JP2023014408A - 抗SARS-CoV-2中和抗体の検出キット及び検出方法 - Google Patents

抗SARS-CoV-2中和抗体の検出キット及び検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】迅速、正確、簡便かつ安全に抗SARS-CoV-2中和抗体を検出することができる新規な手段を提供すること。【解決手段】本発明の抗SARS-CoV-2中和抗体の検出キットは、第1のポリペプチドと、任意のエンベロープウイルスのカプシドポリペプチドと、SARS-CoV-2のスパイクポリペプチドとを含む、ウイルス様粒子、及び、細胞表面にSARS-CoV-2受容体を有し、かつ、第1のポリペプチドとの結合によりレポーター活性を有するタンパク質を形成可能な第2のポリペプチドを細胞内に含む、動物培養細胞を含む。【選択図】図1A

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特許法第30条第2項適用申請有り 公開日(online)2020年7月22日medRxiv,THE PREPRINT SERVER FOR HEALTH SCIENCES https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.07.20.20158410v1.full 〔刊行物等〕 ウェブサイト上での公開日 2020年7月28日 ウェブサイトのアドレス https://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/202007ryo_covid_hibit.html 〔刊行物等〕 公開日(online)2020年9月15日 Journal of Molecular Cell Biology,Volume 12,Issue 12,December 2020,Pages 987-990
特許法第30条第2項適用申請有り 〔刊行物等〕 ウェブサイト上での公開日 2021年4月9日 ウェブサイトのアドレス https://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/20210409yamanaka_vccineval.html 〔刊行物等〕 公開日 2021年4月9日付記者発表資料 掲載サイトのアドレス https://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/d0md7n000000cjtn-att/YCUrelease_yamanaka_20210409.pdf 〔刊行物等〕 公開日(online) 2021年5月10日 ウェブサイト名medRxiv,THE PREPRINT SERVER FOR HEALTH SCIENCES https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.05.06.21256788v1.full-text
特許法第30条第2項適用申請有り 〔刊行物等〕 ウェブサイト上での公開日 2021年5月12日 ウェブサイトのアドレス https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2021/20210512yamanaka.html 〔刊行物等〕 公開日 2021年5月12日付記者発表資料 掲載サイトのアドレス https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2021/dr3e6400000163oy-att/210512yamanaka.pdf
特許法第30条第2項適用申請有り 〔刊行物等〕 ウェブサイト上での公開日 2021年5月20日 ウェブサイトのアドレス https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2021/20210520yamanaka.html 〔刊行物等〕 公開日 2021年5月20日付記者発表資料 掲載サイトのアドレス https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2021/dr3e640000016bdl-att/20210520yamanaka.pdf
本発明は、抗SARS-CoV-2中和抗体を検出するための検出キット、及びこれを用いた検体中の抗SARS-CoV-2中和抗体の検出方法に関する。
現在、新型コロナウイルス(SARSコロナウイルス2、以下SARS-CoV-2と記載する)に対する中和抗体(nAb)の測定には、SARS-CoV-2そのものを用いたウイルス中和試験が多く用いられている。しかしながら、実施に感染力のある生ウイルスを使用するため、バイオセーフティレベル3(BSL-3)設備を備えた特殊な実験室が必要であるほか、多検体の解析に危険が伴うなどの問題がある。また、試験期間が4~5日かかる低スループット性が問題となっている。一方、遺伝子組換ウイルスベクターを用いた中和試験(シュードウイルス法)が代替法として使用されているが(非特許文献1)、この手法でも判定に少なくとも2~3日かかるため、迅速性が低い。さらには、遺伝子組換えウイルスを使用するため、特別な実験室と熟練の検査員が必要となる。代理血清診断検査(sVNT)(非特許文献2)、および単一細胞RNAシーケンス(非特許文献3)といった技術も研究されているが、中和試験の理想的な代替手段として機能し得る、高い特異性でnAbsを直接検出することができる、簡便、迅速かつハイスループットの検査法は、未だ開発されていない(非特許文献4)。
Nie, J., Li, Q., Wu, J., et al. (2020). Establishment and validation of a pseudovirus neutralization assay for SARS-CoV-2. Emerg Microbes Infect 9, 680-686. Tan, C.W., Chia, W.N., Qin, X., et al. (2020). A SARS-CoV-2 surrogate virus neutralization test based on antibody-mediated blockage of ACE2-spike protein-protein interaction. Nat Biotechnol. Cao, Y., Su, B., Guo, X., et al. (2020). Potent Neutralizing Antibodies against SARS-CoV-2 Identified by High-Throughput Single-Cell Sequencing of Convalescent Patients' B Cells. Cell 182, 73-84 e16. Ozcurumez, M.K., Ambrosch, A., Frey, O., et al. (2020). SARS-CoV-2 antibody testing-questions to be asked. J Allergy Clin Immunol 146, 35-43.
本発明は、迅速、正確、簡便かつ安全に抗SARS-CoV-2中和抗体を検出することができる新規な手段を提供することを目的とする。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、レポータータンパク質の第1の断片を付加したウイルス様粒子にSARS-CoV-2のスパイクを搭載させ、レポータータンパク質の第2の断片を発現する動物培養細胞と組み合わせて用いることにより、迅速かつ安全に抗SARS-CoV-2中和抗体を検出できる検出系の開発に成功するとともに、SARS-CoV-2の各種変異株のスパイクを用いて調製したウイルス様粒子のパネルを作製し、このパネルを用いて様々な変異株に対する中和抗体を検出できることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、第1のポリペプチドと、任意のエンベロープウイルスのカプシドポリペプチドと、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)のスパイクポリペプチドとを含む、ウイルス様粒子、及び、細胞表面にSARS-CoV-2受容体を有し、かつ、第1のポリペプチドとの結合によりレポーター活性を有するタンパク質を形成可能な第2のポリペプチドを細胞内に含む、動物培養細胞を含む、抗SARS-CoV-2中和抗体の検出キットを提供する。
また、本発明は、上記本発明の検出キットを用いて検体中の抗SARS-CoV-2中和抗体を検出する方法であって、前記ウイルス様粒子と検体を混合して混合液を調製すること;前記混合液、及び検体非添加の前記ウイルス様粒子をそれぞれ前記動物培養細胞に添加して反応させること;反応後の細胞を洗浄後、第1及び第2のポリペプチドの結合により形成されたタンパク質のレポーター活性を測定すること;及び、検体非添加の前記ウイルス様粒子を添加した条件で測定されたレポーター活性レベルと、前記混合液を添加した条件で測定されたレポーター活性レベルを対比し、活性レベルの低下率を算出すること、を含む、方法を提供する。
さらに、本発明は、1種類のSARS-CoV-2スパイクポリペプチドを含む1種類のウイルス様粒子、又は異なるSARS-CoV-2スパイクポリペプチドをそれぞれ含む2種類以上のウイルス様粒子を含む、ウイルス様粒子のパネルであって、前記ウイルス様粒子は、任意のエンベロープウイルスのカプシドポリペプチドと、レポーター活性を有するタンパク質の部分断片と、下記(1)~(12)から選択されるいずれかのSARS-CoV-2スパイクポリペプチドとを含む、パネルを提供する。
(1) 配列番号2に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
(2) 配列番号4に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
(3) 配列番号6に示すアミノ酸配列中の第15番~第1251番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
(4) 配列番号8に示すアミノ酸配列中の第15番~第1251番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
(5) 配列番号10に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
(6) 配列番号12に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
(7) 配列番号14に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
(8) 配列番号16に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
(9) 配列番号18に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
(10) 配列番号20に示すアミノ酸配列中の第15番~第1252番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
(11) 配列番号22に示すアミノ酸配列中の第15番~第1252番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
(12) 配列番号24に示すアミノ酸配列中の第15番~第1247番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
本発明によれば、迅速、正確、簡便かつ安全に抗SARS-CoV-2中和抗体を検出できる。感染性を有するウイルスや遺伝子組み換えウイルスを使用しないため、特殊な施設や熟練した検査技術は不要である。感染性のSARS-CoV-2生ウイルスや遺伝子組み換えウイルスを使用した従来法では結果を得るまでに数日を要するのに対し、本発明のキットを用いた検出法によれば、わずか数時間で結果を得ることができ、非常に迅速である。ウイルス様粒子に搭載するスパイクは容易に変更できるので、様々なSARS-CoV-2変異株に対する中和活性の保有状況を調べることができる。さらに、定量的検出法のみならず、より簡易化した定性的検出法も開発したことで、より多数の検体を迅速に処理することができ、非常に高スループットで中和抗体を検出できる。本発明は、防御免疫を持つ個人の同定、集団感染性研究に関する疫学的研究、治療効果やワクチンの性能評価等にも活用できる。
本発明の中和抗体検出方法の1実施態様である、実施例で構築したhiVNTを説明する模式図である。 実施例1において、hiVLP-SARS2のVeroE6/TMPRSS2-LgBiT細胞内への侵入を検出した結果である。VeroE6/TMPRSS2-LgBiT細胞にhiVLP-SARS2を3時間接種した後、細胞内のNanoLuc発光を測定した。標的細胞におけるHaloTag融合LgBiTの発現は、イムノブロッティング解析により確認した。****P < 0.0001。 実施例1において測定した、hiVLP-SARS2と健康なドナー(HD, N=37)または回復期のCOVID-19患者の血清(N=74)を3時間接種した細胞のNanoLuc発光である。****P < 0.0001。 2つの回復期血清と1つの健常ドナー由来血清をhiVNTとSARS-CoV-2中和試験とでそれぞれ検査した結果である。健康なドナーと代表的な2名の患者のデータをNT力価(NT50)とともに示した。両方の検査で同様の結果が得られ、hiVNTの性能がSARS-CoV-2生ウイルスを用いた中和試験と一致することが確認された。 hiVNTで検出した中和抗体とELISAで検出した抗体価との相関関係を確認した結果である。N=74サンプル。 hiVLP-SARS2システムの検証。(A) Gag-PolにおけるHiBiTタグ挿入部位の比較。VeroE6/TMPRSS2-LgBiT細胞に3種類のhiVLP-SARS2を接種し、3時間後に細胞内のNanoLucの発光を測定した。(B) hiVLP-SARS2に取り込まれたHiBiTの量は、HIV-1のp24抗原と相関した。(C) Gag-Pol-HiBiTとSARS-CoV-2スパイクの発現ベクターをHEK293細胞に共導入してhiVLP-SARS2を作製し、細胞やウイルスのライセートでの発現をイムノブロッティングにより確認した結果である。(D) VeroE6/TMPRSS2-LgBiT細胞にhiVLP-SARS2を1~3時間接種した後、細胞内のNanoLucの発光を測定した。(E) VeroE6/TMPRSS2-LgBiT細胞に、抗Spike mAb (1:100, Sino Biological #40592-MM57)またはCamostat (20μM)の存在下で、hiVLP-SARS2またはhiVLP-VSVgを3時間接種した後、細胞内のNanoLuc発光を測定した。****P < 0.0001。 SARS-CoV-2中和抗体(nAb)の定量的検出のための改変hiVNT。(A) 実施例2で使用したSARS-CoV-2変異株のスパイクの変異。スパイクのN末はCD5シグナル配列に置き換えたため、アスタリスクを付した変異は実施例2において適用していない。(B) 8系統のhiVLP(HiBiTタグ付加VLP)を、5%の血清の存在下でVeroE6/TMPRSS2-LgBiT細胞(VTMLG)に添加した。3時間後、細胞を洗浄し、発光を測定して各血清の発光シグナル阻害を検出した。(C) hiVNTとシュードウイルス中和試験(NT)との相関。発光シグナル阻害40%未満の血清は、中和抗体陰性とみなすことができる。***p < 0.001, ****p < 0.0001, ns, 有意差なし(not significant), 対応のない両側t検定。(D) hiVNT(中和抗体の有無(シュードウイルス法によるNT50≧50, <50)vs hiVNT値)のROC曲線。曲線下面積(AUC)も示す。カットオフ値を40とすることで、高い正確性(感度98.9%、特異度100%)で中和抗体の存在が検出される。 SARS-CoV-2未感染者(A)及びCOVID-19経験者(B)のワクチン接種後血清中の、SARS-CoV-2変異株に対する中和抗体を検出した結果である。各グラフの上部に示したnAb(+)の数値は、中和抗体陽性の血清の数を示す。水平の短い線は発光シグナル阻害の中央値である。
本発明の検出キットは、抗SARS-CoV-2中和抗体を検出するためのキットであり、第1のポリペプチドと、任意のエンベロープウイルスのカプシドポリペプチドと、SARS-CoV-2のスパイクポリペプチドとを含む、ウイルス様粒子(以下、SARS-CoV-2 VLPということがある)、及び、第1のポリペプチドとの結合によりレポーター活性を有するタンパク質を形成可能な第2のポリペプチドを含む、動物培養細胞を含む。
第1のポリペプチドは、動物培養細胞に含まれる第2のポリペプチドと特異的に結合し、レポーター活性を有するタンパク質を形成する。言い換えると、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは、レポーター活性を有するタンパク質の部分断片ないしはサブユニットである。第1及び第2のポリペプチドは、それぞれ単独ではレポーター活性を有しないが、両者の結合によりレポーター活性を有するタンパク質が形成される。レポーター活性を有するタンパク質の好ましい例として、ルシフェラーゼ(ルシフェラーゼ活性を有するタンパク質)等の発光酵素、緑色蛍光タンパク質等の蛍光タンパク質を挙げることができる。第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドの特に好ましい例として、HiBiT(配列番号62)及びこれに結合するNanoLuc(登録商標)ルシフェラーゼ断片LgBiT(配列番号64)を挙げることができる。
SARS-CoV-2のスパイクポリペプチドは、野生株(NC_045512.2)及び変異株のいずれに由来するものであってもよい。変異株は、これまでに知られている変異株に限定されず、今後新たに発生する変異株を利用することも可能である。スパイク遺伝子及びコードされるスパイクタンパク質の配列が特定されれば、様々な変異株を対象としてSARS-CoV-2 VLPを作製できるので、本発明の検出キットは様々な変異株に対応可能である。配列番号1~24には、下記実施例に記載したSARS-CoV-2野生株及び変異株のスパイク遺伝子及びこれにコードされるスパイクタンパク質の配列を下記表の通りに示したが、本発明の範囲はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2023014408000002
SARS-CoV-2スパイクポリペプチドに使用する領域は、SARS-CoV-2のスパイク遺伝子にコードされるスパイクタンパク質の全長でも断片でもよいが、動物培養細胞内での細胞膜への輸送を促進する観点から、ウイルス本来のスパイクタンパク質配列からN末端のシグナルペプチド配列及びC末端の小胞体(ER)保持シグナル配列を除く領域を用いることが好ましい。変異の入り方に応じてN末端シグナルペプチドと小胞体保持シグナルの鎖長は変動し得るが、一般にSARS-CoV-2スパイクタンパク質ではN末端の14残基がシグナルペプチド、C末端の19残基がER保持シグナルである。SARS-CoV-2野生株のスパイクタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)では、第1番~第14番残基がシグナルペプチド、第1255番~第1273番残基がER保持シグナルである。
表1に挙げたSARS-CoV-2野生株及び11種類の変異株において、N末端シグナルペプチド及びC末端のER保持シグナルを除く領域とは、下記(1)~(12)においてそれぞれ特定している部分領域である。本発明において使用するSARS-CoV-2スパイクポリペプチドは、以下のいずれかのポリペプチドであってよい。
(1) 配列番号2に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
(2) 配列番号4に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
(3) 配列番号6に示すアミノ酸配列中の第15番~第1251番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
(4) 配列番号8に示すアミノ酸配列のスパイクタンパク質配列)中の第15番~第1251番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
(5) 配列番号10に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
(6) 配列番号12に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
(7) 配列番号14に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
(8) 配列番号16に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
(9) 配列番号18に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
(10) 配列番号20に示すアミノ酸配列中の第15番~第1252番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
(11) 配列番号22に示すアミノ酸配列中の第15番~第1252番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
(12) 配列番号24に示すアミノ酸配列中の第15番~第1247番アミノ酸の領域を含むポリペプチド。
本来のN末端シグナルペプチドに代えて、公知の膜タンパク質のシグナルペプチドをN末端に連結することで、細胞膜輸送をさらに促進することができる。膜タンパク質のシグナルペプチドは特に限定されず、公知の様々な膜タンパク質シグナルペプチドを利用することができる。具体例として、CD5のシグナルペプチド配列(配列番号49、50)を挙げることができるが、これに限定されない。
SARS-CoV-2スパイクポリペプチドの末端には、精製や検出等の便宜のため、FLAGタグ、Hisタグ等のタグ配列を付加してもよい。これらのタグ配列は、SARS-CoV-2スパイク配列のN末端又はC末端に直接、又はベクター等に由来する任意のアミノ酸配列を介して付加されていてよい。
配列番号25~48に示す配列は、下記実施例で使用したSARS-CoV-2スパイクポリペプチドのアミノ酸配列及びこれをコードする塩基配列である(表3参照)。各SARS-CoV-2スパイクポリペプチド配列中、N末端の24残基がCD5シグナルペプチド配列であり、C末端の8残基がFLAGタグであり、N末端24残基とC末端20残基を除く領域が各SARS-CoV-2株のスパイクタンパク質に由来する領域である。上記(1)~(12)のSARS-CoV-2スパイクポリペプチドの好ましい一例として、配列番号26, 28, 30, 32, 34, 36, 38, 40, 42, 44, 46, 48にそれぞれ示したアミノ酸配列のポリペプチドを挙げることができるが、これらに限定されない。
SARS-CoV-2 VLPの調製に用いられるカプシドポリペプチドは、任意のエンベロープウイルスのカプシドに由来するポリペプチドである。エンベロープウイルスの種類は特に限定されず、エンベロープを有する様々な動物ウイルスのカプシドを利用することができる。特に好ましい例として、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のカプシドを挙げることができるが、これに限定されない。配列番号54に示すアミノ酸配列は、HIV-1のカプシドタンパク質の配列である。HIVのカプシドは機能的にN末ドメイン(第1番~第145番アミノ酸)とC末ドメイン(第146番~第231番アミノ酸)に分けられる。
第1のポリペプチドは、任意のエンベロープウイルスのカプシドポリペプチドに融合して用いられる。第1のポリペプチドの融合部位は特に限定されないが、HIVのカプシドを利用する場合、C末ドメイン中に第1のポリペプチドを含ませることが好ましく、例えば、配列番号54に示すHIVカプシド配列中の第188番~第231番アミノ酸の領域内のいずれかの部位に第1のポリペプチドを挿入することが好ましい。HIV-1のカプシドタンパク質の立体構造予測より、C末ドメイン中には1個の310ヘリックス(第150番~第152番アミノ酸)と4個のαヘリックスモチーフ(第161番~第173番アミノ酸、第179番~第192番アミノ酸、第196番~第205番アミノ酸、第211番~第217番アミノ酸)が存在することが知られている(Gres et al., Science 03 Jul 2015, Vol. 349, Issue 6243, pp. 99-103, DOI: 10.1126/science.aaa5936)。第1のポリペプチドはこれらのモチーフを避けて挿入することができる。従って、HIVカプシドのC末ドメイン中で第1のポリペプチドを挿入する部位として、第150番~第152番アミノ酸、第161番~第173番アミノ酸、第179番~第192番アミノ酸、第196番~第205番アミノ酸、及び第211番~第217番アミノ酸以外の部位、例えば、第193番~第195番アミノ酸の領域又はその両隣、第206番~第210番アミノ酸の領域又はその両隣、及び第218番~第231番アミノ酸の領域又はその両隣から選択されるいずれかの部位を選択することができる。
SARS-CoV-2 VLPは、第1のポリペプチドを融合させたエンベロープウイルスカプシドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、HEK293細胞等の適当な宿主細胞にトランスフェクトし、宿主細胞内で各ポリペプチドを発現させることにより製造することができる。各ポリヌクレオチドは、通常、CMVプロモーター等の恒常発現プロモーターの下流に機能的に連結させ、宿主細胞にトランスフェクトする。各ポリヌクレオチドはプラスミドに挿入された形態で使用してもよい。ポリヌクレオチドはRNAでもDNAでもよいが、取り扱いの簡便さ等の観点からDNAが好ましい。カプシドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、所望により、宿主細胞内で発現しやすくするためにコドンを最適化ないし改変した塩基配列としてもよい。コドン最適化のためのツールは公知である。
HIVのカプシドは、HIV感染細胞において、HIV自身が有するプロテアーゼにより構造タンパク質Gagが分解を受けて生産される。Gagを分解するプロテアーゼは、逆転写酵素等の他の酵素とともにHIVのPol遺伝子にコードされている。従って、HIVのカプシドを利用する場合は、Gag遺伝子中のカプシド領域の適当な位置に第1のポリペプチドコード配列を挿入し、Pol遺伝子とともに宿主細胞内で発現させればよい。
Gagは一般に500アミノ酸からなり、そのうち133番~364番アミノ酸がカプシドを形成する(Anjali P. Mascarenhas and Karin Musier-Forsyth, FEBS Journal, 2009, vol. 276, pp.6118-6127)。512アミノ酸等、Gagの鎖長が異なるHIV株も知られているが、主にC末端側の配列の違いによるため、カプシドを構成する領域は同じく133番~364番アミノ酸の領域である。500アミノ酸のGag遺伝子配列及びアミノ酸配列の例(NCBI Accession No. M93258)を配列番号70, 71に、512アミノ酸のGag遺伝子配列及びアミノ酸配列の例(NCBI Accession No. AH002345)を配列番号56, 57にそれぞれ示す。また、NCBI Accession No. AH002345のHIVウイルスゲノム配列中でPolタンパク質をコードする領域の塩基配列及びコードされるPolアミノ酸配列を配列番号65, 66に示す。HIVのゲノムでは、PolのN末の遺伝子配列がGagのC末の遺伝子配列と重複しており、HIV感染細胞内で一定の割合でフレームシフトが起こってPolタンパク質が発現する。HIVが有するGag-Pol遺伝子の塩基配列の例を配列番号68(Gag 512残基タイプ、NCBI Accession No. AH002345)及び配列番号72(Gag 500残基タイプ、NCBI Accession No. M93258)に示す。配列番号68の塩基配列では、1-1539位がGagコード領域(終止コドンを含む)、1296-4343位がPolコード領域(終止コドンを含む)である。配列番号72の塩基配列では、1-1503位がGagコード領域(終止コドンを含む)、1296-4307位がPolコード領域(終止コドンを含む)である。SARS-CoV-2 VLPの調製においても、Gag-Pol遺伝子配列を利用することができる。すなわち、適宜コドン最適化したGag-Pol遺伝子配列の適当な位置に第1のポリペプチドをコードする塩基配列を挿入した構造のポリヌクレオチドを、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと共に宿主細胞にトランスフェクトしてポリペプチドを発現させればよい。配列番号65, 66は、配列番号68に示したGag-Pol遺伝子配列中のPolコード領域の塩基配列及びコードされるPolアミノ酸配列である。コドン最適化した塩基配列の例を配列番号55(HIV-1カプシドをコード)、配列番号58(HIV-1 Gag遺伝子)、配列番号67(HIV-1 Pol遺伝子)、及び配列番号69(HIV-1 Gag-Pol遺伝子)に示す。もっとも、当業者であれば、NCBI等のデータベースより任意のエンベロープウイルスの遺伝子配列を入手し、公知のツールを用いてコドンを最適化し、SARS-CoV-2 VLPの調製に必要なポリヌクレオチドを調製できるので、本発明の範囲はこれらの具体例に限定されるものではない。
本発明の検出キットに含まれる動物培養細胞は、SARS-CoV-2 VLPを接種する細胞であり、細胞表面にSARS-CoV-2受容体を有し、かつ、第2のポリペプチドを細胞内に含む。SARS-CoV-2受容体という語は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質と結合し、SARS-CoV-2の細胞内への侵入を可能にするタンパク質分子を意味する。SARS-CoV-2受容体は、SARS-CoV-2 VLPが動物培養細胞内に取り込まれるために必要である。SARS-CoV-2受容体の第一の例としてアンジオテンシン変換酵素2(ACE2, NCBI Gene ID: 59272)が挙げられ、その他の具体例として、ニューロピリン1(NRP1, Gene ID: 8829)(Cantuti-Castelvetri et al., Science 370, 856-860 (2020); Daly et al., Science 370, 861-865 (2020))、CD147(Gene ID: 682)(Wang et al., Signal Transduction and Targeted Therapy 5, article number: 283 (2020))、DC-SIGN(Gene ID: 30835)及びL-SIGN(Gene ID: 10332)(Thepaut et al., PLOS Pathogens, 17(5): e1009576. https://doi.org/10.1371/journal.ppat.100576)、並びにGRP78(Gene ID: 3309)(Carlos et al., J. Biol. Chem. (2021) 296, 100759)を挙げることができる。動物培養細胞は、これらのSARS-CoV-2受容体の少なくとも1種を細胞表面に有していてよい。例えば、ACE2を細胞表面に有する動物培養細胞、NRP1を細胞表面に有する動物培養細胞、ACE2及びNRP1を細胞表面に有する動物培養細胞、ACE2と他の1種又は2種以上のSARS-CoV-2受容体を細胞表面に有する動物培養細胞など、種々の態様が挙げられる。
本発明の検出キットにおける動物培養細胞としては、哺乳動物培養細胞、特に霊長類培養細胞を好ましく用いることができる。霊長類由来の細胞株は種々のものが公知であり、市販や分譲されているため、入手は容易である。SARS-CoV-2受容体として機能する分子を細胞表面に有していない細胞を使用する場合は、SARS-CoV-2受容体を恒常発現するように遺伝的に改変すればよい。CMVプロモーター等の恒常発現プロモーターの下流にSARS-CoV-2受容体をコードするポリヌクレオチド(RNAでもDNAでもよいが、取り扱いの簡便さ等からDNAが好ましい)を機能的に連結したプラスミドを細胞にトランスフェクトすることにより、該細胞をSARS-CoV-2受容体を恒常発現するように遺伝的に改変することができる。SARS-CoV-2受容体の遺伝子配列はデータベースに登録され公知であるので、そのような公知の配列情報に基づいて適当なプライマーを設計し、SARS-CoV-2受容体発現細胞(そのような細胞は周知であり、各種ヒト由来細胞株、及びVeroE6細胞等を挙げることができる)から抽出したRNAを鋳型としてRT-PCRを行なうことにより、SARS-CoV-2受容体をコードするポリヌクレオチドを調製できる。一例として、ヒトACE2遺伝子の代表的なバリアント(NCBI Accession No. NM_021804.3)の塩基配列及びこれにコードされるアミノ酸配列を配列番号75、76に示す。もっとも、動物培養細胞が有するSARS-CoV-2受容体は、SARS-CoV-2受容体としての機能を損なわない限り、データベースに登録された公知のSARS-CoV-2受容体の配列とは一部異なる配列のタンパク質分子であってもよい。
第2のポリペプチドは、第1のポリペプチドとの結合によりレポーター活性を有するタンパク質を形成可能なポリペプチドである。第2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを動物培養細胞にトランスフェクトし、第2のポリペプチドを該細胞内で恒常的に発現させることで、第2のポリペプチドを細胞内に含む動物培養細胞を調製することができる。CMVプロモーター等の恒常発現プロモーターの下流に第2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(RNAでもDNAでもよいが、取り扱いの簡便さ等からDNAが好ましい)を機能的に連結したプラスミドを、動物培養細胞にトランスフェクトすればよい。第2のポリペプチドとしてLgBiTを用いる場合、LgBiTをコードするポリヌクレオチド(塩基配列は配列番号63に示した通り)を人工遺伝子合成等により調製し、適当なプラスミドベクターに挿入し、動物培養細胞にトランスフェクトすればよい。あるいは、LgBiT発現細胞を調製するためのトランスフェクション用のプラスミドが市販されているので(下記実施例参照)、市販品を好ましく使用することができる。
本発明において、細胞表面にSARS-CoV-2受容体を有し、かつ、第2のポリペプチドのポリペプチドを細胞内に含む動物培養細胞は、膜貫通セリンプロテアーゼ2(transmembrane serine protease 2; TMPRSS2, Gene ID: 7113)を発現する細胞であってよい。SARS-CoV-2は、TMPRSS2を恒常的に発現させたVeroE6細胞(SARS-CoV-2受容体ACE2を発現するアフリカミドリザル細胞)に高効率で感染することが知られている(Matsuyama, S., Nao, N., Shirato, K., et al. (2020). Proc Natl Acad Sci U S A 117, 7001-7003.)。本発明においても、SARS-CoV-2 VLPを接種する動物培養細胞としてTMPRSS2発現細胞を用いることで、SARS-CoV-2 VLPの動物培養細胞へのエントリーの効率が高まるので、検出キットの性能を高めることができる。ヒトのTMPRSS2には異なるアイソフォームをコードする複数の転写バリアントが存在し、NCBIのGenBankにNM_001135099.1(バリアント1)、NM_005656.4(バリアント2)、NM_001382720.1(バリアント3)で登録されている。配列番号73, 74には、バリアント2の塩基配列及びこれにコードされるアイソフォーム2のアミノ酸配列を示した。これらの公知のTMPRSS2配列情報に基づいてプライマーを設計し、TMPRSS2を発現する細胞からTMPRSS2をコードするcDNAを調製し、恒常発現プロモーターを有する適当なプラスミドベクターにクローニングし、動物培養細胞にトランスフェクトすることで、TMPRSS2を発現する動物培養細胞を調製することができる。また、TMPRSS2を発現する動物細胞株が市販ないし分譲されているので、そのような細胞株を利用してもよい。
本発明の検出キットは、1種類のSARS-CoV-2 VLPを含んでいてもよいし、異なるSARS-CoV-2スパイクポリペプチドをそれぞれ含む2種類以上のSARS-CoV-2 VLPを含んでいてもよい。ここで、2種類のSARS-CoV-2 VLPを含むとは、SARS-CoV-2株Xのスパイクポリペプチドを含むSARS-CoV-2 VLPと、Xとは異なるSARS-CoV-2株Yのスパイクポリペプチドを含むSARS-CoV-2 VLPとを含むことを意味する。2種以上のSARS-CoV-2 VLPに含まれるSARS-CoV-2スパイクポリペプチドは、上記表1に示した12種類のSARS-CoV-2株のSARS-CoV-2スパイクポリペプチド、及び、本発明を実施する時点で新たに発生している、表1の株以外の変異株のSARS-CoV-2スパイクポリペプチドから自由に選択できる。例えば、少数の種類のSARS-CoV-2 VLPを含む検出キットを基本のキットとし、様々なSARS-CoV-2変異株のSARS-CoV-2 VLPを基本キットとは別個にオプション試薬として提供することも可能である。
本発明の検出キットを用いた検体中の抗SARS-CoV-2中和抗体の検出方法は、以下の工程を含む。
(A) SARS-CoV-2 VLPと検体を混合して混合液を調製する。
(B) 上記混合液、及び検体非添加のSARS-CoV-2 VLPを、検出キットの動物培養細胞にそれぞれ添加して反応させる。
(C) 反応後の細胞を洗浄後、第1及び第2のポリペプチドの結合により形成されたタンパク質のレポーター活性を測定する。
(D) 検体非添加のSARS-CoV-2 VLPを添加した条件で測定されたレポーター活性レベルと、上記混合液を添加した条件で測定されたレポーター活性レベルを対比し、活性レベルの低下率を算出する。
検体は、被検者から分離された検体であり、抗SARS-CoV-2中和抗体が含まれると想定される検体であれば特に限定されない。検体の具体例として、全血、血清、血漿、唾液、鼻腔スワブ、咽頭スワブ、鼻咽頭スワブ等が挙げられるが、これらに限定されない。1つの態様において、検体は全血、血清又は血漿である。別の態様において、検体は血清又は血漿である。さらに別の態様において、検体は血清である。被検者は哺乳動物であり、典型例としてヒトを挙げることができる。血中に抗SARS-CoV-2中和抗体が存在するかどうかを調べることが望まれる被検者であればいかなる被検者でもよく、SARS-CoV-2ワクチン接種前の被検者、SARS-CoV-2ワクチン接種後の被検者、SARS-CoV-2感染歴のある被検者、SARS-CoV-2感染歴が不明な被検者、COVID-19患者、回復期COVID-19患者、無症状のSARS-CoV-2感染者等が包含される。
工程(A)において、検体は、目的に応じて適した倍率で希釈してSARS-CoV-2 VLPと混合する。本発明の検出方法の実施態様には、後述する定量的検出と定性的検出の2態様があるが、定量的検出では段階希釈した一連の希釈検体(希釈検体系列)を、定性的検出では一定の希釈率で希釈した検体を用いる。2種類以上のSARS-CoV-2 VLPを用いる場合は、それぞれのSARS-CoV-2 VLPと希釈検体ないしは希釈検体系列を混合して2種類以上の混合液ないしは混合液系列を調製する。詳細は後述する。
工程(B)では、工程(A)で調製した混合液と、検体を混合していない検体非添加のSARS-CoV-2 VLPを用いる。検出キットの動物培養細胞は、予めウェルプレートの各ウェルに103~105個/ウェル程度の密度で播種しておき、上記の混合液及び検体非添加のSARS-CoV-2 VLPをそれぞれウェルに添加し、数時間(例えば3時間程度)反応させる。この反応時間中に、SARS-CoV-2 VLPが動物培養細胞内に侵入する。動物培養細胞内に侵入したSARS-CoV-2 VLPは、膜融合後、第1のポリペプチドが結合したカプシドタンパク質を細胞内に放出する。動物培養細胞内には第2のポリペプチドが存在するため、細胞内に放出されたカプシド上の第1のポリペプチドと第2のポリペプチドが結合し、レポーター活性を有するタンパク質が形成される。検体中に抗SARS-CoV-2中和抗体が存在する場合は、SARS-CoV-2 VLPの動物培養細胞内への侵入や膜融合が阻害されるため、動物培養細胞内でのレポーター活性が低下することになる。
工程(C)では、反応後の細胞を洗浄後、第1及び第2のポリペプチドの結合により形成されたタンパク質のレポーター活性を測定する。第1及び第2のポリペプチドの結合により形成されるタンパク質のレポーター活性に応じて測定方法を選択する。レポーター活性がルシフェラーゼ活性である場合には、洗浄後の細胞に適当な基質物質(例えば、レポーター活性タンパク質がNanoLuc(登録商標)である場合はフリマジン等)を添加し、発光反応をルミノメーターで測定すればよい。
工程(D)では、検体非添加のSARS-CoV-2 VLPを添加した条件で測定されたレポーター活性レベルに対し、上記混合液を添加した条件で測定されたレポーター活性レベルがどの程度低下したか(低下率)を算出する。検体非添加条件のレポーター活性レベルに対して低下したレポーター活性が、検体中に抗SARS-CoV-2中和抗体が存在することの指標となる。低下率が高いほど、検体中の抗SARS-CoV-2中和抗体濃度ないし力価が高いことを示す。低下率は、下記の式により求めることができる。
低下率(%)=(X検体なし-X検体あり)/(X検体なし-Xブランク)×100
X検体なし:検体非添加のSARS-CoV-2 VLPを添加した動物培養細胞で測定されたレポーター活性レベル
X検体あり:検体とSARS-CoV-2 VLPとの混合液を添加した動物培養細胞で測定されたレポーター活性レベル
Xブランク:SARS-CoV-2 VLPを添加していない動物培養細胞で測定されたレポーター活性レベル
本発明の検出方法は、検体中の抗SARS-CoV-2中和抗体を定量検出する方法として実施することができる。この場合は、工程(A)において、1つの検体を段階希釈した検体段階希釈液をSARS-CoV-2 VLPとそれぞれ混合し、検体とSARS-CoV-2 VLPの一連の混合液(混合液系列)を調製する。段階希釈は、例えば、20倍~12500倍程度の範囲で数段階の希釈を行なえばよい。工程(B)では、混合液系列の各混合液を動物培養細胞にそれぞれ添加し、工程(C)においてそれぞれの細胞でレポーター活性を測定する。工程(D)では、測定された各レポーター活性レベルを、検体非添加のSARS-CoV-2 VLPを添加した細胞で測定されたレポーター活性レベルと対比し、それぞれについて低下率を算出する。得られた低下率をプロットし、低下率50%の検体濃度を中和抗体価として算出することにより、中和抗体価(50%阻害濃度)を算出することができる。この定量的検出法は、感染性のあるSARS-CoV-2生ウイルスを用いた中和試験法とほぼ相関することが、下記実施例において確認されている(図1D)。
2種類以上のSARS-CoV-2 VLPを用いることで、各SARS-CoV-2株に対する中和抗体を定量的に検出することができる。
また、本発明の検出方法は、迅速簡便な定性的検出法として実施することができる。この場合、検体の希釈倍率を一定の倍率に固定し、レポーター活性レベルの低下率に対してカットオフ値を設定する。工程(A)では、所定の倍率で希釈した希釈検体とSARS-CoV-2 VLPを混合して混合液を調製する。工程(D)で算出したレポーター活性の低下率が所定のカットオフ値以上であった場合に、SARS-CoV-2感染に対する防御力を発揮できるレベルの濃度ないし力価で検体中に抗SARS-CoV-2中和抗体が検出された(中和抗体陽性)と判定することができる。この簡易定性検出法は、ダイナミックレンジが低い等の短所があるが、段階希釈が不要である(ハイスループット性)、わずか数時間で検出結果が得られる(迅速性)、変異体パネルを一括で評価できる(網羅性)という優れた利点を有する。
検体の希釈倍率は、例えば、10倍~30倍の範囲から選択することができる。下記実施例では血清検体で簡易定性検出法を実施しているが、血漿検体中の中和抗体濃度は血清検体とほぼ同じであるため、血漿検体も血清検体と同じ希釈倍率で簡易定性検出法を実施できる。その他の検体(全血、唾液、鼻腔スワブ、咽頭スワブ、鼻咽頭スワブ等)も、10倍~30倍の範囲で希釈して使用しうる。
カットオフ値は、従来法である遺伝子組換ウイルスベクターを用いた中和試験(シュードウイルス法)(非特許文献1)により測定された中和抗体力価(50%阻害濃度、NT50)が50倍以上となる検体と50倍未満となる検体とを有意に区別することができる低下率の値を選択することができる。従来法のシュードウイルス法は、HIV-1コア及びSARS-CoV-2スパイクを有する感染性のSARS-CoV-2シュードウイルス及びVeroE6/TMPRSS2細胞を使用する方法である。該シュードウイルスはLuc遺伝子を有しており、感染細胞内でLuc遺伝子が発現する。段階希釈した検体希釈系列の共存下でVeroE6/TMPRSS2細胞にシュードウイルスを感染させ、48時間程度経過後にルシフェラーゼ活性を定量し、検体希釈率とルシフェラーゼ活性測定値をプロットし、50%阻害となる検体希釈率を中和抗体価(NT50)として算出する。このシュードウイルス法により求めた中和抗体価が50倍以上である場合に、SARS-CoV-2感染に対し十分な防御を発揮できることが、アカゲザルを用いたin vivo実験により示されている(McMahan et al., Nature 590, 630-634 (2021))。中和抗体を様々な濃度で含む検体及び含まない検体を複数準備し(できるだけ多数であることが好ましい)、各検体について、シュードウイルス法による中和抗体価と本発明の検出方法による低下率をそれぞれ求め、シュードウイルス法による中和抗体価が50倍未満の検体と50倍以上の検体を有意に区別できる低下率を調べればよい。10倍~30倍で希釈した検体を使用する場合に、上記のようにして設定されるカットオフ値は、例えば、30%~50%の範囲、又は35%~45%の範囲から選択される値であり得る。血漿検体中の中和抗体濃度は血清検体とほぼ同じであるため、血清検体と血漿検体には同じカットオフ値を採用できる。その他の検体(全血、唾液、鼻腔スワブ、咽頭スワブ、鼻咽頭スワブ等)も、10倍~30倍希釈した検体に対し、30%~50%の範囲でカットオフ値を設定しうる。
2種類以上のSARS-CoV-2 VLPを用いることで、複数のSARS-CoV-2株に対する中和抗体が検体中に存在するか否かを調べることができる。例えば、あるSARS-CoV-2ワクチンの接種により、複数のSARS-CoV-2変異株に対する中和抗体が誘導されたかどうかを調べることができるので(図4参照)、ワクチンの性能評価(各種変異株に対して有効か否かの評価)やワクチン接種者の変異ウイルスに対する中和抗体保有状況を迅速簡便に調べることができる。
また、本発明は、1種類又は2種類以上のSARS-CoV-2 VLPを含む、ウイルス様粒子のパネルを提供する。SARS-CoV-2 VLPは上記で説明した通りであり、任意のエンベロープウイルスのカプシドポリペプチドと、レポーター活性を有するタンパク質の部分断片(検出キットにおける第1のポリペプチドに相当)と、上記(1)~(12)から選択されるいずれかのSARS-CoV-2スパイクポリペプチドとを含む。このパネルには、SARS-CoV-2以外のウイルスのスパイクポリペプチドを用いて同様に調製したウイルス様粒子をさらに含んでいてもよい。第2のポリペプチドに相当する、レポーター活性タンパク質の別の領域で構成される第2の部分断片を含む動物培養細胞とこのパネルを組み合わせて使用することで、本発明の抗SARS-CoV-2中和抗体の検出方法と同様の原理で検体中の様々なウイルスに対する中和抗体を検出することができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1.HiBiTタグ付きウイルス様粒子(HiBiT-tagged virus-like particle; hiVLP)を用いた抗SARS-CoV-2中和抗体検出のためのhiVNTシステムの構築
プロメガ社のHiBiT技術を利用してSARS-CoV-2の中和抗体(以下、nAbsと略記することがある)を容易に検出できるHiBiT-VLPベースの中和試験(HiBiT-tagged Virus-like particle Neutralizing antibody Test; hiVNT)を開発した(図1A)。
[材料及び方法]
倫理規定
本研究は,横浜市立大学認定Institutional Review Board(Reference No.B200200048, B160800009)の承認を得ており,本研究で使用したプロトコールは倫理委員会の承認を得ている。患者または家族・保護者から書面によるインフォームド・コンセントを得た。
細胞とプラスミド
HEK293細胞(ATCC #CRL-1573)およびVeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB #1819、SARS-CoV-2受容体ACE2を発現するVeroE6細胞にTMPRSS2を恒常発現させた細胞)は,10% FBSを含むDMEMで培養した。VeroE6/TMPRSS2-LgBiT細胞は、Neon Transfection System(Thermo社)を用いてpCMV-HaloTag-LgBiT(Promega社)をVeroE6/TMPRSS2細胞にトランスフェクションし、ハイグロマイシン(500μg/ml)で選択して作製した。LgBiT遺伝子の塩基配列及びコードされるアミノ酸配列を配列番号63, 64に示す。
pHIV-GagPol-HiBiTは、コドン最適化されたHIV-1 Gag-PolをコードするDNA(配列番号69)を人工遺伝子合成してプラスミドpHIV-GagPolを調製し、そのカプシド(CA)領域にHiBiTコード配列(配列番号61)を挿入することによって構築した。
SARS-CoV-2 Spike遺伝子は、野生株(NC_045512.2、又はMN908947.3)のスパイク遺伝子(配列番号1)に基づいて合成した。細胞膜への輸送を促進するため、スパイク遺伝子のN末端シグナルペプチド(第1番~第14番残基)をCD5シグナル配列(MPMGSLQPLATLYLLGMLVASCLG、配列番号50)に置換し、かつ、C末端のER保持シグナル(19アミノ酸)を欠失させた。合成したSARS-CoV-2 Spike遺伝子をpcDNA6.2-FLAGベクターに挿入することにより、C末端にFLAGタグ(配列番号52)を付加した野生型CD5 signal-nCoV-Spike(ΔC)-Flagタンパク質(配列番号26)を発現可能なプラスミドpcDNA-CD5 signal-nCoV-Spike(ΔC)-Flagを構築した。
イムノブロッティング解析
SDSローディングバッファーに溶解したサンプルを10-20%ポリアクリルアミドゲル(Wako)にロードして電気泳動し、PVDF膜(Merck)にブロッティングした。膜は、抗SARS-CoV-2 Spike S2 (clone 1A9, GeneTex #632604)または抗HIV p24 (clone 183-H12-5C, NIH AIDS Reagent Program #3537)抗体と西洋ワサビペルオキシダーゼ標識二次抗体(Cytiva)でプローブした。検出されたタンパク質はLuminoGraph imaging system (ATTO)を用いて可視化した。
HiBiTを含むSARS-CoV-2 VLP(hiVLP-SARS2)の作製
hiVLP-SARS2は、pHIV-GagPol-HiBiTとpcDNA-CD5 signal-nCoV-Spike(ΔC)-Flagを1:1の割合でHEK293細胞に一過性にトランスフェクションすることで作製した。トランスフェクションから48時間後にVLPを含む培養上清を回収し、0.45μmのMillex-HVフィルター(Merck)でろ過した。VLPに取り込まれたHiBiTタグとp24カプシド抗原は,それぞれNano-Glo HiBiT Lytic Detection System(Promega)とHIV-1 p24抗原ELISA(Zepto Metrix)で測定した。
hiVLP-SARS2を用いた中和アッセイ(hiVNT)
96ウェルプレートに播種したVeroE6/TMPRSS2-LgBiT細胞を洗浄し、希釈した血清(図2Aおよび3では1:20、図2Bでは1:20~1:12500の希釈)を含むhiVLP-SARS2ストック(50μl)を接種した。いくつかの実験では、血清の代わりに抗スパイク中和抗体(1:100、Sino Biological #40592-MM57)またはCamostat mesilate(20μM、Wako #039-17761)を混合液に加えた。接種から3時間後に、細胞をPBSで洗浄し、DrkBiTペプチド(1μM)を含む100μlのPBSで2分間処理した。その後、細胞に25μlの1x Nano-Glo Live Cell Substrate(Promega)を加えた。ルシフェラーゼ活性はGloMax Discover System (Promega)で測定した。
SARS-CoV-2ウイルスを用いた中和アッセイ
SARS-CoV-2ウイルス(JPN/TY/WK-521)は、日本の国立感染症研究所から入手した。中和アッセイのために、96ウェルプレートに播種したVeroE6/TMPRSS2細胞を洗浄し、SARS-CoV-2(moi = 0.05)および5倍段階希釈した血清(1:100~1:62500希釈)を含む100μlの培地に感染させた。感染48時間後に、細胞を洗浄し、40μlのCellTiter-Glo Substrate(Promega)を加えた。細胞の生存率は、GloMax Discover System(Promega)で測定した。
中和力価
中和力価(NT50)は、Prism 8.3.1ソフトウェア(GraphPad)で求めた半減期阻害濃度に基づいて算出した。中和率(%)は以下のように算出した。
(RLU(血清なし)-RLU(血清あり))/(RLU(血清なし)-RLU(ブランク))×100
ELISA
SARS-CoV-2 NPおよびSPリコンビナントタンパク質を96ウェルプレート(Nunc社)に4℃で一晩コーティングした。5%BSA(PBS)を用いて室温で1時間ブロッキングした後,希釈した血清(1:100)を各ウェルに1時間かけて添加した。その後、PBS-T(0.05% Tween-20を含むPBS)でウェルを洗浄し、HPR結合ヤギ抗ヒトIgMまたはIgG抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。PBS-Tで洗浄した後、1-step TMB基質(Thermo社)を加え、0.5M H2SO4で反応を停止し、450 nmで吸光度を測定した。
統計解析
すべての棒グラフは、平均値と標準偏差を示している。2群間の差の統計的有意性は,Prism 8ソフトウェア(GraphPad)を用いた対応のない両側t検定で評価した。
[結果]
我々はまず、VLPを生成するための最小サブユニットであるHIV-1 GagにHiBiTタグを挿入した。コドン最適化したHIV-1 Gag配列(配列番号58)へのHiBiTタグの挿入部位を3通り(カプシドのN末端領域、N末ドメインとC末ドメインの間、C末端領域)検討した結果、Gagのカプシド(CA)遺伝子のC末端領域にHiBiTタグを挿入するのが最も効果的であることがわかった(図2A)。そこで、以下の実験では、C末端領域にHiBiTタグを挿入したGag-HiBiT遺伝子(配列番号59)を使用した。このGag-HiBiT遺伝子は、CAタンパク質(配列番号54)の220番Glyと221番Valの間(配列番号57に示したGagタンパク質配列中では352番目と353番目の間)にHiBiTタグが挿入された構造を有する。
HiBiTタグは、その相補的な大きなサブユニットであるLgBiTと高親和性で結合し、ルシフェラーゼ(NanoLuc)を形成することができる(Sasaki et al., 2018)。予想通り、HiBiTを含むSARS-CoV-2 VLP(hiVLP-SARS2)は、リコンビナントLgBiTとフリマジン基質の添加により発光することができた。カプシド抗原にHiBiTタグを付加したため、発光強度はカプシド抗原の量と相関していた(図2B)。Gag-Pol-HiBiTとSARS-CoV-2スパイクの発現ベクターを共導入することで、hiVLP-SARS2を作製し、細胞やウイルスのライセートで発現を確認した(図2C)。
SARS-CoV-2は、膜貫通セリンプロテアーゼ2(transmembrane serine protease 2; TMPRSS2, Gene ID: 7113)を恒常的に発現させたVeroE6細胞(VeroE6/TMPRSS2細胞)に高効率で感染することができる(Matsuyama et al. 2020)。そこでLgBiT発現VeroE6/TMPRSS2細胞を作製し、hiVLP-SARS2を滴下して3時間インキュベートすると、細胞内のNanoLuc活性が上昇した(図1B、図2D)。さらに、TMPRSS2阻害剤(Camostat mesylate)や、抗Spikeモノクローナル抗体で前処理すると、発光シグナルが低下した(図2E)。VSVgエンベロープを持つhiVLPでは、発光シグナルの減少は観察されなかった(図2E)。このことは、hiVLP-SARS2が、本物のSARS-CoV-2と同様に、ウイルスのスパイクと細胞の受容体との相互作用によって標的細胞に侵入することを示唆している。
次に、新たに開発したhiVLP-SARS2システムが、COVID-19患者の血清中の中和抗体を検出できるかどうかを検証した。中和アッセイは、以下の手順に従って実施した。VeroE6/TMPRSS2-LgBiT細胞を、接種の1日前に104個/ウェルの密度で96ウェル白色プレートに播種した。回復期COVID-19患者由来の脱補体化血清をhiVLP-SARS2と混合し、この混合液をVeroE6/TMPRSS2-LgBiT細胞に接種した。3時間後、細胞をPBSで洗浄し、NanoLucの発光を測定した。その結果、試験したすべての患者の血清が、程度の差こそあれ、hiVLP-SARS2の侵入を阻止できることがわかり(図1C)、SARS-CoV-2に対する中和抗体の存在が示唆された。2つの回復期血清と1つの健常ドナー由来血清をhiVNTとSARS-CoV-2中和試験とで検査したところ、両方の検査で同様の結果が得られ(図1D)、hiVNTの性能が本物のSARS-CoV-2を用いた中和試験と一致していることが示唆された。中和試験に代わる代替抗体検出法が広く検討されていることから、hiVNTで検出した中和抗体とELISAで検出した抗体価との相関関係を確認した。74個のCOVID-19陽性血清サンプル中でELISAにより検出される抗体価に対し、hiVNTの結果をマッチさせた。その結果、中和抗体レベルは、ヌクレオカプシド(NP)およびスパイク(SP)タンパク質に対するIgM抗体ではなく、これらに対するIgG抗体と相関していることがわかった(図1E)。以上のことから、今回開発したhiVNTは、COVID-19からの回復者の血清中中和抗体を迅速に検出するのに有用であるといえる。
[考察]
hiVNTアッセイの原理は従来の中和アッセイと同様で、ウイルスの侵入と膜融合に基づいており、結果を単純化するためにNanoLucルシフェラーゼ活性を測定している。中和試験やプラーク減少中和試験の欠点を考慮すると、個人に免疫パスポートを付与し得る試験は時代の要請であり、この目的のため、より詳細な血清学的研究が必要であるにもかかわらず様々なプラットフォームが利用されている。シュードウイルスを用いた中和試験は、BSL3施設の必要性を克服しハイスループットを実現することから、中和抗体を検出するための一般的な代替手段となっている(Muruato et al., 2020)。これらの検査では、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を細胞侵入用にもっており、レポーター遺伝子を挿入したゲノムを有するシュードウイルスを使用する。この検査法はシュードウイルスが感染した標的細胞におけるレポーター遺伝子の発現に依存しており、その検出には24~48時間かかる。それに比べて、我々が開発したhiVNTは遺伝子発現を伴わないため、ターンアラウンドタイムをわずか3時間程度に短縮することができる。シングルセルシーケンシングも同じ利点を有する可能性があるが(Cao et al., 2020)、特殊で高価な機器が必要であることが実用化の妨げとなっている。
COVID-19の回復期患者の血清中の抗ウイルス抗体の測定は、SARS-CoV-2中和抗体の存在を反映する代替マーカーとして機能する可能性について研究されている(Tan et al., 2020)。少数のサンプルサイズ(n=74)で得られた我々の知見から、IgGはIgMよりも優れた代替マーカーとして機能する可能性があることが明らかになった。しかし、中和抗体検出のための血清診断法の使用には、いくつかの固有の欠点がある可能性がある。すべてのCOVID-19感染症は体液性免疫反応を引き起こすが、抗体の存在は免疫を反映するものではない。また、軽度のCOVID-19感染症では体液性反応が非常に低く、血清学的検査では検出されない可能性がある (Ozcurumez et al., 2020)。このような状況では、代替抗体検出検査は誤った結果をもたらす可能性がある。さらに、SARS-CoV-2は、ウイルス粒子表面のスパイクタンパク質のS1サブユニット内に存在し、宿主表面のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に結合する受容体結合ドメイン(RBD)を介して宿主細胞に感染する。抗RBD抗体を検出するELISAキットは、血清中の中和抗体を検出するためにビトロで生成したスパイクタンパク質やその誘導体を使用している。しかしながら、スパイクタンパク質は生体内では糖化やオリゴマー化を受けるため(Xiao et al., 2004; Walls et al., 2020)、ビトロで作製したスパイクタンパクの性能、およびその臨床的意義は、その製造方法によって異なるおそれがある。また、スパイクタンパクの他の領域を標的にした中和抗体、例えばS2サブユニットの融合ペプチドの機能を抑制する中和抗体も存在するが、S1やRBDをベースとしたELISAではこのような中和抗体を検出できないおそれがある(Chi et al, 2020)。
本研究では、症候性または無症候性のCOVID-19から回復した人の血清中のSARS-CoV-2中和抗体を定量的かつ迅速に測定するためのシンプルでハイスループットなアッセイシステムであるhiVNTを確立した。hiVNTシステムは、BSL2に準拠した検査を可能にし、迅速に定量的な結果を得ることができる。また、ルシフェラーゼフラグメント相補法は、優れた感度を持つことが実証されており、384または1536ウェルプレートフォーマットに小型化することが可能である。hiVNTは、防御免疫を持つ個人の特定、集団の感受性に関する疫学研究、伝播モデル、治療に使用される回復期血漿の評価、ワクチンの評価などに役立つと考えているが、これらすべてをバイオセーフティの低い環境でハイスループットかつ短時間で行うことができる。
参考文献
Cao, Y., Su, B., Guo, X., et al. (2020). Potent Neutralizing Antibodies against SARS-CoV-2 Identified by High-Throughput Single-Cell Sequencing of Convalescent Patients' B Cells. Cell 182, 73-84 e16.

Chi, X., Yan, R., Zhang, J., et al. (2020). A neutralizing human antibody binds to the N-terminal domain of the Spike protein of SARS-CoV-2. Science 369, 650-655.

Matsuyama, S., Nao, N., Shirato, K., et al. (2020). Enhanced isolation of SARS-CoV-2 by TMPRSS2-expressing cells. Proc Natl Acad Sci U S A 117, 7001-7003.

Muruato, A.E., Fontes-Garfias, C.R., Ren, P., et al. (2020). A high-throughput neutralizing antibody assay for COVID-19 diagnosis and vaccine evaluation. Nat Commun 11, 4059.

Nie, J., Li, Q., Wu, J., et al. (2020). Establishment and validation of a pseudovirus neutralization assay for SARS-CoV-2. Emerg Microbes Infect 9, 680-686.

Ozcurumez, M.K., Ambrosch, A., Frey, O., et al. (2020). SARS-CoV-2 antibody testing-questions to be asked. J Allergy Clin Immunol 146, 35-43.

Sasaki, M., Anindita, P.D., Phongphaew, W., et al. (2018). Development of a rapid and quantitative method for the analysis of viral entry and release using a NanoLuc luciferase complementation assay. Virus Res 243, 69-74.

Tan, C.W., Chia, W.N., Qin, X., et al. (2020). A SARS-CoV-2 surrogate virus neutralization test based on antibody-mediated blockage of ACE2-spike protein-protein interaction. Nat Biotechnol.

Walls, A.C., Park, Y.J., Tortorici, M.A., et al. (2020). Structure, Function, and Antigenicity of the SARS-CoV-2 Spike Glycoprotein. Cell 181, 281-292 e286.

Xiao, X., Feng, Y., Chakraborti, S., et al. (2004). Oligomerization of the SARS-CoV S glycoprotein: dimerization of the N-terminus and trimerization of the ectodomain. Biochem Biophys Res Commun 322, 93-99.
実施例2.hiVNTシステムを用いたワクチン接種者血清中のSARS-CoV-2変異株に対する中和抗体の測定
[材料及び方法]
倫理規定
本研究は、横浜市立大学認定Institutional Review Board(Reference No. B160800009, B200600115, B210300001)の承認を得ており、本研究で使用したプロトコールは倫理委員会の承認を得ている。全ての研究参加者から書面によるインフォームド・コンセントを得た。
細胞とプラスミド
使用した細胞及びその取扱いは実施例1の「細胞とプラスミド」に記載の通り。
pHIV-GagPol-HiBiTは、実施例1で構築した、CAのC末端領域にHiBiTタグを挿入したGag-HiBiT遺伝子(配列番号59)を使用した。
hiVLP-SARS2構築のためのSARS-CoV-2 Spike遺伝子は、野生型SARS-CoV-2(NC_045512.2)のスパイク遺伝子にD614G変異が入った従来株、及びこれまでに知られている各種の変異株(表3)のスパイク遺伝子に基づいて合成した。実施例1と同様に、各スパイク遺伝子のN末端シグナルペプチド(第1番~第14番残基)をCD5シグナル配列に置換し、かつ、C末端のER保持シグナル(19アミノ酸)を欠失させ、C末側にFLAGタグを付加した構造とした。スパイク全長を人工遺伝子合成(ユーロフィンに委託)、又は、野生株若しくは従来株のプラスミドを鋳型として、PrimeSTAR(登録商標) Mutagenesis Basal Kit (Takara) もしくは In-Fusion(登録商標) Snap Assembly Master Mix (Takara)を製造者のプロトコールに従い使用して変異を導入することにより、各種CD5 signal-nCoV-Spike(ΔC)-Flagを発現可能なプラスミドpcDNA-CD5 signal-nCoV-Spike(ΔC)-Flagを構築した。
Figure 2023014408000003
hiVLPの作製
実施例1の「HiBiTを含むSARS-CoV-2 VLP(hiVLP-SARS2)の作製」と同様の方法で、各種の変異型hiVLP-SARS2(以下、hiVLPと略記する)を作製した。
改変hiVNT
VeroE6/TMPRSS2-LgBiT細胞に接種するhiVLPストックの調製に使用する希釈血清の希釈率を1:20で固定したほかは、実施例1の「hiVLP-SARS2を用いた中和アッセイ(hiVNT)」と同様にしてhiVNTを行なった。
下記の式にて発光シグナル阻害(%)を算出した。
(RLU(血清なし)-RLU(血清あり))/(RLU(血清なし)-RLU(ブランク))×100
統計解析
2群間の差の統計的有意性は,Prism 8ソフトウェア(GraphPad)を用いた対応のない両側t検定で評価した。
[結果]
SARS-CoV-2中和抗体の定量検出のための改変hiVNTの確立
プロトタイプウイルス(D614G)及び変異株7株(B.1.1.7, B.1.351, P.1, R.1, B.1.617, B.1.429, 及びB.1.526) (図3A)のスパイクを使用して作製した計8種のhiVLPを使用した。血清中和抗体が変異型hiVLPを中和した場合、レポーター細胞への当該変異型hiVLPのエントリーが妨げられ、励起される発光が低下する(図3B)。COVID-19患者(n=97)及び健常者(n=43)の血清を使用し、シュードウイルスベースの中和アッセイにより事前に定めた中和力価(NT50)にてhiVNTの条件を至適化した。血清の希釈率を1:20固定で、標準的なシュードウイルス中和アッセイにおける陽性カットオフ値である50付近のNT50に相当する中和力価をhiVNTアッセイにより検出できた。次いで、hiVNTアッセイでサンプルの発光シグナル阻害が40%を超えた場合に、当該サンプルが中和活性を有すると決定した(図3C)。受信者動作特性(ROC)曲線は、この40%というカットオフ値が中和抗体の存在を高い正確度で検出可能であることを示した(図3D)。希釈率固定でhiVNTを実施するという改変により、検出操作を簡易化し、ターンアラウンドタイムを低減しつつ標準的中和アッセイと同等のパフォーマンスを達成できる。
SARS-CoV-2の懸念される変異株に対するワクチン接種者血清の中和活性
3週間空けて2回のワクチン接種(ファイザー社製BNT162b2 mRNAワクチン)を受けた健常な医療従事者より研究サンプルを採取した。ワクチン接種者血清は、初回接種の前、初回接種の2週間後、2回目接種の1週間後の計3回採取した。初回接種の前に採取した血清は全て、NP-IgG検出アッセイ[5]で血清陽性反応を調べ、ワクチン接種者を未感染者(n=105)と既感染者(n=6)の2グループに分けた。
未感染者の57.1% (60/105)が、初回接種後に従来株(D614G)に対する中和抗体に陽性化した。しかしながら、変異株(B.1.526を除く)に対する中和抗体ははるかに低かった(16.2-39.0%) (図4A, 中央パネル)。
初回接種後は中和抗体の着実な増加が観察され、2回目接種後には大部分の未感染接種者において全ての変異株に対する有意な中和抗体レベルが達成された(図4A, 右パネル)。ワクチンで誘導された中和抗体は、89.5% (94/105)であったB.1.351を除き、全ての変異株に対して94%超という高い阻害率中央値を有していた。既感染者は、初回接種前に中和抗体が閾値未満の人もいたが、初回接種後は6名全員有意な中和抗体レベルを達成していた(図4B)。
[考察]
アウトブレークした当初の野生型株との非類似度が異なる複数のSARS-CoV-2変異株が出現し、急速に広まっている。現在利用可能なワクチンは流行初期のウイルス株の抗原決定基に依拠しており、様々な非類似度の変異株の急速な広まりは、防御免疫を提供するワクチンの効力に関して懸念を生じさせている。近年研究されている変異株のうち、B.1.351、P.1、R.1のようなE484K変異を有する株は、感染及びワクチンで誘導される中和抗体を逃避するので悪名高い[2]。
ワクチン逃避の疑いをクリアにするため、我々は、中和抗体を逃避する性質が強いと推定されている近年急増中のB.1.617二重変異(E484Q及びL452R)を含めた広範な変異株パネルを開発した。ワクチンの有効性評価に関する日本発の最初の報告である本報告において、我々は、疫学的に関連性のあるSARS-CoV-2変異体に対しBNT162b2 mRNAワクチンが適切な有効性を有することを明らかにした。全ての変異株でワクチン逃避が注目されたが少数のフラクションのみであり、B.1.351変異株に対してより高かった。サンプルサイズが小さかったが、既報[6]と同様に、既感染者においてはワクチン接種1回で防御液性応答を十分に誘発した。血清中の対応中和抗体の存在にもかかわらず、変異株はワクチンブレークスルー感染を引き起こすことができ、このことは循環血中の中和抗体が粘膜表面で感染を防ぐ保護作用を提供しないおそれがあることを示唆している[7]。
本研究では、BNT162b2 mRNAワクチンが近年流行している主要なSARS-CoV-2変異株に対して液性免疫を活性化できることを示した。改変hiVNTは従来の中和アッセイに対し迅速、安全、簡潔かつ網羅的という利点を有している。しかしながら、本アッセイは定性的であり、中和抗体力価の長期持続性と防御期間に関連があるかもしれない比較的高レベルの中和抗体力価を定量化することはできない。SARS-CoV-2変異株のパネルと1種のプロトタイプウイルスを使用することで、改変hiVNTは、進行中のCOVID-19パンデミックにおいてワクチン/免疫パスポートを付与しうる防御免疫を検出するための地域社会全体に及ぶラージスケールの検査に有用であろう。ワクチンによる選択圧が新たなワクチン逃避変異株の進化を引き起こすと考えられ、今後はこれをモニターしなければならないが、新たな変異株のスパイクを用いたhiVNTアッセイが役立つと期待される。
参考文献
[1] Wang P, Nair MS, Liu L, et al. Antibody resistance of SARS-CoV-2 variants B.1.351 and B.1.1.7. Nature. 2021.
[2] Gomez CE, Perdiguero B, Esteban M. Emerging SARS-CoV-2 Variants and Impact in Global Vaccination Programs against SARS-CoV-2/COVID-19. Vaccines (Basel). 2021;9(3).
[3] Miyakawa K, Jeremiah SS, Ohtake N, et al. Rapid quantitative screening assay for SARSCoV-2 neutralizing antibodies using HiBiT-tagged virus-like particles. J Mol Cell Biol. 2021;12(12):987-990.
[4] Schwinn MK, Machleidt T, Zimmerman K, et al. CRISPR-Mediated Tagging of Endogenous Proteins with a Luminescent Peptide. ACS Chem Biol. 2018;13(2):467-474.
[5] Kubo S, Ohtake N, Miyakawa K, et al. Development of an Automated Chemiluminescence Assay System for Quantitative Measurement of Multiple Anti-SARS-CoV-2 Antibodies. Front Microbiol. 2020;11:628281.
[6] Stamatatos L, Czartoski J, Wan YH, et al. mRNA vaccination boosts cross-variant neutralizing antibodies elicited by SARS-CoV-2 infection. Science. 2021.
[7] Hacisuleyman E, Hale C, Saito Y, et al. Vaccine Breakthrough Infections with SARS-CoV-2 Variants. N Engl J Med. 2021.

Claims (16)

  1. 第1のポリペプチドと、任意のエンベロープウイルスのカプシドポリペプチドと、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)のスパイクポリペプチドとを含む、ウイルス様粒子、及び
    細胞表面にSARS-CoV-2受容体を有し、かつ、第1のポリペプチドとの結合によりレポーター活性を有するタンパク質を形成可能な第2のポリペプチドを細胞内に含む、動物培養細胞
    を含む、抗SARS-CoV-2中和抗体の検出キット。
  2. 任意のエンベロープウイルスがヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、請求項1記載の検出キット。
  3. 第1のポリペプチドが、HIVカプシドポリペプチドのC末ドメイン中に含まれる、請求項2記載の検出キット。
  4. 第1のポリペプチドが、配列番号54に示すHIVカプシド配列中の第188番~第231番アミノ酸の領域内のいずれかの部位に挿入されている、請求項3記載の検出キット。
  5. 前記レポーター活性がルシフェラーゼ活性である、請求項1~4のいずれか1項に記載の検出キット。
  6. 第1のポリペプチドが、配列番号62に示すアミノ酸配列のポリペプチドであり、第2のポリペプチドが、配列番号64に示すアミノ酸配列のポリペプチドである、請求項5記載の検出キット。
  7. SARS-CoV-2受容体が、アンジオテンシン変換酵素2、ニューロピリン1、CD147、DC-SIGN、L-SIGN、及びGRP78から選択される少なくとも1種の分子である、請求項1~6のいずれか1項に記載の検出キット。
  8. 前記動物培養細胞は、膜貫通セリンプロテアーゼ2を発現する細胞である、請求項1~7のいずれか1項に記載の検出キット。
  9. 1種類のSARS-CoV-2スパイクポリペプチドを含む1種類のウイルス様粒子、又は、異なるSARS-CoV-2スパイクポリペプチドをそれぞれ含む2種類以上のウイルス様粒子を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の検出キット。
  10. SARS-CoV-2スパイクポリペプチドが、下記(1)~(12)から選択される1種類又は2種類以上のポリペプチドである、請求項9記載の検出キット。
    (1) 配列番号2に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (2) 配列番号4に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (3) 配列番号6に示すアミノ酸配列中の第15番~第1251番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (4) 配列番号8に示すアミノ酸配列中の第15番~第1251番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (5) 配列番号10に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (6) 配列番号12に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (7) 配列番号14に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (8) 配列番号16に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (9) 配列番号18に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (10) 配列番号20に示すアミノ酸配列中の第15番~第1252番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (11) 配列番号22に示すアミノ酸配列中の第15番~第1252番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (12) 配列番号24に示すアミノ酸配列中の第15番~第1247番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の検出キットを用いて検体中の抗SARS-CoV-2中和抗体を検出する方法であって、
    前記ウイルス様粒子と検体を混合して混合液を調製すること、
    前記混合液、及び検体非添加の前記ウイルス様粒子をそれぞれ前記動物培養細胞に添加して反応させること、
    反応後の細胞を洗浄後、第1及び第2のポリペプチドの結合により形成されたタンパク質のレポーター活性を測定すること、及び
    検体非添加の前記ウイルス様粒子を添加した条件で測定されたレポーター活性レベルと、前記混合液を添加した条件で測定されたレポーター活性レベルを対比し、活性レベルの低下率を算出すること、
    を含む、方法。
  12. 前記検体が全血、血清又は血漿である、請求項11記載の方法。
  13. 前記混合液は、前記検体の段階希釈液を前記ウイルス様粒子とそれぞれ混合して調製した一連の混合液であり、各混合液を用いて測定、算出されたレポーター活性レベルの低下率をプロットし、低下率50%の検体濃度を中和抗体価として算出することを含む、請求項11又は12記載の方法。
  14. 前記混合液は、前記検体を一定の倍率で希釈した希釈検体と前記ウイルス様粒子を混合した混合液であり、活性レベルの低下率が所定のカットオフ値以上である場合に抗SARS-CoV-2中和抗体が検出される、請求項11又は12記載の方法。
  15. 前記一定の倍率が10倍~30倍の範囲から選択され、所定のカットオフ値が低下率30%~50%の範囲から選択される値である、請求項14記載の方法。
  16. 1種類のSARS-CoV-2スパイクポリペプチドを含む1種類のウイルス様粒子、又は異なるSARS-CoV-2スパイクポリペプチドをそれぞれ含む2種類以上のウイルス様粒子を含む、ウイルス様粒子のパネルであって、前記ウイルス様粒子は、任意のエンベロープウイルスのカプシドポリペプチドと、レポーター活性を有するタンパク質の部分断片と、下記(1)~(12)から選択されるいずれかのSARS-CoV-2スパイクポリペプチドとを含む、パネル。
    (1) 配列番号2に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (2) 配列番号4に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (3) 配列番号6に示すアミノ酸配列中の第15番~第1251番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (4) 配列番号8に示すアミノ酸配列中の第15番~第1251番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (5) 配列番号10に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (6) 配列番号12に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (7) 配列番号14に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (8) 配列番号16に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (9) 配列番号18に示すアミノ酸配列中の第15番~第1254番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (10) 配列番号20に示すアミノ酸配列中の第15番~第1252番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (11) 配列番号22に示すアミノ酸配列中の第15番~第1252番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
    (12) 配列番号24に示すアミノ酸配列中の第15番~第1247番アミノ酸の領域を含むポリペプチド
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