JP2023121180A - 強磁性ジョセフソン接合体およびその製造方法 - Google Patents

強磁性ジョセフソン接合体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高特性な超伝導デバイスの実現を可能とする強磁性ジョセフソン接合体を提供する。【解決手段】本発明は、第1超伝導層、強磁性層および第2超伝導層が順に積層された強磁性ジョセフソン接合体である。その強磁性層は鉄合金からなる。鉄合金は、例えば、その全体を100原子%としてFeを20~90原子%含む。鉄合金の一例は、Fe-Mo合金である。鉄合金からなる強磁性層は、純鉄からなる強磁性層よりも飽和磁化が小さく、磁気的な交換エネルギーが小さい。さらに第1超伝導層、強磁性層および第2超伝導層は、エピタキシャル成長して同一方向に配向しているとよい。このような強磁性ジョセフソン接合体は、強磁性層を相応な厚さ(例えば0.5~30nm)としつつ、高い臨界電流値等を発揮し得る。【選択図】図1A

Description

本発明は、(強)磁性層を介して二つの超伝導層が結合された積層体(「(強)磁性ジョセフソン接合体」という。)等に関する。
低消費電力で高速処理できるSFQ(Single Flux Quantum:単一磁束量子)論理回路、極微小な磁化(磁気)の検出が可能なSQUID(superconducting quantum interference device: 超伝導量子干渉計)等の超伝導デバイスに、ジョセフソン接合(Josephson Junction)素子が用いられる。ジョセフソン接合は、薄い絶縁体(層)を介して二つの超伝導体(層)が結合されてなり、超伝導電子対(クーパー対)が絶縁体を量子トンネルする現象(ジョセフソン効果)を発現する。
最近では、量子ビット(量子計算の基本素子)の有力候補として、従来の絶縁体を強磁性体(層)で置換した強磁性ジョセフソン接合(Ferromagnetic Josephson Junction)が注目されている。強磁性ジョセフソン接合は、超伝導電流(ジョセフソン電流)の位相が、ジョセフソン接合(0接合)に対してπずれた状態(π接合)となり得る。このような強磁性ジョセフソン接合に関連する記載が、例えば下記の文献にある。
特開平5-251768号公報 特開2018-174015号公報
V.V. Ryazanov et al., Phys. Rev. Lett. 86, 2427, (2001). T. Kontos et al., Phys. Rev. Lett. 89, 137007, (2002). T.I. Larkin et al., Appl. Phys. Lett.100, 222601, (2012). M. A. E. Qader et al., Appl. Phys. Lett. 104, 022602, (2014). S. Piano et al., Eur. Phys. J. B. 58, 123, (2007). A. A. Bannykh et al., Phys. Rev. B. 79, 054501, (2009). J. A. Glick et al., Appl. Phys. Lett.122, 133906, (2017). D. Sprungumann et al., Phys. Rev. B. 82, 060505(R), (2010). J. W. A. Robinson et al., Phys. Rev. Lett. 104, 207001, (2010). H. Ito et al., Appl. Phys. Express.10, 033101, (2017). M. A. Khasawneh et al., Phys. Rev. B. 80, 020506, (2009). I. Petkovic et al., Phys Rev. B. 80, 220502, (2009). T. Yamashita et al., Phys. Rev. Appl. 8, 054028 (2017). H. Ito et al., Appl. Phys. Express.10, 033101, (2017). I. Petkovic et al., Phys Rev. B. 80, 220502, (2009). T. Yamashita et al., Phys. Rev. Appl. 8, 054028 (2017). S. Kim et al., Communication materials, 2:98, (2021).
特許文献1、2または非特許文献1~13は、強磁性ジョセフソン接合によるπ状態の発現確認や数接合したビットの動作確認等の初期段階に留まっている。
非特許文献14、15は、bcc構造であるNb層(超伝導層)とfcc構造であるPdNi層(磁性層)を積層した強磁性ジョセフソン接合を提案している。
非特許文献16は、bcc構造であるNbN層(超伝導層)とfcc構造であるCuNi層(磁性層)を積層した強磁性ジョセフソン接合を提案している。
非特許文献17は強磁性ジョセフソン接合ではなく、bcc構造であるNbN層(超伝導層)と六方晶系のAlN層(非磁性絶縁層)を積層したジョセフソン接合を提案している。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、従来とは異なる新たな強磁性ジョセフソン接合体等を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意研究した結果、強磁性層に鉄合金を用いた強磁性ジョセフソン接合体を着想し、これを具現化した。この成果を発展させることにより、以降に述べるような本発明を完成するに至った。
《強磁性ジョセフソン接合体》
(1)本発明の強磁性ジョセフソン接合体は、第1超伝導層、強磁性層および第2超伝導層が順に積層されてなり、該強磁性層は、鉄合金からなる強磁性ジョセフソン接合体である。
(2)本発明によれば、所望特性を安定して発揮し得る強磁性ジョセフソン接合体(単に「接合体」または「積層体」ともいう。)を提供できる。この理由は、次のように考えられる。
強磁性ジョセフソン接合に係る重要な特性として、臨界電流値(Ic:最大ジョセフソン電流値)若しくは臨界電流密度(Jc)、接合特性パラメータであるIcRn積(Rn:接合抵抗)等があり、それらの向上や安定化(バラツキ抑制)が求められる。
代表的な臨界電流値(Ic)は、強磁性層の厚さ(単に「膜厚」という。)と磁気的な交換エネルギーの影響を受ける(式(1)参照)。強磁性層が薄くなるほど、Icは増加傾向となるが、超伝導層間でショート欠陥等が生じ易くなる。このため、十分なIcを安定して得るためには、強磁性層の相応な膜厚を確保しつつ、その交換エネルギーを低下させることが必要となる。
強磁性層の交換エネルギーは、その磁化との間に相関(正の相関関係)がある(式(2)参照)。Fe(純鉄)の飽和磁化は非常に大きいが、強磁性を示す鉄合金の飽和磁化は、その化学成分により変化し得る。換言すれば、鉄合金の成分組成により、その飽和磁化ひいては強磁性層の交換エネルギーの制御が可能となる。こうして、強磁性層が鉄合金からなる本発明の接合体は、所望特性(Ic等)を安定して発揮し得るようになったと考えられる。
《強磁性ジョセフソン接合体の製造方法》
本発明は、そのような接合体の製造方法としても把握される。例えば、本発明は、第1超伝導層、鉄合金からなる強磁性層および第2超伝導層を順に積層する積層工程を備える強磁性ジョセフソン接合体の製造方法でもよい。
《その他》
特に断らない限り本明細書でいう「x~y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を、新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。また、本明細書でいう「x~ynm」はxnm~ynmを意味する。他の単位系(emu/cm等)についても同様である。
製作した試料(積層体)の模式図である。 各試料のX線回折スペクトル(XRD)である。 強磁性層のFe組成比と超伝導層のNb格子定数との関係を示す散布図である。 そのFe組成比と飽和磁化の関係を示す散布図である。 試料(強磁性層:純鉄)の断面を観察したTEM像である。
本明細書で説明する内容は、接合体のみならずその製造方法にも該当し得る。本明細書中から任意に選択した一以上の構成要素を本発明の構成要素として付加し得る。製造方法に関する構成要素は、物の構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《接合体》
(1)強磁性層
強磁性層は鉄合金からなる。鉄合金は、強磁性を示し、接合体の特性を阻害しない範囲で、成分組成が調整されるとよい。鉄合金は、例えば、その全体を100原子%として、Fe(残部)を20~90原子%さらには35~80at%含む。
鉄合金は、強磁性層と超伝導層の格子整合(特にエピタキシャル成長)に適しているとよい。例えば、第1超伝導層や第2超伝導層を構成する物質(超伝導物質)の結晶構造が体心立方格子(bcc)であるとき、強磁性層も結晶構造が体心立方格子となる鉄合金からなるとよい。このような合金元素(鉄合金に含まれるFe以外の元素)として、例えば、Mo、Ti、Zr、Nb、Ta、W、Cr等がある。なお、鉄合金は二元系には限らず、三元系以上(合金元素が二種以上)でもよい。
このような鉄合金からなる強磁性層は、膜厚を相応な範囲とできる。強磁性層の膜厚は、例えば、0.5~30nm、1~20nmさらには1.5~10nmとなる。
(2)超伝導層
超伝導層は、超伝導を発現し得る超伝導物質からなる。超伝導物質として、例えば、Nbの単体、化合物(NbN、NbTi、NbZr、NbSn、NbAl、NbGe、NbGa等)または合金(MgB、TiN等)がある。特に、結晶構造が体心立方格子となる超伝導物質が選択されるとよい。
第1超伝導層と第2超伝導層は、材質や厚さ等が異なっていてもよい。勿論、両層が同材質および/または同厚さでもよい。超伝導層の厚さは、例えば、3~300nm、10~100nm、25~75nm程度である。なお、本明細書でいう各層の厚さは、断面を電子顕微鏡(TEM等)で観察した画像(写真)に基づいて、厚さが安定的な領域において測定した最大厚さと最小厚さとの算術平均値とする。
(3)他層
接合体は、強磁性層と両超伝導層の他に、適宜、基板や中間層(バッファ層および/またはインサート層)を備えてもよい。
基板は、成層(膜)される表面が単結晶面であるとよい。単結晶面は、単結晶体である基板自体の表面でも、基板に別途形成した層(膜)でもよい。単結晶(または基板自体)として、MgO、Si、サファイア、SrTiO、SiC等がある。
バッファ層は、第1超伝導層の下地層となり、例えば、基板の単結晶面と第1超伝導層の間に設けられる。バッファ層は、第1超伝導層と結晶構造が同じ物質からなるとよい。さらに、その物質は、単結晶面と第1超伝導層の格子不整合を緩和する格子定数を備えるとよい。このような物質として、例えば、Mo、WおよびVの一種以上を基材(当該物質全体の50原子%以上)とする単体、合金または化合物等がある。バッファ層の厚さは、例えば、1~50nm、5~40nm、10~30nm程度である。
インサート層は、強磁性層と第2超伝導層との間に設けられる。インサート層により、第2超伝導層は、強磁性層の影響が緩和されて、その配向性(例えばc面配向性)や平坦性が向上し得る。インサート層は、二以上の異なる層間にそれぞれ設けられてもよい。インサート層もバッファ層と同様に、例えば、Mo、WおよびVの一種以上を基材とする単体、合金または化合物等からなる。インサート層の厚さは、例えば、0.1~50nm、0.3~30nm、0.8~15nm、1.5~5nm程度である。
(4)配向性
第1超伝導層、強磁性層および第2超伝導層はそれぞれ、同一方向に配向(例えばc面配向)した結晶からなるとよい。配向性は、例えば、X線回折から得られるピーク強度を比較することにより判断される。具体的にいうと、超伝導層に関して、X線回折から得られる(002)面のピーク強度(I)に対する(110)面のピーク強度(I)の比率(I/I)が2以下、1.5以下、1以下さらには0.5以下であるよい。
(5)平坦性
各層が平坦であるほど、接合体の特性向上が図られる。平坦性は、例えば、断面を電子顕微鏡で観察して測定される厚さの変化により判断される。具体的にいうと、各層の厚さの変化が、その最大厚さ(t)に対して10%以内、8%以内さらには5%以内であるとよい。特に、超伝導層と強磁性層(特に他層よりも薄い強磁性層)は、その厚さが略一定であると好ましい。一例として、Nb層をその優先配向面(110)ではなく、(002)配向(つまりc面配向)させれば、表面粗さ(凹凸)が1/2以下の超伝導層を実現できる。
(6)擬単結晶
各層は、単結晶に限らず、擬単結晶状態でもよい。擬単結晶は、積層方向(例えば、基板表面に垂直な方向、c軸方向)のみならず、積層方向に垂直な面方向(例えば、基板表面に平行な方向、a,b軸方向)にも、各結晶方位が揃った状態である。単結晶と擬単結晶の相違は結晶粒界の有無である。擬単結晶な層(膜)は、例えば、サイズ(最大長)が数百nm程度の結晶粒が集合した層(膜)となっている。擬単結晶層を含む接合体でも、十分な高特性を発現し得る。
《製造方法》
(1)積層工程
積層工程は、例えば、物理気相蒸着法(PVD)、化学気相蒸着法(CVD)等の公知な薄膜法によりなされる。なかでも、PVDの一種である各種の真空蒸着法(スパッタリング、真空加熱蒸着、パルスレーザ蒸着等)を利用すれば、成分組成(ターゲット材質)の異なる各層の成膜が容易となる。なお、真空蒸着は、例えば、10-5~10-9Paさらには10-6~10-8Pa程度の高真空下でなされる。このときの基板温度は、例えば、室温付近(60℃以下さらには40℃以下)である。
(2)熱処理工程
積層工程中に、少なくとも特定の一層が積層された後に熱処理工程がなされてもよい。加熱により、積層された層(膜)の平坦性が向上し得る。加熱温度は、例えば、450~750℃さらには500~700℃である。加熱時間は、例えば、1~120分間、10~60分間さらには15~45分間である。
加熱源は、電熱、放射熱、レーザ等である。加熱雰囲気は、例えば、上述した高真空下でなされるとよい。但し、熱処理工程後に次層を積層するとき、上述した温度域まで積層面(基板)を冷却させてから行うとよい。
《交換エネルギーと飽和磁化》
強磁性層を鉄合金とすることにより、接合体の安定的な製作に必要な強磁性層の厚さと、接合体に所望される特性(臨界電流値等)とが高次元で両立され得る機序は、次のように考えられる。
(1)強磁性ジョセフソン接合における臨界電流値(Ic)は、下記に示す式(1)のように記述される(A. A. Bannykh et. al., Physical Review B 79, 054501, (2009). )。その式中の各変数は次の通りである。
:強磁性層の厚さ、d dead:強磁性層の磁気的なデッドレイヤーの厚さ、
h’:ディラック定数、Eex:磁気的な交換エネルギー、v :フェルミ速度
式(1)からわかるように、強磁性層を薄くするほど、臨界電流値を大きくできる。但し、交換エネルギーの大きいFe(純鉄)で強磁性層を構成した場合、応用上要求される臨界電流値(数百μA)を得るためには、その強磁性層(Fe層)を厚み1nm未満にまで薄くする必要がある。過薄な強磁性層を均一的な厚みで、安定して成膜することは容易ではない。
式(1)からわかるように、交換エネルギーを小さくしても、臨界電流値を大きくできる。交換エネルギーの直接的な測定は困難であるが、磁性原子の電子軌道の相互作用で生じる交換エネルギー(H)は、一般的に、下記に示す式(2)で表される。その式中、Si(Sj):電子i(電子j)のスピンに関する演算子、J:交換積分である。
交換積分Jは電子間の距離に反比例する。このため、磁性原子の電子間距離の伸長(換言すると、電子軌道の重なりの緩和)は、交換エネルギーを低減させ得る。
(2)飽和磁化は、単位体積あたりの磁気モーメントを指標する。飽和磁化の減少は、交換エネルギーを含む磁気物性の発現に寄与する電子密度が、単位体積あたりで減少したことを意味する。また、上述した磁性原子の電子間距離の伸長も、単位体積あたりの電子密度の減少を意味する。こうして、飽和磁化の減少と交換エネルギーの減少との間に、正の相関関係が成立し得る。
(3)鉄合金に含まれる合金原子は、強磁性原子であるFeの原子間隔を広げる。例えば、bcc構造のFe(格子定数:0.287nm)とbcc構造のMo(格子定数:0.315nm)との合金を考えると、その鉄合金の格子定数は、Mo量に応じてほぼ単調に増加する。
厚さ数nmの強磁性層の格子定数や交換エネルギーを直接的に測定したり解析したりできなくても、鉄合金中の鉄濃度の減少により、鉄同士の格子間距離が広がり、飽和磁化や交換エネルギーが減少した強磁性層が得られることは確かである。こうして、鉄合金の合金元素量の増加により、その鉄合金からなる強磁性層は、飽和磁化が減少し、ひいては交換エネルギーが減少するといえる。
鉄合金は、飽和磁化が、例えば、10~800emu/cm、30~480emu/cmさらには60~240emu/cmであるとよい。なお、Fe(純鉄)の飽和磁化は約1600emu/cm(1600×10Wb/m)程度、Niの飽和磁化は約480emu/cm(1600×10Wb/m)程度である。
《用途》
本発明の接合体は、種々の超伝導デバイス(素子)、例えば、半磁束量子回路、単一磁束量子回路(SFQ回路)、超伝導位相メモリ、量子ビット、スピンバルブ、スピンフィルタ、超伝導量子干渉計(SQUID)、量子センサ等に用いることができる。いくつかの具体例について以下説明する。
本発明の接合体により、半磁束量子回路が実現され得る(T. Kamiya, M. Tanaka, K. Sano, and A. Fujimaki, IEICE Transactions on Electronics E101.C, 385 (2018).)。半磁束量子回路は、SFQ回路と比較して、状態遷移にかかるエネルギーが1/100程度になり、スイッチングに必要な直流バイアス電流を大幅に低減できる。また半磁束量子回路は、SFQ回路に対して、動作マージンの向上やセルサイズの縮小等も可能となる。
本発明の接合体により超伝導移送メモリも実現され得る。超伝導移送メモリは、例えば、接合体の電圧状態を0、1に対応させたり、半磁束量子を0、1に対応させたり、強磁性層の磁化を制御して臨界電流値の大小を0、1に対応させたりして実現される。なお、半磁束量子回路からなるメモリは、従来の単一磁束量子回路からなるメモリよりも、二状態間の遷移エネルギーが1/100程度に低減され、低消費電力化や高速化が可能となる(B. Baek, W. H. Rippard, S. P. Benz, S. E. Russek, and P. D. Dresselhaus, Nat. Commun. 5 (2014).)。
本発明の接合体により量子ビットも実現され得る。その一つに磁束量子ビットがある。例えば、三つの0接合をもつ磁束量子ビットと、その三つのうちの一つをπ接合とした磁束量子ビットがある。0接合とπ接合をもつ後者の磁束量子ビットは、超伝導リングを流れる電流が右回りのときと左回りのときとを重ね合せた状態を利用している。
0接合のみで構成される磁束量子ビットは、重ね合わせの最適動作点を得るために、外部磁場:B=Φ/2S(S:SQUIDの面積)を必要とする。一方、0接合とπ接合で構成される磁束量子ビットは、そのような外部磁化の印加なしに最適動作点が得られる。。このように、π接合を含む磁束量子ビットは、量子ビットに隣接する磁場印加用のバイアス線が不要になり、多ビット化が容易となる。その際、制御方式次第では、外部磁場を完全に排除して、低周波ノイズの低減や集積化を図ることも可能となる(T. Yamashita, K. Tanikawa, S. Takahashi, and S. Maekawa, Phys. Rev. Lett. 95 (2005).)
本発明の接合体により、スピンバルブやスピンフィルタも実現され得る。スピンバルブは、強磁性層の磁化を外部磁場で変化させて、強磁性ジョセフソン接合間を流れる臨界電流値(Ic)を変調させる。スピンフィルタは、強磁性層の材料や磁化の調整により、意図的に任意のスピン状態を取り出す(S. Hikino and S. Yunoki, Phys. Rev. Lett. 110 (2013).)。
強磁性層の成分組成を変更した試料(強磁性ジョセフソン接合体)を複数製作して、それらの特性を評価した。これらに基づいて本発明をより具体的に説明する。
《試料の製作》
(1)概要
薄膜法により各層を積層して、図1Aに示す試料を製作した。具体的には、次の通りである。先ず、MgO単結晶からなる基板を用意した。この基板を加工(研磨)して、単結晶面(100)を成膜面とした。
成膜は、超高真空多元スパッタ装置(MPS-2000-C8 株式会社アルバック製)を用いて、真空下で加熱クリーニング(600℃)した後、50℃以下まで冷却した基板の成膜面に行った。成膜前の到達真空度は1×10-7Paとした。成膜速度は0.1nm/sec以下とした。ターゲット(原料)には、各層に応じた純金属を用いた。なお、強磁性層のターゲットには、予め調製したFeとMoの二元系合金を用いてもよい。
(2)成膜(積層)
基板の成膜(MgO単結晶面)上へ、Moからなるバッファ層(第1Mo層)、Nbからなる第1超伝導層(第1Nb層)、Feおよび/またはMoからなる強磁性層、Moからなるインサート層(第2Mo層)、Nbからなる第2超伝導層(第2Nb層)を順に積層した。強磁性層は、Fe組成比(目標値)を、その全体100原子%(単に「%」という。)に対して、100%(純Fe)、85%、80%、70%、60%、50%または40%とした。
各層の膜厚(目標値)は、バッファ層:20nm、各超伝導層:50nm、強磁性層:2nm、インサート層:1nmとした。膜厚は、成膜速度と成膜時間の積から算出した。なお、本実施例では熱処理を行わなかったが、成膜途中(例えば、第1Mo層や第1Nb層の堆積後)または成膜完了後に、アニール等を行ってもよい。
《測定・解析》
(1)配向
各試料の結晶構造をX線回折装置(株式会社リガク製RINT-TTR II /使用X線:Cu-Kα線、2θ:30~90℃)を用いて上面側から解析した。得られた各試料のX線回折スペクトル(XRD)を図1Bに重ねて示した。
図1Bから明らかなように、Fe組成比に拘わらず、全ての試料でNb(002)が観察され、Nb(110)等は実質的に観察されなかった。このことから、第1Mo層から第2Nb層に至る多層膜(積層体)は、エピタキシャル成長により全体がc面配向していることが確認された。
(2)格子定数
XRDに基づいて求めた各試料に係るNbの格子定数を図2にまとめて示した。格子定数の特定には、JCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)カードのデータとソフトウェア(株式会社ヒューリンクス製カレイダグラフ(KaleidaGraph))を用いた。
図2から明らかなように、Fe組成比に拘わらず、全ての試料でNbの格子定数は略一定となった。このことから、超伝導層(Nb層)へ悪影響を及ぼすことなく、強磁性層を所望組成のFe-Mo合金で形成できることがわかった。
(3)飽和磁化
各試料の飽和磁化を株式会社玉川製作所製:振動試料型磁力計(VSM)により測定した。その飽和磁化とFe組成比との関係を図3にまとめて示した。
図3から明らかなように、鉄合金(Fe≦95%さらにはFe≦90%)からなる強磁性層は、純鉄(Fe:100%)からなる強磁性層に対して、飽和磁化が1/10~1/5程度にまで急減することがわかった。
《観察》
試料(強磁性層:純鉄)の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。そのTEM像を図4に示した。
図4から明らかなように、各層は厚さのばらつきが非常に小さく、第2Nb層の表面まで平坦性または平滑性が確保されていた。
以上から、強磁性層の厚さを確保しつつ、その飽和磁化ひいては交換エネルギーを低減できる強磁性ジョセフソン接合体を提供し得ることが確認された。
また、エピタキシャル成長により、結晶方位が特定方向に揃った(例えばc面配向した)平坦な積層体が得らえることもわかった。このような積層体は強磁性ジョセフソン接合体として、優れた電気特性を安定的に発現する集積回路への応用が期待される。

Claims (8)

  1. 第1超伝導層、強磁性層および第2超伝導層が順に積層されてなり、
    該強磁性層は、鉄合金からなる強磁性ジョセフソン接合体。
  2. 前記鉄合金は、その全体を100原子%として、Feを20~90原子%含む請求項1に記載の強磁性ジョセフソン接合体。
  3. 前記鉄合金は、Moを含む請求項1または2に記載の強磁性ジョセフソン接合体。
  4. 前記強磁性層は、厚さが0.5~30nmである請求項1~3のいずれかに記載の強磁性ジョセフソン接合体。
  5. 前記第1超伝導層、前記強磁性層および前記第2超伝導層はそれぞれ、同一方向に配向した結晶からなる請求項1~4のいずれかに記載の強磁性ジョセフソン接合体。
  6. 前記第1超伝導層、前記強磁性層および前記第2超伝導層は、体心立方格子からなる請求項1~5のいずれかに記載の強磁性ジョセフソン接合体。
  7. 前記第1超伝導層と前記第2超伝導層は、Nbの単体、化合物または合金のいずれかからなる請求項1~6のいずれかに記載の強磁性ジョセフソン接合体。
  8. 第1超伝導層、強磁性層および第2超伝導層を順に積層する積層工程を備え、
    請求項1~7のいずれかに記載した強磁性ジョセフソン接合体が得られる製造方法。
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