JP2023068825A - 荷電粒子線装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】カラムに対するトップテーブルの位置を正確かつ高速に位置決めすることが可能なステージ装置およびそのステージ装置を備えた荷電粒子線装置を提供する。【解決手段】本発明に係る荷電粒子線装置は、第1移動テーブルおよび前記第1移動テーブルの上方に配置された第2移動テーブルを備え、試料室と前記第1移動テーブルとの間の第1相対位置、前記試料室と第2移動テーブルとの間の第2相対位置、および、前記鏡筒と前記試料との間の第3相対位置、を計測し、前記第1相対位置と前記第2相対位置に応じて、前記第1移動テーブルと前記第2移動テーブルとの間の相対位置を補正する。【選択図】図1

Description

本発明は、荷電粒子線装置に関する。
半導体素子の微細化に伴い、製造装置のみならず、検査や評価装置にもそれに対応した高精度化が要求されている。通常、半導体ウェハ上に形成したパターンを評価し、あるいは形成されたウェハの欠陥を検査するために、走査型電子顕微鏡(以下、SEM:Scanning Electron Microscopeと称す)が用いられている。特にパターンの形状寸法を評価するためには測長SEMが用いられる。
測長SEMは、ウェハ上に電子線を照射し、得られた2次電子信号を画像処理し、その明暗の変化からパターンのエッジを判別してウェハ上に形成されたパターンの寸法を測定する装置である。測長SEMには、ウェハ全域を観察、検査するために、ウェハ上の所望の個所をビームの照射位置に位置決めすることが可能なXYステージが設けられている。このXYステージは、例えば回転モータとボールねじによって駆動されるものやリニアモータを用いて駆動するものがある。また、XY平面のみでなく、Z軸やZ軸まわりの回転運動などを実施するステージが用いられる場合もある。特に近年、超精密な位置決めを実現するために、例えば空気などの圧力または電磁気力を用いた非接触方式の浮上ステージを構成する場合も多い。
このような浮上型ステージの構成はいくつかの種類が存在する。例えば制御性、製造性、保守性の観点から、従来型のスタック(2段重ね)型XYステージにおいて、上側の軸を浮上型に構成する場合がある。このような構成の場合、下軸は1方向にのみ可動するのに対し、上軸は複数方向(典型的には6自由度方向)に可動することができる。また、浮上ステージに限らず、案内機構や弾性ヒンジなどを用いて下軸の移動テーブルに対してウェハ等を載置するトップテーブルが複数方向(例えばXとZ方向など)に稼働することができる構成が可能である。
このような構成のステージ装置においては、その自由度方向それぞれに動作可能なように駆動手段(モータ)を配置し、各自由度に対応する位置検出手段(センサ)を設けてその計測結果を常時駆動手段へフィードバックすることにより、各自由度に対応する制御量が制御される。この位置検出手段としては、リニアスケールやレーザ干渉計などが一般的である。
例えば複数のリニアスケールを用いて、下軸テーブルに対するトップテーブルの複数方向の位置を検出した場合、トップテーブルの絶対的な精度向上が難しいという課題がある。この要因として、トップテーブル位置は下軸テーブルに対して位置制御がされるので、下軸テーブルの変形や姿勢変化などの影響を受けることが挙げられる。また、トップテーブルはリニアスケールのセンサ値を用いて制御されるので、リニアスケール単体の精度やリニアスケールの取付け精度(角度ずれなど)の影響を大きく受ける。その結果、センサ値上では正確に位置決めできていても、電子線を照射するカラム基準での位置においてずれが生じ、結果としてSEM像での位置精度が悪化するという課題がある。
一方、カラムや試料室基準でのトップテーブルの位置を直接検出する方法として、レーザ干渉計と反射ミラーを用いる方法も知られている。レーザ干渉計は、反射ミラーに対してレーザ光を照射し、反射波との干渉によって数十ピコメートルオーダの分解能でステージ位置を検出するこができる。また、ウェハと同じ高さにおいて計測を実施できるので、アッベ誤差が最小となり,測長SEMをはじめ多くの精密ステージの位置計測において広く利用されている。しかしながら、レーザ干渉計を用いた場合でも、下軸テーブルとトップテーブルの相対的な位置を計測することができないので、それだけではトップテーブルと下軸テーブルの位置を精度よく制御することができない。
同様に、高さ方向に関しても、下軸テーブルの影響やセンサ精度の影響により、カラムを基準としたトップテーブルの高さを合わせることは容易ではない。SEMにおける焦点合わせを高速高精度に実施するために、カラムを基準とした高さセンサ(以降、Zセンサと呼ぶ)が設置されていることが多いものの、その応答性は低く、Zセンサ値によるフィードバック制御は現実的ではない。
このような課題に対し、特許文献1には、対物レンズを用いて荷電粒子ビームを収束させるように決定した合焦電流に基づいて試料表面と対物レンズの高さを調整する技術が開示されている。
US2019/0113470(US10345250)
特許文献1に開示された技術によれば、試料表面の高さに合わせてトップテーブルの位置を制御することにより、ウェハを所望の高さに合わせることが可能である。しかし、対物レンズを用いて合焦電流を算出するので、高さ合わせに要する時間が増大し、計測検査のスループットが低下する。また、高さ方向以外の例えばXY方向に関して位置精度を向上することはできない。
本発明の目的は、上記課題に対処し、カラムに対するトップテーブルの位置を正確かつ高速に位置決めすることが可能なステージ装置およびそのステージ装置を備えた荷電粒子線装置を提供することである。
本発明に係る荷電粒子線装置は、第1移動テーブルおよび前記第1移動テーブルの上方に配置された第2移動テーブルを備え、試料室と前記第1移動テーブルとの間の第1相対位置、前記試料室と第2移動テーブルとの間の第2相対位置、および、前記鏡筒と前記試料との間の第3相対位置、を計測し、前記第1相対位置と前記第2相対位置に応じて、前記第1移動テーブルと前記第2移動テーブルとの間の相対位置を補正する。
本発明に係る荷電粒子線装置によれば、第1移動テーブル(下軸テーブル)の変形、姿勢変化やセンサ組立て誤差などがあった場合でも、第1移動テーブルと第2移動テーブル(トップテーブル)との間の相対位置を補正することにより、カラムに対する第2移動テーブルの位置を正確かつ高速に位置決めすることが可能となる。
荷電粒子線装置100の側断面図である。 荷電粒子線装置100の上面構成図である。 荷電粒子線装置100の上面構成図である。 トップテーブル4上の調整サンプル7の配置図である。 ステージ座標と補正点を示す概念図である。 補正マップ生成の流れを示したフローチャートである。 ウェハ検査処理の流れを示したフローチャートである。
図1は、本発明の実施形態に係る荷電粒子線装置100の側断面図である。図1において、試料室1内側の底面には、2つのYリニアガイド10a、10bを介してY方向(紙面奥行き方向)に自由に移動できるYテーブル5が配置されるとともに、Yリニアモータ12(図面上の12aと12b)が試料室1とYテーブル5間にY方向に相対的に推力を発生させるように配置される。試料室1にはYリニアスケール11aがY方向に配置され、それと対向するようにYリニアスケール検出器11bがYテーブル5の底面に配置されている。Yリニアスケール11aは、Yテーブル5と試料室1との間のY方向の相対変位量を計測する。
Yテーブル5の上方にはトップテーブル4が配置されている。Yテーブル5上には、Xリニアモータ14(図面上では固定子14aと可動子14b)が、Yテーブル5とトップテーブル4間においてX方向に推力を発生させるように配置される。また、Yテーブル5には、Xリニアスケール13aが配置され、それと対向するようにXリニアスケール検出器13bがトップテーブル4の底面に配置されている。Xリニアスケール13aは、トップテーブル4とYテーブル5との間のX方向の相対変位量を計測する。
さらに、Yテーブル5とトップテーブル4の間には、X方向以外の5自由度(Y、Z、θx、θy、θz)をフィードバック制御によって拘束するための5個のモータ(図示せず)および5個のリニアスケール(図示せず)が構成されている。5個のモータに関しては、例えばリニアモータやボイスコイルモータのような直動モータを用いて構成することが可能である。この場合、例えばY方向2個、Z方向3個のモータを組み合わせて用いることにより、5自由度の推力およびモーメントを発生させることができる。また、いくつかのモータとして回転モータを用いることも可能であるし、5個以上のモータを用いて冗長なシステムを構成することも可能である。同様に、5個のリニアスケールに関しても、例えばY方向2個、Z方向3個のリニアスケールを組み合わせて用いることにより、5自由度の変位および姿勢変化を検出することができる。また、リニアスケール以外の光学式センサや静電容量を用いた位置センサなど、さまざまな位置センサを用いて同様にステージを構成することが可能である。得られた5軸のリニアスケール値を用いて制御装置6がフィードバック制御演算を実施し、5軸のモータ推力を適切に制御する。これにより、X方向以外の疑似的な拘束を実現する(疑似的にX方向においてのみ移動させる)。その結果、Xリニアスケール13aとXリニアモータ14を用いてトップテーブル4をX方向に位置決めすることができる。
以上により、Yテーブル5は試料室1に対してY方向に位置決め可能であり、トップテーブル4はYテーブル5に対してX方向を含む複数方向に位置決め可能な、試料ステージを構成することが可能となる。
トップテーブル4上にはウェハ2が配置される。ウェハ2の配置には機械的拘束力または静電気力等の保持力を備えたウェハ保持機構が用いられる。
試料室1上には、天板8およびカラム3が配置される。カラム3には、電子線によって2次電子像を生成するための電子光学系が備えられている。また、カラム3は、カラム3とウェハ2との間の相対的な高さを検出するZセンサ17(光学式センサ)を備える。Zセンサ17は、発光部17aと受光部17bから構成され、ウェハ2表面の高さ変化を光学的に検出することができる。
トップテーブル4上にはXミラー15xが配置されている。試料室1の側面には、Xレーザ干渉計16xが配置されている。Xレーザ干渉計16xは、Xミラー15xに対してレーザ光を照射し、その反射光を用いて試料室1とトップテーブル4との間のX方向の相対変位量(以下、Xレーザ値と呼ぶ)を計測する。Xミラー15xは、YZ平面上に鏡面を持ち、Y方向に長い棒状の形状をしており、Yテーブル5がY方向に移動した際にもレーザ光を反射することができる。Y方向についても同様に、Yレーザ干渉計16y(図2に示す)およびYミラー15y(図2に示す)によって試料室1とトップテーブル4との間のY方向の相対変位量(以下、Yレーザ値と呼ぶ)を計測することができる。XY方向それぞれのレーザ干渉計(16x、16y)は、トップテーブル4の可動範囲のうち、対応するXY方向のバーミラー(15x、15y)に対してレーザ光が照射される領域のみで有効な値を計測することができる。また、レーザ干渉計は、一度レーザ光が反射されない位置にXテーブルが移動すると、それ以降は、レーザ値のオフセット量が不定となり、絶対的な位置を計測することはできない。
制御装置6は、演算処理部、モータ駆動用アンプ等を備える。制御装置6は、前述したトップテーブルの5軸制御に加え、XY方向のレーザ値およびスケール値を入力として、リニアモータの駆動電流を制御することによってステージをXY方向に駆動し、所望の位置に位置決めを行う。リニアモータの制御方法としては、PID制御等を用いることが可能である。
以上の構成により、ウェハ2を試料室1に対して概ねXY平面上で移動するとともに、トップテーブル4とYテーブル5との間の相対高さ(Z方向)や姿勢(θx、θy、θz方向)がわずかに動作可能となり、ウェハ2上の任意の座標において、カラム3による2次電子像(SEM像)を取得することができる。
さらに、トップテーブル4上には、調整サンプル7が配置される。調整サンプル7は、主に電子ビームを照射する電子光学系の調整に用いられ、ウェハ2を保持していない状態においても、調整に必要なSEM画像が取得できるようにトップテーブル4上に配置されている。調整サンプル7の高さは、ウェハ2と一致するように設置される。これにより、ウェハ2を観察時の電子光学系の設定状態において、調整サンプル7を同様に観察することが可能である。なお、調整サンプル7は、トップテーブル4上に複数配置されることが一般的である。
図2は、荷電粒子線装置100の上面構成図である。図2のテーブル位置配置は、ウェハ2を観察可能な状態となっている。図1と同様の符号に関する説明は省略する。
レーザ干渉計16xおよび16yのレーザ光は、ミラー15xおよび15yに対して照射されており、ステージのXY座標はスケール値およびレーザ値によってともに計測可能である。
図中の位置P1は、レーザ干渉計16xおよび16yから照射されるレーザ光の交点であり、カラム3の中心(2次電子画像を取得するための電子線が照射される位置)がP1と一致するようにカラム3が配置される。これにより、ウェハのZ軸まわりの姿勢変化(ヨーイング)に対するアッベ誤差無く測定点(電子線照射位置)の位置情報をレーザ値によって計測できる。また、Zセンサ17(図示せず)も位置P1におけるウェハ2の高さを取得するように構成されており、結果として電子ビーム照射位置におけるウェハ2とカラム3の相対高さを検出することができる。
制御装置6は、ウェハ2の計測位置情報に基づき、所望の観察位置が位置P1に一致するようにYテーブル5およびトップテーブル4の位置を制御することにより、SEM観察を実施する。
トップテーブル4上には、調整サンプル7が3個配置されている(7a、7b、7c)。それぞれの調整サンプルは、ウェハ2の周辺でトップテーブル4の4辺の内側、かつXミラー15xとYミラー15yの有効範囲(レーザ干渉計16のレーザ光が照射可能な位置)に配置されており、互いに対して距離を隔てた位置に配置されている。このように調整サンプル7を配置することにより、後述する基準点による補正処理の精度を向上することができる。
図3は、荷電粒子線装置100の上面構成図である。図3のテーブル位置配置は、調整サンプル7aを観察可能な状態となっている。図1および図2と同様の符号に関する説明は省略する。
電子ビーム照射位置P1には、調整サンプル7aが位置決めされており、調整サンプル7aにおけるSEM画像が取得可能である。このとき、レーザ干渉計16xおよび16yのレーザ光は、ミラー15xおよび15yに対して照射されており、ステージのXY座標はスケール値およびレーザ値によってともに計測可能である。
このように、調整サンプル7を観察することは、ステージ上にウェハ2を保持していない状態でも可能であるので、電子光学系の調整、校正時などにおいて調整サンプル7が用いられる。また、調整サンプル7の高さはZセンサで検出される。
図4は、本実施形態におけるトップテーブル4上の調整サンプル7の配置図である。図4に示すように、調整サンプル7の配置位置と基準点については、いくつかの例が考えられる。
図4(1)は、3個の調整サンプルと3個の基準点を設けた例である。図4(1)において、3個の調整サンプル7a、7b、7cは、それぞれトップテーブル4上の左上、左下、右上位置に設置されている。それぞれの調整サンプル内には、ステージ位置補正マップの基準情報を測定する基準点Pa、Pb、Pcが設定されている。後述する補正処理において、これら基準点の位置にステージを移動させた後、XYレーザ値、Zセンサ値およびスケール値を取得する。そのため、それぞれの調整サンプルは、トップテーブル4の内側、かつXミラー15xとYミラー15yの有効範囲(レーザ干渉計16のレーザ光が照射可能な位置)である必要がある。このとき、3個の基準点は互いに離れた位置に設定することによりで、例えばZセンサ値から換算される姿勢角θxおよびθyの検出感度を高めることができる。
図4(2)は、4個の調整サンプルと4個の基準点を設けた例である。調整サンプルおよび基準点の数は3個以上であることが望ましいが、3個に限られたものではなく、4個以上の設置することも可能である。この場合、3個の場合と比較して、平均化効果により精度向上する可能性がある。
図4(3)は、2個の調整サンプルと3個の基準点を設けた例である。図4(3)においては、調整サンプル7aには2個の基準点Pa1、Pa2が設定されている。調整サンプル7c上に設定された基準点Pcと合わせて3点の基準点が用いられる。このとき、姿勢検出感度の観点から、同一の調整サンプル内に設定される基準点に関しても、互いに距離を取るように設定することが望ましい。
なお、基準点における調整サンプル7の高さは、電子光学系調整の観点では、概ねウェハ2と同じ高さに設定されることが望ましいが、本実施形態においては、必ずしもウェハ2と同等の高さである必要はない。すなわち、各調整サンプルの高さが既知であればよく、それぞれの高さが異なっていても問題ない。
図5は、本実施形態におけるステージ座標と補正点を示す概念図である。図5において、横軸はステージのX座標、縦軸はステージのY座標を示す。座標Ra、Rb、Rcは、それぞれ図4(1)における基準点Pa、Pb、PcをSEMで観察する場合のステージ座標である。例えば図4(1)において、トップテーブル4の左上側に配置された基準点PaをSEMで観察する場合、ステージは右下側(X軸+側、Y軸-側)に移動する必要があり、図4(1)における物理的な配置とは反対側がステージ座標となる。Ex1は、Yレーザ干渉計16yが有効なX座標範囲、すなわちYミラー15yの長さの領域である。同様にEy1は、Xレーザ干渉計16xが有効なY座標範囲、すなわちXミラー15xの長さの領域である。Ex1およびEy1で囲まれた領域は、レーザ干渉計が有効な範囲であり、SEM撮像可能な領域となる。補正点Rm1およびRm2は、レーザ干渉計の有効範囲内を一定間隔での格子点状に分布した点である。補正点は、後述するトップテーブルの位置補正のためのデータを取得する点である(すなわち位置の実測値を取得する点である)。
補正点Rm1(図中白丸で示す)はウェハ2の範囲内の点であるので、レーザ干渉計の値とともにZセンサ値も取得することが可能である。一方、レーザ有効範囲の四隅付近にある補正点Rm2(図中黒丸で示す)は、ウェハ2がビーム照射位置にないことから、Zセンサ値を取得することができない。よって、補正点Rm1においては、リニアスケール値、レーザ値、Zセンサ値を補正情報として取得する。一方、補正点Rm2においては、Zセンサ値が取得できないことからリニアスケール値とレーザ値を補正情報として取得する。また、基準点Ra、Rb、Rcにおいては、ウェハ2と同一の高さに調整された調整サンプル7上を観察するので、リニアスケール値、レーザ値およびZセンサ値の全てを取得することができる。
図6は、本実施形態における補正マップ生成の流れを示したフローチャートである。本フローチャートは、トップテーブル4上には、ウェハ2が載置された状態で処理を開始する。本フローチャートは、制御装置6によって実施される。
S601において、ステージがあらかじめ設定された基準点位置へ移動する。S602において、制御装置6は、基準点位置において、レーザ値、リニアスケール値、Zセンサ値を取得して記憶する。各センサ情報は、例えば1秒間などの平均データとして取得することが望ましい。S603において、制御装置6は、設定された全ての基準点のセンサ値取得が完了したかどうかを判別する。全ての基準点測定が終了していない場合はS601およびS602の処理を繰り返し、終了した場合はS604に移行する。本実施形態では、基準点の点数は3点であるから、結果としてS601およびS602の処理を3回ずつ実行することになる。
S604において、制御装置6は、S602で測定したセンサ値を用いて、基準点の現時点における初期値からのずれ量(オフセット量)を算出する。具体的には、あらかじめ設定された基準点の座標(X、Y、Z)および姿勢角(θx、θy、θz)と現在ステージ位置との間の差分を算出し、この差分量を現在状態における基準点ずれ量としてメモリ605(制御装置6が備えている)に保存する。より具体的には、例えば、3個の基準点それぞれにおけるZセンサ値を用いることにより、Z方向の高さおよびθx、θy方向の姿勢角に対するずれ量を算出することができる。同様にXY方向およびθz方向に関してもレーザ値を用いることによりずれ量を算出することができる。オフセット量は温度や気圧のような環境変化などによって変化する可能性があるので、本ステップにおいて補正マップ生成時のステージ状態を保存しておくことにより、後述する実稼働時と本フローチャート実施時との間の変動を補正することが可能となる。
S606において、ステージがあらかじめ設定された補正点位置へ移動する。S607において、制御装置6は、補正点位置において、レーザ値、リニアスケール値、Zセンサ値を取得して記憶する。各センサ情報は、S602と同様に平均データとして取得することが望ましい。S608において、制御装置6は、設定された全ての補正点のセンサ値取得が完了したかどうかを判別する。全ての補正点測定が終了していない場合はS606およびS607の処理を繰り返し、終了した場合はS609に移行する。補正点の点数は任意に決めることが可能である。補正点の数を多く設定すれば、より正確な補正が期待できる反面、保存メモリの容量増加や補正マップ生成に時間を要するデメリットもある。本実施形態では、図5に示すような数十点程度の補正点を設定しており、S606およびS607の処理を数十回ずつ実行することになる。
全ての補正点でのセンサ値取得が終了すると、S609において、制御装置6は、補正式を算出する。補正式とは、各ステージ座標において、カラム3に対してウェハ2を所望の位置に位置決めするための制御目標位置(浮上系においては浮上量および姿勢角)を算出するための関数である。制御目標位置は、各ステージ座標におけるYテーブル5とトップテーブル4との間の相対位置および姿勢角の目標値である。補正式の形式としては、図5における測定点のセンサ値を用いて、直線補間やスプライン補間などの方法で任意の座標における制御目標位置を算出する補正マップ型が有効である。この場合、補間に用いる座標ごとの各種係数をメモリ605に保管する。また別の方法として、補正点で得られたセンサ値を用いて、最小2乗法などの手法でXY座標の関数として制御目標位置を算出するような数式での実現も可能である。この場合、各補正に用いる数式の係数をメモリ605に保存する。なお、数式を用いた場合のXY座標に関する次数は任意に設定可能であり、1次式とする直線状や0次式とする座標によらず固定値とする運用も可能である。これらの低次の補正式は、特に補正点の点数が少ない場合に有効である。
以上のように、メモリ605に格納された補正式を用いることにより、任意のXY座標において、Yテーブル5とトップテーブル4との間の相対位置および姿勢角の制御目標位置が算出可能となる。これを用いてトップテーブル4を制御することにより、あらゆるステージ座標において、カラム3に対してウェハ2を所望の位置に位置決めすることが可能となる。
図6に示した補正マップ生成処理は、ステージの組み立て後の調整時や定期メンテナンス時などに実施することもできる。これにより、経時的な変化にも対応し、適切な位置決め精度を維持することが可能である。
S604やS609において、メモリ605に保存される基準点オフセットおよび補正式の情報は、ステージ機構の機械的な状態を示していると言える。すなわち、メモリ605に保管される情報の推移は、長期間におけるステージ機械的な経時変化と捉えることができ、ステージ機構の部品交換を含めたメンテナンス時期の予測や、故障に至る前の予兆診断などを行うことも可能である。
図7は、本実施形態におけるウェハ検査処理の流れを示したフローチャートである。本フローチャートは、トップテーブル4上にウェハ2が載置されていない検査前の状態で処理を開始する。本フローチャートは、制御装置6によって実施される。
S701において、まずウェハ2をトップテーブル4上に配置する。S702において、制御装置6は、光学顕微鏡やSEMを用いて、トップテーブル4上のウェハ2の配置位置を検出するアライメント処理を実施する。
S703において、ステージがあらかじめ設定された基準点位置へ移動する。S704において、制御装置6は、基準点位置において、レーザ値、リニアスケール値、Zセンサ値を取得して記憶する。各センサ情報は、例えば1秒間などの平均データとして取得することが望ましい。S705において、制御装置6は、設定された全ての基準点のセンサ値取得が完了したかどうかを判別する。全ての基準点測定が終了していない場合はS703およびS704の処理を繰り返し、終了した場合はS706に移行する。S703~S705の処理は図6におけるS601~S603の処理と同じである。
S706において、制御装置6は、S704で測定したセンサ値を用いて現在のオフセット値を算出する。S706における演算処理の内容はS604と同様である。得られたオフセット量はメモリ605に保存する。この結果、メモリ605には、S604で算出した補正マップ生成時の基準点オフセット量と、S706で算出した現在の基準点オフセット量が保存される。
S708において、制御装置6は、メモリ605の情報を用いて、次のステージ移動先の測定点における補正量(制御目標位置)を算出する。具体的には、まずメモリ605に格納されている補正式から、移動先のステージ座標における制御目標位置を計算(補間演算または数式へ座標値を代入)する。補正式によって計算した制御目標位置に対してS706で算出したオフセット量を足し合わせることにより、次の測定点における制御目標位置(浮上量および姿勢角)を算出する。
オフセット量は、基準点の初期位置に対する現在位置の差分を算出することができればどのような形式であってもよい。例えばS604において計算したオフセットを補正式のなかにあらかじめ入れ込んでおき、S706においては、現在の基準点オフセット(S706)と補正マップ生成時の基準点オフセット(S604)との間の差分を求めてこれを補正式の計算結果に対して加算してもよい。
S709において、制御装置6は、次の測定点へステージを移動させる。このとき、S708で算出した制御目標位置(浮上量および姿勢角)を用いてトップテーブル4の位置を補正することにより、常にカラム3に対して正確な位置決めをすることが可能となる。S710において、制御装置6は、測定点においてSEM画像を撮像し、得られた画像からウェハ2上のパターンの検査や計測を実施する。
S711において、制御装置6は、設定された全ての測定点の検査が終了したかどうかを判定し、全測定点終了した場合は、S713においてウェハ2を搬出し、一連のウェハ処理を終了する。S711において、まだ測定点が残っている場合は、S712において再校正の要否を判断する。この再校正とは、基準点のオフセット算出処理(S703~S706)を再度実施することを指している。これは、長時間同一ウェハを検査し続けた場合、ステージ自身や周囲環境の変化(温度、気圧など)によってステージ構造に変形が生じるような場合に有効であり、再度現在の基準点オフセットを算出することにより、位置補正の精度が向上することが期待できる。
S712における再校正の条件としては、以下のようなものが考えられる:
(a)S710のSEM撮像時にはオートフォーカス処理を実施する場合が多い。そこで撮像後のフォーカス値(カラム3からウェハ2の高さに相当)から、補正テーブル作成時からのトップテーブル4の高さずれ量を算出(推定)し、そのずれ量が閾値を超えた場合に、再校正を実施する。高さ以外の計測結果についてずれ量を推定できるのであれば、その推定結果を閾値と比較して再校正の要否を判定してもよい。高さ以外の計測結果としては例えば、カラムの傾きなどが考えられる;
(b)前回基準点オフセット算出時から一定時間経過した場合や、荷電粒子線装置100の物理状態を計測するセンサの計測値(例:温度センサにより検出するステージ温度またはその周辺温度)が一定以上変化した場合、などのように、ステージや荷電粒子線装置100自体の物理状態が変化したと想定される条件を満たした場合に、再校正を実施する;
(c)SEM撮像後のSEM画像において測定点パターンの画像中心からのずれ量(視野ずれ量)を検出する。SEM装置は、観察したいパターンを指定すると、そのパターンが視野中心に配置されるように構成されている。観察したいパターンが視野中心に配置されなければ、視野ずれ量が発生していることになる。その視野ずれ量が閾値よりも大きくなった場合、再校正を実施する。
このように、図7に示した実際のウェハ検査処理においては、現在の基準点オフセット量と、あらかじめ測定した補正点の情報とその時の基準点オフセット量を用いることにより、検査スループットを低下することなく高精度な補正が実現できる。
<本発明のまとめ>
以上述べてきたように、本実施形態に係る荷電粒子線装置100は、下軸テーブルの変形、姿勢変化やセンサ組立て誤差などがあった場合であっても、Yテーブル5とトップテーブル4との間の相対位置を補正することにより、カラム3に対するトップテーブル4の位置を正確かつ高速に位置決めすることが可能となる。すなわち、基準点の正確な座標を用いて補正テーブルをあらかじめ作成しておき、ステージ位置を指定する際はこの補正テーブルを用いて制御目標位置を導出することにより、Yテーブル5とトップテーブル4との間の相対位置を制御しつつも、ステージを正確に位置決めすることができる。
<本発明の変形例について>
以上の実施形態においては、下軸の案内機構としてリニアガイドを用い、上軸の案内機構として磁気軸受けを用いる構成を用いたが、その他の案内機構(例えば、流体軸受けや弾性支持構造など)を用いた任意の組み合わせが可能である。また、Yテーブル5に対してトップテーブル4はX方向を含めて6自由度で可動としたが、弾性支持構造などを用いてその一部を拘束することも十分可能である。
以上の実施形態において、試料室1に対するトップテーブル4の位置はレーザ干渉計16によって計測することとしたが、その他の計測器を用いてもよい。例えば光学式センサなどを用いることが考えられる。
以上の実施形態においては、補正点は図5に示すように格子点状に構成したが、格子点以外の点を補正点として設定することも可能である。
以上の実施形態においては、S712において再校正が必要と判断された場合に自動的に再校正を実行するようにしたが、これに代えてまたはこれと併用して、ユーザに対して再校正を促すワーニングを表示する方法も有効である。
以上の実施形態において、制御装置6は、その機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアによって構成することもできるし、その機能を実装したソフトウェアをCPU(Central Processing Unit)などの演算装置が実行することによって構成することもできる。
1 試料室
2 ウェハ
3 カラム
4 トップテーブル
5 Yテーブル
6 制御装置
7 調整サンプル
8 天板
10 Yリニアガイド
11 Yリニアスケール
12 Yリニアモータ
13 Xリニアスケール
14 Xリニアモータ
15 バーミラー
16 レーザ干渉計
17 Zセンサ
100 荷電粒子線装置

Claims (14)

  1. 試料に対して荷電粒子線を照射する荷電粒子線装置であって、
    試料室、
    前記試料室に対して第1方向に移動可能な第1移動テーブル、
    前記第1移動テーブルに対して複数方向に移動可能な第2移動テーブル、
    前記第2移動テーブルの上方に配置され前記試料に対して前記荷電粒子線を照射する鏡筒、
    前記試料室と前記第1移動テーブルとの間の第1相対位置、前記試料室と前記第2移動テーブルとの間の第2相対位置、および、前記鏡筒と前記試料との間の第3相対位置、を計測する位置検出部、
    前記第1移動テーブルと前記第2移動テーブルを駆動する制御部、
    を備え、
    前記制御部は、前記第1相対位置と前記第2相対位置に応じて、前記第1移動テーブルと前記第2移動テーブルとの間の相対位置を補正する
    ことを特徴とする荷電粒子線装置。
  2. 前記位置検出部は、リニアスケールを用いて前記第1相対位置を計測し、
    前記位置検出部は、レーザ干渉計または光学式センサを用いて前記第2相対位置を計測し、
    前記位置検出部は、光学式センサを用いて前記第3相対位置を計測する
    ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
  3. 前記制御部は、前記第2移動テーブル上の基準点における前記第1相対位置、前記基準点における前記第2相対位置、および、前記基準点における前記第3相対位置の第1セットを取得し、
    前記制御部は、前記第1セットを用いて、前記基準点の既知座標と前記基準点の座標の測定値との間のオフセット量を計算し、
    前記制御部は、前記オフセット量を用いて、前記第2移動テーブルの目標位置に対する前記第2移動テーブルの位置ずれを補正する
    ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
  4. 前記制御部は、
    前記第2移動テーブル上の補正点における前記第1相対位置と前記補正点における前記第2相対位置の第2セット、
    または、
    前記補正点における前記第1相対位置、前記補正点における前記第2相対位置、および前記補正点における前記第3相対位置の第3セット、
    のうち少なくともいずれかを取得し、
    前記制御部は、前記第2セットまたは前記第3セットのうち少なくともいずれかを用いて、前記補正点を基準として前記第2移動テーブルを指定位置に移動させるための制御目標位置を計算する補正式を特定し、
    前記制御部は、前記補正式を用いて、前記第2移動テーブルを前記指定位置に対して位置決めする
    ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
  5. 前記制御部は、前記第1移動テーブルと前記第2移動テーブルとの間の相対位置、および、前記第1移動テーブルと前記第2移動テーブルとの間の相対姿勢、の関数として、前記補正式を特定する
    ことを特徴とする請求項4記載の荷電粒子線装置。
  6. 前記補正式は、複数の前記補正点の間の座標における前記制御目標位置を、前記複数の前記補正点における前記位置検出部による計測結果を補間することによって計算するように構成されている
    ことを特徴とする請求項4記載の荷電粒子線装置。
  7. 前記制御部は、前記第2移動テーブル上の基準点における前記第1相対位置、前記基準点における前記第2相対位置、および、前記基準点における前記第3相対位置の第1セットを取得し、
    前記制御部は、前記第1セットを用いて、前記基準点の既知座標と前記基準点の座標の測定値との間のオフセット量を計算し、
    前記制御部は、
    前記第2移動テーブル上の補正点における前記第1相対位置と前記補正点における前記第2相対位置の第2セット、
    または、
    前記補正点における前記第1相対位置、前記補正点における前記第2相対位置、および前記補正点における前記第3相対位置の第3セット、
    のうち少なくともいずれかを取得し、
    前記制御部は、前記第2セットまたは前記第3セットのうち少なくともいずれかを用いて、前記補正点を基準として前記第2移動テーブルを指定位置に移動させるための制御目標位置を計算する補正式を特定し、
    前記制御部は、前記補正式を用いて前記制御目標位置を計算するとともに、前記制御目標位置と前記オフセット量を加算することにより、前記第2移動テーブルを前記指定位置に対して位置決めする
    ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
  8. 前記基準点は、前記第2移動テーブル上に設置された調整サンプル上の位置に配置されており、
    前記基準点は、前記位置検出部が前記第2相対位置を計測することができる範囲内に配置されている
    ことを特徴とする請求項3記載の荷電粒子線装置。
  9. 前記基準点は、前記第2移動テーブル上に3点以上配置されている
    ことを特徴とする請求項8記載の荷電粒子線装置。
  10. 前記位置検出部は、前記試料上ではない前記補正点については、前記第1相対位置と前記第2相対位置を計測するとともに、前記第3相対位置は計測せず、
    前記位置検出部は、前記試料上の前記補正点については、前記第1相対位置、前記第2相対位置、および前記第3相対位置を計測し、
    前記制御部は、前記試料上ではない前記補正点については前記第2セットを取得し、
    前記制御部は、前記試料上の前記補正点については前記第3セットを取得する
    ことを特徴とする請求項4記載の荷電粒子線装置。
  11. 前記制御部は、前記第1セットの現在値が、前記オフセット量を計算した時点から閾値以上変化しているのか否かを推定し、
    前記制御部は、前記第1セットの現在値が前記閾値以上変化したと推定する場合は前記第1セットを前記位置検出部によって再計測し、
    前記制御部は、前記再計測によって取得した前記第1セットを用いて、前記オフセット量を再計算する
    ことを特徴とする請求項3記載の荷電粒子線装置。
  12. 前記制御部は、前記第1セットの現在値が、前記オフセット量を計算した時点から閾値以上変化しているのか否かを推定し、
    前記制御部は、前記第1セットの現在値が前記閾値以上変化したと推定する場合は前記第1セットを前記位置検出部によって再計測するように促すメッセージを出力する
    ことを特徴とする請求項3記載の荷電粒子線装置。
  13. 前記制御部は、前記第1セットの現在値が、前記オフセット量を計算した時点から閾値以上変化しているのか否かを推定し、
    前記制御部は、前記第1セットの現在値が前記閾値以上変化したと推定する場合は前記第1セットを前記位置検出部によって再計測するかまたは前記再計測を実施するように促すメッセージを出力し、
    前記制御部は、前記第1セットを取得してからの経過時間、または、前記第1セットを取得した時点からの前記荷電粒子線装置の物理状態の変化量のうち少なくともいずれかを用いて、前記推定を実施する
    ことを特徴とする請求項3記載の荷電粒子線装置。
  14. 前記制御部は、前記試料に対して前記荷電粒子線を照射することによって生じる2次粒子を検出した結果を用いて、前記試料の観察画像を生成し、
    前記制御部は、前記第1セットの現在値が、前記オフセット量を計算した時点から閾値以上変化しているのか否かを推定し、
    前記制御部は、前記第1セットの現在値が前記閾値以上変化したと推定する場合は前記第1セットを前記位置検出部によって再計測するかまたは前記再計測を実施するように促すメッセージを出力し、
    前記制御部は、前記観察画像の視野中心のずれ量が閾値を超えたか否かによって、前記推定を実施する
    ことを特徴とする請求項3記載の荷電粒子線装置。
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