JP2023085769A - 磁化回転素子、磁気抵抗効果素子及び磁気メモリ - Google Patents
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Abstract
【課題】高効率なスピン流を生成することができる、磁化回転素子、磁気抵抗効果素子及び磁気メモリを提供することを目的とする。【解決手段】この磁化回転素子は、スピン軌道トルク配線と、前記スピン軌道トルク配線に接続された第1強磁性層と、を備え、前記スピン軌道トルク配線は、第1層と第2層とを有し、前記第1層は、前記第2層より前記第1強磁性層の近くにあり、前記第1層の平均グレインサイズは、前記第2層の平均グレインサイズより大きい。【選択図】図1
Description
本発明は、磁化回転素子、磁気抵抗効果素子及び磁気メモリに関する。
強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子、及び、非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子は、磁気抵抗効果素子として知られている。磁気抵抗効果素子は、磁気センサ、高周波部品、磁気ヘッド及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM)への応用が可能である。
MRAMは、磁気抵抗効果素子が集積された記憶素子である。MRAMは、磁気抵抗効果素子における非磁性層を挟む二つの強磁性層の互いの磁化の向きが変化すると、磁気抵抗効果素子の抵抗が変化するという特性を利用してデータを読み書きする。強磁性層の磁化の向きは、例えば、電流が生み出す磁場を利用して制御する。また例えば、強磁性層の磁化の向きは、磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流すことで生ずるスピントランスファートルク(STT)を利用して制御する。
STTを利用して強磁性層の磁化の向きを書き換える場合、磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流す。書き込み電流は、磁気抵抗効果素子の特性劣化の原因となる。
近年、書き込み時に磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流さなくてもよい方法に注目が集まっている(例えば、特許文献1)。その一つの方法が、スピン軌道トルク(SOT)を利用した書込み方法である。SOTは、スピン軌道相互作用によって生じたスピン流又は異種材料の界面におけるラシュバ効果により誘起される。磁気抵抗効果素子内にSOTを誘起するための電流は、磁気抵抗効果素子の積層方向と交差する方向に流れる。すなわち、磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流す必要がなく、磁気抵抗効果素子の長寿命化が期待されている。
SOTを利用した磁気抵抗効果素子は、スピン軌道トルク配線に沿って電流を流すことで、データを書き込む。データは、強磁性層の磁化の向きで記憶される。強磁性層の磁化の向きは、スピン軌道トルク配線から注入されるスピンによって書き換わる。スピン軌道トルク配線から強磁性層へのスピン量を増やすために、高効率にスピン流を生成することができる、磁化回転素子、磁気抵抗効果素子及び磁気メモリが求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高効率なスピン流を生成することができる、磁化回転素子、磁気抵抗効果素子及び磁気メモリを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)第1の態様にかかる磁化回転素子は、スピン軌道トルク配線と、前記スピン軌道トルク配線に接続された第1強磁性層と、を備える。前記スピン軌道トルク配線は、第1層と第2層とを有する。前記第1層は、前記第2層より前記第1強磁性層の近くにある。前記第1層の平均グレインサイズは、前記第2層の平均グレインサイズより大きい。
(2)上記態様にかかる磁化回転素子において、前記第1層の平均グレインサイズは、前記第2層の平均グレインサイズの1倍より大きく2倍より小さくてもよい。
(3)上記態様にかかる磁化回転素子において、前記第2層は、ホウ素、酸素、窒素、炭素のいずれかを含んでもよい。
(4)上記態様にかかる磁化回転素子において、前記スピン軌道トルク配線は、第3層をさらに備えてもよい。前記第3層は、前記第1層及び前記第2層より前記第1強磁性層の近くにある。前記第3層の平均グレインサイズは、前記第1層の平均グレインサイズより小さい。
(5)上記態様にかかる磁化回転素子において、前記第3層の平均グレインサイズは、前記第2層の平均グレインサイズより小さくてもよい。
(6)上記態様にかかる磁化回転素子において、前記第3層は、ホウ素、酸素、窒素、炭素のいずれかを含んでもよい。前記第3層は、ホウ素、酸素、窒素及び炭素の合計含有率が、前記第2層より多い。
(7)上記態様にかかる磁化回転素子は、前記第1強磁性層と前記スピン軌道トルク配線との間に、アモルファス層をさらに備えてもよい。
(8)上記態様にかかる磁化回転素子において、前記アモルファス層は、膜厚が1nm以下でもよい。
(9)第2の態様にかかる磁気抵抗効果素子は、上記態様にかかる磁化回転素子と、非磁性層と、第2強磁性層と、を備え、前記非磁性層は、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれ、前記第1強磁性層は、前記第2強磁性層より前記スピン軌道トルク配線の近くにある。
(10)第3の態様にかかる磁気メモリは、上記態様にかかる磁気抵抗効果素子を複数備える。
本発明にかかる磁化回転素子、磁気抵抗効果素子及び磁気メモリは、高効率なスピン流を生成することができる。
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
まず方向について定義する。後述する基板Sub(図2参照)の一面の一方向をx方向、x方向と直交する方向をy方向とする。x方向は、例えば、スピン軌道トルク配線20の長手方向である。z方向は、x方向及びy方向と直交する方向である。z方向は、各層が積層される積層方向の一例である。以下、+z方向を「上」、-z方向を「下」と表現する場合がある。上下は、必ずしも重力が加わる方向とは一致しない。
本明細書で「x方向に延びる」とは、例えば、x方向、y方向、及びz方向の各寸法のうち最小の寸法よりもx方向の寸法が大きいことを意味する。他の方向に延びる場合も同様である。また本明細書で「接続」とは、物理的に接続される場合に限定されない。例えば、二つの層が物理的に接している場合に限られず、二つの層の間が他の層を間に挟んで接続している場合も「接続」に含まれる。また本明細書での「接続」は電気的な接続も含む。
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態にかかる磁気メモリ200の構成図である。磁気メモリ200は、複数の磁気抵抗効果素子100と、複数の書き込み配線WLと、複数の共通配線CLと、複数の読出し配線RLと、複数の第1スイッチング素子Sw1と、複数の第2スイッチング素子Sw2と、複数の第3スイッチング素子Sw3と、を備える。磁気メモリ200は、例えば、磁気抵抗効果素子100がアレイ状に配列されている。
図1は、第1実施形態にかかる磁気メモリ200の構成図である。磁気メモリ200は、複数の磁気抵抗効果素子100と、複数の書き込み配線WLと、複数の共通配線CLと、複数の読出し配線RLと、複数の第1スイッチング素子Sw1と、複数の第2スイッチング素子Sw2と、複数の第3スイッチング素子Sw3と、を備える。磁気メモリ200は、例えば、磁気抵抗効果素子100がアレイ状に配列されている。
それぞれの書き込み配線WLは、電源と1つ以上の磁気抵抗効果素子100とを電気的に接続する。それぞれの共通配線CLは、データの書き込み時及び読み出し時の両方で用いられる配線である。それぞれの共通配線CLは、基準電位と1つ以上の磁気抵抗効果素子100とを電気的に接続する。基準電位は、例えば、グラウンドである。共通配線CLは、複数の磁気抵抗効果素子100のそれぞれに設けられてもよいし、複数の磁気抵抗効果素子100に亘って設けられてもよい。それぞれの読出し配線RLは、電源と1つ以上の磁気抵抗効果素子100とを電気的に接続する。電源は、使用時に磁気メモリ200に接続される。
それぞれの磁気抵抗効果素子100は、第1スイッチング素子Sw1、第2スイッチング素子Sw2、第3スイッチング素子Sw3のそれぞれに接続されている。第1スイッチング素子Sw1は、磁気抵抗効果素子100と書き込み配線WLとの間に接続されている。第2スイッチング素子Sw2は、磁気抵抗効果素子100と共通配線CLとの間に接続されている。第3スイッチング素子Sw3は、複数の磁気抵抗効果素子100に亘る読出し配線RLに接続されている。
所定の第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2をONにすると、所定の磁気抵抗効果素子100に接続された書き込み配線WLと共通配線CLとの間に書き込み電流が流れる。書き込み電流が流れることで、所定の磁気抵抗効果素子100にデータが書き込まれる。所定の第2スイッチング素子Sw2及び第3スイッチング素子Sw3をONにすると、所定の磁気抵抗効果素子100に接続された共通配線CLと読出し配線RLとの間に読み出し電流が流れる。読出し電流が流れることで、所定の磁気抵抗効果素子100からデータが読み出される。
第1スイッチング素子Sw1、第2スイッチング素子Sw2及び第3スイッチング素子Sw3は、電流の流れを制御する素子である。第1スイッチング素子Sw1、第2スイッチング素子Sw2及び第3スイッチング素子Sw3は、例えば、トランジスタ、オボニック閾値スイッチ(OTS:Ovonic Threshold Switch)のように結晶層の相変化を利用した素子、金属絶縁体転移(MIT)スイッチのようにバンド構造の変化を利用した素子、ツェナーダイオード及びアバランシェダイオードのように降伏電圧を利用した素子、原子位置の変化に伴い伝導性が変化する素子である。
図1に示す磁気メモリ200は、同じ読出し配線RLに接続された磁気抵抗効果素子100が第3スイッチング素子Sw3を共用している。第3スイッチング素子Sw3は、それぞれの磁気抵抗効果素子100に設けられていてもよい。またそれぞれの磁気抵抗効果素子100に第3スイッチング素子Sw3を設け、第1スイッチング素子Sw1又は第2スイッチング素子Sw2を同じ配線に接続された磁気抵抗効果素子100で共用してもよい。
図2は、第1実施形態に係る磁気メモリ200の特徴部分の断面図である。図2は、磁気抵抗効果素子100を後述するスピン軌道トルク配線20のy方向の幅の中心を通るxz平面で切断した断面である。
図2に示す第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2は、トランジスタTrである。第3スイッチング素子Sw3は、読出し配線RLと電気的に接続され、例えば、図2のx方向の異なる位置にある。トランジスタTrは、例えば電界効果型のトランジスタであり、ゲート電極Gとゲート絶縁膜GIと基板Subに形成されたソースS及びドレインDとを有する。ソースSとドレインDは、電流の流れ方向によって既定されるものであり、これらは同一の領域である。ソースSとドレインDの位置関係は、反転していてもよい。基板Subは、例えば、半導体基板である。
トランジスタTrと磁気抵抗効果素子100とは、ビア配線V、第1配線31及び第2配線32を介して、電気的に接続されている。またトランジスタTrと書き込み配線WL又は共通配線CLとは、ビア配線Vで接続されている。ビア配線Vは、例えば、z方向に延びる。読出し配線RLは、電極Eを介して積層体10に接続されている。ビア配線V、電極Eは、導電性を有する材料を含む。ビア配線Vと第1配線31とは一体化していてもよい。またビア配線Vと第2配線32とは一体化していてもよい。すなわち、第1配線31はビア配線Vの一部でもよく、第2配線32はビア配線Vの一部でもよい。
磁気抵抗効果素子100及びトランジスタTrの周囲は、絶縁層Inで覆われている。絶縁層Inは、多層配線の配線間や素子間を絶縁する絶縁層である。絶縁層Inは、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、炭化シリコン(SiC)、窒化クロム、炭窒化シリコン(SiCN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化アルミニウム(AlN)等である。
図3は、磁気抵抗効果素子100の断面図である。図3は、スピン軌道トルク配線20のy方向の幅の中心を通るxz平面で磁気抵抗効果素子100を切断した断面である。図4は、磁気抵抗効果素子100をz方向から見た平面図である。
磁気抵抗効果素子100は、例えば、積層体10とスピン軌道トルク配線20と第1配線31と第2配線32とを備える。積層体10は、第1強磁性層1と第2強磁性層2と非磁性層3とを有する。磁気抵抗効果素子100の周囲は、例えば、第1絶縁層91、第2絶縁層92、第3絶縁層93で覆われている。第1絶縁層91、第2絶縁層92及び第3絶縁層93は、上述の絶縁層Inの一部である。
第1絶縁層91は、スピン軌道トルク配線20と同じ階層にある。第1絶縁層91は、例えば、xy面内に広がる。第1絶縁層91は、z方向から平面視した際に、スピン軌道トルク配線20の周囲を囲む。第2絶縁層92は、第1配線31及び第2配線32と同じ階層にある。第2絶縁層92は、例えば、xy面内に広がる。第2絶縁層92は、z方向から平面視した際に、第1配線31及び第2配線32の周囲を囲む。第3絶縁層93は、積層体10と同じ階層にある。第3絶縁層93は、例えば、xy面内に広がる。第3絶縁層93は、z方向から平面視した際に、積層体10の周囲を囲む。第3絶縁層93は、例えば、積層体10と接する。
磁気抵抗効果素子100は、スピン軌道トルク(SOT)を利用した磁性素子であり、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子、スピン注入型磁気抵抗効果素子、スピン流磁気抵抗効果素子と言われる場合がある。
磁気抵抗効果素子100は、データを記録する素子である。磁気抵抗効果素子100は、積層体10のz方向の抵抗値でデータを記録する。積層体10のz方向の抵抗値は、スピン軌道トルク配線20に沿って書き込み電流を印加し、スピン軌道トルク配線20から積層体10にスピンが注入されることで変化する。積層体10のz方向の抵抗値は、積層体10のz方向に読出し電流を印加することで読み出すことができる。
第1配線31と第2配線32とは、z方向から見て、第1強磁性層1を挟む位置でスピン軌道トルク配線20に接続されている。第1配線31とスピン軌道トルク配線20との間、第2配線32とスピン軌道トルク配線20との間には、他の層を有していてもよい。
第1配線31及び第2配線32は、例えば、スイッチング素子と磁気抵抗効果素子100とを電気的に繋ぐ導体である。第1配線31及び第2配線32はいずれも、導電性を有する。第1配線31及び第2配線32は、例えば、Ti、Cr、Cu、Mo、Ru、Ta、Wからなる群から選択される何れかを含む。
スピン軌道トルク配線20は、例えば、z方向から見てx方向の長さがy方向より長く、x方向に延びる。書き込み電流は、第1配線31と第2配線32との間を、スピン軌道トルク配線20に沿ってx方向に流れる。スピン軌道トルク配線20は、第1配線31と第2配線32とのそれぞれに接続されている。
スピン軌道トルク配線20は、電流が流れる際のスピンホール効果によってスピン流を発生させ、第1強磁性層1にスピンを注入する。スピン軌道トルク配線20は、例えば、第1強磁性層1の磁化を反転できるだけのスピン軌道トルク(SOT)を第1強磁性層1の磁化に与える。
スピンホール効果は、電流を流した場合にスピン軌道相互作用に基づき、電流の流れる方向と直交する方向にスピン流が誘起される現象である。スピンホール効果は、運動(移動)する電荷(電子)が運動(移動)方向を曲げられる点で、通常のホール効果と共通する。通常のホール効果は、磁場中で運動する荷電粒子の運動方向がローレンツ力によって曲げられる。これに対し、スピンホール効果は磁場が存在しなくても、電子が移動するだけ(電流が流れるだけ)でスピンの移動方向が曲げられる。
スピン流は、スピンの偏在(スピン分極)を解消することで生じる。例えば、配線に電流が流れると、配線の第1面には、第1の方向に配向したスピン(例えば、+スピン)が偏在し、第1面と対向する第2面には、第1方向と反対方向に配向したスピン(例えば、-スピン)が偏在する。このスピンの偏在を解消するために、第1面から第2面に向かって、又は、第2面から第1面に向かってスピン流が生じる。+スピンも-スピンも電子であり、電荷の流れは互いに相殺されるため、第1面と第2面との間に電流は生じない。
スピン軌道トルク配線20は、第1層21と第2層22とを備える。第1層21は、第2層22より第1強磁性層1の近くにある。第1層21と第2層22とは、例えば、直接接する。第1層21及び第2層22は、それぞれx方向に延びる。第1層21及び第2層22の一部は、それぞれ第1配線31及び第2配線32のそれぞれとz方向見て重なる。
第1層21及び第2層22は、電流が流れる際のスピンホール効果によって純スピン流を発生させる機能を有する金属、合金、金属間化合物、金属硼化物、金属炭化物、金属珪化物、金属燐化物、金属窒化物のいずれかを含む。第1層21と第2層とは、構成する元素又は組成比が異なる。
第1層21及び第2層22は、例えば、非磁性の重金属を含んでもよい。ここで、重金属とは、イットリウム以上の比重を有する金属を意味する。非磁性の重金属は、例えば、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属である。これらの非磁性金属は、スピンホール効果を生じさせるスピン軌道相互作用が大きい。第1層21及び第2層22は、例えば、Hf、Ta、Wを含む。
また第1層21は、例えば、ホウ素、酸素、窒素、炭素のいずれかを含んでもよい。また第2層22も、例えば、ホウ素、酸素、窒素、炭素のいずれかを含んでもよい。第1層21及び第2層22は、例えば、層を構成する金属の硼化物、酸化物、窒化物、炭化物のいずれかでもよい。ホウ素、酸素、窒素及び炭素は、層を構成する金属元素と化合していてもよいし、化合せずに層を構成する金属間にあってもよい。この場合の層を構成する金属元素は、重金属に限られず、原子番号が38番以下の軽金属元素でもよい。例えば、第1層21と第2層22とのうち少なくとも一方は、例えば、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)を含む。
例えば、第1層21は、第2層22よりホウ素、酸素、窒素及び炭素の合計含有率が少ない。第1層21及び第2層22はそれぞれ、ホウ素、酸素、窒素及び炭素の含有率がいずれも50atm%以下であることが好ましい。また第2層22に含まれるホウ素、酸素、窒素、又は炭素の含有率は、例えば、30atm%以上であることが好ましい。これらの元素の含有率は、Y方向に20nm以下まで薄片化したスピン軌道トルク配線20に対して、透過型電子顕微鏡(TEM)のエネルギー分散型X線分光法(EDS)や電子エネルギー損失分光法(EELS)などを用いて、組成マッピングを行うことにより、各元素の含有率を算出することができる。ホウ素、酸素、窒素、炭素は、結晶粒の平均グレインサイズを小さくする。
図5は、第1実施形態に係るスピン軌道トルク配線20の特徴部分を拡大した断面図である。第1層21は、グレイン成長した複数の結晶粒21Gを有する。第2層22は、グレイン成長した複数の結晶粒22Gを有する。第1層21を構成する結晶粒21Gの平均グレインサイズS1は、第2層22を構成する結晶粒22Gの平均グレインサイズS2より大きい。
グレインサイズの異なる層が積層されることで、スピン軌道トルク配線20を流れる電子が拡散されやすくなり、スピン流の生成効率が高まる。また第1層21の平均グレインサイズS1が第2層22の平均グレインサイズS2より大きいことで、積層体10が積層される面を平坦化しやすくなる。
結晶粒21G及び結晶粒22Gの平均グレインサイズS1、S2は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定できる。例えば、結晶粒21Gの平均グレインサイズS1を求める場合は、スピン軌道トルク配線20の断面を透過型電子顕微鏡で測定し、断面画像における任意の10個の結晶粒21Gを抽出する。そして10個の結晶粒21Gのそれぞれの粒径を測定し、その平均を求める。結晶粒21Gが不定形の場合は、x方向の長さを粒径とする。この粒径の平均が、平均グレインサイズS1である。結晶粒22Gの平均グレインサイズS2も同様の手順で測定できる。
また第1層21及び第2層22の表面を測定できる場合は、結晶粒21G及び結晶粒22Gの平均グレインサイズを原子間力顕微鏡(AFM)で測定してもよい。AFMで各層の表面を測定し、粒径解析を行い、結晶粒21Gと結晶粒22Gの平均グレインサイズS1、S2を求めてもよい。
第1層21を構成する結晶粒21Gの平均グレインサイズS1は、例えば、第2層22の平均グレインサイズS2の1倍より大きく2倍より小さい。平均グレインサイズS1が平均グレインサイズS2の整数倍にならないことで、第1層21の結晶粒21Gの周期と第2層22の結晶粒22Gの周期にずれが生じる。すなわち、結晶粒21G間の粒界と、結晶粒22G間の粒界と、のx方向の位置がずれる。これらの粒界のx方向の位置がずれると、x方向に流れる電子から見た際の界面の数が増える。その結果、スピン軌道トルク配線20を流れる電子が拡散されやすくなり、スピン流の生成効率が高まる。
第1層21の厚みは、例えば、第1層21を構成する材料のスピン拡散長以下であってもよい。当該条件を満たすと、第2層22で生じたスピンが、第1層21を通過して、第1強磁性層1に至る。すなわち、第1強磁性層1に注入されるスピン量が増え、書き込み時に第1強磁性層1の磁化が反転しやすくなる。第1層21の厚みは、例えば、2nm以上である。第1層21の厚みは、例えば、20nm以下でもよい。
第2層22の厚みは、例えば、2nm以上、20nm以下である。また、書き込み電流は第1層21と第2層22に分流するため、第1層21で発生したスピンを主として使う場合は、第2層22は第1層21より薄い方が好ましい。
スピン軌道トルク配線20の抵抗率は、例えば、1mΩ・cm以上である。またスピン軌道トルク配線20の抵抗率は、例えば、10mΩ・cm以下である。スピン軌道トルク配線20の抵抗率が高いと、スピン軌道トルク配線20に高電圧を印加できる。スピン軌道トルク配線20の電位が高くなると、スピン軌道トルク配線20から第1強磁性層1に効率的にスピンを供給できる。またスピン軌道トルク配線20が一定以上の導電性を有することで、スピン軌道トルク配線20に沿って流れる電流経路を確保でき、スピンホール効果に伴うスピン流を効率的に生み出すことができる。第1配線31及び第2配線32の抵抗率は、好ましくは、スピン軌道トルク配線20の抵抗率より低い。
スピン軌道トルク配線20は、この他に、磁性金属を含んでもよく、トポロジカル絶縁体を含んでもよい。トポロジカル絶縁体は、物質内部が絶縁体又は高抵抗体であるが、その表面にスピン偏極した金属状態が生じている物質である。
積層体10は、スピン軌道トルク配線20に接続されている。積層体10は、例えば、スピン軌道トルク配線20に積層されている。積層体10とスピン軌道トルク配線20との間には、他の層を有してもよい。
積層体10のz方向の抵抗値は、スピン軌道トルク配線20から積層体10(第1強磁性層1)にスピンが注入されることで変化する。
積層体10は、z方向に、スピン軌道トルク配線20と電極E(図2参照)とに挟まれる。積層体10は、柱状体である。積層体10のz方向からの平面視形状は、例えば、円形、楕円形、四角形である。積層体10の側面は、例えば、z方向に対して傾斜する。
積層体10は、例えば、第1強磁性層1と第2強磁性層2と非磁性層3とを有する。第1強磁性層1は、例えば、スピン軌道トルク配線20と接し、スピン軌道トルク配線20上に積層されている。第1強磁性層1にはスピン軌道トルク配線20からスピンが注入される。第1強磁性層1の磁化は、注入されたスピンによりスピン軌道トルク(SOT)を受け、配向方向が変化する。第1強磁性層1と第2強磁性層2は、z方向に非磁性層3を挟む。
第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、それぞれ磁化を有する。第2強磁性層2の磁化は、所定の外力が印加された際に第1強磁性層1の磁化よりも配向方向が変化しにくい。第1強磁性層1は磁化自由層と言われ、第2強磁性層2は磁化固定層、磁化参照層と言われることがある。図3に示す積層体10は、磁化固定層が基板Subから離れた側にあり、トップピン構造と呼ばれる。積層体10は、非磁性層3を挟む第1強磁性層1と第2強磁性層2との磁化の相対角の違いに応じて抵抗値が変化する。
第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、強磁性体を含む。強磁性体は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等である。強磁性体は、例えば、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Fe、Co-Ho合金、Sm-Fe合金、Fe-Pt合金、Co-Pt合金、CoCrPt合金である。
第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、ホイスラー合金を含んでもよい。ホイスラー合金は、XYZまたはX2YZの化学組成をもつ金属間化合物を含む。Xは周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、ZはIII族からV族の典型元素である。ホイスラー合金は、例えば、Co2FeSi、Co2FeGe、Co2FeGa、Co2MnSi、Co2Mn1-aFeaAlbSi1-b、Co2FeGe1-cGac等である。ホイスラー合金は高いスピン分極率を有する。
非磁性層3は、非磁性体を含む。非磁性層3が絶縁体の場合(トンネルバリア層である場合)、その材料としては、例えば、Al2O3、SiO2、MgO、及び、MgAl2O4等を用いることができる。また、これらの他にも、Al、Si、Mgの一部が、Zn、Be等に置換された材料等も用いることができる。これらの中でも、MgOやMgAl2O4はコヒーレントトンネルが実現できる材料であるため、スピンを効率よく注入できる。非磁性層3が金属の場合、その材料としては、Cu、Au、Ag等を用いることができる。さらに、非磁性層3が半導体の場合、その材料としては、Si、Ge、CuInSe2、CuGaSe2、Cu(In,Ga)Se2等を用いることができる。
積層体10は、第1強磁性層1、第2強磁性層2及び非磁性層3以外の層を有してもよい。例えば、スピン軌道トルク配線20と第1強磁性層1との間に下地層を有してもよい。下地層は、積層体10を構成する各層の結晶性を高める。また例えば、積層体10の最上面にキャップ層を有してもよい。
また積層体10は、第2強磁性層2の非磁性層3と反対側の面に、スペーサ層を介して強磁性層を設けてもよい。第2強磁性層2、スペーサ層、強磁性層は、シンセティック反強磁性構造(SAF構造)となる。シンセティック反強磁性構造は、非磁性層を挟む二つの磁性層からなる。第2強磁性層2と強磁性層とが反強磁性カップリングすることで、強磁性層を有さない場合より第2強磁性層2の保磁力が大きくなる。強磁性層は、例えば、IrMn,PtMn等である。スペーサ層は、例えば、Ru、Ir、Rhからなる群から選択される少なくとも一つを含む。
次いで、磁気抵抗効果素子100の製造方法について説明する。磁気抵抗効果素子100は、各層の積層工程と、各層の一部を所定の形状に加工する加工工程により形成される。各層の積層は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)、原子レーザデポジッション法等を用いることができる。各層の加工は、フォトリソグラフィー等を用いて行うことができる。
まず基板Subの所定の位置に、不純物をドープしソースS、ドレインDを形成する。次いで、ソースSとドレインDとの間に、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極Gを形成する。ソースS、ドレインD、ゲート絶縁膜GI及びゲート電極GがトランジスタTrとなる。基板Subは、トランジスタTrが形成された市販の半導体回路基板を用いてもよい。
次いで、トランジスタTrを覆うように絶縁層Inを形成する。また絶縁層Inに開口部を形成し、開口部内に導電体を充填することでビア配線V、第1配線31及び第2配線32が形成される。書き込み配線WL、共通配線CLは、絶縁層Inを所定の厚みまで積層した後、絶縁層Inに溝を形成し、溝に導電体を充填することで形成される。
次いで、絶縁層In、第1配線31及び第2配線32の一面に、第2層22となる層、第1層21となる層を順に積層する。第1層21と第2層22の平均グレインサイズは、例えば、スパッタリングの際にターゲットに照射するイオンのエネルギーを変えることで調整できる。スパッタリングのエネルギーが大きいと、成膜面に付着した原子が移動でき、粒成長しやすくなる。また第1層21と第2層22の平均グレインサイズは、ホウ素、酸素、窒素及び炭素の含有率を調整することで変えてもよい。ホウ素、酸素、窒素及び炭素の含有率が増えると、平均グレインサイズが小さくなる傾向にある。
次いで、第2層22となる層に、強磁性層、非磁性層、強磁性層、ハードマスク層を順に積層する。次いで、ハードマスク層を所定の形状に加工する。所定の形状は、例えば、スピン軌道トルク配線20の外形である。次いで、ハードマスク層を介して、スピン軌道トルク配線20となる層、強磁性層、非磁性層、強磁性層を一度に所定の形状に加工する。
次いで、ハードマスク層のx方向の不要部分を除去する。ハードマスク層は、積層体10の外形となる。次いで、ハードマスク層を介して、スピン軌道トルク配線20上に形成された積層体のx方向の不要部分を除去する。積層体10は、所定の形状に加工され、積層体10となる。ハードマスク層は、電極Eとなる。次いで、積層体10、スピン軌道トルク配線20の周囲を絶縁層Inで埋め、磁気抵抗効果素子100が得られる。
第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100は、スピン軌道トルク配線20がグレインサイズの異なる層を有する。スピン軌道トルク配線20が異なるグレインサイズの層を有することで、スピン軌道トルク配線20を流れる電子が拡散されやすくなり、スピン流の生成効率が高まる。また第1層21の平均グレインサイズS1が第2層22の平均グレインサイズS2より大きいことで、積層体10が積層される面を平坦化しやすくなる。積層体10の積層面が平坦になると、積層体10の磁気抵抗変化率(MR比)が大きくなる。
以上、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100の一例を示したが、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
(第1変形例)
図6は、第1変形例に係る磁気抵抗効果素子101の断面図である。図6は、スピン軌道トルク配線25のy方向の中心を通るxz断面である。図6において、図3と同じ構成には同様の符号を付し、説明を省く。
図6は、第1変形例に係る磁気抵抗効果素子101の断面図である。図6は、スピン軌道トルク配線25のy方向の中心を通るxz断面である。図6において、図3と同じ構成には同様の符号を付し、説明を省く。
第1変形例に係る磁気抵抗効果素子101は、スピン軌道トルク配線25の構成が、磁気抵抗効果素子100のスピン軌道トルク配線20と異なる。
スピン軌道トルク配線25は、第1層21と第2層22と第3層23とを有する。第3層23は、第1層21及び第2層22より第1強磁性層1の近くにある。第3層23は、例えば、第1層21上にある。第3層23は、第1層21と構成する元素又は組成比が異なる。第3層23は、第2層22と構成する元素又は組成比が異なってもよい。
第3層23は、電流が流れる際のスピンホール効果によって純スピン流を発生させる機能を有する金属、合金、金属間化合物、金属硼化物、金属炭化物、金属珪化物、金属燐化物、金属窒化物のいずれかを含む。
第3層23は、例えば、非磁性の重金属を含んでもよい。また第3層23は、例えば、ホウ素、酸素、窒素、炭素のいずれかを含んでもよい。第3層23がホウ素、酸素、窒素、炭素のいずれかを含む場合、層を構成する金属元素は、重金属に限られず、原子番号が38番以下の軽金属元素でもよい。例えば、第3層23は、第1層21よりホウ素、酸素、窒素及び炭素の合計含有率が高い。また第3層23は、第2層22よりホウ素、酸素、窒素及び炭素の合計含有率が高くてもよい。第3層23のホウ素、酸素、窒素及び炭素の含有率はいずれも50atm%以下であることが好ましい。また第3層23に含まれるホウ素、酸素、窒素、又は炭素の含有率は、例えば、30atm%以上であることが好ましい。
図7は、第1変形例に係るスピン軌道トルク配線25の特徴部分を拡大した断面図ある。第3層23は、グレイン成長した複数の結晶粒23Gを有する。第3層23を構成する結晶粒23Gの平均グレインサイズS3は、第1層21を構成する結晶粒21Gの平均グレインサイズS1より小さい。第3層23を構成する結晶粒23Gの平均グレインサイズS3は、第2層22を構成する結晶粒22Gの平均グレインサイズS2より小さくてもよい。
グレインサイズが小さくなると、層の界面抵抗が大きくなり、スピン軌道相互作用に伴うスピン流の生成効率が高まる。スピン流の生成効率が高い層(第3層23)が第1強磁性層1の近くに存在することで、第1強磁性層1へのスピンの注入効率が高まる。また結晶粒23Gは、第1層21によって平坦化された積層面に残る凹凸を埋めるため、積層体10が積層される面をより平坦化できる。
結晶粒23Gの平均グレインサイズS3は、結晶粒21G及び結晶粒22Gと同様の方法で測定できる。第1層21を構成する結晶粒21Gの平均グレインサイズS1は、例えば、第3層23の平均グレインサイズS2の1倍より大きく2倍より小さい。
第3層23の厚みは、例えば、0.5nm以上、10nm以下である。また、第1層21より薄いほうが好ましい。厚くなると粒成長が進み、グレインサイズが大きくなってしまう。
第1変形例にかかる磁気抵抗効果素子101は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子100と同様の効果が得られる。またスピン軌道トルク配線25が第3層23を有することで、第1強磁性層1へのスピンの注入効率を高めることができる。また第3層23があると、スピン軌道トルク配線25内に異なる層の界面が増える。異なる層の界面が増えると、ラシュバ効果によりスピン軌道トルク配線25から第1強磁性層1に注入されるスピン量が増える。
(第2変形例)
図8は、第2変形例に係る磁気抵抗効果素子102の断面図である。図8は、スピン軌道トルク配線20のy方向の中心を通るxz断面である。図8において、図3と同じ構成には同様の符号を付し、説明を省く。
図8は、第2変形例に係る磁気抵抗効果素子102の断面図である。図8は、スピン軌道トルク配線20のy方向の中心を通るxz断面である。図8において、図3と同じ構成には同様の符号を付し、説明を省く。
第2変形例に係る磁気抵抗効果素子102は、スピン軌道トルク配線20と第1強磁性層1との間に、アモルファス層40をさらに備える点が、磁気抵抗効果素子100のスピン軌道トルク配線20と異なる。
アモルファス層40は、積層体10の積層面の平坦性を高める。アモルファス層40の膜厚は、例えば、1nm以下である。アモルファス層40の厚みが十分薄いと、スピン軌道トルク配線20から第1強磁性層1に至るスピンが拡散されにくい。
アモルファス層40は、非磁性元素を有していてもよい。アモルファス層40は、例えば、Ta、Wである。アモルファス層40は、強磁性元素を含んでいてもよい。アモルファス層40が1nm以下と十分薄いと、強磁性元素は磁化を示さない。そのため、アモルファス層40が強磁性元素を含んでいても、スピン軌道トルク配線20から第1強磁性層1に至るスピンを大きく拡散することはない。
第2変形例にかかる磁気抵抗効果素子102は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子100と同様の効果が得られる。また磁気抵抗効果素子102がアモルファス層40を有することで、積層体10の積層面が平坦化される。積層体10の積層面が平坦になると、積層体10の磁気抵抗変化率(MR比)が大きくなる。
(第3変形例)
図9は、第3変形例に係る磁気抵抗効果素子103の断面図である。図9は、スピン軌道トルク配線26のy方向の中心を通るxz断面である。図9において、図3と同じ構成には同様の符号を付し、説明を省く。
図9は、第3変形例に係る磁気抵抗効果素子103の断面図である。図9は、スピン軌道トルク配線26のy方向の中心を通るxz断面である。図9において、図3と同じ構成には同様の符号を付し、説明を省く。
図9に示す積層体10は、磁化固定層(第2強磁性層2)が基板Subの近くにあるボトムピン構造である。磁化固定層が基板Sub側にあると、磁化固定層の磁化の安定性が高まり、磁気抵抗効果素子103のMR比が高くなる。スピン軌道トルク配線26は、例えば、積層体10上にある。第1層21は、第2層22より第1強磁性層1の近くにあり、第2層22は第1層21上にある。第1配線31及び第2配線32は、スピン軌道トルク配線26上にある。
第3変形例にかかる磁気抵抗効果素子103は、各構成の位置関係が異なるだけであり、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子100と同様の効果が得られる。
「第2実施形態」
図10は、第2実施形態に係る磁化回転素子110の断面図である。図1において、磁化回転素子110は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100と置き換えられる。
図10は、第2実施形態に係る磁化回転素子110の断面図である。図1において、磁化回転素子110は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100と置き換えられる。
磁化回転素子110は、例えば、第1強磁性層1に対して光を入射し、第1強磁性層1で反射した光を評価する。磁気カー効果により磁化の配向方向が変化すると、反射した光の偏向状態が変わる。磁化回転素子110は、例えば、光の偏向状態の違いを利用した例えば映像表示装置等の光学素子として用いることができる。
この他、磁化回転素子110は、単独で、異方性磁気センサ、磁気ファラデー効果を利用した光学素子等としても利用できる。
磁化回転素子110のスピン軌道トルク配線20は、第1層21と第2層22とを有する。第1層21の平均グレインサイズS1は、第2層22の平均グレインサイズS2より大きい。
第2実施形態に係る磁化回転素子110は、磁気抵抗効果素子100から非磁性層3及び第2強磁性層2が除かれているだけであり、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子100と同様の効果が得られる。
ここまで、第1実施形態、第2実施形態及び変形例を基に、本発明の好ましい態様を例示したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。例えば、それぞれの実施形態及び変形例における特徴的な構成を他の実施形態及び変形例に適用してもよい。
1…第1強磁性層、2…第2強磁性層、3…非磁性層、10…積層体、20…スピン軌道トルク配線、21…第1層、22…第2層、23…第3層、21G,22G,23G…結晶粒、31…第1配線、32…第2配線、91…第1絶縁層、92…第2絶縁層、93…第3絶縁層、100,101,102…磁気抵抗効果素子、110…磁化回転素子、200…磁気メモリ、CL…共通配線、RL…読出し配線、WL…書き込み配線、In…絶縁層、S1,S2,S3…平均グレインサイズ
Claims (10)
- スピン軌道トルク配線と、
前記スピン軌道トルク配線に接続された第1強磁性層と、を備え、
前記スピン軌道トルク配線は、第1層と第2層とを有し、
前記第1層は、前記第2層より前記第1強磁性層の近くにあり、
前記第1層の平均グレインサイズは、前記第2層の平均グレインサイズより大きい、磁化回転素子。 - 前記第1層の平均グレインサイズは、前記第2層の平均グレインサイズの1倍より大きく2倍より小さい、請求項1に記載の磁化回転素子。
- 前記第2層は、ホウ素、酸素、窒素、炭素のいずれかを含む、請求項1又は2に記載の磁化回転素子。
- 前記スピン軌道トルク配線は、第3層をさらに備え、
前記第3層は、前記第1層及び前記第2層より前記第1強磁性層の近くにあり、
前記第3層の平均グレインサイズは、前記第1層の平均グレインサイズより小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁化回転素子。 - 前記第3層の平均グレインサイズは、前記第2層の平均グレインサイズより小さい、請求項4に記載の磁化回転素子。
- 前記第3層は、ホウ素、酸素、窒素、炭素のいずれかを含み、
前記第3層は、ホウ素、酸素、窒素及び炭素の合計含有率が、前記第2層より多い、請求項4又は5に記載の磁化回転素子。 - 前記第1強磁性層と前記スピン軌道トルク配線との間に、アモルファス層をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の磁化回転素子。
- 前記アモルファス層は、膜厚が1nm以下である、請求項7に記載の磁化回転素子。
- 請求項1~8のいずれか一項に記載の磁化回転素子と、非磁性層と、第2強磁性層と、を備え、
前記非磁性層は、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれ、
前記第1強磁性層は、前記第2強磁性層より前記スピン軌道トルク配線の近くにある、磁気抵抗効果素子。 - 請求項9に記載の磁気抵抗効果素子を複数備える、磁気メモリ。
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