JP2023010357A - コンクリート構造体の補強方法およびコンクリート構造体 - Google Patents

コンクリート構造体の補強方法およびコンクリート構造体 Download PDF

Info

Publication number
JP2023010357A
JP2023010357A JP2021114443A JP2021114443A JP2023010357A JP 2023010357 A JP2023010357 A JP 2023010357A JP 2021114443 A JP2021114443 A JP 2021114443A JP 2021114443 A JP2021114443 A JP 2021114443A JP 2023010357 A JP2023010357 A JP 2023010357A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
concrete
injection hole
carbon dioxide
porous
concrete structure
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021114443A
Other languages
English (en)
Inventor
裕介 藤倉
Yusuke Fujikura
智洋 藤沼
Tomohiro Fujinuma
パリーク サンジェイ
Pareek Sanjay
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nihon University
Fujita Corp
Original Assignee
Nihon University
Fujita Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nihon University, Fujita Corp filed Critical Nihon University
Priority to JP2021114443A priority Critical patent/JP2023010357A/ja
Publication of JP2023010357A publication Critical patent/JP2023010357A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Working Measures On Existing Buildindgs (AREA)
  • Devices For Post-Treatments, Processing, Supply, Discharge, And Other Processes (AREA)
  • Curing Cements, Concrete, And Artificial Stone (AREA)
  • Bridges Or Land Bridges (AREA)
  • On-Site Construction Work That Accompanies The Preparation And Application Of Concrete (AREA)

Abstract

【課題】コンクリートを補強または補修するための新規な方法を提供すること、およびこの方法が適用されたコンクリート構造体を提供すること。【解決手段】この補強方法は、コンクリートを含むコンクリート構造体に第1の注入孔を形成すること、第1の注入孔内にポーラスコンクリートを形成すること、およびポーラスコンクリートに二酸化炭素を含むガス、または薬剤を供給することを含む。コンクリートの空隙率は、ポーラスコンクリートの空隙率よりも小さい。【選択図】図9

Description

本発明の実施形態の一つは、コンクリートを含むコンクリート構造体を補強する方法、およびこの補強方法が適用されたコンクリート構造体に関する。
コンクリートは、主にセメント水和物、細骨材や粗骨材などの骨材、水、および添加剤によって構成され、その優れた機械的特性、耐候性、取り扱いの容易さ、経済性などに起因し、社会的生産基盤、経済基盤を創成するための重要な構造材料の一つとして様々な分野で幅広く利用されている。コンクリート含む構造体(以下、コンクリート構造体)を補強する方法の一つとして、コンクリートに二酸化炭素を導入する方法が知られている。例えば特許文献1では、コンクリート構造体を施工する際、コンクリートが硬化する前のレディーミクストコンクリートに二酸化炭素を接触させる方法が開示されている。特許文献2では、コンクリートへの二酸化炭素の吸収を促進するために有効なコンクリート構造体の設計方法が開示されている。
特許第5957283号公報 特許第4822373号公報
本発明の実施形態の一つは、コンクリートを補強または補修するための新規な方法を提供すること、およびこの方法が適用されたコンクリート構造体を提供することを課題の一つとする。
本発明の実施形態の一つは、コンクリート構造体の補強方法である。この補強方法は、コンクリートを含むコンクリート構造体に第1の注入孔を形成すること、第1の注入孔内にポーラスコンクリートを形成すること、およびポーラスコンクリートに二酸化炭素を含むガス、または薬剤を供給することを含む。コンクリートの空隙率は、ポーラスコンクリートの空隙率よりも小さい。
本発明の実施形態の一つは、コンクリート構造体の補強方法である。この補強方法は、第1の注入孔を有するコンクリート構造体を施工すること、第1の注入孔内にポーラスコンクリートを形成すること、およびポーラスコンクリートに二酸化炭素を含むガス、または薬剤を供給することを含む。コンクリート構造体に含まれるコンクリートの空隙率は、ポーラスコンクリートの空隙率よりも小さい。
本発明の実施形態の一つは、コンクリート構造体である。このコンクリート構造体は、第1のコンクリート、および第1のコンクリートに囲まれる第2のコンクリートを備える。第1のコンクリートの炭酸カルシウムの濃度は、第2のコンクリートの炭酸カルシウムの濃度よりも低い。
本発明の実施形態の一つは、コンクリート構造体である。このコンクリート構造体は、薬剤を含む第1のコンクリート、および上記薬剤を含み、第1のコンクリートに囲まれる第2のコンクリートを備える。第1のコンクリート中の上記薬剤の平均濃度は、第2のコンクリート中の上記薬剤の平均濃度よりも低い。
本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的斜視図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的斜視図と端面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的端面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的端面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的端面図と上面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的端面図と上面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的端面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的斜視図と端面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的斜視図と側面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的端面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的斜視図と上面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的側面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的端面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的端面図、およびコンクリート構造体の組成を示す模式図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的端面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的斜視図と側面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的斜視図と側面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的端面図。 本発明の実施形態の一つに係る、コンクリート構造体の補強方法を説明する模式的斜視図。 実施例のコンクリート試験体の作製方法を説明する模式的斜視図。 比較例のコンクリート試験体の作製方法を説明する模式的斜視図。 実施例と比較例のコンクリート試験体の炭酸化の結果を示す模式図。
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。添付される図面においては、便宜上xy平面を水平面とし、z方向を鉛直方向として定義する。
以下、「ある構造体が他の構造体から露出する」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。
以下、コンクリート、モルタル、およびポーラスコンクリートとは、いずれも原料の一つであるセメントが水と反応して生成する水和物が硬化し、流動性を示さない硬化物を指す。コンクリートは直径が5mm以下の細骨材および直径が5mmを超える(例えば、5mmよりも大きく20mm以下、または10mm以上20mm以下)粗骨材を含むのに対し、モルタルは細骨材を含むものの、粗骨材を含まないまたは粗骨材の量が細骨材の量に対して10重量%以下または5重量%以下の硬化物を指す。ポーラスコンクリートは、モルタルとは対照的に、砂利などの比較的大きな粗骨材を含むものの、細骨材を含まないまたは細骨材の量が粗骨材の量に対して10重量%以下または5重量%以下の硬化物を指す。このため、コンクリートやモルタルと比較し、ポーラスコンクリートは内部に空隙が多い。一方、セメントと水を含む混合物が完全に硬化せずに流動性を有する状態をレディーミクストコンクリート(生コンクリートとも呼ばれる)と呼ぶ。レディーミクストコンクリートが硬化すると、粗骨材や細骨材の量に応じてコンクリート、モルタル、またはポーラスコンクリートを与える。レディーミクストコンクリートは、セメント、水、および骨材の他、AE剤(気泡分散剤)流動化剤、増粘剤、急結剤などの添加剤を含んでもよい。
<第1実施形態>
本実施形態では、二酸化炭素を利用するコンクリート構造体の補強方法、およびこの補強方法が適用されたコンクリート構造体について説明する。この補強方法が適応できるコンクリート構造体の種類や形状、用途、設置場所に限定は無く、任意の新設または既設のコンクリート構造体を利用することができる。コンクリート構造体としては、例えばビルの柱や基礎梁などでもよく、橋の橋脚や橋台、河川や港湾に設けられる堤防や防波堤、消波ブロック、道路やトンネルに用いられる覆工コンクリートなどでもよい。あるいは、角形やU字形状のコンクリートブロックや沓石などのコンクリートを含む動産(コンクリート製品)でもよい。
1.コンクリート構造体の補強方法
1-1.第1の注入孔の形成
図1(A)から図1(C)はコンクリート構造体10の模式的斜視図である。本補強方法では、まず、コンクリート構造体10に含まれるコンクリート100に第1の注入孔102を設ける(図1(A))。第1の注入孔102はコンクリート構造体10を貫通する貫通孔でもよく、図示しないが、コンクリート構造体10を貫通しない有底孔でもよい。第1の注入孔102は、振動ドリル、ハンマードリル、ダイヤモンドコアドリルなどのドリルを用いてコンクリート100を掘削することで形成すればよい。
第1の注入孔102は、好ましくはコンクリート構造体10の表面から一方向に直進的に延伸するように設けられるが、コンクリート構造体10の内部で屈曲してもよい。第1の注入孔102の数に制約はなく、コンクリート構造体10の形状や大きさ、設置環境、強度などに応じて適宜設定すればよい。複数の第1の注入孔102を設ける場合、複数の第1の注入孔102が延伸する方向は互いに同一でもよく、あるいは図1(B)に示すように、少なくとも一つの第1の注入孔102の延伸方向が他の第1の注入孔102のそれと異なってもよい。図1(A)や図1(B)に示すように、すべての第1の注入孔102の延伸方向は、コンクリート構造体10の外表面に対して垂直でもよく、あるいは図1(C)に示すように、一部またはすべての第1の注入孔102は、コンクリート構造体10の外表面に対して傾いた方向に延伸してもよい。図示しないが、複数の第1の注入孔102が交差してもよい。すなわち、第1の注入孔102はコンクリート構造体10内でネットワーク状に形成されてもよい。第1の注入孔102が設けられる面は水平面に垂直な面に限られず、水平面に平行な面(例えばコンクリート構造体10の上面)でもよく、水平面から90°未満の角度で傾いた面に第1の注入孔102を設けてもよい。
第1の注入孔102の端部の断面積、すなわち、コンクリート構造体10の外表面における第1の注入孔102の開口面積は任意に設定することができる。例えば、第1の注入孔102の端部の形状(コンクリート構造体10の外表面における形状)が円の場合、その直径D(図1(A)参照。)は15mm以上200mm以下、20mm以上150mm以下、または30mm以上100mm以下でもよい。第1の注入孔102の端部の断面積は、例えば176mm以上314cm以下、314mm以上176cm以下、または706mm以上78cm以下でもよい。
あるいは、コンクリート構造体10を施工する際に第1の注入孔102を形成してもよい。具体的には、第1の注入孔102に対応する空間を形成するための一つまたは複数のコア材(中子)162を、コンクリート100を与えるレディーミクストコンクリートを打設するための型枠160に配置する(図2(A))。コア材162は、一部が型枠160から露出されるように設けてもよい。コア材162の形状は第1の注入孔102の形状を考慮して決定すればよく、直線的なロッド状でもよく、一部または全体が屈曲していてもよい。コア材162に含まれる材料に制約はなく、例えばアルミニウムや鉄、ステンレスなどの金属材料、木材、樹脂などでもよい。樹脂としては、例えばガラス繊維や炭素繊維などの繊維と複合化された繊維強化プラスチックでもよい。コア材162の外表面には、剥離剤(離型剤)または硬化遅延剤を塗布してもよい。離型剤または硬化遅延剤を塗布することで、後述するように、コンクリート100からコア材162を容易に除去して第1の注入孔102を形成することができる。
引き続き、コンクリート100を形成する。すなわち、図2(A)の鎖線C-C´に沿った模式的端面図(図2(B))に示すように、コンクリート100を与えるレディーミクストコンクリート164を型枠160内に打設する。この時、コア材162がレディーミクストコンクリート164によって埋め込まれるようにレディーミクストコンクリート164が型枠160に打設される。レディーミクストコンクリート164を硬化させ、型枠160とコア材162を取り除くことで第1の注入孔102を有するコンクリート構造体10を施工することができる(図1(A)参照。)。
第1の注入孔102の端部の形状、すなわち、コンクリート構造体10の外表面における第1の注入孔102の開口形状も任意に設定することができる。ドリルを用いて第1の注入孔102を形成する場合には円となるが、コンクリート構造体10の施工時に第1の注入孔102を形成する場合には、コア材162の断面(コア材162の延伸方向に垂直な断面)の形状を適宜選択することで、例えば円、四角形や星形などの多角形、楕円、外周が直線と曲線で構成される形状などを有する第1の注入孔102を形成することができる。
1-2.ポーラスコンクリートの形成
次に、図1(A)の鎖線A-A´とB-B´に沿った端面の模式図(図3(A)、図3(B))に示すように、第1の注入孔102内にポーラスコンクリート104を形成する。上述したように、ポーラスコンクリートは細骨材を含まない、または細骨材の量が粗骨材よりも大幅に少ない硬化物であり、その空隙率がコンクリート構造体10に含まれるコンクリート100の空隙率と比較して大きいことが特徴の一つである。ポーラスコンクリート104を与えるレディーミクストコンクリートを第1の注入孔102に打設し、硬化させることで第1の注入孔102がポーラスコンクリート104によって充填される。このため、比較的大きな第1の注入孔102を形成しても、コンクリート構造体10の強度に対する影響を無視することができる。
この後、図3(A)と図3(B))にそれぞれ対応する図4(A)と図4(B)に示すように、ポーラスコンクリート104に第2の注入孔106を形成してもよい。第2の注入孔106は、例えばドリルを用いて形成することができる。第2の注入孔106はコンクリート構造体10とポーラスコンクリート104を貫通してもよく、あるいは少なくとも一方を貫通しない有底孔でもよい。第2の注入孔106の断面積、すなわち、ポーラスコンクリート104の外表面における第2の注入孔106の開口面積も任意に設定することができる。例えば、第2の注入孔106の断面形状(ポーラスコンクリート104の外表面における形状)が円の場合、その直径dは、1mm以上100mm以下または2mm以上150mm以下でもよい。第2の注入孔106の断面積は、例えば0.785mm以上78.5cm以下または3.14mm以上177cm以下とすればよい。上述した範囲を選択することで、コンクリート構造体10の強度や美観を大きく損なうことなく、第2の注入孔106を形成することができる。
第1の注入孔102と同様、第2の注入孔106もコンクリート構造体10の施工時に形成してもよい。例えば、図2(B)に対応する模式的端面図(図5(A))に示すように、型枠160にコア材162を設置する。コア材162は、第2の注入孔106が形成される空間に対応する。この後、コンクリート100を与えるレディーミクストコンクリート164を型枠160に打設する。この時、コア材162が埋め込まれないようにレディーミクストコンクリート164を打設する。この後、ポーラスコンクリート104を形成するための型枠166をレディーミクストコンクリート164上に設置する(図5(B))。型枠166は、レディーミクストコンクリート164が硬化する前に設けてもよく、硬化後に設けてもよい。あるいは、図示しないが、レディーミクストコンクリート164を打設する前に予め型枠166を設けてもよい。型枠166内にポーラスコンクリート104を与えるレディーミクストコンクリートを打設、硬化することで、ポーラスコンクリート104が形成される(図6(A)、図6(B))。この後、型枠166を除去し、コンクリート100を与えるレディーミクストコンクリート164を型枠160に打設し、硬化させる(図7)。型枠160とコア材162を除去することで第2の注入孔106を備えるポーラスコンクリート104を有するコンクリート構造体10を施工することができる。
あるいは、第2の注入孔106を有するポーラスコンクリート104を別途作製し、これをコンクリート100に埋設することコンクリート構造体10を施工してもよい。具体的には、ポーラスコンクリート104の形状を決める型枠168内に第2の注入孔106が設けられる空間を占めるようにコア材162を設け、型枠168内にポーラスコンクリート104を与えるレディーミクストコンクリートを打設、硬化する(図8(A))。あるいは、型枠168内に粗骨材を充填し、粗骨材を含まない、あるいは粗骨材の量が少ないレディーミクストコンクリートを型枠168に打設する。その後、型枠168とコア材162を取り除くことにより、第2の注入孔106を有するポーラスコンクリート104が得られる。一方、図8(B)に示すように、型枠160にコンクリート100を与えるレディーミクストコンクリート164を部分的に打設した後、第2の注入孔106を有するポーラスコンクリート104をレディーミクストコンクリート164上に配置する。その後、ポーラスコンクリート104を埋め込むようにレディーミクストコンクリート164を再度打設、硬化すればよい。この方法では、型枠168の内部形状を適宜調整することで、ポーラスコンクリート104の形状を制御することができる。なお、図示しないが、コンクリート100を与えるレディーミクストコンクリート164を打設する前に、第2の注入孔106の延伸方向が鉛直方向となるように第2の注入孔106を有するポーラスコンクリート104を配置し、その後、コンクリート100を与えるレディーミクストコンクリート164を打設、硬化してもよい。
1-3.二酸化炭素の供給
引き続き、ポーラスコンクリート104に二酸化炭素を供給する。具体的には、図9(A)に示すように、コンクリート構造体10から露出するポーラスコンクリート104の一端に二酸化炭素ライン122を接続する。第2の注入孔106をポーラスコンクリート104に設ける場合には、第2の注入孔106に二酸化炭素ライン122を接続すればよい。二酸化炭素ライン122には二酸化炭素供給源120が接続され、二酸化炭素供給源120から供給される二酸化炭素を含むガスが二酸化炭素ライン122を介してポーラスコンクリート104に導入される。図示しないが、ポーラスコンクリート104を複数の第1の注入孔102に設ける場合には、第1の注入孔102と同じ数の二酸化炭素供給源120を用い、それぞれのポーラスコンクリート104に対応する二酸化炭素供給源120を接続してもよく、あるいは分岐した二酸化炭素ライン122を用いてポーラスコンクリート104の数よりも少ない二酸化炭素供給源120をポーラスコンクリート104に接続してもよい。二酸化炭素ライン122には、ポーラスコンクリート104に導入される二酸化炭素を含むガスの圧力を測定するための圧力計126および/またはフローメータ128を設けてもよい。
二酸化炭素ライン122とポーラスコンクリート104との接続方法は任意に選択することができ、例えば、二酸化炭素ライン122の先端がポーラスコンクリート104を覆うように二酸化炭素ライン122を設けてもよい。あるいは、接続状態を安定的に維持するため、例えば図10(A)に示すように、雌ねじ構造を有する開口を備えるアダプタ110をポーラスコンクリート104を囲むまたは覆うようにコンクリート構造体10の表面に取り付け、二酸化炭素ライン122の先端に雌ねじ構造に噛み合う雄ねじ構造を有するジョイント124を取り付けてもよい。ジョイント124をアダプタ110に捻じ込むことで、二酸化炭素ライン122からの二酸化炭素の漏洩を防ぎつつ、二酸化炭素を含むガスをポーラスコンクリート104に導入することができる。任意の構成として、二酸化炭素を含むガスの漏洩をさらに効果的に防ぐため、アダプタ110とコンクリート100の間に樹脂製のОリング(またはパッキン)112を設けてもよい。二酸化炭素の漏洩を防止することで、作業の安全性が確保される。
さらに、ポーラスコンクリート104の他端をキャップし、二酸化炭素を含むガスを封じ込めることで、二酸化炭素を含むガスの漏洩が防止できるとともに、より効果的にポーラスコンクリート104と二酸化炭素の接触が可能となる。例えば、他端を接着テープ、ゴムなどの弾性体などを用いて排出口を封止してもよく、あるいは図9(B)、図10(A)に示すように、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂、これらの樹脂を含む繊維強化プラスチック、または鉄やステンレス、アルミニウムなどの金属材料を含むプレート114を用いてポーラスコンクリート104の他端を覆うことでポーラスコンクリート104を封止してもよい。プレート114の固定はボルトやねじを用いて行えばよい。あるいは接着剤や接着テープなどを用いてプレート114を固定してもよい。また、図10(A)に示すように、気密性を向上させるため、ゴムなどの弾性体を含むパッキン116をポーラスコンクリート104を覆うようにポーラスコンクリート104とプレート114の間に配置してもよい。
二酸化炭素を含むガスとしては、純粋な二酸化炭素(例えば純度99%以上)でもよく、二酸化炭素と他のガスとの混合ガスでもよい。混合ガスを用いる場合には、他のガスとして空気や酸素、窒素などが挙げられる。混合ガス中における二酸化炭素の濃度も任意に設定することができるが、効率よくポーラスコンクリート104と二酸化炭素を接触させるため、大気中に含まれる二酸化炭素の濃度(約420ppm)より高いことが好ましい。例えば、二酸化炭素濃度は1体積%以上100体積%以下の任意の濃度から設定すればよい。
二酸化炭素供給源120は、ポーラスコンクリート104に二酸化炭素を含むガスを供給する機能を有していればよく、例えば図9(A)に示すような二酸化炭素を含むガスのボンベやタンクなどが挙げられる。二酸化炭素供給源120は図示しないレギュレータに接続され、二酸化炭素を含むガスが調圧される。あるいは、コンクリート構造体10付近に二酸化炭素を大量に排出する施設(化学プラント、ゴミ焼却施設、火力発電所、その他各種工場など)が既設されている場合、これらの施設で排出されるガス、または排出ガスに対して脱塵、脱硫、脱硝などを行うことで得られる精製された二酸化炭素を利用してもよい。この場合、二酸化炭素排出する施設が二酸化炭素供給源120として機能するので、二酸化炭素を運搬するためのコストが削減され、運搬に伴う二酸化炭素の排出が防止される。
二酸化炭素を含むガスは、定常的(連続的)に導入してもよく、断続的に導入してもよい。後者の場合には、二酸化炭素を含むガスを供給した後、二酸化炭素ライン122を取り外し、ポーラスコンクリート104を密閉すればよい。例えば、接着テープでポーラスコンクリート104を覆ってもよい。あるいは図10(B)に示すように、アダプタ110に噛み合う雄ねじ構造を有するキャップ118を用いてポーラスコンクリート104を密閉してもよい。
任意の構成として、二酸化炭素濃度を測定するための濃度計132を第2の注入孔106内部に設け、随時または定期的に二酸化炭素濃度を測定してもよい。これにより、二酸化炭素濃度の変化をモニターすることができる。
二酸化炭素を含むガスは、ポーラスコンクリート104の空隙または第2の注入孔106内の圧力が0MPaよりも高く1MPa以下の圧力となるように導入すればよい。この圧力が大気圧(例えば1気圧、また0.101MPa)よりも低い場合には、二酸化炭素ライン122にロータリーオイルポンプやドライポンプなどの真空ポンプ130を接続し、ポーラスコンクリート104の空隙または第2の注入孔106内を減圧にした後に二酸化炭素を含むガスを導入すればよい(図9(A)参照。)。
1-4.湿度の調整
コンクリートが二酸化炭素と接触すると、コンクリートに含まれる水酸化カルシウムなどが炭酸カルシウムへ変化する(炭酸化)。炭酸化の速度は湿度にも依存し、湿度が約50%の時に大きな炭酸化速度が得られることが知られている。このため、本補強方法においても、供給される二酸化炭素を含むガスの湿度を調整してもよい。具体的には、水供給源140を設け、二酸化炭素ライン122を介してポーラスコンクリート104に水を供給してもよい(図9(A))。図示しないが、水供給源140は、供給される水の温度を制御するための加熱装置や冷却装置を備えていてもよい。あるいは、二酸化炭素供給源120から水供給源140に二酸化炭素を含むガスを供給し、二酸化炭素を含む水をポーラスコンクリート104に供給してもよい。
任意の構成として、湿度を測定するための湿度計134を第2の注入孔106内に設け、随時または定期的に湿度を測定してもよい(図10(B))。これにより、湿度の変化をモニターすることができる。
一方、第2の注入孔106内の湿度が高い場合、ポーラスコンクリート104に大量の水が含まれる場合、あるいはコンクリート100に大量の水が含まれる場合などには、水の一部を除去するために真空ポンプ130を用いて第2の注入孔106またはポーラスコンクリート104の空隙内部を減圧乾燥してもよい。その後、二酸化炭素を含むガスをポーラスコンクリート104へ供給すればよい。
ポーラスコンクリート104と二酸化炭素を含むガスの接触時間は、ポーラスコンクリート104の長さや断面積(すなわち、第1の注入孔102の体積)、コンクリート構造体10の体積、温度、二酸化炭素を含むガスの二酸化炭素の濃度にも依存するが、例えば1時間以上20年以下、1日以上10年以下、10週間以上5年以下、1年以上3年以内などとすればよい。
二酸化炭素や水の供給においては、図11(A)に示すように、制御装置142を用いて行ってもよい。制御装置142には二酸化炭素供給源120や水供給源140からそれぞれ二酸化炭素を含むガスと水が供給される。制御装置142には、二酸化炭素を含むガスをポーラスコンクリート104に供給するための機構(例えば送風ポンプなど)が備えられる。制御装置142はさらに、供給された水と二酸化炭素を用いて適切な湿度を有する二酸化炭素を含むガスを調製し、このガスをポーラスコンクリート104に供給するように構成してもよい。あるいは/さらに、ポーラスコンクリート104に供給する二酸化炭素を含むガスの温度を制御できるよう、制御装置142を構成してもよい。このような機能を制御装置142に付与することにより、最適化された温度や湿度で二酸化炭素を含むガスをポーラスコンクリート104に供給することができ、炭酸化を短時間で行うことが可能となる。
さらに図11(B)に示すように、二酸化炭素を含むガスを制御装置142とポーラスコンクリート104の間で循環させてもよい。この場合、制御装置142は、循環ポンプなどに例示される、ポーラスコンクリート104の他端から排出されるガスを回収し、再度ポーラスコンクリート104へ供給するための機構を備える。さらに制御装置142は、ポーラスコンクリート104の他端から排出されるガスに含まれる二酸化炭素の濃度や湿度を測定し、得られたデータに基づいて当該ガスに適宜二酸化炭素や水を添加するように構成してもよい。これにより、定常的にポーラスコンクリート104を最適な炭酸化速度が得られる条件に置くことができる。
1-5.ポーラスコンクリートへのモルタルの形成
任意のステップとして、炭酸化の終了後、第2の注入孔106やポーラスコンクリート104に対し、新たにモルタル165をリペアコンクリートとして形成してもよい。すなわち、第2の注入孔106やポーラスコンクリート104に対し、モルタル165を与えるレディーミクストコンクリートを打設し、硬化させる(図12)。これにより、粗骨材105の間の空隙がモルタル165によって充填されるとともに、ポーラスコンクリート104は、それを取り囲むコンクリート100の組成と類似する組成を有することができる。このため、ポーラスコンクリート104が設けられていた部分とコンクリート100の外観の差が小さくなり、コンクリート構造体10の美観を損ねることを抑制することができる。
2.本補強方法が適用されたコンクリート構造体の組成
上述した補強方法を用いてコンクリート構造体10を補強すると、炭酸化は最初にポーラスコンクリート104の表面や粗骨材105間の空隙内で生じ、さらにポーラスコンクリート104とコンクリート100の界面からコンクリート100の内部へ進行する(図13)。したがって、第1の注入孔102の延伸方向に垂直な断面図(図14(A))に示すように、炭酸化は、第1の注入孔102の延伸方向に垂直な方向(すなわち、xz平面内)において、原理的には等方的に進行する(図14(A)の矢印参照)。炭酸化の程度は、ポーラスコンクリート104が設けられる領域100a(すなわち、第1の注入孔102が設けられる領域)で最も高く、この領域100aを囲む領域100b(すなわち、コンクリート100が占める領域)では、領域100aと領域100bの界面からの距離が増大するに従って低下する(図14(B))。領域100aには空隙率の高いポーラスコンクリート104が設けられているため、領域100aにおける炭酸カルシウムの濃度は、ポーラスコンクリート104の中心、すなわち、領域100aの中心からの距離に依存せず一定である、または中心からの距離が増大するに従って緩やかに減少する(図14(B))。換言すると、領域100aに含まれるコンクリート中の炭酸カルシウムの濃度は、領域100aを囲む領域100bに含まれるコンクリート中の炭酸カルシウムの濃度よりも高い。また、領域100bに含まれるコンクリート中の炭酸カルシウムの濃度は、領域100aからの距離(すなわち、領域100aと領域100bの界面からの距離)が増大するに従って低下する。なお、領域100aと領域100bの間における炭酸カルシウムの濃度変化は、連続的または不連続である(図14(B)、(図14(C))。
一方、炭酸化では水酸化カルシウムが消費されるため、領域100aに含まれるコンクリート中の水酸化カルシウムの濃度は、領域100bに含まれるコンクリート中の水酸化カルシウムの濃度よりも低い(図14(B))。ポーラスコンクリート104の高い空隙率に起因し、領域100aにおける水酸化カルシウムの濃度は、領域100aの中心からの距離に依存せず一定である、またはまたは中心からの距離が増大するに従って緩やかに増大する。また、領域100bに含まれるコンクリート中の水酸化カルシウムの濃度は、領域100aからの距離が増大するに従って増大する。なお、領域100aと領域100bの間における水酸化カルシウムの濃度変化は、連続的または不連続である(図14(B)、図14(C))。
コンクリートの炭酸化としては、二酸化炭素が充填された養生槽内に硬化したコンクリートを配置して接触させる方法や、硬化した多孔質コンクリート表面に二酸化炭素を接触させる方法、レディーミクストコンクリートを流し込むための型枠内に二酸化炭素を供給する方法、コンクリート構造と大気を接触させる方法などが知られている。しかしながら、養生槽を用いる方法では、炭酸化のためのコンクリートを収容するための養生槽が必要であり、ビルや柱、トンネルなどの建造物に対して適用することはできない。多孔質コンクリート表面に二酸化炭素を接触する方法においても、コンクリート表面を密閉するための手段が必要となるため、特に大型のコンクリート構造体に適用することは現実性に欠ける。型枠内に二酸化炭素を供給する方法では、型枠を閉じた空間として形成する必要があるため、小型の構造物には適用できるものの、建造物に対して適用することができない。また、大気との接触を利用する方法では、大気中の二酸化炭素濃度は極めて低いため、効率の高い炭酸化はできない。
一方、本補強方法では、コンクリート構造体10に第1の注入孔102が形成され、その中に形成されるポーラスコンクリート104に対して二酸化炭素を含むガスが供給される。ポーラスコンクリート104は空隙率が高いため、ポーラスコンクリート104は速やかに炭酸化するだけでなく、二酸化炭素は速やかにポーラスコンクリート104とコンクリート100の界面(すなわち、第1の注入孔102の内壁)に達する。さらに、第1の注入孔102の比較的大きな断面積に起因し、コンクリート100が二酸化炭素と接触する面積が大きい。このため、大きな速度でポーラスコンクリート104を取り囲むコンクリート100の炭酸化を行うことができる。コンクリートが炭酸化すると、その強度が増大する。実際、発明者らは、セメントの約20%(60kg/m)の二酸化炭素でコンクリートの炭酸化を行った場合、コンクリートの圧縮強度が8%から10%程度増大することを確認している。このため、本補強方法を適用することで、コンクリート構造体10の強度を短時間で増大させることが可能である。
さらに、上述したように、本補強方法では、コンクリート構造体10に比較的大きな第1の注入孔102が形成されるものの、第1の注入孔102にはポーラスコンクリート104が設置される。また、ポーラスコンクリート104に対してモルタル165を与えるレディーミクストコンクリートを打設することで、コンクリート100に類似する組成を有するコンクリートを第1の注入孔102に形成することも可能である。このため、第1の注入孔102の形成は、コンクリート構造体10の主要部分を構成するコンクリート構造体10の強度に対して影響を及ぼさず、かつ、コンクリート構造体10の美観を損なわない。
また、本補強方法では、大きな速度で炭酸化が可能であることから、大量の二酸化炭素をコンクリート構造体10に固定することができる。上述したように、本補強方法は、第1の注入孔102が形成することができる限り、種類や大きさ、形状、用途、施工場所に特段の制約を受けること無く、様々な既設のコンクリート構造体10に対して適用できる。このことは、二酸化炭素を固定するための反応基質を新たに生み出す必要がないだけでなく、膨大な量の反応基質が地上に存在することを意味している。よって本補強方法は、コンクリート構造体10の補強ができるのみならず、極めて大量の二酸化炭素が固定可能であり、地球温暖化を抑制するための有効なツールであると言える。
3.適用例
3-1.覆工コンクリートへの適用
本補強方法は、様々なコンクリート構造体10に適用することができる。例えば図15に示すように、コンクリート構造体10がトンネルであっても本補強方法を適用でき、トンネル内壁の補強と同時に二酸化炭素を固定することができる。この場合には、コンクリート構造体10である覆工コンクリートに第1の注入孔102を一つまたは複数形成し、第1の注入孔102に対してポーラスコンクリート104を打設する。その後、ポーラスコンクリート104に対して二酸化炭素を含むガスを供給する。第1の注入孔102の延伸方向は任意であり、鉛直方向(z方向)でもよく、鉛直方向から傾いていてもよい。例えば、トンネルの内壁の法線と平行でもよく、図示しないが、法線から傾くように第1の注入孔102を形成してもよい。第1の注入孔102はコンクリート100を貫通する貫通孔でもよく、有底孔でもよい。なお、第1の注入孔102が貫通孔である場合でも、第1の注入孔102の一端は岩盤や地盤によって閉じられるため、二酸化炭素を含むガスを供給する際にポーラスコンクリート104の端部を封止しなくてもよい。上述したように、炭酸化が終了した後、モルタル165を与えるレディーミクストコンクリートをポーラスコンクリート104に打設してもよい。
3-2.鉄筋を含むコンクリート構造体への適用
本補強方法は、鉄筋を含むコンクリート構造体(鉄筋コンクリート構造体)に対しても適用することができる。例えば図16(A)に示すような複数の鉄筋150と鉄筋150を埋め込むように打設されるコンクリート100を有するコンクリート構造体10に対し、鉄筋150を避けるように一つまたは複数の第1の注入孔102を形成する(図15(B))。すなわち、鉄筋150が第1の注入孔102内で露出しないように各第1の注入孔102が設けられる。図15(B)で示される例では、直線状の複数の第1の注入孔102が隣接する鉄筋150の間をy方向に延伸するように設けられている。
コンクリート構造体10がビルである場合には、柱や梁を構成する鉄筋コンクリートに対して本補強方法を適用することができる。柱に適用する場合には、柱主筋や横補強筋などを構成する鉄筋150(図17(A)参照)を避けるように第1の注入孔102が設けられる(図17(B))。
コンクリートはアルカリ性を示すが、炭酸化が進行すると、徐々に酸性化する。コンクリートが酸性を示すと鉄筋の腐食が生じるとともに、腐食による鉄筋の膨張がコンクリートのひび割れや破損などの劣化を誘発するこすことがある。したがって、鉄筋を含むコンクリート構造体10を利用する場合には、鉄筋の近傍に位置するコンクリートには二酸化炭素が固定されないことが好ましい。
鉄筋を含むコンクリート構造体10では、鉄筋はコンクリート構造体10の中心には配置されず、外表面に比較的近いゾーンに配置される。例えば図16(A)に示すように、鉄筋150はコンクリート構造体の中心部を取り加工むように配置され、コンクリート100が鉄筋150を埋め込むように施工される。鉄筋コンクリート製の柱でも同様であり、鉄筋150のうち柱の延伸方向に平行な鉄筋(柱主筋)は柱の中心軸を取り囲むように配置され、横補強筋と呼ばれる水平方向に延伸する鉄筋が柱主筋を囲むように配置される(図17(A))。コンクリート100のうち、鉄筋から外側の部分はかぶりコンクリートと呼ばれる。
したがって、鉄筋の近傍のコンクリートの炭酸化を防ぐため、図18に示すように、第1の注入孔102の内壁のうち、かぶりコンクリートによって構成される部分を覆う保護チューブ108を設けてもよい。保護チューブ108は、第1の注入孔102の一方の端部および/または他方の端部に設けることができ、その端部はコンクリート構造体10の外表面へ達する。したがって、保護チューブ108によって覆われる内壁の一部は、第1の注入孔102の一端に達する。図示しないが、保護チューブ108の一部は、第1の注入孔102から外側に突き出ていてもよい。
第1の注入孔102が延伸する方向における保護チューブ108の長さLは、かぶりコンクリートの厚さ以上であることが好ましい。より具体的には、保護チューブ108の長さLは、コンクリート構造体10の最内部に位置する鉄筋150からコンクリート100の外表面までの最短距離Dminと、この鉄筋150の断面の最大長さ(例えば断面の直径d´)の和Sと同じまたはそれ以上であることが好ましい。あるいは、長さLは和Sの2倍以上5倍以下または1.5倍以上3倍以下の範囲から選択することが好ましい。
保護チューブ108に含まれる材料に制約はなく、例えば鉄やアルミニウム、ステンレスなどの金属材料、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂、アクリル樹脂などの樹脂、木材でもよい。例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤を第1の注入孔102の注入口と排出口側に長さがLとなるように第1の注入孔102の内壁に塗布し、硬化することで保護チューブ108を形成してもよい。
保護チューブ108を配置し、第1の注入孔102の端部から長さLまでの内壁と二酸化炭素との接触を防止することで、ポーラスコンクリート104と保護チューブ108から露出した内壁が選択的に二酸化炭素と接触することになる。その結果、ポーラスコンクリート104を囲むコンクリート100では、保護チューブ108から露出した内壁から炭酸化が開始され、その後炭酸化は内壁からコンクリート内部へ進行する。その結果、図18に示すように、炭酸化された領域100cが鉄筋150まで拡大せず、鉄筋150の腐食やこれに起因するコンクリート100の劣化を防止することができる。
保護チューブ108を使用する場合、リペアコンクリートであるモルタル165を与えるレディーミクストコンクリートは、保護チューブ108を除去した後に打設してもよく、保護チューブ108を第1の注入孔102内に残存させたまま打設してもよい。後者の場合、コンクリート構造体10は保護チューブ108を含み、保護チューブ108はコンクリート100とポーラスコンクリート104の間に配置される。
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態で述べた補強方法と異なるコンクリート構造体10の補強方法について述べる。本実施形態に係る補強方法と第1実施形態で述べた補強方法との相違点の一つは、本実施形態に係る補強方法では、二酸化炭素を含むガスに代わり、あるいは二酸化炭素を含むガスとともに、薬剤を用いる点である。第1実施形態で述べた構成と同一または類似する構成については、説明を省略することがある。
本実施形態に係る補強方法では、第1実施形態で述べた補強方法と同様に、コンクリート構造体10に第1の注入孔102を形成する、あるいは第1の注入孔102が設けられたコンクリート構造体10を施工し、第1の注入孔102にポーラスコンクリート104を打設する(図1(A)から図8(B)参照。)。その後、例えばシリンジ170などを用い、ポーラスコンクリート104に薬剤を注入する(図19)。薬剤としては、例えば硬化性の樹脂でもよく、亜硝酸リチウムなどの鉄筋表面に不働態を形成することができる化合物を含む薬液でもよい。硬化性の樹脂としては、二液系のエポキシ樹脂に例示されるエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
コンクリートは、塩害に起因して塩化物が侵入して鉄筋まで達すると、鉄筋表面の不動態が破壊され、腐食する。この現象はコンクリートの中性化によっても引き起こされ、鉄筋の腐食によって鉄筋が膨張し、コンクリートのひび割れを誘発する。一般的には、ひび割れが発生したコンクリートの修復では、薬剤がコンクリート表面から充填される。しかしながら、コンクリート表面から薬剤を充填してもコンクリート内部に確実にかつ速やかに浸透させることは難しい。
しかしながら、本実施形態に係る補強方法では、コンクリート構造体10に比較的大きな断面積を有する第1の注入孔102が形成され、第1の注入孔102内に設けられるポーラスコンクリート104に対して薬剤が供給される。ポーラスコンクリート104は多くの空隙を有するため、薬剤はポーラスコンクリート104の空隙に速やかに浸透し、さらにポーラスコンクリート104を囲むコンクリート100の内壁に達する。コンクリート100の内壁に達した薬剤は、さらにコンクリート100の内部に浸透する、あるいはひび割れ内に浸透する。このため、第1実施形態で述べた補強方法と同様、薬剤の浸透の程度は、ポーラスコンクリート104が設けられる領域100aで最も高く、この領域100aを囲む領域100bでは、領域100aと比較して領域100bの界面からの距離が増大するに従って低下する(図14(A)参照。)。領域100aには空隙率の高いポーラスコンクリート104が設けられているため、領域100aにおける薬剤の平均濃度は、ポーラスコンクリート104の中心、すなわち、領域100aの中心からの距離に依存せず一定である、または中心からの距離が増大するに従って緩やかに減少する。換言すると、領域100aに含まれるコンクリート中の薬剤の平均濃度は、領域100aを囲む領域100bに含まれるコンクリート中の薬剤の平均濃度よりも高い。また、領域100bに含まれるコンクリート中の薬剤の濃度は、領域100aからの距離(すなわち、領域100aと領域100bの界面からの距離)が増大するに従って低下する。なお、領域100aと領域100bの間における薬剤の濃度変化は、連続的または不連続である。
第1の注入孔102は比較的大きな断面積を有することから、コンクリート100と薬剤との大きな接触面積を確保することができる。このため、コンクリート構造体10内部まで十分な量の薬剤を供給することができる。その結果、コンクリート構造体10の表面だけでなく内部に発生したひび割れを樹脂によって充填することができる。さらに、亜硝酸リチウムを含む薬液を薬剤として用いる場合には、ひび割れを通してコンクリート100の内部から薬剤を鉄筋表面に供給することができるため、鉄筋表面の不動態被膜を効果的に再生し、鉄筋の腐食を抑制することができる。
なお、亜硝酸リチウムなどの不動態再生能力を有する化合物を含む薬液を注入した後、樹脂をポーラスコンクリート104に注入してもよい。また、薬剤の注入の後、さらに二酸化炭素を含むガスをポーラスコンクリート104に注入してもよい。あるいは、二酸化炭素を含むガスを注入した後に薬剤をポーラスコンクリート104に注入してもよい。
本実施例では、ポーラスコンクリートを含むコンクリート試験体の炭酸化の結果を説明する。
1.コンクリート試験体の作製
1-1.実施例
図20(A)に示すように、φ100mm×高さ400mmの円柱状の型枠168を使用し、その中央部にφ9mm×長さ400mmの金属製ロッドをコア材162として設置した。金属製ロッドの周辺に粗骨材(最大直径約20mm)を敷き詰め、レディーミクストコンクリートを打設した。レディーミクストコンクリートは、太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメントを用い、単位水量170kg/m、単位セメント量340kg/m(水セメント比50%)となるように調製した。レディーミクストコンクリートを室温で24時間硬化させた後、脱型し、得られたポーラスコンクリート104を400mm×400mm×400mmの型枠160内に配置した(図20(B))。太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメントを用いて単位水量170kg/m、単位セメント量340kg/m(水セメント比50%)となるように調製したレディーミクストコンクリートを型枠160内に打設し、室温で24時間硬化させ、型枠160とコア材162を取り除くことで、ポーラスコンクリート104に注入孔を有するコンクリート試験体を得た。
1-2.比較例
比較例のコンクリート試験体は以下のように作製した。図21に示すように、内部容積が400mm×400mm×400mmの型枠160を準備し、断面直径9mm長さ400mmの金属製ロッドをコア材162として鉛直方向に配置した。金属製ロッドは、型枠160の中心を通過するように配置した。この型枠160にレディーミクストコンクリートを打設した。レディーミクストコンクリートは、太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメントを用い、単位水量170kg/m、単位セメント量340kg/m(水セメント比50%)となるように調製した。レディーミクストコンクリートを室温で24時間硬化した後、型枠160とコア材162を取り除き、注入孔を有するコンクリート試験体を得た。
2.二酸化炭素の供給
実施例と比較例のコンクリート試験体の注入孔に高圧用ゴム製ホースを介して二酸化炭素ボンベを接続し、圧力0.1MPaで二酸化炭素を供給した。注入開始から24時間後および72時間後にコンクリート試験体の中央部をダイヤモンドカッターで切断し、中性化を評価した。中性化の評価は、フェノールフタレインの1%エタノール溶液を指示薬としてコンクリート試験体の断面に吹きかけ、指示薬の呈色の有無を確認することで行った。
結果を図21(A)と図21(B)に示す。図21(A)と図21(B)は、それぞれ実施例と比較例のコンクリート試験体の断面模式図である。上述した作製方法を反映し、実施例のコンクリート試験体では、400mm×400mmの断面のほぼ中央に第2の注入孔106が存在し、その周りは直径100mmのポーラスコンクリート104で覆われている。同様に、比較例のコンクリート試験体の断面も一辺が400mmの正方形であり、そのほぼ中央に第1の注入孔102が設けられている。
これらの試験体の断面に指示薬を噴霧した結果、点線の円で囲まれる領域180の外側が赤色を呈し、領域180内部は無色であった。このことは、領域180内で炭酸化が進行し、領域180内のコンクリートが中性化していることを意味している。実施例のコンクリート構造体では、ポーラスコンクリート104の外側の界面から約30mmの距離まで炭酸化が進行していることが確認された。同様に、比較例のコンクリート構造体における炭酸化も、第1の注入孔102の内壁から約30mmの距離まで進行していた。しかしながら、炭酸化した領域は実施例のコンクリート試験体の方が広い。具体的には、実施例のコンクリート試験体における領域180の面積は、直径が約160mmの円の面積から直径9mmの円の面積を減じた2.00×10mmであり、ポーラスコンクリート104を除いても1.22×10mmであった。これに対し、比較例のコンクリート構造体では、炭酸化した領域は、直径69mmの円の面積から直径9mmの円の面積を減じた3.67×10mmに留まっていた。以上の結果は、本発明の実施形態に係る補強方法を適用することで、コンクリート構造体の強度を短時間で増大させるとともに、大量の二酸化炭素を固定化することが可能であることを示している。
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
10:コンクリート構造体、100:コンクリート、100a:領域、100b:領域、100c:領域、102:第1の注入孔、104:ポーラスコンクリート、105:粗骨材、106:第2の注入孔、108:保護チューブ、110:アダプタ、112:パッキン、114:プレート、116:パッキン、118:キャップ、120:二酸化炭素供給源、122:二酸化炭素ライン、124:ジョイント、126:圧力計、128:フローメータ、130:真空ポンプ、132:濃度計、134:湿度計、140:水供給源、142:制御装置、150:鉄筋、160:型枠、162:コア材、164:レディーミクストコンクリート、165:モルタル、166:型枠、168:型枠、170:シリンジ

Claims (12)

  1. コンクリートを含むコンクリート構造体に第1の注入孔を形成すること、
    前記第1の注入孔内にポーラスコンクリートを形成すること、および
    前記ポーラスコンクリートに二酸化炭素を含むガス、または薬剤を供給することを含み、
    前記コンクリートの空隙率は、前記ポーラスコンクリートの空隙率よりも小さい、コンクリート構造体の補強方法。
  2. 第1の注入孔を有するコンクリート構造体を施工すること、
    前記第1の注入孔内にポーラスコンクリートを形成すること、および
    前記ポーラスコンクリートに二酸化炭素を含むガス、または薬剤を供給することを含み、
    前記コンクリート構造体に含まれるコンクリートの空隙率は、前記ポーラスコンクリートの空隙率よりも小さい、コンクリート構造体の補強方法。
  3. 前記第1の注入孔は貫通孔である、請求項1または2に記載の補強方法。
  4. 前記ポーラスコンクリートに第2の注入孔を形成することをさらに含み、
    前記ガスまたは前記薬剤は、前記第2の注入孔に注入される、請求項1または2に記載の補強方法。
  5. 前記ポーラスコンクリートは第2の注入孔を有し、
    前記ガスまたは前記薬剤は、前記第2の注入孔に注入される、請求項1または2に記載の補強方法。
  6. 前記ポーラスコンクリートの空隙にレディーミクストコンクリートを打設することをさらに含む、請求項1または2に記載の補強方法。
  7. 前記第2の注入孔にレディーミクストコンクリートを打設することをさらに含む、請求項4または5に記載の補強方法。
  8. 前記ガスが前記ポーラスコンクリートに供給される場合、前記ポーラスコンクリートに対して水をさらに供給することを含む、請求項1または2に記載の補強方法。
  9. 第1のコンクリート、および
    前記第1のコンクリートに囲まれる第2のコンクリートを備え、
    前記第1のコンクリートの炭酸カルシウムの濃度は、前記第2のコンクリートの炭酸カルシウムの濃度よりも低い、コンクリート構造体。
  10. 前記第1のコンクリートの炭酸カルシウムの前記濃度は、前記第2のコンクリートからの距離が増大するに従って低下する、請求項9に記載のコンクリート構造体。
  11. 薬剤を含む第1のコンクリート、および
    前記薬剤を含み、前記第1のコンクリートに囲まれる第2のコンクリートを備え、
    前記第1のコンクリート中の前記薬剤の平均濃度は、前記第2のコンクリート中の前記薬剤の平均濃度よりも低い、コンクリート構造体。
  12. 前記第1のコンクリート中の前記薬剤の濃度は、前記第2のコンクリートからの距離が増大するに従って低下する、前記請求項11に記載のコンクリート構造体。
JP2021114443A 2021-07-09 2021-07-09 コンクリート構造体の補強方法およびコンクリート構造体 Pending JP2023010357A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021114443A JP2023010357A (ja) 2021-07-09 2021-07-09 コンクリート構造体の補強方法およびコンクリート構造体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021114443A JP2023010357A (ja) 2021-07-09 2021-07-09 コンクリート構造体の補強方法およびコンクリート構造体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023010357A true JP2023010357A (ja) 2023-01-20

Family

ID=85118900

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021114443A Pending JP2023010357A (ja) 2021-07-09 2021-07-09 コンクリート構造体の補強方法およびコンクリート構造体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023010357A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Panasyuk et al. Injection technologies for the repair of damaged concrete structures
CN101634149B (zh) 预应力锚杆基坑支护及施工方法
CN109611102B (zh) 一种冷开挖下穿立交桥施工方法
US10196832B2 (en) High performing protective shell for concrete structures
CN113718777A (zh) 一种大体积混凝土防裂缝施工方法
CN105714819B (zh) 一种预应力锚索外锚头多重防护装置及其固定方法
US9033618B2 (en) Effective approach to preventing and remedying distresses in soils and construction materials
CN111997066A (zh) 用于边坡加固的装配式预应力锚索框架梁制作及施工方法
Jedidi et al. Chemical causes of concrete degradation
WO2022118731A1 (ja) コンクリートへの二酸化炭素の固定方法、およびコンクリートを含むコンクリート構造体
Chynoweth et al. Concrete repair guide
CN111140264A (zh) 一种隧道混凝土衬砌结构裂缝渗漏水处理方法
CN109281239B (zh) 道路运营状态中的肋式桥台锥坡切除方法
JP2023010357A (ja) コンクリート構造体の補強方法およびコンクリート構造体
Goodfellow Concrete for underground structures: guidelines for design and construction
Kashwani et al. Safety review of the quality ready-mix concrete (RMC) and workmanship in the construction industry
CN206655492U (zh) 一种砖砌体结构预制板支撑加固装置
JP2007085037A (ja) 埋設型枠を使用した床版改修方法
CN109778853A (zh) 预应力锚杆注浆成型施工方法
CN110005443A (zh) 一种营业线隧道增设套衬的施工方法
KR102620833B1 (ko) 이산화탄소 포집형 복합콘크리트 구조물
Tamas et al. State of the art waterproofing technology
Lu Exploring the Construction Technology of Concrete Structures in Civil Engineering Buildings
JP2012112199A (ja) コンクリート構造物のひび割れ補修方法及びコンクリート構造物
Dadiani Use of sprayed concrete in the construction of tunnels

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240523