JP2023030326A - 抗菌抗ウイルス用及び防カビ用材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料を提供すること。【解決手段】本発明の抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料は希土類水酸化物を含む。抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料は25℃における水に対する希土類イオンの溶解量が25℃において0.001mg/L以上、0.5g/L以下であることが好適である。前記希土類水酸化物が、希土類元素と、水酸基と、炭素元素、リン元素、硫黄元素、塩素元素、窒素元素及び酸素元素のうちの少なくとも一種と、を含む化合物であることも好適である。BET比表面積Sが1m2/g以上50m2/g以下である粉体の形態であることも好適である。【選択図】なし
Description
本発明は、希土類元素の水酸化物を含む抗菌抗ウイルス用及び防カビ用材料に関する。
ある種の金属のイオンが、抗菌作用や抗ウイルス作用を有することが知られている。そのような金属イオンとしては、例えば銀イオンや銅イオンが典型的なものとして挙げられる。これらの金属以外に、例えば希土類元素の酸化物も抗菌作用や抗ウイルス作用を有することが知られている。例えば特許文献1には、希土類酸化物及び希土類元素と、モリブデン、タングステン及びバナジウムから選択される少なくとも1種の元素とを含む複合酸化物セラミックスが記載されている。
特許文献1に記載の複合酸化物セラミックスは2種以上の元素を含むものであり、しかも当該元素はすべていわゆるレアメタルである。レアメタルは、地球上の存在量が稀であるか、又は技術的・経済的な理由で抽出困難なものであることから、工業的な使用の観点からは、レアメタルの使用量を極力減らすことが望まれる。また、同文献に記載の希土類酸化物には、ある程度の抗菌活性は認められるが、抗ウイルス活性については低い活性しか認められておらず、防カビ効果は知られていない。
したがって本発明の課題は、新規な抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料を提供することにある。
したがって本発明の課題は、新規な抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料を提供することにある。
前記の課題を解決すべく本発明者は鋭意検討した結果、意外にも希土類元素の水酸化物に抗菌活性及び抗ウイルス活性又は防カビ効果があることを見出した。すなわち本発明は、希土類水酸化物を含む抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料を提供するものである。
本発明によれば、これまでにない新規な抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料が提供される。本発明の材料は希土類元素を少なくとも1種含むだけで抗菌抗ウイルス活性を発現するので、レアメタルの使用量を従来よりも低減できる。また、本発明の材料は様々な形態をとることが可能なので、様々な対象物に抗菌抗ウイルス効果を付与できる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明は抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料に関するものである。本明細書において「抗菌」及び「抗ウイルス」とは、細菌及びウイルスを不活化させる機能のことである。「防カビ」とは、真菌の生育を抑制することである。また「不活化」とは、対象となる細菌やウイルスを構成するタンパク質、核酸及び脂質などの化学構造又は高次構造を崩壊又は変性させることによって、菌体やウイルス粒子そのものの破壊の有無を問わず、宿主に対する感染能力又は増殖能力を減弱、阻害又は消失させることを包含する。また本明細書において、細菌を不活化させる能力の度合いを「抗菌活性」ともいい、ウイルスを不活化させる能力の度合いを「抗ウイルス活性」ともいう。
以下の説明においては、簡便のため、「抗菌抗ウイルス用又はカビ用材料」を「抗菌抗ウイルス用材料」ともいう。
本発明は抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料に関するものである。本明細書において「抗菌」及び「抗ウイルス」とは、細菌及びウイルスを不活化させる機能のことである。「防カビ」とは、真菌の生育を抑制することである。また「不活化」とは、対象となる細菌やウイルスを構成するタンパク質、核酸及び脂質などの化学構造又は高次構造を崩壊又は変性させることによって、菌体やウイルス粒子そのものの破壊の有無を問わず、宿主に対する感染能力又は増殖能力を減弱、阻害又は消失させることを包含する。また本明細書において、細菌を不活化させる能力の度合いを「抗菌活性」ともいい、ウイルスを不活化させる能力の度合いを「抗ウイルス活性」ともいう。
以下の説明においては、簡便のため、「抗菌抗ウイルス用又はカビ用材料」を「抗菌抗ウイルス用材料」ともいう。
本発明の抗菌抗ウイルス用材料は、希土類水酸化物を含んでいる。本明細書において希土類水酸化物とは、少なくとも一つの水酸基を含む希土類元素の化合物であって、水酸基とは末端にOH基を有する原子団のことである。したがって本明細書における水酸基は、狭義の-OH基及びオキシ水酸基である-OOH基の双方を包含する広義の概念である。有効な抗菌抗ウイルス効果の発現の観点から、希土類水酸化物は少なくとも-OH基を含んでいることが好ましい。
希土類水酸化物は、希土類元素及び水酸基を含む限りにおいて他の元素を含んでいてもよい。希土類水酸化物は、希土類元素及び水酸基に加えて、例えば炭素元素、リン元素、硫黄元素、塩素元素、窒素元素及び酸素元素のうちの少なくとも一種を含む化合物であり得る。
希土類水酸化物は少なくとも一つの水酸基を含む限りにおいて他の原子団を含んでいてもよい。他の原子団は、例えば上述した炭素元素、リン元素、硫黄元素、塩素元素、窒素元素及び酸素元素のうちの少なくとも一種を含むことができる。他の原子団の具体例としては炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、塩素や臭素などのハロゲンなどが挙げられる。これらの原子団を含む希土類水酸化物としては、例えばLn(CO3)OH、Ln(NO3)(OH)2、Ln(SO4)OH、LnX(OH)2などが挙げられるが、これらに限られない。式中、Lnは三価の希土類元素を表し、Xはハロゲン元素を表す。
本発明の抗菌抗ウイルス用材料は、希土類水酸化物のみから構成されていてもよく、あるいは希土類水酸化物に加えて他の物質を含んでいてもよい。本発明の抗菌抗ウイルス用材料が、希土類水酸化物に加えて他の物質を含んでいる場合、抗菌抗ウイルス用材料に占める希土類水酸化物の割合は15質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが一層好ましく、93質量%以上であることが更に一層好ましい。また、この抗菌抗ウイルス用材料に占める希土類水酸化物の割合の上限は100%質量以下であることが好ましく、製造時のコストを過度に上昇させない観点から99.9質量%以下であることがより好ましい。希土類水酸化物以外に本発明の抗菌抗ウイルス用材料に含まれる物質としては、例えば該希土類水酸化物に対応する希土類元素の酸化物が挙げられる。
希土類水酸化物を構成する希土類元素としては各種の希土類元素を用いることができる。特に、希土類水酸化物がSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm及びEuから選択される少なくとも一種の希土類元素の水酸化物であることが、抗菌抗ウイルス効果が高い点から好ましい。とりわけ希土類水酸化物が、Laの水酸化物であることが、抗菌抗ウイルス効果が一層高い点から好ましい。
本発明の抗菌抗ウイルス用材料は粉体の形態であり得る。この場合、該抗菌抗ウイルス用材料が希土類水酸化物に加えて他の物質を含む場合には、該粉体を構成する粒子がその表面に少なくとも希土類水酸化物を有することが、抗菌抗ウイルス効果が有効に発現し得る点から好ましい。粒子がその表面に希土類水酸化物を有するか否かは、例えばX線光電子分光法(XPS)によって判断することができる。
本発明の抗菌抗ウイルス用材料が粉体の形態である場合、そのBET比表面積は1m2/g以上であることが、抗菌抗ウイルス効果が有効に発現し得る点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、BET比表面積は、3m2/g以上であることが更に好ましく、5m2/g以上であることが一層好ましく、8m2/g以上であることが更に一層好ましい。抗菌抗ウイルス効果を高める観点からは、本発明の抗菌抗ウイルス用材料のBET比表面積は高ければ高いほど望ましいが、50m2/g程度にBET比表面積が高ければ、抗菌抗ウイルス効果が十分に発現する。この観点から、本発明の抗菌抗ウイルス用材料のBET比表面積は、1m2/g以上50m2/g以下であることが好ましく、3m2/g以上45m2/g以下であることが更に好ましく、5m2/g以上40m2/g以下であることが一層好ましく、8m2/g以上40m2/g以下であることが更に一層好ましい。BET比表面積の測定方法は、後述する実施例において説明する。
本発明の抗菌抗ウイルス用材料は、水に対する溶解性が低いことが、抗菌抗ウイルス効果の持続性を高める観点から好ましい。この観点から、本発明の抗菌抗ウイルス用材料は、25℃における水に対する希土類イオンの溶解量が0.5g/L以下であることが好ましい。なお、本発明における希土類イオンの溶解度は、水1L当たりに溶解した希土類イオンの質量と定義する。抗菌抗ウイルス効果の持続性を一層高める観点から、希土類イオンの溶解量は、25℃において0.3g/L以下であることが更に好ましく、0.1g/L以下であることが一層好ましい。抗菌抗ウイルス効果の持続性を高める観点からは、希土類イオンの溶解量は低ければ低いほど望ましいが、0.001mg/L程度に希土類イオンの溶解量が低ければ、抗菌抗ウイルス効果が十分に持続する。この観点から、本発明の抗菌抗ウイルス用材料における希土類イオンの溶解量は、25℃において0.001mg/L以上0.5g/L以下であることが好ましく、0.005mg/L以上0.3g/L以下であることが更に好ましく、0.01mg/L以上0.1g/L以下であることが一層好ましい。希土類イオンの溶解量の測定方法は、後述する実施例において説明する。
本発明の抗菌抗ウイルス用材料は、水中で容易に解砕されることが、解砕後の粒子が一定以上の均一性を確保した状態となり、抗菌抗ウイルス効果を高める観点から好ましい。例えば、抗菌抗ウイルス用材料と樹脂組成物などとを原料に用いて抗菌抗ウイルス加工物を製造する際には、抗菌抗ウイルス用材料が水中で容易に解砕されて粒子が一定以上の均一性を確保した状態となることで、製造工程における付着、担持、混合及び混練がより容易となる。これによって、抗菌抗ウイルス効果が高い抗菌抗ウイルス加工物を製造することが容易となる。この観点から、本発明の抗菌抗ウイルス用材料は、水に分散させた状態での粒径と、水に分散させて超音波を照射した後の状態での粒径との間に大きな相違があることが好ましい。
具体的には、粉体の形態である本発明の抗菌抗ウイルス用材料及び分散剤を水に分散させてなる分散液に、180Wの超音波を5分間照射する第1処理を施し、次いで40Wの超音波を10分間照射する第2処理を施して得られた液を対象として、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定された累積体積50容量%における体積累積粒径をD50Tとする。また、前記分散液に第1処理の超音波を照射する前の液を対象として測定された累積体積50容量%における体積累積粒径をD50Iとする。つまり、D50Iは超音波を照射する前の粒径であり、D50Tは超音波を2回照射した後の粒径である。そして本発明においては、D50T/D50Iが0.95以下であることが、抗菌抗ウイルス効果を高める観点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、D50T/D50Iは0.85以下であることが更に好ましく、0.8以下であることが一層好ましい。D50T/D50Iの値は小さければ小さいほど望ましいが、0.007程度に値が小さければ抗菌抗ウイルス効果が十分に発現する。この観点から、本発明の抗菌抗ウイルス用材料のD50T/D50Iは0.007以上0.95以下であることが好ましく、0.0073以上0.85以下であることが更に好ましく、0.0075以上0.8以下であることが一層好ましい。
D50Tの測定に先立ち、異なる条件で分散液に超音波を2回照射する理由は、本発明の抗菌抗ウイルス用材料の凝集が非常に強い場合、一般的な40Wの超音波照射では不十分な場合があるからである。D50T及びD50Iの具体的な測定方法は、後述する実施例において説明する。
なお、粉体にボールミルやメノウ乳鉢を用いた解砕を行ったものを用いることもできる。すなわち、粉体に篩による分級を行うことで超音波による解砕工程を代替することも可能である。
具体的には、粉体の形態である本発明の抗菌抗ウイルス用材料及び分散剤を水に分散させてなる分散液に、180Wの超音波を5分間照射する第1処理を施し、次いで40Wの超音波を10分間照射する第2処理を施して得られた液を対象として、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定された累積体積50容量%における体積累積粒径をD50Tとする。また、前記分散液に第1処理の超音波を照射する前の液を対象として測定された累積体積50容量%における体積累積粒径をD50Iとする。つまり、D50Iは超音波を照射する前の粒径であり、D50Tは超音波を2回照射した後の粒径である。そして本発明においては、D50T/D50Iが0.95以下であることが、抗菌抗ウイルス効果を高める観点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、D50T/D50Iは0.85以下であることが更に好ましく、0.8以下であることが一層好ましい。D50T/D50Iの値は小さければ小さいほど望ましいが、0.007程度に値が小さければ抗菌抗ウイルス効果が十分に発現する。この観点から、本発明の抗菌抗ウイルス用材料のD50T/D50Iは0.007以上0.95以下であることが好ましく、0.0073以上0.85以下であることが更に好ましく、0.0075以上0.8以下であることが一層好ましい。
D50Tの測定に先立ち、異なる条件で分散液に超音波を2回照射する理由は、本発明の抗菌抗ウイルス用材料の凝集が非常に強い場合、一般的な40Wの超音波照射では不十分な場合があるからである。D50T及びD50Iの具体的な測定方法は、後述する実施例において説明する。
なお、粉体にボールミルやメノウ乳鉢を用いた解砕を行ったものを用いることもできる。すなわち、粉体に篩による分級を行うことで超音波による解砕工程を代替することも可能である。
上述したD50T/D50Iとの関連で、D50Tそのものの値は、D50T/D50Iが上述の範囲であることを条件として、100nm以上5000nm以下であることが抗菌抗ウイルス性の点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、D50Tは110nm以上4000nm以下であることが更に好ましく、120nm以上3000nm以下であることが一層好ましい。
一方、D50Iは、D50T/D50Iが上述の範囲であることを条件として、1000nm以上50000nm以下であることが取り扱いの容易性及び解砕のしやすさの点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、D50Iは1500nm以上47500nm以下であることが更に好ましく、2000nm以上45000nm以下であることが一層好ましい。
本発明の抗菌抗ウイルス用材料は、これに含まれる希土類水酸化物の結晶子サイズRが小さいことが、該抗菌抗ウイルス用材料が水中で一層容易に解砕される点から好ましい。この観点から、希土類水酸化物の結晶子サイズRは50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることが更に好ましく、40nm以下であることが一層好ましい。希土類水酸化物の結晶子サイズRはその値が小さければ小さいほど、本発明の抗菌抗ウイルス用材料が水中で一層容易に解砕される点から望ましいが、5nm程度に希土類水酸化物の結晶子サイズRが小さければ、抗菌抗ウイルス用材料は水中で十分容易に解砕される。この観点から、希土類水酸化物の結晶子サイズRは、5nm以上50nm以下であることが好ましく、10nm以上45nm以下であることが更に好ましく、10nm以上40nm以下であることが一層好ましい。希土類水酸化物の結晶子サイズRの測定方法は、後述する実施例において説明する。
上述した結晶子サイズRとの関連で、本発明の抗菌抗ウイルス用材料は、そのBET比表面積S(m2/g)に対する結晶子サイズR(nm)の比率であるR/Sが特定の範囲であることも、該抗菌抗ウイルス用材料が水中で一層容易に解砕されること点から好ましい。この観点から、R/Sの値は0.03以上7.0以下であることが好ましく、0.05以上5.0以下であることが更に好ましく、0.1以上4.0以下であることが一層好ましい。
本発明の抗菌抗ウイルス用材料は、水中で解砕された後の粒度分布がシャープであることが、抗菌抗ウイルス効果を顕著に発現させる点から好ましい。
具体的には、粉体の形態である本発明の抗菌抗ウイルス用材料及び分散剤を水に分散させてなる分散液に、180Wの超音波を10分間照射する第1処理を施し、次いで40Wの超音波を3分間照射する第2処理を施して得られた液を対象として、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定された累積体積90容量%及び累積体積50容量%における体積累積粒径をそれぞれD90T及びD50Tとする。そしてD90T及びD50Tは、D90Tに対するD50Tの比であるD50T/D90Tが0.03以上であることが、抗菌抗ウイルス効果を高める観点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、D50T/D90Tは0.05以上であることが更に好ましく、0.07以上であることが一層好ましい。D50T/D90Tの値は大きければ大きいほど望ましいが、0.85程度に値が大きければ抗菌抗ウイルス効果が十分に発現する。この観点から、本発明の抗菌抗ウイルス用材料のD50T/D90Tは0.03以上0.85以下であることが好ましく、0.05以上0.75以下であることが更に好ましく、0.07以上0.7以下であることが一層好ましい。
D50T及びD90Tの測定に先立ち、異なる条件で分散液に超音波を2回照射する理由は、本発明の抗菌抗ウイルス用材料の凝集が強い場合、一般的な40Wの超音波照射では不十分な場合があるからである。D50T及びD90Tの具体的な測定方法は、後述する実施例において説明する。
具体的には、粉体の形態である本発明の抗菌抗ウイルス用材料及び分散剤を水に分散させてなる分散液に、180Wの超音波を10分間照射する第1処理を施し、次いで40Wの超音波を3分間照射する第2処理を施して得られた液を対象として、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定された累積体積90容量%及び累積体積50容量%における体積累積粒径をそれぞれD90T及びD50Tとする。そしてD90T及びD50Tは、D90Tに対するD50Tの比であるD50T/D90Tが0.03以上であることが、抗菌抗ウイルス効果を高める観点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、D50T/D90Tは0.05以上であることが更に好ましく、0.07以上であることが一層好ましい。D50T/D90Tの値は大きければ大きいほど望ましいが、0.85程度に値が大きければ抗菌抗ウイルス効果が十分に発現する。この観点から、本発明の抗菌抗ウイルス用材料のD50T/D90Tは0.03以上0.85以下であることが好ましく、0.05以上0.75以下であることが更に好ましく、0.07以上0.7以下であることが一層好ましい。
D50T及びD90Tの測定に先立ち、異なる条件で分散液に超音波を2回照射する理由は、本発明の抗菌抗ウイルス用材料の凝集が強い場合、一般的な40Wの超音波照射では不十分な場合があるからである。D50T及びD90Tの具体的な測定方法は、後述する実施例において説明する。
本発明の抗菌抗ウイルス用材料は、その製造のしやすさの観点から、走査型電子顕微鏡(SEM)による外観観察を行った際の平均アスペクト比が、1.00以上5.00以下であることが好ましく、1.05以上3.00以下であることがより好ましい。本明細書において「アスペクト比」とは、粒子の最も長い軸(長軸)の長さを、長軸と直交する線分のうち、差し渡し長さが最も長い線分(短軸)の長さで除した値のことである。粒子10個について算出したアスペクト比の平均値を平均アスペクト比とする。アスペクト比は抗菌抗ウイルス用材料のSEM像より算出し、観察時の倍率は5000倍~50000倍とする。図1に、抗菌抗ウイルス用材料のSEM像においてアスペクト比を算出した一例を示す。
次に本発明の抗菌抗ウイルス用材料の好適な製造方法について説明する。本製造方法によれば、上述した各種の物性を有する抗菌抗ウイルス用材料を首尾よく製造できるという利点がある。
本製造方法においては、抗菌抗ウイルス用材料の原料として希土類元素の酸化物を用いる。特に三価の希土類元素の酸化物を用いる。三価の希土類元素をLnで表した場合、その酸化物はLn2O3で表される。Lnは一種の希土類元素であってもよく、あるいは二種以上の希土類元素の組み合わせであってもよい。
本製造方法においてはLn2O3で表される希土類酸化物と水とを反応させる。両者の反応によってLn(OH)3で表される希土類水酸化物が生成する。希土類酸化物と水との比率は、1gの希土類酸化物に対して、水を1mL以上100mL以下用いることが、得られる抗菌抗ウイルス用材料に占める希土類水酸化物の割合を高めることができる点から好ましい。
本製造方法においては、抗菌抗ウイルス用材料の原料として希土類元素の酸化物を用いる。特に三価の希土類元素の酸化物を用いる。三価の希土類元素をLnで表した場合、その酸化物はLn2O3で表される。Lnは一種の希土類元素であってもよく、あるいは二種以上の希土類元素の組み合わせであってもよい。
本製造方法においてはLn2O3で表される希土類酸化物と水とを反応させる。両者の反応によってLn(OH)3で表される希土類水酸化物が生成する。希土類酸化物と水との比率は、1gの希土類酸化物に対して、水を1mL以上100mL以下用いることが、得られる抗菌抗ウイルス用材料に占める希土類水酸化物の割合を高めることができる点から好ましい。
希土類酸化物と水との反応は、非加熱下で行ってもよく、あるいは加熱下で行ってもよい。加熱下で反応を行う場合には、反応系を5℃以上90℃以下に加熱することが好ましく、25℃以上85℃以下に加熱することがより好ましい。
希土類酸化物は、上述したD50Iに従い測定された粒径が0.1μm以上50μm以下であることが、該希土類酸化物から首尾よく希土類水酸化物を生成させ得る点から好ましい。
本製造方法においては、希土類酸化物と水との反応を静置状態で行うことができる。あるいは、希土類酸化物と水との反応を、各種のメディアミルを用いた撹拌状態下に行うことも可能であり、更には各種の粉砕メディアを用いて撹拌することも可能である。特に、各種のメディアミルを用いた撹拌状態下に各種の粉砕メディアを用いつつ希土類酸化物と水との両者の反応を行うことで、希土類酸化物が粉砕されつつ、希土類酸化物と水とが反応することで、希土類酸化物から効率よく希土類水酸化物を生成させることができる。しかも、生成した希土類水酸化物は容易に解砕されやすい性質を有するものとなる。その上、生成した希土類水酸化物はその粒径が小さく、BET比表面積Sが大きく、且つ、結晶子サイズRが小さいものとなる。
前記のメディアミルとしては例えばボールミル、ビーズミルを用いることができ、前記の粉砕メディアとして直径0.1mm以上10mm以下のビーズやボールを用いることができる。粉砕メディアの材質としてはアルミナやジルコニアなどを用いることができる。メディアミルを用いた撹拌においては、希土類酸化物を含む水スラリー100gに対して、粉砕メディアを好ましくは1g以上1000g以下、更に好ましくは1g以上800g以下用いることが、希土類酸化物から希土類水酸化物を首尾よく生成させ、且つ製造時のコストを抑制し得る点から有利である。
前記のメディアミルを用いた撹拌においては、自転式の装置を用いてもよく、あるいは自転・公転式の装置を用いてもよい。後者の場合、自転の回転数を好ましくは1rpm以上5000rpm以下に設定し、且つ公転の回転数を好ましくは10rpm以上4000rpm以下に設定すると、希土類酸化物から希土類水酸化物を一層首尾よく生成させ得る。
いずれの装置を用いる場合であっても、希土類水酸化物を一層首尾よく生成させ、且つ製造時のコストを抑制し得る点から、撹拌時間は例えば1分以上100時間以下とすることが好ましく、5分以上50時間以下とすることが更に好ましい。
いずれの装置を用いる場合であっても、希土類水酸化物を一層首尾よく生成させ、且つ製造時のコストを抑制し得る点から、撹拌時間は例えば1分以上100時間以下とすることが好ましく、5分以上50時間以下とすることが更に好ましい。
前記のメディアミルを用いた撹拌により、希土類酸化物と水とが反応することで、目的とする希土類水酸化物が得られる。得られた希土類水酸化物は粉砕メディアと分離した後、水洗し乾燥させる。
このようにして得られた希土類水酸化物を含む本発明の抗菌抗ウイルス用材料は、その抗菌抗ウイルス活性を活かして、抗菌抗ウイルスが求められる場面に用いられる。例えば、本発明の抗菌抗ウイルス用材料と、バインダ及び該バインダを溶解し得る溶媒とを含む塗布液を調製し、該塗布液を硬質表面に塗布することで、該硬質表面に抗菌抗ウイルス機能を付与することができる。あるいは、本発明の抗菌抗ウイルス用材料を樹脂に練り込んでなる樹脂組成物からなるマスターバッチを用いることで、抗菌抗ウイルス機能を有する樹脂成形体、繊維、フィルム及びシートを製造することができる。あるいは、本発明の抗菌抗ウイルス用材料をセラミックス材料と混合し、焼結させることで、抗菌抗ウイルス機能を有するセラミックスを製造することができる。あるいは、本発明の抗菌抗ウイルス用材料を溶媒中に分散させたスラリーを用いることで、防腐剤や抗菌剤として、液状製品への抗菌抗ウイルス機能の付与、防腐効果の付与が可能になる。あるいは、該スラリーをスプレーすることによって、被スプレー物に抗菌抗ウイルス性能を付与することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
D50Iが30.55μmであるLa2O3を用意した。25gのLa2O3を75mLの純水に混合させてスラリーを得た。このスラリーに、粉砕メディアとして直径0.4mmのジルコニア製ボール70gを加え、自転式ボールミル装置(日陶科学社製ANZ―71S)によって、非加熱下に撹拌を行った。自転式ボールミル装置の運転条件は、自転回転数270rpmとした。撹拌を64時間行った後、固形分と粉砕メディアと分離し、該固形分を水洗し120℃で15時間乾燥させて、目的とする抗菌抗ウイルス用材料を得た。
D50Iが30.55μmであるLa2O3を用意した。25gのLa2O3を75mLの純水に混合させてスラリーを得た。このスラリーに、粉砕メディアとして直径0.4mmのジルコニア製ボール70gを加え、自転式ボールミル装置(日陶科学社製ANZ―71S)によって、非加熱下に撹拌を行った。自転式ボールミル装置の運転条件は、自転回転数270rpmとした。撹拌を64時間行った後、固形分と粉砕メディアと分離し、該固形分を水洗し120℃で15時間乾燥させて、目的とする抗菌抗ウイルス用材料を得た。
〔実施例2及び3〕
D50Iが30.55μmである5gのLa2O3を用意し、100mLの純水に混合させてスラリーを得た。このスラリーに、粉砕メディアとして直径0.4mmのジルコニア製ボール100gを加え、遊星ボールミル装置(株式会社シンキー製のARE―310)によって、非加熱下に撹拌を行った。遊星ボールミル装置の運転条件は、自転回転数800rpm、公転回転数2000rpmとした。遊星ボールミル装置による撹拌時間を10分(実施例2)、及び1分(実施例3)とした以外は実施例1と同様にして抗菌抗ウイルス用材料を得た。
D50Iが30.55μmである5gのLa2O3を用意し、100mLの純水に混合させてスラリーを得た。このスラリーに、粉砕メディアとして直径0.4mmのジルコニア製ボール100gを加え、遊星ボールミル装置(株式会社シンキー製のARE―310)によって、非加熱下に撹拌を行った。遊星ボールミル装置の運転条件は、自転回転数800rpm、公転回転数2000rpmとした。遊星ボールミル装置による撹拌時間を10分(実施例2)、及び1分(実施例3)とした以外は実施例1と同様にして抗菌抗ウイルス用材料を得た。
〔実施例4〕
粉砕メディアとして、直径5mmのジルコニア製ボールを用いた。これ以外は実施例1と同様にして抗菌抗ウイルス用材料を得た。
粉砕メディアとして、直径5mmのジルコニア製ボールを用いた。これ以外は実施例1と同様にして抗菌抗ウイルス用材料を得た。
〔比較例1〕
本比較例1では、D50Iが30.55μmである市販のLa2O3を抗菌抗ウイルス用材料として用いた。
本比較例1では、D50Iが30.55μmである市販のLa2O3を抗菌抗ウイルス用材料として用いた。
〔比較例2〕
本比較例では、水溶性の高いLaCl3・7H2O(塩化ランタン・七水和物、富士フイルム和光純薬株式会社製)を抗菌抗ウイルス用材料として用いた。
本比較例では、水溶性の高いLaCl3・7H2O(塩化ランタン・七水和物、富士フイルム和光純薬株式会社製)を抗菌抗ウイルス用材料として用いた。
〔比較例3〕
本比較例では、水溶性の低いLa2(CO3)3(炭酸ランタン、富士フイルム和光純薬株式会社製)を抗菌抗ウイルス用材料として用いた。
本比較例では、水溶性の低いLa2(CO3)3(炭酸ランタン、富士フイルム和光純薬株式会社製)を抗菌抗ウイルス用材料として用いた。
〔評価1〕
実施例及び比較例で得られた抗菌抗ウイルス用材料について、希土類水酸化物の分率、BET比表面積、粒径D50T、D50I及びD90T、希土類水酸化物の結晶子サイズ、及び25℃における水に対する希土類イオンの溶解度を以下に述べる方法で測定した。
また、実施例及び比較例で得られた抗菌抗ウイルス用材料について、大腸菌及び黄色ブドウ球菌を対象とした抗菌試験、並びにバクテリオファージQβ及びバクテリオファージφ6を対象とした抗ウイルス試験を以下に述べる方法で行った。
以上の結果を以下の表1に示す。なお、比較例2で得られた抗菌抗ウイルス用材料は潮解性が高いことから、BET比表面積、粒径D50T、D50I及びD90T及び希土類水酸化物の結晶子サイズの測定ができなかった。
実施例及び比較例で得られた抗菌抗ウイルス用材料について、希土類水酸化物の分率、BET比表面積、粒径D50T、D50I及びD90T、希土類水酸化物の結晶子サイズ、及び25℃における水に対する希土類イオンの溶解度を以下に述べる方法で測定した。
また、実施例及び比較例で得られた抗菌抗ウイルス用材料について、大腸菌及び黄色ブドウ球菌を対象とした抗菌試験、並びにバクテリオファージQβ及びバクテリオファージφ6を対象とした抗ウイルス試験を以下に述べる方法で行った。
以上の結果を以下の表1に示す。なお、比較例2で得られた抗菌抗ウイルス用材料は潮解性が高いことから、BET比表面積、粒径D50T、D50I及びD90T及び希土類水酸化物の結晶子サイズの測定ができなかった。
〔希土類水酸化物の分率〕
X線回折装置を用い、2θ=20°~80°に観察される各回折ピークの積分強度を算出した。La(OH)3及びLa2O3の積分強度の和に対するLa(OH)3の積分強度の比を算出し、その百分率を希土類水酸化物の分率とした。
各実施例では、La(OH)3の(110)、(101)、(200)、(111)、(201)、(210)、(002)、(300)、(211)、(102)、(112)、(220)、(202)、(310)、(311)、(212)、(400)、(302)、(401)、(320)、(103)、(410)、(312)に由来するピークが得られた。
X線回折装置を用い、2θ=20°~80°に観察される各回折ピークの積分強度を算出した。La(OH)3及びLa2O3の積分強度の和に対するLa(OH)3の積分強度の比を算出し、その百分率を希土類水酸化物の分率とした。
各実施例では、La(OH)3の(110)、(101)、(200)、(111)、(201)、(210)、(002)、(300)、(211)、(102)、(112)、(220)、(202)、(310)、(311)、(212)、(400)、(302)、(401)、(320)、(103)、(410)、(312)に由来するピークが得られた。
〔BET比表面積〕
BET1点法によって測定した。測定用のガスとしては窒素30体積%-ヘリウム70体積%の混合ガスを、キャリブレーション用のガスとしては純窒素を用いた。BET比表面積の測定に供する試料の乾燥は250℃、90分間とした。
BET1点法によって測定した。測定用のガスとしては窒素30体積%-ヘリウム70体積%の混合ガスを、キャリブレーション用のガスとしては純窒素を用いた。BET比表面積の測定に供する試料の乾燥は250℃、90分間とした。
〔粒径D50T、D50I及びD90T〕
粒度分布測定装置としてマイクロトラック・ベル社製Microtrac MT3300EXIIを用いた。分散剤としてヘキサメタリン酸を用いた。
試料0.2gと、0.2%ヘキサメタリン酸水溶液1mLとを混合した。
次いで、測定対象液を粒度分布測定装置に導入して粒度分布を測定し、D50Iを求めた。
引き続き、測定対象液に180Wの超音波を5分間照射し、次いで40Wの超音波を10分間照射した後に粒度分布を測定し、D50T及びD90Tを求めた。
粒度分布測定装置としてマイクロトラック・ベル社製Microtrac MT3300EXIIを用いた。分散剤としてヘキサメタリン酸を用いた。
試料0.2gと、0.2%ヘキサメタリン酸水溶液1mLとを混合した。
次いで、測定対象液を粒度分布測定装置に導入して粒度分布を測定し、D50Iを求めた。
引き続き、測定対象液に180Wの超音波を5分間照射し、次いで40Wの超音波を10分間照射した後に粒度分布を測定し、D50T及びD90Tを求めた。
〔希土類水酸化物の結晶子サイズ〕
X線回折装置を用いて測定した。2θ=20°~80°に観察される回折ピークのうち、La(OH)3に由来する回折ピークを対象として、シェラー法によって結晶子サイズを算出した。算出には、(101)に由来する回折ピークの半値幅を用い、シェラー定数は0.9、X線の波長は0.1541nmとした。
X線回折装置を用いて測定した。2θ=20°~80°に観察される回折ピークのうち、La(OH)3に由来する回折ピークを対象として、シェラー法によって結晶子サイズを算出した。算出には、(101)に由来する回折ピークの半値幅を用い、シェラー定数は0.9、X線の波長は0.1541nmとした。
〔水に対する希土類イオンの溶解度〕
0.2gの抗菌抗ウイルス用材料を25℃の純水100mLに対し、投入後混合し、25℃において24時間静置後、孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて粉体を除去した後、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて希土類イオン量を定量した。得られた希土類イオン量を純水1L当たりの溶解量に換算した値を溶解度とした。
0.2gの抗菌抗ウイルス用材料を25℃の純水100mLに対し、投入後混合し、25℃において24時間静置後、孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて粉体を除去した後、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて希土類イオン量を定量した。得られた希土類イオン量を純水1L当たりの溶解量に換算した値を溶解度とした。
〔抗菌試験及び抗ウイルス試験〕
菌数がおよそ105CFUとなるように試験片に滴下し、培養温度を25℃、培養時間を2時間、試験数N=1とした他は、JIS Z 2801:2012に従い抗菌試験を行った。
ネコカリシウイルスの代替ウイルスであるバクテリオファージQβと、インフルエンザウイルスの代替ウイルスであるバクテリオファージφ6とを用い、ファージ数がおよそ106PFUとなるように試験片に滴下し、培養温度25℃、培養時間を2時間、試験数N=1とした他は、ISO 21702に従い抗ウイルス試験を行った。バクテリオファージの取扱いについては、JIS R 1756:2020に従った。以下に試験概要を記載する。
実施例及び比較例で得られた抗菌抗ウイルス用材料をエタノールに分散し、1mg/mLの分散液を調製した。0.9mLの分散液を5.0cm角のガラス基板上に塗布し120℃で乾燥させた。塗布及び乾燥を2回繰り返し加工品を準備した。前記加工品と、抗菌抗ウイルス用材料を塗布していない無加工品に対して乾熱殺菌器により80℃で15分間加熱処理を行い、複数の試験片を準備した。
これとは別に、黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)、大腸菌(グラム陰性菌)をそれぞれ1/500NB培地に投入した6.3×105CFU/mL、6.9×105CFU/mLの溶液を調製した。また、バクテリオファージQβ(ネコカリシウイルスの代替ウイルス)、バクテリオファージφ6(インフルエンザウイルスの代替ウイルス)をそれぞれ1/500NB培地に投入し、2.4×106PFU/mL、9.9×106PFU/mLの溶液を調製した。
前記試験片に各々前記試験菌液0.4mL(およそ105CFU)を滴下し、フィルムで密着させた後、湿度が90%RH以上となるよう密閉容器に入れ、暗所25℃に静置した。所定の時間が経ったサンプルのうち残存している菌数(コロニー数)を数えるために、SCDLP培地を用いてフィルム上の菌を洗い流して菌液を得た。得られた菌液を0.01MのPBSで希釈し、これをサンプル溶液とした。コロニー数を数えるためにシャーレに菌を含んだサンプル溶液1mLとEA寒天培地を加えて所定の時間放置した。その後コロニーカウントを行い無加工品の試験片における生菌数の対数値と加工品の試験片における生菌数の対数値との差から抗菌活性値を求めた。
一方、前記試験片に各々前記試験ウイルス液0.4mL(およそ106PFU)を滴下し、フィルムで密着させた後、湿度が90%RH以上となるよう密閉容器に入れ、暗所25℃に静置した。所定の時間が経ったサンプルのうち残存しているファージ数(プラーク数)を数えるために、SCDLP培地用いてフィルム上の菌を洗い流して菌液を得た。得られた菌液を0.01MのPBSで希釈し、これをサンプル溶液とした。次いで、バクテリオファージQβを大腸菌に感染させた溶液、及びバクテリオファージφ6を緑膿菌に感染させた溶液を作製し、それら溶液とサンプル溶液を1mLずつ異なるLB軟寒天培地に加えた後、LB寒天培地に撒いた。所定の時間放置した後、プラーク数を記録し無加工品の試験片における感染価の対数値と加工品の試験片における感染価の対数値との差から抗ウイルス活性値を求めた。
菌数がおよそ105CFUとなるように試験片に滴下し、培養温度を25℃、培養時間を2時間、試験数N=1とした他は、JIS Z 2801:2012に従い抗菌試験を行った。
ネコカリシウイルスの代替ウイルスであるバクテリオファージQβと、インフルエンザウイルスの代替ウイルスであるバクテリオファージφ6とを用い、ファージ数がおよそ106PFUとなるように試験片に滴下し、培養温度25℃、培養時間を2時間、試験数N=1とした他は、ISO 21702に従い抗ウイルス試験を行った。バクテリオファージの取扱いについては、JIS R 1756:2020に従った。以下に試験概要を記載する。
実施例及び比較例で得られた抗菌抗ウイルス用材料をエタノールに分散し、1mg/mLの分散液を調製した。0.9mLの分散液を5.0cm角のガラス基板上に塗布し120℃で乾燥させた。塗布及び乾燥を2回繰り返し加工品を準備した。前記加工品と、抗菌抗ウイルス用材料を塗布していない無加工品に対して乾熱殺菌器により80℃で15分間加熱処理を行い、複数の試験片を準備した。
これとは別に、黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)、大腸菌(グラム陰性菌)をそれぞれ1/500NB培地に投入した6.3×105CFU/mL、6.9×105CFU/mLの溶液を調製した。また、バクテリオファージQβ(ネコカリシウイルスの代替ウイルス)、バクテリオファージφ6(インフルエンザウイルスの代替ウイルス)をそれぞれ1/500NB培地に投入し、2.4×106PFU/mL、9.9×106PFU/mLの溶液を調製した。
前記試験片に各々前記試験菌液0.4mL(およそ105CFU)を滴下し、フィルムで密着させた後、湿度が90%RH以上となるよう密閉容器に入れ、暗所25℃に静置した。所定の時間が経ったサンプルのうち残存している菌数(コロニー数)を数えるために、SCDLP培地を用いてフィルム上の菌を洗い流して菌液を得た。得られた菌液を0.01MのPBSで希釈し、これをサンプル溶液とした。コロニー数を数えるためにシャーレに菌を含んだサンプル溶液1mLとEA寒天培地を加えて所定の時間放置した。その後コロニーカウントを行い無加工品の試験片における生菌数の対数値と加工品の試験片における生菌数の対数値との差から抗菌活性値を求めた。
一方、前記試験片に各々前記試験ウイルス液0.4mL(およそ106PFU)を滴下し、フィルムで密着させた後、湿度が90%RH以上となるよう密閉容器に入れ、暗所25℃に静置した。所定の時間が経ったサンプルのうち残存しているファージ数(プラーク数)を数えるために、SCDLP培地用いてフィルム上の菌を洗い流して菌液を得た。得られた菌液を0.01MのPBSで希釈し、これをサンプル溶液とした。次いで、バクテリオファージQβを大腸菌に感染させた溶液、及びバクテリオファージφ6を緑膿菌に感染させた溶液を作製し、それら溶液とサンプル溶液を1mLずつ異なるLB軟寒天培地に加えた後、LB寒天培地に撒いた。所定の時間放置した後、プラーク数を記録し無加工品の試験片における感染価の対数値と加工品の試験片における感染価の対数値との差から抗ウイルス活性値を求めた。
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた抗菌抗ウイルス用材料は、La2O3からなる比較例1及びLa2(CO3)3からなる比較例3の抗菌抗ウイルス用材料に比べて抗菌活性及び抗ウイルス活性が共に高いものであることが分かる。
〔評価2〕
JIS Z 2911:2018の附属書Aにおける方法Aに従い防カビ試験を行った。試験片の準備は以下のように行った。
実施例1で得られた抗菌抗ウイルス用材料をエタノールに分散し、1mg/mLの分散液を調製した。0.9mLの分散液を5.0cm角のガラス基板上に塗布し120℃で乾燥させた。塗布及び乾燥を2回繰り返し加工品を準備した。前記加工品と、抗菌抗ウイルス用材料を塗布していない無加工品に対して乾熱殺菌器により80℃で15分間加熱処理を行い、複数の試験片を準備した。
前記防カビ試験の結果、加工品の試験片についてはカビ発育状態で1判定(菌糸の発育評価:肉眼ではカビの発育が認められないが、顕微鏡下では確認できる)であったのに対し、未加工品の試験片についてはカビ発育状態で4判定(菌糸はよく発育し,発育部分の面積は試料の全面積の50%以上)であったことから、実施例1で得られた抗菌抗ウイルス用材料に防カビ効果が認められた。
JIS Z 2911:2018の附属書Aにおける方法Aに従い防カビ試験を行った。試験片の準備は以下のように行った。
実施例1で得られた抗菌抗ウイルス用材料をエタノールに分散し、1mg/mLの分散液を調製した。0.9mLの分散液を5.0cm角のガラス基板上に塗布し120℃で乾燥させた。塗布及び乾燥を2回繰り返し加工品を準備した。前記加工品と、抗菌抗ウイルス用材料を塗布していない無加工品に対して乾熱殺菌器により80℃で15分間加熱処理を行い、複数の試験片を準備した。
前記防カビ試験の結果、加工品の試験片についてはカビ発育状態で1判定(菌糸の発育評価:肉眼ではカビの発育が認められないが、顕微鏡下では確認できる)であったのに対し、未加工品の試験片についてはカビ発育状態で4判定(菌糸はよく発育し,発育部分の面積は試料の全面積の50%以上)であったことから、実施例1で得られた抗菌抗ウイルス用材料に防カビ効果が認められた。
〔評価3〕
実施例及び比較例で得られた抗菌抗ウイルス用材料のアスペクト比を測定するため、走査型電子顕微鏡による外観観察を行った。観察には日立ハイテクノロジーズ製SU―7000を用い、WD=6mm、倍率20000倍として6.3μm×2.4μmの視野において、1視野当たりN=10個の粒子の測定値をもとに平均値を求めることで、平均アスペクト比を算出した。
実施例及び比較例で得られた抗菌抗ウイルス用材料のアスペクト比を測定するため、走査型電子顕微鏡による外観観察を行った。観察には日立ハイテクノロジーズ製SU―7000を用い、WD=6mm、倍率20000倍として6.3μm×2.4μmの視野において、1視野当たりN=10個の粒子の測定値をもとに平均値を求めることで、平均アスペクト比を算出した。
算出された平均アスペクト比は1.54(実施例1)、1.48(実施例2)、1.91(実施例3)、1.53(実施例4)であった。
Claims (11)
- 希土類水酸化物を含む抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料。
- 25℃における水に対する希土類イオンの溶解量が0.001mg/L以上、0.5g/L以下である請求項1に記載の抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料。
- 前記希土類水酸化物が、
希土類元素と、
水酸基と、
炭素元素、リン元素、硫黄元素、塩素元素、窒素元素及び酸素元素のうちの少なくとも一種と、
を含む化合物である、請求項1又は2に記載の抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料。 - BET比表面積Sが1m2/g以上50m2/g以下である粉体の形態である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料。
- 前記粉体及び分散剤を水に分散させてなる分散液に、180Wの超音波を5分間照射する第1処理を施し、次いで40Wの超音波を10分間照射する第2処理を施して得られた液を対象として、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定された累積体積50容量%における体積累積粒径をD50Tとし、
前記分散液に第1処理の超音波を照射する前の液を対象として測定された前記体積累積粒径をD50Iとしたとき、
D50T/D50Iが0.007以上0.95以下である、請求項4に記載の抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料。 - 前記希土類水酸化物の結晶子サイズRが10nm以上50nm以下である、請求項4又は5に記載の抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料。
- 前記BET比表面積S(m2/g)に対する前記結晶子サイズR(nm)の比であるR/Sが0.03以上7.0以下である、請求項6に記載の抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料。
- 前記体積累積粒径D50Tが100nm以上5000nm以下である、請求項5ないし7のいずれか一項に記載の抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料。
- 前記粉体及び分散剤を水に分散させてなる分散液に、180Wの超音波を5分間照射する第1処理を施し、次いで40Wの超音波を10分間照射する第2処理を施して得られた液を対象として、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定された累積体積90容量%における体積累積粒径をD90Tとしたとき、
前記体積累積粒径D90Tに対する前記体積累積粒径D50Tの比であるD50T/D90Tが0.03以上0.85以下である、請求項5ないし8のいずれか一項に記載の抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料。 - 前記粉体を構成する粒子がその表面に前記希土類水酸化物を有する、請求項4ないし9のいずれか一項に記載の抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料。
- 前記希土類水酸化物が、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm及びEuから選択される少なくとも一種の希土類元素の水酸化物である、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の抗菌抗ウイルス用又は防カビ用材料。
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