JP2023084929A - 無線通信装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】CSMA/CAを用いる無線通信システムで他のAPから無線リソースを分け与えられたAP及びその配下のnon-AP STAが分け与えられた無線リソース内で送信できる仕組みを提供すること。【解決手段】実施形態に係る無線通信装置は、メモリとメモリに接続される処理部を具備する。無線通信装置は第1無線通信グループに所属する。処理部は第1、第2、第3パラメータをメモリに格納する。処理部は、受信パケットが第1無線通信グループ内の第2の無線通信装置から送信された場合、第1パラメータを更新し、受信パケットが第1無線通信グループを構成するアクセスポイントが連携対象とする他のアクセスポイントのいずれかが構成する第2無線通信グループ内の第3の無線通信装置から送信された場合、第2パラメータを更新し、それ以外の場合第3パラメータを更新する。【選択図】図2

Description

本発明の実施形態は、キャリアセンス通信に関し、特に複数のアクセスポイントが連携する通信に関する。
無線LAN (Local Area Network)システムにおいて、複数アクセスポイント(access point; AP、基地局とも称する)の協調動作が提案されている。一例として、あるAPが送信権獲得後に送信権獲得期間(transmission opportunity; TXOP)中の無線リソースである時間と周波数を他の複数APに分け与える手法が提案されている。この手法の概念は、次世代高速化無線LAN規格の標準化を行う802.11 Task Group (TG) beにおいて採用することが決定されている。
米国特許出願公開第2021/0051722号明細書 米国特許出願公開第2020/0267636号明細書 米国特許出願公開第2020/0076551号明細書 米国特許出願公開第2020/0120544号明細書
IEEE 802.11-19/1582r1 IEEE 802.11-19/1262r23 IEEE 802.11-20/1935r44 IEEE Std 802.11-2020 IEEE Std 802.11ax-2021
しかしながら、CSMA/CA (carrier sense multiple access with collisioNAVoidance)を用いる無線通信システムではTXOPの保護(プロテクション)目的にNAV(network allocation vector)が設定されるため、提案手法をCSMA/CAを用いる無線通信システムで単純に実施しようとしても、無線リソースを分け与えられたAP及びその配下のnon-AP STA(以下、単にSTA、端末とも称する)が分け与えられた無線リソース内で送信する仕組みがない。
本発明の目的は、CSMA/CAを用いる無線通信システムで他のAPから無線リソースを分け与えられたAP及びその配下のnon-AP STAが分け与えられた無線リソース内で送信する仕組みを提供することである。
実施形態に係る無線通信装置は、メモリと、メモリに接続される処理部と、を具備する。無線通信装置は、第1無線通信グループBSS1に所属する。処理部は、第1パラメータintra-BSS NAVと、第2パラメータESS NAVと、第3パラメータbasic NAVをメモリに格納する。処理部は、受信したパケットが第1無線通信グループBSS1内の第2の無線通信装置から送信された物理パケットであると把握した場合、第1パラメータintra-BSS NAVを更新する。処理部は、受信したパケットが第2の無線通信装置から送信された物理パケットではなく、第1無線通信グループBSS1を構成するアクセスポイントが連携対象とする他のアクセスポイントのいずれかが構成する第2無線通信グループBSS2内の第3の無線通信装置から送信された物理パケットであると把握した場合、第2パラメータESS NAVを更新する。処理部は、受信したパケットが第2の無線通信装置から送信された物理パケットではなく、第3の無線通信装置から送信された物理パケットではないと把握した場合、第3パラメータbasic NAVを更新する。処理部は、第1パラメータと第2パラメータと前記第3パラメータに基づいてパケットを送信するかを決定する。
第1実施形態に係る無線通信システムの一例を示す図。 第1実施形態に係る無線通信装置の一例を示す図。 MACフレームの基本的なフォーマットを示す図。 basic NAVとintra-BSS NAVの状態とトリガーフレームへの応答の可否との関係を示す図。 トリガーフレームのフォーマットの一例を示す図。 共有元APがTXOPの一部のリソース(時間)を時間で分割して複数の共有先APに分け与える場合のMAPの一例を示す図。 チャネルボンディングの一例を説明するための図。 チャネルボンディングの一例における送信権獲得方法を説明するための図。 共有元APがTXOPの一部のリソース(時間)を周波数で分割して複数の共有先APに分け与える場合のMAPの一例を示す図。 MACフレームのFrame Bodyに含まれる情報エレメントの一例を示す図。 AP手法1の一例を説明するための図。 AP手法2の一例を説明するための図。 AP手法2において、2つのNAVの状態とトリガーフレームへの応答の可否との関係を示す図。 AP手法3の一例を説明するための図。 AP手法3において、2つのNAVの状態とMAP送信の可否との関係を示す図。 AP手法4の一例を説明するための図。 AP手法4において、3つのNAVの状態とMAP送信の可否との関係を示す図。 STA手法1の一例を説明するための図。 AP/STA手法の一例を説明するための図。 STA手法2の一例を説明するための図。 STA手法3の一例を説明するための図。 STA手法4の一例を説明するための図。 STA手法5の一例を説明するための図。 STA手法6におけるNAV設定の一例を示すフローチャート。 STA手法6の一例を説明するための図。 STA手法6において、3つのNAVの状態とトリガーフレームへの応答の可否とMAP送信の可否との関係を示す図。 CF-Endフレームのフォーマットの一例を示す図。 STA手法7の一例を説明するための図。 APの一例の機能ブロック図。 STAまたはAPの全体構成例を示す図。 無線LANモジュールのハードウェア構成例を示す図。 STAの一例の斜視図。 メモリカードに搭載した無線通信装置の一例を示す図。 無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を示す図。
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。なお、以下の説明において、「接続」は直接接続のみならず、他の要素を介した接続も含む場合もある。
無線LAN(local area network)の規格書として知られているIEEE Std 802.11-2020およびIEEE Std 802.11ax-2021と、次世代無線LAN規格であるIEEE Std 802.11be用の仕様フレームワーク文書(Specification Framework Document)である2021年9月23日付けのIEEE 802.11-20/1935r44は、本明細書においてその全てが参照によって組み込まれる(incorporated by reference)ものとする。
以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。
<BSS、infrastructure BSS、ESS>
図1は、第1実施形態に係る無線通信システムの一例を示す。IEEE802.11規格(前述のIEEE Std 802.11ax-2021などの拡張規格を含む。以降も同様)では、無線通信グループの最小単位はbasic service set(BSS)である。BSSはBSS identifier (BSSID)を有する。例えばBSS内の全端末向けに送信されるブロードキャストフレームなどでは送信されるデータフレームのアドレスフィールドの1つにBSSIDが入れられる。データフレームを受信した端末は、そのフレームが自端末が属するBSS内の全端末向けのものであるかをBSSIDにより判断し、該当する場合にデータフレームのペイロードを抽出するなどの処理を行う。
IEEE802.11規格では2種類のBSSの形態が規定されている。1つは基地局(AP;access point)がBSSを立ち上げ、それに端末(STA;station)が接続する形態である。これをinfrastructure BSSと呼ぶ。もう一つはAPが存在せず、STAのみでBSSを構成する形態である。これをindependent BSSと呼ぶ。本実施形態では、BSSとしてはinfrastuture BSSが扱われる。
infrastuture BSS(以降、independent BSSと特に対比して表現したい場合以外ではこれをBSSと表現する)では、APのMAC(medium access control;媒体アクセス制御)アドレスがBSSIDとなる。APはSTAの一種であり、この明細書では両者を無線通信装置と称する場合もある。APは、データの送信元(source)である他のSTAからデータの最終宛先(destination)である別のSTAへのデータの転送を可能にする機能を持つ。STAはこの機能を持たない。この場合、他のSTAまたは別のSTAの一方は必ずしもAPと同一のBSSにある必要はなく、他のAP経由で接続していてもよいし、あるいは有線LANに接続していてもよい。
APと他のAP間を接続するためのシステムをdistribution system(DS)と呼ぶ。DSには複数のAPが接続されていてよく、このDSにより接続した複数のAPはextended service set(ESS)を構成する。同一ESSであることを識別する識別子がサービスセット識別子(service set identifier;SSID)である。
図1では、APとして、AP1とAP2が存在する。AP1がSTA11とSTA12を収容してBSS1を構成する。AP2がSTA21とSTA22を収容してBSS2を構成する。BSS1とBSS2がESSを構成している。
<無線通信装置>
図2は、第1実施形態に係る無線通信装置の一例を示す。無線通信装置は、上位処理部10、MAC処理部20、PHY(Physical;物理)処理部30、MAC/PHY管理部40、アナログ処理部50、及びアンテナ60を含む。図2では、アナログ処理部50の個数とアンテナ60の個数がそれぞれ1個であるが、多重化通信のために複数のアナログ処理部50と複数のアンテナ60が設けられていてもよい。複数のアナログ処理部50の個数と複数のアンテナ60の個数は等しくてもよいし、異なっていてもよい。例えば、2個以上のアンテナ60が1個のアナログ処理部50に共通に接続されていてもよい。
MAC処理部20、MAC/PHY管理部40、及びPHY処理部30は、他の無線通信装置との通信に関する処理を行う制御部またはベースバンド集積回路の一形態に相当する。アナログ処理部50は、例えばアンテナ60を介して信号を送受信する無線通信部またはRF(Radio Frequency)集積回路の一形態に相当する。本実施形態に係る無線通信用集積回路は、ベースバンド集積回路およびRF集積回路の少なくとも前者を含む。ベースバンド集積回路の機能は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。ソフトウェアはROM、RAM等のメモリ、ハードディスク、SSDなどの記憶媒体に格納してプロセッサにより読み出して実行してもよい。メモリはSRAM、DRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM等の不揮発性メモリでもよい。
上位処理部10は、MAC層に対して上位層のための処理を行う。上位処理部10は、MAC処理部20との間で信号をやり取りできる。上位層としては、代表的なものとしては、TCP/IP層やUDP/IP層、さらにその上層のアプリケーション層などが挙げられるが、本実施形態はこれに限定されない。上位処理部10は、MAC層と上位層との間でデータをやり取りするためのバッファを備えていてもよい。無線通信装置は、上位処理部10を介して有線インフラに接続するようになっていてもよい。
MAC処理部20は、MAC層のための処理を行う。前述のように、MAC処理部20は、上位処理部10との間で信号をやり取りできる。更に、MAC処理部20は、PHY処理部30との間で、信号をやり取りできる。MAC処理部20は、MAC共通処理部70、送信処理部80、受信処理部90、及びメモリ94を含む。メモリ94は、MAC共通処理部70、送信処理部80、及び受信処理部90に接続される。メモリ94は、MAC共通処理部70、送信処理部80、及び受信処理部90の処理に必要なデータを記憶する。MAC処理部20の機能がソフトウェアによって行われる場合、メモリ94はMAC処理部20のソフトウェアも記憶する。
MAC共通処理部70は、MAC層での送受信に共通する処理を行う。MAC共通処理部70は、上位処理部10、送信処理部80、受信処理部90、及びMAC/PHY管理部40と夫々接続し、夫々との間で信号のやり取りをする。
送信処理部80及び受信処理部90は、相互に接続している。送信処理部80は、MAC共通処理部70及びPHY処理部30に夫々接続している。受信処理部90は、MAC共通処理部70及びPHY処理部30に夫々接続している。送信処理部80は、MAC層での送信処理を行う。受信処理部90は、MAC層での受信処理を行う。
PHY処理部30は、PHY層のための処理を行う。前述のように、PHY処理部30は、MAC処理部20との間で信号をやり取りできる。PHY処理部30は、アナログ処理部50を介してアンテナ60に接続されている。
MAC/PHY管理部40は、上位処理部10、MAC処理部20(より詳細には、MAC共通処理部70)及びPHY処理部30の夫々と接続されている。MAC/PHY管理部40は、無線通信装置におけるMAC動作及びPHY動作を管理する。
アナログ処理部50は、アナログ/デジタル及びデジタル/アナログ(AD/DA)変換器やRF回路を含み、PHY処理部30からのデジタル信号を所望の周波数のアナログ信号に変換してアンテナ60から送信、またアンテナ60から受信した高周波のアナログ信号をデジタル信号に変換する。なお、ここでは、AD/DA変換をアナログ処理部50で行っているが、PHY処理部30にAD/DA変換機能を持たせる構成も可能である。
本実施形態に係る無線通信装置は、1チップ内にアンテナ60を構成要素として含む(一体化する)ことで、このアンテナ60の実装面積を小さく抑えることができる。
無線媒体への信号送信に際して、PHY処理部30は、送信処理部80からMACフレームを受け取る。PHY処理部30は、MACフレームにプリアンブル及びPHYヘッダの追加や符号化、変調などの処理を行ってPHYパケットに変換する。アナログ処理部50は、デジタル信号であるPHYパケットを、所望の周波数のアナログ信号に変換する。アンテナ60は、アナログ処理部50からのアナログ信号を無線媒体に輻射する。なお、PHY処理部30は、信号送信の期間中に、無線媒体がビジーであることを示す信号を、MAC処理部20(より正確には受信処理部90)へ出力する。
PHY処理部30は、MIMO技術を拡張したアップリンクマルチユーザMIMO(Uplink multi-User MIMO;DL-MU-MIMO)およびDL-MU-MIMO(Down link Multi-User MIMO;DL-MU-MIMO)の少なくとも一方に関する処理を行ってもよい。UL-MU-MIMOは、APが、複数のSTAから空間多重で(同一周波数帯域で同時に)送信されるストリームを複数のアンテナで同時に受信し、受信信号をMIMO復調することで、各STAのフレームへ分離する。これにより、APは、複数のSTAから同一の周波数帯域で同時に送信されるフレームを受信できる。また、DL-MU-MIMOでは、APが複数のアンテナから、複数台のSTAに対しそれぞれストリームを空間多重で送信し、各STAが受信信号をMIMO復調することでフレームに分離し、自STA宛のフレームを受信する。これにより、APは、複数台のSTAへ同時にフレームを同一の周波数帯域でそれぞれ送信できる。
無線媒体からの信号受信に際して、アナログ処理部50は、アンテナ60が受信したアナログ信号を、PHY処理部30が処理可能な基底帯域(baseband)の信号に変換し、デジタル信号に変換する。PHY処理部30は、アナログ処理部50からデジタルの受信信号を受け取り、その受信レベルを検出する。検出した受信レベルを、キャリアセンスレベル(閾値)と比較し、受信レベルが、キャリアセンスレベル以上であれば、PHY処理部30は媒体(CCA;clear channel assessment)がビジーであるということを示す信号を、MAC処理部20(より正確には、受信処理部90)へ出力する。受信レベルが、キャリアセンスレベル未満であれば、PHY処理部30は、媒体(CCA)がアイドルであるということを示す信号を、MAC処理部20(より正確には受信処理部90)へ出力する。
PHY処理部30は、受信信号に対し、復調処理、プリアンブル及びPHYヘッダを取り除く処理などを行って、ペイロードを抽出する。IEEE802.11規格では、このペイロードをPHY側ではPSDU(physical layer convergence procedure(PLCP) service data unit)と呼んでいる。PHY処理部30は、抽出したペイロードを受信処理部90に渡し、受信処理部90はこれをMACフレームとして扱う。IEEE802.11規格では、このMACフレームを、MPDU(medium access control(MAC) protocol data unit)と呼んでいる。加えて、PHY処理部30は、受信信号を受信開始した際に、その旨を受信処理部90に通知し、また受信信号を受信終了した際に、その旨を受信処理部90に通知する。また、PHY処理部30は、受信信号が正常にPHYパケットとして復号できた場合(エラーを検出しなければ)、受信信号の受信終了を通知すると共に、媒体がアイドルであるということを示す信号を、受信処理部90に渡す。PHY処理部30は、受信信号にエラーを検出した場合には、エラー種別に即した適切なエラーコードをもって、受信処理部90にエラーを検出したことを通知する。また、PHY処理部30は、媒体がアイドルになったと判定した時点で、媒体がアイドルであることを示す信号を受信処理部90に通知する。
MAC共通処理部70は、上位処理部10から送信処理部80への送信データの受け渡し、及び受信処理部90から上位処理部10への受信データの受け渡しを、夫々仲介する。IEEE802.11規格では、このMACデータフレームの中のデータを、MSDU(medium access control(MAC) service data unit)と呼んでいる。また、MAC共通処理部70は、MAC/PHY管理部40からの指示を一旦受け取り、当該指示を送信処理部80及び受信処理部90に適したものに変換して出力する。
MAC/PHY管理部40は、例えばIEEE802.11規格におけるSME(station management entity)に相当する。その場合、MAC/PHY管理部40とMAC共通処理部70との間のインターフェースは、IEEE802.11規格におけるMLMESAP(MAC sublayer managament entity service access point)に相当する。MAC/PHY管理部40とPHY処理部30との間のインターフェースは、IEEE802.11無線LANにおけるPLMESAP(physical layer management entity service access point)に相当する。
なお、図2において、MAC/PHY管理部40は、MAC管理のための機能部とPHY管理のための機能部とが一体であるかのように描かれているが、分けて実装されてもよい。
<BSSへの接続方法とデータフレームの交換開始>
APはBSSを立ち上げると、ビーコン(Beacon)フレームを周期的に送信する。なお、実際にはCSMA/CA(carrier sense multiple access with carrier avoidance)を用いてビーコンフレームは送信されるため、厳密な固定間隔とはならない。
ビーコンフレームはBSSの属性やAPの無線通信能力、またSTAが同期を取るための送信時刻(timestamp)情報を報知するものであり、ブロードキャストフレームである。ブロードキャストフレームとは、直接の受信先アドレス(RA;receiver address)を指定するフィールドを全て1としたものである。なお、802.11規格では、RAはアドレスフィールドが複数ある場合には最初に設定されるアドレスフィールドである。ビーコンフレームにはSSIDを入れてもよいし、入れなくてもよい。SSIDを入れない送信形態のことをステルスモードと呼ぶ。
APは、STAからプローブ要求(Probe Request)フレームを受信すると、当該STAに対してプローブ応答(Probe Response)フレームを送信する。プローブ要求フレームは通常ブロードキャストフレームで送信される。プローブ応答フレームは基本的にビーコンフレームと同じ情報を通知するもので、ユニキャストフレームである。ユニキャストフレームとは、RAに特定のSTAのMACアドレスを指定したフレームのことである。STAがプローブ要求フレームでより詳細な情報について要求することも可能である。その場合には、APはプローブ応答フレームに要求された情報をビーコンフレームと同じ情報以外に付加して送信する。例えば、プローブ要求フレームでSTAが追加で要求するエレメントIDを指定(IEEE Std 802.11-2020の9.4.2.10 Extended Request elementを使用して要求)した場合、APは、要求された情報をプローブ応答フレームに付加して送信する。あるいは、STAがプローブ要求フレームで同一ベンダー間で通じる固有な要求を入れた(IEEE Std 802.11-2020の9.4.2.218 Vendor Specific Request element)場合、それに対してAPが要求された情報をプローブ応答フレームに入れて送信することもある。また、STAはプローブ要求フレームに特定のSSIDを入れることもできる。その場合は、当該プローブ要求フレームを受信した複数のAPのうちでSSIDが合致するAPがプローブ応答フレームを送信する。STAがユーザの入力情報に基づきSSIDを指定したプローブ要求フレームを送信する。そのため、ステルスモードのAPであり、かつSSIDが合致するAPがプローブ要求フレームを受信できるエリア内にいた場合には、STAはそのAPを検出できる。
STAはビーコンフレームあるいはプローブ応答フレームを受信することにより、当該STAが接続可能なAPを把握する。複数接続候補のAPがいる場合には、STAはそのうちの1つのAPを選択し、接続を試みる。
IEEE802.11規格では、STAがAPに接続し、APとの間でデータフレームの交換ができるようになるためには、オーセンティケーションプロセス(authentication process)とアソシエーションプロセス(association process)を経る必要がある。
オーセンティケーションプロセスでは、オーセンティケーション(Authentication)フレームをSTAとAPの間で2回あるいは4回交換する。オーセンティケーションプロセスはSTAがAPにオーセンティケーションフレームを送信することで開始される。オーセンティケーションフレームはユニキャストフレームである。オーセンティケーションフレームを受信した側は、Ackフレームを送信する。続いて、その受信側からオーセンティケーションフレームを送信する場合は、受信側はアクセス権を再度獲得してからオーセンティケーションフレームを送信する。4回交換する場合は、WEP(wired equivalent privacy)を使う場合である。しかし、その脆弱性からWEPは使われない方向になっているため、通常はSTAからAPへの送信、APからSTAへの送信の2回で完了し、通常は4回交換することはない。APからSTAへのオーセンティケーションフレームにはステータスコード(Status Code)フィールドが入れられる。ステータスコードは、STAからの要求をAPが受け付けるか否かをSTAへ通知するものである。APは、要求を受け付ける場合には、Status CodeフィールドにSUCCESSを意味する0を入れる。APは、要求を受け付けない場合には0以外の値をStatus Codeフィールドに入れることにより、受け付けない理由を合わせてSTAへ通知することができる。0以外の値としては、例えば1は特定の理由を明示せずに拒絶する場合に用いられ、13はSTAがAPの指定する特定のオーセンティケーションのアルゴリズムをサポートしない場合を理由として示した上で拒絶する場合に用いられる。
すなわちSTAから開始されたオーセンティケーションプロセスが成功に終わる、すなわちAPがオーセンティケーションフレームでStatus Codeフィールドに0を入れた場合、次にSTAはアソシエーションプロセスを開始する。アソシエーションプロセスはSTAがAPにアソシエーション要求(Association Request)フレームを送信することで開始される。STAはアソシエーション要求フレームに自STAの無線通信能力を格納し、それを送信することでAPに自STAの能力の通知をすることができる。アソシエーション要求フレームもアソシエーション応答フレームもユニキャストフレームであり、各々受信した側はAckフレームを送信する。APは、アソシエーション要求フレームをSTAから受信すると、アソシエーション応答フレームをSTAに送信する。アソシエーション応答フレームにはAPの無線通信能力情報とともにStatus Codeフィールドが入れられる。Status Codeフィールドが0(SUCCESS)である、すなわちアソシエーション要求を受け付けることを通知するアソシエーション応答フレームにはBSS内でSTAを識別する識別子であるassociation identifier(AID)が入れられる。APが各STAにAIDを割当てる。AIDを割当てられたSTAは、APとの間で接続が完了したことになり、APとの間でデータフレームの交換を行うことができるようになる。STAがAPと接続状態にある場合、STAのAIDが有効である。AIDを通知するフィールドはAIDフィールドであり、16ビットで構成される。実際にAIDとして有効な値域は1から2007である。APが、アソシエーションプロセス以外でAIDフィールドを入れたフレームを送信する場合には、AIDフィールドとしては1から2007以外の値を用いることもある。その場合は、AIDフィールドは、対象となるSTAの属性などを指定するのに用いられる。
STAがあるAPから他のAPへ再接続するための再アソシエーション(reassociation)プロセスでアソシエーション要求フレームを送信する場合もアソシエーションプロセスと同様の手順で同様の情報交換を行う。再アソシエーションプロセスがアソシエーションプロセスと異なる点は、再アソシエーションプロセスでSTAが再接続を要求する他のAPに対して、再アソシエーション要求フレームを送信する際に、現在接続しているAPのMACアドレスを再アソシエーション要求フレームに追加することである。当該他のAPは、再アソシエーション要求フレームに対する応答である再アソシエーション応答(Reassociation Response)フレームを送信する。
STAがAPとデータフレームの交換ができる状態になると、APを介して認証サーバと接続できるため、4-wayハンドシェイクの手順を介してadvanced security standard(AES)などの暗号化処理を送信するフレームに施すことができるようになる。
<MACフレーム>
MACフレームはMAC層で生成されるフレームである。MACフレームは、基本的に管理(management)フレーム、データ(data)フレーム、制御(control)フレームの3種類に大別される。なお、一部のIEEE802.11拡張規格では、拡張(extension)フレームも定義されている。
上述のビーコンフレームやプローブ要求フレーム、プローブ応答フレーム、オーセンティケーションフレーム、アソシエーション要求フレーム、アソシエーション応答フレーム、再アソシエーション要求フレーム、再アソシエーション応答フレームなどはMACフレームのうちの管理フレームに分類される。管理フレームは他のSTAとの間の通信リンクの管理のために用いられる。
上述のデータフレームは、MACフレームのうちのデータ(data)フレームに分類される。上述のdataフレームは、QoS(quality of service)対応に対応するか否か、データのみを格納するか否か、あるいはAckフレームの意味も含むかなどの付加的な情報があるか否か、などによって細かく分かれる。なお、データフレームは通常は上位層から渡されたデータを格納するものである。しかし、特殊な例として、データフレームは、MAC層で生成され、データを含まないデータフレームも含む。データを含まないデータフレームにはNullフレームとQoS Nullフレームの2種類がある。
上述のAckフレームはMACフレームのうちの制御フレームに分類される。他に応答系の制御フレームとして、BlockAckフレームや、BlockAckフレームの送信を要求するBlockAckReqフレームや、送信権を獲得するフレーム交換の先頭で再送のダメージを削減するために送信するRTS(request to send)フレームや、RTSフレームへの応答として送信あるいは送信先からの応答を求めない場合に送信権獲得のためのフレーム交換先頭で送信するCTS(clear to send)フレームなどがある。制御フレームは、管理フレーム及びデータフレームを、他の無線通信装置との間で送受信(すなわち交換)するときの制御のために用いられるものである。
<MACフレームフォーマット>
図3の(a)は、MACフレームの基本的なフォーマットを示す図である。本実施形態に係る管理フレーム、データフレームおよび制御フレームは、このようなフレームフォーマットをベースとする。本フレームフォーマットは、MACヘッダ(MAC header)、Frame Body(オクテット単位の可変長)及びFCS(Frame Check Sequence)(4オクテット)の各フィールドを含む。なお、前述のデータを含まないデータフレームであるNullフレームとQoS NullフレームなどのようにFrame Bodyフィールドが存在しないMACフレームもあり得る。
図3の(b)はMACヘッダの基本的なフォーマットを示す図である。MACヘッダは、Frame Control(2オクテット)、Duration/ID(2オクテット)、Address 1(6オクテット)、Address 2(0又は6オクテット)、Address 3(0又は6オクテット)、Sequence Control(0又は2オクテット)、Address 4(0又は6オクテット)、QoS Control(0又は2オクテット)及びHT(High Throughput) Control(0又は4オクテット)の各フィールドを含む。
これらのフィールドは必ずしもすべて存在する必要はなく、一部のフィールドが存在しないMACヘッダもあり得る。例えばAddress 3フィールドやAddress 4フィールドが存在しないMACヘッダもある。また、QoS ControlおよびHT Controlの2フィールドの両方または一方が存在しないMACヘッダもある。また図3には示されていない他のフィールドが新たにMACヘッダ内に追加されてもよい。
Frame Controlフィールドには、タイプ(Type)、サブタイプ(Subtype)という2つのフィールド等が含まれる。管理フレームか、データフレームか、制御フレームかなどの大別はTypeフィールドで行われる。大別されたフレームの中での細かい種別はSubtypeフィールドで行われる。例えば制御フレームについては、前述のようにBlockAckフレーム、BlockAckReqフレーム、RTSフレーム、CTSフレームといった分解能の情報がSubtypeフィールドに入れられる。
媒体予約時間がDuration/IDフィールドに入れられる。Duration/IDフィールドに媒体予約時間が入れられている場合には、RAで指定されたSTA以外のSTAがそのフレームを受信した場合には、受信したSTAはDuration/IDフィールドを後述のNAV(network allocation vector)を設定する時間(NAV値)として用いる。制御フレームの中で省電力の時に使用されるPS(power save)-Pollフレームでは、Duration/IDフィールドに媒体予約時間ではなく、そのフレームを送信するSTAがAPから割り当てられたAIDが記載される。PS-PollフレームをRAで指定されたSTA以外のSTAが受信した場合には、受信したSTAは、Typeフィールドが制御フレームを表していることと、SubtypeフィールドがPS-Pollフレームであることとを把握することで、Duration/IDフィールドからNAV値を設定できないことを把握する。その場合、STAはshort interframe space(SIFS)という固定時間とPS-Pollフレームへの応答として送信されるAckフレームが媒体を占有する推定時間との和をNAV値として設定する。STAは、このAckフレームが媒体を占有する推定時間をPS-Pollフレームの伝送レートから推定されるAckフレームの伝送レートとAckフレーム長(14オクテット固定)とから求める。
Address 1フィールドには、受信先アドレス(receiver address;RA)が入る。Address 2フィールドは、一部の制御フレームでは存在しない場合もある。存在する場合には、Address 2フィールドには、送信元アドレス(transmitter address;TA)が入る。Address 3フィールドは、制御フレームでは存在しない。Address 3フィールドは、管理フレームとデータフレームでは存在する。Address 3フィールドには、フレームの用途に応じてBSSの識別子であるBSSIDか、TAか、データの最終宛先アドレス(detination address;DA)か、データの送信元アドレス(source address;SA)が入る。なお、BSSIDは、全てのBSSIDを対象とするwildcard BSSID(全てのビットが1)の場合もある。Address 4フィールドは、データフレームの場合でかつAP間でSTAからのデータを転送する場合に存在する。Address 4フィールドは、Address 3フィールドがDAを通知するのに用いられる。Address 4フィールドはSAを通知するのに用いられる。
Sequence ControlフィールドはSequence NumberサブフィールドとFragment Numberサブフィールドに分かれている。Sequence Numberサブフィールドにはフレームに割り当てられたシーケンス番号を入れ、Fragment Numberサブフィールドにはデータがフラグメント処理により複数のフラグメントに分割された場合に当該フレームで対応するフラグメント番号を入れる。
QoSフィールドは、フレームの優先度を考慮して送信を行うQoS制御を行うために用いられる。HT Controlフィールドは、IEEE802.11n規格で導入されたフィールドであり、IEEE802.11n規格の後継であるIEEE802.11ac規格、IEEE802.11ax規格においても用いられる。HT Controlフィールドには、IEEE802.11n規格に対応させる場合はHT variantが設けられ、IEEE802.11ac規格に対応させる場合はVHT variantが設けられ、IEEE802.11ax規格に対応させる場合はHE variantが設けられる。各バリアントはHT Controlの先頭1ビットないしは2ビットで識別される。
Frame Bodyフィールドは、フレームのタイプやサブタイプに応じた情報を入れるフィールドである。NullフレームとQoS Nullフレーム以外のデータフレームでは、Frame Bodyフィールドにデータが入る。管理フレームでは、サブタイプに応じて複数の固定フィールドや、複数の情報エレメント(information element)がFrame Bodyフィールドに入る。制御フレームでは、サブタイプに応じてFrame Bodyフィールドがない場合もあるし、また複数の固定フィールドがFrame Bodyフィールドに含まれる場合もある。
FCSフィールドには、受信側でフレームの誤り検出のため用いられるチェックサム符号としてFCS情報が設定される。FCS情報の例としては、CRC(cyclic redundancy code)などがある。
<NAVの説明>
IEEE802.11規格では、STA(APを含む)は、CSMA/CAにより媒体アクセス権(以降、送信権と称する)を獲得した後、媒体を占有可能な時間(transmission opportunity;TXOP)を得ると、QoS(quality of service)属性などの制限を伴うものの、他のSTA(APを含む)との間でMACフレームを連続して交換できるようになる。
このTXOPにおいて、MACフレームの交換を行う2つのSTA以外の第三者STAが別のMACフレームを送信すると、2つのSTAで交換中のフレーム(厳密にはフレームを格納する物理パケット(physical protocol data unit;PPDU))と第三者STAにより送信されたMACフレームとが衝突してしまう。そこで、第三者STAが送信権を獲得することをTXOPの終了後まで延期するために、NAVという仕組みが設けられている。MACフレーム交換を行っている2つのSTAの周辺の第三者STAでNAVが設定されている状態では、TXOP、すなわち無線リソースが保護(protection)されている。
受信処理部90は、CSMA/CA処理においてまず媒体が空いているかどうかを確認する、すなわちキャリアセンスを行う。ここで、キャリアセンスは、CCA(clear channel assessment)のビジー/アイドルに関する物理的なキャリアセンス(physical carrier sense)と、受信したフレームのDuration/IDフィールドの値あるいは受信フレーム種別に基づく仮想的なキャリアセンス(virtual carrier sense)との両方を包含するものである。物理的なキャリアセンスは、物理的な媒体で-62dBm以上の信号を検知すると発動する。後者のように、仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は、NAVと呼ばれる。なお、1つのチャネルを複数のリソースユニット(resource unit;RU)に分け、その一部を使って送受信するような場合に、受信処理部90は、チャネル単位で行ったCCAの結果情報またはNAVに基づくキャリアセンス情報を当該一部のRUに適用してもよい。例えばキャリアセンス情報がアイドルを示すチャネルに属するRUでは、受信処理部90は、キャリアセンスはアイドルと判断する。STA(APを含む)は他のSTA宛てのMACフレームを受信した場合に、当該MACフレームを含む物理パケットの終わりからNAVを設定する。受信処理部90は、NAV値をメモリ94に書き込むことにより、NAVを設定することができる。また、新たなフレームを受信し、それによって設定するNAVの方が現在のNAVよりも長い、すなわち新たなフレームにより設定されるNAVの終了タイミングが現在のNAVで設定されている終了タイミングよりも遅い場合には、受信処理部90は、メモリ94に書き込まれている現在のNAV値を新たなフレームによるNAV値により更新する。このNAV値の更新により、現在のNAVの終了時刻が新たなフレームによるNAVの終了時刻まで延長する。
802.11ax規格では、上記のDuration/IDフィールドで示される媒体占有時間を802.11ax規格で新たに定義された物理パケット(HE PPDU)の物理(physical;PHY)ヘッダにあるHE-SIG-AフィールドのTXOPフィールドにも入れるようになっている。STA(APを含む)は受信復号できないHE PPDUを受信し、このTXOPフィールドに有意な値が設定されている場合には、その値からNAV値を取得する。またHE PPDUのHE-SIG-AフィールドにはBSS Colorフィールドがある。STA(APを含む)は、このフィールドによって自BSS内のHE PPDUか他BSS(overlapping BSS;OBSS)から送信されているHE PPDUかを判別できる。STA(APを含む)はHE PPDUを送信する際には、BSS Colorフィールドに自BSSで設定したBSS color値を設定する。自BSSで用いるBSS color値はAPが決定する。
またさらに802.11ax規格では、アップリンク(uplink;UL)マルチユーザ(multi-user;MU)送信を実現するために、受信した物理パケットが自BSSから送信された物理パケットの場合に適用するNAVとしてintra-BSS NAVが特別に設けられる。intra-BSS NAVは、他の場合に適用するNAV、すなわち受信した物理パケットがOBSSから送信された物理パケットあるいは受信した物理パケットの送信元が自BSSかOBSSかを判別できない場合に適用されるNAVと区別される。ここで、他の場合に適用されるNAVは、basic NAVと呼ばれる。APが1つまたは複数のSTAに対し、UL MU送信を指示するフレームはトリガー(Trigger)フレームである。トリガーフレームは制御フレームの一種である。図4は、トリガーフレームに対して応答してUL MU送信できるか否かをbasic NAVの設定状態とintra-BSS NAVの設定状態との関係に依存して示す図である。なお、厳密には、トリガーフレーム内にキャリアセンスを要求するか否かを示すCS Requiredサブフィールドがあり、そのサブフィールドが“1”、すなわちキャリアセンスを要求する、とある場合に、STA(AP含む)は、これらの2つのNAVの設定状態を加味して、トリガーフレームに応答可能であると判断すると、UL MUパケットを送信できる。
(1)basic NAVとintra-BSS NAVがともに0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、トリガーフレームへの応答は不可(すなわち、UL MU送信できない)である。
(2)basic NAVが0ではなく(すなわち、設定されている)、intra-BSS NAVが0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は不可であり、トリガーフレームへの応答は不可(すなわち、UL MU送信できない)である。
(3)basic NAVが0であり(すなわち、設定されていない)、intra-BSS NAVが0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、トリガーフレームへの応答は可能(すなわち、UL MU送信できる)である。
(4)basic NAVとintra-BSS NAVがともに0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は可能であり、トリガーフレームへの応答は可能(すなわち、UL MU送信できる)である。
intra-BSS NAVは、STA(APを含む)が受信した物理パケットに格納されたMACフレームのアドレスフィールドである、RA、TA、あるいはBSSIDフィールド値として自BSSのBSSIDが設定されている場合に設定される。もしくは、STA(APを含む)が受信した物理パケットに格納された制御フレームにTAがなく、RAはあり、そのRAに記載された値がその前に送信権を獲得したTXOP holderとして保持していたMACアドレスと同一と判断し、かつそのTXOP holderを保持した際にintra-BSS NAVが設定されていた場合(つまりintra-BSS通信として認識したTXOPのTXOP holderから何らかのフレームを送信されてそれに対する応答フレームにTAはないがRAはあり、そのRAがTXOP holder宛てになっていると判断できる場合)に、intra-BSS NAVは設定される。また、STA(APを含む)が物理パケットを復号できない場合に物理パケットのヘッダ情報から同一BSS内の通信であると判断できる場合も、intra-BSS NAVが設定される。この場合の物理パケットのヘッダ情報とは例えば前述のBSS Colorフィールドである。あるいは、STA(APを含む)は802.11ac規格で規定される物理パケット(VHT PPDU)のヘッダに入れられるVHT-SIG-AフィールドのParital AIDフィールドに基づいてデータフレームを受信した通信が同一BSS内の通信であると判断してもよい。
802.11ax規格では、APは必ずしもこの2つのNAVを持つ必要はない。すなわち、APがintra-BSS NAVを持つことはオプションである。APがintra-BSS NAVを持たない場合は、APが802.11ac規格までの通常の1つのNAVを持つ動作と同じ動作である。APでinra-BSS NAVがオプションであるのは、802.11ax規格でトリガーフレームを送信するのは必ずAPであり、それを受信してその応答としてUL MU送信を行うのは必ずSTAだったからである。つまりAPでは図4でのトリガーフレームに対する応答の場合が存在しないからである。
<Trigger frame>
図5は、トリガーフレームのフォーマットの一例を示す図である。
Durationフィールド(2オクテット)は、上述のDuration/IDフィールドである。
Common Infoフィールド(8オクテット又はそれ以上)はUL MU送信で対象となる全てのSTAに共通の指示情報を示す領域である。Common Infoフィールドとしては、前述のCS Requiredサブフィールドの他に、トリガーフレームの種別を示すTrigger Typeサブフィールドや、UL MUパケットの時間長を指示するUL Lengthサブフィールドなどがある。
User Info Listフィールド(オクテット単位の可変長)は複数のUser Infoフィールドから成る。各User Infoフィールドは個々のSTA向けの制御情報を通知するものである。個々のSTAのAIDはUser Infoフィールドの中のAID12サブフィールドで指定される。また特定のSTAを指定せずに、UL直交周波数分割多重(UL orthogonal frequency deivision multiple access;UL OFDMA)ベースのランダムアクセス(UL OFDMA based random access;UORA)でAPに接続済みのSTA(associated STAs)を対象とする場合には、“0”がAID12サブフィールドに設定される。特定のSTAを指定せずに、UORAでAPに未接続のSTA(unassociated STAs)を対象とする場合には、“2045”がAID12サブフィールドに設定される。User Infoフィールドとしては、AID12サブフィールドの他に、どのRUでの送信が割り当てられているかを示すRU Allocationサブフィールドや、送信に用いる変調符号化方式(modulation and coding scheme;MCS)を指示するUL HE-MCSサブフィールドなどがある。
<multi-APの説明>
複数AP連携(Multi-AP coordination;MAP)はESSを構成する複数のAPが連携して動作することの総称である。
例えばあるAPが送信権獲得後に他の1つないし複数のAPに当該APが獲得したTXOPの一部無線リソースを分け与えるというような協調動作がある。ここで、送信権を獲得し、TXOPの一部無線リソースを分け与えるAPが共有元AP(sharing AP)であり、一部無線リソースを分け与えられるAPが共有先AP(shared AP)である。また無線リソースとは、時間あるいは周波数のことである。
図6は、共有元APが自身で獲得したTXOPの一部のリソース(時間)を時間で分割して共有先APに分け与え、TXOPの一部のリソース(時間)を周波数で分離しない形態のMAPの一例を示す。この場合は、共有元APは複数の共有先APに時分割でTXOPを分け与えることになる。共有元APであるAP1は、TXOP1を獲得し、その一部の時間TXOP11を自身で利用する。TXOP11の終了後、AP1は、残りの一部の時間TXOP12を共有先APの1つであるAP2に分け与える。TXOP12の終了後、AP1は、残りの一部の時間TXOP13を共有先APの他の1つであるAP2に分け与える。共有先APに分け与えられたTXOPの周波数幅は、共有元APが送信権を獲得した周波数幅と同じになる。例えば、共有元APが連続する20MHzチャネル4つの80MHzチャネルを獲得した場合には、複数の共有先APが各々時間分割でその80MHzチャネルを使っていくことになる。
基準となる周波数チャネル(上記の例では20MHz)を複数まとめて使う手法をチャネルボンディング(channel bonding)と言う。図7はチャネルボンディングの一例を説明するための図である。
図7の(a)は、40MHz、80MHz、160MHzのボンディングチャネルを生成するためのチャネルボンディングの一例を示す。BSSにはAPが許容と指定する最大のチャネル幅まで、さまざまなチャネル幅に対応するSTAが接続できる。そのBSSを構成する全てのSTA(APを含む)が共通に動作可能な20MHzチャネルがプライマリチャネルである。プライマリチャネルでは、必ずビーコンフレームが送信される。プライマリチャネルと連続し、プライマリチャネルと合わせて40MHzボンディングチャネルを構成する20MHzチャネルがセカンダリチャネルとなる。図7の(a)ではプライマリチャネルの右側(高周波数側)がセカンダリチャネルとなる例を示している。しかし、セカンダリチャネルの配置は、図7の(a)の例に限らない。プライマリチャネルとセカンダリチャネルとからなる40MHzボンディングチャネルと連続し、40MHzボンディングチャネルと合わせて80MHzボンディングチャネルを構成する2つの20MHzチャネルがセカンダリ40MHzチャネル(ボンディングチャネル)を構成する。図7の(a)ではプライマリチャネルの左側(低周波数側)がセカンダリ40MHzチャネルとなる例を示している。しかし、セカンダリ40MHzチャネルの配置は、図7の(a)の例に限らない。プライマリチャネルとセカンダリチャネルとセカンダリ40MHzチャネルとからなる80MHzボンディングチャネルと連続し、80MHzボンディングチャネルと合わせて160MHzボンディングチャネルを構成する4つの20MHzチャネルがセカンダリ80MHzチャネル(ボンディングチャネル)を構成する。図7の(a)ではセカンダリチャネルの右側(高周波数側)がセカンダリ80MHzチャネルとなる例を示している。しかし、セカンダリ80MHzチャネルの配置は、図7の(a)の例に限らない。320MHzチャネルボンディングでは、8つの連続する20MHzチャネルからなるセカンダリ160MHzチャネル(ボンディングチャネル)が先の160MHzボンディングチャネルに連接する構成となる。
図7の(b)のように、セカンダリチャネルとセカンダリ80MHzチャネルが離間して合計で160MHzチャネルを確保することもでき、この場合は80+80MHzボンディングチャネルと称する。
図8は、図7の(a)に示すチャネルボンディングの一例における送信権獲得方法を説明する図である。各APまた各STAが20MHzより大きいチャネル幅での送信権を獲得する場合に図8で説明する方法が適用される。図8の(a)は40MHzのチャネルボンディングの場合の送信権獲得方法を説明する。以降では、送信元APが送信権を獲得する場合を例に説明する。送信元APはプライマリ20MHzチャネルでCSを行う。プライマリ20MHzチャネルについて送信権の獲得が可能であった場合、その時点からPIFS(SIFS+1スロット時間)遡る期間中にセカンダリ20MHzチャネルのCS状況の確認を行う。セカンダリ20MHzチャネルについてPIFS期間中にビジーを検出せず送信権の獲得が可能であった場合、送信元APは40MHzのボンディングチャネルで送信を行う。セカンダリ20MHzチャネルについてPIFS期間中にビジーを検出した場合はセカンダリ20MHzチャネルで送信権の獲得が不可であったと判断し、送信元APはプライマリ20MHzチャネルのみで送信を行う、あるいは再度40MHzチャネルでの送信を試みるためにプライマリ20MHzチャネルでのCS状況の確認から動作を再開してもよい。
図8の(b)は80MHzのチャネルボンディングの場合の送信権獲得方法を説明する。共有元APは例えば自BSSで最大80MHzのチャネル幅のサポートを行うとした場合、プライマリチャネルを基準に、それと連続する1つの20MHzチャネルをセカンダリチャネルに、またプライマリチャネルとセカンダリチャネルで構成する40MHzボンディングチャネルと連続する2つの20MHzチャネルをセカンダリ40MHzチャネルとして設定する。共有元APはセカンダリチャネル、セカンダリ40MHzチャネルをどのように設定するかをビーコンフレーム、またプローブ応答フレームでSTAに通知する。共有元APはBSSで40MHzチャネルまでしか用いない場合も、セカンダリチャネルを同様に通知する。また、共有元APは、160MHzチャネルや80+80MHzチャネルの場合には、同様にセカンダリ80MHzチャネルも通知し、320MHzチャネルの場合には、同様にセカンダリ160MHzチャネルも通知する。送信元APは80MHzチャネルでの送信権獲得を試みる場合には、前述の40MHzチャネルでの場合と同様、プライマリ20MHzチャネルを基準に、プライマリ20MHzチャネルについて送信権の獲得が可能と判断した時刻から遡ってPIFS以内のセカンダリ20MHzチャネル、セカンダリ40MHzチャネル毎にCS状況を確認し、その条件をクリアした最大のチャネル幅での送信を行う。すなわち、送信元APはセカンダリ20MHzチャネルがPIFS内でビジーを検出していたなら、仮にセカンダリ40MHzチャネルではPIFS内でビジーを検出していなくても、プライマリ20MHzチャネルのみで送信を行う。あるいは、次の機会により広帯域を確保できることを期待して、再度80MHzチャネルでの送信を試みるために、送信元APはプライマリ20MHzチャネルでのCS状況の確認から動作を再開してもよい。プライマリ20MHzチャネルとセカンダリ20MHzチャネルがCS条件をクリアし、セカンダリ40MHzチャネルではPIFS内でビジーを検出している場合には、プライマリ20MHzチャネルとセカンダリ20MHzチャネルを用いた40MHzチャネルでの送信ができる。すなわち80MHzチャネルで送信するためには、プライマリチャネルでのCS条件をクリアした上でセカンダリ20MHzチャネルもセカンダリ40MHzチャネルもPIFS内でビジーを検出していないことが条件になる。160MHzチャネルで送信する場合も、同様にプライマリ20MHzチャネルを基準に、セカンダリ20MHzチャネルもセカンダリ40MHzチャネルもセカンダリ80MHzチャネルもPIFS内でビジーを検出していないことが条件になる。320MHzチャネルで送信する場合は、同様にプライマリ20MHzチャネルを基準に、セカンダリ20MHzチャネルもセカンダリ40MHzチャネルもセカンダリ80MHzチャネルもセカンダリ160MHzチャネルもPIFS内でビジーを検出していないことが条件になる。以上がチャネルボンディングを利用したCSの基本であるが、広帯域チャネルを20MHzごとのサブチャネル単位でCSするようにし、ビジーとなる一部の20MHzチャネルで送信しない手法(パンクチャ技術)を利用することも可能である。パンクチャ技術を適用した物理パケットの送信方法としては物理ヘッダからパンクチャして一つの物理パケットとして送信する手法(パンクチャパケット)と、一部の20MHzサブチャネルでは送信せずに残りの20MHzサブチャネル単位で同一の物理パケットを送信する手法(デュプリケートパケット)がある。これにより、広帯域の送信権獲得がしやすくなる。パンクチャ技術を利用するときもプライマリ20MHzチャネルでは送信権が獲得できていなくてはならない。パンクチャ技術を利用して物理パケットを送信する場合には物理ヘッダにどこの20MHzチャネルがパンクチャされているかを通知する。パンクチャされている20MHzサブチャネルの組み合わせは制限されていてもよい。これによっていずれかの20MHzサブチャネルで物理ヘッダを取得すれば、他のどの20MHzサブチャネルでも送信されているかを把握できる。パンクチャ技術を利用した物理パケットを受信復号できるかをAPまたSTAは互いに通知し(APならビーコンフレームやプローブ応答フレームで通知、またSTAならアソシエーション要求フレームや際アソシエーション要求フレームで通知)、対応可能な相手にだけ物理パケットを送信する。MAPでは送信元APは、送信先APがパンクチャされた物理パケットを受信できる場合にパンクチャされた物理パケットを送信できるとする。
図9は、共有元APが自身で獲得したTXOPの一部のリソース(時間)を周波数で分割して複数の共有先APに分け与える形態のMAPの一例を示す。この場合は、共有元APは複数の共有先APに周波数分割でTXOPを分け与えることになる。共有元APであるAP1は、TXOP1を獲得し、その一部の時間TXOP11を自身で利用する。TXOP11の終了後、AP1は、残りの一部の時間TXOP12の周波数幅を分割して得られた第1周波数幅のTXOP12を共有先APの1つであるAP2に分け与えるとともに、第2周波数幅のTXOP12を共有先APの他の1つであるAP3に分け与える。各共有先APに割り当てた周波数幅の合計は、共有元APが送信権を獲得した周波数幅と同じか、それよりも狭くなる、つまり共有元APが送信権を獲得した周波数幅以下となる。当然、各共有先APに割り当てた周波数は共有元APが送信権を獲得した周波数内である。これは、送信権を獲得した期間であるTXOPは周波数方向にも及んでおり、共有元APのTXOP1はある周波数幅を保護しているため、その保護内の周波数であれば他のAPに分け与えられるということである。例えば図9において、共有元AP1が80MHzチャネルを獲得した場合、共有先AP2に40MHz、共有先AP3に40MHzを割当てる。この場合AP2とAP3に割り当てられた周波数の合計は80MHzで、AP1が獲得した80MHz幅と同じである。あるいは、AP2に40MHz、AP3に20MHzを割当ててもよい。この場合はAP2とAP3に割り当てられた周波数の合計は60MHzで、AP1が獲得した80MHz幅よりも狭くなる。
当然、時分割MAPと周波数分割MAPを組み合わせてもよい。当然、共有元APが他のAPにTXOPの一部無線リソースを分け与えつつ、自APも他のAPと同様に再度TXOPの一部無線リソースを使ってもよい。例えば図6において、TXOP12とTXOP13の後に、TXOP1が終了するまでに時間が残っていれば、再度AP1がTXOPを使うようにしてもよい。また例えば図9において、TXOP12をAP2とAP3に周波数分割で割り当てたが、TXOP12の周波数の一部をAP1自身が使って、AP2、AP3と並行してTXOP12を利用してもよい。
TXOPの一部無線リソースを共有先APに分け与える場合には、APはトリガーフレームを用いる。従来の802.11ax規格では、トリガーフレームはAPからそのAPに接続するSTAにTXOPの一部無線リソースを割り当てるものである。そのため、本実施形態では、共有元APが共有先APにTXOPの一部無線リソースを割り当てる場合には、別のTrigger Typeサブフィールドが定義される。あるいはトリガーフレームとは異なる新たな制御フレームが定義されてもよい。あるいは、既存のTrigger Typeサブフィールドであり、一般的にUL MU送信を指示するために用いるBasic variant(これをベーシックトリガー(Basic Trigger)フレームと言う)の現状未使用の(reserved)フィールド、あるいは後方互換性を維持しつつ一部フィールドを再定義することで、APが他のAPにTXOPの一部無線リソースを割り当てる本実施形態に利用できるようにしてもよい。なお、ベーシックトリガーフレームを改造して再利用する場合、あるいは新規のTrigger Typeサブフィールドを定義する場合、User Infoフィールドは既存の場合と同様にすることが考えられる。その場合、例えばESS内での各APを識別するためにAP各々に識別子を割当て、そのAPの識別子をAID12サブフィールドに入れることが考えられる。この場合、通常のSTAが用いるAIDは1~2007であり、また既存のトリガーフレームでAID12サブフィールドとして前述のように特別な意味を与えられた値が定義されているため、それらを避けてAPの識別子を割当てるようにすればよい。例えばESSを形成するときに、ESSを形成開始した最初のAPが他のAPに識別子を割当てるようにしてもよいし、ユーザインターフェースを経由して手動により各APの識別子を指定するようにしてもよい。新たな制御フレームを定義する場合も、上述のようにAID12サブフィールドのようなものをUser Infoフィールドに設け、共有元APがTXOPの一部無線リソースを割り当てる先の共有先APを、APの識別子で通知するようにしてもよいし、共有先APのMACアドレスをそのまま通知するようにしてもよい。前者の方がAPを指定するフィールドは短くすることができる一方、APどうしを識別するための識別子を割当てる方法が必要である。
共有元APからTXOPの一部無線リソースを割り当てられた共有先APでは、各々に割り当てられた無線リソースの中であたかもAP自身が送信権を獲得したときのように利用する。例えば図6において、AP2はTXOP12の間に、AP2に接続するSTA21やSTA22にデータフレームを送信し、それに対するAckフレームやBlockAckフレームなどの応答フレームを受信することや、あるいはSTA21とSTA21にトリガーフレームを送信して各々からデータフレームを送信させ、それに対する応答フレームを送信することなどが可能である。当然、TXOP12内に収まるのであれば、これらの連続したフレーム交換を行ってもよい。
<MAP対応能力の通知>
MAPを実施するに当たって、共有元APでは、共有先候補となるAPが後述のようにNAVに関連した特別な操作ができるAPである、と予め把握しておく必要がある。また共有先となったAPでは、MAP動作下で自BSSのSTAに無線リソースを再割り当てする際に、その対象候補となるSTAが後述のようにNAVに関連した特別な操作ができるSTAである、と予め把握しておく必要がある。すなわち、後述のようなNAVに関連した特別な操作などMAP対応に不可欠となる能力(capability)の対応可否の通知が必要である。
例えば、MAP動作が可能であるかという能力に関連する通知を各APが送信するビーコンフレーム、また他AP向け送信用のアクションフレームに入れて送信すれば、ESSを構成する複数のAPにおいてそれらのフレームを受信することで互いにMAP動作の対応可否を把握することができる。
アクションフレームも管理フレームの一種である。アクションフレームのSubtypeフィールドはアクションフレームと示される。アクションフレームのFrame Bodyフィールドの先頭に配置されるActionフィールドの中のCategoryサブフィールドはアクションフレームの大まかなカテゴリーを示す。さらにCategoryサブフィールドに続くAction DetailsサブフィールドはCategoryサブフィールドに応じたより細かいアクションフレームの種別を表すサブフィールドを格納する。
ビーコンフレームやアクションフレームのFrame Bodyフィールドに入れる例えば情報エレメントの1つを使って、MAP動作が可能であることを通知する。MAP動作が可能であることを通知する情報エレメントには、MAP動作以外の能力に係る通知も入れてもよい。例えば802.11be規格関連の能力を通知するフィールドとしてEHT Capabilitiesエレメントがあり、ここに入れるようにしてもよい。あるいは、新しくMAP動作関連の情報(とその他の情報)を通知する情報エレメントを定義してもよい。この場合、この情報エレメントとして新たな識別子(Element ID、Element ID Extension)を定義することになる。
図10は、MACフレームのFrame Bodyに含まれる情報エレメントのフォーマットの一例を示す。情報エレメントは、Element IDフィールド(1オクテット)、Lengthフィールド(1オクテット)、Element ID Extensionフィールド(0又は1オクテット)、Informationフィールド(オクテット単位の可変長)を含む。
Element ID Extensionフィールドは、情報エレメントを識別するためのElement IDの番号が1オクテットで表現できる数の上限に達した場合、用いられる。Element IDが最大の“255”という値を取った場合のみ、Element ID Extensionフィールドが追加され、情報エレメントを識別するためのSubelement IDが追加できるようになっている。
Element ID Extension フィールドも1オクテットあり、現行の802.11規格に準拠する無線LAN規格ではそのフィールドが“0”の値はReservedになっており、“1”以上の値がElement IDと同様に情報エレメントを識別するために割り当てられている。ここに、情報エレメントを識別するための固有の値が記載される。
Lengthフィールドは、Element IDフィールドとLengthフィールドを除いた情報エレメントの長さ(サイズ)を示す。Informationフィールドは情報の内容を示す。
MAPの動作可能なAPに接続しているSTAが、共有元APから自AP(当該STAが接続しているAP)に割り当てられたTXOPの一部無線リソースが自APからさらに再割り当てされた場合に、STAは、条件によってはNAVに関連した特別な操作を行い、データフレームなどの送信が可能であること、すなわち他APから分けられたTXOP内で自APの指示による送信が可能なこと、を自APに送信する。このようにSTAが自APに通知する場合も、アソシエーション要求フレームや再アソシエーション要求フレームにMAP動作が可能であることを通知する情報エレメントを入れればよい。またそのようなSTAは接続候補のAPがビーコンフレームやプローブ応答に同様の情報エレメントを入れてあることで、当該APがMAPの動作が可能であるか否かを予め把握できる。そこで、STAは、アソシエーション要求フレームや再アソシエーション要求フレームを送信する先のAPがMAPの動作が可能であることを確認した場合に、アソシエーション要求フレームや再アソシエーション要求フレームに先の情報エレメントを入れて、対応可能であることを自APに通知するようにしてもよい。APはアソシエーション要求フレームや再アソシエーション要求フレームで他APから分け与えられたTXOP内で自APの指示による送信が可能なことの通知をSTAから受けた場合に、再度アソシエーション要求フレームや再アソシエーション応答フレームにMAP動作が可能であることを通知する情報エレメントを入れてもよい。
<MAP Candidate Set>
上述のように同一ESS内でもMAP動作が可能なAPが一部に限られるなどして、実際にMAP動作を連携して行うAPが限られている場合には、MAP動作を行う各APはMAP動作を連携する候補となる他のAPを把握しておくことが必要である。このようなMAP動作を連携する候補となるAP群をMAP候補セット(MAP candidate set)と呼ぶことにする。後述のNAV操作に関する記述部分で、同一ESS内のAPなどと記載している部分は、同一ESS内でもMAP動作が可能なAPが一部に限られる場合は、MAP候補セットのAPと読み替える。
<APが他APからTXOPの一部無線リソースを割り当てられた場合にそれを使うことができるようにする動作例>
前述のように、802.11ax規格ではAPはintra-BSS NAVを持つことはオプションであり、従来の1つのNAVだけを持っていてもよい。
以下、APが他APからTXOPの一部無線リソースを割り当てられた場合にそれを使うことができるようにするMAP動作の例を説明する。MAP動作例は、APに実装される例と、STAに実装される例に分類される。先ず、APに実装されるMAP動作例を説明する。
<AP動作例1:NAV 1つのみ>
まず受信処理部90により1つのNAVだけが設定されている場合に、送信処理部80がNAVに関わらず他APから割り当てられたTXOPの一部無線リソースを使うことができるようにする動作例について記載する。
この場合、APの受信処理部90が自AP宛てに他APからTXOPの無線リソースの一部を共有するフレームを受信したら、送信処理部80は割り当てられた無線リソース内ではNAVを無視して送信する。図11はAP動作例1の一例を説明するための図である。図11では、AP1が共有元APであり、AP1が獲得したTXOPの一部無線リソースを共有先AP2に割り当てている。このAP2にTXOPの一部無線リソースを割り当てるフレームが図中ではMAP Transmission Sharing Triggerフレーム(MAP TXS TF)である。ここでは他APにTXOPの一部無線リソースを割り当てるフレームをトリガーフレームの一種としている。AP2に対してのみ割り当てる場合には、MAP TXS TFのRAはAP2のMACアドレスに設定している。
例えば、AP2はMAP TXS TFのRAが自APのMACアドレスを指定している場合、MAP TXS TFを受信復号すると、Typeフィールド、SubtypeフィールドからMAP TXS TFはフレーム種別としては制御フレームであるトリガーフレームであることが分かり、Trigger TypeサブフィールドからMAP TXS TFはMAPであるAPが他APにTXOPの一部無線リソースを割り当てる際に用いるものであることが分かる。従って、AP2は、自AP宛てに他APからTXOPの無線リソースの一部を共有するフレームを受信したという条件を満たしたことになる。従って、仮にAP1が、例えばAP1が構成するBSS1内のSTA宛てフレームを送信する、あるいはAP1宛てのCTSフレームを送信する場合、それをAP2が受信すると、NAVが設定された状態であっても、AP2(送信処理部80)はNAVを無視して、MAP TXS TFに従い、TXOPを使うことができ、AP2自身が構成するBSS内のSTA宛てに割り当てられた無線リソースを再割り当てするためなどの送信を行うことができる。自STA(APを含む)宛てのCTSフレームを特にCTS-to-selfフレームと言う。自STA宛てとは、RAを自STAのMACアドレスに設定していることを言う。
図11は、MAP TXS TFを受信したAP2は、割り当てられた一部無線リソースを使うということを通知するための応答フレーム(図11ではTransmission Sharing Responseフレーム(TXS RSP)がこれに相当する)をAP1に送信した後に、AP2に接続するSTA21とSTA22にUL MUの送信指示をするトリガーフレーム(図11ではTriggerフレーム(TF)がこれに相当する)を送信する例を示している。例えば、AP2は、MAP TXS TFのSIFS後にTXS RSPを送信し、TXS RSPのSIFS後にTFを送信するようにする。例えばAP2がSIFSでTXS RSPの送信準備が難しい場合には、AP2は、予めAP1との間でAP2が必要な調整時間をネゴシエーションしておき、AP1が送信するMAP TXS TFを物理フレームに入れて送信する際にその調整時間に合わせてMAP TXS TF後にパディング処理を行い、実質の物理パケット間の時間はSIFSにしつつAP2が送信準備のための処理時間を稼げるようにする。
AP2がAP1にTXS RSPを送信するためには、MAP TXS TFのMACヘッダにRAに加えてSAがあり、SAにAP1のMACアドレスが設定されている必要がある。AP2はMAP TXS TFのSAに設定されているAP1のMACアドレスをコピーしてTXS RSPのRAに設定する。TXS RSPにはAP1側でどのAPが応答しているかを識別するために、SAを入れることが望ましく、AP2はAP1にTXS RSPを送信する際にSAにAP2自身のMACアドレスを設定する。
ここで、AP2は、受信したフレームのRAに自APのMACアドレスが設定されており、当該フレームがMAP TXS TFであると判断すると、NAVを無視してフレームの送信を行う。これ以外に、送信する条件として、同一ESSのAPが送信元APである場合にさらに限定してもよい。これを判断するためには、前述のようにMAP TXS TFのTAを用いればよい。AP1はAP2が予め同一ESSを構成するAPの一つであることを把握していることによって、AP2はTAにAP2のMACアドレスが記載されたMAP TXS TFを受信した際に、同一ESSのAP1がそのフレームを送信したものと判断できる。同一ESSのAPにTXOPの一部無線リソースを割り当てられた場合にだけその無線リソースを使うことになるのであるから、さらにTXS RSPフレームを送信するかどうかもMAP TXS RFが同一ESSを構成するAPの一つから送信されていることを条件にすることが適当である。これは、仮にAP2がMAP TXS TFを受信する前にNAVが設定されていない場合には、MAP TXS TFが自AP宛てであればNAVを設定しないため、AP2はTXS TFフレームは送信できることになるためである。但し、この場合でもAP2はSTA21、STA22に対してTFフレームを送信することはできない。これは自STA(AP含む)宛てフレームを受信した場合にはNAVは設定しないが、その代わりに類似の概念であるタイマーを有し、TXOPを開始した(TXOP holderである)AP1のTXOP中であることを把握し、そのTXOP中には送信権の取得を試みるべきではないためである。
AP1が複数のAP、例えばAP2とAP3、にTXOPの一部リソースを割り当てているときには、MAP TXS TFのRAにはブロードキャストアドレスが設定される。そこで、AP2が当該MAP TXS TFが自APにTXOPの一部無線リソースを割り当てているものであるという把握は、例えばMAP TXS TFが従来のトリガーフレームと同様にUser InfoフィールドのいずれかでAID12サブフィールドに自APに割り当てられた識別子があることで行う。
受信したフレームが同一ESSのAPからのフレームであるということを容易にAPが把握するために、MAP TXS TFに前述のようにESSの識別子であるSSIDを入れるようにしてもよい。なお、SSIDは一部の管理フレームに入れられるが、その場合には情報エレメントの形式で表現されている。これは、SSIDがオクテット単位で最大32オクテットまでの可変長だからである。トリガーフレームは制御フレームであり、通常は情報エレメントを入れない。これは制御フレームでは受信した際の処理負荷を軽減するためである。制御フレームではフィールド長が変わる可能性のあるフィールドを格納する場合に、情報エレメントのように長さ情報を入れて該当するフィールドを切り出すのではなく、細かい種別やそのフィールドが終了する特殊な値などを入れることによって、フィールドを把握できるようにしている。そこで、同様にMAP TXS TFにSSIDを入れる際には、例えばフレームボディ部の最後(FCSフィールドの前)に入れるようにする。当然、長さ情報とSSID値を入れる構成が許容されるようになるなら、それでもよい。あるいは、MACアドレスと同様に6オクテットの値をESSの識別子として、SSIDとは別に定義し(これを例えばESSIDとする)、用いるようにしてもよい。ESSIDを用いる場合には、予め同一ESS内で周知しておく必要がある。
あるいは同一ESSのAPからであるということを容易にAPが把握するために、BSS Colorフィールドのように同一ESSであることを識別するためのSSIDとは異なる識別子、ESS color、を新たに設けるようにしてもよい。この場合、同一ESSであることを識別するための識別子を例えばBSS Colorフィールドに入れる概念を基本的には踏襲し、通常は自BSSであるかを識別するのに用いるが、ある値については同一ESSであることを通知するものとして使うようにする。ESS color値は同一ESS内のAP間で何らかの方法によって決定し、同一ESS内のAP間で共有する。例えば、ESSの構成を開始した1台のAPなど、あるAPがESS color値を決めるようにしてもよいし、ユーザが決定の上、コントローラなどを介して各APに入力するようにしてもよい。また従来のBSS colorのように途中で値を変更できるようにしてもよい。
なお、AP動作例1ではAP2がTXOPの一部無線リソースを割り当てられる際に、すでにAP2に接続するSTAの1つが送信権を獲得し、intra-BSSの通信が存在している場合で、AP1がそれを検知していない場合がある。この場合、AP2がNAVを無視して送信してしまうため、AP2の通信とintra-BSSの通信と衝突してしまう恐れがある。また、AP2では検知している他のBSS(同一ESSに限らない)内の通信があるが、それをAP1では検出していない場合に、やはりAP2はNAVを無視して送信してしまうため、他のBSSでの通信と衝突してしまう恐れがある。この衝突の恐れを解消するAP動作例2を次に説明する。
<AP動作例2:802.11ax規格のNAV 2つ(basic NAV、intra-BSS NAV)>
AP動作例2では、2つのNAV、basic NAVとintra-BSS NAV、をAP2が持つ。AP動作例2がAP動作例1と異なる点は、intra-BSS NAVが設定されている場合にはAPが自AP宛てに他APからTXOPの無線リソースの一部を共有するフレームを受信しても、割り当てられた無線リソース内でintra-BSS NAVを無視して送信することはできない点である。一方でbasic NAVのみが設定されている場合には、AP動作例1と同様にbasic NAVを無視して他APからの割当てフレームに従ってフレームを送信できる。
図12の(a)はbasic NAVのみが設定されている場合のAP動作例2の一例を説明するための図である。basic NAVが設定されていても、intra-BSS NAVが設定されていなければ、AP2はbasic NAVを無視し、AP1からMAP動作用の割当てフレームであるMAP TXS TFを受信し、それに対してTXS RSPを送信し、その後にAP2に接続するSTA21とSTA22にTFを送信する。図12の(b)はintra-NAVが設定されている場合のAP動作例2の一例を説明するための図である。AP2は、intra-NAVを尊重し、MAP TXS TFに対するTXS RSPを送信せず、またSTA21とSTA22へのTFも送信しない。仮にintra-NAVがMAP TXS TFの途中で終わり、TXS RSPをMAP TXS TFの固定時間後(通常のTFの送信と同様に例えばSIFS後)に送信するかどうかの判断を行う段階でintra-NAVが設定されていない状態であれば、仮にbasic NAVが設定されている状態であったとしても図12の(a)と同様になるため、AP2は送信してよい。
図13は、AP動作例2において、2つのNAVの設定状態と他APからTXOPの一部無線リソースが割り当てられた場合にその一部無線リソースを使うことができるか(図中での項目は“MAP送信”と表現してある)の関係を示す。
(1)basic NAVとintra-BSS NAVがともに0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は不可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できない)である。この場合は、図12の(b)に対応する。
(2)basic NAVが0ではなく(すなわち、設定されている)、intra-BSS NAVが0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できる)である。この場合は、図12の(a)に対応する。
(3)basic NAVが0であり(すなわち、設定されていない)、intra-BSS NAVが0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は不可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できない)である。この場合は、図12の(b)に対応する。
(4)basic NAVとintra-BSS NAVがともに0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は可であり、MAP送信は可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できる)である。
このようにすることで、連携する他のアクセスポイントから無線リソースを分け与えられた場合に、送信が可能になる。
AP動作例2で、AP動作例1と同様に、APは同一ESSのAPが送信元の場合に限りMAP送信可能というように送信条件を限定してもよい。また、MAP TXS TFのRAがブロードキャストアドレスの場合に自APが割り当てられているかを把握する方法もAP動作例1と同様である。AP動作例1での同一ESSのAPからであることを受信APが容易に把握するための手法もAP動作例2に適用できる。
AP動作例2ではintra-BSSの通信が行われている状況で、AP1がそれを検知していない場合に、AP2が送信を行ってintra-BSSの通信と衝突してしまうというAP動作例1での状況は回避できる。一方で、AP動作例2では、AP2では検知している他のBSS内の通信があるが、それをAP1では検知していないために、AP1がMAP TXS TFを送信する場合に、AP2がbasic NAVを無視して送信できてしまうため、他のBSSでの通信と衝突してしまうことは起こり得る。この衝突の恐れを解消するAP動作例3を次に説明する。
<AP動作例3:NAV 2つ(新たなMAP用ESS NAV(BSS内でのnon-AP STAのintra-BSS NAVに置き換わるもの)、basic NAV)>
AP動作例3は、同一ESS内(自BSSを含む)のフレームを受信した時に設定されるMAP用のNAV(ESS NAVと称する)と、それ以外の条件(同一のESSではないフレームまたはパケットを受信した時)に設定されるNAV(basic-NAVと称する)の2つのNAVを設けるものである。802.11ax規格では、STAがintra-BSS NAVとbasic NAVを設定する。AP動作例3では、intra-BSS NAVは設定されず、ESS NAVは、自BSS内のフレームを受信した時も同一ESS内の他のAP/STAからのフレームを受信した時も区別されずに設定される。ESS NAVは802.11ax規格で設定された2つのNAVがある場合の中のintra-BSS NAVを拡張したものである。ESS NAVはintra-BSS NAVを包含するものとなる。
APは、受信したMACフレームのRA、TA、あるいはBSSIDフィールド値として自BSSのBSSID(すなわち自BSSのAPのMACアドレス)を含む場合(自BSSのフレームの場合)あるいは同一ESS内のAPのMACアドレスを含む場合には、同一ESSのフレームを受信したと判断してESS NAVを設定する。また、APは、受信したフレームが同一BSS内の通信として認識したTXOPのTXOP holderへの応答フレームであると判断できる場合も、ESS NAVを設定する。
この場合の判断方法は802.11ax規格NAVにおけるintra-BSS NAVでの判断方法と同様である。また、ESS color(AP動作例1で考察)を物理パケットのヘッダに入れる、あるいは既存のBSS Colorフィールドで、予めESS内の各BSSのBSS colorをBSS間で相互周知するなどして、APがBSS colorを把握できるようにして、APが受信したフレームまたは物理パケットが同一ESS内の通信によるフレームまたは物理パケットであると判断するようにすればよい。ESS colorを物理パケットのヘッダに入れる手法としては、例えば特定の値を同一ESSであることを識別するために設け、BSS Colorフィールド値に入れること、あるいはESS Colorフィールドを新たに設けることがある。Partial AIDフィールドを用いる場合も同様に判断できる。
APは、ESS NAVの設定条件にはならない場合(同一ESSかどうかを判別できない場合も含む)には、basic NAVを設定する。従って、ここでのbasic NAVの設定条件は従来の2つのNAVでのbasic NAVの設定条件とは若干変わる。AP動作例2ではAPはintra-BSS NAVを尊重していたのに対し、AP動作例3ではAPはESS NAVと対の概念であるところのbasic NAVを尊重する。これは、従来の2つのNAVを持つ場合に、STAがAPからのトリガーフレームに応答する際にbasic NAVを尊重するのと類似の動作である。AP動作例3では、basic NAVが設定されている場合には、APは自AP宛てに他APからTXOPの無線リソースの一部を共有するフレームを受信しても、割り当てられた無線リソース内でbasic NAVを無視して送信することはできない。一方でESS NAVのみが設定されている場合には、APはESS NAVを無視して他APからの割当てフレームに従って送信できる。
図14の(a)はESS NAVのみが設定されている場合のAP動作例3を説明するための図である。AP2はESS NAVを無視し、AP1からのMAP TXS TFに対し、TXS RSPを送信し、その後にAP2に接続するSTA21とSTA22にTFを送信する。図14の(b)はbasic NAVが設定されている場合のAP動作例3を説明するための図である。AP2はbasic NAVを尊重し、MAP TXS TFに対してTXS RSPを送信せず、またSTA21とSTA22へTFも送信しない。仮にbasic NAVがMAP TXS TFの途中で終わり、TXS RSPをMAP TXS TFの固定時間後に送信するかどうかを判断する段階でbasic NAVが設定されていない状態であれば、仮にESS NAVが設定されている状態であったとしても図14の(a)と同様になるため、AP2は送信してよい。
図15は、2つのNAVの設定状態と他APからTXOPの一部無線リソースが割り当てられた場合に、その一部無線リソースを使うことができるか(図中での項目は“MAP送信”と表現してある)の関係を示す。
(1)basic NAVとESS NAVがともに0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は不可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できない)である。この場合は、図14の(b)に対応する。
(2)basic NAVが0ではなく(すなわち、設定されている)、ESS NAVが0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は不可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できない)である。この場合は、図14の(b)に対応する。
(3)basic NAVが0であり(すなわち、設定されていない)、ESS NAVが0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できる)である。この場合は、図14の(a)に対応する。
(4)basic NAVとESS NAVがともに0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は可であり、MAP送信は可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できる)である。
AP動作例3では、AP動作例1と同様に、同一ESSのAPが送信元の場合に限りMAP送信可能というようにMAP送信できる条件を限定してもよい。またMAP TXS TFのRAがブロードキャストアドレスの場合に自APが割り当てられているかを把握する手法もAP動作例1と同様である。AP動作例1での受信フレームまたは物理パケットが同一ESSのAPから送信されたものであることを受信APが容易に把握するための手法もAP動作例3に適用できる。
AP動作例3ではAP1がAP2のBSS内で通信が行われている状況を検知していない場合に、AP2ではそれを検知すると、ESS NAVが設定されていても送信してしまうために、この送信がintra-BSS通信と衝突してしまうことは起こり得る。一方で、AP2では検知しているESS外の他のBSS内の通信があり、それをAP1では検知していない状況で、AP2が送信して、この送信がESS外の他のBSS内の通信と衝突してしまう状況は回避できる。この衝突の恐れを解消するAP動作例4を次に説明する。
<AP動作例4:NAV 3つ(intra-BSS NAV、ESS NAV、basic NAV)>
動作例AP4はAP動作例3と類似しているが、異なる点は、AP動作例3ではESS NAVを設定する条件に自BSSのフレームを受信した場合も含めていたのを、AP動作例4ではAPはESS NAVとintra-BSS NAVとを区別して設定し、その上でbasic NAVとintra-BSS NAVを尊重することである。intra-BSS NAVを設定するかどうかは、従来の2つのNAVの場合にintra-BSS NAVを設定する条件と同じである。すなわち、APは、受信パケットを復調してMACフレームを得た場合、MACヘッダに自BSSと同じBSSIDが含まれていると判断すると、MACヘッダからNAV値を取り出し、その値からNAVを設定する。APは、受信パケットを復調できない場合は、物理パケットのヘッダのBSS color値に基づいて自BSSのパケットを受信したと判断すると、物理パケットのヘッダからTXOPを取り出し、TXOPに応じてNAVを設定する。APは、自BSS内の通信ではないが同一ESS内の通信であると判断できる場合に、ESS NAVを設定する。ESS NAVを設定する条件は、AP動作例3の場合のESS NAVを設定する条件において、intra-BSS NAVを設定する条件を除外すればよい。intra-BSS NAVの設定条件もESS NAVの設定条件も当てはまらない場合に、APはbasic NAVを設定する。AP動作例4では、basic NAVあるいはintra-BSS NAVのいずれかが設定されている場合には、APは自AP宛てに他APからTXOPの無線リソースの一部を共有するフレームを受信しても送信しない。一方で、ESS NAVのみが設定されている場合には、APはESS NAVを無視して他APからの割当てフレームに従って送信できる。
図16の(a)はESS NAVのみが設定されている場合のAP動作例4を説明するための図である。basic NAVもintra-BSS NAVも設定されていない場合は、ESS NAVが設定されていても、AP2は、ESS NAVを無視して、AP1からのMAP TXS TFに対し、TXS RSPを送信し、その後にAP2に接続するSTA21とSTA22にTFを送信する。図16の(b)はbasic NAVあるいはintra-BSS NAVの少なくともいずれかが設定されている場合のAP動作例4を説明するための図である。AP2は、basic NAVあるいはintra-BSS NAVの少なくともいずれかのNAVを尊重し、MAP TXS TFに対してTXS RSPを送信せず、またSTA21とSTA22へのTFも送信しない。仮にbasic NAVが設定されていたが、MAP TXS TFの途中で終わり、TXS RSPをMAP TXS TFの固定時間後に送信するかどうかを判断する段階でbasic NAVが設定されておらず、ESS NAVのみが設定されている場合は、図16の(a)と同様になるため、APは送信してよい。また仮にintra-BSS NAVが設定されていたが、MAP TXS TFの途中で終わり、TXS RSPをMAP TXS TFの固定時間後に送信するかどうかを判断する段階でintra-BSS NAVが設定されていないで、ESS NAVのみが設定されている場合は、図16の(a)と同様になるため、APは送信してよい。
図17は、3つのNAVの設定状態と他APからTXOPの一部無線リソースが割り当てられた場合にその一部無線リソースを使うことができるか(図中での項目は“MAP送信”と表現してある)の関係を示す。
(1)basic NAV、intra-BSS NAV、及びESS NAVがともに0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は不可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できない)である。この場合は、図16の(b)に対応する。
(2)basic NAVとintra-BSS NAVがともに0ではなく(すなわち、設定されている)、ESS NAVが0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は不可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できない)である。この場合は、図16の(b)に対応する。
(3)basic NAVとESS NAVがともに0ではなく(すなわち、設定されている)、intra-BSS NAVが0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は不可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できない)である。この場合は、図16の(b)に対応する。
(4)basic NAVが0ではなく(すなわち、設定されている)、intra-BSS NAVとESS NAVがともに0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は不可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できない)である。この場合は、図16の(b)に対応する。
(5)basic NAVが0であり(すなわち、設定されていない)、intra-BSS NAVとESS NAVがともに0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は不可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できない)である。この場合は、図16の(b)に対応する。
(6)basic NAVとESS NAVがともに0であり(すなわち、設定されていない)、intra-BSS NAVが0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は不可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できない)である。この場合は、図16の(b)に対応する。
(7)basic NAVとintra-BSS NAVがともに0であり(すなわち、設定されていない)、ESS NAVが0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、MAP送信は可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できる)である。この場合は、図16の(a)に対応する。
(8)basic NAV、intra-BSS NAV、及びESS NAVがともに0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は可であり、MAP送信は可(すなわち、割り当てられた無線リソースを使用できる)である。
AP動作例4で、AP動作例1と同様に、同一ESSのAPが送信元の場合に限りMAP送信可能というようにMAP送信できる条件を限定してもよい。またMAP TXS TFのRAがブロードキャストアドレスの場合に自APが割り当てられているかを把握する手法もAP動作例1と同様である。AP動作例1での同一ESSのAPからであることを受信APが容易に把握するための手法も本AP動作例4に適用できる。
AP動作例ではAP1がAP2のBSS内で通信が行われている状況を検知していない場合に、AP2はそれを検知しても、intra-BSS NAVが設定されているので、AP2は送信しないため、AP2の通信がintra-BSS通信と衝突してしまうことは回避できる。また、AP2では検知しているESS外の他のBSS内の通信があり、それをAP1では検知していない状況では、AP1がMAP TXS TFをAP2に送信しても、basic NAVが設定されているので、AP2は送信しないため、AP2が送信し、その送信がESS外の他のBSS内の通信と衝突してしまう状況は回避できる。
次に、STAに実装されるMAP動作例を説明する。
<STAが接続するAP(自AP)が他APからTXOPの一部無線リソースを割り当てられ、それをさらに自APからSTAに割り当てられた場合にSTAがそれを使う動作例>
ここでは、shared AP下のSTAの動作について記述する。802.11ax規格対応のSTAはUL MU送信に対応していることから、AP動作例4のように3つのNAVを持つ場合での実現例、また従来、通常は2つのNAVを持っていることが期待されるが、1つのNAVのみを持ち、2つのNAVを持つ場合と同様な期待動作を実現する場合での実現例を順に追って説明する。
<STA動作例1:STAは同一ESS内のAPが送信したフレームを同一BSS内のフレームと同じ扱いにする>
STA動作例1では、STAは2つのNAV、すなわちintra-BSS NAVとbasic NAVを持ち、同一ESS内のAPが送信したフレームを同一BSS内のAPまたはSTAが送信したフレームと同じ扱いにする。すなわち、STAは、STAが接続するAP以外でかつ同一ESS内のAPが送信したフレームを受信すると、自APが送信した場合と同様にintra-BSS NAVを設定する。
これを実現するためには、STAは予めどのAPが同一ESS内のAPであるかを把握しておく必要がある。そのために例えばSTAが接続するAPがビーコンフレームやプローブ応答フレーム、アソシエーション応答フレームに、同一ESS内のAPに関する情報を入れる。この情報の通知には例えば情報エレメントを使う。先のMAP動作に係る能力通知を行う情報エレメントにこの情報を追加するようにしてもよいし、同一ESS内のAPの情報を通知するための情報エレメントを新たに設けてもよい。
図18は、STA動作例1の一例を説明するための図である。AP2がAP1からのMAP TXS TFを受信し、それに対する応答であるTXS RSPをAP1に送信した後、AP2に接続するSTA21とSTA22にTFを送信する。STA21とSTA22は各々AP1からのTFの送信は同一ESS内の送信であると判断し、intra-BSS NAVを設定する。そのため、STA21とSTA22は、AP2からのTFに対して応答し、UL MUでデータフレームData1、Data2を夫々AP2に送信できる。STA21あるいはSTA22でbasic NAVが設定されていた場合には、STA21あるいはSTA22はTF(厳密にはTFのCS Requiredサブフィールドが“1”の場合)に応答しない。
AP2に接続するSTA21、STA22は、intra-BSS NAVの通常の設定条件を満たすかどうかを前述のように受信したフレームのアドレスフィールドなどに自STAが接続するAPのMACアドレスと同一のBSSIDが入っているかなどで判断していた。しかし、MAP動作に対応するSTAは、これに加えて、受信フレームのSAに同一ESS内のAPのMACアドレスが入っているかも設定条件の判断に含め、この条件に該当する場合にはintra-BSS NAVを設定する。また、STAは前述のように物理パケットのヘッダにESS情報などが入る場合には、それに基づいて受信したフレームは同一BSS内のフレームであると判断し、intra-BSS NAVを設定する。図18ではMAP TXS TFのSAがAP1であり、STA21とSTA22はAP1がAP2と同一ESSのAPであることを認識していることから、STA21とSTA22はintra-BSS NAVを設定する。なお、MAP TXS TFがAP1からAP2にユニキャストで送信される場合には、RAにAP2が設定されるので、通常の設定条件が満たされ、intra-BSS NAVが設定される。しかし、MAP TXS TFでRAがブロードキャストアドレスに設定されている場合にも、SAがAP1であることから、前述の設定条件の判断に従い、STA21とSTA22はintra-BSS NAVを設定する。
STA動作例1ではAP1がAP2にTXOPの無線リソースの一部を共有しない場合であっても、STA21とSTA22はintra-BSS NAVを設定してしまう。そのため、仮にAP2がSTA21、STA22で検知している送信を検知していない場合には、STA21とSTA22はAP2が送信したTFに対して応答を送信してしまう。
これを解決するためには、例えば同一ESS内のAPがMAP TXS TFを送信する場合であっても、全ての場合で、STA21、STA22はintra-BSS NAVを設定せず、同一ESS内のAPがMAP TXS TFを自APに送信したときにだけ、STA21、STA22はintra-BSS NAVを設定する方法がある。この場合、受信フレームのRAが自APであるかを判別して、受信フレームのRAが自APである場合に、STA21、STA22はintra-BSS NAVを設定する。あるいは、受信フレームのRAがブロードキャストアドレスの場合は、例えばAID12フィールドのような、さらに個々のSTA/APを指定するフィールドがあれば、そのフィールドで自APが指定されているかを判別して、自APが指定されている場合に、STA21、STA22はintra-BSS NAVを設定する。しかし、これらの場合、例えば共有元APがまずCTS-to-selfフレームなどを送信するなどしてTXOPを確保した場合には、intra-BSS NAVが設定されず、その後にSTAが接続するAPにTXOPの一部無線リソースが割り当てられ、さらにSTAが接続するAPから当該STAに無線リソースが再配分された際に、SATは送信することができない。この解決方法の一例としてはSTA動作例4で説明する方法がある。
別の解決方法としては、同一ESS内の他のAPから送信されたフレームに対し、受信電力レベル(例えばreceive signal strength indicator(RSSI)として通知)がある値(少なくとも-62dBm未満。例えば-72dBmあるいは-82dBm)以下であれば、STAはintra-BSS NAVを設定し、その値よりも大きければ、STAはbasic NAVを設定する方法がある。このようにすることで、自BSSのフレームではないが、同一ESS内のAPからのフレームを受信し、かつ受信電力レベルがある程度低い場合には、仮に異なるBSSでの通信同士が衝突しても互いに信号対干渉電力比(signal-to-interference ratio;SIR)が大きいため通信を継続することが期待できるために、intra-BSS NAVを設定しても問題ないと考えられる。これは、802.11ax規格の空間的な周波数再利用(spatial reuse;SR)の概念が入ったものである。
STA動作例1では、仮にAP1がAP2にTXOPの一部無線リソースを割り当てた後にAP1がAP3にTXOPの他の一部無線リソースを割り当てる場合に、AP3及びその配下のSTAはAP2及びその配下のSTAとのフレーム交換ではbasic NAVを設定してしまう。そのため、AP2がAP1のTXOPの最後までカバーする時間をDuration/IDフィールド、またはTXOPフィールドに設定すると、basic NAVが設定されているために、AP3及びその配下のSTAは送信できない。従って、AP2はAP1によって割り当てられた時間だけをカバーするようDuration/IDフィールド、またはTXOPフィールドを設定し、AP2に接続するSTAもAP2に従った設定をするようにすると、AP3及びその配下のSTAは送信ができる。
次に、STA動作例1の変形例であるAP/STA動作例を説明する。AP/STA動作例はSTAの動作のみならず、APの動作も規定する。
<AP/STA動作例:ESS内フレームにintra-BSS NAV適用>
この動作例では、同一ESS内のフレームを受信すると、intra-BSS NAVが設定される。この場合、NAVの設定条件は前述の通常のintra-BSS NAVの設定条件において自BSSIDとした部分をESS内の全てのBSSIDに拡張したものである。このNAVの設定条件はAPに接続するSTAにのみ適用するようにしてもよいし、APとそれに接続するSTAにも適用するようにしてもよい。ここでは、APとSTAの両方にintra―BSS NAVを設定する動作例を説明する。STAはintra-BSS NAVのみが設定されている状態では、自APからのTFに応答できるとする。APはintra-BSS NAVのみが設定されている状態では、同一ESS内の他のAPからのMAP TXS TFに応答できるとする。
図19は、AP/STA動作例の一例を説明するための図である。AP1またはその配下のSTAは、TXOPを保護するために、例えばフレーム交換の先頭でCTS-to-selfフレームをAP2及び配下のSTAに送信する。AP2及びその配下のSTA21とSTA22はCTS-to-selfフレームからAP1が自ESS内のAPであると判断し、intra-BSS NAVを設定する。AP2はAP1からのMAP TXS TFを受信する。AP2はMAP TXS TFが自ESS内のフレームであると判断し、intra-BSS NAVのみが設定されている場合は、それを無視してTXP RESをAP1へ送信し、TFを配下のSTA21、STA22へ送信する。TFが同じBSS内のAP2からのフレームであるので、STA21、STA22はintra-BSS NAVのみが設定されている場合は、それを無視してデータData1、データData2をAP2へ夫々送信する。
AP/STA動作例にSTA動作例1で説明した受信電力レベルによるintra-BSS NAVの設定条件を追加してもよい。
AP/STA動作例であれば、仮にAP1がAP2に一部無線リソースを割当てた後に、引き続きAP1が他のAP3にTXOPの一部無線リソースを割り当てる場合などであっても、AP2がAP1のTXOPの最後までbasic NAVを設定してしまい、AP3とその配下のSTAで送信ができないというSTA動作例1でのような問題は起きない。そのため、STA動作例1のようにしてもよいが、AP/STA動作例ではAP2はAP1のTXOPの最後までカバーする時間をDuration/IDフィールド、またはTXOPフィールドに設定するようにし、またAP2の配下のSTAもAP2に従った設定をするようにし、AP3及びその配下のSTAが送信できるようにしてもよい。
またAP/STA動作例では、図19に示すように、MAP TXS TFの送信前に共有元APであるAP1がTXOPを保護するために例えばフレーム交換の先頭でCTS-to-selfフレームを送信した場合であっても、intra-BSS NAVが設定されることになり、STA21とSTA22はその後のAP2からのTFに対して応答でき、問題はない。
<STA動作例2:他APにTXOPを共有するフレームでは、NAVを設定しない>
STA動作例2では、STAは2つのNAV、intra-BSS NAVとbasic NAVを持つ。通常は、あるAPが他のAPにTXOPの一部無線リソースを共有するフレームをSTAが受信した場合には、STAはbasic NAVを設定、あるいはRAに自APが設定されている場合にはintra-BSS NAVを設定する。しかし、STA動作例2では、STAはそれらのNAVを設定しない。あるAPが他のAPにTXOPの一部無線リソースを共有するフレームをSTAが受信したかはフレーム種別で判別することができる。例えばそのフレームが前述の例のようにトリガーフレームの一種であるMAP TXS TFであるならば、Frame ControlフィールドのTypeサブフィールドが制御フレームで、Subtypeサブフィールドがトリガーフレームで、さらにCommon InfoフィールドのTrigger TypeサブフィールドがMAP TXSバリアントであり、このバリアントの種別まで見てフレーム種別を判別し、その判別結果に応じてNAVを設定する/しないという判断を行うことができる。
図20はSTA動作例2の一例を説明するための図である。STA21とSTA22はフレーム種別がMAP TXS TFであることを検知すると、そのフレームはNAVを設定しないフレームであると判断する。従って、その後にAP2がTXS RSPをAP1へ送信し、STA21とSTA22はそれを受信すると、従来のようにintra-BSS NAVを設定する。その後にAP2がSTA21とSTA22に対して送信するTFに対しては、intra-BSS NAVのみが設定されている状況であれば、STA21とSTA22はTFに対して応答送信できる。
STA動作例2では、フレーム種別、すなわちMAP TXS TFであるか否かのみをNAV設定の判断に用い、同一ESS内のAPからであるか、あるいは受信したフレームが自AP宛てか(RAに自APが設定されているかもしくはAID12サブフィールドで自APが指定されているか)の判断はNAV設定に不要である。単純にフレーム種別を確認するだけでよいため、NAV設定の判断基準を単純にできる。
MAP TXS TFによりNAVは設定されないのでTXOPの保護はできないが、引き続き自APからのTXS RSP送信がある場合には、その送信によりSTA21とSTA22はintra-BSS NAVを設定する、また他のAPにTXOPの一部が割り当てられ、当該他のAPがTXS RSPを送信する場合には、その送信によりSTA21とSTA22ではbasic NAVを設定するので、MAP TXS TFを送信したAPのTXOPは最終的に保護されることになる。
なお、MAP TXS TFが複数のAPに送信され、その応答であるTXS RSPがMAP TXS TFを送信したAPへのMU送信(これをinter-AP MUと呼ぶことにする)になる場合は、STA21とSTA22は一旦basic NAVを設定することが考えられる。これは、inter-AP MUの物理パケットのヘッダにESS colorが入れられる場合に、ESS colorは自BSSのBSS colorでないため、STA21とSTA22がbasic NAVを設定する動作を想定した場合である。STA21とSTA22がbasic NAVを設定してしまうと、STA21とSTA22はその後のAP2からのTFに応答送信することができない。
これを回避する方法の1つとして、STAは、例えばbasic NAVの設定終了時刻からSIFS後に自APからTFを受信するなどしてintra-BSS NAVを設定した場合にはその直前のbasic NAVをキャンセル(NAV値を0にする)することが考えられる。STAは、basic NAVが前から設定されており、その期間内にinter-AP MUを受信してbasic NAVを再更新し、その再更新のNAVの終了時刻からSIFS後にintra-BSS NAVを設定した場合にはbasic NAVをキャンセルしない。すなわち、STAは、intra-BSS NAVを設定した物理パケットの直前のSIFSで新たにbasic NAVを設定した場合にだけ、basic NAVをキャンセルできる。
あるいは、もう一つの回避方法は、STAは物理パケットのヘッダのESS colorから同一ESS内のフレームを受信したと判断できた場合には、basic NAVではなく、intra-BSS NAVを設定することである。
あるいは、さらに他の回避手法は、STAはMAP TXS TFを受信した直後のinter-AP MUの物理パケットではMAP TXS TFを受信した場合と同様にNAVを設定しない(この場合は、特にbasic NAVを設定しない)ことである。
STA動作例2では、AP1がAP2に一部無線リソースを割り当てた後に、引き続き他のAPに一部無線リソースを割り当てるような場合には、STA動作例1の場合と同様、他のBSSでのフレーム交換ではbasic NAVが設定されてしまう。そのため、これを回避するために、各APは共有元APによって割り当てられた時間だけをカバーするようDuration/IDフィールド、またはTXOPフィールドを設定するようにする。また各APに接続するSTAもそのAPに従った設定をするようにする。
また、STA動作例2ではMAP TXS TFの送信前に共有元APであるAP1がTXOPを保護するために例えばフレーム交換の先頭でCTS-to-selfフレームを送信した場合に、CTS-to-selfフレームにはRAしかアドレスフィールドがなく、RAはAP1であるため、STA21とSTA22はbasic NAVを設定してしまい、その後のAP2からのTFに対して応答送信できなくなる。STA動作例2については、できるだけ単純なNAV設定条件でSTAがMAP下での所望送信を可能にする趣旨とするので、この問題の解決方法としては、例えば後述のSTA動作例4での同様の問題に対する解決方法として記載した、MAP TXF TFを送信するAPではCTS-to-selfフレームの送信を禁ずることが相性がよい。しかし、STA動作例4でのその他の解決方法を適用してもよい。
<STA動作例3:他APにTXOPを共有するフレームで、かつTXOP共有の割当先に自APが含まれている場合、NAVを設定しない>
STA動作例3では、STA動作例2と同様にSTAは2つのNAV、intra-BSS NAVとbasic NAVを持つが、STA動作例2とは違い、フレーム種別に加えて、割当先が自APであるかまでSTAは確認する。
図21はSTA動作例3の一例を説明するための図である。AP1はこの例ではMAP TXS TFをAP2と他のAPに対して送信している。従ってMAP TXS TFのRAはブロードキャストアドレスである。STA21とSTA22はこのMAP TXS TFを受信すると、自APが割り当て対象となっているかを確認する。すなわち、STA21とSTA22は受信したMAP TXS TFのUser InfoフィールドのいずれかのAID12サブフィールドに自APであるAP2が指定されているかを確認する。受信したフレームがMAP TXS TFで、かつ自APが指定されていれば、STA21とSTA22はbasic NAVもintra-BSS NAVも設定しない。この条件に当てはまらない場合は、STA21とSTA22は通常のNAV設定をする。
例えばSTA21とSTA22はMAP TXS TFを受信した場合、MAP TXS TFに自APが指定されていることを確認できなければ、basic NAVを設定する。なお、MAP TXS TFのRAにAP2が設定されている場合(すなわち(AP2にのみ割当てている場合)、STA21とSTA22は通常のNAV設定の手続きに従って、intra-BSS NAVを設定するのでよい。従って、STA21とSTA22はまず受信したフレームがMAP TXS TFの場合にRAがユニキャストアドレスであれば、通常の手続きに従いNAVを設定する。すなわち、STA21とSTA22はRAが自APであれば、intra-BSS NAVを設定し、RAが他のAPであれば、basic NAVを設定する。STA21とSTA22は受信したフレームがMAP TXS TFの場合にRAがブロードキャストアドレスであれば、自APが割り当てられているかを確認し、自APが割り当てられている場合にはNAVを設定せず、自APの割当てが確認できなければbasic NAVを設定すればよい。
STA動作例3では同一ESS内のAPからの送信かの確認(すなわちMAP TXS TFのTAの確認)は不要だが、RAの確認、RAの設定によってはさらに割当先の確認が必要である。
STA動作例3では、受信したフレームがMAP TXS TFであり複数のAP宛てでかつ自APへの割当てがある場合には、当該フレームによるTXOPの保護はできない。引き続いて自APからのTXS RSP送信はinter-AP MU送信されることが期待されるが、その場合、STA21とSTA22は一旦basic NAVを設定することが考えられる。これはSTA動作例2で提示した状況と同じである。STA21とSTA22はbasic NAVを設定してしまうと、その後のAP2からのTFに応答送信することができない。
従って、これを回避するためには、STA動作例2で提示したと同様に、例えばintra-BSS NAVを設定した直前に新規に設定されたbasic NAVはキャンセルする、あるいは受信した物理パケットのヘッダのESS colorから物理パケットは同一ESSからの送信されたものであると判断できた場合にはbasic NAVではなく、intra-BSS NAVを設定する、あるいはNAVを設定しなかったMAP TXS TFの直後のinter-AP MUでは同様にNAVを設定しない、などの方法がある。いずれにせよ、自APから自BSS内への送信が引き続き起こる場合には、それによってintra-BSS NAVがSTA側では設定されるため、あるいはSTA側ではAPの送信対象となってタイマーを持つことでAPへの応答フレームの送信のみに抑制されるため、自APに割り当てられたTXOP期間中は無線リソースを保護でき、更にその後他のAPにのみ割り当てられた際にはbasic NAVが設定されることになり無線リソースを保護できる。STA21とSTA22はAP2からのTF受信時にintra-BSS NAVしか設定されていないため、TFに対して応答送信ができる。
STA動作例3では、AP1がAP2にTXOPの一部無線リソースを割り当てた後に他のAPにTXOPの一部無線リソースを割り当てるような場合には、STA動作例1の場合と同様、他のBSSではbasic NAVが設定されてしまうため、各APは共有元APに割り当てられた時間だけをカバーするようDuration/IDフィールド、またはTXOPフィールドを設定、また各APに接続するSTAもそのAPに従った設定をするようにする。
STA動作例3でも共有元APであるAP1がフレーム交換先頭でCTS-to-selfフレームを送信するなど、予めTXOP全体を保護するようなフレーム交換が行われた場合には、STA21とSTA22はbasic NAVを設定してしまい、その後のAP2からのTFに対して応答できない問題が起きうる。それを回避するためには、後述のSTA動作例4と同様の解決方法を適用すればよい。
<STA動作例4:他APにTXOPを共有するフレームを受信し、かつTXOP共有の割当先に自APが含まれている場合、intra-BSS NAVを設定する>
STA動作例4では、共有元APが共有先APにTXOPの一部無線リソースを割り当てるフレームをSTAが受信し、その一部無線リソースの共有先としてSTAに接続するAPが割り当てられている場合には、STAはintra-BSS NAVを設定する。STA動作例3では受信フレームが同一条件を満たす場合にbasic NAVを設定しない、としたが、STA動作例4ではintra-BSS NAVを設定するということである。
図22はSTA動作例4の一例を説明するための図である。送信権を獲得したAP1がAP2と他のAPに対し、一部の無線リソースを割り当てるMAP TXS TFを送信する。このMAP TXS TFは複数のAPに一部無線リソースを割り当てる場合、STA動作例3の図21と同様にRAにはブロードキャストアドレスが設定される。そこで、STA21とSTA22は、受信フレームがMAP TXS TFというフレーム種別であると判断すると、次に自APであるAP2が割り当ての対象になっているかを確認する。すなわちSTA21とSTA22は、MAP TXS TFのUser InfoフィールドのいずれかのAID12サブフィールドにAP2が指定されているかを確認する。AP2が指定されていれば、STA21とSTA22はintra-BSS NAVを設定する。このintra-BSS NAVの設定条件に当てはまらない場合は、STA21とSTA22は通常のNAV設定を行う、すなわちbasic NAVを設定する。なお、MAP TXF TFがAP2にのみ送信され、RAがAP2に設定されている場合は、通常のNAV設定の手続きに従って、STA21とSTA22はintra-BSS NAVを設定する。従って、手順としてはSTA21とSTA22はまず受信フレームがMAP TXS TFの場合にRAがユニキャストアドレスであれば、通常の手続きに従いNAV設定を行う。すなわち、STA21とSTA22はRAが自APであればintra-BSS NAVを設定し、RAが他のAPであればbasic NAVを設定する。STA21とSTA22は受信フレームがMAP TXS TFの場合にRAがブロードキャストアドレスであれば、自APが割り当てられているかを確認し、確認できた場合にintra-BSS NAVを設定、確認できなければbasic NAVを設定すればよい。
STA21とSTA22は自APであるAP2に無線リソースを割り当てるMAP TXS TFを受信すると、intra-BSS NAVを設定する。そのため、STA21とSTA22はその後にAP2からのTFに対し、応答することができる。
STA動作例4でも、STA動作例3と同様、同一ESS内のAPからの送信かの確認(すなわちMAP TXS TFのSAの確認)は不要だが、RAの確認、RAの設定によってはさらに割当先の確認が必要である。
STA動作例4では、STA動作例3と違い、受信フレームがMAP TXS TFであり複数のAP宛てでかつ自APへの無線リソースの割当てがある場合にも、当該フレームによるTXOPの保護ができる。引き続いて自APからのTXS RSP送信はinter-AP MU送信されることが期待されるが、その場合、STA21とSTA22はMUパケットのヘッダのBSS colorが自BSSとは異なると判断すると、basic NAVを設定してしまう。これは前述のSTA動作例2あるいはSTA動作例3で提示した状況と同じである。
そこで、これを回避する方法としては、STA動作例2やSTA動作例3で採用された方法がある。例えばSTAはTFでintra-BSS NAVを設定するが、その直前に新規に設定されたbasic NAVをキャンセルする方法がある。あるいは物理パケットのヘッダに通常はBSS colorを入れるところを、inter-AP通信ではそこにBSS colorを入れる方法がある。あるいはESS colorを入れるフィールドを別途設け、同一ESSの通信であると判断できた場合には、basic NAVではなく、intra-BSS NAVを設定する方法がある。あるいは、MAP TXS TFで設定されたintra-BSS NAVと、TXS RSPにより設定するbasic NAVが同じ期間(すなわちNAVの終了時点が同一)である場合には、TXS RSPにより設定するNAVをbasic NAVの代わりにintra-BSS NAVにするという方法がある。
図22の例では、NAVの種類をbasic NAVからintra-BSS NAVに置き換えるかの判断を行う物理パケット(TXS RSPを格納する)に対し、比較するintra-BSS NAVを設定する物理パケット(MAP TXS TFを格納する)が前に来る。しかし、比較するintra-BSS NAVを設定する物理パケットとして、TXS RSPを格納する物理パケットの後に来る、TFを格納する物理パケットを用いるようにしてもよい。その場合は、TXS RSPにより設定するbasic NAVと、自BSSのSTAに無線リソースを割り当てるTFにより設定されるintra-BSS NAV(自STAのみに割り当てられる場合には保持するタイマー)が同じ期間(すなわちNAVの終了時点が同一)である場合には、TXS RSPにより設定するNAVをbasic NAVの代わりにintra-BSS NAVにする。このように設定される期間が同一である場合に、basic NAVをintra-BSS NAVに変更する際に、前述の直前あるいは直後の制約を組み合わせるようにしてもよい。その場合、直前あるいは直後を判断するために、2フレームの間隔が例えばSIFSのフレーム間隔になっているかを使う。直前がbasic NAVであった場合にだけbasic NAVがintra-BSS NAVに書き換えられるようにするためには、STA21、STA22は、新規にbasic NAVを設定する場合に、例えばそのNAVの開始時点(物理パケットの終了時点)と終了時点を一時的なメモリ(例えば、図2のメモリ94)に格納し、次にintra-BSS NAV(あるいは保持するタイマ)を設定する際の物理パケットの開始時点と前記NAVの開始時点の差分がSIFSであるか、差分がSIFSであった場合にNAVの終了時点が同一になるかを判断する。これらの2つの条件を満たした場合にはSTA21、STA22は、当該basic NAVを設定せず、満たさない場合にはbasic NAVを設定するようにしてもよい。あるいは、STA21、STA22は、新規にbasic NAVを設定する場合に例えば一時的なメモリにそのNAVの終了時点を格納し、次の物理パケットとのフレーム間隔がSIFS以上(比較、設定のための処理時間を上乗せしてもよい)となったら、その格納しておいた情報を削除しつつ、basic NAVの設定を確定し、次の物理パケットのinter-BSS NAV(あるいは保持するタイマ)の終了時点を比較するための情報が残っていればNAVの終了時点が同一になるかを判断し、同一であればbasic NAVは設定せず、同一でなければbasic NAVを設定するようにしてもよい。いずれにせよ、何らか一時的なメモリに情報を保持しておく仕組みが必要である。このようにすることで、自APによって割り当てられたTXOP期間中は割り当てられた無線リソースを保護でき、更にその後他のAPにのみよってTXOPの一部の無線リソースが割り当てられた際にはbasic NAVが設定されることになり割り当てられた無線リソースが保護できる。
このSTA動作例4では、AP1がAP2に一部無線リソースを割り当てた後に、引き続き他のAPに一部無線リソースを割り当てるような場合には、STA動作例1の場合と同様、他のBSSではbasic NAVが設定されてしまう。そのため、各APは共有元APによって割り当てられた時間だけをカバーするようDuration/IDフィールド、TXOPフィールドを設定、また各APに接続するSTAもそのAPに従った設定をするようにする。
このSTA動作例4でも共有元APであるAP1がフレーム交換先頭でCTS-to-selfフレームを送信してからAP2に無線リソースの一部を割当てる場合、STA21とSTA22はbasic NAVを設定してしまい、その後にAP2からTFを受信してもそのTFに応答できない。
その場合の第1の解決方法は、STA21とSTA22は、受信したフレームが例えば同一ESS内のAPから送信されたCTS-to-selfフレームであれば、intra-BSS NAVを設定することである。なお、同一ESS内でもMAP動作が可能なAPが一部に限られる場合は、STA21、STA22は、MAP候補セットのAPから送信されたCTS-to-selfフレームを受信したら、intra-BSS NAVを設定する。
第2の解決方法は、STA21とSTA22は、CTS-to-selfフレームで一旦basic NAVを設定するが、直後すなわちSIFS後に同一送信元が自APにTXOPの無線リソースを割り当てる場合、intra-BSS NAVを設定し、直前のbasic NAVキャンセルすることである。この一旦設定したbasic NAVをキャンセルする方法は、前述のTXS RSPによるbasic NAVをキャンセルする方法と同様である。あるいはTXOPの一部無線リソースを他のAPに割り当てるフレーム送信前のCTS-to-selfフレーム送信を禁止する。
第3の解決方法は、TXOP共有フレーム送信前のCTS-to-selfフレームの送信を禁止することである。これにより、STA21とSTA22は、basic NAVを設定することが禁止され、AP2からTFを受信した場合、そのTFに応答できる。
第4の解決方法は、CTS-to-selfフレームの代わりにRAをESS内のAP群向けにマルチキャストアドレスに設定したCTSフレーム(CTS-to-ESSselfフレーム)を使用することである。この場合は、各APから接続するSTAにESS内のAP群向けマルチキャストアドレスを予め周知しておく必要がある。またSTAはCTSフレームを受信した際に、RAがESS内のAP群向けマルチキャストアドレスに設定されている場合(すなわち自ESS内に向けたCTS-to-ESSselfフレームである場合)には、intra-BSS NAVを設定するようにする。しかしAP1が例えばAP1に接続するSTAとの間で先にフレーム交換をするなど、CTS-to-selfフレームに限らずTXOP全体を予め保護してしまう場合には、STA21とSTA22はそれらのフレーム交換によってbasic NAVを設定してしまい、これらの方法では自APに無線リソースが割り当てられた後に自APからのTFに応答できない。これを最も単純に解決するには、AP1は他のAPにTXOPの一部無線リソースを割り当てる際に制限を設けることが考えられる。例えば、共有元APが構成するBSSが自BSSの場合でも、共有元APが当該TXOPを使う場合、または共有元APが共有元AP自身が構成するBSS内のSTAにTFを送信し、それらのSTAが共有元APに送信する場合であって、それらのSTAが当該TXOPを使う場合には、共有元APと共有先AP、各々で使うTXOPの期間を同一にする。あるいは、共有先APに割り当てた期間の後に当該TXOPを使う、また共有先APにTXOPの一部無線リソースを割り当てたら、以降は共有先APを減らすことはできても増やすことはできないようにする。このようにすれば、各AP下のSTAでbasic NAVにより自APからのTFに応答できないということが回避できる。
<STA動作例5:1つのNAV(APからTXOPを共有するフレームによって設定されたNAVの期間内に自APからTFで自STAに無線リソースが割り当てられたと判断した場合はNAVを無視して応答)>
STA動作例5は、STAが1つのNAVしか持たない場合でも対応する動作例である。STAは共有元APが自APにTXOPの一部無線リソースを共有するフレームを受信した時にNAVを設定するが、STAが共有元APが自APにTXOPの一部無線リソースを共有するフレーム(MAP TXF TF)を受信した後(正確にはそれを格納する物理パケットが無線媒体上で終わる時刻)からの固定時間内に自APからTFを受信し、TFで自STAが割当てられている場合は、当該NAVを無視して応答する。また自APがTFで指定したTXOP(実際には共有元APから割り当てられた共有元APのTXOPの一部時間)内はNAVを無視してTFに応答する動作を継続可能とする。固定時間とは、例えば共有先APが共有元APに共有通知への応答を送信するフレームの占有時間とその前後に要するフレーム間隔の和である。例えばフレームの占有時間が変動する場合にはフレームの占有時間はその期待する最大値などとする。固定時間は図23では少なくともAP2がTXS RSPを送信し、AP2がTFを送信する開始したことを判断する時間以上を確保する必要がある。各フレーム間がSIFSであり、TFの送信開始をTXS RSPからSIFS+スロット時間(=PIFS)で判断できるとするなら、最低でも2×SIFS+TXS RSPを格納する物理パケットの占有時間+スロット時間が固定時間である。TXS RSPを格納する物理パケットの占有時間は伝送レートやフレーム長が可変であれば、変動するので、例えば期待される最大時間が用いられる。例えばこの固定時間は値が規定される。
あるいは、固定時間内の代わりに、CCAがアイドル(すなわち媒体が使われていない)と認識する期間にSIFS以上の空きがないことを条件にNAVを無視して応答してもよい(STA動作例5a)。
図23はSTA動作例5の一例を説明するための図である。AP1がAP2にMAP TXS TFを送信し、SIFS後にAP2がTXS RSPをAP1に送信、さらにそのSIFS後にAP2がSTA21とSTA22にTFを送信する場合、MAP TXS TFとTFの間の時間は2×SIFSとTXS RSPを格納する物理パケットの占有時間との和になる。例えばTXS RSPを格納する物理パケットの占有時間を固定に規定、あるいは想定する最大値に規定し、それを用いるようにすれば、MAP TXS TFの固定時間内に自APからTFを受信したら、STA21、STA22は当該TFに応答できる。また、全ての物理パケットがSIFS間隔で交換されているため、それらを全て観測できるならば、SIFS以上に空いたCCA時間は存在しないことになり、STAはその条件を満足したら自APからTFを受信した場合に応答できるようにする。なお、TXS RSPを格納する物理パケットの占有時間が固定時間内であることを条件にした場合には、自APがまず他のSTAに一部無線リソースを再割り当てし、その後に自STAに再割り当てした場合には固定時間内の条件を満足しないため、STAはTFに応答できないという状況が発生しうる。STA動作例5aではこの状況が発生し得ない。
あるいはTXOPの一部無線リソースを他のAPに共有するフレームに対して自APが応答した場合(MU物理パケットではSTAでの復号が期待できないため、このように自APが応答したかを把握するためには、応答フレームがSU送信される場合に限られる)、あるいはTXOPの一部無線リソースを他のAPに共有するフレームで自APが割り当てられていた場合には、STA21、STA22はそのTXOP内ではNAVを無視して自APからのTFに応答できるようにしてもよい(STA動作例5b)。
あるいはSTA動作例4で記載したように、自APにTXOPの一部無線リソースを共有するフレームによるNAVの終了時点が、その後の固定時間内に自APにより設定されるNAVあるいは保持するタイマの終了時点と同一であれば、STA21、STA22はNAVを無視して自APからのTFに応答するようにしてもよい(STA動作例5c)。この場合の終了時点が同一かの判断に関連する手法はSTA動作例4での記載と同様である。
AP1があるAPに一部無線リソースを割当てた後にさらに他のAPにTXOPの一部無線リソースを割り当てるような場合には、STA動作例5(MAP TXS TFの固定時間内に自STA宛てTFが来るかでNAVを無視するかどうか判断)では、STAは固定時間を超過するとNAVをキャンセルできなくなり、自APからのTFに応答できない。これを回避するためには、例えば、共有元APは共有先APにTXOPの一部無線リソースを割り当てたら、以降は共有先APを減らすことはできても増やすことはできないようにする。
STA動作例5a(SIFS以上のCCAアイドル期間の有無を条件とする場合)では全ての物理パケットが観測できたなら、自APからのTFに応答できないという問題はない。またSTA動作例5b(自APが他のAPからTXOPの一部無線リソースを割り当てられたと判断できる場合にNAV無視)やSTA動作例5c(NAVの終了時点を使って判断する場合)では自APからのTFに応答できないという問題はない。
CTS-to-selfフレームの送信がTXOPの一部無線リソースを他のAPに共有するフレームの送信前にあったとしても、STA動作例5(MAP TXS TFの固定時間内に自STA宛てTFが来るかでNAVを無視するかを判断)ではSTA21、STA22は例えば固定時間にCTS-to-selfフレームを格納する物理パケットの占有時間とTXOPの一部無線リソースを他のAPに共有するフレームの送信前のSIFSも含めるようにすれば、自APからのTFに応答できる。MAP TXS TF前のCTS-to-selfフレームとのフレーム間隔がSIFSだとすると、CTS-to-selfフレーム送信に必要な時間+SIFSまでカバーできるように固定時間は設定される。固定時間には、3×SIFS+CTS-to-selfを格納する物理パケットの占有時間+TXS RSPを格納する物理パケットの占有時間+スロット時間が必要である。CTS-to-selfの送信もあることを加味して、固定時間としては、長めの値を規定しておけばよい。しかし、特別な場合には、STA21、STA22は自APからのTFに応答できない。例えば、TXOPの一部無線リソースを他のAPに共有するフレームの送信前に共有元APと他のSTAとの間で全TXOPを保護するようなフレーム交換を実施する場合には、STA21、STA22はその後の自APのTFに応答できない。これを解決するためにはSTA動作例4での同様な問題時の回避方法がある。なお、STA動作例5a(SIFS以上のCCAアイドル期間の有無をNAVを無視して応答する条件とする場合)やSTA動作例5b(自APが他のAPからTXOPの一部無線リソースを割り当てられたと判断できる場合にNAV無視)、STA動作例5c(NAVの終了時点を使ってNAVを無視するかどうかを判断する場合)ではこのような場合でも、STA21、STA22は自APからのTFに応答できないとう問題はない。
<STA動作例6:3つのNAV>
STA動作例6では、STAに従来のbasic NAV、intra-BSS NAVに加えて新たに3つ目のNAV、ESS NAVを導入する。ESS NAVは、受信したフレーム/物理パケットが自BSS内のフレーム/物理パケットではない(つまりintra-BSS NAVは適用されない)が、同一ESS内のフレーム/物理パケットであると判断した場合に設定するNAVである。従来の2つのNAVを持つSTAは、受信したフレーム/物理パケットが自BSS内のフレーム/物理パケットではない場合には、basic NAVを設定していた。STA動作例6では、STAは自BSS外のフレーム/物理パケットに対し同一ESS内かどうかの識別を追加し、自BSS外のフレーム/物理パケットが同一ESS内のものであると判断した場合にはESS NAVを設定する、そう判断しなかった場合には従来のbasic NAVを設定する、という動作を行う。図24はSTA動作例6におけるSTAのNAV設定の一例を示すフローチャートである。STAは受信したフレーム/物理パケットが自BSS内のフレーム/物理パケットであるかを判断する(ステップS102)。STAは、受信したフレーム/物理パケットが自BSS内のフレーム/物理パケットであると判断した場合、intra-BSS NAVを設定する(ステップS104)。STAは、受信したフレーム/物理パケットが自BSS内のフレーム/物理パケットではあると判断しない場合、受信したフレーム/物理パケットが自ESS内のフレーム/物理パケットであるかを判断する(ステップS106)。STAは、受信したフレーム/物理パケットが自ESS内のフレーム/物理パケットであると判断した場合、ESS NAVを設定する(ステップS108)。STAは、受信したフレーム/物理パケットが自ESS内のフレーム/物理パケットであると判断しない場合、basic NAVを設定する(ステップS110)。
ESS NAVの設定に用いる判断は、前述のintra-BSS NAVを設定する方法と基本的に同様である。STA動作例6でintra-BSS NAVの設定判断に使う情報は、前述のintra-BSS NAVの設定判断に使う情報とは異なる。
STA動作例6では、STAは物理パケットを受信して、復号でき、物理パケットに格納されているMACフレームからアドレスフィールドを抽出できれば、それらのアドレスフィールドに従い、受信したフレームが自ESS内のフレームかを判断する。もしくはそのMACフレームにTAはないがRAがある場合にはそのRAに記載された値とその前に送信権を獲得したTXOP holderのMACアドレスとの関係から、受信したフレームが自ESS内のフレームかを判断する。STAは接続するAPから、自ESS内の他のAPのMACアドレス(すなわち自ESS内の他のBSSのBSSID)を予め取得している。
また、STAは受信した物理パケットを復号できない場合には、物理パケットのヘッダから受信した物理パケットが同一ESS内の通信によるものであるかを判断し、それに基づきESS NAVを設定する。この判断のためには、例えば、前述のようにBSS colorを用いる方法がある。あるいは前述のようにBSS ColorフィールドにESS color値も入れられるようにしてもよい。あるいは、BSS Colorフィールドとは別にESS Colorフィールドを追加した新規物理パケットを定義する場合には、ESS Colorフィールドの値に基づき判断するようにしてもよい。この場合、いずれかのNAVを設定する値としては物理ヘッダのTXOPフィールドの値を用いる。BSS Colorフィールドで特別にESS colorを定義せずに、受信したパケットが同一ESS内の通信に用いられている物理パケットであることを識別するためには、STAは従来の自BSSのBSS colorを把握するだけでなく、同一ESS内の他のBSSのBSS colorも把握しておく必要がある。STAは接続するAPからこれらの情報を取得すればよい。APが同一ESS内の他のBSSのBSS colorを把握するためには、その前段として同一ESS内の他のAPから例えばビーコンフレームやAP間に用いるアクションフレームなどを介して同一ESS内の他のBSSのBSS colorの通知を受けるようにすればよい。例えば同一ESS内であるAPが同一ESS内の他の複数のAPで用いるBSS colorを通知できるようにすれば、APが他のAPから個々にBSS colorを取得する必要がなく、効率化が図れる。
ESS colorを特別に定義し、BSS Colorフィールド内で通知できるようにする場合は、BSS Colorフィールド値に基づき自BSSのBSS colorかを確認する(ステップS102)。BSS Colorフィールドに自BSSのBSS colorが設定されていなければ、BSS Colorフィールドに自ESSのESS colorが設定されているかを確認する(ステップS106)。ESS ColorフィールドをBSS Colorフィールドとは別に設けた新規物理パケットの場合には、まずBSS Colorフィールドに自BSSのBSS colorが設定されているかを判断し(ステップS102)、自BSSのBSS colorが設定されていないと判断した場合に、次にESS Colorフィールドに自ESSのESS colorが設定されているかを判断する(ステップS106)。このESS colorも同一ESS内のAP間で何らかの手法によって決定し、共有し、各APが接続するSTAに周知しておく必要がある。その上で、STAはbasic NAVが設定されていなければ、自APからのTFに応答できる。
図25はこのSTA動作例6の一例を説明するための図である。AP2に接続するSTA21とSTA22は、AP1がAP2と他のAPに対して送信するMAP TXS TFを受信する。この場合のMAP TXS TFのRAはブロードキャストアドレスであり、TAはAP1に設定されている。そこで、STA21とSTA22はMAP TXS TFのTAが自BSSのBSSID(すなわち自APのMACアドレス)ではないが、同一ESS内として認識できる他のBSSのBSSIDの一つ(すなわち同一ESS内として認識できる自AP以外のAPのMACアドレス)であることを検出する。そこで、STA21とSTA22はMAP TXS TFを格納する物理パケットの無線媒体上での終了とともに当該物理パケットの物理ヘッダのTXOPフィールド値を用いてESS NAVを設定する。
その後、AP2はAP1に対し、MAP TXS TFへの応答としてTXS RSPをMU送信する。その際にAP2はMU送信する物理パケットの物理ヘッダのBSS Colorフィールドに例えばESS colorを入れる。例えばAPはAP間通信を行う場合に、使用する物理パケットにBSS Colorフィールドがあれば当該フィールドにはESS colorを入れる、という判断をする。STA21とSTA22はMU送信されたTXS RSPの物理ヘッダのBSS Colorフィールドに、自BSSのBSS colorではないが、自ESSのESS colorが入れられていることを検出し、このTXS RSPを格納する物理パケットの物理ヘッダのTXOPフィールド値を抽出する。先にMAP TXS TFによって設定したESS NAVよりもTXS RSPによって設定するNAVの方が長い場合には、STA21とSTA22はTXS RSPを格納する物理パケットの物理ヘッダのTXOPフィールド値でESS NAVを上書きする。例えばAP2はTXS RSPのDuration/IDフィールド、また物理パケットのTXOPフィールドに、MAP TXS TFによって設定されるNAVと同一の値、すなわちAP1が取得したTXOPの終了時点までをカバーする値を設定する。このような場合には、STA21とSTA22で設定されるESS NAVは、MAP TXS TFによって、AP1が取得したTXOPの終了時点まで設定される。そのため、MAP TXS TFによってESS NAVを上書きする必要はない。
その後、STA21とSTA22がAP2からTFを受信する段階では、STA21とSTA22ではESS NAVしか設定されていないとする。STA21とSTA22はAP2からのTFを受信すると、TFが自BSS内のフレームであることを認識した上で、TFを受信しつつ自STAはTXOP holderではないことから、intra-BSS NAVを設定する。この場合に、STA21とSTA22は(さらにAP2も)TXOP holderはESS NAVを設定したTFがAP1からのTFであると認識する。TF受信時にESS NAVとintra-BSS NAVは設定されているが、basic NAVは設定されていないため、STA21とSTA22はTFに対する応答としてフレーム送信ができる。
STA動作例6であれば、AP1が自BSSや他のAPにTXOPの一部無線リソースを割当て、その後、AP2あるいはAP2を含む複数のAPにTXOPの一部無線リソースを割当てる場合においても、STA21とSTA22は他のAPにTXOPの一部無線リソースが割り当てられている時間は従来のbasic NAVの代わりにESS NAVが設定されることになる。そのため、AP1やそのTXOPの一部無線リソースを割り当てられたAP(AP2を含む)でそのTXOP全体を保護するDuration/IDフィールド、またTXOPフィールドを設定しても問題ない。つまりその期間内にAP2からTFを受信してもSTA21とSTA22は応答送信できる。
またAP1がまずCTS-to-selfフレームなどでTXOPを保護する動作を行っても、STA21とSTA22は従来のbasic NAVの代わりにESS NAVを設定することになり、その後AP2からTFを受信しても応答送信ができる。
図26はbasic NAV、intra-BSS NAV、さらにESS NAVの3つのNAVがどのような設定の場合にSTAで自APからのTFに応答できるか(Trigger frame応答@non-AP STA)を示す。また、図26は合わせて先のAP動作例4で示したAPで他のAPからTXOPの一部無線リソースを割り当てられた場合に応答送信できる条件(MAP応答@AP)も合わせて記載してある。STA側では、従来basic NAVが設定されていたMAP間での通信がESS NAVに置き換わることで、自APからのTF送信に応答できるようになる。
(1)basic NAV、intra-BSS NAV、及びESS NAVがともに0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、TF応答は不可(すなわち、STAは割り当てられた無線リソースを使用できない)、MAP送信は不可(すなわち、APは割り当てられた無線リソースを使用できない)である。
(2)basic NAVとintra-BSS NAVがともに0ではなく(すなわち、設定されている)、ESS NAVが0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は不可であり、TF応答は不可(すなわち、STAは割り当てられた無線リソースを使用できない)、MAP送信は不可(すなわち、APは割り当てられた無線リソースを使用できない)である。
(3)basic NAVとESS NAVがともに0ではなく(すなわち、設定されている)、intra-BSS NAVが0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は不可であり、TF応答は不可(すなわち、STAは割り当てられた無線リソースを使用できない)、MAP送信は不可(すなわち、APは割り当てられた無線リソースを使用できない)である。
(4)basic NAVが0ではなく(すなわち、設定されている)、intra-BSS NAVとESS NAVがともに0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は不可であり、TF応答は不可(すなわち、STAは割り当てられた無線リソースを使用できない)、MAP送信は不可(すなわち、APは割り当てられた無線リソースを使用できない)である。
(5)basic NAVが0であり(すなわち、設定されていない)、intra-BSS NAVとESS NAVがともに0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、TF応答は可(すなわち、STAは割り当てられた無線リソースを使用できる)、MAP送信は不可(すなわち、APは割り当てられた無線リソースを使用できない)である。
(6)basic NAVとESS NAVがともに0であり(すなわち、設定されていない)、intra-BSS NAVが0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、TF応答は可(すなわち、STAは割り当てられた無線リソースを使用できる)、MAP送信は不可(すなわち、APは割り当てられた無線リソースを使用できない)である。
(7)basic NAVとintra-BSS NAVがともに0であり(すなわち、設定されていない)、ESS NAVが0ではない(すなわち、設定されている)場合、送信権の獲得は不可であり、TF応答は可(すなわち、STAは割り当てられた無線リソースを使用できる)、MAP送信は可(すなわち、APは割り当てられた無線リソースを使用できる)である。
(8)basic NAV、intra-BSS NAV、及びESS NAVがともに0である(すなわち、設定されていない)場合、送信権の獲得は可であり、TF応答は可(すなわち、STAは割り当てられた無線リソースを使用できる)、MAP送信は可(すなわち、APは割り当てられた無線リソースを使用できる)である。
このSTA動作例6に、STA動作例2~STA動作例4のように、ESS NAVを設定する際に受信したフレームのフレーム種別をMAP TXS TFに制限したり、さらにその割当先に自APが含まれている制限を加えたりしてもよい。しかし、そうすると、上記で示した、AP1が時分割で異なるAP(またはAP群)にTXOPの一部無線リソースを割当てていく場合に後で割り当てられたAP下のSTAでbasic NAVが設定されてしまうため割り当てられた無線リソースを利用できない、CTS-to-selfフレームによりbasic NAVが設定されてしまうため割り当てられた無線リソースを利用できない、という問題が生じ、前述のような何らかの対策や制限が必要になってくる。
<STA動作例7:basic NAVをtruncateするフレームの導入>
STA動作例1~6まではSTA側でのNAVに対する操作を従来と変えることで、MAP通信下で自APからのTFに対して応答送信できるようにした。しかし、STA動作例7では、従来の手法でbasic NAV設定により自APからのTFに対して応答送信できない状況をbasic NAVを0にリセットするフレームをAP側で送信することで解決するというものである。NAVをリセットすることは、別の表現ではTXOPを断ち切る(truncate)と言う。
NAVをリセットするフレームとしてCF-Endフレームがある。CF-Endフレームは制御フレームの一種である。この従来のCF-Endフレームを受信した場合の動作をまず説明する。
<CF-Endの従来動作>
図27は、CF-Endフレームのフォーマットの一例を示す。CF-EndフレームはFrame Controlフィールド、Durationフィールド、2つのアドレスフィールド、FCSから構成される。Durationフィールドは0にする。最初のアドレスフィールドはRAフィールドで、受信先のアドレスフィールドを入れるが、CF-Endフレームではブロードキャストアドレスが入る。2つ目のアドレスフィールドはBSSID(TA)フィールドで、CF-Endフレームを送信するSTA(APを含む)のMACアドレスが入る。
1つのNAVのみを管理するSTA(APを含む)は、CF-Endフレームを受信すると、NAVが設定されている場合はそのNAVをリセットする。ここで、具体的にNAVをリセットするタイミングはCF-Endフレームを格納する物理パケットの終わりである。なお、802.11ax規格対応のAP(HE AP)で1つのNAVしか管理しない場合には、設定されているNAVが最後に更新された際のフレームが自BSS内の物理パケットによるもので、CF-Endフレームを格納する物理パケットが他BSSからのものと判断した場合でなければ、NAVをリセットすべき、となっている。乃至は逆で設定されているNAVが最後に更新された際のフレームが他BSSからの物理パケットによるもので、CF-Endフレームを格納する物理パケットが自BSS内のものと判断した場合でなければ、NAVをリセットすべき、となっている。
basic NAVとintra-BSS NAVの2つのNAVを管理するSTA(APを含む)はCF-Endフレームを受信すると、CF-Endフレームを格納する物理パケットが他BSSからのものであると判断した場合には、basic NAVをリセットし、CF-Endフレームを格納する物理パケットが自BSS内のものであると判断した場合にはintra-BSS NAVをリセットする。
物理パケットが自BSS内のものか、他BSSからのものかの判断は、前述のように物理パケットの物理ヘッダのBSS Colorフィールドや、物理パケット内に格納されたMACフレームを復号できる場合には、そのMACフレームのアドレスフィールドに基づき(またフレーム種別によってはアドレスフィールドが制限されている関係で過去の履歴も加味して)行う。CF-Endフレームを抽出できた場合には、CF-EndフレームのBSSID(TA)フィールドに記載されたAPのMACアドレスが自APのMACアドレスと同一であるか比較することにより、物理パケットが自BSS内のものか、他BSSからのものか判断すればよい。
前述のSTA動作例6のように、basic NAV、intra-BSS NAV、ESS NAVの3つのNAVを管理するSTAはCF-Endフレームを受信すると、CF-Endフレームを格納する物理パケットが自BSS内のものであると判断した場合にはintra-BSS NAVをリセットし、CF-Endフレームを格納する物理パケットが自BSS内のものではないが同一ESS内のものであると判断した場合にはESS NAVをリセットし、CF-Endフレームを格納する物理パケットが自BSS内のものでも同一ESS内のものでもない、すなわち同一ESS外からのものであると判断した場合にはbasic NAVをリセットするようにすればよい。
同一ESS内であるかどうかは自BSS内かを判断する場合と同様に、物理パケットの物理ヘッダのBSS Colorフィールドや、物理パケット内に格納されたMACフレームを復号できる場合にはそのMACフレームのアドレスフィールドなどに基づき判断すればよい。
STA動作例7の動作説明に戻る。STA動作例7として、ここでは、2つのNAVを管理するSTAに対して、basic NAVをリセットするフレームを使ってSTAがMAP下で自APからのTFに応答送信できるようにする方法を示す。
従来のCF-Endフレームでは、BSSID(TA)フィールドには自APのMACアドレスが入る。従ってCF-Endフレームは2つのNAVを管理する場合には、自BSSのNAV、すなわちintra-BSS NAVをリセットするために送信するという位置づけになり、basic NAVはリセットされずに残る。あるBSSのAPが他のAPのMACアドレスをBSSID(TA)フィールドに設定して送信することはできない。また仮に他のAPのMACアドレスをBSSID(TA)フィールドに設定して送信できたとしても、従来のCF-Endフレームでは他BSSからと判断した場合にbasic NAVをリセットするため、これではTXOPの一部無線リソースを共有元APから割り当てられたAPやそれに接続するSTAだけでなく、周辺の全てのAPやそれに接続するSTAまでbasic NAVをリセットしてしまう。
そこで、STA動作例7ではbasic NAVがリセットされるAPやSTA(リセット対象)を限定するフレームを新たに設ける。このフレームを便宜的にCF-End2フレームとする。CF-End2フレームはCF-Endフレームと同様、制御フレームの一種として扱う。CF-End2フレームはCF-Endフレームとは異なるサブタイプとする。
CF-End2フレームは、フォーマットとしてはCF-Endフレームと同様でよい。Durationフィールドは0に設定する。但し、CF-Endフレームとは異なり、CF-End2フレームではRAフィールドにbasic NAVのリセット対象のBSSのBSSIDを指定する。RAフィールドはBSSIDを指定するフィールドとなるため、RAフィールドと表す代わりにBSSID(RA)フィールドと表すようにしてもよい。RAフィールドに指定された値と同一のBSSIDを持つBSSに所属するSTAは、basic NAVが設定されていたら、それをリセットする動作を行う。仮に対象のBSSのSTAでintra-BSS NAVが設定されていても、それはリセットせずに残す。例えばCF-End2フレームの送信はAPからのみに制限するようにする。その場合、送信するAPはBSSID(TA)フィールドに自分のMACアドレスを設定する。受信したSTAはBSSID(TA)フィールドが自APのMACアドレスである場合にのみ、basic NAVをリセットするようにしてもよい。あるいは、同一ESS内であるAPから他のAPのBSSを対象にしたCF-End2フレームも送信するような使い方を許容するのであれば、受信したSTAはBSSID(TA)フィールドが同一ESS内の他のAPのMACアドレスである場合も、basic NAVをリセットするようにすればよい。この場合、STAは前述の手法などにより予め同一ESS内にある自AP以外のAPのMACアドレスを把握しておく。なお、CF-End2フレームではRAフィールドでbasic NAVをリセットさせる対象となるBSSを指定するだけでBSSID(TA)フィールドを入れないフォーマットにすることも可能である。この場合、受信したSTAはRAフィールドが自BSSのBSSIDと一致していればbasic NAVをリセットする。しかし、これではどのSTAでも他のSTAのbasic NAVをリセットできてしまう。そのため、CF-End2フレームを受信したSTAは、BSSID(TA)フィールドに基づきフレームの送信元アドレスを確認し、BSSID(TA)フィールドがある条件を満たした場合(例えば前述のように自APである場合、あるいは自ESSのAPである場合)にのみ、basic NAVをリセットする動作にしてもよい。CF-End2フレームを受信したSTAで同一ESS内のAPであるかを簡単に把握するために、CF-End2フレームにさらにESSの識別子を入れるフィールドを追加する、あるいはTAフィールドの代わりにこのESSIDを入れるフィールドを入れるようにしてもよい。ESSの識別子は、前述のように通常はSSIDである。そこでSSIDを制御フレームであるCF-End2フレームに入れる場合には、SSIDは可変長の構成であるため、例えばAP動作例1で記載したようにフレームボディ部の最後に入れるようにする。あるいは、長さ情報とSSID値を入れる構成が許容されるなら、SSIDを長さ情報とともに入れる。あるいはESSの識別子として、SSIDとは別に6オクテット固定のESSIDを定義し、このESSIDを用いる。
図28はSTA動作例7の一例を説明するための図である。STA動作例7は、このCF-End2フレームを利用し、MAP下でSTAが自APからのTFに対し送信応答できるようにする例である。AP1がAP2と他のAPのMAP TXS TFを送信する。MAP TXS TFのRAフィールドはブロードキャストアドレスであり、TAフィールドはAP1に設定されているとする。この場合、AP2に接続するSTA21とSTA22はMAP TXS TFを格納する物理パケットを復号できる。STA21とSTA22は、MAP TXS TFを抽出できても、RAフィールドもTAフィールドも自BSSのBSSIDではないため、受信した物理パケットは他BSSの物理パケットであると判断し、basic NAVを設定する。
その後、AP2がAP1からのMAP TXS TFに対してTXS RSPをAP1に対してMU送信する。MU送信された物理パケットの物理ヘッダにAP2が構成するBSSのBSS colorが記載されていない場合、STA21とSTA22は当該物理パケットも他BSSからの物理パケットであると判断し、物理ヘッダのTXOPフィールド値をbasic NAVとして設定するかを判断するため、物理ヘッダのTXOPフィールド値によって設定される期間と先のMAP TXS TFで設定されたbasic NAVの期間とを比較する。AP2が物理ヘッダのTXOPフィールド値にMAP TXS TFでのDuration/IDフィールド値からSIFSとTXS RSPフレームを格納する物理パケットの占有時間長を差し引いた値を設定、すなわちMAP TXS TFによって獲得したTXOPと同じ期間を保護するように設定している場合、STA21とSTA22ですでに設定されているbasic NAVの終了時点とTXS RSPフレームを格納する物理パケットにより示されるNAV値の終了時点は同じであるため、STA21とSTA22はbasic NAVを上書きする必要はない。
次に、AP2は割り当てられた無線リソースをSTA21とSTA22に再割り当てするが、その前にCF-End2フレームを送信してSTA21とSTA22のbasic NAVをリセットする。ここでbasic NAVのリセット対象となるBSSはAP2のBSSであるので、AP2は、AP2のBSSのBSSID(便宜的にこれをBSSID2と図中では表している。BSSID2はAP2のMACアドレスである)をCF-End2フレームのRAフィールドに設定する。図28においてCF-End2フレームに付した括弧内にはRAフィールドの設定状況、すなわちBSSID2に設定してあることが示されている。AP2はCF-End2フレームをAP1から割り当てられた無線リソース内で送信する。STA21とSTA22は前述の説明に従い、CF-End2フレームを受信し、自BSSのBSSIDが指定されていることを把握すると、設定されていたbasic NAVをCF-End2フレームを格納する物理パケットの終わりで0にリセットする。
AP2はCF-End2フレームを送信後、STA21とSTA22に無線リソースを再割り当てするTFを送信する。TFのRAはブロードキャストアドレスであり、TAがAP2に設定されているため、STA21とSTA22はTFを格納する物理パケットは自BSS内の物理パケットであると判断し、その上でTXOP holderではなく受信したフレームがTFであることから、intra-BSS NAVを設定する。STA21とSTA22は、設定したNAVがintra-BSS NAVであることから、TFに対し、SIFS後に例えばデータフレームを送信するなど応答することができる。
図28ではAP2がCF-End2フレームを送信したが、MAP TXS TFがAP2以外のAPにも送信されているとしているので、MAP TXS TFを受信した他のAPでもMU送信でTXS RSPを送信した後に、各々割り当てられた無線リソース内でCF-End2フレームを同様に送信する。AP同士が異なる周波数チャネルをAP1から割り当てられているならば、周波数が異なるために、各APはCF-End2フレームを各々割り当てられた周波数チャネルで送信できる。各AP下のSTAはその割り当てられた周波数チャネル下で待ち受けしていれば、自APからのCF-End2フレームを受信できる。
すでに無線リソースを割り当て済みということからは、共有先APがCF-End2フレームを送信する方が適当ではあるが、共有元のAP1がCF-End2フレームを送信してもよい(図28の破線)。この場合、AP1はAP2のBSS(BSSID2)以外にも他のAPのBSSにおいてもbasic NAVをリセットするようにしなくてはならないため、CF-End2フレームとしては複数のBSSIDを設定できるようにしなければならない。CF-End2フレームは制御フレームであるため、フレーム長が固定、あるいは前半のフィールド内で最終的なフレーム長を予め予想できる制約がなければいけないことを加味すると、例えば固定数のRAフィールドを設けるという方法がある。例えばCF-EndフレームではRAフィールドは1つであったところを、CF-Endフレーム2では4つのRAフィールド、例えばRA1フィールド、RA2フィールド、RA3フィールド、RA4フィールド、を設け、最大4つのBSSIDを指定できるようにする。BSSIDを指定するときには、これらのフィールドを前から順番に使い、使い切らない場合は例えば全て“0”でこれらのフィールド(例えば、6オクテット)を埋めるようにする。前述のように長さ情報を入れられる柔軟な制御フレームの構成が可能になれば、それでも問題はない。あるいは、複数のBSSIDを指定するマルチキャストアドレスを予め設けておき、これをRAに入れる手法もある。これであれば、1つのフィールドで足りる。但し、対象となるBSSIDの組み合わせが複数ある場合には、その分のアドレスを指定しておく必要があり、また予めESS内で周知しておく必要がある。
また、各APが自BSS下のSTAに対してCF-End2フレームを送信する場合、前述のようにCF-End2フレームは新規フレームであることから従来のSTAはそのサブタイプを認識せず、受信してもbasic NAVをリセットするという期待動作をしない。なお、Durationフィールドは0に設定されているため、従来のSTAでCF-End2フレームを受信して新たにbasic NAVが設定される心配はない。このCF-End2フレームという新規フレームは、例えば新規拡張規格対応のSTAで対応必須にする。そうすれば、新規拡張規格対応下でMAPする際に限らず、CF-End2フレームを対象のBSS下のSTAでbasic NAVをリセットするために使うこともできる。この場合は、同一ESS内で、あるAPが他のAPのBSSでのbasic NAVをリセットするためにCF-End2フレームを送信することも可能になる。あるいは、新規拡張規格下でCF-End2フレームへの対応をオプション機能とする。その場合は、STAは自APにアソシエーション要求フレームや再アソシエーション要求フレームを送信する際に、CF-End2フレームへの対応可否を通知し、APでは配下のどのSTAがCF-End2フレームを受信してbasic NAVをリセットできるか予め把握できる。あるいは、新規拡張規格内でMAPをオプション機能とし、MAP対応のSTAではCF-End2フレームへの対応も必須にする。この場合、STAは自APに自APにアソシエーション要求フレームや再アソシエーション要求フレームを送信する際に、MAP対応の可否を通知する。APは配下のどのSTAがMAP対応か、を把握し、MAP対応のSTAのbasic NAVをリセットする目的でCF-End2フレームを送信できる。STAがMAP対応の場合にCF-End2フレームへの対応も必須にするなら、MAP下で自APからのTF送信に応答できるようにするために、他のAPがSTAの属するBSSを対象にCF-End2フレームを送信することもできる。
CF-End2フレームがMAP対応のSTAでのみbasic NAVをリセットする動作をさせることになるのであれば、当然APでMAP下でCF-End2フレームを送信し、さらにその後にTFを送信する場合に、TFで無線リソースを割り当てる対象のSTAとして、MAP対応のSTAのみ、言い換えればCF-End2フレームに対応するSTAのみに制限した方が、TFに応答送信できるSTAが増え、無線リソースの有効利用になる。
このCF-End2フレームを使った方法では、例えばAP1がAP2と他のAPに一部無線リソースを割当てた後に、また別のAP群に一部無線リソースを割当てた際には、STA21とSTA22など最初の割当て対象のAP下のSTAは再びAP1からのMAP TXS TFを受信すること、またそれを受信しなくても新たな対象になったAP群からのTXS RSPを受信することで、再びbasic NAVを設定し、通信を妨害しない。またこの方法では、CTS-to-selfフレームなどにより予めTXOPが保護されている状況でもCF-End2フレームによってその保護を行っているbasic NAVをキャンセルできるために、STAで自APからのTFに応答送信できる。
なお、STA動作例7では、MAPに無関係なフレームで予めbasic NAVが設定されていた場合に、CF-End2フレームによってそれが0で上書きされ、STAが本来保護しなければならなかったフレーム送信を無視して送信してしまい、フレームの衝突が起こってしまう可能性がある。そこで、この問題を解決するSTA動作例7a、7b、7cを以下に示す。
<STA動作例7a:MAP TXS TFによりbasic NAVが設定され、かつそのNAV終了前にCF-End2フレームを受信した場合のみ、basic NAVをリセットする>
解決方法の1つ目の動作例7aでは、共有元APが共有先APに一部無線リソースを割り当てるフレーム(前の例に従えばMAP TXS TF)によって、STAはbasic NAVを設定し、かつそのbasic NAVが切れる、すなわち終了する前に、自BSSが対象となるCF-End2フレームを受信した場合のみ、basic NAVをリセットする。
STA動作例7aの実装方法の例としては、MAP TXF TFによってbasic NAVが設定されたか否かのフラグをSTAで持つようにすることがある。そして、STAは他のフレームあるいは物理パケットでbasic NAVが延長された場合にはそのフラグをオフ状態とする。また、MAP TXS TFを受信した段階ですでにbasic NAVが設定されていれば、STAはそのフラグをオン状態とせず、オフ状態のままとする。その上で、自BSSが対象となるCF-End2フレームを受信した際にこのフラグがオン状態であれば、STAはbasic NAVをリセットする。
但し、STA動作例7aではCTS-to-selfフレームなどで予めTXOPが保護されている場合や他のAPに一部無線リソースが割り当てられた後に自APに一部無線リソースが割り当てられるような場合には、MAP TXS TFより前にbasic NAVが設定される状況になる。その場合にSTAは自APからのTFに応答送信できない。そこで、上述ではMAP TXS TFを受信した段階ですでにbasic NAVが設定されていれば、STAはフラグをオン状態としないとしたが、MAP TXS TFによって設定される想定のbasic NAVと既存のbasic NAVの終了時点が同一であれば、STAはフラグをオン状態とするようにしてもよい。
<STA動作例7b:CF-End2フレームに残りのTXOPをカバーする値を設定し、STAはbasic NAVと終了時刻が同じであればbasic NAVをリセット>
解決方法の2つ目の動作例7bでは、CF-End2フレームに残りのTXOPをカバーする期間を記載し、STAは自BSSが対象となるCF-End2フレームを受信し、設定されているbasic NAVの残り期間とCF-End2フレームに記載されている期間が同一であれば、すなわちCF-End2フレームに記載されている残りのTXOPの終了時点と設定されているbasic NAVの終了時点が同じであれば、basic NAVをリセットする。この残りのTXOPをカバーする期間はCF-Endフレームの場合と同様に設けるDurationフィールドに設定してもよい。CF-EndフレームではDurationフィールドには値として“0”を設定するように定義されているが、CF-End2フレームではDurationフィールドには“1”以上の値を設定できるようにするということになる。これによって従来のSTAではCF-End2フレームのDurationフィールドに設定された値をNAV設定候補として抽出するが、すでに設定されているNAVと同時刻に終わるあるいは早く終わる場合にはNAVの上書きは発生しないため、CF-End2フレームを受信したことによる影響は生じない。あるいは、Durationフィールドは残し、そこはCF-Endフレームと同様にNAVをリセットするという意味で“0”を設定するが、別に新たなフィールド、例えばTXOP Durationフィールド、を設けて、そこで残りのTXOPを記載するようにしてもよい。この場合の新たなフィールドも従来のDuration/IDフィールドと同様、2オクテットとするのが適当である。
共有先APがCF-End2フレームを送信する場合は、共有元APが獲得したTXOPを共有元APが送信するフレーム、例えばMAP TXS TF、により認識し、残りのTXOPをCF-End2フレームに記載する。共有先APは共有元APがTXOP holderであることを認識しているので、共有元APが獲得したTXOPを把握できる。なお、従来はTXOP holderは同じBSS内の送信であった場合にのみ保持するものである。しかし、MAP動作をするAPは他のBSSの送信であっても少なくとも同一ESS内の物理パケットについてはTXOP holderと認識して保持できるものとする。あるいは、MAP動作をするAPは同一ESS内のAPだけはTXOP holderと認識して保持できるようにするのでもよい。
共有元APがCE-End2フレームを送信する場合は、当然共有元AP自身がTXOP holderであるので、残りのTXOPをCF-End2フレームに記載できる。
STAは自BSSを対象とするCF-End2フレームを受信し、basic NAVが設定されている場合にはそのbasic NAVの値とCF-End2フレームに記載されているTXOPの残り期間を比較し、終了時点が同じであれば、すなわち期間が同一であれば、basic NAVをリセットする。
<STA動作例7c:CF-End2フレームにTXOP holderを入れ、STAでの保持情報と合致したときにだけbasic NAVをリセットする>
解決方法の3つ目の動作例7cは、CF-End2フレームを送信するAPが認識しているTXOP holderをCF-End2フレームに記載し、STAはbasic NAVを設定する際にそのNAVを設定する元になったフレームのTXOP holderを抽出・保持しておく。すなわち、STAはNAVを設定する元になったフレームのTAをTXOP holderとして保持する。STAは、そのフレームがCTS-to-selfフレームの場合はRAをTXOP holderとして保持する。STAは、自BSSが対象となるCF-End2フレームを受信し、CF-End2フレームに記載されたTXOP holderと設定されているbasic NAVのTXOP holderとして保持しているMACアドレスが同一と判断すると、basic NAVをリセットする。前述のように、従来はSTAはTXOP holderを自BSS内の送信であった場合にのみ保持するものである。しかし、MAP動作下で自APからのTFに応答送信できるようにするSTAは受信パケットが他のBSSであっても少なくとも同一ESS内の物理パケットであると判断すれば、受信パケットの送信元APをTXOP holderと認識して保持できるものとする。あるいは、STAは同一ESS内のAPだけはTXOP holderと認識して保持できるようにするのでもよい。
例えば、APは、CF-End2フレームのRAフィールドに、前述のようにbasic NAVのリセット対象となるBSSを設定し、送信するAPのアドレスをCF-End2フレームのBSSID(TA)フィールドに設定し、その上で新たにTXOP holderを入れるフィールド、TXOP Holderフィールド、を新たに設けるようにしてもよい。この場合の新たなフィールドは他のアドレスフィールドと同様、6オクテットとするのが適当である。
あるいは、APは、CF-End2フレームのRAフィールドに、basic NAVのリセット対象となるBSSのBSSIDを入れる代わりにTXOP holderのアドレスを入れるようにしてもよい。MAP下で利用されることを考えると、ここに入れるTXOP holderは必ずいずれかのAPであり、APのMACアドレスがBSSIDであることから、BSSIDが入ると言える。なお、この先頭のRAフィールドはTXOP Holderフィールドに改めてもよい。図28のSTA動作例7では、AP2はAP2のBSSIDであるBSSID2をCF-End2フレームのRAフィールドに入れて送信したが、STA動作例7cでは、AP2はAP1のBSSIDであるBSSID1をCF-End2フレームのRAフィールドに入れて送信する。例えば、basic NAVのリセット対象となるBSSのAPがCF-End2フレームを送信するようにすれば、STAはBSSID(TA)フィールドを用いてbasic NAVのリセット対象であるかを判断することができる。AP2がCF-End2フレームを送信する場合、CF-End2フレームのBSSID(TA)にはAP2のMACアドレスであるBSSID2が設定され、AP2自身とAP2に接続するSTAのみがリセット対象となり、それらのAP/STAで保持されているbasic NAVのTXOP holderがCF-End2フレームのRAフィールドに記載されたMACアドレス(ここではBSSID1(AP1))と合致した場合には当該basic NAVをリセットする。
basic NAVが延長されたときには、STAは例えばそのNAVを延長した元になったフレームからTXOP holderを抽出し、保持していたTXOP holderを抽出したTXOP holderで上書きする。
STAはbasic NAVのTXOP holderの保持条件を例えば同一ESS内の物理パケットの受信時に限定する場合、あるいは同一ESS内のAPからの物理パケットの受信時に限定する場合に、TXOP holder保持対象外の物理パケットを受信してbasic NAVを設定する際には、TXOP holder(具体的にはそれ用の記憶領域)は空(void)のままにしておく。TXOP holderが空(void)になるような物理パケットの受信によりbasic NAVが延長される際も、仮にTXOP holderが保持されていたとしてもTXOP holderは空(void)にする。STAはCF-End2フレーム受信時にTXOP holderが保持していなければ(つまり空(void)の状態であれば)、basic NAVをリセットしない。
以下、APまたはSTAの構成について説明する。
図29は、AP400の他の例の機能ブロック図である。AP400は、通信処理部401と、送信部402と、受信部403と、複数、例えば4つのアンテナ42A、42B、42C、42Dと、ネットワーク処理部404と、有線インターフェース(I/F)405と、メモリ406とを備えている。AP400は、有線I/F405を介して、サーバ407と接続されている。通信処理部401は、図2に示したMAC共通処理部70と同様な機能を有している。送信部402は、図2に示した送信処理部80と同様な機能を有している。受信部403は、図2に示した受信処理部90と同様な機能を有している。ネットワーク処理部404は、図2に示した上位処理部10と同様な機能を有している。ここで、通信処理部401は、ネットワーク処理部404との間でデータを受け渡しするためのバッファを内部に保有してもよい。このバッファは、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401とのデータ交換、メモリ406とのデータ書き込み・読み出し、および、有線I/F405を介したサーバ407との通信を制御する。ネットワーク処理部404は、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理やアプリケーション層の処理を行ってもよい。ネットワーク処理部404の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
一例として、通信処理部401は、ベースバンド集積回路に対応し、送信部402と受信部403は、フレームを送受信するRF集積回路に対応する。通信処理部401とネットワーク処理部404とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。送信部402および受信部403のデジタル領域の処理を行う部分とアナログ領域の処理を行う部分とが異なるチップで構成されてもよい。また、通信処理部401が、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理を実行するようにしてもよい。また、アンテナ42A、42B、42C、42Dの個数はここでは4つであるが、少なくとも1つのアンテナを備えていればよい。
メモリ406は、サーバ407から受信したデータや、受信部403で受信したデータの保存等を行う。メモリ406は、例えば、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、メモリ406は、SSDやHDD、SDカード、eMMC等であってもよい。メモリ406が、AP400の外部にあってもよい。
有線I/F405は、サーバ407とのデータの送受信を行う。図29では、サーバ407との通信を有線で行っているが、サーバ407との通信を無線で実行するようにしてもよい。この場合、無線I/Fが、有線I/F405の代わりに用いればよい。
サーバ407は、データの送信を要求するデータ転送要求を受けて、要求されたデータを含む応答を返す通信装置であり、例えばHTTPサーバ(Webサーバ)、FTPサーバ等が想定される。ただし、要求されたデータを返す機能を備えている限り、これに限定されるものではない。PCやスマートフォン等のユーザが操作する通信装置でもよい。また、AP400と無線で通信してもよい。
AP400のBSSに属するSTAが、サーバ407に対するデータの転送要求を発行した場合、このデータ転送要求に関するパケットが、AP400に送信される。AP400は、アンテナ42A、42B、42C、42Dを介してこのパケットを受信し、受信部403で物理層の処理等を、通信処理部401でMAC層の処理等を実行する。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401から受信したパケットの解析を行う。具体的には、宛先IPアドレス、宛先ポート番号等を確認する。パケットのデータがHTTPGETリクエストのようなデータ転送要求である場合、ネットワーク処理部404は、このデータ転送要求で要求されたデータ(例えば、HTTPGETリクエストで要求されたURLに存在するデータ)が、メモリ406にキャッシュ(記憶)されているかを確認する。メモリ406には、URL(またはその縮小表現、例えばハッシュ値や、代替となる識別子)とデータとを対応づけたテーブルが格納されている。ここで、データがメモリ406にキャッシュされていることを、メモリ406にキャッシュデータが存在すると表現する。
メモリ406にキャッシュデータが存在しない場合、ネットワーク処理部404は、有線I/F405を介して、サーバ407に対してデータ転送要求を送信する。つまり、ネットワーク処理部404は、STAの代理として、サーバ407へデータ転送要求を送信する。具体的には、ネットワーク処理部404は、HTTPリクエストを生成し、TCP/IPヘッダの付加などのプロトコル処理を行い、パケットを有線I/F405へ渡す。有線I/F405は、受け取ったパケットをサーバ407へ送信する。
有線I/F405は、データ転送要求に対する応答であるパケットをサーバ407から受信する。ネットワーク処理部404は、有線I/F405を介して受信したパケットのIPヘッダから、STA宛のパケットであることを把握し、通信処理部401へパケットを渡す。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を実行し、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A、42B、42C、42Dから送信する。ここで、ネットワーク処理部404は、サーバ407から受信したデータを、URL(またはその縮小表現)と対応づけて、メモリ406にキャッシュデータとして保存する。
メモリ406にキャッシュデータが存在する場合、ネットワーク処理部404は、データ転送要求で要求されたデータをメモリ406から読み出して、このデータを通信処理部401へ送信する。具体的には、メモリ406から読み出したデータにHTTPヘッダ等を付加して、TCP/IPヘッダの付加等のプロトコル処理を行い、通信処理部401へパケットを送信する。このとき、一例として、パケットの送信元IPアドレスは、サーバ407と同じIPアドレスに設定し、送信元ポート番号もサーバ407と同じポート番号(サーバ407に対するデータの転送要求を発行したSTAが送信するパケットの宛先ポート番号)に設定する。したがって、STAから見れば、あたかもサーバ407と通信をしているかのように見える。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を実行し、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A、42B、42C、42Dから送信する。
このような動作により、頻繁にアクセスされるデータは、メモリ406に保存されたキャッシュデータに基づいて応答することになり、サーバ407とAP400間のトラフィックを削減できる。なお、ネットワーク処理部404の動作は、上述の動作に限定されるものではない。STAの代わりにサーバ407からデータを取得して、メモリ406にデータをキャッシュし、同一のデータに対するデータ転送要求に対しては、メモリ406のキャッシュデータから応答するような一般的なキャッシュプロキシであれば、別の動作でも問題はない。
AP400を、図1から図28を参照して説明したAPとして適用することが可能である。図1から図28を参照して説明したフレーム、データまたはパケットの送信を、メモリ406に保存されたキャッシュデータを用いて実行してもよい。また、図1から図28を参照して説明したAPが受信したフレーム、データまたはパケットで得られた情報を、メモリ406にキャッシュしてもよい。図1から図28を参照して説明したAPが送信するフレームは、キャッシュされたデータまたは当該データに基づく情報を含んでもよい。データに基づく情報は、例えばSTA宛のデータの有無の情報、データのサイズに関する情報、データの送信に必要なパケットのサイズに関する情報でもよい。またデータの送信に必要な変調方式等の情報でもよい。
図29は、キャッシュ機能を備えたAPについて説明を行ったが、図29と同じブロック構成で、キャッシュ機能を備えたSTAを実現することもできる。ここでいうSTAは、non-AP STAである(前述したようにAPも無線通信装置の一形態である)。この場合、有線I/F405を省略してもよい。図1から図28を参照して説明したSTAによるフレーム、データまたはパケットの送信を、メモリ406に保存されたキャッシュデータを用いて実行してもよい。また、図1から図28を参照して説明したSTAが受信したフレーム、データまたはパケットで得られた情報を、メモリ406にキャッシュしてもよい。図1から図28を参照して説明したSTAが送信するフレームは、キャッシュされたデータまたは当該データに基づく情報を含んでもよい。データに基づく情報は、例えば送信するデータの有無の情報、データのサイズに関する情報、データの送信に必要なパケットのサイズに関する情報でもよい。またデータの送信に必要な変調方式等の情報でもよい。
図30は、STA(non-AP STA)またはAPの一例の全体構成例を示したものである。この構成例は一例であり、構成例はこれに限定されるものではない。STAまたはAPは、1つまたは複数のアンテナ147~147(nは1以上の整数)と、無線LANモジュール(または無線通信装置)148と、ホストシステム149を備える。無線LANモジュール148は、ホスト・インターフェースを備え、ホスト・インターフェースで、ホストシステム149と接続される。無線LANモジュール148は、接続ケーブルを介してホストシステム149と接続される他、ホストシステム149と直接接続されてもよい。また、無線LANモジュール148が基板にはんだ等で実装され、基板の配線を介してホストシステム149と接続される構成も可能である。ホストシステム149は、任意の通信プロトコルに従って、無線LANモジュール148およびアンテナ147~147を用いて、外部の装置と通信を行う。通信プロトコルは、TCP/IPと、それより上位の層のプロトコルと、を含んでもよい。または、TCP/IPは無線LANモジュール148に搭載し、ホストシステム149は、それより上位層のプロトコルのみを実行してもよい。この場合、ホストシステム149の構成を簡単化できる。図30に示すSTAは、例えば、移動体STA、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置、自動車等でもよい。無線LANモジュール148は、IEEE802.11に加え、LTE(LongTermEvolution)またはLTE-Advanced(standardsformobilephones)のような他の無線通信規格の機能を備えていてもよい。
図31は、無線LANモジュール148のハードウェア構成例を示す。この構成は、無線LANモジュール148がnon-AP STAおよびAPのいずれに搭載される場合にも適用可能である。この構成例では、アンテナは1本のみであるが、2本以上のアンテナを備えていてもよい。この場合、各アンテナに対応して、送信系統(216、222~225)、受信系統(217、232~235)、PLL242、水晶発振器(基準信号源)243およびスイッチ245のセットが複数配置され、各セットがそれぞれベースバンド回路212に接続されてもよい。PLL242または水晶発振器243またはこれらの両方は、発振器に対応する。
無線LANモジュールは、ベースバンドIC(IntegratedCircuit)211と、RF(RadioFrequency)IC221と、バラン225と、スイッチ245と、アンテナ247とを備える。
ベースバンドIC211は、ベースバンド回路(制御回路)212、メモリ213、ホスト・インターフェース214、CPU215、DAC(DigitaltoAnalogConveter)216、およびADC(AnalogtoDigitalConverter)217を備える。
ベースバンドIC211とRFIC221は同じ基板上に形成されてもよい。また、ベースバンドIC211とRFIC221は1チップで構成されてもよい。DAC216およびADC217の両方またはいずれか一方が、RFIC221に配置されてもよいし、別のICに配置されてもよい。またメモリ213およびCPU215の両方またはいずれか一方が、ベースバンドICとは別のICに配置されてもよい。
メモリ213は、ホストシステムとの間で受け渡しするデータを格納する。またメモリ213は、STAまたはAPに通知する情報、またはSTAまたはAPから通知された情報、またはこれらの両方を格納する。また、メモリ213は、CPU215の実行に必要なプログラムを記憶し、CPU215がプログラムを実行する際の作業領域として利用されてもよい。メモリ213はSRAM、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ホスト・インターフェース214は、ホストシステムと接続するためのインターフェースである。インターフェースは、UART、SPI、SDIO、USB、PCIExpressなど何でも良い。
CPU215は、プログラムを実行することによりベースバンド回路212を制御するプロセッサである。ベースバンド回路212は、主にMAC層の処理および物理層の処理を行う。ベースバンド回路212、CPU215またはこれらの両方は、通信を制御する通信制御装置、または通信を制御する制御部に対応する。
ベースバンド回路212およびCPU215の少なくとも一方は、クロックを生成するクロック生成部を含み、当該クロック生成部で生成するクロックにより、内部時間を管理してもよい。
ベースバンド回路212は、送信するフレームに、物理層の処理として、物理ヘッダの付加、符号化、暗号化、変調処理など行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。
DAC216は、ベースバンド回路212から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DAC216はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、デジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。複数のアンテナを備え、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDAC等を設けてもよい。
RFIC221は、一例としてRFアナログICあるいは高周波IC、あるいはこれらの両方である。RFIC221は、フィルタ222、ミキサ223、プリアンプ(PA)224、PLL(PhaseLockedLoop;位相同期回路)242、低雑音増幅器(LNA)、バラン235、ミキサ233、およびフィルタ232を備える。これらの要素のいくつかが、ベースバンドIC211または別のIC上に配置されてもよい。フィルタ222、232は、帯域通過フィルタでも、低域通過フィルタでもよい。
フィルタ222は、DAC216から入力されるアナログI信号およびアナログQ信号のそれぞれから所望帯域の信号を抽出する。PLL242は、水晶発振器243から入力される発振信号を用い、発振信号を分周または逓倍またはこれらの両方を行うことで、入力信号の位相に同期した、一定周波数の信号を生成する。なお、PLL242は、VCO(VoltageControlledOscillator)を備え、水晶発振器243から入力される発振信号に基づき、VCOを利用してフィードバック制御を行うことで、当該一定周波数の信号を得る。生成した一定周波数の信号は、ミキサ223およびミキサ233に入力される。PLL242は、一定周波数の信号を生成する発振器の一例に相当する。
ミキサ223は、フィルタ222を通過したアナログI信号およびアナログQ信号を、PLL242から供給される一定周波数の信号を利用して、無線周波数にアップコンバートする。プリアンプ(PA)は、ミキサ223で生成された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号を、所望の出力電力まで増幅する。バラン225は、平衡信号(差動信号)を不平衡信号(シングルエンド信号)に変換するための変換器である。RFIC221では平衡信号が扱われるが、RFIC221の出力からアンテナ247までは不平衡信号が扱われるため、バラン225で、これらの信号変換を行う。
スイッチ245は、送信時は、送信側のバラン225に接続され、受信時は、受信側のバラン235またはRFIC221に接続される。スイッチ245の制御はベースバンドIC211またはRFIC221により行われてもよいし、スイッチ245を制御する別の回路が存在し、当該回路からスイッチ245の制御を行ってもよい。
プリアンプ224で増幅された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号は、バラン225で平衡-不平衡変換された後、アンテナ247から空間に電波として放射される。
アンテナ247は、チップアンテナでもよいし、プリント基板上に配線により形成したアンテナでもよいし、線状の導体素子を利用して形成したアンテナでもよい。
RFIC221におけるLNA234は、アンテナ247からスイッチ245を介して受信した信号を、雑音を低く抑えたまま、復調可能なレベルまで増幅する。バラン235は、低雑音増幅器(LNA)234で増幅された信号を、不平衡-平衡変換する。ミキサ233は、バラン235で平衡信号に変換された受信信号を、PLL242から入力される一定周波数の信号を用いてベースバンドにダウンコンバートする。より詳細には、ミキサ233は、PLL242から入力される一定周波数の信号に基づき、互いに90°位相のずれた搬送波を生成する手段を有し、バラン235で変換された受信信号を、互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In-phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad-phase)信号とを生成する。フィルタ232は、これらI信号とQ信号から所望周波数成分の信号を抽出する。フィルタ232で抽出されたI信号およびQ信号は、ゲインが調整された後に、RFIC221から出力される。
ベースバンドIC211におけるADC217は、RFIC221からの入力信号をAD変換する。より詳細には、ADC217はI信号をデジタルI信号に変換し、Q信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もあり得る。
複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のADCを設けてもよい。ベースバンド回路212は、デジタルI信号およびデジタルQ信号に基づき、復調処理、誤り訂正符号処理、物理ヘッダの処理など、物理層の処理等を行い、フレームを得る。ベースバンド回路212は、フレームに対してMAC層の処理を行う。なお、ベースバンド回路212は、TCP/IPを実装している場合は、TCP/IPの処理を行う構成も可能である。
図32(a)および図32(b)は、それぞれ無線STAの他の二例の斜視図である。図32(a)の無線STAはノートPC301であり、図32(b)の無線STAは移動体端末321である。ノートPC301および移動体端末321は、それぞれ無線通信装置305、315を搭載している。無線通信装置305、315として、これまで説明してきたSTAに搭載されていた無線通信装置、またはAPに搭載されていた無線通信装置、またはこれらの両方を用いることができる。無線通信装置を搭載する無線STAは、ノートPCや移動体端末に限定されない。例えば、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置、自動車等にも無線STAを搭載可能である。
また、無線STAまたはAP、またはこれらの両方に搭載されていた無線通信装置は、メモリカードにも搭載可能である。当該無線通信装置をメモリカードに搭載した例を図33に示す。メモリカード331は、無線通信装置355と、メモリカード本体332とを含む。メモリカード331は、外部の装置(無線STAまたはAP、またはこれらの両方等)との無線通信のために無線通信装置335を利用する。なお、図33では、メモリカード331内の他の要素(例えばメモリ等)の記載は省略している。
無線通信装置(APの無線通信装置または無線STAの無線通信装置、またはこれらの両方)の他の例を説明する。他の例は、バス、プロセッサ部、及び外部インターフェース部を備えてもよい。プロセッサ部及び外部インターフェース部は、バスを介して外部メモリ(バッファ)と接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。ファームウエアが動作するプロセッサ部は、処理部または処理部の処理を行うプロセッサであってもよいし、当該処理の機能拡張または変更に係る処理を行う別のプロセッサであってもよい。ファームウエアが動作するプロセッサ部を、APあるいは無線STAあるいはこれらの両方が備えてもよい。または当該プロセッサ部を、APに搭載される無線通信装置内の集積回路、または無線STAに搭載される無線通信装置内の集積回路が備えてもよい。
上述した実施形態に係る無線通信装置(APの無線通信装置または無線STAの無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、クロック生成部を備えてもよい。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
上述した実施形態に係る無線通信装置(APの無線通信装置または無線STAの無線通信装置)の構成に加えて、電源部、電源制御部、及び無線電力給電部を含んでもよい。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含んでもよい。SIMカードは、例えば無線通信装置における制御部と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含んでもよい。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
上述した実施形態に係る無線通信装置(APの無線通信装置または無線STAの無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、LED部を含んでもよい。LED部は、送信部または受信部または制御部またはこれらのうちの複数と接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
上述した実施形態に係る無線通信装置(APの無線通信装置または無線STAの無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バイブレータ部を含んでもよい。バイブレータ部は、例えば無線通信装置における制御部と接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
上述した実施形態に係る無線通信装置(APの無線通信装置または無線STAの無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、ディスプレイを含んでもよい。ディスプレイは、図示しないバスを介して、無線通信装置の制御部に接続されてもよい。このようにディスプレイを備える構成とし、無線通信装置の動作状態をディスプレイに表示することで、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
次に、[1]無線通信システムにおけるフレーム種別、[2]無線通信装置間の接続切断の手法、[3]無線LANシステムのアクセス方式、[4]無線LANのフレーム間隔について説明する。
[1]通信システムにおけるフレーム種別一般的に無線通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、前述したように、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。IEEE802.11規格では、フレーム種別の識別は、MACフレームのフレームヘッダ部にあるFrameControlフィールドの中のType、Subtypeという2つのフィールドで行う。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別、例えば管理フレームの中のビーコンフレームといった識別はSubtypeフィールドで行われる。
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。応答フレームは、例えばACKフレームやBlockACKフレームである。またRTSフレームやCTSフレームも制御フレームである。
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、IEEE802.11規格(前述のIEEEStd802.11ac-2013などの拡張規格を含む)では接続確立の手順の1つとしてアソシエーション(association)プロセスがあるが、その中で使われるAssociationRequestフレームとAssociationResponseフレームが管理フレームであり、AssociationRequestフレームやAssociationResponseフレームはユニキャストの管理フレームであることから、受信側無線通信装置に応答フレームであるACKフレームの送信を要求し、このACKフレームは上述のように制御フレームである。
[2]無線通信装置間の接続切断の手法接続の切断(リリース)には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続を確立している無線通信装置間のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。IEEE802.11規格ではDeauthenticationフレームがこれに当たり、管理フレームに分類される。通常、接続を切断するフレームを送信する側の無線通信装置では当該フレームを送信した時点で、接続を切断するフレームを受信する側の無線通信装置では当該フレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、非APの無線通信装置であれば通信フェーズでの初期状態、例えば接続するBSS探索する状態に戻る。無線通信APがある無線通信装置との間の接続を切断した場合には、例えば無線通信APが自BSSに加入する無線通信装置を管理する接続管理テーブルを持っているならば当該接続管理テーブルから当該無線通信装置に係る情報を削除する。例えば、無線通信APが自BSSに加入する各無線通信装置に接続をアソシエーションプロセスで許可した段階で、AIDを割り当てる場合には、当該接続を切断した無線通信装置のAIDに関連づけられた保持情報を削除し、当該AIDに関してはリリースして他の新規加入する無線通信装置に割り当てられるようにしてもよい。
一方、暗示的な手法としては、接続を確立した接続相手の無線通信装置から一定期間フレーム送信(データフレーム及び管理フレームの送信、あるいは自装置が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、接続を切断するフレームの受信を期待できないからである。
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマーを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマー(例えばデータフレーム用の再送タイマー)を起動し、第1のタイマーが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマーは止められる。
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマーが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。第1のタイマーと同様、第2のタイマーでも、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。
あるいは、接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマーを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマーを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマーが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。この場合も、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。この場合も、接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマーは、ここでは第2のタイマーとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマーを用いるようにしてもよい。
[3]無線LANシステムのアクセス方式例えば、複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した無線LANシステムがある。IEEE802.11無線LANではCSMA/CA(CarrierSenseMultipleAccesswithCarrierAvoidance)をアクセス方式の基本としている。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線通信装置が1つなら無線通信装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線通信装置間で公平になることから、CarrierAvoidanceを採用した方式は、複数の無線通信装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
[4]無線LANのフレーム間隔IEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributedcoordinationfunctioninterframespace(DIFS)、arbitrationinterframespace(AIFS)、pointcoordinationfunctioninterframespace(PIFS)、shortinterframespace(SIFS)、extendedinterframespace(EIFS)、reducedinterframespace(RIFS)などがある。
フレーム間隔の定義は、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするため、このような定義になっているといえる。
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(TrafficIdentifier;TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(QualityofService)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(AccessCategory;AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFS及びAIFSのいずれの値よりも期間が短い。SIFSは、応答系の制御フレームの送信時あるいは送信権を一旦獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。EIFSはフレーム受信に失敗した(受信したフレームがエラーであると判定した)場合に起動されるフレーム間隔である。
RIFSは送信権を一旦獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を図34に示す。
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busymedium)と認識する場合を想定する。この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(randombackoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。なお、キャリアセンスの結果、媒体がビジーではない、つまり媒体がアイドル(idle)であると認識した場合には、キャリアセンスを開始した時点から固定時間のAIFSを空けて、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(ContentionWindow;CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxとの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功し、かつ当該データフレームが応答フレームの送信を要求するフレームであるとそのデータフレームを内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたW_ACK1を内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
AIFS、DIFS、PIFS及びEIFSは、SIFSとスロット時間との関数になるが、SIFSとスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWmin及びCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasicServiceSet(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
例えば、802.11acの規格策定では、SIFSは16μs、スロット時間は9μsであるとして、それによってPIFSは25μs、DIFSは34μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBACKGROUND(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が79μs、BESTEFFORT(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が43μs、VIDEO(AC_VI)とVOICE(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が34μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは31と1023、AC_VIでは15と31、AC_VOでは7と15になるとする。なお、EIFSは、基本的にはSIFSとDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。なお効率的なEIFSの取り方ができる無線通信装置では、EIFSを起動した物理パケットへの応答フレームを運ぶ物理パケットの占有時間長を推定し、SIFSとDIFSとその推定時間の和とすることもできる。
なお、各実施形態で記載されているフレームは、NullDataPacketなど、IEEE802.11規格または準拠する規格で、パケットと呼ばれるものを指してもよい。
また、複数のSTAが多重送信するフレームは、異なる内容のフレームであっても、同一の内容のフレームでもよい。一般的な表現として、複数のSTAが第Xのフレームを送信または受信すると表現するとき、これらの第Xのフレームの内容は同じであっても、異なってもよい。Xは任意の値である。
本実施形態で用いられる用語は、広く解釈されるべきである。例えば用語“プロセッサ”は、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシンなどを包含してもよい。状況によって、“プロセッサ”は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路(PLD)などを指してもよい。“プロセッサ”は、複数のマイクロプロセッサのような処理装置の組み合わせ、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサを指してもよい。
別の例として、用語“メモリ”は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を包含してもよい。“メモリ”は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、磁気または光学データストレージを指してもよく、これらはプロセッサによって読み出し可能である。プロセッサがメモリに対して情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、メモリはプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。メモリは、プロセッサに統合されてもよく、この場合も、メモリは、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。また、回路は、単一チップに配置された複数の回路でもよいし、複数のチップまたは複数の装置に分散して配置された1つ以上の回路でもよい。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
AP…基地局、STA…端末、10…上位処理部、20…MAC処理部、30…PHY処理部、40…MAC/PHY管理部、50…アナログ処理部、60…アンテナ、70…MAC共通処理部、80…送信処理部、90…受信処理部。

Claims (13)

  1. メモリと、
    前記メモリに接続される処理部と、
    を具備し、
    第1無線通信グループに収納される無線通信装置であって、
    前記第1無線通信グループは第2無線通信グループとともに拡張無線通信グループを構成し、
    前記処理部は、
    第1パラメータと第2パラメータと第3パラメータを前記メモリに格納し、
    受信したパケットが前記第1無線通信グループに収納される無線通信装置から送信されたパケットであると把握した場合、前記第1パラメータを更新し、
    前記受信したパケットが前記第1無線通信グループに収納される無線通信装置から送信されたパケットであると把握しない場合、かつ前記受信したパケットが前記拡張無線通信グループに収納される無線通信装置から送信されたパケットであると把握した場合、前記第2パラメータを更新し、
    前記受信したパケットが前記第1無線通信グループに収納される無線通信装置から送信されたパケットであると把握しない場合、かつ前記受信したパケットが前記拡張無線通信グループに収納される無線通信装置から送信されたパケットであると把握しない場合、前記第3パラメータを更新し、
    前記第1パラメータと前記第2パラメータと前記第3パラメータに基づいてパケットを通信するかを決定する、無線通信装置。
  2. 前記無線通信装置は、IEEE802.11ax規格に準拠する無線通信装置であり、
    前記処理部は、受信したフレームに含まれるDuration/IDフィールドに基づいて前記第1パラメータと前記第2パラメータと前記第3パラメータを設定する、請求項1記載の無線通信装置。
  3. 前記無線通信装置は、IEEE802.11ax規格に準拠する無線通信装置であり、
    前記処理部は、short interframe spaceという固定時間とPS-Pollフレームへの応答として送信されるAckフレームが無線通信媒体を占有する推定時間との和に基づいて前記第1パラメータと前記第2パラメータと前記第3パラメータを設定する、請求項1記載の無線通信装置。
  4. 前記第1パラメータと前記第2パラメータと前記第3パラメータは、他の無線通信装置がパケットの送信権の獲得を延期する時間を表し、
    前記処理部は、更新前の第1パラメータが表す時間より更新後の第1パラメータが表す時間の方が長い場合、前記第1パラメータを更新する、請求項1記載の無線通信装置。
  5. 前記第3パラメータが0であり、前記第1パラメータと前記第2パラメータとがともに0ではない場合、前記処理部は、パケットの送信権の獲得が不可能であり、
    前記無線通信装置がデータ転送機能を有しない第1無線通信装置である場合、前記処理部は、他の無線通信装置から割り当てられた媒体の使用が可能であり、前記無線通信装置がデータ転送機能を有する第2無線通信装置である場合、前記処理部は、他の無線通信装置から割り当てられた媒体の使用が不可能である、請求項1記載の無線通信装置。
  6. 前記第1パラメータと前記第2パラメータと前記第3パラメータとがともに0である場合、前記処理部は、パケットの送信権の獲得が可能であり、他の無線通信装置から割り当てられた媒体の使用が可能である、請求項1記載の無線通信装置。
  7. メモリと、
    前記メモリに接続される処理部と、
    を具備し、
    第1無線通信グループに収納される無線通信装置であって、
    前記第1無線通信グループは第2無線通信グループとともに拡張無線通信グループを構成し、
    前記処理部は、
    第2パラメータと第3パラメータを前記メモリに格納し、
    受信したパケットが前記拡張無線通信グループに収納される無線通信装置から送信されたパケットであると把握した場合、前記第2パラメータを更新し、
    前記受信したパケットが前記拡張無線通信グループに収納される無線通信装置から送信されたパケットであると把握しない場合、前記第3パラメータを更新し、
    前記第2パラメータと前記第3パラメータに基づいてパケットを送信するかを決定する、無線通信装置。
  8. 前記第2パラメータと前記第3パラメータとがともに0ではない場合、前記処理部は、パケットの送信権の獲得が不可能であり、他の無線通信装置から割り当てられた媒体の使用が不可能である 、請求項7記載の無線通信装置。
  9. 前記第2パラメータが0ではなく、前記第3パラメータが0である場合、前記処理部は、パケットの送信権の獲得が不可であり、他の無線通信装置から割り当てられた媒体の使用が可能である 、請求項7記載の無線通信装置。
  10. 前記第2パラメータと前記第3パラメータとがともに0である場合、前記処理部は、パケットの送信権の獲得が可能であり、他の無線通信装置から割り当てられた媒体の使用が可能である 、請求項7記載の無線通信装置。
  11. メモリと、
    前記メモリに接続される処理部と、
    を具備し、
    第1無線通信グループに収納される無線通信装置であって、
    前記第1無線通信グループは第2無線通信グループとともに拡張無線通信グループを構成し、
    前記処理部は、
    第1パラメータと第3パラメータを前記メモリに格納し、
    受信したパケットが前記拡張無線通信グループに収納される無線通信装置から送信されたパケットであると把握した場合、前記第1パラメータを更新し、
    前記受信したパケットが前記拡張無線通信グループに収納される無線通信装置から送信されたパケットであると把握しない場合、前記第3パラメータを更新し、
    前記第1パラメータと前記第3パラメータに基づいてパケットを通信するかを決定する、無線通信装置。
  12. 前記処理部は、前記無線通信装置がデータ転送機能を有する第2無線通信装置である場合、前記拡張無線通信グループ内のデータ転送機能を有する第3無線通信装置から送信された第1無線通信媒体割り当てフレームを受信し、前記第1パラメータが0でなく、前記第3パラメータが0である場合、前記第1無線通信媒体割り当てフレームへの応答を前記第3無線通信装置へ送信し、第2無線通信媒体割り当てフレームを前記拡張無線通信グループ内のデータ転送機能を有しない少なくとも1つの第4無線通信装置へ送信する、請求項11記載の無線通信装置。
  13. 前記第1パラメータが0ではなく、前記第3パラメータが0である場合、前記処理部は、前記パケットの送信が可能である、請求項11記載の無線通信装置。
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