JP2023079954A - 計測装置及び計測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】対象物の厚さと縦波音速を同時に精度よく測定することができる計測装置を提供すること。【解決手段】送信センサ2において送信信号を超音波に変換し、送信センサ2から積層体14に対して超音波を照射する。積層体14を透過した超音波を受信センサ3により時間波形として受信し、フーリエ変換部4において振幅と位相の周波数スペクトルに変換する。次に、解析部5において、計測した振幅と位相の周波数スペクトルと、解析式による振幅と位相の周波数スペクトルとの適合性を判断し、最も適合するときに解析式に用いた対象物10の厚さおよび縦波音速を、解として算出する。解析式は、送信センサ2、受信センサ3から積層体14までの間に存在する媒質を考慮し、媒質による超音波の位相変化を考慮した式である。【選択図】図1

Description

本発明は、超音波を用いて対象物の厚さと縦波音速を同時計測する計測装置および計測方法に関する。
対象物の厚さと音速を同時に計測する技術として、特許文献1や非特許文献1,2がある。
特許文献1には、超短パルスコヒーレント光を透明薄膜内で干渉させ、その内部の弾性波によって生じる干渉うねりから音速を算出することが記載されている。また、求めた音速と弾性波の薄膜内での伝搬時間から薄膜の厚さを算出することが記載されている。
非特許文献1には、対象物に超音波を照射し、対象物の表面及び裏面からの反射波を計測し、その時間差を基に対象物の厚さと音速を算出することが記載されている。
非特許文献2には、基板上の薄膜に超音波を照射し、薄膜の表面と裏面からの反射波が合成した波を計測し、その振幅の周波数スペクトルに基づいて薄膜の厚さと音速を算出することが記載されている。
特開平5-346309号公報
Graciet, C., Hosten, B., Proceedings of IEEE Ultrasonics Symposium(1994), pp.1219-1223 Zhao, Y., Lin, L., Li, M.K., NDT&E International, Vol.43, No.7(2010), pp.579-585
しかし、特許文献1の方法では、対象物内でレーザー光を干渉させる必要があるため、不透明体には適用できないという問題があった。
また、非特許文献1では、表面からの反射波と裏面からの反射波とを分離して計測する必要があり、対象物が薄い場合には適用できなかった。
非特許文献2では表面からの反射波と裏面からの反射波を分離する必要はないが、基板からの反射波は分離する必要がある。そのため、基板が薄い場合には適用が難しかった。加えて、対象物の厚さと縦波音速の両方とも振幅に依存するため、振幅を基にそれらを分離し、厚さと縦波音速を同時に精度よく算出するためには高周波数・広帯域の超音波センサが必要になる。そのため、非特許文献2の方法は水浸超音波法や接触式の超音波法にしか適用できなかった。
そこで本発明の目的は、対象物の厚さと縦波音速を同時に精度よく測定することができる計測装置及び計測方法を提供することである。
本発明は、対象物の厚さと縦波音速を同時に計測する計測装置であって、前記対象物に超音波を照射する送信部と、前記対象物からの透過波または反射波である超音波を時間波形の電気信号として受信する受信部と、前記電気信号を振幅および位相の周波数スペクトルに変換する変換部と、前記対象物の厚さおよび縦波音速を所定の値としたときの振幅および位相の周波数スペクトルを解析式により算出し、前記変換部による振幅および位相の周波数スペクトルと前記解析式による振幅および位相の周波数スペクトルとの適合性を、前記解析式に用いる前記対象物の厚さおよび縦波音速を変えて繰り返し判断し、前記変換部による振幅および位相の周波数スペクトルと解析による振幅および位相の周波数スペクトルとが最も適合するときに解析式に用いた前記対象物の厚さおよび縦波音速を、解として算出する解析部と、を有し、前記解析式は、前記送信部から前記対象物までおよび前記対象物から前記受信部までの間に存在する媒質を考慮し、前記媒質による超音波の位相変化を考慮した式である、ことを特徴とする計測装置である。
また本発明は、対象物の厚さと縦波音速を同時に計測する計測方法であって、送信部から前記対象物に超音波を照射し、前記対象物からの透過波または反射波である超音波を時間波形の電気信号として受信部で受信し、前記電気信号を振幅および位相の周波数スペクトルに変換し、前記対象物の厚さおよび縦波音速を所定の値としたときの振幅および位相の周波数スペクトルを解析式により算出し、前記変換部による振幅および位相の周波数スペクトルと前記解析式による振幅および位相の周波数スペクトルとの適合性を、前記解析式に用いる前記対象物の厚さおよび縦波音速を変えて繰り返し判断し、前記変換部による振幅および位相の周波数スペクトルと解析による振幅および位相の周波数スペクトルとが最も適合するときに前記解析式に用いた前記対象物の厚さおよび縦波音速を、解として算出し、前記解析式は、前記送信部から前記対象物までおよび前記対象物から前記受信部までの間に存在する媒質を考慮し、前記媒質による超音波の位相変化を考慮した式である、ことを特徴とする計測方法である。
本発明において、適合性は、RMSE、最尤推定法、または機械学習により判断することができる。
本発明において、媒質は空気であってもよい。
本発明において、受信部は、対象物からの透過波を受信するものであってよい。
本発明において、解析式は、分布定数回路モデルにより算出した式であってもよい。
本発明において、対象物は、複数の層で構成された積層体のうちの1層であってもよい。
本発明によれば、対象物の厚さと縦波音速を同時に精度よく測定することができる。
第1実施形態の計測装置の構成を示した図。 第1実施形態の計測方法のフローチャートを示した図。 送信センサ2から受信センサ3までの間の分布定数回路モデルを示した図。 縦波音速と振幅および位相の関係を示したグラフ。 厚さと振幅および位相の関係を示したグラフ。 縦波音速と振幅および位相の関係を示したグラフ。 厚さと振幅および位相の関係を示したグラフ。 透過波の時間波形を示したグラフ。 透過波の振幅の周波数スペクトルを示したグラフ。 透過波の位相の周波数スペクトルを示したグラフ。
(計測装置の構成について)
第1実施形態の計測装置は、対象物10の厚さと縦波音速を同時に計測可能な計測装置である。図1は、第1実施形態の計測装置の構成を示した図である。図1のように、第1実施形態の計測装置は、送受信源1と、送信センサ2と、受信センサ3と、フーリエ変換部4と、解析部5と、を有している。
対象物10は、単層の材料でもよいが、複数の層からなる材料のうちの一層であってもよい。表面からの反射波と裏面からの反射波を分離できないような薄い材料でも第1実施形態では計測可能である。たとえば、2つの薄い材料を薄い接着剤で接合した構造において、接着剤の厚さおよび縦波音速を同時計測可能である。図1には、第1被着材11、接着剤12、第2被着材13の3層の積層体14を示し、そのうち接着剤12が対象物10である場合を示している。
送受信源1は、送信センサ2、受信センサ3、およびフーリエ変換部4に接続されている。送受信源1は、超音波の送信、受信を制御する装置である。
送信センサ2は、送受信源1に接続されている。送信センサ2は、送受信源1からの送信信号(電気信号)を超音波に変換し、超音波を空中に放射して積層体14に照射する装置である。超音波の中心周波数は、たとえば50kHz~100MHzである。また、帯域幅は、たとえば10kHz~20MHzである。また、超音波の波長は、対象物10の厚さよりも長くてもよい。そのため、送信センサ2、受信センサ3として低コストなものを使用できる。
受信センサ3は、送受信源1に接続されている。積層体14を透過して空中を伝搬する超音波を受信して電気信号(時間波形)に変換する装置である。変換された電気信号は、送受信源1に入力される。なお、第1実施形態では積層体14の透過波を受信しているが、積層体14からの反射波を受信してもよい。ただし、積層体14からの反射波は透過波に比べて強度が強く、受信センサ3において受信強度が飽和しないように注意する必要がある。
送信センサ2と受信センサ3は間隔を開けて対向して配置されている。積層体14は、送信センサ2と受信センサ3の間に配置され、送信センサ2からの超音波が垂直に入射するように配置されている。
フーリエ変換部4は、送受信源1および解析部5に接続されている。フーリエ変換部4は、送受信源1からの電気信号(時間波形)を振幅および位相の周波数スペクトルにフーリエ変換して出力する装置である。フーリエ変換以外の方法によって時間波形を振幅および位相の周波数スペクトルに変換してもよい。たとえば、振幅、位相は、検波器などで直接計測してもよい。その場合、入力信号は連続波が望ましい。
解析部5は、フーリエ変換部4に接続されている。解析部5は、フーリエ変換部4からの振幅および位相の周波数スペクトルから対象物10の厚さと縦波音速を算出する装置である。具体的な算出方法については後述する。
なお、第1実施形態では、送信センサ2および受信センサ3と対象物との間は空気であり、空中超音波法で計測するものであるが、媒質は空気に限るものではなく、水など任意の媒質であってよい。
また、送信センサ2と受信センサ3を移動させる機構、あるいは対象物10を移動させる機構を設け、対象物10への超音波の照射位置を変えることにより、対象物10の厚さの分布と縦波音速の分布を計測してもよい。
(計測方法について)
次に、第1実施形態の計測装置を用いた対象物10の厚さと縦波音速の計測方法について説明する。
まず、送受信源1から送信信号を送信センサ2に送信し、送信センサ2において送信信号を超音波に変換し、送信センサ2から積層体14に対して超音波を照射する。そして、積層体14を透過した超音波を受信センサ3により受信し、超音波を時間波形の電気信号に変換する。その受信した時間波形を送受信源1において電圧値の時間波形に変換し、さらにフーリエ変換部4において振幅と位相の周波数スペクトルに変換する。送受信源1で送信信号が送信された時間を原点とする。たとえば、送信と同時にトリガー信号を出すなどして決定する。
次に、解析部5において、振幅と位相の周波数スペクトルから対象物10の厚さと縦波音速を同時に算出する。その詳細について、図2のフローチャートを参照に説明する。
まず、振幅と位相の周波数スペクトルを、下記式(1)に示す複素数の形にまとめる(図2のステップS1)。式(1)において、V(f)は、周波数fにおける複素数表示の計測信号、A(f)は、周波数fにおける振幅の計測値、θ(f)は、周波数fにおける位相の計測値、jは虚数単位である。
Figure 2023079954000002
次に、V(f)を、事前に求めておいた基準試験片における計測信号Vm0(f)で割り、比複素透過率Tr’(f)を算出する(図2のステップS2)。基準試験片は、厚さ、縦波音速、密度が既知の材料で、減衰が少ない平板上が好ましい。
次に、ある厚さおよび縦波音速における積層体14の複素透過率Tr(f)を解析的に算出する(図2のステップS3)。その解析モデルの詳細は後述するが、送信センサ2および受信センサ3から対象物10までの間の空気層も考慮したモデルとなっている。Tr(f)は、下記式(2)で表される。式(2)において、A(f)は、周波数fにおける振幅の解析値、θ(f)は、周波数fにおける位相の解析値、jは虚数単位である。
Figure 2023079954000003
次に、Tr(f)を、事前に解析的に求めておいた基準試験片の複素透過率Trc0(f)で割り、比複素透過率Tr’(f)を算出する(図2のステップS4)。
なお、V(f)、Tr(f)を基準試験片に対する比に変換しているのは、次の理由による。計測信号は送信信号と複素透過率の積に相当し、計測信号と複素透過率とでは単位・スケールが違う。そのため、V(f)とTr(f)のままでは両者を比較できない。そこで、V(f)およびTr(f)を基準試験片に対する比にすることで無次元化とスケール調整を行い、両者を比較できるようにしている。
次に、Tr’(f)およびTr’(f)のRMSEを、下記式(3)によって算出する(図2のステップS5)。
Figure 2023079954000004
式(3)において、nは周波数の総数、fiはi番目の周波数である。nはたとえば10以上であれば十分に精度よく厚さと縦波音速を同時計測できる。nは好ましくは50以上である。n個の周波数の選び方は特に規定するものではないが、たとえば等周波数間隔で選ぶとよい。また、対象物10の共振周波数近傍を含まないように周波数を選ぶとよい。共振周波数近傍では受信センサ3の受信強度が強く、飽和してしまう恐れがあるためである。
ステップS3からS5までを、解析に用いる厚さおよび縦波音速を変更して繰り返し、事前に決めておいたすべての厚さおよび縦波音速の組み合わせでRMSEを算出する(図2のステップS6)。
次に、RMSEが最も小さかったときのTr’(f)に用いた厚さと縦波音速を、対象物10の厚さおよび縦波音速として出力する(図2のステップS7)。なお、対象物10の密度とポアソン比が既知であれば、縦波音速からヤング率を算出することが可能である。
このステップS3~S6は、つまりはTr’(f)とTr’(f)がどれだけ適合しているかをRMSEによって評価し、厚さと縦波音速の組み合わせを総当り的に変えて、最も適合するときのTr’(f)を求め、そのTr’(f)に用いた厚さと縦波音速の組み合わせを解とするものである。しかし、Tr’(f)とTr’(f)の適合度の指標はRMSEに限らず、最も適合するものを選ぶ方法も上記に限らない。たとえば、最尤推定法や機械学習によって最も適合するTr’(f)を求めてもよい。
(解析式について)
次に、複素透過率Tr(f)およびTrc0(f)の算出に用いる解析式について説明する。
複素透過率Tr(f)およびTrc0(f)は、分布定数回路モデルに基づいて導かれた解析式によって算出される。分布定数回路モデルは、ある回路素子での入出力信号の関係を、その回路素子の反射・透過・伝搬特性を表現したSパラメータと呼ばれる式で表したモデルである。Sパラメータである行列Sは、下記式(4)の通りである。
Figure 2023079954000005
以下、分布定数回路モデルによる解析式の導出について説明する。第1実施形態における送信センサ2から受信センサ3までの間を分布定数回路モデルで表したのが図3である。図3のように、Sパラメータは、送信センサ2と積層体14との間の空気層がS、空気層と第1被着材11との界面がS12、第1被着材11がS、第1被着材11と接着剤12の界面がS23、接着剤12がS、接着剤12と第2被着材13との界面がS34、第2被着材13がS、第2被着材13と空気層との界面がS45、第2被着材13と受信センサ3との間の空気層がSであり、S、S12、S、S23、S、S34、S、S45、Sの順に縦列接続された回路モデルである。
各層及び界面のSパラメータは、次の式(5)、(6)で表される。
Figure 2023079954000006

Figure 2023079954000007
式(5)において、cは第n層における超音波の縦波音速、tは第n層の厚さである。ここで、cは下記式(7)で表される。
Figure 2023079954000008
式(7)において、Eは第n層のヤング率、ρは第n層の密度、νは第n層のポアソン比である。式(7)のように、材料の密度とポアソン比が既知であれば、縦波音速からヤング率を算出することができる。
また、式(6)において、Γ(n+1) nは、第n層から第(n+1)層に向かって超音波が伝搬したときの反射率を示し、Tr(n+1) nは、第n層から第(n+1)層に向かって超音波が伝搬したときの反射率を示している。
Γ(n+1) n、Tr(n+1) nは、次の式(8)、(9)で表される。
Figure 2023079954000009
Figure 2023079954000010
式(8)、(9)においてZは第n層の音響インピーダンスであり、下記式(10)で表される。
Figure 2023079954000011
SパラメータをTパラメータに変換することで、縦列接続は単に行列の掛け算で表すことができる。SパラメータからTパラメータの変換は式(11)で表される。また、送信センサ2から受信センサ3までの全体のTパラメータ(Tall)は式(12)で表される。
Figure 2023079954000012
Figure 2023079954000013
式(12)において、Tは第n層のTパラメータであり、Tn (n+1)は第n層と第(n+1)層の界面のTパラメータである。
式(12)により求めたTパラメータTallを再びSパラメータに変換して、送信センサ2から受信センサ3までの全体のSパラメータSallが算出される。TallからSallへの変換は式(13)で表される。
Figure 2023079954000014
式(6)と比較するとわかるように、Sallの成分Sall21が、送信センサ2から受信センサ3までの複素透過率であり、Tr(f)に相当する。このようにして、分布定数回路モデルによるTr(f)の解析式が求まる。なお、Sallの成分Sall11が複素反射率に相当する。
以上のようにして算出されたTr(f)の解析式は、各界面での反射波・透過波の振幅と位相の関係が考慮されている。つまり、反射波・透過波の重なり方が考慮されている。よって、反射波・透過波が重なり合うような厚さが薄い対象物10であっても、精度よく厚さを求めることができる。
また、式(12)のように、送信センサ2および受信センサ3から対象物10までの間の空気層をT、Tとして考慮しており、空気層における超音波の位相変化が考慮されている。そのため、対象物の厚さが複素透過率Tr(f)の位相に強く反映されるようになり、Tr’(f)とTr’(f)の適合性もより適切に評価できるようになる。
なお、解析式は必ずしも分布定数回路モデルに基づくものでなくともよく、送信センサ2および受信センサ3から対象物10までの間の空気層が考慮され、その空気層における超音波の位相変化が考慮されていれば任意でよい。たとえば、各層における音圧、粒子速度の伝搬式と、各層間における音圧、粒子速度の関係式から、反射波および透過波の振幅と位相を解析するモデルを用いてもよい。
以上、第1実施形態では、超音波の振幅だけでなく位相も計測して利用し、さらに送信センサ2、受信センサ3と対象物10との間の媒質(空気)を超音波が伝搬する際の位相変化も考慮して解析を行っている。そのため、対象物10の厚さと縦波音速を同時に精度よく計測することができる。
また、第1実施形態では、低周波でも精度よく厚さと縦波音速を求めることができるので、非接触の空中超音波法でも利用することができる。また、多層構造体中の薄い層であっても厚さと縦波音速を同時に計測することができる。たとえば、接着接合体における接着剤の厚さと縦波音速も計測することができる。したがって、接触式や水浸式では厚さと縦波音速を同時計測することが困難であった対象物10であっても、第1実施形態によれば計測が可能であり、従来よりも厚さと縦波音速を同時計測可能な対象物の範囲が広くなっている。
次に、第1実施形態に関する各種実験結果について説明する。
(実験1)
図4、5は、空気層を考慮しないで解析を行い、複素透過率の振幅と位相を算出した結果である。また、図6、7は、空気層を考慮して解析を行い、複素透過率の振幅と位相を算出した結果である。図4(a)、図6(a)は縦波音速と振幅の関係、図4(b)、図6(b)は縦波音速と位相の関係を示している。接着剤の厚さは100μmとし、縦波音速は400~1200m/Sとした。図5(a)、図7(a)は厚さと振幅の関係、図5(b)、図7(b)は厚さと位相の関係を示している。接着剤の縦波音速は1500m/Sとし、厚さは0~800μmとした。また、図4~7において第1被着材11は厚さ1mmのAl板、第2被着材13は厚さ0.8mmの鋼板とし、接着剤12の密度は1264kg/m、ポアソン比は0.3とした。また、超音波の周波数は330kHzとした。また、図6、7において送信センサ2と受信センサ3間の距離は30mmとし、送信センサ2から対象物10までの距離(第1被着材11までの距離)は14mmとした。また、空気の音速は340m/sとし、音響インピーダンスは408kg/(s・m)とした。
振幅のみを考慮して厚さと縦波音速を計測していた従来の方法では、空気層を考慮する必要がなかった。これは、図4(a)と図6(a)、および図5(a)と図7(a)を比較するとわかるように、空気層を考慮してもしなくても同じ結果となるためである。しかし、図4(a)と図5(a)を比較するとわかるように、縦波音速が増加したときと厚さが減少したときとで振幅の変化傾向が似ている。つまり、振幅の変化が縦波音速の変化によるものか厚さの変化によるものかの判断が困難である。そのため、振幅のみでは厚さと縦波音速とを分離して正確に算出することが難しい。
そこで、第1実施形態では、振幅だけでなく位相も含めて解析式との適合性を判断することとした。しかし、位相も考慮することとすると、実際の計測には空気層の位相変化も含まれる。そのため、空気層を考慮しない解析式では適切に適合性を判断することができない。そこで、図6、7のように、解析式に空気層も考慮することとした。
図5(b)と図7(b)を比較するとわかるように、空気層を考慮すると、位相が厚さの変化に対して変化するようになる。送信センサ2と受信センサ3の距離が一定であるため、接着剤12の厚さの変化によって空気層の厚さも変化し、空気層における位相変化が効いてくるためである。このように、空気層を考慮して解析を行うと、位相に厚さの影響が強く表れるようになる。その結果、位相から厚さを正確に算出できるようになる。
以上のように、解析式に空気層を考慮し空気層における位相変化を考慮したうえで、振幅と位相の両方で計測値と解析式との適合性を判断することで、厚さと縦波音速の同時に算出可能となることが図4~7からわかる。
(実験2)
積層体14の透過波を有限要素法でシミュレーションし、そこから接着剤12の厚さと縦波音速を第1実施形態の方法によって算出した(実施例1)。積層体14の各種物性は表1の通りである。
Figure 2023079954000015
接着剤12は、厚さや縦波音速の異なる三種類(接着剤A、B、C)を用いた。また、比較のため、空気層を考慮しない解析式を用い、振幅のみを用いて計測値と解析式の適合性をRMSEで判断した場合について接着剤12の厚さと縦波音速を算出した(比較例1)。
有限要素法シミュレーションでは、対象物10に照射する超音波信号として、中心波長330kHzの空中超音波センサから実際にサンプリングした波形を用いた。送信センサ2と受信センサ3間は30mm、送信センサ2から第1被着材11までの距離は14mm、空気の音速は340m/s、音響インピーダンスは408kg/(s・m)とした。また、基準試験片は厚さ1mmのAl板とした。
図8は、受信センサ3により受信した透過波の時間波形を示したグラフである。この時間波形は、有限要素法シミュレーションにより得られたものである。また、図9、10は、この時間波形をフーリエ変換した振幅と位相の周波数スペクトルである。ここで振幅と位相は、基準試験片での振幅、位相を基準とした相対値で示している。なお相対値は、振幅では基準試験片での振幅に対する比、位相では基準試験片での位相との差をとっている。
図9の周波数スペクトルにおいて強い振幅が得られた周波数320~350kHzにおける振幅と位相を用いて、解析式との適合性をRMSEにより評価した。周波数は320~350kHzの間で等間隔に50点とした。解析式の厚さと縦波音速は、厚さ0~500μmの範囲を1μm間隔で走査し、縦波音速はヤング率から式(7)により求めたが、ヤング率を0.5~4.5GPaの範囲で0.01GPaずつ変化させて、730~2308m/sの範囲で走査した。縦波音速を式(7)から求めるのではなく、直接変化させて走査してもよい。
厚さと縦波音速の算出結果を表2に示す。
Figure 2023079954000016
表2のように、比較例1では算出結果が正解と大きく異なっていたのに対し、実施例1では算出結果が正解に近い値となっていた。この結果から、空気層を考慮した解析式を用い、振幅と位相の両方用いて解析式との適合性を判断することで、接着剤12の厚さと縦波音速を同時に精度よく計測できることが分かった。
本発明は、たとえば接着剤の厚さと縦波音速を測定し、接着剤の未硬化や接着不良を検出するのに利用できる。
1:送受信源
2:送信センサ
3:受信センサ
4:フーリエ変換部
5:解析部

Claims (7)

  1. 対象物の厚さと縦波音速を同時に計測する計測装置であって、
    前記対象物に超音波を照射する送信部と、
    前記対象物からの透過波または反射波である超音波を時間波形の電気信号として受信する受信部と、
    前記電気信号を振幅および位相の周波数スペクトルに変換する変換部と、
    前記対象物の厚さおよび縦波音速を所定の値としたときの振幅および位相の周波数スペクトルを解析式により算出し、前記変換部による振幅および位相の周波数スペクトルと前記解析式による振幅および位相の周波数スペクトルとの適合性を、前記解析式に用いる前記対象物の厚さおよび縦波音速を変えて繰り返し判断し、前記変換部による振幅および位相の周波数スペクトルと解析による振幅および位相の周波数スペクトルとが最も適合するときに解析式に用いた前記対象物の厚さおよび縦波音速を、解として算出する解析部と、
    を有し、
    前記解析式は、前記送信部から前記対象物までおよび前記対象物から前記受信部までの間に存在する媒質を考慮し、前記媒質による超音波の位相変化を考慮した式である、
    ことを特徴とする計測装置。
  2. 前記適合性は、RMSE、最尤推定法、または機械学習により判断する、ことを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
  3. 前記媒質は空気である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の計測装置。
  4. 前記受信部は、前記対象物からの透過波を受信する、ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の計測装置。
  5. 前記解析式は、分布定数回路モデルにより算出した式である、ことを特徴とする請求項1から請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の計測装置。
  6. 前記対象物は、複数の層で構成された積層体のうちの1層である、ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の計測装置。
  7. 対象物の厚さと縦波音速を同時に計測する計測方法であって、
    送信部から前記対象物に超音波を照射し、
    前記対象物からの透過波または反射波である超音波を時間波形の電気信号として受信部で受信し、
    前記電気信号を振幅および位相の周波数スペクトルに変換し、
    前記対象物の厚さおよび縦波音速を所定の値としたときの振幅および位相の周波数スペクトルを解析式により算出し、前記変換部による振幅および位相の周波数スペクトルと前記解析式による振幅および位相の周波数スペクトルとの適合性を、前記解析式に用いる前記対象物の厚さおよび縦波音速を変えて繰り返し判断し、前記変換部による振幅および位相の周波数スペクトルと解析による振幅および位相の周波数スペクトルとが最も適合するときに前記解析式に用いた前記対象物の厚さおよび縦波音速を、解として算出し、
    前記解析式は、前記送信部から前記対象物までおよび前記対象物から前記受信部までの間に存在する媒質を考慮し、前記媒質による超音波の位相変化を考慮した式である、
    ことを特徴とする計測方法。
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