JP2023119507A - マルチビーム半導体レーザ素子およびレーザ装置 - Google Patents

マルチビーム半導体レーザ素子およびレーザ装置 Download PDF

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Abstract

Figure 2023119507000001
【課題】マルチビーム型半導体レーザ素子の複数のビームの出射方向(光軸)の相対差を抑制する。
【解決手段】マルチビーム半導体レーザ素子100は、端面発光型であり、複数のビームを出射する。複数のレーザ共振器140_1~140_nは、半導体基板110上に第1方向(x方向)に隣接して集積化される。複数のレーザ共振器140_1~140_nのそれぞれは、第1方向に直交する第2方向に伸びるストライプ型の電流狭窄構造を有する。複数のレーザ共振器140_1~140_nそれぞれの延在方向D1~Dnは、少なくともマルチビーム半導体レーザ素子の出射端面側のある領域において非並行である。
【選択図】図5

Description

本開示は、マルチビーム半導体レーザ素子に関する。
高出力な端面発光型レーザとして、複数のリッジストライプ型のレーザ共振器がモノリシックに集積化されるマルチビーム半導体レーザ素子が提案されている。このようなマルチビーム型半導体レーザ素子はそれぞれのリッジ部を電気的にアイソレーションして実装することで多ビームの独立駆動が可能なものもある。
上述したマルチビーム半導体レーザ素子では、複数のビーム間で、波長、偏光角、発光効率、光出力といった特性の相対差を抑えることが要求される。
特性相対差を生じさせる要因のひとつとしては、半導体レーザをサブマウントに実装した際に受ける様々な応力であると考えられている。たとえば、特許文献1では、半導体チップとサブマウントとの組み立て時に、半導体チップ側の電極材および半導体材料と、サブマウント側のはんだ材およびサブマウント材との熱膨張係数の違いによって生じる応力がリッジ部に及ぶことにより偏光角特性不良が発生するという問題が指摘されている。偏光角特性とは、エミッタから出射する光の偏波の角度の特性をいう。
特許文献1には、偏光角特性のビーム間の相対差を抑制する技術が開示される。具体的には、リッジ部両脇に溝を挟んで設けられたバンク部上でサブマウント側のはんだ材と接合させることにより、リッジ部に直接はんだ材が接合することを回避し、はんだ材からの応力による偏光角回転および偏光角相対差を抑制している。この構造を、リッジ浮き構造とも称する。
特開2014-22481号公報 特開2010-245207号公報 特開2010-080867号公報
本発明者は、リッジ浮き構造について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
リッジ浮き構造を有するレーザ装置は、複数のビームの出射角が揃わないという問題がある。具体的には、複数のレーザ共振器から出射されるビームの光軸が、チップの出射端面と垂直とならずに、チップの中心方向を向いて傾いてしまう現象が起きることが分かった。なお、同様の問題は、リッジ浮き構造とは異なるレーザ装置において生じうる可能性もある。なお、この問題を、当業者における共通の技術的な知見と捉えてはならず、本発明者が独自に認識したものである。
本開示のある態様はかかる状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、複数のビームを同一方向に出射可能な、言い換えると、複数のビームの出射方向(光軸)の相対差を抑制したマルチビーム型半導体レーザ素子の提供にある。
本開示のある態様は、端面発光型のマルチビーム半導体レーザ素子である。マルチビーム半導体レーザ素子は、半導体基板上に第1方向に隣接して集積化された複数のレーザ共振器を備える。複数のレーザ共振器のそれぞれは、第1方向と直交する第2方向に伸びるストライプ型の電流狭窄構造を有する。複数のレーザ共振器それぞれの延在方向は、少なくとも出射端面側の第1領域において非並行である。なお、本開示における第1領域とは、共振器方向に設けられレーザビームの出射方向を調整する機能を有する領域のことでありうる。詳細は後述するが、例えば端面付近に形成されているリッジストライプ構造の共振器方向に伸びる角度やストライプ幅等を調整することで上記機能を実現する領域が、この第1領域に対応しうる。
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
本開示のある態様によれば、複数のビームの出射方向の相対差を抑制できる。
マルチビーム半導体レーザ素子の概略斜視図である。 マルチビーム半導体レーザ素子の断面図である。 図3(a)、(b)は、マルチビーム半導体レーザ素子を備えるレーザ装置の製造工程を説明する図である。 図4(a)~(d)は、図3のレーザ装置における2つのビームの出射方向の差を説明する図である。 実施例1に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 図6(a)、(b)は、図5のマルチビーム半導体レーザ素子によるマルチビームの出射方向の均一化を説明する図である。 図7(a)、(b)は、シミュレーションのモデルを説明する図である。 図8(a)~(d)は、比較構成における光の強度分布のシミュレーション結果を示す図である。 図9(a)、(b)は、実施例1に対応する導波路の光の強度分布のシミュレーション結果を示す図である。 実施例2に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 図11(a)~(c)は、レーザ共振器の延在方向を説明する図である。 実施例3に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 図13(a)、(b)は、図5のマルチビーム半導体レーザ素子および図12のマルチビーム半導体レーザ素子のウェハの一部を示す図である。 実施例4に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 実施例5に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 実施例6に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 図17(a)、(b)は、図16のマルチビーム半導体レーザ素子の水平方向(x方向)のNFPおよびFFPのシミュレーション結果を示す図である。 実施例7に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 実施例8に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 実施例9に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 実施例10に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 実施例11に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 実施例12に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。 図24(a)、(b)は、図23のマルチビーム半導体レーザ素子におけるビームの水平方向(x方向)のNFPおよびFFPのシミュレーション結果を示す図である。 図25(a)、(b)は、変形例に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
一実施形態に係る端面発光型のマルチビーム半導体レーザ素子は、半導体基板上に第1方向に隣接して集積化された複数のレーザ共振器を備える。複数のレーザ共振器のそれぞれは、第1方向と直交する第2方向に伸びるストライプ型の電流狭窄構造を有する。複数のレーザ共振器それぞれの延在方向は、少なくとも出射端面側の第1領域において非並行である。
チップが最終製品の状態においてそのレーザ共振器に応力を受ける場合、レーザ共振器の導波路に、応力に起因する屈折率変化が生ずる。応力がチップの面内で不均一である場合、レーザ共振器の導波路内の屈折率変化によって、光の導波方向は、屈折率が高い方向に曲がることとなる。一実施形態では、チップが最終製品の状態において応力を受ける場合において、複数のレーザ共振器からのビームの出射方向の相対差を抑制している。これは、複数のレーザ共振器それぞれの導波路における屈折率分布を考慮して、各レーザ共振器の延在方向を位置に応じて個別に設計することで達成できる。
レーザ共振器の延在方向は、たとえば、レーザ共振器の幅方向(第1方向)の中心線を考えたときに、その中心線の向く方向と把握してもよい。中心線が曲線を含む場合、その接線方向と把握してもよい。レーザ共振器の延在方向は、レーザ共振器の導波路の一方の側方の境界の延在方向と、他方の側方の境界の延在方向の平均として把握してもよい。
一実施形態において、ストライプ型の電流狭窄構造は、リッジ構造であってもよいし、埋め込み構造(埋め込みリッジ構造ともいう)であってもよい。
一実施形態において、第1領域において、複数のレーザ共振器それぞれの幅は一定であってもよい。
一実施形態において、第1領域において、複数のレーザ共振器のそれぞれは、出射端面に近づくほど幅が広がるテーパー形状を有していてもよい。一実施形態において、第1領域において、複数のレーザ共振器のそれぞれは、出射端面に近づくほど幅が狭まるテーパー形状を有していてもよい。
一実施形態において、複数のレーザ共振器のそれぞれは、マルチビーム半導体レーザ素子の第1端面における幅と第2端面における幅が等しくてもよい。
一実施形態において、複数のレーザ共振器の延在方向は、少なくとも1回、変化してもよい。複数のレーザ共振器のそれぞれは、マルチビーム半導体レーザ素子の第1端面における第1方向の位置と第2端面における第1方向の位置が同一であってもよい。なお、本構成の詳細は図13を用いて後述されるが、第1方向の位置とは、素子を構成するチップの一つの端部を基準とした場合の前記共振器が形成されている場所を示している。具体的には、第1方向におけるチップの一つの端部から共振器中心までの距離が、第一端面側と第二端面側とで同じ距離になっている。製造工程において、複数のチップがウェハから切り出される際に、第2方向に隣接する2個のチップの境界(劈開面)において、レーザ共振器が連続することととなり、劈開面の第2方向に対するズレに対する許容度を改善できる。
一実施形態において、第1領域に対して出射端面側に隣接する第2領域において、複数のレーザ共振器の延在方向は、出射端面に対して垂直であってもよい。
一実施形態において、第2領域の第2方向の長さは、第1領域の第2方向の長さよりも短くてもよい。第2領域の長さを十分に短く取ることで、ビームは、第1領域の延在方向に応じた方向に出射されることとなる。
一実施形態において、複数のレーザ共振器は、第1レーザ共振器および第2レーザ共振器を含んでもよい。第1レーザ共振器および第2レーザ共振器は、チップの第1方向に関する中心線に対して線対称に形成されてもよい。応力が、チップの中心線に対象に生ずる場合に、マルチビーム半導体レーザ素子の設計を簡略化できる。
一実施形態において、レーザ共振器の延在方向を、第2方向となす角度で定義するとき、複数のレーザ共振器それぞれの角度は、当該レーザ共振器が半導体基板の第1方向に関する中心線から遠いほど、大きくてもよい。
一実施形態に係るレーザ装置は、マルチビーム半導体レーザ素子のチップと、マルチビーム半導体レーザ素子を支持する支持基板と、を備えてもよい。マルチビーム半導体レーザ素子のチップの熱膨張係数と、支持基板の熱膨張係数が異なってもよい。
(実施形態)
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示の本質的なものであるとは限らない。
図面に記載される各部材の寸法(厚み、長さ、幅など)は、理解の容易化のために適宜、拡大縮小されている場合がある。さらには複数の部材の寸法は、必ずしもそれらの大小関係を表しているとは限らず、図面上で、ある部材Aが、別の部材Bよりも厚く描かれていても、部材Aが部材Bよりも薄いこともあり得る。
はじめに、マルチビーム半導体レーザ素子における複数のビームの出射方向の違いについて説明する。
図1は、マルチビーム半導体レーザ素子100の概略斜視図である。マルチビーム半導体レーザ素子100は、端面発光型であり、第1方向(図中、x方向)に隣接する複数n個(n≧2)のエミッタ102_1~102_nから、複数のビームBM1~BMnを出射可能に構成される。1個のビームに対応する構成や機能を、チャンネルとも称する。図1には、n=2の構成が例示的に示される。
マルチビーム半導体レーザ素子100は、n個ビームに対応するn個のレーザ共振器140_1~140_nを備え、ひとつの半導体基板110上にモノリシックに形成されている。n個のレーザ共振器140_1~140_nは、第2方向(図中、y方向)に伸びるストライプ状の電流狭窄構造を有する。電流狭窄構造としては、リッジ構造や、埋め込み構造(埋め込みリッジ構造)などを採用することができる。
図2は、マルチビーム半導体レーザ素子100の断面図である。図2のマルチビーム半導体レーザ素子100は、リッジ構造を有する。マルチビーム半導体レーザ素子100は、n=2個のエミッタ102_1,102_2を備え、2本のビームを出射可能である。
マルチビーム半導体レーザ素子100は、半導体基板110、多層構造部120、絶縁膜134、p側電極138、n側電極139を備える。多層構造部120は、たとえばn型クラッド層122、ガイド層及び量子井戸層を含む発光層124(光導波路コア層ともいう)、p型クラッド層126、p型コンタクト層128を含む。各層は組成やドーピング濃度によってさらに細かく分けられる。多層構造部120は、たとえばMOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、有機金属化学気相成長法)を用いたエピタキシャル成長により形成される。
多層構造部120には、リッジストライプ構造を有するレーザ共振器(レーザ構造)140が形成される。リッジストライプ構造は、たとえばフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いることにより、p型コンタクト層128およびp型クラッド層126を部分的に除去することにより形成することができる。各p型クラッド層126にリッジ構造を形成する際に各p型クラッド層126にバンク構造を形成してもよい。各バンクは、各リッジ構造の両側に設けられてもよいし、片側のみに設けられてもよい。あるいはバンク構造は省略されてもよい。
複数のレーザ共振器140を独立に制御可能としたい場合には、分離溝150が形成されていてもよい。
p型コンタクト層128の上面は、SiOなどの絶縁膜134によって覆われる。絶縁膜134は、レーザ共振器140の部分において開口が設けられている。絶縁膜134の上層に形成されるp側電極138は、絶縁膜134の開口を介して、p型コンタクト層128と電気的に接続される。また半導体基板110の裏面には、n側電極139が形成され、p側電極138とn側電極139の間で通電される。
なお、図2のマルチビーム半導体レーザ素子100の断面構造は例示であって、本開示をいかなる意味においても限定するものではない。
以上がマルチビーム半導体レーザ素子100の基本構造である。マルチビーム半導体レーザ素子100は、支持基板上に実装されレーザ装置となる。
図3(a)、(b)は、マルチビーム半導体レーザ素子100を備えるレーザ装置200の製造工程を説明する図である。レーザ装置200は、図1に示したマルチビーム半導体レーザ素子100と、マルチビーム半導体レーザ素子100を支持する支持基板210を備える。支持基板210はサブマウントとも称される。図3(a)、(b)において、マルチビーム半導体レーザ素子100は、図2とは天地反転した向きで示されている。
図3(a)は、ダイボンディング前の状態を、図3(b)は、ダイボンディング後の状態を示す。支持基板210の表面には、はんだ212が塗布される。マルチビーム半導体レーザ素子100は、p側電極138がはんだ212と接触する向きで、支持基板210に実装される。
支持基板210は、放熱性に優れた材料を選ぶことができる。たとえばGaAsの半導体基板110を備えたマルチビーム半導体レーザ素子100のチップを、AlNの支持基板210に実装することを考える。GaAsの熱膨張係数はAlNのそれより大きいため、約400℃でのはんだ材との溶着工程を経たのち、冷却過程でGaAsの方がAlNよりも収縮する。図3(b)において、矢印300は、半導体基板110の収縮を模式的に表しており、矢印302は、支持基板210の収縮を模式的に表している。
半導体基板110および支持基板210の異なる収縮の結果、レーザ共振器140であるリッジ構造には、矢印304で示すような剪断応力が加わることとなる。この剪断応力は、半導体基板110の中心線112に近いほど小さく、外側に近づくほど大きくなる。
図4(a)~(d)は、図3のレーザ装置200における2つのビームの出射方向の差を説明する図である。図4(a)には、レーザ装置200が示される。図4(a)のレーザ装置200は図3(b)のレーザ装置200を天地反転している。マルチビーム半導体レーザ素子100のチップの中心位置をx、レーザ共振器140_1、140_2それぞれの中心位置をx、xとする。
図4(b)は、レーザ共振器140_1,140_2それぞれの導波路内の屈折率分布を示す図である。レーザ共振器140_1の導波路では、チップの中央xに近いほど、つまり紙面右方向ほど、屈折率が高くなる。レーザ共振器140_2の導波路では、チップ中央xに近いほど、つまり紙面左方向ほど、屈折率が高くなる。
導波路内の屈折率分布の影響で、導波路内を導波する光は、屈折率のより高いチップ中央方向に偏ることとなる。図4(c)には、2つのレーザ共振器140_1,140_2が生成するビームBM1,BM2のニアフィールドパターン(NFP)が示される。NFPは、マルチビーム半導体レーザ素子100の出射端面におけるx方向の強度分布を表す。屈折率分布の影響によって、レーザ共振器140_1が生成するビームBM1のNFPのピークは、xよりもx側にシフトしている。同様に、レーザ共振器140_2が生成するビームBM2のNFPのピークも、xよりもx側にシフトしている。
図4(d)には、2つのレーザ共振器140_1,140_2が生成するビームBM1,BM2のファーフィールドパターン(FFP)が示される。FFPは、横軸を水平方向の出射角θhとして示している。各導波路内の光の偏りの結果、各ビームは、チップの出射端面に対して、異なる斜め方向(非垂直)に出射することになる。つまり複数のビームそれぞれの出射角が異なる状況が生じる。
なお、ここで説明した、複数のビームの出射方向の違いの問題、ならびにそのメカニズムを、当業者の一般的な認識と捉えてはならない。
以下では、複数のビーム間の出射方向の違いを抑制する技術について、いくつかの実施例にもとづいて説明する。
(実施例1)
図5は、実施例1に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Aの平面図である。マルチビーム半導体レーザ素子100Aは、半導体基板110上に第1方向(x方向)に隣接して集積化された複数のレーザ共振器140_1~140_nを備える。ここではn=2とする。上述したように、複数のレーザ共振器140_1~140_nのそれぞれは、第1方向(x方向)と直交する第2方向(y方向)に伸びるストライプ型の電流狭窄構造を有する。S1は、マルチビーム半導体レーザ素子100Aの出射端面を示し、S2は、出射端面と反対側の面を示す。
電流狭窄構造を有するレーザ共振器140のストライプは、マクロ的に見た場合には、y方向に延在しているが、ミクロ的に厳密に見ると、y方向からずれた方向に向かって延在している。複数のレーザ共振器140_1~140_nそれぞれの延在方向(図中、矢印D1,D2で示す)は互いに非並行に設計される。この設計は、マルチビーム半導体レーザ素子100Aのチップがレーザ装置200に実装された状態において、言い換えると、マルチビーム半導体レーザ素子100Aに応力が生ずる状態において、レーザ共振器140_1~140_nから出射する複数のビームが平行に近づくようになされている。なお、図面では、延在方向D1,D2の違いを強調して示しているが、実際には図示したものよりもはるかに小さく、1°未満である。延在方向D1,D2を、y軸と平行な仮想線となす傾斜角度θ1,θ2として表すものとする。
実施例1では、レーザ共振器140_1の幅は、y方向の全範囲にわたり一定である。レーザ共振器140_2についても同様である。
以上がマルチビーム半導体レーザ素子100Aの構成である。続いてその動作を説明する。
図6(a)、(b)は、図5のマルチビーム半導体レーザ素子100Aによるマルチビームの出射方向の均一化を説明する図である。図6(a)は、レーザ共振器140が応力を受けていない状態におけるビームの出射方向を示す。レーザ共振器140が応力を受けていないとき、レーザ共振器140内のx方向の屈折率分布は一様であるから、ビームBMi(i=1,2…)の進行方向は、レーザ共振器140_iの延在方向Diと一致する。応力が生じていない状態では、ビームBM1,BM2は、方向DO1,DO2に放射される。レーザ共振器140と空気の屈折率差によって、出射端面S1においてビームBMは屈折するため、延在方向Diと放射方向DOiは一致しない。
図6(b)は、レーザ共振器140が応力を受けている状態におけるビームの出射方向を示す。レーザ共振器140_iが応力を受けると、レーザ共振器140_i内の屈折率分布に傾斜が生ずる。これにより、レーザ共振器140_i内を導波する光は、屈折率が高いチップの中心方向に向かってわずかに曲がりながら導波する。レーザ共振器140_i内の光の導波方向Di’は、共振器の延在方向Diに対して、Δθi分、チップの中心線112に向かって傾くこととなる。さらに出射端面S1において、方向Di’に導波するビームBMは、レーザ共振器140と空気の屈折率差によって屈折するため、ビームBMiは、放射方向DOi’に放射される。このように、レーザ共振器の延在方向Diを応力に応じて調整することで、レーザ共振器140_1とレーザ共振器140_2とから放射されるレーザ光は互いに平行に出射される。
以上がマルチビーム半導体レーザ素子100Aの動作である。
複数のレーザ共振器140_1~140_nの延在方向D1~Dn(傾斜角θ1~θn)を、応力にもとづく屈折率分布による光軸変化量Δθ1~Δθnをキャンセルできるように設計することで、レーザ共振器140が応力を受けるレーザ装置200の状態において、複数のビームBM1,BM2の出射方向(光軸)の相対差を抑制することができ、複数のビームBM1~BMnを平行とすることができる。
レーザ共振器140の応力の分布が、半導体基板110の中心線112を基準として左右対称に生じている場合を考える。いま、2つのレーザ共振器140_1,140_2のエミッタ102_1,102_2の位置が、中心線112から等距離である場合、2つのレーザ共振器140_1,140_2には、同じ大きさの応力が逆向きに加わるから、光軸変化量の大きさΔθ1とΔθ2は等しくなる。したがって、レーザ共振器140_1と140_2の延在方向D1,D2の傾斜角θ1、θ2は、レーザビームの出射方向が端面に対して垂直方向になるように調整され、本実施例では傾斜角θ1、θ2は等しくなる。つまり、レーザ共振器140を半導体基板110の中心線112に対して、線対称でレーザビームの出射方向が端面に対して垂直方向となるように設計すればよい。
なお、半導体基板110の幾何学的な中心線112が応力の中心と一致しない場合もありえる。この場合、応力の中心線を基準として線対称に、マルチビーム半導体レーザ素子100Aを設計すればよい。
マルチビーム半導体レーザ素子100Aのシミュレーション結果を説明する。図7(a)、(b)は、シミュレーションのモデルを説明する図である。シミュレーションでは、レーザ共振器140を、面Aを入射端、面Bを出射端とする導波路WG1として取り扱う。導波路WG1の幅Wは、1.5μm、導波路WG1の長さLは300μmとしている。
図7(b)は、シミュレーションモデルにおける導波路WG1内のx方向の屈折率分布を示す。ここでは計算の簡素化のため、屈折率nは、導波路内においてステップ状に変化するものとしており、導波路WG1中央部において3.20、チップの中心側において、3.20+0.0005、チップ外側において、3.20-0.0005であるものとする。
はじめに、導波路WG1の延在方向を、y軸と一致させた構成(比較構成という)のシミュレーションについて説明する。
図8(a)~(d)は、比較構成における光の強度分布のシミュレーション結果を示す図である。図8(a)は、導波路WG1の入射端Aに入射する光の強度分布を示す。ここでは入射光L1は、ガウシアン分布を有するものとする。同図では、光強度のピークから50%の強度の光が導波路WG1に入射している。また、光強度50%以下の部分は導波路WG1から周囲に広がる部分を示しており、横軸0から約±2μmの範囲としている。
図8(b)は、導波路WG1の出射端Bにおける水平方向(x方向)のNFPを示す。屈折率分布の影響によって、出射端BにおけるNFPの最大強度は、チップの中心寄りに偏る。
図8(c)は、導波路WG1と空気の屈折率差による屈折がないと仮定したときの水平方向(x方向)のFFPである。これは、導波路WG1内の出射端面の直前におけるビームの指向性を示していると言える。導波路WG1内の屈折率分布の影響によって、ビームBM1の伝搬方向が、Δθ=0.13°、中央寄りに傾くことが分かる。
図8(d)は、導波路WG1と空気の屈折率差を考慮したときの水平方向(x方向)のFFPである。伝搬方向の傾きΔθと、出射端面Bにおける屈折の影響によって、ビームBM1は、0.4°、中央寄りに傾いて放射される。
続いて導波路WG1の延在方向を、y軸からθ=0.04°傾斜させた実施例1に対応する導波路のシミュレーションについて、図9(a)、(b)を参照して説明する。
図9(a)、(b)は、実施例1に対応する導波路の光の強度分布のシミュレーション結果を示す図である。図9(a)は、導波路WG1の出射端面における水平方向(x方向)のNFPを、図9(b)は、水平方向(x方向)のFFPを示す。導波路WG1をy軸に対して0.04°傾斜させることにより、FFPのピークを0°とすること、言い換えるとビームをy軸に対して平行に出射することができる。
(実施例2)
図10は、実施例2に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Bの平面図である。実施例1では、レーザ共振器140_1,140_2と中心線112の距離が等しかったが、本開示はそれに限定されない。
実施例2では、レーザ共振器140_1,140_2が中心線112から異なる距離l1,l2に配置されている。図10では、l2>l1が成り立っている。上述のように、応力は、半導体基板110の中心線112から遠ざかるほど強くなり、したがってレーザ共振器140_2における屈折率変化の方が、レーザ共振器140_1における屈折率変化よりも大きい。その結果、屈折率変化により生ずる光軸変化量Δθは、レーザ共振器140_2の方が大きくなる(Δθ2>Δθ1)。この場合、レーザ共振器140_2の延在方向D2の傾斜角θ2は、レーザ共振器140_1の延在方向D1の傾斜角θ1よりも大きく設計すればよい。
実施例1や実施例2では、各レーザ共振器140_iの幅は一定であったが、本開示はそれに限定されない。レーザ共振器140の幅が一定でない場合の、導波路の延在方向について説明する。
図11(a)~(c)は、レーザ共振器140の延在方向を説明する図である。図11(a)~(c)には、レーザ共振器140のリッジストライプ構造の一部分が示される。Dは延在方向を示すベクトルである。θは、ベクトルDが、y軸と平行な仮想線となす角度であり、この角度θをもって、延在方向を表現することができる。
図11(a)は幅が一定のリッジストライプ構造を、図11(b)、(c)は、出射端面に向かって幅が広がるテーパー形状を有するリッジストライプ構造を示す。図11(a)、(b)に示すように、リッジストライプ構造のエッジElとErの中心を通る仮想線CLをとり、この仮想線CLに沿う方向を、レーザ共振器140の延在方向Dとすることができる。
あるいは、図11(c)に示すようにリッジストライプ構造のエッジElとErそれぞれの延在方向Dl,Drをとり、2つの延在方向Dl,Drの平均やベクトル合成によって得られる方向を、レーザ共振器140の延在方向Dとしてもよい。あるいは、延在方向Dl,Drの方向θl、θrの平均を、レーザ共振器140の延在方向θとしてもよい。
なお、レーザ共振器140の延在方向の取り方は、ここで説明したものに限定されない。たとえばリッジストライプ構造が曲線を含む場合には、中心を通る仮想線CLの接線方向を、延在方向ととることができる。以下の説明では、延在方向Dを、図11(a)、(b)に示すように、中心線CLに沿った方向として定義する。
(実施例3)
図12は、実施例3に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Cの平面図である。実施例3においては、各レーザ共振器140_iはテーパー形状を有しており、それぞれの幅は、y方向に関して徐々に変化する。
実施例3においても、レーザ共振器140_1,140_2それぞれの延在方向D1,D2は互いに非並行となっている。各レーザ共振器140の2つの側方エッジEn,Efのうち、中心線112に近いエッジEnは、チップの出射端面S1に対して垂直であり、中心線112から遠いエッジEfがチップの出射端面S1に対して傾斜している。
図5のマルチビーム半導体レーザ素子100Aに対する、図12のマルチビーム半導体レーザ素子100Cの利点を、図13を参照して説明する。この利点は、マルチビーム半導体レーザ素子の製造プロセスに関連する。
図13(a)、(b)は、図5のマルチビーム半導体レーザ素子100Aおよび図12のマルチビーム半導体レーザ素子100Cのウェハの一部を示す図である。前工程の完了後において、マルチビーム半導体レーザ素子100Cはウェハ内で連続しており、ダイシングにより、チップごとに個片化される。図13(a)、(b)には、理想的なダイシングライン410Aと、実際のダイシングライン410が示される。
図13(a)に示すように、実施例1(図5)の構成では、ダイシングライン410が理想的なダイシングライン410Aからy方向にずれると、レーザ共振器140に不連続412が生ずるため、レーザとして機能しなくなる。つまり実施例1の構成は、ダイシングラインの位置に対してシビアである。
図13(b)に示すように、実施例3(図12)の構成では、ダイシングライン410がy方向にずれても、部分414においてレーザ共振器140の幅はステップ状に変化するが、図13(a)のようにレーザ共振器が途切れることはない。つまり実施例3によれば、実施例1に比べるとダイシングラインのy方向へのずれの許容度を高めることができる。
(実施例4)
図14は、実施例4に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Dの平面図である。実施例4においても、実施例3と同様に、各レーザ共振器140_iはテーパー形状を有しており、レーザ共振器140_1,140_2それぞれの延在方向D1,D2は非並行となっている。
図14では、各レーザ共振器140の2つの側方エッジのうち、中心線112に遠いエッジEfは、チップの出射端面S1に対して垂直であり、中心線112から近いエッジEnがチップの出射端面S1に対して傾斜している。図12と同じ延在方向D1,D2とするために、図14では、出射端面S1に近づくほど、レーザ共振器140の第1方向(x方向)の幅が狭くなっており、出射端面S1から遠ざかるに従って幅が広くなっている。
実施例4によっても、複数のビームの出射方向を揃えることができる。なお上述の実施例3は、実施例4に比べて、以下の利点を有する。
出射端面の幅が狭いと、言い換えると、エミッタの面積が狭いと、光の電界集中が発生し、また温度上昇が大きくなるという問題がある。この観点において、実施例3のように内側のエッジEnをy軸と平行とすることで、レーザ光の出射方向を調節した状態を維持したまま、出射端側の幅、つまりエミッタの面積を大きくできるため、この問題を解決できる。
(実施例5)
図15は、実施例5に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Eの平面図である。実施例1~実施例4では、y方向の全範囲において、複数のレーザ共振器140の延在方向が非並行であった。これに対して実施例5では、y方向の一部の範囲において、複数のレーザ共振器140の延在方向は非並行であるが、y方向の別の一部の範囲において、複数のレーザ共振器140の延在方向は並行とされる。具体的には、出射端面S1に近い領域A1において、複数のレーザ共振器140の延在方向D1,D2は非並行であり、出射端面S1から遠い領域A2において、複数のレーザ共振器140の延在方向が平行となっている。この構成によっても、複数のビームの出射方向の違いを抑制できる。
(実施例6)
図16は、実施例6に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Fの平面図である。実施例6は、実施例3と実施例5の組み合わせである。すなわち領域A1において、延在方向D1,D2が非並行であり、領域A2において、延在方向D1,D2は平行である。また領域A1において、レーザ共振器140_1,140_2はテーパー形状を有している。
図17(a)、(b)は、図16のマルチビーム半導体レーザ素子100Fの水平方向(x方向)のNFPおよびFFPのシミュレーション結果を示す図である。領域A2におけるレーザ共振器140の幅W2を1.5μmとし、領域A1の出射端面S1におけるレーザ共振器140の幅W1を2.3μmとしている。領域A1の長さは300μmであり、延在方向D1,D2の傾斜角は0.15°としている。
図17(b)に示すように、レーザ共振器140にテーパー形状を持たせて、延在方向を設計することにより、FFPのピークが0°方向となり、y軸と平行にビームを出射することが可能となる。
(実施例7)
図18は、実施例7に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Gの平面図である。実施例7では、実施例6に比べて、領域A3が追加されている。領域A3では、端面S1と端面S2とで、レーザ共振器140_iの幅が等しくなるように、レーザ共振器140_iがテーパー形状を有している。
実施例7によれば、製造工程においてダイシングラインがy方向にずれた場合に、導波路の連続性を担保できる。すでに説明した実施例3では、ダイシングラインがずれると、レーザ共振器の幅がステップ状に変化するのに対して、実施例7では、ダイシングラインがずれても、レーザ共振器の幅が連続することとなり、実施例3に比べて有利である。
(実施例8)
図19は、実施例8に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Hの平面図である。実施例8では、実施例7に比べて、領域A0,A4が追加されている。領域A0,A4では、レーザ共振器140_iの幅が一定であり、かつそれらの幅は、等しくW1である。また領域A0,A4におけるレーザ共振器140_iの延在方向はy軸方向と一致している。
実施例8において、領域A0の長さLsが、領域A1の長さLtに比べて十分に短ければ(Ls≪Lt)、ビームの出射方向は、領域A1の延在方向によって支配的に決まる。
実施例8によれば、実施例7と同様に、ダイシングラインがy方向にずれた場合に、導波路の連続性を担保できる。特に実施例8では、領域A0とA4の幅が等しくW1であるため、ダイシングラインがy方向にずれた場合であっても、出射端の幅を一定に保つことができる。
(実施例9)
図20は、実施例9に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Iの平面図である。実施例9では、実施例5(図15)と同様に、レーザ共振器140_iの幅が一定である。実施例9では、実施例5に比べて、領域A3が追加されている。この領域A3において、レーザ共振器140_iの延在方向が変化しており、2つの端面S1,S2における、レーザ共振器140_iの幅と位置が同じになるようになっている。
実施例9によれば、領域A1におけるレーザ共振器140_iの延在方向によって、ビームの出射方向を制御できる。また、領域A3を追加することにより、ダイシングラインがy方向にずれた場合に、導波路の連続性を担保できる。
(実施例10)
図21は、実施例10に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Jの平面図である。実施例10では、実施例9(図20)に比べて、領域A0,A4が追加されている。領域A0,A4では、レーザ共振器140_iの幅が一定であり、延在方向はy軸方向と一致している。
実施例10によれば、実施例9と同様に、ダイシングラインがy方向にずれた場合に、導波路の連続性を担保できる。特に実施例10では、領域A0とA4の幅が一定であり、延在方向がy軸方向と一致しているため、ダイシングラインのy方向のずれに対してより許容度が大きくなっている。
(実施例11)
図22は、実施例11に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Kの平面図である。実施例11は、実施例3(図21)に比べて、領域A2が追加されている。領域A2において、レーザ共振器140_iの幅が変化しており、2つの端面S1,S2における、レーザ共振器140_iの幅と位置が同じになるようになっている。
実施例11によれば、領域A1におけるレーザ共振器140_iの延在方向Diによって、ビームの出射方向を制御できる。また、領域A2を追加することにより、ダイシングラインがy方向にずれた場合に、導波路の連続性を担保できる。
(実施例12)
図23は、実施例12に係るマルチビーム半導体レーザ素子100Lの平面図である。これまでの実施例1~11では、すべてのビームが、出射端面S2に対して垂直に放射されるように、レーザ共振器140の延在方向を設計したが、本開示はそれに限定されず、すべてのビームが垂直でない同じ方向に放射するように、延在方向を設計してもよい。
図23の例では、レーザ共振器140_2の延在方向は、y軸方向と一致しており、レーザ共振器140_2のビームBM2は、出射端面S1に対して非垂直方向に放射される。レーザ共振器140_1の延在方向D1は、ビームBM1の出射方向DO1が、ビームBM2の出射方向DO2と一致するように設計される。
図24(a)、(b)は、図23のマルチビーム半導体レーザ素子100LにおけるビームBM1の水平方向(x方向)のNFPおよびFFPのシミュレーション結果を示す図である。図8(d)に示したのと同様に、レーザ共振器140_2のビームBM2のFFPのピークは、0.4°、中央寄りにシフトする。レーザ共振器140_1の延在方向D1を、傾斜角θ1=0.17°で設計したときに、レーザ共振器140_2と平行なビームを出力することができる。図24(b)に示すビームBM1のFFPは、0.4°、シフトしたものとなっており、2つのビームBM1,BM2を平行にすることができる。
(変形例)
上述した実施形態および実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なことが当業者に理解される。以下、こうした変形例について説明する。
図25(a)、(b)は、変形例に係るマルチビーム半導体レーザ素子の平面図である。図25(a)のマルチビーム半導体レーザ素子100aは、n=3であり、3個のレーザ共振器140_1~140_3を備え、3本のビームBM1~BM3を出射可能である。中央のレーザ共振器140_2は、チップの中心線112に沿って、θ2=0°で形成される。両端のレーザ共振器140_1および140_3は、3本のビームBM1~BM3の等間隔となるように、チップの中心線112から等しい距離に、中心線112に関して線対称に形成される。
図25(b)のマルチビーム半導体レーザ素子100bは、n=4であり、4個のレーザ共振器140_1~140_4を備え、4本のビームBM1~BM4を出射可能である。4本のビームBM1~BM4の間隔を等しくするために、4個のレーザ共振器1401~140_4の出射端面S1における中心位置は、等間隔となっている。好ましくは、複数のレーザ共振器140_1~140_4は、中心線112に関して線対称に構成される。また中心線112から遠いレーザ共振器140_1,140_4の傾斜角θ1,θ4は、中心線112に近いレーザ共振器140_2,140_3の傾斜角θ2,θ3よりも大きく設計される。
実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
100…マルチビーム半導体レーザ素子、102…エミッタ、110…半導体基板、120…多層構造部、122…n型クラッド層、124…発光層、126…p型クラッド層、128…p型コンタクト層、134…絶縁膜、138…p側電極,139…n側電極、140…レーザ共振器、150…分離溝、200…レーザ装置、210…支持基板、212…はんだ。

Claims (12)

  1. 端面発光型のマルチビーム半導体レーザ素子であって、
    半導体基板上に第1方向に隣接して集積化された複数のレーザ共振器を備え、
    前記複数のレーザ共振器のそれぞれは、前記第1方向に直交する第2方向に伸びるストライプ型の電流狭窄構造を有し、
    前記複数のレーザ共振器それぞれの延在方向は、少なくとも出射端面側の第1領域において非並行であることを特徴とするマルチビーム半導体レーザ素子。
  2. 前記第1領域において、前記複数のレーザ共振器それぞれの幅は一定であることを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
  3. 前記第1領域において、前記複数のレーザ共振器の幅のそれぞれは、前記出射端面に近づくほど幅が広がるテーパー形状を有することを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
  4. 前記第1領域において、前記複数のレーザ共振器の幅のそれぞれは、前記出射端面に近づくほど幅が狭まるテーパー形状を有することを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
  5. 前記複数のレーザ共振器のそれぞれは、前記マルチビーム半導体レーザ素子の第1端面における幅と第2端面における幅が等しいことを特徴とする請求項3または4に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
  6. 前記複数のレーザ共振器の延在方向は、少なくとも1回、変化することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
  7. 前記複数のレーザ共振器のそれぞれは、前記マルチビーム半導体レーザ素子の第1端面における前記第1方向の位置と第2端面における前記第1方向の位置が同一であることを特徴とする請求項6に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
  8. 前記第1領域に対して前記出射端面側に隣接する第2領域において、前記複数のレーザ共振器の延在方向は、前記出射端面に対して垂直であることを特徴とする請求項6に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
  9. 前記第2領域の前記第2方向の長さは、前記第1領域の前記第2方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項8に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
  10. 前記複数のレーザ共振器は、第1レーザ共振器および第2レーザ共振器を含み、
    前記第1レーザ共振器および前記第2レーザ共振器は、前記半導体基板の前記第1方向に関する中心線に対して線対称に形成されることを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
  11. 前記レーザ共振器の延在方向を、前記第2方向となす角度で定義するとき、
    前記複数のレーザ共振器それぞれの前記角度は、当該レーザ共振器が前記半導体基板の前記第1方向に関する中心線から遠いほど、大きいことを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
  12. 請求項1から4のいずれかに記載のマルチビーム半導体レーザ素子のチップと、
    前記マルチビーム半導体レーザ素子を支持する支持基板と、
    を備え、
    前記マルチビーム半導体レーザ素子のチップの熱膨張係数と、前記支持基板の熱膨張係数が異なることを特徴とするレーザ装置。
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