JP2023016004A - スパッタリング装置、成膜方法、及び物品の製造方法 - Google Patents

スパッタリング装置、成膜方法、及び物品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プラズマを長期的に安定して生起させること。【解決手段】スパッタリング装置100は、開口212を有するターゲット21が設置されるユニット本体20を備えている。また、スパッタリング装置100は、ターゲット21の開口212に対応する位置に配置され、互いに非接触状態でユニット本体20に配置されたアノード23及び金属部材24を備えている。金属部材24は、グラウンド電位又はフローティング電位とされる。【選択図】図1

Description

本開示は、スパッタリング技術に関する。
金属酸化物膜などの化合物膜の成膜方法として、スパッタリングが活用されている。特許文献1では、カソードであるターゲットと、ターゲットの中央に配置されたアノードと、を備えたスパッタリング装置が開示されている。アノードは、プラズマの生起空間である放電空間に臨んで設けられている。
特開2008-202079号公報
特許文献1に記載の構成では、アノードがプラズマの生起空間に臨んでいるため、アノードに化合物膜が形成される。アノード上の化合物膜の形成が進行すると、アノードに流れる電流が減少し、安定したプラズマが生起されなくなる虞がある。
本発明は、プラズマを長期的に安定して生起させることを目的とする。
本発明の一態様によれば、スパッタリング装置は、第1開口を有するターゲットが設置される設置部と、前記設置部における前記ターゲットの前記第1開口に対応する位置に配置され、互いに電気的に絶縁されたアノード及び金属部材と、を備え、前記金属部材は、グラウンド電位又はフローティング電位とされる、ことを特徴とする。
本発明によれば、プラズマを長期的に安定して生起させることができる。
第1実施形態に係るスパッタリング装置の説明図である。 第1実施形態に係るユニット及びターゲットの説明図である。 (a)は第1実施形態に係るターゲット、アノード及び金属部材の斜視図である。(b)は(a)のIIIB-IIIB線に沿って切断したターゲット、アノード及び金属部材の斜視図である。 (a)は第2実施形態に係るアノードの斜視図である。(b)は第3実施形態に係るアノードの斜視図である。(c)は(b)の矢印IVCの方向に視たアノードの側面図である。 第4実施形態に係るスパッタリング装置の説明図である。 比較例1のユニットにおけるターゲット及び金属部材の斜視図である。 実施例1と比較例1の実験結果を示すグラフである。 実施例2の実験結果を示すグラフである。 第5実施形態に係るスパッタリング装置の説明図である。 第5実施形態に係るユニット及びターゲットの説明図である。 (a)は第5実施形態に係るターゲット、アノード及び金属部材の斜視図である。(b)は(a)のXIB-XIB線に沿って切断したターゲット、アノード及び金属部材の斜視図である。 第6実施形態に係るターゲット、アノード及び金属部材の斜視図である。 第7実施形態に係るスパッタリング装置の説明図である。 (a)及び(b)は実施例3におけるアノードの模式図である。 実施例3の実験結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るスパッタリング装置100の説明図である。スパッタリング装置100は、第1実施形態ではマグネトロンスパッタリング装置である。スパッタリング装置100は、反応性スパッタリングにより、被成膜物である基材3の表面に、化合物膜、例えば絶縁性の薄膜を形成する。スパッタリング装置100によって基材3の表面に薄膜を形成することにより、最終品又は中間品等の物品が製造される。基材3は、例えばレンズ基体であり、形成される膜は、例えば反射防止膜である。スパッタリング装置100により、物品としてレンズが製造される。
スパッタリング装置100は、真空容器の一例であるチャンバー1と、カソードとして機能するターゲット21が設置されるユニット(カソード部)2と、基材3を保持するホルダ5と、ホルダ5を支持する支持機構4と、回転昇降機構6と、を備える。チャンバー1の内部には、成膜室R1となる空間が画成される。
ユニット2、ホルダ5及び支持機構4は、チャンバー1の内部、即ち成膜室R1に配置されている。ターゲット21は、成膜材料を含む平板状の部材である。
ユニット2は、設置部の一例であるユニット本体20を有する。ターゲット21は、ユニット本体20に固定して設置される。ユニット本体20は、ステンレス等の金属で形成された金属部品を複数備えている。
更に、スパッタリング装置100は、ユニット2に電力を供給する電源7と、成膜に必要なガスを供給するガス供給ライン8と、チャンバー1に接続された排気装置9と、を備える。更に、スパッタリング装置100は、スパッタリング装置100の各部の動作を制御する制御装置10と、プラズマ発光モニタ11と、を備える。
電源7は、直流電源であるのが好適であり、直流電源のうち、連続的に電流を供給する電源装置であってもよいし、パルス電流を供給する電源装置(直流パルス電源)であってもよい。
支持機構4は、チャンバー1の天板に設置され、基材3が天板と平行となるようにホルダ5を支持する機構である。このように、基材3がホルダ5を介して支持機構4に支持される構成を採用することにより、以下の作業が可能となる。即ち、チャンバー1の外部で予め基材3をホルダ5に保持させておき、ホルダ5ごと基材3を不図示のロードロックに配置する。不図示の搬送機構、例えばロボットアームにより、不図示の搬送口を介してロードロックからチャンバー1の内部に、ホルダ5ごと基材3を搬送し、支持機構4にホルダ5を取り付ける。以上のような作業が可能となることから、基材3を支持機構4に装着する作業が容易となる。なお、支持機構4は、ホルダ5を介して基材3を支持する機構としたが、これに限定されるものではなく、基材3を直接支持する機構であってもよい。
支持機構4は、回転昇降機構6と接続されており、回転軸Pを中心とした回転と、ホルダ5の基材支持面に対して垂直となる方向への昇降が可能である。なお、ホルダ5の支持動作を補助するため、回転昇降機構6に支持機構4を揺動させる動作を追加してもよい。
図2は、図1に示すユニット2及びターゲット21の説明図である。ユニット本体20は、ターゲット21が取り付けられる主面201を有する。ターゲット21においてスパッタされる面である表面211は、主面201と平行である。表面211に垂直でかつ表面211から支持機構4へ向かう方向、即ち主面201に垂直でかつ主面201から支持機構4へ向かう方向をZ1方向とする。Z1方向は、表面211の法線方向であり、主面201の法線方向である。Z1方向とは逆の方向をZ2方向とする。ユニット本体20は、主面201に対してZ2方向に凹む凹部202を有する。ターゲット21は、Z1,Z2方向に視て凹部202に対応する位置に形成された開口212を有する。開口212は、第1開口の一例である。即ち、ターゲット21は、Z1,Z2方向に視て開口212が凹部202と対応するように主面201上に配置される。開口212は、ターゲット21の中央部に形成されている。
ユニット2は、アノード23及び金属部材24を有する。アノード23及び金属部材24は、Z1,Z2方向に視てターゲット21の開口212に対応する位置(空間)に配置されている。アノード23及び金属部材24は、互いに電気的に絶縁された状態でユニット本体20に配置されている。ユニット本体20において、アノード23と金属部材24とが電気的に絶縁されていることで、アノード23と金属部材24とが短絡するのが防止され、アノード23と金属部材24とを互いに異なる電位に維持することができる。なお、第1実施形態では、カソードとなるターゲット21、アノード23、及び金属部材24が互いに非接触状態であり、ターゲット21、アノード23、及び金属部材24を互いに異なる電位に維持することができる。ここではそれぞれの部材を異なる電位に維持できるように非接触状態としているが、互いに電気的に絶縁された状態であればよく、非接触状態に限定されるものではない。
アノード23及び金属部材24は、いずれも金属、例えばステンレス等で形成されている。カソードとなるターゲット21の開口212に対応する位置にアノード23が配置されているため、生起されたプラズマがターゲット21の近傍から拡散するのが抑制され、ターゲット21の近傍に均一な分布のプラズマを生起させることができる。
ターゲット21とアノード23には、電源7が接続されている。具体的には、アノード23は、電源7の正極(+極)と電気的に接続され、ターゲット21は、電源7の負極(-極)と電気的に接続されている。これにより、ターゲット21とアノード23には、プラズマを生起させるための電力が供給される。
また、ユニット2は、ユニット本体20においてターゲット21の下部の位置に配置されたマグネット22を有する。マグネット22は、ターゲット21の表面211に沿う磁場Hがターゲット21の上から開口212、即ち凹部202に向かう方向に形成されるよう、極性方向を異ならせて配置された複数のマグネット部材で構成されている。マグネット22によって形成される磁場Hによって、プラズマ内の電子がターゲット21の表面211の近傍から拡散せずに表面211の近傍に留められ、低電圧で効率良くスパッタリングを行うことが可能となる。さらに、ターゲット21の表面211に沿う磁場Hがアノード23に収束するような向きとなっているため、アノード23へ電子を効率良く流入させることができる。
また、ユニット2は、ターゲット21の表面211の上に生起させたプラズマによってターゲット21の表面211の温度が所定温度を超えて上昇するのを抑制するため、ターゲット21を裏面から冷却する不図示の冷却構造を有する。
チャンバー1には、内壁を覆うように不図示の防着板が設置されている。不図示の防着板、基材3、ホルダ5、支持機構4、及びプラズマ発光モニタ11は、フローティング電位とされる。ガス供給ライン8は、第1実施形態ではグラウンド電位とされる。ただし、ガス供給ライン8は、グラウンド電位に限定されるものではなく、フローティング電位とされてもよい。
アノード23の電位をグラウンド電位よりも高くするために、アノード23と電源7とを接続している電線12には、グラウンド15に接続された抵抗器13が接続されている。このように、電源7の正極に接続されたアノード23が、抵抗器13を介してグラウンド15に電気的に接続されるので、アノード23の電位がグラウンド電位よりも高い正電位となる。
マグネット22により形成される磁場、即ち磁束密度や、スパッタ条件などにもよるが、抵抗器13の電気抵抗値Raは、40kΩ≦Ra≦220kΩとすることが好ましい。即ち、電気抵抗値Raは、40kΩ以上220kΩ以下であることが好ましい。また、電気抵抗値Raは、45kΩ以上105kΩ以下であることがより好ましい。
反応性スパッタリングを行う場合、ターゲット21は金属ターゲットである。ガス供給ライン8からはスパッタリングするためのプロセスガスと反応性ガスが供給される。プロセスガスと反応性ガスは、それぞれマスフローコントローラ81,82によって供給流量が調整され、混合された後にガス供給管83からチャンバー1の内部に供給される。なお、ガス供給管83は、プロセスガスと反応性ガスとを混合させる構造に限定されるものではなく、プロセスガスと反応性ガスとを個別に供給する構造であってもよい。
プロセスガスは、プラズマ内の電子との衝突し電離することによって正イオンとなり、金属ターゲットをスパッタリングすることができるガスであればよく、例えばアルゴン(Ar)ガスが好適である。反応性ガスは、反応性(酸化物)モード又は遷移モードで反応性スパッタリングを行う際に供給される。例えば、金属のターゲット21の表面211を酸化させながら反応性スパッタリングを行う際には、反応性ガスとして酸素(O)ガスが用いられる。
プラズマ発光モニタ11は、検出部111、光ファイバ112、及び分光器113を有する。検出部111は、プラズマの発光を検出するものであり、ターゲット21の表面211の近傍に設けられている。光ファイバ112は、検出部111で検出されたプラズマ光が伝搬する。分光器113は、光ファイバ112から取得したプラズマ光を線スペクトルに分光する。分光器113によって検出された所定波長の発光強度に関する情報は、制御装置10へ送信される。すなわち、制御装置10は、ターゲット21に関する波長の発光強度や、プロセスガスに関係する発光強度などを、分光器113によって取得する。
制御装置10では、取得した発光強度の値、もしくは取得した波長から選定した二つの波長の発光強度比の値を制御値とし、その制御値を安定させるように制御信号を取得間隔ごとに生成することができる。この制御信号が、ガス供給ライン8にある反応性ガスのマスフローコントローラ82へ送信されることによって、マスフローコントローラ82によって反応性ガスの流量が調整される。
更に、制御装置10は、プラズマ生起中における電圧の情報を電源7から取得することができ、電圧を制御値として、その制御値を安定させるように制御信号を取得間隔ごとに生成することが可能である。この制御信号が、反応性ガスのマスフローコントローラ82へ送信されることによって、マスフローコントローラ82によって反応性ガスの流量が調整される。
以上の制御装置10の制御アルゴリズムは、比例積分微分(PID)制御として実行される。また、制御装置10を介して、プラズマ生起中におけるプロセスガスの流量、回転昇降機構6によるホルダ5の回転速度と昇降方向の位置、排気装置9の排気速度なども設定することができる。
続いて、化合物膜を基材3の表面に形成する成膜方法、即ち物品の製造方法について説明する。基材3に化合物膜を成膜する際には、まず、ユニット2のユニット本体20にターゲット21を設置し、支持機構4に基材3を支持させておく。減圧された成膜室R1に、反応性ガスとして酸素(O)を供給し、プロセスガスとしてアルゴン(Ar)を供給する。そして、反応性スパッタリングにより、基材3の表面に、化合物膜として、金属酸化物を含む膜を形成する。
図3(a)は、第1実施形態に係るターゲット21、アノード23、及び金属部材24の斜視図である。図3(b)は、図3(a)のIIIB-IIIB線に沿って切断したターゲット21、アノード23、及び金属部材24の斜視図である。ターゲット21の中央部には、開口212が画成されている。ターゲット21は、Z1,Z2方向に視てオーバル形状に形成されている。ここで、仮にターゲットが角部を有する形状である場合、ターゲットの角部に絶縁性の金属酸化物膜が堆積すると、金属酸化物膜がイオン化して帯電することでアーキングが生じやすい。これに対し、第1実施形態では、ターゲット21の内周及び外周は、角部が排除された形状となっている。ターゲット21をかかる形状としたことにより、絶縁性の金属酸化物膜が形成されることに起因して生起されるアーキングを防止することができる。なお、ターゲット21は、オーバル形状とされているが、これに限定するものではなく、例えばリング形状であってもよい。
アノード23は、板状の金属であり、ユニット本体20の凹部202に配置されている。金属部材24は、アノード23及びターゲット21とは異なる電位となるようにアノード23及びターゲット21とは電気的に絶縁されている。具体的には、金属部材24は、グラウンド電位又はフローティング電位とされる。金属部材24は、アノード23とZ1,Z2方向において対向する位置に配置されたシールド部241を含む。アノード23と、金属部材24、即ちシールド部241とは、互いにZ1,Z2方向に間隔をあけて配置されており、互いに電気的に絶縁されており、互いに異なる電位に維持される。即ち、アノード23は、アノード電位、即ち正電位に維持され、金属部材24は、アノード電位よりも低いグラウンド電位又はフローティング電位に維持される。なお、金属部材24がフローティング電位の場合、金属部材24にはプラズマ中の電子が供給されるため、グラウンド電位よりも低い負の電位となる。
金属部材24のシールド部241が、アノード23に対してZ1方向に離間した位置にあるため、アノード23はシールド部241によってシールドされ、アノード23に絶縁性の金属酸化物膜が形成されるのが抑制される。これにより、アノード23の電位、即ちアノード電位が消失するのが防止される。即ち、アノード23に流れる電流が減少するのが防止される。このように、アノード23に金属酸化物膜が形成されるのが防止されるので、プラズマを長期的に安定して生起させることができる。
第1実施形態では、シールド部241は、少なくとも1つの第2開口として、複数(例えば2つ)の開口242を有する。各開口242は、開口212よりも小さい。これにより、カソードであるターゲット21の近傍に生起されたプラズマ中の電子が、シールド部241の各開口242を通じてアノード23に流れやすくなる。
図3(a)において、各開口242は、半円形状に形成されているが、この形状に限定するものではない。各開口242は、電子が通過可能な形状であればどのような形状であってもよく、例えば円形状又は長方形状であってもよい。マグネット22によって形成される磁場(磁束密度)やスパッタ条件などにもよるが、各開口242を半円状もしくは円状とする場合、各開口242の半径を7.5mm以上とすることが好ましい。また、開口242を長方形状とする場合、各開口242の短辺を15mm以上とすることが好ましい。
第1実施形態では、シールド部241は、Z1,Z2方向において、ターゲット21と同じ高さの位置に配置されている。これにより、アノード23は、シールド部241によって効果的にシールドされ、アノード23に金属酸化物膜が形成されるのを効果的に防止することができる。
以上、第1実施形態によれば、金属部材24によってアノード23がシールドされるので、アノード23に化合物膜が形成されるのが防止される。これにより、プラズマを長期的に安定して生起させることができる。
なお、電源7は、第1実施形態においては直流電源であるが、交流電源であってもよい。この場合、交流電源は、アノード23とターゲット21とに接続され、アノード23とターゲット21とに交流電力が供給される。そして、この場合、抵抗器13は省略可能である。
[第2実施形態]
上記第1実施形態のアノード23は、図3(b)に示すように板状とされているが、この構造に限定されるものではない。図4(a)は、第2実施形態に係るアノード23Aの斜視図である。第2実施形態におけるスパッタリング装置のアノード23Aが、第1実施形態におけるスパッタリング装置100のアノード23と構成が異なる。第2実施形態におけるスパッタリング装置において、アノード23A以外の構成は、第1実施形態におけるスパッタリング装置100と同様であるため、説明を省略する。
図4(a)に示すアノード23Aは、図1及び図2に示すユニット本体20の凹部202に配置される。図4(a)に示すように、第2実施形態のアノード23Aは、基部231Aと、基部231Aに対してZ1方向に突出する突出部232Aと、を有する。突出部232Aは、例えば角柱状に形成されている。アノード23Aは、突出部232AのZ1方向の先端233Aが、図1及び図2に示すターゲット21の表面211よりもZ1方向に突出しないように配置されている。なお、先端233Aは、例えば平面である。また、アノード23Aは、突出部232AのZ1方向の先端233Aが、ユニット本体20の主面201よりもZ1方向に突出しないように配置されている。そして、アノード23Aは、金属部材24のシールド部241と接触しないように、Z1,Z2方向において金属部材24のシールド部241と間隔をあけて対向する。第2実施形態では、アノード23Aの突出部232Aの先端233Aが、金属部材24のシールド部241と接触しないように、Z1,Z2方向において金属部材24のシールド部241と間隔をあけて対向する。
また、突出部232Aの側面は、凹部202の側面と間隔をあけて対向する。突出部232Aの側面と凹部202の側面との離間距離は、磁場やスパッタ条件などにもよるが、突出部232Aの側面に垂直な方向に8mm以上とすることが好ましい。かかる配置にすることによって、突出部232Aの側面と凹部202の側面との間の空間に電子が流れやすくなる。これにより、突出部232Aを有するアノード23Aは、凹部202の側面に囲まれていても、プラズマ内の電子を効率良く回収することができる。
[第3実施形態]
図4(b)は、第3実施形態に係るアノード23Bの斜視図である。図4(c)は、図4(b)の矢印IVCの方向に視たアノード23Bの側面図である。第3実施形態におけるスパッタリング装置のアノード23Bが、第1実施形態におけるスパッタリング装置100のアノード23と構成が異なる。第3実施形態におけるスパッタリング装置において、アノード23B以外の構成は、第1実施形態におけるスパッタリング装置100と同様であるため、説明を省略する。
図4(b)及び図4(c)に示す第3実施形態のアノード23Bは、Z1,Z2方向に間隔をあけて配置された複数の金属板232Bと、複数の金属板232Bを支持する金属製の支持部231Bと、を含む。複数の金属板232Bのうち互いに隣り合う2つの金属板232BのZ1,Z2方向の間隔DBは、2mm以上10mm以下であることが好ましい。これにより、複数の金属板232Bの間には、絶縁性の酸化物薄膜が形成されにくくなる。よって、アノード23Bは、長期にわたりアノード電位を維持することが可能である。
[第4実施形態]
図5は、第4実施形態に係るスパッタリング装置100Cの説明図である。なお、第4実施形態のスパッタリング装置100Cにおいて、第1実施形態のスパッタリング装置100と同様の構成については同一符号を用いて詳細な説明は省略する。
スパッタリング装置100Cは、第4実施形態ではマグネトロンスパッタリング装置である。スパッタリング装置100Cは、反応性スパッタリングにより、被成膜物である基材3の表面に、化合物膜、例えば絶縁性の薄膜を形成する。スパッタリング装置100Cによって基材3の表面に薄膜を形成することにより、最終品又は中間品等の物品が製造される。基材3は、例えばレンズ基体であり、形成される膜は、例えば複数種類の金属酸化物層からなる積層膜である、反射防止膜である。スパッタリング装置100Cにより、物品としてレンズが製造される。
スパッタリング装置100Cは、チャンバー1と、複数のユニット2~2を含むモジュール14と、基材3を保持するホルダ5と、支持機構4と、回転昇降機構6と、を備える。チャンバー1の内部には、成膜室R1となる空間が画成される。モジュール14、ホルダ5及び支持機構4は、チャンバー1の内部、即ち成膜室R1に配置されている。各ユニット2~2は、第1実施形態で説明したユニット2と同様の構成であり、図5において各ユニット2~2の構成については図示を省略する。ユニット2~2には、それぞれターゲット21~21を設置することが可能である。各ターゲット21~21は、金属ターゲットである。ターゲット21~21のそれぞれに採用される金属の種類は、形成しようとする金属酸化物層の種類に応じて選択すればよい。したがって、ターゲット21~21は、例えば全て同じ金属であってもよいし、全て異なる金属であってもよい。更に、スパッタリング装置100Cは、ガス供給ライン8と、排気装置9と、スパッタリング装置100Cの各部の動作を制御する制御装置10と、を備える。
また、図5において図示は省略するが、スパッタリング装置100Cは、図1に示すプラズマ発光モニタ11、電線12、及び抵抗器13を、ユニット2~2ごとに備えている。更に、図5において図示は省略するが、スパッタリング装置100Cは、図1に示す電源7を備える。電源7は、不図示の切替え器により、複数のユニット2~2のうちの1つに選択的に接続可能に構成されている。これにより、電源7は、複数のユニット2~2のうち選択されたユニットに対応するターゲットに、プラズマを生起させるための電力を供給させることができる。
プラズマ生起中の電圧の情報は、制御装置10により電源7から取得される。さらに、ユニット2~2ごとに設けられたプラズマ発光モニタ11は、制御装置10に接続されている。プラズマ生起中のユニットのプラズマ発光モニタにより検出された、プラズマに含まれる所定波長の発光強度は、制御装置10により取得される。制御装置10では、電圧もしくは発光強度による値を制御値とし、その制御値を安定させるように制御信号を取得間隔ごとに生成することができる。この制御信号が、ガス供給ライン8にある反応性ガスのマスフローコントローラ82へ送信されることによって、マスフローコントローラ82によって反応性ガスの流量が調整される。
モジュール14は、回転軸Oを中心に回転可能にチャンバー1に支持された多角柱形状のモジュールである。モジュール14における多角柱の各側面の一部は、各ユニットに設置されるターゲットの表面である。複数のユニット2~2は、回転軸Oを中心とする周方向D1に配列されており、一体となって回転軸Oを中心に周方向D1に回転可能である。
モジュール14は、不図示の駆動機構によって回転軸Oを中心に回転駆動される。モジュール14を回転させることにより、複数のユニット2~2のうちいずれかのユニットを基材3に対向させることができる。また、不図示の駆動機構によって基材3に対するモジュール14の回転位置を調整することにより、スパッタリングされた粒子の、基材3に対する入射角を調整することができ、基材3に形成される膜の膜厚分布を調整することができる。
また、モジュール14は、不図示の駆動機構によって並進方向D2に並進駆動される。不図示の駆動機構によって基材3に対するモジュール14の並進位置を調整することにより、スパッタリングされた粒子の、基材3に対する入射角を調整することができ、基材3に形成される膜の膜厚分布を調整することができる。
なお、図5においては、モジュール14は四角柱形状であり、モジュール14の4面に4つのユニット2~2が配置される場合について説明したが、これに限定するものではない。4面のうちいずれかの面にユニットが配置されていればよく、4面全てにユニットが配置されることに限定されない。更に、モジュール14は、多角形状であればよく、例えば三角柱形状であってもよい。
続いて、積層膜を基材3の表面に形成する成膜方法、即ち物品の製造方法について説明する。まず、ターゲット21をスパッタリングして第1層を形成する方法について説明する。モジュール14の不図示の駆動機構と回転昇降機構6によりターゲット21と基材3とを駆動し、ターゲット21と基材3とを所定の位置に調整する。次に、ガス供給ライン8、制御装置10、及びプラズマ発光モニタ11により、プラズマの発光強度又は発光強度比、及びプラズマ生起中の電圧を制御し、基材3に、ターゲット21の金属を含む金属酸化物膜を形成する。基材3に形成された第1層の膜が所定の厚さに達したら、成膜を終了させる。
次に、ターゲット21をスパッタリングして第1層上に第2層を形成する。ターゲット21は、ターゲット21とは異なる金属材料とする。この場合も、第1層と同様の手順で成膜を行えばよい。第3層以降の層についても、同様の手順で成膜する。以上の成膜方法により、基材3上に積層膜を形成することができる。
以上、各ユニット2~2が、第1実施形態のユニット2と同様の構成であるため、基材3の形状に応じてモジュール14の回転位置又は並進位置が調整されても、各ユニット2~2におけるプラズマ分布の変動が抑制される。また、各ユニット2~2におけるアノード23に薄膜が形成されるのが防止されるので、プラズマを長期的に安定して生起させることができる。
(実施例1及び比較例1)
第2実施形態に対応する実施例1のスパッタリング装置でプラズマを生起させた場合と、比較例1のスパッタリング装置でプラズマを生起させた場合について、プラズマの安定性を実験により検証した。
実施例1のスパッタリング装置のユニット(カソード部)は、図1に示すスパッタリング装置100のユニット2において、アノード23の代わりに図4(b)に示すアノード23Aを用いた場合に相当する。比較例1のスパッタリング装置は、ユニット(カソード部)の構成が、実施例1のスパッタリング装置のユニット(カソード部)の構成と異なる。比較例1におけるユニット以外の構成は、実施例1と同様である。
以下、比較例1のスパッタリング装置のユニット(カソード部)について説明する。図6は、比較例1のユニットにおけるターゲット21X及び金属部材24Xの斜視図である。ターゲット21Xの角部は、R面取りが施されている。金属部材24Xは、グラウンド電位とされている。比較例1において、金属部材24Xは、アノードとして機能し、ターゲット21Xがカソードとして機能する。アノードとして機能する金属部材24Xは、ターゲット21Xの外周に配置され、また、シールドされずに露出されている。
実施例1のスパッタリング装置と、比較例1のスパッタリング装置のスパッタ条件について説明する。ターゲット21,21Xの材料はハフニウム(Hf)とした。プロセスガスにはArガス、反応性ガスにはOガスを採用した。Arガス及びOガスは、チャンバー1の内部の到達圧力が5×10-4Pa未満になってから、チャンバー1の内部に流すようにした。Arガスは、Oガスをチャンバー1の内部に流していない状態で、チャンバー1の内部の圧力が約0.2Paとなる流量に調整した。各ターゲット21,21Xへ電力を供給する電源7には、直流電源のうち直流パルス電源を採用した。各ターゲット21,21Xの表面の電力密度が約0.12W/mmとなるように電力を調整した。プラズマ発光モニタ11により、Hfに関係する波長とArに関係する波長の発光強度を取得した。両者の強度比が設定した目標値となるように、制御装置10によりOガスの流量を取得間隔ごとに調整した。
図7は、実施例1と比較例1の実験結果を示すグラフである。図7には、1バッチあたりのプラズマ生起時間を実施例1と比較例1とで同じとしたときの、各バッチのプラズマ電流の変化率を示す。1バッチ目の電流をI、nバッチ目の電流をIとすると、プラズマ電流の変化率は、(I-I)/Iで表される。プラズマ電流は、アノードとカソードとの間に流れる電流である。
図7に示すように、比較例1のスパッタリング装置では、12バッチ目でプラズマ電流の変化率が約-2%に達するのに対して、実施例1のスパッタリング装置では、48バッチ目においてもプラズマ電流の変化率が約0.6%に抑制されている。実施例1においてこのような結果が得られたのは、グラウンド電位又はフローティング電位とされる金属部材24によってシールドされることにより、アノード23Aに金属酸化物膜(HfO)が形成されるのが抑制されたためと考えられる。また、実施例1においてこのような結果が得られたのは、アノード23Aがカソードとなるターゲット21の開口212に対応する位置に配置されたことにより、プラズマ内の電子がアノード23Aへ効率良く回収されたためと考えられる。
このように、実施例1においては、バッチ数を重ねても、長期間に亘ってプラズマの電流が安定することから、長期間に亘ってプラズマが安定して生起されることが確認された。
(実施例2)
実施例2では、実施例1で用いたスパッタリング装置と同様の構成のスパッタリング装置を用いた。実施例2のスパッタリング装置におけるターゲット21と基材3との距離(以下、「TS」)に対するプラズマの安定性を実験により検証した。
ターゲット21の材料はハフニウム(Hf)とした。プロセスガスにはArガス、反応性ガスにはOガスを採用した。Arガス及びOガスは、チャンバー1の内部の到達圧力が5×10-4Pa未満になってから、チャンバー1の内部に流すようにした。Arガスは、Oガスをチャンバー1の内部に流していない状態で、チャンバー1の内部の圧力が約0.2Paとなる流量に調整した。ターゲット21へ電力を供給する電源7には、直流電源のうち直流パルス電源を採用した。ターゲット21の表面の電力密度が約0.12W/mmとなるように電力を調整した。
図8は、実施例2の実験結果を示すグラフである。図8には、Oガス流量を0sccm~200sccmで変化させたときの、TS300mmに対するTS430mmのプラズマの電流比を示す。図8には、抵抗器13の電気抵抗値Raを0Ω、45kΩ、及び105kΩとした場合について図示している。抵抗器13の電気抵抗値Raを0Ωとした場合とは、抵抗器13を省略し、アノード23Aとグラウンド15とを短絡した場合を示している。
電気抵抗値Raが0Ω、即ち抵抗器13が無く、アノード23Aがグラウンド電位となる場合は、Oガスの流量に対する電流比の変動幅が約4%となる。一方、抵抗器13の電気抵抗値Raが45kΩ又は105kΩとし、アノード23Aの電位をグラウンド電位よりも高くした場合、Oガスの流量に対する電流比の変動幅が0.9%~1.8%となる。よって、アノード23Aの電位をグラウンド電位よりも高くした場合の変動幅は、アノード23Aの電位をグラウンド電位とした場合の変動幅の1/4~1/2程度に小さくなる。つまり、生起されるプラズマの電流は、抵抗器13が無い場合にはTSによって変動してしまうのに対し、抵抗器13が設置される場合にはTSによらず略一定となる。
ここで、アノード23Aは、プラズマが生起されているターゲット21の開口212に対応する位置に、金属部材24を介して配置される。そして、金属部材24は、グラウンド電位又はフローティング電位とされ、アノード23Aは、グラウンド電位及びフローティング電位よりも高い電位とされる。なお、金属部材24がフローティング電位の場合、金属部材24にはプラズマ中の電子が供給されるため、グラウンド電位よりも低い負の電位となる。
アノード23Aが金属部材24の電位、即ちグラウンド電位又はフローティング電位よりも高い電位とされることによって電流比の変動幅が小さくなるのは、TSによるターゲット周囲の電場の変化が小さくなったためと考えられる。電場の変化が小さいと電子の拡散損失量の変化も小さくなるので、その結果、プラズマの電流の変化、即ち電子密度の変化も小さくなった、と考えられる。
このように、実施例2では、抵抗器13の電気抵抗値Raを、アノード電位がグラウンド電位よりも高くなるように設定した。これにより、TSによらず安定してプラズマを生起させることができる結果が得られた。
[第5実施形態]
図9は、第5実施形態に係るスパッタリング装置100Dの説明図である。なお、第5実施形態のスパッタリング装置100Dにおいて、第1実施形態のスパッタリング装置100と同様の構成については同一符号を用いて詳細な説明は省略する。
スパッタリング装置100Dは、第1実施形態のユニット2の代わりに、ユニット2とは異なるユニット(カソード部)2Dを備える。また、スパッタリング装置100Dは、第1実施形態と同様、チャンバー1、基材3を保持するホルダ5、支持機構4、及び回転昇降機構6を備える。更に、スパッタリング装置100Dは、第1実施形態と同様、ユニット2Dに電力を供給する電源7、ガス供給ライン8、排気装置9、制御装置10、及びプラズマ発光モニタ11を備える。
ユニット2Dには、カソードとして機能するターゲット21が設置される。チャンバー1の内部には、成膜室R1となる空間が画成される。ユニット2D、ホルダ5及び支持機構4は、チャンバー1の内部、即ち成膜室R1に配置されている。ユニット2Dは、設置部の一例である、第1実施形態と同様の構成のユニット本体20を有する。
図10は、図9に示すユニット2D及びターゲット21の説明図である。ユニット本体20は、ターゲット21が取り付けられる主面201を有する。ターゲット21においてスパッタされる面である表面211は、主面201と平行である。ユニット本体20は、主面201に対してZ2方向に凹む凹部202を有する。ターゲット21は、Z1,Z2方向に視て凹部202に対応する位置に形成された開口212を有する。開口212は、第1開口の一例である。即ち、ターゲット21は、Z1,Z2方向に視て開口212が凹部202と対応するように主面201上に配置される。開口212は、ターゲット21の中央部に形成されている。
ユニット2Dは、Z1,Z2方向に視てターゲット21の開口212に対応する位置(空間)に配置され、互いに電気的に絶縁された状態でユニット本体20に配置されたアノード23D及び金属部材24Dを有する。ユニット本体20において、アノード23Dと金属部材24Dとが電気的に絶縁されることで、アノード23Dと金属部材24Dとが短絡するのが防止され、アノード23Dと金属部材24Dとを互いに異なる電位に維持することができる。なお、第5実施形態では、カソードとなるターゲット21、アノード23D、及び金属部材24Dが互いに電気的に絶縁されており、ターゲット21、アノード23D、及び金属部材24Dを互いに異なる電位に維持することができる。
アノード23D及び金属部材24Dは、いずれも金属、例えばステンレス等で形成されている。カソードとなるターゲット21の開口212に対応する位置にアノード23Dが配置されているため、生起されたプラズマがターゲット21の近傍から拡散するのが抑制され、ターゲット21の近傍に均一な分布のプラズマを生起させることができる。
ターゲット21とアノード23Dには、電源7が接続されている。具体的には、アノード23Dは、電源7の正極(+極)と電気的に接続され、ターゲット21は、電源7の負極(-極)と電気的に接続されている。これにより、ターゲット21とアノード23Dには、プラズマを生起させるための電力が供給される。
また、ユニット2Dは、ユニット本体20においてターゲット21の下部の位置に配置されたマグネット22を有する。マグネット22は、ターゲット21の表面211に沿う磁場Hがターゲット21の上から開口212、即ち凹部202に向かう方向に形成されるよう、極性方向を異ならせて配置された複数のマグネット部材で構成されている。マグネット22によって形成される磁場Hによって、プラズマ内の電子がターゲット21の表面211の近傍から拡散せずに表面211の近傍に留められ、低電圧で効率良くスパッタリングを行うことが可能となる。さらに、ターゲット21の表面211に沿う磁場Hがアノード23Dに収束するような向きとなっているため、アノード23Dへ電子を効率良く流入させることができる。
また、ユニット2Dは、ターゲット21の表面211の上に生起させたプラズマによってターゲット21の表面211の温度が所定温度を超えて上昇するのを抑制するため、ターゲット21を裏面から冷却する不図示の冷却構造を有する。
チャンバー1には、内壁を覆うように不図示の防着板が設置されている。不図示の防着板、基材3、ホルダ5、支持機構4、及びプラズマ発光モニタ11は、フローティング電位とされる。ガス供給ライン8は、第5実施形態ではグラウンド電位とされる。ただし、ガス供給ライン8は、グラウンド電位に限定されるものではなく、フローティング電位とされてもよい。
アノード23Dの電位をグラウンド電位よりも高くするために、アノード23Dと電源7とを接続している電線12には、グラウンド15に接続された抵抗器13が接続されている。このように、電源7の正極に接続されたアノード23Dが、抵抗器13を介してグラウンド15に電気的に接続されるので、アノード23Dの電位がグラウンド電位よりも高い正電位となる。
反応性スパッタリングを行う場合、ターゲット21は金属ターゲットである。ガス供給ライン8からはスパッタリングするためのプロセスガスと反応性ガスが供給される。プロセスガスと反応性ガスは、それぞれマスフローコントローラ81,82によって供給流量が調整され、混合された後にガス供給管83からチャンバー1の内部に供給される。なお、ガス供給管83は、プロセスガスと反応性ガスとを混合させる構造に限定されるものではなく、プロセスガスと反応性ガスとを個別に供給する構造であってもよい。
プロセスガスは、プラズマ内の電子との衝突し電離することによって正イオンとなり、金属ターゲットをスパッタリングすることができるガスであればよく、例えばアルゴン(Ar)ガスが好適である。反応性ガスは、反応性(酸化物)モード又は遷移モードで反応性スパッタリングを行う際に供給される。例えば、金属のターゲット21の表面211を酸化させながら反応性スパッタリングを行う際には、反応性ガスとして酸素(O)ガスが用いられる。
化合物膜を基材3の表面に形成する成膜方法、即ち物品の製造方法について説明する。基材3に化合物膜を成膜する際には、まず、ユニット2Dのユニット本体20にターゲット21を設置し、支持機構4に基材3を支持させておく。減圧された成膜室R1に、反応性ガスとして酸素(O)を供給し、プロセスガスとしてアルゴン(Ar)を供給する。そして、反応性スパッタリングにより、基材3の表面に、化合物膜として、金属酸化物を含む膜を形成する。
図11(a)は、第5実施形態に係るターゲット21、アノード23D、及び金属部材24Dの斜視図である。図11(b)は、図11(a)のXIB-XIB線に沿って切断したターゲット21、アノード23D、及び金属部材24Dの斜視図である。ターゲット21の中央部には、開口212が画成されている。ターゲット21は、Z1,Z2方向に視てオーバル形状に形成されている。ここで、仮にターゲットが角部を有する形状である場合、ターゲットの角部に絶縁性の金属酸化物膜が堆積すると、金属酸化物膜がイオン化して帯電することでアーキングが生じやすい。これに対し、第5実施形態では、ターゲット21の内周及び外周は、角部が排除された形状となっている。ターゲット21をかかる形状としたことにより、絶縁性の金属酸化物膜が形成されることに起因して生起されるアーキングを防止することができる。なお、ターゲット21は、オーバル形状とされているが、これに限定するものではなく、例えばリング形状であってもよい。
アノード23D及び金属部材24Dは、ユニット本体20の凹部202に配置されている。アノード23Dは、凹部202においてユニット本体20に支持される基部231Dと、基部231Dに対してZ1方向に突出する突出部232Dと、を有する。アノード23Dは、突出部232Dの先端233Dがターゲット21の表面211よりもZ1方向に突出しないように凹部202に配置されている。なお、先端233Dは、例えば平面である。突出部232Dは、柱形状、例えば角柱状に形成されている。突出部232Dが角柱状である場合、電界集中、即ち電子の局所流入を抑制するため、角部がR面取りされているのが好ましい。なお、突出部232Dは、角柱状に限定するものではなく、円柱状であってもよい。
金属部材24Dは、突出部232Dの側面2321Dと対向するように配置された側壁部241Dを含む。即ち、側壁部241Dは、突出部232Dの側面2321Dと対向する内側面2411Dを有する。金属部材24Dは、アノード23D及びターゲット21とは異なる電位となるようにアノード23D及びターゲット21とは電気的に絶縁状態とされる。具体的には、金属部材24Dは、グラウンド電位又はフローティング電位とされる。なお、金属部材24Dがフローティング電位の場合、金属部材24Dにはプラズマ中の電子が供給されるため、グラウンド電位よりも低い負の電位となる。
アノード23Dは、金属部材24Dと接触しないように、凹部202において金属部材24D、即ち側壁部241Dと間隔をあけて配置されている。具体的には、アノード23Dの突出部232Dと金属部材24Dの側壁部241DとがZ1方向と直交するX方向及びY方向において間隔をあけて対向している。なお、X方向は、例えばターゲット21の長径方向、Y方向は、例えばX方向と直交する方向であって、ターゲット21の短径方向である。
また、アノード23Dの突出部232Dの側面2321Dと金属部材24Dの側壁部241Dの内側面2411Dは、互いに平行となっているのが好ましいが、これに限定されるものではない。
また、アノード23Dの側面2321Dと金属部材24Dの内側面2411Dとの離間距離は、プラズマシースの厚さよりも大きくなるようにするのが好ましい。プラズマシースの厚さは、磁場やスパッタ条件などで変化するが、離間距離のうちの最短距離は、ターゲット21の表面211に平行なXY方向において、8mm以上とすることが好ましい。かかる構成とすることにより、プラズマ中の電子は、突出部232Dと側壁部241Dとの間に形成された空間R2に向かって流れやすくなる。
さらに、この空間R2には、アノード23Dの側面2321Dから金属部材24Dの内側面2411Dへの向きの電場Eが形成される。図11(a)及び図11(b)には、電場Eを破線矢印で図示している。アノード23Dの側面2321Dと金属部材24Dの内側面2411Dとの間の空間R2に流れてきた電子は、電場Eによってアノード23Dに向かって流れ、アノード23Dによって効率よく回収される。
また、アノード23Dの側面2321Dと金属部材24Dの内側面2411Dとの間の空間R2は、電子の密度が高くなる。この電子密度の高い空間R2には、自由行程が離間距離よりも短い、反応性ガスやスパッタリングされたターゲット21の粒子も流れてくることになる。反応性ガスにOガスを採用する場合、Oガスは電子親和力が大きく、酸素ガスの負イオンとなりやすいので、空間R2にて効率よく酸素ガスの負イオンを生成することができる。
酸素ガスの負イオンは、空間R2における電場Eにより、アノード23Dの側面2321Dに向かって加速される。即ち、酸素ガスの負イオンは、負電荷であるため、電場Eの向きとは逆の向きに加速される。酸素ガスの負イオンの運動エネルギーを、酸化物薄膜の原子間結合エネルギー、即ちスパッタリング閾値エネルギーより大きくすると、酸素ガスの負イオンにより、アノード23Dの側面2321Dに形成された酸化物薄膜が物理的にエッチングされる。アノード23Dの側面2321Dにおいて酸化物薄膜が物理的にエッチングされる、即ちスパッタリングされることにより、アノード23Dの側面2321Dにおいて酸化物薄膜が堆積するのを防止することができる。これにより、アノード23Dの電位、即ちアノード電位が消失するのが防止される。即ち、アノード23Dに流れる電流が減少するのが防止される。このように、アノード23Dに金属酸化物膜が形成されるのが防止されるので、プラズマを長期的に安定して生起させることができる。
反応性ガスの負イオンの運動エネルギーの大きさは、電場Eの大きさ、即ちアノード23Dの電位で決定される。アノード23Dの電位は、抵抗器13の電気抵抗値Raで調整することができる。酸化物薄膜の原子間結合エネルギーは、ターゲット21の材料により異なるので、酸化物薄膜を物理的エッチングするための負イオンの運動エネルギーは、抵抗器13の電気抵抗値Raにより調整するとよい。
以上に説明したように、第5実施形態では、ターゲット21の開口212に対応する空間R2に、グラウンド電位よりも高い電位のアノード23Dと、グラウンド電位又はフローティング電位とした金属部材24Dとが配置されているコンパクトな構成である。かかる構成によってスパッタリング装置100Dの小型化が図れるとともに、反応性スパッタリングにおけるアノード電位の消失を防止することができるため、成膜を長期間に亘って安定して行うことが可能となる。
また、第5実施形態のスパッタリング装置100Dは、成膜に必要なガスを供給するガス供給ライン8Dを備えるのが好ましい。ガス供給ライン8Dは、スパッタリングするためのプロセスガスと反応性ガスをチャンバー1の内部、即ち成膜室R1に供給するガス供給部の一例であるガス供給管83Dを含む。プロセスガスと反応性ガスは、それぞれマスフローコントローラ81D,82Dによって供給流量が調整され、混合された後にガス供給管83Dからチャンバー1の内部に供給される。
ガス供給管83Dは、チャンバー1の内部に開口する供給口831Dを含む。供給口831Dは、例えば図11(b)に示すように、基部231Dに形成された貫通孔と接続されており、凹部202に位置している。これにより、直接、空間R2に反応性ガスを供給することができ、空間R2における反応性ガスの数密度を調整することができる。なお、ガス供給ライン8Dは、プロセスガスと反応性ガスとを混合させる構造に限定されるものではなく、プロセスガスと反応性ガスとを個別に供給する構造であってもよい。また、供給口831Dは、アノード23Dではなく金属部材24Dに形成された貫通孔と接続するようにしてもよい。
ガス供給ライン8から供給される反応性ガスが少量となる、又は反応性ガスの負イオンの生成が少量であると推測される場合には、ガス供給ライン8Dにより空間R2に反応性ガスを補填し、反応性ガスの数密度を高くすることができる。これにより、アノード23Dに向かって加速される反応性ガスの負イオンのフラックス(流束)を高くすることができるので、アノード23Dの側面2321Dに堆積した酸化物薄膜の物理的エッチングを促進させることが可能となる。
また、反応性ガスの負イオンによる物理的エッチングが過剰であると推測される場合には、ガス供給ライン8Dにより空間R2にプロセスガスを補填し、反応性ガスの数密度を低くすることができる。これにより、アノード23Dへ加速される反応性ガスの負イオンのフラックスを低くすることができるため、アノード23Dの側面2321Dにおける酸化物薄膜の物理的エッチングを効率よく抑制させることが可能となる。
また、物理的エッチングを抑制させるために、抵抗器13の電気抵抗値Raを小さくしてもよい。これにより、負イオンを加速する電場Eの大きさが小さくなり、負イオンの運動エネルギーを小さくすることができるため、物理的エッチングを効率よく抑制させることが可能となる。
なお、電源7は、第5実施形態においては直流電源であるが、交流電源であってもよい。この場合、交流電源は、アノード23Dとターゲット21とに接続され、アノード23Dとターゲット21とに交流電力が供給される。そして、この場合、抵抗器13は省略可能である。
また、スパッタリング装置100Dが、ガス供給ライン8及びガス供給ライン8Dを備える場合について説明したが、これに限定するものではなく、ガス供給ライン8を省略してもよい。
[第6実施形態]
次に、第6実施形態に係る金属部材について説明する。図12は、第6実施形態に係るターゲット21、アノード23D、及び金属部材24Eの斜視図である。第6実施形態のスパッタリング装置は、第5実施形態のスパッタリング装置100Dにおいて金属部材24Dを金属部材24Eに代えたものである。金属部材24Eは、第5実施形態で説明した側壁部241Dと、第1実施形態で説明したシールド部241と、を有する。なお、ターゲット21は、第1実施形態で説明した通りの構成であり、アノード23Dは、第5実施形態で説明した通りの構成である。
シールド部241は、アノード23DとZ1,Z2方向において対向する位置に配置されている。アノード23Dの突出部232Dの先端233Dと、金属部材24Eのシールド部241とは、互いにZ1,Z2方向に間隔をあけて配置される。これにより、アノード23Dと金属部材24Eとは互いに電気的に絶縁された状態であり、互いに異なる電位に維持される。即ち、アノード23Dは、アノード電位、即ち正電位に維持され、金属部材24Eは、アノード電位よりも低いグラウンド電位又はフローティング電位に維持される。
金属部材24Eのシールド部241が、アノード23Dに対してZ1方向に離間した位置にあるため、アノード23Dはシールド部241によってシールドされ、アノード23Dに絶縁性の金属酸化物膜が形成されるのが抑制される。これにより、アノード23Dの電位、即ちアノード電位が消失するのが防止される。即ち、アノード23Dに流れる電流が減少するのが防止される。このように、アノード23Dに金属酸化物膜が形成されるのが防止されるので、プラズマを長期的に安定して生起させることができる。
また、アノード23Dの突出部232Dの側面に金属酸化物膜が形成されても、金属酸化物膜が酸素ガスの負イオンにより物理的エッチングされる。これにより、アノード23Dに金属酸化物膜が形成されるのが防止され、プラズマを長期的に安定して生起させることができる。
第6実施形態では、シールド部241は、少なくとも1つの第2開口として、複数(例えば2つ)の開口242を有する。各開口242は、ターゲット21の開口212よりも小さい。これにより、カソードであるターゲット21の近傍に生起されたプラズマ中の電子が、シールド部241の各開口242を通じてアノード23Dに流れやすくなる。
図12において、各開口242は、半円形状に形成されているが、この形状に限定するものではない。各開口242は、電子が通過可能な形状であればどのような形状であってもよく、例えば円形状又は長方形状であってもよい。マグネット22(図10)によって形成される磁場(磁束密度)やスパッタ条件などにもよるが、各開口242を半円状もしくは円状とする場合、各開口242の半径を7.5mm以上とすることが好ましい。また、開口242を長方形状とする場合、各開口242の短辺を15mm以上とすることが好ましい。
第6実施形態では、シールド部241は、Z1,Z2方向において、ターゲット21と同じ高さの位置に配置されている。これにより、アノード23Dは、シールド部241によって効果的にシールドされ、アノード23Dに金属酸化物膜が形成されるのを効果的に防止することができる。
以上、第6実施形態によれば、金属部材24Eによってアノード23Dがシールドされるので、アノード23Dに化合物膜が形成されるのが防止される。これにより、プラズマを長期的に安定して生起させることができる。
アノード23Dの先端233Dと金属部材24Eのシールド部241の裏面とのZ1,Z2方向の離間距離は、Z1,Z2方向において、磁場やスパッタ条件などで変化するプラズマシースの厚さよりも大きくなるよう、8mm以上とするのが好ましい。これにより、空間R2へ電子を流すことができ、アノード23Dの先端233Dからシールド部241の裏面へ向かう電場を形成することができる。この電場の大きさは、第5実施形態で説明した電場Eと略等しくなる。そのため、アノード23Dの突出部232Dの先端233Dも、アノード23Dの突出部232Dの側面と同じように、反応性ガスの負イオンの物理的エッチングにより、酸化物薄膜の堆積を防止することが可能となる。
[第7実施形態]
図13は、第7実施形態に係るスパッタリング装置100Fの説明図である。なお、第7実施形態のスパッタリング装置100Fにおいて、第5実施形態のスパッタリング装置100Dと同様の構成については同一符号を用いて詳細な説明は省略する。
スパッタリング装置100Fは、第7実施形態ではマグネトロンスパッタリング装置である。スパッタリング装置100Fは、反応性スパッタリングにより、被成膜物である基材3の表面に、化合物膜、例えば絶縁性の薄膜を形成する。スパッタリング装置100Fによって基材3の表面に薄膜を形成することにより、最終品又は中間品等の物品が製造される。基材3は、例えばレンズ基体であり、形成される膜は、例えば複数種類の金属酸化物層からなる積層膜である、反射防止膜である。スパッタリング装置100Fにより、物品としてレンズが製造される。
スパッタリング装置100Fは、チャンバー1と、複数のユニット2D~2Dを含むモジュール14Fと、基材3を保持するホルダ5と、支持機構4と、回転昇降機構6と、を備える。チャンバー1の内部には、成膜室R1となる空間が画成される。モジュール14F、ホルダ5及び支持機構4は、チャンバー1の内部、即ち成膜室R1に配置されている。各ユニット2D~2Dは、第5実施形態で説明したユニット2Dと同様の構成であり、図13において各ユニット2D~2Dの構成については図示を省略する。ユニット2D~2Dには、それぞれターゲット21~21を設置することが可能である。各ターゲット21~21は、金属ターゲットである。ターゲット21~21のそれぞれに採用される金属の種類は、形成しようとする金属酸化物層の種類に応じて選択すればよい。したがって、ターゲット21~21は、例えば全て同じ金属であってもよいし、全て異なる金属であってもよい。更に、スパッタリング装置100Fは、ガス供給ライン8と、排気装置9と、スパッタリング装置100Fの各部の動作を制御する制御装置10と、を備える。
また、図13において図示は省略するが、スパッタリング装置100Fは、図9に示すプラズマ発光モニタ11、電線12、及び抵抗器13を、ユニット2D~2Dごとに備えている。更に、図13において図示は省略するが、スパッタリング装置100Fは、図9に示す電源7を備える。電源7は、不図示の切替え器により、複数のユニット2D~2Dのうちの1つに選択的に接続可能に構成されている。これにより、電源7は、複数のユニット2D~2Dのうち選択されたユニットに対応するターゲットに、プラズマを生起させるための電力を供給させることができる。
プラズマ生起中の電圧の情報は、制御装置10により電源7から取得される。さらに、ユニット2D~2Dごとに設けられたプラズマ発光モニタ11は、制御装置10に接続されている。プラズマ生起中のユニットのプラズマ発光モニタにより検出された、プラズマに含まれる所定波長の発光強度は、制御装置10により取得される。制御装置10では、電圧もしくは発光強度による値を制御値とし、その制御値を安定させるように制御信号を取得間隔ごとに生成することができる。この制御信号が、ガス供給ライン8にある反応性ガスのマスフローコントローラ82へ送信されることによって、マスフローコントローラ82によって反応性ガスの流量が調整される。
モジュール14Fは、回転軸Oを中心に回転可能にチャンバー1に支持された多角柱形状のモジュールである。モジュール14Fにおける多角柱の各側面の一部は、各ユニットに設置されるターゲットの表面である。複数のユニット2D~2Dは、回転軸Oを中心とする周方向D1に配列されており、一体となって回転軸Oを中心に周方向D1に回転可能である。
モジュール14Fは、不図示の駆動機構によって回転軸Oを中心に回転駆動される。モジュール14Fを回転させることにより、複数のユニット2D~2Dのうちいずれかのユニットを基材3に対向させることができる。また、不図示の駆動機構によって基材3に対するモジュール14Fの回転位置を調整することにより、スパッタリングされた粒子の、基材3に対する入射角を調整することができ、基材3に形成される膜の膜厚分布を調整することができる。
また、モジュール14Fは、不図示の駆動機構によって並進方向D2に並進駆動される。不図示の駆動機構によって基材3に対するモジュール14Fの並進位置を調整することにより、スパッタリングされた粒子の、基材3に対する入射角を調整することができ、基材3に形成される膜の膜厚分布を調整することができる。
なお、図13においては、モジュール14Fは四角柱形状であり、モジュール14Fの4面に4つのユニット2D~2Dが配置される場合について説明したが、これに限定するものではない。4面のうちいずれかの面にユニットが配置されていればよく、4面全てにユニットが配置されることに限定されない。更に、モジュール14Fは、多角形状であればよく、例えば三角柱形状であってもよい。
続いて、積層膜を基材3の表面に形成する成膜方法、即ち物品の製造方法について説明する。まず、ターゲット21をスパッタリングして第1層を形成する方法について説明する。モジュール14Fの不図示の駆動機構と回転昇降機構6によりターゲット21と基材3とを駆動し、ターゲット21と基材3とを所定の位置に調整する。次に、ガス供給ライン8、制御装置10、及びプラズマ発光モニタ11により、プラズマの発光強度又は発光強度比、及びプラズマ生起中の電圧を制御し、基材3に、ターゲット21の金属を含む金属酸化物膜を形成する。基材3に形成された第1層の膜が所定の厚さに達したら、成膜を終了させる。
次に、ターゲット21をスパッタリングして第1層上に第2層を形成する。ターゲット21は、ターゲット21とは異なる金属材料とする。この場合も、第1層と同様の手順で成膜を行えばよい。第3層以降の層についても、同様の手順で成膜する。以上の成膜方法により、基材3上に積層膜を形成することができる。
以上、各ユニット2D~2Dが、第5実施形態のユニット2Dと同様の構成であるため、基材3の形状に応じてモジュール14Fの回転位置又は並進位置が調整されても、各ユニット2D~2Dにおけるプラズマ分布の変動が抑制される。また、各ユニット2D~2Dにおけるアノード23Dに薄膜が形成されるのが防止されるので、プラズマを長期的に安定して生起させることができる。
(実施例3)
第6実施形態に対応する実施例3のスパッタリング装置でプラズマを生起させた場合について、プラズマの安定性を実験により検証した。実施例3のスパッタリング装置のユニット(カソード部)は、図9に示すスパッタリング装置100Dのユニット2Dにおいて、金属部材24Dの代わりに図12に示す金属部材24Eを用いた場合に相当する。
ターゲット21の材料はシリコン(Si)とした。プロセスガスにはArガス、反応性ガスにはOガスを採用した。Arガス及びOガスは、チャンバー1の内部の到達圧力が5×10-4Pa未満になってから、チャンバー1の内部に流すようにした。Arガスは、Oガスをチャンバー1の内部に流していない状態で、チャンバー1の内部の圧力が約0.2Paとなる流量に調整した。調整後のArガスの流量は一定とした。
アノード23Dの突出部232Dの側面2321Dは、R面取りが施されている形状とした。アノード23Dの突出部232Dの先端233Dと金属部材24Eのシールド部241の裏面とのZ1,Z2方向の離間距離は、2mmとした。抵抗器13の電気抵抗値Raは105kΩとした。ターゲット21へ電力を供給する電源7には、直流電源のうち直流パルス電源を採用した。ターゲット21の表面の電力密度が約0.12W/mmで一定となるように電力を調整した。制御装置10は、プラズマ生起中に電源7から電圧を取得し、電源7の電圧が目標値の電圧となるように、取得間隔ごとのOガスの流量を調整した。
図14(a)及び図14(b)は、実施例3におけるアノード23Dの模式図である。図14(b)に示すアノード23Dは、図14(a)に示すアノード23Dを矢印XIVBの方向に視た図である。1バッチ当たりのプラズマ生起時間を約6分とした場合における、180バッチ後のアノード23Dの突出部232Dの側面2321Dの電気抵抗値を測定した。具体的には、側面2321Dのうち、2つの開口242のそれぞれからZ2方向に下降してX方向に対向する部分RD1,RD2の電気抵抗値と、それ以外の部分の電気抵抗値を測定した。測定の結果、各部分RD1,RD2の電気抵抗値は、0Ω~0.2Ωの範囲内であった。一方、側面2321Dにおいて部分RD1,RD2以外の部分の電気抵抗値は、数Ω~数十kΩの範囲内であり、部分RD1,RD2の10倍以上であった。
このように、側面2321Dにおいて電気抵抗値の高い部分には、比較的軽い元素であるシリコンと酸素ガスが、開口242から回り込んだことにより、SiO薄膜が形成された、と考えられる。一方、側面2321Dにおいて電気抵抗値の低い部分RD1,RD2においては、開口242から入った電子と酸素ガスとで生成された酸素ガスの負イオンが電場により加速され、形成されたSiO薄膜が物理的にエッチングされた、と考えられる。この結果から、アノード23Dの側面における酸化物薄膜の堆積を防止することが可能となり、アノード23Dにおけるアノード電位の消失の防止を確認することができた。
図15は、実施例3の実験結果を示すグラフである。図15には、バッチ数に対するプラズマ電流の変化率とOガス流量の変化率を示している。1バッチ目のOガス流量をF、nバッチ目のOガス流量をFとすると、Oガス流量の変化率は、(F-F)/Fで表される。プラズマ生起中の電力は一定としており、そのときの電圧をOガスの流量で制御している。このため、プラズマの電流は一定となっているが、各バッチのOガスの流量も収束する傾向にあることが分かる。このようにOガスの流量も略一定に安定化することができる。スパッタリングするためのArガスの流量は一定としていることから、ターゲット21の表面において酸化される割合も略一定となるため、ターゲット21がスパッタリングされる量を略一定にすることができる。これにより、ターゲット21と基材3との距離が短いスパッタリングの成膜においては、基材3の表面におけるOガスとスパッタリングされたターゲット21の粒子とのフラックス比が安定化される。即ち、基材3に形成される酸化物薄膜の化学量論組成が安定化される。酸化物薄膜の化学量論組成が安定化されると、薄膜に要求される電気抵抗値や屈折率などが安定化される。
以上の検証から、アノード電位の消失を防止できることが確認され、またアノード電位の消失を防止することにより、プラズマだけでなくOガスの流量も安定化できる結果が得られた。よって、長期間に亘ってプラズマが安定して生起されることが確認された。
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されない。
上述の実施形態では、抵抗器13の数が1つである場合について説明したが、1つに限定するものではなく、複数あってもよい。この場合、これら複数の抵抗器が並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列と直列とが組み合わせられて接続されていてもよい。
また、上述の実施形態では、反応性ガスが酸素(O)ガスである場合について説明したが、これに限定されるものではない。反応性ガスは、形成する薄膜に応じて選択すればよく、例えば窒素(N)ガスであってもよい。
以上の実施形態の開示は、以下の項を含む。
(項1)
第1開口を有するターゲットが設置される設置部と、
前記設置部における前記ターゲットの前記第1開口に対応する位置に配置され、互いに電気的に絶縁されたアノード及び金属部材と、を備え、
前記金属部材は、グラウンド電位又はフローティング電位とされる、
ことを特徴とするスパッタリング装置。
(項2)
前記アノードは、前記金属部材よりも高い電位とされる、
ことを特徴とする項1に記載のスパッタリング装置。
(項3)
前記アノードは、直流電源の正極と電気的に接続され、
前記ターゲットは、前記直流電源の負極と電気的に接続される、
ことを特徴とする項1又は2に記載のスパッタリング装置。
(項4)
前記設置部は、前記第1開口に対応する位置に画成された凹部を有し、
前記アノードは、前記凹部に配置されている、
ことを特徴とする項1乃至3のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
(項5)
前記金属部材は、前記ターゲットの表面に垂直な方向において前記アノードと対向する位置に配置されたシールド部を含む、
ことを特徴とする項4に記載のスパッタリング装置。
(項6)
前記シールド部は、前記第1開口よりも小さい第2開口を有する、
ことを特徴とする項5に記載のスパッタリング装置。
(項7)
前記アノードは、前記設置部に支持される基部と、前記基部に対して前記ターゲットの表面に垂直な方向に突出する突出部と、を有する、
ことを特徴とする項4乃至6のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
(項8)
前記アノードは、前記突出部の先端が前記ターゲットの表面よりも前記ターゲットの表面に垂直な方向に突出しないように配置されている、
ことを特徴とする項7に記載のスパッタリング装置。
(項9)
前記金属部材は、前記突出部の側面と対向するように配置された側壁部を含む、
ことを特徴とする項7又は8に記載のスパッタリング装置。
(項10)
前記アノードは、互いに間隔をあけて配置された複数の金属板と、前記複数の金属板を支持する支持部と、を含む、
ことを特徴とする項4乃至6のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
(項11)
反応性ガスを含むガスを供給する供給口を含む供給部を更に備え、
前記供給口は、前記凹部に位置している、
ことを特徴とする項4乃至10のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
(項12)
生起されるプラズマに含まれる所定波長の発光強度を検出するプラズマ発光モニタと、
検出された前記所定波長の発光強度に基づいて前記ガスの流量を調整する制御装置と、
をさらに備える、
ことを特徴とする項11に記載のスパッタリング装置。
(項13)
前記アノードとグラウンドとを電気的に接続する抵抗器を更に備える、
ことを特徴とする項1乃至12のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
(項14)
前記抵抗器の電気抵抗値が、40kΩ以上220kΩ以下である、
ことを特徴とする項13に記載のスパッタリング装置。
(項15)
前記ターゲットの表面に沿って前記第1開口に向かう磁場を形成するマグネットを更に備える、
ことを特徴とする項1乃至14のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
(項16)
前記設置部、前記アノード及び前記金属部材を含むユニットを複数備える、
ことを特徴とする項1乃至15のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
(項17)
前記複数のユニットが周方向に配列され、前記複数のユニットが一体に前記周方向に回転可能である、
ことを特徴とする項16に記載のスパッタリング装置。
(項18)
項1乃至17のいずれか1項に記載のスパッタリング装置を用いて被成膜物に化合物膜を成膜する、
ことを特徴とする成膜方法。
(項19)
項1乃至17のいずれか1項に記載のスパッタリング装置を用いて被成膜物に化合物膜を成膜して物品を製造する、
ことを特徴とする物品の製造方法。
(項20)
項16又は17に記載のスパッタリング装置を用いて被成膜物に化合物膜を成膜して物品を製造する方法であって、
前記複数のユニットの各々の前記設置部に金属ターゲットを設置し、
成膜室に反応性ガスとして酸素を供給し、
前記化合物膜として、金属酸化物を含む膜を形成する、
ことを特徴とする物品の製造方法。
(項21)
前記化合物膜が複数種類の金属酸化物層を含む積層膜である、
ことを特徴とする項20に記載の物品の製造方法。
20…ユニット本体(設置部)、21…ターゲット、23…アノード、24…金属部材、100…スパッタリング装置

Claims (21)

  1. 第1開口を有するターゲットが設置される設置部と、
    前記設置部における前記ターゲットの前記第1開口に対応する位置に配置され、互いに電気的に絶縁されたアノード及び金属部材と、を備え、
    前記金属部材は、グラウンド電位又はフローティング電位とされる、
    ことを特徴とするスパッタリング装置。
  2. 前記アノードは、前記金属部材よりも高い電位とされる、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
  3. 前記アノードは、直流電源の正極と電気的に接続され、
    前記ターゲットは、前記直流電源の負極と電気的に接続される、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
  4. 前記設置部は、前記第1開口に対応する位置に画成された凹部を有し、
    前記アノードは、前記凹部に配置されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
  5. 前記金属部材は、前記ターゲットの表面に垂直な方向において前記アノードと対向する位置に配置されたシールド部を含む、
    ことを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
  6. 前記シールド部は、前記第1開口よりも小さい第2開口を有する、
    ことを特徴とする請求項5に記載のスパッタリング装置。
  7. 前記アノードは、前記設置部に支持される基部と、前記基部に対して前記ターゲットの表面に垂直な方向に突出する突出部と、を有する、
    ことを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
  8. 前記アノードは、前記突出部の先端が前記ターゲットの表面よりも前記ターゲットの表面に垂直な方向に突出しないように配置されている、
    ことを特徴とする請求項7に記載のスパッタリング装置。
  9. 前記金属部材は、前記突出部の側面と対向するように配置された側壁部を含む、
    ことを特徴とする請求項7に記載のスパッタリング装置。
  10. 前記アノードは、互いに間隔をあけて配置された複数の金属板と、前記複数の金属板を支持する支持部と、を含む、
    ことを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
  11. 反応性ガスを含むガスを供給する供給口を含む供給部を更に備え、
    前記供給口は、前記凹部に位置している、
    ことを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
  12. 生起されるプラズマに含まれる所定波長の発光強度を検出するプラズマ発光モニタと、
    検出された前記所定波長の発光強度に基づいて前記ガスの流量を調整する制御装置と、
    をさらに備える、
    ことを特徴とする請求項11に記載のスパッタリング装置。
  13. 前記アノードとグラウンドとを電気的に接続する抵抗器を更に備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
  14. 前記抵抗器の電気抵抗値が、40kΩ以上220kΩ以下である、
    ことを特徴とする請求項13に記載のスパッタリング装置。
  15. 前記ターゲットの表面に沿って前記第1開口に向かう磁場を形成するマグネットを更に備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
  16. 前記設置部、前記アノード及び前記金属部材を含むユニットを複数備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
  17. 前記複数のユニットが周方向に配列され、前記複数のユニットが一体に前記周方向に回転可能である、
    ことを特徴とする請求項16に記載のスパッタリング装置。
  18. 請求項1乃至17のいずれか1項に記載のスパッタリング装置を用いて被成膜物に化合物膜を成膜する、
    ことを特徴とする成膜方法。
  19. 請求項1乃至17のいずれか1項に記載のスパッタリング装置を用いて被成膜物に化合物膜を成膜して物品を製造する、
    ことを特徴とする物品の製造方法。
  20. 請求項16又は17に記載のスパッタリング装置を用いて被成膜物に化合物膜を成膜して物品を製造する方法であって、
    前記複数のユニットの各々の前記設置部に金属ターゲットを設置し、
    成膜室に反応性ガスとして酸素を供給し、
    前記化合物膜として、金属酸化物を含む膜を形成する、
    ことを特徴とする物品の製造方法。
  21. 前記化合物膜が複数種類の金属酸化物層を含む積層膜である、
    ことを特徴とする請求項20に記載の物品の製造方法。
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