JP2023078110A - 鉄道車両 - Google Patents

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Koyo Naito
浩 新村
Hiroshi Niimura
正樹 下村
Masaki Shimomura
徳仁 水谷
Norihito Mizutani
学 松本
Manabu Matsumoto
敦 鈴木
Atsushi Suzuki
健二 榊原
Kenji Sakakibara
頼数 頭本
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Abstract

【課題】漏洩電流の検出精度を向上できる鉄道車両を提供すること。【解決手段】パンタグラフ17から電力が供給される供給線18と、車輪13を介して接地される接地線40とを含む電気回路にSIV30等の電気機器が接続され、供給線18からの電力によって電気機器が作動する。この電気回路に生じる漏洩電流を監視する漏洩電流監視装置80は、供給線18が通される供給側変流器87(供給側計測器)により供給線18の電流値A1を計測し、接地線40が通される接地側変流器88(接地側計測器)により接地線40の電流値A2を計測する。この供給側変流器87の電流値A1と接地側変流器88の電流値A2との差分から、接地側変流器88を迂回するように発生した漏洩電流の値を精度良く算出できる。よって、漏洩電流監視装置80は漏洩電流の検出精度を向上できる。【選択図】図1

Description

本発明は、漏洩電流の検出精度を向上できる鉄道車両に関するものである。
鉄道車両は、例えば架線からパンタグラフを介して供給される電力をVVVFインバータやSIV等の変換装置で変換して出力し、その出力された電力で電動機などを作動させる電気回路を備えている。特許文献1では、パンタグラフからの電力の入力位置に変流器(電流検出器)を設置して、その入力位置の電流値を変流器で計測する。この計測した電流値の単位時間当たりの変化量が閾値を超えた場合に、所定値以上の漏洩電流(地絡電流)が鉄道車両の電気回路に生じたと判断することが特許文献1に開示されている。
特開2012-223020号公報
しかしながら、パンタグラフからの電力の入力位置における電流値は、漏洩電流の発生だけでなく、鉄道車両の走行状態や架線の電圧などによっても変化するため、特許文献1に開示された方法では、発生した漏洩電流の値を算出することが困難であり、漏洩電流の検出精度が低いという問題点があった。また、漏洩電流が生じた場所によっては、特許文献1に開示された方法で漏洩電流を検出できない可能性もある。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、漏洩電流の検出精度を向上できる鉄道車両を提供することを目的とする。
この目的を達成するために本発明の鉄道車両は、架線から電力の供給を受けるパンタグラフと、車両走行用の電力を発生させる三相4線式以外の車載電源との内の少なくとも一方が搭載されてレール上を走行するものであって、前記レール上を転動する複数の車輪と、その車輪に接続されて接地される接地線と、前記パンタグラフ又は前記車載電源から電力が供給される供給線と、その供給線および前記接地線を含む電気回路に接続されて前記供給線からの電力によって作動する電気機器と、前記電気回路に生じる漏洩電流を監視する監視装置と、を備え、その監視装置は、前記供給線の電流値を計測する供給側計測器と、前記接地線の電流値を計測する接地側計測器と、を備えている。
なお、パンタグラフから供給線へ供給される電力は、直流電力でも良く交流電力でも良い。三相4線式以外の車載電源としては、蓄電池や、燃料電池を含む直流発電機、単相交流発電機、三相3線式の交流発電機が挙げられる。更に、車載電源は、発電機および蓄電池の少なくとも一方と、その発電機や蓄電池から入力された電力を変換・調整して出力する調整装置とを備えても良い。また、鉄道車両には、パンタグラフ又は車載電源のいずれか一方のみを搭載しても良く、パンタグラフ及び車載電源の両方を搭載しても良い。パンタグラフ及び車載電源の両方を搭載する場合、供給線への電力供給をパンタグラフと車載電源とで切り換え可能としても良い。接地線は、鉄道車両に搭載されるものであり、レールとは異なる。供給線および接地線を含む電気回路とは、例えば、この鉄道車両に連結された別の車両を介して形成される電気回路でも良い。
また本発明の鉄道車両は、レール上を走行するものであって、前記レール上を転動する複数の車輪と、その車輪に接続されて接地される接地線と、その接地線に中性線が接続される三相4線式の電源であって車両走行用の電力を発生させる車載電源と、その車載電源から電力が供給される3本の供給線と、それらの供給線を含む電気回路に接続されて前記供給線からの電力によって作動する電気機器と、前記電気回路に生じて前記中性線を通る漏洩電流を監視する監視装置と、を備え、その監視装置は、3本の前記供給線の電流値をそれぞれ個別に計測する3つの供給側計測器を備えている。
請求項1記載の鉄道車両によれば、パンタグラフ又は車載電源から電力が供給される供給線と、車輪を介して接地される接地線とを含む電気回路に電気機器が接続され、供給線からの電力によって電気機器が作動する。この電気回路に生じる漏洩電流を監視する監視装置は、供給側計測器により供給線の電流値を計測し、接地側計測器により接地線の電流値を計測する。
例えば、電気回路に漏洩電流が生じず、供給線(供給側計測器の計測位置)を通った電流の全てが、接地線(接地側計測器の計測位置)を通る場合には、鉄道車両の走行状態や架線の電圧の変化に関わらず、供給側計測器の電流値と接地側計測器の電流値とが基本的に一致する。そのため、供給側計測器の電流値と接地側計測器の電流値との差分から、接地側計測器を迂回するように発生した漏洩電流の値を精度良く算出できる。よって、監視装置は、供給線および接地線の両方の電流値を計測することにより、漏洩電流の検出精度を向上できる。
なお、「監視装置は、供給線および接地線の両方の電流値を計測することにより、漏洩電流の検出精度を向上できる」とは、監視装置自体で漏洩電流の値を精度良く算出(検出)する場合に限らず、鉄道車両の外部のサーバ等で漏洩電流の値を精度良く算出できるように、その算出に利用する電流値を監視装置で計測しておくことを含む。
請求項2記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。鉄道車両のレール方向の両端部には、別車両に連結可能な一対の連結部がそれぞれ設けられている。この一対の連結部の間に供給線の供給引通線が引き通され、供給線の供給上流線が供給引通線とパンタグラフ又は車載電源とを繋ぐ。供給側計測器は、供給上流線の電流値を計測する。これにより、供給引通線が別車両に接続されて別車両からの電流が供給引通線に流れる場合などでも、この鉄道車両に搭載されたパンタグラフ又は車載電源から供給線へ供給される電力の電流値を正確に検出できる。
請求項3記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。鉄道車両のレール方向の両端部には、別車両に連結可能な一対の連結部がそれぞれ設けられている。接地線は、一対の連結部の間に引き通されて電気機器が接続される接地引通線と、接地引通線から分岐する集約線と、複数の車輪を同電位とするようにこれらの車輪と集約線とを連結する接地端子部と、を備えている。接地側計測器は、集約線の電流値を計測する。これにより、例えば集約線を迂回せずに流れる電流(漏洩電流以外の電流)を、集約線で合流した後であって複数の車輪へ分流される前に接地側計測器でまとめて検出できる。
請求項4記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。供給側計測器の電流値と接地側計測器の電流値との差分を漏洩電流として算出する場合、その差分は、供給線と接地線との間の電位差に影響を受ける。これに対し、監視装置は、供給線と接地線との間の電位差を電位差計測部で計測し、電位関連付手段によって、その電位差の計測時の供給側計測器および接地側計測器の電流値に、電位差計測部で計測した電位差を関連付ける。これにより、供給側計測器および接地側計測器の電流値の差分を電位差に基づき補正して、漏洩電流の値を算出できるので、漏洩電流の検出精度をより向上できる。
なお、「A」(例えば供給側計測器および接地側計測器の電流値)に、「B」(例えば電位差計測部で計測した電位差)を関連付けるとは、例えば、「A」と「B」とを互いに関連付けた状態で同一のメモリに記憶しても良く、「A」及び「B」を別々のメモリに記憶して「A」及び「B」の計測日時に基づき両者を関連付けても良い。更に、「A」及び「B」を用いて特定の値を算出することを、「A」に「B」を関連付けるとしても良い。
請求項5記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。監視装置は、鉄道車両の走行状態(電気機器の制御状態や時刻、進行方向、走行速度、走行位置、外気の温度、湿度など)を取得手段で取得し、状態関連付手段によって、その取得時の供給側計測器および接地側計測器の電流値に、その取得した走行状態を関連付ける。これにより、例えば、供給側計測器の電流値と接地側計測器の電流値との差分から算出した漏洩電流の値が、特定の走行状態に限って大きくなる場合には、その特定の走行状態で電流が流れる部分に漏洩電流が発生していると推定できる。よって、漏洩電流の発生の原因を解析し易くできる。
請求項6記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。送信部は、供給側計測器および接地側計測器で計測した電流値に関するデータを鉄道車両の外部へ送信する。これにより、供給側計測器の電流値と接地側計測器の電流値とからの漏洩電流の算出や、算出された漏洩電流に対する解析を鉄道車両の外部で実行できる。これらの算出や解析を監視装置で実行させる場合と比べ、監視装置を小型化およびコストダウンし易くできる。
なお、「X」(例えば、供給側計測器および接地側計測器で計測した電流値)に関するデータとは、「X」のデータ自体でも良く、「X」を用いて算出した値(例えば、電流値の差分や複数の差分の平均値)のデータでも良い。
請求項7記載の鉄道車両によれば、請求項6記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。監視装置は、供給側計測器の電流値と接地側計測器の電流値との差分を差分算出手段で算出する。送信判断手段では、差分算出手段で算出された差分に基づき、その差分に関するデータを送信部から鉄道車両の外部へ送信するかを判断する。その送信判断手段で送信すると判断した場合に、送信許可手段では、差分に関するデータを送信部から鉄道車両の外部へ送信可能とする。これにより、例えば、差分に関するデータのうち、漏洩電流の解析に有効なデータを選定して外部へ送信できるので、鉄道車両から外部への送信頻度や送信量を抑制できる。また、仮に外部への送信までにデータを監視装置に一時記憶する場合には、その一時記憶するデータ量を少なくでき、監視装置を小型化およびコストダウンし易くできる。
請求項8記載の鉄道車両は、請求項1から7のいずれかに記載の鉄道車両を電力供給車とする車両編成内において、その電力供給車から電力の供給を受けてレール上を走行する鉄道車両である。本鉄道車両は、連結部によって電力供給車に直接または別の車両を介し連結され、連結部を介して電力供給車から供給される電力で電気機器を作動させる。その電気機器を接地させるために、自車接地線は、レール上を転動する車輪と電気機器とを連結する。この場合、電力供給車の供給線(供給側計測器の計測位置)を通る電流は、その電力供給車の接地線(接地側計測器の計測位置)を通る電流と、本鉄道車両の自車接地線を通る電流と、本鉄道車両または電力供給車に生じる漏洩電流とに分かれる。
自車接地側計測器は、自車接地線の電流値を計測する。これにより、自車接地側計測器の電流値と、電力供給車の供給側計測器および接地側計測器の電流値とに基づき、本鉄道車両または電力供給車に生じる漏洩電流の値を精度良く算出できる。
請求項9記載の鉄道車両によれば、この鉄道車両に搭載されて車両走行用の電力を発生させる車載電源は、車輪を介して接地される接地線に中性線が接続された三相4線式の電源である。この車載電源から3本の供給線に電力が供給され、それらの供給線を含む電気回路に電気機器が接続され、供給線からの電力によって電気機器が作動する。この電気回路に生じて中性線を通る漏洩電流を監視する監視装置は、3つの供給側計測器により3本の供給線の電流値をそれぞれ個別に計測する。
この電気回路に漏洩電流が生じていなければ、基本的に、鉄道車両の走行状態に関わらず、3つの供給側計測器の電流値の合計(差分)が0となる。一方、供給側計測器を迂回するように中性線に漏洩電流が流れた場合、3つの供給側計測器の電流値の合計が漏洩電流の値となり、漏洩電流の値を精度良く算出できる。よって、監視装置は、3本の供給線の電流値を計測することにより、漏洩電流の検出精度を向上できる。
第1実施形態における鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。 (a)は供給側変流器および接地側変流器で計測される電流値の経時変化を示すグラフであり、(b)は漏洩電流の値の経時変化を示すグラフである。 鉄道車両の電気的構成を示したブロック図である。 制御装置のCPUで実行されるメイン処理のフローチャートである。 漏洩電流監視装置の電気的構成を示したブロック図である。 (a)は走行状態リングバッファの内容を模式的に示した図であり、(b)はピーク検出メモリの内容を模式的に示した図であり、(c)は短期変化検出メモリの内容を模式的に示した図である。 漏洩電流監視装置のCPUで実行されるメイン処理のフローチャートである。 ピーク検出処理のフローチャートである。 アベレージ検出処理のフローチャートである。 サイクル収集処理のフローチャートである。 第2実施形態における鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。 第3実施形態における鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。 第4実施形態における鉄道車両の電気回路を模式的に示した回路図である。
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず図1を参照して第1実施形態における鉄道車両10の概要を説明する。図1は、鉄道車両10の電気回路を模式的に示した回路図である。
鉄道車両10は、直流電車であって、金属製の車体12と、その車体12を支持してレール2上を転動する複数の車輪13と、車体12のレール方向(前後方向)の両端にそれぞれ設けた連結部14と、を主に備えている。更に、鉄道車両10は、動力としての複数の電動機22を備え、電動機22で車輪13を回転させてレール2上を自走する動力車である。
連結部14は、鉄道車両10と別の車両とを機械的に連結して車両間の引張力や圧縮力を伝達する連結器と、鉄道車両10と別の車両とを電気的に連結する電気連結器と、を含む。なお、本実施形態では、鉄道車両10が別の車両と連結されていない場合について説明する。
レール2の上方には架線4が架け渡されている。この架線4には、接地されたレール2に対し変電所6で起電力を生じさせることにより、高電圧(本実施形態では1500V)の直流電流が流れる。金属製の車輪13がレール2を介して接地されているので、鉄道車両10の車体12の上部に設けたパンタグラフ17を上昇させて架線4に接触させることにより、変電所6と架線4と鉄道車両10内部の電気回路とレール2とによって閉回路が形成される。これにより、架線4からパンタグラフ17を介して鉄道車両10の電気回路に直流電力が供給される。
鉄道車両10の電気回路は、パンタグラフ17から車両走行用の電力の供給を受ける供給線18と、その供給線18から入力された電力を変換して出力するVVVFインバータ20及びSIV(静止型インバータ)30と、VVVFインバータ20及びSIV30を接地させる接地線40と、を主に備えている。
接地線40は、車輪13に接続されて接地される部位である。接地線40は、鉄道車両10の両端の連結部14間に引き通される接地引通線41と、その接地引通線41から分岐する集約線42と、この集約線42と複数の車輪13とを連結する接地端子部43と、を備えている。
接地引通線41は、VVVFインバータ20及びSIV30を含む複数の電気機器がそれぞれ接続される部位であり、別の車両に設けた接地引通線に連結部14を介して接続可能に構成されている。
集約線42は、複数の電気機器が接続された接地引通線41と、複数の車輪13が接続された接地端子部43との間の電流をまとめるための1本の電線である。なお、接地引通線41と接地端子部43との間を複数の電線で連結し、その複数の電線を1束にまとめたものを集約線42としても良い。
接地端子部43は、鉄道車両10に設けた全ての車輪13を同電位とするための部位である。接地端子部43と複数の車輪13とを繋ぐ各電線の抵抗値を同一とすることで、それらの複数の車輪13が同電位となる。これにより、複数の車輪13を流れる電流値をそれぞれ均一化でき、不均等による迷走電流の発生を抑制できる。
また、接地端子部43に車体12が電気的に接続されることで、車体12が集約線42を介さずに接地される。なお、接地端子部43と車体12との間に抵抗器(図示せず)を介することで、レール2から車体12へと吸い上げる迷走電流の発生を抑制できる。
VVVFインバータ20及びSIV30はいずれも、供給線18から入力される直流電力を交流電力に変換・調整して出力する変換装置である。VVVFインバータ20及びSIV30の入力側には、分岐した供給線18が接続される正極端子と、接地引通線41から分岐した接地側電線45が接続される負極端子とがそれぞれ設けられている。
接地側電線45と接地引通線41との間には、手動操作に応じて電路を開閉する手動開閉器(S)46aが設けられる。これにより、手動開閉器46aが閉じていれば、接地側電線45が接地され、接地線40の一部を構成する。
なお、後述する手動開閉器46b~46gは、配置が異なる以外は手動開閉器46aと同一に構成される。以下、手動開閉器46a~46gを区別せずに説明する場合、手動開閉器46と称す。
手動開閉器46を設けることにより、従来通りの定期検査で鉄道車両10の各部の絶縁抵抗を計測(漏洩電流を検出)できる。具体的に定期検査では、パンタグラフ17を下降させて架線4から供給線18への電力の供給を遮断した状態で、全ての手動開閉器46を手動で開き、供給線18やVVVFインバータ20、SIV30等の検査対象を接地線40から切り離す。その後、検査対象と、接地線40や車体12等の接地部とに接続した絶縁抵抗の計測器(図示せず)によって、接地部に電圧を印加し、その電圧印加に基づいて検査対象に生じる漏洩電流を検出し、接地部に対する検査対象の絶縁抵抗を計測する。
なお、この定期検査以外では、手動開閉器46は閉じており、パンタグラフ17が架線4に接触することで、鉄道車両10は通電状態となる。この通電時にVVVFインバータ20及びSIV30が作動する。
VVVFインバータ20は、供給線18から入力された直流電力を三相交流電力へ変換する装置であり、その三相交流電力を電動機用電線24へ出力する。この電動機用電線24が途中で分岐して複数の電動機22にそれぞれ接続され、電動機用電線24から供給される三相交流電力により電動機22が作動する。
VVVFインバータ20は、出力する交流電力の電圧および周波数を可変制御可能に構成されている。この交流電力の電圧および周波数の制御に応じて、電動機22の回転数およびトルクが制御され、鉄道車両10の走行速度が制御される。また、VVVFインバータ20は、電動機22を発電機として作動させる回生ブレーキ時に、電動機22で生じた交流電力を直流電力に変換する。この回生ブレーキ時には、レール2から接地線40、VVVFインバータ20、供給線18を介して架線4へ直流電流が流れる。
電動機用電線24は、3本の電線24u,24v,24wが1組になって構成される。電動機22は、三相交流電力により作動する三相誘導電動機であり、3本の電線24u,24v,24wのうち2本ずつがそれぞれ接続される3本のコイルが内蔵されている。
SIV30は、供給線18から入力された直流電力を三相交流電力へ変換する装置であり、その三相交流電力を第1低圧交流電路32へ出力する。SIV30は、固定電圧(本実施形態では440V)および固定周波数の交流電力を出力する。また、SIV30には、絶縁トランス(図示せず)が内蔵されている。これにより、SIV30の入力側と出力側とが絶縁される。このSIV30の出力側には、手動開閉器46bを介し接地引通線41に接続される電線31が設けられている。
第1低圧交流電路32は、鉄道車両10の両端の連結部14間に引き通され、連結部14を介して別の車両へ電力を供給可能に構成されている。更に、第1低圧交流電路32は、3本の電線32u,32v,32wが1組になって構成される。
第1低圧交流電路32(電線32u,32v,32w)には、三相交流電力によって作動する複数の三相交流機器15(電気機器の一種)が接続されている。各図面では、複数の三相交流機器15のうち1つを代表して示している。三相交流機器15としては、鉄道車両10の客室の温度を調整する空調機器や、電動空気圧縮機、換気装置、冷却用送風機などが例示される。
第1低圧交流電路32には、絶縁トランス34を介して第2低圧交流電路36が接続される。絶縁トランス34は、第1低圧交流電路32に接続される1次巻線と、第2低圧交流電路36に接続される2次巻線とを同一の鉄心に巻きつけたものであり、1次巻線と2次巻線とが絶縁されている。絶縁トランス34は、第1低圧交流電路32から入力された交流電力の電圧を変圧して第2低圧交流電路36に出力する。
第2低圧交流電路36は、第1低圧交流電路32と同様に、鉄道車両10の両端の連結部14間に引き通され、連結部14を介して別の車両へ電力を供給可能に構成されている。更に、第2低圧交流電路36は、3本の電線36r,36n,36tが1組になって構成される。
電線36nは、手動開閉器46cを介し接地引通線41に接続される。そのため、手動開閉器46cが閉じていれば、電線36nが接地され、接地引通線41が電線36n(第2低圧交流電路36の一部)としても機能する。絶縁トランス34は、この電線36nに対する電線36rの電位差と、電線36nに対する電線36tの電位差とがそれぞれ100Vとなるように単相の交流電力をそれぞれ出力する。即ち、絶縁トランス34は、三相交流を単相3線式の交流に変換して出力する。
電線36r,36tと接地引通線41(電線36n)との間には、接地引通線41側に手動開閉器46dを介して複数の単相交流機器16(電気機器の一種)が接続される。各図面では、複数の単相交流機器16のうち1つを代表して示し、例えば図1では、電線36rと接地引通線41との間に接続される1つの単相交流機器16を代表して示している。単相交流機器16は、絶縁トランス34で変換された単相の交流電力によって作動する機器であり、鉄道車両10の客室を照らす照明や、ヒータなどが例示される。
また、電線36r,36tと接地引通線41との間には、電線36r,36t側に整流器(図示せず)を介し、接地引通線41側に手動開閉器46eを介して、複数の直流機器19(電気機器の一種)が接続される。各図面では、複数の直流機器19のうち1つを代表して示し、例えば図1では、電線36tと接地引通線41との間に接続される1つの直流機器19を代表して示している。
なお、直流機器19は、絶縁トランス34からの交流電力を整流器で変換した直流電力によって作動する機器であり、扉の開閉装置やブレーキ制御装置などが例示される。但し、ブレーキ制御装置は、非常時に備えて蓄電池(図示せず)で作動するように構成されている。
以上説明した鉄道車両10の電気回路には、各部の絶縁抵抗の劣化などによって漏洩電流が生じることがある。この漏洩電流を監視するための漏洩電流監視装置80が鉄道車両10に搭載されている。漏洩電流監視装置80は、供給線18が通される供給側変流器87と、接地線40が通される接地側変流器88と、供給線18と接地線40との間の電位差を計測する電位差検出部89と、を備えている。
供給側変流器(供給側計測器)87及び接地側変流器(接地側計測器)88はいずれも、計測対象となる電線が貫通する環状の変流器から構成された計測器であり、その貫通部分を流れる電流値を計測する。より具体的に、変流器とは、通電により電線の貫通部分に生じた磁界を計測し、その磁界に基づいて電流の値を計測(算出)するものである。本実施形態における供給側変流器87及び接地側変流器88は、直流の電流値を計測可能に構成されているが、その構成は既知であるため説明を省略する。
供給側変流器87は、供給線18のうちVVVFインバータ20側とSIV30側とへ分岐する前の部位が通され、その部位の電流値A1を計測する。これにより、1つの供給側変流器87で、パンタグラフ17から鉄道車両10内部の電気回路へ供給される電流値A1の略全量を計測できる。
なお、供給線18のうちVVVFインバータ20側とSIV30側とへ分岐した部分に、それぞれ供給側変流器87を配置しても良い。この場合には、2つの供給側変流器87の電流値の合計が、パンタグラフ17から鉄道車両10内部の電気回路へ供給される電流値A1の略全量となる。
接地側変流器88は、接地線40の集約線42が通され、その集約線42の電流値A2を計測する。これにより、例えば、集約線42を迂回せずに流れる電流(漏洩電流以外の電流)を、集約線42で合流した後であって複数の車輪13へ分流される前に接地側変流器88でまとめて検出できる。
電位差検出部89は、既知の電圧計であり、供給側変流器87が配置された位置の供給線18と、接地側変流器88が配置された位置の集約線42との間の電位差(電圧)V1を計測する。即ち、電位差検出部89は、パンタグラフ17と接地端子部43との間の電位差V1を計測しているとも言える。
更に本実施形態では、接地端子部43とレール2(各車輪13)との間の電位差を0[V]と仮定する。この場合、電位差検出部89は、パンタグラフ17とレール2との間の電位差を計測しているとも言える。
このような漏洩電流監視装置80による漏洩電流の監視方法について、図1に加え図2を参照して説明する。図2(a)は、供給側変流器87で計測された電流値A1と、接地側変流器88で計測された電流値A2との経時変化を示すグラフである。図2(b)は、鉄道車両10の電気回路で生じた漏洩電流の値の経時変化を示すグラフである。
図2(a)及び図2(b)のグラフの縦軸はいずれも、電流値[A]である。図2(a)及び図2(b)のグラフの横軸はいずれも、時間[s]である。また、図2(a)のグラフには、供給側変流器87の電流値A1の経時変化が実線で示され、接地側変流器88の電流値A2の経時変化が破線で示されている。なお、図2(a)において、実際には重なる部分の実線と破線とを、グラフの見易さの観点から若干ずらして示している。
鉄道車両10の電気回路に全く漏洩電流が生じていない場合には、基本的に、供給側変流器87(供給線18)を通った電流の全部が、接地側変流器88(集約線42)を通る。そのため、漏洩電流が生じていない時間において、図2(a)のグラフでは、供給側変流器87及び接地側変流器88の電流値A1,A2が同一となり、図2(b)のグラフでは、漏洩電流の値が0[A]となる。
一方、例えば電動機22から車体12への漏洩電流のみが生じてその他の漏洩電流が生じていない場合には、電動機22の漏洩電流が車体12を通り、集約線42を迂回して接地端子部43からレール2へ流れる。即ち、供給側変流器87を通った電流が、接地側変流器88(集約線42)を通る正常なルートと、集約線42を通らない漏洩電流のルートとに分かれる。そのため電動機22の漏洩電流のみが生じた時間において、図2(a)のグラフでは、供給側変流器87の電流値A1よりも接地側変流器88の電流値A2が下がり、図2(b)のグラフでは、それらの電流値の差分が漏洩電流の値となって示される。
なお、鉄道車両10に架線4から供給される電圧は、同一の架線4に接続された別の車両からの影響や、変電所6から鉄道車両10までの距離などによって変化する。その変化によってパンタグラフ17と接地端子部43との間の電位差(電位差検出部89の電位差)V1が変化し、その電位差V1に反比例して、図2(a)のように供給側変流器87及び接地側変流器88の電流値がそれぞれ変動する。図2(a)には、電流値のグラフの上側に、その電流値の取得時における電位差V1が示されている。
よって、供給側変流器87の電流値A1の変動だけ、又は、接地側変流器88の電流値A2の変動だけから漏洩電流を精度良く検出することは困難である。しかし、上述の通り、電流値A1と電流値A2との差分を監視することで、電位差V1が変動しても、電動機22に生じた漏洩電流の値を精度良く算出でき、漏洩電流の検出精度を向上できる。
また、漏洩電流も電位差V1に反比例して変動するため、図2(b)のグラフには、その電位差V1が1500[V]である場合に補正(換算)した漏洩電流の値(差分Ad)を示している。具体的に、電位差V1が1500[V]である場合には、電流値A1,A2の差分を、そのまま補正後の漏洩電流の値とする。電位差V1が1800[V]である場合には、電流値A1,A2の差分を1.2倍し、補正後の漏洩電流の値とする。電位差V1が1300[V]である場合には、電流値A1,A2の差分を約0.87倍し、補正後の漏洩電流の値とする。よって、漏洩電流の値が閾値を超えたかを判断するとき、その判断が電位差V1の変動に影響を受けることを抑制できる。
なお、図2(a)及び図2(b)を用いて電動機22の漏洩電流のみが生じた場合について説明したが、漏洩電流の生じた位置に応じて漏洩電流のルートが変化し、供給側変流器87の電流値A1や接地側変流器88の電流値A2の変動の仕方も変化する。例えば、漏洩電流の発生の有無に関わらず電流値A2が電位差V1に反比例し、漏洩電流の発生時に電流値A1のみが電流値A2に対して漏洩電流の分だけ上昇することが考えられる。
供給線18やVVVFインバータ20、SIV30の入力側から車体12への漏洩電流のみが生じた場合は、電動機22の漏洩電流のみが生じた場合と同様に、漏洩電流が車体12から集約線42を迂回して接地端子部43からレール2へ流れる。そのため、これらの場合も、上述した通り電流値A1,A2の差分から、供給線18等で生じた漏洩電流の値を精度良く算出でき、漏洩電流監視装置80による漏洩電流の検出精度を向上できる。
また、電位差V1に対し電流値A1,A2の両方が反比例して変動すると共に、電流値A1に対し電流値A2が下がった場合には、その電流値A2が下がった時点で、電動機22や供給線18、VVVFインバータ20、SIV30から車体12への漏洩電流が生じたと、漏洩電流監視装置80の計測結果から推定できる。
SIV30から出力される三相交流は、第1低圧交流電路32を介し三相交流機器15を通ってSIV30に戻る。但し、この三相交流の一部は、三相交流機器15の種類にもよるが、接地引通線41及び電線31を通ってSIV30に戻ることもある。これら三相交流機器15や第1低圧交流電路32と車体12との間で漏洩電流が生じた場合、その交流の漏洩電流は、SIV30へ戻るように接地端子部43、集約線42、電線31を通る。また、漏洩電流によってSIV30の出力側を通る電流値が増加すると、SIV30に内蔵された絶縁トランスの巻線比に応じ、SIV30の入力側を通る(供給線18から接地線40へ流れる)電流値も増加する。
同様に、絶縁トランス34の出力側における単相交流機器16や第2低圧交流電路36と、車体12との間で漏洩電流が生じた場合、その漏洩電流は、絶縁トランス34へ戻るように接地端子部43、集約線42、電線36nを通る。更に、漏洩電流によって絶縁トランス34の出力側を通る電流値が増加すると、絶縁トランス34の入力側およびSIV30の出力側の電流値が増加し、SIV30の入力側を通る電流値も増加する。
このように、SIV30の出力側または絶縁トランス34の出力側の電気回路で漏洩電流が生じた場合、電位差V1の増加とは無関係に電流値A1,A2の両方が同じだけ上昇した上で、交流の漏洩電流により電流値A2が増減を繰り返す。よってこの場合にも、電流値A1と電流値A2との差分Adから、漏洩電流の値を精度良く算出でき、漏洩電流の検出精度を向上できる。また、漏洩電流監視装置80の計測結果から、このような電流値A1,A2の変動がみられた場合には、SIV30の出力側または絶縁トランス34の出力側の電気回路で漏洩電流が生じたと推定できる。
更に、漏洩電流監視装置80は、架線4から供給線18へ電流が流れる電力供給時の漏洩電流だけでなく、供給線18から架線4へ電流が流れる回生ブレーキ時の漏洩電流も検出できる。回生ブレーキ時の電流の向きは、電力供給時の直流電力の向きが逆になるだけなので、漏洩電流監視装置80は、電力供給時と略同一の方法で回生ブレーキ時の漏洩電流を検出できる。更に、電流の向きから漏洩電流が電力供給時または回生ブレーキ時のいずれで発生したかを、漏洩電流監視装置80の検出結果から解析できる。
次に図3~図10を参照して、漏洩電流監視装置80を搭載した鉄道車両10の各部の制御についてより詳しく説明する。図3は、鉄道車両10の電気的構成を示したブロック図である。
図3に示すように、鉄道車両10の制御装置60は、CPU61と、ハードディスクドライブ(HDD)62と、CPU61のプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであるRAM63とを有し、これらはバスライン64を介して、入出力ポート65にそれぞれ接続されている。
入出力ポート65には、更に、VVVFインバータ20と、SIV30と、コントローラ66と、三相交流機器15と、単相交流機器16と、直流機器19と、位置検出装置67と、速度センサ68と、温度センサ69と、湿度センサ70と、漏洩電流監視装置80と、インターネット等を介して外部サーバ90との間で情報を送受信する無線通信装置71と、がそれぞれ接続されている。
CPU61は、バスライン64により接続された各部を制御する演算装置である。HDD62は、CPU61により実行されるプログラムや各種データ等を格納した書き換え可能な不揮発性のメモリであり、制御プログラム62aが設けられる。CPU61によって制御プログラム62aが実行されると、図4のメイン処理が実行される。
コントローラ66は、VVVFインバータ20やブレーキを制御するために、鉄道車両10の運転台に搭載されて運転士が操作する機器である。コントローラ66は、VVVFインバータ20の制御により電動機22を駆動させる力行(P1,P2・・・)と、電動機22を駆動させずに惰性で鉄道車両10を走行させる惰行(N)と、鉄道車両を減速させるブレーキ(B1,B2・・・)と、を切り換える。
位置検出装置67は、鉄道車両10の走行位置を検出する装置であり、本実施形態ではGPSを利用して鉄道車両10の現在位置を取得するGPS受信機から構成される。位置検出装置67は、GPS受信機に限定されるものではなく、他の位置検出装置を採用することは当然可能である。他の位置検出装置としては、車両のモニタ情報や、軌道側から発せられる信号を受信するアンテナ(トランスポンダ式)、地上の信号装置の地上子位置情報の信号を用いて位置検出する信号受信機、車輪13の回転数を積算して基点からの走行距離を取得する距離計などが例示される。
速度センサ68は、鉄道車両10の走行速度を検出するためのセンサである。なお、位置検出装置67の位置情報から鉄道車両10の走行速度を算出するようにして、位置検出装置67に速度センサ68の機能を兼ねさせても良い。温度センサ69は、鉄道車両10の周囲の温度(気温)を検出するためのセンサである。湿度センサ70は、鉄道車両10の周囲の湿度を検出するためのセンサである。なお、温度センサ69や湿度センサ70を鉄道車両10に搭載しなくても良い。
次に図4を参照して、鉄道車両10の制御装置60のCPU61で実行されるメイン処理を説明する。図4は、制御装置60のメイン処理のフローチャートである。制御装置60のメイン処理は、パンタグラフ17が上昇して鉄道車両10に架線4から電力が供給され、制御装置60の電源が投入されると実行される。
図4に示すように、メイン処理はまず、各種の走行状態データを取得する(S11)。この走行状態データとは、コントローラ66の操作状態、位置検出装置67で検出した鉄道車両10の走行位置、速度センサ68で検出した鉄道車両10の走行速度、温度センサ69で検出した温度、湿度センサ70で検出した湿度が挙げられる。なお、これらのデータに限らず、鉄道車両10の進行方向、三相交流機器15や単相交流機器16、直流機器19等の使用の有無、その使用時の情報(例えば空調機器の設定温度)、これらの各データを取得した時刻を走行状態データとしても良い。
S11の処理後、取得した走行状態データを漏洩電流監視装置80へ送信する(S12)。これは、漏洩電流監視装置80で計測される電流値A1,A2に関するデータと、その電流値A1,A2の計測時の走行状態データとを一緒に外部サーバ90へ送信するためである。なお、図示しないが、実際にはS11,S12の処理は、20m秒毎に実行されるように制御されている。
S12の処理後、無線通信装置71を介して鉄道車両10と外部サーバ90とが通信可能であるかを確認する(S13)。外部サーバ90と通信可能であれば(S13:Yes)、漏洩電流監視装置80から電流値A1,A2に関するデータを外部サーバ90へ送信するために、外部サーバ90への送信許可信号を漏洩電流監視装置80へ送信する(S14)。
次いで、その他の処理を実行し(S15)、S11以下の処理を繰り返し実行する。なお、S15の処理としては、鉄道車両10を走行させるための各種処理が挙げられる。また、S13の処理において、外部サーバ90と通信可能でなければ(S13:No)、S14の処理をスキップしてS15の処理を実行する。
次に図5を参照して漏洩電流監視装置80における制御について説明する。図5は、漏洩電流監視装置80の電気的構成を示したブロック図である。図5に示すように、漏洩電流監視装置80は、CPU81と、フラッシュROM82と、RAM83とを有し、これらはバスライン84を介して、入出力ポート85にそれぞれ接続されている。入出力ポート85には、更に、鉄道車両10の入出力ポート65に接続されるインターフェイス(I/F)86と、供給側変流器87と、接地側変流器88と、電位差検出部89と、がそれぞれ接続されている。
CPU81は、バスライン84により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM82は、CPU81により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性のメモリであり、監視プログラム82aと、固有番号メモリ82bと、ピーク検出メモリ82cと、短期変化検出メモリ82dと、長期変化検出メモリ82eと、サイクル収集メモリ82fと、が設けられる。CPU81により監視プログラム82aが実行されると、図7のメイン処理が実行される。
固有番号メモリ82bは、漏洩電流監視装置80の固有番号が記憶されるメモリである。この固有番号は、漏洩電流監視装置80による電流値A1,A2の計測対象(漏洩電流監視装置80が搭載された鉄道車両10)を示す情報の一部である。外部サーバ90は、漏洩電流監視装置80から、電流値A1,A2に関するデータと、この固有番号とを受信することで、計測対象の鉄道車両10を特定できるように構成されている。
ピーク検出メモリ82c、短期変化検出メモリ82d、長期変化検出メモリ82e、サイクル収集メモリ82fはいずれも、供給側変流器87及び接地側変流器88で計測した電流値A1,A2に関するデータを、外部サーバ90へ送信するまで記憶しておくためのメモリである。即ち、これらの各メモリ82c~82fには、外部サーバ90への送信が許可されたデータが記憶される。
RAM83は、CPU81のプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、走行状態リングバッファ83aと、差分リングバッファ83bと、平均値リングバッファ83cと、電位差リングバッファ83dと、が設けられる。
図6(a)を参照して走行状態リングバッファ83aの内容を詳しく説明する。走行状態リングバッファ83aは、鉄道車両10で20m秒毎に取得した(制御装置60から20m秒毎に受信した)走行状態データの過去10分間分を記憶するメモリである。そのため、走行状態リングバッファ83aは、No.1~30000で対応付けられた各メモリと、それらのメモリのうち最新の走行状態データが記憶された位置がどれかを記憶するメモリ(図示せず)と、が設けられている。
No.1~30000で対応付けられた各メモリとは、各種の走行状態データが記憶されるメモリであって、コントローラ66の操作状態が記憶される制御メモリと、位置検出装置67による鉄道車両10の走行位置が記憶される位置メモリと、速度センサ68による鉄道車両10の走行速度が記憶される速度メモリと、温度センサ69による温度が記憶される温度メモリと、湿度センサ70による湿度が記憶される湿度メモリと、を備える。
走行状態リングバッファ83aは、No.1からNo.30000まで順に最新の走行状態データが各メモリに記憶され、No.30000に最新の走行状態データが記憶されたら、再度No.1から順に最新の走行状態データで上書きされる。このように走行状態データが順番に記憶されるので、走行状態リングバッファ83aは、最新の走行状態データが記憶された位置を現在時刻として、それぞれの走行状態データが記憶された時刻(走行状態データを取得・受信した時刻)が分かるように構成されている。なお、走行状態データの取得時の時刻を記憶するメモリを走行状態リングバッファ83aに設けても良い。
図5に戻って説明する。差分リングバッファ83bは、電流値A1,A2に基づく差分Adの過去1分間分を記憶するメモリである。差分Adは、供給側変流器87で計測した電流値A1と、接地側変流器88で計測した電流値A2との差分を、電位差検出部89で計測した電位差V1に基づき補正した値であり、1m秒毎に算出される。
平均値リングバッファ83cは、1分間の差分Adの平均値を過去10分間分記憶するメモリである。なお、1分間の差分Adの平均値は1分毎に算出される。電位差リングバッファ83dは、電位差検出部89で1m秒毎に計測した電位差V1を10分間分記憶するメモリである。これらの各リングバッファ83b~83dは、記憶するデータの内容と記憶容量とが異なるだけで、走行状態リングバッファ83aと同一に構成されている。
次に図7~図10を参照して、漏洩電流監視装置80のCPU81で実行されるメイン処理を説明する。図7は、漏洩電流監視装置80のメイン処理のフローチャートである。図8は、ピーク検出処理S28のフローチャートである。図9は、アベレージ検出処理S29のフローチャートである。図10は、サイクル収集処理S30のフローチャートである。
漏洩電流監視装置80のメイン処理は、パンタグラフ17が上昇して鉄道車両10に架線4から電力が供給され、漏洩電流監視装置80の電源が投入された後、1m秒毎に実行される。ピーク検出処理S28、アベレージ検出処理S29及びサイクル収集処理S30は、この漏洩電流監視装置80のメイン処理中に実行される。
図7に示すように、メイン処理はまず、図4のS12の処理で制御装置60から送信された走行状態データを漏洩電流監視装置80が受信した場合、その走行状態データを走行状態リングバッファ83aに記憶する(S21)。なお、図示しないが、制御装置60から漏洩電流監視装置80が走行状態データを受信していない場合には、S21の処理をスキップする。
S21の処理後、供給側変流器87で計測された電流値A1を取得し(S22)、接地側変流器88で計測された電流値A2を取得する(S23)。次いで、電位差検出部89で計測された電位差V1を取得し、その電位差V1を電位差リングバッファ83dに記憶する(S24)。なお、これら一連のS22~S24の処理では、同一タイミングに計測した電流値A1、電流値A2及び電位差V1を取得する。これは、その計測時に生じた漏洩電流を正確に算出するためである。但し、S22~S24の処理で取得する電流値A1、電流値A2及び電位差V1を計測するタイミングを互いに異ならせても良い。
S24の処理後、電位差V1の基準値である基準電位差Vsを1500[V]に設定する(S25)。なお、基準電位差Vsは、この鉄道車両10に架線4を介して電力を供給する変電所6での起電力に応じて設定すれば良く、例えば変電所6での起電力が25000Vである場合には、S25の処理において基準電位差Vsを25000Vに設定する。
S25の処理後、これらの各値に基づき、電流値A1と電流値A2との差分を基準電位差Vs時の値に補正した差分Ad=(A1-A2)・V1/Vsを算出する(S26)。次いで、算出した差分Adを差分リングバッファ83bの最新位置に一時的に記憶する(S27)。その後、一時的に記憶した差分Adに基づき、その差分Adに関するデータを外部サーバ90へ送信可能に記憶するかを判断するピーク検出処理S28、アベレージ検出処理S29、サイクル収集処理S30を順に実行する。
図8のピーク検出処理S28について、図2(b)を参照しながら説明する。ピーク検出処理S28は、差分リングバッファ83bに一時的に記憶した差分Ad(漏洩電流の値)が異常を疑われる値や、注意・警告を必要とする値である場合、外部サーバ90で解析するために、その差分Adをピーク検出メモリ82cに記憶しておくための処理である。
ピーク検出処理S28では、まず、差分リングバッファ83bの最新位置に記憶された差分Adが閾値未満から閾値以上になったかを、即ち、前回位置の差分Adが閾値未満で最新位置の差分Adが閾値以上であるかを判断する(S41)。なお、この閾値としては例えば1mAが挙げられる。差分Adが閾値以上である場合には、漏洩電流監視装置80による監視対象の電気回路に異常な漏洩電流が発生していると疑われる。但し、異常な漏洩電流の発生を予防するために注意・警告を報知できるよう、異常と判断する値よりも小さい値を閾値として設定しても良い。また1mAよりも大きい値を閾値として設定しても良い。
S41の処理で、最新位置の差分Adが閾値未満から閾値以上になった場合には(S41:Yes)、ピーク検出メモリ82cへ記憶する範囲を指定するためのスタート位置S(図2(b)参照)が未設定かを確認する(S42)。なお、差分Adが閾値未満のままで15秒以上経過していれば、スタート位置Sは未設定となっている(クリアされている)。
スタート位置Sが未設定である場合(S42:Yes)、差分リングバッファ83bの複数のメモリ位置のうち、差分Adが閾値以上になった最新位置から15秒前の位置をスタート位置Sに設定し(S43)、ピーク検出処理S28を終了する。
S41の処理で、最新位置の差分Adが閾値未満から閾値以上になっていない場合には(S41:No)、差分リングバッファ83bの最新位置に記憶された差分Adが閾値以上から閾値未満になったかを判断する(S45)。差分Adが閾値以上から閾値未満になった場合には(S45:Yes)、既にスタート位置SがS43の処理で設定済みであるため、そのスタート位置Sに対応するエンド位置E(図2(b)参照)を設定し(S46)、ピーク検出処理S28を終了する。
具体的にS46の処理では、差分リングバッファ83bの複数のメモリ位置のうち、差分Adが閾値未満になった最新位置から15秒後の位置をエンド位置Eに設定する。差分リングバッファ83bのうちスタート位置Sからエンド位置Eまでがピーク検出メモリ82cへ記憶する範囲である。
最新位置の差分Adが閾値をまたがない場合(S41:No且つS45:No)、差分リングバッファ83bのエンド位置Eに新たに差分Adが記憶されたかを確認する(S47)。即ち、S47の処理では、差分Adが閾値未満になってから閾値未満のままで15秒経過したかを確認する。
S47の処理で、エンド位置Eに新たに差分Adが記憶された場合には(S47:Yes)、ピーク検出メモリ82cへ記憶する範囲の差分Adが揃ったので、スタート位置Sからエンド位置Eまでの差分Adをピーク検出メモリ82cへ記憶する(S48)。更にS48の処理では、それらの差分Adに対応する時刻の走行状態データ及び電位差V1を、差分Adに関連付けてピーク検出メモリ82cに記憶する。
具体的に図6(b)に示すように、ピーク検出メモリ82cは、時刻が記憶される時刻メモリと、差分Adが記憶される差分メモリと、制御メモリと、位置メモリと、速度メモリと、温度メモリと、湿度メモリと、電位差V1が記憶される電位差メモリと、を備えている。なお、制御メモリから湿度メモリは、図6(a)の走行状態リングバッファ83aで上述したものと同様である。
時刻メモリに記憶されている時刻は、差分Adを算出した時刻(電流値A1,A2を取得した時刻)であり、コントローラの操作状態などの走行状態データを取得した時刻でもあり、電位差V1を取得した時刻でもある。即ち、これらの各値は、時刻によって互いに関連付けられてピーク検出メモリ82cに記憶されている。
これにより、異常が疑われる程の差分Ad(漏洩電流の値)となった原因を走行状態データから解析することができる。例えば、ブレーキをかけたときに限って差分Adが閾値を超えていれば、そのブレーキ関係の電気回路に異常があると推定できる。
図8に戻って説明する。S48の処理後は、S41~S43の処理で新たなスタート位置Sを設定できるように、スタート位置S及びエンド位置Eの設定をクリアし(S49)、ピーク検出処理S28を終了する。
ここで、S43の処理でスタート位置Sを設定し、差分Adが閾値未満になって(S45:Yes)、S46の処理でエンド位置Eを設定した後、エンド位置Eに差分Adが記憶される前に、最新位置の差分Adが閾値未満から閾値以上になった場合(S41:Yes)について説明する。
この場合、S42の処理で、スタート位置Sもエンド位置Eも既に設定されているので(S42:No)、S43の処理でスタート位置Sを再設定することなく、エンド位置Eだけを再設定可能となるようにクリアし(S44、図2(b)一点鎖線を参照)、ピーク検出処理S28を終了する。その後、再び、最新の差分Adが閾値以上から閾値未満になれば(S45:No)、エンド位置Eが再設定され(S46)、S47,S48の処理によってスタート位置Sからエンド位置Eまでの差分Adをピーク検出メモリ82cに記憶できる。
このように、差分Adが閾値以上になる部分が短時間に連続している場合であっても、連続した複数の閾値以上の範囲と、その範囲の前後15秒間とにおける差分Adをピーク検出メモリ82cに記憶できる。即ち、差分Adが閾値以上になった複数の範囲のうちの一部がピーク検出メモリ82cに記憶されない事態を回避できる。また、差分Adが閾値以上になった複数の範囲に対し、個別にスタート位置S及びエンド位置Eを設定する場合と比べ、ピーク検出処理S28を簡素化できると共に、ピーク検出メモリ82cに重複してデータが記憶されることを抑制できる。
S47の処理で、エンド位置Eに新たに差分Adが記憶されなかった場合には(S47:No)、差分リングバッファ83bへ次に差分Adを記憶する位置がスタート位置Sであるかを確認する(S50)。次に記憶する位置がスタート位置Sではない場合(S50:No)、ピーク検出処理S28を終了する。
一方、次に記憶する位置がスタート位置Sである場合には(S50:Yes)、次回以降の差分リングバッファ83bへの新たな差分Adの記憶によって、ピーク検出メモリ82cに記憶すべき差分Adが古いものから順に消えてしまう。そのため、古い差分Adが消える直前に(S50:Yes)、差分リングバッファ83bに記憶されている全ての差分Adと、それらの差分Adに対応する時刻の走行状態データ及び電位差V1と、を互いに関連付けてピーク検出メモリ82cに記憶する(S51)。
S51の処理後のピーク検出処理S28において、エンド位置Eに新たに差分Adが記憶された場合(S47:Yes)、S48の処理では、S51の処理の直後に差分リングバッファ83bに記憶された差分Adを新たなスタート位置Sとして、S51の処理後の差分Adをピーク検出メモリ82cに記憶する。よって、S50,S51の処理により、差分リングバッファ83bを大容量化しなくても、閾値以上となった差分Adと、その前後15秒間の差分Adとを全てピーク検出メモリ82cに記憶できる。
次に図9を参照してアベレージ検出処理S29を説明する。アベレージ検出処理S29は、ノイズ等によって瞬間的に大きくなる差分Adの影響を排除しつつ、差分Adの短期的または長期的な増加傾向を外部サーバ90で解析するために、1分間の差分Adの平均値を短期変化検出メモリ82dや長期変化検出メモリ82eに記憶しておくための処理である。
図9に示すように、アベレージ検出処理S29では、まず、前回の平均値の算出から1分経過したか、即ち過去1分間の差分Adを記憶する差分リングバッファ83bの値が全て更新されたかを確認する(S61)。なお、漏洩電流監視装置80の電源が投入された直後には、差分リングバッファ83bの各メモリに無効な値が記憶され、投入直後のS61の処理では、全ての無効な値が差分Adで更新されたかを確認する。S61の処理で、前回の平均値の算出または電源の投入から1分経過していない場合には(S61:No)、アベレージ検出処理S29を終了し、1分経過を待つ。
一方、前回の平均値の算出または電源の投入から1分経過した場合には(S61:Yes)、差分リングバッファ83bの値が全て更新されたので、差分リングバッファ83bに記憶された直近1分間の差分Adを平均して平均値を算出し、その平均値を平均値リングバッファ83cに記憶する(S62)。
次いで、平均値リングバッファ83cに記憶されている2分~1分前の平均値(1分前のS62の処理で算出した平均値であって、2分~1分前に算出された複数の差分Adを平均した平均値)に対する直近1分間の平均値の変化率を短期変化率として算出する(S63)。具体的に、(短期変化率)=((直近1分間の平均値)-(2分~1分前の平均値))/(2分~1分前の平均値)で算出される。
この算出した短期変化率が変化閾値以上であるかを確認する(S64)。なお、変化閾値は、ノイズを排除するために例えば1.1とするが、1以上の数であれば適宜変更しても良い。
S64の処理で、短期変化率が変化閾値以上であった場合には(S64:Yes)、平均値リングバッファ83cに記憶されている直近2分間の平均値(直近2分間のS62の処理でそれぞれ算出した全ての平均値)と、それらの平均値に対応する時刻の走行状態データ及び電位差V1と、を互いに関連付けて短期変化検出メモリ82dに記憶し(S65)、S66の処理へ移行する。
なお、直近2分間の平均値に対応する時刻の走行状態データとは、走行状態リングバッファ83aに記憶されている直近2分間の走行状態データである。直近2分間の平均値に対応する時刻の電位差V1とは、電位差リングバッファ83dに記憶されている直近2分間の電位差V1である。また、図6(c)に示すように、短期変化検出メモリ82dは、図6(b)のピーク検出メモリ82cの差分メモリを、差分Adの平均値が記憶される平均値メモリに置換したものである。なお、平均値メモリには、平均値の算出に用いた最古の差分Adを算出した時刻に対応付けるように、平均値が記憶される。
S64の処理で、短期変化率が変化閾値未満であった場合には(S64:No)、S65の処理をスキップして、S66の処理へ移行する。これにより、短期変化率が減少している場合や、ノイズ等により短期変化率が若干増加しているだけの場合を排除して、短期的な平均値の増加傾向を解析できる。
S66の処理では、平均値リングバッファ83cに記憶されている10分~9分前の平均値(9分前のS62の処理で算出した平均値であって、10分~9分前に算出された複数の差分Adを平均した平均値)に対する直近1分間の平均値の変化率を長期変化率として算出する(S66)。具体的に、(長期変化率)=((直近1分間の平均値)-(10分~9分前の平均値))/(10分~9分前の平均値)で算出される。
この算出した長期変化率が変化閾値以上であるかを確認する(S67)。長期変化率が変化閾値以上であった場合には(S67:Yes)、平均値リングバッファ83cに記憶されている直近10分間の平均値(直近10分間のS62の処理でそれぞれ算出した全ての平均値)と、それらの平均値に対応する時刻の走行状態データ及び電位差V1と、を互いに関連付けて長期変化検出メモリ82eに記憶し(S68)、アベレージ検出処理S29を終了する。
直近10分間の平均値に対応する時刻の走行状態データとは、走行状態リングバッファ83aに記憶されている直近10分間の走行状態データである。直近10分間の平均値に対応する時刻の電位差V1とは、電位差リングバッファ83dに記憶されている直近10分間の電位差V1である。また、長期変化検出メモリ82eは、短期変化検出メモリ82dと同一に構成される。
S67の処理で、長期変化率が変化閾値未満であった場合には(S67:No)、S68の処理をスキップして、アベレージ検出処理S29を終了する。これにより、長期変化率が減少している場合や、ノイズ等により長期変化率が若干増加しているだけの場合を排除して、長期的な平均値の増加傾向を解析できる。
次に図10を参照してサイクル収集処理S30を説明する。サイクル収集処理S30は、数か月や数年などの超長期的な差分Adの変動を解析するために、異常が無くても定期的に差分Adをサイクル収集メモリ82fに記憶しておくための処理である。
図10に示すように、サイクル収集処理S30では、まず、定期的な収集タイミングが到来したかを確認する(S71)。定期的な収集タイミングは、本実施形態では1時間毎に設定されるが、その収集タイミングは適宜変更しても良い。
定期的な収集タイミングが到来していない場合には(S71:No)、サイクル収集処理S30を終了し、収集タイミングの到来を待つ。一方、定期的な収集タイミングが到来した場合には(S71:Yes)、差分リングバッファ83bに記憶されている全て(直近1分間)の差分Adと、それらの差分Adに対応する時刻の走行状態データ及び電位差V1と、を互いに関連付けてサイクル収集メモリ82fに記憶し(S72)、サイクル収集処理S30を終了する。
なお、S72の処理において、差分Adに対応する時刻の走行状態データとは、走行状態リングバッファ83aに記憶されている直近1分間の走行状態データである。同様に、差分Adに対応する時刻の電位差V1とは、電位差リングバッファ83dに記憶されている直近1分間の電位差V1である。
定期的に差分Adを取得することで、数か月や数年などの超長期的な漏洩電流の増加傾向を解析できる。例えば具体的に、過去の差分Adの実測値の経時変化を最小二乗法で近似し、今後の差分Adの予測値の経時変化を算出することができる。この予測値の経時変化から、差分Adが閾値(例えば1mA)を上回る日時の目安を解析できるので、鉄道車両10のメンテナンス等のスケジュールを計画することができると共に、交換が必要な機器や部品の発注などを計画することができる。
図7に戻って説明する。サイクル収集処理S30の後は、制御装置60から送信許可信号を受信したかを確認する(S31)。図4のS14の処理で制御装置60が送信した送信許可信号を漏洩電流監視装置80が受信した場合には(S31:Yes)、無線通信装置71を介して鉄道車両10(漏洩電流監視装置80)と外部サーバ90との通信が可能であるため、ピーク検出メモリ82c、短期変化検出メモリ82d、長期変化検出メモリ82e、サイクル収集メモリ82fにそれぞれ記憶されている未送信のデータと、固有番号メモリ82bに記憶されている固有番号と、を外部サーバ90へ送信する(S32)。
これらの各メモリ82c~82fに記憶されている各データは、電流値A1,A2に基づいた差分Ad自体を含むデータや、差分Adの平均値を含むデータであって、外部サーバ90への送信が許可されたデータである。よって、各メモリ82c~82fに各データを記憶するかを判断する図8のS41~S47,S50の処理、図9のS63,S64,S66,S67の処理、図10のS71の処理は、各データを外部サーバ90へ送信するかを判断する処理と言える。特に、図8のS41~S47,S50の処理、図9のS63,S64,S66,S67の処理は、差分Ad自体または差分Adの平均値に基づき、その差分Adに関するデータを外部サーバ90へ送信するかを判断する処理と言える。また、図8のS48,S51の処理は、図9のS65,S68の処理、図10のS72の処理は、外部サーバ90へ送信すると判断された各データを外部サーバ90へ送信可能とする処理と言える。
これにより、例えば、差分Adに関するデータから、漏洩電流に対する解析に有効なデータを選定して外部サーバ90へ送信できるので、鉄道車両10から外部サーバ90への送信頻度や送信量を抑制できる。更に、外部サーバ90への送信までにデータを一時記憶しておくとき、そのデータ量を少なくできるので、漏洩電流監視装置80を小型化およびコストダウンし易くできる。
S32の処理後、その他の処理を実行し(S33)、漏洩電流監視装置80のメイン処理を終了する。また、S31の処理で、制御装置60から送信許可信号を受信していない場合には(S31:No)、S32の処理をスキップし、S33の処理を実行して漏洩電流監視装置80のメイン処理を終了する。なおS33の処理としては、基準電位差Vsを変更する処理や、ピーク検出処理S28で用いる閾値を変更する処理、外部サーバ90から受信した信号に基づく処理などが挙げられる。例えば、ピーク検出処理S28で用いる閾値を変更する操作を外部サーバ90で行い、その変更の信号を外部サーバ90から無線通信装置71を介して漏洩電流監視装置80が受信した場合、S33の処理では、受信した信号に応じて閾値を変更する処理を実行する。
次に、外部サーバ90での処理について説明する。外部サーバ90は、S32の処理で漏洩電流監視装置80から送信された各メモリ82c~82fの各データと固有番号とを受信した場合、固有番号(計測対象の鉄道車両10)毎に外部サーバ90に設けた各メモリに各データを記憶する。なお、外部サーバ90の各メモリは、漏洩電流監視装置80の各メモリ82c~82fと略同一である。
外部サーバ90では、漏洩電流監視装置80から受信した各データを用いて漏洩電流の発生原因などの解析が実行される。この解析には、AIによるデータ解析を用いることが好ましい。具体的に、図6(b)に示すピーク検出メモリ82cの内容や、図6(c)に示す短期変化検出メモリ82dの内容が外部サーバ90に記憶されている場合を例示して、外部サーバ90での解析について説明する。
図6(b)に示すように、差分メモリの値(漏洩電流の値)が0.5mAから閾値以上の1.2mAに増加した時、制御メモリの値であるコントローラ66の操作状態が「N」から「B1」に変化すると共に、位置メモリの値である鉄道車両10の位置が「X1,Y1」から「X2,Y2」に変化している。よって、外部サーバ90では、漏洩電流の値の増加が、コントローラ66が「B1」である場合、又は、鉄道車両10の位置が「X2,Y2」である場合に起因していると推定できる。
更に、この後、鉄道車両10の位置が「X2,Y2」から殆ど動かず、コントローラ66の状態が「B1」から「N」等の別の状態に変化したときに、漏洩電流の値が閾値未満になったと仮定する。この場合、外部サーバ90では、コントローラ66が「B1」である場合に限って通電される電気回路に、漏洩電流の値の増加の原因があると推定できる。
一方、コントローラ66の状態が「B1」のままで、鉄道車両10の位置が「X2,Y2」から大きく動いたときに、漏洩電流の値が閾値未満になれば、漏洩電流の値の増加の原因が鉄道車両10の位置であると推定できる。例えば、「X2,Y2」の位置に融雪除去設備などの地上設備があった場合、その地上設備が漏洩電流の値の増加の原因であると推定できる。
また、図6(c)に示すように、差分Adの1分間の平均値は、コントローラ66の状態が「P2」である場合に限って、その前の状態の「N」や「B1」よりも増加している。ここから、外部サーバ90では、コントローラ66が「P2」である場合に限って通電される電気回路の漏洩電流が増加傾向にあり、その回路の絶縁抵抗の劣化が進行していると推定できる。
また、漏洩電流の値の増加の原因は、コントローラ66の操作状態や鉄道車両10の位置に限らず、その他の走行状態データや電位差V1によっても推定が可能である。例えば、速度メモリの値である鉄道車両10の走行速度と、コントローラ66の操作状態とから、VVVFインバータ20の制御状態を特定できる。これにより、VVVFインバータ20の特定の制御状態で漏洩電流が増加する場合、その特定の制御状態に限って通電される電気回路に漏洩電流の値の増加の原因があると推定できる。
また、鉄道車両10の各部の絶縁抵抗値は、温度や湿度によって変動する。そのため、絶縁抵抗値に依存する漏洩電流の値も温度や湿度によって変動する。そのため、温度メモリの値である鉄道車両10の周囲の温度から、漏洩電流の値の変動が温度に依存したものか、それ以外の変化に依存したものかを推定できる。同様に、湿度メモリの値である鉄道車両10の周囲の湿度から、漏洩電流の値の変動が湿度に依存したものか、それ以外の変化に依存したものかを推定できる。
以上のように、漏洩電流監視装置80は、差分Ad(漏洩電流の値)や差分Adの平均値のデータに、走行状態データや電位差V1を関連付けた状態で外部サーバ90へ送信するので、漏洩電流の発生の原因を解析し易くできる。更に、漏洩電流に対する解析を漏洩電流監視装置80で実行する場合と比べ、漏洩電流監視装置80を小型化およびコストダウンし易くできる。
次に図11を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、1両編成の鉄道車両10に漏洩電流監視装置80が搭載される場合について説明した。これに対し、第2実施形態では、互いに連結された鉄道車両100a,100b,100cによる車両編成に漏洩電流監視装置110が設けられる場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図11は、第2実施形態における鉄道車両100a,100b,100cの電気回路を模式的に示した回路図である。なお、図11では、電動機用電線24、第1低圧交流電路32を単線図として示し、第2低圧交流電路36の2本の電線36r,36tを1本に省略して示している。
鉄道車両100a~100cはいずれも、車体12と車輪13と連結部14とを主に備えている。鉄道車両100a~100cは、連結部14同士を連結して車両編成を構成している。鉄道車両100a~100cにそれぞれ設けられた接地引通線41は、連結部14を介して互いに接続されている。
鉄道車両100a~100cはいずれも、車体12の両端の連結部14間に引き通されて互いに接続される供給引通線18a(供給線の一部)を備えている。鉄道車両100a,100cは、それぞれパンタグラフ17が搭載され、そのパンタグラフ17と供給引通線18aとを繋ぐ供給上流線18b(供給線の一部)が設けられている。鉄道車両100bは、パンタグラフ17が搭載されておらず、鉄道車両100a,100cから電力の供給を受けて走行する。
鉄道車両100cは、供給引通線18aから電力が供給されるVVVFインバータ20と、VVVFインバータ20の出力側に電動機用電線24を介して接続される電動機22と、を備えたレール2上を自走可能な動力車である。VVVFインバータ20の入力側の正極端子には、供給引通線18aから分岐した電線が接続され、VVVFインバータ20の負極端子には、接地引通線41から分岐した接地側電線45が接続される。
鉄道車両100a,100bは、電動機22を持たず鉄道車両100cに付随して走行する付随車である。なお、鉄道車両100a,100bに電動機22を搭載し、その電動機22と鉄道車両100cのVVVFインバータ20とを電動機用電線24で接続しても良い。
鉄道車両100bは、供給引通線18aから電力が供給されるSIV30と、そのSIV30の出力側に接続される第1低圧交流電路32と、第1低圧交流電路32に1次巻線が接続される絶縁トランス34と、その絶縁トランス34の2次巻線に接続される第2低圧交流電路36と、を備えている。SIV30の入力側の正極端子には、供給引通線18aから分岐した電線が接続され、SIV30の負極端子には、接地引通線41から分岐した接地側電線45が接続される。
鉄道車両100a,100cには、鉄道車両100bの第1低圧交流電路32に連結部14を介して接続される第1低圧交流電路32と、鉄道車両100bの第2低圧交流電路36に連結部14を介して接続される第2低圧交流電路36と、がそれぞれ設けられている。鉄道車両100a~100cの第1低圧交流電路32には、複数の三相交流機器15が接続され、第2低圧交流電路36には単相交流機器16及び直流機器19が接続されている。
このような鉄道車両100a~100cによる車両編成は、電気回路に生じる漏洩電流を監視する漏洩電流監視装置110を備えている。本実施形態では、漏洩電流監視装置110の本体(CPU71等)は、鉄道車両100aに搭載されている。なお、漏洩電流監視装置110の本体を鉄道車両100b,100cに搭載しても良く、漏洩電流監視装置110の本体を鉄道車両100a~100cにそれぞれ搭載して、それらの本体を互いに通信可能に構成しても良い。
漏洩電流監視装置110は、鉄道車両100a,100cの供給上流線18bがそれぞれ通される供給側変流器(供給側計測器)87a,87cと、鉄道車両100a,100b,100cの集約線42がそれぞれ通される接地側変流器(接地側計測器)88a,88b,88cと、鉄道車両100aの供給上流線18bと集約線42との間の電位差を計測する電位差検出部89と、を備えている。漏洩電流監視装置110は、第1実施形態における漏洩電流監視装置80に対し、供給側変流器87a,87c及び接地側変流器88a~88cの数が増えた点以外は、漏洩電流監視装置80と略同一に構成されている。
供給側変流器87a,87cは、供給上流線18bが通されて供給上流線18bの電流値を計測する。これにより、例えば鉄道車両100aのパンタグラフ17からの電流と、鉄道車両100cのパンタグラフ17からの電流とが、それぞれ鉄道車両100bの供給引通線18aを流れる場合でも、鉄道車両100a,100cそれぞれにパンタグラフ17から供給される電力の電流値を供給側変流器87a,87cで正確に検出できる。
鉄道車両100a~100cによる車両編成では、鉄道車両100a,100cのパンタグラフ17からの電流であって供給側変流器87a,87cを通る電流が、鉄道車両100aの集約線42(接地側変流器88a)を通る電流と、鉄道車両100bの集約線42(接地側変流器88b)を通る電流と、鉄道車両100cの集約線42(接地側変流器88c)を通る電流と、鉄道車両100a~100cに生じて集約線42を迂回する漏洩電流と、に分かれる。
これらの電流のうち、漏洩電流監視装置110は、鉄道車両100a,100cのパンタグラフ17からの電流を供給側変流器87a,87cで計測でき、鉄道車両100a~100cの集約線42を通る電流を接地側変流器88a~88cで計測できる。よって、これらの電流値から、集約線42を迂回する漏洩電流を精度良く算出でき、第1実施形態と同様に漏洩電流の検出精度を向上できる。
具体的に、漏洩電流監視装置110において、差分Ad(漏洩電流の値)の算出に用いる電流値A1は、供給側変流器87aの電流値と供給側変流器87cの電流値との合計である。また、差分Adの算出に用いる電流値A2は、接地側変流器88a~88cそれぞれの電流値の合計である。
更に、漏洩電流監視装置110は、差分Adだけでなく、供給側変流器87a,87cそれぞれの電流値と、接地側変流器88a~88cのそれぞれの電流値とを外部サーバ90へ送信しても良い。これにより、各電流値に基づき、鉄道車両100a~100cのうちいずれの車両に漏洩電流が発生しているかを解析できる可能性がある。
また、鉄道車両100a~100cによる車両編成では、例えば、鉄道車両100aの接地引通線41から鉄道車両100bの接地引通線41へ流れる電流が、連結部14を通らずに、集約線42、車輪13及びレール2を通ってしまうことがある。このような電流を循環による迷走電流と言う。この循環による迷走電流は集約線42を通るので、接地側変流器88a~88cの電流値から迷走電流の発生を解析できる。同様に、循環以外の迷走電流も、集約線42を通るものであれば、接地側変流器88a~88cの電流値から迷走電流の発生を解析できる。
次に図12を参照して第3実施形態について説明する。第1,2実施形態では、直流電車である鉄道車両10,100a~100cに漏洩電流監視装置80,110が搭載される場合について説明した。これに対し、第3実施形態では、交流電車である鉄道車両150に漏洩電流監視装置80が搭載される場合について説明する。なお、第1,2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図12は、第3実施形態における鉄道車両150の電気回路を模式的に示した回路図である。鉄道車両150は、交流電車であって、車体12と車輪13と連結部14とを主に備えている。
レール2の上方に架け渡される架線140には、接地されたレール2に対し変電所141で起電力を生じさせることで、高電圧(本実施形態では25000V)の単相交流電流が流れる。パンタグラフ17を上昇させて架線140に接触させることで、架線140からパンタグラフ17を介して鉄道車両150の供給上流線18b及び供給引通線18aに車両走行用の交流電力が供給される。
供給引通線18aから分岐した電線と、接地引通線41から分岐した接地側電線45とは、主変圧器151の1次巻線で連結される。主変圧器151は、入力された電圧を変圧して出力すると共に入力側と出力側とを絶縁する絶縁トランスであって、入力側の1次巻線に対して出力側に2次巻線と3次巻線とが設けられている。
主変圧器151の2次巻線には、主変圧器151から出力された交流電力を直流電力へ変換するAC/DCコンバータ152が接続される。このAC/DCコンバータ152の出力側にはVVVFインバータ20が接続される。VVVFインバータ20から電動機用電線24を介して電動機22へ交流電力が供給される。
主変圧器151の3次巻線には、第1低圧交流電路32が接続される。第1低圧交流電路32には絶縁トランス34の1次巻線が接続され、その絶縁トランス34の2次巻線に第2低圧交流電路36が接続されている。この第3実施形態における第1低圧交流電路32は、第1,2実施形態における三相の第1低圧交流電路32に対し、単相である点以外は同一に構成されるので、同一の符号を付して説明を省略する。第1低圧交流電路32には、440Vの単相交流で作動する空調機器などの単相交流機器15aが設けられる。
同様に、第3実施形態における第2低圧交流電路36は、第1,2実施形態における第2低圧交流電路36に対し、電線の本数が異なる点以外は同一に構成されるので、同一の符号を付して説明を省略する。第2低圧交流電路36には、100Vの単相交流で作動する複数の単相交流機器16と、整流器(図示せず)を介して複数の直流機器19とが設けられる。
また、第3実施形態における絶縁トランス34は、第1低圧交流電路32から入力された440Vの単相交流を100Vの単相交流に変換して第2低圧交流電路36へ出力するものである。なお、絶縁トランス34を省略し、第2低圧交流電路36に接続する4次巻線を主変圧器151に設け、主変圧器151で変圧した100Vの単相交流を第2低圧交流電路36へ出力しても良い。
このような鉄道車両150は、電気回路に生じる漏洩電流を監視する漏洩電流監視装置80を備えている。漏洩電流監視装置80の供給側変流器87は、供給上流線18bが通されて供給上流線18bの電流値を計測する。漏洩電流監視装置80の接地側変流器88は、集約線42が通されて集約線42の電流値を計測する。第3実施形態における供給側変流器87及び接地側変流器88は、交流の電流値を計測可能に構成されているが、その構成は既知であるため説明を省略する。また、漏洩電流監視装置80の電位差検出部89は、供給上流線18bと集約線42との間の電位差を計測する。
鉄道車両150では、例えば供給引通線18aから車体12への漏洩電流が生じてその他の漏洩電流が生じていない場合、その漏洩電流は、集約線42(接地側変流器88)を迂回するように車体12、接地端子部43、レール2を流れる。この漏洩電流のルートは、向きが異なるだけで第1実施形態と略同一である。
また、主変圧器151の出力側または絶縁トランス34の出力側の電気回路で車体12との間に漏洩電流が生じた場合も、第1実施形態と同様のルートで漏洩電流が流れる。具体的に、その漏洩電流は、主変圧器151や絶縁トランス34へ戻るように車体12、接地端子部43、集約線42を通る。
よって、漏洩電流監視装置80は、供給側変流器87の電流値A1と、接地側変流器88の電流値A2とを計測することにより、第1実施形態と同様に漏洩電流の検出精度を向上できる。更に、第1実施形態と同様に、電流値A1,A2の変動の仕方から漏洩電流が生じた部分を推定できる。
なお、交流電車である鉄道車両150の電気回路に生じる漏洩電流には、対地静電容量に起因する漏洩電流Igcと、絶縁抵抗に直接関与している対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流Igrと、が含まれている。漏洩電流Igcは、計測対象の電線の長さに応じて容量が増大するだけでなく、電気機器に使用されているインバータやノイズフィルター等に起因する高調波歪み電流によっても容量が増大する。
電位差検出部89で電圧のクロスポイントを検出することによって、その検出結果と電流値A1,A2の差分とから漏洩電流Igrを算出できる。なお、漏洩電流Igrの算出には、既知の方法を用いればよく、例えば特許第4945727号公報に開示されている方法を用いればよい。
よって、第3実施形態における漏洩電流監視装置80の図7のメイン処理では、S24~S26の処理に代えて、補正後の差分Adとして漏洩電流Igrを算出する処理を実行する。
次に図13を参照して第4実施形態について説明する。第1~3実施形態では、架線4,140からパンタグラフ17を介して鉄道車両10,100a~100c,150に電力が供給される場合について説明した。これに対し、第4実施形態では、パンタグラフ17の代わりに発電機161を搭載した鉄道車両160について説明する。なお、第1~3実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図13は、第4実施形態における鉄道車両160の電気回路を模式的に示した回路図である。鉄道車両160は、車体12と、車輪13と、連結部14(図示せず)と、VVVFインバータ20と、SIV30と、接地線40と、車両走行用の電力を発生させる発電機161及び蓄電池165と、発電機161及び蓄電池165からの電力を調整して出力する調整装置166と、を主に備えている。
発電機161は、三相交流電力を発生させる三相4線式の発電機である。発電機161には、三相交流電力が供給される3本1組の供給線162,163,164が接続される。また、発電機161の中性点から延びる中性線161aは、手動開閉器46fを介して接地線40の接地引通線41に接続される。これにより、手動開閉器46fが閉じていれば、発電機161の中性点が接地される。
蓄電池165は、直流電力を充放電する電池である。蓄電池165の正極には、正極線165aが接続され、蓄電池165の負極には、負極線165bが接続されている。蓄電池165で生じた電流は、正極線165aから各部へ供給され、負極線165bから帰ってくる。
調整装置166は、供給線162,163,164が接続され、発電機161からの三相交流電力を直流電力に変換して出力する装置である。更に、調整装置166は、正極線165a及び負極線165bが接続され、蓄電池165からの直流電力を、発電機161からの交流電力を変換した直流電力と共に出力する。例えば、調整装置166は、出力する電力が、発電機161からの交流電力を変換しただけでは足らない場合、その不足分を補うために蓄電池165から直流電力の供給を受けるよう制御する。
このような調整装置166、発電機161及び蓄電池165をまとめて、鉄道車両160に搭載された1つの車載電源とみなしても良い。また、発電機161又は蓄電池165のそれぞれを鉄道車両160に搭載された車載電源とみなしても良い。
調整装置166の出力側には、VVVFインバータ20及びSIV30へ直流電力を供給するための供給線18と、VVVFインバータ20及びSIV30から直流電力が帰ってくる接地側電線45と、が接続されている。供給線18がVVVFインバータ20及びSIV30の入力側の正極端子に接続され、接地側電線45がVVVFインバータ20及びSIV30の入力側の負極端子に接続される。接地側電線45から分岐した分岐線45aは、手動開閉器46gを介して接地引通線41に接続される。これにより、手動開閉器46gが閉じていれば、接地側電線45が接地され、接地線40の一部を構成する。
このような鉄道車両160は、発電機161と調整装置166との間で生じる漏洩電流を監視する漏洩電流監視装置170と、調整装置166の下流側で生じる漏洩電流を監視する漏洩電流監視装置180と、を備えている。
漏洩電流監視装置170は、3本の供給線162,163,164がそれぞれ通されて、供給線162,163,164の電流値をそれぞれ個別に計測する3つの供給側変流器171,172,173を備えている。供給側変流器(供給側計測器)171~173はいずれも、計測対象となる電線が貫通する環状の変流器から構成された計測器であり、その貫通部分を流れる電流値を計測する。発電機161と調整装置166との間で漏洩電流が生じていない場合、基本的に、3つの供給側変流器171~173の電流値の合計(差分)が0[A]となる。
一方、供給側変流器171~173の下流であって発電機161と調整装置166との間で車体12への漏洩電流が生じた場合、その漏洩電流は、車体12、接地線40、中性線161aを流れる。よって、供給側変流器171~173の電流値の合計を漏洩電流の値として精度良く算出できる。従って、漏洩電流監視装置170は、供給側変流器171~173の電流値を監視することで、発電機161と調整装置166との間で生じる漏洩電流の検出精度を向上できる。
なお、3本の供給線162~164を1つの変流器に通すことで、供給線162~164を流れる電流値の合計を計測することは可能である。しかし、供給線162~164同士が離れている場合には、大径の変流器や変形自在な変流器を用いる必要があるため、使用可能な変流器の自由度が小さくなる。更に、大径の変流器や変形自在な変流器では、電流値の検出精度が低下する。
これに対し本実施形態では、3本の供給線162~164を個別に供給側変流器171~173に通すので、供給線162~164同士が離れていたとしても、供給側変流器171~173の自由度の低下を抑制できる。更に、供給側変流器171~173を小径で固定形状にし易いので、電流値の検出精度を向上できる。
また、中性線161aの電流値を変流器で計測することでも、中性線161aを流れる漏洩電流を検出できる。但し、中性線161aには、漏洩電流以外にも、鉄道車両160の電気回路の各部から接地線40を介して電流が生じることがあり、発電機161と調整装置166との間で生じる漏洩電流の検出精度が低下するおそれがある。
これに対し本実施形態では、中性線161aの電流値ではなく、3本の供給線162~164の電流値の合計によって漏洩電流の値を算出するので、発電機161と調整装置166との間で生じる漏洩電流の検出精度を向上できる。
なお、漏洩電流監視装置170の具体的な制御方法は、電位差V1を取得せず、供給側変流器171~173の電流値の合計を差分Ad(漏洩電流の値)とする以外は、第1実施形態の漏洩電流監視装置80と略同一である。
漏洩電流監視装置180は、供給線18が通される供給側変流器181と、接地側電線45が通される接地側変流器182と、正極線165aが通される蓄電池用変流器183と、を備えている。供給側変流器(供給側計測器)181、接地側変流器(供給側計測器)182及び蓄電池用変流器183はいずれも、計測対象となる電線が貫通する環状の変流器から構成された計測器であり、その貫通部分を流れる電流値を計測する。供給側変流器181は、供給線18のうちVVVFインバータ20側とSIV30側とへ分岐する前の部位が通され、その部位の電流値A1を計測する。
接地側変流器182は、接地側電線45のうち、VVVFインバータ20側とSIV30側とへ分岐する前の部位であって、分岐線45aへの分岐に対しVVVFインバータ20及びSIV30側の部位が通され、その部位の電流値A2を計測する。
調整装置166の下流側で漏洩電流が生じていない場合、調整装置166から供給線18を介しVVVFインバータ20及びSIV30へ電流が流れ、VVVFインバータ20及びSIV30から接地側電線45を介し調整装置166へ電流が帰る。よって、この場合には基本的に、供給側変流器181の電流値A1と、接地側変流器182の電流値A2との差分Adが0[A]となる。
一方、調整装置166の下流側であって、例えば電動機22で漏洩電流が生じた場合、その漏洩電流は、車体12、接地線40、分岐線45aを通り、接地側変流器182を迂回して接地側電線45に合流し、調整装置166に帰る。これにより、供給側変流器181の電流値A1と、接地側変流器182の電流値A2との差分Adを漏洩電流の値として精度良く算出できる。従って、漏洩電流監視装置180は、供給側変流器181及び接地側変流器182の電流値A1,A2を監視することで、調整装置166の下流側で生じる漏洩電流の検出精度を向上できる。
蓄電池用変流器183は、蓄電池165から延びる正極線165aの電流値を計測する。供給線18には、蓄電池165からの電流と、発電機161からの電流とが流れるので、供給側変流器181の電流値A1と蓄電池用変流器183の電流値とから、電流値A1のうち蓄電池165分と発電機161分とを算出できる。これにより、蓄電池165からの電流に基づいた漏洩電流の発生や、発電機161からの電流に基づいた漏洩電流の発生を検出できる。
なお、漏洩電流監視装置170の具体的な制御方法は、電位差V1を取得せず、電流値A1と電流値A2との差分を、電位差V1で補正せずに差分Ad(漏洩電流の値)とする点と、蓄電池用変流器183の電流値をピーク検出メモリ82c等に記憶する点以外は、第1実施形態の漏洩電流監視装置80と略同一である。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推測できるものである。例えば、架線4,140の電圧やSIV30からの出力電圧の数値などを適宜変更しても良い。互いに連結される鉄道車両100a~100cの数を適宜変更しても良く、複数台の鉄道車両が連結された車両編成の一部を鉄道車両10,150,160としても良い。
電流値A1,A2を取得する間隔や、走行状態データを取得する間隔、差分Adの平均値を算出する間隔、その平均値の算出に用いる差分Adの範囲、各リングバッファ83a~83dの記憶容量などを適宜変更しても良い。図9のアベレージ検出処理S29で短期変化率および長期変化率の算出に用いる変化前の平均値を適宜変更しても良い。例えば、5分~4分前の平均値(5分~4分前に算出された複数の差分Adを平均した平均値)に対する直近1分間の平均値の変化率を短期変化率や長期変化率としても良い。
また、鉄道車両10,100a~100c,150,160の各部の詳細な電気回路を適宜変更しても良い。鉄道車両10,100a~100c,150は、直流電車または交流電車のいずれか一方だけでなく、走行する路線に応じて直流電車と交流電車とを切り換え可能にしても良い。この場合、鉄道車両10,100a~100c,150に架線4,140から供給される電力に応じて、直流を検出可能な供給側変流器および接地側変流器と、交流を検出可能な供給側変流器および接地側変流器と、を切り換え可能に構成する。
上記実施形態では、漏洩電流監視装置80,110,170,180によって鉄道車両10,100a~100c,150,160の電気回路の漏洩電流を監視する場合について説明したが、これに限られない。鉄道車両10,100a~100c,150,160以外の電気回路の漏洩電流を漏洩電流監視装置80,110,170,180によって監視しても良い。例えば、鉄道車両10,100a~100c,150,160以外の電気回路として、各家庭や施設、工場などの屋内配線または電気設備、自動車や航空機、船舶、電化製品の電気回路などが挙げられる。
上記実施形態では、鉄道車両10,100a~100c,150,160がレール2上を走行する場合について説明したが、これに限られない。例えば、レールに吊り下げられる鉄道車両に本発明を適用しても良い。また、直流電車において、VVVFインバータ20による制御の代わりに、供給線18からの直流電力を分圧により調整して出力する抵抗制御によって、直流用の電動機を作動させても良い。
上記実施形態では、三相4線式の交流の発電機161が鉄道車両160に搭載される場合について説明したが、これに限られない。発電機161を単相交流発電機、三相3線式の交流発電機に変更し、それらからの交流電力を調整装置166で直流電力に変換するようにしても良い。また、燃料電池を含む直流発電機に発電機161を変更し、調整装置166による電力の変換機能を省略しても良い。また、発電機を搭載せずに蓄電池165のみで走行する鉄道車両に本発明を適用しても良い。更に、各種の発電機や蓄電池165とパンタグラフ17との両方を搭載し、それらからの電力供給を切り換え可能な鉄道車両に本発明を適用しても良い。
また、SIV30とSIV30よりも上流側とを車載電源とし、その車載電源から電力が供給される3本の電線32u,32v,32wを個別に3つの変流器に通しても良い。3本の電線32u,32v,32wのうち接地線40に接続されていないものが供給線であり、その供給線が通る変流器が供給側変流器である。3本の電線32u,32v,32wのうち接地線40に接続されたものがある場合、その接続されたものが接地線の一部であり、その接地線の一部が通る変流器が接地側変流器である。同様に、VVVFインバータ20や絶縁トランス34、主変圧器151、AC/DCコンバータと、それらよりも上流側とを車載電源とし、車載電源の下流側(出力側)の各電線を適宜、供給側変流器や接地側変流器に通しても良い。
上記第4実施形態では、漏洩電流監視装置170,180が、電位差V1を計測する電位差検出部89を備えない場合について説明したが、これに限られない。例えば、供給線18と接地線40との間の電位差V1を計測する電位差検出部89を漏洩電流監視装置180に設け、電位差V1で補正した差分Adを算出しても良い。
同様に、三相交流が流れる供給線162,163,164の相間から電圧のクロスポイントを検出する電位差検出部89を漏洩電流監視装置170に設け、補正後の差分Adとして漏洩電流Igrを算出しても良い。なお、漏洩電流Igrを算出するために、電圧のクロスポイントを検出する対象が三相3線式の場合、電位差検出部89は、接地されていない2相間の電圧のクロスポイントを検出すれば良い。
また、第1~3実施形態における漏洩電流監視装置80,110の電位差検出部89を省略しても良い。架線4の電圧を計測する電圧計が鉄道車両10,100a~100c,150に搭載されている場合、その電圧計を電位差検出部89として用いても良い。
上記実施形態では、接地端子部43とレール2(各車輪13)との間の電位差を0[V]と仮定する場合について説明したが、これに限られない。接地端子部43とレール2(各車輪13)との間の電位差V2を計測する第2電位差検出部を漏洩電流監視装置80,110,170,180に設けても良い。例えば、この電位差V2と、電位差検出部89による電位差V1とによって、電流値A1,A2の差分を補正しても良い。
上記実施形態では、漏洩電流監視装置80,110,170,180において、供給側変流器87,87a,87c,171~173,181及び接地側変流器88,88a~88c,182の電流値に基づき差分Ad(漏洩電流の値)を算出する場合について説明したが、これに限られない。例えば、漏洩電流監視装置80,110,170,180で差分Adを算出せずに、外部サーバ90で差分Adを算出しても良い。即ち、漏洩電流監視装置80,110,170,180は、供給側変流器87,87a,87c,171~173,181及び接地側変流器88,88a~88c,182の電流値や、電位差検出部89による電位差V1を外部サーバ90へ送信するだけのものでも良い。また、外部サーバ90を設けず、差分Ad及び走行状態データに基づく解析を漏洩電流監視装置80,110,170,180で行うようにしても良い。
上記実施形態では、外部サーバ90への送信が許可されたデータが記憶される各メモリ82c~82fに、差分Adに関するデータとして差分Ad自体や差分Adの平均値を記憶する場合について説明したが、これに限られない。差分Adに関するデータとして電流値A1,A2を各メモリ82c~82fに記憶し、差分Adに基づき選定した電流値A1,A2を外部サーバ90へ送信するようにしても良い。
また、外部サーバ90と漏洩電流監視装置80,110,170,180とが無線通信装置71を介して通信可能である場合、差分Adに基づいて外部サーバ90への送信を許可すると判断したデータを、各メモリ82c~82fに記憶せず、外部サーバ90へ直接送信しても良い。
各メモリ82c~82fを鉄道車両10,100a~100c,150,160のHDD62に設け、各メモリ82c~82fのデータを鉄道車両10,100a~100c,150,160から外部サーバ90へ送信しても良い。更に、走行状態リングバッファ83aを鉄道車両10,100a~100c,150,160のHDD62やRAM63に設けても良い。
また、各メモリ82c~82fに、差分Ad自体や差分Adの平均値と一緒に走行状態データを記憶しなくても良い。この場合、走行状態リングバッファ83aに記憶された走行状態データと、各メモリ82c~82fに記憶されたデータとは、各データの計測時刻(算出時刻)により関連付けられている。そのため、各メモリ82c~82fに記憶されたデータを外部サーバ90へ送信するとき、そのデータの計測時刻と同一時刻に計測(所得)された走行状態データを外部サーバ90へ送信すれば良い。
上記実施形態では、漏洩電流監視装置80,110,170,180のCPU81において、供給側変流器87,87a,87c,171~173,181及び接地側変流器88,88a~88c,182の電流値をデジタル化して取得する場合について例示したが、これに限られない。例えば、供給側変流器87,87a,87c,171~173,181及び接地側変流器88,88a~88c,182の電流値をアナログ信号のまま合成し、それらの電流値の差分(合計)をデジタル化してCPU81に取得させても良い。また、供給側変流器87,87a,87c,171~173,181及び接地側変流器88,88a~88c,182の電流値や、電位差検出部89による電位差V1をデジタル化する場合には、そのデジタル化する変換器と、入出力ポート85とを無線で通信しても良い。
上記実施形態では、漏洩電流監視装置80,110,170,180でピーク検出処理S28、アベレージ検出処理S29及びサイクル収集処理S30を実行する場合について説明したが、これに限られない。例えば、ピーク検出処理S28、アベレージ検出処理S29及びサイクル収集処理S30の少なくとも1を実行し、その他の処理を実行しなくても良い。
上記実施形態では、ピーク検出処理S28において、スタート位置Sからエンド位置Eまでの差分Adをピーク検出メモリ82cに記憶する場合について説明したが、これに限られない。例えば、差分リングバッファ83bの最新位置の差分Adが閾値未満から閾値以上になった場合に、15秒前から最新位置までの差分Adをピーク検出メモリ82cに記憶し、差分Adが閾値以上から閾値未満になってから15秒経過するまで、新たに算出された最新位置の差分Adを毎回のピーク検出処理S28でピーク検出メモリ82cに記憶するように制御しても良い。
上記第1~3実施形態では、集約線42を接地側変流器88,88a~88cに通す場合について説明したが、これに限られない。例えば、接地側電線45を接地側変流器88,88a~88cに通し、VVVFインバータ20及びSIV30の入力側の漏洩電流のみを検出できるようにしても良い。
上記第4実施形態において、集約線42が通る変流器を漏洩電流監視装置170,180に追加しても良い。例えば、集約線42が通る変流器によって、集約線42を通る迷走電流を検出できるので、その迷走電流の影響を排除して漏洩電流を解析できる。
上記第1,2実施形態では、絶縁トランス34が第1低圧交流電路32の三相交流を単相3線式の交流に変換して第2低圧交流電路36へ出力する場合について説明したが、これに限られない。例えば、三相交流を三相4線式の交流に変換(変圧)するように絶縁トランス34を構成し、接地線40に繋がる1本の中性線(電線36n)と、接地線40に繋がらない3本の電線(電線36r,36t及び追加の電線)それぞれとの間から100Vの単相交流を取り出すように第2低圧交流電路36を構成しても良い。
また、第1低圧交流電路32の三相交流から単相交流を取り出し、その取り出した単相交流を絶縁トランス34で変圧して第2低圧交流電路36へ出力しても良い。具体的に例えば、絶縁トランス34の1次巻線で第1低圧交流電路32の電線32vと接地線40とを繋ぎ、絶縁トランス34の2次巻線で第2低圧交流電路36の電線36rと接地線40(電線36n)とを繋いでも良い。
上記第3実施形態では、主変圧器151の3次巻線に第1低圧交流電路32が接続される場合について説明したが、これに限られない。主変圧器151の3次巻線を省略して、鉄道車両150に上記第1,2実施形態におけるSIV30を搭載し、SIV30に第1低圧交流電路32を接続しても良い。この場合、AC/DCコンバータ152の出力側とVVVFインバータ20の入力側とを繋ぐ正負の電線をそれぞれ分岐させ、その分岐した正負の電線をそれぞれSIV30の入力側に接続する。
上記実施形態では、供給側変流器87,87a,87c,171~173,181、接地側変流器88,88a~88c,182及び蓄電池用変流器183のそれぞれは、計測対象となる電線が貫通する環状の変流器から構成されて、その貫通部分を流れる電流の値を計測する計測器である場合について説明した。しかし、これらの変流器を、計測対象の電線を流れる電流の値を計測可能な他の計測器に代えても良い。他の計測器としては、通電により電線に生じた磁界を計測し、その磁界に基づいて電流の値を計測する非環状のものが例示される。また、他の計測器としては、1本の電線の電流を個別に計測するものに限られるが、シャント抵抗を用いたものが例示される。
2 レール
4,140 架線
10,100b,150,160 鉄道車両
100a,100c 鉄道車両(電力供給車)
13 車輪
14 連結部
15 三相交流機器(電気機器の一種)
16 単相交流機器(電気機器の一種)
17 パンタグラフ
18,162,163,164 供給線
18a 供給引通線
18b 供給上流線
19 直流機器(電気機器の一種)
20 VVVFインバータ(電気機器の一種)
22 電動機(電気機器の一種)
30 SIV(電気機器の一種)
34 絶縁トランス(電気機器の一部)
40 接地線
41 接地引通線
42 集約線
43 接地端子部
71 無線通信装置(送信部)
80,110,170,180 漏洩電流監視装置(監視装置)
87,87a,87c,171,172,173,181 供給側変流器(供給側計測器)
88,88a,88b,88c,182 接地側変流器(接地側計測器)
89 電位差検出部
151 主変圧器(電気機器の一種)
152 AC/DCコンバータ(電気機器の一種)
161 発電機(車載電源)
161a 中性線
165 蓄電池(車載電源)
166 調整装置(電気機器の一種)
S26,S48,S51,S65,S68,S72 電位関連付手段
S21 取得手段
S48,S51,S65,S68,S72 状態関連付手段
S26 差分算出手段
S41~S47,S50,S63,S64,S66,S67 送信判断手段
S48,S51,S65,S68 送信許可手段

Claims (9)

  1. 架線から電力の供給を受けるパンタグラフと、車両走行用の電力を発生させる三相4線式以外の車載電源との内の少なくとも一方が搭載されてレール上を走行する鉄道車両であって、
    前記レール上を転動する複数の車輪と、
    その車輪に接続されて接地される接地線と、
    前記パンタグラフ又は前記車載電源から電力が供給される供給線と、
    その供給線および前記接地線を含む電気回路に接続されて前記供給線からの電力によって作動する電気機器と、
    前記電気回路に生じる漏洩電流を監視する監視装置と、を備え、
    その監視装置は、
    前記供給線の電流値を計測する供給側計測器と、
    前記接地線の電流値を計測する接地側計測器と、
    を備えていることを特徴とする鉄道車両。
  2. 前記鉄道車両のレール方向の両端部にそれぞれ設けられて別車両に連結可能な一対の連結部を備え、
    前記供給線は、
    一対の前記連結部の間に引き通されて前記別車両に接続可能な供給引通線と、
    その供給引通線と前記パンタグラフ又は前記車載電源とを繋ぐ供給上流線と、を備え、
    前記供給側計測器は、前記供給上流線の電流値を計測することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
  3. 前記鉄道車両のレール方向の両端部にそれぞれ設けられて別車両に連結可能な一対の連結部を備え、
    前記接地線は、
    一対の前記連結部の間に引き通されて前記別車両に接続可能であると共に前記電気機器が接続される接地引通線と、
    その接地引通線から分岐する集約線と、
    複数の前記車輪を同電位とするようにこれらの車輪と前記集約線とを連結する接地端子部と、を備え、
    前記接地側計測器は、前記集約線の電流値を計測することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
  4. 前記監視装置は、
    前記供給線と前記接地線との間の電位差を計測する電位差計測部と、
    その電位差計測部で計測した電位差をその計測時の前記供給側計測器および前記接地側計測器の電流値に関連付ける電位関連付手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
  5. 前記監視装置は、
    前記鉄道車両の走行状態を取得する取得手段と、
    その取得手段で取得した走行状態をその取得時の前記供給側計測器および前記接地側計測器の電流値に関連付ける状態関連付手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
  6. 前記供給側計測器および前記接地側計測器で計測した電流値に関するデータを前記鉄道車両の外部へ送信する送信部を備えることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
  7. 前記監視装置は、
    前記供給側計測器の電流値と前記接地側計測器の電流値との差分を算出する差分算出手段と、
    その差分算出手段で算出された差分に基づき、その差分に関するデータを前記送信部から前記鉄道車両の外部へ送信するかを判断する送信判断手段と、
    その送信判断手段で送信すると判断した場合に、前記差分に関するデータを前記送信部から前記鉄道車両の外部へ送信可能とする送信許可手段と、
    を備えることを特徴とする請求項6記載の鉄道車両。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の鉄道車両を電力供給車とする車両編成内において、その電力供給車から電力の供給を受けてレール上を走行する鉄道車両であって、
    前記レール上を転動する複数の車輪と、
    前記電力供給車に直接または別の車両を介して連結される連結部と、
    その連結部を介して前記電力供給車から供給される電力によって作動する電気機器と、
    その電気機器を前記車輪に連結して接地させる自車接地線と、
    その自車接地線の電流値を計測する自車接地側計測器と、を備えていることを特徴とする鉄道車両。
  9. レール上を走行する鉄道車両であって、
    前記レール上を転動する複数の車輪と、
    その車輪に接続されて接地される接地線と、
    その接地線に中性線が接続される三相4線式の電源であって車両走行用の電力を発生させる車載電源と、
    その車載電源から電力が供給される3本の供給線と、
    それらの供給線を含む電気回路に接続されて前記供給線からの電力によって作動する電気機器と、
    前記電気回路に生じて前記中性線を通る漏洩電流を監視する監視装置と、を備え、
    その監視装置は、3本の前記供給線の電流値をそれぞれ個別に計測する3つの供給側計測器を備えていることを特徴とする鉄道車両。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN117148040A (zh) * 2023-09-04 2023-12-01 国网山东省电力公司聊城供电公司 基于最小二乘法的0.4kV低压架空线路的漏电定位装置

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CN117148040A (zh) * 2023-09-04 2023-12-01 国网山东省电力公司聊城供电公司 基于最小二乘法的0.4kV低压架空线路的漏电定位装置

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