JP2023049311A - 耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法 - Google Patents

耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】煩雑な熱処理がなく、簡便に耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材を得る製造方法を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.02~0.40%、Si:0.010~0.500%、Mn:0.05~2.00%、P:0.050%以下、S:0.050%以下、Al:0.100%以下、N:0.1000%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼素材を、1000~1300℃に加熱し、900℃以上で累積圧下率50%以上の圧延を行った後、Ar3点以上から焼入れ処理を施し、100~450℃で冷却を停止する、鋼材の製造方法である。その鋼材の金属組織が、ベイナイト組織、マルテンサイト組織またはベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織のうちのいずれかの組織か、あるいは、これらの金属組織内に、面積率で50%以下のフェライト組織が存在している組織である。【選択図】図1

Description

本発明は、耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法に関する。より詳しくは、船舶、海洋構造物、橋梁、建設機械、建築物、タンクなど各種溶接構造物に用いられ、繰返し荷重を受けた場合でも耐疲労き裂伝播特性が向上する鋼材の製造方法に関する。
近年、船舶、海洋構造物、橋梁、建設機械、建築物、タンクなどの構造物においては、設計の合理化や鋼材重量の低減、薄肉化や溶接の省力化を目的として高強度鋼材が適用される事例が多くなってきている。加えてそれら鋼材においては、靭性や延性のみならず溶接性や構造安全性を確保するため耐疲労特性に優れていることが要求されている。
溶接構造物において、疲労破壊は、溶接止端部から疲労き裂が発生し、鋼材中を伝播して破壊するケースが多い。これは、溶接止端部がその形状的要因から応力集中部となりやすいこと、加えて溶接後に引張の残留応力が生じることなどに起因するとされている。
このため、溶接止端部からのき裂発生を抑制させる手段として、付加溶接を施すなどして形状を改善し応力集中を低減させる技術、ピーニングなどで圧縮の残留応力を導入する技術などが広く知られている。
しかしながら、多数存在する溶接止端部にこのような処理を工業的規模で施すことは、不可能に近く、コストの面でも現実的とは言いがたい。そこで、仮に疲労き裂が発生したとしてもその後の鋼材中の伝播速度を低減させることで疲労寿命を延命させることが重要であるとの認識のもと、鋼材自身の疲労き裂伝播特性を向上させることが産業界から強く要望されている。
ここで、特許文献1には、鋼の化学組成が、質量%でC:0.05~0.30%、Si:0.03~0.35%、Cr:0.05~2.0%、P:0.03%以下、S:0.003%以下、Al:0.1%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋳片または鋼片を、熱間圧延後、再加熱して焼入れ処理後、Ac1変態点+10℃~790℃の2相域温度範囲に再加熱し、平均冷却速度5~60℃/sで焼入れ後、400~650℃で10分以上保持して焼戻しすることを特徴とする、金属組織がビッカース硬さで85以上130以下のフェライト相と、面積分率15~85%のビッカース硬さで340以上440以下の焼戻しマルテンサイト相の混合組織である、表面残留応力の絶対値が150N/mm2以下の耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、C:0.04~0.3%、Si:0.01~2%、Mn:0.1~3%、Al:0.001~0.1%、N:0.001~0.01%、P:0.02%以下、S:0.01%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、軟質相と該軟質相を網目状に囲む硬質第二相からなる二相組織を有し、該軟質相と硬質第二相とが、(1)軟質相がフェライト、焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトの1種または2種以上から構成され、かつ平均ビッカース硬さが150以下であること、(2)硬質第二相がベイナイト、マルテンサイト、焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトの1種または2種以上から構成され、かつ平均ビッカース硬さが250以上であること、(3)特定式で示される硬質第二相の粒界占有率が0.5以下であること、の条件をすべて満足した耐疲労き裂伝播特性に優れた厚鋼材が開示されている。
また、特許文献3には、鋼組成が質量%でC:0.05~0.30%、Si:0.03~0.35%、Cr:0.05~2.0%、P:0.03%以下、S:0.003%以下、Al:0.1%以下、残部がFe及び不可避的不純物で、板厚方向および板長さ方向のいずれにおいても金属組織の80%以上が、ビッカース硬さで130以下、アスペクト比で2.5以下のフェライト相と、面積分率が15~85%のビッカース硬さで340以上、アスペクト比で2.5以下の焼戻しマルテンサイト相の混合組織からなる、材質の異方性が小さく、耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材が開示されている。
また、特許文献4には、質量%で、C:0.03~0.30%、Si:0.01~0.5%、Mn:0.3~2.0%、sol.Al:0.001~0.1%、を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼板であって、その組織が硬質部と軟質部とからなり、この2つの部分の組織に占める割合およびビッカース硬さでの平均硬さが特定式を満たす鋼板が開示されている。
さらに、特許文献5には、質量%で、C:0.02~0.16%、Si:0.05~0.5%、Al:0.005~0.060%を含有し、さらに、Mn:0.1~2.5%、Cu:0.1~2.0%、Ni:0.1~6.0%の中から選ばれる1種または2種以上を2Mn+Cu+Niの値が3.5~6.0%となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼で、平均直径0.1~0.5μmの残留オーステナイトを体積率で5~20%含むことを特徴とする疲労き裂伝播特性および靭性に優れた厚鋼板が開示されている。
特許第4924047号公報 特許第3785392号公報 特許第4998708号公報 特開2002-121640号公報 特許第4497009号公報
しかしながら、上記特許文献1~5に係る製造技術には、以下に示す問題点があった。
特許文献1の製造方法は、熱間圧延後、再加熱して焼入れ処理後、Ac1変態点+10℃~790℃の二相域温度範囲に再加熱して平均冷却速度5~60℃/sで焼入れ後、400~650℃で10分以上保持して焼戻しして製造されるが、製造方法が煩雑である。
特許文献2は、熱間圧延前の鋼片に加熱温度が1200~1350℃、該温度範囲での保持時間が2~100hの拡散熱処理を施した後、加熱温度がAc3変態点~1250℃で、圧延後にAr3変態点以上から400℃以下まで5~100℃/sで加速冷却する熱間圧延を施し、さらに加熱温度が(Ac1変態点+30℃)~(Ac3変態点-10℃)で、かつ、400℃以下まで5~100℃/sで加速冷却する二相域熱処理を施すことを特徴とするが、拡散熱処理や二相域熱処理等の製造方法が煩雑である。
特許文献3は、鋼を1200~1300℃で25~60時間保持する溶体化熱処理を施した後空冷し、1000~1200℃に再加熱後、圧延終了温度をAr3変態点以上となる熱間圧延を行い空冷後、Ac3変態点以上に再加熱保持後、空冷を行い、さらにAc1変態点+10℃~Ac3変態点-10℃の二相域温度に再加熱し、その後5℃/s以上の平均冷却速度で焼入れし、400℃~650℃で焼戻すことを特徴とするが、溶体化熱処理や二相域熱処理等の製造方法が煩雑である。
特許文献4は、fA・HA-fB・HB≧-3500の関係式を提案している。ここで、fAとfBは、それぞれ硬質部と軟質部が組織に占める%単位での割合、HAとHBは、それぞれ硬質部と軟質部のビッカース硬さの平均値を示している。しかし、fA・HA-fB・HBと疲労き裂伝播速度は、線形関係でなく、指標としては不明確である。
さらに、特許文献5は、鋼を熱間圧延後、直接焼入れあるいは再加熱焼入れを施し、さらに引き続いて650℃以上、Ac3点未満の温度に加熱して冷却する2相域熱処理を行うことを特徴とするが、2相域熱処理等の製造方法が煩雑である。
そこで、本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、煩雑な熱処理がなく、簡便に耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材を得るための製造方法を提供することを目的とする。ここで、「鋼材」とは、鋼板、棒鋼、条鋼などを含むが、以下、「鋼板」を主体に説明する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく以下の実験を行い、検討を重ねた。
[疲労き裂伝播速度]
実験には3種類の供試鋼(A、B、C)を用いた。その化学組成を表1に示す。
Figure 2023049311000002
供試鋼Aは、鋼組成が0.13%C-0.27%Si-1.35%Mn-0.011%P-0.005%S-0.01%Ni-0.06%Cr-0.013%Ti-0.045%Al-0.0038%Nである鋼板(最終板厚25mm)を用い、その鋼板を1200℃に加熱し、900℃以上で累積圧下率80%の圧延を行った後、900℃から70℃/sで200℃まで急速冷却したものである。その後、12mmに両面減厚したCT試験片で応力拡大係数範囲〔ΔK〕と疲労き裂伝播速度〔da/dN〕の関係を調べた。供試鋼Bは、軟質相/硬質相分散鋼(0.15%C-0.25%Si-1.51%Mn-0.009%P-0.005%S-0.07%Cr-0.038%Al-0.0025%Nを有する鋼塊を950℃以上1250℃以下に加熱後、Ar3点以上で累積圧下率50%以上の圧延を行い、Ar3点-60℃から730℃以上の温度域から10℃/s以上30℃/s未満の冷却速度で加速冷却を開始後、650℃以下500℃以上まで冷却して出来た鋼材)を用い、供試鋼Cは、従来鋼(0.13%C-0.33%Si-1.45%Mn-0.009%P-0.008%S-0.05%Cr-0.012Ti-0.048%Al-0.0039%Nを有する鋼塊を950℃以上1250℃以下に加熱後、900℃以上で累積圧下率50%以上の圧延を行い、Ar3点からAr3点-100℃の温度域から加速冷却を開始後700℃以下、500℃以上まで冷却して出来た鋼材)を用いた。
その結果を図1に示す。図1中の□(図中では「白枠黒塗りつぶし」で表示)は、供試鋼Aのデータであり、△は、供試鋼Bのデータで、○は、供試鋼Cである。また、図中の実線は、供試鋼Cのような一般的な従来鋼における応力拡大係数範囲〔ΔK〕に対する疲労き裂伝播速度〔da/dN〕のレベルであり、ΔK=15MPa・m1/2のとき3.50×10-8m/cycleと、ΔK=25MPa・m1/2のとき1.70×10-7m/cycleを結んだ直線である。その下にある点線は、供試鋼Cの疲労き裂伝播速度レベルの1/2レベルであり、ΔK=15MPa・m1/2のとき1.75×10-8m/cycleと、ΔK=25MPa・m1/2のとき8.50×10-8m/cycleを結んだ直線である。その下にある1点鎖線は、供試鋼Cの疲労き裂伝播速度レベルの1/5レベルであり、ΔK=15MPa・m1/2のとき7.00×10-9m/cycleと、ΔK=25MPa・m1/2のとき3.40×10-8m/cycleを結んだ直線である。この実験結果から、供試鋼Bは、供試鋼Cの疲労き裂伝播速度レベルの1/2程度であるのに対し、供試鋼Aの疲労き裂伝播速度レベルは、供試鋼Cの1/5程度であり、耐疲労き裂伝播特性に最も優れていることが確認された。
次に、上記の供試鋼Aの鋼板の1/2厚さから薄膜試料を作成し、TEM(透過型電子顕微鏡)で金属組織観察を行った。また、付属のエネルギー分散型X線分光器(EDX)分析により炭化物、窒化物、炭窒化物の同定を行った。その結果の一例を図2に示す。図2では、1視野(3.8μm2、10000倍)中に、2個の炭化物からなる析出物が認められた。同様の観察を視野間隔50μmで10視野行った結果、6視野中(10視野中の60%相当)で1個以上の炭化物、窒化物または炭窒化物からなる析出物が確認された。
なお、金属組織の観察は、鋼材(鋼板)の板厚中央部(板厚1/2の位置)で採取した試験片を研磨し腐食(ナイタールエッチング)して、走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:500倍)で組織観察を行い、撮像して画像解析装置を用いて、金属組織を判定した。その結果、上記供試鋼Aにおいて、観察された金属組織は、ベイナイト組織であった。また、上記供試鋼Bは、フェライトマトリクス中に塊状のパーライト、塊状のベイナイトが生成した組織であった。さらに、上記供試鋼Cは、フェライトマトリクス中にバンド状のパーライトが生成した組織であった。
以上のような実験結果から、特定の組成を有する鋼材であって、その金属組織が、ベイナイト組織であり、さらに、炭化物、窒化物および炭窒化物の析出物のうち1種以上が存在する鋼材とすることで疲労き裂伝播特性が大幅に向上することを知見した。
また、同様に、マルテンサイト組織、あるいはベイナイト組織とマルテンサイト組織との混合組織であれば、さらには、それらの組織内にフェライト組織が存在している場合であっても、そのフェライト組織が面積率で50%以下である場合の組織であって、さらに、炭化物、窒化物および炭窒化物の析出物のうち1種以上が存在する鋼材において、同様に疲労き裂伝播速度の低下が認められた。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものであり、本発明の要旨は、次のとおりである。
〔1〕質量%で、C:0.02~0.40%、Si:0.010~0.500%、Mn:0.05~2.00%、P:0.050%以下、S:0.050%以下、Al:0.100%以下、N:0.1000%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼素材を、1000~1300℃に加熱し、900℃以上で累積圧下率50%以上の圧延を行った後、Ar3点以上から焼入れ処理を施し、100~450℃で冷却を停止することを特徴とする耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
〔2〕〔1〕において、前記鋼素材の化学組成に加えて、さらに、質量%で、Cu:0.01~2.00%、Ni:0.01~5.00%、Cr:0.01~3.00%、Mo:0.01~1.00%、Nb:0.001~0.100%、V:0.001~0.100%、Ti:0.001~0.100%、B:0.0001~0.0100%、REM:0.001~0.100%のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴とする耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
〔3〕〔1〕または〔2〕において、前記焼入れ処理が、Ar3点以上から冷却速度5℃/s以上で冷却することを特徴とする耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
〔4〕〔1〕ないし〔3〕のいずれか一つにおいて、前記鋼材は、金属組織が、ベイナイト組織、マルテンサイト組織またはベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織のうちのいずれかの組織であり、さらに、炭化物、窒化物および炭窒化物の析出物のうち1種以上が存在することを特徴とする耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
〔5〕〔4〕において、前記各金属組織と面積率50%以下のフェライト組織が存在していることを特徴とする耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
〔6〕〔1〕ないし〔5〕のいずれか一つにおいて、前記鋼材の板厚が、5~100mmであることを特徴とする耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
〔7〕〔1〕ないし〔6〕のいずれか一つにおいて、前記析出物の個数が、前記鋼材の板厚中央部で、1~100個/3.8μm2であることを特徴とする耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
〔8〕〔1〕ないし〔7〕のいずれか一つにおいて、前記鋼材の疲労き裂伝播試験における応力拡大係数範囲〔ΔK〕が20MPa・m1/2である場合に、疲労き裂伝播速度〔da/dN〕が4.26×10-8m/cycle以下であることを特徴とする耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
本発明によれば、簡便な製造方法で耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材が製造可能であり、産業上格段の効果を有する。
本発明鋼材と従来鋼材の耐疲労き裂伝播特性試験結果を示す相関図である。 本発明鋼材の金属組織観察における撮像写真である。
以下、本発明に係る実施形態について、まず、本発明の製造方法により得られる鋼材について、具体的に説明する。
[鋼材の基本化学組成]
次に、本発明に係る鋼材の基本化学組成について、説明する。なお、以下、化学組成における「%」は、「質量%」であることを意味する。
[C:0.02~0.40%]
Cは、強度確保のために0.02%以上の添加が必要である。しかし、0.40%以上の添加は、溶接性を阻害する。したがって、0.02~0.40%の範囲に限定した。好ましくは、0.02~0.35%である。より好ましくは、0.02~0.33%である。さらに好ましくは、0.02~0.30%である。
[Si:0.010~0.500%]
Siは、脱酸剤として有効であるとともに高強度化のためには0.010%以上必要であるが、0.500%を越えて添加すると溶接性、靭性を劣化させる。したがって、0.010~0.500%の範囲に限定した。好ましくは、0.050~0.450%である。より好ましくは、0.050~0.430%である。さらに好ましくは、0.050~0.400%である。
[Mn:0.05~2.00%]
Mnは、安価に焼入れ性の増加を通じて強度を高めるだけでなく、靭性向上の観点から0.05%以上必要であるが、2.00%を越えると溶接性の劣化に繋がる。したがって、0.05~2.00%の範囲に限定した。好ましくは、0.05~1.90%である。より好ましくは、0.05~1.85%である。さらに好ましくは、0.05~1.80%である。
[P:0.050%以下]
Pは、不純物で靭性を劣化させるため、その含有量は少ないほど良く、製造コスト上、0.050%以下の範囲に限定する。好ましくは、0.040%以下である。より好ましくは、0.030%以下である。さらに好ましくは、0.020%以下である。
[S:0.050%以下]
Sは、不純物で靭性を劣化させるため、その含有量は少ないほど良く、製造コスト上、0.050%以下の範囲に限定する。好ましくは、0.040%以下である。より好ましくは、0.030%以下である。さらに好ましくは、0.020%以下である。
[Al:0.100%以下]
Alは、脱酸剤として作用し、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスにおいてもっとも汎用的に使われる。また、鋼中のNをAlNとして固定し母材の靭性向上に寄与する。一方、0.100%を超える添加は、母材の靭性が低下するとともに、溶接時に溶接金属部に混入して靭性を劣化させる。このためAlは、0.100%以下に限定する。好ましくは、0.080%以下である。より好ましくは、0.070%以下である。さらに好ましくは、0.060%以下である。
[N:0.1000%以下]
Nは、固溶状態では延性、靭性に悪影響を及ぼすために好ましくないが、V、AlやTiと結びついてオーステナイト粒微細化や析出強化に有効に働くため、微量であれば機械的特性向上に有効である。しかし、過剰に含有すると固溶Nが増加し延性や靱性に悪影響を及ぼす可能性があるので、Nは、0.1000%以下の範囲に限定する。好ましくは、0.0900%以下である。より好ましくは、0.0800%以下である。さらに好ましくは、0.0700%以下である。
[鋼材の任意的選択化学組成]
上述した化学組成が本発明の鋼材の基本化学組成であり、本発明では、この基本化学組成に加えてさらに、任意的選択化学組成として、必要に応じて、強度、靭性や溶接性等の調整、耐候性の付与などを目的として、Cu:0.01~2.00%、Ni:0.01~5.00%、Cr:0.01~3.00%、Mo:0.01~1.00%、Nb:0.001~0.100%、V:0.001~0.100%、Ti:0.001~0.100%、B:0.0001~0.0100%、REM:0.001~0.100%のうちから選ばれた1種以上を選択して含有することができる。
[Cu:0.01~2.00%]
Cuは、固溶による強度上昇効果をもたらすとともに耐候性を向上させる。このため下限を0.01%とするのが好ましい。しかし、その含有量が2.00%を超えると、溶接性を損なうとともに鋼材製造時に疵が生じやすくなる。従って、含有する場合は、0.01~2.00%とするのが好ましい。より好ましくは、0.01~1.50%である。さらに好ましくは、
0.01~1.00%である。
[Ni:0.01~5.00%]
Niは、低温靭性を向上させるとともに耐候性やCuを添加した場合に生ずる熱間脆性の改善に有効である。このため下限を0.01%とするのが好ましい。しかし、その含有量が5.00%を超えると溶接性を阻害する上、コスト上昇に繋がる。従って、含有する場合は、0.01~5.00%とするのが好ましい。より好ましくは、0.01~4.00%である。さらに好ましくは、0.01~3.00%である。
[Cr:0.01~3.00%]
Crは、耐候性や強度を向上させる。このため0.01%を添加の下限とするのが好ましい。しかし、その含有量が3.00%を超えると溶接性および靭性を損なう。従って、含有する場合は、0.01~3.00%とするのが好ましい。より好ましくは、0.01~2.50%である。さらに好ましくは、0.01~2.00%である。
[Mo:0.01~1.00%]
Moは、強度を上昇させるために0.01%以上含有してもよい。しかし、その含有量が1.00%を超えると、溶接性および靭性の劣化が生じる。従って、含有する場合は、0.01~1.00%とするのが好ましい。より好ましくは、0.01~0.90%である。さらに好ましくは、0.01~0.80%である。
[Nb:0.001~0.100%]
Nbは、圧延時のオーステナイト再結晶を抑制し細粒化を図ると同時に、析出により高強度化をもたらす働きを有するため0.001%以上含有してもよい。しかし、0.100%を超えて含有すると靭性が劣化する。従って、含有する場合は、0.001~0.100%とするのが好ましい。より好ましくは0.001~0.090%である。さらに好ましくは、0.001~0.080%である。
[V:0.001~0.100%]
VもNbと同様、析出により高強度化をもたらす働きを有するため0.001%以上含有してもよい。しかし、0.100%を超えて含有すると、溶接性および靭性の低下を招く。従って、含有する場合は、0.001~0.100%とするのが好ましい。より好ましくは、0.001~0.090%である。さらに好ましくは、0.001~0.080%である。
[Ti:0.001~0.100%]
Tiは、強度上昇と溶接部靭性を改善するために0.001%以上含有してもよい。しかし、その含有量が0.100%を超えるとコスト上昇を招く傾向にある。従って、含有する場合は、0.001~0.100%とするのが好ましい。より好ましくは、0.001~0.090%である。さらに好ましくは、0.001~0.080%である。
[B:0.0001~0.0100%]
Bは、焼入れ性を高め強度上昇に寄与するために0.0001%以上含有してもよい。しかし、0.0100%を超えて含有すると溶接性を害する。従って、含有する場合は、0.0001~0.0100%とするのが好ましい。より好ましくは、0.0001~0.0090%である。さらに好ましくは、0.0001~0.0080%である。
[REM:0.001~0.100%]
REMは、Sc、Y、La、Ceなどの希土類元素をいう。微量添加の際は、HAZ靭性の向上に寄与するため0.001%以上含有してもよい。しかし、0.100%を超えて含有すると溶接性を害する。従って、REMを含有する場合には、0.001~0.100%とするのが好ましい。より好ましくは、0.001~0.090%である。さらに好ましくは、0.001~0.080%である。
[残部化学組成]
上記した化学組成以外の残部化学組成は、Feおよび不可避的不純物からなる。この不可避的不純物元素としては、O(酸素)、Sn、Sb、As、Pb、Bi、Ca、Mgなどが例示でき、合計で0.10%以下であれば許容できる。また、前述の基本化学組成および任意的選択化学組成を満足する限り、これら以外の不可避的不純物元素が含有されることを妨げるものではなく、そのような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
[鋼材の金属組織]
本発明では、前述の化学組成を有する鋼材を後述する製造方法によって、耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材とする。この得られた鋼材の板厚中央部の金属組織は、その化学組成が異なることで、また、鋼材の板厚に応じて冷却速度が変化することで、焼入れ処理などの熱処理条件によって、次のような金属組織を有することが分かった。その組織とは、ベイナイト組織、マルテンサイト組織またはベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織のうちのいずれかの組織であり、また、それらの金属組織の組織内に、面積率50%以下のフェライト組織が存在している場合もある。すなわち、以下の金属組織を有するものである。
(a)ベイナイト組織
(b)マルテンサイト組織
(c)ベイナイト組織およびマルテンサイト組織の混合組織
(d)面積率50%以下のフェライト組織とベイナイト組織
(e)面積率50%以下のフェライト組織とマルテンサイト組織
(f)面積率50%以下のフェライト組織、ベイナイト組織およびマルテンサイト組織の混合組織
なお、これらの金属組織は、前述したように、走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:500倍)を用いた組織観察によって判定することができる。
上述の各組織は、前述したように、化学組成、冷却速度、焼入れ処理などの熱処理条件などを調整して得ることができる。
具体的には、冷却速度が大きい(50℃/s以上)と、マルテンサイト組織になり易く、冷却速度が小さい(10℃/s以上)と、ベイナイト組織になり易い。冷却速度がさらに小さい(5℃/s以下)と、ベイナイト組織またはマルテンサイト組織、あるいはベイナイト組織とマルテンサイト組織のマトリクス中にフェライト組織が混入するようになる。すなわち上記の熱処理により前述の(a)~(f)の組織を得ることができる。
[金属組織中の析出物]
前述のTEMによる金属組織観察において、金属組織中に炭化物、窒化物および炭窒化物の析出物のうちの1種以上が存在することが重要であることが分かった。具体的には、金属組織観察において、析出物の個数が、鋼材の板厚中央部で、1~100個/3.8μm2であることにより、耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材が得られる。すなわち、鋼材の板厚中央部での金属組織観察において、1つの測定視野が3.8μm2であって、その視野を50μm間隔で10視野観察し、それらの各視野のどこかに(1視野以上に)上記析出物の個数が1~100個/3.8μm2であることが好ましい。
上記の析出物とは、鋼材の基本化学組成中のFe、Si、Mn、Alなどの炭化物、窒化物または炭窒化物、さらに、任意的選択化学組成であるCr、Mo、Nb、V、Tiなどの炭化物や窒化物または炭窒化物である。これらの金属組織中の析出物は、図2に示した例のように、大小の微粒子状に点在しており、そのサイズは、約10~500nmである。
なお、これらの析出物は、鋼材(鋼板)の板厚中央部から1mmの薄片を切り出し、切り出した薄片を両面から研磨して50μm厚に減厚後、ディスクパンチで3mmφに打ち抜き、ディスクを電解研磨法により薄片化し、メタノールで洗浄後、ろ紙上で乾燥してTEM用観察試料とし、TEM観察(10000倍)することにより確認することができる。さらに、付属のエネルギー分散型X線分光器(EDX)分析により炭化物、窒化物、炭窒化物の同定を行った。ここで、炭化物、窒化物、炭窒化物を同定する方法としては、上記のEDX分析法などが挙げられ、この方法によると、炭化物では、FeとCのピークが現れ、窒化物では、FeとNのピークが現れ、炭窒化物ではFeとCとNのピークが現れる。
[鋼材の製造方法]
本発明に係る鋼材の製造方法は、前述の組成となるように調整した鋼素材を、1000~1300℃に加熱し、900℃以上で累積圧下率50%以上の圧延を行った後、Ar3点以上から焼入れ処理を施し、100~450℃で冷却を停止することを特徴とする。ここで、温度は、鋼素材(鋼材)の板厚中央部の温度とした。これにより、鋼材の板厚中央部の組織は、板厚に応じて冷却速度を調整し、前述した金属組織および金属組織内に析出物が得られる。そして、このような金属組織を有する鋼材の場合に、後述するように耐疲労き裂伝播特性が向上することが確認された。このような効果は、鋼材の板厚が、5~100mmの範囲で確認している。
さらに、本発明の鋼材の製造方法における個々の工程について詳しく説明する。
[加熱温度:1000~1300℃]
鋼素材の加熱温度を1000℃未満にするとその後の圧延温度が確保できない。また、1300℃を超える温度にすると鋼の結晶粒が粗大化するので靭性の確保が困難となる。したがって、加熱温度を1000~1300℃に規定した。好ましくは、1000~1250℃であり、より好ましくは、1000~1200℃である。また、加熱時間としては、鋼素材の板厚により適宜調整するが、1時間~24時間の範囲が好ましい。より好ましくは、1時間~12時間である。
[900℃以上の累積圧下率:50%以上]
圧延によってオーステナイト粒を微細化させて靭性向上を図るために、900℃以上の累積圧下率が50%以上の圧延を行う。好ましくは、52%以上である。より好ましくは、55%以上である。900℃以上の温度であれば、オーステナイト再結晶域あるいはオーステナイト未再結晶域のどちらでも構わない。ただし、オーステナイト未再結晶域での過度の圧下は、機械的特性に対して異方性が生じることから、オーステナイト未再結晶域での累積圧下率は、50%以下とすることが望ましい。
[焼入れ処理]
圧延後、Ar3点以上からの焼入れ処理は、鋼材をベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織あるいはそれらの混合組織とするためである。具体的な処理内容は、Ar3点以上から冷却速度5℃/s以上で冷却することが好ましく、後述する冷却停止温度まで冷却する。冷却開始温度がAr3点を下回るとフェライトが過度に生成するために所望の疲労き裂伝播速度が得られない。したがって、冷却開始温度は、Ar3点以上とした。冷却速度が5℃/sを下回ると過度にフェライトが生成するために所望の疲労き裂伝播速度が得られない。したがって、冷却速度は、5℃/s以上とした。好ましくは、6℃/s以上である。
なお、上記のAr3点は、鋼材の組成%によって次式(1)にて計算できる。
Ar3=910-310×C-80×Mn-20×Cu-15×Cr-55×Ni-80×Mo ・・・・ (1)
なお、含有されていない場合は0とする。
また、焼入れ処理方法としては、ラボ実験の場合は、ラボ圧延で、加熱・圧延された鋼材を噴流水冷却し、後述する温度まで水冷途中停止することにより所望の金属(ミクロ)組織が得られる。なお、実機スケールの場合は、噴流水冷却やラミナー冷却などで冷却することにより、所望の金属(ミクロ)組織が得られる。
[冷却停止温度]
上記焼入れ処理を行い、冷却される過程において、100~450℃で冷却を停止することにより、ベイナイト組織またはマルテンサイト組織、あるいはベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織になり、前述した炭化物、窒化物または炭窒化物である析出物が発現する。
上記の冷却を停止する温度である冷却停止温度が100℃以上でないと炭化物、窒化物および炭窒化物のうちのいずれかが析出せず、450℃を超えると強度低下が生ずる。したがって、冷却停止温度は、100~450℃が好ましい。100~450℃の範囲の温度に制御するには、TMCP制御冷却(焼入れ水冷途中停止)などにより行われる。
[冷却速度]
冷却速度が50℃/sより早く冷却停止温度が100℃~200℃では、マルテンサイト組織となりやすい。冷却速度が10℃/s以上で冷却停止温度が200℃~450℃では、ベイナイト組織となりやすい。冷却速度が40℃/s以上で冷却停止温度が150℃~350℃では、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織となりやすい。冷却速度が5℃/sになると、ベイナイト組織またはマルテンサイト組織、あるいはベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織中にフェライト組織が析出するようになる。したがって、冷却速度の下限値は、5℃/sとすることが好ましい。
[耐疲労き裂伝播特性]
鋼材の耐疲労き裂伝播特性は、ASTM E647の規格に準拠した疲労き裂伝播試験により、応力拡大係数範囲〔ΔK〕と疲労き裂伝播速度〔da/dN〕を求めて評価している。この応力拡大係数範囲〔ΔK〕とは、ΔK=Kmax-Kminであり、応力拡大係数の最大値と最小値の差を表している。また、疲労き裂伝播速度〔da/dN〕は、応力波形で1サイクルのときの疲労き裂進展量[m/cycle]であり、特に、ΔKの中間領域(およそΔK=約10MPa・m1/2からΔK=約70MPa・m1/2)においては、パリス則と呼ばれるda/dN=CΔKm(C、mは定数)という線形の関係式が成立する。
ここで、本発明において、耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材としては、応力拡大係数範囲〔ΔK〕が20MPa・m1/2である場合に、疲労き裂伝播速度が4.26×10-8m/cycle以下となるものをいう。
[鋼材の機械的特性]
本発明の鋼材の機械的特性の目標値は、引張試験における降伏応力〔YS〕≧400MPa、引張強さ〔TS〕≧500MPa、シャルピー衝撃試験における試験温度:0℃における吸収エネルギー〔V0〕≧27J、耐疲労き裂伝播試験における応力拡大係数範囲〔ΔK〕が20MPa・m1/2の時の疲労き裂伝播速度〔da/dN〕≦4.26×10-8[m/cycle]とした。
表2に示すA~Zの鋼組成を有する26種類の鋼を用意し、表3に示す試験片(板No.1~33)を、それぞれ表3に示す製造条件(加熱・圧延処理し、焼入れ処理し、冷却を停止)により処理した。
Figure 2023049311000003
Figure 2023049311000004
上記の処理をした鋼材(鋼板)の板厚中央部から1mmの薄片を切り出し、切り出した薄片を両面から研磨して50μm厚に減厚後、ディスクパンチで3mmφに打ち抜き、ディスクを電解研磨法により薄片化し、メタノールで洗浄後、ろ紙上で乾燥してTEM用観察試料とし、TEM観察(10000倍)を50μmピッチで10視野行った。さらに付属のエネルギー分散型X線分光器(EDX)分析により炭化物、窒化物、炭窒化物の同定を行った。
TEMによる金属組織観察(1視野あたり3.8μm2)により、10視野(視野間隔:50μm)を観察し、その中の炭化物等の析出物を観察した結果を表4に示す。本発明例となる試験片はいずれも、その金属組織中に析出物が1種以上存在していたが、比較例の試験片・板No.24、31~33では、析出物が全く確認できなかった。
Figure 2023049311000005
次に、引張試験は、ASTM-F(6φ×24GL)丸棒試験片を板厚中央、圧延直角方向から採取し試験に供した。シャルピー衝撃試験は、フルサイズの試験片を板厚中央、圧延方向から3本採取し、試験温度0℃で試験に供した。疲労き裂伝播速度は、板厚12mmに両面減厚したCT試験片をR比0.1、正弦波、10Hzにて疲労き裂伝播試験を行った。この時のYS[MPa]、TS[MPa]、V0[J]、ΔK=20MPa・m1/2の時の疲労き裂伝播速度〔da/dN〕[m/cycle]を表4に示す。ミクロ観察は、板厚1/2位置でナイタルエッチングしてSEM観察で行った。TEM観察は、上述のように板厚1/2位置から薄膜を採取し行った。
[鋼材の機械的特性]
得られた試験片から、JIS Z 2241、2242の規定に準拠して、引張試験片(平行部径6mmφ)およびシャルピー衝撃試験片(Vノッチ)を採取し、引張試験、衝撃試験を実施した。
引張試験は、降伏点が出る場合には上降伏点、降伏点が出ない場合は0.2%耐力として得られた値を試験片のYSとし、応力ひずみ曲線で最大の値を引張応力として得られた値をTSとした。
また、シャルピー衝撃試験は、各3本実施し、試験温度:0℃における吸収エネルギーV0を求め、その平均値を試験片の値とした。
得られた結果を表5に示す。
Figure 2023049311000006
本発明で規定する鋼材化学組成を有し、本発明で規定する鋼材の製造方法で作成した試験片の板No.1~22は、YSが400MPa以上、TSが500MPa以上、V0が27J以上、ΔK=20MPa・m1/2の時の疲労き裂伝播速度〔da/dN〕が4.26×10-8[m/cycle]以下であり、耐疲労き裂伝播速度に優れた鋼板が得られた。また、この時、表4に示すように金属組織観察で析出物が1種以上存在していた。また、金属組織は、表3に示すように、ベイナイト組織、マルテンサイト組織またはベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織のうちのいずれかの組織か、あるいは、これらの金属組織内に、面積率で50%以下のフェライト組織が存在している組織であった。
しかしながら、板No.23の鋼板は、Cが本発明の規定値を上回るため、シャルピー衝撃試験値が27Jを下回った。板No.24の鋼板は、C、Si、Mnが本発明の規定値を下回るため、金属組織観察で10視野のいずれの視野にも炭化物等の析出物が認められなかった。この結果、YS、TSが本発明の目標値を下回り、シャルピー衝撃試験値が本発明の目標値を下回り、ΔK=20MPa・m1/2の時の疲労き裂伝播速度が4.26×10-8[m/cycle]を上回り、耐疲労き裂伝播特性が劣っていた。板No.25の鋼板は、P、S、N、Alが本発明の規定値を上回るため、シャルピー衝撃試験値が本発明の目標値を下回った。板No.26の鋼板は、Si、Mnが本発明の規定値を上回るため、シャルピー衝撃試験値が本発明の目標値を下回った。板No.27の鋼板は、加熱温度が本発明の規定値を上回るため、シャルピー衝撃試験値が本発明の目標値を下回った。板No.28の鋼板は、加熱温度が本発明の規定値を下回ったため、900℃以上の累積圧下率が十分に得られなかった。この結果、シャルピー衝撃試験値が本発明の目標値を下回った。板No.29の鋼板は、900℃以上の累積圧下率が本発明の規定値を下回ったため、シャルピー衝撃試験値が本発明の目標値を下回った。板No.30の鋼板は、冷却開始温度がAr3点を下回ったため、金属組織が面積率で50%を超えるフェライト組織が存在するベイナイト組織となった。この結果、YS、TSが本発明の目標値を下回り、ΔK=20MPa・m1/2の時の疲労き裂伝播速度が4.26×10-8[m/cycle]を上回り、耐疲労き裂伝播特性に劣っていた。板No.31の鋼板は、冷却速度が本発明の規定値を下回ったため、金属組織が面積率で50%を超えるフェライト組織が存在するパーライト組織となり、YS、TSが本発明の目標値を下回って、金属組織観察で10視野のいずれの視野にも炭化物等の析出物が認められなかった。この結果、ΔK=20MPa・m1/2の時の疲労き裂伝播速度が4.26×10-8[m/cycle]を上回り、耐疲労き裂伝播特性に劣っていた。板No.32の鋼板は、冷却停止温度が本発明の規定値を上回ったため、金属組織が面積率で50%を超えるフェライト組織が存在するパーライト組織となり、YS、TSが本発明の目標値を下回って、金属組織観察で10視野のいずれの視野にも炭化物等の析出物が認められなかった。この結果、ΔK=20MPa・m1/2の時の疲労き裂伝播速度が4.26×10-8[m/cycle]を上回り、耐疲労き裂伝播特性に劣っていた。板No.33の鋼板は、冷却停止温度が本発明の規定値を下回ったため、金属組織観察で10視野のいずれの視野にも炭化物等の析出物が認められなかった。この結果、シャルピー衝撃試験値が本発明の目標値を下回り、ΔK=20MPa・m1/2の時の疲労き裂伝播速度が4.26×10-8[m/cycle]を上回り、耐疲労き裂伝播特性に劣っていた。

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.02~0.40%、Si:0.010~0.500%、Mn:0.05~2.00%、P:0.050%以下、S:0.050%以下、Al:0.100%以下、N:0.1000%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼素材を、1000~1300℃に加熱し、900℃以上で累積圧下率50%以上の圧延を行った後、Ar3点以上から焼入れ処理を施し、100~450℃で冷却を停止することを特徴とする耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
  2. 前記鋼素材の化学組成に加えて、さらに、質量%で、Cu:0.01~2.00%、Ni:0.01~5.00%、Cr:0.01~3.00%、Mo:0.01~1.00%、Nb:0.001~0.100%、V:0.001~0.100%、Ti:0.001~0.100%、B:0.0001~0.0100%、REM:0.001~0.100%のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
  3. 前記焼入れ処理が、Ar3点以上から冷却速度5℃/s以上で冷却することを特徴とする請求項1または2に記載の耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
  4. 前記鋼材は、金属組織が、ベイナイト組織、マルテンサイト組織またはベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織のうちのいずれかの組織であり、さらに、炭化物、窒化物および炭窒化物の析出物のうち1種以上が存在することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
  5. 前記各金属組織と面積率50%以下のフェライト組織が存在していることを特徴とする請求項4に記載の耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
  6. 前記鋼材の板厚が、5~100mmであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
  7. 前記析出物の個数が、前記鋼材の板厚中央部で、1~100個/3.8μm2であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
  8. 前記鋼材の疲労き裂伝播試験における応力拡大係数範囲〔ΔK〕が20MPa・m1/2である場合に、疲労き裂伝播速度〔da/dN〕が、4.26×10-8m/cycle以下であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の耐疲労き裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
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