JP2023038122A - ガラス物品の製造装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低粘性ガラスからガラスリボンを成形する場合でも、ガラスリボンの厚みの幅方向のばらつきを抑制する。【解決手段】溶融ガラスMからガラスリボンRを成形する成形装置1を備えるガラス物品の製造装置において、成形装置1は、溶融ガラスMを流下させる一対の側面5、および、一対の側面5を流下する溶融ガラスMを合流させる下端部6を有する成形体2と、成形体2の一対の側面5のそれぞれに溶融ガラスMを供給するスロット状流路3とを備える。【選択図】図1
Description
本発明は、フュージョン法によりガラス物品を製造するための技術の改良に関する。
ガラス板などのガラス物品の製造方法としては、フュージョン法(オーバーフローダウンドロー法)が用いられる場合がある。この製法では、成形装置が、略楔状の成形体を備えている。成形体に供給された溶融ガラスは、成形体の頂部に形成された溝(オーバーフロー溝)から溢れ出た後、成形体の両側面を伝って下端部で合流する。これにより、溶融ガラスから帯状のガラスリボンが連続成形される(例えば、特許文献1を参照)。
龜井三郎著、「化学機械の理論と計算(第2版)」産業図書、p.36-37
ガラス物品によっては、例えば高屈折率化を図る目的などから、低い液相粘度のガラスを用いて成形されることが要求される場合がある。
しかしながら、フュージョン法を用いて、このような低粘性の溶融ガラスからガラスリボンを成形する場合、成形体の頂部の溝から溢れ出る溶融ガラスの厚み(高さ)が、低粘性に起因して低くなりやすい。つまり、成形体の頂部の溝から溶融ガラスが均等に溢れ出にくくなる。その結果、成形体の側面を流下する溶融ガラスの流量が不安定になり、ガラスリボンの厚みが幅方向でばらつきやすいという問題がある。
本発明は、低粘性の溶融ガラスからガラスリボンを成形する場合でも、ガラスリボンの幅方向における厚みのばらつきを抑制することを課題とする。
(1) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形装置を備えるガラス物品の製造装置において、成形装置は、溶融ガラスを流下させる一対の側面、および、それぞれの側面を流下する溶融ガラスを合流させる下端部を有する成形体と、成形体の側面に溶融ガラスを供給するスロット状流路とを備えることを特徴とする。
このようにすれば、溶融ガラスは、スロット状流路を通じて成形体の側面に溶融ガラスが供給される。スロット状流路の流路断面は、スロット状(長孔状または長方形状)に絞られているため、スロット状流路を通過する際に溶融ガラスの流れに抵抗がかかる。つまり、スロット状流路において、溶融ガラスの流下速度を調整できる。そのため、低粘度の溶融ガラスであっても、成形体の側面に供給する溶融ガラスの流量が安定する。したがって、ガラスリボンの幅方向における厚みのばらつきを抑制できる。
(2) 上記(1)の構成において、成形装置は、スロット状流路に供給される溶融ガラスを貯留する貯留部を成形体の上方に備えることが好ましい。
このようにすれば、貯留部に貯留された溶融ガラスがスロット状流路の全体に均一な圧力で供給されるため、成形体の側面に供給する溶融ガラスの流量がさらに均等化し、ガラスリボンの幅方向における厚みのばらつきをさらに抑制できる。
(3) 上記(2)の構成において、貯留部は、上部が開放されていることが好ましい。
貯留部の上部が閉鎖されていると、貯留部内に圧力勾配が生じる。そのため、スロット状流路の形状を、圧力勾配を考慮した複雑な形状にしなければ、成形体の側面に供給する溶融ガラスの流量が幅方向で変化するおそれがある。したがって、貯留部の上部は、上述のように開放していることが好ましい。これにより、貯留部内に圧力勾配が生じにくくなるため、スロット状流路を複雑な形状としなくても、成形体の側面に供給する溶融ガラスの流量が幅方向で均等となる。
(4) 上記(2)又は(3)の構成において、成形体の側面は、鉛直面と、鉛直面の下端に繋がる逆斜面とを備え、成形装置は、鉛直面に沿って上下方向に延びる壁部材を備え、壁部材の下部は、鉛直面と隙間を介して対向し、スロット状流路は、鉛直面と、壁部材の下部とを含む部材で構成され、貯留部は、壁部材の上部を含む部材で構成されていることが好ましい。
このようにすれば、スロット状流路は、成形体の鉛直面に沿って配置される。ここで、スロット状流路を成形体の逆斜面に沿って配置すると、逆斜面では、溶融ガラスが離れる方向に重力が作用し、逆斜面と対向するスロット状流路の斜面(壁面)では、溶融ガラスが密着する方向に重力が作用する。つまり、溶融ガラスが、成形体の逆斜面から離れて、逆斜面と対向するスロット状流路の斜面に沿って流下しやすくなる。その結果、成形体と溶融ガラスとの間に空気を巻き込みやすくなる。そして、成形体の側面に付着した空気は抜けにくく、空気層が形成されやすい。その結果、空気層によって、溶融ガラスの流量変化や流れの不安定化が生じ、ガラスリボンの厚みが変化するおそれがある。また、成形されるガラスリボンに空気が混入して気泡が形成されるおそれもある。したがって、スロット状流路は、上述のように成形体の鉛直面に沿って配置することが好ましい。これにより、溶融ガラスが、鉛直面に沿って円滑に流下するため、成形体と溶融ガラスとの間に空気が巻き込まれる事態を抑制できる。
また、上記の構成によれば、貯留部が、壁部材の上部を含む部材で構成されるため、貯留部の体積を小さくでき、溶融ガラスの停滞を抑制できる。これにより、貯留部内に停滞に伴う異質ガラスが形成されにくくなるため、高品質のガラス物品(例えば板ガラス)を成形することが可能となる。
(5) 上記(1)~(4)のいずれかの構成において、成形体の側面は、鉛直面と、鉛直部の下端に繋がる逆斜面とを備え、スロット状流路は、鉛直面に沿って配置されていることが好ましい。
このようにすれば、上述した同様の理由により、溶融ガラスが、鉛直面に沿って円滑に流下するため、成形体と溶融ガラスとの間に空気が巻き込まれる事態を抑制できる。
(6) 上記(1)~(5)のいずれかの構成において、スロット状流路の隙間の大きさをG[cm]とした場合、Gが下記の式のtに対し、G≦tの関係を満たすことが好ましい。
t:溶融ガラスの厚み[cm]
ρ:溶融ガラスの密度[g/cm3]
g:重力加速度[cm/s2]
θ:スロット状流路が配置された位置における、成形体の側面の鉛直方向とのなす角[°]
μ:溶融ガラスの粘度[poise]
V:溶融ガラスの流量[cm3/s]
ρ:溶融ガラスの密度[g/cm3]
g:重力加速度[cm/s2]
θ:スロット状流路が配置された位置における、成形体の側面の鉛直方向とのなす角[°]
μ:溶融ガラスの粘度[poise]
V:溶融ガラスの流量[cm3/s]
ここで、tは、成形体の側面を流下する溶融ガラスの厚みの推定値である(非特許文献1を参照)。そのため、上記の構成のようにG≦tとすれば、スロット状流路全体が、溶融ガラスで確実に満たされる。その結果、成形体の側面に対する溶融ガラスの供給量が安定するとともに、成形体と溶融ガラスとの間に空気が巻き込まれる事態を抑制できる。
(7) 上記(1)~(6)のいずれかの構成において、成形装置は、成形体の側面を流下する溶融ガラスの幅方向両端部を案内するガイド部材を備えることが好ましい。
このようにすれば、溶融ガラスの幅方向両端部がガイド部材によって規制されながら案内されるため、成形体の側面を流下する溶融ガラスの幅方向寸法を一定にすることができる。その結果、成形されるガラスリボンの幅方向寸法が安定する。
(8) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形工程を備えるガラス物品の製造方法において、成形工程では、スロット状流路を介して成形体の一対の側面に溶融ガラスを供給するとともに、それぞれの側面を流下する溶融ガラスを成形体の下端部で合流させ、ガラスリボンを成形することを特徴とする。
このようにすれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
本発明によれば、低粘性の溶融ガラスからガラスリボンを成形する場合でも、ガラスリボンの幅方向における厚みのばらつきを抑制できる。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、図中に示すXYZからなる直交座標系において、X方向及びY方向が水平方向であり、Z方向が鉛直方向である。また、水平方向のうち、X方向を幅方向と呼ぶ。さらに、各実施形態において対応する構成要素には同一符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
(第一実施形態)
図1~図4に示すように、第一実施形態に係るガラス物品の製造装置は、溶融ガラスMから帯状のガラスリボンRを成形する成形装置1を備える。
図1~図4に示すように、第一実施形態に係るガラス物品の製造装置は、溶融ガラスMから帯状のガラスリボンRを成形する成形装置1を備える。
成形装置1は、成形体2と、スロット状流路3と、貯留部4とを備える。
成形体2は、幅方向Xに沿って長尺な耐火物により形成されている。成形体2は、溶融ガラスMを流下させる一対の側面5と、それぞれの側面5を流下する溶融ガラスMを合流させる下端部6とを有する断面略楔状の部材である。本実施形態では、側面5は、鉛直面5aと、鉛直面5aの下端に繋がる逆斜面5bとを有する。それぞれの側面5の逆斜面5bの下端部が互いに交わる部分が、成形体2の下端部6とされる。
本実施形態では、成形体2の頂部には、幅方向Xに沿って延びる溝7が形成されている。つまり、成形体2としては、フュージョン法を実行するために設計された成形体をそのまま使用できる。溝7の深さは、一定であってもよいが、幅方向Xの一端側から他端側に向かうに連れて漸次浅くなるようにしてもよい。溝7の内部には、溝7の幅方向Xの一端側に設けられた供給管8を通じて溶融ガラスMが供給される。なお、溶融ガラスMの供給方法はこれに限定されない。例えば、溝7の幅方向Xの両端側から溶融ガラスMを供給するようにしてもよいし、溝7の上方から溶融ガラスMを供給するようにしてもよい。なお、成形体2の溶融ガラスと接触する部分には、溶射被膜(例えば白金溶射被膜)を設けてもよい。
スロット状流路3は、成形体2のそれぞれの側面5に溶融ガラスMを供給するように、それぞれの側面5に設けられている。本実施形態では、スロット状流路3は、成形体2の鉛直面5aに沿って配置されている。つまり、スロット状流路3は、成形体2の逆斜面5bには配置されていない。
スロット状流路3は、幅方向Xに沿って長尺なスロット状(長孔状または長方形状)であり、流路の断面形状は鉛直方向Zのいずれの位置でも一定である(図2及び図3を参照)。スロット状流路3の上端には、スロット状流路3内に溶融ガラスMを流入させるための流入口3aが設けられている。スロット状流路3の下端には、スロット状流路3内の溶融ガラスMを流出させるための流出口3bが設けられている。なお、図面の理解を容易にするため、図1では流入口3a及び流出口3bにクロスハッチングを施している(後述の図5も同様)。
本実施形態では、流入口3aは、成形体2の鉛直面5aの上端に設けられており、流出口3bは、成形体2の鉛直面5aの上端と下端の間に設けられている。このように流入口3aを成形体2の鉛直面5aの上端と同じ高さに設けることにより、スロット状流路3内に溶融ガラスMが流入しやすくなる。一方、流出口3bを成形体2の鉛直面5aの上端と下端の間に設けることにより、成形体2の側面5を流下する溶融ガラスMの流れが安定する。また、溶融ガラスMの外表面(成形体2と接触する面と反対側の面)が他部材と接触する時間が短くなり、ガラスリボンRの表面性状が良好になる。特に、ガラスリボンRの表面性状を良好に維持する観点からは、逆斜面5aでは、溶融ガラスMの外表面が他部材と接触しないことが重要となる。
なお、本実施形態では、図4に示すように、流出口3bを出た後に溶融ガラスMが鉛直面5aに沿って流下する距離L1が、溶融ガラスMが逆斜面5bに沿って流下する距離L2よりも短くなるように設定されている。成形体2の側面5を流下する溶融ガラスMは、流れ方向が垂直下方となる時の流速が最も速く、厚みが薄くなる傾向がある。そのため、溶融ガラスMが低粘性の場合、流出口3bを出た後に溶融ガラスMが鉛直面5aに沿って流下する距離L1が長くなると、溶融ガラスMの流れが不安定となって乱れが生じるおそれがある。したがって、L1<L2となることが望ましい。
貯留部4は、スロット状流路3に供給する溶融ガラスMを貯留するための槽であり、成形体2の真上に設けられている。貯留部4の上部は、貯留部4の内部に圧力勾配が生じるのを抑制するために開放されている。つまり、貯留部4の上部には、開口部4aが形成されている。これにより、スロット状流路3の流入口3a全体に均一な圧力がかかる。
成形装置1は、スロット状流路3及び貯留部4を形成するために、成形体2の周囲を取り囲むカバー部材9を備える。カバー部材9は、例えば耐火物や白金、白金合金により構成され、これらを組み合わせて構成されてもよい。耐火物で構成する場合、溶融ガラスと接触する部分に溶射被膜(例えば白金溶射被膜)を設けてもよい。カバー部材9は、成形体2の鉛直面5aに沿って上下方向に延びる壁部材10を備える。壁部材10の下部10bは、鉛直面5aと隙間を介して対向し、壁部材10の上部10aは、鉛直面5aに沿った状態を維持しながら、成形体2の上方に延び出している。つまり、スロット状流路3は、鉛直面5aと、壁部材10の下部10bとを含む部材で構成され、貯留部4は、壁部材10の上部10aを含む部材で構成されている。
スロット状流路3の隙間の大きさをG[cm]とした場合、Gが下記の式のtに対し、G≦tの関係を満たすことが好ましい。なお、本実施形態では、スロット状流路3の隙間の大きさは、幅方向X及び鉛直方向Zで一定である。
t:溶融ガラスの厚み[cm]
ρ:溶融ガラスの密度[g/cm3]
g:重力加速度[cm/s2]
θ:スロット状流路が配置された位置における、成形体の側面の鉛直方向とのなす角[°]
μ:溶融ガラスの粘度[poise]
V:溶融ガラスの流量(体積流量)[cm3/s]
ρ:溶融ガラスの密度[g/cm3]
g:重力加速度[cm/s2]
θ:スロット状流路が配置された位置における、成形体の側面の鉛直方向とのなす角[°]
μ:溶融ガラスの粘度[poise]
V:溶融ガラスの流量(体積流量)[cm3/s]
本実施形態では、スロット状流路3は、成形体2の鉛直面5aに設けられているため、式中のθは0°(つまり、cosθ=1)である。
カバー部材9は、スロット状流路3の流出口3bから流出した後に、成形体2の側面5(具体的には、鉛直面5aの下端近傍及び逆斜面5b)を流下する溶融ガラスMの幅方向両端部を案内する一対の板状のガイド部材11をさらに備える。スロット状流路3の流出口3bは、一対のガイド部材11の間に溶融ガラスMを供給する。これにより、成形体2の側面5を流下する溶融ガラスMの幅方向寸法が一定になるため、成形されるガラスリボンRの幅方向寸法が安定する。
次に、以上のように構成された製造装置を用いたガラス物品の製造方法を説明する。なお、ガラス物品がガラス板である場合を例示する。
本実施形態に係るガラス物品の製造方法は、成形装置1を用いて溶融ガラスMからガラスリボンRを成形する成形工程(図4を参照)と、ガラスリボンRを徐冷する徐冷工程と、ガラスリボンRを冷却する冷却工程(図示省略)と、ガラスリボンRを所定長さ毎に幅方向Xに切断してガラス板を得る第一切断工程(図示省略)と、ガラス板の幅方向両端部の耳部を切断して除去する第二切断工程(図示省略)とを備える。なお、以下では、成形工程を中心に説明する。
図4に示すように、成形工程では、まず、供給管8を通じて貯留部4に溶融ガラスMが供給される。貯留部4の上部は開放されているため、貯留部4内の溶融ガラスMの液面は水平となる。なお、本実施形態では、供給管8を通じて、貯留部4の一部を構成する溝7の内部に溶融ガラスMが供給される。そのため、貯留部4の底側から溶融ガラスMが押し出され、貯留部4内にガラス停滞層が形成されるのを抑制する効果が期待できる。ここで、ガラス停滞層は異質ガラスの発生原因となるため、ガラスリボンRの品質低下にも繋がるおそれがある。したがって、貯留部4内にガラス停滞層が形成されるのを抑制することが好ましい。
貯留部4に貯留された溶融ガラスMは、スロット状流路3を通じて成形体2の側面5に供給される。スロット状流路3を通じて成形体2の側面5に供給された溶融ガラスMは、ガイド部材11によって幅方向Xの広がりを規制されながら、成形体2の鉛直面5a及び逆斜面5bに沿って流下する。そして、成形体2の下端部6において、成形体2のそれぞれの側面5を流下する溶融ガラスMが合流し、帯状のガラスリボンRが成形される。なお、成形体2の下方では、ガラスリボンRの幅方向Xの収縮を抑制するために、ガラスリボンRの幅方向両端部のそれぞれが、エッジローラ(冷却ローラ)12によって挟持される。これにより、ガラスリボンRの幅方向両端部に、幅方向中央部よりも相対的に厚みが大きくなる耳部が形成される。そして、ガラスリボンRが、徐冷工程、冷却工程、第一切断工程および第二切断工程を経ることで、耳部が除去されたガラス板が製造される。
このような製造方法では、スロット状流路3の流路断面が、スロット状に絞られているため、スロット状流路3を通過する際に溶融ガラスMの流れに抵抗がかかる。つまり、スロット状流路3において、溶融ガラスMの流下速度を調整できる。そのため、低粘度の溶融ガラスMであっても、成形体2の側面5に供給する溶融ガラスMの流量が幅方向Xで均一となる。したがって、ガラスリボンRの幅方向Xにおける厚みのばらつきを抑制できる。つまり、ガラスリボンRから得られるガラス板も厚みのばらつきが小さくなる。
また、スロット状流路3は、成形体2の鉛直面5aに沿って配置されているため、溶融ガラスMが鉛直面5aに沿って円滑に流下し、成形体2と溶融ガラスMとの間に空気が巻き込まれる事態を抑制できる。その結果、成形体2の側面5に空気層が形成されにくくなる。したがって、空気層によってガラスリボンRの厚みが変化するという事態を抑制できる。また、ガラスリボンRにおける気泡の発生も抑制できる。
ここで、溶融ガラスMは、質量%で、TiO2+Nb2O5 10~31%、B2O3 4~15%、SiO2 3~20%、Ln2O3(LnはLa、Gd、Y及びYbから選択される少なくとも1種) 40~65%、ZrO2 0~10%を含有することが好ましい。このようなガラス組成を有する溶融ガラスMであれば、高屈折率(例えば、屈折率が1.65以上)かつ化学的耐久性に優れるガラス板を製造できる。
成形温度における溶融ガラスMの粘度は、101poise以下、100.9poise以下、特に100.8poise以下であってもよい。このような低粘度の溶融ガラスMに対して、本発明は特に有効である。
なお、ガラスリボンRから得られるガラス板は、例えば、導光板として好適である。導光板としては、例えば、プロジェクター付きメガネ、眼鏡型またはゴーグル型ディスプレイ、仮想現実(VR)または拡張現実(AR)表示装置、及び、虚像表示装置から選択されるウェアラブル画像表示機器に使用される導光板が挙げられる。
(第二実施形態)
図5~図8に示すように、第二実施形態に係るガラス物品の製造装置及び製造方法が、第一実施形態と相違するところは、成形体2の形状と、貯留部4への溶融ガラスMの供給方法である。以下、これら相違点を中心に説明する。
図5~図8に示すように、第二実施形態に係るガラス物品の製造装置及び製造方法が、第一実施形態と相違するところは、成形体2の形状と、貯留部4への溶融ガラスMの供給方法である。以下、これら相違点を中心に説明する。
成形体2は、第一実施形態と同様に、断面略楔状の部材であって、一対の側面5が、鉛直面5aと、逆斜面5bとを有する。一方、第一実施形態と異なり、成形体2の頂部には、溝が形成されていない。つまり、成形体2の頂部は、水平方向に延びる平面とされている。
供給管8は、第一実施形態と異なり、貯留部4の上部の開口部4aに対応する位置に配置されており、貯留部4の上部の開口部4aを通じて、供給管8から溶融ガラスMを貯留部4内に供給されるようになっている。
なお、スロット状流路3は、第一実施形態と同様に、成形体2のそれぞれの側面5に溶融ガラスMを供給するように、それぞれの側面5の鉛直面5aに沿って配置されている。
このような構成でも、スロット状流路3によって成形体2の側面5の溶融ガラスMを供給できるため、ガラスリボンRの幅方向Xにおける厚みのばらつきを抑制できる。
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記の実施形態では、スロット状流路3を成形体2の鉛直面5aに沿って配置する場合を説明したが、成形体2の側面5に溶融ガラスMを供給できる限り、スロット状流路3の配置位置は特に限定されない。スロット状流路3は、成形体2の鉛直面5aに沿って配置される第一流路と、第一流路の下端に連通し且つ成形体2の逆斜面5bに沿って配置される第二流路とを備えていてもよい。ただし、逆斜面5bに沿ってスロット状流路3を配置すると、成形体2と溶融ガラスMとの間に空気を巻き込むおそれがある。したがって、スロット状流路3は、成形体2の鉛直面5aのみに沿うように配置することが好ましい。
上記の実施形態では、成形体2の側面5が、鉛直面5aを有する場合を説明したが、鉛直面5aは、傾斜面や曲面などに形状を変更してもよいし、省略してもよい。ただし、ガラスリボンRの幅方向Xにおける厚みのばらつきを抑制する観点からは、成形体2の側面5は、鉛直面5aを有することが好ましい。
上記の実施形態では、貯留部4の上部を開放する場合を説明したが、貯留部4の上部は閉鎖してもよい。ただし、貯留部4の上部を閉鎖した場合、貯留部4内に圧力勾配が生じるため、スロット状流路3の形状を圧力勾配に応じて変化させる必要がある。例えば、圧力が高い領域では、スロット状流路3の隙間を相対的に大きくし、圧力が低い領域では、スロット状流路3の隙間を相対的に小さくする。このように圧力勾配に応じてスロット状流路3の形状を変化させた場合、スロット状流路3の形状が複雑化する傾向がある。そのため、スロット状流路3の形状を単純化する観点からは、貯留部4の上部を開放することが好ましい。
上記の実施形態では、ガラス物品がガラス板である場合を説明したが、ガラス物品は、例えば、ガラスリボンを巻芯などの周りにロール状に巻き取ったガラスロールなどであってもよい。
図5~図8に示した第二実施形態に係る成形装置を用いた場合の効果を数値解析により確認した。数値解析では、貯留部における溶融ガラスの液面レベルと、成形体の鉛直面に沿って設けられたスロット流路の流出口における溶融ガラスの流量の幅方向分布とを確認した。なお、数値解析の条件は下記のとおりである。
(1)スロット流路
スロット流路の幅方向寸法:45cm
スロット流路の隙間の大きさG:0.023cm
スロット流路の流路長(鉛直方向長さ):0.5cm
(2)溶融ガラス
貯留部に供給する溶融ガラスの粘度:100.84poise
貯留部に供給する溶融ガラスの流量:0.28cm3/s
貯留部に供給する溶融ガラスの密度:5g/cm3
(1)スロット流路
スロット流路の幅方向寸法:45cm
スロット流路の隙間の大きさG:0.023cm
スロット流路の流路長(鉛直方向長さ):0.5cm
(2)溶融ガラス
貯留部に供給する溶融ガラスの粘度:100.84poise
貯留部に供給する溶融ガラスの流量:0.28cm3/s
貯留部に供給する溶融ガラスの密度:5g/cm3
上記の数値解析の結果を図9に示す。なお、同図において、溶融ガラスの流量は、幅方向に分割した各区間の流量を全流量に対する割合[%]で表している。この結果からも、貯留部における溶融ガラスの液面レベルはほぼ水平であり、成形体の側面を流下する溶融ガラスの流量は幅方向で均一であることが確認できる。
1 成形装置
2 成形体
3 スロット状流路
3a 流入口
3b 流出口
4 貯留部
5 側面
5a 鉛直面
5b 逆斜面
6 下端部
7 溝
8 供給管
9 カバー部材
10 壁部材
11 ガイド部材
R ガラスリボン
M 溶融ガラス
2 成形体
3 スロット状流路
3a 流入口
3b 流出口
4 貯留部
5 側面
5a 鉛直面
5b 逆斜面
6 下端部
7 溝
8 供給管
9 カバー部材
10 壁部材
11 ガイド部材
R ガラスリボン
M 溶融ガラス
Claims (8)
- 溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形装置を備えるガラス物品の製造装置において、
前記成形装置は、
前記溶融ガラスを流下させる一対の側面、および、それぞれの前記側面を流下する前記溶融ガラスを合流させる下端部を有する成形体と、
前記成形体の前記側面に前記溶融ガラスを供給するスロット状流路とを備えることを特徴とするガラス物品の製造装置。 - 前記成形装置は、前記スロット状流路に供給される前記溶融ガラスを貯留する貯留部を成形体の上方に備える請求項1に記載のガラス物品の製造装置。
- 前記貯留部は、上部が開放されている請求項2に記載のガラス物品の製造装置。
- 前記成形体の前記側面は、鉛直面と、前記鉛直面の下端に繋がる逆斜面とを備え、
前記成形装置は、前記鉛直面に沿って上下方向に延びる壁部材を備え、
前記壁部材の下部は、前記鉛直面と隙間を介して対向し、
前記スロット状流路は、前記壁部材の下部と、前記鉛直面とを含む部材で構成され、
前記貯留部は、前記壁部材の上部を含む部材で構成されている請求項2又は3に記載のガラス物品の製造装置。 - 前記成形体の前記側面は、鉛直面と、前記鉛直部の下端に繋がる逆斜面とを備え、
前記スロット状流路は、前記鉛直面に沿って配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス物品の製造装置。 - 前記成形装置は、前記成形体の前記側面を流下する前記溶融ガラスの幅方向両端部を案内するガイド部材を備える請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス物品の製造装置。
- 溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形工程を備えるガラス物品の製造方法において、
前記成形工程では、スロット状流路を介して成形体の一対の側面に前記溶融ガラスを供給するとともに、それぞれの前記側面を流下する前記溶融ガラスを前記成形体の下端部で合流させ、前記ガラスリボンを成形することを特徴とするガラス物品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021145057A JP2023038122A (ja) | 2021-09-06 | 2021-09-06 | ガラス物品の製造装置及びその製造方法 |
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JP2023038122A true JP2023038122A (ja) | 2023-03-16 |
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Family Applications (1)
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JP2021145057A Pending JP2023038122A (ja) | 2021-09-06 | 2021-09-06 | ガラス物品の製造装置及びその製造方法 |
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2021
- 2021-09-06 JP JP2021145057A patent/JP2023038122A/ja active Pending
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