.05~4質量%、さらに好ましくは0.1~3質量%、特に好ましくは0.15~2.5質量%の範囲である。
成分Aの含有量が0.01質量%に満たないと膨潤に対する効果が不十分となり、一方、5質量%を超えると体積変化及び硬さ変化のバランスの維持を図ることが困難となるおそれがある。
また、成分Bの含有量が0.01質量%に満たないと膨潤性に対する作用が不十分となるおそれがあり、一方5質量%を超えると成分Bの過多に伴う体積変化及び硬さ変化のバランスを損なうおそれが生ずる。
他の添加剤
本発明にかかる潤滑油組成物は、自動変速機油、無段変速機油、油圧油、ギア油、タービン油、コンプレッサー油及びエンジン油等として好適なものであり、基油の選択により、必要な粘度調整を行ない、用途に応じてそれぞれ要求される性能を満たすために各種添加剤、例えば、粘度指数向上剤、無灰分散剤、有機酸金属塩(金属系洗浄剤)、酸化防止剤、極圧剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、防錆剤、着色剤などを適宜添加することができる。
粘度指数向上剤としては、一般に非分散型ポリメタアクリレート、分散型ポリメタアクリレート、非分散型オレフィンコポリマー(ポリイソブチレン、エチレン-プロピレン共重合体)、分散型オレフィンコポリマー、ポリアルキルスチレン、スチレン-ブタジエン水添共重合体、スチレン-無水マイレン酸エステル共重合体、星状イソプレン等が挙げられる。非分散型オレフィンコポリマーとは、分子中に酸素または窒素を含有せずに分散性能を有しているものである。ポリイソブチレンやエチレン-プロピレン共重合体の分子量としては、質量平均分子量で10万以上(GPC分析においてポリスチレン換算量)のものが好ましい。これは単独だけでなく複数のものを併用してもよい。通常0.01質量%~30質量%の割合で使用される。
無灰分散剤としては、コハク酸イミド、コハク酸アミド、ベンジルアミン、コハク酸エステル、コハク酸エステル-アミド等を含有する添加剤及びそれらのホウ素含有等が挙げられるが、コハク酸イミド系及びホウ素含有コハク酸イミド系が好ましく用いられる。コハク酸イミド系及びホウ素含有コハク酸イミド系の配合量は、通常0.05質量%~8質量%である。
金属系清浄剤としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のスルホネート、フェネート、サリシレート、カルボキシレートから選択される化合物を含むものが挙げられ、過塩基性塩、塩基性塩、中性塩等の塩基価の異なるものを任意に選択して用いることができる。これらの配合量は、金属元素量として、通常0.05質量%~5質量%の範囲で使用することが好ましい。
摩擦調整剤としては、例えば、有機モリブデン化合物の他に脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、油脂類、アミン、ポリアミド、硫化エステル、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられる。これらは、通常0.05質量%~5質量%の割合で使用される。
摩耗防止剤としては、一般にジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸金属塩(Pb,Sb,Moなど)、ジチオカルバミン酸金属塩(Zn,Pb,Sb,Moなど)ナフテン酸金属塩(Pbなど)、脂肪酸金属塩(Pbなど)、ホウ素化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられ、通常0.1質量%~5質量%の割合で使用される。
酸化防止剤としては、一般にアルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネイト等の硫黄系酸化防止剤、ホスファイト等のリン系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、さらにジチオリン酸亜鉛等が挙げられ、特に、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤及びこれらの組合せが好ましく用いられる。これらは、通常0.05質量%~5質量%の割合で使用される。
極圧剤としては、一般に無灰系サルファイド化合物、硫化油脂、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられ、これらは、通常0.05質量%~3質量%の割合で使用される。
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等が挙げられ、これらは、通常0.01質量%~3質量%の割合で使用される。
流動点降下剤としては、一般にエチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタリンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、特に、ポリメタアクリレートが好ましく用いられる。これらは、通常0.01質量%~5質量%の割合で使用される。
防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸基、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられ、これらは、通常0.01質量%~3質量%の割合で使用される。
また、潤滑油組成物を調製する際に、用途に応じてエンジン油用添加剤パッケージ、自動変速機油(ATF)用の添加剤パッケージ等の添加剤パッケージが用いられるが、前記の添加剤群から有用な添加剤を選択して使用することもできる。エンジン油としては、摩擦調整剤のほか、通常、酸化防止剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、防錆剤、腐食防止剤等を含有するものである。各添加剤の配合量の具体例としては、下記記載の通りである。勿論、これらは、配合量を例示するものであって、添加剤の種類と配合量は、これらの記載に限定されるものではない。

新潤滑油組成物
本発明において新潤滑油組成物とは、従来のオイル漏れ止め剤組成物の使用方法において用いられる構成要素であり、前記潤滑油組成物にオイル漏れ止め剤組成物が配合されて得られた潤滑油組成物である。
オイル漏れ止め剤組成物の使用方法
本発明に係るオイル漏れ止め剤組成物の使用方法としては、少なくとも次の二つの方法を挙げることができる。
第1の使用方法は、潤滑油基油と潤滑油添加剤とからなる潤滑油組成物に、オイル漏れ止め剤組成物を有効量配合し、得られた新潤滑油組成物を自動車等の潤滑機構系統内に注入することからなるオイル漏れ止め剤組成物の使用方法に関するものである。
通常、潤滑油製品は、潤滑油基油にオイル漏れ止め剤組成物を含め、必要なすべての添加剤を配合したものを販売経路に置いてあり、使用者が、これをエンジン内に注入することが行われているが、本発明により、販売経路にあり、オイル漏れ止め剤が含有されていないか又はゴム膨潤性が不十分な市販潤滑油製品にオイル漏れ止め剤を有効量配合する方法を実現したものであり、得られる新潤滑油組成物の比重、動粘度、流動点、摩擦係数、耐摩耗性に変化を与えないようにオイル漏れ止め剤の密度、40℃動粘度、100℃動粘度、粘度指数等の特性が、後述の実施例において示すように調整されたものである。
かかる観点から、オイル漏れ止め剤の配合量は、有効量であり、新潤滑油組成物全質量を基準として1~30質量%、好ましくは、2~20質量%、さらに好ましくは、5~15質量%である。
第2の使用方法は、自動車等の潤滑機構内に充填されている潤滑油組成物に、潤滑機構系統の給油口からオイル漏れ止め剤組成物を供給する方法である。
オイル漏れ止め剤組成物の特性は前記の第1の方法において記載した通りであり、配合量として前記同様1~30質量%を援用することができる。
かかるオイル漏れ止め剤組成物の使用方法によれば、簡便な手段により、使用潤滑油組成物にシール膨潤性を付与することによりシール材の密閉性を維持することができる。
以下、本発明について実施例及び比較例により、さらに具体的に詳述する。もっとも、本発明は、実施例等により限定されるものではない。
尚、実施例等においてゴムシール材の膨潤性評価試験に用いた試験材料等及びゴムシール材の膨潤性評価試験方法については下記に掲げる。
また、実施例等において表示する「%」は、特に、ことわりがない限り、組成物の全質量を基準とした「質量%」を示す。
1.試験材料
(イ)オイル漏れ止め剤試料(以下、「LTP」と略称することがある。)
下記の成分A、成分B及び成分Cから選択した成分を各実施例等で示す割合で混合することによりオイル漏れ止め剤試料を調製した。
(1)成分A:
・トリメリット酸無水物ポリオールエステル:Palub8434H(Patech社製)
(2)成分B:
・置換スルホラン:Lubrizol730(ルーブリゾール社製)
・アルキル基置換チオフェン:2-n-オクチルチオフェン(東京化成工業社製)
(3)成分C:
・添加剤ベース油:
市販油1:スーパーオイル(Super Oil)N460(ENEOS社製)
市販油2:バイロンフォース(Bylon Forth)5W20C(中外油化学工業社製)
市販油3:YUBASE4(SKルブリガンツ(SK Lubricants)社製)
市販油4:YUBASE6(SKルブリガンツ(SK Lubricants)社製)
・粘度指数向上剤:市販VI向上剤1 VISCOPLEX3(R)-220(エボニック(Evonik)社製)
・市販エンジン油添加剤:HITEC(R)9858A(アフトン(Afton)社製)
・増粘剤:市販VI向上剤(エボニック(Evonik)社製)
(ロ)ゴムシール材試料
(1)フルオロエラストマー(FKM)(デュポン社製)
(2)アクリルゴム(ACM)(日本ゼネコン社製)
(3)ニトリルブタジエンゴム(NBR)(JSR社製)
(ハ)供試油
ゴムシール材の評価試験においては、次の市販油7~9を供試油として使用した。
(1)市販油7:エンジン油0W20
(2)市販油8:エンジン油5W30
(3)市販油9:エンジン油5W30
2.ゴムシール材膨潤性評価試験方法
オイル漏れ止め剤試料のゴムシール材による膨潤性を体積変化率及び硬さ変化により評価した。評価試験方法の手順を次に示す。
(1)体積変化
日本工業規格(JIS)K 6258に準拠し、ゴムシール材から幅2.5cm、縦4cm、厚さ3mmの大きさに切断加工したシール材試験片を、試験容器内の試作油または市販油に、120℃において168時間浸漬し、浸漬前の試験片の体積に対する浸漬後の試験片の体積の変化率(%)を求めた。
体積変化率(%)は、次の計算式により算出した。
尚、浸漬前及び浸漬後の試験片の体積は、試験片の空気中の質量から蒸留水中の質量を差し引くことにより算出した。試験片の質量の測定は、試験片の端部に吊り下げ可能なステンレスワイヤをとりつけ、精密天秤を用い、大気中及び蒸留水中共に1mgまで秤量した。

(2)硬さ変化
試験片の硬さ変化は、JIS K6253に準拠し、A型硬度計(アスカーゴム硬度計)を用いてゴムシール材試験片の浸漬前の硬さ及び浸漬後の硬さを、各々測定し、下記の計算式により算出した。

[製造例1]
添加剤ベース油として市販油1を30質量%と市販油2を70質量%との混合油を用い、これに成分Aとしてトリメリット酸無水物ポリオールエステルを10質量%及び成分Bとして置換スルホランを5質量%配合し、さらに粘度指数向上剤を10質量%、市販エンジン油添加剤を4質量%、摩擦低減剤を4質量%添加してオイル漏れ止め剤開発品LPT1を調製した。オイル漏れ止め剤開発品LPT1の組成を表2に、その主な特性を表3に各々示す。
[製造例2]
成分Bとして置換スルホランを10質量%に増量し、配合したこと以外、製造例1と同一組成のオイル漏れ止め剤開発品LPT2を調製した。


[比較製造例1]
オイル漏れ止め剤試料の成分中、成分Bの置換スルホランを含有しないこと以外すべて、製造例1により得られたオイル漏れ止め剤と同一の成分を用いてオイル漏れ止め剤比較品1(比較LPT1)を調製した。
オイル漏れ止め剤比較品1の組成を表4に示す。
[比較製造例2]
オイル漏れ止め剤試料の成分中、成分Aのトリメリット酸無水物ポリオールエステルを含有しないこと以外すべて製造例1と同一組成のオイル漏れ止め剤比較品2(比較LPT2)を調製した。オイル漏れ止め剤比較品2(比較LPT2)の組成を表4に示す。

[実施例1]
製造例1により調製したオイル漏れ止め剤開発品LPT1を市販エンジン油70W20を供試油1とし、これに10質量%配合し試作油1を得た。試作油1を、ゴムシール材として、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、フルオロエラストマー(FKM)及びアクリルゴム(ACM)を各々用いる前記ゴムシール材膨潤性評価試験に供した。測定結果を表5~7に示す。
[実施例2]
製造例1により調製したオイル漏れ止め剤開発品LPT1を市販エンジン油8油85W30に10質量%配合し、試作油2を得た。試作油2を、ゴムシール材として、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、フルオロエラストマー(FKM)及びアクリルゴム(ACM)を、各々用いる前記ゴムシール材膨潤性評価試験に供した。測定結果を表5~7に示す。
[実施例3]
製造例1により調製したオイル漏れ止め剤開発品LPT1を市販油95W30に10質量%配合し、試作油3を得た。試作油3を、ゴムシール材として、フルオロエラストマー(FKM)、アクリルゴム(ACM)及び、ニトリルブタジエンゴム(NBR)を、各々、用いる前記ゴムシール材膨潤性評価試験に供した。測定結果を表5~7に示す。
[実施例4]
製造例2により調製したオイル漏れ止め剤開発品2(LPT2)を市販油7に10質量%配合することにより得られた試作油4(市販油7+LPT2)を、ゴムシール材として、ニトリルブタジエンゴム(NBR)を用いる前記ゴムシール材膨潤性評価試験に供した。測定結果を表5に示す。
[実施例5]
製造例2により調製したオイル漏れ止め剤開発品2(LPT2)を供試油2として市販油8に10質量%配合することにより得られた試作油5(市販油8+LPT2)を実施例4と同様に、ゴムシール材膨潤性評価試験に供した。測定結果を表5に示す。
[実施例6]
実施例4に記載のオイル漏れ止め剤開発品2(LPT2)を供試油3の市販油9に10質量%配合することにより得られた試作油6(市販油9+LPT2)をゴムシール材膨潤性評価試験に供した。測定結果を表5に示す。
[比較例1]
比較製造例1により調製したオイル漏れ止め剤比較品1(比較LPT1)を市販エンジン油7に10質量%配合し、試作油比較品1を得た。試作油比較品1を、ゴムシール材として、ニトリルブタジエンゴム(NBR)を前記ゴムシール材膨潤性評価試験に供した。測定結果を表5~7に示す。
[比較例2]
比較製造例1により調製したオイル漏れ止め剤比較品1(比較LPT1)を市販エンジン油8に10質量%配合することにより得られた試作油比較品2を比較例1と同様に、ゴムシール材膨潤評価試験に供した。測定結果を表5に示す。
[比較例3]
比較製造例1により調製したオイル漏れ止め剤比較品1(比較LPT1)を市販エンジン油9に10質量%配合することにより得られた試作油比較品3を比較例1と同様に、ゴムシール材膨潤評価試験に供した。測定結果を表5に示す。
[比較例4~6]
比較製造例2により調製したオイル漏れ止め剤比較品2(比較LPT2)を市販エンジン油7、市販エンジン油8,市販エンジン油9に、各々10質量%配合することにより得られた試作油比較品4、試作油比較品5、試作油比較品6を、比較例1と同様に、ゴムシール材膨潤性評価試験に供した。測定結果を表5に示す。


前記の実施例及び比較例の結果から次の点が明らかとなった。
1.前記の通り、市販エンジン油(オイル漏れ止め剤又は該当するシール膨潤剤の含有無し)3種に、本発明に係るオイル漏れ止め剤開発品を、各々所定量添加し試作油を得た結果、いずれの試作油においても、いずれのゴムシール材の体積変化及び硬さ変化共に著しく改善されたことが明らかである。
例えば、表5のニトリルブタジエンゴム(NBR)による膨潤評価試験において、市販エンジン油7による体積変化率は-6.0%であり、硬さ変化は6.2であるのに対し、本発明に係るオイル漏れ止め剤開発品1を10質量%配合した試作油1においては、体積変化率-2%及び硬さ変化4.2に各々改善されたことが示されている。
2.本発明に係るオイル漏れ止め剤開発品の構成成分である成分A及び成分Bは単独では、膨潤性に与える効果は小さいが、併用することにより著しく顕著な相乗効果を奏することが確認できた。
例えば、ニトリルブタジエンゴム(NBR)膨潤評価試験において、表5に示すように、市販エンジン油7の体積変化率-6.0%に対し、成分Aのみ含有する比較LPT1の点かによる効果は-4.8%であり、成分Bのスルホランのみを含有する効果が-4.0%増加にすぎないが、両者併用によれば、実施例1で示すように-2.0%に相乗的に著しく改善されていることが示されている。

Claims (9)

  1. 潤滑油組成物の成分として用いられるオイル漏れ止め剤組成物であって、
    少なくとも成分A及び成分Bが含有されてなるオイル漏れ止め剤組成物であり、
    前記成分Aが、トリメリット酸無水物のポリオールエステルを含有するものであり、
    前記成分Bが、
    (a)置換基を有するスルホラン、及び
    (b)炭化水素基置換チオフェン
    からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有するものであることを特徴とするオイル漏れ止め剤組成物。
  2. 前記成分A及び前記成分Bに、さらに成分Cが配合されてなる請求項1に記載のオイル漏れ止め剤組成物。
  3. 前記成分Cが、前記オイル漏れ止め剤組成物を構成する基油及び少なくとも一種の他の潤滑油添加剤である請求項1に記載のオイル漏れ止め剤組成物。
  4. 前記成分A及び前記成分Bを含有する前記オイル漏れ止め剤組成物の全質量基準で、前記成分Aの含有量が0.1~30質量%であり、前記成分Bの含有量が0.05~20質量%である請求項1に記載のオイル漏れ止め剤組成物。
  5. 前記成分Aと前記成分Bとの混合割合が、前記成分A1質量部に対し、前記成分Bが0.05~5質量部の範囲にある請求項1に記載のオイル漏れ止め剤組成物。
  6. 潤滑油基油と、前記潤滑油基油に配合された請求項1~5のいずれかの1項に記載のオイル漏れ止め剤組成物と、任意に選択された少なくとも一種の他の潤滑油添加剤組成物とからなることを特徴とする潤滑油組成物。
  7. 前記オイル漏れ止め剤組成物の前記潤滑油組成物における含有量が、前記潤滑油組成物の全質量を基準として1~30質量%である請求項6に記載の潤滑油組成物。
  8. 前記潤滑油組成物の用途が、内燃機関用潤滑油、ハイブリッド自動車用潤滑油、電気自動車用潤滑油、燃料電池搭載自動車用潤滑油、水素エンジン搭載車両用潤滑油並びに前記各車両の自動変速機用潤滑油及び無段変速機用潤滑油その他の駆動系潤滑油である請求項6に記載の潤滑油組成物。
  9. 潤滑油組成物に請求項1~5に記載のオイル漏れ止め剤組成物を有効量配合し、得られた新規潤滑油組成物を潤滑機構系統内に注入し、又は潤滑機構系統内の潤滑油組成物に請求項1~5に記載のオイル漏れ止め剤組成物を有効量配合することにより、潤滑機構系統内のシール材の密封性を維持することを特徴とするオイル漏れ止め剤の使用方法。
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