JP2023085875A - 細胞へ物質を導入する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】核酸のようなアニオン性導入物質は、細胞膜に穴を開ける装置で処理し、細胞に導入するとき、効率よく導入物質を細胞に取り込ませることができなかった。【解決手段】細胞にアニオン性の導入物質を導入する方法であって、前記細胞にカチオン性化合物を作用させ、カチオン性化合物処理細胞を得る工程、前記カチオン性化合物処理細胞を含む液体に前記アニオン性の導入物質を加え、導入用液を得る工程、および前記導入用液を、細胞膜に穴を開ける装置で処理し、前記細胞の細胞膜に穴を開ける工程を含むことを特徴とする方法を提供する。【選択図】図4

Description

本発明は、物質を細胞内へ導入する方法に関する。
遺伝子をはじめとする物質を細胞内へ導入する技術が知られている。細胞への物質の導入方法としては、カチオン性化合物やリポソームなどを用いた化学的導入方法、ウイルスを用いた生物的導入方法、低毒性が見込めるエレクトロポレーション法、遺伝子銃法等の物理的導入方法、または、導入物質種の選択性が大きく導入の確実性が高いマイクロインジェクション法等、様々な手法が開発されている。
近年では、遺伝子をはじめとする物質を細胞内へ導入し、細胞の性質を改変した細胞治療薬や人工多能性幹細胞の登場により、より効率的な物質導入方法が求められている。
特許文献1には、マイクロ流路を用いた物質の細胞への導入方法が記載されている。この方法では、被導入物質を含む液体に細胞が分散した状態にし、この液体を、マイクロ流路内を通過させる。これにより、細胞にせん断力が加えられ、細胞膜に穴が一時的に生じ、細胞外の被導入物質が、細胞内に導入される。
特許文献2は、画像記録装置の構成を応用した液体吐出装置を用いて、マイクロサイズの空間において、圧力およびせん断力を生じさせることにより、効果的に、細胞内へ目的の物質を導入できることを示す。
米国特許出願公開第2018/0003696号明細書 特許第5645657号公報
一般的に、細胞表面は負電荷を有している。遺伝子も負電荷を有している。細胞に遺伝子を導入しようとすると、細胞表面と遺伝子との間で電荷反発が発生し、効率よく遺伝子を細胞に導入できない。
特許文献1では、マイクロ流路を用いて物質を細胞に導入している。しかし、細胞や遺伝子が有する負電荷に関する対策はなされていない。
特許文献2では、遺伝子をあらかじめカチオン性化合物と混合し、遺伝子とカチオン性化合物を複合体としている。そして、液体吐出装置から細胞と複合体を吐出し、遺伝子を細胞に導入している。
しかし、複合体は遺伝子よりサイズが大きい。液体吐出装置を用いて圧力およびせん断力で細胞に物質を導入するとき、導入しようとする物質が大きいほど、細胞へ導入されにくいことを我々は発見した。つまり、遺伝子をカチオン性化合物との複合体とすると細胞表面と遺伝子の電荷反発は抑制できるが、遺伝子とカチオン性化合物との複合体のサイズが大きくなり、細胞膜に穴を開けて物質を細胞に導入するとき不利になることを我々は発見した。
本発明は、上記課題に鑑み、物質の電荷反発を抑制し、物質を細胞内へ導入する方法を提供することを目的とする。
本発明は、細胞にアニオン性の導入物質を導入する方法であって、
前記細胞にカチオン性化合物を作用させ、カチオン性化合物処理細胞を得る工程、
前記カチオン性化合物処理細胞を含む液体に前記アニオン性の導入物質を加え、導入用液を得る工程、および
前記導入用液を、細胞膜に穴を開ける装置で処理し、前記細胞の細胞膜に穴を開ける工程
を含むことを特徴とする方法を提供する。
細胞にカチオン性化合物を作用させるため、アニオン性の導入物質を、複合体とする必要がなく、そのサイズを大きくすることなく、細胞表面と導入物質との電荷反発を抑制することができる。これによって、細胞膜に穴を開ける装置で、アニオン性の導入物質を細胞に効率よく導入することができる。
吐出ヘッドの斜視図(a)と液体吐出装置の図(b) 吐出ヘッドの断面図 工程図 細胞の懸濁液にカチオン性化合物を加えた後、アニオン性の導入物質を加えたときの様子 実施例1、比較例1、および比較例2の工程図
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明は、細胞にアニオン性の導入物質を導入する方法であって、
前記細胞にカチオン性化合物を作用させ、カチオン性化合物処理細胞を得る工程、
前記カチオン性化合物処理細胞を含む液体に前記アニオン性の導入物質を加え、導入用液を得る工程、および
前記導入用液を、細胞膜に穴を開ける装置で処理し、前記細胞の細胞膜に穴を開ける工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
(細胞)
本発明において、細胞は制限なく真核細胞及び原核細胞を含むが、好ましくは、哺乳動物の細胞である。哺乳動物は限定なく、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、サル、ネコ、イヌ、その他、あらゆる哺乳動物を含む。また、細胞の種類は限定なく、例えば、体細胞、生殖細胞、血球細胞、神経細胞、癌細胞、幹細胞等を挙げられる。また、細胞は、初代培養細胞、培養細胞、株化細胞、癌化細胞、キメラ細胞、形質転換細胞等を含む。
(導入物質)
本明細書中、導入物質とは、細胞に導入しようとする物質のことをいう。本発明において、導入物質はアニオン性の物質である。導入物質の例として、核酸、タンパク質、低分子化合物などが挙げられる。
核酸の例として、DNA(デオキシリボヌクレオチド)、RNA(リボヌクレオチド)、一本鎖DNA、二本鎖DNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、dsRNA、siRNA、miRNA、組換えDNA、プラスミド、ベクター、その他、任意の配列の単離されたDNAあるいはRNA、メチル化DNA、これらの一部、およびこれらの混合物等を挙げられる。導入物質が核酸である場合、好ましくは、5塩基から100キロ塩基、より好ましくは、1キロ塩基から40キロ塩基に相当する一本鎖または二本鎖の核酸である。
タンパク質は、特に限定なく用いられるが、例として、各種酵素、抗体、レセプター、組換えタンパク質、シグナル伝達物質、膜タンパク質、血液成分、サイトカイン、ホルモン、アレルゲン、同種タンパク質、異種タンパク質、これらの一部、およびこれらの混合物等を挙げることができる。
低分子化合物は、特に限定なく用いられるが、例として、蛍光分子、色素、薬剤、アナログ物質、アンタゴニスト、アゴニスト、阻害薬、拮抗薬、基質、シグナル伝達物質、機能性化合物等を挙げることができる。
導入物質は、とりわけ好ましくは、核酸である。近年、医学、薬学、再生医療、細胞工学等の分野において、細胞に核酸を導入することで、機能や形質の制御、改変、修飾が行われることから、核酸の細胞への導入の優れた方法が求められている。
(カチオン性化合物)
導入物質と、細胞表面との電荷反発を抑制するために、カチオン性化合物を用いる。
例えば、遺伝子等の導入物質にカチオン性化合物を作用させると、遺伝子とカチオン性化合物の複合体となり、サイズが大きくなる。なお、遺伝子とカチオン性化合物との混合から時間が経過するにつれて、複合体のサイズが大きくなることは論文(Mol Pharm 10(11):4120-4135(2013))で報告されている。負電荷を有する遺伝子の周りに正電荷を有するカチオン性化合物が多い、さらにその周りに負電荷を有する遺伝子が多い、またさらにその周りに正電荷を有するカチオン性化合物が多いと、雪だるま式に大きくなっていると考えられる。
本発明のように圧力とせん断力で、細胞に穴を開けて細胞に物質を導入する場合、導入物質のサイズが大きいほど、細胞へ物質は導入されにくくなることを我々は見出した。導入物質と、細胞表面との電荷反発を抑制するために、導入物質とカチオン性化合物とを混合し、複合体を形成する手段は、細胞に穴を開けて導入物質を導入する場合、細胞への物質の導入には貢献せず、むしろ妨げるものである。
本発明においては、導入物質にカチオン性化合物を作用させるのではなく、細胞にカチオン性化合物を作用させ、カチオン性化合物処理細胞を得ることを特徴としている。細胞表面は負電荷をもつため、カチオン性化合物は細胞表面に付着しやすい。一方、カチオン性化合物を介して、細胞同士が雪だるま式に凝集することはない。これは、カチオン性化合物に比べて、細胞は十分にサイズが大きいためと考えられる。発明者らは、細胞とカチオン性化合物とを混合し、一定時間インキュベーションの後、遠心分離により細胞を回収したところ、回収された細胞は再懸濁し、カチオン性化合物を介して細胞どうしが付着する現象は見られなかった。
カチオン性化合物は、1つ以上の正電荷を持つカチオン性基があればよいが、好ましくは、カチオン性化合物は、1級アミン、2級アミン、3級アミンを分子内に含むことが好ましい。また、カチオン性化合物と細胞表面は多点で付着できる方が1点で付着するよりも細胞表面をカチオン性化合物が覆うには有利である。カチオン性化合物には、1つの分子あたりに2つ以上のカチオン性基がある方が好ましく、また、2つ以上の1級アミン、2級アミン、3級アミンを分子内に含むことが好ましい。1分子のカチオン性化合物あたりのカチオン基をさらに多くするために、カチオン性化合物は高分子であることがより好ましい。さらに好ましくは、重量平均分子量が1000~100000の高分子である。
カチオン性化合物の好ましい例として、具体的には、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン、ポリビニルピロリドン、ポリアミドアミンデンドリマーを挙げることができる。水溶性で、培地中の血清の影響を受けず、細胞毒性が低く、また低コストである、ポリエチレンイミンがさらに好ましい。
あるいは、細胞と親和性のある高分子を主鎖に、スペルミン、スペルミジンのような化合物を側鎖として導入し、カチオン性化合物としてもよい。細胞と親和性のある高分子として、糖、タンパク質、脂質が挙げられる。
(細胞膜に穴を開ける装置)
細胞膜に穴を開ける装置とは、細胞膜に1つ以上の穴を少なくとも一時的に形成することのできる装置である。細胞膜に穴を形成させる方法としては、レーザーを用いる方法、超音波を利用するソノポレーション法、液体に圧力をかけ細胞をオリフィスに通過させる方法等がある。
ここでは、簡単な構成で細胞膜に穴を形成することが可能な、液体に圧力をかけ細胞をオリフィスに通過させる方法について説明する。この方法では、細胞を含む液に圧力をかけ、かつ、細胞にせん断力を与えることで、細胞膜に穴を一時的に発生させることができる。
液体に圧力をかける手段として、シリンジポンプ、蠕動ポンプ等の各種ポンプ、コンプレッサ、真空、シリンジ、ピペット、ピストン、重力、キャピラリ、あるいは、マイクロサイズの空間で圧力を生じる、例えば、液体吐出ヘッドにおける吐出用手段等が挙げられる。液体吐出ヘッドにおける吐出用手段としては吐出エネルギー発生素子を挙げられ、さらに具体的には、サーマル方式の液体吐出ヘッドにおけるヒーター、ピエゾ方式の液体吐出ヘッドにおける圧電素子(ピエゾ素子)を挙げることができる。
オリフィスは、開口とも換言できる。オリフィスは、液体と共に細胞がオリフィスを通過するときに、細胞にせん断力を与えられればよく、オリフィスは細胞よりやや大きく、細胞が通過することができるものである。液体の流れ方向をZ方向、Z方向と垂直で、かつ、互いに垂直な方向をX方向、Y方向とする。オリフィスのXY平面における形状は特に限定されることはないが、穴を開けようとする細胞の形状、あるいは、装置の構成のし易さから、四角形、正方形、長方形、楕円形、円形、不定形、これらに近似される形状等を挙げられる。オリフィスのXY平面における大きさは、用いる細胞の径に応じて定められ、最小径が細胞径の10倍以下であることが好ましい。オリフィスのXY平面の径が大きいとオリフィスを通過する際に細胞が受けるせん断力が小さくなる。オリフィスのXY平面は1μm以上8000μm以下であることが好ましく、また、最小径が1μm以上、100μm以下であることが好ましい。オリフィスのZ方向の長さ、すなわち、細胞が通過するオリフィスの距離は特に制限はないが、1μm以上、200μm以下であることが好ましい。オリフィスのZ方向の長さが200μmより長いと細胞をオリフィスに通過させるための圧力が大きくなりすぎる。XY平面の形状、面積は、Zによって変化してもよく、例えば、入り口(Z=Zentとする)におけるXY平面の面積(S(Zent)とする)が、出口(Z=Zexit)におけるXY平面の面積(S(Zexit)とする)より大きい、あるいはS(Zent)がS(Zexit)より小さい、といった構成にしてもよい。また、ZentのXY平面の形状が正方形であって、ZexitにおけるXY平面の形状が長方形であるというような構成にしてもよい。
液体に圧力をかける手段と液体が通過するオリフィスを共に有する装置として、液体吐出装置、あるいは液体吐出装置における、液体吐出ヘッドを挙げることができる。
液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドを制御する液体吐出装置について説明する。本明細書中において、液体吐出装置のうち、液体吐出ヘッドを除いたものを、液体吐出装置本体、あるいは液体吐出装置という場合がある。また、液体吐出装置をプリンターといい、プリンターから、液体吐出ヘッドを除いたものを、プリンター本体、あるいは、プリンターという場合がある。
図1(a)は液体吐出ヘッドの一形態を示す斜視図である。液体吐出ヘッド1は圧力素子基板2、吐出する液体を保持できる空間3、および液体吐出装置本体から圧力素子基板に電力や信号を送る電気接続部4を有している。
図1(b)は液体吐出装置の一例を示す図である。液体吐出装置100には、液体吐出ヘッドを装着できる液体吐出ヘッド保持体101、駆動モータ102、および駆動モータ102と接続した駆動ベルト103を備える。駆動モータ102の駆動により、搬送可能な領域内における任意の場所に液体吐出ヘッド1を移動させることができる。液体を充填された液体吐出ヘッド1は、液体吐出ヘッド保持体101に装着される。液体吐出ヘッド1が吸引回復機構104に接触し、吸引モータ105を稼働することにより、液体吐出ヘッド1内の液体を排出することができる。吸引および排出により生じた液体は、廃液チューブ106を通り、系外へ排出される。尚、吸引回復機構104は、非導入処理時のヘッド乾燥防止のために、キャップとして用いることもできる。液体吐出ヘッド1から加工ステージ107上にある培養皿などの容器108に向けて、液体吐出ヘッド1に充填された細胞など含む液体が吐出される。ファンおよびフィルターを有する吸気口109および排気口110により、装置内のミストおよびダストを削減できる。これにより、コンタミネーションを減らすことができる。
図2(a)は図1のA―Aの面の断面図である。図2(b)は、図2(a)の圧力素子基板を拡大した図である。圧力素子基板は液体を吐出するための吐出口5、吐出口5に液体を供給する流路6、液体を吐出するためにエネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子7、および吐出エネルギー発生素子を制御する電子回路素子(不図示)で構成されている。流路6は吐出する液体を保持できる空間3につながっている。吐出エネルギー発生素子7で液体に流れを発生させる。吐出口5または流路6で細胞にせん断力がかかる。吐出口5から、細胞を懸濁した液および細胞が出てくる。
細胞膜に穴を開ける装置が液体吐出ヘッドである場合、吐出エネルギー発生素子7が液体に圧力をかける手段に相当し、吐出口5がオリフィスに相当する。
すなわち、後述の第2の工程で得られる導入用液を液体吐出ヘッド1の吐出する液体を保持できる空間3に充填する。すると、導入用液の一部が、流路6に導入される。電気接続部4と吐出エネルギー発生素子7を制御する電子回路素子を介して、液体吐出装置本体からの電力を、圧力素子基板における、吐出エネルギー発生素子7に供給する。すると、導入用液が加熱されてバブルが発生し、導入用液がオリフィスである吐出口5を通って吐出され、その際に導入用液に含まれる細胞にせん断力がかかり、細胞に穴が開き、導入物質が細胞内に導入される。
(工程)
本発明の方法は、図3に示す通り、以下の工程を含む。
第1工程:細胞にカチオン性化合物を作用させる工程
第2工程:アニオン性の導入物質を加える工程
第3工程:細胞膜に穴を開ける装置で処理する工程
以下に上記工程のそれぞれについて、詳細に説明する。
<第1工程:細胞にカチオン性化合物を作用させる工程>
本工程では、細胞にカチオン性化合物を作用させ、カチオン性化合物処理細胞を得る。
細胞は、水性溶媒に懸濁して、懸濁液とする。なお、懸濁は分散の一種であり、懸濁液は分散液ともいう。水性溶媒の例として、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Hanks' Balance Salt Solution(HBSS)のような緩衝液、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)、Roswell Park Memorial Institute 1640(RPMI1640)等の培地、生理食塩水等が挙げられる。
カチオン性化合物は溶液として細胞懸濁液と混合し、細胞とカチオン性化合物とを含む液とすることで、細胞とカチオン性化合物とを接触させることができる。カチオン性化合物を溶解する溶媒は、上記の水性溶媒、あるいは、細胞に影響を与えない範囲において、水、その他の水性溶媒、あるいはジメチルスルホキシド等の有機溶媒とすることができる。固体のカチオン性化合物に細胞懸濁液を加え、細胞懸濁液にカチオン性化合物を溶解させ、細胞とカチオン性化合物とを含む液とすることで、細胞とカチオン性化合物とを接触させてもよい。
細胞とカチオン性化合物とを含む液体における細胞やカチオン性化合物の濃度に制限はない。細胞に対するカチオン性化合物の量は、低すぎると細胞の負電荷を十分に消去できない。カチオン性化合物が多すぎると、後の工程で加える導入物質と過剰のカチオン性化合物とが複合体を形成する可能性が高くなる。細胞に対するカチオン基は、細胞1×10個に対して、1×10-9から1×10-5molが好ましい。
細胞表面に十分なカチオンが導入されるよう、液中で細胞にカチオン性化合物と接触させた状態で、インキュベーション時間を設けてもよい。例えば、37℃で10分インキュベーションすることができる。
<第2工程:アニオン性の導入物質を加える工程>
本工程では、カチオン性化合物処理細胞を含む液体にアニオン性の導入物質を加え、導入用液を得る。
第1の工程で調製された、細胞とカチオン性化合物とを含む液中に導入物質を加えることができる。この場合、液中に残存するカチオン性化合物が、導入物質と複合体を形成するといった問題が生じる場合がある。この問題を解消するため、第1の工程で得られた、細胞とカチオン性化合物とを含む液から、遠心分離等によってカチオン性化合物処理細胞を回収して、回収した細胞を別の水性溶媒に懸濁してから導入物質を加え、導入用液としてもよく、あるいは、回収した細胞を導入物質が含まれる水性溶媒に懸濁して、導入用液としてもよい。
導入用液における、細胞数は、1×10個から1×10個が好ましく、水性溶媒の例として、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Hanks' Balance Salt Solution(HBSS)のような緩衝液、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)、Roswell Park Memorial Institute 1640(RPMI1640)等の培地、生理食塩水等が挙げられる。導入用液中の導入物質の好ましい濃度は、細胞の種類や状態、導入物質の種類によって異なるが、核酸の場合、例えば、0.1μg/μlから10μg/μlとすることができる。
導入用液の状態は図4の様に模式される。すなわち、細胞8にカチオン性化合物9が付着しており、導入物質10と細胞表面との電荷反発が抑制される。
<第3工程:細胞膜に穴を開ける装置で処理する工程>
本工程では、導入用液を、細胞膜に穴を開ける装置で処理し、細胞の細胞膜に穴を開ける。
第2の工程で得られた導入用液を細胞に穴を開ける装置に充填する。細胞膜に穴を開ける装置が液体吐出ヘッド1である場合、第2の工程で得られた導入用液を、液体を保持できる空間3に充填する。液体吐出ヘッドを液体吐出装置本体に接続し、操作を行い、液体吐出を行う。すると、導入用液がオリフィスである吐出口5を通って吐出される。吐出された細胞の少なくとも一部に、導入物質が導入されている。吐出の際に、極短時間、細胞に1つ以上の穴が開き、導入液中の導入物質が細胞内に導入されるためと推測される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
(導入物質のサイズの検討)
導入物質のサイズと導入率の検討を行った結果、細胞に穴を開ける装置で、導入物質を細胞に導入する際、導入物質のサイズにより、導入の割合が大きく変わることがわかったので、以下説明する。
導入物質として、比較的電荷をもたず、分子量の違う化合物である、カルセイン(株式会社同仁化学研究所 分子量623)とフルレセイン標識デキストラン(シグマアルドリッチ、分子量70,000、以下FITC-Dexと記述する)を用いた。カルセインはアセトキシメチルエステル化されていないため、細胞膜を通過しない蛍光物質である。それぞれをPBSに溶解し、カルセインは0.25mg/ml、FITC-Dexは10mg/mlとした。本実験においては、カチオン性化合物は用いていない。
細胞として、マウスマクロファージ、Raw264.7を用いた。80%程度コンフルエントになった細胞をトリプシンで処理して剥がした。遠心分離し、上澄みを除去した。次に、細胞をDMEMに再懸濁し、2.1×10個/mlの濃度に調整した。
導入物質を溶解した液と細胞を再懸濁した液とを1:19(vol:vol)の割合で混合し、混合液とした。この混合液では細胞濃度を2.0×10個/mlとした。導入物質として、カルセインを用いたときこの混合液の濃度は0.0125mg/ml、FITC-Dexを用いたときこの混合液の濃度は0.5mg/mlとした。
細胞膜に穴を開ける装置として、インクジェットプリンター(G1310、キヤノン株式会社)を選んだ。混合液を同梱のブラックの液体吐出ヘッドに充填し、培養皿へ吐出した。吐出の際は、1.5cm×1.5cmのベタ画像を出力するための液体吐出動作を行い、吐出面から10mm離した培養ディッシュに向けて細胞含有液を吐出した。この液体吐出動作を、40回繰り返した。培養皿に10%血清入りのDMEM培地を加え、37℃5%CO環境下で2時間インキュベーションした。トリプシンを用いて細胞を剥がした。遠心、洗浄した。2%血清入りPBSに再懸濁し、フローサイトメトリー(BD FACSMelody、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)を用いて、分析した。比較として、導入物質と混合や吐出をしていない細胞(通常の細胞)を分析した。
FITC-Dexを導入物質とした場合、カルセインを導入物質とした場合と比べ、導入効率が低かった。
FITC-Dexを取り込んだ細胞の割合が低いことを示している。液体吐出装置で細胞に孔が開いたとしても、導入物質の大きさが大きいと、細胞に取り込まれにくいことを示している。細胞に穴が開いた後、導入物質が拡散で細胞内に入っていくからと考えられる。
(導入物質とカチオン性化合物を混合した場合の評価)
導入物質とカチオン性化合物とを混合して複合体を形成し、複合体のサイズを評価した。
導入物質として、プラスミドDNA(FresnoRFP発現用プラスミド、ATUM、以下pDNA)を用いた。カチオン性化合物としてポリエチレンイミン誘導体(jetPEI、Polyplus transfection)を用いた。pDNAの二重らせんにインターカレーションしたときのみ蛍光を発するヨウ化プロピジウム(Cellstain Double Staining Kit、株式会社同仁化学研究所)を用いて、プラスミドDNAのサイズを評価した。
pDNA水溶液を150mMの食塩水に加え、45μg/mlのpDNA溶液にした。5.4μlのjetPEIに、44.6μlの150mM食塩水を加えた。pDNA溶液とjetPEI溶液を混合し、複合体を形成させた。複合体を含む液25μlに、4.5μmol/lのヨウ化プロピジウム溶液25μlを加えた。pDNAとjetPEIを混合したときから30分以内に、蛍光顕微鏡(BioZERO、株式会社キーエンス)で観察した。比較として、pDNA溶液にヨウ化プロピジウム溶液を加え、蛍光顕微鏡で観察した。
pDNA溶液とヨウ化プロピジウム溶液を混合したときには、赤色の蛍光があるのみで、析出物は見られなかった。一方、pDNAとカチオン性化合物を混合した後にヨウ化プロピジウムを加えたときには、数μmの大きさの析出物が見えた。またその析出物は赤色蛍光を発していた。pDNAとカチオン性化合物が数μmの複合体を形成したためと考えられる。負電荷を有するpDNAの周りに、正電荷を有するjetPEIが付着し、その周りにpDNAが付着しと、雪だるま式に複合体のサイズが大きくなり、やがて数μmサイズになり、蛍光顕微鏡でも撮影可能になったと思われる。
本発明のように細胞膜に穴を開ける装置を用いて細胞に導入物質を導入するとき、導入物質のサイズが大きいほど、細胞に導入されにくい。よって、導入物質と細胞膜との電荷反発を抑制するために、あらかじめ導入物質にカチオン性化合物を作用させ複合体を形成する方法は、細胞への取り込みの効率の低下につながることが本実験より示唆された。
(実施例1、2と比較例1、2)
実施例1及び2においては、上記工程1、工程2、工程3を経て、細胞にアニオン性の導入物質を導入した。一方、比較例1においては、導入用液を、細胞膜に穴を開ける装置で処理しなかった。また、比較例2では、カチオン性化合物を用いなかった。実施例1、2、比較例1、および比較例2の工程を図5に示す。
実施例1、2について説明する。80%コンフルエントのチャイニーズハムスター卵巣細胞、CHO-K1をトリプシンで処理して剥がした。遠心分離の後、上澄みを除去し、1.1×10個の細胞をHam’s F-12 Nutrient Mix(以下、F-12培地)225μlに再懸濁した。
カチオン性化合物として、実施例1ではポリエチレンイミン(重量平均分子量40000)を、実施例2ではポリエチレンイミン(重量平均分子量300)を水に溶解し、1N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.0にし、濾過滅菌した。最終濃度を10mg/mlとした。このポリエチレンイミンと150mMの食塩水とを、1:10(体積比)の割合で混合した。
細胞懸濁液に調製したポリエチレンイミン溶液4.6μl加え、混合した。
室温で10分間インキュベーションした後、10%血清入りのF-12培地を2ml加えた。その後、4℃、90Gで10分間遠心分離した。上澄みを除去した後、F-12培地を500μl加え、懸濁液とした。
細胞懸濁液475μlに、1μg/μlのpDNA(FresnoRFP発現用プラスミド)25μlを加え、混合液を得た。細胞濃度は1×10個/ml、pDNA濃度は0.05μg/μlとなるようにした。
細胞膜に穴を開ける装置として、インクジェットプリンター(G1310、キヤノン株式会社)を選んだ。混合液を同梱のブラックインクの液体吐出ヘッドに充填し、培養皿へ吐出した。吐出の際は、1.5cm×1.5cmのベタ画像を出力するための液体吐出動作を行い、吐出面から10mm離した培養ディッシュに向けて細胞含有液を吐出した。この液体吐出動作を、40回繰り返した。培養皿に10%血清入りのF-12培地を加え、37℃5%CO環境下で一晩インキュベーションした。
比較例1では、実施例1と同様に細胞懸濁液とポリエチレンイミン溶液とを混合し、インキュベーションした。遠心分離したのち、pDNAを加え、混合した。その混合液を培養皿に播種し、10%血清入りのF-12培地を加えた。37℃5%CO環境下で一晩インキュベーションした。
比較例2では、細胞はポリエチレンイミン溶液と混合することなく、すなわち、ポリエチレンイミン溶液を作用させない細胞にpDNAを加えた他は実施例1と同様に行った。
pDNAの発現を評価は以下のように行った。37℃5%CO環境下で一晩インキュベーションしたそれぞれの細胞をトリプシンで処理して剥がした。遠心分離と洗浄の後、2%血清入りのPBSで懸濁液とした。フローサイトメトリーで分析し、pDNAの発現率を評価した。FresnoRFPは553nmで励起すると、592nmの蛍光を発する。
評価した結果を表1に示す。細胞にカチオン性化合物は作用させたが、液体吐出ヘッドで吐出を行わなかった比較例1では、遺伝子発現率は0.06%であった。カチオン性化合物を用いて細胞とpDNAとの電荷反発は抑制できても、pDNAが細胞膜を通過することはできず、遺伝子発現率が低くなったと考えられる。細胞にカチオン性化合物を作用させず、液体吐出ヘッドの吐出は行った比較例2では、遺伝子発現率が1.7%であった。細胞にカチオン性化合物を作用させ、液体吐出ヘッドで吐出を行った実施例1では、遺伝子発現率は2.6%となった。細胞にカチオン性化合物を作用させずに、液体吐出ヘッドで吐出したのみの場合に比べて、細胞にカチオン性化合物を作用させ、液体吐出ヘッドで吐出を行った場合は、遺伝子発現率は1.5倍高くなった。カチオン性化合物により、細胞とpDNAとの電荷反発が抑制でき、液体吐出ヘッドの吐出で開いた穴からpDNAが細胞に取り込まれたと考えられる。実施例2では、遺伝子発現率がやや下がった。カチオン性化合物の分子量が低いと、細胞に付着できる1分子あたりのカチオン性基の数が減り、細胞に安定して付着できなかったと考えられる。
Figure 2023085875000002
1.液体吐出ヘッド
2.圧力素子基板
3.液体を保持する空間
4.電気接続部
5.吐出口
6.流路
7.吐出エネルギー発生素子
8.細胞
9.カチオン性化合物
10.導入物質
100.液体吐出装置
101.液体吐出ヘッド保持体
102.駆動モータ
103.駆動ベルト
104.吸引回復機構
105.吸引モータ
106.廃液チューブ
107.加工ステージ
108.容器
109.吸気口
110.排気口

Claims (7)

  1. 細胞にアニオン性の導入物質を導入する方法であって、
    前記細胞にカチオン性化合物を作用させ、カチオン性化合物処理細胞を得る工程、
    前記カチオン性化合物処理細胞を含む液体に前記アニオン性の導入物質を加え、導入用液を得る工程、および
    前記導入用液を、細胞膜に穴を開ける装置で処理し、前記細胞の細胞膜に穴を開ける工程
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記細胞膜に穴を開ける装置は、液体に圧力をかける手段と液体が通過するオリフィスを有する請求項1に記載の方法。
  3. 前記細胞膜に穴を開ける装置が、液体吐出ヘッドであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記カチオン性化合物は2つ以上のカチオン性基を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記カチオン性化合物は重量平均分子量が1000~100000の高分子であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記カチオン性化合物がポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン、ポリビニルピロリドン、ポリアミドアミンデンドリマーから選ばれる少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記導入物質が核酸であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
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