JP2023122555A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents

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恵子 澤本
Keiko Sawamoto
孝行 宇都
Takayuki Uto
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Abstract

【課題】本発明は、使用する温度によらずに太陽電池セルなどの封止剤との高い接着性を有する積層ポリエステルフィルムを提供することをその課題とする。【解決手段】少なくとも一方の面に易接着層を有する積層ポリエステルフィルムであって、前記易接着層の温度T℃でのAFM弾性率をP(T)、P(-20)-P(25)をΔP、P(-20)/P(25)を弾性率比P’としたときに、以下の特徴1と2の少なくとも一方を備える、 積層ポリエステルフィルム。特徴1:前記ΔPが0.1GPa以上2.0GPa以下である。特徴2:前記弾性率比P’が0.1以上2.3以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、積層ポリエステルフィルムに関する。より詳しくは太陽電池セルなどの封止材との接着性が良く、特に寒冷地での温度変化による接着性の低下を抑制することのできる積層ポリエステルフィルムに関する。
機能性フィルム部材を、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)などの封止剤などを介してガラスなどの透明基材で挟み込んだ機能性部材が太陽電池、窓ガラスなどに広く用いられている。特に、半永久的で無公害の次世代エネルギー源として太陽光発電が注目を浴びていることから、太陽電池は急速に普及しつつある。
一般的に太陽電池は、発電素子を透明な封止材により封止したものに、ガラスなどの透明基板と、バックシート(裏面保護用シート)と呼ばれる樹脂シートを貼り合わせて構成される。太陽電池は、透明基板を通じて内部に取り込まれた太陽光の光エネルギーを、発電素子で電気エネルギーに変換する。得られた電気エネルギーは、発電素子に接続したリード線により取り出されて各種電気機器に使用される。
ここで、バックシートには、安価で高性能である二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以降PETと称する。)フィルム等のポリエステルフィルムが広く用いられており、さらに種々の素材をドライラミネートなどの方法にて貼り合わせることによって、バリア性や電気特性を向上させる検討がされてきた。しかしながら、従来検討されているポリエステルフィルムでは、EVA等との接着性が十分ではない点に問題がある。そのため、ポリエステルフィルムとEVA等が剥離すること等により、最終製品として適用し難いという問題があった。
この問題に対して、ポリエステルフィルムの表面に形成する易接着層にPVAなどの水溶性高分子を加えて、接着させる相手部材と表面エネルギーを近似させる方法(特許文献1)、ポリエステルフィルムの製造工程内で易接着層形成用の塗材の塗布を行うインラインコート法により親水性の易接着層を形成する方法(特許文献2)、及び易接着層の柔軟性と耐湿熱性を向上させる方法(特許文献3)等が提案されている。
特開2000-336309号公報 特表2001-179913号公報 特開2011-156848号公報
しかしながら、特許文献1のように、ポリエステルフィルム上に積層する易接着層の中に水溶性高分子を入れる方法は、易接着層とPVAとの表面自由エネルギーを近似させることによって接着性を向上させるというものなので、あるケン化度を有するPVAとの接着性が良好だったとしても、ケン化度が異なるPVAとの接着性は悪化するなど汎用接着性に課題がある。さらに、使用する温度によっては易接着層が膨潤若しくは収縮するため、使用する温度によって接着性が劣る課題もある。特許文献2のように、インラインコート法により親水性の易接着層を積層させる方法も、特許文献1と同様の課題を有している。また、特許文献3のように易接着層の柔軟性を向上させる方法は、温度による易接着層の接着性や硬さの変化が大きくなるため、使用する温度によって接着性が悪化することがある。
このように、特許文献1~3に挙げられた従来の易接着層では、封止材との接着性が十分ではなく、特に太陽電池のように屋外で用いられる場合、寒冷地などの低温環境下や急激な温度変化を伴う環境下において、封止材と易接着層の界面で両者が剥離しやすいという問題があった。
本発明は、かかる問題を解決するべく、使用する温度によらずに封止材との高い接着性を有する積層ポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。すなわち、少なくとも一方の面に易接着層を有する積層ポリエステルフィルムであって、前記易接着層の温度T℃でのAFM弾性率をP(T)、P(-20)-P(25)をΔP、P(-20)/P(25)を弾性率比P’としたときに、以下の特徴1と2の少なくとも一方を備える、積層ポリエステルフィルムである。
特徴1:前記ΔPが0.1GPa以上2.0GPa以下である。
特徴2:前記弾性率比P’が0.1以上2.3以下である。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは以下の態様とすることもできる。
[1] 少なくとも一方の面に易接着層を有する積層ポリエステルフィルムであって、前記易接着層の温度T℃でのAFM弾性率をP(T)、P(-20)-P(25)をΔP、P(-20)/P(25)を弾性率比P’としたときに、以下の特徴1と2の少なくとも一方を備える、積層ポリエステルフィルム。
特徴1:前記ΔPが0.1GPa以上2.0GPa以下である。
特徴2:前記弾性率比P’が0.1以上2.3以下である。
[2] 前記P(25)が0.1GPa以上1.5GPa以下である、[1]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[3] 前記易接着層のガラス転移温度が30℃以上80℃以下である、[1]または[2]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[4] 前記易接着層の表面エネルギーが30mN/m以上48mN/m以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[5] 前記易接着層が、ウレタン樹脂とアクリル変性ポリエステル樹脂のブレンド体をともに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[6] 前記易接着層が、下記式(1)~(5)の少なくとも一つ以上の構造を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
Figure 2023122555000001
[7] 前記易接着層がオキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[8] 前記易接着層がオキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造を30質量%以上90質量%以下含む、[1]~[7]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[9]前記易接着層がメラミン化合物を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[10] ポリエステル樹脂(樹脂A)を主成分とする層(A層)と、前記樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂(樹脂B)を主成分とする層(B層)を交互に51層以上積層した積層構成部を有する、[1]~[9]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[11] 示差走査熱量分析計により求められる微小吸熱ピークが170℃以上210℃以下に存在する、[1]~[10]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
本発明によって、使用する温度によらずに封止材との高い接着性を有する、積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
以下に本発明の積層ポリエステルフィルムについて詳細を述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の態様は当然本発明の範囲に含まれる。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の面に易接着層を有する。ここでポリエステルフィルムとは、フィルムを構成する全成分を100質量%としたときに、50質量%を超えて100質量%以下の成分がポリエステル樹脂であるシート状の成形体をいい、ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸単位とジオール単位がエステル結合により結合された繰り返し構造を有する樹脂をいう。積層フィルムとは、組成の異なる層が2種類以上積層されたフィルムをいう。また、易接着層とは、一般にフィルム表面に設けられるプライマー層のことをいい、フィルムと他部材を接着させるために設けられる層のことである。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、易接着層の低温環境下における接着性を高める観点から、易接着層の温度T℃でのAFM弾性率をP(T)、P(-20)-P(25)をΔP、P(-20)/P(25)を弾性率比P’としたときに、以下の特徴1と2の少なくとも一方を備えることが重要である。P(-20)は-20℃におけるAFM弾性率であり、寒冷地や砂漠地帯での使用を想定した低温環境下でのAFM弾性率を表す。一方、P(25)は25℃、すなわち室温環境下におけるAFM弾性率である。
特徴1:ΔPが0.1GPa以上2.0GPa以下である。
特徴2:弾性率比P’が0.1以上2.3以下である。
一般に、太陽電池セルの封止材として用いられるEVAは、-20℃の低温環境下においては弾性率が増加し、易接着層と被着体である封止材の接着性は被着体の弾性率が大きくなるほど悪化することが知られている。そのため、常温環境下においてはEVAと易接着層の接着が十分であったとしても、低温環境下ではEVAと易接着層の界面で剥離が生じやすくなる。特徴2を備えない場合、ΔPが0.1GPa未満であると、EVAとの熱加工工程を経ても易接着層の温度による状態変化が不足し、積層ポリエステルフィルムとEVAとの接着性が不十分となる。一方で特徴2を備えず、かつΔPが2.0よりも高いと、積層ポリエステルフィルムとEVAとの接着性が25℃では十分であっても、-20℃になると弾性率が上昇して易接着層が過度に硬くなってEVAとの接着に適さなくなり、接着性が不十分となる。
上記観点から、ΔPの好ましい範囲は0.1GPa以上1.6GPa以下、より好ましくは0.1GPa以上1.2GPa以下、さらに好ましくは0.5GPa以上1.2GPa以下である。特許文献1~3に記載される従来技術では、25℃における接着性が十分であっても、-20℃にした際に接着層の弾性率が変化して十分な接着性が維持できない。
また、特徴1を備えない場合、弾性率比P’が2.3よりも高いと、積層ポリエステルフィルムとEVAとの接着性が25℃では十分であっても、-20℃になると弾性率が上昇して易接着層が過度に硬くなってEVAとの接着に適さなくなり、接着性が不十分となる。一方、特徴1を備えず、かつ弾性率比P’が0.1よりも低いと、-20℃での膜の弾性率変化が過度に大きくなり、寒冷地や砂漠地帯で用いた場合に繰り返される温度変化によって易接着層が劣化し、接着性が不十分となる。また、一般にポリエステルフィルムは-20℃に冷却されることによって25℃よりも弾性率は高くなる、あるいは冷却前後で近い値となることから、弾性率比P’の好ましい範囲は0.9以上2.1以下、より好ましくは1.1以上2.0以下である。
なお、本発明の積層ポリエステルフィルムは、易接着層の低温環境下における接着性を高める観点から、特徴1、2の少なくとも一方を備えればよいが、特徴1、2の両方を備えることがより好ましい。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムにおいては、P(25)が0.1GPa以上1.5GPa以下であることが好ましい。このような態様とすることで、EVAのような柔軟性の高い樹脂膜との接着性を高めることができる。上記観点からP(25)は、より好ましくは0.3GPa以上1.4GPa以下、更に好ましくは0.6GPa以上1.3GPa以下である。P(25)が1.5GPa以下であることにより、EVAとの十分な接着性を確保することができ、フィルムと中間膜の界面での剥離が軽減される。一方、P(25)が0.1GPa以上であると、易接着層が脆くならず、劈開による剥離や、フィルムをロール状で巻き上げた際のブロッキングを軽減できる。
また、易接着層のガラス転移温度(以下、Tgとも記す。)は30℃以上80℃以下であることが好ましい。このような態様とすることで、ΔPが小さくなるため、温度による中間膜との接着性の変化を小さくすることができる。上記観点から易接着層のTgは、より好ましくは30℃以上70℃以下、さらに好ましくは30℃以上55℃以下である。易接着層のTgが30℃以上であることにより、ΔPの上昇が抑えられ、80℃以下であることにより、中間膜との接着性を十分な水準とすることができる。
特徴1と2の少なくとも一方を備える態様とし、P(25)、易接着層のTgを上記範囲とする方法としては、易接着層や易接着層を形成するための樹脂組成物の組成を適切に選択する方法が挙げられる。より具体的には易接着層や易接着層を形成するための樹脂組成物が、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂を全て含む態様、若しくは、ウレタン樹脂とアクリル変性ポリエステル樹脂のブレンド体を含む態様が挙げられる。また、易接着層を形成するための樹脂組成物にオキサゾリン化合物を含有させ、これによる架橋構造を形成させて易接着層を形成することも効果的である。
易接着層がウレタン樹脂を含有することにより、EVAの水酸基との水素結合を形成することができるので、EVAに対する接着性を発現させることが可能となる。ポリエステル樹脂を含有することによって、基材であるポリエステルフィルム(層)との接着性を良好にすることが可能となる。また、アクリル樹脂を含むことによって、コーティングにより易接着層を形成する際に塗膜の硬化を促進する他、後述する易接着層の表面エネルギーを30mN/m以上48mN/m以下とすることが容易となる。なお、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂によるこれらの効果は、代わりにアクリル変性ポリエステル樹脂を用いることによっても得られる。
易接着層が含有するウレタン樹脂は、脂肪族ウレタン樹脂であることが好ましく、さらには脂環式ウレタン樹脂であることが好ましい。ここで脂肪族ウレタン樹脂とは、脂肪族鎖を有するウレタン樹脂をいい、脂環式ウレタン樹脂とは、脂肪族鎖の一部が環状構造を含む脂肪族ウレタン樹脂のことをさす。脂環式ウレタン樹脂は、脂肪族ウレタン樹脂中でもガラス転移点が高いため、脂環式ウレタン樹脂を含む易接着層は、合わせガラス化などの熱加工工程や高温高湿環境下での使用により付与される熱に対して、軟化や溶融することなく、また、易接着層表面へのポリエステルフィルム中のオリゴマーのブリードアウトの発生が抑制される。そのため、易接着層が脂環式ウレタン樹脂を含むと、特に耐湿熱環境下での接着性に優れた易接着層を得ることができる。
一方、脂肪族ウレタン樹脂の代わりにその構成の一部に芳香族を含む芳香族ウレタン樹脂を適用した場合、芳香族ウレタン樹脂を有する樹脂組成物は、芳香族鎖の影響により易接着層が剛直になるためEVAの伸縮に対して追従できず、十分な接着性が得られないことがある。また、易接着層に光が当たると黄変や易接着層の脆化などの問題が発生することがあり、例えば熱線カットガラスや窓ガラスに用いる際に外光の影響で品位が低下することがある。
本発明で用いることのできるアクリル変性ポリエステル樹脂は、アクリル樹脂成分とポリエステル樹脂成分とが互いに結合したものであって、例えばグラフト重合タイプ、ブロック共重合タイプを包含する。また、アクリル変性ポリエステル樹脂中のアクリル樹脂成分とポリエステル樹脂成分の混合比率、共重合比率は、どちらが高くてもよい。アクリル変性ポリエステル樹脂は、例えば、ポリエステルの両端にラジカル開始剤を付加してアクリル単量体の重合を行わせること、ポリエステルの側鎖にラジカル開始剤を付加してアクリル単量体の重合を行わせること、あるいはアクリル樹脂の側鎖に水酸基を付加し、末端にイソシアネート基やカルボキシル基を有するポリエステルと反応させること等によって製造することができる。前述の通りアクリル樹脂成分とポリエステル樹脂成分は互いに結合していることが塗膜の安定性の観点から好ましいが、アクリル樹脂成分とポリエステル樹脂成分を別々に混合させて用いてもよい。
アクリル変性ポリエステル樹脂中のアクリル樹脂成分を多くすると、易接着層の表面自由エネルギーを低くすることができ、アクリル樹脂成分を少なくすると易接着層の表面自由エネルギーを高くすることができる。易接着層の表面自由エネルギーを後述する30mN/m以上48mN/m以下の範囲にするには、アクリル変性ポリエステル樹脂中のアクリル樹脂成分とポリエステル樹脂成分の質量比(アクリル樹脂成分の含有量[質量部]/ポリエステル樹脂成分の含有量[質量部])を10/90~90/10、より好ましくは25/75~75/25、さらに好ましくは31/69~75/25とすることが挙げられる。特に、本発明の積層フィルムの基材としてポリエステルフィルムを用いる場合は、アクリル変性ポリエステル樹脂のポリエステル樹脂成分によって、易接着層と基材であるポリエステルフィルムとの接着性を良好にすることができる。
また、易接着層が、下記式(1)~(5)の少なくとも一つ以上の構造を有することが好ましく、特にアクリル変性ポリエステル樹脂が式(1)~(5)の少なくとも一つ以上の構造を有することが好ましい。式(1)~(5)はEVAの水酸基と水素結合を形成する極性基である。そのため、このような態様とすることで易接着層はEVAと式(1)~(5)の部位でも水素結合を形成することが可能となり、EVAとの接着性を向上させることができる。
Figure 2023122555000002
アクリル変性ポリエステル樹脂を構成するアクリル樹脂成分は、具体的にはアルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレートから構成されるアクリル樹脂の主鎖に、親水性のラジカル重合性ビニルモノマーが重合されていることが好ましい。この親水性のラジカル重合性ビニルモノマーがアクリル樹脂成分に含有されることで、アクリル変性ポリエステルに、上記式(1)~(5)の少なくとも1つ以上の構造を付与することができる。
アクリル樹脂成分全体を100質量部としたとき、親水性のラジカル重合性ビニルモノマーは20質量部以上50質量部以下が好ましい。親水性のラジカル重合性ビニルモノマーを20質量部以上50質量部以下にすることで、表面エネルギーを後述する30mN/m以上48mN/m以下の範囲にすることが容易となるため、効果的にEVA、との接着性を向上させることができる。
アクリル樹脂成分としては、アルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレートが用いられ、具体的にはメタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル等を用いるのが好ましい。これらは1種もしくは2種以上を用いることができる。
親水性のラジカル重合性ビニルモノマーについて、具体的には上記式(1)の構造になるモノマーとしては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアクリル酸エステル等が挙げられる。上記式(2)の構造になるモノマーとしては、エチレングリコールアクリレート、エチレグリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等のグリコールエステル等が挙げられる。上記式(3)の構造になるモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、メトキシメチロールアクリルアミド等のアクリルアミド系化合物等が挙げられる。式(4)の構造になるモノマーとしてはアクリル酸アミノアルキル、メタクリル酸アミノアルキルエステル及びその4級アンモニウム塩等のカチオン系モノマー等が挙げられる。式(5)の構造になるモノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のグリシジルアクリレート系化合物、その他、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和酸及びその塩等が挙げられる。親水性ラジカル重合性モノマーは単独で用いてもよいし、数種組み合わせて用いてもよい。更にこれらの親水性モノマーに他の共重合可能なビニルモノマーを併用することもできる。
共重合可能な他のビニルモノマーとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の不飽和カルボン酸エステル、ジメチルビニルメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン、エチレン、プロピレン、スチレン、ブタジエン等のオレフィンやジオレフィン化合物等が挙げられる。
アクリル変性ポリエステル樹脂を構成するポリエステル樹脂成分は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するものでジカルボン酸成分とジオール成分とから構成される。ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸を使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、などを用いることができる。
またポリエステル樹脂成分を水系溶媒へ溶解、または分散させ水系樹脂組成物として用いる場合にはポリエステル樹脂成分の水溶性化あるいは水分散化を容易にするため、スルホン酸塩基を含む化合物やカルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4-メチルシクロヘキセン-1,2,3-トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸、などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、4-スルホイソフタル酸、などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
本発明の易接着層を形成する樹脂組成物に用いられるアクリル変性ポリエステル樹脂は、例えば以下の製造法によって製造することができる。まずポリエステル樹脂成分を次のように製造する。例えばジカルボン酸成分とグリコール成分とを直接エステル化反応させるか、ジカルボン酸成分とグリコール成分をエステル交換反応させる第一段階の工程と、この第一段階の反応生成物を重縮合反応させる第二段階の工程とによって製造する方法などにより製造することができる。この際、反応触媒として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることができる。
次にポリエステル樹脂成分を溶媒中に分散させるが、特に水系溶媒への分散手段としてポリエステル樹脂を撹拌下にアンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、各種アミン類等のアルカリ性化合物の水溶液に溶解もしくは分散させる。この場合、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ等の水溶性有機溶媒を併用してもよい。
続いてアクリル変性ポリエステル樹脂を製造するためにポリエステル樹脂成分の分散体中に重合開始剤と必要に応じて乳化分散剤等を添加し、温度を一定に保ちながらアクリル樹脂成分を徐々に添加して、その後数時間反応させてアクリル変性ポリエステルの分散体を製造することができる。得られた分散体はアクリル変性ポリエステル樹脂成分、ポリエステル樹脂成分、アクリル樹脂成分の混合物である。
重合開始剤としては特に限定されるものではないが一般的なラジカル重合開始剤、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性過酸化物、または過酸化ベンゾイルやt-ブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性過酸化物、あるいはアゾジイソブチロニトリル等のアゾ化合物が使用できる。
本発明の易接着層を形成する樹脂組成物は、ウレタン樹脂を含有していることが好ましく、更に好ましくは脂肪族ウレタン樹脂を含有していることが好ましい。本発明に使用されるウレタン樹脂は、特に限定はされないが、脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを重合したものであることが好ましい。
まず、樹脂組成物に用いられる脂肪族ポリイソシアネート化合物について説明する。本発明に好ましく用いられる脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、分子内に複数のイソシアネート基を有するものが好ましく、例えば、1,6-ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、ビス(4-イソシアネートシクロヘキシル)メタン、ジシクロヘキシルメタン4,4-ジイソシアナートリジンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添フェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。尚、本発明に用いられる脂肪族ポリイソシアネート化合物は、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
本発明において、前述した脂肪族ポリイソシアネート化合物のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでも脂環式ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。脂環式ポリイソシアネート化合物から重合された脂肪族ウレタン樹脂は、脂肪族ウレタン樹脂の中ではガラス転移点が高い。そのため、EVAを積層する際や高温高湿環境下において付与される熱に対して、易接着層中で軟化や溶融したりせず、易接着層表面にブリードアウトすることもなく、易接着層中で変化せずに存在することができる。そのため、特に耐湿熱接着評価において易接着層とEVAとの接着性を維持することができる。
次に、樹脂組成物に用いられるポリオール化合物について説明する。樹脂組成物に用いられるポリオール化合物としては、複数の水酸基を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなポリオール化合物としては、例えば、芳香族ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリカプロラクトンポリオール等を挙げることができる。以下、これらのポリオール化合物について、その具体例を順に説明する。
芳香族ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、ナフトキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール等を挙げることができる。
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2-ポリブチレングリコール、ポリイソブチレングリコール、プロピレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体ポリオール、テトラヒドロフランと3-メチルテトラヒドロフランの共重合体ポリオール、エチレンオキサイドと1,2-ブチレンオキサイドの共重合体ポリオール、また脂肪族ポリエーテルポリオールの中でも脂環族ポリエーテルポリオールとしては、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのブチレンオキサイド付加ジオール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール等を挙げることができる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の多価アルコールと、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の多塩基酸と反応して得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,6-ヘキサンポリカーボネート等を挙げることができる。
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε-カプロラクトンと、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2-ポリブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール等の2価のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオール等を挙げることができる。
その他、樹脂組成物に用いることができるポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリβ-メチル-δ-バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ひまし油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等を挙げることができる。
樹脂組成物においては、これらのいずれのポリオール化合物であっても好適に用いることができるが、なかでも脂肪族ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。脂肪族ポリエーテルポリオールを用いることで、脂肪族ウレタン樹脂を柔軟にすることができるため、前述のP(25)0.1GPa以上1.5GPa以下とすることがより容易となり、EVAに対する接着性を向上させることが可能となる。なお、樹脂組成物に用いられるポリオール化合物は、1種類であってもよく、または、2種類以上であってもよい。
以上の点から、樹脂組成物に用いられるウレタン樹脂の具体的な構造としては、以下の脂肪族ポリイソシアネート化合物と脂肪族ポリエーテルポリオールより構成されることが特に好ましい。脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、1,6-ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、ビス(4-イソシアネートシクロヘキシル)メタン、ジシクロヘキシルメタン4,4-ジイソシアナートリジンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添フェニルメタンジイソシアネートを挙げることができる。
脂肪族ポリエーテルポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2-ポリブチレングリコール、ポリイソブチレングリコールを挙げることができる。
樹脂組成物に使用される脂肪族ウレタン樹脂は、脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物以外に、必要に応じて鎖伸長剤とを水に溶解あるいは分散させて得られるもので公知の方法により重合される。
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ヒドロキノン-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル、レゾルシノール-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル等のポリオール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン等のポリアミン、ヒドラジン類、及び水が挙げられる。
樹脂組成物中におけるウレタン樹脂の含有量は、ウレタン樹脂の高ケン化度のEVAに対する汎用接着性や、耐湿熱接着性を発現する範囲であれば特に制限はないが、樹脂組成物に対して、6質量%以上50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
また、樹脂組成物中における、アクリル変性ポリエステル樹脂とウレタン樹脂の含有量の合計は、樹脂組成物に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。含有量の合計が30質量%以上であることで、幅広いケン化度の範囲のEVAに対して接着性が良好となり、高温高湿環境下においても良好な接着性を維持できる。含有量の合計が90質量%以下であることにより、後述するオキサゾリン化合物やメラミン化合物及び/又はカルボジイミド基を有する化合物などの含有量が10質量%よりも多く含むこととなり、EVAに対する接着性や、易接着層の可撓性、強靭性が向上するため好ましい。
また、樹脂組成物中における、アクリル変性ポリエステル樹脂とウレタン樹脂の含有量の質量比(アクリル変性ポリエステル樹脂の含有量[質量部]/ウレタン樹脂の含有量[質量部])は、50/50~90/10であることが好ましい。このようにすることで易接着層のガラス転移温度を30℃以上80℃以下とすることでき、25℃と-20℃での易接着層の弾性率の変化(ΔP)を小さくすることや、弾性率比P’を好適な範囲に調整することが容易となるため、温度による中間膜との接着性の変化を小さくすることが出来る。
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいては、易接着層の表面エネルギーが30mN/m以上48mN/m以下であることが好ましい。このようにすることで、EVAとの表面エネルギー差を小さくすることが出来るため、中間膜との接着性の高くすることが出来る。上記観点から易接着層の表面エネルギーは、より好ましくは30mN/m以上44mN/m以下、更に好ましくは30mN/m以上40mN/m以下である。本発明でいう表面自由エネルギーとは、後述する測定方法によって測定、算出される値をいう。なお、易接着層の表面エネルギーを調節する方法としては、例えば、易接着層がアクリル樹脂やアクリル変性ポリエステル樹脂を含む態様とする方法が挙げられる。
また、ΔPを低くする、あるいは弾性率比P’を好適な範囲に調整する観点から、易接着層はオキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造を含むことが好ましく、オキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造を30質量%以上90質量%以下含むことがより好ましい。上記観点から、さらに好ましくは30質量%以上60質量%以下、特に好ましくは30質量%以上50質量%以下であり、最も好ましくは30質量%以上40質量%以下である。易接着層にオキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造を含むことで、ΔPを0.1GPa以上2.0GPa以下とすることが容易となる。オキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造を含むことで、EVAとの接着性を維持したまま、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂の各成分との架橋構造を形成させ、易接着層を強固にすることが出来る。そのため、25℃における弾性率と、-20℃における弾性率の差を小さくすることが出来る。また、易接着層に含まれるオキサゾリン化合物の一部は架橋構造を形成せずに易接着層に残されていることから、EVAのアセチル基や水酸基と反応し接着性向上に寄与する。また、オキサゾリン化合物由来の化学構造とは、易接着層に含まれるオキサゾリン化合物によって架橋構造を形成した化合物ことを指し、例えばカルボキシル基と架橋構造を形成した場合にはアミドエステル結合を形成した化合物のことを指す。
本発明で用いることのできるオキサゾリン化合物は、官能基としてオキサゾリン基を有するものであれば特に限定されるものではないが、オキサゾリン基を含有するモノマー由来の構成単位を少なくとも1種含むオキサゾリン基含有共重合体を含有することが好ましい。オキサゾリン基を含有するモノマーの例としては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、および2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上の混合物として使用することができる。中でも、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
オキサゾリン系架橋剤において、付加重合性オキサゾリンに対して用いられる他のモノマー、すなわちオキサゾリン基含有共重合体を得るためのオキサゾリン基を含有するモノマー以外のモノマーとしては、オキサゾリン基を含有するモノマーと共重合可能なモノマーであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミドなどの不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどの含ハロゲン-α,β-不飽和モノマー類、およびスチレン、α-メチルスチレンなどのα,β-不飽和芳香族モノマー類などを用いることができ、これらは単独でまたは2種以上の混合物として使用することもできる。
また、易接着層中には後述するメラミン化合物及び/又はカルボジイミド基を有する化合物や易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、表面処理剤などの各種添加剤を含有させることができる。メラミン化合物及び/又はカルボジイミド基を有する化合物の質量は、易接着層全体を100質量%とした際に、0質量%以上40質量%以下であることが好ましい。40質量%以下であることで、易接着層の親水性材料との接着性を維持しながら、易接着層の可撓性、強靭性などの特性を向上させ、フィルムをロール状で巻き上げた際のブロッキングを軽減できる。なお、易接着層全体を100質量%とした際に、これらの化合物の含有量が0質量%であるとは、易接着層がこれらの成分を含まないことをいう。
本発明で用いることのできるメラミン化合物は、塗液としての溶解性や塗膜の平面性の観点から、具体的には、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に、低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を脱水縮合反応させてエーテル化した化合物などが好ましい。
メチロール化メラミン誘導体としては、例えばモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンを挙げることができる。
カルボジイミド基を有する化合物としては、例えば、下記式(6)で表されるカルボジイミド構造を1分子当たり少なくとも1つ以上有するものであれば特に限定されないが、耐湿熱接着性などの点で、化合物1分子中に2つ以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物がより好ましい。特に、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂などのポリマーの末端や側鎖に、複数個のカルボジイミド基を有する、高分子型のイソシアネート化合物を用いると、本発明に用いる易接着層をフィルム上に設けて積層フィルムとしたときに、易接着層の硬度向上やオリゴマー析出抑制性だけでなく、各種インキやハードコート剤などとの接着性や耐湿熱接着性、可撓性、強靭性が高まり好ましく用いることができる。
式(6) -N=C=N- 。
カルボジイミド基を有する化合物の製造は公知の技術を適用することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物を触媒存在下で重縮合することにより得られる。ポリカルボジイミド化合物の出発原料であるジイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族、脂環式ジイソシアネートなどを用いることができ、具体的にはトリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなどを用いることができる。更に本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加しても用いてもよい。
また他の化合物、例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物など公知の架橋剤などを任意で用いることもできる。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、基材であるポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層を有する。ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン-2,6-ナフタレート、エチレン-α,β-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4‘-ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを好ましく用いることができる。ここで主要構成成分とは、高分子を構成する全構成成分(構成単位)を100モル%としたときに、50モル%を超えて100モル%以下含まれる構成成分(構成単位)をいう。
本発明では、基材用のポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。また熱可塑性樹脂フィルムに熱や収縮応力などが作用する場合には、耐熱性や剛性に優れたポリエチレンナフタレートフィルムを用いることが好ましい。ここでポリエチレンテレフタレートフィルムとは、フィルムを構成する全成分を100質量%としたときに、ポリエチレンテレフタレートが50質量%を超えて100質量%以下含まれるフィルムをいい、ポリエチレンナフタレートフィルムも同様に解釈することができる。
また、上記ポリエステルフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すポリエステルフィルムをいい、これは一般的に、未延伸状態のポリエステルシート又はフィルムを直交する2方向(例えば、長手方向および幅方向)に延伸し、熱処理により結晶配向を完了させることにより得ることができる。このときの延伸倍率は2.5倍以上5.0倍以下が好ましい。基材用のポリエステルフィルムが二軸配向ポリエステルフィルムであることにより、積層フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が高まり、平面性も改善する点で好ましい。
また、基材用のポリエステルフィルム中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
基材用のポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10~500μm、より好ましくは20~250μm、最も好ましくは30~150μmである。また、ポリエステルフィルムは、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであっても良い。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、特定波長帯域の光を反射させる観点から、ポリエステル樹脂(樹脂A)を主成分とする層(A層)と、前記樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂(樹脂B)を主成分とする層(B層)を交互に51層以上積層した積層構成部を有することが好ましい。ここでいう交互に積層とは、A層とB層が厚み方向に規則的な配列で積層されていることをいい、例えば、A(BA)n(nは自然数)といったように規則的な配列で積層されたものである。また、51層以上とは、A層とB層の合計数が51以上であることをいう。
例えば、基材用のポリエステルフィルムにこのような積層構成部を有するものを用いることで、後述の通り各層の屈折率の差と層厚みとの関係よって、特定の波長帯域の光を選択的に反射させることが容易となる。その結果、このような積層ポリエステルフィルムを太陽電池裏面保護用シートに適用することで、例えば赤外線を反射することによる遮熱性や、紫外線を反射することによる紫外線防止機能等の機能を太陽電池に付与することができる。特に、積層ポリエステルフィルムの遮熱性を高めることで、直射日光や地表かたらの反射光による太陽電池の温度上昇が軽減されるため、熱による太陽電池の劣化が抑えられ、発電効率の向上に繋がる。
ここで樹脂Aと樹脂Bが異なるとは、樹脂Aと樹脂Bが異なる融点または結晶化温度を有することを表す。異なる融点または結晶化温度とは、後述の測定方法によって求められる融点と結晶化温度のいずれかが3℃以上異なることをいう。なお、一方の樹脂が融点を有しており、もう一方の樹脂が融点を有していない場合や、一方の樹脂が結晶化温度を有しており、もう一方の樹脂が結晶化温度を有していない場合も異なる融点または結晶化温度を有するものとみなす。樹脂Aと樹脂Bの組み合わせは、異なる融点を有し、かつ異なる結晶化温度を有する組み合わせとすることがより好ましい。
このように融点や結晶化温度の異なる樹脂は、通常、光学的性質も異なる。そのため、このような樹脂が交互に積層されることにより、各層の屈折率の差と層厚みとの関係よって特定の波長帯域の光を反射させることが容易となる。また、積層する層数が多いほど広い帯域にわたり高い反射率を得ることができる。この観点から、積層構成部の層数は好ましくは201層以上であり、より好ましくは401層以上である。このような反射(干渉反射)は、A層とB層の合計層数が増えるほどより広い波長帯域の光に対して高い反射率を達成できるようになり、高い光線カット性能を備えた積層構成部が得られるようになる。そのため、層数に上限はないものの、層数が増えるに従い製造装置の大型化に伴う製造コストの増加や、フィルム厚みが厚くなることでのハンドリング性の悪化が生じるために、現実的には合計1001層以内が実用範囲となる。
本発明に好ましく用いられる積層ポリエステルフィルムにおいては、少なくとも一方のフィルム表面が、波長200nm~2600nmの範囲の光を照射した際に反射率が20%以上となる波長が存在していることが好ましい。より好ましくは反射率が50%以上であることが好ましく、更に好ましくは80%以上である。このような特性は、光学特性の異なる2種以上の樹脂の面内屈折率の差を大きくすることにより実現できるので、二軸延伸フィルムとする場合は結晶性であるポリエステル樹脂からなる層と、延伸時に非晶性を保持もしくは熱処理工程で融解される低屈折率の共重合ポリエステルからなる層が交互に積層された積層ポリエステルフィルムとすることが好ましい。
本発明の積層ポリエステルフィルムの樹脂A、樹脂Bに用いられるジカルボン酸構成成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸)、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。この中でもジカルボン酸成分としてテレフタル酸や2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分としてエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを由来として重合されることが好ましい。また、A層とB層の屈折率差を大きくするために、一方の樹脂は非晶性樹脂であることが好ましい。樹脂Aと樹脂Bの好ましい組み合わせとしては、樹脂Aがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートの共重合体、樹脂Bがポリエチレンテレフタレートの1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合体である組み合わせが挙げられる。
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいては、A層とB層の面内平均屈折率の差が0.05以上であることが好ましい。より好ましくは0.10以上であり、さらに好ましくは0.15以上0.35以下である。面内平均屈折率の差が0.05より小さい場合には、反射率が30%以上となる反射帯域を有することが困難となることがある。A層とB層の面内平均屈折率の差を上記の好ましい範囲とする樹脂Aと樹脂Bの組み合わせは、例えば、樹脂Aが結晶性であり、かつ樹脂Bが非晶性もしくは非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂の混合物である組み合わせである。この場合、フィルムの製造における延伸、熱処理工程において容易に屈折率差を設けることが可能となる。面内平均屈折率の差が0.35より大きい場合には、樹脂の積層性が悪化して積層自体が困難になり、また耐熱性やハンドリング性に劣ったフィルムとなることがある。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、示差走査熱量測定により求められる融解熱量が5J/g以上であることが好ましい。より好ましくは10J/g以上であり、更に好ましくは20J/g以上である。このような構成とすることで、A層とB層の屈折率差をより高くすることができる。このようなフィルムとするためには、樹脂Aと樹脂Bのうち、屈折率の高い方の樹脂の結晶性を高くすることが好ましい。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、示差走査熱量測定により求められる微小吸熱ピークが170℃以上210℃以下に存在することが好ましい。微小吸熱ピークは後述の横延伸の際の熱処理温度に対応する熱履歴に対応する吸熱ピークであり、吸熱ピークの温度によって積層ポリエステルフィルムの熱収縮率が変化する。微小吸熱ピークを170℃以上210℃以下とすることで積層ポリエステルフィルムの収縮率がEVAの収縮率と近似するため、合わせガラス化などの熱加工工程における皺などの発生を抑制することが出来る。微小吸熱ピークは、通常、融点より低温側かつ融点近傍で観測され、示差走査熱量測定のファーストランで観測される。一度融点以上に昇温し熱履歴を消したセカンドランでは観測されないことから、両者のピークの比較により微小吸熱ピークの位置は確認できる。
また、微小吸熱ピークが170℃以上であることにより、易接着層の硬化が十分に進行する。その結果、巻き取った積層ポリエステルフィルムのブロッキングが軽減され、表面が不均一で荒れた状態となるのを抑えることができる。一方、微小吸熱ピークが210℃以下であることにより、熱処理が過剰とならず、延伸による積層ポリエステルフィルムの配向が維持されるため、積層ポリエステルフィルムの平面性や機械強度が保たれる。
以下、積層ポリエステルフィルムの好ましい製造方法について、A層を構成する熱可塑性樹脂Aとしてポリエチレンテレフタレートを用い、B層を構成する熱可塑性樹脂Bとしてポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分20~40mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた積層ポリエステルフィルムを例にとり説明する。もちろん本発明のフィルムは係る例に限定して解釈されるものではない。また、この積層ポリエステルフィルムの積層構成部は、特開2007-307893号公報の〔0053〕~〔0063〕段に記載の内容と同様の方法により簡便に実現できるものである。
熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、280~300℃で加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。これらの樹脂はダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化されてキャスティングフィルムとなる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させたりする方法も好ましい。
このとき、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bは別々の押出機で溶融混練され、異なる流路から多層積層装置に送り込まれる。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の構成を効率よく得るためには、51個~1001個の微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が51層~1001層であれば高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することも容易である。このようにして所望の層構成に形成した溶融多層積層体をダイへと導き、上述と同様にキャスティングフィルムが得られる。
このようにして得られたキャスティングフィルムは、二軸延伸することが好ましい。ここで、二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二方向に延伸しても、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。逐次二軸延伸の場合は、通常、長手方向への延伸(縦延伸)の後に幅方向への延伸(横延伸)を行う。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸をいい、通常は、ロールの周速差により施される。この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行ってもよい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2~15倍が好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合には2~7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度はフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+100℃が好ましい。
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、樹脂組成物を塗布する工程を経ることによって、易接着層を形成する。易接着層の形成方法についての詳細は後述する。
続いて幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターにより、フィルムの幅方向両端部を複数のクリップで把持しながら搬送して、対向するクルップの間隔を広げることで幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2~15倍が好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合には2~7倍が特に好ましく用いられる。特に本発明の積層ポリエステルフィルムでは、横延伸倍率は4倍以上とすることが好ましく、横延伸倍率を高めることで反射帯域の均一性、平均反射率の均一性、相関係数を高めるのに有効である。また、延伸温度としてはフィルムを構成する樹脂のうち最大のガラス転移温度~最大のガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上、熱可塑性樹脂Aの融点以下の温度で熱処理を行うのが好ましい。熱処理を行うことにより、フィルムの寸法安定性が向上する。フィルムは、このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易接着層をインラインコーティングにより形成する。
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの幅方向両端部をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機として用いることができるテンターの方式は、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6~50倍が好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合には面積倍率として8~30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としてはフィルムを構成する樹脂のうち最大のガラス転移温度~最大のガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。フィルムは、このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行ってもよい。好ましくは、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に1~5%の弛緩処理をする。
このようにして得られたポリエステルフィルムに易接着層を形成させる方法は、ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、樹脂組成物を塗布して、易接着層を形成せしめる工程によって得られる。この形成方法において、樹脂組成物はウレタン樹脂に加えて、さらにアクリル変性ポリエステル樹脂(または、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂)を含んでいることが好ましい。アクリル変性ポリエステル樹脂とウレタン樹脂を含有する樹脂組成物を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布する際に、樹脂組成物には溶媒が含まれていてもよい。すなわち、アクリル変性ポリエステル樹脂とウレタン樹脂を溶媒に溶解または分散せしめて塗液とし、これをポリエステルフィルムに塗布してもよい。塗布後に、溶媒を乾燥させ、かつ加熱することで易接着層が積層されたフィルムを得ることができる。本発明では、溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、加熱工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な易接着層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
ここで、水系溶媒とは水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合されているものを指す。
樹脂組成物のポリエステルフィルムへの塗布方法はインラインコート法、オフコート法のどちらでも用いることができるが、好ましくはインラインコート法である。インラインコート法とは、ポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)ポリエステルフィルム(Aフィルム)、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)ポリエステルフィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)ポリエステルフィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
本発明では、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムのAフィルム、Bフィルム、の何れかのフィルムに、樹脂組成物を塗布し、溶媒を蒸発させ、その後、ポリエステルフィルムを一軸方向又は二軸方向に延伸し、加熱し、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに、易接着層を設ける方法を採用することが好ましい。この方法によれば、基材用のポリエステルフィルムの製造と、樹脂組成物の塗布と溶媒の乾燥、および加熱(すなわち、易接着層の形成)を同時に行うことができるために製造コスト上のメリットがある。また、塗布後に延伸を行うために易接着層の厚みをより薄くすることが容易である。
中でも、長手方向に一軸延伸されたフィルム(Bフィルム)に、樹脂組成物を塗布し、溶媒を乾燥させ、その後、幅方向に延伸し、加熱する方法が優れている。未延伸フィルムに塗布した後、二軸延伸する方法に比べ、塗布後の延伸工程が1回少ないため、延伸による易接着層の欠陥や亀裂が発生しづらく、透明性や平滑性に優れた易接着層を形成できるためである。
一方、オフラインコート法とは、上記Aフィルムを一軸又は二軸に延伸し、加熱処理を施しポリエステルフィルムの結晶配向を完了させた後のフィルム、またはAフィルムに、フィルムの製造工程とは別工程で樹脂組成物を塗布する方法である。本発明では、上述した種々の利点から、インラインコート法により設けられることが好ましい。
本発明において最良の易接着層の形成方法は、水系溶媒を用いた樹脂組成物を、ポリエステルフィルム上にインラインコート法を用いて塗布し、水系溶媒を加熱させ、乾燥することによって形成する方法である。
易接着層形成用の樹脂組成物を作製する場合、溶媒は水系溶媒を用いることが好ましい。樹脂組成物は、必要に応じて水分散化または水溶化したアクリル変性ポリエステル樹脂とウレタン樹脂、オキサゾリン化合物および/またはメラミン化合物および水系溶媒を任意の順番で所望の重量比で混合、撹拌することで作製することができる。ただし、易接着層のAFM弾性率を特徴1、2の少なくとも一方を満たす範囲で調整する必要があり、この範囲であればEVAとの25℃および-20℃での十分な接着性が得られる。次いで必要に応じて易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤、熱開始剤などの各種添加剤を、樹脂組成物により設けた易接着層の特性を悪化させない程度に任意の順番で混合、撹拌することができる。混合、撹拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや撹拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
熱可塑性樹脂フィルムへの樹脂組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。適正な塗布厚みや粘度の観点から、好ましくはバーコート法、グラビアコート法である。
以下、本発明の積層ポリエステルフィルムについて、実施例を用いて具体的に説明する。但し、本発明の積層ポリエステルフィルムは係る態様に限定されない。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)易接着層の構造確認、易接着層中のオキサゾリン化合物含有比率
易接着層の構造確認方法として、以下のような方法を用いた。例えば、ウレタン構造や式(1)~(5)を特定するために、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)により、ウレタン結合部分で切断させた脂肪族イソシアネート化合物とポリオール化合物の重量ピークを確認した。式(1)~(5)の構造も同様に構造に由来する重量ピークの有無を確認した。次に、フーリエ変換型赤外分光(FT-IR)にて、イソシアネート化合物分とポリオール化合物、オキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造及び式(1)~(5)の構造が有する各原子間の結合に由来するピークの有無を確認した。さらに、プロトン核磁気共鳴分光(H-NMR)にて、イソシアネート化合物とポリオール化合物、オキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造及び式(1)~(5)の構造が有する水素原子の位置に由来する化学シフトの位置と水素原子の個数に由来するプロトン吸収線面積を確認した。これらの結果を合わせて総合的に確認した。上記の分析は易接着層を刃ナイフで削りだしたサンプルについて行った。上記の例と同様の方法でアクリル変性ポリエステル樹脂やオキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造、メラミン化合物の構造を確認した。易接着層中のオキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造含有比率は、上記のプロトン核磁気共鳴分光のプロトン吸収線面積から易接着層中の各構成成分のモル比(mol%)を算出した後、各構成成分の分子量を掛けて質量%を算出し、易接着層中の各構成成分のうちオキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造の含有比率(質量%)を求めた。
(2)表面自由エネルギー及び極性力の算出方法
まず、積層ポリエステルフィルムを室温23℃相対湿度65%の雰囲気中に24時間放置した。その後、同雰囲気下で、易接着層に対して、純水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンの4種の溶液のそれぞれの接触角を、接触角計CA-D型(協和界面科学(株)社製)により、それぞれ5点測定した。5点の測定値の最大値と最小値を除いた3点の測定値の平均値をそれぞれの溶液の接触角とした。次に、得られた4種類の溶液の接触角を用いて、畑らによって提案された「固体の表面自由エネルギー(γ)を分散力成分(γ )、極性力成分(γ )、および水素結合力成分(γ )の3成分に分離し、Fowkes式を拡張した式(拡張Fowkes式)」に基づく幾何平均法により、本発明の表面自由エネルギーを算出した。以下に具体的な算出方法及び各記号の意味を記載する。γ が固体と液体の界面自由エネルギーである場合、数式(1)が成立する。
γ : 易接着層と表1に記載の既知の溶液との界面自由エネルギー
γ: 易接着層の表面自由エネルギー
γ: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギー
γ : 易接着層の表面自由エネルギーの分散力成分
γ : 易接着層の表面自由エネルギーの極性力成分
γ : 易接着層の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γ : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの分散力成分
γ : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの極性力成分
γ : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γ =γ+γ-2(γ ・γ 1/2-2(γ ・γ 1/2-2(γ ・ γ 1/2 ・・・ 数式(1)。
また、平滑な固体面と液滴が接触角(θ)で接しているときの状態は数式(2)で表現される(Youngの式)。
γ=γ +γcosθ ・・・ 数式(2)
これら数式(1)、数式(2)を組み合わせると、数式(3)が得られる。
(γ ・γ 1/2+(γ ・γ 1/2+(γ ・γ 1/2=γ(1+cosθ)/2 ・・・ 数式(3)
実際には、水、エチレングリコール、ホルムアミド、及びジヨードメタンの4種類の溶液に接触角(θ)と、表1に記載の既知の溶液の表面張力の各成分(γ 、γ 、γ )を数式(3)に代入し、4つの連立方程式を解く。その結果、固体の表面自由エネルギー(γ)、分散力成分(γ )、極性力成分(γ )、および水素結合力成分(γ )が算出される。
Figure 2023122555000003
(3)(4)の試験に用いるサンプル作製
積層ポリエステルフィルムを長さ10cm×幅3cmサイズに、EVA(三菱ケミカル株式会社製“ソアノール”(登録商標)DC3203)を長さ40cm×幅1cmサイズに切り出した。積層ポリエステルフィルムの幅方向中央に長辺同士が平行となるようにEVAを重ね、はみ出した部分を保護フィルム(東レフィルム加工株式会社製“セラピール”(登録商標)#25WZ(RX))で挟み込んだ。これを140℃に加熱した熱風オーブンで1分間予熱し、140℃に加熱したラミネーター(株式会社エム・シー・ケー製MRK-600)にて速度300mm/minでラミネートすることにより、サンプルを取得した。
(4)EVAの剥離力試験(25℃、-20℃)
協和界面科学株式会社製の粘着・皮膜剥離解析装置VPA-2を用いて、以下の手順で測定した。先ず、(3)で作製したサンプルを付属のステンレス板と共に測定ユニットにテープで固定し、当該サンプルの積層ポリエステルフィルム部分からはみ出したEVA部分を試料固定板に固定した。その後、以下の測定条件で剥離力を測定し、測定距離100mmの内、剥離力が最も均一な区間20mmにおける剥離力の平均値を求めた。各サンプルに対して同様の測定を5回行い、5回の平均値を剥離力(N/mm)として、以下の評価基準で評価した(◎、〇を良好な結果とした。)。なお、25℃での剥離力試験は、25℃に調温された室内に24時間静置したサンプルで行い、-20℃での剥離力試験は、サンプルと付属のステンレス板を-20℃に調温されたポータブル冷凍庫に24時間静置し、取り出した直後に行った。
<測定条件>
ロードセル:100N
剥離速度:300mm/min
剥離角度:180°
サンプル幅(テープ幅):10mm
測定距離:100mm。
<評価基準>
◎:1.0N/mmより高い
〇:0.8N/mm以上1.0N/mm以下
×:0.8N/mm未満。
(5)易接着層のAFM弾性率
ブルカー・エイエックスエス株式会社製のNanoScopeVを用いて測定した。測定は付属の「測定操作手順 PeakForce QNMTM」に則り、同一の未使用のカンチレバーを用いて連続して測定し、測定条件は以下の通りとした。25℃での測定は25℃に調温された室内に24時間静置したサンプルで行い、-20℃での測定は-20℃に調温されたポータブル冷凍庫に24時間静置したサンプルを取り出した直後に行った。この測定を10回行い、その平均値を各温度における易接着層のAFM弾性率(P(25)、P(-20))とし、ΔP(P(-20)-P(25))、弾性率比P’(P(-20)/P(25))を算出した。
Probe:RTESPA-300
ScanSize:1nm
ScanRate:1Hz
PeakForce Setpoint:40.00mN。
(6)微小吸熱ピーク、易接着層のガラス転移温度
サンプル5mgをカッターまたは刃ナイフで削りだすことで採取し、示差走査熱量分析計(DSC) セイコー電子工業(株)製ロボットDSC-RDC220を用い、JIS-K-7122(1987年)に従って測定、算出した。より具体的には、上記サンプルを25℃から300℃まで5℃/分で昇温し、このときの融点より低温側で融点近傍にあるピークを微小吸熱ピークとした。また、ここでの融点とは、DSCチャートのベースラインからの差異が最大となる点とした。微小吸熱ピークはDSCのファーストランで観測され一度Tm以上に昇温し熱履歴を消したセカンドランでは観測されないことから、双方のDSCチャートを比較することにより確認できる。易接着層のガラス転移温度も同様にJIS-K-7122(1987年)に従って測定、算出した。より具体的には低温側のベースラインと高温側のベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をガラス転移温度とした。
(7)層厚み、積層数、積層構造
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて厚み方向と平行な断面(厚み方向断面)を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。より具体的には、透過型電子顕微鏡H-7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの厚み方向断面を10000~40000倍に拡大観察して写真を撮影し、得られた画像とTEMのスケール機能により層構成を確認し、各層厚みを測定した。なお、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuOやOsOなどを使用した染色技術を用いた。なお、厚み方向とはフィルム面に垂直な方向をいう。
(8)ブロッキング
積層ポリエステルフィルムを横30mm×縦60mmに2枚切り出し、易接着層を有する面同士を縦方向に40mm重ね合わせた。その後、重ね合わせた部分に横30mm×縦40mm、重さ6kgの重りを乗せ、60℃×95%RHの雰囲気下で168時間処理した。処理後に重ね合わせたフィルムを剥離し、以下の基準で評価を行った(◎、〇を良好な結果とした。)。
<評価基準>
◎:剥離時に抵抗がなく、剥離後の面に白化や剥離もなかった。
○:剥離時にわずかに抵抗があったが、剥離後の面に白化や剥離はなかった。
×:剥離時に抵抗があった、または/かつ剥離後の面に白化や剥離があった。
(実施例1)
・アクリル変性ポリエステル樹脂を含む塗液:
テレフタル酸50質量部、イソフタル酸50質量部、エチレングリコール50質量部、ネオペンチルグリコール30質量部を重合触媒である三酸化アンチモン0.3質量部と酢酸亜鉛0.3質量部とともに窒素パージした反応器に仕込み、水を除去しながら常圧かつ温度190~220℃の条件下で12時間重合反応を行い、ポリエステルグリコールを得た。次に、得られたポリエステルグリコールに5-ナトリウムスルホイソフタル酸を5質量部、溶媒としてキシレンを加えて反応器に仕込み、圧力0.2mmHg、温度260℃の減圧条件下にてキシレンを留去しつつ、3時間重合させてポリエステル樹脂成分を得た。このポリエステル樹脂成分をアンモニア水およびブチルセルロースを含む水に溶解させ、ポリエステル樹脂成分を含む水分散体を得た。次に、メタクリル酸メチル40質量部、メタクリルアミド10質量部の合計50質量部を、前述したポリエステル樹脂成分を含む水分散体中にアクリル樹脂成分/ポリエステル樹脂成分=50/50の質量比になるように添加した。さらに、重合開始剤として過酸化ベンゾイルを5質量部添加し、窒素パージした反応器の中で70~80℃で3時間重合反応を行い、アクリル変性ポリエステル樹脂を含む塗液を得た。
・ウレタン樹脂を含む塗液:
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、脂肪族ポリイソシアネート化合物として1,6-ヘキサンジイソシアネートを70質量部、ポリオール化合物としてポリイソブチレングリコールを30質量部、溶媒として、アセトニトリル60質量部、N-メチルピロリドン30質量部とを仕込んだ。次に窒素雰囲気下で、反応液温度を75~78℃に調整して、反応触媒としてオクチル酸第1錫を0.06質量部加え、7時間反応させた。次いで、これを30℃まで冷却し、イソシアネート基末端脂肪族ウレタン樹脂を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に水を添加して25℃に調整し、2000rpmで攪拌混合しながら、イソシアネート基末端脂肪族ウレタン樹脂を添加して水分散させた。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、ウレタン樹脂を含む塗液を調製した。
・オキサゾリン化合物を含む塗液:
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機および滴下ロートを備えたフラスコに、脱イオン水782.4質量部および界面活性剤(第一工業製薬製“ハイテノール”(登録商標)N-08の15重量%水溶液)128質量部を仕込み、アンモニア水(28%)でpHを9に調整し、窒素ガスを流しながら70℃に加熱した。そこへ過硫酸カリウムの5%水溶液64質量部を注入し、続いて予め別のフラスコ中で混合、攪拌しておいたメチルメタクリレート320質量部、エチルアクリレート160質量部、スチレン32質量部、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン128質量部の単量体混合物を3時間にわたって滴下した。反応中は窒素雰囲気下で反応液温度を70℃に保った。滴下終了後も2時間同じ温度に保った後、反応液温度を80℃に昇温して1時間攪拌を続けて反応を完結させた。その後冷却し、プロピレングリコールモノメチルエーテルと水との混合溶媒(20/80(重量比))に希釈し、オキサゾリン化合物を含む塗液を調整した。
・樹脂組成物:
得られたアクリル変性ポリエステル樹脂を含む塗液中の固形成分が90質量部、ウレタン樹脂を含む塗液中の固形成分が10質量部、オキサゾリン化合物を含む塗液中の固形成分が40質量部となるように、上記3種類の塗液を混合して塗液Aを得た。さらに、易接着層表面に易滑性を付与させるために、無機粒子として数平均粒子径170nmのシリカ粒子(日産化学工業(株)製 “スノーテックス”(登録商標)MP-2040)を、塗液A全体を100質量部として2質量部添加した。さらに、樹脂組成物のポリエステルフィルム上への塗布性を向上させるために、フッ素系界面活性剤(互応化学(株)製 “プラスコート”(登録商標)RY-2)を、塗液A全体100質量部に対して0.03質量部になるよう添加した。その後、固形成分が5重量%となるようにイソプロピルアルコールと水の混合溶媒(20/80(重量比))で希釈し、樹脂組成物を得た。
・積層ポリエステルフィルム:
A層を構成する結晶性の熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂Aとも称する。)としてポリエチレンテレフタレートを用い、またB層を構成する熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂Bとも称する。)としてポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分33mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた。熱可塑性樹脂AおよびBを、それぞれ別の押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介して異物等を取り除いた。その後、ギヤポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=1/1.07になるように計量しながら、両者を901層フィードブロックにて合流させて、両側の最表層が熱可塑性樹脂Aとなるように厚み方向に交互に901層積層した。このとき、A層とB層の層厚みは380nmから780nm波長範囲の反射率スペクトルが平坦となるように設計し、それぞれ表層から反対側の表層に向かって連続的に変化するようにした。次いで、得られた溶融積層体をTダイに供給してシート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度90℃、倍率3.5倍の条件で縦延伸し、その後一旦冷却して一軸延伸フィルムを得た。続いて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、フィルム表面の濡れ張力を55mN/mとし、その処理面にバーコートを用いて塗布厚み約6μmとなるように樹脂組成物を塗布した。その後幅方向両端部をクリップで把持するテンターに導き、温度110℃、倍率4.3倍の条件で横延伸した後、210℃で熱処理を施し、さらに約5%の幅方向リラックスを実施して、厚み103μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムは波長900~1100nmの赤外線を反射しつつ、可視光領域の波長380~780nmにおいてほぼ反射のない平坦な反射率分布を備えたものであった。得られた積層ポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
(実施例2~20、比較例1~6,8)
樹脂組成物の組成を表2のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の条件にて積層ポリエステルフィルムを作製した。得られた積層ポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。なお、比較例4、5のメラミン化合物は“ニカラック”(登録商標)MW-035((株)三和ケミカル製)を、比較例6、7のカルボジイミド化合物は“カルボジライト”(登録商標)V-04(日清紡ケミカル(株)製))を使用した。
(比較例7)
樹脂組成物の組成を、化合物A:メチルメタクリレート70モル%/エチルアクリレート20モル%/2-ヒドロキシエチルメタクリレート10モル%、化合物B:テレフタル酸32モル%/イソフタル酸12モル%/5-ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%/エチレングリコール46モル%/ジエチレングリコール4モル%、化合物C:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミン)シクロヘキサン、化合物D:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテルとしたときに、それぞれの重量%を化合物A:化合物B:化合物C:化合物D=43:43:4:10で水に混合し、固形分濃度3質量%とした以外は、実施例1と同様の条件にてフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
Figure 2023122555000004
本発明により、使用する温度によらずにEVAとの高い接着性を有する積層ポリエステルフィルムを提供することができる。本発明の積層ポリエステルフィルムは、上記特性に優れるため、太陽電池裏面保護用シート等に好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. 少なくとも一方の面に易接着層を有する積層ポリエステルフィルムであって、前記易接着層の温度T℃でのAFM弾性率をP(T)、P(-20)-P(25)をΔP、P(-20)/P(25)を弾性率比P’としたときに、以下の特徴1と2の少なくとも一方を備える、積層ポリエステルフィルム。
    特徴1:前記ΔPが0.1GPa以上2.0GPa以下である。
    特徴2:前記弾性率比P’が0.1以上2.3以下である。
  2. 前記P(25)が0.1GPa以上1.5GPa以下である、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
  3. 前記易接着層のガラス転移温度が30℃以上80℃以下である、請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  4. 前記易接着層の表面エネルギーが30mN/m以上48mN/m以下である、請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  5. 前記易接着層が、ウレタン樹脂とアクリル変性ポリエステル樹脂のブレンド体をともに含む、請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  6. 前記易接着層が、下記式(1)~(5)の少なくとも一つ以上の構造を有する、請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
    Figure 2023122555000005
  7. 前記易接着層がオキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造を含む、請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  8. 前記易接着層がオキサゾリン化合物またはオキサゾリン化合物由来の化学構造を30質量%以上90質量%以下含む、請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  9. 前記易接着層がメラミン化合物を含む、請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  10. ポリエステル樹脂(樹脂A)を主成分とする層(A層)と、前記樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂(樹脂B)を主成分とする層(B層)を交互に51層以上積層した積層構成部を有する、請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  11. 示差走査熱量分析計により求められる微小吸熱ピークが170℃以上210℃以下に存在する、請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
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