JP2023041590A - ロボット装置およびその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体の供給を受けて作動する液圧アクチュエータを応答性よく高精度に作動させることができるロボット装置およびその制御方法の提供。【解決手段】本開示のロボット装置は、液体の供給を受けて作動する少なくとも1つの液圧アクチュエータと、電流の供給を受けて液圧アクチュエータに供給される液体の圧力を調整する液圧調整装置と、液圧アクチュエータに供給される液体の目標圧力を設定すると共に、目標圧力と液圧アクチュエータに供給される液体の流量とから電流指令値を算出し、当該電流指令値に基づいて液圧調整装置を制御する制御装置とを含む。【選択図】図8
Description
本開示は、液体の供給を受けて作動する少なくとも1つの液圧アクチュエータを含むロボット装置およびその制御方法に関する。
従来、両端部が栓体で閉じられたゴムチューブと、当該ゴムチューブを覆う網体とを有する2つのゴム人工筋(液圧アクチュエータ)を含む関節装置(ロボット装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。この関節装置は、2つのゴム人工筋に加えて、基台と、支持部材を介して基台により支持されたプーリと、プーリに固定されたアームと、プーリの回転中立に対して両側に位置するように基台に取り付けられると共にゴム人工筋の一端がそれぞれ連結される2つの係止ブラケットと、2つのゴム人工筋の他端に連結されると共にプーリに巻き掛けられるロープとを含む。また、各ゴム人工筋の出入口は、導電性作動液を圧送する液圧源に圧力制御弁を介して接続されている。これにより、各ゴム人工筋は、出入口に作動液が流入する際に軸方向に収縮しながら径方向に膨張し、出入口から作動液が流出する際に径方向に収縮しながら軸方向に伸長する。
なお、従来、サーボモータによって垂直方向に旋回位置決めされるロボットアームとして、アームと柱の間でロボットアームの重量の一部を負担するように作用する油圧バランサを含むものが知られている(例えば、特許文献2参照)。このロボットアームでは、第1アンプによってサーボモータのロボットアームの上向き旋回時の負荷に比例する入力変動が増幅され、当該第1アンプの出力に応じて電磁比例リリーフ付第1減圧弁により調圧された油圧が油圧バランサの後室に供給される。また、第2アンプによってサーボモータのロボットアームの下向き旋回時の負荷に比例する入力変動が増幅され、当該第2アンプの出力に応じて電磁比例リリーフ付第2減圧弁により調圧された油圧が油圧バランサの前室に供給される。これにより、サーボモータの回転方向に対応して油圧バランサの作用方向が自動的に切り換えられ、サーボモータの負荷に比例して油圧バランサの出力が制御される。
上記従来の間接装置では、アームの回転角が所望の値になるように各圧力制御弁(電磁作用部)への指令信号(電流指令値)が設定される。ただし、圧力制御弁への指令信号の設定の仕方によっては、液圧アクチュエータを応答性よく作動させることが困難となり、アームの回転角を精度よく狙いの値に設定し得なくなるおそれがある。
そこで、本開示は、液体の供給を受けて作動する液圧アクチュエータを応答性よく高精度に作動させることができるロボット装置およびその制御方法の提供を主目的とする。
本開示のロボット装置は、液体の供給を受けて作動する少なくとも1つの液圧アクチュエータを含むロボット装置において、電流の供給を受けて前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の圧力を調整する液圧調整装置と、前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の目標圧力を設定すると共に、前記目標圧力と前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の流量とに基づいて電流指令値を設定し、前記電流指令値に基づいて前記液圧調整装置を制御する制御装置とを含むものである。
本開示のロボット装置では、液圧アクチュエータに供給される液体の目標圧力と当該液圧アクチュエータに供給される液体の流量とに基づいて電流指令値が設定され、当該電流指令値に基づいて液圧調整装置が制御される。これにより、流量の過不足により液圧アクチュエータの動作の応答性が悪化するのを抑制しつつ、液圧アクチュエータに要求に応じた圧力の液体を供給することができる。この結果、本開示のロボット装置では、液体の供給を受けて作動する液圧アクチュエータを応答性よく高精度に作動させることが可能となる。
本開示のロボット装置の制御方法は、液体の供給を受けて作動する少なくとも1つの液圧アクチュエータと、電流の供給を受けて前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の圧力を調整する液圧調整装置とを含むロボット装置の制御方法であって、前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の目標圧力を設定すると共に、前記目標圧力と前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の流量とに基づいて電流指令値を設定し、前記電流指令値に基づいて前記液圧調整装置を制御するものである。
かかる方法によれば、液体の供給を受けて作動する液圧アクチュエータを応答性よく高精度に作動させることが可能となる。
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示のロボット装置1を示す概略構成図である。同図に示すロボット装置1は、ロボットアーム2と、流体供給装置(液体供給装置)10とを含む。本実施形態において、ロボット装置1は、指定された目的位置まで自走可能な、いわゆる無人搬送車(AGV)または自律走行搬送ロボット(AMR)である搬送台車20に搭載される。ただし、ロボット装置1は、搬送台車20に搭載されるものに限られず、予め定められた設置箇所に定置されてもよい。
ロボットアーム2は、把持部(手先)としてのハンド部(ロボットハンド)4と、複数(本実施形態では、3つ)のアーム(リンク)5a,5b,5cと、複数(本実施形態では、3つ)の関節(ピン結合部)Ja,Jb,Jcと、関節Ja,Jb,Jcごとに例えば偶数個(本実施形態では、2つ)ずつ設けられる人工筋肉としての複数の流体アクチュエータ(液圧アクチュエータ)M1,M2,M3,M4,M5,M6とを含む多関節アームである。ロボットアーム2のハンド部4は、最も手先側のアーム5cに取り付けられており、対象となる物体(以下、「把持対象」という。)を把持するようにロボット装置1の制御装置100(図5参照)により制御される。また、流体供給装置10は、例えば上端および下端が閉鎖された筐体であって内部に作動油を貯留可能なタンク11を含み、各流体アクチュエータM1-M6に流体(作動流体)としての作動油(液体)を給排するように制御装置100により制御される。これにより、ロボットアーム2を油圧(液圧)により駆動してハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
ロボットアーム2の各流体アクチュエータM1-M6は、図2に示すように、作動油の圧力によって膨張するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含む、いわゆるマッキベン型の人工筋肉である。チューブTは、高い耐油性をもった例えばゴム材等の弾性材により円筒状に形成されており、当該チューブTの両端部は、封止部材Cにより封止されている。チューブTの一端側(図2中右端側)の封止部材Cには、作動油の出入口IOが形成されている。編組スリーブSは、所定方向に配向された複数のコードを互いに交差するように編み込むことにより円筒状に形成されており、軸方向および径方向に収縮可能である。編組スリーブSを形成するコードとしては、繊維コード、高強度繊維、極細のフィラメントによって構成される金属製コード等を採用することができる。このような流体アクチュエータM1-M6のチューブT内に上記出入口IOから作動油を供給して当該チューブT内の作動油の圧力を高めることで、チューブTは、編組スリーブSの作用により径方向に膨張すると共に軸方向に収縮し、内部の作動油の圧力に応じた収縮力を発生する。
図1に示すように、ロボットアーム2の複数のアーム5a,5b,5cのうち、最も基端側(流体供給装置10側)のアーム5a(第1リンク)は、図示しない軸受等と共に関節Jaを構成する第1連結軸A1a(関節軸)を介して流体供給装置10のタンク11(第2リンク)の上部により回動自在に支持される。また、中間のアーム5b(第2リンク)は、図示しない軸受等と共に関節Jbを構成する第1連結軸A1b(関節軸)を介してアーム5a(第1リンク)により回動自在に支持される。更に、手先側のアーム5c(第2リンク)は、図示しない軸受等と共に関節Jcを構成する第1連結軸A1c(関節軸)を介してアーム5b(第1リンク)により回動自在に支持される。
アーム5aの関節Jb側(手先側)の端部には、支持部6aが当該アーム5aの長手方向と直交する方向に延在するように固定または一体化されている。支持部6aの一端は、支持軸を介して流体アクチュエータM1の関節Jb側(手先側)の封止部材Cを回動自在に支持し、支持部6aの他端は、支持軸を介して流体アクチュエータM2の関節Jb側の封止部材Cを回動自在に支持する。また、アーム5aの関節Ja側(基端側)の端部には、図1および図3に示すように、第1連結軸A1aとは異なる第2連結軸A2aを介してレバー部材7a(第3リンク)が回動自在に連結されている。レバー部材7aには、第3連結軸A3aを介して連接部材8a(第4リンク)が回動自在に連結されており、連接部材8aは、第1連結軸A1aとは異なる第4連結軸A4aを介してタンク11の上部に回動自在に連結される。これにより、基端側のアーム5a、タンク11、レバー部材7aおよび連接部材8aは、タンク11を固定節とする4節リンク機構FLa(両てこ機構)を構成する。本実施形態において、第1連結軸A1aと第2連結軸A2aとの軸間距離L12aと、第2連結軸A2aと第3連結軸A3aとの軸間距離L23aと、第3連結軸A3aと第4連結軸A4aとの軸間距離L34aと、第1連結軸A1aと、第4連結軸A4aとの軸間距離L14a”とは、L12a+L14a<L23a+L34aという関係を満たす。
更に、レバー部材7aには、流体アクチュエータM1,M2の関節Ja側(基端側)の封止部材Cが回動自在に連結される。流体アクチュエータM1の関節Ja側の封止部材Cは、第2および第3連結軸A2a,A3aとは異なる第5連結軸A5aを介してレバー部材7aに回動自在に連結される。これに対して、流体アクチュエータM2の関節Ja側の封止部材Cは、第2連結軸A2aに関して第5連結軸A5aとは反対側に配置される第6連結軸A6aを介してレバー部材7aに回動自在に連結される。これにより、アーム5aの両側には、流体アクチュエータM1,M2が当該アーム5aと略平行に配列される。アーム5aの一側(図1における上側)に配置される流体アクチュエータM1は、関節Jaに対応した第1の人工筋肉として機能し、アーム5aの他側(図1における下側)に配置される流体アクチュエータM2は、当該第1の人工筋肉と対をなす関節Jaに対応した第2の人工筋肉として機能する。本実施形態において、レバー部材7aおよび連接部材8aの第3連結軸A3aは、第2連結軸A2aに関して第5連結軸A5aとは反対側(第2連結軸A2aと第6連結軸A6aとの間)に配置され、第3連結軸A3aと第5連結軸A5aとの軸間距離は、第2連結軸A2aと第5連結軸A5aとの軸間距離よりも長く定められている。
また、基端側のアーム5aには、図1に示すように、第2の支持部6bが上記支持部6aとレバー部材7aの間でアーム5aの長手方向と直交する方向に延在するように固定または一体化されている。支持部6bの一端は、支持軸を介して流体アクチュエータM3の関節Ja側(基端側)の封止部材Cを回動自在に支持し、支持部6bの他端は、支持軸を介して流体アクチュエータM4の関節Ja側の封止部材Cを回動自在に支持する。更に、アーム5aの関節Jb側(手先側)の端部には、図1および図4に示すように、支持部6aよりも関節Jb側で第1連結軸A1bとは異なる第2連結軸A2bを介してレバー部材7b(第3リンク)が回動自在に連結されている。レバー部材7bには、第3連結軸A3bを介して連接部材8b(第4リンク)が回動自在に連結されており、連接部材8bは、第1連結軸A1bとは異なる第4連結軸A4bを介して第2リンクとしての中間のアーム5bの関節Jb側の端部に回動自在に連結される。これにより、基端側のアーム5a、中間のアーム5b、レバー部材7bおよび連接部材8bは、アーム5aを固定節とする4節リンク機構FLb(両てこ機構)を構成する。本実施形態において、第1連結軸A1bと第2連結軸A2bとの軸間距離L12bと、第2連結軸A2bと第3連結軸A3bとの軸間距離L23bと、第3連結軸A3bと第4連結軸A4bとの軸間距離L34bと、第1連結軸A1bと第4連結軸A4bとの軸間距離L14bとは、L12b+L14b<L23b+L34bという関係を満たす。
更に、レバー部材7bには、流体アクチュエータM3,M4の関節Jb側(手先側)の封止部材Cが回動自在に連結される。流体アクチュエータM3の関節Jb側の封止部材Cは、第2および第3連結軸A2b,A3bとは異なる第5連結軸A5bを介してレバー部材7bに回動自在に連結される。これに対して、流体アクチュエータM4の関節Jb側の封止部材Cは、第2連結軸A2bに関して第5連結軸A5bとは反対側に配置される第6連結軸A6bを介してレバー部材7bに回動自在に連結される。これにより、アーム5aの両側には、更に流体アクチュエータM3,M4が当該アーム5aと略平行に配列される。アーム5aの一側(図1における上側)に配置される流体アクチュエータM3は、関節Jbに対応した第1の人工筋肉として機能し、アーム5aの他側(図1における下側)に配置される流体アクチュエータM4は、当該第1の人工筋肉と対をなす関節Jbに対応した第2の人工筋肉として機能する。本実施形態において、レバー部材7bおよび連接部材8bの第3連結軸A3bは、第2連結軸A2bに関して第6連結軸A6bとは反対側に配置され、第3連結軸A3bと第6連結軸A6bとの軸間距離は、第2連結軸A2bと第6連結軸A6bとの軸間距離よりも長く定められている。
また、中間のアーム5bの関節Jb側の端部には、図1に示すように、支持部6cが当該アーム5bの長手方向と直交する方向に延在するように固定または一体化されている。支持部6cの一端は、支持軸を介して流体アクチュエータM5の関節Jb(基端側)の封止部材Cを回動自在に支持し、支持部6cの他端は、支持軸を介して流体アクチュエータM6の関節Jb側の封止部材Cを回動自在に支持する。更に、アーム5bの関節Jc側(手先側)の端部には、当該関節Jcの第1連結軸A1cとは異なる第2連結軸A2cを介してレバー部材7c(第3リンク)が回動自在に連結されている。レバー部材7cには、第3連結軸A3cを介して連接部材8c(第4リンク)が回動自在に連結されており、連接部材8cは、第1連結軸A1cとは異なる第4連結軸A4cを介して第2リンクとしての手先側のアーム5cに回動自在に連結される。これにより、中間のアーム5b、手先側のアーム5c、レバー部材7cおよび連接部材8cは、中間のアーム5bを固定節とする4節リンク機構FLc(両てこ機構)を構成する。本実施形態において、1連結軸A1cと第2連結軸A2cとの軸間距離L12cと、第2連結軸A2cと第3連結軸A3cとの軸間距離L23cと、第3連結軸A3cと第4連結軸A4cとの軸間距離L34cと、第1連結軸A1cと第4連結軸A4cとの軸間距離L14cとは、L12c+L14c<L23c+L34cという関係を満たす。
更に、レバー部材7cには、流体アクチュエータM5,M6の関節Jc側(手先側)の封止部材Cが回動自在に連結される。流体アクチュエータM5の関節Jc側の封止部材Cは、第2および第3連結軸A2c,A3cとは異なる第5連結軸A5cを介してレバー部材7cに回動自在に連結される。これに対して、流体アクチュエータM6の関節Jc側の封止部材Cは、第2連結軸A2cに関して第5連結軸A5cとは反対側に配置される第6連結軸A6cを介してレバー部材7cに回動自在に連結される。これにより、関節Jbの第1連結軸A1bから関節Jc側(手先側)に延びるアーム5bの両側には、流体アクチュエータM5,M6が当該アーム5bと略平行に配列される。そして、アーム5bの一側(図1における左側)に配置される流体アクチュエータM5は、関節Jcに対応した第1の人工筋肉として機能し、アーム5bの他側(図1における右側)に配置される流体アクチュエータM6は、当該第1の人工筋肉と対をなす関節Jcに対応した第2の人工筋肉として機能する。本実施形態において、レバー部材7cおよび連接部材8cの第3連結軸A3cは、第2連結軸A2cに関して第6連結軸A6cとは反対側に配置され、第3連結軸A3cと第6連結軸A6cとの軸間距離は、第2連結軸A2cと第6連結軸A6cとの軸間距離よりも長く定められている。
また、本実施形態において、各アーム5a,5b,5cは、中空に形成されており、各アーム5a,5b,5cの内部には、流体供給管としての図示しない複数のホースが配置される。各ホースは、対応する流体アクチュエータM1-M6の一方の封止部材Cに形成された出入口IOに接続され、各流体アクチュエータM-M6のチューブT内には、当該ホースを介して流体供給装置10からの作動油(油圧)が供給される。従って、制御装置100により流体供給装置10を制御することで、第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1等のチューブT内の油圧と、第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2等のチューブT内の油圧とを互いに異ならせることができる。
これにより、互いに拮抗するように配置された2つの流体アクチュエータM1,M2等すなわち対をなす(1組の)第1および第2の人工筋肉によりレバー部材7a,7bまたは7cをアーム5aまたは5bに対して回動させ、レバー部材7a,7bまたは7cから連接部材8a,8bまたは8cを介して第2リンクとしてのタンク11、アーム5bまたは5cにトルクを伝達することができる。この結果、アーム5a,5bまたは5cをタンク11、アーム5aまたは5bに対して回動させ、関節Ja,Jb,Jcの関節角度θ1,θ2,θ3(図1参照)すなわちアーム5a,5bまたは5cのタンク11、アーム5aまたは5bに対する回動角度を変化させることが可能となる。本実施形態において、第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1等と、当該第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2等とは、チューブTが自然状態から所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮した状態を初期状態として流体供給装置10からの油圧により駆動される。
なお、各関節Ja,Jb,Jcに対応した第1および第2の人工筋肉は、それぞれ2つ以上(同数)の流体アクチュエータにより構成されてもよく、第1の人工筋肉としての流体アクチュエータの数と、第2の人工筋肉としての流体アクチュエータの数とが異なっていてもよい。更に、本実施形態において、1つの関節Ja,JbまたはJcに対して設けられる複数(2つ)の流体アクチュエータM1,M2等は、互いに同一の諸元を有するが、第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1等の諸元と、第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2等の諸元とが異なっていてもよい。
上記流体アクチュエータM1-M6に作動油を供給するロボット装置1の流体供給装置10は、図1に示すように、タンク11に加えて、当該タンク11を上下方向に延びる回転軸(図1における一点鎖線参照)の周りに回転自在に支持するベース部12を含む。ベース部12は、ロボットアーム2およびタンク11の下方に位置するように搬送台車20に搭載(固定)される。また、ベース部12は、タンク11を上記回転軸の周りに所定角度(例えば360°)だけ回転させる図示しない回転駆動ユニットを支持している。回転駆動ユニットを作動させることで、ロボットアーム2を当該回転軸の周りにタンク11と一体に回転させることが可能となる。本実施形態において、回転駆動ユニットは、流体供給装置10から供給される油圧により駆動される揺動モータである。ただし、当該回転駆動ユニットは、電動モータやギヤ機構等を含むものであってもよい。
更に、流体供給装置10は、図5に示すように、ポンプ13(流体供給源)と、タンク11内に配置される図示しないバルブボディと、リリーフ弁RV(圧力制御弁)と、逆止弁CVと、アキュムレータ14(蓄圧器)と、液圧調整装置としての複数のリニアソレノイドバルブ151,152,153,154,155,156とを含む。
ポンプ13は、制御装置100により制御される電動ポンプであり、タンク11内に貯留された作動油を吸入して吐出口から吐出(圧送)する。本実施形態において、ポンプ13は、タンク11内に配置されるポンプ部と、電動モータや減速ギヤ機構、制御装置100により制御されるインバータ等の駆動回路等を有すると共にタンク11内またはタンク11外に配置される駆動ユニット(何れも図示省略)とを含む。リリーフ弁RVは、ポンプ13により吐出された作動油の圧力を予め定められた一定の上限圧Plim(上限値、本実施形態では、例えば6-7MPa程度)を超えないように制限するものである。
逆止弁CVは、ポンプ13(およびリリーフ弁RV)側からの作動油を油路LLに流出させると共に、油路LL側からポンプ13(およびリリーフ弁RV)側への作動油の流通を規制する。アキュムレータ14は、逆止弁CVの下流側で油路LLに接続(直結)された作動油の出入口を有しており、ポンプ13側からの油圧を蓄える。アキュムレータ14としては、最高作動圧が上記上限圧Plim以上であるものが用いられる。また、油路LLには、逆止弁CVの下流側かつアキュムレータ14の上流側で当該油路LLにおける作動油の圧力(元圧)を検出する元圧センサPSが設置されている。
リニアソレノイドバルブ151-156は、共通の構成を有しており、それぞれバルブボディ内に配置されると共に制御装置100により制御される。本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151は、流体アクチュエータM1への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ152は、流体アクチュエータM2への油圧(駆動圧)を調整する。また、リニアソレノイドバルブ153は、流体アクチュエータM3への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ154は、流体アクチュエータM4への油圧(駆動圧)を調整する。更に、リニアソレノイドバルブ155は、流体アクチュエータM5への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ156は、流体アクチュエータM6への油圧(駆動圧)を調整する。
図5に示すように、リニアソレノイドバルブ151-156は、制御装置100により通電制御される電磁部15eと、バルブボディにより保持されるスリーブ内に軸方向に移動可能に配置されるスプール15sと、スプール15sを電磁部15e側(出力ポート15o側から入力ポート15i側、図5中上側)に付勢するスプリング15spとを含む。更に、リニアソレノイドバルブ151-156は、入力ポート15iと、出力ポート15oと、出力ポート15oに連通するフィードバックポート15fと、入力ポート15iおよび出力ポート15oと連通可能なドレンポート15dとを含む。リニアソレノイドバルブ151-156の入力ポート15iは、アキュムレータ14の下流側で油路LLにそれぞれ連通する。また、リニアソレノイドバルブ152-156の出力ポート15oは、バルブボディに形成された油路やホース等を介して対応する流体アクチュエータM2-M6(チューブT)の作動油の出入口IOに連通する。更に、リニアソレノイドバルブ151-156のドレンポート15dは、それぞれ油路LDを介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。
本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151-156は、電磁部15eに電流が供給される際に開弁する常閉弁であり、各電磁部15eは、印加される電流に応じて入力ポート15iと出力ポート15oとを連通させるようにスプール15sを軸方向に移動させる。これにより、電磁部15e(コイル)への給電により発生する推力と、スプリング15spの付勢力と、出力ポート15oからフィードバックポート15fに供給された油圧(駆動圧)によりスプール15sに作用する電磁部15e側への推力とをバランスさせることで、入力ポート15iに供給されたポンプ13(およびリリーフ弁RV)側からの作動油を所望の圧力に調整して出力ポート15oから流出させることが可能となる。
また、流体アクチュエータM1-M6側に供給される油圧(信号圧または駆動圧)をリニアソレノイドバルブ151-156にフィードバックすることで、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6により駆動されるロボットアーム2に当該流体アクチュエータM1-M6以外からの外力が加えられたときに、当該外力による流体アクチュエータM1-M6のチューブTの体積変化に応じた油圧の変動を吸収することができる。加えて、当該外力が無くなった後には、速やかに要求に応じた油圧(駆動圧)を流体アクチュエータM1-M6に供給することが可能となる。
ロボット装置1の制御装置100は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータや各種ロジックIC等(何れも図示省略)を含む。制御装置100は、上記元圧センサPSや、リニアソレノイドバルブ151-156等の電源の電圧を検出する図示しない電圧センサ等の検出値を入力する。また、制御装置100は、元圧センサPSにより検出される油路LLにおける油圧(元圧)が目標値になるように、ポンプ13を制御する。更に、制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eに供給される電流を制御する。また、制御装置100は、それぞれ対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eを流れる電流を検出する複数の電流検出部を含み(何れも図示省略)、各電流検出部により検出される電流を監視する。
図6は、上述の制御装置100におけるリニアソレノイドバルブ151-156の制御部を示すブロック図である。同図に示すように、制御装置100は、それぞれコンピュータのCPUやROM,RAMといったハードウェアと、当該コンピュータにインストールされた制御プログラムといったソフトウェアとの少なくとも何れか一方により構築される、目標位置設定部101と、現在位置導出部102と、トルク演算部103および重力補償部104を含む目標トルク設定部105と、目標剛性設定部106と、収縮率設定部107、収縮力算出部108および目標圧力導出部109を含む目標圧力設定部110と、容積推定部118と、流量推定部119と、電流指令値設定部111と、バルブ駆動部112とを含む。
目標位置設定部101は、ハンド部4の把持対象の位置や、ユーザにより与えられるハンド部4の移動中の目標速度および目標加速度に基づいて、当該ハンド部4の最終的な目標位置である目標到達位置(3次元座標)と、ハンド部4の初期位置から目標到達位置までの軌道であって複数の目標位置すなわち経由位置(3次元座標)を含む目標軌道とを設定する。現在位置導出部102は、ロボットアーム2の関節Ja-Jcの関節角度θ1,θ2,θ3とロボットアーム2(ロボット装置1)の諸元(アーム5a-5c等の寸法)とに基づいて、ハンド部4(予め定められた基準点)の現在位置(3次元座標)を導出する。関節Ja-Jcの関節角度θ1-θ3は、ロボットアーム2に設けられた複数の関節角度センサ9(図6参照)の対応する何れかにより検出される。以下、“i”を関節の番号として(ただし、本実施形態において、i=1,2,3である。)、i番目の関節を“関節Ji”といい、関節Jiの関節角度を“θi”という。
目標トルク設定部105のトルク演算部103は、関節Ja-Jcごとに、ハンド部4が現在位置から目標位置まで移動するように関節Jiを介して連結された2つのアーム5a,5b等を相対的に回動させる関節トルクTj(i)を算出する。目標トルク設定部105の重力補償部104は、関節Ja-Jcごとに、関節角度θ1-θ3とロボットアーム2(ロボット装置1)の諸元(アーム5a-5c等の寸法)とに基づいてロボットアーム2の姿勢を維持するのに必要な重力補償トルクTc(i)を算出する。そして、目標トルク設定部105は、関節トルクTj(i)と重力補償トルクTc(i)との和を、関節Jiを介して連結される2つのアーム5a,5b等を相対的に回動させるための関節トルクTj(i)の目標値(目標駆動力)である目標トルクTtag(i)に設定する。
目標剛性設定部106は、少なくともロボット装置1すなわちハンド部4の目標位置に基づいて、関節Ja-Jcごとに、関節Jiがもつべき剛性、すなわち関節Jiを介して連結される2つのアーム5a,5b等(リンク)を単位角度だけ相対的に回動させるのに必要な力(トルク)であって、当該2つのアーム5a,5b等を相対的に回動させようとする外力に対する関節Jiの動きにくさを示す目標剛性R(i)を設定する。より詳細には、目標剛性設定部106は、ハンド部4等を把持対象等まで移動させる際に、当該ハンド部4等と把持対象等との位置関係に応じて目標剛性R(i)を変化させ、ハンド部4等を把持対象等に接触する前に目標剛性R(i)を低下させる。更に、目標剛性設定部106は、ハンド部4の移動速度および加速度の少なくとも何れか一方に応じて目標剛性R(i)を変化させると共に、ロボット装置1の周囲(例えばロボット装置1が配置される室内あるいは柵の内側といったロボットアーム2の動作範囲を含む領域)に人がいる場合、目標剛性R(i)を低下させる。なお、各関節Jiの目標剛性R(i)は、少なくともロボット装置1すなわちハンド部4の現在位置に基づいて設定されてもよい。
目標圧力設定部110の収縮率設定部107は、関節Ja-Jcごとに、ハンド部4の現在位置に応じた関節Jiの関節角度θiに基づいて、当該関節Jiに対応した上記第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5の収縮率Cr1(i)と、関節Jiに対応した上記第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6の収縮率Cr2(i)とを設定する。収縮率Cr1(i),Cr2(i)は、それぞれ該当する流体アクチュエータM1-M6のチューブTの軸方向における自然長に対する収縮したチューブTの軸長の割合を示し、収縮率=(1-収縮時のチューブTの軸長/チューブTの自然長)×100として算出される。
目標圧力設定部110の収縮力算出部108は、関節Ja-Jcごとに、目標トルク設定部105により設定された目標トルクTtag(i)と、目標剛性設定部106により設定された目標剛性R(i)とに基づいて、関節Jiを介して連結された2つのアーム5a,5b等を目標トルクTtag(i)で相対的に回動させる際に当該関節Jiに対応した複数(一対)の流体アクチュエータM1,M2等に要求される収縮力Fc1(i),Fc2(i)を算出する。収縮力Fc1(i)は、各関節Jiに対応した第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5のチューブTの収縮により発生させるべき力である。また、収縮力Fc2(i)は、各関節Jiに対応した第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6のチューブTの収縮により発生させるべき力である。
目標圧力設定部110の目標圧力導出部109は、関節Ja-Jcごとに、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6の静特性から収縮率設定部107により設定された収縮率Cr1(i)と収縮力算出部108により算出された収縮力Fc1(i)とに対応した圧力を導出して第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5の目標圧力Ptag1(i)に設定する。また、目標圧力導出部109は、関節Ja-Jcごとに、当該静特性から収縮率設定部107により設定された収縮率Cr2(i)と収縮力算出部108により算出された収縮力Fc2(i)とに対応した圧力を導出して第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6の目標圧力Ptag2(i)に設定する。
容積推定部118は、関節Ja-Jcごとに、目標圧力設定部110(目標圧力導出部109)により設定(導出)された目標圧力Ptag1(i)の前回値と、収縮率設定部107により設定された収縮率Cr1(i)とに基づいて関節Jiに対応した第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5のチューブTの容積V1(i)を推定(導出)する。また、容積推定部118は、関節Ja-Jcごとに、目標圧力設定部110(目標圧力導出部109)により設定(導出)された目標圧力Ptag2(i)の前回値と、収縮率設定部107により設定された収縮率Cr2(i)とに基づいて関節Jiに対応した第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6のチューブTの容積V2(i)を推定(導出)する。
流量推定部119は、関節Ja-Jcごとに、容積推定部118により推定(導出)された容積V1(i)の前回値と今回値とに基づいて関節Jiに対応した第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5のチューブTに供給される作動油の流量Q1(i)を推定(算出)する。また、流量推定部119は、関節Ja-Jcごとに、容積推定部118により推定(導出)された容積V2(i)の前回値と今回値とに基づいて関節Jiに対応した第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6のチューブTに供給される作動油の流量Q2(i)を推定(算出)する。
電流指令値設定部111は、目標圧力設定部110により設定された目標圧力Ptag1(i)と、流量推定部119により推定された流量Q1(i)とに基づいて、関節Jiに対応した第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5への油圧を調整するリニアソレノイドバルブ151,153または155(電磁部15e)に対する電流指令値(目標電流)を設定する。また、電流指令値設定部111は、目標圧力設定部110により設定された目標圧力Ptag2(i)と、流量推定部119により推定された流量Q2(i)とに基づいて、関節Jiに対応した第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6への油圧を調整するリニアソレノイドバルブ152,154または156(電磁部15e)に対する電流指令値(目標電流)を設定する。
バルブ駆動部112は、図示しない上述の電流検出部により検出される電流が電流指令値に一致するようにフィードフォワード制御(あるいはフィードフォワード制御およびフィードバック制御)により目標電圧を設定すると共に、目標電圧をPWM信号に変換する。更に、バルブ駆動部112は、当該PWM信号に基づいて図示しないスイッチング素子(トランジスタ)をスイッチング制御してリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eに電流を印加する。これにより、リニアソレノイドバルブ151-156は、目標圧力Ptag1(i)またはPtag2(i)に応じた油圧を生成するように制御される。
続いて、図7から図14を参照しながら、上述のロボット装置1の制御手順について説明する。以下、ロボット装置1のハンド部4を把持対象まで移動させ、ハンド部4に把持対象を把持させて移送させるケースを例にとってロボット装置1の制御手順について説明する。
本実施形態において、ロボット装置1の制御装置100は、ロボットアーム2の手先すなわちハンド部4と把持対象とが仮想的なバネおよびダンパを介して連結され、当該仮想的なバネおよびダンパが発生する引張力Ftによりハンド部4が現在位置から把持対象あるいは当該把持対象の移送先まで引っ張られるとの仮定のもとで設計されている。かかる仮定のもとでは、仮想的なバネおよびダンパによる引張力Ft=(fx,fy,fz)が、ハンド部4(予め定められた基準点)の目標位置(xd(t),yd(t),zd(t))と当該ハンド部4の現在位置(x(t),y(t),z(t))とから、いわゆるPD制御(フィードバック制御)の関係式である次式(1)のように、目標位置と現在位置との差にゲインKpx,KpyまたはKpzを乗じた比例項と、ゲインKvx,KvyまたはKvzを含む速度項との和として表すことができる。
また、ハンド部4が把持対象に接触した状態では、把持対象に対する手先の速度はゼロになるから、上記式(1)より、ハンド部4が仮想的なバネおよびダンパによる引っ張られることで把持対象との接触後に当該把持対象に加える押圧力Fpは、接触後の目標位置と把持対象の位置(ハンド部4と把持対象との接触位置)とから求めることができる。従って、ハンド部4の最終的な目標到達位置(xr,yr,zr)は、接触後にハンド部4から把持対象に加えられる押圧力Fp=(fpx,fpy,fpz)と、把持対象の位置(接触位置)(xo,yo,zo)と、ゲインKpx,Kpy,Kpzとから、次式(2)のように表すことができる。
そして、ロボット装置1では、ロボットアーム2の作動開始に先立って(ハンド部4の移動開始前に)、図7のルーチンが制御装置100の目標位置設定部101により実行され、ハンド部4の最終的な目標到達位置(xr,yr,zr)と、初期位置から目標到達位置(xr,yr,zr)までのハンド部4の目標軌道とが設定される。図7のルーチンの開始に際して、制御装置100の目標位置設定部101は、把持対象の位置(xo,yo,zo)と、ユーザにより与えられているハンド部4の移動中の目標速度および目標加速度を取得する(ステップS1)。把持対象の位置(xo,yo,zo)は、それが予め判明している場合、ロボット装置1のユーザにより制御装置100に入力されてもよく、ロボットアーム2の作動開始前にカメラ等により取得されたデータから導出されたものであってよい。
次いで、目標位置設定部101は、上記式(2)に従って、ハンド部4と把持対象との接触後に当該ハンド部4から把持対象に予め定められた押圧力Fpが加えられるハンド部4の目標到達位置(xr,yr,zr)を設定する(ステップS2)。ロボット装置1において、式(2)における押圧力Fp=(fpx,fpy,fpz)は、把持対象の材質や強度、サイズといった諸元から、当該把持対象を破壊することなくハンド部4を把持対象に接触させるように把持対象の位置(xo,yo,zo)のばらつき等を考慮して予め定められる。更に、目標位置設定部101は、ステップS1にて取得したハンド部4の目標速度および目標加速度と、ステップS2にて設定した目標到達位置(xr,yr,zr)とに基づいて、予め定められた数(複数)の目標位置すなわち経由位置(3次元座標)を含むハンド部4の目標軌道を設定し(ステップS3)、図7のルーチンを終了させる。
また、ロボット装置1では、把持対象の位置に応じた目標到達位置および目標軌道が設定された後、把持対象の移送先(把持対象の載置面)に応じた目標到達位置および目標軌道を設定するために再度図7のルーチンが目標位置設定部101により実行される。この際、目標位置設定部101は、ハンド部4により把持された把持対象(手先)と載置面(対象)との接触後に当該ハンド部4から把持対象を介して載置面(対象)に予め定められた押圧力Fpが加えられるハンド部4の目標到達位置(xr,yr,zr)を設定する。
図8は、目標到達位置および目標軌道が設定された後、制御装置100により実行されるロボットアーム制御ルーチンを例示するフローチャートである。図8のルーチンは、図7のルーチンの完了後、ユーザによる実行指示に応じて、制御装置100により所定時間(例えば10ms程度)おきに繰り返し実行される。
図8のルーチンの開始に際して、制御装置100のトルク演算部103(目標トルク設定部105)および目標剛性設定部106は、それぞれ目標位置設定部101により設定された目標位置を取得する(ステップS10)。ステップS10にて取得される目標位置は、目標軌道における1番目の目標位置または図8のルーチンの前回実行時に取得された目標位置である。また、制御装置100の現在位置導出部102および重力補償部104は、複数の関節角度センサ9により取得された関節Ja-Jcの関節角度θ1-θ3を取得する(ステップS20)。現在位置導出部102は、取得した関節角度θ1-θ3とロボットアーム2(ロボット装置1)の諸元とに基づいて、ハンド部4の現在位置(3次元座標)を導出し(ステップS30)、導出した現在位置をトルク演算部103に与える。
制御装置100のトルク演算部103(目標トルク設定部105)は、ハンド部4の現在位置が前回位置から変化しているか否か(ハンド部4が移動しているか否か)を判定する(ステップS40)。トルク演算部103は、ハンド部4の現在位置が前回位置から変化していると判定した場合(ステップS40:YES)、更に、当該現在位置が目標位置に実質的に一致しているか否かを判定する(ステップS50)。現在位置が目標位置に実質的に一致していると判定した場合(ステップS50:YES)、トルク演算部103は、ステップS10にて取得した目標位置の次の目標位置を取得する(ステップS60)。当該次の目標位置は、目標剛性設定部106にも与えられ、目標剛性設定部106は、取得した目標位置等に基づいて、各関節Jiの目標剛性R(i)を設定する。また、ハンド部4の現在位置が目標位置に実質的に一致していない場合、ステップS60の処理は、スキップされる。
ステップS50またはS60の処理の後、制御装置100の目標トルク設定部105は、各関節Jiについての目標トルクTtag(i)を設定する(ステップS70)。図9は、ステップS70における目標トルク設定部105による目標トルクTtag(i)の設定手順を例示するフローチャートである。同図に示すように、目標トルク設定部105のトルク演算部103は、まず、ステップS10にて取得したハンド部4の目標位置に基づいて上述のゲインKpx,KpyおよびKpzを設定する(ステップS700)。ステップS700において、トルク演算部103は、ステップS10にて取得した目標位置が予め定められた目標位置(例えば、ハンド部4が減速し始める位置)になるまでゲインKpx,KpyおよびKpzの各々を予め定められた通常値に設定し、ステップS10にて取得した目標位置が予め定められた目標位置になった以降、ゲインKpx,KpyおよびKpzの各々を上記通常値よりも小さい値に設定する。
次いで、トルク演算部103は、ステップS10にて取得したハンド部4の目標位置と、ステップS30にて取得したハンド部4の現在位置とに基づいて、上記式(1)から上述の仮想的なバネおよびダンパによる引張力Ft=(fx,fy,fz)を算出する(ステップS710)。なお、ステップS710では、次式(3)から引張力Ft=(fx,fy,fz)が算出されてもよく、式(1)および式(3)が併用されてもよい。式(3)を用いることで、ロボットアーム2(各関節Ji)の動き出しをよりスムースにすることができる。
また、トルク演算部103は、別途設定される人感フラグを取得し(ステップS720)、人感フラグがオフされているか否かを判定する(ステップS730)。人感フラグは、ロボット装置1の設置箇所あるいは無人搬送車等に配置された少なくとも1つの人感センサ(図示省略)からの信号に基づいて制御装置100によりオンまたはオフされるものである。すなわち、制御装置100は、当該少なくとも1つの人感センサにより人の存在が検知されていない場合、人感フラグをオフし、少なくとも1つの人感センサにより人の存在が検知された場合、人感フラグをオンする。
トルク演算部103は、人感フラグがオフされていると判定した場合(ステップS730:YES)、第1の力(ベクトル)Fu1を上記引張力Ftの上限値Fuに設定する(ステップS740)。また、トルク演算部103は、人感フラグがオンされていると判定した場合(ステップS730:NO)、上記第1の力Fu1よりも小さい第2の力(ベクトル)Fu2を引張力Ftの上限値Fuに設定する(ステップS745)。ステップS740またはS745の処理の後、トルク演算部103は、ステップS710にて設定した引張力Ftと上限値Fuとの小さい方を引張力Ftに設定(再設定)する(ステップS750)。
更に、トルク演算部103は、次式(4)に示すように、ステップS750にて設定した引張力Ftと次式(5)に示すヤコビ行列とから、関節Ja-Jcごとに、ハンド部4が現在位置から目標位置まで移動するように関節Jiを介して連結された2つのアーム5a,5b等を相対的に回動させる関節トルクTj(i)を算出する(ステップS760)。そして、目標トルク設定部105は、上述のようにしてトルク演算部103により算出された関節トルクTj(i)と、重力補償部104により別途算出された重力補償トルクTc(i)との和を2つのアーム5a,5b等を相対的に回動させるための目標トルクTtag(1)-Ttag(3)に設定する(ステップS770)。
ステップS70(ステップS770)にて各関節Jiについての目標トルクTtag(i)が設定されると、制御装置100の目標圧力設定部110は、関節Ja-Jcごとに、第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5の目標圧力Ptag1(i)と、第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6の目標圧力Ptag2(i)とを設定する(ステップS80)。図10は、ステップS80における目標圧力設定部110による目標圧力Ptag1(i)およびPtag2(i)の設定手順を例示するフローチャートである。同図に示すように、目標圧力設定部110は、まず、変数iすなわち関節の番号を値1に設定する(ステップS801)。次いで、目標圧力設定部110の収縮力算出部108は、目標トルク設定部105により設定された関節Jiについての目標トルクTtag(i)と、目標剛性設定部106により設定された関節Jiの目標剛性R(i)とを取得する(ステップS802)。また、ステップS802において、目標圧力設定部110の収縮率設定部107は、対応する関節角度センサ9により検出された関節Jiの現在の関節角度θiを取得する。
関節角度θiを取得した目標圧力設定部110の収縮率設定部107は、関節Jiに対応した第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5の収縮率Cr1(i)と、関節Jiに対応した第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6の収縮率Cr2(i)とを算出する(ステップS803)。ステップS803において、収縮率設定部107は、関節Jiの関節角度θiや、ロボットアーム2(ロボット装置1)の諸元(アーム5a-5c等の寸法)等に基づいて、収縮率Cr1(i)およびCr2(i)を導出・設定する。
また、目標圧力設定部110の収縮力算出部108は、ステップS802にて取得した目標トルクTtag(i)および関節Jiの目標剛性R(i)に基づいて、関節Jiに対応した第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5に要求される収縮力(引張力)Fc1(i)と、当該関節Jiに対応した第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6に要求される収縮力(引張力)Fc2(i)とを算出する(ステップS804)。ここで、目標トルクTtag(i)と収縮力Fc1(i),Fc2(i)との間には、|Ttag(i)|=|r(Fc1(i)-Fc2(i))|という関係が成立する(ただし、“r”は、換算係数である。)。また、関節Jiの目標剛性R(i)と収縮力Fc1(i),Fc2(i)との間には、R(i)=Fc1(i)+Fc2(i)という関係が成立するとみなすことができる。従って、ステップS804において、収縮力算出部108は、これら2つの関係式から得られる連立方程式を解くことにより、目標トルクTtag(i)および関節Jiの目標剛性R(i)に対応した収縮力Fc1(i),Fc2(i)を算出する。
ステップS804の処理の後、目標圧力設定部110の目標圧力導出部109は、関節Jiに対応した第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5の収縮率Cr1(i)の変化量ΔCr1(i)と、関節Jiに対応した第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6の収縮率Cr2(i)の変化量ΔCr2(i)とを取得する(ステップS805)。変化量ΔCr1(i)は、ステップS803にて算出される収縮率Cr1(i)の今回値と前回値との差(今回値-前回値)を収縮率Cr1(i)の算出周期すなわち図8のロボットアーム制御ルーチンの実行周期dtで除して得られるものである。また、変化量ΔCr2(i)は、ステップS803にて算出された収縮率Cr2(i)の今回値と前回値との差(今回値-前回値)を当該実行周期dtで除して得られるものである。本実施形態において、変化量ΔCr1(i)およびΔCr2(i)は、収縮率設定部107により算出され、目標圧力導出部109は、当該収縮率設定部107から変化量ΔCr1(i)およびΔCr2(i)を取得する。
更に、目標圧力導出部109は、変化量ΔCr1(i)の符号に基づいて、目標圧力Ptag1(i)を設定するためのマップとして、図11に一点鎖線で示す第1目標圧力設定マップおよび図11に二点鎖線で示す第2目標圧力設定マップの一方を選択すると共に、変化量ΔCr2(i)の符号に基づいて、目標圧力Ptag2(i)を設定するためのマップとして第1および第2目標圧力設定マップの一方を選択する(ステップS806)。ここで、ロボット装置1の各流体アクチュエータM1-M6は、内部の作動油の圧力上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブTを含む。このため、各流体アクチュエータM1-M6は、チューブT内の油圧および収縮率が同一であっても、当該チューブTが軸方向に収縮するときと軸方向に伸長するとき(自然長側に戻るとき)とで発生する収縮力が異なるという、いわゆるヒステリシス特性を有する。すなわち、軸方向に収縮するチューブTに供給される油圧(図11における一点鎖線参照)と、軸方向に伸長するチューブTに供給される油圧(図11における二点鎖線参照)とが同一であり、かつ軸方向に収縮するチューブTの収縮率と、軸方向に伸長するチューブTの収縮率とが同一であるときには、軸方向に収縮するチューブTが発生する収縮力が、軸方向に伸長するチューブTが発生する収縮力よりも小さくなる。
これを踏まえて、本実施形態では、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を設定するための流体アクチュエータM1-M6の静特性を示すマップとして、第1および第2目標圧力設定マップが予め実験・解析を経て用意されている。第1目標圧力設定マップは、流体アクチュエータM1-M6のチューブTに供給される油圧ごとに、軸方向に収縮するチューブTの収縮率と当該チューブTが発生する収縮力との関係を規定するものである(図11における一点鎖線参照)。また、第2目標圧力設定マップは、流体アクチュエータM1-M6のチューブTに供給される油圧ごとに、軸方向に伸長するチューブTの収縮率と当該チューブTが発生する収縮力との関係を規定するものである(図11における二点鎖線参照)。図11からわかるように、第1目標圧力設定マップは、流体アクチュエータM1-M6のヒステリシス特性を考慮して、収縮率および収縮力が同一であるときに、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を第2目標圧力設定マップに比べて大きくするように作成される。
ステップS806において、目標圧力導出部109は、変化量ΔCr1(i)の符号が正である場合、すなわち第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5のチューブTが収縮している場合、第1目標圧力設定マップを選択し、変化量ΔCr1(i)の符号が負である場合、すなわち第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5のチューブTが伸長している場合、第2目標圧力設定マップを選択する。また、ステップS806において、目標圧力導出部109は、変化量ΔCr2(i)の符号が正である場合、すなわち第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6のチューブTが収縮している場合、第1目標圧力設定マップを選択し、変化量ΔCr2(i)の符号が負である場合、すなわち第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6のチューブTが伸長している場合、第2目標圧力設定マップを選択する。
次いで、目標圧力導出部109は、変化量ΔCr1(i)の符号に応じて選択した第1または第2目標圧力設定マップからステップS803にて算出された収縮率Cr1(i)とステップS804にて算出された収縮力Fc1(i)とに対応した圧力を適宜線形補間を行いながら導出して関節Jiに対応した第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5の目標圧力Ptag1(i)に設定する(ステップS807)。また、ステップS807において、目標圧力導出部109は、変化量ΔCr2(i)の符号に応じて選択した第1または第2目標圧力設定マップからステップS803にて算出された収縮率Cr1(i)とステップS804にて算出された収縮力Fc1(i)とに対応した圧力を適宜線形補間を行いながら導出して関節Jiに対応した第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6の目標圧力Ptag2(i)に設定する。このように、上記ヒステリシス特性を考慮しながらチューブTの収縮率Cr1(i),Cr2(i)および収縮力Fc1(i),Fc2(i)に対応した圧力を目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)に設定することで、ロボットアーム2への要求に応じて目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を精度よく設定することが可能となる。
ステップS807にて目標圧力Ptag1(i)およびPtag2(i)が設定されると、目標圧力設定部110は、変数iをインクリメントし(ステップS808)、変数iが値N+1以上であるか否かを判定する(ステップS809)。値Nは、ロボットアーム2における関節の数を示し、本実施形態では、N=3である。目標圧力設定部110は、変数iが値N+1未満であると判定した場合(ステップS809:NO)、上記ステップS802-S809の処理を再度実行する。また、目標圧力設定部110により変数iが値N+1以上であると判定されると(ステップS809:YES)、各流体アクチュエータM1-M6の目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の設定が完了する。
更に、本実施形態では、図8に示すように、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の設定後、あるいはステップS80と一部並行して、関節Ja-Jcごとに、第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5のチューブTに供給される作動油の流量Q1(i)と、第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6のチューブTに供給される作動油の流量Q2(i)とが推定(導出)される(ステップS85)。図12は、ステップS85における流量Q1(i),Q2(i)の推定手順を例示するフローチャートである。同図に示すように、制御装置100の容積推定部118は、流量Q1(i),Q2(i)を推定するために、まず、変数iすなわち関節の番号を値1に設定する(ステップS851)。
ステップS851の処理の後、容積推定部118は、図8のロボットアーム制御ルーチンの前回実行時に目標圧力設定部110により設定された関節Jiについての目標圧力Ptag1(i)およびPtag2(i)すなわち目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の前回値と、図8のステップS803にて収縮率設定部107により設定された収縮率Cr1(i)およびCr2(i)とを取得する(ステップS852)。目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の前回値は、それぞれ関節Jiに対応した流体アクチュエータM1等(第1の人工筋肉)のチューブT内の現在の油圧または流体アクチュエータM2等(第2の人工筋肉)のチューブT内の現在の油圧を示すものとして用いられる。
更に、容積推定部118は、図13に例示する容積推定マップを用いて、関節Jiに対応した第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5のチューブTの容積V1(i)と、関節Jiに対応した第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6のチューブTの容積V2(i)とを推定する(ステップS853)。容積推定マップは、図13に示すように、チューブTの収縮率ごとに、チューブT内の作動油の圧力(内圧)と、当該チューブTの容積との関係を規定するように予め実験・解析を経て作成されたものである。ステップS853において、容積推定部118は、容積推定マップから適宜線形補間を行いながらステップS852にて取得した目標圧力Ptag1(i)の前回値および収縮率Cr1(i)に対応した容積を容積V1(i)として導出する。また、ステップS853において、容積推定部118は、容積推定マップから適宜線形補間を行いながらステップS852にて取得した目標圧力Ptag2(i)の前回値および収縮率Cr2(i)に対応した容積をとして容積V2(i)として導出する。
容積V1(i),V2(i)が推定されると、流量推定部119により関節Jiに対応した第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3またはM5のチューブTに供給される作動油の流量Q1(i)と、第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4またはM6のチューブTに供給される作動油の流量Q2(i)とが推定される(ステップS854)。ステップS854において、流量推定部119は、ステップS853にて容積推定部118により推定された容積V1(i),V2(i)の今回値と、図8のロボットアーム制御ルーチンの前回実行時に容積推定部118により推定された容積V1(i),V2(i)すなわち容積V1(i),V2(i)の前回値とを取得する。更に、ステップS854において、流量推定部119は、容積V1(i)の今回値から前回値を減じた値をロボットアーム制御ルーチンの実行周期dt(所定時間)で除した値(容積変化量dV1/dt={今回V1(i)-前回V1(i)}/dt)を流量Q1(i)として導出し、容積V2(i)の今回値から前回値を減じた値をロボットアーム制御ルーチンの実行周期dtで除した値(容積変化量dV2/dt={今回V2(i)-前回V2(i)}/dt)を流量Q2(i)として導出する。
流量Q1(i),Q2(i)を推定すると、流量推定部119は、変数iをインクリメントし(ステップS855)、変数iが値N+1(本実施形態では、N=3)以上であるか否かを判定する(ステップS856)。流量推定部119により変数iが値N+1未満であると判定された場合(ステップS856:NO)、容積推定部118および流量推定部119により上記ステップS852-S856の処理が再度実行される。また、流量推定部119により変数iが値N+1以上であると判定されると(ステップS856:YES)、各流体アクチュエータM1-M6のチューブTに供給される作動油の流量Q1(i),Q2(i)の推定が完了する。
ステップS80にて目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)が設定され、かつステップS85にて流量Q1(i),Q2(i)が推定されると、図8に示すように、制御装置100の電流指令値設定部111は、図14に例示する電流指令値設定マップを用いて、各リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eに対する電流指令値を設定する(ステップS90)。電流指令値設定マップは、図14に示すように、電磁部15eに印加される電流値ごとに、チューブTに供給される作動油の流量(Q1(i),Q2(i))と、チューブT内の作動油の圧力(目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i))との関係を規定するように予め実験・解析を経て作成されたものである。図14に示すように、電流指令値設定マップは、チューブTに供給されるべき作動油の圧力すなわち目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i))が高いほど、電流値を大きくすると共に、チューブTに作動油が供給されるとき(流量が正であるとき)に、チューブTから作動油が流出するとき(流量が負であるとき)に比べて、同一の目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i))に対応した電流値を大きくするように作成される。また、電流指令値設定マップは、流量(Q1(i),Q2(i))が増加するに従って(流量が負から正になるに従って)同一の目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i))に対応した電流値を大きくするように作成される。
ステップS90において、電流指令値設定部111は、電流指令値設定マップからステップS80にて設定された目標圧力Ptag1(i)とステップS85にて推定された流量Q1(i)とに対応した電流値を適宜線形補間を行いながら導出して流体アクチュエータM1,M3またはM5に対応したリニアソレノイドバルブ151,153または155への電流指令値に設定する。また、ステップS90において、電流指令値設定部111は、電流指令値設定マップからステップS80にて設定された目標圧力Ptag2(i)とステップS85にて推定された流量Q2(i)とに対応した電流値を適宜線形補間を行いながら導出して流体アクチュエータM2,M4またはM6に対応したリニアソレノイドバルブ152,154または156への電流指令値に設定する。電流指令値設定部111により導出された電流指令値は、制御装置100のバルブ駆動部112に与えられ、バルブ駆動部112は、当該電流指令に基づいて、リニアソレノイドバルブ151-156を制御(PWM制御)する(ステップS100)。
これにより、目標トルクTtag(i)に応じた流体供給装置10への電流指令値が容易かつ速やかに設定され、当該電流指令値に基づいて制御される流体供給装置10のリニアソレノイドバルブ151-156の各々は、対応する目標圧力Ptag1(i)またはPtag2(i)に応じた油圧を生成する。更に、リニアソレノイドバルブ151-156により調圧された作動油は、対応する流体アクチュエータM1-M6のチューブTに供給される。この結果、流量制御弁により作動油の流量を調整してチューブT内に供給したり、チューブTに供給される油圧を圧力センサにより検出して実油圧が目標圧力に一致するように流量制御弁をフィードバック制御したりする場合に比べて、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の設定から短時間のうちに、各チューブTに供給される油圧を当該目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)に実質的に一致させ、各チューブTの実際の収縮率を要求値に応答性よく高精度に追従させることが可能となる。制御装置100は、ステップS100の処理の後、図8のルーチンを一旦終了させ、次の実行タイミングの到来に応じて再度ステップS10以降の処理を実行する。
一方、図8のステップS40にてハンド部4の現在位置が前回位置から実質的に変化していないと判定した場合(ステップS40:NO)、トルク演算部103は、当該現在位置が前回位置から実質的に変化しなくなってから予め定められた比較的短い時間(所定時間)が経過したか否かを判定する(ステップS55)。現在位置が実質的に変化しなくなってから当該所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS55:NO)、トルク演算部103は、例えば、上記目標到達位置と現在位置との差と当該所定時間とに基づいてハンド部4の目標位置を設定する(ステップS65)。ステップS65において、トルク演算部103は、例えば、現在位置が実質的に変化しなくなってから上記所定時間が経過する少し前に目標位置が目標到達位置に一致するように当該目標位置を時間の経過と共に一定の割合で変化させる。かかるステップS65の処理の後、上記ステップS70以降の処理が実行される。また、ステップS65にて設定された目標位置は、目標剛性設定部106にも与えられ、目標剛性設定部106は、取得した目標位置等に基づいて、各関節Jiの目標剛性R(i)を設定する。これにより、ハンド部4と把持対象との接触後(または把持対象と載置面との接触後)に、当該ハンド部4から把持対象(または載置面)に上記押圧力Fp以下の力が加えられることになる。
ステップS55にて現在位置が実質的に変化しなくなってから上記所定時間が経過したと判定されると、制御装置100は、図8のルーチンを終了させてハンド部4に把持対象を把持させるためのハンド制御ルーチンを実行する。また、制御装置100の目標位置設定部101は、ハンド部4により把持対象が把持されるまでに、図5のルーチンを実行して把持対象の載置位置に応じた目標到達位置および目標軌道を設定する。更に、ハンド部4により把持対象が把持されてハンド制御ルーチンが完了すると、制御装置100は、ロボットアーム2により把持対象を載置位置まで搬送すべく、図8のルーチンを再度実行する。なお、ステップS40にて否定判断がなされた後には、ハンド部4の目標位置が現在位置から目標到達位置まで所定のレートで変化するように設定されてもよく、目標位置が目標到達位置に一致してから予め定められた時間が経過した段階で図8のルーチンが終了されてもよい。
上述のように、ロボット装置1は、それぞれ作動油(液体)の供給を受けて作動する複数の流体アクチュエータM1-M6と、それぞれ電流の供給を受けて流体アクチュエータM1-M6に供給される作動油の圧力を調整する液圧調整装置としての複数のリニアソレノイドバルブ151-156と、制御装置100とを含む。制御装置100は、流体アクチュエータM1-M6に供給される作動油の目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を設定すると共に(図8のステップS80、図10)、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)と流体アクチュエータM1-M6に供給される作動油の流量Q1(i),Q2(i)とに基づいて電流指令値を設定し(図8のステップS90)、電流指令値に基づいてリニアソレノイドバルブ151-156を制御する(図8のステップS100)。
これにより、チューブTに供給される作動油の流量Q1(i),Q2(i)の過不足により人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6の動作の応答性が悪化するのを抑制しつつ、流体アクチュエータM1-M6に目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)に応じた圧力の作動油を供給することができる。すなわち、本発明者等の研究・解析によれば、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)と流量Q1(i),Q2(i)とに基づいて電流指令値を設定することで、当該流量Q1(i),Q2(i)を考慮することなく目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を電流指令値に直接変換する場合に比べて、流体アクチュエータM1-M6の動作の応答性や目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)に対する各チューブT内の油圧の追従性を向上させ得ることが確認されている。この結果、ロボット装置1では、作動油の供給を受けて作動する流体アクチュエータM1-M6を応答性よく高精度に作動させることが可能となり、ロボットアーム2を応答性よく安定に作動させることができる。
また、ロボット装置1の各流体アクチュエータM1-M6は、内部に作動油が供給されると共に内部の圧力上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブTを含む。更に、制御装置100の流量推定部119は、チューブTの容積変化量(dV1/dt,dV2/dt)を流量Q1(i),Q2(i)として算出する(図8のステップS85、図11)。また、制御装置100の電流指令値設定部111は、目標圧力Ptag1(i)と流量Q1(i)とに基づいて第1の人工筋肉としての流体アクチュエータM1,M3、M5に対応したリニアソレノイドバルブ151,153,155に対する電流指令値を設定すると共に、目標圧力Ptag2(i)と流量Q2(i)とに基づいて第2の人工筋肉としての流体アクチュエータM2,M4、M6に対応したリニアソレノイドバルブ152,154,156に対する電流指令値を設定する(図8のステップS90)。これにより、流体アクチュエータM1-M6に供給される作動油の流量Q1(i),Q2(i)に応じて電流指令値を適正に設定すると共に、各リニアソレノイドバルブ151-156によって流体アクチュエータM1-M6に供給される作動油の圧力を目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)になるように精度よく調整することが可能となる。
更に、制御装置100は、図8のロボットアーム制御ルーチンを所定時間(実行周期dt)おきに繰り返し実行して目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を設定する(図8のステップS80、図10)。また、制御装置100の容積推定部118は、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の前回値と、チューブTの収縮率Cr1(i),Cr2(i)とに基づいてチューブTの今回の容積V1(i),V2(i)を算出する(図8のステップS85、図12のステップS852,S853)。更に、制御装置100の流量推定部119は、チューブTの容積V1(i),V2(i)の今回値と前回値との差を当該実行周期dt(所定時間)で除して流量Q1(i),Q2(i)を算出する(図8のステップS85、図12のステップS854)。これにより、流体アクチュエータM1-M6に供給される作動油の流量Q1(i),Q2(i)を適正に算出することが可能となる。
また、制御装置100の目標圧力設定部110は、流体アクチュエータM1-M6に要求される力を示す目標トルクTtag(i)に応じた目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を、チューブTが軸方向に収縮するときと、チューブTが軸方向に伸長するときとで変化させる(図10のステップS805-S807)。すなわち、チューブTを含む流体アクチュエータM1-M6は、当該チューブT内の作動油の圧力および収縮率Cr1(i),Cr2(i)が同一であっても、チューブTが軸方向に収縮するときと軸方向に伸長するときとで発生する収縮力が異なるという、いわゆるヒステリシス特性を有する。従って、目標トルクTtag(i)に応じた目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)をチューブTが軸方向に収縮するときと伸長するときとで変化させることで、ヒステリシス特性に起因して流体アクチュエータM1-M6から出力される力(トルク)と要求されている力(トルク)とがズレてしまうのを良好に抑制することが可能となる。
更に、制御装置100の目標圧力設定部110は、収縮率設定部107、収縮力算出部108および目標圧力導出部109を含む。収縮率設定部107は、ハンド部4(ロボット装置1)の現在位置に応じた関節Jiの関節角度θiに基づいてチューブTの収縮率Cr1(i),Cr2(i)を設定する(図10のステップS803)。また、収縮力算出部108は、ロボット装置1を駆動するための目標トルクTtag(i)に基づいて流体アクチュエータM1-M6に要求される収縮力Fc1(i),Fc2(i)を算出する(図10のステップS804)。更に、目標圧力導出部109は、収縮率Cr1(i),Cr2(i)と収縮力Fc1(i),Fc2(i)とに基づいて目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を導出・設定する(図10のステップS807)。また、目標圧力設定部110(目標圧力導出部109)は、収縮率Cr1(i),Cr2(i)の変化量ΔCr1(i),ΔCr2(i)が正の値であるときに、チューブTに供給される作動油の圧力ごとに軸方向に収縮するチューブTの収縮率Cr1(i),Cr2(i)と収縮力Fc1(i),Fc2(i)との関係を規定する第1目標圧力設定マップ(第1の制約)を用いて目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を設定する(図10のステップS805-S807)。更に、目標圧力設定部110(目標圧力導出部109)は、変化量ΔCr1(i),ΔCr2(i)が負の値であるときに、チューブTに供給される作動油の圧力ごとに軸方向に伸長するチューブTの収縮率Cr1(i),Cr2(i)と収縮力Fc1(i),Fc2(i)との関係を規定する第2目標圧力設定マップ(第2の制約)を用いて目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を設定する(図10のステップS805-S807)。
これにより、流体アクチュエータM1-M6のヒステリシス特性による影響を低減しながら、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を適正に設定することが可能となる。なお、ロボット装置1において、収縮率設定部107は、ハンド部4(ロボット装置1)の目標位置に応じた各関節Jiの目標角度に基づいてチューブTの収縮率Cr1(i),Cr2(i)を設定するものであってもよい。
また、ロボット装置1は、少なくとも1つの関節Ja,Jb,Jcと、複数のアーム(リンク)5a,5b,5cと、リンクとしてのタンク11とを含む。更に、関節Jiを介して連結される2つのアーム5a,5b等は、互いに拮抗するように配置された一対の流体アクチュエータM3,M4等により相対的に回動させられる。また、ロボット装置1における目標トルク(目標駆動力)Ttag(i)は、2つのアーム5a,5b等を相対的に回動させる関節トルクTj(i)の目標値である。これにより、対をなす流体アクチュエータM1,M2等によって関節Jiを介して連結された2つのリンクのアーム5a,5b等の一方を他方に対して応答性よく高精度に回動させることが可能となる。
更に、ロボット装置1において、リニアソレノイドバルブ151-156は、電磁部15e、スプール15s、当該スプール15sを付勢するスプリングSP、作動油が供給される入力ポート15i、出力ポート15o、当該出力ポート15oに連通するフィードバックポート15f、および入力ポート15iと出力ポート15oとに連通可能なドレンポート15dを含む。また、リニアソレノイドバルブ151-156は、電磁部15eが発生する推力と、スプリングSPの付勢力と、出力ポート15oからフィードバックポート15fに供給される油圧の作用によりスプール15sに加えられる推力とをバランスさせて作動油の圧力を調整する。
これにより、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6のチューブTに供給される作動油を実圧が目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)になるように精度よく調圧することが可能となる。ただし、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、常開弁であってもよい。この場合、当該常開弁は、電磁部からの推力および当該電磁部からの推力と同方向に作用するようにフィードバックポートに供給された液圧による推力を、スプリングの付勢力とバランスさせるものであってもよい。また、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、専用のフィードバックポートをもたず、スプールを収容するスリーブの内側で出力圧(駆動圧)をフィードバック圧としてスプールに作用させるように構成されたものであってもよい(例えば、特開2020-41687号公報参照)。
更に、上記流体供給装置10において、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つ(例えば、要求出力(収縮力と収縮速度との積)の最大値がすべての流体アクチュエータM1-M6の中で最大となる流体アクチュエータM1に対応したリニアソレノイドバルブ151)が、電磁部に供給される電流に応じた信号圧を出力するリニアソレノイドバルブ(あるいはオンオフソレノイドバルブ)と、当該信号圧に応じて作動油を調圧するコントロールバルブとで置き換えられてもよい。この場合、コントロールバルブは、バルブボディ内に配置されるスプールと、当該スプールを付勢するスプリングと、入力ポートと、出力ポートと、フィードバックポートと、信号圧入力ポートと、ドレンポートとを含むものであってもよく、出力圧(駆動圧)をスプールの内部でフィードバック圧として当該スプールに作用させるように構成されたものであってもよい。
なお、ロボット装置1において、必ずしも関節Ja,Jb,Jcのすべてに対をなす複数の流体アクチュエータ(人工筋肉)M1,M2等が設けられる必要はない。すなわち、少なくとも何れか1つの関節に対してアーム等を重力に抗する方向に回動させるときに収縮する流体アクチュエータのみが設けられてもよく、少なくとも何れか1つの関節に対して、1つまたは複数の流体アクチュエータと、当該1つまたは複数の流体アクチュエータと拮抗するように配置されるスプリングやゴム材等の弾性体とが設けられてもよい。
また、ロボット装置1のロボットアーム2は、流体アクチュエータとして揺動モータ(例えば、ハンド部4の根元(手首部)を回転させる揺動モータ)を含むものであってもよい。すなわち、ロボットアーム2(ロボット本体)は、人工筋肉としての流体アクチュエータと揺動モータとの少なくとも何れか1つを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1のロボットアーム2は、流体アクチュエータとしてエアシリンダや油圧シリンダといった流体圧シリンダを含むものであってもよい。また、ロボット装置1において、タンク11がロボットアーム2といったロボット本体により支持されてもよい。
更に、ロボット装置1は、関節を1つだけ含むものであってもよく、人工筋肉としての流体アクチュエータを1つまたは2つだけ含むものであってもよい。また、ロボット装置1は、少なくとも1つの流体アクチュエータM1等とハンド部4とを有するロボットアーム2を含むものに限られず、少なくとも1つの流体アクチュエータと、例えばドリルビット等の工具や例えばスイッチ等を押圧する押圧部材といったハンド部4以外の要素が手先に取り付けられたロボットアームとを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1は、歩行ロボットや、ウェアラブルロボット等であってもよい。
また、上記実施形態において、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6は、内部に作動油が供給されると共に当該内部の油圧の上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含むマッキベン型の人工筋肉であるが、ロボット装置1における流体アクチュエータM1-M6の構成は、これに限られるものではない。すなわち、流体アクチュエータM1-M6は、流体が供給された際に径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブを含むものであればよく、例えば弾性体により形成された内側筒状部材と、弾性体により形成されると共に内側筒状部材の外側に同軸に配置され外側筒状部材と、内側筒状部材と外側筒状部材との間に配置された繊維層とを含む軸方向繊維強化型の流体アクチュエータ(例えば、特開2011-137516号参照)であってもよい。
更に、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、対応する流体アクチュエータM1等に供給される液圧(油圧)が目標圧力になるように制御される流量制御弁で置き換えられてもよい。また、流体供給装置10は、水等の作動油以外の液体を流体アクチュエータMに供給するように構成されてもよい。更に、上記流体供給装置10からリニアソレノイドバルブ151-156が省略されてもよく、複数の流体アクチュエータM1-M6ごとに液圧調整装置としてのポンプが設けられてもよい。
図15は、本開示の他のロボット装置1Bを示す概略構成図である。なお、ロボット装置1Bの構成要素のうち、上述のロボット装置1と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図15に示すロボット装置1Bは、ロボットアーム2Bと、当該ロボットアーム2Bを作動させる液圧アクチュエータ(流体アクチュエータ)としての複数(本実施形態では、2つ)の複動シリンダ(液圧シリンダ)3に流体を給排する流体供給装置(液体供給装置)10Bとを含む。かかるロボット装置1Bも、指定された目的位置まで自走可能な無人搬送車(AGV)または自律走行搬送ロボット(AMR)である搬送台車に搭載されるか、あるいは予め定められた設置箇所に定置されて使用される。ロボットアーム2Bは、図15に示すように、複数の複動シリンダ3に加えて、支持部材(ブラケット)40と、複数のアーム(リンク)5a,5b,5cと、当該複数のアーム5a,5b,5cとの協働により第1および第2の平行リンク機構を構成するリンク61,62,63,64と、把持部(手先)としてのハンド部(ロボットハンド)4と、複数(本実施形態では、3つ)の関節(ピン結合部)Ja,Jb,Jcとを含む多関節アームである。
ロボットアーム2Bの各複動シリンダ3は、図16に示すように、シリンダ30と、シリンダ(シリンダチューブ)30内に軸方向に摺動自在に配置されるピストン34と、当該ピストン34に同軸に固定されるピストンロッド35とを含む。更に、各複動シリンダ3は、シリンダ(シリンダチューブ)30内のピストン34の一側(図16における右側)に画成される第1流体室(収縮側流体室)31と、シリンダ30内のピストン34の他側(図16における左側)に画成される第2流体室(伸長側流体室)32とを含む。流体供給装置10Bにより第1流体室31に作動油を供給すると共に第2流体室32から作動油を排出させることで、ピストン34およびピストンロッド35をシリンダ30に対して図16における左側に移動させて複動アクチュエータとしての複動シリンダ3を伸長させることができる。また、流体供給装置10Bにより第2流体室32に作動油を供給すると共に第1流体室31から作動油を排出させることで、ピストン34およびピストンロッド35をシリンダ30に対して図16における右側に移動させて複動シリンダ3を収縮させることができる。
ロボットアーム2Bのアーム5aは、関節Jaを介してリンクとしての支持部材40に回動自在に連結され、1つの複動シリンダ3の伸縮により支持部材40に対して回動する。支持部材40およびアーム5aすなわち関節Jaに対応した複動シリンダ3の一端すなわちピストンロッド35の端部は、支持部材40に固定されたレバー部材に回動自在に連結され、他端すなわちシリンダ30の端部は、アーム5aの先端部(アーム5b側の端部)に回動自在に連結される。また、アーム5bは、関節Jbを介してアーム5aに回動自在に連結され、1つの複動シリンダ3の伸縮によりアーム5aに対して回動する。アーム5a,5bすなわち関節Jbに対応した複動シリンダ3の一端すなわちピストンロッド35の端部は、アーム5aの基端部(支持部材40側の端部)に回動自在に連結され、他端すなわちシリンダ30の端部は、アーム5bの基端部(アーム5a側の端部)に固定されたレバー部材に回動自在に連結される。更に、アーム5cは、関節Jcを介してアーム5bの先端部に回動自在に連結される。なお、支持部材40およびアーム5aに対して、平行に配列される2つの複動シリンダ3が設けられてもよく、アーム5a,5bに対して、平行に配列される2つの複動シリンダ3が設けられてもよい。
リンク61は、支持部材40に固定され、リンク62の基端部は、関節Jbを介してアーム5aの先端部およびアーム5bの基端部に回動自在に連結される。また、リンク63は、アーム5aと同一のリンク長を有し、リンク61の遊端部(ピボット部)に回動自在に連結されると共に、関節Jbからリンク61のリンク長に相当する長さだけ離間した位置でリンク62に回動自在に連結される。これにより、アーム5aを固定リンクとし、リンク61を駆動リンクとし、リンク62を従動リンクとし、リンク63を中間リンクとする第1の平行リンク機構が構成される。更に、リンク64は、関節Jcから所定長さだけ離間した位置でアーム5cに回動自在に連結されると共に、関節Jbから当該所定長さだけ離間した位置でリンク62に回動自在に連結される。これにより、アーム5bを固定リンクとし、リンク62を駆動リンクとし、アーム5cを従動リンクとし、リンク64を中間リンクとする第2の平行リンク機構が構成される。そして、これらの第1および第2の平行リンク機構の作用により、アーム5cは、アーム5a,5bの回動角度に拘わらず搬送台車の走行面またはロボット装置1Bの設置面に対して常時平行に維持される。
ロボットアーム2Bのハンド部4は、最も手先側のアーム5cに取り付けられており、対象となる物体(以下、「把持対象」という。)を把持するようにロボット装置1Bの制御装置100Bにより制御される。また、流体供給装置10Bは、例えば上端および下端が閉鎖された筐体であって内部に作動流体としての作動油を貯留可能なタンクや、作動油を圧送するポンプ、複数のリニアソレノイドバルブ等を含み、各複動シリンダ3に作動油を給排するように制御装置100Bにより制御される。これにより、ロボットアーム2Bを油圧(流体圧)により駆動してハンド部4を所望の位置に移動させることができる。ただし、流体供給装置10Bは、例えば水といった作動油以外の液体を各複動シリンダ3に給排するものであってもよく、例えば圧縮空気等の気体を各複動シリンダ3に給排するものであってもよい。
図17は、ロボット装置1Bの流体供給装置10Bを示す系統図である。同図に示すように、流体供給装置10Bは、関節Ja(支持部材40およびアーム5a)に対応した複動シリンダ3に油圧を供給するリニアソレノイドバルブ151,152と、関節Jb(アーム5a,5b)に対応した複動シリンダ3に油圧を供給するリニアソレノイドバルブ153,154とを含む。流体供給装置10Bにおいて、リニアソレノイドバルブ(第1ソレノイドバルブ)151は、関節Jaに対応した複動シリンダ3の第1流体室31への油圧(駆動圧)を調整する。リニアソレノイドバルブ(第2ソレノイドバルブ)152は、関節Jaに対応した複動シリンダ3の第2流体室32への油圧を調整する。リニアソレノイドバルブ(第1ソレノイドバルブ)153は、関節Jbに対応した複動シリンダ3の第1流体室31への油圧を調整する。リニアソレノイドバルブ(第2ソレノイドバルブ)154は、関節Jbに対応した複動シリンダ3の第2流体室32への油圧を調整する。
また、図18にロボット装置1Bの制御装置100Bにおけるリニアソレノイドバルブ151-154の制御部のブロック図を示す。同図に示すように、制御装置100Bでは、ロボット装置1の制御装置100における収縮率設定部107、収縮力算出部108および目標圧力導出部109(目標圧力設定部110)と容積推定部118とが省略され、代わりに、CPUやROM,RAMといったハードウェアと制御プログラムといったソフトウェアとの少なくとも何れか一方により、目標圧力設定部110Bおよび流量推定部119Bが構築される。そして、制御装置100Bは、上述の目標到達位置および目標軌道が設定された後、図19に示すロボットアーム制御ルーチンを所定時間(実行周期dt、例えば10ms程度)おきに繰り返し実行する。図19のルーチンは、図10のステップS80およびS85の処理を以下に説明するステップS80BおよびS85Bの処理で置き換えたものに相当する。
ステップS80Bにおいて、制御装置100Bの目標圧力設定部110Bは、関節JaおよびJbすなわち複数(2つ)の複動シリンダ3ごとに、第1流体室31に供給されるべき油圧の目標圧力Ptag1(i)と、第2流体室32に供給されるべき油圧の目標圧力Ptag2(i)とを設定する(ステップS80B)。図20は、ステップS80Bにおける目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の設定手順を例示するフローチャートである。同図に示すように、目標圧力設定部110Bは、まず、変数i(ここでは、i=1,2である。)すなわち関節の番号を値1に設定する(ステップS801B)。更に、目標圧力設定部110Bは、関節Jiについての目標トルクTtag(i)と、関節Jiの目標剛性R(i)とを取得する(ステップS802B)。また、ステップS802Bにおいて、目標圧力設定部110Bは、対応する関節角度センサ9により検出された関節Jiの現在の関節角度θiを取得する。
次いで、目標圧力設定部110Bは、ステップS802Bにて取得した関節Jiの目標トルクTtag(i)および目標剛性R(i)に基づいて、関節Jiに対応した複動シリンダ3に要求される要求推力Ft(i)を導出する(ステップS803B)。ロボット装置1Bでは、関節Jiの目標トルクTtag(i)および目標剛性R(i)と当該関節Jiに対応した複動シリンダ3に要求される要求推力Ft(i)との関係を規定した図示しない推力設定マップが予め実験・解析を経て用意されている。ステップS803Bにおいて、目標圧力設定部110Bは、当該推力設定マップから目標トルクTtag(i)および目標剛性R(i)に対応した要求推力Ft(i)を導出する。また、目標圧力設定部110Bは、ステップS802Bにて取得した関節Jiの現在の関節角度θiに基づいて、当該関節Jiに対応した複動シリンダ3のピストンロッド35の現在位置(初期位置(ゼロ点)からの変位)lr(i)を算出する(ステップS804B)。ステップS804Bにおいて、現在位置lr(i)は、リンクとしての支持部材40、アーム5a-5cの幾何学的関係に基づいて予め定められる関係式と関節角度θiとから得ることができる。
更に、目標圧力設定部110Bは、ステップS804Bにて算出した現在位置lr(i)から図20のルーチンの前回実行時にステップS804Bにて算出した現在位置lr(i)を減算して上記実行周期dtにおけるピストンロッド35の変位dr(i)(=今回lr(i)-前回lr(i))を算出する(ステップS805B)。また、目標圧力設定部110Bは、ステップS805Bにて算出した変位dr(i)の符号に基づいて、第1流体室3の目標圧力Ptag1(i)と第2流体室32の目標圧力Ptag2(i)とを設定するためのマップを選択する(ステップS806B)。
ここで、複動シリンダ3は、第1流体室31に供給される油圧と第2流体室32に供給される油圧との差圧(絶対値)が同一であっても、ピストン34およびピストンロッド35の移動方向によって、当該複動シリンダ3により出力される推力の大きさが変化する、いわゆるヒステリシス特性を有する。すなわち、複動シリンダ3が発生する推力(絶対値)は、シリンダ30とピストン34との間やシリンダ30とピストンロッド35との間に配置される図示しないシール部で発生する摩擦力等に起因して、第1流体室31と第2流体室32との間の差圧が同一であっても、ピストン34等が第1流体室31から第2流体室32に向かう方向に移動するときと、ピストン34等が第2流体室32から第1流体室31に向かう方向に移動するときとで変化する。
これを踏まえて、本実施形態では、第1流体室31の目標圧力Ptag1(i)と、第2流体室32の目標圧力Ptag2(i)とを設定するために、複動シリンダ3のヒステリシス特性を考慮した第1および第2目標圧力設定マップ(図示省略)が予め実験・解析を経て関節Ja,Jbごとに用意されている。第1目標圧力設定マップは、ピストン34(およびピストンロッド35)が第1流体室31から第2流体室32に向かう方向に移動するときの要求推力Ft(i)に対応した目標圧力Ptag1(i)および第2流体室32の目標圧力Ptag2(i)を規定するものである。また、第2目標圧力設定マップは、ピストン34(およびピストンロッド35)が第2流体室32から第1流体室31に向かう方向に移動するときの要求推力Ft(i)に対応した目標圧力Ptag1(i)および目標圧力Ptag2(i)を規定するものである。本実施形態では、例えばピストン34(およびピストンロッド35)が第1流体室31から第2流体室32に向かう方向が正とされ、負方向に対応した第2目標圧力設定マップは、正方向に対応した第1目標圧力設定マップに比べて、同一の要求推力Ft(i)に対応した作動油が供給される側の第1または第2流体室31,32への油圧を実験・解析を経て適合される値だけ例えば高くするように作成される。
ステップS806Bにおいて、目標圧力設定部110Bは、変位dr(i)の符号が正である場合、関節Jiに対応した第1目標圧力設定マップを選択し、変位dr(i)の符号が負である場合、関節Jiに対応した第2目標圧力設定マップを選択する。そして、目標圧力設定部110Bは、変位dr(i)の符号に応じて選択した関節Jiに対応した第1または第2目標圧力設定マップを用いて、ステップS803Bにて導出した要求推力Ft(i)に対応した目標圧力Ptag1(i)およびに目標圧力Ptag2(i)を設定する(ステップS807B)。このように複動シリンダ3のヒステリシス特性を考慮することで、ロボットアーム2Bへの要求に応じて目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を精度よく設定することが可能となる。
ステップS807Bにて目標圧力Ptag1(i)およびPtag2(i)を設定した後、目標圧力設定部110Bは、変数iをインクリメントし(ステップS808B)、変数iが値N以上であるか否かを判定する(ステップS809B)。値Nは、ロボットアーム2Bにおける関節の数を示し、本実施形態では、N=3である。目標圧力設定部110Bは、変数iが値N未満であると判定した場合(ステップS809B:NO)、上記ステップS802B-S809Bの処理を再度実行する。また、目標圧力設定部110Bにより変数iが値N以上であると判定されると(ステップS809B:YES)、各複動シリンダ3の目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の設定が完了する。
更に、ロボット装置1Bにおいても、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の設定後、あるいはステップS80Bと一部並行して、関節JaおよびJbすなわち複数(2つ)の複動シリンダ3ごとに第1流体室31に供給される作動油の流量Q1(i)と、第2流体室32に供給される作動油の流量Q2(i)とが推定(導出)される(ステップS85B)。なお、第1、第2流体室31,32から排出される作動油の流量は、負の値で表される。図21は、ステップS85Bにおける流量Q1(i),Q2(i)の推定手順を例示するフローチャートである。同図に示すように、制御装置100Bの流量推定部119Bは、流量Q1(i),Q2(i)を推定するために、まず、変数iすなわち関節の番号を値1に設定する(ステップS851B)。
ステップS851の処理の後、流量推定部119Bは、上述のステップS805Bにて目標圧力設定部110Bにより算出されたピストンロッド35の変位dr(i)を取得するか、あるいは上記ステップS805Bと同様にして変位dr(i)を算出する(ステップS852B)。更に、流量推定部119Bは、ステップS852Bにて取得した変化量にピストン34の第1流体室31側の受圧面の面積S1を乗じて当該第1流体室31の容積変化量ΔV1(i)を算出する(ステップS853B)。また、ステップS853Bにて、流量推定部119Bは、ステップS852にて取得した変位dr(i)にピストン34の第2流体室32側の受圧面の面積S2を乗じて当該第2流体室32の容積変化量ΔV2(i)を算出する。
次いで、流量推定部119Bは、ステップS853Bにて算出した容積変化量ΔV1(i)を図19のロボットアーム制御ルーチンの実行周期dtで除した値を第1流体室31に供給(または排出)される作動油の流量Q1(i)として導出(推定)する(ステップS854B)。また、ステップS854Bにおいて、流量推定部119Bは、ステップS853Bにて算出した容積変化量ΔV2(i)を図19のロボットアーム制御ルーチンの実行周期dtで除した値を第2流体室32に供給(または排出)される作動油の流量Q2(i)として導出(推定)する。
流量Q1(i),Q2(i)を推定すると、流量推定部119Bは、変数iをインクリメントし(ステップS855B)、変数iが値N(本実施形態では、N=3)以上であるか否かを判定する(ステップS856B)。変数iが値N未満であると判定された場合(ステップS856B:NO)、流量推定部119Bにより上記ステップS852B-S856Bの処理が再度実行される。また、流量推定部119Bにより変数iが値N以上であると判定されると(ステップS856B:YES)、各複動シリンダ3に供給される作動油の流量Q1(i),Q2(i)の推定が完了する。
ステップS80Bにて目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)が設定され、かつステップS85Bにて流量Q1(i),Q2(i)が推定されると、図19に示すように、制御装置100Bの電流指令値設定部111は、上述のような電流指令値設定マップを用いて、各リニアソレノイドバルブ151-154の電磁部15eに対する電流指令値を設定する(ステップS90)。電流指令値設定部111により導出された電流指令値は、制御装置100のバルブ駆動部112に与えられ、バルブ駆動部112は、当該電流指令に基づいて、リニアソレノイドバルブ151-154を制御(PWM制御)する(ステップS100)。
これにより、目標トルクTtag(i)に応じた流体供給装置10への電流指令値が容易かつ速やかに設定され、当該電流指令値に基づいて制御される流体供給装置10Bのリニアソレノイドバルブ151-154の各々は、対応する目標圧力Ptag1(i)またはPtag2(i)に応じた油圧を生成する。更に、リニアソレノイドバルブ151-154により調圧された作動油は、対応する複動シリンダ3の第1または第2流体室31,32に供給される。この結果、流量制御弁により作動油の流量を調整して各複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32内に供給したり、第1および第2流体室31,32に供給される油圧を圧力センサにより検出して実油圧が目標圧力に一致するように流量制御弁をフィードバック制御したりする場合に比べて、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)の設定から短時間のうちに、各複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32に供給される油圧を当該目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)に実質的に一致させ、各複動シリンダ3が発生する推力を要求推力Ft(i)に応答性よく高精度に追従させることが可能となる。制御装置100Bは、ステップS100の処理の後、図19のルーチンを一旦終了させ、次の実行タイミングの到来に応じて再度ステップS10以降の処理を実行する。
上述のように、ロボット装置1Bは、それぞれ作動油(液体)の供給を受けて作動する複数の複動シリンダ3と、それぞれ電流の供給を受けて対応する複動シリンダ3の液室としての第1または第2流体室31,32に供給される作動油の圧力を調整する液圧調整装置としての複数のリニアソレノイドバルブ151-154と、制御装置100Bとを含む。制御装置100Bは、各複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32に供給される作動油の目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を設定すると共に(図19のステップS80B、図20)、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)と第1および第2流体室31,32に供給される作動油の流量Q1(i),Q2(i)とに基づいて電流指令値を設定し(図19のステップS90)、電流指令値に基づいてリニアソレノイドバルブ151-154を制御する(図19のステップS100)。
これにより、各複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32に供給される作動油の流量Q1(i),Q2(i)の過不足により各複動シリンダ3の動作の応答性が悪化するのを抑制しつつ、各複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32に目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)に応じた圧力の作動油を供給することができる。すなわち、本発明者等の研究・解析によれば、ロボット装置1Bにおいても、目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)と流量Q1(i),Q2(i)とに基づいて電流指令値を設定することで、当該流量Q1(i),Q2(i)を考慮することなく目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を電流指令値に直接変換する場合に比べて、各複動シリンダ3の動作の応答性や目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)に対する第1および第2流体室31,32内の油圧の追従性を向上させ得ることも確認されている。この結果、ロボット装置1Bにおいても、作動油の供給を受けて作動する各複動シリンダ3を応答性よく高精度に作動させることが可能となり、ロボットアーム2Bを応答性よく安定に作動させることができる。
また、制御装置100Bの流量推定部119Bは、各複動シリンダ3について、第1および第2流体室31,32の上記実行周期dtにおける容積変化量ΔV1(i)/dt,ΔV2(i)/dtを流量Q1(i),Q2(i)として算出する(図19のステップS85B、図21のステップS854B)。更に、制御装置100Bの電流指令値設定部111は、目標圧力Ptag1(i)と流量Q1(i)とに基づいて各複動シリンダ3の第1流体室31に対応したリニアソレノイドバルブ(第1ソレノイドバルブ)151,153に対する電流指令値を設定すると共に、目標圧力Ptag2(i)と流量Q2(i)とに基づいて各複動シリンダ3の第2流体室32に対応したリニアソレノイドバルブ(第2ソレノイドバルブ)152,154に対する電流指令値を設定する(図19のステップS90)。これにより、第1および第2流体室31,32に供給される作動油の流量Q1(i),Q2(i)に応じて電流指令値を適正に設定すると共に、各リニアソレノイドバルブ151-154によって各複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32に供給される作動油の圧力を目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)になるように精度よく調整することが可能となる。
更に、ロボット装置1Bの制御装置100Bは、図19のロボットアーム制御ルーチンを所定時間(実行周期dt)おきに繰り返し実行して目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を設定する(図19のステップS80B、図20)。また、制御装置100Bの流量推定部119Bは、上記実行周期dtにおける各複動シリンダ3のピストンロッド35の変位dr(i)に基づいて流量Q1(i),Q2(i)を算出する(図21のステップS852B-S854B)。これにより、各複動シリンダ3の第1および第2流体室31,32に供給される作動油の流量Q1(i),Q2(i)を適正に算出することが可能となる。
また、制御装置100Bの目標圧力設定部110Bは、各複動シリンダ3に要求される力を示す目標トルクTtag(i)(要求推力Ft(i))に応じた目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)を、ピストン34およびピストンロッド35が第1流体室31から第2流体室32に向かう方向に移動するときと、ピストン34等が第2流体室32から第1流体室31に向かう方向に移動するときとで変化させる(図20のステップS805B-S807B)。すなわち、複動シリンダ3は、第1流体室31に供給される油圧と第2流体室32に供給される油圧との差圧(絶対値)が同一であっても、ピストン34等の移動方向によって、当該複動シリンダ3により出力される推力の大きさが変化する、いわゆるヒステリシス特性を有する。従って、目標トルクTtag(i)に応じた目標圧力Ptag1(i),Ptag2(i)をピストン34等の移動方向に応じて変化させることで、ヒステリシス特性に起因して各複動シリンダ3により実際に出力される推力が要求推力Ft(i)からズレてしまうのを良好に抑制することが可能となる。
なお、ロボット装置1Bにおいて、複動シリンダ3の少なくとも何れか1つが、例えば互いに拮抗するように配置された2つの単動シリンダを含む複動アクチュエータで置き換えられてもよい。この場合、1つの単動シリンダに1つのソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブ)が設けられればよい。また、ロボット装置1Bにおいて、複動シリンダ3の少なくとも何れか1つが、複動アクチュエータとしての揺動モータで置き換えられてもよい。この場合、図20のステップS803Bでは、当該揺動モータに要求される要求回転トルクが設定されてもよく、図20のステップS807Bでは、当該要求回転トルクに対応した目標圧力Ptag1(i)およびに目標圧力Ptag2(i)が設定されてもよい。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
本開示の発明は、ロボット装置の製造産業等において利用可能である。
1 ロボット装置、2 ロボットアーム(ロボット本体)、3 複動シリンダ、30 シリンダ、31 第1流体室、32 第2流体室、34 ピストン、35 ピストンロッド、4 ハンド部(手先)、5a,5b,5c アーム(リンク)、10,10B 流体供給装置、15d ドレンポート、15e 電磁部、15f フィードバックポート、15i 入力ポート、15o 出力ポート、15o 出力ポート、15s スプール、15sp スプリング、100,100B 制御装置、107 収縮率設定部、108 収縮力算出部、109 目標圧力導出部、110,110B 目標圧力設定部、111 電流指令値設定部、118 容積推定部、119,119B 流量推定部、151,152,153,154,155,156 リニアソレノイドバルブ(液圧調整装置)、M1,M2,M3,M4,M5,M6 流体アクチュエータ(人工筋肉)。
Claims (10)
- 液体の供給を受けて作動する少なくとも1つの液圧アクチュエータを含むロボット装置において、
電流の供給を受けて前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の圧力を調整する液圧調整装置と、
前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の目標圧力を設定すると共に、前記目標圧力と前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の流量とに基づいて電流指令値を設定し、前記電流指令値に基づいて前記液圧調整装置を制御する制御装置と、
を備えるロボット装置。 - 請求項1に記載のロボット装置において、
前記液圧調整装置は、ソレノイドバルブであり、
前記制御装置は、前記液圧アクチュエータの液室の容積変化量を前記流量として算出し、前記目標圧力と前記流量とに基づいて前記電流指令値を設定するロボット装置。 - 請求項2に記載のロボット装置において、
前記液圧アクチュエータは、シリンダと、前記シリンダ内に摺動自在に配置されるピストンと、前記ピストンに固定されるピストンロッドと、前記ソレノイドバルブからの前記液体が供給される前記液室とを含む液圧シリンダであり、
前記制御装置は、所定時間おきに前記目標圧力を設定すると共に、前記所定時間における前記ピストンロッドの変位に基づいて前記流量を算出するロボット装置。 - 請求項3に記載のロボット装置において、
前記液圧シリンダの前記液室は、前記シリンダ内の前記ピストンの一側に画成される第1液室と、前記シリンダ内の前記ピストンの他側に画成される第2液室とを含み、
前記ソレノイドバルブは、前記第1液室への前記液体の圧力を調整する第1ソレノイドバルブと、前記第2液室への前記液体の圧力を調整する第2ソレノイドバルブとを含み、
前記制御装置は、前記第1および第2液室の各々について前記目標圧力を設定すると共に、前記ピストンが前記第1液室から前記第2液室に向かう方向に移動するときと、前記ピストンが前記第2液室から前記第1液室に向かう方向に移動するときとで、前記液圧アクチュエータに要求される力に応じた前記目標圧力を変化させるロボット装置。 - 請求項1に記載のロボット装置において、
前記液圧調整装置は、ソレノイドバルブであり、
前記液圧アクチュエータは、内部に前記液体が供給されると共に前記内部の圧力上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブを含み、
前記制御装置は、前記チューブの容積変化量を前記流量として算出し、前記目標圧力と前記流量とに基づいて前記電流指令値を設定するロボット装置。 - 請求項5に記載のロボット装置において、
前記制御装置は、所定時間おきに前記目標圧力を設定すると共に、前記目標圧力の前回値と前記チューブの収縮率とに基づいて前記チューブの今回の容積を算出し、前記容積の今回値と前回値との差を前記所定時間で除して前記流量を算出するロボット装置。 - 請求項5または6に記載のロボット装置において、
前記制御装置は、前記液圧アクチュエータに要求される力に応じた前記目標圧力を、前記チューブが前記軸方向に収縮するときと、前記チューブが前記軸方向に伸長するときとで変化させるロボット装置。 - 請求項1から7の何れか一項に記載のロボット装置において、
前記ソレノイドバルブは、電磁部、スプール、前記スプールを付勢するスプリング、前記液体が供給される入力ポート、出力ポート、前記出力ポートに連通するフィードバックポート、および前記入力ポートと前記出力ポートとに連通可能なドレンポートを含み、前記電磁部が発生する推力と、前記スプリングの付勢力と、前記出力ポートから前記フィードバックポートに供給される前記液体の圧力の作用により前記スプールに加えられる推力とをバランスさせて前記液体の圧力を調整するロボット装置。 - 請求項1から8の何れか一項に記載のロボット装置において、
少なくとも1つの関節と、複数のリンクとを含み、
前記関節を介して連結される2つの前記リンクは、少なくとも1つの前記液圧アクチュエータにより相対的に回動させられるロボット装置。 - 液体の供給を受けて作動する少なくとも1つの液圧アクチュエータと、電流の供給を受けて前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の圧力を調整する液圧調整装置とを含むロボット装置の制御方法であって、
前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の目標圧力を設定すると共に、前記目標圧力と前記液圧アクチュエータに供給される前記液体の流量とに基づいて電流指令値を設定し、前記電流指令値に基づいて前記液圧調整装置を制御するロボット装置の制御方法。
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JP2022036160A Pending JP2023041590A (ja) | 2021-09-13 | 2022-03-09 | ロボット装置およびその制御方法 |
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