JP2023033238A - めっき液用分散液、めっき液用分散液試料、及び複合めっき液 - Google Patents

めっき液用分散液、めっき液用分散液試料、及び複合めっき液 Download PDF

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Abstract

【課題】PTFE水系分散液の分散安定性を飛躍的に改善し、長期間にわたって粘稠な沈殿を形成しないめっき液用分散液及び当該分散液を含む複合めっき用分散液を提供すること。【解決手段】 ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子と、ノニオン界面活性剤と、塩類と、水とを含んで調製されるめっき液用分散液であって、(a)前記粒子の平均一次粒子径が100~500nmであり、(b)前記めっき用分散液に含まれる前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の濃度が50~900g/Lであり、(c)前記めっき用分散液の粘度が測定温度20℃の条件下、ずり速度3.83sec-1において、40~750mPasであり、ずり速度38.3sec-1において、15~130mPasであることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、めっき液用分散液、めっき液用分散液試料、および複合めっき液に関する。更に詳しくは、分散性にきわめて優れためっき用分散液、めっき液用分散液試料、めっき用分散液を含む複合めっき液に関する。
ポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下、「PTFE」ということがある。)の粒子をめっき皮膜に分散させ低摩擦係数の特徴を持たせた分散液に関するめっき技術が広く実用化されている。かかる分散液として、PTFE水系分散液が使用されている。
しかしながら、従来から使用されている上記PTFEの水系分散液は、分散安定性が悪く、経時変化に伴い、固い沈殿層を形成するのみならず、再分散処理が容易ではなく、めっき液性能が安定しないという技術的な問題点がある。このような技術的な問題点に対して、以下のような解決策が提案されている。
特許文献1には、特にガソリン燃料ポンプ用プランジャピストン等の摺動部品に対する無電解複合ニッケル-リン合金めっき方法が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、この無電解複合ニッケル-リン合金めっき方法に採用される無電解複合ニッケル-リン合金めっき液が無電解ニッケル-リン合金めっき液にフッ素樹脂微粒子を分散させたものであることが記載されている。
また、フッ素化合物微粒子を分散含有する複合めっき皮膜を基材の表面にめっきするようにして、表面の硬度が高くて摩耗の少ない、また摺動性が良く、静電気の発生が少ないアイロンが提案されている(例えば、特許文献2)。このアイロンに使用されている複合めっき皮膜を形成するためのめっき液は、フッ素化合物微粒子を含有するものであり、その平均粒子径は、平均2μm程度であることが記載されている。また上記めっき液には、フッ素化合物微粒子をめっき液中に均一に分散させるために、界面活性剤が用いられている。
このように、低摩擦係数と耐久性に優れた表面処理技術として、PTFEをめっき皮膜に共析させた複合めっきが検討され、摺動部材等で実用されている(特許文献1~2)。これには疎水性であるPTFE粒子を水溶液へ均一分散させる必要があり、あらかじめ濃厚分散液を調製することが一般である。濃厚分散液を所定量めっき液に添加することで複合めっき用のめっき液を作ることができる。
濃厚分散液は、PTFEパウダーと界面活性剤水溶液とを強いせん断作用を持つ攪拌器(ホモジナイザー等)で混ぜ合わせることで調製される。しかしながら、このようにして均質な濃厚分散液を調製しても、溶媒と分散粒子の比重差のため、粒子は徐々に沈降し沈殿を形成する。そのため、分散液をめっき液へ添加して複合めっき液を建浴する際には、分散液を分取する直前に強く振とうして再分散することが必要である。
しかも、保管状態によっては濃厚分散液中に極めて粘稠な沈殿が形成され、再分散に大きな労力が必要になる場合がある。さらには、十分に再分散されず、凝集した粒子がめっき皮膜に取り込まれ外観不良を起こす、粒子から脱落した界面活性剤がめっき反応を止めてしまう等、めっき性能に致命的な悪影響を与える場合もある。
さらに、陰イオン交換樹脂との接触を行うものであっても、分散安定性及び機械安定性に優れたフルオロポリマー水性分散液を収率良く製造する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。このフルオロポリマー水性分散液を製造する方法において使用される上記フルオロポリマーとして、例えば、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体〔FEP〕等が例示されている。
さらに、PTFE水性分散液のこすれ安定性、分散安定性、再分散性を改良し、取扱いやすいPTFE水性分散液が提案されている(例えば、特許文献4)。このPTFE水性分散液に用いるPTFE微粒子は、乳化重合法により得られる平均粒径が0.01~0.50μmのPTFE微粒子である。
分散後の体積平均粒子径Dvが1μm~50μmのフッ素系樹脂粒子を1~80質量%含むフッ素系樹脂水分散体が記載されている(例えば、特許文献5)。特許文献5に記載されたフッ素系水分散体には、コーティングや複合めっき表面へフッ素系樹脂粒子を十分に露出させることにより、フッ素系樹脂粒子が有している撥水性や摺動性が付与されているものである。
このように、分散液の分散安定性、再分散性を改善する目的で、各種高分子分散剤を添加する方法が開示されている(特許文献3~5)。しかし、このような高分子分散剤は、めっき速度の低下、皮膜PTFE含量の低下など、めっき特性の低下を招くことから、めっき用分散液への適用には限界があった。
特許第3419354号公報 特許第3215627号公報 特許第4788139号公報 特開2008-013669号公報 特開2019-05221号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。すなわち、上記特許文献に記載されたPTFE水分散体等は、いずれもめっき液としての分散安定性を有しているものとはなっていない。つまり、めっき業界においては、フッ素系樹脂水分散体がその取り扱い、めっき液としての性能が不安定であることは、根本的な技術的課題として受け入れている状況であった。上記従来技術には、PTFE水分散体の分散安定性が十分ではないため、長期間に亘って保存すると沈殿を形成してしまうという問題点を有する。
すなわち、従来のめっき業界では、分散安定性とめっき液の性能とを両立できる分散液はなく、これらを両立するPTFE分散液の開発が強く求められていた。このような技術的観点から、本発明は、複合めっき液の特性を低下させることなく、分散液の分散安定性が向上し、取り扱いやすさ、複合めっき品質の安定性を改善することができるPTFE分散液を提供することを目的とする。ここで、複合めっき液の特性とは、めっき速度、めっき皮膜外観、皮膜中PTFE含有量のことを言い、分散安定性とは、静置保管での沈殿しにくさ、沈殿の再分散しやすさを言う。
本件発明者らは、従来技術が抱えている前述した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子と界面活性剤と水とを含んで調製されるめっき液用分散液において、ある種のフッ素系ノニオン界面活性剤と塩類とを組み合わせる手法によって上記めっき用分散液の粘度を特定範囲に制御することで、PTFE水系分散液の分散安定性が飛躍的に改善し、長期間にわたって沈殿を形成しないめっき液用分散液、及び当該分散液を含む複合めっき用分散液を提供できることを知見し、本発明を開発した。
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。すなわち、本発明は以下に掲げる(1)~(3)を提供する。
(1)本発明にかかるめっき液用分散液は、
ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子と、フッ素系ノニオン界面活性剤と、塩類と、水とを含んで調製されるめっき液用分散液であって、
(a)前記粒子の平均一次粒子径が100~500nmであり、
(b)前記めっき用分散液に含まれる前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の濃度が50~900g/Lであり、
(c)前記めっき用分散液の粘度が測定温度20℃の条件下、ずり速度3.83sec-1において、40~750mPasであり、ずり速度38.3sec-1において、15~130mPasであることを特徴とする。
なお、本発明にかかるめっき液用分散液は、
(i)前記ノニオン界面活性剤は、前記めっき用分散液中において、棒状ミセルを形成していること、
(ii)前記ノニオン界面活性剤は、フッ素系ノニオン界面活性剤であることを特徴とする請求項2に記載のめっき液用分散液。
(iii)前記めっき液用分散液に含まれる前記フッ素系ノニオン界面活性剤の濃度が1.0~20.0g/Lであること、
(iv)前記めっき液用分散液に含まれる前記塩類の濃度が0.01~2.0mol/Lであること等が好ましい手段であると考えられる。
(2)本発明にかかるめっき液用分散液試料は、前記いずれか1つのめっき液用分散液と水とを混合して得られる希釈めっき液用分散液試料であって、前記めっき液用分散液と前記水との混合比が体積比で0.5~5.0:95.0~99.5であり、前記めっき液用分散液試料に含まれる前記粒子の平均一次粒子径の測定値または前記めっき液用分散液試料のゼータ電位の測定値に対する、前記希釈めっき液用分散液を製造した時から少なくとも1か月を経過した後における前記粒子の平均一次粒子径の測定値または前記めっき液用分散液試料のゼータ電位の測定値の変化量が±5%以下であることを特徴とする。
(3)本発明にかかるめっき液は、前記いずれか1つのめっき液用分散液を含むことを特徴とする。
本発明によれば、PTFE水系分散液の分散安定性を飛躍的に改善し、長期間にわたって沈殿を形成しないめっき液用分散液、及び当該分散液を含む複合めっき用分散液を提供することが可能となった。すなわち、本発明によれば、長期に渡って沈殿を形成せず、めっき性能にも悪影響のないPTFE分散液を製造できる。これにより、従来余儀なくされていた、めっき液建浴直前の必須工程であったPTFE分散液の再分散作業が不要となるのみでなく、PTFE分散液の再分散状態に左右されていためっき性能が安定し、PTFE複合めっきの作業性、品質安定性を大きく向上させることができる。
本発明のめっき液用分散液の成分であるPTFE濃度と沈降状態を示す写真である。 本発明の実施形態にかかるめっき液用分散液中に存在するコロイド粒子のミクロ構造を示したモデル図である。 本発明の実施形態にかかるめっき液用分散液の製造方法を説明するためのフロー図である。 本発明のめっき液用分散液のずり速度と粘度との関係を示したグラフである。
[第1実施形態]
第1実施形態は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子と、ノニオン界面活性剤と、塩類と、水とを含んで調製されるめっき液用分散液である。以下、本実施形態のめっき液用分散液に含まれる各成分について説明する。
<PTFE粒子>
本実施形態のめっき液用分散液は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなるPTFE粒子を含む。PTFE粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレン-プロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシ重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン共重合体(CTFE)、テトラフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)からなる群から選ばれる少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)のフッ素系樹脂粒子が挙げられる。
上記フッ素系樹脂粒子の中でも、特に、撥水性、撥油性、摺動性、電気特性などに極めて優れるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)粒子、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)粒子の使用が望ましい。このようなポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂粒子は、乳化重合法により得られるものであり、例えば、ふっ素樹脂ハンドブック(里川孝臣編、日刊工業新聞社)に記載されている方法など、一般的に用いられる方法により得ることができる。そして、前記乳化重合により得られたフッ素系樹脂粒子は、凝集・乾燥して、一次粒子径が凝集した二次粒子の微粉末として回収されるものであるが、一般的に用いられている各種フッ素系樹脂粒子の製造方法を用いることができる。
本実施形態のめっき用分散液に含まれるPTFE粒子の平均一次粒子径は、100~500nmであることが好ましい。PTFE粒子の平均一次粒子径が、100nm以上であれば、めっき液により形成されるめっき皮膜にPTFE粒子が取り込まれるため好ましい。PTFE粒子の平均一次粒子径が500nm以下であれば、本手法を適用することで粒子の沈降が抑制され、沈殿を形成しなくなるため好ましい。
(PTFE粒子の濃度)
本実施形態のめっき用分散液は、(b)前記めっき用分散液に含まれる前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の濃度が50~900g/Lであることを特徴とする。上記PTFE粒子の濃度が50g/L以上であれば、PTFE粒子間の距離が大きくなり過ぎることがなく、PTFE粒子間の架橋が不十分なことを原因とする分層を起こさないため好ましい。また、上記PTFE粒子の濃度が900g/L以下であれば、PTFE粒子間の距離が小さくなり過ぎることによるPTFE粒子同士の接触架橋が起こらず、流動性のあるめっき用分散液を製造することができるため好ましい。
図1は、本発明のめっき液用分散液の成分であるPTFE濃度と沈降状態を示す写真である。図1Aに示されるように、PTFE粒子濃度を変えた場合の沈降状態を示すが、300g/Lの条件では透明な上澄みと懸濁層とに分層していることがわかる。さらに、界面活性剤濃度および塩類濃度を維持して、PTFE濃度のみを変更した分散液の分散状態を図1Bに示す。図1Bに示されるように、めっき液用分散液を1週間静置後の状態で、PTFE濃度が400g/L未満では明確に分層し、低濃度ほど分層が早いことが理解される。ただし、めっき液用分散液が分層しても懸濁層は流動性を持ち、長期保管後も沈殿は形成されない。このように図1A及び図1Bからも明らかなように、めっき液用分散液は、その懸濁層の粒子濃度が増加することにより、分散安定性の優れた分散液となっている。
本実施形態のめっき用分散液は、そのpHが2~12の範囲となるように調整される。めっき用分散液のpHが2以上であれば、めっき液のpHに影響を与えることがなく好ましい。めっき用分散液のpHが12以下であれば、めっき用分散液の分散安定性が大きく低下しないため好ましい。pH調製剤の種類は特に問わないが、ここでpH調製剤として加えられる酸・塩基も、塩となって界面活性剤構造に影響するため、比較的影響の小さい酢酸および苛性ソーダが推奨される。また、後記の通り、クエン酸のような多価の酸ではその解離程度によって効果が異なり、適正量が変化する。そのため、目的とするpH領域に合わせて塩類の種類及びその濃度が調整される。
さらに、本実施形態のめっき用分散液は、フッ素系カチオン界面活性剤、非フッ素系カチオン界面活性剤、非フッ素系ノニオン界面活性剤を含んでいてもよく、さらにこれらを溶解する目的で、イソプロピルアルコール等の溶剤を含んでもよい。これらの界面活性剤は、PTFE粒子の濡れ性の改善、めっき皮膜へのPTFE粒子の取り込み促進を目的に使用される。
本実施形態のめっき用分散液は、前記各成分を所定量溶解した水溶液にPTFE粒子(パウダー)を加え、ホモジナイザー等によってせん断混合することで調製される。動的光散乱法による分散粒子の平均粒径が100nm以上500nm以下の単分散状態となるまで処理を行う。
このようにして得られためっき用分散液は、長期に渡って沈殿を形成せず、かつ複合めっき液の特性に悪影響を与えない。
<ノニオン界面活性剤>
本実施形態のめっき液用分散液は、ノニオン界面活性剤を含む。特に、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物と表されるフッ素系ノニオン界面活性剤を含んでいることが好ましい。使用されるノニオン界面活性剤は、以下の一般式(1)で示される。
Figure 2023033238000002
上記一般式(1)中、Rは、炭素数4~12の飽和アルキル基、または炭素数3~7のパーフルオロアルキル基であり、(EO)nは、nが0~12のエチレンオキシド基、(PO)mは、mが0~4のプロピレンオキシド基である。
本実施形態のめっき液用分散液に含まれるノニオン界面活性剤は、当該分散液中において、棒状ミセルを形成することができる。フッ素系ノニオン界面活性剤として、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を使用することができる。原理的には上記構造のものであれば、当該分散液中において、棒状ミセルを形成することが可能であると考えられる。
フッ素系ノニオン界面活性剤としては、具体的には、メガファックF-444、メガファックF-445、メガファックF-446(DIC株式会社)、サーフロンS-242、サーフロンS-243(AGCセイミケミカル)などが挙げられる。フッ素系ノニオン界面活性剤以外のノニオン界面活性剤を含む商品名としては、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルであるノイゲンXL-60、ノイゲンXL-80(第一工業製薬株式会社製)を例示することができる。例えば、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルであるノイゲンXL-60の構造式は、上記一般式において、R=デシル基、AO=アルキレンオキシド基、n=4~10とした場合のノニオン界面活性剤である。
本実施形態のめっき液用分散液に含まれるフッ素系ノニオン界面活性剤の濃度は、1.0~20.0g/Lであることが好ましい。フッ素系ノニオン界面活性剤の濃度が1.0g/L以上であれば、フッ素系ノニオン界面活性剤が棒状ミセルを形成することができるため好ましい。フッ素系ノニオン界面活性剤の濃度が20.0g/L以下であれば、めっき液用分散液の粘度を所定の範囲にすることができるため好ましい。
<塩類>
本実施形態のめっき液用分散液は、塩類を含む。塩類には、めっき液用分散液を構成する水中で解離する陽イオンと陰イオンから形成される塩を用いる。塩類は、めっき液用分散液の全体量に対して所定の濃度で添加される。その理由は、塩類の添加量が不足すると、めっき液用分散液の増粘作用が十分でなく沈殿物の形成を防げないからである。また、塩類の添加量が過量では、めっき液用分散液の粘度が高くなり過ぎることにより、その取扱いに支障が出るからである。さらに、塩類の添加量が大過量の場合には、界面活性剤ミセルが破壊され安定化効果が失われるからである。
塩類を形成する陽イオンとしては、Li+、Na+、K+、NH4 +などの一価の陽イオン、Ni2+、Mg2+、Fe2+、Cu2+、Zn2+などの二価の陽イオンが挙げられ、その溶解度とめっき液への影響を考慮して選択される。塩類を形成する陰イオンとしては、硫酸イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、スルファミン酸イオン、次亜リン酸イオンなど、めっき液に対して不都合のないものを任意に選定できる。これらの塩類は、総濃度を適正に調整すれば単独でも複数組み合わせても問題ない。
本実施形態のめっき液用分散液は、(iii)前記めっき液用分散液に含まれる前記塩類の濃度が0.01~2.0mol/Lであることを特徴とする。添加する塩類の適正量は、塩類の種類によって異なる。塩類が有機酸類である場合には、その濃度は、0.5~2.0mol/Lが目安となる。塩類が無機酸類である場合には、0.01~1.0mol/Lが目安となる。これはイオン種によって界面活性剤の構造変化に対する効果が異なることに基づくと考えられ、大まかな序列は、例えば以下のとおりである。
・陽イオン:NH4 +(アンモニウムイオン)≫Na+≧K+≧Ni2+
・陰イオン:硫酸イオン>塩化物イオン>クエン酸(2-以上)>クエン酸(1-)>酢酸イオン≧次亜リン酸イオン
なお、左側のイオンの組み合わせから形成される塩類である程、少量の添加で界面活性剤の構造変化に対する効果を発揮する。
なお、本実施形態のめっき液用分散液には、さらにフッ素系カチオン界面活性剤、非フッ素系カチオン界面活性剤、非フッ素系ノニオン界面活性剤を含んでよく、さらにこれらを溶解する目的で、イソプロピルアルコール等の溶剤を含んでもよい。これら界面活性剤はPTFE粒子の濡れ性の改善、めっき皮膜へのPTFE粒子の取り込み促進を目的に使用される。
<めっき用分散液の粘度>
本実施形態のめっき用分散液の粘度は、(c)前記めっき用分散液の粘度が測定温度20℃の条件下、ずり速度3.83sec-1において、40~750mPasであり、ずり速度38.3sec-1において、15~130mPasであることを特徴とする。すなわち、本実施形態のめっき用分散液は、所定温度下、所定のずり速度において、特定の粘度を有する。つまり、本実施形態のめっき液用分散液は、当該分散液の粘度を特定範囲に設定することにより、PTFE粒子の分散状態を保持し、沈殿物の形成を抑制しているものである。
<めっき液用分散液中に存在するフッ素系ノニオン界面活性剤のミクロ構造>
図2は、本実施形態にかかるめっき液用分散液中に存在するフッ素系ノニオン界面活性剤のミクロ構造を示したモデル図である。図2に示されるようにめっき液用分散液中に存在するフッ素系ノニオン界面活性剤は、当該分散液中において棒状ミセルを形成している。
すなわち、本実施形態のめっき液用分散液中に存在するフッ素系ノニオン界面活性剤は、親水基と疎水基から構成されており、親水基をめっき液用分散液の外側に向け、疎水基を内側に向けて凝集し、全体として棒状ミセルを形成している。めっき液用分散液中に存在するフッ素系ノニオン界面活性剤からなる粒子の形態は、フッ素系ノニオン界面活性剤の濃度に依存する。
このため、本実施形態のめっき用分散液は、フッ素系ノニオン界面活性剤からなる粒子が棒状ミセルを形成することができるために必要な濃度のフッ素系ノニオン界面活性剤及び塩類を含んでいる。めっき液用分散液中に存在するフッ素系ノニオン界面活性剤からなる粒子が棒状ミセルを形成することにより、めっき用分散液が高分子溶液に似た増粘作用を示すことになる。その結果、本実施形態のめっき液用分散液は、高分子分散剤を用いることなく、めっき用分散液としての分散安定性を十分に発揮することができる。
このように、本実施形態にかかるめっき液用分散液は、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物として表されるフッ素系ノニオン界面活性剤が適正量の塩類と混合され、ミセル構造を変化させることにより、その粘度を増し、同時にPTFE粒子間を緩く架橋してPTFE粒子の沈降を効果的に抑制する原理に基づいて構成されている。
したがって、本実施形態にかかるめっき液用分散液において、当該分散液に含まれるノニオン界面活性剤と塩類の濃度、PTFE粒子(パウダー)濃度を所定の範囲に調整することにより、その粘度を特定範囲に設定し、PTFE粒子間の距離を所定範囲とすることが重要である。
以上、第1実施形態のめっき液用分散液によれば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子とノニオン界面活性剤と塩類と水とを含んで調製されるめっき液用分散液において、上記粒子の平均一次粒子径、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の濃度、及び上記めっき用分散液の粘度を特定範囲に制御することにより、PTFE水系分散液の分散安定性を飛躍的に改善させ、長期間にわたって沈殿の形成を防ぐことができる。
[第2実施形態]
第2実施形態は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子と、ノニオン界面活性剤と、塩類と、水とを含んで調製されるめっき液用分散液の製造方法である。以下、本実施形態のめっき液用分散液の製造方法に含まれる、各工程について説明する。
図3は、本実施形態にかかるめっき液用分散液の製造方法を示すフロー図である。図3に示されるように、本実施形態のめっき液用分散液の製造方法は、成分調製工程と、混合攪拌工程とを含む。成分調製工程は、めっき液用分散液に含まれる各成分を採択し、その濃度を調製する工程である。この工程では、めっき液用分散液に含まれる各成分として、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子と、フッ素系ノニオン界面活性剤と、塩類とを採択し、めっき液がその性能を保持しつつ、フッ素系ノニオン界面活性剤からなる粒子が棒状ミセルを形成することができるように各成分の濃度を調製することが必要である。
本実施形態のめっき液用分散液の製造方法に含まれる混合攪拌工程は、上記各成分を混合した後、攪拌する工程である。この工程により、めっき液用分散液に含まれる各成分は当該分散液中において、均一に存在することになる。本実施形態にかかるめっき液用分散液の製造方法により製造されためっき液用分散液は、前記各成分を所定量溶解した水溶液にPTFE粒子(パウダー)を加え、ホモジナイザー等によってせん断混合することで調製される。動的光散乱法による分散粒子の平均粒径が100nm以上500nm以下の単分散状態となるまで処理を行う。
このように本実施形態にかかるめっき液用分散液の製造方法により製造されためっき液用分散液は、長期に渡って沈殿を形成せず、かつめっき液の特性に悪影響を与えない。
なお、本実施形態のめっき液用分散液の製造方法において、めっき液用分散液のpHは、2.0~12.0の範囲となるように調整される。めっき液用分散液のpHが2.0以上であれば、めっき液のpHに影響を与えることがないため好ましく、12.0以下であれば分散安定性が大きく低下しないため好ましい。
本実施形態にかかるめっき液用分散液の製造方法により製造されためっき液用分散液は、前記各成分を所定量溶解した水溶液にPTFE粒子(パウダー)を加え、ホモジナイザー等によってせん断混合することで調製される。動的光散乱法による分散粒子の平均粒径が100nm以上500nm以下の単分散状態となるまで処理を行う。
以上、第2実施形態のめっき液用分散液の製造方法によれば、その分散安定性を飛躍的に改善させ、長期間にわたって沈殿の形成を防ぐことができるめっき液用分散液を提供することができる。
[第3実施形態]
第3実施形態は、上記実施形態のめっき液用分散液に水を添加することにより希釈した希釈めっき液用分散液試料である。本実施形態の希釈めっき液用分散液試料は、めっき用分散液の製造工程において、めっき液用分散液の性能を確認するために用いられる。すなわち、本実施形態の希釈めっき液用分散液試料は、上記実施形態のめっき用分散液を希釈して得られ、めっき液用分散液の製造時の物性と当該製造時から少なくとも1か月経過した後の物性との間にほとんど変化がないものである。
具体的には、本実施形態のめっき液用分散液試料は、めっき液用分散液を製造した時から少なくとも1か月を経過した後における前記めっき液用分散液試料の平均一次粒子径の測定値またはゼータ電位の測定値の変化量が±5%以下であることが好ましい。上記変化量が±5%を超える場合には、めっき液用分散液の性能を保持することができないため好ましくない。
以上、第3実施形態のめっき液用分散液の製造方法によれば、PTFE水系分散液の分散安定性を飛躍的に改善させ、長期間にわたって沈殿の形成を防ぐことができるめっき液用分散液を検査するために好適な検査用試料を提供することができる。
[第4実施形態]
第4実施形態は、上記めっき液用分散液を含むことを特徴とする複合めっき液である。すなわち、本実施形態の複合めっき液は、フッ素系樹脂粒子であるPTFE粒子を上記実施形態のめっき用分散液を含有する。
本実施形態のめっき液に採用されている上記実施形態のめっき用分散液は、その分散安定性が飛躍的に改善されており、長期間にわたって沈殿の形成を防ぐことができる。このため、本実施形態のめっき液は、分取する直前に強く振とうして再分散する必要がなく、凝集したPTFE粒子がめっき皮膜に取り込まれ外観不良を起こすこともない。PTFE粒子から脱落した界面活性剤がめっき反応を止めてしまう等、めっき性能に致命的な悪影響を与えることもない。
このように、本実施形態のめっき液は、PTFE粒子の分散性、再分散性に優れ、素材表面にPTFE粒子が有する特有の機能である撥水性、撥油性、高摺動性を付与することができる。
以上、第4実施形態の複合めっき液によれば、PTFE水系分散液の分散安定性を飛躍的に改善させ、長期間にわたって沈殿の形成を防ぐことができる。
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
以下に本発明を、実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、この説明が本発明を制限するものではない。なお、実施例および比較例での性能評価には、分散安定性の程度とめっき特性への影響を取り上げて比較評価した。
(実施例1)めっき液用分散液の製造
以下の手順でめっき液用分散液(PTFE分散液)を100mlずつ調製した。表1に示されるようにめっき液用分散の成分として、PTFEパウダー、界面活性剤、塩類及び水を準備し、各成分を所定の濃度となるように調製した。具体的には、純水540gに対して、イソプロピルアルコール:70.0(g/L)、ルブロンL-5(平均一次粒子径250nm):700(g/L)、フタージェント300:12.0(g/L)、ベンジルジメチルステアリンアンモニウムクロリド:2.5(g/L)、ココナットアルキルトリメチルアンモニウムクロリド:6.0(g/L)、メガファックF444:6.0(g/L)、次亜リン酸ナトリウム:100(g/L)となるように所定量の各成分を所定の濃度となるように調製し、以下のように混合攪拌してめっき液用分散液を製造した。
(i) 最初にPTFEパウダー以外の各成分を純水に溶解し、ビヒクル(界面活性剤溶液)を調製した。
(ii) 次に上記調製した界面活性剤溶液、PTFEパウダーの順にホモジナイザー(製品名「エースホモジナイザーAM-7:攪拌羽付き(攪拌羽径30mm)」日本精機製作所株式会社製)の容器へ投入した。
(iii) ホモジナイザーを回転速度4000~8000rpmで5分間、さらに、17000~18000rpmで10分間の分散処理を行った。分散処理後、得られた100mlの分散液を実施例1のめっき液用分散液とした。
(iv)実施例1のめっき液用分散液を容量250mlのポリ容器へ移し、密閉保管した。
(実施例2~12)その他のめっき液用分散液の製造
表1に示されるように、PTFEパウダー、界面活性剤、塩類の種類及びその濃度を変化させた以外は、実施例1と同様にして各実施例のめっき液用分散液を製造した。なお、表1に示された以下の製品名の詳細は、以下の通りである。
・ルブロンL-5, L-2:PTFEパウダー(ダイキン工業株式会社製)
・フタージェント300:フッ素系カチオン界面活性剤(株式会社ネオス製)
・メガファックF-444:フッ素系ノニオン界面活性剤(DIC株式会社製)
・エマルゲンA-60:ノニオン界面活性剤(花王株式会社製)
・ノイゲンXL-60 ノニオン界面活性剤(第一工業製薬株式会社製)
・コーヨーキトサンFM-40:キトサン(甲陽ケミカル株式会社製)
なお、表1に示された成分のほかに、pH調整のため酢酸および苛性ソーダを少量含んでいる。
Figure 2023033238000003
(比較例0~8)
一方、比較例0においては、めっき液用分散液の成分として、塩類を加えないこと、比較例1~8においては、条件を一部変えた以外は、実施例1と同様にして各実施例のめっき液用分散液を製造した。表1において、比較例1では、実施例3および4に対するpHの影響を、比較例2および3ではノニオン界面活性剤種の影響を見ている。比較例4~7では塩類の種類および濃度の影響を見ている。比較例8は水溶性高分子を用いてめっき液分散液の粘度を実施例と同水準まで上げた例である。
(めっき液用分散液の安定性評価)
上記実施例1~12、比較例0~8で調製しためっき液用分散液50mlを100mlポリ容器に入れ静置保管し、1週間後の沈殿有無、10回振とうによる再分散可否を記録した。
(めっき液用分散液の流動性評価)
粘度計(TVE-25H, コーンロータ 1°34'×R24, 東機産業)を用い、測定温度20℃において、ずり速度 3.83sec-1(1rpm)、38.3sec-1(10rpm)及び383sec-1(100rpm)の3つの条件下におけるめっき液用分散液の粘度を測定することによりめっき液用分散液の流動性を評価した。
(めっき特性[皮膜外観、めっき速度、PTFE含有量]評価)
<無電解めっき>
基材:鉄ハルセル陰極板(B-60-P01A、株式会社 山本鍍金試験器製)
プロセス:鉄鋼用脱脂液(ニッケルブーマーHCR プロプルV、日本化学産業(株))で脱脂したのち、5%塩酸に浸漬して活性化し、85℃に加熱しためっき液に20分間浸漬した。
めっき液の組成は以下の通りである。
[めっき液組成]
硫酸ニッケル:0.1mol/L
次亜リン酸ナトリウム:0.3mol/L
乳酸塩:0.16mol/L
クエン酸塩:0.02mol/L
Bi塩:0.003mmol/L
めっき用分散液:12ml/L
pH:5.0
温度:85℃(スターラー攪拌)
<電気めっき>
基材:銅ハルセル陰極板(B-60-P05、株式会社 山本鍍金試験器製)
プロセス:銅合金用脱脂液(P3 S102、ヘンケルジャパン株式会社)に55℃、2分間浸漬した後、銅合金用電解脱脂液(BONDELITE C-AK EL100、ヘンケルジャパン株式会社)で室温、1~3A/dm2で脱脂したのち、5%硫酸に浸漬して活性化し、50℃に加熱しためっき液に浸漬して5A/dm2の条件で5分間成膜した。
めっき液の組成は以下の通りである。
[めっき液組成]
スルファミン酸ニッケル:1.8mol/L
塩化ニッケル:0.03mol/L
ホウ酸:0.5mol/L
めっき用分散液:5ml/L
pH:4.5
温度:50℃(スターラー攪拌)
<めっき皮膜評価(めっき性能)>
めっき皮膜外観:目視にてムラ・無めっきの有無を確認した。
めっき速度:めっき前後の重量変化から、皮膜比重を6.5として膜厚を算出、時間当たりの成膜速度を記録した。
PTFE含有量:蛍光X線分析装置(株式会社リガク製)にて測定した。
Figure 2023033238000004
実施例1~12、比較例0~8において製造しためっき液用分散液の性能評価結果を表2に示す。めっき液用分散液の性能評価は、分散安定性、分散液粘度、めっき性能を評価することによって行った。比較例0(参照例)は、本発明を適用しないめっき液用分散液であり、分散性試験は実施せず、めっき液用分散液の調製直後にめっき試験を実施している。
図4は、本発明のめっき液用分散液のずり速度と粘度との関係を示したグラフである。表2および図4に示されるように、実施例1~12で製造されためっき用分散液は、沈殿が形成されず、分散安定性の高いめっき液用分散液が得られている。これらめっき液用分散液の粘度は3.83sec-1において40~750mPas、38.3sec-1において15~130mPas以下の範囲(測定温度20℃)にあり、これより粘度が低いと沈殿を生じ、高いと粘り気が強すぎて気泡が抜けにくく、取扱いに支障がある。
実施例3~4および比較例1を見ると、pHが12を超えると分散安定性が低下し沈殿が形成されることがわかる。沈殿が形成されるとめっき性能にも影響があり、比較例1ではPTFE含量が低下した。
比較例2は、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物であるメガファックF-444を含まない組成である。粒子の濡れ性が十分でなく、粒子同士が接触架橋してフロキュレートを形成している状態である。めっき用分散液の粘度は、本発明よりも高くなっているものの粘稠な沈殿層を形成する。また、凝集しやすいためめっき性能も十分でない。
非フッ素系ノニオン界面活性剤を用いた比較例3では分散安定性は得られず強固な沈殿を形成した。一方、前記一般式(1)に対応する構造を持つ非フッ素系ノニオン界面活性剤(商品名「ノイゲンXL-60」)を使用した実施例12では、めっき液用分散液の粘度が所定の範囲に調整されることにより、分散安定性に優れる結果となった。これらの実施例及び比較例から、棒状ミセルを形成しうる構造の界面活性剤の選定が本技術において重要であることが判明した。
比較例4では硬い沈殿が形成され、再分散性も非常に悪かった。この結果から、塩類濃度が低いと効果が十分でないことが分かる。
一方、実施例12では、ノニオン界面活性剤として、非フッ素系ノニオン界面活性剤(商品名「ノイゲンXL-60」)を使用した。表2に示されるように、実施例12において、めっき液用分散液の粘度を所定の範囲に設定することにより、当該めっき液用分散液は分散安定性に優れることが判明した。すなわち、ノニオン界面活性剤として、非フッ素系ノニオン界面活性剤を使用した場合であっても、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の濃度が5.0wt%程度の低濃度から中濃度であれば、めっき液用分散液のめっき性能が低下することなく使用できる。なお、同じく非フッ素系ノニオン界面活性剤を用いた比較例3では分散安定性は得られず強固な沈殿を形成した。これらの実施例及び比較例から、棒状ミセルを形成しうる構造の界面活性剤の選定が本技術において重要であることが判明した。
比較例5~7は、塩類濃度が過量の場合である。比較例5は、めっき用分散液の粘性が強く、めっき用分散液の分散処理後1日経過しても気泡が抜けない。さらに塩類の濃度を上げた比較例6~7では、めっき用分散液の増粘効果を失い、めっき用分散液の粘度が大きく下がって沈殿が形成されている。この結果から、めっき用分散液の増粘効果は、単純な塩類の濃度増加によるものではなく、塩類と界面活性剤の相互作用によることがわかる。さらに、過量の塩類は、界面活性剤を不溶化・沈殿させ、めっき用分散液の分散安定化効果を失わせることがわかる。また、実施例1~3などに比較して、はるかに少ない量(モル濃度で1/20以下)で過量となっており、無機塩類は有機酸塩類に比較して、めっき用分散液の分散安定化作用が強く、適正範囲が低濃度でかつ狭いこともわかる。
比較例8は、水溶性高分子であるキトサンによって分散剤の粘度を本発明と同程度となるように調整したものである。増粘効果によって沈殿は形成されにくくなるものの、本発明に比較して、沈殿を生じ易い上、めっき性能への悪影響(めっき速度の低下)が見られる。高分子分散剤の添加量増加は、めっき速度をさらに下げる結果となるため、高分子分散剤による増粘では、めっき性能と分散安定性との両立が難しいことがわかる。
電気ニッケルめっきへ適用した結果を表3に示す。めっき用分散液は、実施例3および比較例0と同じものを使用した。前者を実施例13、後者を比較例9としている。
Figure 2023033238000005
表3からも明らかなように、実施例13および比較例9は、どちらもめっき外観は良好であり、PTFE含量にも差は見られなかった。本発明で得られるめっき用分散液は、無電解めっきの場合と同様に電気めっきでもめっき特性に悪影響しないことがわかる。
経時での影響を調べるため、実施例1および比較例0について、製造直後と1ヵ月経過後とで粒径分布およびゼータ電位を測定し、その変化を調べた。粒径分布およびゼータ電位の測定には大塚電子株式会社製の粒径・ゼータ電位測定機 ELSZ-2000を使用し、各分散液を純水にて100倍希釈したものを試料とした。結果を表4に示す。
Figure 2023033238000006
比較例0では平均粒径が大きくなり、全体的に凝集が進んでいることが読み取れ、ゼータ電位も大きく変化していた。これに対し実施例1では粒径増加が見られず、ゼータ電位の変化も5%以内に抑えられており、分散液の品質がほとんど変化していないことが確認された。
(実施例14~17)
ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子とフッ素系ノニオン界面活性剤と、塩類と、水とを含んでなるめっき液用分散液を調製した。めっき用分散液に含まれるポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子の濃度をそれぞれ500g/L(実施例14)、350g/L(実施例15)、150g/L(実施例16)、50g(実施例17)に設定した。実施例14~17において製造しためっき液用分散液の分散液粘度をずり速度3.83sec-1、38.3sec-1及び383sec-1において、温度20℃の条件にて測定した。さらに、めっき用分散液に含まれるポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子の濃度を350g/L(実施例15)に設定しためっき用分散液を静置分層させた後、その懸濁層のみを分取して、その分散液粘度を上記条件にて測定した。実施例15~17のめっき用分散液の性能評価結果を表5に示す。
Figure 2023033238000007
表5から明らかなように、実施例14~17で製造しためっき用分散液のうち、当該めっき用分散液に含まれるポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子の濃度が400g/L未満の分散液は、その粘度が測定温度20℃の条件下、ずり速度3.83sec-1において、40~750mPasであり、ずり速度38.3sec-1において、15~130mPasである条件を満足しないことが判明した。
しかしながら、めっき用分散液に含まれるポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子の濃度が350g/Lのめっき用分散液(実施例15)を静置分層させたのち、懸濁層のみを分取して粘度測定すると、その粘度が測定温度20℃の条件下、ずり速度3.83sec-1において、40~750mPasであり、ずり速度38.3sec-1において、15~130mPasである条件を満足することが判明した。
これらの実施例からめっき用分散液に含まれるポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子の濃度が400g/L未満であっても、めっき液用分散液に含まれるフッ素系ノニオン界面活性剤の濃度と塩類の濃度とを所定の範囲に調整する限り、分散粒子は適度な粒子間距離を取るように分層・濃縮し、粒子間が、棒状ミセルを介して架橋されて沈殿形成が抑制されることが明らかとなった。
以上、本発明は、ある種のフッ素系ノニオン界面活性剤と塩類とを組み合わせることで分散安定性を飛躍的に向上させ、複合めっきの作業性、品質安定性を大きく改善するPTFE分散液である。
本発明の複合めっき用分散液は、PTFE水系分散液の分散安定性を飛躍的に改善し、長期間にわたって沈殿の形成を抑制することができる。このため、本発明の複合めっき用分散液は、金属加工産業、めっき加工業、金属表面処理加工業等の産業の発達に寄与することができるのできわめて産業上有用である。

Claims (7)

  1. ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子と、ノニオン界面活性剤と、塩類と、水とを含んで調製されるめっき液用分散液であって、
    (a)前記粒子の平均一次粒子径が100~500nmであり、
    (b)前記めっき用分散液に含まれる前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粒子の濃度が50~900g/Lであり、
    (c)前記めっき用分散液の粘度が測定温度20℃の条件下、ずり速度3.83sec-1において、40~750mPasであり、ずり速度38.3sec-1において、15~130mPasであることを特徴とするめっき液用分散液。
  2. 前記ノニオン界面活性剤は、前記めっき用分散液中において、棒状ミセルを形成していることを特徴とする請求項1に記載のめっき液用分散液。
  3. 前記ノニオン界面活性剤は、フッ素系ノニオン界面活性剤であることを特徴とする請求項2に記載のめっき液用分散液。
  4. 前記めっき液用分散液に含まれる前記フッ素系ノニオン界面活性剤の濃度が1.0~20.0g/Lであることを特徴とする請求項2に記載のめっき液用分散液。
  5. 前記めっき液用分散液に含まれる前記塩類の濃度が0.01~2.0mol/Lであることを特徴とする請求項1に記載のめっき液用分散液。
  6. 請求項1~5いずれか1項に記載のめっき液用分散液と水とを混合して得られる希釈めっき液用分散液試料であって、
    前記めっき液用分散液と前記水との混合比が体積比で0.5~5.0:95.0~99.5であり、
    前記めっき液用分散液試料に含まれる前記粒子の平均一次粒子径の測定値または前記めっき液用分散液試料のゼータ電位の測定値に対する、
    前記希釈めっき液用分散液を製造した時から少なくとも1か月を経過した後における前記粒子の平均一次粒子径の測定値または前記めっき液用分散液試料のゼータ電位の測定値の変化量が±5%以下であることを特徴とするめっき液用分散液試料。
  7. 請求項1~5いずれか1項に記載のめっき液用分散液を含むことを特徴とする複合めっき液。
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