JP2023110503A - 通信装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】遅延時間がむやみに長くなることを抑制しつつノイズ耐性を良好に維持する。【解決手段】ドライバ回路4は、スイッチング素子11と、送信信号TXがバス3の信号レベルをロウレベルにすることを指令する第1期間にスイッチング素子11をオン駆動するとともに、送信信号TXがバス3の信号レベルをハイレベルにすることを指令する第2期間にスイッチング素子11をオフ駆動する駆動回路12と、を備える。駆動回路12は、スイッチング素子11をオン駆動またはオフ駆動するための電圧を入力し、その入力した電圧である入力電圧に応じた出力電圧をスイッチング素子11の制御端子へと出力する出力バッファ13およびフィードバック回路14を備える。出力バッファ13は、第1期間には入力電圧と同等の電圧値の出力電圧を出力するとともに、第2期間には入力電圧より所定値だけ低い電圧値の出力電圧を出力するように構成されている。【選択図】図4

Description

本発明は、伝送路を介してデータを送受信する複数の通信装置のうちいずれか一つの通信装置の通信に同期して他の通信装置が送信を行う通信システムにおいて用いられる通信装置に関する。
従来、車両に搭載された車載通信の方式として、例えばCXPIなど、マスタの通信に同期してスレーブが送信を行う通信方式が知られている。なお、CXPIとは、Clock Extension Peripheral Interfaceの略称である。特許文献1および特許文献2には、このような通信において用いられる通信装置が開示されている。このような通信装置は、制御回路およびドライバ回路を備えている。制御回路は、伝送路上で優位な信号レベルを優位レベルとするとともに劣位な信号レベルを劣位レベルとしたとき、伝送路の信号レベルを優位レベルまたは劣位レベルのいずれにするかを指令する指令信号を生成する。
ドライバ回路は、オンすることにより伝送路の信号レベルを伝送路上で優位な信号レベルである優位レベルとすることができるスイッチング素子と、スイッチング素子を駆動する駆動回路と、を備える。駆動回路は、スイッチング素子をオン駆動またはオフ駆動するための電圧を入力し、その入力した電圧である入力電圧に応じた出力電圧をスイッチング素子の制御端子へと出力する出力バッファと、伝送路の信号を出力バッファの入力にフィードバックするフィードバック回路と、を備える。
上記構成のドライバ回路では、例えばゲートスクリーニング用などの検査性を確保するため、出力バッファの入出力間における後段部分にダイオードが順方向に直列に介在するように挿入されている。また、上記構成のドライバ回路では、上記ダイオードの挿入に伴い、ドライバ回路の動作上の追随性および対称性維持の観点から、出力バッファの入出力間における前段部分にダイオードが逆方向に直列に介在するように挿入されている。なお、以下の説明では、出力バッファの入出力間における前段部分に挿入されるダイオードを第1ダイオードと称するとともに、その後段部分に挿入されるダイオードを第2ダイオードと称することとする。
特開2014-30125号公報 特開2018-201064号公報
上記構成のドライバ回路では、伝送路からフィードバック回路を介して出力バッファの入力へとノイズが伝搬する可能性があり、このようなノイズにより出力バッファが誤動作してスイッチング素子が誤ってオンする誤オンが発生するおそれがある。そこで、上記構成のドライバ回路において、第1ダイオードを取り除くことが考えられている。
このようにすれば、出力バッファの出力電圧が、その入力電圧から第2ダイオードの順方向電圧である電圧Vf分だけ低い電圧となり、オフ駆動時により負側に維持されることことから、ノイズに対して鈍感になって誤オンの発生が一層低く抑えられる。しかし、第1ダイオードを取り除いた構成のドライバ回路では、出力バッファの入力に対する応答について、電圧Vf分だけ追随性および対称性が悪化するため、CXPIなどの通信プロトコルにおける遅延規定を満足できなくなるといった懸念が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、遅延時間がむやみに長くなることを抑制しつつノイズ耐性を良好に維持することができる通信装置を提供することにある。
請求項1に記載の通信装置は、伝送路を介してデータを送受信する複数の通信装置のうちいずれか一つの通信装置の通信に同期して他の通信装置が送信を行う通信システムにおいて用いられる通信装置であり、スイッチング素子(11)、制御回路(6、43)および駆動回路(12、32)を備える。この場合、伝送路上で優位な信号レベルを優位レベルとし、劣位な信号レベルを劣位レベルとする。スイッチング素子は、オンすることにより伝送路の信号レベルを優位レベルとすることができる。制御回路は、伝送路の信号レベルを優位レベルまたは劣位レベルのいずれにするかを指令する指令信号を生成する。
駆動回路は、指令信号が伝送路の信号レベルを優位レベルにすることを指令する第1期間にスイッチング素子をオン駆動するとともに、指令信号が伝送路の信号レベルを劣位レベルにすることを指令する第2期間にスイッチング素子をオフ駆動する。駆動回路は、出力バッファ(13)およびフィードバック回路(14)を備える。出力バッファは、スイッチング素子をオン駆動またはオフ駆動するための電圧を入力し、その入力した電圧である入力電圧に応じた出力電圧をスイッチング素子の制御端子へと出力する。フィードバック回路は、伝送路の信号を出力バッファの入力にフィードバックする。
上記構成において、出力バッファは、第1期間には入力電圧と同等の電圧値の出力電圧を出力するとともに、第2期間には入力電圧より所定値だけ低い電圧値の出力電圧を出力するように構成されている。このような構成によれば、第1期間、つまり駆動回路がスイッチング素子をオン駆動する期間、出力バッファが入力電圧と同等の電圧値の出力電圧を出力することにより、出力バッファの入力に対する応答について追随性および対称性が良好に維持される。
また、上記構成によれば、第2期間、つまり駆動回路がスイッチング素子をオフ駆動する期間、出力バッファが入力電圧より所定値だけ低い電圧値の出力電圧を出力することにより、出力電圧をより負側に維持することができ、ノイズなどに起因する誤オンの発生を低く抑えることができる。このように、上記構成によれば、遅延時間がむやみに長くなることを抑制しつつノイズ耐性を良好に維持することができるという優れた効果が得られる。
第1実施形態に係る通信システムの構成を模式的に示す図 第1実施形態に係る通信装置の構成を模式的に示す図 第1実施形態に係るレシーバ回路の具体的な構成例を示す図 第1実施形態に係るドライバ回路の構成を模式的に示す図 第1実施形態に係るドライバ回路の具体的な構成例を示す図 第1実施形態に係る出力バッファの構成を一層具体化したドライバ回路の第1構成例を示す図 第1実施形態に係る出力バッファの構成を一層具体化したドライバ回路の第2構成例を示す図 第1実施形態に係る出力バッファの構成を一層具体化したドライバ回路の第3構成例を示す図 第1実施形態に係る出力バッファの構成を一層具体化したドライバ回路の第4構成例を示す図 第1実施形態に係る出力バッファの構成を一層具体化したドライバ回路の第5構成例を示す図 第1実施形態に係る通信システムにおける各部の動作波形を模式的に示すタイミングチャート 第1実施形態および比較例に係る出力バッファの各部の電圧波形を模式的に示すタイミングチャート 第2実施形態に係るドライバ回路の具体的な構成例を示す図 第2実施形態に係る通信装置の動作を説明するための図であり、送信信号、バス波形およびゲート電圧を模式的に示すタイミングチャート 第3実施形態に係るドライバ回路の具体的な構成例を示す図 第3実施形態に係る制御回路の構成を模式的に示す図 第3実施形態に係る通信装置の動作を説明するための図であり、送信信号、バス波形およびゲート電圧を模式的に示すタイミングチャート 第4実施形態に係る通信装置の構成を模式的に示す図 第4実施形態に係る通信装置の動作を説明するための図であり、送信信号、バス波形およびゲート電圧を模式的に示すタイミングチャート
以下、本発明の複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1~図12を参照して説明する。
<通信システムの構成について>
図1に示す通信システム1は、例えば車両に搭載された複数の電子制御装置間の制御通信のために用いられるものである。通信システム1は、複数の通信装置2a、2b、2cが伝送路に相当するバス3を介して接続された構成となっている。以下では、通信装置2a、2b、2cについて、それぞれを区別する必要がない場合には通信装置2と総称することとする。この場合、通信システム1は、3つの通信装置2を備えているが、2つの通信装置2を備えていてもよいし、4つ以上の通信装置2を備えていてもよい。
複数の通信装置2は、半導体集積回路、つまりICとして構成されており、バス3を介してデータを送受信する。通信システム1では、複数の通信装置2のうちいずれか一つの通信装置2、具体的には通信装置2aの通信に同期して他の通信装置2b、2cが送信を行うようになっている。以下では、通信装置2aのことをマスター2mとも称するとともに、通信装置2b、2cのことをスレーブ2sとも称することとする。
通信システム1では、CXPI通信によりデータの送受信が実行されるようになっている。CXPI通信では、マスター2mは、スレーブ2sにバス3を介してクロックを供給し、スレーブ2sは、バス3を介して供給されるクロックに同期した通信を実行する。この場合、バス3は、異なる通信装置2からハイレベルの信号とロウレベルの信号とが同時に出力されると、バス3上の信号レベルがロウレベルとなるように構成されており、この機能を利用してバス調停が実現される。すなわち、この場合、ロウレベルの信号がバス3上で優位な信号レベルである優位レベルに相当し、ハイレベルの信号がバス3上で劣位な信号レベルである劣位レベルに相当する。
バス3上では、伝送路符号として、ビットの境界で信号レベルがハイレベルからロウレベルに変化するとともに、ビットの途中で信号レベルがロウレベルからハイレベルに変化するパルス幅変調信号、つまりPWM信号が用いられ、二値の信号が、デューティ比の異なる二種類のPWM信号で表現される。以下では、ロウレベルの期間が比較的短いほうをレセッシブ符号と称するとともに、ロウレベルの期間が比較的長いほうをドミナント符号と称する。レセッシブ符号は「論理値1」に対応し、ドミナント符号は「論理値0」に対応する。
この場合、レセッシブ符号では、1ビットの最初の1/3の期間がロウレベルになるとともに、その後の2/3の期間がハイレベルになるように設定されている。また、この場合、ドミナント符号では、1ビットの最初の2/3の期間がロウレベルになるとともに、その後の1/3の期間がハイレベルになるように設定されている。このようなことから、バス3上でレセッシブ符号とドミナント符号とが衝突すると、ドミナント符号が調停勝ちするようになっている。
<通信装置の構成について>
マスター2mとスレーブ2sとは、クロックを供給するための構成の有無など一部構成が異なるが、概ね同様の構成を有している。すなわち、図2に示すように、通信装置2は、ドライバ回路4、レシーバ回路5および制御回路6を備えている。ドライバ回路4には、制御回路6から出力される送信信号TXが与えられている。ドライバ回路4は、送信信号TXに応じたデータをバス3を介して送信する。レシーバ回路5は、バス3を介して送信されたデータを受信し、受信信号RXとして制御回路6へ出力する。
制御回路6は、ロジック回路として構成されたものであり、送信信号TXを生成し、その送信信号TXをドライバ回路4に出力する。送信信号TXは、バス3の信号レベルをロウレベルまたはハイレベルのいずれにするかを指令する指令信号に相当する。この場合、送信信号TXは、2値の信号であり、ロウレベルのときにバス3の信号レベルをロウベルにすることを指令するとともにハイレベルのときにバス3の信号レベルをハイレベルにすることを指令するようになっている。また、制御回路6は、レシーバ回路5から出力される受信信号RXを入力し、その入力した受信信号RXに基づいて所定の処理を実行する。
<レシーバ回路の具体的な構成について>
図3に示すように、レシーバ回路5は、フィルタ回路7およびコンパレータ8を備えている。この場合、バス3の信号は、フィルタ回路7を介してコンパレータ8の非反転入力端子に与えられている。フィルタ回路7は、例えば低域通過フィルタ、つまりLPFなどであり、ノイズ対策として挿入されたものである。フィルタ回路7の出力信号は、バス3の信号に対し、ノイズが除去されるとともにフィルタ回路7の時定数に応じた遅れが生じた信号となる。
コンパレータ8の反転入力端子には、閾値信号Saが与えられている。閾値信号Saは、バス3の信号レベルがハイレベルからロウレベルに変化するエッジを検出するための閾値Thに対応した信号である。以下、このようなエッジのことを境界エッジとも称する。このような構成により、コンパレータ8は、バス3の信号レベルが閾値Thより高い場合にはハイレベルの信号を出力するとともに、バス3の信号レベルが閾値Thより低い場合にはロウレベルの信号を出力するようになっている。コンパレータ8の出力信号は、前述した受信信号RXとして制御回路6に与えられる。
上記構成のレシーバ回路5は、バス3の信号レベルがハイレベルからロウレベルに変化するエッジ、つまり境界エッジを検出することができる。具体的には、レシーバ回路5は、コンパレータ8の出力信号である受信信号RXがハイレベルからロウレベルへと転じたことをもって境界エッジを検出することができる。このように、レシーバ回路5は、エッジ検出回路としての機能を有する。
<ドライバ回路の構成について>
図4に示すように、ドライバ回路4は、ダイオードD1、抵抗R1、スイッチング素子11および駆動回路12を備えている。なお、図4では、スイッチング素子のことをSW素子と称している。ドライバ回路4において、バス3にはダイオードD1のカソードが接続されている。ダイオードD1のアノードは、プルアップ用の抵抗R1を介して電源電圧Vaが供給される電源線L1に接続されている。電源電圧Vaは、車両に搭載されるバッテリーの電源+Bから生成される+B系の電源電圧である。
具体的な構成は後述するが、スイッチング素子11は、オンすることによりバス3の信号レベルをロウレベルとすることができる素子である。駆動回路12は、ロウレベルの送信信号TXが与えられる期間、つまり送信信号TXがバス3の信号レベルをロウレベルにすることを指令する期間である第1期間にスイッチング素子11をオン駆動する。また、駆動回路12は、ハイレベルの送信信号TXが与えられる期間、つまり送信信号TXがバス3の信号レベルをハイレベルにすることを指令する期間である第2期間にスイッチング素子11をオフ駆動する。
駆動回路12は、出力バッファ13およびフィードバック回路14を備えている。出力バッファ13は、スイッチング素子11をオン駆動またはオフ駆動するための電圧を入力し、その入力した電圧である入力電圧VCM1に応じた出力電圧VCM3をスイッチング素子11の制御端子へと出力する。この場合、出力バッファ13は、第1期間には入力電圧VCM1と同等の電圧値の出力電圧VCM3を出力するとともに、第2期間には入力電圧VCM1より所定値だけ低い電圧値の出力電圧VCM3を出力するように構成されている。フィードバック回路14は、バス3と出力バッファ13の入力との間に接続されたものであり、バス3の信号を出力バッファ13の入力にフィードバックする。
<ドライバ回路の具体的な構成について>
図5に示すように、ドライバ回路4は、前述したバス調停が可能となるように、オープンドレイン出力の回路構成となっている。ドライバ回路4は、図4に示した構成に加え、ダイオードD2、スイッチS1、S2、電流源21、22などを備えている。なお、スイッチS1、S2、電流源21、22は、駆動回路12に含まれる。ドライバ回路4の出力段を構成するスイッチング素子11は、Nチャネル型のMOSトランジスタである。
スイッチング素子11のドレインは、ダイオードD2を逆方向に介してバス3に接続され、そのソースは、回路の基準電位である0Vとなるグランドに接続されている。ドライバ回路4の外部において、バス3にはダイオードD3のカソードが接続されている。ダイオードD3のアノードは、プルアップ用の抵抗R2を介して電源線L1に接続されている。なお、これらダイオードD3および抵抗R2は、マスター2mの場合にだけ設けられるものであり、スレーブ2sの場合には設けられていない。
ドライバ回路4には、制御回路6から与えられる送信信号TXと、その反転信号である送信信号TXバーと、が入力されている。なお、図5などでは、送信信号TXバーについて、TXの上に「-」を付して示している。スイッチS1の一方の端子は、電源電圧Vbが供給される電源線L2に接続され、その他方の端子は電流源21を介してノードN1に接続されている。電源電圧Vbは、例えば5V電源系など+B系の電源電圧とは別系統の電源電圧である。なお、電源電圧Vbは、+B系の電源電圧であってもよい。スイッチS2の一方の端子は、ノードN1に接続され、その他方の端子は電流源22を介してグランドに接続されている。
スイッチS1のオンオフは、送信信号TXバーにより制御される。具体的には、スイッチS1は、送信信号TXバーがハイレベルのときにオンされるとともに、送信信号TXバーがロウレベルのときにオフされる。また、スイッチS2のオンオフは、送信信号TXにより制御される。具体的には、スイッチS2は、送信信号TXがハイレベルのときにオンされるとともに、送信信号TXがロウレベルのときにオフされる。このように、スイッチS1、S2は、相補的にオンオフされるようになっている。
上記構成によれば、ノードN1の電圧が、前述したようにしてスイッチング素子11をオン駆動またはオフ駆動するための電圧である入力電圧VCM1となる。ノードN1は、出力バッファ13のノードNiに接続されている。ノードNiは、出力バッファ13に入力電圧VCM1を入力するための入力ノードである。ノードNiおよびバス3の間には、コンデンサC1および抵抗R3が直列接続されている。これらコンデンサC1および抵抗R3の直列回路により、フィードバック回路14が構成されている。
出力バッファ13は、ノードNi、ノードNo、トランジスタQ1、Q2、第1電位差発生素子23、第2電位差発生素子24、電流源25、26およびスイッチS3を備えている。トランジスタQ1は、PNP形バイポーラトランジスタである。トランジスタQ1のベースは、ノードN1に接続され、そのコレクタは、グランドに接続されている。トランジスタQ1のエミッタは、第1電位差発生素子23および電流源25を介して電源線L2に接続されている。このように、トランジスタQ1は、ノードNiおよび第1電位差発生素子23の間にベース・エミッタ間が接続されたものであり、第1介在素子として機能する。
具体的な構成は後述するが、第1電位差発生素子23としては、その端子間に、電流源25が発生する電流に応じた電位差を発生する素子を用いることができる。トランジスタQ2は、NPN形バイポーラトランジスタである。トランジスタQ2のベースは、第1電位差発生素子23および電流源25の相互接続ノードであるノードN2に接続され、そのコレクタは、電源線L2に接続されている。トランジスタQ2のエミッタは、第2電位差発生素子24および電流源26を介してグランドに接続されている。
このように、トランジスタQ2は、第1電位差発生素子23および第2電位差発生素子24の間にベース・エミッタ間が接続されたものであり、第2介在素子として機能する。具体的な構成は後述するが、第2電位差発生素子24としては、その端子間に、電流源26が発生する電流に応じた電位差を発生する素子を用いることができる。この場合、第2電位差発生素子24および電流源26の相互接続ノードが、出力電圧VCM3を出力するための出力ノードであるノードNoとなる。
上記構成によれば、第1電位差発生素子23および第2電位差発生素子24は、入力ノードNiおよび出力ノードNoの間に直列に介在するように設けられている。出力ノードNoは、スイッチング素子11の制御端子であるゲートに接続されている。これにより、出力バッファ13の出力電圧VCM3がスイッチング素子11のゲートに与えられるようになっている。
この場合、出力バッファ13は、トランジスタQ1のベース・エミッタ間順方向電圧および第1電位差発生素子23の端子間に発生する電位差である第1電位差V1の和と、トランジスタQ2のベース・エミッタ間順方向電圧および第2電位差発生素子24の端子間に発生する電位差である第2電位差V2の和と、が等しくなるように構成されている。本実施形態では、トランジスタQ1、Q2は、それらのベース・エミッタ間順方向電圧が互いに等しくなるような特性のものが用いられている。
そこで、本実施形態では、出力バッファ13は、第1電位差発生素子23の端子間に発生する第1電位差V1と、第2電位差発生素子24の端子間に発生する第2電位差V2と、が等しくなるように構成されている。第1電位差V1の値は、電流源25の電流値および第1電位差発生素子23の特性により定まるとともに、第2電位差V2の値は、電流源26の電流値および第2電位差発生素子24の特性により定まる。そのため、これらの値および特性を最適化することにより、第1電位差V1と第2電位差V2とを等しくすることができる。
スイッチS3は、第1電位差発生素子23の端子間に接続されている。スイッチS3のオンオフは、送信信号TXにより制御される。具体的には、スイッチS3は、送信信号TXがハイレベルのときにオンされるとともに、送信信号TXがロウレベルのときにオフされる。つまり、スイッチS3は、第1期間にはオフされるとともに、第2期間にはオンされる。これにより、第1期間にはスイッチS3がオフされることにより第1電位差発生素子23が有効化され、第2期間にはスイッチS3がオンされることにより第1電位差発生素子23が無効化されることになる。
したがって、出力バッファ13は、第1期間には、スイッチS3がオフされることにより、入力電圧VCM1に対し、第1電位差V1を加えるとともに第2電位差V2を減じた電圧を、出力電圧VCM3として出力する。また、出力バッファ13は、第2期間には、スイッチS3がオンされることにより、入力電圧VCM1に対し、第2電位差V2を減じた電圧を、出力電圧として出力するように構成されている。
第1期間におけるノードN2の電圧VCM2は、下記(1)式により表される。ただし、トランジスタQ1、Q2のベース・エミッタ間順方向電圧をVfとし、第1電位差および第2電位差をV1とする。
VCM2=VCM1+Vf+V1 …(1)
第1期間における出力電圧VCM3は、下記(2)式により表される。
VCM3=VCM2-Vf-V1
=VCM1+Vf+V1-Vf-V1=VCM1 …(2)
このように、出力バッファ13は、第1期間には、入力電圧VCM1と同等の電圧値の出力電圧VCM3を出力するように構成されている。
第2期間における電圧VCM2は、下記(3)式により表される。
VCM2=VCM1+Vf …(3)
第2期間における出力電圧VCM3は、下記(4)式により表される。
VCM3=VCM2-Vf-V1
=VCM1+Vf-Vf-V1=VCM1-V1 …(4)
このように、出力バッファ13は、第2期間には、入力電圧VCM1より第1電位差の値または第2電位差の値だけ低い電圧値の出力電圧VCM3を出力するように構成されている。
<出力バッファの具体的な構成について>
以下、出力バッファ13の構成を一層具体化したドライバ回路4の複数の構成例について、図6~図10を参照して説明する。
[1]第1構成例
図6に示すように、第1構成例の出力バッファ13では、スイッチS3、第1電位差発生素子23および第2電位差発生素子24の構成が具体化されている。この場合、スイッチS3は、Nチャネル型MOSトランジスタであるトランジスタQ3およびPチャネル型MOSトランジスタであるトランジスタQ4からなるアナログスイッチとして構成されている。トランジスタQ3のゲートには送信信号TXバーが与えられ、トランジスタQ4のゲートには送信信号TXが与えられている。このような構成によっても、スイッチS3は、第1期間にオフされるとともに第2期間にオンされるようになる。
また、この場合、第1電位差発生素子23がダイオードD4により構成されるとともに、第2電位差発生素子24がダイオードD5により構成されている。ダイオードD4のカソードは、トランジスタQ1のエミッタに接続され、そのアノードは電流源25を介して電源線L2に接続されている。ダイオードD5のアノードは、トランジスタQ2のエミッタに接続され、そのカソードは電流源26を介してグランドに接続されている。
第1構成例では、ダイオードD4、D5について、それらが搭載される半導体チップ内で隣接配置またはペアレイアウト指示するなどして順方向電圧Vfの特性ばらつきを抑えるようにすることが理想的である。なお、ダイオードD4、D5について、ディスクリート使用して実現せざるを得ない場合、チップレイアウト上、隣接配置が困難となる場合など、電圧Vfの特性ばらつきを抑えることが難しい場合、電流源25、26を可変電流源に変更し、それらの電流値を調整することによりダイオードD4、D5の電圧Vf、ひいては第1電位差および第2電位差を調節可能にすればよい。
[2]第2構成例
図7に示すように、第2構成例の出力バッファ13では、第1電位差発生素子23および第2電位差発生素子24の構成が具体化されている。この場合、第1電位差発生素子23は、PNP形バイポーラトランジスタであるトランジスタQ5により構成されている。トランジスタQ5は、そのベース・コレクタ間が接続されている、つまりダイオード接続されている。トランジスタQ5のコレクタは、トランジスタQ1のエミッタに接続され、そのエミッタは電流源25を介して電源線L2に接続されている。
また、この場合、第2電位差発生素子24は、PNP形バイポーラトランジスタであるトランジスタQ6により構成されている。トランジスタQ6は、そのベース・コレクタ間が接続されている、つまりダイオード接続されている。トランジスタQ6のエミッタは、トランジスタQ2のエミッタに接続され、そのコレクタは電流源26を介してグランドに接続されている。
第2構成例では、トランジスタQ5、Q6について、それらが搭載される半導体チップ内で隣接配置またはペアレイアウト指示するなどしてベース・エミッタ間順方向電圧VBEの特性ばらつきを抑えるようにすることが理想的である。なお、トランジスタQ5、Q6について、ディスクリート使用して実現せざるを得ない場合、チップレイアウト上、隣接配置が困難となる場合など、電圧VBEの特性ばらつきを抑えることが難しい場合、電流源25、26を可変電流源に変更し、それらの電流値を調整することによりトランジスタQ5、Q6の電圧VBE、ひいては第1電位差および第2電位差を調節可能にすればよい。なお、トランジスタQ5、Q6としては、ダイオード接続したNPN形バイポーラトランジスタを用いることもできる。
[3]第3構成例
図8に示すように、第3構成例の出力バッファ13では、第1電位差発生素子23および第2電位差発生素子24の構成が具体化されている。この場合、第1電位差発生素子23は、Pチャネル型MOSトランジスタであるトランジスタQ7により構成されている。トランジスタQ7は、そのゲート・ドレイン間が接続されている、つまりダイオード接続されている。トランジスタQ7のドレインは、トランジスタQ1のエミッタに接続され、そのソースは電流源25を介して電源線L2に接続されている。
また、この場合、第2電位差発生素子24は、Pチャネル型MOSトランジスタであるトランジスタQ8により構成されている。トランジスタQ8は、そのゲート・ドレイン間が接続されている、つまりダイオード接続されている。トランジスタQ8のソースは、トランジスタQ2のエミッタに接続され、そのドレインは電流源26を介してグランドに接続されている。
第3構成例によれば、第1構成例および第2構成例に比べ、回路面積を小さく抑えることができる。また、第3構成例によれば、後述する第4構成例に比べ、特性ばらつきを抑えやすいというメリットがある。第3構成例では、トランジスタQ7、Q8について、それらが搭載される半導体チップ内で隣接配置またはペアレイアウト指示するなどしてゲート閾値電圧VTの特性ばらつきを抑えるようにすることが理想的である。
なお、トランジスタQ7、Q8について、ディスクリート使用して実現せざるを得ない場合、チップレイアウト上、隣接配置が困難となる場合など、電圧VTの特性ばらつきを抑えることが難しい場合、電流源25、26を可変電流源に変更し、それらの電流値を調整することによりトランジスタQ7、Q8の電圧VT、ひいては第1電位差および第2電位差を調節可能にすればよい。なお、トランジスタQ7、Q8としては、ダイオード接続したNチャネル型MOSトランジスタを用いることもできる。
[4]第4構成例
図9に示すように、第4構成例の出力バッファ13では、第1電位差発生素子23および第2電位差発生素子24の構成が具体化されている。この場合、第1電位差発生素子23は、Pチャネル型MOSトランジスタであるトランジスタQ9のボディダイオードD6により構成されている。
トランジスタQ9は、そのソースがトランジスタQ1のエミッタに接続され、そのドレインが電流源25を介して電源線L2に接続されている。これにより、ボディダイオードD6は、そのカソードがトランジスタQ1のエミッタに接続され、そのアノードが電流源25を介して電源線L2に接続されている。トランジスタQ9のゲートは、電源線L2に接続されている。これにより、トランジスタQ9は、オフに固定されている。
また、この場合、第2電位差発生素子24は、Pチャネル型MOSトランジスタであるトランジスタQ10のボディダイオードD7により構成されている。トランジスタQ10は、そのドレインがトランジスタQ2のエミッタに接続され、そのソースが電流源26を介してグランドに接続されている。これにより、ボディダイオードD7は、そのアノードがトランジスタQ2のエミッタに接続され、そのカソードが電流源26を介してグランドに接続されている。トランジスタQ10のゲートは、電源線L2に接続されている。これにより、トランジスタQ10は、オフに固定されている。
第4構成例によれば、第1構成例および第2構成例に比べ、回路面積を小さく抑えることができる。第4構成例では、トランジスタQ9、Q10について、それらが搭載される半導体チップ内で隣接配置またはペアレイアウト指示するなどしてボディダイオードD6、D7の順方向電圧Vfの特性ばらつきを抑えるようにすることが理想的である。
なお、トランジスタQ9、Q10について、ディスクリート使用して実現せざるを得ない場合、チップレイアウト上、隣接配置が困難となる場合など、電圧Vfの特性ばらつきを抑えることが難しい場合、電流源25、26を可変電流源に変更し、それらの電流値を調整することによりボディダイオードD6、D7の電圧Vf、ひいては第1電位差および第2電位差を調節可能にすればよい。なお、トランジスタQ9、Q10としては、Nチャネル型MOSトランジスタを用いることもできる。
[5]第5構成例
図10に示すように、第5構成例の出力バッファ13では、第1電位差発生素子23および第2電位差発生素子24の構成が具体化されている。この場合、第1電位差発生素子23が抵抗素子R4により構成されるとともに、第2電位差発生素子24が抵抗素子R5により構成されている。抵抗素子R4の一方の端子は、トランジスタQ1のエミッタに接続され、その他方の端子は電流源25を介して電源線L2に接続されている。抵抗素子R5の一方の端子は、トランジスタQ2のエミッタに接続され、その他方の端子は電流源26を介してグランドに接続されている。抵抗素子R4、R5は、互いに同じ抵抗値を有するように設計される。
第5構成例では、抵抗素子R4、R5について、それらが搭載される半導体チップ内で隣接配置またはペアレイアウト指示するなどして特性ばらつきを抑えるようにすることが理想的である。なお、抵抗素子R4、R5について、ディスクリート使用して実現せざるを得ない場合、チップレイアウト上、隣接配置が困難となる場合、互いに異なる抵抗値のものを使用せざるを得ない場合など、電流源25、26を可変電流源に変更し、それらの電流値を調整することにより第1電位差および第2電位差を調節可能にすればよい。
第5構成例によれば、第1~第4構成例に比べ、設計変更が容易であるというメリットがある。すなわち、ダイオード、バイポーラトランジスタ、MOSトランジスタなどは、下地、つまり拡散層から作成する必要があるが、抵抗素子はアルミ配線などの上地から作成することができる。そのため、下地から作成する必要がある第1~第4構成例に比べ、上地から作成できる第5構成例のほうが、第1電位差および第2電位差の値を修正するなどの設計変更を容易に行うことができる。
このように、スイッチS3は、アナログスイッチにより構成することができる。また、第1電位差発生素子23および第2電位差発生素子24は、ダイオード、バイポーラトランジスタ、MOSトランジスタおよび抵抗素子のうちいずれかにより構成することができる。上記した各構成例では、第1電位差発生素子23および第2電位差発生素子24は、例えば第1構成例ではいずれもダイオード、第2構成例ではいずれもバイポーラトランジスタ、といったように、いずれも同一の素子により構成されていたが、互いに異なる素子により構成することもできる。
例えば、第1電位差発生素子23をダイオードにより構成するとともに第2電位差発生素子24をMOSトランジスタにより構成することが可能である。また、例えば、第1電位差発生素子23をMOSトランジスタにより構成するとともに第2電位差発生素子24をバイポーラトランジスタにより構成することが可能である。また、例えば、第1電位差発生素子23をバイポーラトランジスタにより構成するとともに第2電位差発生素子24を抵抗素子により構成することが可能である。
次に、上記構成の作用について説明する。
CXPI通信では、マスター2mは、他ノードと通信しないときには常にレセッシブ符号を出力しており、レセッシブ符号時の精度の高い1周期の時間が前述したクロックとなる。スレーブ2sは、このクロックに同期して動作する。具体的には、スレーブ2sは、レシーバ回路5により前述したようにして境界エッジが検出されたタイミング、つまりクロックの立ち下がりエッジが検出されたタイミングに同期して動作する。スレーブ2sでは、制御回路6は、境界エッジが検出されると、駆動回路12に対してロウレベルの送信信号TXを与える。そして、駆動回路12は、ロウレベルの送信信号TXが与えられるとスイッチング素子11をオン駆動する。
ただし、上記構成では、バス3上の信号レベルがハイレベルからロウレベルに変化したタイミング、つまりクロックの立ち下がりタイミングである境界エッジからスイッチング素子11のゲート電圧Vgがゲート閾値電圧Vtに達してスイッチング素子11がオンする時点までに要する時間である遅延時間が存在する。この遅延時間は、フィルタ回路7での遅延、コンパレータ8での遅延、制御回路6におけるロジック遅延およびドライバ回路4の回路動作に伴う遅延などにより定まる時間となる。このような遅延時間は、CXPIの通信プロトコルにより規定された時間を満足する必要がある。上記構成では、レシーバ回路5の前段にノイズ除去用のフィルタ回路7が挿入されており、このようなフィルタ回路が設けられていない構成に比べて遅延時間が長くなる。
図11は、通信システム1における各部の動作波形を模式的示すタイミングチャートである。図11において、(a)はバス3の信号波形、(b)は各通信装置2、つまり各ノードの受信信号RXの波形、(c)は論理値「0」を出力するスレーブ2sの送信信号TXの波形、(d)は論理値「0」を出力するスレーブ2sのバス3への出力波形、(e)はバス3の信号波形、(f)は各ノードの受信信号RXの波形、(g)はスイッチング素子11のゲート電圧Vg、つまり出力バッファ13の出力電圧VCM3の波形を示している。
なお、図11(a)、(b)では、マスター2mが論理値「1」の信号を送信する場合と論理値「0」の信号を送信する場合との両方を表すため、後半部分が破線で示されている。また、図11(e)、(f)では、スレーブ2sが論理値「0」の信号をマスター2mの送信信号に被せた場合を示している。図11に示すように、バス3の信号レベルが閾値THに達した時点taからスレーブ2sのバス3への出力の信号レベルが閾値TH_domに達した時点tcまでの期間についてCXPIの通信プロトコルにより規定された時間Taを満足する必要がある。この場合、閾値THは、電源電圧Vaの電圧値の50%程度の値であり、閾値TH_domは電源電圧Vaの電圧値の30%以下の値である。
このようなことから、通信装置2においてスイッチング素子11をオン駆動する際、スイッチング素子11のゲート電圧Vg、つまり、駆動回路12が備える出力バッファ13の出力電圧VCM3を出来る限り早くゲート閾値電圧Vtまで立ち上げる必要がある。そこで、この場合、スレーブ2sの送信信号TXがロウレベルとなる期間である第1期間、つまり時点tbから時点tdの期間、出力バッファ13においてスイッチS3がオフされる。これにより、時点tbから時点tdの期間、出力バッファ13は、入力電圧VCM1と同等の電圧値の出力電圧VCM3をスイッチング素子11のゲートに出力することが可能となり、その結果、出力遅延を低減することができる。
また、スレーブ2sの送信信号TXがハイレベルとなる期間である第2期間、つまり時点tb以前の期間および時点td以降の期間、出力バッファ13においてスイッチS3がオンされる。これにより、時点tb以前の期間および時点td以降の期間、出力バッファ13は、入力電圧VCM1より所定値だけ低い電圧値の出力電圧VCM3をスイッチング素子11のゲートに出力することが可能となり、その結果、ノイズマージンを十分に確保することができる。
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態のドライバ回路4において、出力バッファ13は、送信信号TXがバス3の信号レベルをロウレベルにすることを指令する第1期間には入力電圧VCM1と同等の電圧値の出力電圧VCM3を出力するとともに、送信信号TXがバス3の信号レベルをハイレベルにすることを指令する第2期間には入力電圧VCM1より所定値だけ低い電圧値の出力電圧VCM3を出力するように構成されている。このような構成によれば、第1期間、つまり駆動回路12がスイッチング素子11をオン駆動する期間、出力バッファ13が入力電圧VCM1と同等の電圧値の出力電圧VCM3を出力することにより、出力バッファ13の入力に対する応答について追随性および対称性が良好に維持される。
また、上記構成によれば、第2期間、つまり駆動回路12がスイッチング素子11をオフ駆動する期間、出力バッファ13が入力電圧VCM1より所定値だけ低い電圧値の出力電圧VCM3を出力することにより、出力電圧VCM3をより負側に維持することができ、フィードバック回路14を介して出力バッファ13の入力へと伝搬するノイズなどに起因する誤オンの発生を低く抑えることができる。なお、このようにノイズ耐性を良好にすることができる効果は、スイッチング素子11のゲート閾値電圧Vtが低い値であるほど有益なものとなる。したがって、本実施形態によれば、遅延時間がむやみに長くなることを抑制しつつノイズ耐性を良好に維持することができるという優れた効果が得られる。
このような本実施形態により得られる効果は、図12に示すシミュレーション結果からも明らかである。なお、図12において、(a)は本実施形態の出力バッファ13の各部の電圧波形、(b)は本実施形態に対して第1電位差発生素子23およびスイッチS3を省いた構成である比較例における出力バッファ13の各部の電圧波形を示している。図12に示すように、比較例では、入力電圧VCM1が立ち上がり始める時点teから入力電圧VCM1が第1電位差である電圧Vf分だけ上昇した時点tfまで出力電圧VCM3が立ち上がっていない。つまり、比較例では、出力電圧VCM3が立ち上がり始める時点tfは、入力電圧VCM1の立ち上がり始める時点teから電圧Vf分だけ遅延している。
このようなことから、比較例では、出力バッファ13の入力電圧VCM1に対する出力電圧VCM3の応答について、電圧Vf分だけ追随性および対称性が悪化するため、通信プロトコルにおける遅延規定を満足できなくなるおそれがある。これに対し、本実施形態では、入力電圧VCM1が立ち上がり始める時点teからほとんど遅延なく出力電圧VCM3が立ち上がり始めるようになっている。そのため、本実施形態によれば、出力バッファ13の入力電圧VCM1に対する出力電圧VCM3の応答について、追随性および対称性が良好に維持されるため、通信プロトコルにおける遅延規定を十分に満足することが可能となる。
また、本実施形態では、第2期間に出力バッファ13が入力電圧VCM1より所定値だけ低い電圧値の出力電圧VCM3を出力することにより、スイッチング素子11をオンからオフに素早く転じさせることが可能となる。つまり、本実施形態によれば、バス3の信号レベルをロウレベルからハイレベルに切り替える際、より素早くハイレベルに切り替えることが可能となり、その結果、通信プロトコルにおける受信ノードがハイレベルを検出するべき時間規定を十分に満足することができる。
出力バッファ13は、入力ノードNiおよび第1電位差発生素子23の間にベース・エミッタ間が接続されたトランジスタQ1と、第1電位差発生素子23および第2電位差発生素子24の間にベース・エミッタ間が接続されたトランジスタQ2と、を備え、トランジスタQ1のベース・エミッタ間順方向電圧および第1電位差の和と、トランジスタQ2のベース・エミッタ間順方向電圧および第2電位差の和と、が等しくなるように構成されている。また、出力バッファ13は、第1電位差発生素子23の端子間に発生する第1電位差と、第2電位差発生素子24の端子間に発生する第2電位差と、が等しくなるように構成されている。このような構成によれば、第1期間、出力バッファ13は、入力電圧VCM1と同等の電圧値の出力電圧VCM3をより確実に出力することが可能となり、入力に対する応答についての追随性および対称性を一層良好なものとすることができる。
このような本実施形態に特有の構成は、通信システム1において用いられる他の通信装置であるスレーブ2sに適用することができる。本実施形態に特有の構成をスレーブ2sに適用した場合、通信プロトコルにおける遅延規定の満足およびノイズ耐性の向上といった効果を奏することから、特に好適なものとなる。ただし、本実施形態に特有の構成は、通信システム1におけるマスター2mに適用することもできる。本実施形態に特有の構成をマスター2mに適用した場合においても、高ビットレート通信時には、レセッシブからドミナント状態への遷移を早くすることができるため、プロトコル成立上有利になることから有益なものとなる。
(第2実施形態)
以下、第1実施形態に対しドライバ回路の具体的な構成が変更された第2実施形態について図13および図14を参照して説明する。
図13に示すように、本実施形態の通信装置が備えるドライバ回路31は、図5に示した第1実施形態のドライバ回路4に対し、駆動回路12に代えて駆動回路32を備えている点などが異なっている。
駆動回路32は、駆動回路12に対し、スイッチS1、S2および電流源21、22に代えてトランジスタQ31~Q34、電流源33~35、ダイオードD31およびコンデンサC31を備えている点などが異なっている。トランジスタQ31は、Nチャネル型のMOSトランジスタであり、そのゲートには送信信号TXが与えられている。トランジスタQ31のソースはグランドに接続され、そのドレインはノードN31に接続されている。
トランジスタQ32は、Nチャネル型のMOSトランジスタであり、そのソースはダイオードD31を順方向に介してグランドに接続されている。トランジスタQ32は、いわゆるダイオード接続されており、そのゲートおよびドレインは、共通接続されるとともにノードN31に接続されている。電流源33は、電源電圧Vbが供給される電源線L2とノードN31との間に接続されている。トランジスタQ33は、NPN形のバイポーラトランジスタであり、そのベースはノードN31に接続されている。トランジスタQ33のコレクタは電源線L2に接続され、そのエミッタはノードN32に接続されている。
ノードN32は、出力バッファ13のノードNiに接続されている。トランジスタQ34は、Pチャネル型のMOSトランジスタであり、そのゲートには送信信号TXが与えられている。トランジスタQ34のソースは電源線L2に接続され、そのドレインは電流源34を介してノードN32に接続されている。電流源35は、ノードN32とグランドとの間に接続されている。コンデンサC31は、ノードN32とグランドとの間に接続されている。この場合、コンデンサC1、C31は、静電容量値が互いに同一のものが用いられている。
本実施形態では、電流源34は、電流源35に対して例えば2倍の電流を出力するようになっている。すなわち、電流源34の電流値I1と、電流源35の電流値I2と、は、例えば下記(5)式に示す関係となっている。
I1=2×I2…(5)
この場合、送信信号TXは、ハイレベルのときにはスイッチング素子11のオフ駆動を指令するオフ指令となり、ロウレベルのときにはスイッチング素子11のオン駆動を指令するオン指令となる。また、この場合、送信信号TXのハイレベルは、トランジスタQ31をオンするとともにトランジスタQ34をオフすることができる電圧値であり、例えば電源電圧Vbと同等の電圧値となっている。また、送信信号TXのロウレベルは、トランジスタQ31をオフするとともにトランジスタQ34をオンすることができる電圧値であり、例えば0Vとなっている。
本実施形態の通信装置には、前述した遅延時間、つまりレシーバ回路5により検出されるエッジからスイッチング素子11がオンする時点までに要する遅延時間を短縮するための遅延短縮部36が設けられている。この場合、駆動回路32のトランジスタQ31、Q32、Q33、ダイオードD31および電流源33により、遅延短縮部36が構成されている。つまり、本実施形態では、遅延短縮部36は、駆動回路32に設けられている。
また、この場合、トランジスタQ32は、そのゲート閾値電圧Vt(Q32)が、スイッチング素子11がオンに転じるゲート閾値電圧Vt(11)に対して所定値αだけ低いものが用いられている。すなわち、ゲート閾値電圧Vt(Q32)とゲート閾値電圧Vt(11)との関係は、下記(6)式により表される。
Vt(Q32)=Vt(11)-α (6)
詳細は後述するが、遅延短縮部36は、駆動回路32がスイッチング素子11をオン駆動するオン期間の開始時点を含む期間に、スイッチング素子11のゲート電圧が、ゲート閾値電圧Vt(11)よりも所定値αだけ低い閾値電圧Vt(Q32)まで上昇するように電圧制御を行うことで遅延時間を短縮するようになっている。なお、この場合、スイッチング素子11のゲート電圧、つまり出力バッファ13の出力電圧VCM3が制御電圧に相当し、ゲート閾値電圧Vt(Q32)が第1電圧V31に相当する。
また、このような遅延短縮部36が設けられた駆動回路32は、上記した電圧制御が行われることによりスイッチング素子11のゲート電圧がゲート閾値電圧Vt(Q32)まで上昇した後、スイッチング素子11のゲートに一定の電流を供給する定電流制御を行うようになっている。
次に、上記構成の作用について図14のタイミングチャートに基づいて説明する。
なお、図14などでは、マスター2mにおける送信信号TXを送信信号TXMと称し、スレーブ2sにおける送信信号TXを送信信号TXSと称し、スイッチング素子11のゲート電圧をVgと称し、スイッチング素子11の閾値電圧Vt(11)をVtと称している。また、図14などのタイミングチャートでは、2値の信号について、ロウレベルを「L」と称し、ハイレベルを「H」と称している。
この場合、送信信号TXMがハイレベルからロウレベルに転じる時点t1がクロックの立ち下がりであり、境界エッジに相当する。時点t1以前の期間、送信信号TXSはハイレベルとなっている。このような期間、駆動回路32は、スイッチング素子11をオフ駆動する。駆動回路32がスイッチング素子11をオフ駆動するオフ期間における各部の動作は、次のようなものとなる。
すなわち、送信信号TXSがハイレベルであることから、トランジスタQ31がオンするとともにトランジスタQ34がオフする。トランジスタQ34がオフすることから、電流源35の電流によりスイッチング素子11のゲート・ソース間容量が放電されることでゲート電圧Vgが低下してスイッチング素子11がオフする。そのため、時点t1以前の期間、バス3の信号レベルはハイレベルに維持されている。また、トランジスタQ31がオンすることから、トランジスタQ32、Q33がオフする。そのため、遅延短縮部36は、ノードNiの電圧ひいてはスイッチング素子11のゲート電圧Vgに何ら影響を及ぼさない。
時点t1において送信信号TXMがロウレベルに転じた後、バス3の信号レベルが低下して閾値THに達した時点t2において、レシーバ回路5により境界エッジが検出される。なお、時点t1から時点t2までの時間には、マスター2m側での信号出力に関する遅延、フィルタ回路7およびコンパレータ8による遅延時間などが含まれる。このように境界エッジが検出されると、制御回路6は、送信信号TXSをハイレベルからロウレベルに転じさせる。なお、時点t2から送信信号TXSがロウレベルに転じる時点t3までの時間には、制御回路6によるロジック遅延などが含まれる。
時点t3以降の期間、送信信号TXSはロウレベルとなる。このような期間、駆動回路32は、スイッチング素子11をオン駆動する。駆動回路32がスイッチング素子11をオン駆動するオン期間における各部の動作は、次のようなものとなる。すなわち、送信信号TXSがロウレベルであることから、トランジスタQ31がオフするとともにトランジスタQ34がオンする。トランジスタQ31がオフすることから、トランジスタQ32、Q33がオンする。トランジスタQ32がオンすることから、電源線L2から電流源33、トランジスタQ32およびダイオードD31を介してグランドへと電流が流れる。
これにより、ノードN31の電圧VN31は、下記(7)式により表される電圧となる。ただし、ダイオードD31の順方向電圧をVfとする。
VN31=Vt(Q32)+Vf …(7)
また、トランジスタQ33がオンすることから、トランジスタQ33のエミッタ電圧、つまりノードN32の電圧VN32は、下記(8)式により表される電圧となる。ただし、トランジスタQ33のベース・エミッタ間電圧Vbeが、ダイオードD31の順方向電圧Vfと同程度の電圧であるものとする。なお、電圧VN32は、出力バッファ13の入力電圧VCM1に相当する。
VN32=Vt(Q32)=Vt(11)-α …(8)
上記構成では、スイッチング素子11のゲート電圧Vgは、電圧VN32と同等の電圧となる。そのため、スイッチング素子11のゲート電圧Vgは、時点t3から僅かな時間が経過した時点t4において、0Vから「Vt-α」へと急峻に上昇する。なお、時点t3から時点t4までの時間には、各トランジスタの動作に伴う遅延時間などが含まれる。
この場合、トランジスタQ34がオンしていることから、スイッチング素子11のゲートに向けて、電流源34の出力電流と電流源35の出力電流との差に相当する電流値I2の電流が供給されることになる。そのため、上述した電圧制御が行われることによりスイッチング素子11のゲート電圧Vgが「Vt-α」まで上昇した後、スイッチング素子11のゲートに対して一定の電流が供給される定電流制御が行われる。
このような定電流制御が行われることにより、スイッチング素子11のゲート電圧Vgは、時点t4から僅かな時間が経過した時点t5から一定の傾きで比較的緩やかに上昇する。このときのゲート電圧Vgの上昇の傾きは、電流源34、35の各電流値I1、I2およびコンデンサC1、C31の静電容量値などにより定まる。そして、スイッチング素子11のゲート電圧Vgがゲート閾値電圧Vtに達した時点t6において、スイッチング素子11がオンする。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、さらに次のような効果が得られる。すなわち、本実施形態の通信装置は、境界エッジからスイッチング素子11がオンする時点までに要する遅延時間を短縮する遅延短縮部36を備えている。このような構成によれば、遅延時間を短縮することが可能となり、本実施形態の構成のようにレシーバ回路5の前段にフィルタ回路7を挿入するような場合であっても、通信プロトコルを十分に満足することができる。
この場合、遅延短縮部36は、ドライバ回路4の駆動回路32に設けられたものであり、駆動回路32がスイッチング素子11をオン駆動するオン期間の開始時点を含む期間に、スイッチング素子11のゲート電圧が、ゲート閾値電圧Vtよりも所定値αだけ低い第1電圧V31まで上昇するように電圧制御を行うことで遅延時間を短縮する。以下、このような本実施形態による遅延時間の短縮効果について、スイッチング素子11をオン期間を通じて定電流駆動によりオン駆動するような従来構成に相当する比較例と比較しながら説明する。
比較例では、図14に一点鎖線で示すように、スイッチング素子11のゲート電圧は、本実施形態においてゲート電圧が上昇を開始する時点t4よりも後の時点t6付近から一定の傾きで比較的緩やかに上昇する。このように、比較例では、スイッチング素子11のゲート電圧が、オン期間を通じて一定の傾きで比較的緩やかに上昇するため、ゲート電圧がゲート閾値電圧Vtに達してスイッチング素子11がオンに転じるまでには、比較的長い時間を要することになる。
そのため、比較例では、駆動回路32の動作に起因する遅延時間は、時点t1から時点t7までの時間となり、本実施形態における遅延時間である時点t1から時点t6までの時間に比べて長い時間となる。これに対し、本実施形態では、前述した電圧制御が行われることにより、スイッチング素子11のゲート電圧は、オン期間の開始時点を含む期間に第1電圧V31まで比較的急峻に一度に上昇する。
そして、本実施形態では、このような電圧制御を行うことによりゲート電圧が第1電圧V31まで上昇した後は、定電流制御が行われることにより、ゲート電圧がゲート閾値電圧Vtに達してスイッチング素子11がオンに転じる。このような本実施形態によれば、比較例に比べ、少なくともスイッチング素子11のゲート電圧が第1電圧V31まで一度に上昇される分だけ、スイッチング素子11のターンオン時間、つまり駆動回路32の動作に起因する遅延時間が短縮される。
また、本実施形態の駆動回路32は、上述したように電圧制御を行うことによりスイッチング素子11のゲート電圧が第1電圧V31まで上昇した後、スイッチング素子11のゲートに一定の電流を供給する定電流制御を行う。このような構成によれば、スイッチング素子11のゲート電圧は、第1電圧V31まで上昇した後は、一定の傾きで比較的緩やかに上昇してゲート閾値電圧Vtに達することになる。
ゲート電圧が急峻に上昇してゲート閾値電圧Vtに達してスイッチング素子11がオンされると、そのオン動作に伴うエミッションノイズの悪化が懸念される。しかし、上記構成によれば、ゲート電圧が比較的緩やかに上昇してゲート閾値電圧Vtに達してスイッチング素子11がオンされる。そのため、本実施形態によれば、駆動回路32の動作に起因する遅延時間を短縮しつつ、このようなエミッションノイズ悪化のリスクを軽減することができる。
(第3実施形態)
以下、第1実施形態に対しドライバ回路および制御回路の具体的な構成が変更された第5実施形態について図15~図17を参照して説明する。
図15に示すように、本実施形態の通信装置が備えるドライバ回路41は、図13に示した第2実施形態のドライバ回路31に対し、駆動回路32に代えて駆動回路42を備えている点などが異なっている。
駆動回路42は、駆動回路32に対し、遅延短縮部36が省かれている点、トランジスタQ34に代えてスイッチS41を備えている点などが異なっている。スイッチS41の一方の端子は電源線L2に接続され、その他方の端子は電流源34を介してノードN32に接続されている。スイッチS41のオンオフは、送信信号TXにより制御される。スイッチS41は、送信信号TXがハイレベルのときにオフされるとともに、送信信号TXがロウレベルのときにオンされる。
スイッチS41は、例えばMOSトランジスタなどの半導体スイッチング素子を用いて構成することができる。この場合、電流源35は、その動作を停止することができる構成となっている。具体的には、電流源35は、後述するカット信号PSCMがハイレベルである期間には動作を停止するとともに、カット信号PSCMがロウレベルである期間には動作を実行するようになっている。
図16に示すように、本実施形態の通信装置が備える制御回路43は、学習制御部44、予測制御部45および先出し制御部46としての機能を備えている。学習制御部44は、エッジ検出回路として機能するレシーバ回路5による境界エッジの検出結果に基づいて境界エッジの周期を学習する学習制御を実行する。この場合、学習制御部44は、1ビットレートを計測するハードウェアタイマカウンタであるカウンタ44aを備えている。カウンタ44aは、境界エッジが検出された時点から次に境界エッジが検出される時点までカウント動作を実行する。
具体的には、カウンタ44aは、境界エッジが検出された時点でカウント動作を開始し、以降は、境界エッジが検出される時点毎にカウント値をクリアした後にカウント動作を再開する。学習制御部44は、カウンタ44aのカウント値に基づいて境界エッジの周期を学習する。すなわち、学習制御部44は、カウンタ44aがクリアされるときのカウント値を境界エッジの周期の学習値として毎回学習する。このような学習値は、ビットレートが一定であることから、一定の値を示すことになる。例えばビットレートが20kbpsであり且つカウンタ44aが4.5MHzのシステムクロックで動作する場合、学習値は「225」で一定となる。
予測制御部45は、学習制御部44が学習制御を実行することにより学習された境界エッジの周期に基づいて、次回の境界エッジが検出されるタイミングを予測する予測制御を実行する。具体的には、予測制御部45は、学習制御により学習された学習値およびカウンタ44aの現在のカウント値に基づいて次回の境界エッジが検出されるタイミングを予測することができる。
先出し制御部46は、予測制御部45が予測制御を実行することにより予測されたタイミングよりも前の時点において駆動回路42に対してオン指令、つまりロウレベルの送信信号TXを与える先出し制御を実行する。具体的には、先出し制御部46は、カウンタ44aのカウント値が学習値に一致する時点よりも所定のクロック数だけ前の時点においてロウレベルの送信信号TXの出力を開始する。
例えばビットレートおよびシステムクロックが前述したような条件である場合、先出し制御部46は、カウンタ44aのカウント値が「220」でカウンタマッチしたときにロウレベルの送信信号TXの出力を開始するようになっている。なお、上記所定のクロック数の設定、つまり予測されたタイミングよりもどれだけ前の時点において出力を開始するかの設定については、各種の仕様などに応じて適宜変更および調整することができる。
詳細は後述するが、学習制御部44、予測制御部45および先出し制御部46により上述した各制御が実行されることにより、境界エッジからスイッチング素子11がオンする時点までに要する遅延時間が短縮される。つまり、この場合、学習制御部44、予測制御部45および先出し制御部46により、遅延短縮部47が構成されている。このように、本実施形態では、遅延短縮部47は、制御回路43に設けられている。
制御回路43は、前述したカット信号PSCMを生成する。カット信号PSCMは、先出し制御が実行されることによりロウレベルの送信信号TXの出力が開始される時点から予測制御により予測された次回の境界エッジが検出されるタイミングまでの期間である先出し期間においてハイレベルとなるとともに、その他の期間においてロウレベルとなる。
次に、上記構成の作用について図17のタイミングチャートに基づいて説明する。
この場合、駆動回路42がスイッチング素子11をオフ駆動するオフ期間における各部の動作は、次のようなものとなる。すなわち、送信信号TXSがハイレベルであることから、スイッチS41がオフする。これにより、電流源35の電流によりスイッチング素子11のゲート・ソース間容量が放電されることでゲート電圧Vgが低下してスイッチング素子11がオフする。
この場合、制御回路43は、前述した各制御を実行することにより、第2実施形態の制御回路6が送信信号TXSをハイレベルからロウレベルに転じさせる時点t3よりも前の時点t51において、送信信号TXSをハイレベルからロウレベルに転じさせる。時点t51以降の期間、送信信号TXSがロウレベルとなる。このような期間、駆動回路42は、スイッチング素子11をオン駆動する。駆動回路42がスイッチング素子11をオン駆動するオン期間における各部の動作は、次のようなものとなる。
すなわち、送信信号TXSがロウレベルであることから、スイッチS41がオンする。また、時点t51から時点t3の先出し期間には、カット信号PSCMがハイレベルとなる。そのため、先出し期間、電流源34の出力電流は、コンデンサC1、C31のそれぞれを充電するように分岐して流れる。その後、時点t3においてカット信号PSCMがロウレベルに転じると、スイッチング素子11のゲートに向けて、電流源34の出力電流と電流源35の出力電流との差に相当する電流値I2の電流が供給されることになる。
このような定電流制御が行われることにより、スイッチング素子11のゲート電圧Vgは、時点t51から僅かな時間が経過した時点t52から一定の傾きで比較的緩やかに上昇する。このときのゲート電圧Vgの上昇の傾きは、電流源34、35の各電流値I1、I2およびコンデンサC1、C31の静電容量値などにより定まる。そして、スイッチング素子11のゲート電圧Vgがゲート閾値電圧Vtに達した時点t53において、スイッチング素子11がオンする。
以上説明した本実施形態によっても、境界エッジからスイッチング素子11がオンする時点までに要する遅延時間を短縮する遅延短縮部47を備えているため、第2実施形態と同様の効果が得られる。この場合、制御回路43に設けられた遅延短縮部47が、各種の制御を実行することにより、送信信号TXを従来構成に相当する第2実施形態において説明した比較例よりも前倒ししたタイミングでロウレベルに切り替えるようになっている。そのため、本実施形態によれば、送信信号TXを前倒しするタイミングの設定によって、駆動回路42の動作に起因する遅延時間だけでなく、制御回路43におけるロジック遅延、フィルタ回路7での遅延、コンパレータ8での遅延なども含めた総合的な遅延時間を大幅に短縮することが可能となる。
本実施形態の駆動回路42は、第2実施形態において説明した比較例と同様、スイッチング素子11をオン期間を通じて定電流駆動によりオン駆動する構成となっている。そのため、本実施形態では、ゲート電圧が比較的緩やかに上昇してゲート閾値電圧Vtに達してスイッチング素子11がオンされる。したがって、本実施形態によれば、スイッチング素子11のオン動作に伴うエミッションノイズ悪化のリスクを軽減することができる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について図18および図19を参照して説明する。
図18に示すように、本実施形態の通信装置51は、第2実施形態において説明したドライバ回路31、第3実施形態において説明した制御回路43およびレシーバ回路5を備えている。つまり、本実施形態では、駆動回路32および制御回路43の双方に、エッジからスイッチング素子11がオンする時点までに要する遅延時間を短縮する遅延短縮部が設けられている。この場合、駆動回路32に設けられた遅延短縮部36が第1遅延短縮部として機能するとともに、制御回路43に設けられた遅延短縮部47が第2遅延短縮部として機能する。
次に、上記構成の作用について図19のタイミングチャートに基づいて説明する。
この場合、駆動回路32がスイッチング素子11をオフ駆動するオフ期間における各部の動作は、第2実施形態において説明した動作と同様の動作となる。また、この場合、制御回路43は、前述した各制御を実行することにより、第2実施形態の制御回路6が送信信号TXSをハイレベルからロウレベルに転じさせる時点t3よりも前の時点t61において、送信信号TXSをハイレベルからロウレベルに転じさせる。時点t61以降の期間、送信信号TXSがロウレベルとなる。このような期間、駆動回路32は、スイッチング素子11をオン駆動する。駆動回路32がスイッチング素子11をオン駆動するオン期間における各部の動作は、次のようなものとなる。
すなわち、送信信号TXSがロウレベルであることから、トランジスタQ31がオフするとともにトランジスタQ34がオンする。トランジスタQ31がオフすることから、トランジスタQ32、Q33がオンする。トランジスタQ32がオンすることから、電源線L2から電流源33、トランジスタQ32およびダイオードD31を介してグランドへと電流が流れる。
これにより、ノードN31の電圧VN31は、前述した(7)式により表される電圧となる。また、トランジスタQ33がオンすることから、トランジスタQ33のエミッタ電圧、つまりノードN32の電圧VN32は、前述した(8)式により表される電圧となる。上記構成では、スイッチング素子11のゲート電圧Vgは、電圧VN32と同等の電圧となる。そのため、スイッチング素子11のゲート電圧Vgは、時点t61において、0Vから「Vt-α」へと急峻に上昇する。
この場合、トランジスタQ34がオンしていることから、スイッチング素子11のゲートに向けて、電流源34の出力電流と電流源35の出力電流との差に相当する電流値I2の電流が供給されることになる。そのため、上述した電圧制御が行われることによりスイッチング素子11のゲート電圧Vgが「Vt-α」まで上昇した後、スイッチング素子11のゲートに対して一定の電流が供給される定電流制御が行われる。
このような定電流制御が行われることにより、スイッチング素子11のゲート電圧Vgは、時点t61から僅かな時間が経過した時点t62から一定の傾きで比較的緩やかに上昇する。このときのゲート電圧Vgの上昇の傾きは、電流源34、35の各電流値I1、I2およびコンデンサC1、C31の静電容量値などにより定まる。そして、スイッチング素子11のゲート電圧Vgがゲート閾値電圧Vtに達した時点t63において、スイッチング素子11がオンする。
以上説明した本実施形態によれば、境界エッジからスイッチング素子11がオンする時点までに要する遅延時間を短縮する遅延短縮部として、第2実施形態と同様の遅延短縮部36および第3実施形態と同様の遅延短縮部47を備えているため、第2実施形態および第3実施形態と同様の効果が得られる。しかも、この場合、ゲート電圧がゲート閾値電圧Vtに達してスイッチング素子11がオンに転じる時点t63は、第2実施形態で説明した比較例においてスイッチング素子11がオンに転じる時点t7はもちろん、第3実施形態においてスイッチング素子11がオンに転じる時点t53よりも前の時点となっている。したがって、本実施形態によれば、第2実施形態および第3実施形態に比べ、さらに遅延時間の短縮を図ることができる。
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
本発明は、上記各実施形態において例示したCXPI通信を行う通信装置2、51などに限らず、伝送路を介してデータを送受信する複数の通信装置のうちいずれか一つの通信装置の通信に同期して他の通信装置が送信を行う通信システムにおいて用いられる通信装置全般に適用することができる。例えば、本発明は、LIN通信を行う通信装置に適用することもできる。また、本発明を適用した通信装置によれば、LINおよびCXPIの共用化を図ることもできる。なお、LINとは、Local Interconnect Networkの略称である。
ドライバ回路4などの出力段に設けられるスイッチング素子としては、スイッチング素子11のようなMOSトランジスタに限らずともよく、例えば、バイポーラトランジスタ、GaAs-MESFETなど、各種の半導体スイッチング素子を用いることができる。
第1介在素子としては、入力ノードNiおよび第1電位差発生素子23の間にゲート・ソース間が接続されたPチャネル型MOSトランジスタを用いることができる。また、第2介在素子としては、第1電位差発生素子23および第2電位差発生素子24の間にゲート・ソース間が接続されたNチャネル型MOSトランジスタを用いることができる。第1介在素子および第2介在素子として上記したMOSトランジスタを用いる場合、第1介在素子のゲート閾値電圧および第1電位差の和と、第2介在素子のゲート閾値電圧および第2電位差の和と、が等しくなるように構成すればよい。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
1…通信システム、2、2a、2b、2c、51…通信装置、3…バス、4、31、41…ドライバ回路、5…レシーバ回路、6、43…制御回路、11…スイッチング素子、12、32…駆動回路、13…出力バッファ、14…フィードバック回路、23…第1電位差発生素子、24…第2電位差発生素子、36、47…遅延短縮部、D4、D5…ダイオード、Q1…トランジスタ、Q2…トランジスタ、Q5、Q6…トランジスタ、Q7、Q8…トランジスタ、Q9、Q10…トランジスタ、S3…スイッチ、R4、R5…抵抗素子。

Claims (10)

  1. 伝送路を介してデータを送受信する複数の通信装置のうちいずれか一つの通信装置の通信に同期して他の通信装置が送信を行う通信システムにおいて用いられる前記通信装置であって、
    前記伝送路上で優位な信号レベルを優位レベルとし、劣位な信号レベルを劣位レベルとしたとき、
    オンすることにより前記伝送路の信号レベルを前記優位レベルとすることができるスイッチング素子(11)と、
    前記伝送路の信号レベルを前記優位レベルまたは前記劣位レベルのいずれにするかを指令する指令信号を生成する制御回路(6、43)と、
    前記指令信号が前記伝送路の信号レベルを前記優位レベルにすることを指令する第1期間に前記スイッチング素子をオン駆動するとともに、前記指令信号が前記伝送路の信号レベルを前記劣位レベルにすることを指令する第2期間に前記スイッチング素子をオフ駆動する駆動回路(12、32)と、
    を備え、
    前記駆動回路は、
    前記スイッチング素子をオン駆動またはオフ駆動するための電圧を入力し、その入力した電圧である入力電圧に応じた出力電圧を前記スイッチング素子の制御端子へと出力する出力バッファ(13)と、
    前記伝送路の信号を前記出力バッファの入力にフィードバックするフィードバック回路(14)と、
    を備え、
    前記出力バッファは、前記第1期間には前記入力電圧と同等の電圧値の前記出力電圧を出力するとともに、前記第2期間には前記入力電圧より所定値だけ低い電圧値の前記出力電圧を出力するように構成されている通信装置。
  2. 前記出力バッファは、
    前記入力電圧を入力するための入力ノード(Ni)と、
    前記出力電圧を出力するための出力ノード(No)と、
    前記入力ノードおよび前記出力ノードの間に直列に介在するように設けられた電位差を発生する第1電位差発生素子(23)および第2電位差発生素子(24)と、
    前記第1電位差発生素子の端子間に接続されたスイッチ(S3)と、
    を備え、
    前記第1期間には、前記スイッチがオフされることにより、前記入力電圧に対し、前記第1電位差発生素子の端子間に発生する電位差である第1電位差を加えるとともに前記第2電位差発生素子の端子間に発生する電位差である第2電位差を減じた電圧を、前記出力電圧として出力し、
    前記第2期間には、前記スイッチがオンされることにより、前記入力電圧に対し、前記第2電位差を減じた電圧を、前記出力電圧として出力するように構成されている請求項1に記載の通信装置。
  3. 前記出力バッファは、
    前記入力ノードおよび前記第1電位差発生素子の間にベース・エミッタ間が接続されたPNP形バイポーラトランジスタまたはゲート・ソース間が接続されたPチャネル型MOSトランジスタである第1介在素子(Q1)と、
    前記第1電位差発生素子および前記第2電位差発生素子の間にベース・エミッタ間が接続されたNPN形バイポーラトランジスタまたはゲート・ソース間が接続されたNチャネル型MOSトランジスタである第2介在素子(Q2)と、
    を備え、
    前記第1介在素子のベース・エミッタ間順方向電圧またはゲート閾値電圧および前記第1電位差の和と、前記第2介在素子のベース・エミッタ間順方向電圧またはゲート閾値電圧および前記第2電位差の和と、が等しくなるように構成されている請求項1または2に記載の通信装置。
  4. 前記出力バッファは、前記第1電位差発生素子の端子間に発生する前記第1電位差と、前記第2電位差発生素子の端子間に発生する前記第2電位差と、が等しくなるように構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
  5. 前記第1電位差発生素子および前記第2電位差発生素子は、ダイオード(D4、D5)、バイポーラトランジスタ(Q5、Q6)、MOSトランジスタ(Q7、Q8、Q9、Q10)および抵抗素子(R4、R5)のうちいずれかにより構成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の通信装置。
  6. 前記通信システムにおいて用いられる前記他の通信装置に適用される請求項1から5のいずれか一項に記載の通信装置。
  7. さらに、前記伝送路の信号レベルが前記劣位レベルから前記優位レベルに変化するエッジを検出するエッジ検出回路(5)を備え、
    前記駆動回路(32)および前記制御回路(43)のうち少なくとも一方には、前記エッジから前記スイッチング素子がオンする時点までに要する遅延時間を短縮する遅延短縮部(36、47)が設けられている請求項1から6のいずれか一項に記載の通信装置。
  8. 前記遅延短縮部(36)は、
    前記駆動回路(32)に設けられたものであり、
    前記駆動回路が前記スイッチング素子をオン駆動するオン期間の開始時点を含む期間に、前記スイッチング素子の制御端子の電圧である制御電圧が、前記スイッチング素子がオンに転じる閾値電圧よりも所定値だけ低い第1電圧まで上昇するように電圧制御を行うことで前記遅延時間を短縮するようになっており、
    前記駆動回路は、
    前記電圧制御を行うことにより前記制御電圧が前記第1電圧まで上昇した後、前記スイッチング素子の制御端子に一定の電流を供給する定電流制御を行う請求項7に記載の通信装置。
  9. 前記遅延短縮部(47)は、
    前記制御回路(43)に設けられたものであり、
    前記エッジ検出回路による検出結果に基づいて前記エッジの周期を学習する学習制御と、
    前記学習制御により学習された前記エッジの周期に基づいて、次回の前記エッジが検出されるタイミングを予測する予測制御と、
    前記予測制御により予測されたタイミングよりも前の時点において前記駆動回路に対して前記伝送路の信号レベルを前記優位レベルにすることを指令する前記指令信号を与える先出し制御と、
    を実行することにより前記遅延時間を短縮する請求項7に記載の通信装置。
  10. 前記遅延短縮部は、前記駆動回路(32)に設けられた第1遅延短縮部(36)および前記制御回路(43)に設けられた第2遅延短縮部(47)を備え、
    前記第1遅延短縮部は、前記駆動回路が前記スイッチング素子をオン駆動するオン期間の開始時点を含む期間に、前記スイッチング素子の制御端子の電圧である制御電圧が、前記スイッチング素子がオンに転じる閾値電圧よりも所定値だけ低い第1電圧まで上昇するように電圧制御を行うことで前記遅延時間を短縮するようになっており、
    前記駆動回路は、
    前記電圧制御を行うことにより前記制御電圧が前記第1電圧まで上昇した後、前記スイッチング素子の制御端子に一定の電流を供給する定電流制御を行い、
    前記第2遅延短縮部は、
    前記エッジ検出回路による検出結果に基づいて前記エッジの周期を学習する学習制御と、
    前記学習制御により学習された前記エッジの周期に基づいて、次回の前記エッジが検出されるタイミングを予測する予測制御と、
    前記予測制御により予測されたタイミングよりも前の時点において前記駆動回路に対して前記伝送路の信号レベルを前記優位レベルにすることを指令する前記指令信号を与える先出し制御と、
    を実行することにより前記遅延時間を短縮する請求項7に記載の通信装置。
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