JP2023033665A - 液体加熱装置及び冷蔵庫 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体に電気を流して発生するジュール熱により液体を加熱する液体加熱装置において、加熱時間を短縮する。【解決手段】初期温度Tiの液体を目標温度Tfまで加熱する液体加熱装置であって、容器41と、容器内に配置される電極対43と、液体に浸漬された電極対を介して液体に電流を流す交流電源44と、を有し、電極対の電極間距離d、電極対が液体に電流を流す電極面積Sを、交流電源の最大電流Imax、最大電圧Vmax、及び初期温度Tiと目標温度Tfとの中間温度Tm((Ti+Tf)/2)において液体がとりうる電気抵抗率をρ(Tm)に基づいて定める。【選択図】図4A
Description
本発明は、電気エネルギーをジュール熱により加熱する液体加熱装置及びそれを用いた冷蔵庫に関する。
液体の加熱には物質を燃焼させ発生した熱を液体に伝熱させる方法や、導体に電気を流し発生するジュール熱を伝熱させて加熱する方法など幾つかの方法がある。液体が水である場合、前者はガスを燃焼させてお湯を沸かすガス湯沸かし器が、後者は電気ポットが身近な例である。これらの方法は液体以外のものをいったん加熱した後、液体に熱伝導させるという意味で間接的な加熱方法と見なすことができる。一方、熱以外の形態のエネルギーを直接液体の熱に転換する方法もある。例えば太陽熱温水器は太陽光に含まれる赤外線で水を温めている。
液体を加熱する装置で実用化されているものは殆どの場合、間接的な加熱方法が用いられている。直接的な加熱方法では、先に挙げた太陽熱温水器が一般家庭でも比較的広範に用いられているものの、直接的な加熱方法が圧倒的な少数派であることは間違いない。直接的な加熱方法の別の例として、液体に直接電気を流し、発生するジュール熱によって直接液体を加熱する技術(直接抵抗加熱技術)が従来から知られている。この方法は配線や電極の電気抵抗に比べ液体が高い電気抵抗を持つ場合、電気の仕事がほぼ全て液体の加熱に用いられるため、エネルギーの利用効率が極めて高いという特徴を有する。
間接的な加熱方法は加熱した液体を移動させた後に高熱の発熱体が残るため、周囲への熱の拡散が長時間継続することや、物や人の接触による事故の原因になるという危険性がある。高温の発熱体からの余熱は機器の寿命を縮める影響を及ぼす。また、予期しない事象により液体が無くなってしまった場合に発熱体を継続して加熱し続けてしまうおそれもある。更に長期間の使用により液体中に含まれるミネラル分(カルシウムやマグネシウム)が析出し、加熱面に付着してしまう。このため発熱体から液体への熱の伝達効率が落ち、結果として過熱に要する時間や電力効率を悪化させる。直接抵抗加熱では、こうした不利益を回避できる特徴もある。
特許文献1は複数の電極対を用いて直接抵抗加熱技術によって液体を加熱する方法について開示している。液体の電気伝導率は、液体に含まれる電気キャリア(主に正や負に帯電したイオン)や液体の温度によって変化するため、異なる電極間隔を有する複数の電極対を準備しておき、液体の電気伝導率に応じて電極を切り替えて使用する。切り替えの際の電流変化が大きいと直接抵抗加熱器が接続されている電源線に大きなノイズが発生し、同じ電源系統に接続されている機器に悪影響を与える。このため、特許文献1では、電極間隔の組み合わせにより電極切り替え時に電流変化がスムーズになるような電極間隔と制御方法について開示している。また、電極切り替え時にスイッチとして用いるトライアックにかかる費用をできるだけ低減するよう、トライアックの最大電流容量を最小化する工夫をしている。更に、こうした工夫を実際に実現するための電極設計が解析的にできないことから最適化手法を用いて目的を達成することや、電極間隔設計やトライアックの最大電流の最小化がその際に必要となる制約条件であることなどを開示している。すなわち、特許文献1は直接抵抗加熱技術で複数の電極を使用する際に生じる電極切り替え時のノイズ発生とコストの低減という課題に対して一つの解決を提示する。
Analytical Chemistry, Vol.56, No.7, pp.1138-1142,(1984), "Temperature dependence and measurement of resistiviity of pure water", Truman S. Light.
液体を加熱して利用するにあたり、加熱に要する時間は重要である。間接的、直接的を問わず、一般に液体の加熱に要する時間は加熱に用いる熱エネルギーが大きいほど短くなる。直接抵抗加熱技術では電気の持つエネルギーをジュール熱という形で液体に移動するため、加熱時間を短くするには大きな電気エネルギーを用いればよい。一方、液体の電気抵抗率は液温に依存し、温度上昇とともに電気抵抗率は小さくなる。つまり電極間の抵抗は温度が上がるに従って小さくなる。このため、定電圧もしくは定電流動作する一般的な電源では、液温上昇に伴う低抵抗化により単位時間あたりに発生するジュール熱が変化し、電源の設定を適切に選択しない限り加熱に要する時間が長くなってしまう。
具体的な数字を用いた例を挙げて説明する。図1は100V、15Aの容量をもつ商用電源を用いて水を加熱する場合に水に加えることができる電圧13、それによって流れる電流14、結果として水に加わる電力15を計算したものである。ここで、水の電気抵抗率は、25℃における抵抗率50Ωmとし、以降で説明する水の抵抗率の温度依存性を使って算出した。なお、この値は一般的な水道水での抵抗率に相当する。
図1に示されるように、電源から供給できる最大電圧は100V、最大電流は15A、最大電力は1500Wである。最大電力を供給できるのは最大電圧かつ最大電流の場合であるため、オームの法則より負荷、すなわち水の抵抗が100/15≒6.67Ωのときのみである。水の抵抗が6.67Ωよりも小さい領域11では、最大電圧100V未満で最大電流15Aが流れるため、供給される電力は供給可能な最大電力よりも小さい。同様に、水の抵抗が6.67Ωよりも大きい領域12では、最大電圧100Vを印加しても最大電流15Aを流すことができないので、供給される電力は供給可能な最大電力よりも小さい。このように、商用電源から供給される電力は、水の抵抗が6.67Ωである1点のみで最大となり、それ以外の領域では最大電力よりも小さな電力しか供給できない。
このように、直接抵抗加熱技術で液体を加熱する場合、電源から供給できる最大電力を加熱に供することができる条件は限定されている。このため、加熱対象の液体が有する電気抵抗率の温度依存性を考慮することなく加熱を行うと、加熱に要する電力を効率的に液体へ供給できないため、加熱に要する時間が長くなってしまう。
このように、直接抵抗加熱技術で加熱時間を短縮するには電源からできるだけ多くの電力を液体に供給するための工夫が必要となる。しかし、こうした工夫について開示している文献は見当たらず、加熱時間の短縮という課題は残存している。例えば、特許文献1では複数の電極対を用いた場合の直接抵抗加熱技術について開示しているが、加熱時間を短縮化するための方法や、液体の特性に応じた加熱方法については開示していない。
本発明の一実施の態様である液体加熱装置は、初期温度Tiの液体を目標温度Tfまで加熱する液体加熱装置であって、容器と、容器内に配置される電極対と、液体に浸漬された電極対を介して液体に電流を流す交流電源と、を有し、電極対の電極間距離d、電極対が液体に電流を流す電極面積Sを、交流電源の最大電流Imax、最大電圧Vmax、及び初期温度Tiと目標温度Tfとの中間温度Tm((Ti+Tf)/2)において液体がとりうる電気抵抗率ρ(Tm)に基づいて定める。
最短加熱条件を満たすように電極仕様を決めることで加熱時間を短縮することができる。また、電極仕様との電極対の大きさまたは液体の電気抵抗率の誤差が加熱時間に与える影響も小さく抑えられることが確認されている。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
発明者らは、液体、特に水を主体とした液体が有する電気抵抗率の温度依存性が、温度の指数関数という比較的単純な近似によって表しても実用上ほとんど問題がないことに着目した。
水に溶解する物質を純水に混ぜてゆくと、一般に電気抵抗率は減少する。端的な例として、超純水への不純物の混合を考える。超純水に溶解した不純物がイオン化し、そのイオンが電気の担体となるため、電気伝導が容易になり電気抵抗率は減少する。図2は一定量の不純物を超純水に混ぜた溶液の電気抵抗率の温度依存性ρ(T)を示している。不純物が少ない溶液では、ρ(T)は有限の項数で表される温度のべき関数を指数部に持つ指数関数によって高精度に近似される(非特許文献1)。これに対して、精度は多少犠牲になるものの、より単純な(数1)により、ρ(T)を近似することもできる。
ここでρ0とαは不純物の量に応じて決まる定数である。図2のそれぞれの直線は各不純物濃度に対して(数1)で表される電気抵抗率の温度依存性を示している。不純物濃度が高くなるほど抵抗率が下がり、かつ(数1)による近似の精度が高くなっていることが見て取れる。通常、飲料水として用いられる市水、いわゆる水道水は概ね10~200Ωm、多くの場合50~100Ωm程度の抵抗率を有する。さらに、水を主体的な成分として含む液体は、水以外の成分が水に対して不純物として溶け込んでいると考えられ、一般的な水道水よりも小さな抵抗率を持っていると考えられる。このため、(数1)は比較的不純物濃度が高く電気抵抗率が低い水道水や水を主体として含む液体に対し、抵抗率の温度依存性を示すよい近似式として用いることができる。
電極の長さをL、高さをH、電極間隔をdとすると、液体による電極間の抵抗は(数2)で表される。
電極間の電圧V、電流Iに対し、電源が供給できる最大の電圧と電流をそれぞれ最大電圧Vmax、最大電流Imaxとする。液体に投入される電力Pは(数3)で定まる抵抗R’に対する電極間の抵抗Rの大小関係に応じて(数4)もしくは(数5)で求められる。(数4)はR>R’の場合、(数5)はR<R’の場合である。なお、電極面積S=L・Hである。
ここで、図2に示したように温度上昇により抵抗率は減少するのでα<0である。(数4)、(数5)の最右辺においては、指数部の符号を明示するため、αを絶対値で表した上で符号をつけて表記した。(数4)における式の変形は、電極間の抵抗RがR’より大きい場合、電圧Vは最大電圧Vmax一定となり(図1を参照)、電流I=Vmax/Rの電流が流れることを利用している。同様に、(数5)における式の変形は、電極間の抵抗RがR’より小さい場合、電流Iは最大電流Imax一定となり(図1を参照)、電圧V=Imax×Rとなることを利用している。電源と液体とが決まれば、最大電圧Vmax,最大電流Imax,定数α,定数ρ0が決まる。したがって、両式において液体に加えることのできる電力Pは、そのときの液体の温度Tで決まることを示している。
(数4)、(数5)に基づき、電力P-液温Tの関係を模式的に表したものが図3のグラフ(P-Tグラフ)である。抵抗R=R’となる液温T=T’で電力P=最大電力Pmaxとなり、液温T<T’の領域Iと液温T>T’の領域IIの双方で、液温T’から離れるにつれ電力Pは単調減少する。
P-Tグラフは、以下に説明するように、液温T=T’を境に対称な形状をもつ。領域I,IIに対応する電力P-液温Tの関係式、すなわち(数4)、(数5)をそれぞれ液温Tで微分すると、(数6)、(数7)になる。
(数6)、(数7)は、領域I,IIにおいて電力Pが等しい値を取る点でのグラフの傾きは、符号が逆で大きさが等しいことを示している。すなわち、P-Tグラフは液温T’を境に対称な形状をもつ。
ところで、液体の温度上昇は投入したエネルギーEに比例する。比例定数をAとし、時間変化をあらわに表すために液温T、エネルギーEをそれぞれ時間の関数として表すとT(t)=AE(t)となる。この関係を用いると、電力Pの時間微分は(数8)として表せる。
なお、(数8)における式の変形には、(数6)、(数7)及びdE/dt=Pの関係を用いている。(数8)における符号-はP-Tグラフ(図3)における領域Iに、符号+はP-Tグラフ(図3)における領域IIに対応している。(数8)より、電力P-時間tのグラフ(P-tグラフ)においても、電力Pが等しい値を取る点でのグラフの傾きは、符号が逆で大きさが等しいことが分かる。すなわち、P-tグラフは、抵抗R=R’となる時間(電力P=最大電力Pmaxとなる時間)を境に対称となるグラフであり、図3に示したP-Tグラフと似た形状を有している。
最短時間で加熱するためには加熱に使われるエネルギーを可能な限り短時間で液体に投入すればよい。エネルギーは電力量であるから、その大きさはP-tグラフの面積に相当する。液体の加熱を開始する時刻から加熱を終了するまでの時刻(液温が目的とする温度に達する時刻)までのP-tグラフの面積が加熱に用いる電力量となるため、最短時間での加熱条件(最短加熱条件という)は、加熱開始時刻と加熱終了時刻との中間で最大電力Pmaxが投入される条件となる。
このように、最短加熱条件が、P-tグラフにおいて対称中心となる時刻と加熱開始時刻との時間間隔及びP-tグラフにおいて対称中心となる時刻と加熱終了時刻との時間間隔が等しくなるように定められるということは、対称中心の時刻を挟んで投入される電力量が等しいことを意味している。水を主体とした液体では室温から沸点まで概ね比熱は一定であるため、投入エネルギーの量が同じであれば出発温度が何度であっても温度上昇量は同じとなる。従って、対称中心の時刻を挟んだ温度変化量も同じになる。すなわち、最短加熱条件は、加熱開始時刻における液温を初期温度Ti、加熱終了時刻における目標温度Tfとするとき、中間温度Tm=(Ti+Tf)/2の温度のときに最大電力Pmaxが投入される条件であると言い換えられる。
この条件は電極仕様を特定の仕様にすることにより満たすことができる。最短加熱条件では、(数2)から(数9)が成り立つ。
(数9)を変形することで(数10)が得られる。(数10)を満たす間隔d、電極面積S=L×Hの電極対を用いることにより、液体を最短で加熱できることができる。
次に誤差の影響を検討する。電極面積(L,H)や電極間距離dは現実的にはある程度の誤差を含んで加工される。また、液質のばらつきや変動による抵抗率ρの設計値からのずれも誤差となる。こうした最適値からのずれは 加熱時間が最短時間に比べ長引く原因となる。まず、P-Tグラフにおいて、電極面積の誤差によってどの程度最大電力Pmaxの位置が異なるかを評価する。電極面積がSからS+ΔSに変化したとする。このとき、最大電力Pmaxとなる液温がTからT’に変化するとして、(数11)と書ける。
(数11)より液温Tと液温T’が求められるので、その差ΔT=T-T’は(数12)により求められる。
ここでΔTの2次以上の項は無視した。なお、(数11)でSとdはそれぞれ指数関数の係数の分母と分子にあることから、電極間距離に誤差があった場合((d→d+Δd)の場合)も、符号が変わるだけで同じ形(ΔT~1/α・Δd/d)になる。この結果から、最大電力Pmaxの液温のずれは寸法変化の割合と同程度(1次のオーダー)であることが分かる。
同様にして、電極面積の誤差が、各温度でどの程度の電力の誤差につながるかを評価する。電極面積がSで最適条件を満たしている場合(このときの各温度の電力P)と、S+ΔSに変化して最適条件からずれている場合(このときの各温度の電力P’)とで、両者の差ΔP=P-P’は領域IIでは(数13)が、領域Iでは(数14)が成り立つ。
ここで、ΔSの2次以上の項は無視し、ΔS/S<1とした。
以上から、領域I、IIともに各温度での電力誤差は電極対の大きさの誤差の割合の1次のオーダーであることが分かる。先に説明したずれ量ΔTも電極対の大きさの誤差の割合の1次のオーダーであるから、P-Tグラフの縦軸、横軸とも誤差による最適条件からのずれは誤差の割合の1次のオーダーである。上述のように、温度とエネルギーとは比例するので、エネルギーの誤差も電極対の大きさの誤差の割合の1次のオーダーであるといえる。一方、エネルギーは電力と時間の積で表され、誤差による時間のずれは誤差により増加したエネルギーを追加投入するために必要な時間に相当する。エネルギーと電力がそれぞれ電極対の大きさの誤差の1次のオーダーであるから、時間の誤差は2次以下のオーダーであるといえる。例えば電極対の大きさが30%程度変わるとすると、加熱時間に対する影響は9%以下になることが期待されるが、実際の影響も5%程度の時間延長になることが計算できる。同様に電極対の大きさの50%のずれは加熱時間25%以下の延長につながることが期待され、計算によれば10~15%程度の延長になる。
誤差をどこまで低減する必要があるかは時間の延長をどこまで許すかという設計事項であるが、例えば電極対の大きさの誤差を30%未満に抑えることができれば時間の遅れは大きく見積もっても10%以下となるため、この誤差値は概ね実用上差支えない範囲に留まっている。ここでは電極対が一つの場合についての誤差の考え方を述べたが、複数の電極対を用いた場合も基本的には同様にして考えることができる。また、水質の誤差については、誤差として取り扱える小さなずれの範囲では概ね見過ごしてよい。
実施例1では1つの電極対を用いて液体を加熱する装置について説明する。図4Aに直接抵抗加熱技術によって液体を加熱する液体加熱装置の構成を模式的に示す。容器41に電極対43を設置し、配線45を介して電源44に接続している。容器41には、電極対43が完全に浸かるように加熱対象の液体が収容されている。容器41の材料には比較的耐熱性の高いポリカーボネートを用いるとよい。電極には例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing:冷間静水圧成形法)成形した炭素を用いる。炭素材に穴加工を施しネジとナットで配線45と接続する。この際、電極が対面する側には穴にザグリ加工を施してネジの出っ張りを無くし、電極間隔が狭い場合に電極とネジとが接触して短絡することがないようにする。所定の厚さの絶縁体を電極対で挟んで固定することにより、電極間隔dを規定する。このとき、絶縁体は電極の一部のみを覆うようにして電極対43間の電流経路を確保している。また、絶縁体を挟んだ部分は電流が流れないため電極長さL、電極高さHからは除外している。すなわち、電極面積Sとは、電極の液体に電極を流すことのできる部分の面積を指している。電極対43は容器41の底面に配置する。容器上部側から電極を液面に差し込むように配置してもよいが、電極対43を容器底部付近まで差し込むような設計とすべきである。電極対43が液面付近に位置していると、加熱された液体は液面付近に滞留し、底面付近の液体の温度上昇に時間がかかるためである。配線45は容器側面に開けた小穴から容器外部へ導き出し電源44と接続している。容器小穴は配線を導出した後に耐水性を有するボンドで隙間を埋め、水が漏洩しないようにする。電源44は最大電圧100V、最大電流5A、容量500Wを供給できる交流電源を用いる。図面では省略したが、容器上部より温度計を差し込み、概ね水深の半分程度の位置で液温を計測できるようにしている。
図4Bは図4Aの等価回路である。電極対43の間の液体に電気が流れるが、その電気抵抗を抵抗42で表している。抵抗42の大きさは液体の温度によって変化するため、可変抵抗として表している。
まず、比較例として、電極の大きさを適当に設定し、長さ5cm、高さ10cmとした。この電極を電極間隔2mmに配置した電極対を用い、ほぼ0℃の水を90℃まで加熱を行った。冷却した水500mLを容器に入れ、100Vの電圧を電極間に印加することにより加熱した。用いた水は25℃での抵抗率が概ね50Ωmであった。図5に水温と投入した電力とを時間に対してプロットした図を示す。水温が90℃に到達するのに要した時間は、おおよそ4300秒程度であった。
これに対して、(数10)に従い水を0℃から90℃に加熱する場合に最適な電極対の大きさを求める。この場合、中間温度Tm=45℃、最大電圧Vmax=100V、最大電流Imax=5A、d=2mmであるから、(数10)よりS=L・H=5.7cm2と求められる。なお、25℃における抵抗率が50Ωmの水に対する値として、α=-2.83×10-2、ρ0=20.29としている。電極長さL=5cmとして電極高さH=1.15cm、およそ1.1cmの電極を用いた。図6にこの場合の電力と水温の時間変化を示す。おおよそ770秒で90℃に達し、電力はその半分程度の380秒前後で最大値が投入されていることが分かる。このように電極対の大きさを液体加熱装置の最短加熱条件を満たす仕様に基づいて定めることにより、任意の大きさの電極対を用いる場合に比べ大幅な加熱時間の短縮を図ることができる。
図4Aでは液体を容器に溜めた状態で加熱する態様を示しているが、液体を流しながら加熱する態様もありうる。この場合、流れを有する液体に対して単位時間当たりの流量をひと塊の液体と捉えて同様の考え方を適用することにより、流れる液体の所定の位置における温度を制御することができる。すなわち、流れる液体に対しその吐出口における液温を所定の目標温度に加熱する構成も可能である。これは以降の実施例においても同様である。
実施例2では直接抵抗加熱法による加熱時間の短縮方法について説明する。加熱時間を短縮するには、単位時間当たりに液体へ投入する電力を増やせばよい。図7A及び図7Bに電極対を2つ用いた例を模式的に示す。図7Aでは電極対71と電極対72が直列に、図7Bでは電極対71と電極対72が並列に、交流電源に接続されている。電極対71の電極間距離d1、電極面積S1とし、そのときの抵抗R1とし、同様に電極対72の電極間距離d2、電極面積S2、抵抗R2とする。ここで、抵抗比q=R1/R2と定義すると、(数2)より、q=d1S2/d2S1と表せる。したがって、電極仕様が決まれば抵抗比qの値はある値に定まる。このとき、電源から見た負荷(加熱対象の液体の持つ抵抗)は直列の場合(図7A)は(数15)、並列の場合(図7B)は(数16)となる。
このように、どちらの場合も定数qで定まる合成抵抗Rをもつ電極対1つで加熱することに等しくなる。従って、電極設計の自由度が増えるものの、加熱時間を短縮することはできない。
これに対して、図7Cでは、並列に接続した電極対71と電極対72のどちらか一方に導通させるスイッチ73を設けている。この場合、初期温度Tiから、切り替えた時点での切替温度Tsまでの間を一方の電極対で加熱し、他方の電極対は切替温度Tsから目標温度Tfまでの間を加熱する。従って、それぞれの電極対について、液温Tiから液温Tsまでと、液温Tsから液温Tfまでを最短で加熱する条件を設定すればよい。これは実施例1に開示した方法で決めることができる。あとは切替温度Tsをどこに設定するかであるが、切替温度Tsは初期温度Tiと目標温度Tfとの中間温度((Ti+Tf)/2)とすればよい。これは定性的には次のように説明できる。
まず、切替温度Tsを初期温度Tiの近傍に設定したとする。これは電極対が1つの場合とほとんど同じである。逆に切替温度Tsを目標温度Tfの近傍に設定した場合も同様である。しかし、電極対を1つ増やすことにより最大電力を投入できる条件も一つ増やせることになるため、一定の時間内に投入できる電力量は増やすことができる。したがって、2つのケースとも電極対が1つの場合に比べてわずかながらも時間短縮ができる。次に、切替温度Tsを初期温度Tiから目標温度Tfに向けて連続的に変化させた場合を考える。切替温度Tsを初期温度Tiより僅かに大きくした段階で電極対1つの場合に比べ時間の短縮ができ、切替温度Tsを目標温度Tfより僅かに小さくした段階で電極対1つの場合に比べ時間の短縮ができる。したがって、切替温度Tsを初期温度Tiから目標温度Tfに向けて増やしていくと、まずは加熱時間の短縮量が増加し、あるところから目標温度Tfに近づくにつれて加熱時間の短縮量が減ってゆく。短縮量が最大になるのは初期温度Tiと目標温度Tfのちょうど中間の温度であることが対称性から分かる。
初期温度Tiと目標温度Tfのちょうど中間の温度でスイッチ73を切り替えた場合の温度と電力の時間変化を図8に示す。図8は、25℃における抵抗率が50Ωmの水500mlを、初期水温20℃から目標水温100℃まで加熱する場合について、電極対が1つの場合と2つの場合(図7Cの構成)とを比較したものである。電源には最大電圧100V、最大電流15A、容量1500Wを供給できる交流電源を用いている。切替温度Tsは20℃と100℃の中間温度である60℃である。電極対が2つの場合は、(数10)より、水温20℃から60℃まではd/(L・H)が0.204、水温60℃から100℃まではd/(L・H)が0.632であれば、それぞれ最短で加熱できる条件となる。そこで電極間隔d=2mmとし、前者を9.9cm角、後者を5.6cm角の電極とする。水温60℃でスイッチ73を切り替えることにより波形81に示されるように概ね150秒程度で100℃に達する。一方、電極対が1つの場合は、(数10)よりd/(L・H)≒0.414が最短条件となる。ここではd=2mm、L=10cm、H=5cmとして加熱する場合の水温上昇を波形82として示す。概ね210秒程度で100℃に達する。
電極対が2つの場合と1つの場合それぞれで印加される電力を比較したものが図8中、波形83と波形84である。60℃までの加熱の部分で2つの電極対の方が大きな電力を投入できており、これが時間の短縮に寄与していることが分かる。このように、2つの電極対を切り替え使用することにより、電極対が1つの場合に比べて加熱を加速できることが分かる。
電極対の数を3つ以上に増やしても更に時間短縮できることが容易に分かる。その場合の最短時間条件も容易に一般化することができ、N個の電極対を用いた場合の最短加熱の電極条件は(数17)で表せる。このときの温度と電力の関係を図9に示す。
すなわち、初期温度Tminの液体を目標温度Tmaxまで加熱するためにN個の電極対を使う場合、(Tmax-Tmin)をN等分し、各温度範囲をT1、T2、…、TNとするとき、温度範囲Ti(1≦i≦N)に対して1つの電極対を割り当て、その範囲内で割り当てた電極対が最短で加熱するような条件を実施例1で述べた方法に従って選定すればよい。
以上の実施例では、値は任意ではあるが一定の抵抗率をもつ液体を加熱対象とすることを前提に、最適な電極仕様を決定する方法について述べてきた。しかし、液体の抵抗率をある特定の値として求めた最適な電極仕様は、異なる抵抗率を持つ液体に対しては最適な電極仕様ではない。実施例3では、加熱対象の液体がとりうる電気抵抗率に幅がある場合に、電気抵抗率の想定範囲内で概ね最短時間で加熱できる電極構成・仕様を決める方法について説明する。
実施例3では想定する液体の抵抗率を水道水の持つ抵抗率とする。水道水の抵抗率は水質によって変化し、例えば日本国内でも地域によって値が異なる。しかし、一般的には25℃での抵抗率は10~200Ωmの範囲に収まるため、この範囲を想定範囲とする。
先ず電極対が1つの場合を考える。初期温度Ti=0℃、目標温度Tf=90℃、最大電圧Vmax=200V、最大電流Imax=15Aとし、想定される抵抗率の範囲内の各値に対して最適加熱条件となるd/Sの値を図10に示す。抵抗率の温度依存性を表す(数1)中のパラメータρ0、αの値も併せて示している。図11は、求められたd/Sの値を基に、各抵抗率値に対し、電極間隔dと電極形状を正方形とした場合の電極の一辺の長さ(√S)との関係をグラフにしたものである。例えば電極間隔dを2mmとしたとき、抵抗率が10,50,100,150,200Ωmに対して電極の一辺の長さはそれぞれ2.9,6.5,9.2,11.3,13cmとなる。そこで、これらの長さをそれぞれ3,6,9,11,13cmで近似すると、1cm四方の単位電極を13×13=169個しきつめて構成される電極を用意することにより、選択した範囲の抵抗率の水に応じてほぼ最短時間で加熱できる電極を提供できる。すなわち、1cm四方の電極と電源とをスイッチを介して接続し、電気抵抗率に応じて最適な電極寸法になるようスイッチを制御する。これにより、想定される電気抵抗率に対応して概ね最短時間で加熱できる電極構成を提供することができる。この構成により、それぞれの大きさの電極対を設置するよりもトータルの電極面積を低減することができる。なお、電極対を構成する2つの電極の双方を単位電極の敷き詰め電極とするのではなく、一方の電極のみを敷き詰め電極とし、片方の電極はこの例でいえば、13×13cm四方の電極としてもよい。
この方法では、想定範囲である10~200Ωmのうち5点の抵抗率を考慮して最適な電極対の大きさを求めているので、5点から外れた抵抗率の場合は厳密には最短時間とはならない。しかし、5点の中から最も近い抵抗率を選ぶことにより、最短時間からの遅れを実用上問題ない程度に抑制できる。上述したように、抵抗率のずれが30%程度に収まっていれば、時間のずれは概ね5%以内に抑え込むことができるからである。また、選んだ5点以外の抵抗値に対しても同様な計算は可能であるので、加熱対象の液体に最も適した抵抗率に対する計算を行い、最適な電極対の大きさに合わせてスイッチを制御してもよい。これにより、より最短加熱条件に近い条件で加熱することができる。
ここでは例として抵抗率の範囲を設定し、その間から5つの値を代表して取り上げて説明した。また、電極間距離を2mm、単位となる電極を1cm四方に選んだが、これらの値はすべて例示であり、上述の考えに基づき、他の値を選んで電極を構成してもよい。
次に正方形以外の単位電極形状として長方形の電極を用いた場合の例を述べる。基本的な考え方は既に述べてきたものと変わらない。図10に示す最短加熱条件のd/Sの値に対し、電極の長さと高さが異なる値を考えればよい。ここでは例として長方形電極の一辺の長さを3cmとして考える。図12に電極間距離と残りの一辺の長さの関係のグラフを示す。電極間隔を2mmとすると、各抵抗率に対する最適な長さは夫々2.84,14.2,28.4,42.6,56.8cmとなる。この場合、2.84cmが他の数値の最大公約数となっているので2.48cm×3cmの電極を単位電極として20個の単位電極を敷き詰めた電極を準備することにより選択した範囲の抵抗率に対応できる。正方形電極に比べ単位電極の数を少なくできるため、スイッチ数や配線長を低減できる利点がある。一方で、単位電極の電極面積は大きくなるため、選択した5つの抵抗率代表値の間の抵抗率の水に対する最短加熱条件からのずれがより大きくなるおそれはある。この場合も、電極対を構成する2つの電極の双方を単位電極の敷き詰め電極とするのではなく、一方の電極のみを敷き詰め電極とし、片方の電極はこの例でいえば、56.8×3cm四方の電極としてもよい。
続いて、実施例2で説明した温度範囲に応じて電極対を切り替えて加熱を加速する手法を実施例3の電極構成に適用する例を説明する。先に示した例と同様に、初期温度Ti=0℃、目標温度Tf=90℃、最大電圧Vmax=200V、最大電流Imax=15Aとし、加熱対象の液体の抵抗率の想定範囲も10~200Ωmとする。ここでは、目標温度Tf=90℃に達するまでに1度電極対の切り替えを行うものとし、したがって、電極対の切替温度Ts=45℃とする。図13に2つの温度範囲に対する最短加熱条件となるd/Sを示す。
まず単位電極形状が正方形の場合を考える。図13のd/S値に基づいて液温45℃以下の場合における各抵抗率に対する電極間隔dと正方形電極の一辺の長さ(√S)の関係をグラフにしたものが図14Aになる。45℃以上の温度範囲における同様のグラフが図14Bである。電極間隔d=2mmとすると10,50,100,150,200Ωmの抵抗率に対し45℃以下の場合の正方形電極の一辺の長さは4.01(4),8.97(9),12.7(13),15.5(15),17.9(18)cm、45℃以上では、2.12(2),4.75(5),6.71(7),8.22(8),9.49(9)cmとなる。ここでカッコ内の数値は近似値である。上記と同様に1cm四方の単位電極を用いると18×18=324個の電極を準備しておけば10~200Ωmの抵抗率の範囲に対し、45℃を切替温度として全ての範囲で必要となる電極仕様を満たす電極を提供できる。単位となる大きさの電極を準備することにより、電極切り替え温度の上下どちらにも用いることができるようになり、結果としてそれぞれの温度範囲に対して電極を準備するよりも電極面積を低減できる。
次に単位電極形状が長方形の例を説明する。長方形の一辺を3cmとする。図13のd/S値に基づいて液温45℃以下の場合における各抵抗率に対する電極間隔dと長方形電極のもう一辺の長さの関係をグラフにしたものが図15Aになる。45℃以上の温度範囲における同様のグラフが図15Bである。電極間隔d=2mmとすると10,50,100,150,200Ωmの抵抗率に対し長方形のもう一辺の長さは、45℃以下では、それぞれ5.37,26.8,53.7,80.5,107cm、45℃以上では、それぞれ1.50,7.51,15.0,22.5,30.0cmとなる。最小の長さの電極長が他の電極長の最大公約数となっているので5.37cm×3cmと1.50cm×3cmの大きさの単位電極をそれぞれ20個ずつ準備すればよい。この場合も、正方形電極に比べて電極対の数を少なくできるため、配線や取付治具を少なくできる利点がある。一方で例示した抵抗率の値以外の抵抗率値を示す液体に対して最短時間での加熱条件から逸脱する割合が大きくなるおそれはある。
以上、加熱の途中で電極の切り替えを行う場合を説明したが、この場合も説明に用いた寸法はあくまで例示であり、その値に限定されるものではない。
実施例4では、実施例2、3で説明した液体加熱装置において加熱の途中で電極対の切り替えを行う方法について説明する。以下の説明では、電極対そのものを切り替える場合も、電極対の電極面積を切り替える場合も区別することなく説明する。図16AにN個の電極対を用いて液体を初期温度Tminから目標温度Tmaxまで最短時間で加熱する際の電力変化の様子を示す。加熱開始時間をt0=0、目標温度Tmaxに到達する時間をtNとする。所与の条件から、使用するN個の電極対には最短加熱条件を満たすものが選択されているとする。N個の電極対を使用するため、電極を切り替えるポイントは初期温度Tminと目標温度Tmax間をN等分した領域の境界となる温度である。図16Aでは液温Ti’(i=1~N-1)で示されるN-1個の境界の温度がこれに相当する。初期温度Tminを計測し、目標温度Tmaxは設定値として加熱システムに取り込むことにより、切替温度Ti’を計算することができる。後は液温を計測して必要な電極対を選択し所定の電力を投入すればよい。そして液温を計測し続け、各切替温度Ti’になった段階で電極対を切り替えて加熱を続け、目標温度Tmaxに達したら電力投入を停止する。この方法によれば、事前に目標温度設定と温度計測情報から電極切替ポイントを決め、液温計測の値に基づいて電極対の切替点を知ることができる。
別の方法として、時間に基づいて電極対の切り替えを行うこともできる。初期温度Tminと目標温度Tmaxが決まれば必要となる電力量が計算できる。更に加熱する液体の抵抗率が定まればTminとTmaxをN等分した各領域での最短加熱条件での電力投入パターンが決まるため、切替時間も計算することができる。具体的には、各切替時間の間隔(ti-ti―1)はN等分した各領域で等しい。つまり、図16Aに示すように切替時間tiは温度で切り替える場合の切替ポイントとなる切替温度Tiと同期している。このため、この一定の時間間隔毎に電極対を切り替えることにより最短時間で加熱を行うことができる。温度計測に基づく切替の場合、温度計測が適切に行われる、すなわち液温に不均一がないことが前提であり、液温の不均一があると本来望ましくないタイミングで電極の切り替えが行われる可能性があった。これに対して、時間に基づいた切替方法によれば、必要な電力の投入に必要な時間に基づいて電極対の切り替えを行うことができる。
次に、電力に基づいて切り替えを行う方法について説明する。既に述べた様に最短時間での加熱を行う場合、初期温度Tminと目標温度Tmaxの中間の温度((Tmin+Tmax)/2)を境に電力投入パターンが対称となるようにすることが条件であった。初期温度Tminと目標温度TmaxをN等分する場合においても、N等分した各領域の中間温度を境に対称な電力投入パターンとすることが最短加熱条件である。このため、投入電力を計測し、ある選択された電極対に対し計測された電力値が投入開始電力と一致すれば、それが電極対切替のタイミングであることを示している。図16Aに示されるように、N分割された各領域の初期電力値Pcは一定している。したがって、ある電極対に対して電力の供給を開始し、供給する電力値が増大から減少に転じて初期電力値Pcと等しくなった段階で、電力投入する電極対を次の電極対に切り替えればよい。この方法も液温の不均一さに影響されない利点がある。一方で、電極面積や間隔に設計からの誤差がある場合や、加熱対象の液体の抵抗率が想定値からずれている場合には中間温度Tmを境にした対称性にずれが生じるため、切り替えるタイミングを最適なタイミングからずれる可能性がある。これに対しては、許容誤差を設定し、本来切替を行う電力値に対し許容誤差の範囲に入った時点で切り替えを行うなどの対処が可能である。
最後に電力量に基づいて切り替えを行う方法について説明する。先に説明した時間に基づいた切替方法は、初期温度Tminと目標温度TmaxをN等分した各領域で加熱に要する電力量が全て等しいことに基づいていた。したがって、直接電力量を計測することによっても最短時間で加熱するための切り替えが可能である。図16Aの縦軸を電力でなく電力量、すなわちエネルギーにしたグラフを図16Bに示す。電力量は電力の積算値であるため、図16Bは図16Aのグラフを積算したものになっている。N等分した各領域での温度上昇幅は全て等しいので投入する電力も全て等しい。したがって、目標温度Tmax、初期温度Tmin、水量(場合によっては単位時間当たりの流量)、分割数Nから必要な電力量を計算できる。あとは電力を計測し、そこから電力量を求め、所定の電力量となった時点で電極対の切り替えを行えばよい。すなわち、図16Bの縦軸でエネルギーが0Jから加熱を開始し、必要なエネルギーE1が投入されたら電極対を切り替え、エネルギーE2になったら電極対を切り替え、というサイクルをエネルギーEmaxまで続ければよい。ここで、(Ei-Ei-1)は全て等しい値で、この値をΔEとすれば、Ei=i×ΔE(i=1~N)である。この方法の利点も液温の不均一性を気にしなくてよいことである。また、電極面積や電極間距離に誤差がある場合や加熱対象の液体の抵抗率が想定値からずれている場合にも、その影響を受けずにそれらの影響を考慮した正しい切り替えポイントで切り替えられる利点もある。
以上、電極対または電極対の電極面積を切り替えるいくつかの方法を示したが、実際にはこの中から一つの方法を選ぶのではなく、複数の方法でタイミングを確認することが望ましい。それにより不具合に対する冗長性を持たせることができる。また、複合的に見ることにより各方法でのタイミングの一致・不一致から装置の故障を検知できる。
実施例5ではウォーターサーバーを例に、給湯システムの構成方法の例を示す。図17Aにウォーターサーバーの外観例を示す。筐体1701の前面に表示部1702、入力部1703、給湯口1704などを備える。開口部1706には、給湯口1704からのお湯を受けるカップ1705を置くカップ置きを備える。サーバーへは、給水機構1707から水が、電源供給機構1708から電力が供給される。表示部1702は液晶のようにメッセージを表示できるものでもよいし、ランプの点灯・消灯のパターンでメッセージを意味させるようなものでも構わない。入力部1703は給湯温度や量などの条件指定や、給湯開始を指示するためのもので、ボタン式やタッチパネルなどが考えられる。無線の入出力機構を備え、スマートフォンなどで指示する方法であってもかまわない。タッチパネルやスマートフォンを用いる場合は表示部1702と入力部1703を一体としてもよい。給水機構1707は水道管やタンクに接続される。フィルターを介して接続してもよい。電源はコンセントや遮断器を介して電源供給機構1708に接続される。
ウォーターサーバーの機能ブロック図の例を図17Bに示す。太い実線が水の経路で、細い実線が電気の経路、点線が信号線を表している。水は給水機構1720からウォーターサーバーへ供給される。給水機構1720は水道管や飲料水を貯めておくタンクなどである。制御ユニット1730はウォーターサーバー各部の情報の読取り、また各部に対する指示出しを、信号線を介して行う。制御ユニット1730は、読み取った情報や機器に保存されたデータを用いて演算を行い、指示する内容を決定するため、演算処理機構と記憶機構を備える。流量検出/制御部1721は圧力計や流量計、場合によっては圧力調整器である。第1弁1722、第2弁1724は制御ユニット1730の指令に応じて水路の開閉を行う。加熱部1723は直接抵抗加熱法により液体を加熱する。制御ユニット1730は流量検出/制御部1721と第1弁1722によって加熱部1723へ供給する液量を調整できる。流量検出/制御部1721が圧力計や流量計であればその値に応じて第1弁1722を開く時間を調整する。圧力計が圧力調整機構を持つものであったり、流量計が流量可変であったりすれば、それらを適当な値に設定することにより第1弁1722を開く時間を一定にすることができる。加熱部1723は所与の条件に応じて水の加熱を行う。また、加熱部1723には水温を計測するための温度計を備えておくことが望ましい。読み取った水温は水温情報として制御ユニット1730に引き渡される。加熱が終了後、第2弁1724を開くことにより給湯を行う。給湯にはポンプでお湯を組みだす方法や圧力により押し出す方法、重力を利用して自然に液体を流出させる方法などがある。
ウォーターサーバーに供給される電源1731からの電力は電力調整部1732、電極選択部1733を介して加熱部1723へ供給される。最大電圧Vmaxと最大電流Imaxは基本的には電源1731が供給できる最大容量となる。例えば一般家庭のコンセントから電力を供給する場合、最大電圧Vmaxは100Vもしくは200V、最大電流Imaxは分電盤の遮断器容量にもよるが一般的には15Aの場合が多い。制御ユニット1730は電力調整部1732に対し必要な電力を供給するための指令を出し、また電力調整部1732が計測する供給電力を読み取る。電力調整部1732の最も簡単な構成は、電力の供給と遮断を切り替えるスイッチである。コンセントや遮断器から電力が供給される場合、電力調整部1732は負荷となる加熱部1723に対し一定の電圧を供給し、負荷の大きさに応じた電流が流れることになる。この他、安価な構成としてサイリスタをはじめとする電力用半導体を用いた、所謂位相制御方式やサイクル制御(ゼロクロス制御)方式などの電力調整機構がある。単純なスイッチによる制御に比べ、こうした方式では電力の調整がしやすい利点がある。例えば、他の機器での電力使用が増加した場合にウォーターサーバーでの使用電力を抑制して全体での電力使用量を一定値以内に抑えるような制御が可能となる。こうした特徴は、ウォーターサーバーを他の装置と組み合わせた機器で使用するような場合に必要となる。スイッチの断続的な切り替えによる供給電力の制御も可能であるが、ノイズの発生による他機器への影響や、サージによる機器劣化の加速などの不利益を被ることになる。
電力調整部1732は、加熱部1723へ印加している電圧Vと流れている電流Iを計測できることが望ましい。電力調整部1732が投入している電力の計測値はこれらの値から算出することができる。また、電圧Vと電流Iをそれぞれ計測できれば、加熱対象の液体が持つ抵抗率を求めることができる。使用する電極の面積は事前に全て既知とできるため、その中から1つの電極対を選んで既定の電圧を印加した際に流れる電流と、加熱部1723で計測した水温から抵抗率を算出することができる。抵抗率が求められれば既述したように加熱条件に応じた電極対の大きさなどの仕様が決まるため、幅広い水質に対応しやすくなる利点がある。一方、水質に関しては、地域で概ね抵抗率の範囲が限定されるため、装置を設置する地域に合わせて対応可能な抵抗率の範囲を限定してもよい。また、設置前に市水の水質を計測し、機器毎に対応範囲をカスタマイズしてもよい。これらの場合、対応する必要のある抵抗率が限定されるため、加熱部1723に取り付ける電極面積を限定でき、電極の総面積を小さくすることができる。
図17Cに加熱部1723に関わる電気的な構成を示す。電源1731からコンセントや遮断器などを介して供給される電力は電力調整部1732を経て電極選択部1733へと給電される。電極選択部1733は液体の加熱条件に応じた制御ユニット1730からの指示に従って電極の切り替えを行う。ここでは加熱部1723が2つの電極対(第1電極対1711、第2電極対1712)で構成される例を示している。図17Cでは第1電極対1711が選択された例を示している。電極選択部1733を構成するスイッチは、機械的なスイッチでもフォトカプラのような電子的なスイッチでもよい。電源が大容量となることが多いため、その容量に対応したスイッチを選べばよい。
図17Dに各信号のタイミングチャートを示す。時間t1にて入力部1703から給湯の要求があったとする。この要求に基づき、時間t2において表示部1702に対して給湯量や給湯温度の入力を促すメッセージの表示を指令する。その後、入力部1703で入力される給湯条件を読取り、指示された分量の水を加熱部1723に供給するために、必要な時間(時間t3から時間t4までの間)、第1弁1722を開く。制御ユニット1730は加熱部1723で計測された水の初期温度を読取り、指示のあった給湯温度と合わせて電極切り替えのパターンを定める。電極切り替えは実施例4として説明したように、水温に基づく切り替え以外にも時間、電力、電力量などによって切り替えるタイミングを決めることができる。どの電極にどのタイミングで通電するか、電極選択のパターンをこの段階で決める。この例では電極対は2つであり、切り替えを1回行う前提としている。
図17Eにこの場合の電力印加の経時変化の様子を、図17Fに同じく加熱部1723内の水の温度変化を概念的に示している。水温に基づく電極の切り替えを行う場合は、計測した初期温度Tminと指示された給湯温度Tmaxの中間温度Tmid(Tmid=(Tmin+Tmax)/2)を制御ユニット1730で算出し、加熱中に加熱部1723が計測した温度情報と照らし合わせて電極選択部1733の切り替えタイミングを判断する。水温が中間温度Tmidになったとき、タイミングチャート上の時間では時間t6で、電極対を切り替える。
時間に応じて切り替える場合には、初期温度Tminと給湯温度Tmax、給湯量から水の加熱に用いられるエネルギーと、装置に固有な熱の散逸により水の加熱に用いられないエネルギーとを加えて、その値から装置がそのエネルギーを投入するために必要な時間を計算して電極の切り替えタイミングを決定する。装置に固有な熱の散逸は、いわば装置の効率であり、装置の設計や構成により決定されるため、事前に決められるパラメータである。
電力によって電極を切り替える場合、電力を印加し始めた際の電力値、すなわち図17Eの時間t5における電力Piの値を記憶し、印加している電力値が再度Piになるタイミング、すなわち図中の時間t6で電極対を切り替えればよい。この場合、事前に切り替えパターンを決める必要はなく、制御ユニット1730が電力調整部1732から読み取る電力値をモニタするだけで電極対の切り替えを行うことができる。
電力量によって電極切り替えのパターンを決める場合、制御ユニット1730は、電力調整部1732から読み取る電力値を積算して電力量を算出し、その値に基づいて電極対の切り替えを行う。時間切り替えの場合と同様に加熱に必要なエネルギーを計算し、電力量、すなわちエネルギー値が必要なエネルギーの半分の値に達したところで電極対を切り替えればよい。
図17Cの構成例は、2つの電極対を1つのスイッチで切り替える単純な組み合わせの例である。実施例2、3で説明したように、電極対の一方の電極を複数の小さな電極を組みあわせて用いる場合には、小さな電極一つに対してスイッチを一つ接続し、小さな電極のONとOFFを切り替えて使うような構成にすればよい。
電極対を切り替える方式、タイミングにしたがって、制御ユニット1730は、電極選択信号を電極選択部1733に、電力調整信号を電力調整部1732に出力して、加熱部1723への電力の印加を開始する。図17Dのタイミングチャートでは時間t5で電力印加が開始されている。併せて表示部1702には加熱中であることを伝えるメッセージの表示信号を送信する。その後、所定の段階で電極対を切り替える。この例では時間t6で電極選択部1733に電極選択信号を送り、第2電極対1712を選択している。決められたパターンに従い電力の供給を完了した後、停止する。この段階(時間t7)で所望の温度のお湯が加熱部1723の中に準備されている。時間t8にて表示部1702に加熱が終了した旨メッセージ表示を行い、同時に第2弁1724を開いて給湯を行う。給湯終了後、時間t10にて制御ユニット1730は表示部1702に完了のメッセージ表示を指示する信号を出力して一定期間メッセージを表示して一連の動作が終了する。
実施例6では直接抵抗加熱技術による温水供給機能を他の機器と融合して提供する例を示す。ここでは他の機器として冷蔵庫を取り上げ、ウォーターサーバー機能を持つ冷蔵庫について説明する。図18に装置の外観例を示す。筐体1801に対して、3つの冷蔵室1802,1803,1804を備えている。さらに冷蔵庫はウォーターサーバー部1805を備えている。ウォーターサーバー部1805は、給水を受ける開口部1807と、内部に直接抵抗加熱による加熱部1808を備える。加熱部1808及びお湯が通過する経路と冷蔵室との間を断熱するため、断熱層1809が設けられている。冷蔵庫には、表示と入力を担うタッチパネル付きの表示・入力部1806が設けられている。この例では冷蔵庫の表示・入力部と兼用としている。
図19A,Bにウォーターサーバー機能を備える冷蔵庫の機能ブロック図を示す。ウォーターサーバー機能を備える冷蔵庫1901は、冷蔵庫機能を提供する冷蔵ユニット1902とウォーターサーバー機能を提供するウォーターサーバーユニット1903から構成されている。なお、ここで示す構成は一例であり、これに限定されるものではない。冷蔵ユニット1902の機能ブロックも冷蔵庫の機能に応じて異なる構成となる。また、各ユニットにおける機能も代表的なものを表示したに過ぎず、それに限定されるものではない。例えば、ドアモニタに制御ユニットや信号変換ユニットがないが、ドアモニタの構成自体に制御機構が含まれている構成を想定したものである。これに対して、ドアの開閉がON/OFFスイッチとなっていてその情報を直接中央制御ユニットが読み取る構成も可能である。電力供給についても圧縮機、ファンなどのモーター動力系の電源と、電子部品から構成される制御系の電源では供給する電圧や電流容量が異なるが、ここではこうした違いを区別せずに表示している。
ウォーターサーバー機能を制御する制御ユニットをどのように配置するかで大まかに2つの構成に大別できる。図19Aは制御ユニット1904をウォーターサーバーユニット1903a内に配置した構成例であり、図17Bに示したウォーターサーバーの構成を概ねそのまま冷蔵庫に付加した構成となる。冷蔵ユニット1902との間のやり取りは表示と入力に関わる事項、使用可能な電源容量と電源の供給、冷蔵ユニット側の機能で大きな電力を使用する際にウォーターサーバー側での電力使用を抑制するための割り込み信号などに限定される。そのため、ウォーターサーバーの動作の多くをウォーターサーバーユニット1903aに閉じて制御することができる。このため、既存の冷蔵庫へウォーターサーバー機能を付与することが比較的容易になる。また、冷蔵庫以外の機能へ付加することも比較的容易となる。
これに対して、図19Bはウォーターサーバーユニット1903aのもつ制御ユニット1904の機能を冷蔵ユニット1902の制御ユニット(中央制御ユニット1905)に統合し、ウォーターサーバーユニット1903bには制御ユニットの機能を有さない構成である。この構成ではウォーターサーバーを駆動するための制御も中央制御ユニット1905で実施することになる。この場合は、ウォーターサーバーユニット1903bと冷蔵ユニット1902の制御が単一の制御ユニットで実施されるため、両ユニットの動作を融合して制御でき、細かい制御がやりやすくなる。また、ウォーターサーバーユニット1903bに制御ユニットが不要となることにより部品点数を減少させられる。
まず図19Aに示す構成における温水供給の流れを簡単に説明する。冷蔵庫に備わっている表示・入力機能から温水供給の要求があると中央制御ユニット1905はウォーターサーバーユニット1903aの制御ユニット1904に要求を知らせる。制御ユニット1904は要求を受け、水量や給湯温度などの加熱に必要な情報の入力を促すメッセージの表示を中央制御ユニット1905に依頼する。中央制御ユニット1905はこのメッセージを表示し、入力された情報と、冷蔵ユニット1902の動作状況を鑑みて見積もった使用可能な電力とを併せて制御ユニット1904へ伝達する。制御ユニット1904はこれらの情報をもとに実施例4に説明した方法によって給湯を行う。ここで、給湯要求を受け、制御ユニット1904と中央制御ユニット1905との間にいくつかの情報のやり取りがあった後、給湯条件と使用可能電力を伝達するように書いたが、こうした部分は定型の手続きであるため、給湯要求に合わせて中央制御ユニット1905が単独でメッセージ表示と入力を実施し、必要な情報をそろえた後、一括して制御ユニット1904に情報を提供してもよい。
このウォーターサーバー機能付き冷蔵庫の電源もコンセントから供給されると想定している。この場合、この装置に供給される最大電圧Vmaxは100Vもしくは200V、最大電流Imaxも通常であれば15Aである。この冷蔵庫が動作している間、消費電流を計測しておき、ウォーターサーバーユニット1903aを動作させる場合は、最大電流Imax(15A)からその直前で使用していた電流値を差し引いた電流値をImax(ここではこれをImax’として区別して表記する)としてウォーターサーバーユニット1903aの制御ユニット1904に伝達する。ウォーターサーバーユニットは最大電圧Vmax=100V(もしくは200V)、最大電流Imax=Imax’を電源容量として電力調整部で電力を調整するよう制御する。扉の開閉など庫内の昇温につながるイベントが継続して発生していない場合、冷蔵ユニット1902の冷却にかかる機能を一時的に停止し、ウォーターサーバーユニット1903aへ供給する電力を可能な限り増やして加熱時間を短縮するような制御も可能である。
図19Bの構成における温水供給の制御は、ウォーターサーバーユニット1903aの制御ユニット1904が受け持っていた役割を全て中央制御ユニット1905が実施すること以外に違いはない。
以上は、ウォーターサーバーユニット1903が水の加熱途中に他のイベントが発生しない場合の制御例である。しかしながら、実際にはウォーターサーバーユニット1903が加熱動作中で大電力を消費している際に、冷蔵ユニット1902でも急なイベントが発生し、そのイベントが大電力を消費することにより、最大電流Imax=Imax’とする電源容量の電力が供給できなくなる場合も高い頻度で発生すると考えられる。このような電力消費の大きい急な割り込みイベントが発生した場合には、以下のようにして対応する。
冷蔵ユニット1902における大電力消費イベントの典型である除霜がウォーターサーバーユニット1903の給湯と重なった場合、あらかじめ優先順位を定めておき、例えば除霜を中断し、給湯に電力を集中するといった制御が可能である。ここでは、より複雑な制御を要する例として、冷蔵庫内が物品で満たされた高入力時に、割り込み処理として扉の開閉が生じた場合を取り上げる。
図20A~Dに冷蔵庫の扉の開閉とウォーターサーバーユニットの加熱動作、およびそれらに伴う冷蔵室の冷蔵をイベントとするタイミングチャートを示す。図20Aは割り込み処理が不要な例で、ウォーターサーバーユニットでの加熱中に割り込みイベント(扉の開閉に伴う冷却動作)が発生しない場合である。ウォーターサーバーユニットの加熱イベントが終了したことを受け、加熱部に隣接する冷蔵室を冷却する。図ではこの動作遷移2001を矢印で示している。直接抵抗加熱は液体を直接加熱するため、給湯後に高温の発熱体から熱伝達が生じるようなことはない。しかし、液体に電気を流すための電極は液体に浸漬しなければならず、浸漬していた部分の電極の温度は加熱温度程度に熱を持つことになる。このため、僅かながら電極からの熱の散逸が生じるため、断熱層1809(図18参照)を加熱部と冷蔵室の間に配置するとともに、冷蔵室の冷却を行う。
図20Bは加熱器が動作中、時間t21で示すタイミングで冷蔵室扉の開イベントが発生した場合である。この例では扉の閉イベントが発生する前の時間t22で加熱動作が終了している。この場合、まずウォーターサーバーユニットの加熱動作の終了を受け、加熱部横の冷蔵室の冷却を行う(動作遷移2002)。冷却動作が継続している間に扉の閉イベントが発生しており、それを受けて扉が開いていた冷蔵室の冷却動作が開始される(動作遷移2003)。図では、加熱部横の冷蔵室と扉の開イベントがあった冷蔵室の区別を行わずにタイミングチャートを示しているが、両者の冷蔵室は同じであっても、異なっていても構わない。給湯ユニットに対する冷蔵ユニットからの割り込み動作としては同一であり、イベントの動作タイミングとして違いは生じないため、以降も区別しない。
図20Cはウォーターサーバーユニットが加熱動作中の時間t23で扉の開イベントが発生し、加熱動作が終了する前の時間t24で扉の閉イベントも発生した場合である。扉の閉イベントが発生すると対象の冷蔵室を冷却する必要があるため、冷蔵ユニット1902は冷却を開始しようとするものの、ウォーターサーバーユニット1903が動作中であるため、冷却動作を行わず冷却待ち状態とする。その後、時間t25で給湯イベントが終了したことを受けて動作遷移2004が発生し、対象の冷蔵室及び加熱部横の冷却室を冷却する。なお、冷却を優先し、給湯を待ち状態にして冷却を優先し、冷却終了後に給湯を再開してもよい。
図20Dは扉の開イベント中、時間t26でウォーターサーバーユニットに加熱動作の要求があった場合である。時間t26の時点では扉の開イベント中なので加熱要求を受けても加熱動作は開始されず、待ち状態となる。その後扉が閉じ、それを受けて冷蔵室の冷却が開始される(動作遷移2005の動作遷移)。冷却が終了したことを受け(動作遷移2006)、時間t27で加熱動作が開始される。実際には給湯要求も冷蔵庫前面の表示・入力部1806を用いて行うため、同時に扉の開イベントが起きることはほとんどないと思われる。
以上、本発明を実施例に基づき説明した。以上の実施例では、最大電圧Vmaxは100Vもしくは200Vとする例を示しているが、商用の交流電源であれば、これらに限る必要はなく、任意の国や地域で用いられる商用電源を同様に用いることができる。
上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、同一の構成または他の構成を追加・削除・置換することが可能である。
11,12…領域、13…電圧、14…電流、15…電力、41…容器、42…抵抗、43…電極対、44…電源、45…配線、71,72…電極対、73…スイッチ、81,82,83,84…波形、1701…筐体、1702…表示部、1703…入力部、1704…給湯口、1705…カップ、1706…開口部、1707…給水機構、1708…電源供給機構、1711…第1電極対、1712…第2電極対、1720…給水機構、1721…流量検出/制御部、1722…第1弁、1723…加熱部、1724…第2弁、1730…制御ユニット、1731…電源、1732…電力調整部、1733…電極選択部、1801…筐体、1802,1803,1804…冷蔵室、1805…ウォーターサーバー部、1806…表示・入力部、1807…開口部、1808…加熱部、1809…断熱層、1901…ウォーターサーバー機能を備える冷蔵庫、1902…冷蔵ユニット、1903…ウォーターサーバーユニット、1904…制御ユニット、1905…中央制御ユニット、2001,2002,2003,2004,2005,2006…動作遷移。
Claims (14)
- 請求項1において、
前記(数1)を満たす前記電極対の電極間距離及び電極面積を理想値とするとき、
前記電極対の前記理想値からの電極間距離の誤差及び電極面積の誤差はそれぞれ30%以下とされる液体加熱装置。 - 請求項1において、
前記容器内にN個(N≧2)の前記電極対を有し、
前記液体加熱装置は、前記液体を最低温度Tminから最高温度Tmaxまで加熱し、
前記最低温度Tminから最高温度TmaxまでがN個の区間に分割され、それぞれにN個の前記電極対が割り当てられており、
前記初期温度Tiを前記電極対に割り当てられた区間の初期温度、前記目標温度Tfを前記電極対に割り当てられた区間の目標温度とするとき、前記N個の電極対のそれぞれの大きさは、前記(数1)に基づいて定められる液体加熱装置。 - 請求項3において、
前記電極対に割り当てられた区間の初期温度と目標温度との温度差は、(Tmax-Tmin)/Nとされる液体加熱装置。 - 請求項3において、
前記N個の電極対を前記N個の区間に応じて切り替える制御ユニットを有し、
前記制御ユニットは、前記液体の温度、前記液体の加熱時間、前記交流電源が前記液体に投入する電力、前記交流電源が前記液体に投入した電力量のすくなくともいずれか一つに基づき、前記電極対を切り替える液体加熱装置。 - 請求項1において、
前記電極対は、前記電極面積を切り替え可能であり、
複数の前記液体がとりうる電気抵抗率について、前記電極対の大きさは前記(数1)に基づいて定められており、
前記電極対の電極面積は、前記液体の電気抵抗率に最も近い前記液体がとりうる電気抵抗率について定められた電極面積に切り替えられる液体加熱装置。 - 請求項1において、
前記電極対は、前記電極面積を切り替え可能であり、
前記液体加熱装置は、前記液体を最低温度Tminから最高温度Tmaxまで加熱し、
前記最低温度Tminから最高温度TmaxまでがN個(N≧2)の区間に分割され、前記電極対は前記N個の区間に応じて前記電極面積が切り替えられ、
前記初期温度Tiを前記N個の区間それぞれの初期温度、前記目標温度Tfを前記N個の区間それぞれの目標温度とするとき、前記N個の区間それぞれにおいて、前記電極対の大きさは前記(数1)に基づいて定められる液体加熱装置。 - 請求項7において、
前記N個の区間それぞれの初期温度と目標温度との温度差は、(Tmax-Tmin)/Nとされる液体加熱装置。 - 請求項7において、
前記電極対の前記電極面積を前記N個の区間に応じて切り替える制御ユニットを有し、
前記制御ユニットは、前記液体の温度、前記液体の加熱時間、前記交流電源が前記液体に投入する電力、前記交流電源が前記液体に投入した電力量のすくなくともいずれか一つに基づき、前記電極対の前記電極面積を切り替える液体加熱装置。 - 複数の冷蔵室を備える冷蔵ユニットと、
液体を加熱するウォーターサーバーユニットと、
前記冷蔵ユニットと前記ウォーターサーバーユニットとに電力を供給し、負荷に応じて最大電流Imaxで定電流動作または最大電圧Vmaxで定電圧動作を行う交流電源とを有し、
前記ウォーターサーバーユニットは、
前記液体に電力を流すための1つ以上の電極対を備える加熱部と、
前記電極対または前記電極対が前記液体に電流を流す電極面積を切り替える電極選択部と、
前記交流電源から、所定の電源容量の電力を前記加熱部に供給する電力調整部と、を備え、
前記ウォーターサーバーユニットは、前記液体を最低温度Tminから最高温度Tmaxまで加熱し、
前記最低温度Tminから最高温度TmaxまでがN個(N≧2)の区間に分割され、前記N個のそれぞれの区間において前記液体を加熱するよう前記電極選択部により切り替えられた電極対について、当該電極対の電極間距離をd、当該電極対が前記液体に電流を流す電極面積をS、当該区間の初期温度Tiと当該区間の目標温度Tfとの中間温度Tm((Ti+Tf)/2)において前記液体がとりうる電気抵抗率をρ(Tm)、前記電力調整部が前記加熱部に供給する最大電流をImax’とするとき、前記電極対の大きさは、(数2)
- 請求項10において、
前記(数2)を満たす前記電極対の電極間距離及び電極面積を理想値とするとき、
前記電極対の前記理想値からの電極間距離の誤差及び電極面積の誤差はそれぞれ30%以下とされる冷蔵庫。 - 請求項10において、
前記N個の区間それぞれの初期温度と目標温度との温度差は、(Tmax-Tmin)/Nとされる冷蔵庫。 - 請求項10において、
前記電極選択部を制御する制御ユニットを有し、
前記制御ユニットは、前記液体の温度、前記液体の加熱時間、前記交流電源が前記液体に投入する電力、前記交流電源が前記液体に投入した電力量のすくなくともいずれか一つに基づき、前記電極対または前記電極面積を切り替える冷蔵庫。 - 請求項10において、
前記ウォーターサーバーユニットの前記加熱部と前記加熱部と隣接する冷蔵室との間に断熱層が設けられ、
前記ウォーターサーバーユニットによる前記液体の加熱動作の後、前記冷蔵ユニットは、前記加熱部と隣接する冷蔵室の冷却動作を実施する冷蔵庫。
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