JP2023109245A - 運転指示システムおよび運転指示方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】性能回復運転を適切に実行する。
【解決手段】運転指示システムは、エンジンと前記エンジンの排気ガスを浄化する後処理装置とを含むエンジンシステムと、前記後処理装置の性能を回復させるための運転である前記エンジンシステムの性能回復運転を自動で制御する制御装置とを各々が有する複数の制御システムと、前記複数の制御システムを遠隔監視する監視装置とを備え、前記監視装置は、各前記制御システムから各前記エンジンシステムの運転状態を示す運転データを定期的に取得する取得部と、前記運転データに基づき前記後処理装置の性能の低下を予測する予測部と、所定の性能低下が予測された前記後処理装置を有する前記制御システムに対して前記性能回復運転の頻度の増加を指示する運転指示部とを備える。
【選択図】図1
【解決手段】運転指示システムは、エンジンと前記エンジンの排気ガスを浄化する後処理装置とを含むエンジンシステムと、前記後処理装置の性能を回復させるための運転である前記エンジンシステムの性能回復運転を自動で制御する制御装置とを各々が有する複数の制御システムと、前記複数の制御システムを遠隔監視する監視装置とを備え、前記監視装置は、各前記制御システムから各前記エンジンシステムの運転状態を示す運転データを定期的に取得する取得部と、前記運転データに基づき前記後処理装置の性能の低下を予測する予測部と、所定の性能低下が予測された前記後処理装置を有する前記制御システムに対して前記性能回復運転の頻度の増加を指示する運転指示部とを備える。
【選択図】図1
Description
本開示は、運転指示システムおよび運転指示方法に関する。
特許文献1には、次のような触媒異常検出装置が記載されている。すなわち、特許文献1に記載されている触媒異常検出装置は、先ず酸化触媒の上流側排気温度を判定に望ましい特定の温度に調整し、その後、未燃燃料を酸化触媒に供給する。そして、この触媒異常検出装置は、正常品と劣化品における上流側排気温度に対する下流側排気温度の変化量の違いを利用して酸化触媒の劣化を判定する。
ところで、エンジンの排気ガスを浄化する後処理装置では、排気ガスの温度を上昇させるなどすることで、後処理装置の劣化した性能を回復させる運転(以下、性能回復運転という)が自動的に実行される場合がある。性能回復運転が適切に実行された場合、後処理装置の性能を維持することができる。一方、性能回復運転が適切に実行されなかった場合、性能の劣化が進行し、性能回復運転が長時間にわたってしまったり、または、作業を停止して安定状態で性能回復運転を実行しなければならなかったりする。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、性能回復運転を適切に実行することができる運転指示システムおよび運転指示方法を提供することを目的とする。
本開示の運転指示システムは、エンジンと前記エンジンの排気ガスを浄化する後処理装置とを含むエンジンシステムと、前記後処理装置の性能を回復させるための運転である前記エンジンシステムの性能回復運転を自動で制御する制御装置とを各々が有する複数の制御システムと、前記複数の制御システムを遠隔監視する監視装置とを備え、前記監視装置は、各前記制御システムから各前記エンジンシステムの運転状態を示す運転データを定期的に取得する取得部と、前記運転データに基づき前記後処理装置の性能の低下を予測する予測部と、所定の性能低下が予測された前記後処理装置を有する前記制御システムに対して前記性能回復運転の頻度の増加を指示する運転指示部とを備える。
本開示の運転指示システムおよび運転指示方法は、性能回復運転を適切に実行することができる。
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
(運転指示システムの基本的構成)
図1および図2を参照して、本開示の実施形態に係る運転指示システムの基本的構成について説明する。図1は、本開示の実施形態に係る運転指示システム500の構成例を示すシステム図である。図2は、本開示の実施形態に係る車両20の構成例を示すブロック図である。
図1および図2を参照して、本開示の実施形態に係る運転指示システムの基本的構成について説明する。図1は、本開示の実施形態に係る運転指示システム500の構成例を示すシステム図である。図2は、本開示の実施形態に係る車両20の構成例を示すブロック図である。
図1に示す運転指示システム500は、サーバ300と、複数の車両20A~20Dとを備える。車両20A~20Dは、例えば、油圧ショベル20Aおよび20C、ダンプトラック20B、ブルドーザ20D等の建設車両である。ただし、車両20A~20Dは、建設車両に限定されない。なお、車両20A~20Dを総称する場合、車両20という。
図2に示すように、車両20は、エンジンシステム10と、エンジンコントローラ100と、車体コントローラ200と、モニタ8とを備える。エンジンシステム10は、エンジン1と、排気管3と、DPF装置5と、HCドーザ7とを備える。
なお、DPF装置5は、本開示に係るエンジン1の排気ガスを浄化する後処理装置の一例である。また、車両20は、本開示に係る制御システムの一例である。また、エンジンコントローラ100と車体コントローラ200とを組み合わせた構成が、本開示に係る制御装置の一例である。
なお、図2等では、本実施形態のエンジンシステム10において(あるいはコントローラ100と車体コントローラ200について)、DPF装置5に係る構成を主に示し、燃料噴射制御等の他の機能に係る構成については図示を適宜省略している。また、HCは炭素と水素を含んだ有機化合物の総称である。
エンジン1は、内燃機関の一構成例であり、本実施形態では例えば多気筒のディーゼルエンジンである。エンジン1は、例えば燃料噴射装置、ターボチャージャー等の構成を備える。ターボチャージャーは、エンジン1の排気(排気ガス)を利用してエンジン1の吸気を圧縮する過給機である。排気管3は、エンジン1の排気を、DPF装置5を通して大気に排気する。
DPF装置5は、エンジン1の排気中に含まれる粒子状物質を浄化する装置である。DPF装置5は、エンジン1の排気管3内に設けられたDOC51とDPF52とを備える。DOC51は、DOC(Diesel Oxidation Catalyst;ディーゼル酸化触媒)である。DPF52は、DPF(Diesel Particulate Filter;ディーゼルパティキュレートフィルタ)であり、エンジン1の排気中のPM(Paticulate Matter;粒子状物質)を捕集するフィルタである。DPF装置5は、DOC51の作用によってDPF52を再生する。DPF装置5は、DPF52の上流に設けられたDOC51で変換された二酸化窒素によって下流で捕集されたススを酸化して二酸化炭素とし、ススを除去する。
また、DPF装置5は、DOC51の入口の排気温度を検知するDOC入口温度センサ94と、DOC51の出口の排気温度を検知するDOC出口温度センサ95と、DPF52の入口と出口の差圧を検知する1組の圧力センサ96および97とを有する。以下では、このDPF52の入口と出口の差圧をDPF差圧あるいはDPF圧損ともいう。DOC入口温度センサ94、DOC出口温度センサ95、ならびに、圧力センサ96および97の各検出値は、エンジンコントローラ100へ出力される。
HCドーザ7は、DOC51の上流で排気管3内に燃料(HC)を噴射(以下、HCドージング等という)する排気管燃料噴射装置である。HCドーザ7によるHCドージングは、エンジンコントローラ100によって制御される。
モニタ8は、例えば表示パネルと入力パネルとを有し、表示装置および入力装置として機能し、エンジンコントローラ100や車体コントローラ200の指示に応じて所定の文字や画像を表示したり、ユーザ(オペレータ)の入力操作に応じた信号をエンジンコントローラ100や車体コントローラ200へ出力したりする。
エンジンコントローラ100および車体コントローラ200は、例えばマイクロコンピュータ等のコンピュータと、そのコンピュータの周辺回路や周辺装置とを用いて構成することができる。エンジンコントローラ100は、例えば車体コントローラ200の指示に従って、エンジン1を制御したり、HCドーザ7を制御したりする。
車体コントローラ200は、例えばエンジン1とDPF装置5以外の車両20の各部を制御する。また、車体コントローラ200は、エンジンコントローラ100との間でエンジンシステム10の運転状態を示す運転データを共有する。また、車体コントローラ200は、運転データを定期的にサーバ300へ送信する。
運転データは、エンジンシステム10の運転状態を示すデータである。運転データは、例えば、エンジンの燃料消費量、排気ガスの流量、排気ガスの温度の少なくとも一つに対応するデータを含む。エンジンの燃料消費量はエンジンの負荷率に対応する。排気ガスの温度は、例えば、DOC51の入口の排気温度や出口の排気温度である。エンジンの燃料消費量や排気ガスの流量は、例えばエンジン1の運転状態に応じて算出することができる。
また、運転データは、例えばDPF装置5の性能低下に対応する所定の事象の発生を示すデータを含む。所定の事象とは、例えば、自動での通常の性能回復運転に対して追加の処置が必要となる場合のDPF装置5の性能低下に対応する。なお、性能回復運転は、後述する再生運転と乾燥運転とを含む。追加の処置とは、例えば、性能回復運転の継続時間を増加させる処置、手動で再生運転を実施する処置等である。通常の性能回復運転とは所定の継続時間で実行される性能回復運転である。
また、所定の事象の発生は、例えば、DOC再生不良、DPF再生不良、DOC閉塞異常の少なくとも1つに対応する故障コードの発生を含む。DOC再生不良に対応する故障コードは、後述する乾燥運転を実行してもDOC51の閉塞が解消されない場合にエンジンコントローラ100が生成するデータである。DPF再生不良に対応する故障コードは、後述する再生運転を実行してもDPF52の性能低下が解消されない場合にエンジンコントローラ100が生成するデータである。このDPF再生不良に対応する故障コードは、再生運転後にDPF52への所定量を超えるPMの堆積が検出された場合に発せられる故障コードに対応する。DPF52に再生不良が発生した場合、原因の一つとしてDOC51の性能低下が考えられる。よって、このDPF再生不良に対応する故障コードは、DOC51の性能低下が検出された場合に発せられる故障コードにも対応する。DOC閉塞異常に対応する故障コードは、後述するDOC51の閉塞が検出された場合にエンジンコントローラ100が生成するデータである。このDOC閉塞異常に対応する故障コードは、DOC51の性能低下が検出された場合に発せられる故障コードに対応する。
また、車体コントローラ200は、サーバ300から性能回復運転の頻度の増加を指示する運転指示を受信する。車体コントローラ200は、性能回復運転の頻度の増加を指示する運転指示を受信した場合、エンジンコントローラ100による通常の性能回復運転の実行頻度を増加させる。
本実施形態のエンジンシステム10では、DPF52に堆積したPMを燃焼させるために定期的に再生運転(DPF再生)が行われる。再生運転は、劣化したDPF装置5の浄化性能を回復させるための運転である。再生運転では、排気ガスへのHC(燃料)噴射が行われ、DPF装置5の温度が上昇する。すなわち、再生運転では、排気の温度やDOC51の温度が強制的に上昇させられる。再生運転は、例えばエンジン1内で排気に燃料をわずかに混合するためのポスト噴射によって、あるいは、ポスト噴射とDPF装置5の上流の排気管3内部へのHCドーザ7によるHCドージングとの組み合わせや、HCドージングによって、DPF52上流に配置されたDOC51内部でHCを燃焼させ、DPF52の温度を上げることによって行われる。
なお、本実施形態のエンジンシステム10では、再生運転が、自動再生と定置手動再生(手動再生)とを含む。自動再生は、例えば、ある条件が満たされたときに通常稼動状態でエンジンコントローラ100等によって自動的に実行される再生運転である。ここで、通常稼動状態とは、エンジン回転数を強制的に固定する等せずに、通常の運転や作業が行える状態である。また、定置手動再生は、ユーザの操作に応じて再生の必要がある際に任意のタイミングでエンジンコントローラ100等によって実行される再生運転である。定置手動再生は、通常稼動状態では十分に排気温度が上がらず、DPF装置5の温度を安定的に目的の温度に制御できない場合に、ユーザの許可の下、通常稼動を停止させて、DPF装置5の性能を回復させる再生運転である。定置手動再生では、エンジンコントローラ100等が、まず、モニタ8を用いて、定置手動再生を行うことができる状態であること、また、行うようにとの要求をユーザへ出す。これに対し、ユーザがモニタ8を用いて、定置手動再生を実行するよう指示を出すと、エンジンコントローラ100はエンジン回転数をある回転に固定させて、排気温度を上昇させて、再生運転を実行する。
なお、自動再生は、例えば定期的に所定時間、実行される。また、自動再生は、例えば、圧力センサ96および97が検知したDPF52の差圧に基づき、DPF52への所定量を超えるPMの堆積が検出(推定)された場合に実行される。自動再生は、例えば、DOC出口温度が例えば所定の再生ターゲット温度に合うように、エンジン1のポスト噴射の制御とHCドーザ7によるHCドージング量の制御とによって、DOC出口温度をフィードバック制御することで実行される。ただし、HCがドーズ(噴射)されるのは、DOC入口温度がDOC51に含まれる触媒が活性化する温度(ライトオフ温度、例えば約250℃)に達してからとなる。
また、本実施形態のエンジンシステム10では、再生運転とは別に、DOC51の性能を回復するための運転として乾燥運転(DOC乾燥運転)がエンジンコントローラ100等によって自動的に定期的に(あるいは所定のタイミング毎に)所定の継続時間で実行される。乾燥運転は、排気ガスへの燃料噴射を行わずに排気ガスの温度を上昇させることでDOC51を乾燥させる運転である。エンジン1の使用状況によってPMがハニカム構造を有するDOC51の前面に堆積してくる場合がある。PMは例えば未燃燃料と混合した状態で堆積する。PMの堆積によってDOC51の前面が閉塞するとDOC51の酸化性能が低下する。DOC51の酸化性能が低下すると、DPF再生時に十分に温度が上げられない、あるいは、未燃燃料がDOC51を通過するなどの問題が生じる。これを回復させるため、エンジン1の排気温度を上昇させてDOC51を乾燥させるDOC乾燥運転が実施される。乾燥運転の際、エンジン1の排気温度は、エンジンコントローラ100によって、例えば、エンジン1の噴射タイミングを変更したり、ターボチャージャーの運転状態を変更したりすることで行われる。また、DOC51の前面の閉塞は、例えば、再生運転時のDOC入口温度センサ94が検知したDOC51の入口の排気温度とDOC出口温度センサ95が検知したDOC51の出口の排気温度の温度差に基づいて検出することができる。温度差が所定値より小さい場合、DOC51の性能が劣化していることを検出することができる。
なお、本実施形態では、再生運転と乾燥運転とをあわせてエンジンシステム10の性能回復運転という。性能回復運転は、後処理装置の一例としてのDPF装置5の性能を回復させるための運転である。
一方、サーバ300は、プロセッサを備え、プロセッサ等のハードウェアと、プロセッサが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、取得部31と、予測部32と、運転指示部33とを備える。なお、サーバ300は、本開示に係る監視装置の一例である。
取得部31は、各車両20A~20Dからエンジンシステム10の運転状態を示す運転データを定期的に取得する。運転データは、上述したように、例えば、エンジンの燃料消費量、排気ガスの流量、排気ガスの温度の少なくとも一つに対応するデータと、DPF装置5の性能低下に対応する所定の事象の発生を示すデータとを含む。
予測部32は、運転データに基づきDPF装置5の性能の低下を予測する。予測部32は、例えば、上記事象が発生した車両20の運転データを教師データとして機械学習した機械学習モデルを用いて、DPF装置5の性能の低下を予測する。この場合、機械学習モデルは、運転データを説明変数とする。また機械学習モデルは、目的変数を、例えば上記事象が発生した車両20の運転データとの相関の度合とすることができる。あるいは、目的変数を、例えば上記事象の発生の可能性の度合とすることができる。あるいは、目的変数を、例えば上記事象の発生までの予測期間とすることができる。
運転指示部33は、所定の性能低下が予測されたDPF装置5を有する車両20に対して性能回復運転の頻度の増加を指示する。図1に示す例では、車両20Dに対して運転指示が送信されている。
以上のように、図1および図2を参照して説明した運転指示システム500によれば、通常の性能回復運転を適切な頻度で実行することができる。
(第1実施形態)
次に、図3~図8を参照して、性能回復運転を乾燥運転とする場合を例として、運転指示システム500について詳細に説明する。なお、図2を参照して説明したエンジンシステム10の構成は本実施形態において同一である。以下、本実施形態における、エンジンコントローラ100、車体コントローラ200、およびサーバ300の構成および動作について説明する。なお、図3に示すサーバ300において、市場運転データ取得部301が図1に示す取得部31に対応する。図3に示す注意車両特定部305が、図1に示す予測部32に対応する。図3に示す運転指示送信部306が、図1に示す運転指示部33に対応する。なお、図3に示す運転指示システム500では、車両20が運転データを一旦所定のクラウド400に保存し、サーバ300はクラウド400から運転データを取得する。
次に、図3~図8を参照して、性能回復運転を乾燥運転とする場合を例として、運転指示システム500について詳細に説明する。なお、図2を参照して説明したエンジンシステム10の構成は本実施形態において同一である。以下、本実施形態における、エンジンコントローラ100、車体コントローラ200、およびサーバ300の構成および動作について説明する。なお、図3に示すサーバ300において、市場運転データ取得部301が図1に示す取得部31に対応する。図3に示す注意車両特定部305が、図1に示す予測部32に対応する。図3に示す運転指示送信部306が、図1に示す運転指示部33に対応する。なお、図3に示す運転指示システム500では、車両20が運転データを一旦所定のクラウド400に保存し、サーバ300はクラウド400から運転データを取得する。
図3は、本開示の実施形態に係る運転指示システム500の機能的構成の例を示すブロック図である。図4は、本開示の実施形態に係る予測モデルを説明するためのブロック図である。図5~図7は、本開示の実施形態に係る運転データの構成例を説明するための模式図である。図8は、本開示の実施形態に係る運転指示システムの動作例を示すフローチャートである。
図3に示すサーバ300は、機能的構成として、市場運転データ取得部301、市場運転データ保存部302、モデル学習部303、DOC効率低下予測モデル304、注意車両特定部305、および、運転指示送信部306を備える。市場運転データ取得部301は、各車両20の運転データを取得して、市場運転データ保存部302に保存する。市場運転データ保存部302は、市場運転データ取得部301が取得した各車両20の運転データを保存する。モデル学習部303は、市場運転データ保存部302が保存する運転データを用いてDOC効率低下予測モデル304を機械学習する。DOC効率低下予測モデル304は、学習済み機械学習モデルであり、モデル学習部303によって機械学習される。注意車両特定部305は、DOC効率低下予測モデル304を用いて、各車両20のDOC51の効率低下を予測する。運転指示送信部306は、所定の効率低下が予測されたDOC51を備えた車両20に対して乾燥運転の頻度の増加を指示する運転指示を送信する。なお、運転指示送信部306は、例えば、乾燥運転の頻度の増加を指示しない車両20に対して指示しない旨の運転指示を送信してもよい。
ここで図4を参照して、DOC効率低下予測モデル304とモデル学習部303について説明する。図4に示すように、DOC効率低下予測モデル304は、運転データD1を説明変数として入力し、目的変数として故障コード発生車両の運転データとの相関関係に関するデータD2を出力する機械学習モデルである。DOC効率低下予測モデル304は、例えばニューラルネットワークを要素とする学習済みモデルであり、入力される多数のデータに対して求める解が出力されるよう、機械学習によりニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化されている。DOC効率低下予測モデル304は、例えば、入力から出力までの演算を行うプログラムと当該演算に用いられる重み付け係数(パラメータ)の組合せで構成される。
また、DOC効率低下予測モデル304は、モデル学習部303によって、故障コードを発生した車両20の運転データD4を教師データとして、機械学習される。この場合、故障コードは、DOC再生不良、DPF再生不良またはDOC閉塞異常に対応する故障コードである。また、運転データD4は、故障コードを発生した際の運転データと、同一車両20の過去の運転データを含む。なお、目的変数として出力するデータD2は、例えば、故障コードを発生した車両20の運転データとの相関の度合、故障コードを発生する可能性の度合、故障コードの発生までの予測期間等とすることができる。運転指示送信部306は、例えば、車両20の運転データとの相関の度合が所定値を超えた場合、故障コードを発生する可能性の度合が所定値を超えた場合、あるいは、故障コードの発生までの予測期間が所定値を下回った場合に、当該運転データを送信した車両20に対して乾燥運転の頻度の増加を指示する運転指示を送信する。
なお、運転データは、例えば、図5~図7に示す形態とすることができる。図5~図7は、運転データのイメージ(値はすべて仮)を表す。図5に示す運転データD11は、トレンドデータを表し、車両20の各センサ、内部データについて例えば日々の最大、最小、および平均値を含む。なお、故障コードが発せられた場合、発報した日にコード名が並ぶようにすることができる。データは DOC入口温度[℃]、エンジン排気ガス流量[g/s]、燃料噴射量[mg/str]などである。なお、mg/strはエンジン1ストロークあたりの燃料噴射量である。図5に示す例では、データ(1)はDOC入口温度[℃]、データ(2)はエンジン排気ガス流量[g/s]を示している。
図6に示す運転データD12は、1次元時間頻度MAP(マップ)である。運転データD12は、センサ値が離散化した軸(出力の上下限を等分割する)のどこに存在していたかを、例えば1s毎のカウントを例えば日毎に累積したデータで表す。データは、DOC入口温度[℃]、排気ガス流量[g/s]などである。
図7に示す運転データD13は、2次元MAPである。運転データD13は、例えば、時間頻度を表すデータとすることができる。エンジンの運転状態が、離散化したX軸(エンジン回転数[rpm])とY軸(エンジン出力トルク[N・m]、燃料噴射量[mg/str]、など)のどこに存在していたかを、例えば1s毎のカウントを日々累積したデータで表す。あるいは、運転データD13は、制御値の平均値を表すデータとすることができる。離散化したX軸(エンジン回転数[rpm])とY軸(燃料噴射量[mg/str])の各セルにおける、センサ(各温度[℃]、圧力[kPa]など)、または、アクチュエータの値(各バルブ開度[%]など)を日毎に平均したデータとすることができる。図7に示す運転データD13では、Y軸はエンジン出力トルク[N・m]を示している。
図3に戻り、車体コントローラ200は、機能的構成として、運転指示受信部201、運転データ送信部202、乾燥運転間隔演算部203、ならびに、乾燥運転開始および継続時間指示部204を備える。エンジンコントローラ100は、機能的構成として、乾燥運転指示受信部101、乾燥運転実施部102、および乾燥運転実施状態送信部103を備える。
運転指示受信部201は、サーバ300が当該車両20に向けて送信した運転指示を受信する。運転データ送信部202は、定期的に、所定の運転データをクラウド400を介してサーバ300へ送信する。運転データの送信は、例えば1日1回としてもよいし、ほぼリアルタイムで送信してもよい。乾燥運転間隔演算部203は、乾燥運転の頻度の増加を指示する運転指示を受信した場合、通常の頻度よりも増大させた頻度となるように乾燥運転間隔を演算する。なお、乾燥運転の頻度の増加を指示する運転指示を受信しなくなった場合、または、乾燥運転の頻度の増加を指示しない旨の運転指示を受信した場合、乾燥運転間隔演算部203は、乾燥運転間隔を通常の頻度に戻す。乾燥運転開始および継続時間指示部204は、前回、乾燥運転を実施した時刻から乾燥運転間隔演算部203が演算した運転間隔が経過した場合に、乾燥運転の継続時間(例えば何分間乾燥運転を継続して実施するのかという指示)を示す情報ととともに、乾燥運転の実行の開始の指示を乾燥運転指示としてエンジンコントローラ100へ送信する。
一方、エンジンコントローラ100では、乾燥運転指示受信部101が、乾燥運転開始および継続時間指示部204が送信した乾燥運転指示を受信する。乾燥運転実施部102は、乾燥運転指示受信部101が受信した乾燥運転指示に従い、乾燥運転を実施する。乾燥運転実施状態送信部103は、乾燥運転の実施結果を車体コントローラ200へ送信する。乾燥運転は、例えば、エンジン始動時やエンジンアイドリング時に実施することが望ましい。また、乾燥運転実施状態送信部103は、乾燥運転が完了した場合または乾燥運転を行うタイミングが発生しなかった場合にそれらの旨を示す情報を車体コントローラ200へ送信する。
次に、図8を参照して図3に示す運転指示システム500の動作例について説明する。図8に示す処理は、サーバ300が運転指示を出す1台の車両20を特定する場合のサーバ300と当該車両20の動作例に対応する。なお、図8では「Y」がYesを意味し、「N」がNoを意味する。
サーバ300では、市場運転データ取得部301が、個別の運転データを取得する(ステップS11)。次に、注意車両特定部305が、DOC効率低下予測モデル304に当該運転データを入力し、DOCの劣化の可能性等を予測する(ステップS12)。DOCの劣化が予測されなかった場合(ステップS13:N)、市場運転データ取得部301が、次の個別の運転データを取得する(ステップS11)。
DOCの劣化が予測された場合(ステップS13:Y)、運転指示送信部306が対象の車両20に運転指示を送信する(ステップS14)。
車両20では、車体コントローラ200において、運転指示受信部201が運転指示を受信し、乾燥運転間隔演算部203がサーバ300の運転指示とエンジン1の運転状態に基づき乾燥運転の実施間隔を演算するとともに、乾燥運転開始および継続時間指示部204が乾燥運転開始の指示と継続時間を送信する(ステップS15)。
次に、エンジンコントローラ100において、乾燥運転指示受信部101が乾燥運転開始の指示と継続時間を受信し、乾燥運転実施部102が車体コントローラ200の指示に基づき乾燥運転を実施する(ステップS16)。次に、乾燥運転実施状態送信部103が、乾燥運転の完了を車体コントローラ200に送信する(ステップS17)。
以上のように、本実施形態では、エンジン1の排気に設けられた、DOC(ディーゼル酸化触媒)と、稼働中の車両から収集した、DOCに関係する故障コードに対応したDOC入口温度、DOC出口温度、排気ガス流量、エンジンの負荷率(燃焼消費量)の少なくとも1つのデータを取得し、DOCの劣化とエンジン状態の相関関係を機械学習により演算し、DOCの劣化を予想する。
DOCに関係する故障コードは、例えば、DOC再生不良,DPF再生不良、DOC閉塞異常の少なくとも1つである。
また、故障コードを取得したときのDOCに関するデータを教師データとして機械学習モデルを機械学習する。
また、機械学習により、市場で稼働する車両のDOCの劣化の状態を予測する。
また、劣化の予想される車両に対し、短時間の再生(乾燥)運転を実施させる。
なお、再生運転は例えばエンジン始動時、または アイドリング時に実施するようにしてもよい。
本実施形態によれば、DOCの酸化性能が大きく劣化する前に対処することができるので、乾燥運転が長時間にわたること、または作業を停止して安定状態で乾燥運転を実施することをできるだけ回避することができる。また、DOCの酸化性能の劣化につながる運転を事前に検知した場合に、より簡便な対処方法でDOC性能を回復させることができる。また、例えば建設機械の使われ方は多岐に渡るため、未知の運転方法がDOCの酸化性能の劣化につながる可能性があるが、市場データに基づきこれを検知できる可能性がある。
(第1実施形態の変形例1)
第1実施形態は、DOC前面のPMの堆積の予兆を検知して対処するものであったが、例えば、運転指示システムを尿素堆積物の生成の予兆を検知して対処するものとしてもよい。この場合、後処理装置は、尿素選択触媒還元装置(尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システム)を備える。この場合、車両20において、後処理装置は、尿素選択触媒還元装置と酸化触媒とを含む。また、性能回復運転は、排気ガスへ燃料噴射を行って後処理装置の温度を上昇させる再生運転である。また、事象の発生は、尿素選択触媒還元装置への所定量を超える尿素由来堆積物の堆積が検出された場合に発せられる故障コードの発生に対応する。また、運転指示送信部(運転指示部)は、再生運転の頻度の増加を指示する。なお、尿素選択触媒還元装置への所定量を超える尿素由来堆積物の堆積は、例えば、NOx(窒素酸化物)センサを用いて検知することができる。
第1実施形態は、DOC前面のPMの堆積の予兆を検知して対処するものであったが、例えば、運転指示システムを尿素堆積物の生成の予兆を検知して対処するものとしてもよい。この場合、後処理装置は、尿素選択触媒還元装置(尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システム)を備える。この場合、車両20において、後処理装置は、尿素選択触媒還元装置と酸化触媒とを含む。また、性能回復運転は、排気ガスへ燃料噴射を行って後処理装置の温度を上昇させる再生運転である。また、事象の発生は、尿素選択触媒還元装置への所定量を超える尿素由来堆積物の堆積が検出された場合に発せられる故障コードの発生に対応する。また、運転指示送信部(運転指示部)は、再生運転の頻度の増加を指示する。なお、尿素選択触媒還元装置への所定量を超える尿素由来堆積物の堆積は、例えば、NOx(窒素酸化物)センサを用いて検知することができる。
(第1実施形態の変形例2)
また、運転指示システムをスス堆積物が過大となる予兆を検知して対処するものとしてもよい。DPF52では、DPFの差圧に基づきススの堆積量を推定することができる。しかし、低ガス流量では堆積量が正確に推定できない場合がある。このような場合、DPF52では、低ガス流量で稼働し、スス堆積量が不明なままスス堆積量が過大になる場合ある。そこで、変形例2では、運転方法からススが過大になっていることを予測する。この場合、後処理装置は、DPF52(フィルタ)とDOC51(酸化触媒)とを含み、性能回復運転は、排気ガスへ燃料噴射を行って後処理装置の温度を上昇させる再生運転である。また、事象の発生は、フィルタへの所定量を超える粒子状物質の堆積が検出された場合に発せられる故障コードの発生に対応する。また、運転指示送信部(運転指示部)は、再生運転の頻度の増加を指示する。
また、運転指示システムをスス堆積物が過大となる予兆を検知して対処するものとしてもよい。DPF52では、DPFの差圧に基づきススの堆積量を推定することができる。しかし、低ガス流量では堆積量が正確に推定できない場合がある。このような場合、DPF52では、低ガス流量で稼働し、スス堆積量が不明なままスス堆積量が過大になる場合ある。そこで、変形例2では、運転方法からススが過大になっていることを予測する。この場合、後処理装置は、DPF52(フィルタ)とDOC51(酸化触媒)とを含み、性能回復運転は、排気ガスへ燃料噴射を行って後処理装置の温度を上昇させる再生運転である。また、事象の発生は、フィルタへの所定量を超える粒子状物質の堆積が検出された場合に発せられる故障コードの発生に対応する。また、運転指示送信部(運転指示部)は、再生運転の頻度の増加を指示する。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
500…運転指示システム、10…エンジンシステム、20…車両(制御システム)、100…エンジンコントローラ(制御装置)、200…車体コントローラ(制御装置)、300…サーバ(監視装置)、1…エンジン、5…DPF装置(後処理装置)、51…DOC、52…DPF、31…取得部、32…予測部、33…運転指示部
Claims (7)
- エンジンと前記エンジンの排気ガスを浄化する後処理装置とを含むエンジンシステムと、前記後処理装置の性能を回復させるための運転である前記エンジンシステムの性能回復運転を自動で制御する制御装置とを各々が有する複数の制御システムと、
前記複数の制御システムを遠隔監視する監視装置と
を備え、
前記監視装置は、
各前記制御システムから各前記エンジンシステムの運転状態を示す運転データを定期的に取得する取得部と、
前記運転データに基づき前記後処理装置の性能の低下を予測する予測部と、
所定の性能低下が予測された前記後処理装置を有する前記制御システムに対して前記性能回復運転の頻度の増加を指示する運転指示部と
を備える運転指示システム。 - 前記運転データは、前記エンジンの燃料消費量、前記排気ガスの流量、前記排気ガスの温度の少なくとも一つに対応するデータと、前記後処理装置の性能低下に対応する所定の事象の発生を示すデータとを含み、
前記予測部は、前記事象が発生した前記制御システムの前記運転データを教師データとして機械学習した機械学習モデルを用いて、前記後処理装置の性能の低下を予測する
請求項1に記載の運転指示システム。 - 前記事象は、自動での通常の前記性能回復運転に対して追加の処置が必要となる場合の前記後処理装置の性能低下に対応する
請求項2に記載の運転指示システム。 - 前記後処理装置は、酸化触媒を含み、
前記性能回復運転は、前記排気ガスへの燃料噴射を行わずに前記排気ガスの温度を上昇させることで前記酸化触媒を乾燥させる乾燥運転であり、
前記事象の発生は、前記酸化触媒の性能低下が検出された場合に発せられる故障コードの発生に対応し、
前記運転指示部は、前記乾燥運転の頻度の増加を指示する
請求項2または3に記載の運転指示システム。 - 前記後処理装置は、尿素選択触媒還元装置と酸化触媒とを含み、
前記性能回復運転は、前記排気ガスへ燃料噴射を行って前記後処理装置の温度を上昇させる再生運転であり、
前記事象の発生は、前記尿素選択触媒還元装置への所定量を超える尿素由来堆積物の堆積が検出された場合に発せられる故障コードの発生に対応し、
前記運転指示部は、前記再生運転の頻度の増加を指示する
請求項2または3に記載の運転指示システム。 - 前記後処理装置は、フィルタと酸化触媒とを含み、
前記性能回復運転は、前記排気ガスへ燃料噴射を行って前記後処理装置の温度を上昇させる再生運転であり、
前記事象の発生は、前記フィルタへの所定量を超える粒子状物質の堆積が検出された場合に発せられる故障コードの発生に対応し、
前記運転指示部は、前記再生運転の頻度の増加を指示する
請求項2または3に記載の運転指示システム。 - エンジンと前記エンジンの排気ガスを浄化する後処理装置とを含むエンジンシステムと、前記後処理装置の性能を回復させるための運転である前記エンジンシステムの性能回復運転を自動で制御する制御装置とを各々が有する複数の制御システムと、
前記複数の制御システムを遠隔監視する監視装置と
を用いて、
前記監視装置において、
各前記制御システムから各前記エンジンシステムの運転状態を示す運転データを定期的に取得するステップと、
前記運転データに基づき前記後処理装置の性能の低下を予測するステップと、
所定の性能低下が予測された前記後処理装置を有する前記制御システムに対して前記性能回復運転の頻度の増加を指示するステップと
を含む運転指示方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2022010656A JP2023109245A (ja) | 2022-01-27 | 2022-01-27 | 運転指示システムおよび運転指示方法 |
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JP2022010656A Pending JP2023109245A (ja) | 2022-01-27 | 2022-01-27 | 運転指示システムおよび運転指示方法 |
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2022
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