JP2023081371A - カートリッジ式中空糸膜モジュール - Google Patents

カートリッジ式中空糸膜モジュール Download PDF

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Kosaku Takeuchi
柳橋真人
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Abstract

【課題】食品、医薬品用途に使用される蒸気滅菌を適用してもポッティング剤へのクラックによるリークおよび雑菌汚染を防止できるカートリッジ式中空糸膜モジュールを提供すること。【解決手段】ハウジングと、カートリッジを有するカートリッジ式中空糸膜モジュールにおいて、カートリッジが、複数の中空糸膜と、第1および第2ポッティング部とを備え、ハウジングはその内部に、カートリッジを支持するつば支持部Aおよび傾斜支持部Bを有し、カートリッジは、つば支持部Aと当接するつば部A‘と、カートリッジ式中空糸膜モジュール内の温度変化によって可逆的に傾斜支持部Bと当接する傾斜部B’を有し、25℃では支持部Bと傾斜部B‘の径方向の間にクリアランスが生じ、温度80℃で傾斜支持部B‘と記支持部Bとが当接する。【選択図】図1

Description

本発明は、水処理分野、発酵工業分野、医薬品製造分野、食品工業分野などで使用するカートリッジ式中空糸膜モジュールに関するものである。
膜分離法は、飲料水製造、浄水処理、排水処理等の水処理分野、微生物や培養細胞の培養を伴う発酵分野、食品工業分野等、様々な方面で利用されている。これらの中でも、食品、医薬品用途に使用される中空糸膜モジュールは、モジュール内の微生物の増殖を抑えるために温水または飽和水蒸気を利用した熱処理が行われる。
中空糸膜モジュールにおいては、中空糸膜間が樹脂で接着されており、この樹脂はポッティング部と呼ばれる。中空糸膜モジュールを熱処理すると、ポッティング部に用いられる樹脂の強度が低下する。また、繰り返し熱処理を行うとポッティング部が熱膨張と収縮を繰り返すことでポッティング部にひずみが蓄積する。そのため、ポッティング部には変形や破損のリスクがあり、高い耐熱性が要求される。
特許文献1では、筐体と、筐体内に収容された中空糸膜カートリッジとを有するカートリッジ式中空糸膜モジュールが開示されている。このモジュールでは、ポッティング部と筐体とがシール材で液密に固定されている。また、ポッティング部が内層と外層とを有する2層構造を有しており、外層をガラス転移温度が80℃以上のエポキシ樹脂で形成されることで、高温液のろ過または逆圧洗浄時に発生する応力によって鍔部にクラックが発生しにくくなることが開示されている。
国際公開第2015/046430号
本発明者らが検討したところ、従来の中空糸膜モジュールにおいて、熱処理条件または熱処理の繰り返し回数によっては、ポッティング部、特につば部にクラックが生じ得ることが分かった。その理由として、つば部には、筐体内で固定された中空糸膜カートリッジの重さが集中するため、他の部分よりもより大きな応力負荷がかかるためであると考えられる。
本発明は、熱処理によってもポッティング部にクラックが生じにくいカートリッジ式中空糸膜モジュールを提供する。
本発明者らは、ポッティング部の強度が低下する高温条件下において、ポッティング部が支持される箇所を増やすことで、ポッティング部のクラックを抑制できることを見出した。係る課題を解決するため、本発明は、中空糸膜カートリッジと、前記中空糸膜カートリッジを収容可能なハウジングと、を備えるカートリッジ式中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜カートリッジは、複数の中空糸膜と、第1端で前記中空糸膜間を接着する第1ポッティング部と、第2端で前記中空糸膜間を接着する第2ポッティング部と、前記第1ポッティング部の側面に設けられたつば部、および前記つば部よりも前記第2ポッティング部側に配置された傾斜部と、を有し、前記ハウジングは、前記つば部に当接するつば支持部と、温度25℃において前記傾斜部との間にクリアランスが存在し、温度80℃において前記傾斜支持部と当接するように配置される傾斜支持部と、を有するカートリッジ式中空糸膜モジュールを提供する。
本発明によれば、食品、医薬品製造用途に使用されるろ過器において、温水処理や蒸気処理などの熱処理を適用した場合においてもポッティング部のクラックを抑制して原液とろ過液のリークや滞留を抑制するカートリッジ式中空糸膜モジュールを提供できる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る外圧式カートリッジ式中空糸膜モジュールの概略縦断面図である。 図2は、第1実施形態における第1ポッティング部を示す概略縦断面図である。 図3は、第1実施形態における筒部の上部の構造を示す概略縦断面図である。 図4(a)~(c)は、傾斜支持部の具体例を示す概略縦断面図である。 図5は、傾斜部と傾斜部に当接した傾斜支持部の概略縦断面図である。 図6は、図1に示すカートリッジ式中空糸膜モジュールのA-A線断面図である。 図7は、内圧式カートリッジ式中空糸膜モジュールの下部構造の一例を示す概略縦断面図である。 図8は、本発明の第2実施形態におけるカートリッジ式中空糸膜モジュールの上部の概略縦断面図である。 図9は、第2実施形態における第1ポッティング部を示す概略縦断面図である。 図10は、本発明の第3実施形態におけるカートリッジ式中空糸膜モジュールの上部の概略縦断面図である。 図11は、第3実施形態における支持リングの概略縦断面図である。 図12は、他の実施形態におけるカートリッジ式中空糸膜モジュールの上部構造を示す概略縦断面図である。 図13は、さらに他の実施形態におけるカートリッジ式中空糸膜モジュールの上部構造を示す概略縦断面図である。 図14は、比較形態に係る中空糸膜モジュールを示す概略縦断面図である。
本発明のカートリッジ式中空糸膜モジュールの実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下、「カートリッジ式中空糸膜モジュール」を単に「中空糸膜モジュール」と記載することがある。本明細書では、「上」および「下」は図面の上下方向に対応しており、カートリッジ式中空糸膜モジュールが使用される場合の通常の姿勢における上下方向も同様である。つまり、上下方向は中空糸膜モジュールの軸方向に対応し、水平方向は、上下方向に垂直な方向、つまり中空糸膜モジュールの径方向に対応する。「上」は中空糸膜モジュールにおいて「第1端」に近い方を意味し、「下」は「第2端」に近い方を意味する。また、本明細書において、「質量」は「重量」と同義である。
(第1実施形態)
<カートリッジ式中空糸膜モジュール>
本発明の中空糸膜モジュールの一形態として、図1に中空糸膜モジュール1Aを示す。図1に示すように、中空糸膜モジュール1Aは、ハウジング2と、中空糸膜カートリッジ3とを備える。
ハウジング2は、本形態では、筒部21、上部キャップ22、下部キャップ23を有する。
筒部21は略筒状の部材であり、外側面にはサイドノズル21aが設けられる。筒部21の内側面に設けられ、中空糸膜カートリッジを支持する機構については後述する。
上部キャップ22は上に向かって徐々に細くなる形状を有し、最上部に上部ノズル22aを有する。また、下部キャップ23は、下に向かって徐々に細くなる形状を有し、最下部に下部ノズル23aを有する。
中空糸膜カートリッジ3は、複数の中空糸膜4を含む中空糸膜束41と、中空糸膜の上端(第1端)で中空糸膜間を接着することで中空糸膜を束ねる第1ポッティング部5と、中空糸膜の下端(第2端)で中空糸膜間を接着することで中空糸膜を束ねる第2ポッティング部6を含む。第1および第2ポッティング部はいずれも、複数の中空糸膜4の間に樹脂が充填されることで形成される。
第1ポッティング部5および第2ポッティング部6はいずれも略円柱状である。第1ポッティング部5の上端面では中空糸膜4の中空部が開口している。
本形態の中空糸膜モジュール1Aは外圧式クロスフローろ過型であるため、図1に示すように、第2ポッティング部6において中空糸膜4の端面は封止される。
図1に示すように、ハウジング2はその内面に、つば支持部8および傾斜支持部9を有する。つば支持部8はつば部51に当接し、傾斜支持部9は温度に因って傾斜部52に当接することで、中空糸膜カートリッジ3をハウジング2の内で支持する。
ただし、ハウジング2と中空糸膜カートリッジ3は接着されておらず、中空糸膜カートリッジ3はハウジング2に着脱可能である。
<第1ポッティング部5>
第1ポッティング部5は、図2に示すように、その側面に設けられたつば部51と傾斜部52とを有する。
つば部51は、第1ポッティング部5の側面から径方向外側に突出する部分である。傾斜部52は、傾斜部52は、つば部51よりも第2ポッティング部6寄り、つまりつば部51の下方に配置され、かつ下側を向くように設けられた領域である。本形態では、傾斜部52は、第1ポッティング部5の下面と側面との間に設けられ、傾斜する部分である。「傾斜する」とは、上下方向(中空糸膜モジュール1Aの軸方向)に対する平行および垂直な方向から外れる角度を意味する。つば部51および傾斜部52の構造の詳細については後述する。
第1ポッティング部5における各部の寸法について説明する。第1ポッティング部5の最大外径Dmax(本形態ではつば部51における第1ポッティング部5の直径)、つば部51の突き出し長さD、中空糸膜束41の外接円直径D、傾斜部52の最大直径、すなわち傾斜部52の上端における第1ポッティング部5の直径D、つば部51と傾斜部52を除く第1ポッティング部5の高さHを図示する。高さHは、軸方向における傾斜部52の上端からつば部51の下面(つば支持部8と当接する部分)までの距離である。
これらの寸法は、中空糸膜カートリッジを温度25℃の水に24時間浸漬させ、第1ポッティング部5の表面に付着した水をウエスでふき取ったあとに温度25℃の雰囲気下で計測した値である。ここで、図2に示す形態では、Dは(Dmax-2×D)と近似する。
第1ポッティング部5の最大外径Dmaxは100mm以上であることが好ましい。最大外径Dmaxの大きなポッティング部は、中空糸膜カートリッジとしての質量が大きくなる。そのため、つば部51に加わる圧力が増加し、特に熱処理と冷却を繰り返すと、つば部51の周辺にクラックが発生しやすい。しかし、本発明が適用された中空糸膜モジュールであれば、第1ポッティング部5の最大外径Dmaxが100mm以上であっても、つば部51周辺のクラックを抑制できる。最大外径Dmaxは中空糸膜モジュールの用途によって変更可能であり、上限は特に限定されない。
第1ポッティング部5の最大外径Dmaxと、第1ポッティング部5の高さHとの比、Dmax/Hは1以上であることが好ましい。Dmax/Hが1以上であれば、第1ポッティング部5の機能を奏するための体積を最小限にでき、それによって第1ポッティング部5が軽量化する。そのため、つば部51に加わる負荷が低下して、クラックを抑制できる。また、第1ポッティング部5の体積を小さくすると、中空糸膜モジュール1Aとしての膜面積が増加し、中空糸膜モジュールあたりの透過量が増加する効果も奏する。Dmax/Hは2以上であることがより好ましい。
また、Dmax/Hは4以下であることが好ましい。Dmax/Hがこの範囲にあることで、第1ポッティング部5は実用性のある強度を有することができる。
第1ポッティング部5の中空糸膜束41の外接円直径をDと、第1ポッティング部の最大外径Dmaxの比率、D/Dmaxは0.75以上であることが好ましい。D/Dmaxが大きいほど中空糸膜の充填率が増加し、中空糸膜モジュールあたりの膜面積が増加し、中空糸膜モジュールあたりの透過量が増加する。D/Dmaxは0.8以上であることがより好ましい。
温度25℃において、第1ポッティング部5のつば部51で受ける圧力Pが低いほど、熱処理時においてもつば部51に加わる応力が小さくなり、第1ポッティング部のクラックを抑制できる。そのため、圧力Pは100kPa以下であることが好ましく、80kPa以下であることがより好ましく、60kPa以下であることがさらに好ましい。圧力Pは低い方が好ましいが、つば部51で受ける圧力を低くするためにつば部51の突き出し長さDを大きくすると、上記のD/Dmaxが小さくなる。圧力Pと、D/Dmaxを両立するためには、圧力Pは3kPa以上であることが好ましい。
ここで、圧力Pは、温度25℃における、乾燥状態での中空糸膜カートリッジの質量と、つば支持部8とつば部51が当接する面積によって算出される便宜的な圧力値であり、中空糸膜モジュール1Aとして使用しているときにつば部51に付与されている圧力とは異なる。
<つば部51およびつば支持部8>
つば支持部8は、図3に示すように、筒部21の上端面である。つば支持部8はつば部51に下から当接することで第1ポッティング部5を支持する。また、つば部51はさらに上部キャップ22の下部により上から押さえられることで、つまり筒部21と上部キャップ22との間に挟まれることで、固定される。
第1ポッティング部5のつば部51の断面形状は図2に示すように略矩形状である。つまり、本形態において、つば部51の下面は平坦であり、つば部51の下面とつば支持部8の当接面は、水平(中空糸膜モジュール1Aの軸方向に対して垂直)である。なお、つば部51の形状は、傾斜支持部9が傾斜部52に当接していないときでも、つば支持部8のつば部51への当接によりカートリッジ3がハウジング2内で保持され、かつハウジング2を液密に封止できる範囲で、変更することができる。例えば、水平方向に対するつば部51の下面の角度は、つば支持部8の角度と同等であることが好ましく、水平方向の間の角度が-40°以上40°以下で傾いていてもよい。また、つば部51の下面が凹凸を有してもよい。
第1ポッティング部5のつば部51の角の凹部には、面取りあるいは曲率を設けることで冷熱サイクル時のクラックが発生しにくくなる。面取りする場合は面取り寸法1mm(C1)以上であることが好ましく、2mm(C2)以上であることがより好ましい。また、角に曲率を設ける場合は、半径1mm(R1)以上であることが好ましく、2mm(R2)以上であることがより好ましい。
つば支持部8によるつば部51の支持において、付与される圧力が同一でも圧力が作用する位置によって力のモーメントが変化し、つば部51への負荷が変化する。そのため、つば支持部8は、つば部51に対して中空糸膜カートリッジの径方向において中心に近い位置で当接することが好ましい。
<傾斜支持部9および傾斜部52の構造>
ハウジング2の傾斜支持部9は、ハウジング2の内面に、温度に応じて傾斜部52に当接するように配置されている。本形態においては、筒部21の内側面に設けられた凸部である。特に、傾斜部52が第1ポッティング部5の側面で同一円周上に設けられているので、傾斜支持部9も筒部21の内面を一周するように、同一円周上に、連続的に設けられる。ただし、本発明はこれに限定されず、傾斜部52に当接することで、下から第1ポッティング部5を支持できれば、その数および位置等は変更可能である。例えば、傾斜支持部は複数の部分に分かれていてもよい。
縦断面において、傾斜支持部9は周囲よりも厚いことでハウジング2の内側に突出していることが好ましく、その縦断面が略三角形または略台形であることが好ましい。図4(a)~(c)に、傾斜支持部9のより具体的な例である傾斜支持部91~93の縦断面形状を示す。これらの形態では、一点鎖線で示すように、傾斜支持部91~93の頂点(ハウジング2の内側に向けて最も突出した部分)よりも下側にも、周囲より厚い部分911~931が存在する。これによって、第1ポッティング部5を支持するのに十分な強度が得られる。
傾斜支持部9の角は90°以上の角度を有するか、面取りされているか、あるいは曲面であることが好ましい。このような形状であることで、中空糸膜モジュール1Aの使用時、または中空糸膜カートリッジ3の脱着時に傾斜支持部9が中空糸膜4に接触しても、中空糸膜4が破損するのを抑制できる。
第1ポッティング部5の傾斜部52は、その角度が傾斜支持部9の傾斜部52と当接する面角度と同一であることが好ましい。
中空糸膜モジュール1Aでは、温度によって傾斜部52と傾斜支持部9との間のクリアランスが変化する。温度によるこのようなクリアランスの変化は、第1ポッティング部5が熱膨張あるいは収縮することによる。より具体的には、中空糸膜モジュール1A内の温度が25℃であるときは傾斜支持部9および傾斜部52は当接せず、温度が80℃以上であるときには傾斜部52が傾斜支持部9に当接するように、傾斜部52および傾斜支持部9が配置される。
第1ポッティング部5は樹脂で形成されており、一般的に高温では樹脂強度が低下し、クラックが生じやすくなる。しかし、本形態では、上述のとおり、80℃以上では、傾斜支持部9が傾斜部52に当接することで、第1ポッティング部5がつば部51と傾斜部52との少なくとも2点で支持される。よって、第1ポッティング部5への負荷が分散し、第1ポッティング部5のクラック発生が抑制できる。
なお、後述のとおり、第1ポッティング部5よりも十分小さい線膨張係数を有する部材をハウジング2とすることで、温度によるハウジング2(傾斜支持部9を含む)の寸法変化が上述のクリアランスに与える影響を小さく抑えられる。
中空糸膜モジュール1Aを加熱するとき、傾斜支持部9にて傾斜部52のクリアランスがゼロになる温度、つまり両者が当接する温度は、25℃超80℃以下であれば限定されない。ただし、この温度は60℃以上であることが好ましい。微生物の増殖を抑制するための熱処理では、中空糸膜モジュールの温度を80℃以上とすることが多い。例えば傾斜支持部9と傾斜部52が温度50℃未満で当接するように配置されていると、温度が80℃以上で第1ポッティング部5がさらに熱膨張したときに、傾斜支持部9により第1ポッティング部5の体積変化が制限されるので、ひずみが蓄積する。その結果、第1ポッティング部5が変形したり、クラックが生じたりする恐れがある。そのため、傾斜支持部9と傾斜部52とが当接する温度が60℃以上であることで(逆にいうと、60℃未満では当接しないことで)、より高温で第1ポッティング部5が熱膨張する余地を残すことができる。
また、温水または蒸気処理時により傾斜支持部9に水が付着した場合も、温度25℃で傾斜支持部9と傾斜部52の間にクリアランスが存在することで、水が第1ポッティング部5とハウジング2との間から下方(第2ポッティング部6側)に排出されやすくなる。その結果、雑菌等の汚染リスクを低減できる。
つば部51にかかる負荷を軽減するには、傾斜支持部9と傾斜部52とは、ガスケットまたはOリングなどの弾性体を介さずに直に当接することが好ましい。
傾斜部52と、傾斜支持部9の傾斜部52と当接する面とは、角度の差が30°以下であることが好ましく、平行であること、つまり両者の傾斜角度は同一であることが好ましい。傾斜部52の角度は、中空糸膜モジュール1Aの縦断面において、水平方向(軸方向に垂直な方向)と傾斜部52とが成す角のうち鋭角の角度である。また、傾斜支持部9の角度は、水平方向と傾斜部52と当接する傾斜支持部9の面との成す角のうち鋭角の角度である。図4(a)~(c)では、傾斜支持部9の傾斜角度をθとして示す。傾斜角度θについての以下の説明は、傾斜部52の傾斜角度にも適用できる。
傾斜角度θは30°以上80°以下であることが好ましい。傾斜角度θが小さいと、D/Dmaxが小さくなる。また、第1ポッティング部5が円盤状である、つまりDmax/Hが1以上である場合は、高温時の熱膨張による寸法変化量は径方向の方が大きくなる。その場合、傾斜角度θが大きい方が、温度25℃におけるクリアランスの許容範囲が広くなる。よって、傾斜角度θは45°以上であることがより好ましく、55°以上であることがさらに好ましい。さらに、傾斜角度が大きいほうが傾斜支持部9に付着した液体が第2ポッティング部6側に排出されやすくなる。一方、傾斜角度θが大きすぎると、第1ポッティング部5の直径Dの寸法に高い精度が要求されることから、傾斜角度θは75°以下であることがより好ましく、70°以下であることがさらに好ましい。
中空糸膜モジュール1Aは、温度25℃における、第1ポッティング部5の傾斜部52の最大直径D[m]と、第1ポッティング部の線膨張係数α[℃-1]と、傾斜支持部9と傾斜部52の間に形成されるクリアランスd[m]が式(1)または式(2)のいずれかを満たすことが好ましい。ここで、第1ポッティング部5のガラス転移温度Tが80℃以上の場合は式(1)を用い、ガラス転移温度Tが25℃以上80℃未満の場合は式(2)を用いる。
d≦55/2×α×D (1)
d≦[(80-T)×α+(T-25)×α]/2×D (2)
d:中空糸膜モジュールの径方向(水平方向)における傾斜支持部9と傾斜部52との間のクリアランス(最短距離)
:傾斜部の最大直径[m]
α:第1ポッティング部の線膨張係数[℃-1
α:第1ポッティング部のガラス転移温度T以下の温度における線膨張係数
α:第1ポッティング部のガラス転移温度T以上の温度における線膨張係数
式(1)および(2)の右辺は、中空糸膜カートリッジをハウジングに装填していない状態で温度25℃から80℃まで昇温した場合(温度差55℃)における第1ポッティング部5の半径方向の寸法変化量を意味する。つまり、式(1)または式(2)を満たすことで、傾斜部52は、温度80℃で傾斜支持部9に当接することができる。
クリアランスdの好ましい範囲は、第1ポッティング部5の直径Dや第1ポッティング部5の線膨張係数αなどに依存するが、クリアランスdが小さいと、熱処理時に第1ポッティング部5の熱膨張によってひずみが蓄積されるため、冷熱サイクル時にクラックが生じやすくなる。そのため、クリアランスdは0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。一方、クリアランスdが大きいと、傾斜部52と傾斜支持部9が当接せず、支持固定されないため、0.6mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
クリアランスdは、傾斜部52および傾斜支持部9の当接面が平坦であり、かつ両者の傾斜角度が同一である場合には、式(3)によって定義される。
d=c/sinθ (3)
式(3)におけるクリアランスcは傾斜支持部9と傾斜部52との間の最短距離であり、傾斜角度θ。クリアランスcは、中空糸膜モジュール1Aの内部に水を満たし、温度25℃で24時間静置した後に排水し、傾斜支持部9および傾斜部52の間を隙間ゲージで測定される値である。
中空糸膜モジュール1Aのサイズ、質量、熱処理時の処理温度、上部ノズルの締め付け圧力などにも因るが、温度80℃で傾斜支持部9との当接で傾斜部52にかかる圧力Pは、1kPa以上であることが好ましい。圧力Pは、感圧センサを用いて測定できる。具体的には、傾斜部52の表面が乾燥した状態で、クリアランス部に挿入した薄型感圧センサにより、温度80℃で測定される値である。薄型感圧センサは厚さ0.2mm未満であることが望ましい。
温度80℃で傾斜部52にかかる圧力Pと、温度25℃でつば部51にかかる圧力Pとの比率P/Pが高いほど、温度80℃においてつば部51にかかる圧力が低減されるので、つば部51にクラックが生じにくくなる。そのため、P/Pは0.2以上であることが好ましい。一方、P/Pの上限は特に制限されないものの、0.9以下であることが好ましい。
図5に、温度80℃において、傾斜部52と傾斜支持部9とが接触する領域の、縦断面における長さDを示す。長さDは中空糸膜カートリッジ3のサイズや質量に応じて適宜設定できる。長さDまたはD/Dが大きいと、傾斜部52への応力負荷が減少する。そのため、D/Dは0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましい。一方、D/Dが大きいと、D/Dmaxが小さくなるため、D/Dは0.08以下であることが好ましく、0.06以下であることがより好ましい。当接長さDは、第1ポッティング部5の線膨張係数を考慮しつつ、第1ポッティング部5および傾斜支持部9の寸法を設計することにより調整することができる。
<第1ポッティング部のガラス転移温度>
第1ポッティング部のガラス転移温度は100℃以上160℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が100℃以上であると、中空糸膜カートリッジ3に冷熱サイクルを繰り返したときの、第1ポッティング部5の強度低下が抑制される。樹脂は、ガラス転移温度以上の温度では強度が顕著に低下したり、線膨張係数が顕著に増加したりするため、第1ポッティング部が使用環境より高いガラス転移温度を有することが好ましい。特に、ガラス転移温度は、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。一方、160℃以下のガラス転移温度を有することで、第1ポッティング部は、クラックの伸展を抑制できる良好な靭性を有することができる。そのためガラス転移温度は150℃以下であることが好ましい。
<第1ポッティング部の線膨張係数>
第1ポッティング部5の線膨張係数(熱膨張率)αは、30×10-6/℃以上150×10-6/℃以下であることが好ましい。第1ポッティング部5の線膨張係数αが、30×10-6/℃以上であると、25℃および80℃において傾斜部52と傾斜支持部9とが確実に離間および当接するように、中空糸膜モジュールを設計することが容易となる。
第1ポッティング部5の線膨張係数αが大きいほうが第1ポッティング部5の寸法変化量が大きくなり、傾斜部52が確実に当接される。線膨張係数αは40×10-6/℃以上であることがより好ましい。一方、第1ポッティング部の線膨張係数が小さい方が第1ポッティング部5の強度が高くなる。よって、第1ポッティング部5におけるクラック発生抑制のために、第1ポッティング部の線膨張係数は120×10-6/℃以下であることがより好ましく、100×10-6/℃以下であることがさらに好ましい。
第1ポッティング部5の線膨張係数は、第1ポッティング部5にひずみゲージを貼付して測定したり、あるいは、第1ポッティング部5と同一の組成の樹脂試験片を作製し、熱機械分析したりすることで測定できる。これらの手法での測定が難しい場合は、第1ポッティング部5から微小試料を採取し、ホットステージ上で加熱しながらマイクロスコープ等で寸法変化を計測することにより、線形膨張係数を測定することもできる。
<第1ポッティング部の組成>
第1ポッティング部5は、全体的に均質な組成を有してもよく、円周方向や軸方向に重ねられた、異なる組成を有する複数の層を有してもよい。第1ポッティング部5が後者の複層構造を有する場合、第1ポッティング部5に関する各種規定としては、各層の長さや体積に応じた分率で換算した値が採用される。
第1ポッティング部としては、一般的に中空糸膜モジュールのポッティング部に用いられる各種ポッティング剤を使用できる。ポッティング剤として、エポキシ樹脂およびポリウレタン樹脂およびシリコーンエラストマーの少なくとも一方が好ましく使用される。
エポキシ樹脂は主剤と硬化剤とが反応することで硬化する樹脂であり、主剤としては例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂などが挙げられる。また硬化剤としては、例えば脂肪族アミン、ポリエーテルアミン、芳香族アミン、酸無水物などが挙げられる。第1ポッティング部5の形成において、主剤および硬化剤としては、それぞれ1種のみが用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
ポリウレタン樹脂のイソシアネート成分として、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(ポリメリックMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などが挙げられる。また、ポリウレタンのポリオール成分としては、例えばポリブタジエン系ポリオール、ダイマー酸変性ポリオール、エポキシ樹脂変性ポリオール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。イソシアネート成分およびポリオール成分としては、それぞれ1種のみが用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。また反応物の耐湿熱性を損なわない範囲であれば、例えば、ひまし油系ポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルポリオールなど、その他のポリオールを併用することもできる。
シリコーンエラストマーは、ケイ石(SiO2)を原料としたシリコーン樹脂を主成分として、硬化後にゴムの性質を示す付加重合型のジメチルシロキサンと架橋剤とからなる2液型液状シリコーンゴムなどの既知のポッティング材を使用できる。高温液のろ過または逆圧洗浄時に発生する一次側と二次側の差圧に耐えうる耐圧性を有することが必要であり、そのためには適度な硬度を有している必要がある。
第1ポッティング部5は、上記で挙げたエポキシ樹脂やポリウレタン樹脂やシリコーンエラストマーのほか、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を含むこともできる。添加剤の一例として、シリカやアルミナなどの無機粉末、およびゴム粒子などの一般的な強靭化剤が挙げられる。
<第1ポッティング部の強度>
第1ポッティング部5を形成するポッティング樹脂の80℃における引張強度は5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましい。ポッティング剤の80℃における引張強度が5MPa以上であると、傾斜部52で中空糸膜カートリッジを十分支持でき、つば部51にクラックが発生しにくくなる。
<第1ポッティング部の破壊靭性値>
第1ポッティング部5を形成するポッティング樹脂の25℃における破壊靭性値は0.8MPa・m1/2以上であることが好ましい。破壊靭性値が大きいほど第1ポッティング部5に発生した微小クラックが伸展しにくくなる。ここで破壊靭性値の測定は、ASTM D5045に記載の片側ノッチ曲げ試験を実施し、10回曲げ試験を実施した結果の算術平均値を採用する。破壊靭性値は0.9MPa・m1/2以上であることがより好ましく、1.0MPa・m1/2以上であることがさらに好ましい。
<第2ポッティング部の組成>
第2ポッティング部6の材質は、耐熱性や中空糸膜との接着強度があれば限定されないが、第2ポッティング部のガラス転移温度は80℃以上であることが好ましい。また、第2ポッティング部6と第1ポッティング部5とが同一の組成を有していてもよい。
<ハウジング>
ハウジング2および中空糸膜モジュール1Aの軸方向の長さは限定されず、適用される用途に応じて適宜設定できる。
ハウジング2は耐熱性、耐圧性、耐薬品性に優れることが好ましい。特に、ハウジング2の線膨張係数は、第1ポッティング部5の線膨張係数よりも小さいことが好ましく、20×10-6/℃以下であることがより好ましい。このようなハウジング2を構成する材料の例として、ステンレスが挙げられる。ハウジング2の線膨張係数が小さいことで、中空糸膜モジュールの設計において、ハウジング2の熱膨張による寸法変化を無視することができる。
<中空糸膜>
中空糸膜は分離膜であり、多成分からなる原液のうち一部を阻止し、一部を透過することで、分離、精製または濃縮を行うことができる。中空糸膜としては、全体的に一様な径の孔を有する対称膜、膜の厚み方向で孔径が変化する非対称膜、および支持層と分離機能層が複合化された複合膜のいずれでも採用できる。
中空糸膜は、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体などのフッ素系樹脂;セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステル;ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリイミドなどの樹脂などから選ばれる少なくとも1種の材料を含むことができるが、これらの材料に限定されない。特に、フッ素系樹脂やポリスルホン系樹脂からなる中空糸膜は、耐熱性、物理的強度、化学的耐久性が高いことから、本発明のカートリッジ式中空糸膜モジュールに好適に用いることができる。
中空糸膜には、上記の樹脂に加えて、さらに親水性樹脂を含有してもよい。親水性樹脂を含有することによって、中空糸膜の親水性を高め、膜の透水性を向上させることができる。親水性樹脂は、中空糸膜に親水性を付与する樹脂であれば限定されないが、例えば、セルロースエステル、脂肪酸ビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、およびポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリビニルアルコールなどが好適に用いられる。
<シール材>
図1に示すように、中空糸膜モジュール1Aは、シール部材として、筒部用Oリング71、上部キャップ用Oリング72、ガスケット73および74をさらに備える。筒部用Oリング71はサイドノズル21aよりも上側で、筒部21と第1ポッティング部5との間に配置される。本形態では筒部21の内側面に溝が設けられており、筒部用Oリング71はその溝内に配置される。上部キャップ用Oリング72は、上部キャップ11と第1ポッティング部5との間に配置される。本形態では、上部キャップ22の下部で、ガスケット73と接触する位置よりも内側に溝が設けられ、上部キャップ用Oリング72はその溝内に配置される。ガスケット73は、上部キャップ22と筒部21との間に、そしてガスケット74は下部キャップ23と筒部21との間にそれぞれ配置される。
Oリングおよびガスケットなどのシール材としては、使用条件において求められる耐熱性、化学的耐久性などを満たすものを選択すればよい。シール材を構成する材料として、例えばフッ素系ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどが挙げられる。
<部材の接合>
上部キャップ22と筒部21間、および筒部21と下部キャップ23間は、ネジまたはクランプ等の公知の手段により接合される。上述したように、各部の間にOリングまたはガスケットを挟むことで、部材間は液密に封止される。
<第2ポッティング部> 中空糸膜モジュールにおけるろ過方式には、中空糸膜の外側に原液を供給する外圧式と、中空糸膜の内側に原液を供給する内圧式とに分けられる。第1ポッティング部5およびそれをハウジング2内で支持する構造は、外圧式および内圧式の中空糸膜モジュールのいずれにも適用できる。
図1に示す第2ポッティング部6およびその周辺の構造は、外圧式の中空糸膜モジュールに適用される。図1の第2ポッティング部6のA-A断面図を図6に示す。第2ポッティング部6には、中空糸膜モジュールの軸方向に延びる貫通孔61が設けられている。第2ポッティング部6は、図1および図6に示す形態では第2ポッティング部6はハウジング2に対して固定されない。他の形態として、第2ポッティング部6は、直接、または他の部材を介して、かつ着脱可能にハウジング2に固定されてもよい、
一方、内圧式の中空糸膜モジュールは、図7に示すように、第2ポッティング部6に代えて第2ポッティング部62を備える。第2ポッティング部62は、その下面で中空糸膜の中空部が開口するように形成されている。第2ポッティング部62は直接、または他の部材を介して、かつ着脱可能にハウジング2に固定される。第2ポッティング部62とハウジング2(図7の形態では下部キャップ23)との間は液密に封止される。図7には、封止材としてOリング78を示す。
<ろ過方法> 本発明の中空糸膜モジュールは、原液を循環させるクロスフローろ過または原液を全量ろ過するデッドエンドろ過のいずれにも適用できる。
外圧式ろ過の一例として、図1および図2に示す下部ノズル23aから原液(被処理液)が流入すると、原液は貫通孔61を通過することでハウジング2の内部を満たす。この場合は、サイドノズル21aより濃縮液が排出される。一方、原液はサイドノズル21aから流入してもよい。この場合は、下部ノズル23aから濃縮液が排出される。中空糸膜4の外表面から中空部に透過した液(ろ過液)は、第1ポッティング部5の上面で中空糸膜の中空部から流出し、上部ノズル22aから排出される。
内圧式ろ過では、原液は下部ノズル23aから流入し、図7に示す構成の第2ポッティング部62の下面で中空糸膜の中空部に流入する。中空糸膜を透過したろ過液は、サイドノズル21aから流出する。濃縮液は第1ポッティング部5の上面で中空糸膜の中空部から流出し、さらに上部ノズル22aから中空糸膜モジュール外に流出する。
(第2実施形態)
以下、第1実施形態で説明した部材と同等の機能を有する部材については、その説明を省略する。
図8に、本形態の中空糸膜モジュール1Bの上部の概略図を示す。中空糸膜モジュール1Bは、第1ポッティング部5に代えて第1ポッティング部5Bを有する。第1ポッティング部5Bは、図9に示すように、つば部51に代えて、環状溝55を有する。環状溝55は、第1ポッティング部5Bの上端近傍に設けられ、第1ポッティング部5Bの側面を一周する凹部である。環状溝55は、上面(下を向く面)、底面(径方向外側を向く面)、下面(上を向く面)を有する。環状溝55は第1ポッティング部5Bの側面において周囲よりも径方向内側に向かって凹んでいるので、周囲は相対的に環状溝55の底面よりも突出する、凸部であるとみなすことができる。本形態においては、環状溝55の上面を含む凸部がつば部として機能する。凸部すなわちつば部に符号53を付す。本形態では、DmaxはDと近似する。
筒部21は第1実施形態とほぼ同一の形状を有する。第1実施形態のつば支持部8に相当する部分を本実施形態ではリング支持部と呼び、符号83を付す。
中空糸膜モジュール1Bはさらに支持リング(環状部材の一例)82を有する。支持リング82は、平面形状が環状であり、周方向に2つまたはそれ以上に分割可能な部材である。支持リング82の径方向における外側の部分は、上部キャップ22の下部と、筒部21の上面つまりリング支持部83との間に挟まれて保持される。本形態では、支持リング82はガスケット73の上に配置されるが、支持リング82は、リング支持部83と当接してもよい。一方で、支持リング82の径方向における内側の部分は、環状溝55に嵌まる。こうして、つば部53は、支持リング82を介してリング支持部83に支持される。すなわち、支持リング82とリング支持部83とが、つば支持部として機能する。
なお、本形態において、支持リング82は環状である。また、第1ポッティング部5Bにおいて支持リング82が嵌まる溝も、側面を一周するように連続する環状である。しかし、支持リング82および環状溝55を、それぞれ互いに不連続な複数の支持部材および複数の溝に置き換えてもよい。支持部材および溝の形状は、互いに嵌合し、第1ポッティング部5Bを支持することで中空糸膜カートリッジ3Bを保持できる範囲で変更できる。
(第3実施形態)
以下、第1実施形態で説明した部材と同等の機能を有する部材については、その説明を省略する。
図10に、本形態の中空糸膜モジュール1Cの上部の概略図を示す。中空糸膜モジュール1Cは、第1ポッティング部5と同等の形状を有する第1ポッティング部5Cを有する。 中空糸膜モジュール1Cは筒部21Cを有する。筒部21Cは、第1実施形態の筒部21とほぼ同一の形状を有するが、傾斜支持部9を持たず、傾斜支持部9に相当する部分が平坦である点で異なる。第1実施形態のつば支持部8に相当する部分を本実施形態ではリング支持部と呼び、符号85を付す。
ハウジング2Cは、支持リング(環状部材の一例)84をさらに有する。図11に、支持リング84の断面図を示す。支持リング84は、筒部841と、筒部分の上端から径方向外側に突出するつば部842とを有する。本形態において、傾斜支持部9は筒部841の内面に設けられる。傾斜部9の形状については第1実施形態で説明したとおりである。また、支持リング84は、その周方向に2つまたはそれ以上に分割可能である。
支持リング84は、ハウジング2と第1ポッティング部5の間に配置される。本形態では、支持リングのつば部分842が、第1ポッティング部のつば部51と共に、上部キャップ22の下部とリング支持部85との間に挟まれることで、支持リング84は筒部21内で固定される。
このように固定されることで、支持リングのつば部842は、第1ポッティング部のつば部51の下面に当接する。その結果、第1ポッティング部のつば部51は、支持リングのつば部842を介してリング支持部85に支持される。すなわち、支持リングのつば部842およびリング支持部85は、つば支持部として機能する。支持リングのつば部842の形状については、つば支持部8と同様である。
なお、本形態において、支持リング84は環状であるが、第2実施形態で支持リング82について述べたように、支持リング84に代えてこれと同等の機能を持つ不連続な複数の部材を設けてもよい。
筒部21Cはその内面をその周方向に一周する溝を持ち、その溝内には、第1実施形態と同様にOリング71が配置される。ただしOリング71は、第1実施形態とは異なり、筒部21Cと支持リング84との間を封止する。上部キャップ22と第1ポッティング部5との間は、第1実施形態と同様にOリング72により封止される。支持リングのつば部分842とハウジングのリング支持部85との間は、ガスケット73により液密に封止される。筒部841はその内面をその周方向に一周する溝を持ち、この溝内にOリング75が配置される。第1ポッティング部5と支持リング84との間はOリング75により封止される。
支持リング84は、耐熱性、耐圧性、耐薬品性に優れ、かつ線膨張係数が30×10-6-1以下であることが好ましい。これらの条件を満たす材料として、ステンレスが挙げられる。
支持リング84を介して中空糸膜カートリッジ3をハウジング2に支持固定することによって、ハウジング2をシンプルな構造にして低コストでカートリッジ中空糸膜モジュール1Aを製作することができる。支持リング84が分割可能であることで、第1ポッティング部5の形状に因らず、中空糸膜カートリッジをハウジング2に容易に着脱できる利点が挙げられる。
(その他の実施形態)
図12に示す中空糸膜モジュール1Dは、支持リング84に代えて、整流部材としての機能を併せ持つ支持リング84Dを有する以外は、中空糸膜モジュール1Cと同様の構成を有する。整流部材とは、原液の流れを均一に制御したり、中空糸膜束41の揺動を規制したりする部材である。図12に示すように、支持リング84の筒部841はサイドノズル21aの中心軸よりも下まで延び、筒部841に貫通孔843が形成されている。貫通孔843は、中空糸膜モジュール内の流れを制御できれば、円形、楕円形、多角形、スリット状など、その形状は具体例には限定されない。さらに、整流孔の配置は限定されず、均等に分布するように配置されていてもよく、偏って配置されてもよい。整流孔の大きさや開口率についても、ろ過する原液の性状やろ過条件に合わせて適宜設定できる。
図13に示す中空糸膜モジュール1Eは、第1ポッティング部5Bと同様の構造を持つ第1ポッティング部5Eと、第1支持リング821と、第2支持リング840とを有する第1支持リング821は、支持リング82と同様の構造を持ち、支持リング82と同様につば部53の下面に当接するように配置される。第2支持リング840は第1支持リング841の下面に当接するように配置される以外は、上述の支持リング84と同様の構造を持ち、かつ同様に配置される。
以上に述べた各実施形態に含まれる要素は、それぞれ個別に組み合わされてもよい
(比較形態)
図14に比較形態にかかる中空糸膜モジュール100を示す。中空糸膜モジュール100は、筒部210が傾斜支持部9を持たず、その部分が平坦である以外は、中空糸膜モジュール1Aと同様の構造を有する。本形態では、つば支持部8のつば部51への当接のみで第1ポッティング部5が支持されるので、つば部51にかかる負担が大きい。その結果、つば部51にクラックが生じやすい。
なお、特許文献1の中空糸膜モジュールは、本比較形態と同様に、筒部に対応する部材が傾斜支持部を持たず、その部分が平坦である。また、第1ポッティング部に相当する部材の下面と側面の間に段差があり、その段差と胴部21との間にOリングが配置されている。Oリングは、弾性変形すると共に高温で弾性率が低下するので、中空糸膜カートリッジを支持する効果は低く、実質的につば部のみで支持されている。そのため、つば部にクラックが生じやすいのは、図14の形態と同様である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
<エポキシ樹脂組成物およびポリウレタン樹脂組成物の硬化物の作製方法>
予め温度40℃にて真空乾燥して脱泡した主剤および硬化剤を攪拌混合機にて混合して樹脂組成物を得た。続いて、樹脂組成物を、ポリテトラフルオロエチレン製鋳型容器に流し込み、24時間静置した後、オーブン内に投入し、100℃で5時間硬化させて、厚み3mmの板状の樹脂硬化物を作製した。
<エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度の測定方法>
上記にて作製した樹脂硬化物から、小片5mgを採取し、JISK7121(1987)に従い、中間点ガラス転移温度を測定した。測定には示差走査熱量計DSC-60 Plus((株)島津製作所製)を用い、窒素ガス雰囲気下において、昇温速度10℃/分で測定した。
<カートリッジ式中空糸膜モジュールの蒸気加熱処理1>
カートリッジ式中空糸膜モジュールの蒸気加熱は、ハウジング2のサイドノズル21aより125℃の飽和水蒸気を供給し、下部ノズル23aおよび上部ノズル22aを開放して3分間蒸気ブローを行った。その後、上部ノズル22aを閉止し、125℃で60分間蒸気加熱を行った。このとき、下部ノズル23aより発生した蒸気ドレンを排出した。
<カートリッジ式中空糸膜モジュールの蒸気加熱処理2>
ハウジング2に中空糸膜カートリッジ3を取り付け、サイドノズル21aより飽和水蒸気を供給し、125℃で60分間蒸気加熱を行った直後に、下部ノズル23aから25℃の水を供給してハウジング2の内部を水で満たして急冷した後に、下部ノズル23aから水を排水した。なお、蒸気加熱中に発生した蒸気ドレンは蒸気加熱処理1と同様に下部ノズル23aより排出した。
<蒸気加熱処理後のエアリークテストおよび外観検査>
上述の蒸気加熱を50回繰り返し実施した後に、カートリッジ式中空糸膜モジュールのエアリークテストを実施してシール性を評価した。中空糸膜モジュール1Aの下部キャップ23を開放し、中空糸膜モジュール内の水を排水した後に下部キャップ23aを閉止した。続いて上部ノズル22aより100kPaのエアを供給し、中空糸膜モジュール内の圧力推移を測定した。中空糸膜モジュール内の圧力低下が5分間で5kPa以内の時を「リークなし(良):A」、圧力が5kPaを超えて低下した時を「リークあり(不良):B」とした。
本評価においては、中空糸膜はバブルポイント圧力が200kPa以上であり、かつ中空糸膜の細孔内が水で満たされているため、エアが中空糸膜の細孔を透過しない。したがって、エアリークがあった場合、第1ポッティング部5に存在するクラックを介してリークしたと判断した。
エアリークテスト後にハウジング2から中空糸膜カートリッジ3を取り出して、第1ポッティング部5のクラックの有無を確認した。
<ポリフッ化ビニリデン精密ろ過中空糸膜の作製>
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマー38質量部と、γ-ブチロラクトン62質量部とを混合し、160℃で溶解した。この高分子溶液を、γ-ブチロラクトン85質量%水溶液を中空部形成液体として随伴させながら、二重管の口金から吐出し、γ-ブチロラクトン85質量%水溶液からなる冷却浴中で凝固させて、ポリフッ化ビニリデン製精密ろ過中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜は、外径1250μm、内径800μmであった。
(実施例1)
中空糸膜束5,400本を束ね、中空糸膜の一端の中空部を接着剤で封止した。接着剤で封止した側の中空糸膜束を第1ポッティング用ケースに挿入した。ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、“jER(登録商標)”828)と、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンを質量比100:31.5となるように混合した。続いて、得られたエポキシ樹脂組成物を第1ポッティングケースに注入し、室温で24時間静置して、ポッティング剤を予備硬化させた。硬化後に第1ポッティングケースを取り外し、さらに100℃で5時間の熱処理を行い本硬化させた。その後、第1ポッティング部5の端面を切断して中空糸膜の第1端部を開口させた。得られた第1ポッティング部5の外観は図1に示す形状であった。第1ポッティング部5のガラス転移温度は130℃であり、第1ポッティング部5の最大直径Dmaxは165mmであり、傾斜部52の傾斜角度は60°であった。
続いて、中空糸膜束の他端部を第2ポッティングケースに挿入した。第1ポッティング部5と同一の組成からなるエポキシ樹脂を混合してエポキシ樹脂組成物を調製し、第2ポッティングケースに注入した。エポキシ樹脂を注入後、室温で24時間静置することにより、ポッティング剤を予備硬化させた。続いて、第2ポッティングケースおよびピンを取り外し、さらに100℃で5時間の熱処理を行い本硬化させた。これにより貫通孔を有する第2ポッティング部6を形成し、中空糸膜カートリッジ3を作製した。このとき、Dmaxは165mm、D/Dmaxは0.82、Dmax/Hは5.5であり、つば部51の圧力P51は16.3kPaであった。
中空糸膜カートリッジ3をステンレス製ハウジング2に装着し、上部キャップ22および下部キャップ23を取り付けて中空糸膜モジュール1Aとした。このとき、クリアランスdは0.23mmであり、式(1)の関係を満たしていた。また、D/Dは0.024と算出された。本カートリッジ式中空糸膜モジュールのエアリークテストを行い、リークがないことを事前に確認した後、上述の方法で蒸気加熱処理1を50回行った。蒸気加熱処理した中空糸膜モジュール1Aのエアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で2kPaであり、シール性が良好であることを確認した。また、第1ポッティング部5にクラックは認められず、十分な耐熱性を有していた。
引き続いて、上述の方法で蒸気加熱処理2を100回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で36kPaであり、リークが発生した。中空糸膜カートリッジ3を確認したところ、つば部51の凹部にクラックが認められた。中空糸膜モジュールおよび評価結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1で作製した中空糸膜カートリッジ3を用い、支持リング84を用いて、図10に示す中空糸膜モジュール1Cを作製した。このとき、クリアランスdは0.27mmであった。また、D/Dは0.027と算出された。続いて、エアリークテストを行い、リークがないことを事前に確認した後、蒸気加熱処理1を50回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で2kPaであり、シール性は良好であった。また、第1ポッティング部5にクラックは認められず、十分な耐熱性を有していた。中空糸膜モジュールおよび評価結果を表1に示す。
引き続いて、上述の方法で蒸気加熱処理2を100回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で38kPaであり、リークが発生した。中空糸膜カートリッジ3を確認したところ、つば部51の凹部にクラックが認められた。中空糸膜モジュールおよび評価結果を表1に示す。
(実施例3)
傾斜支持部9および傾斜部52の傾斜角度を45°とした以外は、実施例1と同様の手法で中空糸膜モジュール1Aを作製した。この時、クリアランスdは0.28mmであった。また、D/Dは0.033と算出された。続いて、エアリークテストを行い、リークがないことを事前に確認した後、蒸気加熱処理1を50回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で4kPaであり、シール性は良好であった。また、第1ポッティング部5にクラックは認められず、十分な耐熱性を有していた。
引き続いて、上述の方法で蒸気加熱処理2を100回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で39kPaであり、リークが発生した。中空糸膜カートリッジ3を確認したところ、つば部51の凹部にクラックが認められた。中空糸膜モジュールおよび評価結果を表1に示す。
(実施例4)
第1ポッティング部5の樹脂として、シリコーンエラストマーを用いた以外は、実施例1と同様の手法で中空糸膜モジュール1Aを作製した。シリコーンエラストマーの主剤としては、ポリジメチルシロキサンを用い、硬化剤としては、ジメチルビニル化およびトリメチル化シリカを用い、主剤と硬化剤を100/10の比率で混合してシリコーンエラストマー硬化物からなる第1ポッティング部5を作製した。クリアランスdは0.23mmであった。また、Dd/Dtは0.024と算出された。
続いて、エアリークテストを行い、リークがないことを事前に確認した後、蒸気加熱処理を50回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で2kPaであり、シール性は良好であった。また、第1ポッティング部5にクラックは認められず、十分な耐熱性を有していた。
引き続いて、上述の方法で蒸気加熱処理2を100回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で4kPaであり、シール性は良好であった。また、第1ポッティング部5にクラックは認められず、十分な耐熱性を有していた。中空糸膜モジュールおよび評価結果を表1に示す。
(実施例5)
第1ポッティング部5のエポキシ樹脂にシリコーンエラストマー粒子(信越シリコーン製、X-52-7090)を添加した以外は、実施例1と同様の手法で中空糸膜モジュール1Aを作製した。エポキシ樹脂とシリコーンエラストマー粒子を質量比100/3となるように混合してシリコーンエラストマー粒子を含むエポキシ樹脂硬化物からなる第1ポッティング部5を作製した。クリアランスdは0.23mmであった。また、Dd/Dtは0.024と算出された。
続いて、エアリークテストを行い、リークがないことを事前に確認した後、蒸気加熱処理を50回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で2kPaであり、シール性は良好であった。また、第1ポッティング部5にクラックは認められず、十分な耐熱性を有していた。
引き続いて、上述の方法で蒸気加熱処理2を100回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で4kPaであり、シール性は良好であった。また、第1ポッティング部5にクラックは認められず、十分な耐熱性を有していた。中空糸膜モジュールおよび評価結果を表1に示す。
(比較例1)
傾斜支持部9を有しないハウジング2を用いた以外は、実施例1と同様の手法で、図14に示す中空糸膜モジュール100を作製した。続いて、エアリークテストを行い、リークがないことを事前に確認した後、蒸気加熱処理1を50回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で52kPaであり、リークが発生した。中空糸膜カートリッジ3を確認したところ、つば部51の凹部にクラックが認められた。中空糸膜モジュールおよび評価結果を表1に示す。
(比較例2)
クリアランスdを0.92mmとした以外は、実施例1と同様の手法で中空糸膜モジュール1Aを作製した。続いて、エアリークテストを行い、リークがないことを事前に確認した後、蒸気加熱処理1を50回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で45kPaであり、リークが発生した。中空糸膜カートリッジを確認したところ、つば部51の凹部にクラックが認められた。第1ポッティング部について、80℃における寸法を測定したところ、その膨張量は、傾斜部51と傾斜支持部9との間のクリアランスdより小さかった。よって、クラックの発生の原因は、蒸気加熱処理時に傾斜部51が傾斜支持部9に当接しなかったために、つば部51に大きな不可がかかったからであると考えられる。中空糸膜モジュールおよび評価結果を表1に示す。
(比較例3)
第1ポッティング部5の樹脂として、ポリウレタン樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の手法で中空糸膜モジュール1Aを作製した。ポリウレタン樹脂の主剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるウレタンプレポリマーを用い、硬化剤としてポリエーテルポリオールを用い、主剤と硬化剤を100/140の比率で混合してポリウレタン樹脂硬化物からなる第1ポッティング部5を作製した。
続いて、エアリークテストを行い、リークがないことを事前に確認した後、蒸気加熱処理1を50回行った。再度エアリークテストを行ったところ、圧力の低下は5分間で100kPaであり、リークが発生した。中空糸膜カートリッジ3を確認したところ、つば部51の凹部に大きなクラックが認められた。クラック発生の原因は、蒸気加熱処理時に第1ポッティング部5の樹脂強度が低下したためであると考えられる。中空糸膜モジュールおよび評価結果を表1に示す。
Figure 2023081371000002
本発明の中空糸膜モジュールは、飲料水製造、浄水処理、排水処理等の水処理、微生物または培養細胞を含む液のろ過、食品製造等、様々な用途に適用される。中空糸膜モジュールは高い耐熱性を有するため、高温での使用および温水または蒸気による熱処理に供する用途に好適に適用される。
1A 中空糸膜モジュール
2 ハウジング
21、21C~E 筒部
21a サイドノズル
22 上部キャップ
22a 上部ノズル
23 下部キャップ
23a 下部ノズル
3、3B 中空糸膜カートリッジ
4 中空糸膜
41 中空糸膜束
5、5B 第1ポッティング部
51、53 つば部
52 傾斜部
6 第2ポッティング部
71、72、75 Oリング
73、74 ガスケット
8 つば支持部
82、84 支持リング
83、85 リング支持部
841 支持リングの筒部
842 支持リングのつば部
9 傾斜支持部
max 第1ポッティング部5の最大外径
つば部の突き出し長さ
中空糸膜束の外接円直径
傾斜部の最大直径
H つば部と傾斜部を除く第1ポッティング部の高さ

Claims (7)

  1. 中空糸膜カートリッジと、前記中空糸膜カートリッジを収容可能なハウジングと、を備えるカートリッジ式中空糸膜モジュールであって、
    前記中空糸膜カートリッジは、
    複数の中空糸膜と、
    第1端で前記中空糸膜間を接着する第1ポッティング部と、
    第2端で前記中空糸膜間を接着する第2ポッティング部と、
    前記第1ポッティング部の側面に設けられたつば部、および前記つば部よりも前記第2ポッティング部側に配置された傾斜部と、
    を有し、
    前記ハウジングは、
    前記つば部に当接するつば支持部と、
    温度25℃において前記傾斜部との間にクリアランスが存在し、温度80℃において前記傾斜支持部と当接するように配置される傾斜支持部と、を有する
    カートリッジ式中空糸膜モジュール。
  2. 前記ハウジングは、筒部と、前記筒部と前記第1ポッティング部との間に配置される環状部材とを備え、
    前記環状部材がその内面に前記傾斜支持部を有する、
    請求項1に記載のカートリッジ式中空糸膜モジュール。
  3. 温度25℃における、前記傾斜部の最大直径と、第1ポッティング部の線膨張係数と、前記傾斜支持部と前記傾斜部との間に形成される前記クリアランスとが、式(1)または式(2)の関係を満たす、
    請求項1または請求項2のいずれかに記載のカートリッジ式中空糸膜モジュール。
    d≦55/2×α×D (1)
    d≦[(80-T)×α+(T-25)×α]/2×D (2)
    d:カートリッジ式中空糸膜モジュールの径方向におけるクリアランス[m]、
    :傾斜部の最大直径[m]、
    α:第1ポッティング部の線膨張係数[℃-1
    α:第1ポッティング部のガラス転移温度T以下の温度における線膨張係数
    α:第1ポッティング部のガラス転移温度T以上の温度における線膨張係数
    式(1)前記第1ポッティング部のガラス転移温度Tが80℃以上の場合に適用され、式(2)はガラス転移温度Tが25℃以上80℃未満の場合に適用される。
  4. 前記第1ポッティング部の線膨張係数が30×10-6/℃以上150×10-6/℃以下である、
    請求項3に記載のカートリッジ式中空糸膜モジュール。
  5. 前記第1ポッティング部のガラス転移温度が100℃以上160℃以下である、
    請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカートリッジ式中空糸膜モジュール。
  6. 前記傾斜支持部が、前記カートリッジ式中空糸膜モジュールの軸方向に垂直な方向との間で成す角度が45°以上75°以下であり、
    傾斜支持部と前記傾斜部の傾斜角度が同一である、
    請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のカートリッジ式中空糸膜モジュール。
  7. 前記クリアランスが0.2mm以上0.6mm以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のカートリッジ式中空糸膜モジュール。カートリッジ式中空糸膜モジュール。
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