JP2023035491A - イネ科植物の育成方法及びイネ科植物育成用装置 - Google Patents

イネ科植物の育成方法及びイネ科植物育成用装置 Download PDF

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淳一 田中
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洋二郎 谷口
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Abstract

【課題】品質が高く、種子質量が大きい交配種子を得ることができ、安定的に高速世代促進技術を用いた育種を行うことができるイネ科植物の育成方法及びイネ科植物育成用装置の提供。【解決手段】外部光を遮蔽して人工光のみをイネ科植物に照射してイネ科植物を育成させるイネ科植物の育成方法であって、前記人工光として白色光をイネ科植物に照射して育成させる第1の工程と、前記人工光として、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を前記第1の工程で育成させたイネ科植物に照射して育成させる第2の工程と、を含み、前記イネ科植物の交配期間に、前記第1の工程から前記第2の工程に変更するイネ科植物の育成方法である。【選択図】図1B

Description

本発明は、イネ科植物の育成方法及びイネ科植物育成用装置に関する。
イネ科植物の高速世代促進技術は、1)短期間での準同質遺伝子系統(NILs)の開発、2)NILsを起点とする高速遺伝子集積、3)育種選抜初期集団の高速開発など、効率的及び効果的な品種開発のための基盤技術としてその応用が期待されている。いずれの場面でも、目的の品種や系統間の交配が必要になる。
一般的に、高速世代促進条件下で得られるイネ科植物の植物体及びその穂は小さく、穎花数が限られている。このような中、確実に交配種子を得て、得られた種子を確実に発芽させ、良好に生育させることは、高速世代促進技術を用いた育種システムを安定的に運用するために不可欠である。
従来、高速世代促進技術を用いた育種システムにおいて、光条件が重要であることが知られている。例えば、イネを密植条件かつ短日条件で、青色光を照射して栽培するイネの生産方法が提案されている(特許文献1参照)。この提案の方法では、青色光によりイネの開花が促進され、密植条件とすることにより穂の総数が増えるため、イネを短期間で低コストに育成収穫することができる。
また、間欠的な光、具体的には赤色LEDをイネに照射し、イネにおける照度がイネの光補償点以下の照度であるイネの育成方法も提案されている(特許文献2及び非特許文献1参照)。この提案の方法では、イネの生育を促進し、収穫量を増大させることができる。具体的には、収穫した籾及び玄米の全体の重さ、全粒数、1穂当り粒数、1m当り穂重、1m当り粒数などを増大させることができる。しかしながら、この提案の方法では、1,000粒重には変化がなく、玄米自体の大きさや登熟に影響を与えるものではない。
したがって、発芽率及びその後の生育が良好である品質の高い交配種子を得ることができ、安定的に高速世代促進技術を用いた育種を行うことができるイネ科植物の育成方法、前記イネ科植物の育成方法に使用し得るイネ科植物育成用装置の提供が強く望まれているのが現状である。
特開2010-233509号公報 特開2005-176798号公報
中村 和重ら,明治大学農学部研究報告,第138号(2004),p.35~39
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、品質が高く、種子質量が大きい交配種子を得ることができ、安定的に高速世代促進技術を用いた育種を行うことができるイネ科植物の育成方法及びイネ科植物育成用装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 外部光を遮蔽して人工光のみをイネ科植物に照射してイネ科植物を育成させるイネ科植物の育成方法であって、
前記人工光として白色光をイネ科植物に照射して育成させる第1の工程と、
前記人工光として、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を前記第1の工程で育成させたイネ科植物に照射して育成させる第2の工程と、
を含み、
前記イネ科植物の交配期間に、前記第1の工程から前記第2の工程に変更することを特徴とするイネ科植物の育成方法である。
<2> 外部光を遮蔽して人工光のみをイネ科植物に照射してイネ科植物を育成させるイネ科植物の育成方法であって、
前記人工光として白色光をイネ科植物に照射して育成させる第1の工程と、
前記人工光として、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光を前記第1の工程で育成させたイネ科植物に照射して育成させる第2の工程と、
を含み、
前記イネ科植物の交配期間に、前記第1の工程から前記第2の工程に変更することを特徴とするイネ科植物の育成方法である。
<3> 第2の工程の人工光は、波長380nm以上780nm以下の波長領域の発光スペクトルにおいて、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長400nm以上490nm以下の波長領域を定積分した値Bfとが、Rf>Bfを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長490nm超え550nm未満の波長領域を定積分した値Gfとが、Rf>Gfを満たす人工光である前記<1>から<2>のいずれかに記載のイネ科植物の育成方法である。
<4> 第1の工程において、イネ科植物の交配が、切穎したイネ科植物を用いて行われる前記<1>から<3>のいずれかに記載のイネ科植物の育成方法である。
<5> イネ科植物の世代促進のために用いられる前記<1>から<4>のいずれかに記載のイネ科植物の育成方法である。
<6> イネ科植物の育成のために用いられるイネ科植物育成用装置であって、
前記イネ科植物を収容可能な収容手段と、
前記収容手段の内部に白色光を照射する第1の光照射手段と、
前記収容手段の内部に、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を照射する第2の光照射手段と、
前記第1の光照射手段と、前記第2の光照射手段とを切り替える切替え手段と、
を有することを特徴とするイネ科植物育成用装置である。
<7> イネ科植物の育成のために用いられるイネ科植物育成用装置であって、
前記イネ科植物を収容可能な収容手段と、
前記収容手段の内部に白色光を照射する第1の光照射手段と、
前記収容手段の内部に、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光を照射する第2の光照射手段と、
前記第1の光照射手段と、前記第2の光照射手段とを切り替える切替え手段と、
を有することを特徴とするイネ科植物育成用装置である。
<8> 第2の光照射手段が照射する光は、波長380nm以上780nm以下の波長領域の発光スペクトルにおいて、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長400nm以上490nm以下の波長領域を定積分した値Bfとが、Rf>Bfを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長490nm超え550nm未満の波長領域を定積分した値Gfとが、Rf>Gfを満たす人工光である前記<6>から<7>のいずれかに記載のイネ科植物育成用装置である。
<9> 切穎したイネ科植物を用いて人工的に交配させたイネ科植物の育成のために用いられる前記<6>から<8>のいずれかに記載のイネ科植物育成用装置である。
<10> イネ科植物の世代促進のために用いられる前記<6>から<9>のいずれかに記載のイネ科植物育成用装置である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、品質が高く、種子質量が大きい交配種子を得ることができ、安定的に高速世代促進技術を用いた育種を行うことができるイネ科植物の育成方法及びイネ科植物育成用装置を提供することができる。
図1Aは、白色光の発光スペクトルの一例を示す図である。横軸は波長(nm)、縦軸は相対光強度である。 図1Bは、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光、又は発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光の発光スペクトルの一例を示す図である。横軸は波長(nm)、縦軸は相対光強度である。 図1Cは、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光、又は発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光の発光スペクトルの別の一例を示す図である。横軸は波長(nm)、縦軸は相対光強度である。 図1Dは、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たすが、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R<Bである光の一例を示す図である。横軸は波長(nm)、縦軸は相対光強度である。 図1Eは、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長615nm以上650nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光の一例を示す図である。横軸は波長(nm)、縦軸は相対光強度である。 図2は、試験例2において、実施例1及び2、並びに、比較例1及び2で得られた交配種子Fの質量を測定した結果を示す図である。縦軸は、玄米の平均質量(mg)である。 図3は、本発明のイネ科植物育成用装置の全体構成の一例を示す図であり、イネ科植物育成用装置の前面の一部を破断してその内部の主要な構成を示す正面図である。 図4は、本発明のイネ科植物育成用装置の全体構成の一例を示す図であり、イネ科植物育成用装置の側面の一部を破断してその内部構成としての収容手段を主体に示す右側面図である。 図5は、本発明のイネ科植物育成用装置の内部構成を示した平断面図である。 図6Aは、本発明のイネ科植物育成用装置の収容手段内における光源(第1の光照射手段及び第2の光照射手段)の配置の一例を示す収容手段の概略横断面図である。 図6Bは、本発明のイネ科植物育成用装置の収容手段の天井面における光源の配置を示した図6A中のb-b矢視方向の平面図である。 図6Cは、本発明のイネ科植物育成用装置の光源の構成の一例を示す概略外形図である。 図6Dは、本発明のイネ科植物育成用装置の光源が照射する光の照射パターンの一例を示す図である。 図6Eは、本発明のイネ科植物育成用装置の光源が照射する光の照射パターンの別の一例を示す図である。 図7Aは、本発明のイネ科植物育成用装置の各収容手段の収容手段内の温変化の一例を示すグラフである。 図7Bは、本発明のイネ科植物育成用装置の各収容手段の昼夜サイクルと共に変化する収容手段内の温変化の一例を示すグラフである。 図7Cは、本発明のイネ科植物育成用装置の各収容手段で昼夜サイクルを互いに異なるように設定した収容手段内の温変化の一例を示すグラフである。
(イネ科植物の育成方法)
本発明のイネ科植物の育成方法は、外部光を遮蔽して人工光のみをイネ科植物に照射してイネ科植物を育成させるイネ科植物の育成方法であり、第1の工程と、第2の工程とを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。前記第1の工程から前記第2の工程に変更する時期は、前記イネ科植物の交配期間である。
前記イネ科植物の育成方法は、後述する本発明のイネ科植物育成用装置により好適に行うことができる。
前記イネ科植物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イネ等のイネ属(Oryza)に属する植物;パンコムギ、クラブコムギ、デュラムコムギ等のコムギ属(Triticum)に属する植物;トウモロコシ等のトウモロコシ属(Zea)に属する植物;オオムギ等のオオムギ属(Hordeum)に属する植物;ライムギ等のライムギ属(Secale cereale)に属する植物;ケイヌビエ、タイヌビエ等のヒエ属(Echinochloa)に属する植物;スズメノヒエ、シマスズメノヒエ等のスズメノヒエ属(Paspalum)に属する植物;シコクビエ、オヒシバ等のオヒシバ属(Eleusine)に属する植物;メヒシバ等のメヒシバ属(Digitaria)に属する植物;アワ、アキノエノコログサ、エノコログサ、キンエノコロ、コツブキンエノコロ等のエノコログサ属(Setaria)に属する植物;コバンソウ、ヒメコバンソウ等のコバンソウ属(Briza)に属する植物;ススキ等のススキ属(Miscanthus)に属する植物;メリケンカルカヤ等のウシクサ属(Andropogon)に属する植物;カゼクサ、オオニワホコリ等のスズメガヤ属(Eragrostis)に属する植物;セイバンモロコシ等のモロコシ属(Sorghum)に属する植物;ヌカキビ等のキビ属(Panicum)に属する植物などが挙げられる。これらの中でも、イネ属(Oryza)に属する植物が好ましい。
前記イネ科植物として、イネ属に属する植物を用いる場合、そのイネ品種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記イネ属に属する植物の品種群としては、例えば、ジャポニカ種、熱帯ジャポニカ種、インディカ種、ジャワニカ種などが挙げられる。
また、前記イネ属に属する植物の形状的分類としては、例えば、長粒種、短粒種、中粒種などが挙げられる。
本発明においては、これらのいずれも使用することができる。
本明細書において、「外部光」とは、工程ごとにその定義が異なる。
前記第1の工程において、「外部光」とは、白色光以外の光を意味する。
前記第2の工程において、「外部光」とは、以下の(1)又は(2)以外の光を意味する。
(1)発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光。
(2)発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光。
したがって、前記外部光としては、太陽光等の自然光に限られず、上記した第1の工程又は前記第2の工程で使用される人工光以外の人工光も含まれる。
本明細書において、「遮蔽」とは、外部光の影響を受けない環境を意味する。したがって、外部光の影響を受けない環境とすることができる限り、部分的遮蔽であってもよく、完全遮蔽であってもよいが、完全遮蔽であることが好ましい。これにより、前記イネ科植物に、人工光のみを照射することができる。
前記遮蔽の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、外部光を透過しない構成を有するインキュベーター、恒温装置又は恒温室、バイオトロンなどを使用する方法が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、「人工光」とは、人工的な光源から発せられた光を意味する。
前記人工的な光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、電灯、ストロボ、ネオン管、ブラウン管、発光ダイオード(LED:Light Emission Diode)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、蛍光灯、LEDが好ましい。
<第1の工程>
前記第1の工程は、前記人工光として白色光を前記イネ科植物に照射して育成させる工程である。前記第1の工程から前記第2の工程に変更する時期は、前記イネ科植物の交配期間である。したがって、前記第1の工程は、前記イネ科植物の種子から交配期間まで、前記イネ科植物を育成させる工程である。
前記第1の工程により、前記イネ科植物の到穂日数を短縮することができる。
前記イネ科植物の種子としては、発芽し得る状態のものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記イネ科植物の種子を入手する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、該イネ科植物を圃場等の野外で育成させて得られた種子であってもよく、該イネ科植物を人工環境下で育成させて得られた種子であってもよい。これらの中でも、高速世代促進技術を用いた育種において、迅速に前記イネ科植物の種子を得る観点から、前記イネ科植物を人工環境下で育成させて得られた種子が好ましい。
前記「交配」とは、前記イネ科植物の一の個体のめしべ(「雌」と称することがある)に、別の異なる個体の花粉(「雄」と称することがある)をかけることを意味し、これにより種子を得ることを「交配育種」という。
前記雌の植物個体は「種子親」、前記雄の植物個体は「花粉親」と呼ばれ、前記交配により得られた交配種子は、「F」と呼ばれる。また、前記「交配」には、Fに、種子親又は花粉親を交配させる戻し交配も含まれる。
前記イネ科植物は自家受粉を行うため、通常、異なるイネ科植物の品種同士の交配は起こらない。そのため、前記「交配」を行う際は、通常、種子親は自己の花粉を受精しないようにするため、温湯除雄法によりおしべの花粉の活性を失活させる処理を行った後、種子親のめしべに、前記花粉親の花粉をふりかけることにより行われる。
前記交配を行う際、種子親のめしべに、花粉親の花粉をかける回数としては、1回であってもよく、複数回であってもよいが、複数回であることが好ましい。
また、前記交配を行う際、種子親のめしべに、花粉親の花粉をかける頻度及び方法としては、開花当日を含む2日間、好ましくは開花当日を含む5日間、開花から1時間以内に1回、好ましくは開花から2時間に渡り、15分毎に7回、交配袋を左右に揺らす方法が、交配の効率を高めることができる点で好ましい。
前記イネ科植物の交配が行われたことは、交配後の果実が稔実し、穎花内の子房が肥大することにより確認することができる。交配後の果実が稔実しない場合、穎花内の子房は、通常肥大しない。
また、前記イネ科植物の品種に応じたマーカー遺伝子を使用したPCR法により確認することもできる。
本明細書において、「交配期間」とは、前記交配の14日前~10日後であり、好ましくは交配の7日前~5日後、より好ましくは5日前~3日後であり、交配を行っている時点だけを意味するものではない。したがって、前記第1の工程から前記第2の工程に変更する時期は、実際には、交配を行う前であってもよく、交配を行った後であってもよいが、交配を行う前であることが好ましい。なお、前記イネ科植物は、1本の穂に複数の花を有しており、通常、その開花は全て同時ではなく、複数の花において開花時期がずれる。そのため、前記「交配期間」は、前記イネ科植物の開花期間に基づき決定することができる。
前記イネ科植物の交配は、切穎したイネ科植物を用いて行われてもよい。
高速世代促進技術に限らず、イネ科植物の人工交配は、一般的に穎花上部を切除して交配を行う方法(切穎法)が広く行われている。本発明者らは、切穎して交配し、稔実した果実は、自然な交配(切穎法によらず、イネ科植物自体の開花時の受粉による交配)で得られる果実のような十分な肥大を示さず、小さく萎縮した果実を形成するという問題があることを知見した。
更に、本発明者らは、切穎法により得られた種子は、発芽が安定せず、仮に正常に発芽した場合であっても芽生えが小さく、その後の生育も2日間~3日間程度遅延するとう課題があることも知見した。そのため、従来、イネ科植物の高速世代促進技術による戻し交配において、切穎法により得られた種子を発芽させ、生育させたイネ科植物を一方の親とする場合、これと交配させる他方の親のイネ科植物は、前記一方の親の播種日から2日間~3日間程度遅らせて播種する必要があり、非常に煩雑であった。イネ科植物の高速世代促進技術では、数多くの品種について、同時進行で実施することも必要であり、それぞれの交配において、播種するタイミングをずらして実施することは困難であるという問題もあった。
これに対し、本発明のイネ科植物の育成方法を用いた場合、切穎法により得られた果実であっても十分な肥大を示すため、種子質量が大きい果実を得ることができ、更に得られた果実の発芽率及びその後の生育が良好である高品質の交配種子を得ることができるため、一般的なイネ科植物の育成方法のみならず、イネ科植物の高速世代促進技術においても非常に有用である。
前記白色光とは、色覚を与えない無色の光を意味し、可視光線の様々な波長の光が混ざった光である。
このような白色光を照射し得る光源としては、例えば、国際照明委員会(CIE)が規定する、A光源、B光源、C光源、D65光源、D55光源、D75光源等の標準光源が挙げられる。なお、A光源は、JIS Z 8781-2に、D65光源はJIS Z 8105によっても規定されている。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記白色光の色温度(K)としては、例えば、JIS C 7601、JIS C 7620-2、JIS C 8155、JIS C 8157などに規定されている白色光の色温度(K)が挙げられ、具体的には、昼光色(約6,500K)、昼白色(約5,000K)、電球色(約3,000K)、白色(約4,200K)、温白色(約3,500K)などが挙げられる。前記白色光の色温度(K)は、例えば、黒体軌跡上に乗った色温度である。これらの中でも、前記白色光の色温度(K)は、昼白色(約5,000K)が好ましい。前記白色光を照射することができる光源の具体例としては、蛍光灯光源(ライフルックN-HG型、株式会社ホタルクス製)が挙げられ、前記白色光の具体例としては、図1Aに示す発光スペクトルなどが挙げられる。
前記第1の工程において、前記白色光を前記イネ科植物に照射する方法としては、特に制限はなく、前記外部光を遮蔽した環境下において、前記白色光を照射し得る光源からの光を照射することにより行うことができる。
前記第1の工程において、前記白色光を前記イネ科植物に照射する際の照射時間としては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができるが、短日条件であることが好ましく、1日当たり、8時間~12時間がより好ましく、9時間~11時間が特に好ましい。
前記第1の工程において、前記白色光を前記イネ科植物に照射する際の照度としては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができるが、5,000ルクス~100,000ルクスが好ましく、15,000ルクス~50,000ルクスがより好ましい。
前記照度は、光度計(例えば、ライトアナライザーLA-105、株式会社日本医化器械製作所製)により測定することができる。
前記第1の工程において、前記白色光を前記イネ科植物に照射する際の光合成光量子束密度(PPFD:photosynthetic photon flux density)としては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができるが、50μmol m-2-1~2,500μmol m-2-1が好ましく、200μmol m-2-1~1,000μmol m-2-1がより好ましい。
前記PPFDは、光合成に有効な400nmから700nmまでの波長領域の光量子束密度であり、光度計(例えば、ライトアナライザーLA-105、株式会社日本医化器械製作所製)により測定することができる。
前記第1の工程において、前記白色光を前記イネ科植物に照射する際の照射距離としては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができるが、5cm~75cmが好ましく、20cm~50cmがより好ましい。
前記第1の工程における環境温度としては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができ、明期と暗期で同じであってもよく、異なっていてもよいが、明期は20℃~35℃が好ましく、26℃~30℃がより好ましく、暗期は18℃~27℃が好ましく、19℃~27℃がより好ましく、20℃~25℃が特に好ましい。
前記第1の工程における相対湿度としては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができるが、50%~100%が好ましく、75%~95%がより好ましい。
前記第1の工程における二酸化炭素(CO)濃度としては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができるが、300ppm~1,500ppmが好ましく、450ppm~700ppmがより好ましい。
<第2の工程>
前記第2の工程は、以下の第1の態様と、第2の態様に分けられる。
前記第2の工程により、品質が高く、種子質量が大きい交配種子を得ることができる。
前記第1の工程から前記第2の工程に変更する時期は、前記イネ科植物の交配期間である。具体的には、前記「交配期間」が交配の14日前である場合は、前記第2の工程は、交配の14日前及びそれ以降のイネ科植物を育成させる工程であり、前記「交配期間」が交配の10日後である場合は、前記第2の工程は、交配の10日後以降のイネ科植物を育成させる工程であることを意味する。
<<第1の態様>>
前記第1の態様としての前記第2の工程は、前記人工光として、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を前記第1の工程で育成させたイネ科植物に照射して育成させる工程である。
本明細書において、「発光スペクトル」は、分光光度計(ライトアナライザーLA-105、株式会社日本医化器械製作所製)により測定されたものであり、横軸を波長(nm)、縦軸を相対光強度(「光強度」と略記することがある)とし、相対光強度が波長に対してなめらかに変化する連続スペクトルである。前記相対光強度は、「0」~「1」の数字で表される。
波長550nm以上780nm以下の波長領域の光は、本明細書において「赤色光」と称することがある。
発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光とは、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、前記赤色光の波長領域以外の波長領域にピークが1つ又は2つ以上存在する場合、前記赤色光の波長領域以外の波長領域におけるピークが示す光強度と比較して、前記赤色光の波長領域におけるピークトップの光強度が最大であることを意味する。
なお、前記赤色光の波長領域以外の波長領域におけるピークが示す光強度とは、前記赤色光の波長領域以外の波長領域におけるピークトップの光強度であってもよく、前記赤色光の波長領域にピークトップを有するピークの裾部が、前記赤色光の波長領域以外の波長領域に存在する場合は、前記ピークの裾部における光強度であってもよい。
発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップ数としては、特に制限はなく、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップ数が2つ以上の場合は、2つ以上のピークトップの中の少なくとも1つのピークトップが示す光強度が、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において最大であればよい。
発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光は、公知の光源を1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することで調整することができる。具体例としては、白色光を照射し得る蛍光灯光源(例えば、ライフルックN-HG型、株式会社ホタルクス製)と、LED光源(例えば、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長615nm以上650nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を照射し得るLEDチューブ)とから共に照射した光などが挙げられる。
発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長615nm以上650nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光の具体例として、図1Eに示す発光スペクトルなどが挙げられる。
発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光の具体例として、図1Bに示す発光スペクトル、図1Cに示す発光スペクトルなどが挙げられる。
前記第1の態様の光環境は、公知の装置を利用してもよく、公知の装置を改変して利用してもよい。例えば、公知のインキュベーターである、LH-411PFQPT-S、LPH-411PFQPT-S、LH-411PFQPT-SP、LPH-411PFQPT-SP、LPH-411PFQPT-SPC(以上、株式会社日本医化器械製作所製)などを改変し、蛍光灯光源(例えば、ライフルックN-HG型、株式会社ホタルクス製)と組み合わせて前記光環境とすることができる。
<<第2の態様>>
前記第2の態様としての前記第2の工程は、前記人工光として、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光を前記第1の工程で育成させたイネ科植物に照射して育成させる工程である。
波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rは、赤色光の最大光強度である。
前記最大光強度Rは、波長550nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークトップの光強度であってもよく、波長550nm以上780nm以下の波長領域以外の波長領域にピークトップを有するピークの裾部が、波長550nm以上780nm以下の波長領域に存在する場合は、前記ピークの裾部における光強度であってもよい。
波長400nm以上490nm以下の波長領域の光は、本明細書において「青色光」と称することがある。したがって、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bは、青色光の最大光強度である。
前記最大光強度Bは、波長400nm以上490nm以下の波長領域に存在するピークトップの光強度であってもよく、波長400nm以上490nm以下の波長領域以外の波長領域にピークトップを有するピークの裾部が、波長400nm以上490nm以下の波長領域に存在する場合は、前記ピークの裾部における光強度であってもよい。
波長490nm超え550nm未満の波長領域の光は、本明細書において「緑色光」と称することがある。したがって、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gは、緑色光の最大光強度である。
前記最大光強度Gは、波長490nm超え550nm未満の波長領域に存在するピークトップの光強度であってもよく、波長490nm超え550nm未満の波長領域以外の波長領域にピークトップを有するピークの裾部が、波長490nm超え550nm未満の波長領域に存在する場合は、前記ピークの裾部における光強度であってもよい。
発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光は、公知の光源を1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することで調整することができる。具体例としては、白色光を照射し得る蛍光灯光源(例えば、ライフルックN-HG型、株式会社ホタルクス製)と、LED光源(例えば、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長615nm以上650nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を照射し得るLEDチューブ)とから共に照射した光などが挙げられる。
発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光の具体例として、図1Bに示す発光スペクトル、図1Cに示す発光スペクトルなどが挙げられる。
前記第2の態様の光環境は、公知の装置を利用してもよく、公知の装置を改変して利用してもよい。例えば、公知のインキュベーターである、LH-411PFQPT-S、LPH-411PFQPT-S、LH-411PFQPT-SP、LPH-411PFQPT-SP、LPH-411PFQPT-SPC(以上、株式会社日本医化器械製作所製)などを改変し、蛍光灯光源(例えば、ライフルックN-HG型、株式会社ホタルクス製)と組み合わせて前記光環境とすることができる。
前記第2の工程において、前記第1の態様と、前記第2の態様の人工光による光環境は、個別に満たしていてもよく、同時に満たしていてもよいが、同時に満たしていることが好ましい。
前記第2の工程において、前記第1の態様と、前記第2の態様の少なくともいずれかの人工光は、更に、波長380nm以上780nm以下の波長領域の発光スペクトルにおいて、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長400nm以上490nm以下の波長領域を定積分した値Bfとが、Rf>Bfを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長490nm超え550nm未満の波長領域を定積分した値Gfとが、Rf>Gfを満たす人工光であることが好ましい。
波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfは、波長380nm以上780nm以下の波長領域の発光スペクトルの曲線を、波長550nm以上780nm以下で定積分した値である。
波長400nm以上490nm以下の波長領域を定積分した値Bfは、波長380nm以上780nm以下の波長領域の発光スペクトルの曲線を、波長400nm以上490nm以下で定積分した値である。
波長490nm超え550nm未満の波長領域を定積分した値Gfは、波長380nm以上780nm以下の波長領域の発光スペクトルの曲線を、波長490nm超え550nm未満で定積分した値である。
前記Rf、前記Bf、前記Gfは、公知の理論計算式によって算出することができる。前記算出は、公知の装置(例えば、分光光度計に備わる機能など)を用いて行ってもよい。
前記第2の工程において、前記第1の態様の人工光及び前記第2の態様の人工光の少なくともいずれかを前記イネ科植物に照射する方法としては、特に制限はなく、前記外部光を遮蔽した環境下において、前記第1の態様の人工光及び前記第2の態様の人工光の少なくともいずれかを照射し得る光源からの光を照射することにより行うことができる。
前記第2の工程において、前記第1の態様の人工光及び前記第2の態様の人工光の少なくともいずれかを前記イネ科植物に照射する際の照射時間としては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができるが、短日条件であることが好ましく、1日当たり、8時間~12時間がより好ましく、9時間~11時間が特に好ましい。
前記第2の工程において、前記第1の態様の人工光及び前記第2の態様の人工光の少なくともいずれかを前記イネ科植物に照射する際の照度としては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができるが、5,000ルクス~100,000ルクスが好ましく、14,000ルクス~50,000ルクスがより好ましい。
前記第2の工程において、前記第1の態様の人工光及び前記第2の態様の人工光の少なくともいずれかを前記イネ科植物に照射する際の光合成光量子束密度(PPFD)としては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができるが、50μmol m-2-1~2,500μmol m-2-1が好ましく、200μmol m-2-1~1,000μmol m-2-1がより好ましい。
前記第2の工程において、前記第1の態様の人工光及び前記第2の態様の人工光の少なくともいずれかを前記イネ科植物に照射する際の照射距離としては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができるが、5cm~75cmが好ましく、20cm~50cmがより好ましい。
前記第2の工程における環境温度、相対湿度、二酸化炭素(CO)濃度などとしては、特に制限はなく、前記イネ科植物の種類などに応じて適宜することができるが、前記第1の工程と同様の、環境温度、相対湿度、二酸化炭素(CO)濃度が好ましい。
<その他の工程>
前記イネ科植物の育成方法は、本発明の効果を損なわない限り、前記第1の工程及び前記第2の工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。
前記イネ科植物の育成方法は、簡便で迅速な育種を行うことができ、また切穎法により得られた果実であっても十分な肥大を示すため、種子質量が大きい果実を得ることができ、更に得られた果実の発芽率及びその後の生育が良好である高品質の交配種子を得ることができるため、一般的なイネ科植物の育成方法のみならず、イネ科植物の高速世代促進技術において好適に利用することができる。
(イネ科植物育成用装置)
本発明のイネ科植物育成用装置は、イネ科植物の育成のために用いられるものであり、収容手段と、第1の光照射手段と、第2の光照射手段と、切替え手段とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
前記イネ科植物育成用装置は、上記した本発明のイネ科植物の育成方法に好適に用いられる。
前記イネ科植物育成用装置で育成される前記イネ科植物としては、前記(イネ科植物の育成方法)の項目に記載のものと同様である。特に、前記イネ科植物育成用装置は、切穎したイネ科植物を用いて人工的に交配させたイネ科植物の育成に好適に用いられる。
<収容手段>
前記収容手段は、前記イネ科植物を収容可能な手段である。
前記収容手段は、前記イネ科植物を収容可能である限り、特に制限はないが、外部光を遮蔽して人工光のみをイネ科植物に照射し得る構成であることが好ましい。このような構成を有する収容手段としては、内部が密閉された構造であることが好ましい。
前記イネ科植物育成用装置における前記収容手段の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1つであってもよく、複数であってもよい。
前記収容手段の数が複数である場合、各収容手段内の環境条件(例えば、光環境、温度、湿度、二酸化炭素濃度など)は、個別に環境条件を制御されてもよく、全ての収容手段を同時が制御されてもよい。
前記収容手段の形状としては、前記イネ科植物を収容可能である限り、特に制限はないが、略箱形状であることが好ましい。前記収容手段の数が複数である場合、前記収容手段は、左右方向、前後方向、上下方向の少なくともいずれかの方向に連続してされる。
前記収容手段は、前記イネ科植物を収容したり取り出したりするための開口を有し、この開口を有する面を「前面」とすることが好ましい。
<第1の光照射手段>
前記第1の照射手段は、前記収容手段の内部に白色光を照射する手段である。
前記第1の照射手段としては、前記収容手段の内部に白色光を照射することができるものであれば、特に制限はなく、例えば、国際照明委員会(CIE)が規定する、A光源、B光源、C光源、D65光源、D55光源、D75光源等の標準光源が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記白色光を照射することができる光源の具体例としては、蛍光灯光源(ライフルックN-HG型、株式会社ホタルクス製)が挙げられる。
また、前記第1の照射手段が照射する光の色温度(K)としては、例えば、JIS C 7601、JIS C 7620-2、JIS C 8155、JIS C 8157などに規定されている白色光の色温度(K)が挙げられ、具体的には、昼光色(約6,500K)、昼白色(約5,000K)、電球色(約3,000K)、白色(約4,200K)、温白色(約3,500K)などが挙げられる。前記白色光の色温度(K)は、例えば、黒体軌跡上に乗った色温度である。これらの中でも、前記白色光の色温度(K)は、昼白色(約5,000K)が好ましい。
<第2の光照射手段>
前記第2の光照射手段は、以下の第1の態様と、第2の態様に分けられる。
<<第1の態様>>
前記第1の態様としての前記第2の光照射手段は、前記収容手段の内部に、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を照射する手段である。
前記第1の態様としての前記第2の光照射手段としては、前記収容手段の内部に、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を照射することができるものであれば、特に制限はなく、公知の光源を1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、白色光を照射し得る蛍光灯光源(例えば、ライフルックN-HG型、株式会社ホタルクス製)と、LED光源(例えば、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長615nm以上650nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を照射し得るLEDチューブ)とが共に配されることが好ましい。
<<第2の態様>>
前記第2の態様としての前記第2の光照射手段は、前記収容手段の内部に、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光を照射する手段である。
前記第2の態様としての前記第2の光照射手段としては、前記収容手段の内部に、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光を照射することができるものであれば、特に制限はなく、公知の光源を1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、白色光を照射し得る蛍光灯光源(例えば、ライフルックN-HG型、株式会社ホタルクス製)と、LED光源(例えば、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長615nm以上650nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を照射し得るLEDチューブ)とが共に配されることが好ましい。
前記第2の光照射手段が照射する光は、波長380nm以上780nm以下の波長領域の発光スペクトルにおいて、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長400nm以上490nm以下の波長領域を定積分した値Bfとが、Rf>Bfを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長490nm超え550nm未満の波長領域を定積分した値Gfとが、Rf>Gfを満たす人工光であることが好ましい。
前記Rf、前記Bf、前記Gfは、前記(イネ科植物の育成方法)の項目に記載した通りである。
<切替え手段>
前記切替え手段は、前記第1の光照射手段と、前記第2の光照射手段とを切り替える手段である。
前記切替え手段としては、前記第1の光照射手段と、前記第2の光照射手段とを切り替えることができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のスイッチなどを用いることができる。
以下に、本発明のイネ科植物育成用装置について、図を用いて具体的に説明するが、本発明のイネ科植物育成用装置は、これに限られるものではない。
図3は前記イネ科植物育成用装置の正面図、図4は前記イネ科植物育成用装置の側面図、図5は前記イネ科植物育成用装置の平断面図であり、図6A~図6Cは、前記イネ科植物育成用装置の光源の構成の詳細を示した概略図であり、図6D及び図6Eは、それぞれ異なる種類の照射パターンを示す概略説明図であり、図7A~図7Cは、所定の環境条件に設定した動作例での各収容手段の温度変化を示すグラフである。この実施形態でのイネ科植物育成用装置は、上下方向に5段重ねて配置した収容手段を有しており、これらの収容手段にイネ科植物を収容し、各収容手段を個別に所定の環境条件に設定することができるようにしている。
即ち、イネ科植物育成用装置1は、図3~図5に示すように、装置本体部2に、装置外部との遮蔽性を所定に確保した槽3を形成する。槽3は、断熱密閉構造であることが好ましい。この槽3内に、多段に配置したイネ科植物を収容する複数個の収容手段4を、該収容手段4外に槽内空気を循環させるための循環通路(送給用)5A及び循環通路(復帰用)5Bを確保しながら、槽3内を所定に区画して形成している。この装置本体部2の下部に、基準となる温度を規定した媒体としての槽内空気を所定温度に調整して送給し循環通流させる第1温度制御手段である空調部6を設ける。一方、この装置本体部2の上部に、各収容手段4の環境条件を入力して設定し、かつ現状の環境状態を表示する操作パネル7と、入力された設定条件に従って各部の動作を制御する図示しない制御部とを有した設定入力部8を設けた構成を有する。これらの収容手段4は、循環空気の温度に基づき、各収容手段4の内部の温度をそれぞれの所定温度に調節する第2温度制御手段としての加温ヒータ9を有しており、上段になるほど槽3内の温度が高くなり、各収容手段4を個別に独立した温度設定を可能にしている。即ち、イネ科植物育成用装置1は、上段に向うに伴って各収容手段4の温度が、互いに所定の温度差を確保して、段階的に上昇する温度勾配を得られるようにされている。
装置本体部2は、薄板状のステンレス板及び鋼板を用いて、その外形状を直立した直方体形状の槽3を形成しており、この槽3を構成した前面部は、図3中の右端の縦方向周縁を縦軸のヒンジ軸にして横開き開閉可能に設けられた図4に示す外扉部3aとされている。また、槽3の内面としての垂直な側壁面及び上下の水平な壁面には、軽量安価な断熱材である板状の発泡スチロール11を、それぞれの面にほぼ全面的に接するように設けられていてもよい。これにより、槽3が断熱密閉槽として機能するため、断熱性が確保される。
各収容手段4は、それぞれが密閉性を有した略箱形状に形成され、例えば、横幅が約40cmで、奥行きが50cm程度の床面を確保している。即ち、各収容手段4は、これらの各収容手段の左右の側壁面及び奥側の壁面となる垂直板12によって、槽3内を左右方向に仕切り、また槽3内の奥側を仕切り、槽3の中央部の上下方向に長い空間部を確保した上で、この空間部を水平な棚板13によって、上下方向に均等に区切って形成される。これらの収容手段4は、上下方向に揃えて多段に積み重ねた構成とされており、各収容手段4の左右の両脇には、最下段の収容手段4から最上段の収容手段4にまで到達した空気循環通路(送給用)5A及び循環通路(復帰用)5Bが、それぞれ形成され確保されている。したがって、図中の右側の空気循環通路(送給用)5Aによって、空調部6から、上方に空気を送給して、各収容手段4を通過させ、これらの各収容手段4を通過した空気を、左側の空気循環通路(復帰用)5Bによって、下方の空調部6に復帰させる循環経路が形成されている。
また、これらの収容手段4の前面となる図3中の開口は、この開口周縁における右側の縦方向周縁を縦軸のヒンジ軸にして横開き開閉可能に設けられた図4に示す板状で不透明の内扉部4aによって、それぞれ閉止可能にされていてもよく、これらの内扉部4aは、その上下の収容手段4の内扉部4aと互いに干渉させることなく、個別に開閉できるようになっている。したがって、ある収容手段4にイネ科植物を収容したり取り出したりする場合には、その収容手段4の内扉部4aだけを開閉操作すればよいので、その他の収容手段4の設定温度を乱さずに済む。また、これらの収容手段の右側開口周縁には、マグネット14が設置され、このマグネット14の磁力によって内扉部4aの開閉端側を吸着して、内扉部4aを閉止状態にロックするようにしている。なお、内扉部4aがプラスチック板などの非磁性材料で形成されている場合には、マグネット14に対応した内扉部4aの箇所に鉄片などの磁力吸着可能な部材を設ければよい。
したがって、このように槽3の外扉部3aと、各収容手段4の内扉部4aとからなる2重扉の構成とした場合、各収容手段4を収容手段ごとに単体の扉部だけで閉止した構成に比べて、装置外部から収容手段内へ入射する光の遮蔽効果を高めることができる。このため、収容手段内の光条件、明暗環境などを、外部環境に依存させることなく、任意に制御できる。これに加えて、このように2重扉の構成とした場合には、この内扉部4aと外扉部3aとの間に間隙を形成し、この間隙に循環空気を通流させたエアジャケットを形成してもよい。したがって、この構成によれば、固定部材としての外扉部3aによる断熱作用に加えて、エアジャケットによる空気流を常時介在させて伝熱された空気を運び去ることによる遮熱作用が得られるので、より高い熱遮断効果が期待できる。
更に、各収容手段4の右側の側壁面の略下部には、水平方向に配列された縦長スリット状の吸込み口4bが形成され、この吸込み口4bは、送給用の空気循環通路5Aに開口して室内を連通している。この側壁面に対向した左側の側壁面には、概略が同様に形成された図示しない排出口が設けられ、この排出口は、空気循環通路(復帰用)5Bに開口して室内を連通している。また、最下段となる収容手段4に設けられた吸込み口4b以外の各吸込み口4bには、送気方向を室内側に向けた小型の送風ファンである庫内ファン15が設置され、この庫内ファン15によって、空気循環通路(送給用)5Aから空気を室内に吸入するようにしている。なお、最下段の収容手段4には、その吸込み口4bに庫内ファン15を設けなくてもよい。この収容手段4は空調部6の近傍に位置しており、この収容手段4の吸込み口4b位置に到達した循環空気はその送風力が充分に強いままのため、同収容手段4内に循環空気を確実に取り込めるためである。したがって、右側の空気循環通路5Aからそれぞれの吸込み口4bを介して室内に吸込んだ空気は、これらの各収容手段4内を通過して、左側の空気循環通路(復帰用)5Bに排出される。
各収容手段4内には、図示しない温度検出手段としての収容手段内用温度センサが設置され、これらの収容手段内用温度センサは、その検知信号の出力線が制御部に接続され、各収容手段4の収容手段内の温度を個別かつ常時、検出して制御部が把握できるようにしている。なお、吸込み口4b付近に循環空気を室内に吸引する庫内ファン15を設ける代わりに、排出口に室内から排気する排気ファンを設けた構成や、これらの庫内ファン15と排気ファンとの2つのファンを設けた構成としてもよい。
また、収容手段4の吸込み口4b付近には、それぞれの第2温度制御手段としての加温ヒータ9が設けられている。この加温ヒータ9は、収容手段4外に配置された循環通路(送給用)5A内で、この循環通路(送給用)5Aに開口された収容手段4の吸込み口4bに対して、該循環通路(送給用)5Aを送流される空気の上流側となる箇所に設けられ、この箇所には、循環通路(送給用)5Aを横断する方向に向けて延在された長棒状の電熱体が設置されている。これらの加温ヒータ9は、少なくともその吸込み口4bに吸入される循環空気を、各収容手段4の設定温度に加温できる程度の発熱能力を有しており、各加温ヒータ9による加温動作は、制御部によって制御されている。なお、最下段の収容手段4は、空調部6によって調整された循環空気の温度が、そのまま収容手段内の温度となるので、この収容手段4用の加温ヒータ9は設けなくてもよい。
また、図6A~図6Cに示すように、各収容手段4の天井面を形成した部材としての棚板13は、その天井面となる下面(床面又はイネ科植物と接する面と反対側の面)、即ち、一の収容手段4と他の収容手段とを仕切る棚板13において、一の収容手段4に対しては棚板として機能し、他の収容手段4に対しては天井面として機能する面に、細径直管状に形成された複数の光源17が、所定に配列されて設置されている。光源17は、複数の前記第1の光照射手段及び複数の前記第2の光照射手段である。光源17は、細径直管、好ましくは管径が3.0mm(1.6mm~3.0mmの範囲で選択可能)の細径直管で同一の長さに形成されており、天井面における一方の手前側から他方の奥側までの長さよりも僅かに短い長さを有している。光源17は、該収容手段4の左右幅方向に、互いに所定間隔をおいて、平行に配列されている。したがって、収容手段4の天井面を面照明にして、上方から、この収容手段4に収容されたイネ科植物に照射できるようにしている。なお、この場合の棚板13とは、上下の各収容手段4間に介在したそれぞれの収容手段を区画した棚板13に加えて、最上段の収容手段4の天井面を構成した部材を棚板13として含むものとする。
なお、ここでは、各収容手段の天井面にだけ、光源17を設置した例を説明したが、これに限られるものではなく、各収容手段4の内壁面を形成した面であれば、必要に応じて適宜、1つの面、又は複数の面を選択して、この選択した面に複数の光源17を設置してもよい。例えば、各収容手段4の床面にだけ複数の光源17を設置したり、天井面と床面との両方に複数の光源17を設置したりしてもよく、更には床面以外の5面に複数の光源17を設置してもよい。
光源17は、各収容手段4の内部の温度に影響を与えない光源であることが好ましい。即ち、少なくとも、該収容手段4の内部の温度に影響を与えるものして、上記加温ヒータ9による収容手段4の温度調節能力の大きさや、この調節能力によって温度調節されて該室内を通過する空気流量の大きさに対して、複数の光源17から生じる発熱総量の大きさが、該収容手段4の内部の温度に影響を与えない程度に極小の比率となっていることが好ましい。
更に、各光源17が有する図示しないスイッチやその照射強度を調整可能にした図示しないランプ駆動回路は、図示しない配線を介して制御部に接続されている。したがって、この制御部が、各光源17のスイッチのオン・オフを制御し、即ち光源17の点灯状態を制御し、この点灯した状態での照射強度を制御できるようにしている。スイッチは、第1の光照射手段と第2の光照射手段とのオン・オフを個別に制御できるように配線されていることが好ましい。なお、光源17は、光源本体17A、各光源用の安定器17a、光源本体17Aと、この光源本体17Aの設置面との間に設けられ、光源本体17A側に向けた反射湾曲面を形成した反射板17bなどを有していてもよい。反射板17bによって、光源本体17Aから収容手段4の、光源本体17Aの設置面側に向かった照射光を反射してイネ科植物側に向わせて照射効率を高めるようにすることができる。また、光源本体17Aの下方に、この光源本体17Aからの照射光を均等化する光拡散板を設けてもよい。
また、イネ科植物育成用装置1は、このように配列した複数の光源17から得られる各収容手段における照射が、収容手段4の水平方向で変化しない照射光となるように構成されていることが好ましい。即ち、図6D及び図6Eに示す照射パターンのいずれかの照射パターンを得るように構成されていてもよい。なお、図6D及び図6Eにおいて、それぞれに示した下向き矢印の長さが、照射強度(光量)の強さ(量)を表わしている。
図6Dの照射パターンでは、無勾配型の照射として、収容手段4内の水平な平面方向において、全て均一な照射強度(光量)が得られるように構成されている。即ち、全ての光源17が同一光量で発光した状態となるように制御されている。したがって、収容手段4内の照度分布を片寄らせることなく、室内全域で照度がほぼ均一になる。
また、図6Eの照射パターンでは、図6Dの照射パターンにおいて、更に間欠的な照射として、所定の点灯時間又は消灯時間を設定した点灯及び消灯を繰り返すように構成されている。即ち、点滅点灯照射として、全ての光源17が、所定の時間、一斉に点灯し、所定の時間、一斉に消灯することを繰り返すように制御されている。
したがって、これらの照射パターンを有した構成によれば、各種の試験条件や要請に応じた光環境及び照射環境を、各収容手段に個別に整備することができる。
なお、図6D及び図6Eの各照射パターンでは、収容手段4の左右幅方向に照射光が変化するように構成したが、当然、収容手段4の手前から奥側方向に変化するように構成してもよい。
更に、イネ科植物育成用装置1では、上述の照射パターン及び光源17からの発光スペクトルを、使用者が任意に選択して変更可能に構成されている。即ち、棚板13は、簡易にそれぞれの収容手段4から着脱して交換可能に構成され、上述の照射パターン及び光源17からの発光スペクトルが異なった棚板13に交換できるようにしている。これに加えて、光源17の個数を、各収容手段に必要な照度及び/又は発光スペクトルに応じて増減できるようにしている。即ち、この棚板13は、棚板13に設置された光源17が、少数の図示しないソケットやコネクタを介して、装置本体部2側に電気的に接続可能に、かつ棚板13自体が、簡易に着脱可能に構成されている。
したがって、上述の各照射パターン及び光源17からの発光スペクトルを形成した構成による効果に加えて、このように棚板13を交換可能にした構成によれば、各収容手段における照射の修理交換が容易化されると共に、その収容手段4に必要な照度及び/又は発光スペクトルに応じた個数の光源17を有した棚板13に交換できる。このため、消耗部品として最少個数の光源17を用いて、必要な照度及び/又は発光スペクトルを確保できるので、運用コストを低減できるとともに、電力消費を効率化して削減できる。
なお、所定に配列した光源17を一括して棚板13と分離可能にユニット化し、この照射ユニットを、異なる照度の照射ユニットに交換可能に構成してもよく、更にこれらを組み合わせてもよい。したがって、所定数が配列された光源17を棚板13に簡易に着脱して交換可能な照射ユニットとした構成によれば、上記の効果に加えて、照射が不要な収容手段4からはその照射ユニットを取り外せるので、該収容手段4内のスペースを拡大できる。また、棚板13に光源17を一体化した構成に比べて、光源17を主体にした照射ユニット単体を取り扱えば済むので、交換部品として取り扱い性の向上を図れ、必要な保管スペースを削減できる。
なお、収容手段4内に撹拌用の小型ファンを設け、この小型ファンによって収容手段4内の空気を撹拌することにより、収容手段4内の温度分布を片寄らせることなく、室内全域で温度を速やかに均一にするようにしてもよい。
設定入力部8は、各収容手段4の環境条件としての温度や照射状態を設定入力し収容手段内の温度を表示する操作パネル7と、この操作パネル7から設定入力された環境条件に基づき、各部の動作を所定に制御する制御回路からなる制御部を有している。
即ち、操作パネル7は、メインパネル21と、照射設定パネル22とを有し、このメインパネル21には、装置全体の電源をオン・オフする1つのメインスイッチと、水平方向に配列され各収容手段4の設定温度を入力して設定する5個の入力スイッチ群とが配置されている。また照射設定パネル22には、光源17の照射時間帯を入力して設定する時計表示式のランプタイマと、上下方向に配列された5個のランプスイッチ群とが配置され、ランプスイッチのオン・オフによって、各収容手段の光源17を動作可能状態に切換え、該ランプの現状態を発光表示する。したがって、使用者は、操作パネル7から各種の条件を入力して設定することにより、各収容手段の温度や照射を、全ての収容手段4で同一に変化させる共通設定と、個々の収容手段4の時間を調節して個別に変化させる個別設定と、を任意に選択できるようにしている。
空調部6は、槽3内の空気を所定の温度に調整する冷却器25と、この調整した空気を循環通路(送給用)5Aに送給して槽3内に循環通流させる循環送風ファン26とを主体に構成され、この冷却器25は、その冷却動作が制御部によって制御されている。即ち、空調部6は、両方の空気循環通路(送給用)5A及び空気循環通路(復帰用)5Bの下端同士を連通した通路27に、冷却器25と、循環送風ファン26とを順次、配置した構成とされている。この通路27は、比較的に大きな通路断面積で形成され、通路27内の空気流速を低下させて、冷却器25による冷却性を充分に得られるようにしている。また、この空気循環方向における冷却器25よりも下流側には、比較的に大径の循環送風ファン26が、その送給方向を斜め上方の空気循環通路5Aの下端側に向けて設置されており、この循環送風ファン26によって、充分な空気送給流量を得るようにしている。なお、28は、空調部6内に外気を導入して排出した際にこの排気とともに冷却器25からの熱を装置外に排熱するための熱交換器、29は、冷却器25と熱交換器28との間に熱交換媒体を所定の圧縮膨張サイクルで循環させるための圧縮機であり、冷却器25から熱輸送して外部に排出することによって冷却器25を冷却動作させている。
循環空気が通過する適宜箇所には、この循環空気の温度測定が可能な図示しない測定手段が設けられ、この測定手段が検出した実際の循環空気の測定温度に基づき、制御部が冷却器の冷却動作を制御して、循環空気の温度を所定の目標温度に保つようにしている。
したがって、イネ科植物育成用装置1において、温度環境を設定する場合には、操作パネル7の入力スイッチを操作して、各収容手段の設定温度を入力する。即ち、この最下段の収容手段4の温度が最低設定温度となり、上段に昇るに伴い各段収容手段4ごとに順次、収容手段内の温度が段階的に上昇する温度差勾配を形成する。この温度差は、最低2℃から5段階に各段を温度勾配的に調節できる。例えば、この5段式の場合において、2℃、4℃、6℃、8℃、10℃のように、各段収容手段4の温度差調節ができる。また、例えば、図7Aに示すように、任意の時点で、ベースとなる最低設定温度を変更すると共に、各収容手段間の温度差も変更することができる。このように、イネ科植物育成用装置1では、上下に隣接した収容手段4間の温度差を、均等やランダムに設定でき、又は各収容手段4を同温度にも設定できる。
即ち、冷却器25を通過した循環空気の温度は、空調部6の冷却器25によって、各収容手段4に設定された設定温度のうち、最も低い温度に設定される。つまり、制御部は、各収容手段4に設定した所望の設定温度のうち、最も低い温度を選択し、この選択した温度が制御目標としての目標温度となり、この目標温度に、循環空気の温度がなるように、冷却器25の冷却動作を制御する。
このように構成されたイネ科植物育成用装置1では、槽3内を循環して復帰した空気が、冷却器25を通過し、この冷却器25によって所定の目標温度に調整され、循環送風ファン26によって図中の斜め右上方向に送出され、この目標温度に調整された空気が循環通路5A内をその上方に向けて送給される。なお、この際に、各収容手段4を形成した部材の外壁面と槽3の内壁面との間に形成された間隙に介在した空気は、その箇所に滞留せずに、最終的に循環送風ファン26に近づく方向に移動して、その大部分が冷却器25を通過することになるので、固定された断熱部材による受動的な熱遮蔽効果に加えて、この空気流による能動的な熱遮蔽効果が得られる。
そして、送給された循環空気は、その一部が各段の収容手段4に吸入されながら、循環通路(送給用)5A内を上昇し、各収容手段4を通過した循環空気は、循環通路(復帰用)5Bに排出され、この循環通路(復帰用)5Bを下降して、空調部6に戻る。したがって、各収容手段4の温度は、各収容手段4に吸入された循環空気の温度によって規定される。そして、これらの各収容手段4の実際の温度は、各収容手段4の設定温度と循環空気が有した目標温度との温度差を補償するように加温動作した加温ヒータ9によって、それぞれ個別に制御される。即ち、制御部は、前記の温度差を補償するように、加温ヒータ9の発熱動作を制御する。また、制御部は、常時、各収容手段4の室温を把握しているので、該室温の変動に応じて加温ヒータ9の発熱量を微調整する。
したがって、イネ科植物育成用装置1によれば、各収容手段4は、それぞれの収容手段4内を、高精度に所望の設定温度の恒温状態を確保して維持できる。即ち、収容手段4内における熱エネルギーの収支をバランスさせて、収容手段4内の温度を精密に設定できる。しかも、基準とした循環空気の温度に対して、比較的に小容量の容積を有して区切られた収容手段としての各収容手段4内に流入する空気を、それぞれ専用の加温ヒータ9で加温して温度補償しているので、収容手段4内の温度制御がしやすくなる。このため、各収容手段4内の温度は、一の収容手段4と他の収容手段4同士の互いの温度的な干渉を排除してそれぞれの収容手段4を独立させながら、高精度に所要の温度に設定できる。
このため、各収容手段4は、これらの全周を包囲した部材として、分厚い断熱層を設けなくて済むので、各収容手段4の内部スペースをそれだけ広くとれる。他方、このように断熱層を形成する断熱部材の役割が軽減され、薄型化を図れるので、装置としての内部空間の利用効率が高くなり、装置全体の外形状をスリム化できる。このため、装置を製作する材料の節減や省スペース化が図れる。これらの結果、ローコストなイネ科植物育成用装置1とすることができる。
更に、各収容手段のイネ科植物が、微小量でも発熱や吸熱する場合でも、制御部が室温を常時、把握して、各収容手段に吸入する空気温度を規定した加温ヒータ9の加温動作を制御しているので、所定の設定温度に維持することができる。
また、イネ科植物育成用装置1において、上記した温度環境の設定に加えて、昼夜サイクルの環境を設定する場合には、操作パネル7のランプタイマを操作して、光源17を点灯した昼間時間又は消灯した夜間時間を入力し、昼夜の時間帯を設定する。したがって、この場合には、例えば図7Bに示すように、所定時間で昼夜が切換わることが繰り返され、この昼夜切換えに応じて各収容手段4は、それぞれの間の温度差を保持したまま、昼間用又は夜間用の設定温度に切り換わる。
更に、イネ科植物育成用装置1によれば、昼夜サイクルにおいて、図7Cに示すように、各収容手段4の昼夜サイクルを同一に設定することなく、それぞれ各収容手段4に個別に設定し、これらの個別に設定された昼夜時間帯に関連付けて、それぞれ各収容手段4の温度が個別に変化するように設定することができる。即ち、各収容手段4単位で、各収容手段4の温度と光(明暗照度)とを自由に組み合わせたその収容手段4に固有のある室内環境設定から、温度と光(明暗照度)とを自由に組み合わせた他の室内環境設定に、任意の時点で変化させることができる。
以上のように、この実施形態のイネ科植物育成用装置によれば、各収容手段の天井面又は全面に複数の光源(第1の光照射手段及び第2の光照射手段)を所定に配列して設置した構成のため、近接照射による直下照射で効率よく照射ができ、照射のバラツキ、ムダをなくすことができる。他方、光源(第1の光照射手段及び第2の光照射手段)は、細径に形成できるため、密に並べた配列が可能であり、かつ長い棒状で光分布が均一である。したがって、一様な面照明として天井面又は全面から、イネ科植物を照射することができる。このため、イネ科植物に対する照射の質を向上できる。
また、光源とイネ科植物との間に何も介在させることなく、イネ科植物に近接させた照射が可能となる。即ち、光源と被照射物との距離を短縮させて、近接した距離での照射が可能となる。したがって、照度を高めなくても、充分な照射が得られることになる。このように照射効率を向上できるため、この効率の上昇分だけ、照射に必要な電力消費量が削減されることになり、結果として省電力化を図ることができる。
また、光源は、発光色を自由に選択でき、また明暗度の細かい調光が可能となる。このため、イネ科植物が必要とする照射環境を、適宜得ることができる。また、温度、照度によるこれまでより多種の環境条件を組み合わせて各収容手段内の精密な環境制御ができる。
以上の図に示したイネ科植物育成用装置は、本発明のイネ科植物育成用装置の一例であり、前記イネ科植物育成用装置としては、公知の装置(例えば、公知のイネ科植物育成用装置、他の植物の育成用装置、藻類や微生物の培養、植物の培養、昆虫や小動物の飼育などに用いられる装置)を、前記収容手段、前記第1の光照射手段、前記第2の光照射手段、及び前記切替え手段を有するように改変した装置は、いずれも使用可能である。
前記公知の装置としては、例えば、特開2009-156525号公報に記載の装置、特開2002-345337号公報に記載の装置、特開2001-275488号公報に記載の装置、特開2006-61126号公報に記載の装置などが挙げられ、これらの構成を組み合わせて使用することもできる。
前記イネ科植物育成用装置は、イネ科植物の育成のために用いられるものであり、特にその光環境は、簡便で迅速な育種を行うことができ、また切穎法により得られた果実であっても十分な肥大を示し、種子質量が大きい果実を得ることができる光環境である。したがって、一般的なイネ科植物の育成に使用できるだけでなく、イネ科植物の高速世代促進技術において好適に使用することができる。
また、前記イネ科植物育成用装置は、イネ科植物の育成のために用いられるものであるが、他の植物の発芽試験、昆虫を含めた動物や植物等の生物時計の研究、藻類の培養、微生物の培養、植物の培養、昆虫や小動物の飼育などの光を要する生物学的試験においても、幅広く使用することができる。
以下に試験例、実施例、及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例及び実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<第1の工程>
以下の第1の工程(種子親の栽培、花粉親の栽培、及び交配)は、植物育成用インキュベーター(LPH-350-SPC、株式会社日本医化器械製作所製)を用い、白色蛍光灯下(図1Aに示す発光スペクトルの光環境)で、照射距離を25cmとし、明期が10時間(温度:27℃~30℃)、暗期が14時間(温度:18℃~25℃)の10時間日長で、CO濃度600ppm、相対湿度85%の条件下で行った。
図1Aに示す発光スペクトルは、分光光度計(ライトアナライザーLA-105、株式会社日本医化器械製作所製)により測定した。植物育成用インキュベーター(LPH-350-SPC)内の植物体付近で、光度計(ライトアナライザーLA-105、株式会社日本医化器械製作所製)により測定した照度は17,521ルクス、光量は、PPFD:224μmol m-2-1であった。
-種子親の栽培-
イネ品種「あきだわら環1号」(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構所有)の種子を、室温にて、200倍希釈の殺菌剤(スポルタック(登録商標)スターナ(登録商標)SE、住友化学株式会社製)、1、000倍希釈の殺虫剤(スミチオン(登録商標)乳剤、住友化学株式会社製)、及び1質量%過酸化水素水に24時間浸漬させ、シャーレ上に播種し、温度30℃、相対湿度100%の条件下で3日間置き、発芽させた。発芽させた種子は、イネ用育苗培土(ボンソル2号、住友化学株式会社製)を入れた園芸用プラグトレー(RL-40PT、株式会社東海化成製)に移植して栽培を行った。窒素不足により葉の黄化が認められた場合は、100個体に対し5%(w/v)の尿素を50mL追肥した。
-花粉親の栽培-
種子親の栽培において、イネ品種を、「あきだわら環1号」から「sbe1あきだわら」(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構所有)に変更したこと以外は、種子親の栽培方法と同様の方法で、花粉親の栽培を行った。
-交配-
イネ品種「あきだわら環1号」は、出穂した穂を止葉(一番先端の葉)の葉鞘から露出させ、43℃、7分間の温湯除雄(温水による温熱処理で花粉の活性を失活させる処理)を行った後、穎花の上部を交配用のハサミで切除した。
次いで、切穎した種子親としてのイネ品種「あきだわら環1号」と、花粉親としてのイネ系統「sbe1あきだわら」と共に1つの交配袋(グラシン紙を用い、縦:32cm×横:8cmの袋状にして作成)に入れ、4日間、毎日開花している時間に30分間毎に手で交配袋を振り、種子親のめしべに、花粉親の花粉を振りかけた。
<第2の工程>
第1の工程で交配したイネ個体(種子親)を、交配直後(播種後47日目)に、植物育成用インキュベーター(LPH-350-SPCに、光源としてLEDチューブ(図1Eに示す発光スペクトルを有する、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長615nm以上650nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を照射し得るLEDチューブ)を増設して改変した植物育成用インキュベーター;以下「改変インキュベーター1」と称することがある)に移し、図1Bに示す発光スペクトルの光環境下で、照射距離を20cmとし、明期が10時間(温度:27℃~30℃)、暗期が14時間(温度:18℃~25℃)の10時間日長で、CO濃度600ppm、相対湿度85%の条件下で育成した。
図1Bに示す発光スペクトルは、分光光度計(ライトアナライザーLA-105、株式会社日本医化器械製作所製)により測定した。改変インキュベーター1内の植物体付近で、光度計(ライトアナライザーLA-105、株式会社日本医化器械製作所製)により測定した照度は15,057ルクス、光量は、PPFD:228μmol m-2-1であった。
これにより、イネ品種「あきだわら環1号」と、イネ系統「sbe1あきだわら」との交配種子Fを得た。交配種子Fは、交配から27日間後に収穫した。
(実施例2)
実施例1において、<第2の工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で交配種子Fを得た。
<第2の工程>
実施例1の<第2の工程>において、光環境を、図1Bに示す発光スペクトルの光環境から、図1Cに示す発光スペクトルの光環境に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、第2の工程を行った。
具体的には、実施例1の第2の工程において、「改変インキュベーター1」を、植物育成用インキュベーター(LPH-350-SPCに、光源としてLEDチューブ(図1Eに示す発光スペクトルを有する、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長615nm以上650nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を照射し得るLEDチューブ)を増設して改変した植物育成用インキュベーター;以下「改変インキュベーター2」と称することがある)に変更して行った。
図1Cに示す発光スペクトルは、分光光度計(ライトアナライザーLA-105、株式会社日本医化器械製作所製)により測定した。改変インキュベーター2内の植物体付近で、光度計(ライトアナライザーLA-105、株式会社日本医化器械製作所製)により測定した照度は17,039ルクス、光量は、PPFD:234μmol m-2-1であった。
(比較例1)
実施例1において、<第2の工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で交配種子Fを得た。
<第2の工程>
実施例1の<第2の工程>において、光環境を<第1の工程>から変更せず、植物育成用インキュベーター(LPH-350-SPC、株式会社日本医化器械製作所製)を用い、白色蛍光灯下(図1Aに示す光環境下)で行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、第2の工程を行った。
(比較例2)
実施例1において、<第2の工程>を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で交配種子Fを得た。
<第2の工程>
実施例1の<第2の工程>において、光環境を、図1Bに示す発光スペクトルの光環境から、図1Dに示す発光スペクトルの光環境に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、第2の工程を行った。
具体的には、実施例1の第2の工程において、「改変インキュベーター1」を、植物育成用インキュベーター(LPH-350-SPCに、光源として青色LEDチューブを増設して改変した植物育成用インキュベーター;以下「改変インキュベーター3」と称することがある)に変更して行った。
図1Dに示す発光スペクトルは、分光光度計(ライトアナライザーLA-105、株式会社日本医化器械製作所製)により測定した。改変インキュベーター3内の植物体付近で、光度計(ライトアナライザーLA-105、株式会社日本医化器械製作所製)により測定した照度は17,204ルクス、光量は、PPFD:276μmol m-2-1であった。
(試験例1:交配種子Fにおける交配の確認)
以下の方法により、実施例1及び2、並びに、比較例1及び2において、第2の工程で収穫した交配種子Fが、イネ品種「あきだわら環1号」と、イネ系統「sbe1あきだわら」との交配により得られたものであることの確認を行った。
植物育成用インキュベーター(LPH-350-SPC、株式会社日本医化器械製作所製)内で、温度30℃、相対湿度100%の条件下で発芽させ、10日間育成した。
DNA Sui-Suiキット(Rizo Inc, Tsukuba, Ibaraki, Japan)を用いて発芽した苗(n=10)からDNAを抽出し、sbe1遺伝子のDNAマーカーを用いて交配種子Fが、イネ品種「あきだわら環1号」と、イネ系統「sbe1あきだわら」との交配により得られたものであることを確認した。
sbe1遺伝子を検出するために、プライマー対、Sbe1_5end_12I/D_U(配列番号:1)及びSbe1_5end_12I/D_L(配列番号:2)(特開2013-172710号公報参照)を使用した。
PCRの温度条件は、タッチダウンPCR法(Don et al.1991)に基づいた。PCRプログラムは以下の通りであった。DNAを完全に変性させるために94℃で5分間、続いて94℃で30秒間、アニーリング温度(後述)で60秒間、72℃で30秒間の34サイクル、その後72℃で10分間、完全な二本鎖DNAの合成を行った。アニーリング温度は、第1サイクルでは62℃であったが、第2サイクルから第14サイクルまでは1サイクル当たり0.5℃ずつ下げ、最後の20サイクルでは55℃に維持した。
実施例1及び2、並びに、比較例1及び2において、第2の工程で収穫した交配種子Fは、いずれもsbe1遺伝子が検出され、イネ品種「あきだわら環1号」と、イネ系統「sbe1あきだわら」との交配により得られたものであることが確認された。
(試験例2:交配種子Fの質量の測定)
実施例1及び2、並びに、比較例1及び2において、第2の工程で収穫した交配種子Fを室温(25±5℃)にて7日間乾燥させた後、それぞれ玄米1粒の重さを、微量電子天秤(AB204-S、メトラー・トレド株式会社製品、0.1mgまで計測可能)を用いて測定し、玄米80粒の平均値を算出した。結果を図2に示す。
図2の結果より、切穎して交配したイネの個体(母体)を、交配直後に図1B及び図1Cに示す発光スペクトルの光環境下で育成し、稔実した果実を登熟させて得られた玄米は、播種から収穫まで図1Aに示す従来の発光スペクトルの光環境下で育成し、稔実した果実を登熟させて得られた玄米と比較して、質量が大きく上回ことが分かった。
(試験例3:光環境による到穂日数の確認)
以下の方法で、イネを、実施例1及び2、並びに、比較例1及び2の第2の工程における各光環境下で育成した場合の到穂日数の確認を行った。
イネ系統「sbe1あきだわら」(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構所有)を用い、播種から出穂まで、図1Aに示す発光スペクトルの光環境下(LPH-350-SPC)、図1Bに示す発光スペクトルの光環境下(改変インキュベーター1)、図1Cに示す発光スペクトルの光環境下(改変インキュベーター2)、又は図1Dに示す発光スペクトルの光環境下(改変インキュベーター3)の一定の光環境下で育成した。
いずれの光環境においても、明期が10時間(温度:27℃~30℃)、暗期が14時間(温度:18℃~25℃)の10時間日長で、CO濃度600ppm、相対湿度85%の条件にて行った。
具体的には、各光環境下で、イネ系統「sbe1あきだわら」の種子を、シャーレ上に播種し、温度30℃、相対湿度100%の条件下で3日間置き、発芽させた。発芽させた種子は、イネ用育苗培土(ボンソル2号、住友化学株式会社製)を入れた園芸用プラグトレー(RL-40PT、株式会社東海化成製)に移植して栽培を行った。窒素不足により葉の黄化が認められた場合は、100個体に対し5%(w/v)の尿素を50mL追肥した。結果を下記表1に示す。
Figure 2023035491000002
表1の結果より、出穂までの期間は、図1Aに示す発光スペクトルの光環境下(白色蛍光灯下)で育成した場合が最も短く、高速世代促進においては有効であることが分かった。
本発明のイネ科植物の育成方法は、簡便で迅速な育種を行うことができ、また切穎法により得られた果実であっても十分な肥大を示すため、種子質量が大きい果実を得ることができ、更に得られた果実の発芽率及びその後の生育が良好である高品質の交配種子を得ることができるため、一般的なイネ科植物の育成方法のみならず、イネ科植物の高速世代促進技術において好適に利用することができる。
また、本発明のイネ科植物育成用装置は、イネ科植物の育成のために用いられるものであり、特にその光環境は、簡便で迅速な育種を行うことができ、また切穎法により得られた果実であっても十分な肥大を示し、種子質量が大きい果実を得ることができる光環境である。したがって、一般的なイネ科植物の育成に使用できるだけでなく、イネ科植物の高速世代促進技術において好適に使用することができる。
また、前記イネ科植物育成用装置は、イネ科植物の育成のために用いられるものであるが、他の植物の発芽試験、昆虫を含めた動物や植物等の生物時計の研究、藻類の培養、微生物の培養、植物の培養、昆虫や小動物の飼育などの光を要する生物学的試験においても、幅広く使用することができる。
1 イネ科植物育成用装置
2 装置本体部
3 槽
3a 外扉部
4 収容手段
4a 内扉部
4b 吸込み口
5A 循環通路(送給用)
5B 循環通路(復帰用)
6 空調部
7 操作パネル
8 設定入力部
9 加温ヒータ
11 発泡スチロール
12 垂直板
13 棚板
14 マグネット
15 庫内ファン
17 光源
17A 光源本体
17a 安定器
17b 反射板
21 メインパネル
22 照射設定用パネル
25 冷却器
26 循環送風ファン
28 熱交換器
29 圧縮機

Claims (10)

  1. 外部光を遮蔽して人工光のみをイネ科植物に照射してイネ科植物を育成させるイネ科植物の育成方法であって、
    前記人工光として白色光をイネ科植物に照射して育成させる第1の工程と、
    前記人工光として、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を前記第1の工程で育成させたイネ科植物に照射して育成させる第2の工程と、
    を含み、
    前記イネ科植物の交配期間に、前記第1の工程から前記第2の工程に変更することを特徴とするイネ科植物の育成方法。
  2. 外部光を遮蔽して人工光のみをイネ科植物に照射してイネ科植物を育成させるイネ科植物の育成方法であって、
    前記人工光として白色光をイネ科植物に照射して育成させる第1の工程と、
    前記人工光として、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光を前記第1の工程で育成させたイネ科植物に照射して育成させる第2の工程と、
    を含み、
    前記イネ科植物の交配期間に、前記第1の工程から前記第2の工程に変更することを特徴とするイネ科植物の育成方法。
  3. 第2の工程の人工光は、波長380nm以上780nm以下の波長領域の発光スペクトルにおいて、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長400nm以上490nm以下の波長領域を定積分した値Bfとが、Rf>Bfを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長490nm超え550nm未満の波長領域を定積分した値Gfとが、Rf>Gfを満たす人工光である請求項1から2のいずれかに記載のイネ科植物の育成方法。
  4. 第1の工程において、イネ科植物の交配が、切穎したイネ科植物を用いて行われる請求項1から3のいずれかに記載のイネ科植物の育成方法。
  5. イネ科植物の世代促進のために用いられる請求項1から4のいずれかに記載のイネ科植物の育成方法。
  6. イネ科植物の育成のために用いられるイネ科植物育成用装置であって、
    前記イネ科植物を収容可能な収容手段と、
    前記収容手段の内部に白色光を照射する第1の光照射手段と、
    前記収容手段の内部に、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域におけるピークトップの光強度が最大となる光を照射する第2の光照射手段と、
    前記第1の光照射手段と、前記第2の光照射手段とを切り替える切替え手段と、
    を有することを特徴とするイネ科植物育成用装置。
  7. イネ科植物の育成のために用いられるイネ科植物育成用装置であって、
    前記イネ科植物を収容可能な収容手段と、
    前記収容手段の内部に白色光を照射する第1の光照射手段と、
    前記収容手段の内部に、発光スペクトルにおける波長380nm以上780nm以下の波長領域において、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長400nm以上490nm以下の波長領域における最大光強度Bとが、R>Bを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域における最大光強度Rと、波長490nm超え550nm未満の波長領域における最大光強度Gとが、R>Gを満たす光を照射する第2の光照射手段と、
    前記第1の光照射手段と、前記第2の光照射手段とを切り替える切替え手段と、
    を有することを特徴とするイネ科植物育成用装置。
  8. 第2の光照射手段が照射する光は、波長380nm以上780nm以下の波長領域の発光スペクトルにおいて、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長400nm以上490nm以下の波長領域を定積分した値Bfとが、Rf>Bfを満たし、かつ、波長550nm以上780nm以下の波長領域を定積分した値Rfと、波長490nm超え550nm未満の波長領域を定積分した値Gfとが、Rf>Gfを満たす人工光である請求項6から7のいずれかに記載のイネ科植物育成用装置。
  9. 切穎したイネ科植物を用いて人工的に交配させたイネ科植物の育成のために用いられる請求項6から8のいずれかに記載のイネ科植物育成用装置。
  10. イネ科植物の世代促進のために用いられる請求項6から9のいずれかに記載のイネ科植物育成用装置。
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