以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
[実施形態1]
図1~図23を用いて、実施形態1の鉱山管理システム1について説明する。
図1は、実施形態1の鉱山管理システム1の構成を模式的に示す図である。
鉱山管理システム1は、鉱山100の全体の生産性(例えば単位時間当たりの積荷運搬量)を一括管理するシステムである。鉱山管理システム1は、複数の鉱山機械101~103と、サーバ装置200と、判定装置250と、端末装置300とを備える。
鉱山機械101~103は、鉱山100において採掘作業を行う作業機械である。鉱山機械101~103は、例えば、掘削した土砂等をダンプトラック101に積み込む油圧ショベル102と、積荷を輸送するダンプトラック101と、路面を整地するブルドーザ103とを含むことができる。鉱山管理システム1の鉱山機械は、これらに以外に限定されない。
サーバ装置200は、鉱山機械101~103を管理する。サーバ装置200は、鉱山機械101~103から収集された鉱山機械101~103の稼働データを蓄積し、処理する。
サーバ装置200は、記録装置201と、処理装置202とを備える。
記録装置201は、鉱山機械101~103から収集された稼働データ及び位置データを記録するデータべースによって構成される。稼働データは、複数の鉱山機械101~103のそれぞれから所定期間に亘って収集されて、記録装置201に蓄積される。処理装置202は、プロセッサ及びメモリを備えて構成される。処理装置202は、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、処理装置202の機能を実現する。
ここで、鉱山機械101~103の稼働データは、サーバ装置200に逐次送信されることが望ましいが、通信環境及び通信コストを考えると、必ずしも逐次送信されるとは限らない。本実施形態のサーバ装置200は、ある程度まとまった量の稼働データを蓄積した後に、処理を開始するものとする。ある程度まとまった量は、例えば、ダンプトラック101の過去最長の作業サイクルにおいて要した時間や、過去最長の作業サイクルにおいて送信された稼働データのデータ量によって決定され得る。
判定装置250は、サーバ装置200の記録装置201に蓄積された稼働データに基づいて、鉱山100の生産性が計画外になるような鉱山機械101~103の稼働状況が発生したか否かを判定する判定処理を行う。生産性が計画外になるとは、予め計画していた生産性よりも生産性が低下する状態を示す。生産性が計画内とは、予め計画していた生産性が得られた状態を示す。判定装置250は、判定結果をサーバ装置200の処理装置202に送信する。判定装置250は、プロセッサ及びメモリを備えて構成される。判定装置250は、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、判定装置250の機能を実現する。
判定装置250は、サーバ装置200の処理装置202の一部として構成されてもよいし、鉱山機械101~103の制御装置の一部として構成されてもよいし、端末装置300の一部として構成されてもよい。判定装置250は、鉱山機械101~103の制御装置の一部として構成される場合、判定結果を通信遅延なく鉱山機械101~103のオペレータに通知することができる。また、この場合、判定装置250は、判定結果をリアルタイムに処理装置202に送信し、判定結果を遅滞なく端末装置300に表示させることができる。
端末装置300は、サーバ装置200の処理結果や判定装置250の判定結果等の情報を、ディスプレイ301に表示する。端末装置300は、サーバ装置200と通信するスマートフォン、タブレットPC又はノートPC等により構成される。端末装置300は、表示する情報をダッシュボード形式でディスプレイ301に表示することができる。端末装置300は、表示する情報をレポート形式やメール形式でディスプレイ301に表示してもよい。
端末装置300は、鉱山管理システム1のユーザによって使用される。鉱山管理システム1のユーザには、例えば、鉱山100の採掘・保守計画に応じて鉱山機械101~103の運行計画を作成する運行計画者501、鉱山機械101~103のオペレータ、オペレータの指導者502、鉱山100の経路等の路面を保守点検する路面保守員503、鉱山機械101~103又は各種機器を保守点検する機器保守員504、及び、鉱山100の採掘・保守計画を作成する採掘責任者505等が含まれる。端末装置300は、これらの各ユーザに所持されていてもよい。
端末装置300のユーザは、端末装置300に表示された情報に基づいて、鉱山100の生産性が計画外になったことを適切に把握し、生産性を計画内に改善させる対策を適切に講じることによって、鉱山100の生産性を改善させることができる。例えば、鉱山100の運行計画者501は、端末装置300に表示された情報を用いて、鉱山機械101~103の運行計画を修正することができる。オペレータの指導者502は、端末装置300に表示された情報を用いて、操作を改善するべきオペレータを発見し、操作の指導を行うことができる。路面保守員503は、端末装置300に表示された情報を用いて、生産性が計画外になる要因となった路面を早期に特定し、修理することができる。機器保守員504は、端末装置300に表示された情報を用いて、生産性が計画外になる要因となった機器の故障を早期に特定し、修理や事前の交換部品発注をすることができる。採掘責任者505は、端末装置300に表示された情報と、インターネット400を介して取得した天候情報(履歴、現在及び予測の情報を含む)や鉱物価格情報(履歴、現在及び予測の情報を含む)とを組み合わせて、採掘・保守計画を再検討することができる。採掘責任者505は、採掘・保守計画を修正したり、運行計画者501、指導者502、路面保守員503又は機器保守員504に対して改善指示を出したりすることができる。
以下では、鉱山機械101~103の1つであるダンプトラック101の稼働データから、鉱山100の生産性が計画外になったことを検知する鉱山管理システム1を例に挙げて説明する。
図2は、ダンプトラック101の作業サイクル及び計画外要因指標を説明する図である。
鉱山100は、油圧ショベル102が掘削した土砂等を積荷としてダンプトラック101に積み込む積み込みエリアと、ダンプトラック101が積荷の土砂等を排土する排土エリアと、積み込みエリアと排土エリアとを繋ぐ複数の経路とを有する。ダンプトラック101は、1回の作業サイクルにおいて、排土エリアにおいて排土を行い、排土エリアから経路を通って積み込みエリアに移動し、積み込みエリアにおいて積み込み後に経路を通って排土エリアに移動する一連の動作を行う。
ダンプトラック101の1回の作業サイクルの中で、鉱山100の生産性に影響を与える事項としては、ダンプトラック101の積載量(payload)、排土エリアでのダンプトラック101の待ち時間である排土待ち時間(queuing time (queuing dump))、積み込みエリアでのダンプトラック101の待ち時間である積み込み待ち時間(queuing time (queuing load))、経路上でのダンプトラック101の停車時間(waiting time)、油圧ショベル102のダンプトラック101への積荷の積み込み時間(loading time)、積み込みエリアにおいてダンプトラック101が積み込み可能な状態に移行するのに要する時間であるスポッティング時間(change over time ;COT)、及び、ダンプトラック101の平均車速(average speed)が挙げられる。これらの事項は、鉱山100の生産性が計画外になるようなダンプトラック101の稼働状況が発生する要因となり得る。本実施形態では、図2の表に示すように、これらの事項を、生産性が計画外になるようなダンプトラック101の稼働状況の発生要因を表す指標(以下、「計画外要因指標」とも称する)として定義する。
図2の表に示すように、ダンプトラック101の計画外要因指標には、各指標を識別するIDと、各指標の変動に影響を与える主体(すなわち各指標の変動の原因)の情報とが予め紐付けられている。判定装置250は、計画外要因指標を用いてダンプトラック101の稼働データを評価し、生産性が計画外になるようなダンプトラック101の稼働状況の発生要因を特定する。処理装置202は、判定装置250によって特定された当該発生要因を表す計画外要因指標に紐付けられた当該主体の関係者を、生産性を計画内に改善させる対策の担当者に割り当てることができる。処理装置202は、対策担当者に対する改善指示等のメッセージを、対策担当者の端末装置300に送信する。端末装置300は、メッセージをディスプレイ301に表示し、当該担当者に通知することができる。
なお、鉱山管理システム1は、ダンプトラック101の計画外指標として、図2の表に示す指標の少なくとも2つを採用すればよい。本実施形態では、鉱山管理システム1が図2の表に示す全ての指標を採用するものとして説明する。
図3は、図1に示す処理装置202の機械学習機能を示すブロック図である。
判定装置250の一部の機能は、機械学習によって構築されたモデルとして実現される。鉱山管理システム1では、サーバ装置200の処理装置202が、判定装置250の一部の機能を実現するモデルを機械学習によって構築する。
処理装置202は、抽出部211と、指標算出部212と、前処理部213と、学習部214とを有する。
抽出部211は、記録装置201に蓄積された稼働データ(以下「蓄積データ」とも称する)から、ダンプトラック101の作業サイクル毎の稼働データであるサイクルデータを抽出する。具体的には、抽出部211は、ダンプトラック101の積載量の推移によって作業サイクルを特定し、サイクルデータを抽出する。サイクルデータには、1回の作業サイクル中に複数経路を走行したダンプトラック101の稼働データが含まれる。抽出部211は、抽出されたサイクルデータに識別情報であるサイクルIDを付与する。抽出部211は、ダンプトラック101の識別情報である車両IDと、サイクル開始時刻及び終了時刻とに、サイクルデータを紐付けて記録装置201に登録する。なお、抽出部211は、記録装置201に蓄積された全ての稼働データからサイクルデータを抽出する必要はなく、予め設定された抽出期間に収集又は記録された稼働データからサイクルデータを抽出することができる。
指標算出部212は、抽出されたサイクルデータにおいて計画外要因指標を算出する。具体的には、指標算出部212は、ダンプトラック101のサスペンション圧に基づいて積載量を算出することができる。指標算出部212は、ダンプトラック101のGPSセンサにより取得された位置データから、ダンプトラック101が積み込みエリア、排土エリア又は経路上に位置するかを検知することができる。指標算出部212は、ダンプトラック101の車速又はエンジン回転数が所定値よりも小さくなったことに基づいて、待ち時間を算出することができる。指標算出部212は、この待ち時間と位置データとに基づいて、排土待ち時間、積み込み待ち時間及び停車時間を算出することができる。指標算出部212は、積載量が増加し始めてから積載量の増加が終わるまでの時間を算出することによって、積み込み時間を算出することができる。指標算出部212は、ダンプトラック101が積み込みエリアに進入してから積み込みが開始するまでの時間を算出することによって、スポッティング時間を算出することができる。指標算出部212は、ダンプトラック101が停車した状態を除いた走行時間と走行距離とから平均車速を算出することができる。
このように、指標算出部212は、ダンプトラック101の作業エリアや作業工程中における特徴的な動作又は状態であって、鉱山100の生産性に影響を与え易い動作又は状態を表す指標を、ダンプトラック101の計画外要因指標として算出する。これにより、鉱山管理システム1は、生産性が計画外になるようなダンプトラック101の稼働状況が、どの作業エリアやどの作業工程中の動作又は状態に起因して発生しているのかを正確に検知することができる。鉱山管理システム1は、生産性を計画内に改善させる対策を適切に講じることができるので、鉱山100の生産性を改善させることができる。
前処理部213は、機械学習から除外する作業サイクルの条件又は機械学習から除外する計画外要因指標の条件(学習条件)に基づいて、抽出部211により抽出されたサイクルデータから、学習用データとして相応しくないサイクルデータを除外する。機械学習から除外する作業サイクルの条件は、例えば、経路上の走行距離が極端に短い作業サイクルであったり、前回の排土位置と今回の排土位置が大きく異なる作業サイクルであったりすることが挙げられる。これにより、学習部214は、頻度の低い経路走行や路面整地のための土砂運搬などの、生産性にあまり影響を与えない作業サイクルのサイクルデータを除外して機械学習を行うことができる。
なお、生産性が計画内にある実際の稼働データからサイクルデータを抽出した場合、当該サイクルデータの大部分は、学習用データとして相応しいと考えてよい。しかし、判定装置250の判定確度を向上させるためには、前処理部213は、機械学習から除外する計画外要因指標の条件として、計画外要因指標の上下限値を設定し、上下限値の範囲外の計画外要因指標を除外することができる。これにより、学習部214は、生産性が計画内になるサイクルデータを特定する上下限値の範囲内にある計画外要因指標だけで機械学習を行うことができる。したがって、鉱山管理システム1は、判定装置250の判定確度を向上させることができる。
学習部214は、生産性が計画内になるサイクルデータを特定する複数の計画外要因指標の関係を判定装置250に学習させる機械学習を行う。本実施形態の学習部214は、生産性が計画内になる複数のサイクルデータをクラスタリングすることによって当該機械学習を行う。これにより、本実施形態の学習部214は、生産性が計画内になるサイクルデータを特定する複数の計画外要因指標の関係が学習された分類モデルを構築することができる。本実施形態の学習部214は、クラスタリング手法の1つであるk-meansを用いるが、他のクラスタリング手法を用いてもよい。
図4は、図3に示す学習部214によるクラスタ分類結果の一例を示す図である。図4の縦軸はサイクルデータ数を示し、図4の横軸はクラスタの識別情報であるクラスタIDを示す。図5は、図4に示すID=0及びID=2の各クラスタにおけるクラスタ中心の一例を示す図である。図5に示す破線は、ID=0のクラスタに属するサイクルデータにおける複数の計画外要因指標(ID=0~6)の関係を示す。図5に示す破線と縦軸との交点は、ID=0のクラスタにおけるクラスタ中心を示す。図5に示す実線は、ID=2のクラスタに属するサイクルデータにおける複数の計画外要因指標(ID=0~6)の関係を示す。図5に示す実線と縦軸との交点は、ID=2のクラスタにおけるクラスタ中心を示す。
k-meansは、教師なし学習であり、各サイクルデータにおける複数の計画外要因指標を特徴量として、各サイクルデータを、事前に指定されたクラスタ数の個数分だけ自動分類する。図4の例では、8つのクラスタ数を指定している。図4に示すように、大部分のサイクルデータは、ID=0のクラスタと、ID=2のクラスタとに分類されていることが分かる。k-meansでは、生産性が計画内になるサイクルデータを特定する複数の計画外要因指標の関係が、図5に示すような各クラスタ中心として学習される。k-meansでは、サイクルデータの各クラスタ中心(本例では8つ)との距離(例えばユークリッド距離やマハラノビス距離)を算出し、算出された距離が最小であったクラスタにサイクルデータを分類する。また、判定装置250では、対象のサイクルデータと、当該サイクルデータが分類されたクラスタのクラスタ中心との距離に応じて算出されるスコアによって、対象のサイクルデータが、生産性が計画内になるサイクルデータに対してどの程度逸脱するかを評価する。更に、判定装置250は、スコアに対する複数の計画外要因指標の寄与度が最も大きい計画外要因指標を、生産性が計画外になる稼働状況の発生要因として特定する。これにより、処理装置202は、特定された発生要因を表す計画外要因指標に紐付けられた主体の関係者を、生産性を計画内に改善させる対策の担当者に割り当てることができる。処理装置202は、対策担当者に対する改善指示等のメッセージを端末装置300に送信し、ディスプレイ301に表示させることができる。鉱山管理システム1は、鉱山100の生産性を改善させることができる。
すなわち、鉱山管理システム1は、計画外要因指標を単体で扱うのではなく、複数の計画外要因指標の関係を機械学習することによって、複数の要因が関係して生産性が計画外になったことを正確に検知することができる。しかも、鉱山管理システム1は、スコアという統一的な評価値を用いてサイクルデータを定量的に評価することによって、生産性が計画外になる稼働状況が発生したか否かを判定するので、複数経路や未知の経路を有する様々な鉱山において、生産性が計画外になったことを正確に検知することができる。
図5に示すID=0及びID=2の各クラスタにおけるクラスタ中心は、生産性が計画内になるサイクルデータの代表的な計画外要因指標の関係を表している。図5の破線で示すように、ID=0のクラスタに属するサイクルデータは、平均車速が遅い傾向がある。排土エリアと積み込みエリアとを繋ぐ経路が比較的短い場合には、ダンプトラック101をトップスピードで走行する機会が余りないので、平均車速が遅い傾向が現れ易い。また、経路が比較的短い場合には、積載量が少なく、積み込み待ち時間やスポッティング時間等が長くなる傾向が現れやすい。図5の実線で示すように、ID=2のクラスタに属するサイクルデータは、平均車速が速い傾向がある。排土エリアと積み込みエリアとを繋ぐ経路が比較的長い場合には、ダンプトラック101をトップスピードで走行する機会が多くなるので、平均車速が速い傾向が現れ易い。また、経路が比較的長い場合には、積載量が多く、積み込み待ち時間やスポッティング時間等が短くなる傾向が現れやすい。すなわち、比較的短い場合は、ID=0のクラスタに属するサイクルデータのような傾向が現れ易く、比較的長い場合は、ID=2のクラスタに属するサイクルデータのような傾向が現れ易い。
このように、学習部214は、生産性が計画内になる複数のサイクルデータをクラスタリングすることによって、生産性が計画内になるサイクルデータを特定する複数の計画外要因指標の関係が学習された分類モデルを構築することができる。判定装置250は、当該分類モデルを用いて、クラスタ中心からの距離に応じて表されるスコアを算出し、生産性が計画内になるサイクルデータに対してどの程度逸脱するかを評価することができる。特に、学習部214が、複数経路を走行したダンプトラック101のサイクルデータにおける計画外要因指標の関係が学習された分類モデルを構築することによって、鉱山管理システム1は、様々な鉱山において生産性が計画外になったことを正確に検知することができる。
図6は、図3に示す処理装置202が機械学習時に行う処理のフローチャートである。
ステップS601において、処理装置202は、記録装置201に蓄積された蓄積データからサイクルデータを抽出する。
ステップS602において、処理装置202は、抽出されたサイクルデータの計画外要因指標を算出する。
ステップS603において、処理装置202は、蓄積データに未抽出のサイクルデータが残っているか否かを判定する。処理装置202は、未抽出のサイクルデータが残っている場合、ステップS601に移行する。処理装置202は、未抽出のサイクルデータが残っていない場合、ステップS604に移行する。
ステップS604において、処理装置202は、抽出されたサイクルデータから学習用データとして相応しくないサイクルデータを除外する前処理を行う。
ステップS605において、処理装置202は、前処理が行われた複数のサイクルデータをクラスタリングし、生産性が計画内になるサイクルデータを特定する複数の計画外要因指標の関係を判定装置250に学習させる。すなわち、処理装置202は、上記のような複数の計画外要因指標の関係が学習されたサイクルデータの分類モデルを構築する。
ステップS606において、処理装置202は、クラスタ中心やスコアを算出し、学習用データとして相応しくないサイクルデータを学習していないかを判定する。処理装置202は、クラスタ毎に算出したスコアが予め設定された値よりも小さいか否かを判定することによって、ステップS606の判定を行う。或いは、処理装置202は、図5に示すようなクラスタ中心の関係を示すグラフを端末装置300に表示し、ステップS606の判定をユーザに行わせてもよい。処理装置202は、学習用データとして相応しくないサイクルデータを学習している場合、ステップS604に移行する。処理装置202は、学習用データとして相応しくないサイクルデータを学習してない場合、図6に示す本処理を終了する。
図7は、図1に示す判定装置250の機能を示すブロック図である。
判定装置250は、上記のように、予め学習された、生産性が計画内になるサイクルデータを特定する複数の計画外要因指標の関係に基づき、記録装置201に蓄積された蓄積データから抽出されたサイクルデータが、生産性が計画内になるサイクルデータに対してどの程度逸脱するかを評価する。これにより、判定装置250は、生産性が計画外になるダンプトラック101の稼働状況が発生したか否かを判定する判定処理を行う。
判定装置250は、抽出部251と、指標算出部252と、スコア算出部253と、判定部254と、要因特定部255と、登録部256とを有する。
抽出部251は、処理装置202の抽出部211と同様に、記録装置201に蓄積された蓄積データからサイクルデータを抽出する。指標算出部252は、処理装置202の指標算出部212と同様に、抽出部251により抽出されたサイクルデータにおいて計画外要因指標を算出する。
スコア算出部253は、処理装置202の学習部214により構築された分類モデルを用いて、抽出部251により抽出されたサイクルデータと当該分類モデルの各クラスタ中心との距離を算出する。スコア算出部253は、当該距離が最も小さい値をスコアとして算出する。抽出されたサイクルデータのスコアが大きいほど、抽出されたサイクルデータが、生産性が計画内になるサイクルデータに対して大きく逸脱していることを表す。
判定部254は、スコア算出部253により算出されたスコアが、予め定められた閾値より大きいか否かを判定する。判定部254は、スコア算出部253により算出されたスコアが、予め定められた閾値より大きい場合、生産性が計画外になるようなダンプトラック101の稼働状況が発生したと判定する。判定部254は、スコア算出部253により算出されたスコアが、予め定められた閾値以下である場合、生産性が計画外になるようなダンプトラック101の稼働状況が発生していないと判定する。判定部254は、生産性が計画外になるようなダンプトラック101の稼働状況が発生したと判定した場合、その旨を示すフラグを生成する。
要因特定部255は、生産性が計画外になるようなダンプトラック101の稼働状況の発生要因を特定する。要因特定部255は、スコアに対する複数の計画外要因指標のそれぞれの寄与度を算出し、寄与度が最も大きい計画外要因指標を、計画外の稼働状況の発生要因として特定する。すなわち、要因特定部255は、スコアが算出される際に最も大きく影響を与えた計画外要因指標を特定することによって、計画外の稼働状況の主な発生要因を特定することができる。
登録部256は、サイクルデータのサイクルID、サイクル開始時刻及び終了時刻、計画外要因指標、スコア、フラグ並びに発生要因等の情報を、互いに紐付けて記録装置201に登録する。登録部256は、これらの情報に対して更に、ダンプトラック101の車両ID、及び、ダンプトラック101が走行する経路の識別情報である経路IDを紐付けて記録装置201に登録することが好ましい。ダンプトラック101が走行する経路は、ダンプトラック101のGPSセンサにより取得された位置データから検知したり、ダンプトラック101の運行指令を受信することによって検知したりすることができる。
図8は、図7に示す判定装置250が行う判定処理のフローチャートである。
ステップS801において、判定装置250は、記録装置201に蓄積された蓄積データからサイクルデータを抽出する。
ステップS802において、判定装置250は、抽出されたサイクルデータのサイクルIDと、サイクル開始時刻及び終了時刻とを紐付けて記録装置201に登録する。この際、判定装置250は、ダンプトラック101の車両ID、及び、ダンプトラック101が走行する経路の経路IDについても、これらの情報に紐付けて登録することが好ましい。
ステップS803において、判定装置250は、抽出されたサイクルデータの計画外要因指標を算出する。
ステップS804において、判定装置250は、算出された計画外要因指標をサイクルIDに紐付けて記録装置201に登録する。
ステップS805において、判定装置250は、分類モデルを用いて、抽出されたサイクルデータのスコアを算出する。
ステップS806において、判定装置250は、算出されたスコアをサイクルIDに紐付けて記録装置201に登録する。
ステップS807において、判定装置250は、算出されたスコアが閾値より大きいか否かを判定する。判定装置250は、算出されたスコアが閾値以下である場合、図8に示す本処理を終了する。判定装置250は、算出されたスコアが閾値より大きい場合、計画外の稼働状況が発生したことを示すフラグを生成し、ステップS808に移行する。
ステップS808において、判定装置250は、算出されたスコアに対する複数の計画外要因指標のそれぞれの寄与度を算出する。判定装置250は、寄与度が最も大きい計画外要因指標を、計画外の稼働状況の発生要因として特定する。
ステップS809において、判定装置250は、計画外の稼働状況が発生したことを示すフラグと、計画外の稼働状況の発生要因とをサイクルIDに紐付けて記録装置201に登録する。その後、判定装置250は、図8に示す本処理を終了する。
図9は、図1に示す処理装置202の可視化機能を示すブロック図である。
処理装置202は、判定装置250によって記録装置201に登録された情報を用いて、生産性が計画外になるようなダンプトラック101の稼働状況に関する情報を集計し、可視化する。
処理装置202は、集計部221と、取得部222と、可視化部223とを有する。
集計部221は、判定装置250によって記録装置201に登録された情報を用いて、計画外の稼働状況の発生頻度、発生要因の出現頻度、又は、スコアを、期間毎、ダンプトラック101毎、又は、経路毎等の集計条件に基づいて集計する。例えば、集計部221は、記録装置201に記録されたサイクルIDに紐付けられたフラグ又は発生要因の数を所定期間に亘って集計し、計画外の稼働状況の発生頻度、又は、発生要因の出現頻度を集計することができる。集計部221は、記録装置201に記録されたサイクルIDに紐付けられたスコアを車両ID毎に集計することができる。
取得部222は、計画外の稼働状況の発生要因を詳細に分析するための分析用データとして、記録装置201に蓄積された蓄積データから、計画外の稼働状況が発生したダンプトラック101の稼働データを取得する。例えば、取得部222は、記録装置201に記録されたサイクルIDに紐付けられたフラグに基づいて、計画外の稼働状況が発生したダンプトラック101の稼働データ(1又は複数のサイクルデータ)を取得することができる。
可視化部223は、集計部221の集計結果、又は、取得部222により取得された分析用データを可視化する。例えば、可視化部223は、後述する図10~図13又は図21~図23に示すように、集計部221の集計結果を示すグラフを作成し、端末装置300に送信する。また、可視化部223は、後述する図14~図19に示すように、分析用データとして取得された稼働データの推移を示すチャートを作成し、端末装置300に送信する。可視化部223は、後述する図20に示すように、分析用データとして取得された稼働データから特定された作業エリアのマップを作成し、端末装置300に送信する。端末装置300は、可視化部223により作成されたグラフ等をディスプレイ301に表示することができる。
なお、処理装置202は、集計部221の集計結果、又は、取得部222により取得された分析用データを可視化するだけでなく、当該集計結果又は当該分析用データを分析し、必要な情報を端末装置300に送信することができる。例えば、処理装置202は、計画外の稼働状況の発生要因を表す計画外要因指標に紐付けられた主体の各関係者の端末装置300に対して、当該発生要因に対応した改善指示等のメッセージを送信することができる。端末装置300は、メッセージをディスプレイ301に表示し、各関係者に通知することができる。
また、可視化部223は、処理装置202に備えられるのではなく、端末装置300に備えられていてもよい。すなわち、処理装置202は、集計部221の集計結果、又は、取得部222により取得された分析用データを端末装置300に送信し、端末装置300は、当該集計結果又は当該分析用データを可視化してもよい。
図10は、所定期間のスコアをダンプトラック101毎に集計した結果を示す図である。図11は、図10と同じ期間のスコアを日付け毎に集計した結果を示す図である。
図10を表示した端末装置300のユーザは、生産性が計画外になる稼働状況が、ダンプトラック101の個体差に依存して発生しているか否かを判断することができる。図10の例では、箱ひげ図の中央値及び四分位範囲には、ダンプトラック101毎の差が無い。図10の例では、計画外の稼働状況の発生が、ダンプトラック101の個体差に依存していないと判断することができる。仮に、計画外の稼働状況の発生がダンプトラック101の個体差に依存している場合、端末装置300は、その旨のメッセージをディスプレイ301に表示し、機器保守員504に通知することができる。これにより、鉱山管理システム1は、生産性を改善させることができる。
図11の例では、日によってスコアが変動しており、計画外の稼働状況の発生が、日付けと関係する事項(天候、路面、運行指令等)に依存している。この場合、端末装置300は、図13を用いて後述する発生要因を、ディスプレイ301に表示し、路面保守員503又は運行計画者501に通知することができる。路面保守員503又は運行計画者501は、発生要因を詳細に分析し、必要な対策を講じることができる。これにより、鉱山管理システム1は、生産性を改善させることができる。なお、処理装置202は、ダンプトラック101のオペレータの識別情報と、サイクルIDとを紐付けることで、オペレータ毎にスコアを集計することができる。端末装置300は、スコアが高い特定のオペレータの指導者502にスコアが高い旨のメッセージを、ディスプレイ301に表示し、指導者502に通知することができる。指導者502は、スコアが高い特定のオペレータをスコアが低くなるよう指導することができる。これにより、鉱山管理システム1は、生産性を改善させることができる。
図12は、計画外の稼働状況の発生要因の出現頻度を集計した結果を示す図である。図13は、図12に示す発生要因の出現数を日付け毎に集計した結果を示す図である。
図12は、計画外の稼働状況の発生要因を、その出現頻度が大きい順に並べて表示している。図12を表示した端末装置300のユーザは、計画外の稼働状況の発生要因と、その出現頻度とを簡単に把握することができる。図12において、出現頻度が高い発生要因は、経路上でのダンプトラック101の停車時間である。端末装置300は、停車時間が計画外になった旨のメッセージを、ディスプレイ301に表示し、採掘責任者505に通知することができる。採掘責任者505は、運行計画者501に改善指示を出すことができる。或いは、処理装置202が、発生要因を表す計画外要因指標に紐付けられた主体の各関係者の端末装置300に対して、当該発生要因に対応した改善指示等のメッセージを送信する場合、各関係者の端末装置300は、当該メッセージをディスプレイ301に表示し、各関係者に通知することができる。通知の形式はメッセージに限られず、例えば、エリアチャートで表示することとしてもよい。この場合、鉱山機械101~103の一日の作業サイクルを時系列で示し、予め設定された作業エリア別に異なる色を用いて分類する。そして、計画外の稼働状況が発生した場合、その発生要因を表す計画外要因指標と関連付けて、エリアチャートを表示することもできる。これにより、鉱山管理システム1は、生産性を改善させることができる。
図13の例では、経路上でのダンプトラック101の停車時間が計画外になることが、ほぼ毎日発生している。図13と図11とを比較すると、図11に示す箱ひげ図の中央値及び四分位範囲が大きかった日付け(例えばFeb.21)において出現数が多い発生要因は、積み込み待ち時間及び積載量であることが分かる。
上記のように、記録装置201には、計画外の稼働状況が発生した場所の情報(経路ID)や時間の情報(サイクル開始時刻及び終了時刻)が記録されている。したがって、ユーザは、計画外の稼働状況が発生した時間におけるダンプトラック101の稼働データを参照することによって、計画外の稼働状況の発生要因を更に詳細に分析することができる。
図14~図19は、計画外の稼働状況が発生したダンプトラック101の稼働データのチャートを示す。図14~図19において、符号1401~1403は、それぞれ、車両ID、サイクルID及び経路IDを示している。符号1404は、計画外の稼働状況の発生要因を表す計画外要因指標を示している。符号1405は、ダンプトラック101の車速の推移を示すチャートを示している。符号1406は、ダンプトラック101のエンジン回転数の推移を示すチャートを示している。符号1407は、ダンプトラック101の積載量の推移を示すチャートを示している。
図14は、停車時間が計画外になった稼働データのチャートである。
図14の例では、一点鎖線で示すように、ダンプトラック101が排土後に少し経路上を走行してから(時刻19:07頃)、約10分間停車していることが分かる。図14を表示した端末装置300のユーザは、この時間の運行指令や、経路上のブルドーザ103の位置や、ダンプトラック101のアラートの有無等を、記録装置201の蓄積データから分析すればよい。
図15は、積み込み待ち時間が計画外になった稼働データのチャートである。
図15の例では、一点鎖線で示すように、時刻15:56から時刻16:05にかけて、積み込み待ちが発生していることが分かる。図15を表示した端末装置300のユーザは、この場所及び時間において積み込み中であったダンプトラック101の稼働データや油圧ショベル102の稼働データを分析すればよい。この場合、積み込み中であったダンプトラック101のスポッティング時間が長い場合には、当該ダンプトラック101のオペレータを指導すればよい。積み込み中であった油圧ショベル102の積み込み時間が長い場合には、油圧ショベル102のオペレータを指導すればよい。積み込み待ちが同じ場所で頻繁に発生している場合には、排土エリアで稼働中のダンプトラック101に運転間隔の調整に関する通知をしたり、運行計画を見直して最適配車をするためにエリアのルートを通知したりしてもよい。これにより、鉱山管理システム1は、生産性を改善させることができる。
図16は、排土待ち時間が計画外になった稼働データのチャートである。
図16の例では、一点鎖線で示すように、時刻00:21から時刻00:24にかけて、排土待ちが発生していることが分かる。図16を表示した端末装置300のユーザは、排土エリアにおける別のダンプトラック101の有無や、排土エリアのレイアウトを分析すればよい。必要に応じて排土エリアのレイアウトを変更したり、運行計画を見直したりすればよい。これにより、鉱山管理システム1は、生産性を改善させることができる。
図17は、積み込み時間が計画外になった稼働データのチャートである。
図17の例では、一点鎖線で示すように、時刻9:40頃からの積み込みに時間が掛かっていることが分かる。図17を表示した端末装置300のユーザは、この時間における油圧ショベル102の稼働データを分析すればよい。油圧ショベル102のアラートがある場合には、油圧ショベル102を修理すればよい。油圧ショベル102の移動や積み込みに時間が掛かっている場合には、油圧ショベル102のオペレータを指導すればよい。なお「停車時間」、「積み込み待ち時間」、「排土待ち時間」、「積み込み時間」の分析結果の表示はチャート形式に限られない。例えば、稼働環境を示す地図上に位置履歴で表示してもよい。この場合、任意の時刻における走行履歴がわかることから、計画外要因指標が発生した場合にどの地点(位置)における稼働データかを直感的に把握することができるので、更に分析ができる。これにより、鉱山管理システム1は、生産性を改善させることができる。
図18は、スポッティング時間が計画外になった稼働データのチャートである。
図18の例では、一点鎖線で示すように、時刻21:51から時刻21:53にかけて、積み込み前に低速での走行を繰り返していることが分かる。図18を表示した端末装置300のユーザは、この状況をダンプトラック101のオペレータからヒアリングして原因を特定すればよい。これにより、鉱山管理システム1は、生産性を改善させることができる。
図19は、積載量が計画外になった稼働データのチャートである。
図19の例では、一点鎖線で示すように、時刻20:00頃からの積み込みによる積載量が少ないことが分かる。図19を表示した端末装置300のユーザは、この積み込みを行った油圧ショベル102の稼働データを分析したり、油圧ショベル102のオペレータからヒアリングしたりして、原因を特定すればよい。これにより、鉱山管理システム1は、生産性を改善させることができる。
図20は、排土待ち時間が計画外になった稼働データの他の表示例を示す図である。
排土待ち時間が計画外になった排土エリアの場所及び時間は、排土待ち時間が計画外になったダンプトラック101の稼働データから特定することができる。この排土エリアにおける排土位置Aとダンプトラック101の停車位置Bとは、ダンプトラック101のGPSセンサの位置データから算出することができる。端末装置300は、排土待ち時間が計画外になった排土エリア付近の地図又は衛星写真上に、排土位置Aと停車位置Bとを表示することができる。図20を表示した端末装置300のユーザは、排土位置Aと停車位置Bとの位置関係や、排土エリア内の状況を分析すればよい。必要に応じて排土エリアのレイアウトを変更したり、運行計画を見直したりすればよい。これにより、鉱山管理システム1は、生産性を改善させることができる。
図21は、計画外の稼働状況の発生頻度をダンプトラック101毎に集計した結果を示す図である。図22は、図21に示す計画外の稼働状況の発生頻度を日付け毎に集計した結果を示す図である。図23は、図21に示す計画外の稼働状況の発生頻度を経路毎に集計した結果を示す図である。
図21の例では、ダンプトラック101によって、計画外の稼働状況の発生頻度に差があることが分かる。図22の例では、日付けによって、計画外の稼働状況の発生頻度に差があることが分かる。図23の例では、計画外の稼働状況が必ず発生している経路(発生頻度が1.0の経路)が存在することが分かる。これらのことから、特定の経路に問題があることが分かる。図21~図23を表示した端末装置300のユーザは、特定の経路において計画外の稼働状況の発生頻度が高い日付けの稼働データを分析し、原因を特定すればよい。これにより、鉱山管理システム1は、生産性を改善させることができる。
以上のように、実施形態1の鉱山管理システム1は、鉱山100生産性を管理するシステムであって、鉱山機械101~103から収集された鉱山機械101~103の稼働データを蓄積し、処理するサーバ装置200と、稼働データに基づいて、生産性が計画外になる鉱山機械101~103の稼働状況が発生したか否かを判定する判定処理を行う判定装置250と、を備える。サーバ装置200は、蓄積された稼働データから、鉱山機械101~103の作業サイクル毎の稼働データであるサイクルデータを抽出する抽出部211と、サイクルデータにおいて、生産性が計画外になる稼働状況の発生要因を表す複数の計画外要因指標を算出する指標算出部212と、算出された複数の計画外要因指標を用いて、生産性が計画内になるサイクルデータを特定する複数の計画外要因指標の関係を判定装置250に学習させる機械学習を行う学習部214と、を有する。判定装置250は、予め学習された複数の計画外要因指標の関係に基づき、蓄積された稼働データから抽出されたサイクルデータが、生産性が計画内になるサイクルデータに対してどの程度逸脱するかを評価することによって、判定処理を行う。
これにより、実施形態1の鉱山管理システム1は、計画外要因指標を単体で扱うのではなく、複数の計画外要因指標の関係を機械学習することによって、複数の要因が関係して生産性が計画外になったことを正確に検知することができる。しかも、実施形態1の鉱山管理システム1は、複数の計画外要因指標の関係を機械学習することによって、複数経路や未知の経路を有する様々な鉱山において、生産性が計画外になったことを正確に検知することができる。よって、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性を計画内に改善させる対策を適切に講じることができるので、鉱山100の生産性を改善させることができる。
更に、実施形態1の鉱山管理システム1において、鉱山機械101~103は、ダンプトラック101である。複数の計画外要因指標は、ダンプトラック101の積載量、鉱山100の排土エリアでのダンプトラック101の待ち時間である排土待ち時間、鉱山100の積み込みエリアでのダンプトラック101の待ち時間である積み込み待ち時間、積み込みエリアと排土エリアとを繋ぐ経路上でのダンプトラック101の停車時間、ダンプトラック101への積荷の積み込み時間、積み込みエリアにおいてダンプトラック101が積み込み可能な状態に移行するのに要する時間であるスポッティング時間、及び、ダンプトラック101の平均車速のうちの少なくとも2つを含む。
すなわち、実施形態1の鉱山管理システム1では、ダンプトラック101の作業エリアや作業工程中における特徴的な動作又は状態であって、鉱山100の生産性に影響を与え易い動作又は状態を表す指標を、ダンプトラック101の計画外要因指標として算出する。これにより、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性が計画外になるようなダンプトラック101の稼働状況が、どの作業エリアやどの作業工程中の動作又は状態に起因して発生しているのかを正確に検知することができる。よって、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性を計画内に改善させる対策を更に適切に講じることができるので、鉱山100の生産性を更に改善させることができる。
更に、実施形態1の鉱山管理システム1において、学習部214は、生産性が計画内になる複数のサイクルデータをクラスタリングすることによって機械学習を行う。判定装置250は、蓄積された稼働データから抽出されたサイクルデータとクラスタ中心との距離に応じて表されるスコアを算出し、スコアが閾値より大きい場合、生産性が計画外になる稼働状況が発生したと判定する。
これにより、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性が計画内になるサイクルデータを特定する複数の計画外要因指標の関係が学習された分類モデルを容易に構築することができる。しかも、実施形態1の鉱山管理システム1は、スコアという統一的な評価値を用いてサイクルデータを定量的に評価することによって、生産性が計画外になる稼働状況が発生したか否かを判定する。したがって、実施形態1の鉱山管理システム1は、複数経路や未知の経路を有する様々な鉱山において、生産性が計画外になったことを更に正確且つ容易に検知することができる。よって、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性を計画内に改善させる対策を更に適切に講じることができるので、鉱山100の生産性を更に改善させることができる。
更に、実施形態1の鉱山管理システム1において、判定装置250は、生産性が計画外になる稼働状況が発生したと判定した場合、スコアに対する複数の計画外要因指標のそれぞれの寄与度を算出し、寄与度が最も大きい計画外要因指標を、発生要因として特定する。
これにより、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性が計画外になる稼働状況の主な発生要因を、スコアという統一的な評価値を用いて一意的に特定することができる。したがって、実施形態1の鉱山管理システム1は、複数経路や未知の経路を有する様々な鉱山において、生産性が計画外になった主要因を正確に検知することができる。よって、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性を計画内に改善させる対策を更に適切に講じることができるので、鉱山100の生産性を更に改善させることができる。
更に、実施形態1の鉱山管理システム1は、ディスプレイ301を備える端末装置300を更に備える。サーバ装置200は、生産性が計画外になる稼働状況の発生頻度、発生要因の出現頻度、又は、スコアを、期間毎又は鉱山機械101~103毎に集計し、集計結果を端末装置300に送信する。端末装置300は、集計結果をディスプレイ301に表示する。その際、オペレータごとの操作履歴に基づいて、複数の計画外要因指標のうち発生頻度(回数)が多い計画外要因指標を通知して操作の傾向を特定できるようにしたり、オペレータ間の計画外要因指標の平均回数を算出して、累積の平均回数を超過した計画外要因指標を通知したりすることで、改善指示に関連付けることとしてもよい。また、オペレータの操作履歴がある場合、改善すべき点若しくは改善された点、又は、これらの組み合わせを表示することとしてもよい。
これにより、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性が計画外になる稼働状況の発生頻度、発生要因の出現頻度、又は、スコアが、期間毎又は鉱山機械101~103毎でどのように変化しているのかを、直感的に把握しやすい形態でユーザに報知することができる。したがって、実施形態1の鉱山管理システム1によれば、ユーザは、生産性が計画外になる稼働状況の発生要因を分析し易くなる。更に、表示の対象となる鉱山機械101~103は1台に限られず、複数台であってもよく、任意の1台に固有の傾向だけでなく全体的な傾向を特定することとしてもよい。よって、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性を計画内に改善させる対策を更に適切に講じることができるので、鉱山100の生産性を更に改善させることができる。
更に、実施形態1の鉱山管理システム1において、サーバ装置200は、生産性が計画外になる稼働状況が発生した鉱山機械101~103の稼働データを取得し、取得された稼働データ又はその推移を端末装置300に送信する。端末装置300は、稼働データの推移をディスプレイ301に表示する。
これにより、実施形態1の鉱山管理システム1によれば、ユーザは、生産性が計画外になる稼働状況が発生した要因を、鉱山機械101~103の稼働データに基づいて詳細に分析することができる。よって、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性を計画内に改善させる対策を更に適切に講じることができるので、鉱山100の生産性を更に改善させることができる。
更に、実施形態1の鉱山管理システム1において、複数の計画外要因指標には、計画外要因指標の変動に影響を与える主体の情報が予め紐付けられている。端末装置300は、判定装置250により特定された発生要因を表す計画外要因指標に紐付けられた情報が示す主体の関係者に対するメッセージを、ディスプレイ301に表示する。メッセージは模範となる操作のシミュレーションの表示や、あるいは今回の発生状況とのグラフ・チャート・スコアとの対比形式で表示されてもよい。
これにより、実施形態1の鉱山管理システム1は、判定装置250により特定された発生要因を表す計画外要因指標に紐付けられた主体の関係者を、生産性を計画内に改善させる対策の担当者に割り当てることができる。実施形態1の鉱山管理システム1は、対策担当者に対する改善指示等のメッセージを、対策担当者の端末装置300のディスプレイ301に表示して、対策担当者に通知することができる。もちろん、改善指示等のメッセージはオペレータへの直接の通知であってもよい。この場合、メッセージはテキスト形式に限られず、音声、あるいは異なる色のフラグなどの視認可能な識別表示を含む。また、通知の間隔は、累積の発生頻度や緊急・重要の度合いに応じて、例えば半日おきや一日おき等の一定の間隔で任意に設定し得る。例えば上記の時系列に基づいて1時間おき、3時間おきなどに設定した場合、集計の時間を午前中に設定して発生頻度の高い計画外要因指標を特定しておけば、午後に改善に繋げるという効果を期待できる。よって、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性を計画内に改善させる対策を対策担当者が早期に講じることができるので、鉱山100の生産性を早期に改善させることができる。
[実施形態2]
図24を用いて、実施形態2の鉱山管理システム1について説明する。実施形態2の鉱山管理システム1において、実施形態1と同様の構成及び動作については、その説明を省略する。
実施形態2では、鉱山機械101~103の1つである油圧ショベル102の稼働データから、鉱山100の生産性が計画外になったことを検知する鉱山管理システム1を例に挙げて説明する。
図24は、実施形態2の鉱山管理システム1において適用される油圧ショベル102の作業サイクル及び計画外要因指標を説明する図である。
油圧ショベル102は、1回の作業サイクルにおいて、掘削した土砂等を積荷としてダンプトラック101に積み込み、積み込んだ後に掘削準備を行った後に、土砂等を掘削し、掘削した土砂等を掘削面からダンプトラック101のベッセル上に運搬する一連の動作を行う。作業サイクルは、ダンプトラック101への積み込みを起点として定義する必要なく、掘削動作等の他の動作を起点として定義してもよい。
油圧ショベル102の1回の作業サイクルの中で、鉱山100の生産性に影響を与える事項としては、油圧ショベル102の掘削量(payload)、積み込み後の前記油圧ショベルが次の掘削を行うための準備に要する時間である掘削準備時間(reaching time)、油圧ショベル102の掘削時間(digging time)、油圧ショベル102が掘削した積荷を被積込機械であるダンプトラック101まで運搬するのに要する時間である運搬時間(carrying time)、油圧ショベル102が運搬した積荷を被積込機械であるダンプトラック101に積み込むのに要する時間である積み込み時間(loading time)、油圧ショベル102の待ち時間(waiting time)、及び、油圧ショベル102の移動時間(traveling time)が挙げられる。実施形態2では、図24の表に示すように、これらの事項を、油圧ショベル102の計画外要因指標として定義する。
なお、油圧ショベル102の掘削量は、油圧ショベル102のブーム、アーム及びバケットの各角度及び各シリンダ圧から算出され得る。或いは、油圧ショベル102の掘削量は、ダンプトラック101のサスペンション圧から算出される積載量をダンプトラック101から受信することもできる。掘削準備時間、掘削時間、積み込み時間、運搬時間、待ち時間及び移動時間は、油圧ショベル102のブーム、アーム及びバケットの各角度及び各シリンダ圧、上部旋回体の旋回角度、下部走行体の走行速度等から算出され得る。
油圧ショベル102の計画外要因指標には、実施形態1と同様に、各指標を識別するIDと、各指標の変動に影響を与える主体の情報とが予め紐付けられている。判定装置250は、実施形態1と同様に、計画外要因指標を用いて油圧ショベル102の稼働データを評価し、生産性が計画外になるような油圧ショベル102の稼働状況の発生要因を特定する。処理装置202は、実施形態1と同様に、計画外の稼働状況の発生要因を表す計画外要因指標に紐付けられた主体の各関係者の端末装置300に対して、当該発生要因に対応した改善指示等のメッセージを送信することができる。端末装置300は、実施形態1と同様に、メッセージをディスプレイ301に表示し、各関係者に通知することができる。なお、鉱山管理システム1は、油圧ショベル102の計画外指標として、図24の表に示す指標の少なくとも2つを採用すればよい。
実施形態2の鉱山管理システム1は、油圧ショベル102の作業工程中における特徴的な動作又は状態であって、鉱山100の生産性に影響を与え易い動作又は状態を表す指標を、油圧ショベル102の計画外要因指標として算出する。これにより、実施形態2の鉱山管理システム1は、生産性が計画外になるような油圧ショベル102の稼働状況が、どの作業工程中の動作又は状態に起因して発生しているのかを正確に検知することができる。よって、実施形態2の鉱山管理システム1は、生産性が計画外になるような油圧ショベル102の稼働状況が発生しても、生産性を計画内に改善させる対策を適切に講じることができるので、鉱山100の生産性を改善させることができる。
[その他]
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、或る実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、或る実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路にて設計する等によりハードウェアによって実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアによって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(solid state drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
しかし、特許文献1のシステムでは、特定の経路に対して単位時間当たりの燃料消費量の増加や積荷運搬量の低下を検知するが、経路長や坂道が燃料消費量に与える影響等について十分に検討されていない。また、特許文献2のシステムでは、経路上で発生した待ち時間と位置情報とに基づいて生産性を改善させるためにダンプトラックの割り当てを行うが、経路が限定されており、未知の経路への対応や、他の生産性が計画外になる(予定もしくは想定していた生産性よりも低下する状態)要因(例えば、路面の状況や、ショベル又はダンプトラックのオペレータの操作の状況等)については十分に検討されていない。特許文献1及び特許文献2のシステムでは、複数経路や未知の経路を有する鉱山に対して適用することが困難である。更に、特許文献1及び特許文献2のシステムでは、複数の要因が関係して生産性が計画外になったことを正確に検知することが困難であり、生産性を計画内に改善させるための情報を各関係者に適切に提示することが困難である。
鉱山機械101~103は、鉱山100において採掘作業を行う作業機械である。鉱山機械101~103は、例えば、掘削した土砂等をダンプトラック101に積み込む油圧ショベル102と、積荷を輸送するダンプトラック101と、路面を整地するブルドーザ103とを含むことができる。鉱山管理システム1の鉱山機械は、これらに限定されない。
図5に示すID=0及びID=2の各クラスタにおけるクラスタ中心は、生産性が計画内になるサイクルデータの代表的な計画外要因指標の関係を表している。図5の破線で示すように、ID=0のクラスタに属するサイクルデータは、平均車速が遅い傾向がある。排土エリアと積み込みエリアとを繋ぐ経路が比較的短い場合には、ダンプトラック101をトップスピードで走行する機会があまりないので、平均車速が遅い傾向が現れ易い。また、経路が比較的短い場合には、積載量が少なく、積み込み待ち時間やスポッティング時間等が長くなる傾向が現れやすい。図5の実線で示すように、ID=2のクラスタに属するサイクルデータは、平均車速が速い傾向がある。排土エリアと積み込みエリアとを繋ぐ経路が比較的長い場合には、ダンプトラック101をトップスピードで走行する機会が多くなるので、平均車速が速い傾向が現れ易い。また、経路が比較的長い場合には、積載量が多く、積み込み待ち時間やスポッティング時間等が短くなる傾向が現れやすい。すなわち、比較的短い場合は、ID=0のクラスタに属するサイクルデータのような傾向が現れ易く、比較的長い場合は、ID=2のクラスタに属するサイクルデータのような傾向が現れ易い。
ステップS606において、処理装置202は、クラスタ中心やスコアを算出し、学習用データとして相応しくないサイクルデータを学習していないかを判定する。処理装置202は、クラスタ毎に算出したスコアが予め設定された値よりも小さいか否かを判定することによって、ステップS606の判定を行う。或いは、処理装置202は、図5に示すようなクラスタ中心の関係を示すグラフを端末装置300に表示し、ステップS606の判定をユーザに行わせてもよい。処理装置202は、ステップS606の判定として学習用データとして相応しくないサイクルデータを学習している場合(NO)は、ステップS604に移行する。また、処理装置202は、ステップS606の判定として学習用データとして相応しくないサイクルデータを学習してない場合、言い換えれば学習用データとして相応しいサイクルデータを学習している場合(YES)は、図6に示す本処理を終了する。
更に、実施形態1の鉱山管理システム1において、複数の計画外要因指標には、計画外要因指標の変動に影響を与える主体の情報が予め紐付けられている。端末装置300は、判定装置250により特定された発生要因を表す計画外要因指標に紐付けられた情報が示す主体の関係者に対するメッセージを、ディスプレイ301に表示する。メッセージは模範となる操作のシミュレーションの表示や、或いは今回の発生状況とのグラフ・チャート・スコアとの対比形式で表示されてもよい。
これにより、実施形態1の鉱山管理システム1は、判定装置250により特定された発生要因を表す計画外要因指標に紐付けられた主体の関係者を、生産性を計画内に改善させる対策の担当者に割り当てることができる。実施形態1の鉱山管理システム1は、対策担当者に対する改善指示等のメッセージを、対策担当者の端末装置300のディスプレイ301に表示して、対策担当者に通知することができる。もちろん、改善指示等のメッセージはオペレータへの直接の通知であってもよい。この場合、メッセージはテキスト形式に限られず、音声、或いは異なる色のフラグなどの視認可能な識別表示を含む。また、通知の間隔は、累積の発生頻度や緊急・重要の度合いに応じて、例えば半日おきや一日おき等の一定の間隔で任意に設定し得る。例えば上記の時系列に基づいて1時間おき、3時間おきなどに設定した場合、集計の時間を午前中に設定して発生頻度の高い計画外要因指標を特定しておけば、午後に改善に繋げるという効果を期待できる。よって、実施形態1の鉱山管理システム1は、生産性を計画内に改善させる対策を対策担当者が早期に講じることができるので、鉱山100の生産性を早期に改善させることができる。