JP2023063920A - 維管束液流速センサ、維管束液流速測定装置および維管束液流速測定方法 - Google Patents

維管束液流速センサ、維管束液流速測定装置および維管束液流速測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】機械的または熱的に植物に与える損傷が小さい維管束液流速センサ、維管束液流速測定装置および維管束液流速測定方法を提供する。【解決手段】維管束液流速センサ1は、植物に突き刺すプローブとして、第1温度センサ21とヒータ22とが設けられたヒータ付温度プローブ20のみを有する。維管束液流速測定装置は、維管束液流速センサ1と、ヒータ22に間欠的に電力を供給する電源と、第1温度センサ21で測定されたヒータ22の加熱による維管束液の上昇温度に基づき維管束液流速を求める演算部とを有する。植物に突き刺すプローブがヒータ付温度プローブ20のみであるので、植物に与える機械的損傷を小さくできる。ヒータ22による加熱が間欠的であるので、植物に与える熱的損傷を小さくできる。【選択図】図1

Description

本発明は、維管束液流速センサ、維管束液流速測定装置および維管束液流速測定方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、植物の新梢末端、果柄など、植物の細部を流れる維管束液の流速を測定するセンサ、装置および方法に関する。
作物、果樹の生産においては、生産性の観点から植物の生育状態に合わせて適切な時期に灌水と養分補給を行なうことが望まれる。しかし、多くの農業現場では、無降雨日数などに基づき、経験と勘によって灌水と養分補給を行なっているのが現状である。このような経験に依存した方法は、熟練が必要であり手間と時間がかかる。また、基準となる指標が個人的な経験であるため、誰もが簡便に実施することは難しい。
近年、スマートアグリなど、情報技術を農業に導入する動きが活発になっている。情報技術により、人に依存することなく、植物の生理的情報に基づいて、最適な生産が行なわれることが期待されている。
灌水管理に必要となる植物の生理的情報として維管束液流速がある。特に、作物、果樹の生産性および品質を向上させる上では、植物の新梢末端、果柄など、植物の細部における維管束液流速を測定することが重要である。植物の細部における維管束液流速を測定するセンサは既に提案されている(特許文献1)。
特開2015-145810号公報
特許文献1に開示されたセンサはグラニエ法により維管束液流速を測定するものである。グラニエ法では植物に2本のプローブを突き刺し、ヒータで常時維管束液を加熱する必要がある。そのため、機械的、熱的に植物に与える損傷が大きい。
維管束液流速を測定する方法としてグラニエ法のほかヒートパルス法も知られている。ヒートパルス法は熱を間欠的に与えるため、植物に与える熱的損傷が小さい。しかし、ヒートパルス法により維管束液流速を測定するには3本のプローブを植物に突き刺す必要があり、植物に与える機械的損傷がグラニエ法よりも大きくなる。
本発明は上記事情に鑑み、機械的または熱的に植物に与える損傷が小さい維管束液流速センサ、維管束液流速測定装置および維管束液流速測定方法を提供することを目的とする。
第1発明の維管束液流速センサは、植物に突き刺すプローブとして、第1温度センサとヒータとが設けられたヒータ付温度プローブのみを有することを特徴とする。
第2発明の維管束液流速センサは、第1発明において、外気温を測定する第2温度センサを有することを特徴とする。
第3発明の維管束液流速測定装置は、第1温度センサとヒータとが設けられたヒータ付温度プローブと、前記ヒータ付温度プローブを支持する支持部とを有する維管束液流速センサと、前記ヒータに間欠的に電力を供給する電源と、前記第1温度センサで測定された前記ヒータの加熱による維管束液の上昇温度に基づき維管束液流速を求める演算部と、を備えることを特徴とする。
第4発明の維管束液流速測定装置は、第3発明において、外気温を測定する第2温度センサを備えることを特徴とする。
第5発明の維管束液流速測定装置は、第3または第4発明において、前記維管束液流速センサは、所定の間隔を空けて配置された一対の電極からなる読出電極対と、前記一対の電極に架け渡された感水膜とが設けられた水分含有量プローブを有し、前記水分含有量プローブは前記ヒータ付温度プローブと平行に並んだ状態で前記支持部に支持されていることを特徴とする。
第6発明の維管束液流速測定装置は、第5発明において、前記維管束液流速センサは、所定の間隔を空けて配置された一対の電極からなる電気伝導率電極対が設けられた電気伝導率プローブを有し、前記電気伝導率プローブは前記水分含有量プローブと平行に並んだ状態で前記支持部に支持されていることを特徴とする。
第7発明の維管束液流速測定装置は、第3~第6発明のいずれかにおいて、前記維管束液流速センサは、第3温度センサが設けられた温度プローブを有し、前記温度プローブは前記ヒータ付温度プローブと平行に並んだ状態で前記支持部に支持されていることを特徴とする。
第8発明の維管束液流速測定方法は、第1温度センサとヒータとが設けられたヒータ付温度プローブを植物に突き刺し、前記ヒータに間欠的に電力を供給し、前記ヒータの加熱による維管束液の上昇温度を前記第1温度センサで測定し、前記上昇温度に基づき維管束液流速を求めることを特徴とする。
第9発明の維管束液流速測定方法は、第8発明において、所定の間隔を空けて配置された一対の電極からなる読出電極対と、前記一対の電極に架け渡された感水膜とが設けられた水分含有量プローブを前記植物に突き刺し、前記読出電極対を構成する前記一対の電極間のインピーダンスまたは静電容量を測定し、インピーダンス測定値または静電容量測定値から前記植物の水分含有量を求め、前記上昇温度および前記水分含有量に基づき維管束液流速を求めることを特徴とする。
第10発明の維管束液流速測定方法は、第9発明において、所定の間隔を空けて配置された一対の電極からなる電気伝導率電極対が設けられた電気伝導率プローブを前記植物に突き刺し、前記電気伝導率電極対を構成する前記一対の電極間の電気抵抗から電気伝導率を求め、電気伝導率測定値を用いて水分含有量測定値を補償することを特徴とする。
第11発明の維管束液流速測定方法は、第8~第10発明のいずれかにおいて、前記植物の温度または外気温から自然温度勾配を求め、前記自然温度勾配を用いて前記上昇温度を補正することを特徴とする。
第1発明によれば、植物に突き刺すプローブがヒータ付温度プローブのみであるので、植物に与える機械的損傷を小さくできる。
第2発明によれば、外気温から求めた自然温度勾配を考慮して維管束液流速を求めることで、外部環境に対するロバスト性を高めることができる。
第3発明によれば、ヒータによる加熱が間欠的であるので、植物に与える熱的損傷を小さくできる。また、ヒータ付温度プローブを植物に突き刺し、第1温度センサの測定値を取得することで、維管束液流速を測定できる。
第4発明によれば、外気温から求めた自然温度勾配を考慮して維管束液流速を求めることで、外部環境に対するロバスト性を高めることができる。
第5発明によれば、水分含有量プローブにより測定した水分含有量を考慮することで、維管束液流速を精度良く測定できる。
第6発明によれば、電気伝導率プローブにより測定した植物内の水分の電気伝導率に基づき水分含有量測定値を補償することで、植物の水分含有量を精度良く測定できる。
第7発明によれば、第3温度センサで測定した自然温度勾配を考慮して維管束液流速を求めることで、外部環境に対するロバスト性を高めることができる。
第8発明によれば、維管束液流速を求めることができる。
第9発明によれば、植物水分含有量を考慮することで、維管束液流速を精度良く求めることができる。
第10発明によれば、電気伝導率プローブで測定した植物内の水分の電気伝導率に基づき水分含有量測定値を補償することで、植物の水分含有量を精度良く測定できる。
第11発明によれば、植物の温度または外気温から求めた自然温度勾配を考慮して維管束液流速を求めることで、外部環境に対するロバスト性を高めることができる。
第1実施形態に係る維管束液流速センサの平面図である。 第1実施形態に係る維管束液流速センサの側面図である。 第1実施形態に係る維管束液流速センサの使用状態説明図である。 維管束液の温度変化を示すグラフである。 第1実施形態に係る維管束液流速測定装置の説明図である。 第2実施形態に係る維管束液流速センサの平面図である。 第3実施形態に係る維管束液流速センサの平面図である。 水分含有量プローブの縦断面図である。 図(A)は解析モデルを示す図である。図(B)は温度分布図である。 熱解析により求められたヒートパルス速度と流速との関係を示すグラフである。 疑似植物試験により求められたヒートパルス速度と流速との関係を示すグラフである。 生育環境下のトマトの道管液流速の時間変化を示すグラフである。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る維管束液流速センサ1は、植物の新梢末端、果柄など、植物の細部に取り付けることができる。維管束液流速センサ1は植物の細部における維管束液(道管液または師管液)の流速および流量を測定する機能を有する。
(維管束液流速センサ)
まず、維管束液流速センサ1の構成を説明する。
図1に示すように、維管束液流速センサ1は支持部10を有する。支持部10にはヒータ付温度プローブ20が設けられている。ヒータ付温度プローブ20を植物に突き刺すことで、植物に維管束液流速センサ1が取り付けられる。
支持部10およびヒータ付温度プローブ20は半導体基板を加工することで形成されている。半導体基板として、シリコン基板、SOI(Silicon on Insulator)基板などが挙げられる。半導体基板の加工には、フォトリソグラフィ、エッチングのほか、スパッタ法、蒸着法などの薄膜形成を用いたMEMS技術が用いられる。なお、維管束液流速センサ1はMEMS技術以外の方法で形成してもよいし、素材も半導体基板に限定されない。
・支持部
支持部10はヒータ付温度プローブ20を支持する部材である。支持部10は、平面視矩形の板材であり、その一辺にヒータ付温度プローブ20が支持されている。
・ヒータ付温度プローブ
ヒータ付温度プローブ20は、棒状の部材であり、支持部10の縁に片持ち梁状に設けられている。ヒータ付温度プローブ20の先端部の形状は三角形など尖った形が好ましい。ヒータ付温度プローブ20の先端部が尖った形であれば、植物の細部に突き刺すときの刺入抵抗を小さくできる。
ヒータ付温度プローブ20は、植物の新梢末端、果柄など、茎径または軸径が数mm程度の植物の細部に突き刺して配置できる寸法に形成されている。ヒータ付温度プローブ20の長さ(軸方向に基端から先端までの長さ)は、植物の細部に突き刺して設置した状態において、その先端部が植物の細部の道管または師管に配置され得る寸法に形成されている。ヒータ付温度プローブ20の長さは、例えば、0.5~5mmである。
ヒータ付温度プローブ20の幅は、特に限定されないが、例えば、50~500μmである。ヒータ付温度プローブ20の幅が狭いほど、植物に与える機械的損傷を小さくできる。
図2に示すように、維管束液流速センサ1は全体的に薄い板状である。ヒータ付温度プローブ20の厚さは植物の道管および師管の幅よりも薄く設定されている。ヒータ付温度プローブ20の厚さは測定対象となる植物の種類および茎の太さによるが、例えば50~300μmである。厚さが50μm以上であれば強度が十分であり、ヒータ付温度プローブ20を植物の茎などに挿抜する際に折れる恐れがない。また、植物の種類にもよるが道管および師管の太さは100~400μm程度であるため、厚さが300μm以下であればヒータ付温度プローブ20を道管または師管に刺してもそれらを塞ぐことを抑制できる。ヒータ付温度プローブ20が薄いほど植物に与える機械的損傷を小さくできる。そのため、ヒータ付温度プローブ20の厚さは100μm以下とすることがより好ましい。なお、支持部10の厚さは特に限定されず、ヒータ付温度プローブ20と同じ厚さでもよいし、ヒータ付温度プローブ20より厚くてもよい。
図1に示すように、ヒータ付温度プローブ20の先端部には第1温度センサ21が設けられている。第1温度センサ21は、温度を感知する機能を有しており、ヒータ付温度プローブ20の先端部に配設できる大きさのものであれば、特に限定されない。第1温度センサ21として、測温抵抗体、pn接合ダイオード、熱電対などを採用できる。維管束液流速センサ1は屋外で使用されることが想定されるため、第1温度センサ21として光依存性のない測温抵抗体を用いることが好ましい。また、支持部10の上面には第1温度センサ21に配線を介して接続された2つの電極パッド21e、21eが配設されている。
測温抵抗体は、例えば、スパッタ法、蒸着法などにより半導体基板上にAuなどの測温抵抗体として適した金属の薄膜を堆積させることにより形成される。測温抵抗体は温度の上昇とともに電気抵抗が増加する。2つの電極パッド21e、21eの間には定電流源が接続される。定電流源で測温抵抗体に定電流を供給し、電圧計で電圧を測定する。電圧計で測定した電圧から、温度を算出できる。
また、ヒータ付温度プローブ20にはヒータ22が設けられている。ヒータ22はヒータ付温度プローブ20に熱を供給できればよく、その位置は先端部に限定されない。ヒータ22は、ヒータ付温度プローブ20に配設できる大きさのものであれば、特に限定されない。例えば、Au(金)、Pt(白金)、Ti(チタン)、Cr(クロム)などの薄膜をスパッタ法、蒸着法などにより形成し、細い糸状に加工したマイクロヒータ(本明細書では「フィラメントヒータ」という)をヒータ22として採用できる。また、酸化拡散炉を用いて形成したpn接合ダイオードをヒータ22として採用してもよい。
支持部10の上面にはヒータ22に配線を介して接続された2つの電極パッド22e、22eが配設されている。2つの電極パッド22e、22eの間には、直流定電源が接続される。ヒータ22に電流を流すことで、熱を発することができる。
(維管束液流速測定方法)
つぎに、維管束液流速センサ1による維管束液流速の測定方法を説明する。
・取り付け
まず、測定対象となる植物の新梢末端、果柄などに、維管束液流速センサ1を取り付ける。具体的には、図3に示すように、維管束液流速センサ1のヒータ付温度プローブ20を植物に突き刺して取り付ける。
ヒータ付温度プローブ20を植物に突き刺していくと、ヒータ付温度プローブ20の先端部は植物の皮層COを通り、師管PHに達する。さらに、深く突き刺していくと、ヒータ付温度プローブ20の先端部は、道管XYに達し、つぎに髄PIに達する。師管液の流速を測定する場合には、ヒータ付温度プローブ20の先端部を師管PHに配置する。道管液の流速を測定する場合には、ヒータ付温度プローブ20の先端部を道管XYに配置する。以下、道管液の流速を測定する場合を例に説明する。
ヒータ付温度プローブ20を植物に突き刺した状態で、ヒータ22に間欠的に電力を供給する。すなわち、ヒータ22にパルス状の電流を流す。ヒータ22に電力を供給する時間幅(パルス幅)は予め定められている。
ヒータ22を間欠駆動させると、ヒータ22が駆動している間だけ道管液が加熱される。この際、道管液の温度は図4に示すように時間変化する。すなわち、ヒータ22により加熱されている間は道管液の温度が上昇し、加熱が終了すると道管液の温度が下がる。
ヒータ22による加熱開始時t1における道管液の温度をT1とする。また、ヒータ22による加熱終了時t2における道管液の温度をT2とする。ヒータ22の加熱による道管液の上昇温度ΔTは、T2からT1を減じることで求められる。ヒータ22による加熱終了時から所定時間経過した時点t3における道管液の温度をT3とする。ヒータ22の加熱による道管液の上昇温度ΔTは、T2からT3を減じて求めてもよい。なお、t2からt3までの時間は道管液の温度が充分に下がる時間に設定される。いずれにせよ、道管液の温度は第1温度センサ21で測定できるから、第1温度センサ21の測定値から上昇温度ΔTを求めることができる。
熱伝達滞留方程式を解くと、ヒートパルス速度Vhは以下の式(1)で表される。式(1)中、Dは道管の熱拡散率[m2/s]、ΔTuは道管液の上昇温度[℃]、ΔT0は流速が0のときの道管液の上昇温度[℃]、tは加熱時間[s]である。上昇温度ΔTuは測定値であり、第1温度センサ21により得られる。熱拡散率Dおよび流速が0のときの道管液の上昇温度ΔT0は、測定対象の植物に依存する定数であり、予め実験などにより定められる。加熱時間tは植物によって道管液流速の測定に最適な時間に設定される。加熱時間tは、例えば、20~40秒である。
Figure 2023063920000002
ヒータ付温度プローブ20を道管に挿入すると道管液の流れが乱れるため、この影響を補正してもよい。例えば、以下の式(2)に基づき、補正後のヒートパルス速度Vcを求めれば良い。式(2)中、a、b、cは補正係数であり、予め実験などにより定められる。
Figure 2023063920000003
道管液流速uはヒートパルス速度に比例する。すなわち、道管液流速uは式(3)で得られる。式(3)中、αは係数であり、予め実験などにより定められる。なお、Vは補正前のヒートパルス速度Vhまたは補正後のヒートパルス速度Vcである。
Figure 2023063920000004
道管液の流速から流量を求めることができる。式(4)に示すように、道管液の流量Qは流速u[m/s]に道管の断面積A[m2]を掛けることで得られる。
Figure 2023063920000005
以上の原理に従い、第1温度センサ21で測定された道管液の上昇温度ΔTuに基づき道管液の流速uおよび流量Qを求めることができる。なお、ヒータ付温度プローブ20の先端部を植物の師管PHに配置すれば、師管液の流速および流量を求めることができる。また、維管束液流速を長期間モニタリングする場合には、所定間隔でヒータ22を駆動させ、その都度維管束液流速を求める。ヒータ22を駆動させる間隔は特に限定されない。間隔を短くすれば流速の時間分解能を高くできる。
本実施形態の維管束液流速センサ1は植物に突き刺すプローブがヒータ付温度プローブ20のみである。複数本のプローブを植物に突き刺す必要がないため、植物に与える機械的損傷を小さくできる。また、ヒータ22による加熱が間欠的であるため、常時加熱に比べて植物に与える熱的損傷を小さくできる。さらに、ヒータ22が間欠駆動であるため維管束液流速センサ1の消費電力を低くできる。例えば、植物の栽培期間である数ヶ月から半年の間、維管束液流速センサ1を電池で連続駆動できる。
(維管束液流速測定装置)
つぎに、維管束液流速測定装置AAを説明する。
図5に示すように、維管束液流速測定装置AAは維管束液流速センサ1を有する。例えば、農業現場の複数の植物に対して、複数の維管束液流速センサ1が取り付けられる。維管束液流速センサ1は、一の植物の複数箇所に取り付けてもよいし、複数の植物の全てに、または一部の標本に取り付けてもよい。また、維管束液流速センサ1を1つのみとしてもよい。
維管束液流速センサ1には、データロガーDRが接続されており、電力の供給および測定値の収集が行なわれる。データロガーDRがヒータ22に間欠的に電力を供給する。したがって、データロガーDRは特許請求の範囲に記載の「電源」に相当する。また、データロガーDRには無線通信機が内蔵されている。
農業現場に隣接した建屋内などにサーバ装置SVが設けられる。サーバ装置SVには無線通信機が接続されており、データロガーDRと無線通信できるよう構成されている。
データロガーDRは、維管束液流速センサ1の測定データを、無線通信機を介してサーバ装置SVに送信する。サーバ装置SVは受信した測定データを分析し、維管束液流速を求める。その詳細は前述のとおりである。したがって、サーバ装置SVは特許請求の範囲に記載の「演算部」に相当する。
なお、データロガーDRとサーバ装置SVとの接続は無線に限られず有線でもよい。データロガーDRに蓄積されたデータを記憶媒体に保存し、その記憶媒体をサーバ装置SVに読み込ませてもよい。電源はヒータ22に電力を供給できればよくデータロガーDRに限定されない。演算部も維管束液流速を求めることができればよくサーバ装置SVに限定されない。
〔第2実施形態〕
つぎに、本発明の第2実施形態に係る維管束液流速センサ2を説明する。
図6に示すように、維管束液流速センサ2は第1実施形態と同様にヒータ付温度プローブ20と支持部10とを有する。第1実施形態と同様の部材には同一符号を付して説明を省略する。
支持部10には第2温度センサ11が設けられている。第2温度センサ11として第1温度センサ21と同様のものを採用できる。支持部10の上面には第2温度センサ11に配線を介して接続された2つの電極パッド11e、11eが配設されている。第1温度センサ21と同様の方法で、第2温度センサ11により温度を測定できる。
第2温度センサ11は植物の周囲の外気温を測定するためのものである。ヒータ22の熱が第2温度センサ11に伝わりにくくするため、ヒータ付温度プローブ20と第2温度センサ11との間は断熱されている。
例えば、維管束液流速センサ2を支持基板(Si)、酸化膜層(SiO2)および活性層(Si)からなるSOI基板を加工して形成する。第1温度センサ21、ヒータ22および第2温度センサ11を活性層の表面に形成する。そして、ヒータ付温度プローブ20と第2温度センサ11との間の活性層を除去し、それらの間に酸化膜層が介在した状態とする。これにより、ヒータ付温度プローブ20と第2温度センサ11との間を断熱できる。
(自然温度勾配補正)
植物を栽培するハウス内で暖房機が作動したり、植物の周囲の日射、風などが変化したりすると自然温度勾配が生じる。自然温度勾配が第1温度センサ21の測定値に影響を及ぼし維管束液流速の測定精度が悪くなる。そこで、本実施形態では第2温度センサ11で測定した外気温を用いて自然温度勾配の影響を補正する。
前述のごとく、維管束液流速を測定する際にはヒータ22を間欠的に駆動する。そして、第1温度センサ21によりヒータ22の加熱による維管束液の上昇温度ΔT1を測定する。これと同時に、第2温度センサ11により自然温度勾配ΔT2を測定する。上昇温度ΔT1をt1-t2間の第1温度センサ21の測定値の差分とするならば、自然温度勾配ΔT2はt1-t2間の第2温度センサ11の測定値の差分として求められる。上昇温度ΔT1をt2-t3間の第1温度センサ21の測定値の差分とするならば、自然温度勾配ΔT2はt2-t3間の第2温度センサ11の測定値の差分として求められる。
そして、式(5)に示すように、自然温度勾配ΔT2を用いて上昇温度ΔT1を補正する。
Figure 2023063920000006
補正後の上昇温度ΔTuを用いて、式(1)に従いヒートパルス速度Vhを求めれば、自然温度勾配の影響を除去して維管束液流速を求めることができる。このように、外気温から求めた自然温度勾配を考慮して維管束液流速を求めることで、外部環境に対するロバスト性を高めることができる。
なお、第2温度センサ11を支持部10に設けなくてもよい。すなわち、ヒータ付温度プローブ20とは物理的に独立した温度センサを第2温度センサ11として用いてもよい。したがって、第2温度センサは維管束液流速センサとは別の部材としてもよい。
〔第3実施形態〕
つぎに、本発明の第3実施形態に係る維管束液流速センサ3を説明する。
図7に示すように、維管束液流速センサ3は第1実施形態の維管束液流速センサ1に水分含有量プローブ30、電気伝導率プローブ40および温度プローブ50を追加したものである。その余の構成は第1実施形態と同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
水分含有量プローブ30は植物の水分含有量測定に用いられる。測定された水分含有量は維管束液流速測定値の補償に用いられる。水分含有量による補償の必要がない場合には、維管束液流速センサ3に水分含有量プローブ30を設けなくてもよい。電気伝導率プローブ40は植物内の水分の電気伝導率測定に用いられる。測定された電気伝導率は水分含有量測定値の補償に用いられる。電気伝導率による補償の必要がない場合には、維管束液流速センサ3に電気伝導率プローブ40を設けなくてもよい。温度プローブ50は植物の温度測定に用いられる。測定された温度は維管束液流速測定値、水分含有量測定値および電気伝導率測定値のうちの一部または全部の補償に用いられる。温度による補償の必要がない場合には、維管束液流速センサ3に温度プローブ50を設けなくてもよい。
プローブ20、30、40、50は、それらを同一平面内で平行に並べた状態で、その基端が支持部10の一辺に支持されている。プローブ20、30、40、50の並び順は特に限定されない。ただし、温度プローブ50はヒータ付温度プローブ20と離れた位置に配置することが好ましい。そうすれは、温度プローブ50にヒータ22の熱が伝わりにくくなり、自然温度勾配を正確に測定できる。例えば、ヒータ付温度プローブ20、水分含有量プローブ30、電気伝導率プローブ40、温度プローブ50の順に配置することが好ましい。
・水分含有量プローブ
水分含有量プローブ30の先端部には読出電極対31が設けられている。読出電極対31は所定の間隔を空けて配置された一対の電極32、32からなる。支持部10の上面には2つの電極32、32に配線を介して接続された2つの電極パッド32e、32eが配設されている。また、水分含有量プローブ30には感水膜33が設けられている。
水分含有量プローブ30を植物に突き刺すと、植物内の水分が感水膜33に吸収される。感水膜33に吸収された水分の量を電極32、32間のインピーダンスまたは静電容量として読み出す。これにより、植物の水分含有量を測定できる。
図8に示すように、水分含有量プローブ30を構成する半導体基板SSの表面に一対の電極32、32が形成されている。電極32は水分含有量プローブ30の先端部に配設できる大きさのものであれば、特に限定されない。電極32は、例えば、スパッタ法、蒸着法などにより半導体基板SS上にAu、Alなどの金属薄膜を堆積させることにより形成される。
感水膜33は一対の電極32、32の上に、それらに架け渡されるよう形成されている。感水膜33は水分を吸収する機能を有し、水よりも比誘電率が低い素材で形成されている。本明細書において「感水膜」とは、水分を吸収する機能を有し、水よりも比誘電率が低い素材で形成された膜を意味する。温度20℃における水の比誘電率は約80であるから、感水膜33の比誘電率は80よりも小さければよい。ただし、感水膜33の比誘電率と水の比誘電率との差が大きいほど水分含有量の測定精度が高くなることから、感水膜33の比誘電率は1~3が好ましい。
感水膜33の素材は、水に不溶であり、熱的・化学的に安定であることが好ましい。感水膜33の素材として、塩化リチウム、金属酸化物、セラミックス、高分子材料などを用いることができる。ただし、塩化リチウムは植物に対する毒性があることから、植物への適用性に優れているとはいえない。金属酸化物、セラミックスとして酸化アルミニウム(Al23)、二酸化ケイ素(SiO2)が挙げられる。金属酸化物およびセラミックスは水に不溶である。ただし、金属酸化物およびセラミックスは材質が硬く、製作工程時に高温の熱処理が必要である。これに対して、高分子材料は植物への適用性に優れ、また材質が柔らかい。高分子材料としてポリイミド、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。これらの中でも、半導体Si基板上への搭載のしやすさの観点から、ポリイミドが好ましい。また、ポリイミドは水に溶けにくいため、植物内の水分の長期測定に適している。そのため、感水膜33をポリイミドで形成すれば、感水膜33が植物内の水分に溶解しにくく、長期間の測定が可能である。
高分子材料で感水膜33を形成する場合、感水膜33の表面を親水化処理してもよい。そうすれば、感水膜33に植物内の水分が吸収されやすくなり、水分含有量測定の応答速度が速くなる。例えば、ポリイミドで感水膜33を形成する場合、感水膜33の表面を酸素プラズマ処理すればよい。ポリイミドの表面を酸素プラズマ処理すると、カルボニル基が導入されポリイミドの表面が親水化される。また、ポリイミドの表面積が増加するという効果もある。感水膜33が親水化されるとともに表面積が増加するので、感水膜33に植物内の水分が吸収されやすくなり、水分含有量測定の応答速度が速くなる。
・電気伝導率プローブ
図7に示すように、電気伝導率プローブ40の先端部には電気伝導率電極対41が設けられている。電気伝導率電極対41は所定の間隔を空けて配置された一対の電極42、42からなる。電気伝導率電極対41は電極42、42間に存在する水分(維管束液など)の電気伝導率を測定するためのものである。電極42は電気伝導率プローブ40の先端部に配設できる大きさのものであれば、特に限定されない。電極42は、例えば、スパッタ法、蒸着法などにより半導体基板SS上にAu、Alなどの金属薄膜を堆積させることにより形成される。
支持部10の上面には2つの電極42、42に配線を介して接続された2つの電極パッド42e、42eが配設されている。電気伝導率は交流二電極法により測定できる。すなわち、一対の電極42、42に対応する一対の電極パッド42e、42eの間には、交流電源と電流計とが直列に接続される。交流電源で電極42、42間に電流を供給し、電流計で電極42、42間に流れる電流を測定する。オームの法則の基づき、電流計で測定した電流から、電極42、42間の電気抵抗を算出し、電気抵抗から電気伝導率を求める。
植物内の水分の電気伝導率を測定するには、電気伝導率の測定レンジが少なくとも0~10mS/cmであることが好ましい。交流二電極法による電気伝導率の測定レンジは、電極対のセル定数Kに依存する。ここで、セル定数Kは電極間距離Lを電極表面積Sで除して求められる。すなわち、電気伝導率の測定レンジは電極42の形状に依存する。電極42の形状は、立体電極、櫛歯電極、平面電極など、種々の形状から選択できる。
・温度プローブ
温度プローブ50の先端部には第3温度センサ51が設けられている。第3温度センサ51として第1温度センサ21と同様のものを採用できる。支持部10の上面には第3温度センサ51に配線を介して接続された2つの電極パッド51e、51eが配設されている。第1温度センサ21と同様の方法で、第3温度センサ51により温度を測定できる。
なお、水分含有量プローブ30、電気伝導率プローブ40、温度プローブ50をそれぞれ別のプローブとして構成してもよいし、それらの一部または全部を単一のプローブとして構成してもよい。例えば、一本のプローブに電気伝導率電極対41と第3温度センサ51とを搭載して、電気伝導率プローブ40と温度プローブ50とを一体化してもよい。
(維管束液流速測定方法)
つぎに、維管束液流速センサ3による維管束液流速の測定方法を説明する。
・取り付け
まず、測定対象となる植物の新梢末端、果柄などに、維管束液流速センサ3を取り付ける。具体的には、図7に示すように、維管束液流速センサ3の全てのプローブ20、30、40、50を植物に突き刺して取り付ける。このとき、植物の道管XYおよび師管PHに沿って、プローブ20、30、40、50を配置する。師管液の流速を測定する場合には、プローブ20、30、40、50の先端部を師管PHに配置する。道管液の流速を測定する場合には、プローブ20、30、40、50の先端部を道管XYに配置する。以下、道管液の流速を測定する場合を例に説明する。
ところで、感水膜33は少なくとも読出電極対31を覆う領域に形成されていればよい。ただし、感水膜33は読出電極対31の配置部から水分含有量プローブ30の基端部にわたって設けることが好ましい。また、感水膜33は水分含有量プローブ30の基端部からさらに支持部10上面の一部領域を覆うように設けることがより好ましい。このようにすれば、感水膜33の一部が植物の外側に配置される。
感水膜33は植物内の水分量に応じて水分を吸収する。植物内の水分の減少を捉えるには、感水膜33が吸収していた水分を脱水する必要がある。感水膜33の一部が植物の外側に配置されていれば、この外気に触れる部分から脱水が促進される。感水膜33からの脱水がスムーズに行なわれるため、水分含有量が減少する際の応答速度が速くなる。
・水分含有量測定(インピーダンスによる方法)
水分含有量プローブ30を植物に突き刺すと、植物内の水分が感水膜33に吸収される。植物内の水分量に応じて感水膜33に吸収される水分量が変化する。また、感水膜33に吸収される水分量に応じて読出電極対31を構成する電極32、32間のインピーダンスが変化する。
電極32、32間のインピーダンスZ[kΩ]と植物の水分含有量WC[%]との関係は式(6)で表される。式(6)中、Z0は感水膜33が水分を吸収していない場合のインピーダンス[kΩ]、Bはセンサの感度を表す係数である。
Figure 2023063920000007
0およびBは予め試験により求められる。植物の水分含有量の測定時には電極32、32間のインピーダンスZを測定する。そして、式(6)に基づいて、インピーダンス測定値Zから植物の水分含有量WCを求める。
・水分含有量測定(静電容量による方法)
感水膜33に吸収される水分量が増加すると、読出電極対31を構成する電極32、32間の静電容量が増加するという関係がある。特に、感水膜33の素材を適切に選択すれば、感水膜33に吸収される水分量と電極32、32間の静電容量とは線形関係となる。この関係を予め試験により求めておく。植物の水分含有量の測定時には電極32、32間の静電容量Cを測定する。そして、静電容量と水分含有量との関係に基づいて、静電容量測定値Cから植物の水分含有量WCを求める。
以上のように、水分含有量プローブ30を植物に突き刺し、読出電極対31からインピーダンスまたは静電容量を読み出すことで、植物の水分含有量を測定できる。
・電気伝導率補償
水分含有量プローブ30により得られた水分含有量測定値は、植物内の水分の電気伝導率に依存する。そのため、水分含有量測定値を電気伝導率で補償することが好ましい。植物内の水分(主に道管液)の電気伝導率は電気伝導率プローブ40の電気伝導率電極対41により測定できる。電気伝導率プローブ40により測定した電気伝導率に基づき水分含有量測定値を補償する。これにより、植物の水分含有量を精度良く測定できる。
例えば、水分含有量を電極32、32間のインピーダンスから求める場合、予め種々の電気伝導率の溶液を用いて式(6)中のセンサ感度係数Bを求めておく。植物の水分含有量の測定時には、これと同時に植物内の水分の電気伝導率を測定する。測定された電気伝導率に対応するセンサ感度係数Bを適用した式(6)に基づき、インピーダンスZから植物の水分含有量WCを求める。このように、電気伝導率測定値からセンサ感度係数Bを求めることで、水分含有量測定値を補償できる。
また、センサ感度係数Bは電気伝導率σに線形依存する。したがって、予め種々の電気伝導率σの溶液を用いて水分含有量プローブ30によりインピーダンスZを測定し、式(6)中のセンサ感度係数Bを求めておき、電気伝導率σとセンサ感度係数Bとの関係を一次関数でフィッティングする。つまり、以下の式(7)で表される電気伝導率σとセンサ感度係数Bとの関係式のうち係数aおよびbを求めておく。
Figure 2023063920000008
植物の水分含有量の測定時には、水分含有量プローブ30によりインピーダンスZを測定するとともに、電気伝導率プローブ40で電気伝導率σを測定する。式(7)に基づいて、電気伝導率測定値σからセンサ感度係数Bを求める。求めたセンサ感度係数Bを適用した式(6)に基づき、インピーダンスZから植物の水分含有量WCを求める。
水分含有量を電極32、32間の静電容量から求める場合も同様に、予め種々の電気伝導率の溶液を用いて、感水膜33に吸収される水分量と電極32、32間の静電容量との関係を求めておく。植物の水分含有量の測定時には、これと同時に植物の水分の電気伝導率を測定する。測定された電気伝導率に対応する水分量-静電容量の関係に基づき、静電容量Cから植物の水分含有量WCを求める。
・温度補償
電気伝導率プローブ40により得られた電気伝導率測定値は温度に依存する。一般に、電気伝導率測定値は1℃ごとに1~3%変化する。そのため、電気伝導率測定値を温度補償することが好ましい。植物内の水分(主に道管液)の温度は温度プローブ50の第3温度センサ51により測定できる。温度プローブ50により測定した温度に基づき電気伝導率測定値を補償する。これにより、植物内の水分の電気伝導率を精度良く求めることができる。温度補償後の電気伝導率を用いて水分含有量測定をさらに補償することで、水分含有量を精度良く求めることができる。
電気伝導率測定値の温度補償は、例えば、以下の手順で行なう。すなわち、式(8)に基づき、電気伝導率測定値を基準温度25℃での電気伝導率σ25[S/m]に変換する。ここで、βは温度係数、Tは測定対象液の温度[℃]、σは電気伝導率測定値[S/m]である。
Figure 2023063920000009
温度係数βは式(9)から求められる。ここで、T1は25℃およびT2以外の温度[℃]、T2は25℃およびT1以外の温度[℃]、σ1はT1での電気伝導率測定値[S/m]、σ2はT2での電気伝導率測定値[S/m]である。
Figure 2023063920000010
感水膜33をポリイミドで形成した場合、水分含有量プローブ30で測定される水分含有量測定値は温度に依存しない。しかし、感水膜33を他の素材で形成した場合、水分含有量測定値が温度に依存することがある。このような場合には、水分含有量測定値を温度補償してもよい。すなわち、温度プローブ50により測定した温度に基づき水分含有量測定値を直接補償する。これにより、水分含有量を精度良く測定できる。
・道管液流速測定
道管液流速の測定は、基本的には、第1実施形態と同様である。すなわち、ヒータ付温度プローブ20のヒータ22に間欠的に電力を供給し、ヒータ22の加熱による道管液の上昇温度ΔTuを第1温度センサ21で測定する。そして、式(1)、(2)、(3)に従い、上昇温度ΔTuから道管液流速uを求める。
ここで、道管液流速uとヒートパルス速度Vhとの間には、式(10)で示される関係がある。式(10)中、ρbは道管の乾燥時の密度[g/cm3]、ρsは道管液の密度[g/cm3]、WCは水分含有量[%]、csは道管の乾燥時の比熱容量[J/gK]、cdwは道管液の比熱容量[J/gK]である。ρb、ρs、cs、cdwは、測定対象の植物に依存する定数であり、予め実験などにより定められる。
Figure 2023063920000011
すなわち、式(3)中の係数αは式(11)で示されるように、水分含有量WCに異存する。
Figure 2023063920000012
そこで、式(11)に基づき、測定により得られた水分含有量WCから係数αを求める。このαの値を用いて、式(3)に基づき、道管液流速uを求める。すなわち、ヒータ付温度プローブ20で測定された上昇温度ΔTuに加えて、水分含有量プローブ30で測定された水分含有量WCに基づき、維管束液流速uを求める。このように、水分含有量を考慮することで、維管束液流速uを精度良く測定できる。
・自然温度勾配補正
温度プローブ50の第3温度センサ51により自然温度勾配を測定することができる。すなわち、第3温度センサ51の測定値(植物の温度)から自然温度勾配ΔT2を求める。自然温度勾配ΔT2を用いて上昇温度ΔT1を補正する。この詳細は第2実施形態と同様である。植物の温度から求めた自然温度勾配を考慮して維管束液流速を求めることで、外部環境に対するロバスト性を高めることができる。
(熱解析)
モデリングソフトウエアANSYSを用いて、維管束液流速センサの熱解析を行なった。図9(A)に解析モデルを示す。維管束液流速センサのプローブはヒータ付温度プローブのみである。ヒータ付温度プローブには抵抗値130Ωのフィラメントヒータを搭載した。ヒータ付温度プローブの先端部を、植物を模した直径3mmのチューブに突き刺した。チューブには水を流した。
フィラメントヒータに45.2mWの電力を30秒間供給した後、150秒間電力供給を停止した。図9(B)にフィラメントヒータに電力を供給した際の温度分布を示す。ヒータによる加熱開始時の水温と加熱終了時の水温との差分から上昇温度ΔTuを求め、式(1)に従いヒートパルス速度Vhを求めた。ここで、熱拡散率Dは水の値である1.47×10-72/sとした。
チューブに流れる水の流速を0~4mm/sの範囲で変化させつつ、上記の手順でヒートパルス速度Vhを求めた。求められたヒートパルス速度Vhを解析し、式(2)の補正係数を定めた。その結果、式(2)の補正係数は、a=0.78×102、b=-1.47×103、c=7.84×103とした。
図10に補正後のヒートパルス速度Vcと流速との関係を示す。図10より、維管束液流速センサは0~4mm/sの範囲で流速の変化を測定できることが確認できた。
(センサの製作)
つぎに、図1に示す構成の維管束液流速センサを製作した。まず、湿式酸化処理を2時間行ない、シリコンウエハの表面に酸化膜を形成して絶縁層とした。つぎに、絶縁層の上に接着層として厚さ0.04μmのCr層を設け、接着層の上に厚さ0.2μmの耐腐食性Au層をスパッタリングで形成した。つぎに、測温抵抗体と抵抗値130Ωのフィラメントヒータをパターニングし、配線の保護膜としてフォトレジスト(SU-8 3005)をパターニングした。最後に、レジスト(PMER)をマスクにして、ドライエッチングで針状のプローブを作製した。
維管束液流速センサの支持部の寸法は5mm×4mmである。ヒータ付温度プローブは長さが3mm、幅が480μmである。ヒータ付温度プローブの先端の角度は60°である。また、使用時の外部温度変化の影響を軽減するために、支持部を絶縁材料でパッケージした。
(センサの校正)
つぎに、製作した維管束液流速センサの校正を行なった。直径3mmのチューブにヒータ付温度プローブの先端部を突き刺し、シリンジポンプを用いて水を注入した。フィラメントヒータに45.2mWの電力を30秒間供給した後、150秒間電力供給を停止した。加熱開始時における測温抵抗体の測定値と加熱終了時における測温抵抗体の測定値との差分から上昇温度ΔTuを求め、式(1)に従いヒートパルス速度Vhを求めた。ここで、熱拡散率Dは水の値である1.47×10-72/sとした。
チューブに流れる水の流速を0~4mm/sの範囲で変化させつつ、上記の手順でヒートパルス速度Vhを求めた。求められたヒートパルス速度Vhを解析し、式(2)の補正係数を定めた。その結果、式(2)の補正係数は、a=1.10×102、b=-3.10×103、c=2.35×104とした。
図11に補正後のヒートパルス速度Vcと流速との関係を示す。図11より、維管束液流速センサは0~4mm/sの範囲で流速の変化を測定できることが確認できた。
(生育環境下での測定)
つぎに、生育環境下のトマト(Solanum lycopersicum L.)を用いて水分含有量の測定を行なった。培養土(420036、DCMホールディングス株式会社)に播種し、人工気象器(NC-410HC、株式会社日本医化器械製作所)で生育したトマトの茎に維管束液流速センサを取り付けた。ここで、維管束液流速センサの取り付け位置を土壌表面から150mmの位置とした。人工気象器内の環境を温度25℃、湿度50%、二酸化炭素濃度500ppmに設定した。実時刻に合わせて人工気象器内の光量を変化させた。
維管束液流速センサで測定した道管液流速の時間変化を図12に示す。図12より、光量に依存して道管液流速が変化することが確認された。これは、光量の増減(蒸散の促進/抑制)により培養土から水分を吸い上げる状態が変わり、道管液流速が変化したものと考えられる。これより、維管束液流速センサは非破壊で植物の維管束液流速をリアルタイムで測定できることが確認された。
1、2、3 維管束液流速センサ
10 支持部
11 第2温度センサ
20 ヒータ付温度プローブ
21 第1温度センサ
22 ヒータ
30 水分含有量プローブ
31 読出電極対
33 感水膜
40 電気伝導率プローブ
41 電気伝導率電極対
50 温度プローブ
51 第3温度センサ

Claims (11)

  1. 植物に突き刺すプローブとして、第1温度センサとヒータとが設けられたヒータ付温度プローブのみを有する
    ことを特徴とする維管束液流速センサ。
  2. 外気温を測定する第2温度センサを有する
    ことを特徴とする請求項1記載の維管束液流速センサ。
  3. 第1温度センサとヒータとが設けられたヒータ付温度プローブと、前記ヒータ付温度プローブを支持する支持部とを有する維管束液流速センサと、
    前記ヒータに間欠的に電力を供給する電源と、
    前記第1温度センサで測定された前記ヒータの加熱による維管束液の上昇温度に基づき維管束液流速を求める演算部と、を備える
    ことを特徴とする維管束液流速測定装置。
  4. 外気温を測定する第2温度センサを備える
    ことを特徴とする請求項3記載の維管束液流速測定装置。
  5. 前記維管束液流速センサは、所定の間隔を空けて配置された一対の電極からなる読出電極対と、前記一対の電極に架け渡された感水膜とが設けられた水分含有量プローブを有し、
    前記水分含有量プローブは前記ヒータ付温度プローブと平行に並んだ状態で前記支持部に支持されている
    ことを特徴とする請求項3または4記載の維管束液流速測定装置。
  6. 前記維管束液流速センサは、所定の間隔を空けて配置された一対の電極からなる電気伝導率電極対が設けられた電気伝導率プローブを有し、
    前記電気伝導率プローブは前記水分含有量プローブと平行に並んだ状態で前記支持部に支持されている
    ことを特徴とする請求項5記載の維管束液流速測定装置。
  7. 前記維管束液流速センサは、第3温度センサが設けられた温度プローブを有し、
    前記温度プローブは前記ヒータ付温度プローブと平行に並んだ状態で前記支持部に支持されている
    ことを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載の維管束液流速測定装置。
  8. 第1温度センサとヒータとが設けられたヒータ付温度プローブを植物に突き刺し、
    前記ヒータに間欠的に電力を供給し、
    前記ヒータの加熱による維管束液の上昇温度を前記第1温度センサで測定し、
    前記上昇温度に基づき維管束液流速を求める
    ことを特徴とする維管束液流速測定方法。
  9. 所定の間隔を空けて配置された一対の電極からなる読出電極対と、前記一対の電極に架け渡された感水膜とが設けられた水分含有量プローブを前記植物に突き刺し、
    前記読出電極対を構成する前記一対の電極間のインピーダンスまたは静電容量を測定し、
    インピーダンス測定値または静電容量測定値から前記植物の水分含有量を求め、
    前記上昇温度および前記水分含有量に基づき維管束液流速を求める
    ことを特徴とする請求項8記載の維管束液流速測定方法。
  10. 所定の間隔を空けて配置された一対の電極からなる電気伝導率電極対が設けられた電気伝導率プローブを前記植物に突き刺し、
    前記電気伝導率電極対を構成する前記一対の電極間の電気抵抗から電気伝導率を求め、
    電気伝導率測定値を用いて水分含有量測定値を補償する
    ことを特徴とする請求項9記載の維管束液流速測定方法。
  11. 前記植物の温度または外気温から自然温度勾配を求め、
    前記自然温度勾配を用いて前記上昇温度を補正する
    ことを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載の維管束液流速測定方法。
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