JP2023127088A - 経済性評価シミュレーション装置及び経済性評価シミュレーション方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】物性値や境界条件等を事前に正確に決めることができないような未知の環境に対応するロボット事業等の経済性評価シミュレーションの精度を向上する。【解決手段】事業における作業の内容についてのシミュレーションを行う作業シミュレーション実行部と、経済性パラメータを入力する経済性パラメータ入力部と、経済性パラメータを用いて経済性についてのシミュレーションを行う経済性シミュレーション実行部と、作業の内容及び経済性パラメータに関する実運用データを取得する実運用データ取得部と、実運用データ取得部が実運用データを取得する前に経済性シミュレーション実行部で得られた結果と実運用データとを用いて、データ同化処理により前記結果を修正するデータ同化部と、を有する、経済性評価シミュレーション装置を用いる。【選択図】図1
Description
本開示は、経済性を評価するシミュレーション装置及びシミュレーション方法に関する。
ロボットまたは機械の経済性、事業性、生産性等を事前に評価する方法が研究開発されている。
例えば、特許文献1には、製品の生産を自動的に行う機械システムにおいて生産性能の分析を行う、機械システムの生産性能評価技術に関して、複数の作業を順番に行う機械システムの複数の作業のうちの所定の部品状態に対し、各作業の前後の部品状態間の状態遷移確率と各作業の作業時間を定義し、状態遷移確率に基づいて、複数の部品状態を経て初期状態から目標状態に至るすべての遷移経路を抽出し、遷移経路のそれぞれに対して経路サイクルタイムを、状態遷移確率と作業時間とから演算し、経路サイクルタイムと、抽出された遷移経路から、機械システムで1つの部品が目標状態となるのにかかる時間である期待タクトタイムを演算する、機械システムの生産性能評価装置が開示されている。
また、特許文献2には、収支構造の決定と前提条件の入力を明確に分離し、前提条件を対話的に変更した際の経営指標の変化を可視化することを目的として、事業を評価するための評価項目の値を算出する計算過程と、計算過程に対する入力値である前提条件と、をユーザが入力するのを受け付け、前提条件及び計算過程に基づき評価項目の値を時系列で作成し、時系列で作成した評価項目の値を表示し、前提条件をユーザが再度入力するのを受け付け、再度入力された前提条件及び計算過程に基づき評価項目の値を時系列で再度作成し、時系列で再度作成した評価項目の値を表示する、事業性評価装置が開示されている。
特許文献3には、ライフサイクル全体を見越した長期期間にわたる設備の性能劣化を評価することを目的として、複数の時刻のそれぞれまでに計測された対象設備の計測データに基づき、対象設備の性能を表すパラメータの確率密度分布を推定し、対象設備の利用パタンを取得し、利用パタンを、対象設備の確率密度分布と関連づけて記憶し、対象設備と異なる第1設備の利用パタンに類似する対象設備の利用パタンを特定し、特定した利用パタンに対応する確率密度分布群を用いて、第1設備の将来の性能劣化を評価する、設備評価システムが開示されている。また、特許文献3には、パラメータの推定は、ベイズ推定を用いることができること、事後確率密度分布を求める方法として、ギブス法、メトロポリス法などを含むマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC:Markov chain Monte Carlo methods)、逐次モンテカルロ法の一種であるパーティクル法などが開示されている。
例えば、建築・土木作業のようなフィールドでの機械・ロボットによる作業の生産性を事前にシミュレーションで予測する場合、シミュレーションの入力となる物性値や境界条件などを事前に正確に決めることができない。また、作業や環境が複雑なため、シミュレーションモデル自体もロボットの挙動を正確に模擬することが困難である。例えば、土木作業では、現場の土の状態(固さ、水分量など)や地形、気象条件などによって生産性が大きく変わってくるため、事前にシミュレーションでの正確な予測が難しい。
このように事前のシミュレーションによる予測が難しい条件においては、特許文献1のように比較的動作環境が予測できる生産現場での生産性評価方法をそのまま適用することは困難である。
また、特許文献2に記載の事業性評価装置では、事業の採算性を評価するため、事業性に関わる項目に確率分布を持たせることで、事業性評価も確率的に実施している。しかし、この場合も、主にプラント等の比較的環境が一定の条件を対象としている。
特許文献3に記載の設備評価システムも、集合住宅、ビルやプラントなどのファシリティの監視・制御・診断の各種サービスを遠隔から提供する技術分野に関するものであるため、環境条件等は、事前の予測が必要なほど不安定なものではない。このため、事後の確率密度分布に着目していると考えられる。
本開示は、物性値や境界条件等を事前に正確に決めることができないような未知の環境に対応するロボット事業等の経済性評価シミュレーションの精度を向上することを主な目的とする。
本開示の経済性評価シミュレーション装置は、事業における作業の内容についてのシミュレーションを行う作業シミュレーション実行部と、経済性パラメータを入力する経済性パラメータ入力部と、経済性パラメータを用いて経済性についてのシミュレーションを行う経済性シミュレーション実行部と、作業の内容及び経済性パラメータに関する実運用データを取得する実運用データ取得部と、実運用データ取得部が実運用データを取得する前に経済性シミュレーション実行部で得られた結果と実運用データとを用いて、データ同化処理により前記結果を修正するデータ同化部と、を有する。
本開示によれば、物性値や境界条件等を事前に正確に決めることができないような未知の環境に対応するロボット事業等の経済性評価シミュレーションの精度を向上することができる。
本開示は、経済性評価を実施するシミュレーション装置及びシミュレーション方法に関する。特に、ロボット事業の経済性評価を実施するシミュレーション装置及びシミュレーション方法に関する。なお、以下の説明においては、ロボット事業を例として挙げるが、本開示の内容は、これに限定されるものではない。後述のとおり、物性値、境界条件等を事前に正確に決めることができないような未知の環境において作業ロボット等を用いるロボット事業の経済性を評価することは、非常に難しく、従来のシミュレーション技術の対象となっていなかった。本開示の技術は、そのような未知の条件を有する事業にも対応し得るものである。
以下、本開示の内容について、実施例を用いて説明する。
図1は、ロボット事業の経済性評価シミュレーション装置を示す構成図である。
本図においては、ロボット事業の経済性評価シミュレーション装置100は、演算処理部101及び入出力端末130を含む。演算処理部101は、事前処理部110及び運用時処理部120を含む。事前処理部110は、ロボットシミュレーション実行部111、経済性パラメータ入力部112、経済性シミュレーション実行部113及び経済性評価結果表示部114を有する。運用時処理部120は、実運用データ取得部121、データ同化部122及び経済性評価結果表示部123を有する。入出力端末130は、入力部131及び出力部132を有する。
実運用データ取得部121は、事業運用時に実運用データを取得する。ここで、実運用データとは、状態変数の実測値を含むデータをいう。
図2は、図1のロボットシミュレーション実行部111における処理の具体例の画面を示す図である。
図2においては、例として、建築現場などで瓦礫を撤去する作業を対象とし、入出力端末130の出力部132(表示部)の画面を示している。
ロボットシミュレーション実行部111(図1)においては、ロボット202の作業に関するシミュレーションを行う。ロボット202(作業ロボット)は、作業現場に散乱している瓦礫201を撤去する作業を行う。シミュレーションは、ロボットの重心や重量、関節の摩擦、地面と車輪との摩擦、瓦礫の重さなどの物理的な条件を計算して実行される。シミュレーションにより評価される項目としては、作業時間や作業可否などの作業生産性に関わるもの、ロボットの運用コストとなる消費エネルギー、または、ロボットの部品の損傷、劣化などの保守に関わる項目、作業に必要な物資の量などがある。これらの項目を表示項目203のように画面に表示してもよい。
なお、図2においては、ロボット202の作業に関するシミュレーションを行う例について示しているが、一般に、未知の条件を有する事業における作業の内容についてシミュレーションを行う場合にも適用できる。この場合、ロボットシミュレーション実行部111は、作業シミュレーション実行部として機能する。
図3は、図1の経済性パラメータ入力部112における処理の具体例の画面を示す図である。
経済性パラメータ入力部112(図1)においては、経済性シミュレーションを実行するために必要なパラメータ(経済性パラメータ)を入力する。この場合に、入力は、ユーザが見て手動で行う場合と、装置が自動で最適化を行う場合とがある。
図3においては、前提条件301、収入に関する項目302及び支出に関する項目303を並べて表示した状態で入力する画面を示している。
前提条件301に関しては、通貨単位、プロジェクト年数、稼働率、ロボット台数、減価償却年数、金利、販売単価、電気代金(単価)などのパラメータを入力する。ここで、パラメータにばらつきを仮定する場合は、例えば、正規分布を仮定し、平均と標準偏差を入力する。また、例えば、年ごとの変動を仮定する場合は、年ごとの値を入力する。
収入に関する項目302に関しては、売上、借入額、助成金などのパラメータを入力する。ここで、例えば、売上に関しては、ロボットシミュレーション実行部111で計算された生産性の結果を用いて、次の式で計算される。
(売上)=(販売単価)×(1台当たりの生産量)×(台数)×(稼働率)
単価や生産量が将来的に変化することを想定する場合は、シミュレーションを実行する将来にわたって入力する。また、それぞれの項目にばらつきを想定する場合は、例えば、正規分布を仮定し、平均と標準偏差の値を入力する。売上の標準偏差の値をロボットシミュレーションの結果から入力する場合の処理内容については、実施例3で説明する。
単価や生産量が将来的に変化することを想定する場合は、シミュレーションを実行する将来にわたって入力する。また、それぞれの項目にばらつきを想定する場合は、例えば、正規分布を仮定し、平均と標準偏差の値を入力する。売上の標準偏差の値をロボットシミュレーションの結果から入力する場合の処理内容については、実施例3で説明する。
次に、支出に関する項目303の入力画面では、初期設備投資額、電力消費、保守費、人件費、減価償却費、法人税、保険料などに関するパラメータの値を入力する。このうち、電力消費や保守費など、ロボットシミュレーション実行部111で計算された値を用いて計算する。例えば、電気代は、次の式で計算される。
(電気代)=(電気料金(単価))×(電力消費量)
これらが変化することを想定する場合は、シミュレーションを実行する将来にわたって年毎に入力する。また、それぞれの項目にばらつきを想定する場合は、例えば、正規分布を仮定し、平均と標準偏差の値を入力する。
これらが変化することを想定する場合は、シミュレーションを実行する将来にわたって年毎に入力する。また、それぞれの項目にばらつきを想定する場合は、例えば、正規分布を仮定し、平均と標準偏差の値を入力する。
経済性シミュレーション実行部113(図1)においては、以上の入力パラメータを基にロボット事業の経済性を評価する。計算方法は、例えば、特許文献2に記載の方法を用いて将来のキャッシュフロー(収入、支出)の推移予測をシミュレーションする。具体的には、図3に示す項目を期ごと(例えば年度ごと)に足し合わせて計算する。
また、事業の経済性を示す指標として、例えば、IRR(内部収益率)をキャッシュフローから下記式(1)により計算する。言い換えると、IRRは、下記式(1)の「r」を未知数とする方程式を解くことによって算出される。
式中、Cnは第n期のキャッシュフロー(償却前利益)であり、C0は初期投資額である。r(0<r)は割引率である。
上記式(1)を満たす割引率rがIRRとなる。IRRは、投資の価値を示す指標であり、値が高いほど投資価値が高くなる。なお、経済性評価指標には、IRRのほかにも、正味現在価値、投資回収期間など様々なものがあるが、本開示においては、例としてIRRを用いて説明する。
図4は、図1の経済性評価結果表示部114による評価結果の具体例を示すグラフである。横軸に年数、縦軸に金額をとっている。
本図においては、経済性シミュレーション実行部113で計算された、将来にわたる収入402及び支出403が表示されている。収入のエラーバー404及び支出のエラーバー405は、それぞれのばらつきを示すものであり、例えば標準偏差の値を表示している。これにより、ユーザは、将来のキャッシュフローのバランスとその確度を確認することができる。なお、ここでは収入と支出を表示したが、例えば、収入のうちの売上のみや、ロボットシミュレーションの結果である生産量などを表示してもよい。また、IRR(406)を表示してもよい。
図5は、図1のデータ同化部122における処理の一例であるアンサンブルカルマンフィルタ法を説明するためのグラフである。なお、本実施例ではアンサンブルカルマンフィルタ法の説明をするが、データ同化の方法としては、アンサンブルカルマンフィルタ法以外のカルマンフィルタ法、粒子フィルタ法、アジョイント法、変分法などを用いてもよい。カルマンフィルタ法、特にアンサンブルカルマンフィルタ法は、粒子フィルタ法等に比べ、計算量が少なく、計算時間が短いという利点がある。
ここで、データ同化とは、シミュレーションモデルに対して実測値を用いてモデルを修正(同化)することにより、シミュレーションの精度を高める手法をいう。本開示においては、ロボット事業の運用開始後に、実運用データを用いて事前の経済性シミュレーションの結果を修正して、将来の予測値の精度を向上する。
図5において、横軸の状態変数501は、データ同化を実行するシミュレーションの変数であり、例えば、ロボットによる作業の生産量、エネルギー消費量または収入、支出などの金額である。縦軸には、確率密度をとっている。
本図の上段には、シミュレーションによる事前予測値の確率密度分布502(実線)及び実測値の確率密度分布503(破線)を示している。ここでは、例えば正規分布を仮定しており、その場合の標準偏差もユーザが仮定する。シミュレーションによる事前予測値のばらつきもシミュレーションで推定する場合の手法については、実施例2で説明する。ここでは、例えば正規分布を仮定している。実測値の確率分布は、状態変数が金額のように誤差がないと分かっている場合は、正規分布の標準偏差を極小さい値とすればよい。
本図の下段に示すデータ同化処理後のシミュレーションの確率密度分布504(点線)は、シミュレーションの事前予測値の確率密度分布502と実測値の確率密度分布503とを用いて、下記式(2)で表されるベイズの定理により計算されたものである。
式中、p(x|y)はデータ同化処理後のシミュレーションの確率密度分布504、p(y|x)は測定値の確率密度分布503、p(x)は事前のシミュレーションによる確率密度分布502を表している。
以上のように、事前のシミュレーション結果を事前確率、測定値を尤度、データ同化処理後のシミュレーションを事後確率とするベイズ推定により、事前のシミュレーション結果を測定値により修正することができる。
図6は、データ同化によるシミュレーション結果の修正のプロセスを示すグラフである。横軸に時間、縦軸に状態変数をとっている。
本図においては、事前のシミュレーション結果に基いて状態変数の経時変化を予測する。その後、状態変数の実測値を用いて2回のデータ同化処理を行い、状態変数の経時変化の予測を修正する。なお、図中のグラフの曲線及び点で表される値には全て、ばらつき(確率密度分布)が内包されているが、ここでは簡略化のためその表示は省略し、それぞれの確率密度分布から得られる平均値、中央値などの代表値を表示している。
曲線601は、事前のシミュレーション結果に基く状態変数の経時変化であり、第一回目のデータ同化602の前の部分を実線、第一回目のデータ同化602以降の部分を破線で示している。
第一回目のデータ同化602の時点で、実測値604が得られた場合には、曲線601で示す事前のシミュレーションによる予測値603は、第一回目のデータ同化602によりデータ同化後の値605に修正される。ここで、データ同化後の値605が実測値604と異なる理由は、図5に示すようなばらつき(確率密度分布)を有することを前提としてベイズ推定を行ったためである。
さらに、データ同化後の値605を用いてシミュレーションを再実行することで、第一回目のデータ同化602以降のシミュレーション結果も、曲線601から曲線606に修正される。第二回目のデータ同化607の前の部分を実線、第二回目のデータ同化607以降の部分を破線で示している。
次に、第二回目のデータ同化607の時点で得られた実測値608を用いて、シミュレーションによる予測値609は、第二回目のデータ同化607によりデータ同化後の値610に修正される。さらに、修正後の値を用いてシミュレーションを再実行することで、第二回目のデータ同化607以降のシミュレーション結果は、曲線606から曲線611に修正される。
以上の処理を、実測データが得られるタイミングで繰り返すことで、シミュレーションが実測値に近づくように修正することができる。なお、上述したように、実測データに誤差がないと考えられる場合は、実測データのばらつきを極小さい値とすることで、データ同化処理後の値は実測値と一致する。
経済性評価結果表示部123は、データ同化処理後のシミュレーション結果を表示する。表示形式は、図4で示す表示方法と同様である。ただし、ここでは、運用が既に開始されているので、現時点までの実測値及びシミュレーションにより得られた値、並びにデータ同化処理後の値が分かるように、収入、支出及びIRRでそれぞれ区別して表示してもよい。また、データ同化した状態変数が収入及び支出のような最終的な経済性評価パラメータの場合は、データ同化の結果が直接表示できるが、生産量、エネルギー消費量のようなパラメータの場合は、経済性シミュレーション実行部113をデータ同化処理後の値を用いて再実行することで、最終的な経済性評価パラメータを得ることができる。
図7は、ロボット事業の経済性評価シミュレーションシステムを示す構成図である。
本図に示すように、ロボット事業の経済性評価シミュレーションシステムは、ロボット事業の経済性評価シミュレーション装置100(図1)に対応するコンピュータ700と、入出力装置716と、を接続することで構成される。
コンピュータ700は、CPU(701)と、RAM(702)と、ROM(703)と、HDD(704)と、通信I/F(705)と、入出力I/F(706)と、メディアI/F(707)とを有する。ここで、CPUはCentral Processing Unit、RAMはRandom Access Memory、ROMはRead Only Memory、HDDはHard Disk Drive、I/FはInterfaceのそれぞれ略称である。
通信I/F(705)は、外部の通信装置715と接続される。入出力I/F(706)は、入出力装置716と接続される。メディアI/F(707)は、記録媒体717からデータを読み書きする。さらに、CPU(701)は、RAM(702)に読み込んだプログラム(「アプリケーション」とも呼ぶ。また、その略称の「アプリ」とも呼ぶ。)を実行することにより、各処理部を制御する。そして、このプログラムは、通信回線を介して提供したり、CD-ROM等の記録媒体717に記録して配布したりすることも可能である。
実施例2においては、シミュレーションによる事前予測値のばらつきを推定する場合の手法について説明する。なお、実施例1と共通する内容については説明を省略する。シミュレーションによる事前予測値のばらつきを推定する場合は、ロボットシミュレーション実行部111(図1)に対する解析条件のパラメータにばらつきを持たせ、モンテカルロ法により発生させた乱数を用いて複数回のシミュレーションを実行する。
図8は、シミュレーションによる確率分布評価の処理を示すフロー図である。
本図においては、まず、シミュレーションの解析条件である入力パラメータの確率分布を入力する(工程S801)。例えば、ロボットが把持する物体の重量や形状などのパラメータで想定するばらつき具合を入力する。次に、確率分布推定(工程S802)を行う。ここでは、まず、モンテカルロ法による乱数発生(工程S803)を、工程S801で入力した確率分布に対して実行する。次に、発生させた乱数の回数分ロボットシミュレーションを実行し(工程S804)、得られた解析結果を用いて確率分布推定を行う(工程S805)。最後に推定された確率分布を出力する(工程S806)。出力された確率分布は、データ同化時のシミュレーションによる事前予測値の確率密度分布502(図5)として利用される。
図9は、モンテカルロ法を説明するための図である。
本図においては、左側に入力パラメータに対する確率密度を示す曲線901のグラフを示している。一方、右側には、シミュレーションにより得られた、入力パラメータ902と出力パラメータ903との組を表にして示している。ここでは、入力パラメータの例として把持物体重量を示している。
具体的には、入力パラメータの確率分布入力(工程S801)で入力した確率密度に従って、指定回数分(例えば1000回)の乱数を発生する。つまり、曲線901の縦軸の値が大きい場所ほど、発生密度が高くなるように乱数を発生させる。
次に、発生させた乱数の回数分ロボットシミュレーションを実行し、入力パラメータ902と出力パラメータ903との組を記録する。出力パラメータ903は、ロボットシミュレーションで評価する項目であり、例えば作業時間や消費エネルギーが相当する。なお、本実施例では、入力パラメータ902及び出力パラメータ903とも、1つのケースで説明しているが、片方もしくは両方が複数個でもよい。また、本実施例では、モンテカルロ法の指定回数分の全てについてシミュレーションを実行したが、シミュレーションの実行時間が長い場合は、予め少ない回数分実行して結果をデータベース化しておき、機械学習などを用いて入力パラメータ902の値から出力パラメータ903の値を推定してもよい。
次に、確率密度分布推定を説明する。
図10は、確率密度分布推定を説明するための図である。
本図において、左側のグラフ1001は、ロボットシミュレーションの出力パラメータ903(図9)をヒストグラム形式で表示したものである。右側には、グラフ1001のヒストグラムから確率密度分布推定により推定された滑らかな確率密度分布曲線1002を示している。ここでは、例えば、KDE(カーネル密度推定)などの手法が用いられる。ここで得られた確率密度分布曲線1002が工程S806(図8)で出力され、データ同化時のシミュレーションによる事前予測値の確率密度分布502(図5)として利用される。
図11は、データ同化処理により精度を向上させたシミュレーション結果を用いてロボット事業の運用再計画を実施する場合のロボット事業の経済性評価シミュレーション装置を示す構成図である。なお、実施例1と共通する内容については説明を省略する。
本図においては、図1の運用時処理部120に運用再計画部1101が追加されている。運用再計画部1101では、データ同化部122で得られたデータ同化処理の結果による将来の経済性評価に基づいて、運用の再計画を行う。例えば、シミュレーションの結果、ロボットの保守費が高くなる場合は、ロボットのリプレイス、ロボットの台数や配置の見直し等の計画の調整が考えらえる。
また、この場合の再計画も、経済性評価結果表示部123に示されたものをユーザが見て手動で行う場合と、システムが自動で最適化を行う場合とがある。
ユーザが手動で行う場合は、例えば、図3の経済性パラメータ入力画面で運用条件(前提条件)の値を変えて経済性シミュレーションを再実行し、変更前及び変更後のIRRの値を見て検討する、という方法がある。
システムが自動で行う場合は、経済性パラメータ入力部112で入力する項目を設計変数とし、経済性シミュレーションで評価される収入と支出との差やIRRを目的変数として目的変数を最大化または最小化するように最適化を行う。その際の最適化手法としては、勾配法やGA(遺伝的アルゴリズム)などがある。
以下、本開示に係る望ましい実施形態についてまとめて説明する。
経済性評価シミュレーション装置は、経済性シミュレーション実行部で得られた結果及びデータ同化処理により修正されたデータである修正結果のうちの少なくともいずれか一つを表示する経済性評価結果表示部を更に有することが望ましい。
作業シミュレーション実行部は、作業生産性、消費エネルギー、保守にかかわる項目、及び作業に必要な物資の量のうちの少なくともいずれか一つを評価することが望ましい。
経済性評価シミュレーション装置は、運用再計画部を更に有し、データ同化部は、将来の経済性評価を行い、運用再計画部は、将来の経済性評価に基づいて運用の再計画を行うことが望ましい。
データ同化部は、カルマンフィルタ法、粒子フィルタ法、アジョイント法又は変分法を用いることが望ましい。
経済性パラメータは、売上、借入額、助成金、初期投資額、人件費、保険料、電気代、法人税、保守費、減価償却費及び修繕管理費のうちの少なくともいずれか一つを含むことが望ましい。
作業シミュレーション実行部は、実運用を開始する前に行うシミュレーションの入力データにモンテカルロ法によるばらつきを持たせる処理をし、データ同化部は、ばらつきを有する入力データを用いることが望ましい。
なお、本開示は、前記した実施例に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。
また、前記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、ICカード(ここで、ICは、Integrated Circuitの略称である。)、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体におくことができる。また、クラウドを活用することもできる。
また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
さらに、各装置を繋ぐ通信手段は、無線LANに限定されず、有線LANやその他の通信手段に変更してもよい。
100:ロボット事業の経済性評価シミュレーション装置、101:演算処理部、110:事前処理部、111:ロボットシミュレーション実行部、112:経済性パラメータ入力部、113:経済性シミュレーション実行部、114、123:経済性評価結果表示部、120:運用時処理部、121:実運用データ取得部、122:データ同化部、130:入出力端末、131:入力部、132:出力部。
Claims (8)
- 事業における作業の内容についてのシミュレーションを行う作業シミュレーション実行部と、
経済性パラメータを入力する経済性パラメータ入力部と、
前記経済性パラメータを用いて経済性についてのシミュレーションを行う経済性シミュレーション実行部と、
前記作業の内容及び前記経済性パラメータに関する実運用データを取得する実運用データ取得部と、
前記実運用データ取得部が前記実運用データを取得する前に前記経済性シミュレーション実行部で得られた結果と前記実運用データとを用いて、データ同化処理により前記結果を修正するデータ同化部と、を有する、経済性評価シミュレーション装置。 - 前記経済性シミュレーション実行部で得られた前記結果及び前記データ同化処理により修正されたデータである修正結果のうちの少なくともいずれか一つを表示する経済性評価結果表示部を更に有する、請求項1に記載の経済性評価シミュレーション装置。
- 前記作業シミュレーション実行部は、作業生産性、消費エネルギー、保守にかかわる項目、及び前記作業に必要な物資の量のうちの少なくともいずれか一つを評価する、請求項1に記載の経済性評価シミュレーション装置。
- 運用再計画部を更に有し、
前記データ同化部は、将来の経済性評価を行い、
前記運用再計画部は、前記将来の経済性評価に基づいて運用の再計画を行う、請求項1に記載の経済性評価シミュレーション装置。 - 前記データ同化部は、カルマンフィルタ法、粒子フィルタ法、アジョイント法又は変分法を用いる、請求項1に記載の経済性評価シミュレーション装置。
- 前記経済性パラメータは、売上、借入額、助成金、初期投資額、人件費、保険料、電気代、法人税、保守費、減価償却費及び修繕管理費のうちの少なくともいずれか一つを含む、請求項1に記載の経済性評価シミュレーション装置。
- 前記作業シミュレーション実行部は、実運用を開始する前に行うシミュレーションの入力データにモンテカルロ法によるばらつきを持たせる処理をし、
前記データ同化部は、前記ばらつきを有する前記入力データを用いる、請求項1に記載の経済性評価シミュレーション装置。 - 作業シミュレーション実行部が、事業における作業の内容についてのシミュレーションを行い、
経済性パラメータ入力部が、経済性パラメータを入力し、
経済性シミュレーション実行部が、前記経済性パラメータを用いて経済性についてのシミュレーションを行い、
実運用データ取得部が、前記作業の内容及び前記経済性パラメータに関する実運用データを取得し、
データ同化部が、前記実運用データ取得部が前記実運用データを取得する前に前記経済性シミュレーション実行部で得られた結果と前記実運用データとを用いて、データ同化処理により前記結果を修正する、経済性評価シミュレーション方法。
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