JP2023110654A - 投受光用プローブ - Google Patents

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Abstract

【課題】枚葉式で処理される基板の上方に配置される低背型の投受光用プローブを提供する。【解決手段】筐体51と、前記筐体の側面に設けられ、光源からの光を導く光ファイバー28が水平方向に接続される光ファイバー接続部52と、前記光ファイバーの端面から前記筐体内に放射される光をコリメートする第1レンズ53と、前記第1レンズによってコリメートされた光を鉛直下向きに反射するミラー54と、前記ミラーによって反射された下向きの光が通過する開口部56とを有し、前記ミラーは、前記基板から反射されて前記開口部を通って上向きに戻る光を前記第1レンズに向けて水平方向に反射し、前記第1レンズは、前記ミラーによって反射された水平方向の光を前記光ファイバーの端面に集光する、投受光用プローブ50。【選択図】図2

Description

本発明は、半導体ウェハ等の基板の枚葉式処理において、基板上の処理液に含まれる成分の量を測定するために用いられる投受光用プローブに関し、より詳しくは、基板上の処理液に光を照射し、基板からの反射光を受光する投受光用プローブに関する。
半導体工業における枚葉式プロセスでは、半導体ウェハを水平等に保持して回転させながら、その表面に処理液を供給することにより、エッチングや洗浄などの工程が実施される。洗浄工程はリンス処理と乾燥処理からなり、エッチング液などの薬液を純水で洗い流すリンス処理を行った後、ウェハ上の純水を2-プロパノール(IPA)で置換する乾燥処理が行われる。これらの工程において意図しない成分が基板上に残留すると、後工程での不良発生の原因となる。例えば、リンス処理が不十分であるために被洗浄物質が残留する場合がある。また、純水のIPAによる置換が不十分であるために水が残留すると、ウォーターマーク(乾燥跡)の原因となる。近年では、ウェハ表面に微細で高アスペクト比なパターンが形成されることが多く、IPAによる置換が不十分であると、表面張力の大きい水が残留することによってパターンが倒壊することもある。
このような問題への対策として、処理液の供給量を増やしたり供給時間を長くしたりすることで、処理液を余剰に供給することが行われている。しかしながら、処理液の使用量が増えると廃液処理のコストが増加するという問題があった。処理液の使用量を減らして基板処理を効率的に行うためには、残留が懸念される成分など、着目すべき成分の量を確認しながら、基板を処理することが好ましい。リンス処理中に基板上の水の成分変化を監視したり、IPAによる乾燥処理中に純水のIPAによる置換の進捗を監視したりすることにより、無駄に使用される処理液の量を減らすことができる。
特許文献1には、基板を処理しながら、基板上に存在する成分の量をその場で測定することを課題として、回転する基板上に処理液を供給しながら、基板上面に形成された処理液の液膜に赤外線を照射して反射光を受光し、所定波長における吸光度から処理液膜に含まれる1以上の成分の存在量を測定する方法が記載されている。赤外線は、基板の上方に空間を隔てて設けられた投光部から処理液の液膜に斜めに照射され、基板上面からの反射光が投光部とは別に設けられた受光部で受光される。
特許文献2には、IPA液などの低表面張力液体の使用量および時間の無駄を生じることなく、基板の表面から純水を良好に除去することを課題として、基板表面への純水供給工程後に低表面張力液体供給工程を実施し、低表面張力液体供給工程と並行して基板表面上の液中における水分濃度を検出して、検出された水分濃度に基づいて低表面張力液体供給工程が終了されるべきかを判定する基板処理方法が記載されている。水分濃度の検出は、基板上のIPA液面に接液したプリズムを通過して光を液に向けて照射し、基板とプリズムの間で多重反射した光を受光部で受光して、受光した光の強度に基づいて行われる。
特開2016-070669号公報 特開2009-218402号公報
枚葉式プロセスの処理室(チャンバー)は、一般に容積を小さく、高さを低くして設計されることが多い。さらに近年では、処理室を多段に積んで、装置の設置面積当たりの処理量を大きくすることが行われている。このため、処理液膜中の成分量を測定するために基板上面に配置する投受光用のプローブを小型化すること、特にプローブの高さを低く抑えることが求められている。
特許文献1に記載された装置では、投光部と受光部が別個に設けられているため、投光部と受光部の基板に対する位置を精度よく調整することが難しかったし、全体を小型化することも難しかった。
特許文献2に記載された装置では、高速で回転する基板上のIPA液面にプリズムを接液させるため、プリズムの位置を基板と衝突しないように制御するのが難しかったし、プリズムと発光部、受光部とを接続する光ファイバーケーブルの曲げ半径を許容曲げ半径以上にする必要があるため、基板上に配置する装置の高さを低くすることが難しかった。
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、回転する基板上の処理液中の成分の量を測定するために用いられる投受光用プローブであって、処理室内の基板上の空間の高さが低い場合にも使用可能な低背型のプローブを提供することを目的とする。
本発明の投受光用プローブは、枚葉式で処理される基板の上方に配置される投受光用プローブであって、筐体と、前記筐体の側面に設けられ、光源からの光を導く光ファイバーが水平方向に接続される光ファイバー接続部と、前記光ファイバーの端面から前記筐体内に放射される光をコリメートする第1レンズと、前記第1レンズによってコリメートされた光を鉛直下向きに反射するミラーと、前記ミラーによって反射された下向きの光が通過する開口部とを有する。そして、前記ミラーは、前記基板から反射されて前記開口部を通って上向きに戻る光を前記第1レンズに向けて水平方向に反射し、前記第1レンズは、前記ミラーによって反射された水平方向の光を前記光ファイバーの端面に集光する。
ここで、水平、鉛直、上向きおよび下向きは、投受光用プローブが基板上に配置された状態での方向をいう。また、第1レンズは単一のレンズであってもよく、複数のレンズを用いて構成されていてもよい。
本発明の投受光用プローブによれば、回転する基板に垂直に光を照射して、基板からの正反射を受光するので、投受光用プローブの基板に対する位置、具体的には基板からの距離の許容誤差が大きく、位置調整が容易である。また、光の向きをミラーによって直角に曲げるので、処理室内に導入される光ファイバーは投受光用プローブに水平に接続され、処理室内で曲げる必要がないため、投受光用プローブの高さを低く抑えることができる。これにより、処理室内の基板上の空間の高さが低い場合にも使用可能な低背型のプローブとすることができる。
処理液の成分測定のための装置構成を示す図である。 一実施形態の投受光用プローブの構造を示す図であり、A:光ファイバーからウェハへの光路(往路)、B:ウェハから光ファイバーへの光路(復路)を示す図である。 A:分光光度計を備える測光部の構造を示す図、B:図3AのB-B矢視図である。 受光強度のばらつきを説明するための図である。 受光強度のばらつきを説明するための図である。 受光強度のばらつきを説明するための図である。 吸光度の度数分布の例を示す図である。 吸光度の許容誤差と標本サイズの関係を示す図である。 実施例におけるIPA濃度の推移を示す図である。
本発明の投受光用プローブの一実施形態を、シリコンウェハを洗浄処理しながら、処理液の成分を分析する場合を例に説明する。
図1を参照して、枚葉式の基板処理室10は、ウェハWを水平または所望の角度に保持して回転させる回転テーブル11と、ウェハ上に処理液Sを供給するノズル12を有する。ノズル12は、処理液の種類毎に複数設けられ、それぞれ配管13によって図示しない処理液供給源に接続されている。ノズル12は、ウェハの中心から外縁にかけて半径方向に移動可能である。ウェハWを回転させながらその上面に処理液Sを供給すると、処理液は遠心力によってウェハの外縁に向かって移動し、移動量と供給量が釣り合う膜厚の処理液膜Fを形成する。処理液の供給が停止すると、処理液はウェハ外縁から排出され、処理液膜は膜厚を減じて、やがて消滅する。
処理液の種類は特に限定されず、例えば、水;オゾン水、ラジカル水、電解イオン水;IPA等の有機溶剤;アンモニア過酸化水素混合液、塩酸過酸化水素混合液、硫酸過酸化水素混合液、硝酸フッ酸混合液、フッ酸、硫酸、リン酸、硝酸、バッファードフッ酸、アンモニア、過酸化水素、塩酸、水酸化テトラメチルアンモニウムおよびこれらと水との混合液;である。
液体成分測定装置20は、光源21と、投受光用プローブ50と、測光部25と、演算部27を有する。測光部25は分光光度計26を備える。投受光用プローブ50は、基板処理室10の内部でウェハW上に配置され、ウェハWに向かって光を照射する投光部と、ウェハ上の処理液中を通った反射光を受光する受光部を兼ねている。なお、以下において、投受光用プローブ50を単に「プローブ」という。光源21、測光部25および演算部27は基板処理室の外部に配置されている。プローブ50は光源21および測光部25と分岐する光ファイバー28によって接続されている。測光部25と演算部27は電気的に接続されている。
光源21は、測定しようとする成分(以下「特定成分」という)が吸収する波長を含む光を発光する。光源21は、好ましくは、連続する波長範囲の光を発生する。これにより、連続光に含まれる複数の波長での吸収を測定することができる。光源21は、例えば、HOとIPAを測定するためには、好ましくは、1350~1720nmを含む波長範囲の光を照射する。光源は、他の実用上重要な成分を分析するために、より好ましくは1200~1800nmを含む波長範囲の光を照射する。光源21は、ランプに光学フィルターを組み合わせて、測定に不要な波長をカットしてもよい。光源としては、例えば、ハロゲンタングステンランプ等の市販のランプを用いることができる。
図2Aを参照して、投受光用プローブ50は、筐体51と、筐体の側面に設けられた光ファイバー接続部52と、筐体の内部に配置された第1レンズ53およびミラー54と、筐体の下面に設けられ、第2レンズ55が設けられた開口部56を有する。筐体51は略筒状、例えば略円筒状で、筒状の長手方向を水平にして使用される。
光ファイバー接続部52は、筐体51の側面であって、上記筒状の一方の端(図2の右端)に設けられ、光ファイバー28が水平方向に接続される。光源21から光ファイバー28によって導かれた光は、光ファイバーの中心軸を光軸Yとして、光ファイバーの端面から筐体51内に放射される(L)。
第1レンズ53は、光ファイバー28の端面の前方に、光軸Yに垂直に配置されて、光ファイバー端面からの放射光Lを、図2の左向きに水平に進み、光軸Yに平行な光Lにコリメートする。なお、ここで「前方」とは光の進行方向をいう。第1レンズ53は、単一のレンズであってもよいし、複数のレンズを組み合わせて構成された複合レンズであってもよい。
ミラー54は、第1レンズ53の前方に、光軸Yおよび開口部56の中心を通る鉛直線Zとなす角度が45度となるように配置されて、第1レンズ53によってコリメートされた光Lの向きを90度変えて、鉛直下向きに反射する(L)。
第2レンズ55は、開口部56を塞いで設けられ、ミラー54によって反射された鉛直下向きの光LをウェハWの上面に集光する(L)。第2レンズ55は、単一のレンズであってもよいし、複数のレンズを組み合わせて構成された複合レンズであってもよい。
ウェハWの上面に集光された光Lのスポット径は、特に限定されないが、好ましくは3mm以下とする。スポット径が小さいほど成分分析の空間解像度を高くできるからであり、そのことによって後述する処理液面の波打ちによる影響が検出しやすくなるからである。また、第2レンズ55の焦点は、ウェハW上面より下にあることが好ましい。ウェハW上面で反射して第2レンズ55に戻る光が広がりにくいからである。
図2Bを参照して、ウェハWで反射された光Lは、光ファイバー28からウェハ上面までの上記光路を逆向きに辿る。具体的には、ウェハWで反射されて上向きに戻る光Lは、第2レンズ55によって鉛直上向きの光にコリメートされ(L)、ミラー54によって反射されて、向きを90度変えて第1レンズ53に向かって水平に進み(L)、第1レンズ53によって光ファイバー28の端面に集光される(L)。
このように、光ファイバー28からウェハWに向かう光に対しては、第1レンズ53はコリメータレンズ、第2レンズ55は集光レンズとして機能し、ウェハWから光ファイバー28に戻る光に対しては、第2レンズ55はコリメータレンズ、第1レンズ53は光ファイバー結合レンズとして機能する。
プローブ50の高さHは、好ましくは50mm以下、より好ましくは35mm以下である。一方、プローブの高さHは、好ましくは10mm以上である。プローブの高さがこれより小さいと、プローブ内に十分な断面積を有する光路を確保することが難しくなるからである。
図1に戻って、プローブ50は、ウェハWの上方を、ウェハの中心部から外縁にかけて半径方向に移動可能である。これにより、ウェハ上の任意の位置で処理液膜中の成分を測定できる。
ウェハWから反射し、プローブ50を経由して光ファイバー28に戻った光は、光ファイバー28の途中で分岐されて、測光部25へ導かれる。測光部25の入り口には、光学フィルターを設けて、測定に不要な波長をカットしてもよい。測光部25は、複数の波長における受光強度を測定して、測定した受光強度に応じた電気信号を、必要に応じて増幅して、演算部27に出力する。
測光部25は、1個の分光光度計26、または2個以上の分光光度計26が並列に設けられた分光光度計セットを備える。図1に示した測光部25は、2個の分光光度計26からなるセットを備えている。分光光度計が並列に設けられるとは、すべての分光光度計が、処理液を通過した光に対して同じ条件であるように設けられることをいい、具体的には、1本の光ファイバー28の光が均等に分岐されて、それぞれの分光光度計に導入される。
図3を参照して、分光光度計26は、光を通さない材質からなる、例えば略円筒状の筐体46を有し、筐体の一端(図3では左端)に設けられた光ファイバー接続部47に1本の光ファイバー28aが接続される。この光ファイバー28aは、プローブ50からの光ファイバー28を分岐したものである。光ファイバー28aから分光光度計26に導入された光は、光ファイバー28aの筐体46内の端から放射され、レンズ41によって光ファイバーの光軸Xに平行な光線束にコリメートされる。
光路には、光を通さない隔壁42が光軸Xに垂直に設けられ、隔壁42には同形状で同面積の開口部43が光軸Xの周りに回転対称に形成されている。図3では、光軸Xの周りに、4回回転対称の位置に、全部で4か所の開口部が形成されている。開口部は、光軸Xに対して回転対称に配置されているので、いずれも光軸からの距離が等しく、各開口部に入射する光の強度は等しい。各開口部43には、開口部全体を塞ぐようにバンドパスフィルター(BPF)44が配置され、BPFの後方(光ファイバーと反対側)に光検出素子45が配置されている。各BPFはそれぞれ異なる波長の光を透過するものを用いる。コリメートされた光は、BPF44を通過して、光検出素子45に至る。このように、各開口部43毎に透過波長の異なるBPF44と光検出素子45からなる組が配置されることで、各BPFを透過した複数の波長での受光強度を同時に測定することができる。
1台の分光光度計26が有するBPF44と光検出素子45の組の数は特に限定されないが、好ましくは3または4である。光軸Xに近く、強度の大きい光を、より多く利用できるからである。そして、測光部25は、必要に応じて複数台の分光光度計26を並列に設けることによって、所望の複数波長での受光強度を測定することができる。
測光部25が受光強度を測定する複数の波長は、特定成分の吸収ピーク波長に合わせる必要はなく、いずれかの波長が特定成分による吸収バンド幅に含まれていればよい。
測光部25が受光強度を測定する複数の波長は、互いにある程度離れていることが好ましい。この点から、BPFは、透過する波長帯域の半値全幅が20nm~40nmであって、透過波長帯域の中央値の間隔が半値全幅の2倍以上であることが好ましい。ここで、透過波長帯域の中央値は、半値幅における中央値である。また、本明細書において、透過波長帯域の中央値を、単に「透過波長」ということがある。
また、受光強度を測定する複数の波長は、利用する波長範囲、例えば1200~1800nmの全域に亘って分散していることが好ましい。測光部25が1台の分光光度計26から構成される場合は、当該分光光度計が備える複数のBPFのうち、少なくとも1つBPFの透過波長帯域の中央値が1200nm~1500nmの範囲にあり、少なくとも1つBPFの透過波長帯域の中央値が1600nm~1800nmの範囲にあることが好ましい。測光部25が2台以上の分光光度計26から構成される場合は、複数の分光光度計が備える複数のBPFの全体のうち、少なくとも1つの透過波長帯域の中央値が1200nm~1500nmの範囲にあり、少なくとも1つの透過波長帯域の中央値が1600nm~1800nmの範囲にあることが好ましい。
測光部25が受光強度を測定する波長の数は、好ましくは4以上、より好ましくは8以上である。波長の数が多いほど、複数の受光強度から、最小二乗法等を用いて特定成分の存在量を算出する際の精度が高まるからである。一方、受光強度を測定する波長の数は特に限定されないが、好ましくは256以下、より好ましくは128以下、さらに好ましくは64以下である。受光強度測定のサンプリングレートが高い場合、一般に近赤外線域で観測される分子振動による吸収は弱いので、波長の数が多すぎると、個々の波長での受光強度の測定誤差が無視できなくなる。
測光部25が受光強度を測定する際のサンプリングレートについては、液体成分測定方法の説明の中および実施例で述べる。
演算部27は、測光部25から受光強度を電気信号として受信して、受光強度からの吸光度の算出、特定成分の存在量の算出など、各種演算を行う。また、演算部27は、後述する処理液面の波打ちによる受光強度への影響の有無、受光強度が正常値であるか異常値であるかの判別を行う。演算部による処理内容の具体例は、液体成分測定方法の説明の中および実施例で述べる。
次に、本実施形態の投受光用プローブ50を用いた処理液成分の測定方法を説明する。
ウェハWを回転させながらその上面に処理液Sを供給すると、処理液は遠心力によってウェハの周縁部に向かって移動しながら、ウェハ上に処理液膜Fを形成する。この処理液膜に向けて、プローブ50から光を照射する。光は、処理液中を通過して、ウェハ表面で反射してプローブ50に戻り、光ファイバー28を通って、測光部25へ送られる。
測光部25は、複数の波長での受光強度を測定し、受光強度に応じた電気信号を演算部27に送る。このとき、受光強度を1回測定して演算部に送信する頻度がサンプリングレートである。動的な(静止していない)液体を対象に吸光分析を行う場合、ある程度の時間に亘って受光強度を積算して、吸光度を求めることが一般的である。これにより、種々の錯乱要因の影響を平均化して、測定値のばらつきを抑えることができる。しかしながら、本発明者らが受光強度の積算時間を変えて実験を行ったところ、処理液面の波打ちが測定値のばらつきに大きく影響していることを発見した。また、処理液面の波打ちによる受光強度の変動を判別可能とするには、サンプリングレートを高くすることが好ましいことが分かった。処理液面の波打ちはウェハWの中央部から周縁部に向かって高速で移動するので、サンプリングレートが遅いと、処理液面の波打ちによる影響が均されて、処理液面の波打ちによる受光強度の変動があったか否かの判別が難しくなるからである。
本発明者らが、基板の回転速度と処理液の供給速度が異なる条件で、受光強度のサンプリングレートを変えて実験を行った結果から、処理液面の波打ちによる受光強度の変動を判別するには、サンプリングレートは400回/秒以上であることが好ましく、750回/秒以上であることがさらに好ましいことが分かった。一方、サンプリングレートの上限は特に限定されない。市販の光検出器では、サンプリング可能な時間間隔が数μm程度のものが多いので、サンプリングレートは、好ましくは10万回/秒以下である。さらに、サンプリングレートは、より好ましくは1万回/秒以下である。サンプリングレートがこれ以上に高くても、特にメリットはなく、演算部27に高速での処理能力を与えるためにコストが高くなるからである。
従来の方法において、ある程度の長さの時間に亘って受光強度を積算して吸光度を求める場合、液体成分を実時間で測定して表示する場合でも、測定結果を0.1~0.5秒程度の表示間隔で表示できれば「リアルタイム」監視の目的を果たすことができるので、サンプリング間隔は0.1~0.5秒程度とすれば十分であった。チャージタイプの光検出器を用いる場合は、光検出器のオーバーフローを防ぐ目的で、受光強度を数ミリ秒から数十ミリ秒に1回サンプリングして演算部に送ることがあったが、その場合も、演算部が0.1~0.5秒程度の間の受光強度を積算して吸光度を求めていた。これに対して、本実施形態ではより高いサンプリングレートで測定した受光強度に基づいて、測定された受光強度が処理液面の波打ちの影響を受けたものであるか否かを判別することができる。
また、測光部25によるサンプリングは、基板処理室10の回転テーブル11の回転に同期させることが好ましい。これにより、ウェハWが1回転するごとに同じ位置または同じ範囲における受光強度を測定できる。サンプリングを基板の回転に同期させるためには、基板処理室10から回転に同期した信号を液体成分測定装置20に送信すればよい。また、ウェハの処理中に回転速度を変化させる場合は、サンプリングレートが処理液面の波打ちによる受光強度の変動を判別可能である範囲で、ウェハの回転速度に合わせてサンプリングレートを変化させてもよい。
測光部25から受光強度を受信した演算部27は、大別して2つの作業を行う。1つは受信した受光強度に基づいて特定成分の存在量を算出することで、他の1つは、受信した受光強度が処理液面の波打ちの影響を受けて変動した異常値であるか否かを判別することである。
まず、演算部27が特定成分の存在量を算出する方法を説明する。ここで、成分の存在量とは、その成分の質量などの絶対量と、処理液中のその成分の濃度などの相対量の両方を含む概念である。
吸光度Aは、
A=-log(I/I) ・・・(式1)
によって求められる。ここで、Iは測定された受光強度、Iは特定成分がない場合の受光強度である。Iは予め測定しておくことができる。吸光度Aは、ランベルト・ベールの法則より、
A=αLC ・・・(式2)
の関係を有する。ここで、αは特定成分のその波長における吸光係数、Lは光路長、Cは特定成分の濃度である。Cは特定成分の存在量(相対量)に相当し、LCは特定成分の存在量(絶対量)に相当する。
特定成分の存在量を複数の波長での受光強度から算出するには、特定成分の存在量を変えて予め測定した一群の吸光度データに基づき、最小二乗法等によってその特定成分の存在量を求めることができる。また、測定しようとする特定成分が複数ある場合は、それぞれの成分の存在量を変えて予め測定した一群の吸光度データがあれば、主成分回帰法や部分最小二乗回帰法を用いて多変量解析を行うことによって、成分ごとの存在量を求めることができる。さらに、液膜厚と特定成分の濃度を変えて予め測定した一群の吸光度データがあれば、液膜厚と濃度を独立変数とする多変量解析によって、処理液膜の厚さと、処理液中の特定成分の濃度を同時に求めることができる。
特定成分の存在量(LCやC)は、所定の期間中に受信した一連の受光強度に基づいて算出されることが好ましい。従来法と同様に、ウェハの表面凹凸など種々の錯乱要因の影響を平均化して測定値のばらつきを抑えるためである。この特定成分の存在量を1回算出する期間を「積算期間」と呼ぶことにする。積算期間は、好ましくは0.05秒以上、より好ましくは0.1秒以上である。一方、特定成分の存在量を実時間で算出する場合は、積算期間は、特定成分をリアルタイムで監視するための表示間隔に合わせて、好ましくは0.5秒以下、より好ましくは0.25秒以下、特に好ましくは0.1秒以下とする。演算部27は、1つの積算期間に対して、その積算期間中に測光部25によって測定され、測光部から受信した受光強度を積算して特定成分の存在量を算出する。
演算部27は、特定成分の存在量を算出するのと並行して、または定成分の存在量を算出するのに先立って、受信した受光強度が処理液面の波打ちの影響を受けて変動した異常値であるか否かを判別する。受光強度が処理液面の波打ちの影響を受けているか否かは、所定の期間中に受信した受光強度のばらつきを見ることで判別できる。演算部は、例えば積算期間中に受信した受光強度の中央値を求め、中央値との差が所定の値を超える受光強度がある場合は、その受光強度が処理液面の波打ちの影響を受けた異常値であり、当該積算期間中に測定された受光強度には異常値が混入していると判断できる。あるいは、演算部は、測光部から受光強度を受信するたびに当該受光強度から吸光度を算出して、吸光度のばらつきに基づいて処理液面の波打ちの影響の有無を判別してもよい。吸光度のばらつきに基づく方が、処理液面の波打ちの影響を受けた異常値を判別しやすいので好ましい。
なお、装置の不具合に起因する異常値、例えば、光源21のランプが点灯していないことや光ファイバー28の断線などによる異常値は、従来の想定装置でも検出されており、本実施形態の液体成分測定装置でも検出可能とするのが好ましい。
次に、演算部27による特定成分の存在量の算出に関して、計算に用いる受光強度データの選択方法が異なる2つの方法を説明する。
演算部27による第1の方法は、ある積算期間に受信した受光強度のすべてを用いて特定成分の存在量を算出する方法である。このとき、同時に、個々の受光強度が処理液面の波打ちの影響を受けているか否かを判別する。
演算部27は、受光強度を受信する度に吸光度または特定成分の存在量を計算して、積算期間中の平均を求めてもよいし、その積算期間中に測定された受光強度を積算して、その積算値から吸光度または特定成分の存在量を求めてもよい。演算部27は、同時に、受光強度が処理液面の波打ちの影響を受けた異常値であるか否かを判別する。
この方法によって、算出した特定成分の存在量が処理液面の波打ちの影響を含んでいるか否かが判別できるので、測定結果をウェハの処理条件の制御に利用することができる。例えば、リンス処理に続く乾燥処理では、ウェハ上の純水を確実にIPAで置換するために、IPAの供給時間が長目に設定されるが、算出したIPAの存在量が複数の積算期間に亘って安定しており、かつその存在量が処理液面の波打ちの影響を受けていないと判断された場合は、その場で、IPAの供給を停止して乾燥処理時間を短縮することができる。一方、算出したIPAの存在量が複数の積算期間に亘って安定していても、その存在量が処理液面の波打ちの影響を受けていると判断された場合は、予め余裕を持って定めた時間までIPAの供給を継続して、乾燥処理を続けることができる。
演算部27による第2の方法は、ある積算期間に受信した個々の受光強度が処理液面の波打ちの影響を受けた異常値であるか否かを判別し、異常値でないと判定された受光強度のみを用いて特定成分の存在量を算出する方法である。これにより、処理液面の波打ちの影響を排除して特定成分の存在量を求めることができる。この方法の詳細は、実験結果に基づいて後述する。
まず、予備実験における受光強度の測定例を示す。
予備実験は、径200mmのパターニングされていないシリコンウェハを500rpmで回転させて、ウェハの中心に純水を1.0L/分で供給しながら、ウェハの中心から50mmの位置に、タングステンランプ(15W)の光を投受光用プローブからウェハ表面に向けて垂直に光を照射し、反射光をプローブで受光して、測光部で受光強度を測定した。プローブの形状は図2AおよびBに示したとおりで、筐体は、断面が1辺30mmの正方形、長さが約80mmの略角柱状であって、開口部の下方への出っ張りを含めたプローブ全体の高さHは38.5mmであった。測光部は、光ファイバーを分岐して、3組のBPFと光検出器(InGaAs)を備えたものを3台並列に設けて、近赤外域での9つの波長で受光強度を、1000回/秒のサンプリングレートで測定した。測定した受光強度をI、純水を供給しない場合の受光強度をIとして、前述の式1により吸光度Aを算出した。
図4に、波長1300nmでの受光強度から算出した吸光度を示す。図4には1秒間、すなわち1000個の受光強度がプロットされている。図4において、吸光度は大きくばらつき、飛び抜けて大きな値が時おり観測された。このことから、処理液面が波打つことによる受光強度の変動は、単に処理液膜の厚さの大小の変化によるものではなく、処理液に照射された光が散乱されて、受光部に戻る光量が減少したことによるものであることが確認できた。また、サンプリングレートが1000回/秒の場合に、処理液面の波打ちによる受光強度の変動が判別可能であることが確認できた。
図5および図6に、図4の実験での受光強度をそれぞれ2回または3回ずつ積算してから算出した吸光度を示す。図5および図6は、サンプリングレートをそれぞれ500回/秒、333回/秒とした場合の結果に相当する。図4~図6を比較すると、処理液面の波打ちの受光強度への影響を判別することが、図4および図5では可能であるのに対して、図6では容易でないことが分かる。このことから、受光強度を測定するサンプリングレートは、400回/秒以上であることが好ましく、750回/秒以上であることがさらに好ましいと考えられた。
なお、本発明者らは、シリコンウェハの回転速度を100~1000rpm、純水の供給速度を0.1~1.0L/分の範囲で変えた予備実験を行ったが、それらの実験結果からも、サンプリングレートの好ましい範囲として同様の結果が得られた。
また、特定成分の存在量を実時間で算出するためにも、ある程度速いサンプリングレートが必要となる。受光強度が処理液面の波打ちの影響を受けているか否かは、所定期間中に受信した受光強度のばらつきを見ることで判別する。実時間測定の要請から、積算期間は好ましくは0.5秒以下、より好ましくは0.25秒以下、特に好ましくは0.1秒以下であり、この積算期間中にある程度の個数の受光強度を測定する必要がある。
上記予備実験と同様に、シリコンウェハの回転速度を300rpm、純水の供給速度を1L/分、サンプリングレートを1000回/秒として測定した受光強度から吸光度を算出した。図7に、HOによる吸収が多く、吸光度のばらつきが大きい1450nmでの1秒間の吸光度を示す。図7のデータの標準偏差は0.15であった。
許容できる誤差δと標本サイズn関係は、
δ=zσ/√(n) ・・・(式3)
で表される。ここで、zは定数で例えば95%信頼区間なら1.96、99%信頼区間なら2.63、σは標準偏差、√(n)は標本サイズnの平方根である。図8は、式3における標本サイズnと許容できる誤差δとの関係を表わしたグラフである。図8より、許容誤差δを一定程度小さくしようとすると、標本サイズnが50個以上、より安定的には100個以上が必要であることが分かった。
上記計算により、例えば、特定成分の存在量を実時間で算出するための積分期間を0.1秒として、受光強度が処理液面の波打ちの影響を受けた異常値であるか否かを当該積分期間内の受光強度のばらつきに基づいて判別するためには、許容できる誤差との関係から、0.1秒間に好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上の受光強度データが必要となることが分かった。この結果からは、受光強度を測定するサンプリングレートは、500回/秒以上であることが好ましく、1000回/秒以上であることがさらに好ましい。
次に、上記予備実験と同じ装置を用いて、ウェハ上の処理液中のIPA濃度を測定した実験例を説明する。なお、測光部は、光ファイバーを分岐して、3組のBPFと光検出器(InGaAs)を備えたものを3台並列で設けて、9つの近赤外波長での受光強度を測定した。
実験は、径200mmのパターニングされていないシリコンウェハを1000rpmで回転させて、ウェハの中心に、純水を50mL/分で18秒間供給した後、純水の供給を停止してIPAを50mL/分で約20秒間供給した。ウェハの中心から50mmの位置に、タングステンランプ(15W)の光をプローブからウェハ表面に向けて垂直に光を照射し、反射光をプローブで受光して、測光部で受光強度を測定した。測光部のサンプリングレートは1000回/秒とした。測定した受光強度の値が処理液面の波打ちに起因する異常値であるか否かを判定し、異常値でないと判定された受光強度について、積算期間を0.1秒間として、液膜厚とIPA-水混合比を変えて予め測定した一群の吸光度データを用いて多変量解析を行って、ウェハ上の処理液中のIPA濃度を求めた。
異常値の判定は次のように行った。各積算期間の100個の受光強度から吸光度を算出し、値の小さい10個のデータを、無条件に異常値と判定して、排除した。そして、残りの90個のなかの最小値を、吸光度の正常な値であると判断して基準値とした。基準値は、正常値であることが極めて確実と考えられる値であり、排除した10個のデータが正常値を含んでいても構わない。
次に、基準値+0.2を閾値として、90個の吸光度データの中で閾値超のデータを異常値と判定して、閾値以下のデータを正常値として残した。閾値の設定方法は、予め一定の値、例えば予想される最大の吸光度に定めておいてもよいし、本実施例のように、基準値と所定の計算式に従って定めてもよい。
異常値であるか否かの判別は、他の方法によって行うこともできる。例えば、吸光度のヒストグラムに基づいて、中央値を含む所定の範囲から外れたものを異常値と判定することができる。
また、本実施例では、受光強度を測定するたびに吸光度を算出して、算出した吸光度に対して異常値であるか否かの判定を行ったが、吸光度と受光強度は1対1に対応しているので、受光強度に対して異常値であるか否かの判定を行ってもよい。ただし、吸光度と受光強度は大小が逆になっていることに留意する必要がある。
図9に、処理液を純水からIPAに切り替えた前後の、ウェハ上のIPAの存在量の測定結果を示す。横軸は時間経過、縦軸はIPAの濃度を表している。白丸は、異常値でないと判定された吸光度の値に基づいて算出された0.1秒毎のIPA濃度である。黒丸は、IPA濃度の時間変化の指標で、図9では、直前5回の濃度の最大値と最小値の差の絶対値を取ったものである。IPA存在量の時間変化の指標は、存在量の一次微分で表すこともできる。
図9において、ウェハ上に純水が供給されている間は、IPA濃度、その変化の指標(以下「変動量」という)は両者とも0に近く、横軸の18秒で純水の供給を停止してIPAの供給を開始すると、両者ともに上昇している。変動量が置換閾値を超えたら、置換が開始されたと判断し(S)、変動量が置換閾値を超えた後に、変動量が連続して収束判定点数だけ安定範囲に入ったら、置換完了と判断した(E)。置換閾値、安定範囲、収束判定点数は予め適当な値を設定しておく。図9では置換閾値を40%、安定範囲を±15%、収束判定点数を5点とした。
図9の測定結果からは、IPAの供給を開始してから約1.4秒で置換が完了したと判断できる。IPAの存在量を実時間で求めない場合は、IPAの供給時間は余裕を見て10~20秒程度に設定されることが多い。しかし、実時間で求めたIPAの濃度や変動量から、IPAによる水の置換が約1.4秒で完了したと判断できれば、その時点でIPAの供給を停止することにより、IPAの使用量を削減し、乾燥処理時間を短縮することができる。
本発明は、上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、本発明の投受光用プローブを用いた測定は、シリコンウェハ上の処理液を対象とするものには限られず、基板は、炭化ケイ素、ガリウムヒ素等の化合物半導体、サファイア等の結晶ウェハであってもよい。また、基板はフラットパネルディスプレイ用のガラス基板であってもよいし、電子部品等を製造するためのセラミックウェハであってもよい。これらの基板では、いずれも、処理液による処理の成否が、製品の不良率に大きく影響する。
10 基板処理室
11 回転テーブル
12 ノズル
13 配管
20 液体成分測定装置
21 光源
25 測光部(分光光度計セット)
26 分光光度計
27 演算部
28、28a、28b 光ファイバー
41 レンズ
42 隔壁
43 開口部
44 バンドパスフィルター
45 光検出素子
46 筐体
47 光ファイバー接続部
50 投受光用プローブ
51 筐体
52 光ファイバー接続部
53 第1レンズ
54 ミラー
55 第2レンズ
56 開口部
F 処理液膜
H 投受光用プローブの高さ
~L
S 処理液
W ウェハ(基板)
X 測光部の光軸
Y 投受光用プローブの光軸
Z 開口部56の中心を通る鉛直線

Claims (3)

  1. 枚葉式で処理される基板の上方に配置される投受光用プローブであって、
    筐体と、
    前記筐体の側面に設けられ、光源からの光を導く光ファイバーが水平方向に接続される光ファイバー接続部と、
    前記光ファイバーの端面から前記筐体内に放射される光をコリメートする第1レンズと、
    前記第1レンズによってコリメートされた光を鉛直下向きに反射するミラーと、
    前記ミラーによって反射された下向きの光が通過する開口部とを有し、
    前記ミラーは、前記基板から反射されて前記開口部を通って上向きに戻る光を前記第1レンズに向けて水平方向に反射し、
    前記第1レンズは、前記ミラーによって反射された水平方向の光を前記光ファイバーの端面に集光する、
    投受光用プローブ。
  2. 前記開口部には前記ミラーによって反射された下向きの光を前記基板の上面に集光する第2レンズが設けられ、
    前記第2レンズは、前記基板から反射されて上向きに戻る光をコリメートし、
    前記ミラーは、前記第2レンズによってコリメートされた上向きに戻る光を前記第1レンズに向けて水平方向に反射する、
    請求項1に記載の投受光用プローブ。
  3. 高さが50mm以下である、
    請求項1または2に記載の投受光用プローブ。
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