JP2023120708A - 繊維強化複合材料の製造方法、及び、プリプレグ - Google Patents

繊維強化複合材料の製造方法、及び、プリプレグ Download PDF

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Abstract

【課題】 ベンゾオキサジン樹脂を利用しつつ、優れたCAIを有する繊維強化複合材料を得ることができる繊維強化複合材料の製造方法を提供すること。【解決手段】 繊維強化複合材料の製造方法は、強化繊維1と、強化繊維の繊維間に含浸された、(A)ベンゾオキサジン樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び、(C)分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤を含有する樹脂組成物2と、を含む強化繊維層3と、強化繊維層3の少なくとも一方の表面上に設けられた、(A)~(C)成分、及び、(D)平均粒子径が5~50μmのポリアミド樹脂粒子を含有する表面層6a、6bと、を備え、ポリアミド樹脂粒子として、(D1)第1のポリアミド樹脂粒子4a、及び、(D2)表面層を構成する組成中で測定される融解温度が第1のポリアミド樹脂粒子よりも高い第2のポリアミド樹脂粒子4bを含む、プリプレグ10、が複数積層されたプリプレグ積層体を用意するステップAと、プリプレグ積層体を加熱して樹脂硬化するステップBとを備え、(D1)第1のポリアミド樹脂粒子の表面層を構成する組成中で測定される融解温度をM1℃、(D2)第2のポリアミド樹脂粒子の表面層を構成する組成中で測定される融解温度をM2℃、及び、ステップBにおける硬化温度をCP℃としたときに、M1<CP<M2の関係を満たす。【選択図】 なし

Description

本発明は、繊維強化複合材料の製造方法に関する。本発明は、特には、航空機用途、船舶用途、自動車用途、スポーツ用途、その他一般産業用途の繊維強化複合材料の製造方法に関する。
各種繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、その優れた力学物性から、航空機、船舶、自動車、スポーツ用品やその他一般産業用途などに広く使われている。近年、その使用実績を積むに従い、繊維強化複合材料の適用範囲はますます拡がっている。
このような繊維強化複合材料として、ベンゾオキサジン樹脂を利用したものが、例えば、特許文献1及び2に提案されている。ベンゾオキサジン樹脂は、優れた耐湿性及び耐熱性を有するが、靱性に劣る問題があり、エポキシ樹脂や各種樹脂微粒子等を配合してその欠点を補う工夫がなされている。
特開2007-16121号公報 特開2010-13636号公報
繊維強化複合材料を航空機等の部材として用いる場合、以下の事情により、力学特性の中でも特に衝撃後圧縮強度(以下CAIと略す)が重要視されている。航空機の機体は、例えば、飛行中に雹が当たる、離着陸時に跳ね上がった小石が当たる、点検整備中に工具が落下して当たる、などの弱い衝撃を受けることがある。このような衝撃が繊維強化複合材料に加わると、外観上の損傷は確認されにくいが、内部に層間剥離が発生して圧縮強度が大きく低下することがある。そのため、運用される機体の強度を維持する観点から、高いCAIを有する繊維強化複合材料が求められる。
本発明の課題は、ベンゾオキサジン樹脂を利用しつつ、優れたCAIを有する繊維強化複合材料を得ることができる繊維強化複合材料の製造方法及びそれに用いることができるプリプレグを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、強化繊維と、強化繊維の繊維間に含浸された、(A)ベンゾオキサジン樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び、(C)分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤を含有する樹脂組成物と、を含む強化繊維層と、強化繊維層の少なくとも一方の表面上に設けられた、(A)ベンゾオキサジン樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)分子中に2以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤、及び、(D)平均粒子径が5~50μmのポリアミド樹脂粒子を含有する表面層と、を備え、ポリアミド樹脂粒子として、(D1)第1のポリアミド樹脂粒子、及び、(D2)表面層を構成する組成中で測定される融解温度が第1のポリアミド樹脂粒子よりも高い第2のポリアミド樹脂粒子を含む、プリプレグ、が複数積層されたプリプレグ積層体を用意するステップAと、プリプレグ積層体を加熱して樹脂硬化するステップBと、を備え、(D1)第1のポリアミド樹脂粒子の表面層を構成する組成中で測定される融解温度をM℃、(D2)第2のポリアミド樹脂粒子の表面層を構成する組成中で測定される融解温度をM℃、及び、ステップBにおける硬化温度をCP℃としたときに、M<CP<Mの関係を満たす、繊維強化複合材料の製造方法を提供する。
本発明の繊維強化複合材料の製造方法によれば、優れたCAIを有する繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明の繊維強化複合材料の製造方法において、プリプレグが第2のポリアミド樹脂粒子としてポリアミド6樹脂粒子を含んでいてもよい。
また、Mが150~170℃であり、Mが190~210℃であってもよい。
更に、プリプレグにおける繊維目付が75~120g/mであってもよい。この場合、更に高水準のCAIを有する繊維強化複合材料を得ることができる。
表面層は、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、(A)成分を65~80質量部、(B)成分を20~35質量部、(C)成分を4~15質量部、及び(D)成分を15~45質量部含有することができる。
また、表面層は、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、(C)成分として、分子量が150~400である硬化剤を4~8質量部含有することができる。この場合、繊維強化複合材料において高いCAIを与えることのみならず、プリプレグのタック性も確保することができ、プリプレグの取り扱い性が良好となることにより、プリプレグ積層体を用意する際の作業性、すなわち手動での積層に加えて、自動積層機を用いたときにプリプレグの取り扱い性が良好となり、積層工程の確実性、欠陥の排除により、繊維強化複合材料の強度、剛性面での信頼性を高めることが容易となる。
本発明の繊維強化複合材料の製造方法において、プリプレグが、樹脂組成物を強化繊維に含浸して強化繊維層を得るステップP1と、ステップP1で得られた強化繊維層の少なくとも一方の表面上に表面層を設けるステップP2と、を経て得られたものであってもよい。
本発明はまた、強化繊維と、前記強化繊維の繊維間に含浸された、(A)ベンゾオキサジン樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び、(C)分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤を含有する樹脂組成物と、を含む強化繊維層と、強化繊維層の少なくとも一方の表面上に設けられた、(A)ベンゾオキサジン樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)分子中に2以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤、及び、(D)平均粒子径が5~50μmのポリアミド樹脂粒子を含有する表面層と、を備え、ポリアミド樹脂粒子として、(D1)第1のポリアミド樹脂粒子、及び、(D2)表面層を構成する組成中で測定される融解温度が第1のポリアミド樹脂粒子よりも高い第2のポリアミド樹脂粒子を含み、第2のポリアミド樹脂粒子として、ポリアミド6樹脂粒子を含む、プリプレグを提供する。
本発明のプリプレグにおいて、(D1)成分の表面層を構成する組成中で測定される融解温度が150~170℃であり、(D2)成分の表面層を構成する組成中で測定される融解温度が190~210℃であってもよい。
また、繊維目付が75~120g/mであってもよい。
更に、表面層は、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、(A)成分を65~80質量部、(B)成分を20~35質量部、(C)成分を4~15質量部、及び(D)成分を15~45質量部含有することができる。
また、表面層は、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、(C)成分として、分子量が150~400である硬化剤を4~8質量部含有することができる。
本発明によれば、ベンゾオキサジン樹脂を利用しつつ、優れたCAIを有する繊維強化複合材料を得ることができる繊維強化複合材料の製造方法及びそれに用いることができるプリプレグを提供することができる。
本発明の方法により得られる繊維強化複合材料は、航空機用途、船舶用途、自動車用途、スポーツ用途、その他一般産業用途に好適に利用でき、特に、航空機用途に有用である。
プリプレグについて説明するための模式断面図である。 プリプレグを製造する方法について説明するための模式断面図である。 プリプレグを製造する方法について説明するための模式断面図である。 本発明に係る繊維強化複合材料の製造方法における硬化プロファイルの一例を示す模式図である。 繊維強化複合材料について説明するための模式断面図である。
以下本発明について詳細に説明する。
本実施形態に係る繊維強化複合材料の製造方法は、強化繊維と、強化繊維の繊維間に含浸された、(A)ベンゾオキサジン樹脂(以下、(A)成分という場合もある)、(B)エポキシ樹脂(以下、(B)成分という場合もある)、及び、(C)分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤(以下、(C)成分という場合もある)を含有する樹脂組成物と、を含む強化繊維層と、強化繊維層の少なくとも一方の表面上に設けられた、(A)ベンゾオキサジン樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤、及び、(D)平均粒子径が5~50μmのポリアミド樹脂粒子(以下、(D)成分という場合もある)を含有する表面層と、を備え、上記ポリアミド樹脂粒子として、(D1)第1のポリアミド樹脂粒子(以下、(D1)成分という場合もある)、及び、(D2)表面層を構成する組成中で測定される融解温度が第1のポリアミド樹脂粒子よりも高い第2のポリアミド樹脂粒子(以下、(D2)成分という場合もある)を含む、プリプレグが複数積層されたプリプレグ積層体を用意するステップAと、プリプレグ積層体を加熱して樹脂硬化するステップBとを備える。
本明細書において、ポリアミド樹脂粒子の融点とは、示差熱量計(DSC)を用いて、25℃から10℃/分の速度で昇温し、得られた吸熱ピークのトップの温度を測定することで求められた値である。また、表面層を構成する組成中で測定されるポリアミド樹脂粒子の融解温度とは、ポリアミド樹脂粒子を含む表面層を構成する組成物を、示差熱量計(DSC)を用いて、25℃から10℃/分の速度で昇温し、得られた吸熱ピークのトップの温度を指す。なお、ポリアミド樹脂粒子に由来する吸熱ピークが複数ある場合は、最も低い温度の吸熱ピークで融解が始まっていることを考慮して、最も低い温度で得られる吸熱ピークのトップの温度を、ポリアミド樹脂粒子の融解温度とする。
本実施形態の繊維強化複合材料の製造方法においては、(D1)成分の表面層を構成する組成中で測定される融解温度をM℃、(D2)成分の表面層を構成する組成中で測定される融解温度をM℃、及び、ステップBにおける硬化温度をCP℃としたときに、M<CP<Mの関係を満たす。
図1は、本実施形態で用いるプリプレグについて説明するための模式断面図である。図1の(a)に示されるプリプレグ10は、強化繊維1と、強化繊維1の繊維間に含浸された樹脂組成物2と、を含む強化繊維層3と、強化繊維層3の表面上に設けられた、第1のポリアミド樹脂粒子4a及び第2のポリアミド樹脂粒子4b並びに樹脂組成物5を含有する表面層6aとを備える。プリプレグ10の表面層6aにおいては、第1のポリアミド樹脂粒子4a及び第2のポリアミド樹脂粒子4bが樹脂組成物5の層内に含まれている。
本実施形態に係るプリプレグ10は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分を含有する樹脂組成物2が含まれる強化繊維層3と、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する樹脂組成物5並びに(D)成分が含まれる表面層6a及び表面層6bと、を備え、表面層6a及び表面層6bが、(D)成分として、(D1)成分及び(D2)成分を含む。
本発明で用いる(A)成分としては、下記一般式(A-1)で表されるベンゾオキサジン環を有する化合物が挙げられる。
Figure 2023120708000001

[式(A-1)中、Rは、炭素数1~12の鎖状アルキル基、炭素数3~8の環状アルキル基、炭素数6~14のアリール基、又は炭素数1~12の鎖状アルキル基若しくはハロゲンで置換されたアリール基を示す。結合手には水素原子が結合されていてもよい。]
炭素数1~12の鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基が挙げられる。炭素数3~8の環状アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。炭素数6~14のアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニル基が挙げられる。炭素数1~12の鎖状アルキル基若しくはハロゲンで置換されたアリール基としては、例えば、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基、o-エチルフェニル基、m-エチルフェニル基、p-エチルフェニル基、o-t-ブチルフェニル基、m-t-ブチルフェニル基、p-t-ブチルフェニル基、o-クロロフェニル基、o-ブロモフェニル基が挙げられる。
としては、上記例示の中でも、良好な取り扱い性を与えることから、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、o-メチルフェニル基が好ましい。
また、下記一般式(A-2)で表されるベンゾオキサジン環を有する化合物が挙げられる。
Figure 2023120708000002

[式(A-2)中、Lは、アルキレン基又はアリーレン基を示す。]
(A)成分のベンゾオキサジン樹脂としては、例えば、以下の式で表されるモノマー、該モノマーが数分子重合したオリゴマー、以下の式で表されるモノマーの少なくとも1種と、これらモノマーとは異なる構造を有するベンゾオキサジン環を有する化合物との反応物が好ましく挙げられる。
Figure 2023120708000006
(A)成分は、ベンゾオキサジン環が開環重合することにより、フェノール樹脂と同様の骨格をつくるために、難燃性に優れる。また、その緻密な構造から、低吸水率や高弾性率といった優れた機械特性が得られる。
(A)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる(B)成分は、組成物の粘度をコントロールし、また、組成物の硬化性を高める成分として配合される。(B)成分としては、例えば、アミン類、フェノール類、カルボン酸、分子内不飽和炭素等の化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましい。
アミン類を前駆体とするエポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、キシレンジアミンのグリシジル化合物、トリグリシジルアミノフェノールや、グリシジルアニリン類(グリシジルアニリンのいずれかの位置異性体、又はそれらをアルキル基若しくはハロゲン原子で置換したもの)が挙げられる。以下、エポキシ樹脂の市販品を例示する場合、液状のものには、後述の動的粘弾性測定装置により得られる25℃における複素粘弾性率ηを粘度として記載している。
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、例えば、「スミエポキシ」(登録商標。以下同じ)ELM434(住友化学(株)製)、「アラルダイト」(登録商標、以下同じ)MY720、「アラルダイト」MY721、「アラルダイト」MY9512、「アラルダイト」MY9612、「アラルダイト」MY9634、「アラルダイト」MY9663(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、「jER」(登録商標、以下同じ)604(三菱化学(株)製)が挙げられる。
トリグリシジルアミノフェノールの市販品としては、例えば、「jER」630(粘度:750mPa・s)(三菱化学(株)製)、「アラルダイト」MY0500(粘度:3500mPa・s)、MY0510(粘度:600mPa・s)(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、ELM100(粘度:16000mPa・s)(住友化学製)が挙げられる。
グリシジルアニリン類の市販品としては、例えば、GAN(粘度:120mPa・s)、GOT(粘度:60mPa・s)(以上日本化薬(株)製)が挙げられる。
フェノールを前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジフェニルフルオレン型エポキシ樹脂やそれぞれの各種異性体やアルキル基、ハロゲン置換体が挙げられる。また、フェノールを前駆体とするエポキシ樹脂をウレタンやイソシアネートで変性したエポキシ樹脂も、このタイプに含まれる。
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、「jER」825(粘度:5000mPa・s)、「jER」826(粘度:8000mPa・s)、「jER」827(粘度:10000mPa・s)、「jER」828(粘度:13000mPa・s)、(以上三菱化学(株)製)、「エピクロン」(登録商標、以下同じ)850(粘度:13000mPa・s)(DIS(株)製)、「エポトート」(登録商標、以下同じ)YD-128(粘度:13000mPa・s)(新日鐵化学(株)製)、DER-331(粘度:13000mPa・s)、DER-332(粘度:5000mPa・s)(ダウケミカル社製)が挙げられる。固形もしくは半固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、「jER」834、「jER」1001、「jER」1002、「jER」1003、「jER」1004、「jER」1004AF、「jER」1007、「jER」1009(以上三菱化学(株)製)が挙げられる。
液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、「jER」806(粘度:2000mPa・s)、「jER」807(粘度:3500mPa・s)、「jER」1750(粘度:1300mPa・s)、「jER」(以上三菱化学(株)製)、「エピクロン」830(粘度:3500mPa・s)(DIC(株)製)、「エポトート」YD-170(粘度:3500mPa・s)、「エポトート」YD-175(粘度:3500mPa・s)、(以上、新日鐵化学(株)製)が挙げられる。固形のビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、4004P、「jER」4007P、「jER」4009P(以上三菱化学(株)製)、「エポトート」YDF2001、「エポトート」YDF2004(以上新日鐵化学(株)製)が挙げられる。
ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、例えば、EXA-1515(DIC(株)製)が挙げられる。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、「jER」YX4000H、「jER」YX4000、「jER」YL6616(以上、三菱化学(株)製)、NC-3000(日本化薬(株)製)が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、「jER」152、「jER」154(以上三菱化学(株)製)、「エピクロン」N-740、「エピクロン」N-770、「エピクロン」N-775(以上、DIC(株)製)が挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、「エピクロン」N-660、「エピクロン」N-665、「エピクロン」N-670、「エピクロン」N-673、「エピクロン」N-695(以上、DIC(株)製)、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-104S(以上、日本化薬(株)製)が挙げられる。
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、「デナコール」(登録商標、以下同じ)EX-201(粘度:250mPa・s)(ナガセケムテックス(株)製)が挙げられる。
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、「エピクロン」HP4032(DIC(株)製)、NC-7000、NC-7300(以上、日本化薬(株)製)が挙げられる。
トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、TMH-574(住友化学(株)製)が挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、「エピクロン」HP7200、「エピクロン」HP7200L、「エピクロン」HP7200H(以上、DIC(株)製)、「Tactix」(登録商標)558(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、XD-1000-1L、XD-1000-2L(以上、日本化薬(株)製)が挙げられる。
ウレタンおよびイソシアネート変性エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、オキサゾリドン環を有するAER4152(旭化成イーマテリアルズ(株)製)が挙げられる。
カルボン酸を前駆体とするエポキシ樹脂としては、例えば、フタル酸のグリシジル化合物や、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸のグリシジル化合物やそれぞれの各種異性体が挙げられる。
フタル酸ジグリシジルエステルの市販品としては、例えば、「エポミック」(登録商標、以下同じ)R508(粘度:4000mPa・s)(三井化学(株)製)、「デナコール」EX-721(粘度:980mPa・s)(ナガセケムテックス(株)製)が挙げられる。
ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルの市販品としては、例えば、「エポミック」R540(粘度:350mPa・s)(三井化学(株)製)、AK-601(粘度:300mPa・s)(日本化薬(株)製)が挙げられる。
ダイマー酸ジグリシジルエステルの市販品としては、例えば、「jER」871(粘度:650mPa・s)(三菱化学(株)製)、「エポトート」YD-171(粘度:650mPa・s)(新日鐵化学(株)製)が挙げられる。
分子内不飽和炭素を前駆体とするエポキシ樹脂としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)オクチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンが挙げられる。
(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートの市販品としては、例えば、「セロキサイド」(登録商標、以下同じ)2021P(粘度:250mPa・s)(株式会社ダイセル製)、CY179(粘度:400mPa・s)(ハンツマン・アドバンスドマテリアルズ社製)、(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)オクチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートの市販品としては、例えば、「セロキサイド」2081(粘度:100mPa・s)(株式会社ダイセル製)、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンの市販品としては、例えば、「セロキサイド」3000(粘度:20mPa・s)(株式会社ダイセル製)が挙げられる。
本実施形態においては、タックやドレープ性の観点から、25℃で液状のエポキシ樹脂を配合することができる。25℃で液状のエポキシ樹脂の25℃における粘度は、低ければ低いほどタックやドレープ性の観点から好ましい。具体的には、エポキシ樹脂の市販品として得られる下限である5mPa・s以上20000mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上15000mPa・s以下がより好ましい。25℃における粘度が20000mPa・sを超えると、タックやドレープ性が低下することがある。
一方、耐熱性の観点から、25℃で固形のエポキシ樹脂を配合することができる。25℃で固形のエポキシ樹脂としては、芳香族含有量の高いエポキシ樹脂が好ましく、例えば、ビフェニル骨格をもつエポキシ樹脂や、ナフタレン骨格をもつエポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂が挙げられる。
(B)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる(C)成分としては、ビスフェノール類等の多官能フェノールが挙げられ、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、チオジフェノール、下記一般式(C-1)で表されるビスフェノール類が挙げられる。
Figure 2023120708000007

[式(C-1)中、R、R、R及びRは水素原子又は炭化水素基を示し、R、R、R又はRが炭化水素基である場合、それらは炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基である、又は、隣り合うR及びR若しくは隣り合うR及びRが結合して炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香環又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の脂環構造を形成しており、xは、0又は1を示す。]
上記一般式(C-1)で表される硬化剤としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023120708000008
(C)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態においては、樹脂硬化物のガラス転移温度を十分高める観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、チオビスフェノール(以下、TDPという場合もある)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(以下、BPFという場合もある)、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下、BPCという場合もある)のうちの一種以上を用いてもよい。
(C)成分は、プリプレグ(若しくは表面層)のタックを良好にしつつ、繊維強化複合材料のCAIを向上させる観点から、チオビスフェノール及びビスフェノールFのうちの一種以上であってもよく、チオビスフェノールであってもよい。
また、上記と同様の観点から、(C)成分は、水酸基当量が70~220(g/eq)であってもよく、80~200(g/eq)であってもよく、90~180(g/eq)であってもよい。ここで、水酸基当量とは、分子構造及び分子量の既知の値から求められる計算値を意味する。
本実施形態においては、表面層が、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、(C)成分として、分子量が150~400である硬化剤を4~8質量部含有することができる。この場合、繊維強化複合材料において高いCAIを与えることのみならず、プリプレグのタック性も確保することができ、プリプレグの取り扱い性が良好となることにより、プリプレグ積層体を用意する際の作業性、すなわち手動での積層に加えて、自動積層機を用いたときにプリプレグの取り扱い性が良好となり、積層工程の確実性、欠陥の排除により、繊維強化複合材料の強度、剛性面での信頼性を高めることが容易となる。
本実施形態においては、上記(C)成分以外の硬化剤を併用することができる。併用できる硬化剤としては、例えば、N,N-ジメチルアニリンを代表とする第3級芳香族アミン、トリエチルアミン等の第3級脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ピリジン誘導体等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(D)成分として表面層に含まれる(D1)成分及び(D2)成分は、アミド結合を有する重合体又は共重合体であってもよい。アミド結合を有する重合体又は共重合体は、例えば、脂肪族アミノ酸、脂肪族ラクタムあるいは脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸を出発原料として合成することができる。
アミノ酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が挙げられる。
ラクタムとしては、例えば、カプロラクタム、ラウロラクタム、オクタラクタム、ウンデカンラクタム等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。
ポリアミド樹脂粒子の平均粒子径は、5~50μmであってもよく、5~30μmであってもよく、10~30μmであってもよい。ここで、平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて200~500倍に拡大した粒子の任意に選択した100個の粒子について測定した、各粒子の長径の長さの平均値を意味する。
ポリアミド樹脂粒子の平均粒子径は、繊維強化複合材料のCAIを向上させる観点から、表面層の厚みT(μm)に対して、0.4T~1.8Tであってもよく、0.6T~1.6Tであってもよい。この場合、表面層6a,6bの厚みが均一に維持されやすくなり、繊維強化複合材料が衝撃を受けたときに、亀裂の進展が抑制されて大きな層間剥離が発生しにくくなる。なお、表面層の厚みTは以下の手順で求められる。先ず、プリプレグを液体窒素などに浸して冷凍した状態で鋭利なカッターなどで切断することによりサンプルを切り出す。切り出したサンプルの断面を速やかに顕微鏡で観察し、ポリアミド樹脂粒子が存在していない部分3箇所について、表面層の外表面から強化繊維までの距離を測定し、これらの平均値を表面層の厚みTとする。
本実施形態で用いる(D1)成分及び(D2)成分としては、上述したM<CP<Mの関係を満たすことができるものであればよい。
(D1)成分は、樹脂組成物5中で測定される融解温度Mが、ステップBにおける硬化温度CP℃よりも低ければよく、120~170℃であってもよく、130~170℃であってもよく、135~170℃であってもよく、150~170℃であってもよい。
(D1)成分は、融点が150~190℃、160~190℃、166~186℃、又は170~185℃であるポリアミド樹脂粒子であってもよい。ここでいう融点とは、ポリアミド樹脂粒子そのものの融点を意味する。
(D1)成分としては、例えば、ポリアミド12樹脂粒子、ポリアミド11樹脂粒子などを用いることができる。
本明細書においてポリアミド12樹脂とはラウロラクタムを開環重合したポリアミド樹脂を指し、ポリアミド11樹脂とはウンデカンラクタムを開環重合したポリアミド樹脂を指す。
本実施形態に用いるポリアミド12樹脂粒子としては、市販品を用いることができ、例えば、「ベストジント1111」、「ベストジント2070」、「ベストジント2157」、「ベストジント2158」、「ベストジント2159」(以上、登録商標、ダイセル・エボニック株式会社製)、「Orgasol2002D」、「Orgasol2002EXD」、「Orgasol2002ES3」(以上、登録商標、アルケマ株式会社製)が挙げられる。
本実施形態に用いるポリアミド11樹脂粒子としては、市販品を用いることができ、例えば、「Rilsan Fine Powder」(登録商標、アルケマ株式会社製)が挙げられる。
(D1)成分の平均粒子径は、樹脂への混合時の分散性、混錬作業性、及びプリプレグ表面における均一な分散性を得る観点から、5~50μmであってもよく、5~30μmであってもよく、10~30μmであってもよく、表面層の厚みT(μm)に対して、0.4T~1.8Tであってもよく、0.6T~1.6Tであってもよい。
(D1)成分は、当該粒子が配合された樹脂組成物の流動特性を低下させない点から球状粒子が好ましいが、非球状粒子でもよい。
(D2)成分は、樹脂組成物5中で測定される融解温度Mが、ステップBにおける硬化温度CP℃よりも高ければよく、175~220℃であってもよく、175~210℃であってもよく、190~210℃であってもよい。
(D2)成分は、融点が190~240℃、200~240℃、207~227℃又は210~230℃であるポリアミド樹脂粒子であってもよい。ここでいう融点とは、ポリアミド樹脂粒子そのものの融点を意味する。
(D2)成分としては、例えば、ポリアミド6樹脂粒子を用いることができる。
本明細書において、ポリアミド6樹脂とはカプロラクタムを開環重合したポリアミド樹脂を指す。
本実施形態に用いるポリアミド6樹脂粒子としては、市販品を用いることができ、例えば、「Orgasol1002D」(登録商標、アルケマ株式会社製)が挙げられる。
(D2)成分の平均粒子径は、樹脂への混合時の分散性及び混錬作業性、プリプレグ表面における均一な分散性、及び成形後の繊維強化複合材料における樹脂層厚みをより均一に確保する観点から、5~50μmであってもよく、5~30μmであってもよく、10~30μmであってもよく、表面層の厚みT(μm)に対して、0.4T~1.8Tであってもよく、0.6T~1.6Tであってもよい。
(D2)成分は、当該粒子が配合された樹脂組成物の流動特性を低下させない点から球状粒子が好ましいが、非球状粒子でもよい。
(D2)成分は、樹脂組成物5中の融解温度Mが、(D1)成分の樹脂組成物5中の融解温度Mよりも50℃以上であってもよく、40℃以上であってもよい。また、M-Mが、20~50℃であってもよく、30~40℃であってもよい。
本実施形態で用いる(D1)成分及び(D2)成分としては、ポリアミド12樹脂粒子及びポリアミド6樹脂粒子の組み合わせ、又は、融点が169~189℃のポリアミド樹脂粒子及び融点が207~227℃のポリアミド樹脂粒子の組み合わせであってもよい。このような組み合わせとすることで、(D2)成分が均一に分散された海島構造、すなわち(D1)成分が融解、凝集しているなかに、(D2)成分は融解せずに残っている状態とすることができる。
本実施形態において、樹脂組成物2における(A)成分及び(B)成分の含有量は、得られる繊維強化複合体の高弾性率化、並びに、耐湿性、耐熱性、硬化収縮性、及び靱性を良好にする観点から、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、(A)成分が60~83質量部、(B)成分が17~40質量部であってもよく、(A)成分が65~78質量部、(B)成分が22~35質量部であってもよい。
また、樹脂組成物2における(C)成分の含有量は、繊維強化複合材料における十分なCAI、耐熱性、耐湿性、及び弾性率を得るという観点から、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、5~20質量部であってもよく、5~15質量部であってもよく、4~15質量部であってもよい。
本実施形態において、表面層6a,6bにおける(A)成分及び(B)成分の含有量は、得られる繊維強化複合体の高弾性率化、並びに、耐湿性、耐熱性、硬化収縮性、及び靱性を良好にする観点から、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、(A)成分が60~83質量部、(B)成分が17~40質量部であってもよく、(A)成分が65~80質量部、(B)成分が20~35質量部であってもよい。
また、表面層6a,6bにおける(C)成分の含有量は、繊維強化複合材料における十分なCAI、耐熱性、耐湿性、及び弾性率を得るという観点から、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、5~20質量部であってもよく、5~15質量部であってもよく、4~15質量部であってもよい。
更に、本実施形態においては、プリプレグ(若しくは表面層)のタックを良好にする観点から、(C)成分が下記の(i)~(iii)のうちの少なくとも一つの条件を満たすものであり、且つ、表面層6a,6bにおける当該(C)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、5~20質量部であってもよく、5~15質量部であってもよく、4~15質量部であってもよい。
(i)ビスフェノールF及びチオビスフェノールのうちの一種以上である。
(ii)水酸基当量が90~120(g/eq)である。
(iii)分子量が150~400である。
更に、表面層6a,6bにおける(D)成分の含有量は、高いCAI、耐熱性、耐湿性及び弾性率を得るという観点から、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、15~45質量部であってもよく、20~40質量部であってもよい。本実施形態においては、(D1)成分と(D2)成分との合計含有量が、上記範囲であることが好ましい。
(D1)成分と(D2)成分との配合比は、CAIを十分高くする観点から、(D1)成分100質量部に対し、(D2)成分が50~500質量部であってもよく、65~450質量部であってもよく、80~400質量部であってもよい。
本実施形態においては、CAIを十分高くする観点から、表面層6a,6bにおける(D2)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分との合計を100質量部としたときに、5~40質量部であってもよく、10~20質量部であってもよい。
また、(D2)成分の配合量が、(D1)成分の配合量よりも大きくてもよい。この場合、(D2)成分によって表面層6a,6bの厚みが均一に維持されやすくなることで、CAIを高めることが容易となる。
本実施形態のプリプレグにおける表面層6a,6bとはプリプレグ表面から強化繊維層の強化繊維までの間を指し、表面層における(D)成分の上記含有量は、例えば、プリプレグ表面から強化繊維層の強化繊維までの間に検出される(A)成分、(B)成分及び(C)成分の含有量に基づき算出することができる。
本実施形態のプリプレグにおいて、表面層及び強化繊維層には、その物性を損なわない範囲で、例えば、(E)靭性向上剤などのその他の成分を配合することができる。(E)靭性向上剤としては、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォンが挙げられる。
更に他の成分としては、ナノカーボンや難燃剤、離型剤等を配合することができる。ナノカーボンとしては、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレンやそれぞれの誘導体が挙げられる。難燃剤としては、例えば、赤燐、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホルフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート等のリン酸エステルや、ホウ酸エステル等が挙げられる。離型剤としては、例えば、シリコンオイル、ステアリン酸エステル、カルナウバワックス等が挙げられる。
表面層6a,6bの厚みは、CAIを十分高くする観点から、5~50μmであってもよく、5~30μmであってもよく、10~25μmであってもよい。
強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等を使用することができる。これらの繊維を2種以上混合して用いてもよい。より軽量で、より耐久性の高い成形品を得るために、炭素繊維又は黒鉛繊維を用いることが好ましく、炭素繊維を用いることが更に好ましい。
炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維のいずれも使用可能である。
炭素繊維又は黒鉛繊維は、耐衝撃性に優れ、高い剛性及び機械強度を有する複合材料が得られることから、炭素繊維又は黒鉛繊維のストランド引張試験における引張弾性率が、150~650GPa、200~550GPa、又は230~500GPaであってもよい。なお、ストランド引張試験とは、束状の炭素繊維又は黒鉛繊維にエポキシ樹脂を含浸させ、130℃の温度で35分間硬化させた後、JIS R7601(1986)に基づいて行う試験をいう。
強化繊維の形態は特に限定されるものではなく、例えば、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物、マット、ニット、組み紐、10mm未満の長さにチョップした短繊維等を用いることができる。ここで、長繊維とは実質的に10mm以上連続な単繊維もしくは繊維束である。短繊維とは10mm未満の長さに切断された繊維束である。比強度、比弾性率が高いことを要求される用途には、本実施形態におけるプリプレグのように強化繊維束が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も適用可能である。
プリプレグにおける単位面積あたりの強化繊維量(繊維目付)が25~3000g/mであってもよく、50~1000g/mであってもよく、75~120g/mであってもよく。
本実施形態においては、繊維目付が75~120g/mであるプリプレグを用いることにより、繊維強化複合材料のCAIを更に高めることができる。
プリプレグの厚みは、0.025~3.0mmであってもよく、0.05~1.0mmであってもよく、0.07~0.15mmであってもよく、0.07~0.12mmであってもよい。後述する本実施形態に係るプリプレグの製造方法においては、実施例に記載の式から算出されるプリプレグの厚みが上記の範囲となるように、強化繊維の繊維目付及び繊維密度並びに樹脂組成物の単位面積当たりの質量を調整することができる。
プリプレグにおける繊維含有率は、40~80質量%であってもよく、50~75質量%であってもよく、55~70質量%であってもよい。
プリプレグにおける樹脂含有率は、20~60質量%であってもよく、25~50質量%であってもよく、30~45質量%であってもよい。
本実施形態に係るプリプレグは、表面(表面層)のタックが、取り扱い性の観点から、3~30Nであってもよく、5~20Nであってもよく、7.5~20Nであってもよい。なお、プリプレグのタックとは、プリプレグ(幅25mm×長さ300mm)同士を重ね合わせて、真空圧着によりを密着させたものを試験片として、端部から引き剥がす(引き剥がし速度:50mm/min)ときの荷重を測定し、このときの測定値を指す。プリプレグのタックは、例えば、上述した(C)成分の種類及びその配合量を調整することによって、上記の範囲に設定することができる。
次に、ステップAで用意する本実施形態に係るプリプレグを製造する方法について説明する。
第1の実施形態として、強化繊維に、少なくとも(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む第1の樹脂組成物を含浸して強化繊維層を得るステップP1と、ステップP1で得られた強化繊維層の少なくとも一方の表面上に、少なくとも(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む第2の樹脂組成物からなる表面層を設けるステップP2と、を有する方法Iにより本実施形態に係るプリプレグを得ることができる。
第2の実施形態として、強化繊維に、少なくとも(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む第3の樹脂組成物を含浸するステップP3を有する方法IIにより、本実施形態に係るプリプレグを得ることができる。
図2及び図3は、本実施形態に係るプリプレグを製造する方法について説明するための模式断面図である。図2に示される方法は、上述した方法Iの一実施形態である。この方法では、例えば、強化繊維1を一方向に引き揃えた強化繊維束7を用意し(a)、強化繊維束7に上記(A)~(C)成分を含む第1の樹脂組成物2を含浸して強化繊維層3を形成し(b)、強化繊維層3の両面に上記(A)~(C)成分と(D)成分とを含む第2の樹脂組成物を含浸することにより表面層6aを形成することによりプリプレグ10が得られる(c)。
図3に示される方法は、上述した方法IIの一実施形態である。この方法では、例えば、強化繊維1を一方向に引き揃えた強化繊維束7を用意し(a)、強化繊維束7の両面に上記(A)~(D)成分を含む樹脂組成物を1回含浸することにより、繊維に含浸しなかった(D)成分4a及び4b並びに(A)~(C)成分を含む樹脂組成物2からなる表面層6aが形成され、プリプレグ11が得られる(b)。
強化繊維束に含浸する各樹脂組成物は、上記(A)~(C)成分及び必要に応じて他の成分、又は上記(A)~(D)成分及び必要に応じて他の成分を混練することにより調製できる。
樹脂組成物の混練方法は、特に限定されず、例えば、ニーダーやプラネタリーミキサー、2軸押出機などが用いられる。また、(D)成分などの粒子成分の分散性の点から、予めホモミキサー、3本ロール、ボールミル、ビーズミルおよび超音波などで、粒子を液状の樹脂成分に拡散させておくことが好ましい。更に、マトリックス樹脂との混合時や、粒子の予備拡散時等には、必要に応じて加熱・冷却、加圧・減圧してもよい。保存安定性の観点から、混練後は、速やかに冷蔵・冷凍庫で保管することが好ましい。
樹脂組成物を含浸させる方法としては、樹脂組成物をメチルエチルケトン、メタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、含浸させるウェット法、加熱により低粘度化し、含浸させるホットメルト法(ドライ法)等を挙げることができる。
ウェット法は、強化繊維を樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法である。ホットメルト法は、加熱により低粘度化した樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、又は一旦樹脂組成物を離型紙等の上にコーティングしてフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の両側又は片側から上記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。ホットメルト法は、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上皆無となるため好ましい。
方法Iの場合、強化繊維に第1の樹脂組成物を十分に浸透させる観点から、第1の樹脂組成物の80℃における粘度V1-80が、0.1~10Pa・s、1.0~10Pa・s、又は2~10Pa・sであってもよい。また、強化繊維への第2の樹脂組成物の浸透を抑制し、(D)成分が強化繊維間に入り込みにくくする観点から、第2の樹脂組成物の80℃における粘度V2-80が、5~240Pa・s、5~160Pa・s、又は5~80Pa・sであってもよい。
更に、V2-80/V1-80が、0.5~2400、0.5~160、0.5~40、2~10、又は4~6であってもよい。V2-80/V1-80がこのような範囲であると、(D)成分が強化繊維間に入り込みにくくなり、表面層6a,6bに(D)成分を残留させやすくなる。
方法IIの場合、第3の樹脂組成物の80℃における粘度V3-80が、5.0~125Pa・s、5.5~85Pa・s、又は6.0~45Pa・sであってもよい。V3-80がこのような範囲であると、第3の樹脂組成物を十分に繊維内に含浸させつつ、(D)成分を表面層6a,6bに残留させることが容易となる。
なお、樹脂組成物の80℃における粘度は、粘弾性測定装置として振動モード式のレオメーター(例えば、TAインスツルメント社製のARESレオメーター)を使用して、以下の測定手順及び測定条件で測定される値を指す。
(測定手順)
対向する治具(パラレルプレート)の間に樹脂組成物を挟み込んで固定し、回転運動の往復により周期的なひずみ(角度変化)を加え、一定の昇温速度で樹脂組成物を加熱しながら温度と粘度の関係を測定し、80℃における粘度を抽出する。なお、測定条件は以下のとおりである。また、各温度における粘度は、応答としてのせん断応力の波形における入力波形と出力波形の位相差から計測する。
<測定条件>
パラレルプレート:アルミ製、直径25mm、対向間隔1mm
振動周波数:10rad/sec
測定温度:30℃~190℃
ひずみ量:5%
昇温速度:2℃/min
各樹脂組成物の80℃における粘度は、(B)成分(エポキシ樹脂)の添加量、(C)成分(硬化剤)の添加量、(D)成分(ポリアミド樹脂粒子)の添加量によって調整することができる。例えば、(B)成分の添加量を減少すること、(C)成分の添加量を増加すること、(D)成分の添加量を増加すること、によって粘度が上昇する傾向にある。
プリプレグが複数積層されたプリプレグ積層体を用意する方法としては、プリプレグを重ね合わせて、真空圧着により密着させる方法、自動積層装置を用いる方法、ローリング装置を使用して、プリプレグを丸棒型の芯金に巻き付ける方法などが挙げられる。
ステップBでは、プリプレグ積層体に圧力を付与しながら、樹脂組成物を加熱して樹脂硬化してもよい。熱及び圧力を付与する方法としては、例えば、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法が挙げられる。ラッピングテープ法は、マンドレル等の芯金にプリプレグを捲回して、繊維強化複合材料製の管状体を成形する方法であり、ゴルフシャフト、釣り竿等の棒状体を作製する際に好適な方法である。より具体的には、マンドレルにプリプレグを捲回し、プリプレグの固定及び圧力付与のため、プリプレグの外側に熱可塑性フィルムからなるラッピングテープを捲回し、オーブン中で樹脂を加熱硬化させた後、芯金を抜き取って管状体を得る方法である。
内圧成型法は、熱可塑性樹脂製のチューブ等の内圧付与体にプリプレグを捲回したプリフォームを金型中にセットし、次いで内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与すると同時に金型を加熱せしめ、成形する方法である。この方法は、ゴルフシャフト、バッド、テニスやバドミントン等のラケットの如き複雑な形状物を成形する際に好ましく用いられる。
航空機用途では、繊維強化複合材料の十分な性能を発揮すること、強度、弾性率などの機械特性のばらつきが少ないことが求められるため、オートクレーブ成形法が用いられることが多い。オートクレーブ成形法によれば、プリプレグ積層体を加圧しながら加熱硬化することにより、繊維強化複合材料中の空隙などの欠陥を排除することが可能であり、また精密な温度、圧力調整ができることから、機械物性、耐熱性などのばらつきの小さい成形物を得ることができる。なお、最近では、OoA(Out of Autoclave、脱オートクレーブ成形法)による航空機部材の低コスト化の検討が進んでいるが、本実施形態に係る繊維強化複合材料の製造方法によれば、そのようなオートクレーブ成形法以外の方法を適用する場合であっても、機械物性、耐熱性などのばらつきの小さい成形物を得ることができる。特に、本実施形態に係るプリプレグの表面(表面層)のタックが上述した条件を満たす場合、積層したプリプレグ間の空気が抜けやすくなることで積層作業性が向上し、成形後の繊維強化複合材料における樹脂層厚みをより均一に確保しつつポリアミド粒子を均一に分散させることが容易となる。これにより、OoA成形のような真空のみによる成形であっても、上述した効果が得られやすくなる。
図4は、硬化プロファイルの一例を示す模式図である。図中、Mは、表面層を構成する組成中で測定される(D1)成分の融解温度(℃)を示し、Mは、表面層を構成する組成中で測定される(D2)成分の融解温度(℃)を示す。図4に示される硬化プロファイルは、上述したプリプレグを複数積層した積層体を、所定の硬化温度CP(℃)まで所定の昇温速度で昇温し(図中のラインa)、所定の硬化温度CP(℃)で所定時間(T-T)保持することにより樹脂硬化し(図中のラインb)、その後、降温する(図中のラインc)工程が示されている。
上記硬化温度CP(℃)は、上記(A)成分~(C)成分を含む樹脂組成物2が十分硬化されるように、(C)成分の種類や(A)成分及び(B)成分の配合割合等に応じて適宜設定される。ここでの樹脂組成物の硬化は、本硬化と称されるものであってもよく、例えば、硬化率が90%以上となってもよく、95%以上となってもよい。また、前記硬化の前に、樹脂組成物の粘度調節を主な目的として仮硬化を行ってもよい。所定の硬化条件で硬化した樹脂組成物の硬化率は、下記式から算出される値を意味する。
硬化率(%)=(ΔH0-ΔH)×100/ΔH0
[上記式中、ΔH0は、示差熱量計(DSC)により測定される、未硬化の樹脂組成物を硬化させたときの発熱量を示し、ΔHは、示差熱量計(DSC)により測定される、所定の硬化条件で硬化した樹脂組成物を加熱したときの残存発熱量を示す。]
硬化温度CP(℃)としては、例えば、140~200℃の間の温度を設定することができ、生産性およびCAIの向上の観点から、160~200℃、170~195℃、又は180~190℃の間の温度を設定してもよい。なお、硬化温度とは、プリプレグの温度を指す。
本実施形態において、CAIの向上の観点から、CPは、M℃より10~80℃高い温度であってもよく、10~65℃高い温度であってもよく、10~45℃高い温度であってもよい。
また、CAIの向上の観点から、M℃は、CPより5~80℃高い温度であってもよく、5~50℃高い温度であってもよく、5~40℃高い温度であってもよい。
本実施形態においては、表面層を構成する組成中におけるポリアミド樹脂粒子の融解温度を測定するステップSを有し、ステップSで得られたM及びMに基づき、M<CP<Mの関係、更には上記の条件を満たすようにステップBにおける硬化温度CPを設定してもよいし、あらかじめ測定された表面層を構成する組成中におけるポリアミド樹脂粒子の融解温度M及びMに基づき、M<CP<Mの関係、更には上記の条件を満たすようにステップBにおける硬化温度CPを設定してもよい。また、硬化剤の活性化温度等に基づき、ステップBにおける硬化温度CPを設定し、M<CP<Mの関係、更には上記の条件を満たすように、第1のポリアミド樹脂粒子及び第2のポリアミド樹脂粒子の選定、並びに、表面層を構成する組成を調整してもよい。
上記硬化温度CP(℃)に至るまでの昇温速度は、0.1~5.0℃/分であってもよく、0.3~3.0℃/分であってもよい。M(℃)未満までの昇温温度とM(℃)~CP(℃)までの昇温速度は異なっていてもよいが、本実施形態においては、少なくともM~CPまでの間が上記範囲内であることが好ましい。
本実施形態においては、M(℃)未満までの昇温速度は、0.1~10.0℃/分であってもよく、0.1~5.0℃/分であってもよく、0.3~3.0℃/分であってもよい。
加熱時の圧力は、0.2~1.0MPaであってもよく、0.3~0.8MPaであってもよい。
加熱後、-0.3~-3.0℃/分の速度で降温することができる。
こうして繊維強化複合材料が得られる。
図5は、本発明に係る繊維強化複合材料について説明するための模式断面図である。図5に示される繊維強化複合材料100は、強化繊維1と、樹脂硬化物8と、ポリアミド樹脂粒子4a、4bとを含んでなる。繊維強化複合材料100は、上述した本実施形態の製造方法、すなわちプリプレグ10,11,12のいずれかを複数積層し、加圧下で加熱することにより得ることができる。なお、図5には各ポリアミド樹脂粒子がプリプレグの表面層におけるものと同様に示されているが、それらは加圧、加熱によって融解し、流動や粒子同士の結合により変形したものになる。
繊維強化複合材料において、強化繊維層間の樹脂硬化物に含まれるポリアミド樹脂の含有量Cと、強化繊維層内に含まれるポリアミド樹脂の含有量Cとの合計量に占めるCの容量割合{C/(C+C)}×100は、70容量%以上であることが好ましく、80容量%以上であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂の含有量は、繊維強化複合材料中の任意の強化繊維が伸びる方向に直交する面で繊維強化複合材料を切断したときの切断面を顕微鏡観察により分析し、画像解析を行うことでポリアミド樹脂の分布を観察することにより求められる。
本実施形態の方法により得られる繊維強化複合材料は、ASTM D7136及びD7137に従い測定した衝撃後圧縮強度(CAI)が、270MPa以上、280MPa以上、295MPa以上、310MPa以上、320MPa以上、又は330MPa以上であってもよい。
本実施形態の方法により得られる繊維強化複合材料は、ASTM D2344に従い測定した層間せん断強度(ILSS)が85MPa以上であってよく、90MPa以上であってよい。
本実施形態の方法により得られる繊維強化複合材料は、鉄道車両、航空機、建築部材や、その他一般産業用途に好適に用いられる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。各種物性の測定は以下の方法によった。結果を表1~2に示す。
(実施例1~9、比較例1)
各実施例、比較例について、表1~2に示す割合(質量部)で原料を加熱混合し、ポリアミド樹脂粒子を含有しない第1の樹脂組成物(表中の「第1」の組成)と、ポリアミド樹脂粒子を含有する第2の樹脂組成物(表中の「第2」の組成)を得た。なお、ここで用いた原料は以下に示す通りである。
(A)成分:ベンゾオキサジン樹脂
F-a:ビスフェノールF-アニリン型(F-a型ベンゾオキサジン、四国化成(株)製)
(B)成分:エポキシ樹脂
2021P:3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド 2021P」、(株)ダイセル製)
(C)成分:硬化剤
TDP:ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(東京化成(株)製)、分子量:109、水酸基当量:218.3(g/eq)
Bis-F:ビスフェノールF(本州化学工業社製)、分子量:100、水酸基当量:200.2(g/eq)
BPF:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル製)、分子量:175、水酸基当量:350.4(g/eq)
(D)成分:ポリアミド樹脂粒子
PA12:ポリアミド12樹脂粒子(商品名「ベストジント2159」、平均粒子径10μm、ダイセル・エボニック株式会社製)
PA1010:ポリアミド1010樹脂粒子(商品名「VESTAMID Terra DS22」、平均粒子径40~50μm、ダイセル・エボニック製)
PA6:ポリアミド6樹脂粒子(商品名「Orgasol 1002D」、平均粒子径20μm、アルケマ株式会社製)
(E)成分:靭性向上剤
YP70:フェノキシ樹脂(YP-70、新日鐵住金化学株式会社製)
<ポリアミド樹脂粒子の融点の測定>
上記の各ポリアミド樹脂粒子を、示差熱量計(DSC)を用いて、25℃から10℃/分の速度で昇温し、得られた吸熱ピークのトップの温度をポリアミド樹脂粒子の融点とした。ポリアミド12樹脂粒子の融点は176℃であり、ポリアミド1010樹脂粒子の融点は189℃及び199℃であり、ポリアミド6樹脂粒子の融点は218℃であった。
<第2の樹脂組成物中でのポリアミド樹脂粒子の融解温度の測定>
得られた第2の樹脂組成物を、示差熱量計(DSC)を用いて、25℃から10℃/分の速度で昇温し、得られた吸熱ピークのトップの温度を第2の樹脂組成物中でのポリアミド樹脂粒子の融解温度とした。結果を表1~2に示す。なお、ポリアミド樹脂粒子がポリアミド1010樹脂粒子の場合(比較例2)には175℃と182℃に吸熱ピークのトップが観測されたが、低いほうの175℃をポリアミド1010樹脂粒子の融解温度とした。
<樹脂組成物の80℃における粘度>
得られた第1及び第2の樹脂組成物について、粘弾性測定装置として振動モード式のレオメーター(TAインスツルメント社製のARESレオメーター)を使用して、以下の測定手順及び測定条件で80℃における粘度を測定した。結果を表1~2に示す。
(測定手順)
対向する治具(パラレルプレート)の間に樹脂組成物を挟み込んで固定し、回転運動の往復により周期的なひずみ(角度変化)を加え、一定の昇温速度で樹脂組成物を加熱しながら温度と粘度の関係を測定し、80℃における粘度を抽出した。なお、測定条件は以下のとおりである。また、各温度における粘度は、応答としてのせん断応力の波形における入力波形と出力波形の位相差から計測した。
<測定条件>
パラレルプレート:アルミ製、直径25mm、対向間隔1mm
振動周波数:10rad/sec
測定温度:30℃~190℃
ひずみ量:5%
昇温速度:2℃/min
<プリプレグの製造>
得られた第1及び第2の樹脂組成物をそれぞれ離型紙上に70~100℃で塗布し、20g/m又は25g/mの第1の樹脂フィルムと、13g/m又は17g/mの第2の樹脂フィルムとを得た。得られた第1の樹脂フィルムを、一方向に引き揃えた炭素繊維の上下から供給して繊維間に含浸し、炭素繊維層を形成した。続いて、第2の樹脂フィルムを炭素繊維層の上下からラミネートして表面層を形成し、プリプレグを作製した。なお、実施例1、3、5及び6並びに比較例1では、繊維目付100g/mの炭素繊維と、20g/mの第1の樹脂フィルム及び13g/mの第2の樹脂フィルムとを組み合わせて用い、実施例2及び4では、繊維目付150g/mの炭素繊維と、25g/mの第1の樹脂フィルム及び17g/mの第2の樹脂フィルムとを組み合わせて用いた。
なお、表1~2に、得られたプリプレグの単位面積当たりの炭素繊維量(繊維目付)、下記式に基づき算出される樹脂含有率、及びプリプレグの厚み、並びに、下記の方法によって測定されたタックを示す。
(樹脂含有率)
以下の手順で樹脂含有率を算出した。
(i)プリプレグの質量Pwを測定した。
(ii)その後、プリプレグをアセトン又はトルエンなどの溶剤中に浸して樹脂部分を溶解し、炭素繊維のみを取り出した。
(iii)取り出した炭素繊維の質量Cwを測定した。
(iv)下記式に従って、樹脂含有率を算出した。
樹脂含有率(%)=(Pw-Cw)×100/Pw
(プリプレグの厚み)
以下の式から算出した繊維分の厚みと樹脂分の厚みとを合計し、プリプレグの厚みとした。なお、表中には、繊維密度:1.78g/cm、樹脂密度:1.20g/cmとして算出した値を示す。
繊維分の厚み(mm)=[繊維目付(g/m)×10-6]/[繊維密度(g/cm)×10-3
樹脂分の厚み(mm)=[単位面積当たりの第1及び第2の樹脂組成物の合計質量(g/m)×10-6]/[樹脂密度(g/cm)×10-3
(タック)
まず、得られたプリプレグから、幅25mm、長さ300mm、長さ方向が繊維配向方向と一致するようにタック試験用プリプレグを2枚切り出した。次に、離型紙を剥がしたプリプレグ同士を重ね合わせ、金型に挟み、真空圧着(5分以上)によりプリプレグを密着させることにより、タック試験片を得た。なおプリプレグ同士を重ね合わせる際、片側の長さ50mmの範囲には離型紙を挟み込んで、プリプレグ同士が密着しないようにして、この部分を掴み部とした。タック試験片の一対の掴み部を、引張試験機のチャックにそれぞれ固定して、引張速度50mm/minで引き剥がし、試験開始1分後から1分間隔で時間-荷重記録チャート上に3本の線を時間軸に対して垂直に引き、各々の線の間(1分間)の最大荷重値と最小荷重値を読み取った。読み取った各々の最大荷重値と最小荷重値の合計6点の平均値をその試験片のタックとした。
<CAIの測定>
得られたプリプレグを、[+45°/0°/-45°/90°]6s構成で、擬似等方的に48プライ(層)(繊維目付が100g/mの場合)、又は、[+45°/0°/-45°/90°]4s構成で、擬似等方的に32プライ(層)(繊維目付が150g/mの場合)積層し、オートクレーブにて、圧力0.6MPa、室温から2.0℃/分で185℃まで昇温した後、同温度で2時間加熱硬化し、繊維強化複合材料を得た。この繊維強化複合材料について、ASTM D7136及びD7137に従い、縦150mm×横100mmのサンプルを切り出し、サンプルの中心部に6.7J/mmの落錘衝撃を与え、衝撃後圧縮強度(CAI)を求めた。結果を表1~2に示す。
<層間せん断強度(ILSS)の測定>
得られたプリプレグを、[0°]構成で、一方向材として32プライ(層)(繊維目付が100g/mの場合)又は26プライ(層)(繊維目付が150g/mの場合)積層し、オートクレーブにて、圧力0.6MPa、室温から2.0℃/分で185℃まで昇温した後、同温度で2時間加熱硬化し、繊維強化複合材料を得た。この繊維強化複合材料について、ASTM D2344に従い、長さ40mm(繊維方向)×幅8mmのサンプルを切り出し、ショートビーム曲げせん断試験により層間せん断強度(ILSS)を求めた。結果を表1~2に示す。
Figure 2023120708000009
Figure 2023120708000010
1…強化繊維、2…樹脂組成物、3…強化繊維層、4a…第1のポリアミド樹脂粒子、4b…第2のポリアミド樹脂粒子、5…樹脂組成物、6a,6b…表面層、7…強化繊維束、8…樹脂硬化物、10,11…プリプレグ、100…繊維強化複合材料。

Claims (12)

  1. 強化繊維と、前記強化繊維の繊維間に含浸された、(A)ベンゾオキサジン樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び、(C)分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤を含有する樹脂組成物と、を含む強化繊維層と、
    前記強化繊維層の少なくとも一方の表面上に設けられた、(A)ベンゾオキサジン樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)分子中に2以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤、及び、(D)平均粒子径が5~50μmのポリアミド樹脂粒子を含有する表面層と、を備え、
    前記ポリアミド樹脂粒子として、(D1)第1のポリアミド樹脂粒子、及び、(D2)前記表面層を構成する組成中で測定される融解温度が前記第1のポリアミド樹脂粒子よりも高い第2のポリアミド樹脂粒子を含む、プリプレグ、
    が複数積層されたプリプレグ積層体を用意するステップAと、
    前記プリプレグ積層体を加熱して樹脂硬化するステップBと、を備え、
    前記(D1)第1のポリアミド樹脂粒子の前記表面層を構成する組成中で測定される融解温度をM℃、前記(D2)第2のポリアミド樹脂粒子の前記表面層を構成する組成中で測定される融解温度をM℃、及び、前記ステップBにおける硬化温度をCP℃としたときに、M<CP<Mの関係を満たす、繊維強化複合材料の製造方法。
  2. 前記プリプレグが、前記第2のポリアミド樹脂粒子として、ポリアミド6樹脂粒子を含む、請求項1に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  3. 前記Mが150~170℃であり、前記Mが190~210℃である、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  4. 前記プリプレグにおける繊維目付が75~120g/mである、請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  5. 前記表面層は、前記(A)成分と前記(B)成分との合計を100質量部としたときに、前記(A)成分を65~80質量部、前記(B)成分を20~35質量部、前記(C)成分を4~15質量部、及び前記(D)成分を15~45質量部含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  6. 前記表面層は、前記(A)成分と前記(B)成分との合計を100質量部としたときに、前記(C)成分として、分子量が150~400である硬化剤を4~8質量部含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  7. 前記プリプレグが、
    前記樹脂組成物を前記強化繊維に含浸して前記強化繊維層を得るステップP1と、
    ステップP1で得られた前記強化繊維層の少なくとも一方の表面上に前記表面層を設けるステップP2と、を経て得られたものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  8. 強化繊維と、前記強化繊維の繊維間に含浸された、(A)ベンゾオキサジン樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び、(C)分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤を含有する樹脂組成物と、を含む強化繊維層と、
    前記強化繊維層の少なくとも一方の表面上に設けられた、(A)ベンゾオキサジン樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)分子中に2以上のフェノール性水酸基を有する硬化剤、及び、(D)平均粒子径が5~50μmのポリアミド樹脂粒子を含有する表面層と、を備え、
    前記ポリアミド樹脂粒子として、(D1)第1のポリアミド樹脂粒子、及び、(D2)前記表面層を構成する組成中で測定される融解温度が前記第1のポリアミド樹脂粒子よりも高い第2のポリアミド樹脂粒子を含み、
    前記第2のポリアミド樹脂粒子として、ポリアミド6樹脂粒子を含む、プリプレグ。
  9. 前記(D1)第1のポリアミド樹脂粒子の前記表面層を構成する組成中で測定される融解温度が150~170℃であり、前記(D2)第2のポリアミド樹脂粒子の前記表面層を構成する組成中で測定される融解温度が190~210℃である、請求項8に記載のプリプレグ。
  10. 繊維目付が75~120g/mである、請求項8又は9に記載のプリプレグ。
  11. 前記表面層は、前記(A)成分と前記(B)成分との合計を100質量部としたときに、前記(A)成分を65~80質量部、前記(B)成分を20~35質量部、前記(C)成分を4~15質量部、及び前記(D)成分を15~45質量部含有する、請求項8~10のいずれか一項に記載のプリプレグ。
  12. 前記表面層は、前記(A)成分と前記(B)成分との合計を100質量部としたときに、前記(C)成分として、分子量が150~400である硬化剤を4~8質量部含有する、請求項8~11のいずれか一項に記載のプリプレグ。
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