JP2023107331A - 光輝性動画模様形成体とその作製方法 - Google Patents

光輝性動画模様形成体とその作製方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023107331A
JP2023107331A JP2022008477A JP2022008477A JP2023107331A JP 2023107331 A JP2023107331 A JP 2023107331A JP 2022008477 A JP2022008477 A JP 2022008477A JP 2022008477 A JP2022008477 A JP 2022008477A JP 2023107331 A JP2023107331 A JP 2023107331A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
glittering
image
element group
latent image
group
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022008477A
Other languages
English (en)
Inventor
匡 森永
Tadashi Morinaga
健一 木村
Kenichi Kimura
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Printing Bureau
Original Assignee
National Printing Bureau
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Printing Bureau filed Critical National Printing Bureau
Priority to JP2022008477A priority Critical patent/JP2023107331A/ja
Publication of JP2023107331A publication Critical patent/JP2023107331A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】画像が動いて見える、いわゆる動画的な視覚効果を付与できることを特徴とし、かつ、オンデマンドで瞬時に可変情報を付与可能なホログラム。【解決手段】あらかじめ作製したベースとなるホログラムに対し、後工程においてレーザ照射して情報を付与可能なホログラムとその作製方法であって、回折格子が形成されたホログラム形成層上に金属膜が形成された光輝性要素群と金属膜が存在しない潜像要素群を有し、正反射光下において光輝性要素群と潜像要素群の回折光の干渉による動的情報3が出現し、観察角度を変化させることで、動的情報の位置が変化して視認されることを特徴とする光輝性動画模様形成体。【選択図】図1

Description

本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポ-ト、有価証券、身分証明書、カ-ド、通行券等のセキュリティ印刷物の分野に用いられるホログラムであって、オンデマンドで可変情報を付与することが可能な動画効果を備えたホログラムとその作製方法に関する。
画像が動いて見える動画効果は、アイキャッチ性が高く、偽造することが困難であることから、近年、セキュリティ印刷物の真偽判別要素として多く用いられる傾向にある。当該効果を備えた代表的な技術はホログラムであり、銀行券やパスポート等の最高のセキュリティが要求されるセキュリティ印刷物にも貼付されて広く用いられている。
初期のホログラムは、対象物からの物体光と参照光とを干渉縞の形で乾板に焼き付けるアナログな撮影方法によって原版が作製されていたが、現在では、回折格子を電子線で描画することによって、より緻密な画像表現が可能となっている。出願人は、当該電子線描画装置を用い、従来とは異なる特殊な画線構成を用いて、優れた動画効果を実現したホログラムに係る技術を出願している(例えば、特許文献1参照)。
また、印刷機の分野では印刷機が進化し、デジタル印刷機を使用した可変情報印刷が発展しつつある。可変情報印刷とは、印刷機の進化により版面を作製する製版作業を介すことなく、印刷機上で版面データを作成することによって、それぞれの媒体に異なる情報(可変情報)を印刷する印刷方式である。例えば、IDカードのように、個人が所有する印刷物一枚一枚を所有者に合わせて、顔や名前、住所、電話番号、個人番号等の個別情報を印刷することが可能となり、印刷物を所有者に合わせてパーソナライズすることが可能となっている。
ホログラムの分野においても、可変情報の付与を目的とする技術が、従来から多々存在する。その方式の一つとしては、金属箔やホログラムの金属膜に対してレーザを照射して金属箔や金属膜を除去(デメタライズ)することで、あらかじめ作製したホログラムに対してデータを後工程で書き込む技術が存在する(例えば、特許文献2、特許文献3及び特許文献4参照)。
特開2021-81705号公報 特開平6-59612号公報 特開2003-150027号公報 特許5040609号公報
例えば、特許文献1の技術は、円弧状の回折格子の集合体で構成されたラインやドットによって、圧縮又は圧縮分割された模様をサンプリングして動画効果を発現させるものであり、再生された画像には優れた動画効果が発現する。
しかしながら、ここで再生される動画効果を備えた画像は、電子線描画装置で付与された回折格子によって構成されたものであり、回折格子を瞬時に形成することは不可能である以上、ホログラム毎に別の画像を付与することは不可能であり、可変情報を付与することは難しいという課題があった。
また、特許文献2から特許文献4に記載の技術は、あらかじめ作製したホログラムに対して、後工程においてレーザ照射により情報を付与する描画を用いることによって、デジタル印刷機で行うような、ホログラム1枚毎に異なる情報である可変情報を付与することができる。
しかしながら、前述の方法で付与される情報は、金属箔や金属膜の一部を除去することで形成された反射率の異なる領域を可視化して単純に視認させるものである。すなわち、ホログラムにレーザによって付与された画像は、別の画像にチェンジしたり、動いたりするホログラム特有の視覚効果が付与されることはなく、輝度の高い金属箔や色彩豊かな回折格子を背景として、レーザで付与した画像が単純に見えるだけのシンプルな見え方に限定されていた。
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、あらかじめ作製したベースとなるホログラムに対し、後工程においてレーザ照射して情報を付与可能なホログラムとその作製方法であって、画像が動いて見える、いわゆる動画的な視覚効果を付与できることを特徴とし、かつ、オンデマンドで瞬時に可変情報を付与可能なホログラムを提供する。
本発明は、回折格子が形成されたホログラム形成層上に金属膜が形成された光輝性要素群と、金属膜と異なる光学特性を有する可変画像群との組み合わせから成る光輝性動画模様形成体であって、
光輝性要素群は、直線又は曲線の少なくともいずれかによる複数の回折格子から成る光輝性要素が所定の規則性を有して複数配置されて成り、
光輝性要素は、回折格子の配列角度又は回折格子の密度の少なくとも一方が連続的に変化する構造を有することで、光の入射光の角度変化に応じて光輝性要素における光を反射する領域が連続的に移動する構造を備え、
可変画像群は、金属膜が存在しない、あるいは金属膜より低い反射率の潜像要素が規則性を有して複数配置されて成る潜像要素群を有し、
潜像要素群と光輝性要素群は、規則性が同じ規則性又は異なる規則性により組み合されて成り、
正反射光下において、光輝性要素群と潜像要素群の回折光の干渉による動的情報が出現し、観察角度を変化させることで、動的情報の位置が変化して視認されることを特徴とする光輝性動画模様形成体である。
本発明は、潜像要素群が、1)潜像要素を光輝性要素と配置ピッチ、配置方向又は角度の少なくともいずれか一つが異なる規則性を有して複数配置されて成り、又は2)基画像が圧縮された潜像要素を光輝性要素と配置方向又は配置ピッチの少なくともいずれか一方が異なる規則性を有して複数配置されて成り、又は3)基画像が分割圧縮された潜像要素を光輝性要素の規則性と同じ規則性を有して複数配置されて成ることを特徴とする光輝性動画模様形成体である。
本発明は、可変画像群は、更に固有情報を有することを特徴とする光輝性動画模様形成体である。
本発明は、直線又は曲線の少なくともいずれかによる複数の回折格子から成り、回折格子の配列角度又は回折格子の密度の少なくとも一方が連続的に変化する構造を有する光輝性要素が所定の規則性を有し、回折格子が形成されたホログラム形成層上に金属膜が形成された光輝性要素群と、金属膜が存在しない、あるいは金属膜より低い反射率の潜像要素が、光輝性要素群と同じ規則性又は異なる規則性により成る潜像要素群を少なくとも有する可変画像群との組み合わせから成る光輝性動画模様形成体の作製方法であって、
光輝性要素群の回折格子から成る光輝性要素の規則性を設定する工程と、潜像要素群の基となる潜像要素群データを画像処理機器により作成して可変画像群データを作成する工程と、作成された可変画像群データを使用し、レーザ照射により光輝性要素群の金属膜を除去又は金属膜を破壊して可変画像群を形成し、光輝性要素群と可変画像群を組み合わせる工程を有する光輝性動画模様形成体の作製方法である。
本発明は、可変画像群が更に固有情報を有する光輝性動画模様形成体の作製方法であって、固有情報の基となる固有情報データを、画像処理機器により作成し、固有情報データと潜像要素群データを合成して可変画像群データを作成する工程を有する光輝性動画模様形成体の作製方法である。
本発明の光輝性動画模様は、光輝性要素群に対してレーザ等を照射し、光輝性要素群の金属膜を部分的に除去することにより可変情報を形成することができるため、印刷のように版面を必要とせず、可変情報が付与された光輝性動画模様を得ることができる。
また、本発明の光輝性動画模様は、レーザにより形成される画像が、光輝性要素群の規則性に合わせて特殊な加工が施された潜像要素群であるため、当該画像が観察角度に応じて動いて見える、動画的な視覚効果が生じる。当該可変情報自体に動画効果を付与、可変情報に動画効果が付与された画像を隣接して形成することによって、従来の可変情報を単純に表示するだけのホログラムと比較して、本発明の動画効果を模倣することは困難であり、それゆえ偽造防止効果が高い。
本発明における光輝性動画模様の一例を示す。 本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。 本発明における光輝性要素群の構成の一例を示す。 本発明における光輝性要素群に必要とされる特性を示す。 本発明における光輝性要素の構成の例を示す。 本発明における光輝性要素の構成の例を示す。 本発明における潜像要素群の構成の一例を示す。 本発明における潜像要素群の形成方法の一例を示す。 本発明における光輝性動画模様の効果を示す。 本発明における光輝性動画模様の特徴を示す。 本発明における光輝性動画模様の不適切な構成例を示す。 本発明における光輝性動画模様の見え方の一例を示す。 本発明における光輝性動画模様の見え方の改善例を示す。 本発明における光輝性動画模様の構成の一例を示す。 本発明における潜像要素群の一例を示す。 本発明における光輝性動画模様の一例を示す。 本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。 本発明における光輝性要素群の構成の一例を示す。 本発明における光輝性要素の構成の例を示す。 本発明における光輝性要素の構成の例を示す。 本発明における潜像要素群の構成の一例を示す。 本発明における光輝性要素群と潜像要素群の重ね合わせの一例を示す。 本発明における光輝性動画模様の効果を示す。 本発明における光輝性動画模様の一例を示す。 本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。 本発明における潜像要素群の構成の一例を示す。 本発明における潜像要素群の形成方法の一例を示す。 本発明における光輝性要素群と潜像要素群の重ね合わせの一例を示す。 本発明における潜像要素群の構成の一例を示す。 本発明における光輝性動画模様の効果を示す。 本発明における光輝性動画模様の一例を示す。 本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。 本発明における潜像要素群の構成の一例を示す。 本発明における光輝性要素群と潜像要素群の重ね合わせの一例を示す。 本発明における光輝性動画模様の効果を示す。 本発明における光輝性要素群の構成の一例を示す。 本発明における光輝性要素群の構成の一例を示す。 本発明における光輝性動画模様の層構造の一例を示す。 本発明における光輝性動画模様をカードに付与した例を示す。 本発明における光輝性動画模様をカードに付与した例を示す。 本発明における実施例を示す。 本発明における実施例を示す。 本発明における実施例を示す。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
本明細書では、光輝性動画模様(1)の主たる構成である、光輝性要素群(4)と潜像要素群(6)により構成されるホログラム形成層(9)及び金属膜(10)の構成を中心に具体的に説明する。本明細書において、光輝性動画模様(1)とは、ホログラム形成層(9)及び金属膜(10)を含んだ構造を指す。ホログラム形成層(9)に透明層を付与したり、貼付のための接着層(20)等を付与することで実用的な形態となるが、これらは本発明の常識的な応用の範囲である。この光輝性動画模様(1)は、用紙やプラスティック、金属等、下地印刷がされた印刷物上に貼付してもよいのはいうまでもない。
本明細書では、まず、Moire Magnification(以下、「モアレ拡大現象」という。)を利用したライン状の光輝性動画模様(1)を第一の実施の形態で説明し、次に、同じくモアレ拡大現象を利用したドット状の光輝性動画模様(1)を第二の実施の形態において説明する。続いて、第三の実施の形態において、Integral Photography方式(以下、「IP画像方式」という。)の画線構成を利用したライン状の光輝性動画模様(1)を説明し、更に第四の実施の形態において、IP画像方式の画線構成を利用したドット状の光輝性動画模様(1)を説明する。
なお、本明細書でいうライン(画線)状とは、画像の構成要素を特定の方向に一定の距離連続して配置した状態を指し、具体的には、点線や破線の分断線、直線、曲線、破線等を含む。一方のドット(画素)状とは、画像の構成要素を一塊にした一定の方向性のない状態を指し、具体的には円や三角形、四角形を含む多角形、星形等の各種図形、文字や記号、数字、マーク等を含める。
(第一の実施の形態)
まず、図1に、本発明における光輝性動画模様(1)を示す。本第一の実施の形態では、後述する直線のライン状の形態で構成された光輝性要素(7)を用い、動画効果を有したモアレを出現させる構成について説明する。
光輝性動画模様(1)は、一般にホログラム、OVD(Optically Variable Device)又は光学的変化素子と呼ばれる、回折格子(8)を主体に構成された構造を有する。なお、回折格子(8)については、後述する。
本第一の実施の形態は、光輝性動画模様(1)に入射する光の角度を変化させて視認した際に、固有情報(2)と動的情報(3)の組み合わせから成る最も単純な形態であるが、この二つの情報を隙間なく隣接することで、固有情報(2)の対改ざん性を動的情報(3)によって強化するともに、光輝性動画模様(1)全体の偽造抵抗力を高めた例である。
一例として、図2に示す光輝性動画模様(1)は、光輝性要素群(4)と可変画像群(5)の組み合わせから成る。また、可変画像群(5)は、所持人の顔画像と所持人の個人番号を示す固有情報(2)と動的情報(3)である背景の縦方向の干渉縞(モアレ模様)の基となる潜像要素群(6)を有する。
まず、光輝性要素群(4)について、図3を用いて説明する。本第一の実施の形態の光輝性要素群(4)は、ライン状(画線)の光輝性要素(7)が、所定の方向(本第一の実施の形態では、第一の方向(S1方向))に第一のピッチ(P1)で規則的に配置されて成る。光輝性要素(7)は、反射性の高い微小な光学的要素の集合から成る回折格子(8)で構成される。なお、本発明における「所定の方向」とは、本第一の実施の形態の第一の方向(S1方向)及び後述する第二の実施の形態の第二の方向(S2方向)等、各要素を配置する際に適宜設定する規則的な方向をいう。また、回折格子(8)の構成は、後述する。
本明細書において「規則的に配置する」とは、配置の対象となる要素について、配置ピッチ(P1)と配置方向(S1方向)に加え、要素の角度(本第一の実施の形態では垂直)について、特定の規則を当てはめて配置することを指す。光輝性要素群(4)の断面図に示すように、樹脂等に回折格子(8)が刻まれたホログラム形成層(9)の上に、反射性の高い金属膜(10)を有する。
なお、名目上、金属膜(10)と呼称するが、下地のホログラム形成層(9)と異なる光学特性を有し、1.5μm以下の波長の光を吸収する被膜で構成されていれば、必ずしも金属膜(蒸着)によって付与されている必要はない。
光輝性要素(7)の中には、反射性の高い微小な光学的要素である回折格子(8)が付与されている必要があるが、光輝性要素(7)自体が満たさなければならない光学特性がある。図4に示すように、光輝性要素(7)に入射する光の角度が変化した場合に、入射光の連続的な角度変化に応じて、光輝性要素(7)中の特に強い回折光(正反射光下)を発する領域(A-1、A-2、A-3)の位置が、連続的に変化する特性を必ず有さなければならない。
前述の特性が、光輝性要素(7)における完全な必須要件である。特定の方向から光が入射した場合に、光輝性要素(7)全体が単純に回折光を発する構造では、本発明の光輝性要素(7)の必須条件を満たさない。また、強い回折光を発する領域の位置が断続的に変化する、いわゆる不連続に変化するのでは、本発明の光輝性要素(7)の必須条件を同じく満たさない。
以上の光学特性を満たすためには、光輝性要素(7)中の回折格子(8)の形状が重要となる。図5(a)~(d)及び図6(a)~(d)に、前述の光学特性を満たすための回折格子(8)の形状の例を示す。図5(a) の光輝性要素(7)は、連続した曲線によって円弧状とした回折格子(8)であり、図5(b)の光輝性要素(7)は、同じく円弧状としたものであるが、光輝性要素(7)を縦方向に区分けした複数のセル(7a)ごとに、角度のわずかずつ異なる直線の集合によって疑似的に曲線を構成した回折格子(8)である。図5(c)の光輝性要素(7)は、光輝性要素(7)を横方向に区分けした複数のセル(7a)ごとに、わずかずつ角度の異なる直線の集合が集中線に近い形に構成された回折格子(8)であり、図5(d)の光輝性要素(7)は、光輝性要素(7)を横方向に区分けした複数のセル(7a)ごとに、曲線と円弧の回折格子(8)の集合から成る回折格子(8)である。
また、図6に示すのは、回折格子(8)の角度の変化ではなく、回折格子(8)の密度の変化によって、光輝性要素(7)に必要な光学特性を与えるものである。図6(a)の光輝性要素(7)は、密から疎へと回折格子(8)の密度が連続的に変化した構成であり、図6(b)の光輝性要素(7)は、セル(7a)ごとに不連続に密度が変化し、全体として図6(a)と同様に回折格子(8)の密度が密から疎へと変化した構成である。図6(c)の光輝性要素(7)は、図6(b)の構造と同じくセル(7a)ごとに不連続に密度が変化するものであるが、図6(b)の回折格子(8)に対して直交する角度で形成された構成、図6(d)は、セル(7a)ごとに45度の角度で形成された構成である。図6(b)、(c)、(d)の構成では、光を強く回折する角度は異なるものの、光輝性要素(7)中の特に光を強く反射する領域(A-1、A-2、A-3)の位置が変化する特性を満たしている。
次に、可変画像群(5)について説明する。本明細書において、可変画像群(5)は、固有情報(2)と動的情報(3)であるモアレ模様の基となる潜像要素群(6)を有する。本明細書において、固有情報(2)とは、所持人の顔画像とその個人番号に示すような個人情報をいう。これは、いわゆる可変情報であり、所持人ごとに変化させる画像となることから、改ざんや偽造を防ぐための有効な形態となる。
次に、一方の動的情報(3)であるモアレ模様の基となる潜像要素群(6)について、図7を用いて具体的に説明する。潜像要素群(6)は、作製時に同時に付与される固有情報(2)と合成して可変画像群(5)を形成する場合において、双方の画像が重なり合うことによって、視認できる画像が不明瞭になることを防止するため、固有情報(2)と重なる領域の潜像要素群(6)を白抜きで除いておく必要がある。本明細書では、わかりやすく図示するために、図7に白抜きで除く前の潜像要素群(6´)を示す。
本第一の実施の形態のような縦縞のモアレを発生させるためには、潜像要素群(6´)を光輝性要素群(4)と同じくライン(画線)状又はドット(画素)状に形成する。なお、ドット(画素)状で形成した場合は、光輝性要素(7)の密度が低くなるため視認性が低下すため、ライン(画線)状で形成することが望ましい。
潜像要素群(6´)は、光輝性要素群(4)と干渉してモアレを発生させるために、複数の潜像要素(11)が、光輝性要素(7)の配置の規則性と異なる規則性を有して配置されている必要がある。異なる規則性とは、配置ピッチ、配置方向、要素の配置角度の少なくとも一つが適用される。本第一の実施の形態においては、潜像要素(11)の配置ピッチと配置角度についての規則性が、光輝性要素(7)の配置の規則性と異なる。一例として、潜像要素(11)は、光輝性要素(4)の配置ピッチ(P1)と異なる配置ピッチ(P2)で配置され、配置方向は、第一の方向(S1方向)で同じであるが、潜像要素(11)の配置角度は、光輝性要素(7)に対して1度傾斜している。
上記において、「異なる」範囲としては、例えば、配置ピッチであれば、光輝性要素群(4)の配置ピッチの80%~120%であり、配置方向又は配置角度であれば、±5度以内を異なる範囲とする。なお、配置方向と要素の角度は、定義の仕方によって同じパラメータとして扱うことも可能であり、必ずしも分けて考えなくてもよい。
以上のような、潜像要素群(6)と固有情報(2)を合成して可変画像群(5)とする。可変画像群(5)を可視化するためには、可変画像群(5)の周囲の光輝性要素群(4)と異なる光学特性を付与すればよい。異なる光学特性とは、例えば、光輝性要素群(4)よりも反射光(回折光)量が異なること、光の反射角度(回折角度)が異なること、異なる光を吸収すること等の光学的な差異があれば、いかなる違いであってもよい。光輝性要素群(4)と可変画像群(5)が異なる光学特性を有することによって可変画像群(5)に含まれる情報が観察者の目に捉えられる画像として可視化される。以上が可変画像群(5)についての説明である。
次に、光輝性動画模様(1)の作製方法について説明する。本発明の光輝性動画模様(1)の作製方法は、光輝性要素群(4)の回折格子(8)から成る光輝性要素(7)の規則性を設定し、可変画像群(5)の固有情報の基となる固有情報データと、潜像要素群(6)の基となる潜像要素群データを画像処理機器により作成し、固有情報データと潜像要素群データを合成して可変画像群データを作成し、作成された可変画像群データを使用し、レーザ照射により光輝性要素群(4)の金属膜(10)を除去又は金属膜(10)を破壊して可変画像群(5)を形成し、光輝性要素群(4)と可変画像群(5)を組み合わせる工程を有する(図示せず)。
前述の光輝性要素群(4)の金属膜(10)を除去又は金属膜(10)を破壊し、可変画像群(5)に光輝性要素群(4)と異なる光学特性を付与するためには、一例として、図8に示すように、光輝性要素群(4)上に可変画像群(5)をレーザ照射装置(12)で描画することによって、異なる光学特性を付与する。レーザ照射により、光輝性要素群(4)のホログラム形成層(9)上の金属膜(10)を除去してホログラム形成層(9)を露出、あるいは完全に除去できないまでも、金属膜(10)の一部を破損させることで可変画像群(5)から生じる回折光の光量を低下、若しくは金属膜(10)の反射率を低下させることによって、異なる光学特性を付与する。これにより光輝性要素群(4)中に異なる光学特性を有する可変画像群(5)を付与し、可視化することができる。なお、レーザ照射装置(12)は、一般的な工業用のレーザ加工機であってもよく、より安価なレーザマーカーと呼ばれる汎用的な加工機であっても問題ない。
本発明の光輝性動画模様(1)の作製方法において、全く情報が付与されていない光輝性要素群(4)に対して、可変画像群(5)を全て同時に書き込めることは、大きな長所である。特に、本第一の実施の形態のように、モアレ模様のような単純な図柄を動的情報(3)として用いる場合は、可変画像群(5)の情報を全て一度に書き込めることは、可変情報の改ざんや偽造を防ぐための有効な手段である。
なお、本発明の光輝性動画模様(1)の作製方法は、オンデマンドでホログラム形成層(9)上に施された金属膜(10)を除去、又は破損させることができる手段であれば、レーザに限定されず、電子線、放射線又は機械的な切削等、あるいは、従来からある金属膜(10)を取り除くデメタライズの方式の一つとして、グラビアやスクリーン印刷等によりマスク印刷を施し、薬液に浸してマスク印刷されたエリア以外のアルミを除去する方式も可能である。
本発明の光輝性動画模様(1)の効果を図9に示す。光輝性動画模様(1)を回折光が生じる環境下で観察すると、図9(a)に示すように固有情報(2)である所持人の顔画像と個人番号が可視化されるとともに、固有情報(2)の背景に動的情報(3)として縞模様として動くモアレが出現する。この観察角度から、光輝性動画模様(1)をわずかに傾けることで、図9(b)に示すように固有情報(2)の背景の縞模様であるモアレの第一の方向(S1方向)の位置が変化する。光輝性動画模様(1)を更に傾けることで、図9(c)に示すように固有情報(2)の背景の縞模様であるモアレの第一の方向(S1方向)の位置が更に変化する。以上のように、所持人の顔画像と個人番号を表した固有情報(2)の位置は変化せず、その背景に隣接する動的情報(3)のみの第一の方向(S1方向)の位置が変化する。これらの動きの中で、動的情報(3)であるモアレには、固有情報(2)よりも奥側に存在するような奥行き感が生じる(図示せず)。
次に、上述の効果が生じる原理について説明する。入射する光の角度に対して、光輝性要素(7)の中の、光と直交する角度を成す回折格子(8)が光を特に強く反射して強い回折光を生じる。これによって、図4に示したように入射光の角度変化に応じて、光輝性要素(7)中の特に強い回折光を発する領域(A-1、A-2、A-3)の位置が変化する。まず、図9(a)の場合、図4に示した光輝性要素(7)の(A-1)の領域が強い回折光を発したと仮定する。
可変画像群(5)のうち、所持人の顔画像と個人番号を表した固有情報(2)は、潜像要素群(6)を形成する潜像要素(11)の規則性のある配置で形成されていないため、いずれの角度から光が入射したとしても、そのまま可視化され、基本的に見え方は変化しない。一方の潜像要素群(6)は、強い回折光が生じた位置上に潜像要素(11)が存在する領域のみが相対的に回折光が弱い状態となる。結果として、それ以外の回折光が強い領域との間に回折光の強弱が生じ、結果として光輝性要素群(4)と干渉した潜像要素群(6)の一部のみがサンプリングされて可視化される。
この場合、潜像要素群(6)の中の潜像要素(11)は、光輝性要素群(4)中の光輝性要素(7)と異なる規則性で配置されているために、サンプリングされて可視化される画像が、光輝性要素群(4)と潜像要素群(6)の規則性のわずかなずれによって生じる干渉縞であるモアレ模様となる。これによって、図9(a)に示すように、固有情報(2)である所持人の顔画像と個人番号が可視化されるとともに、固有情報(2)の背景に動的情報(3)として縞模様として動くモアレが出現する。
続いて、図9(a)の状態から光輝性動画模様(1)を傾け、入射光の角度が変化することで、光輝性要素(7)中の特に強い回折光を発する領域が、図4に示した光輝性要素(7)の(A-2)の位置へと変化する。これによって、サンプリングされて可視化される潜像要素(11)の位置も変化し、光輝性要素群(4)と潜像要素群(6)の干渉によって生み出される動くモアレ(動的情報(3))の位置も変化する。これにより、図9(b)に示すように、固有情報(2)に隣接した動的情報(3)であるモアレの位置が変化する、いわゆる動画効果が生じる。
更に、図9(b)の状態から光輝性動画模様(1)を傾けると、光輝性要素(7)中の特に強い回折光を発する領域が図4に示した光輝性要素(7)の(A-3)の位置へと変化する。これによって可視化される潜像要素(11)の位置も更に変化し、動くモアレ(動的情報(3))の位置も変化し、図9(c)に示すように、固有情報(2)に隣接した動的情報(3)であるモアレの位置が更に変化する。以上が、本発明の光輝性動画模様(1)において、固有情報(2)と動的情報(3)が可視化され、更に光輝性動画模様(1)を傾けることで動的情報(3)に動画効果が生じる原理である。
また、モアレに奥行感が生じるのは、水平方向(第一の方向)に移動する動きのある画像に対して両眼視差が働いたためである。仮に、モアレが第一の方向に対して垂直方向に移動したのであれば、両眼視差は機能しないため、この奥行きの感覚は生じない。本発明の光輝性動画模様(1)は、潜像要素群(6)の配置ピッチ(P2)を光輝性要素群(4)の配置ピッチ(P1)よりも大きな数値とした場合に、この奥行き感が生じる。逆に潜像要素群(6)の配置ピッチ(P2)を光輝性要素群(4)の配置ピッチ(P1)よりも小さな数値とした場合は、この奥行き感は逆転し、手前に存在するかのような手前感が生じる。これらの奥行き感や手前感の大きさも制御可能であり、潜像要素群(6)のピッチ(P2)を光輝性要素群(4)の配置ピッチ(P1)に近づければ近づけるほど、奥行き感や手前感は大きくなる。
なお、潜像要素群(6)のピッチ(P2)を光輝性要素群(4)の配置ピッチ(P1)に近づければ近づけるほど、奥行き感や手前感は大きくなるものの、出現するモアレの数が減少するとともに、モアレの模様がぼやけて不鮮明になることに注意が必要である。これらを考慮してそれぞれの配置ピッチを適宜設定する必要がある。
本発明の光輝性動画模様(1)の動画効果の副次的な効果として生じる奥行き感や手前感等の遠近感は、光輝性動画模様(1)を観察した瞬間に観察者の脳内で瞬時に成立する。遠近感の有無を基準とした真偽判別は、高精度な真偽判別を観察者が無意識に瞬時に行い得るものである。これは、透かしたり、傾けたりする、大きなアクションが伴う他の真偽判別手段とは根本的に異なる。従来の真偽判別の多くは、「こういった見方をした場合に印刷物中のこの場所にこのような画像が出現する」という知識を事前に知っておく必要があった。
例えば、透かしであれば「透かして見た場合に、印刷物の中央に男の肖像が現れる」といった知識がなければ、真偽判別自体が不可能であった。しかし、遠近感やより高度な3D等の立体感は、「見る」ことだけが真偽判別のためのアクションであり、事前の知識がなくとも印刷物を見た瞬間に立体であることを観察者は認識できる。また、多くの場合遠近感が印刷物の中に生じた場合、観察者は驚きをもって画像を眺めるために、観察者の印象・記憶に長く留まり、それ以後の場面においても真偽判別がより効率的に機能することとなる。
本発明の光輝性動画模様(1)において、この遠近感を利用した真偽判別法を適用するためには、両眼視差を機能させる必要があり、そのためには光輝性動画模様(1)上に出現する動的情報(3)に移動方向を観察者の両目と平行な方向、すなわち水平方向(第一の方向)か、それに近い角度に設計する重要となる。水平方向(第一の方向)に動く画像に対して、人間の脳内で両眼視差によって自動的に手前感や奥行き感が生じることを利用するものである。
本第一の実施の形態では、レーザで付与する可変画像群(5)を固有情報(2)と動的情報(3)の性質の異なる二つの画像を組み合わせた形態としている。固有情報(2)は、所持人の顔画像と所持人の個人番号等の、所持人毎に異なる個別の情報をその都度変更する必要のある「可変情報(個別情報)」とし、一方の動的情報(3)は、個別に情報を変化させる必要のない「固定情報」であるモアレ模様とした。本第一の実施の形態では、可変画像群(5)を生成する段階で、固有情報(2)の基となる所持人の顔画像と個人番号等の可変情報をその都度差し替える一方で、背景の潜像要素群(6´)は全ての可変画像群(5)に共通の画像である固定情報として用いる構成であるため、本発明の可変画像群(5)を最も少ない労力で生成できる。
なお、可変画像群(5)をレーザで光輝性要素群(4)に描画する場合、可変画像群(5)の画像データの形態は、ベクトルデータであってもラスターデータであってもよい。ユーザーが使用するデメタライズを行う装置のデータ形式に合わせてデータを変換すればよく、Ai、EPS、PDF及びDXF等のデータ、あるいはTiff、BMP及びJPEG等のデータを用いても良い。
また、可変画像群(5)を階調画像(濃淡変化)として形成する場合は、レーザ照射部分の面積(ドット、画線)と非照射部分の面積の比率を変更、比率を途中で変化、あるいは比率を徐々に変えることによって形成する。
なお、本第一の実施の形態において、可変画像群(5)は、動的情報(3)と固有情報(2)により形成しているが、背景のモアレ模様だけでなく、所持人の顔画像と所持人の個人番号等も動的情報(3)として形成することもできるため、可変画像群(5)を動的情報(3)のみで形成してもよい。
一方で、顔画像のような個別情報は、濃淡が複雑で必要とする画像解像度も高く、光輝性要素群(4)を形成する光輝性要素(7)を高密度(小さなピッチ)で配置する必要があることに加え、動画効果を付与するための画線構成に変換するための処理にも時間が必要となる。その場合には、本第一の実施の形態のように、動かない「可変情報」と、動く「固定情報」を隣接させる構成は有効であり、実用的である。なお、動かない「可変情報」と、動く「固定情報」を隣接させる構成においては、図10に示すように、固有情報(2)と動的情報(3)の間にスペースを設けず、完全に隙間のない構成とすることが重要である。
例えば、図11(a)に示すように、固有情報(2)と動的情報(3)の間に一定のスペースが存在する構成の偽造ホログラム(C1)を用いた場合、偽造者は、あらかじめ動的情報(3)であるモアレと、固有情報(2)が印字されるエリアを別に設けたモアレホログラム(B1)を作製しておけばよい。
ホログラムの分野において、モアレのような単純な模様は、あらかじめ容易に作製することができる。あらかじめモアレが付与されたモアレホログラム(B1)に対し、固有情報(2)だけを印字すれば、偽造ホログラム(C1)を容易に偽造ができる。このため、図10に示すように、固有情報(2)と動的情報(3)の間にスペースを設けず、完全に隙間なく密着した構成とすることが重要である。可変情報である固有情報(2)と潜像要素群(6)を隙間なく構成する場合は、固有情報(2)と潜像要素群(6)とを同時に描画する必要があるため、ホログラムの一部の可変情報のみを改ざんするだけで偽造することは困難となる。
また、本第一の実施の形態において、付与する記号や文字等の可変情報を黒塗りの形態だけで表現することは、避けることが望ましい。この光輝性動画模様(1)を偽造する手法の一つとして、図11(b)に示すように、あらかじめ背景のモアレ模様のみを付与したモアレホログラム(B2)を用意しておき、そこに固有情報(2)のみを印字する手段が用いられると考えられる。第一の実施の形態のように黒の輪郭を有する白ヌキの文字の構成を用いる場合、偽造ホログラム(C2)の白抜きの文字の領域や顔画像の白の領域にモアレホログラム(B2)のモアレ模様が重なった状態となり、真正品との間に差異が生まれる。
しかし、文字や画像が全て黒塗りの画像である場合、付与した文字や画像とモアレ模様が重なった状態が生まれないため、偽造ホログラム(C2)との間に一目でわかるような差異が生じにくい。以上のように、固有情報(2)と動的情報(3)の間にスペースを設けず完全に隙間ない構成としたり、白抜きのある画像や文字を用いるといった構成上の工夫だけでも偽造抵抗力を向上させることができる。
また、回折光が生じない条件である拡散反射光下(以下、「拡散反射光下」という。)において、固有情報(2)及び動的情報(3)の見え方を改善することができる。光輝性動画模様(1)を単に基材(13)に貼付した場合、回折光が生じる条件で観察すると、図12(b)に示すように、適切な見え方となる。一方、拡散反射光下で観察した場合は、図12(a)に示すように、画像の濃淡が反転した状態で視認される。文字や記号等が濃淡反転して見えることには問題がないが、顔画像の濃淡が反転することは、基本的には望ましくない。
図13に示すように、拡散反射光下においても顔画像等の濃淡が正常に見えるように、基材(13)と光輝性動画模様(1)の間に不透明な可視光吸収層(14)を設けることが望ましい。不透明な可視光吸収層(14)は、完全な透明であってはならない。拡散反射光下及び回折光が生じる環境下において、周囲の金属膜(10)よりも相対的に可視光を吸収する特性を有していればよい。この不透明な可視光吸収層(14)は、単に基材(13)を暗色で印刷したり、暗色の基材を中間に挟み込んだ形態でもよく、光輝性動画模様(1)に暗色の層をあらかじめ組み込んだ形態としてもよい。これにより、拡散反射光下において濃淡が反転して視認される問題を回避することができる。
また、本第一の実施の形態の動的情報(3)は、縞模様の単純なモアレとしたが、より複雑な形状の有意情報に対してモアレ拡大現象を作用させて動的情報(3)とすることができる。例えば、図14(a)に示す円型のモアレや図14(b)に示す星型のモアレ等の、より複雑な形状の任意の図形を動的情報(3)とすることができる。
なお、本第一の実施の形態において、動的情報(3)である縦縞のモアレ模様は極めて単純な構成であるため、基画像を圧縮して潜像要素(11)を構成するという概念を適用することもできる。基画像(15)とは、光輝性動画模様(1)中に動的情報(3)として出現させたいと意図する画像のことを指す。この場合、動的情報(3)の縞模様の1本を基画像として設定する。潜像要素(11)は、この1本の縞模様全体を圧縮した上で第一の方向(S1方向)に垂直方向を軸にミラー反転させたものであり、これを光輝性要素群(4)の配置ピッチよりもわずかに大きなピッチ(P2)で連続して配置して潜像要素群(6´)を構成したともいえる。
次に、前述の基画像(15)を用いた潜像要素群(6´)の構成について、星形のモアレ模様を発生させる具体例を用いて説明する。図15に示すように、動的情報(3)として光輝性動画模様(1)上に出現させたいと意図する画像を基画像(15)として設定する。本第一の実施の形態においては、星の図形が基画像(15)となる。この基画像(15)全体を、第一の方向(S1方向)に特定の縮率で圧縮することで潜像要素(11)とする。圧縮の目安は、少なくとも潜像要素(11)全体が配置ピッチ(P2、P3)内に収まる必要があるため、潜像要素群(6´)の配置ピッチを最低限下回るような縮率に設定する。なお、図15に示す例では、配置ピッチ(P2)は、光輝性要素群(4)の配置ピッチ(P1)よりわずかに小さなピッチであり、配置ピッチ(P3)は、光輝性要素群(4)の配置ピッチよりわずかに大きなピッチで構成した。
以上の手順で作製した潜像要素(11)を、光輝性要素群(4)の配置の規則性と異なる規則性で配置することで、潜像要素群(6´)とする。有意情報であってもモアレ拡大現象により、有意情報を表した拡大されたモアレとして出現する。規則性を変える方法において、最も容易なのが配置ピッチを変えることである。また、配置ピッチを調整することによって動画効果だけでなく、遠近感を制御することができる。なお、光輝性要素群(4)の配置ピッチより大きなピッチ(P3)で配置する場合には、それぞれの潜像要素(11)をミラー反転する必要があることに注意が必要である。なお、有意情報をモアレで表現するためのより具体的な構成方法としては、特許第5131789号公報に記載の構成を用いればよい
次に、第二の実施の形態として、ライン(画線)状の光輝性要素(7)ではなく、ドット(画素)状の光輝性要素(7)を用いて光輝性動画模様(1)を構成する形態について説明する。なお、第一の実施の形態と共通する事項については、説明を省略する。
(第二の実施の形態)
図16にドット状の光輝性動画模様(1)を示す。第二の実施の形態は、画素で構成された光輝性要素(7)を用いて、動くモアレを用いて動的情報(3)を生じさせる構成について説明する。
図17に示すように、本第二の実施の形態における光輝性動画模様(1)は、ドット状の光輝性要素群(4)と可変画像群(5)の二つの要素群の組み合わせから成る。また、可変画像群(5)は、固有情報(2)と動的情報(3)であるアルファベットの「A」のモアレ模様の基となるドット状の潜像要素群(6)を有する。
まず、ドット状の光輝性要素群(4)について、図18を用いて説明する。光輝性要素群(4)は、第一の実施の形態と同様に光輝性要素(7)の集合から成る。光輝性要素(7)は、反射性の高い微小な光学的要素の集合の回折格子(8)から成る。本第二の実施の形態においては、ドット状の光輝性要素(7)が第一の方向(S1方向)及び第一の方向と直交する第二の方向(S2方向)にそれぞれ第一のピッチ(P1)で規則的に配置されて成る。なお、第一の方向(S1方向)と第二の方向(S2方向)で同じピッチにする必要はなく、異なるピッチとしても問題ない。
本第二の実施の形態におけるドット状の光輝性要素(7)に必要とされる特性は、第一の実施の形態のライン状の光輝性要素(7)と同じである。第一の実施の形態で示したライン状の光輝性要素(7)では、第一の方向(S1方向)に回折光が生じる領域が移動したが、ドット状の光輝性要素(7)では、第一の方向(S1方向)及び又は第二の方向(S2方向)に回折光が生じる領域が移動する。入射する光の連続的な角度変化に対して、回折光がそれに対応した形で連続的に移動すればよく、移動する方向については特に限定するものではない。
ドット状の光輝性要素(7)においても、以上の光学特性を満たすためには、光輝性要素(7)中の回折格子(8)の形状が重要となる。図19(a)~図19(d)及び図20(a)~図20(d)に、前述の光学特性を満たすための回折格子(8)の形状の一例を示す。図19(a) の光輝性要素(7)は、同心円状の回折格子(8)を連続して配置したものであり、図19(b)の光輝性要素(7)は直線の回折格子(8)を集中線状に配置したものである。図19(c)の光輝性要素(7)は曲線の回折格子(8)を集中線状に配したものであり、図19(d)の光輝性要素(7)は、図19(a)と同じく回折格子(8)を同心円状にしたものであるが、角度のわずかずつ異なる直線の集合によって疑似的に同心円を構成している。
図19に示す、四種類の光輝性要素(7)の例では、一つの方向から入射する光に対して、直交する角度を成す回折格子(8)が二箇所同時に存在する形態であるために、光輝性要素(7)の中に強く光を回折する輝点(α1、α2)が二箇所同時に出現する。このため、図19に示す光輝性要素(7)を用いて光輝性動画模様(1)を形成した場合には、必ず二つの動的情報(3)がペアとして出現し、それぞれの動的情報(3)が互いに逆方向に動く構成となる。
前述の二つの動的情報(3)がペアとして出現する構成となった場合、動的情報(3)の図柄や動き方によっては、動的情報(3)が重なり合って観察者が認識しづらくなる場合がある。これを防ぐためには、図20に示すような光輝性要素(7)の構成を用いてもよい。図20に示すのは、一つの方向から入射する光に対して、輝点が一箇所しか生じないように構成した光輝性要素(7)の例である。図20(a)はフレネル型とし、図20(b)はブレーズド型の回折格子(8)とした例である。いずれの微細な三次元の断面形状に一定の方向性を付与することによって、光輝性要素(7)から生じる輝点を一つとすることができる。また、図20(c)や図20(d)のように、回折格子(8)の角度範囲を0度から180度に制限することによって、一方向からの入射光によって生じる輝点を一箇所に制限する形態を用いてもよい。図20(c)や図20(d)の違いは、回折格子(8)の角度と同時に密度も変化しているか否かである。
続いて、可変画像群(5)の動的情報(3)の基となる潜像要素群(6)について、図21を用いて具体的に説明する。
潜像要素群(6)は、前述の第一の実施の形態と同様に、固有情報(2)と重なる領域の潜像要素群(6)を白抜きで除いておく必要がある。説明図を簡潔にするために、図21に白抜きで除く前の潜像要素群(6´)を示す。本第二の実施の形態のようなアルファベットの「A」のモアレを発生させるためには、潜像要素群(6´)は光輝性要素群(4)と同じくドット状とし、かつ、出現させたいアルファベット「A」の文字を全体的(縦方向及び横方向)に圧縮して用いる。
本第二の実施の形態においては、光輝性動画模様(1)の中にアルファベットの「A」のモアレを発生させることを意図しているため、基画像(15)は、アルファベットの「A」となる。そして、この基画像(15)を全体的に圧縮することで、潜像要素群(6´)を構成する潜像要素(11)となる。
潜像要素群(6´)は、光輝性要素群(4)と干渉してモアレを発生させるために、複数の潜像要素(11)が、光輝性要素群(4)の配置の規則性と異なる規則性を有して配置されている必要がある。本第二の実施の形態においては、アルファベットの「A」の形状を有した潜像要素(11)の配置ピッチについての規則性が、光輝性要素群(4)の配置の規則性と異なる。潜像要素(11)は、光輝性要素群(4)の配置ピッチ(P1)と異なる配置ピッチ(P2)で第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に配置されて成る。
なお、本第二の実施の形態においても、ドット状の潜像要素(11)の第一の方向(S1方向)の配置ピッチ(P2)を制御することで、動画効果に加えて、奥行き感や手前感といった遠近感を制御することができる。
また、モアレで表現するための一例として、本第二の実施の形態においては、潜像要素(11)の第一の方向(S1方向)のピッチ(P2)を光輝性要素(7)の配置ピッチ(P1)に対して103%の数値とした。以上のような潜像要素群(6)と固有情報(2)を合成して可変画像群(5)とする。
なお、可変画像群(5)の中の潜像要素群(6)をネガ(モアレが明るい。)で表わすか、ポジ(モアレが暗い)で表すかによって、出現する動的情報(3)の見え方は変化する。モアレを周囲より暗い、いわゆるポジの状態で表わした第一の実施の形態においては説明を省略したが、出現する動的情報(3)をポジとしても逆のネガとしても表わすことができる。潜像要素群(6)をネガとして可変画像群(5)を構成した場合、出現する動的情報(3)はネガとなり、潜像要素群(6)をポジとして可変画像群(5)を構成した場合、出現する動的情報(3)はポジとなる。本第二の実施の形態では、ポジで表しているため、出現する動的情報(3)はポジで表される。以上が可変画像群(5)の説明である。
図22に光輝性要素群(4)と可変画像群(5)中の潜像要素群(6´)の重ね合わせの状態を示す。なお、図22は、ピッチのズレをあえて強調したデフォルメした画像である。光輝性要素群(4)の規則性と潜像要素群(6´)の規則性が異なるため、二つの要素間に周期的なズレが生じ、モアレを発生させる。また、有意情報をドット状のモアレで表現するためのより具体的な構成方法については特許第5131789号公報に記載の構成を用いればよい。
本第二の実施の形態の光輝性動画模様(1)の効果を図23に示す。この例では、図19(a)の同心円型の光輝性要素(7)を用いたものとする。ホログラムから回折光が生じる環境下で光輝性動画模様(1)を観察すると、図23(a)に示すように固有情報(2)である所持人の顔画像と個人番号が可視化されるとともに、固有情報(2)の背景に動的情報(3)として、アルファベットの「A」を表した動く二つのモアレが1ペアとなり、周期的に複数出現する。次に、図23(b)に示すように、光輝性動画模様(1)をわずかに傾けることで、固有情報(2)の背景のアルファベットの「A」を表した動くモアレの互いの位置関係が変化する。また、図23(c)に示すように、光輝性動画模様(1)を更に傾けることで、固有情報(2)の背景のアルファベットの「A」を表した動くモアレの位置が更に変化する。基本的にこの形態において、アルファベットの「A」は、互いに回転しているように見える。
次に、第三の実施の形態として、モアレ拡大現象を利用する形態とは異なる形態として、立体画像の撮像方式の一形態であるIP画像方式の画線構成を用いて動的情報(3)を形成する形態について説明する。
(第三の実施の形態)
まず、光輝性要素(7)をライン状とした形態であって、IP画像方式の基画像(15)を分割圧縮する構成で動的情報(3)を構成し、動画効果を発現させる形態について説明する。
前述のモアレ拡大現象を利用して動的情報(3)に動画効果を与える形態は、拡大されたモアレ模様が必ず周期的に複数出現するため、同じ情報が繰り返し表示されるデザインを望まないユーザーには、好ましくない構成となる。また、モアレ拡大現象を利用するためには、光輝性要素群(4)の配置ピッチとほぼ変わらない、極めて狭いピッチの中に潜像要素(11)の表す情報全体を圧縮して小さく縮小する必要があることから、出現させられるモアレ模様は、比較的シンプルな図柄に制限されやすく、高い解像度を要求する画像を動かすには、構成上の制約が大きい。
本明細書におけるIP画像方式の動画効果を生じさせるための構成は、モアレ拡大現象が抱えていた多くの制約をなくしたものであり、デザイン上の自由度も大きい。
図24に第三の実施の形態における光輝性動画模様(1)を示す。本第三の実施の形態において、光輝性動画模様(1)が表すのは、「印刷花子」の漢字であり、これは所持人毎に書き換える必要がある可変情報であり、当該可変情報自体に動画効果が生じる、動的情報(3)となる。第一の実施の形態及び第二の実施の形態においては、動かない「可変情報(所持人の情報)」と、動く「固定情報(モアレ)」を組み合わせることで、ホログラム上で可変情報付与と動画効果を両立させた。しかし、本第三の実施の形態では、「可変情報(所持人の情報)」自体を動的情報(3)とする、より高度な形態である。
本第三の実施の形態の光輝性動画模様(1)の構造の概要を図25に示す。光輝性動画模様(1)は、光輝性要素群(4)と、可変画像群(5)から成る。本第三の実施の形態の光輝性動画模様(1)は、固有情報(2)は存在しないため、可変画像群(5)はそのまま潜像要素群(6)となる。本第三の実施の形態においては、この潜像要素群(6)は、名字である「印刷」の漢字を表す第一の潜像要素群(6A)と、名前である「花子」の漢字を表す第二の潜像要素群(6B)との、二つの潜像要素群(6A、6B)から成る。なお、本第三の実施の形態において、固有情報(2)を付与してはならないわけではなく、必要に応じて固有情報(2)を付与し、潜像要素群(6)と組み合わせてもよい。
次に、潜像要素群(6)について説明する。本第三の実施の形態では、「印刷」を第一の基画像(15A)とし、「花子」を第二の基画像(15B)とする。基画像(15A、15B)を別々に設定したのは、出現したそれぞれの動的情報(3)の動きの方向を変える構成を適用し、動画効果と遠近感をより強調するためである。
まず、基本的な潜像要素群(6)の構成について説明する。潜像要素群(6)は、基画像(15)を特定の幅で分割し、かつ、それを特定の縮率で圧縮した潜像要素(11A、11B)が、光輝性要素群(4)の規則性と同じ規則性で複数配置されることで形成される。すなわち、潜像要素群(6)は、光輝性要素群(4)と同じピッチ(P1)で、かつ、同じ配置方向(S1方向)で同じ角度で連続して配置される必要がある。これは、前述のモアレ拡大現象を用いる形態と、最も大きな違いである。
IP画像方式の潜像要素群(6)の構成おいて、それぞれの潜像要素(11)は、全て異なる形状を有している。潜像要素(11A、11B)を構成するには、まず基画像(15A、15B)に一定の大きさのフレーム(16A、16B)を当てはめて、このフレーム(16A、16B)の内部に入った画像だけを分割して取り出し、この画像を特定の縮率で圧縮することで、一つの潜像要素(11A、11B)が生成できる。隣の潜像要素(11A、11B)を作製する場合には、フレーム(16)の位置を光輝性要素群(4)の配置ピッチ(P1)分だけ第一の方向に移動させ、再びフレーム(16A、16B)の内部に入った画像だけを分割して取り出し、画像を特定の縮率で圧縮することで、更に隣り合う一つの潜像要素(11A、11B)が生成できる。これを先の潜像要素(11A、11B)の隣に第一の方向にピッチ(P1)分だけ移動した位置に配置する。
以上のようにフレーム(16A、16B)を移動させて基画像(15A、15B)を分割圧縮して潜像要素(11A、11B)を作り出し、配置することを繰り返し、移動させたフレーム(16A、16B)内に基画像(15)が含まれない状態になれば、最終的に潜像要素群(6)が完成する。
次に、潜像要素群(6)の具体的な構成とその作製方法について、詳細に説明する。まず、第一の潜像要素群(6A)の基画像(15A、15B)である「印刷」を一定の大きさのフレーム(16A)を当てはめ、一定の縮率をもって圧縮した。一例として、本第三の実施の形態では、縮率としてはかなり大きな値である10%に圧縮している。一般的に流通しているホログラムの横幅は、20mm以下である場合が多く、この中に動的情報(3)を収めることを意図する場合、基本的には0.1%から20%程度の縮率とすることが望ましい。
ただし、縮率は、ホログラムの大きさや基画像(15)の再現に必要な解像度、ユーザーが望む動きの幅等の様々な要因によって、適宜設定する必要がある。フレーム(16A)の位置を光輝性要素群(4)のピッチ(P1)分ずつ第一の方向(S1方向)へ移動させて分割圧縮を繰り返して第一の潜像要素群(6A)を作製する。
第二の潜像要素群(6B)は、基画像(15B)である「花子」を一定の大きさのフレーム(16B)を当てはめ、一定の縮率をもって圧縮した。ここでは第一の潜像要素群(6A)と同じ10%に圧縮している。ここで、圧縮した潜像要素(11)は、第一の方向(S1方向)に対して垂直な軸を基準として画像をミラー反転させることが望ましい。フレーム(16B)の位置を光輝性要素群(4)のピッチ(P1)分ずつ第一の方向(S1方向)へ移動させて分割圧縮を繰り返して第二の潜像要素群(6B)を作製するが、第二の潜像要素群(6B)の全ての潜像要素(11)は、基画像(15B)を分断圧縮したのちに、ミラー反転させた構成である。これが第一の潜像要素群(6A)と第二の潜像要素群(6B)の最も大きな構成の違いである。以下、望ましい形態としてミラー反転をさせた構成を使用した例として説明するが、潜像要素(11)をミラー反転せずに形成してもよい。
なお、フレーム(16)の大きさや縮率は、それぞれの潜像要素群(6A、6B)を構成する中では同じ数値を用いるが、第一の潜像要素群(6A)と第二の潜像要素群(6B)のように、別々の潜像要素群(6)に適用する場合は同じ数値を用いる必要があるわけではなく、任意の数値を設定すればよい。フレーム(16)の大きさが大きく、かつ縮率が小さいほど出現する動的情報(3)の動画効果の動きの幅やスピードは大きくなるが、それに反比例して動的情報(3)は解像度が低下してぼやけて見える。これらの数値は、基画像(15)の複雑さや動きの大きさ等を勘案して適宜設定する必要がある。
前述のモアレ拡大現象を用いた形態は、基画像(15)全体を単純に圧縮して配置ピッチ内に収める必要があったことから、基画像(15)が複雑で高い解像度を必要とする画像は、再現しきれない場合があった。しかし、潜像要素群(6)をIP画像方式で形成する場合は、フレーム(16)の大きさを調整することで圧縮する画像の大きさを調整できるために、再現できる画像の制約が小さくなる。
基画像(15)に用いる画像は、文字、数値、記号、マーク等を用いても良く、特に制約はない。人の顔や風景といった写真画像等を基画像(15)とすることも可能である。基画像(15)は、動的情報(3)として光輝性動画模様(1)上に動画効果を有した画像として再生される。なお、本明細書におけるIP画像方式による潜像要素群(6)の構成は、立体画像の撮像・再生方法の一つである、IP画像方式において、スリット状のレンチキュラー又はドット状のマイクロレンズアレイを通して記録・再生される画像を画像処理によって擬似的に構成したものである。
なお、本第三の実施の形態においても、光輝性要素群(4)と可変画像群(5)が異なる光学特性を有する構成を付与する方法は、第一の実施の形態及び第二の実施の形態と同様であり、図27に示すように、光輝性要素群(4)上に可変画像群(5)をレーザ照射装置(12)で描画することにより行う。
次に、光輝性要素群(4)と潜像要素群(6)の理想的な重なり合いの構成を、図28に示す。図28に示すのは、光輝性要素(7)と各潜像要素(11)にズレがなく、各光輝性要素(7)の中心に各潜像要素(11)の中心が重なるように配置して成る、最も望ましい重なり合いの構成である。なお、各光輝性要素(7)の中心に各潜像要素(11)の中心が重なるように配置できず、それぞれの中心がズレた配置となった場合、動的情報(3)の動きの幅が小さくなったり、動きが不連続となることがある。この状態であっても動画効果自体は生じ、本発明が目的とする効果は生じるが、より望ましくは、光輝性要素(7)と各潜像要素(11)の位置にズレがない状態になるように、可変画像群(5)を描画することが望ましい。
しかしながら、あらかじめカードや印刷物に貼付して成る光輝性要素群(4)に対して、後からレーザで可変画像群(5)を形成する場合、光輝性要素群(4)と潜像要素群(6)との重なり合いの位置関係を調整することは困難である。その場合には、各光輝性要素(7)の中心に各潜像要素(11)の中心が重なるように配置しなくとも、動的情報(3)の動きの幅が小さくなったり、動きが不連続となる問題を防止するための特殊な画線構成を用いることができる。
次に、図29に上記の問題を解決するための望ましい特殊な画線構成の潜像要素群(6AB)を示す。この潜像要素群(6AB)は、同じ基画像(15A)に対して、潜像要素(11A)をミラー反転せずに作製した潜像要素群(6A)と、潜像要素(11A)をミラー反転して作製した潜像要素群(6B)とを、第一の方向(S1方向)にピッチ(P1)毎にピッチの半分の幅(二分の1*P1)ずつ分割し、拡大図に示すように分割した二つの潜像要素群(6A、6B)を二分の1ピッチ分だけずらして合成することによって作製した特殊な画線構成を有する。
この特殊な潜像要素群(6AB)は、互いに逆方向に移動する潜像要素群(6A、6B)が組み合わさることで、潜像要素群(6AB)中の基画像(15)の動きの始点と終点がなくなり、出現した基画像(15)が停止することなく動き続ける画線構成となっている。
この特殊な潜像要素群(6AB)を用いれば、各光輝性要素(7)の中心に各潜像要素(11)の中心が重なるように描画できなかった場合でも、動的情報(3)の動きの幅が小さくなったり、動きが不連続となる問題は生じない。このため、各光輝性要素(7)の中心に各潜像要素(11)の中心が重なるように二つの要素群の位置関係を調整する必要がなくなる。このように、この特殊な潜像要素群(6AB)は、あらかじめカードや印刷物に貼付して成る光輝性要素群(4)に対して、後からレーザで可変画像群(5)を描画する場合には、より適切な潜像要素群(6)の画線構成である。より具体的な構成と作製方法は特開第2016-203459号公報に記載のとおりであり、この技術を本発明の潜像要素群(6)に適用すればよい。
次に、本第三の実施の形態の光輝性動画模様(1)の効果について、図30を用いて説明する。図30に示すのは、図26の通常の構成の潜像要素群(6A)を可変画像(5A)としたものであって、図28に示したように各光輝性要素(7)の中心に各潜像要素(11)の中心が重なるように配置した場合の効果である。
光輝性動画模様(1)を回折光が生じる環境下で観察すると、図30(a)に示すように漢字の「印刷」及び「花子」を表した動く情報(3A、3B)が出現する。光輝性動画模様(1)をわずかに傾けることで、図30(b)に示すように動く情報(3A、3B)である「印刷」及び「花子」の互いの位置関係が変化する。「印刷」と「花子」は互いに逆方向に同じ速度で動く。光輝性動画模様(1)を更に傾けることで、図30(c)に示すように動く情報(3A、3B)である「印刷」及び「花子」の互いの位置関係が更に変化して見える。同じく「印刷」と「花子」は互いに逆方向に同じ速度で動く。また、「印刷」の文字は、相対的に手前にあるような手前感が生じ、「花子」の文字は相対的に奥側にあるような奥行き感が生じ、「印刷」と「花子」の間に遠近感が生じる。
前述の第一の実施の形態と第二の実施の形態における、モアレ拡大現象を利用した光輝性動画模様(1)は、基画像(15)として設定した画像が動的情報(3)として出現する場合、複数の基画像(15)が周期性を有して一定の間隔で出現するものであった。一方、本第三の実施の形態のIP画像方式の光輝性動画模様(1)の場合、動的情報(3)として出現する基画像(15)は一つのみである。
次に、前述の動画効果が生じる原理を説明する。入射する光の角度に対して、光輝性要素(7)の中の、光と直交する角度を成す回折格子(8)が光を特に強く回折し、光を強く回折した光輝性要素群(4)上と形成された潜像要素群(6)の一部のみがサンプリングされる。光輝性要素群(4)は特定のピッチ(P1)で光輝性要素(7)が配されているため、光が入射した場合、強い回折光が生じる帯状の領域は光輝性要素群(4)上に特定のピッチ(P1)の周期で連続して生じることとなる。
図26に示すように、潜像要素群(6)は、同じピッチ(P1)で構成されているため、潜像要素群(6)は作製されたときの分割ピッチ(P1)でサンプリングされ、分割の工程が逆再生された形で基画像(15)が再生される。この基画像(15)はそのまま動的情報(3)として視認される。また、入射する光の角度が変化することで、光輝性要素(7)の中の光を強く回折する領域が変化し、重ね合わされた潜像要素群(6)のサンプリング位置が変化することで、圧縮された潜像要素群(6)の再生される領域も変化することで基画像(15)の動的情報(3)に動画効果が生じるものである。
上記の圧縮画像の再生の過程は、圧縮画像の再生に光の回折を用いるか、光の屈折を用いるかの再生手段は異なるものの、インテグラルフォトグラフィにおいて圧縮画像がレンチキュラーによって再生される過程と同じである。以上が、本第三の実施の形態における光輝性動画模様(1)において、動的情報(3)が可視化され、更に光輝性動画模様(1)を傾けることで動的情報(3)に動画効果が生じる原理である。また、動画効果に付随して奥行き感や手前感が生じるのは、水平方向に動的情報(3)が移動することによって、両眼視差に起因する遠近感が生じたことによる。
なお、ライン状の光輝性要素(7)を用いた第一の実施の形態及び第三の実施の形態においては、いずれも直線で構成された光輝性要素群(4)の構成について説明したが、光輝性要素群(4)の構成は、直線に限定されるものではない。図36に示すような曲線の光輝性要素(7)の周期的な組み合わせによって光輝性要素群(4)を形成してもよいし、同心円の光輝性要素(7)の周期的な組み合わせによって光輝性要素群(4)を形成してもよい。
また、ライン状の光輝性要素(7)を用いる場合、図37(a)~図37(d)に示すように、直線や曲線の光輝性要素(7)を組み合わせて光輝性要素群(4)を構成してもよい。図36や図37の形態では、光輝性要素(7)のピッチや画線方向がそれぞれ変化するが、光輝性要素群(4)の規則性に従って、潜像要素群(6)がそれに対応した配置とする。これらの光輝性要素群(4)の構成や、それに対応した潜像要素群(6)の構成要件と作製方法については、図36の曲線状の光輝性要素(7)を用いる場合は特許第6032423号公報を、曲線の光輝性要素(7)と直線の光輝性要素(7)を組み合わせた図37の構成を用いる場合には、特許第6112357号公報及び特許第64128576号公報に記載の方法を用いればよい。
更に、ライン状の光輝性要素(7)とドット状の光輝性要素(7)を組み合わせて光輝性要素群(4)を形成してもよい。ライン状の光輝性要素(7)とドット状の光輝性要素(7)を組み合わせる例としては、ライン状の光輝性要素(7)とドット状の光輝性要素(7)の第一の方向のピッチを一致させ、潜像要素群(6)にはライン状の潜像要素群(6)を適用することで、ラインとドットが組み合わさった光輝性動画模様(1)を構成することができる。
(第四の実施の形態)
次に、本第四の実施の形態として、ドット状の光輝性要素(7)により光輝性要素群(4)を形成し、潜像要素群(6)にIP画像方式の画線構成を用いて動的情報(3)に動画効果を発現させた形態について説明する。本第四の実施の形態において、動的情報(3)は、第三の実施の形態のように第一の方向(S1方向)への移動に動きの方向が制限されることなく、第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)へと上下左右に自由に移動する。
本第四の実施の形態において、図31に示すように光輝性動画模様(1)上に動的情報(3)として出現させる画像、いわゆる基画像(15)として「花子」という漢字を選択した。この「花子」という情報は、所持人の名前を想定したものであり、所持人毎に情報が入れ替わる可変情報である。
本第四の実施の形態の光輝性動画模様(1)の構造を図32に示す。光輝性動画模様(1)は、光輝性要素群(4)と可変画像群(5)から成る。本第四の実施の形態の光輝性動画模様(1)には、固有情報(2)は存在しないため、可変画像群(5)はそのまま潜像要素群(6)となる。第四の実施の形態においては、この潜像要素群(6)は、名前である「花子」の漢字を基画像(15)として成る。
次に、図33を使用して、基本的なドット状の潜像要素群(6)の構成について説明する。潜像要素群(6)は、基画像(15)を特定の幅で分割し、かつそれを特定の縮率で圧縮した潜像要素(11)が、光輝性要素群(4)の規則性と同じ規則性で複数配置されることで形成されることは、第三の実施の形態の潜像要素群(6)の構成と同じである。
ただし、第三の実施の形態における基画像(15)の圧縮が第一の方向(S1方向)に対してのみ行われたのと異なり、本第四の実施の形態における基画像(15)の圧縮は、第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)の両方向に及ぶ。また、作製した潜像要素(11)は第一の方向(S1方向)に配置されるだけでなく、第二の方向(S2方向)に対しても配置される。
図33に示すように、漢字の「花子」を表す基画像(15)に対して、一定の大きさのフレーム(16)を当てはめ、その中に入った画像のみを分割して取り出し、その分割画像を一定の縮率で第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に圧縮することでひとつの潜像要素(11)とする。第三の実施の形態のスリット状の長く伸びた形状となる潜像要素(11)の場合とは異なり、潜像要素(11)は基画像(15)の一部が単純に縮小された構成となる。なお、図33の例は説明を明瞭にするために、図をデフォルメした画像であり、実際には基画像(15)を少なくとも20%以下に圧縮する。
また、第三の実施の形態では、望ましい形態として第一の方向(S1方向)と垂直な角度に潜像要素(11)をミラー反転させて動的情報(3)を形成し、現れた場合の動きの方向を変化させる手法について説明したが、本第四の実施の形態のドット状の潜像要素(11)においても同様に、望ましい形態としてミラー反転を使用した形態について説明する。図33の潜像要素(11)は、第一の方向(S1方向)と垂直な角度(第二の方向(S2方向))を軸として潜像要素(11)をミラー反転させて成る。これにより、ミラー反転させなかった潜像要素(11)で構成された潜像要素群(6)から生じる動的情報(3)に対して第一の方向(S1方向)とは逆方向(S1´方向)へ動く特性を付与できるが、潜像要素(11)をミラー反転せずに形成してもよい。
更に、本第四の実施の形態は、ドット状であるゆえに第一の方向と垂直な角度(第二の方向)に加えて、第二の方向と垂直な角度(第一の方向(S1方向))を軸として潜像要素(11)をミラー反転させる場合もある。この場合、第二の方向(S2方向)と垂直な角度(第一の方向(S1方向))を軸として潜像要素(11)をミラー反転させなかった潜像要素(11)で構成された潜像要素群(6)から生じる動的情報(3)に対して第二の方向(S2方向)とは逆方向(S2´方向)に動く特性を付与できる。以上のように、潜像要素(11)を第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)にミラー反転させるか否かで第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)への動きを制御することができる。
上記手順で一つの潜像要素(11)を作製した後、続いて第一の方向(S1方向)にフレーム(16)を特定のピッチ(P1)分だけ移動させ、移動させたフレーム(16)内に収まった画像のみを分割して取り出し、その分割画像を一定の縮率で第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に圧縮することで隣り合う潜像要素(11)として、先の潜像要素(11)の隣に第一の方向(S1方向)に特定のピッチ(P1)分だけずらして配置する。
前述のように、フレーム(16)を移動させて基画像(15)を分割圧縮して潜像要素(11)を作り出し、配置することを繰り返し、移動させたフレーム(16)内に基画像(15)が含まれない状態になれば、一列の潜像要素群(6)が完成する。続いて、フレーム(16)を第二の方向(S2方向)に特定のピッチ(P1)分だけ移動させ、移動させたフレーム(16)内に収まった画像のみを分割して取り出し、その分割画像を一定の縮率で第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に圧縮することで隣り合う潜像要素(11)として、先の潜像要素(11)の隣に第二の方向(S2方向)に特定のピッチ(P1)分だけずらして配置する。これを繰り返して潜像要素群(6)を作る。この手順を繰り返し、最終的にドット状の潜像要素群(6)が完成する。
フレーム(16)の大きさや縮率についての法則やそれらの数値を変化させて生じる利点と問題、モアレ拡大現象を用いた形態に対する利点は、基本的に第三の実施の形態と同様であることから説明を省略する。
次に、光輝性要素群(4)と潜像要素群(6)の理想的な重なり合いの構成を、図34に示す。図34に示すように、各光輝性要素(7)と各潜像要素(11)の位置にズレはなく、本第四の実施の形態においては、各光輝性要素(7)の中心に各潜像要素(11)の中心が重なるように配置して成る。なお、各光輝性要素(7)の中心に各潜像要素(11)の中心が重なるように配置できず、それぞれの中心がズレた配置となった場合でも、動画効果自体は生じるため、本発明の効果は生じる。ただし、動的情報(3)の動きの幅が小さくなったり、動きが不連続となることがあるため、図34のように各光輝性要素(7)と各潜像要素(11)の位置にズレがない状態になるように、可変画像群(5)を描画することが望ましい。
なお、本第四の実施の形態においても、後からレーザで可変画像群(5)を描画する場合、光輝性要素群(4)と潜像要素群(6)との重なり合いの位置関係を調整することは困難であることから、前述の第三の実施の形態と同様に、特殊な画線構成を用いることで解決することができる。具体的な画線構成と作製方法は特開第2016-203459号公報に記載されたドット状の場合の潜像要素群(6)の画線構成を本発明の潜像要素群(6)に適用すればよい。
次に、本第四の実施の形態の光輝性動画模様(1)の効果について、図35を用いて説明する。図35に示すのは、図20(d)の光輝性要素(7)によって光輝性要素群(4)を形成し、かつ、潜像要素群(6)を可変画像群(5)としたものであって、図34に示したように各光輝性要素(7)の中心に各潜像要素(11)の中心が重なるように配置した場合の効果である。
光輝性動画模様(1)を回折光が生じる環境下で観察すると、図35(a)に示すように漢字の「花子」を表した動的情報(3)が出現する。光輝性動画模様(1)をわずかに傾けることで、図35(b)に示すように動的情報(3)である「花子」の位置が変化する。光輝性動画模様(1)を更に傾けることで、図35(c)に示すように動的情報(3)である「花子」の位置が更に変化する。第三の実施の形態と異なり、第一の方向(S1方向)にも第二の方向(S2方向)にも位置が変化する。また、この出現した動的情報(3)の「花子」の漢字は、光輝性動画模様(1)の画面表面よりも、相対的により奥側にあるような奥行き感をもって観察される。
なお、仮に図19(a)~図19(d)に示す光輝性要素(7)を用いて光輝性要素群(4)を形成していた場合には、「花子」を表す二つの動的情報(3)がペアで出現し、互いが逆方向に動く。これは、図19(a)~図19(d)に示す光輝性要素(7)を用いて光輝性要素群(4)を形成していた場合には、一方向からの入射光に対して光輝性要素(7)中に二箇所の輝点が生じるためである。逆に、図20(a)~図20(d)に示す光輝性要素(7)を用いて光輝性要素群(4)を形成していた場合には、一方向からの入射光に対して光輝性要素(7)中に一箇所の輝点が生じるにとどまるため、動的情報(3)として再生される基画像(15)は一つだけとなる。
次に、前述の動画効果が生じる原理を説明する。入射する光の角度に対して、光輝性要素(7)の中の、光と直交する角度を成す回折格子(8)が光を特に強く回折し、光を強く回折した光輝性要素群(4)上と形成された潜像要素群(6)の一部のみがサンプリングされる。光輝性要素群(4)は、第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に特定のピッチ(P1)で光輝性要素(7)が配されているため、光が入射した場合、強い回折光が生じる点状の領域は光輝性要素群(4)上に第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に特定のピッチ(P1)の周期で連続して生じることとなる。
ここで、潜像要素群(6)は、第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に同じピッチ(P1)で構成されているため、潜像要素群(6)は作製されたときの分割ピッチ(P1)でサンプリングされ、分割の工程が逆再生されて基画像(15)が再生される。この基画像(15)は、そのまま動的情報(3)として視認される。また、入射する光の角度が変化することで、光輝性要素(7)の中の光を強く回折する領域が変化し、重ね合わされた潜像要素群(6)のサンプリング位置が変化することで再生される基画像(15)の位置が変化し、動的情報(3)に動画効果が生じるものである。
前述の圧縮画像の再生の過程は、圧縮画像の再生に光の回折を用いるか、光の屈折を用いるかの再生手段は異なるものの、IP画像方式において、圧縮画像がマイクロレンズアレイによって再生される過程と同じである。以上が、本第四の実施の形態における光輝性動画模様(1)において、動的情報(3)が可視化され、更に光輝性動画模様(1)を傾けることで動的情報(3)に動画効果が生じる原理である。以上が、本第四の実施の形態の説明である。
なお、第三の実施の形態及び第四の実施の形態において、1枚毎に情報を変える必要がある可変情報を動的情報(3)とする場合、レーザから照射する可変画像群(5)中の潜像要素群(6)は、レーザ描画の都度、オンデマンドで生成する必要がある。手作業で潜像要素群(6)を一瞬で作製することは不可能であることから、インテグラルフォトグラフィ用の潜像要素群(6)の作製ソフトウェアを用いることが望ましい。このソフトウェアは、特許第6418576号公報に記載のアルゴリズムを用いればよい。このソフトウェアを用いることで、可変情報に動画効果を付与した潜像要素群(6)を一瞬で生成することができる。
(回折格子)
次に、本発明における回折格子(8)について説明する。本発明における光輝性要素(7)に刻む回折格子(8)の密度は、1mm中に500本以上とすることが望ましく、色相の表現を重視する場合には1000本以上とすることが望ましい。基本的には、1mm中に500本以上2000本以下の範囲の密度で回折格子を形成することが望ましい。
光輝性要素(7)中の回折格子(8)を1mmあたり500本以上の密度で回折格子(8)を構成した場合、動的情報(3)は青、緑、黄、赤等の異なる色相に徐々に変化しながら動く効果を生じる。回折格子(8)を用いて回折光によって色彩を表現する場合、1mm当たり500本以上の回折格子(8)を付与することで、紫から赤までの虹色の回折光が生じる。1mm当たりの回折格子(8)の本数が増えると、回折光の回折角度が拡がるため、回折光が見える角度範囲が変化する。
仮に、1mm当たり500本の密度の回折格子(8)から生じる一次回折光の回折角度が約10度の角度範囲だったとすると、密度が1000本の回折格子(8)の回折角度は約20度に、密度が1500本の回折格子(8)の回折角度は約40度に拡がる。この現象を利用して、観察者に見える回折光の色相をコントロールすることができる。一例として、1mm当たりの回折格子(8)の密度が500本の回折格子(8)の一次回折光が赤色に見える特定の角度から観察する場合、密度が600本の回折格子(8)は緑色に見え、密度が700本では紫色に見える。以上のように、回折格子(8)の密度を制御することで、回折光の色相を選択し、光輝性動画模様(1)中の色彩を豊かにすることが可能である。
(応用例)
本発明の光輝性動画模様(1)を用い、印刷物に貼付されることを想定した層構成の一例を図38に示す。本明細書中では、発明の光輝性動画模様(1)に関して、構成に必須の光輝性要素群(4)と潜像要素群(6)についてのみ具体的に記載したが、これらは光輝性動画模様(1)における最低限の構成のホログラム形成層(9)と金属膜(10)のみに関するものであり、実用的な形態として透明反射層(17)を施して輝度を高めたり、保護層(18)を設けて耐久性を高めたり、接着アンカー層(19)や接着層(20)を設けて基材に貼付できる形態とすることは本発明の常識的な応用の範囲内である。
図39(a)~図39(c)に、本発明の光輝性動画模様(1)を含んだホログラムを貼付し、身分証カード(印刷物)とした例を示す。図39(a)の例では、地紋模様等の下地印刷が施されたカード(23)に対して、印刷やレーザ描画によって印字された名前である個人情報(ローマ字の名前)(21)と光輝性動画模様(1)が配置された例である。光輝性動画模様(1)は、第一の実施の形態で説明した構成を有しており、光輝性動画模様(1)中の動的情報(3)は背景のモアレ模様であり、可変情報は固有情報(2)として付与されている。この形態では固有情報(2)をカード毎に差し替えるだけで光輝性動画模様(1)を作製することができ、可変画像群(5)作製のための画像処理の手間が最も少なく、特別なソフトウェアを使用することなく、本発明の光輝性動画模様(1)を活用することができる。
図39(b)に示すのは、地紋模様等の下地印刷が施されたカード(23)に対して、印刷やレーザ描画によって印字された顔画像と名前である個人情報(21)と、印字された個人情報(ローマ字の名前)(21)と突き合わせ可能な形で、光輝性動画模様(1)中に動的情報(3)として個人情報(漢字の名前)が配置された例である。光輝性動画模様(1)は第三の実施の形態で説明した構成を有しており、動的情報(3)は個別に差し替えが必要な可変情報である。
図39(c)に示すのは、地紋模様等の下地印刷が施されたカード(23)に対して、印刷やレーザ描画によって印字された名前である個人情報(ローマ字の名前)(21)と、印字された個人情報(ローマ字の名前)(21)と突き合わせ可能な形で、光輝性動画模様(1)中に動的情報(3)として個人情報(漢字の名前)が配置されて成る。これに加えて顔画像と個人番号が固有情報(2)として付与されて背景に動的情報(3)としてモアレが配された別の光輝性動画模様(1)が配置されてなる。この例では、光輝性動画模様(1)は第一の実施に形態と第三の実施の形態で説明した構成を同時に有している。
更に、図40に示すように、光輝性動画模様(1)の一部とカード(23)の地紋模様に対し、印刷やレーザ描画によって印字された名前である個人情報(ローマ字の名前)(21)を跨るように形成することによって、光輝性動画模様(1)を剥がして改ざんする行為に対する抵抗力を向上することができる。
(実施例)
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した光輝性動画模様(1)を作製する実施例について詳細に説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例について説明する。図41に示すように、地紋模様等の下地印刷が施されたカード(23)に、あらかじめ光輝性要素群(4)が貼付されて成る。光輝性要素群(4)は、第一の実施の形態において、図3に示した直線の光輝性要素(7)が0.3mmピッチで配置された構成とした。光輝性要素(7)は、図5(b)に示す構成の回折格子(8)で満たされた構造とした。回折格子(8)は、-45度から+45度の角度範囲の中で形成した。カード(23)の基材は、ベースを白色のポリカーボネート製として、その際表面にレーザ発色層(22)を貼付した。この層を構成するシートは、1μm以下の波長のレーザを照射することで、黒く発色する機能を有する。これを含んだ層構造とすることで、カード(23)に直接レーザで可変情報を印字するために望ましい構成となる。透明保護層(24)は、透明なポリカーボネート製とした。この段階では、このカード(23)にはいかなる可変情報(個人情報)を書き込まれていない、パーソナライズ前の万人用のベースカードである。
図42に示すように、この光輝性要素群(4)が貼付されたカード(23)に対して、レーザ照射装置(12)を用いて、可変画像群(5)の付与を行った。可変画像群(5)は、図26に示した「印刷花子」の漢字をIP画像方式の画線構成とした潜像要素群(6)を有して成る。潜像要素群(6)を構成する潜像要素(11)の配置ピッチは、光輝性要素群(4)と同じく0.3mmとした。
レーザ照射装置は、YVO4レーザマーカー(キーエンス製)を用いた。本装置から照射されるレーザの波長は約1μmであり、光輝性要素群(4)の金属膜(10)を除去して光輝性を失わせるに適した波長である。レーザパワーを15%、スキャンスピード200mm/s、Qスイッチ周波数100kHzで可変画像群(5)を加工画像としてレーザを照射した。また、同時に所持人の顔画像(21)及びローマ字の名前「Hanako Insatsu」(21)を同時にレーザ発色層(22)に印字した。
この結果、図43に示す所持人毎にパーソナライズされたホログラム(光輝性動画模様(1))を有するカード(23)が出来上がった。本実施例において作製されたカード(23)は、カード(23)のレーザ発色層(22)に所持人の顔画像とローマ字に名前(21)がダイレクトに印字され、レーザ発色層(22)の機能により黒く可視化されるとともに、光輝性動画模様(1)の中には、ローマ字の名前から成る個人情報(21)と対を成す情報として漢字の「印刷花子」の名前が動的情報(3)として付与されて成り、角度を変えることで「印刷」と「花子」の文字が別々に左右逆方向に動く効果が生じていることが確認できた。なお、実施例において透明保護層は、加工前からカード表面に貼付したが、レーザによる加工で膨れ等が生じる問題がある場合は、先にレーザ照射を行い、そのあとで透明保護層を貼付する形態を適用しても問題ない。
本実施例では、パーソナライズ前の万人用のベースカードに、可変画像群(5)をレーザで描画してパーソナライズする例で説明したが、これに限定されるものではない。例えば、旅券冊子(パスポート)の所持人情報等が記載されるデーターページに本発明の光輝性要素群(4)をあらかじめ貼付し、印刷や冊子化がほぼ完成して個人情報だけが入力されていないベースとなるベース冊子をあらかじめ製造してストックしておく。国民である発給要求者からパスポート発給の要請があった場合に、それぞれの発給要求者の顔画像や氏名等の個別情報に動画効果を加えた潜像要素群(6)を生成して可変画像群(5)を生成する。そして、旅券の最終発給工程においてベース冊子のデーターページを開き、そこにある光輝性要素群(4)に可変画像群(5)をレーザで描画する。以上の手順で、それぞれのユーザー用にパーソナライズされた、動画効果を備えたホログラムが貼付された旅券冊子を発給要求者に効率よく提供することができる。
1 光輝性動画模様
2 固有情報
3 動的情報
4 光輝性要素群
5 可変画像群
6 潜像要素群
7 光輝性要素
8 回折格子
9 ホログラム形成層
10 金属膜
11 潜像要素
12 レーザ照射装置
13 基材
14 不透明な可視光吸収層
15 基画像
16 フレーム
17 透明反射層
18 保護層
19 接着アンカー層
20 接着層
21 個人情報(名前、顔)
22 レーザ発色層
23 カード
24 透明保護層

Claims (5)

  1. 回折格子が形成されたホログラム形成層上に金属膜が形成された光輝性要素群と、前記金属膜と異なる光学特性を有する可変画像群との組み合わせから成る光輝性動画模様形成体であって、
    前記光輝性要素群は、直線又は曲線の少なくともいずれかによる複数の前記回折格子から成る光輝性要素が所定の規則性を有して複数配置されて成り、
    前記光輝性要素は、回折格子の配列角度又は回折格子の密度の少なくとも一方が連続的に変化する構造を有することで、光の入射光の角度変化に応じて光輝性要素における光を反射する領域が連続的に移動する構造を備え、
    前記可変画像群は、前記金属膜が存在しない、あるいは前記金属膜より低い反射率の潜像要素が前記規則性を有して複数配置されて成る潜像要素群を有し、
    前記潜像要素群と前記光輝性要素群は、前記規則性が同じ規則性又は異なる規則性により組み合されて成り、
    正反射光下において、前記光輝性要素群と前記潜像要素群の回折光の干渉による動的情報が出現し、観察角度を変化させることで、前記動的情報の位置が変化して視認されることを特徴とする光輝性動画模様形成体。
  2. 前記潜像要素群が、
    1)前記潜像要素を前記光輝性要素と配置ピッチ、配置方向又は配置角度の少なくともいずれか一つが異なる規則性を有して複数配置されて成り、又は
    2)基画像が圧縮された前記潜像要素を前記光輝性要素と配置方向又は配置ピッチの少なくともいずれか一方が異なる規則性を有して複数配置されて成り、又は
    3)基画像が分割圧縮された前記潜像要素を前記光輝性要素の前記規則性と同じ規則性を有して複数配置されて成ることを特徴とする請求項1記載の前記光輝性動画模様形成体。
  3. 前記可変画像群は、更に固有情報を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光輝性動画模様形成体。
  4. 直線又は曲線の少なくともいずれかによる複数の回折格子から成り、前記回折格子の配列角度又は回折格子の密度の少なくとも一方が連続的に変化する構造を有する光輝性要素が所定の規則性を有し、前記回折格子が形成されたホログラム形成層上に金属膜が形成された光輝性要素群と、
    前記金属膜が存在しない、あるいは前記金属膜より低い反射率の潜像要素が、光輝性要素群と同じ規則性又は異なる規則性により成る潜像要素群を少なくとも有する可変画像群との組み合わせから成る光輝性動画模様形成体の作製方法であって、
    前記光輝性要素群の前記回折格子から成る光輝性要素の前記規則性を設定する工程と、
    前記潜像要素群の基となる潜像要素群データを画像処理機器により作成して可変画像群データを作成する工程と、
    作成された前記可変画像群データを使用し、レーザ照射により前記光輝性要素群の前記金属膜を除去又は前記金属膜を破壊して前記可変画像群を形成し、前記光輝性要素群と前記可変画像群を組み合わせる工程を有することを特徴とする光輝性動画模様形成体の作製方法。
  5. 前記可変画像群が更に固有情報を有する光輝性動画模様形成体の作製方法であって、前記固有情報の基となる固有情報データを、前記画像処理機器により作成し、前記固有情報データと前記潜像要素群データを合成して可変画像群データを作成する工程を有することを特徴とする請求項4記載の光輝性動画模様形成体の作製方法。
JP2022008477A 2022-01-24 2022-01-24 光輝性動画模様形成体とその作製方法 Pending JP2023107331A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022008477A JP2023107331A (ja) 2022-01-24 2022-01-24 光輝性動画模様形成体とその作製方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022008477A JP2023107331A (ja) 2022-01-24 2022-01-24 光輝性動画模様形成体とその作製方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023107331A true JP2023107331A (ja) 2023-08-03

Family

ID=87474698

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022008477A Pending JP2023107331A (ja) 2022-01-24 2022-01-24 光輝性動画模様形成体とその作製方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023107331A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2017295951B2 (en) Methods of manufacturing a security device
US10836199B2 (en) Security devices
RU2666330C2 (ru) Защитное устройство и способ изготовления такого устройства
RU2661743C2 (ru) Пиксельное преобразование и печать для матриц микролинз, чтобы осуществлять двухосевую активацию изображений
US8199913B2 (en) Object authentication using embossed hidden images
EP3455083B1 (en) Security device and method of manufacture
PL219620B1 (pl) Zespół zabezpieczający do uwierzytelniania przedmiotów i sposób uwierzytelniania przedmiotów
JP2011126028A (ja) 潜像印刷物
EP3500436B1 (en) Image arrays for optical devices and methods of manufacture thereof
US10124620B2 (en) Multi-image optical device
JP2018504634A (ja) セキュリティエレメントを形成する方法及びセキュリティ文書
JP6112357B2 (ja) 偽造防止用潜像画像表出構造
AU2018100185B4 (en) Optically variable device having tonal effect
US6876472B2 (en) Optical feature, in particular for documents of value, and a manufacturing method for the later individualization or data storage
JP2020037215A (ja) 潜像印刷物
JP2023107331A (ja) 光輝性動画模様形成体とその作製方法
JP6886662B2 (ja) 潜像印刷物
JP6516262B2 (ja) 潜像印刷物
CN115230364B (zh) 光学防伪元件及其设计方法、防伪产品、数据载体
JP7329800B2 (ja) 潜像印刷物
US20220326540A1 (en) Micro-Optic Device
JP2020093482A (ja) 潜像要素形成層、潜像画像形成体及び潜像画像形成体を備えた潜像画像形成媒体
JP2023107332A (ja) 光輝性動画模様形成体