JP2023003439A - 太陽光発電設備及び太陽光発電ネットワーク - Google Patents

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Abstract

【課題】 電力と情報に関するネットワークの構築に寄与し、電動車の急速な普及等の今後予想される社会環境の変化に対応し、地域における再生可能エネルギー利活用を支える社会基盤の一つとなり得る太陽光発電設備を提供することである。【解決手段】 本設備は、発電装置・放電装置・蓄電装置・車両収納装置を一体的に備え、外部の接続対象との間で電力ラインによる電気の送受と情報ラインによる情報の送受を行うことが可能なものとした。エネルギーマネジメントシステムとシステムコントロールユニットが連携して電気と情報の送受と管理を実行し、ルーティング機能・ブロックチェーンデータベース機能・ウォレット機能を備えて、ネットワークのノードとしても機能する。他の本設備を含む外部の様々な接続対象との間で実行される電気と情報の送受について、ブロックチェーンを利用した分散型台帳管理を実行することが可能な太陽光発電設備となる。【選択図】図1

Description

太陽光発電の利活用に関する技術である。
世界の脱炭素社会化に向けて、様々な地球温暖化対策の取り組みが行われている。資源に乏しい我が国では、太陽光・風力・地熱等の再生可能エネルギーの更なる利活用が期待され、水素をエネルギー源とする燃料電池の実用化や、それらのための社会基盤整備に向けた取り組みも官民一体となって推進されている。近い将来、炭素資源消費の中で大きな比重を占めるガソリン車の製造販売に代わり、世界的にも電気自動車の飛躍的な普及が予想され、自動車を巡る様々な議論や技術開発も活発化し、我々の日常生活や就労環境等が大きく変貌する可能性も指摘されている。
そのような状況下での提案の一つとして、特許文献1の技術が提示されている。この技術は、小規模な個人住宅や企業及び自治体等を含む社会全体において、適正な固定価格で電力を売買することが可能となり、それらの電力に含まれる環境価値の利用を確立しながら、電力と環境価値の双方を取引可能とすることを目的とした電力取引プラットフォームの提供であり、再生可能エネルギー利活用に関する社会基盤の構築を提案する内容となっている。具体的には、太陽光発電システムと蓄電池を備える個人住宅等と、同じく太陽光発電システムと蓄電池を備える企業や学校等と、全体的な電力の需給管理を担う運営事業者と、日本卸電力取引所とが電力及びコンピュータのネットワークによって対等に接続され、ブロックチェーン技術により電力需給を管理する電力取引プラットフォームとなっている。
また特許文献2では、我々の身近において太陽光発電を行い、その電力を有効活用するための装置として、太陽光発電装置付きの屋根と、それを備えたカーポートの提案がなされている。
特開2020-9334号公報 特許第5620309号公報
「ブロックチェーンとシェアリングエコノミー Trans Active Grid」(https://gaiax-blockchain.com/trans-active-grid)、令和3年3月17日確認。
特許文献1では、多様な取引主体が関わる電力需給の管理基盤として、ブロックチェーン技術に基づく電力取引プラットフォームが提案されている。但し、この提案は電力取引の大枠となる基盤を構成するものであり、電力取引に参加する個別の取引主体、例えば、一般家庭や事業所等における太陽光発電の利活用に踏み込んだ技術的提案ではない。本発明は、そのようなネットワークの一部として、電力と情報に関する双方向的な社会基盤の構築に貢献しつつも、一般家庭や事業所を始めとする様々な使用環境下における太陽光発電の有効活用に向けた具体的な技術を提供する。
また、特許文献2の太陽光発電装置設備付き屋根と、それを備えたカーポートに関しては、所謂、スタンドアローンの状況に留まるものであり、電力取引を含む双方向型ネットワークの一翼を担う構成とはなっていない。従って、今後予想される電動車の急速な普及と、それに併せて大幅な需要増大が見込まれる再生可能エネルギーの重要性を踏まえると、そのような社会環境の変化に適用した更なる機能向上の余地が残存するものと考えられた。
電動車の普及、それに伴う再生可能エネルギー活用の重要性、そして、これを支える電力と情報の双方向的なネットワークの拡張という、今後、益々重要になるものと見込まれる社会的課題に対応するため、本発明に係る太陽光発電設備については、次のようなものとした。なお、本設備を構成する各装置については、更に、ソフトウェアを含む様々な機器類によって構成されるものとし、以下の説明を行う。
本設備は、建物や電動車を始めとする外部の様々な接続対象と電力ラインによって接続され、双方向的な電気の送受を行うことを可能とする設備である。外部の接続対象には、社会インフラを構成する既存の電力網が含まれ、本設備の余剰電力を電力会社に売却し、不足する電力を購入できる系統連系型の太陽光発電設備となる。
本設備は、発電装置・放電装置・蓄電装置・車両収納装置を主たる構成装置として一体的に備え、外部の接続対象との間で、電力ラインによる電気の送受が可能であることに加え、情報ラインによる情報の送受を行うことが可能な状態となっている。そして、電気の送受を管理するエネルギーマネジメントシステムと、発電装置・放電装置・蓄電装置・車両収納装置という構成装置を一元的に管理するシステムコントロールユニットとが連携して、本設備の内部、及び、外部の接続対象との間で、電気の送受と情報の管理を実行する。発電装置は、ソーラーパネルで発電した電気を放電装置に送電する。放電装置は、必要に応じて直流と交流の電流変換を行い、発電装置から受電した電気を蓄電装置・車両収納装置・接続対象に送電し、更に、蓄電装置・車両収納装置・接続対象との間における双方向的な電気の送受を調整しつつ媒介する。蓄電装置は、放電装置を介して発電装置・車両収納装置・接続対象から受電した電気を蓄電し、必要に応じて外部に給電する。車両収納装置は、少なくとも支柱と前記の発電装置のソーラーパネルを上部に載置した屋根とを有し、多くの場合には電動車である車両収納装置に収納されて接続される接続対象との間で、電気の送受を行うことが可能な設備となる。なお、車両収納装置の形態としては、ガレージ型やカーポート型を選択することが考えられる。
また、本設備は、エネルギーマネジメントシステム及びシステムコントロールユニットに、ルーティング機能・ブロックチェーンデータベース機能・ウォレット機能を備え、ブロックチェーンネットワークのノードとして機能することが可能なものである。情報ラインによってブロックチェーンネットワークに接続され、電力ラインによって他の本設備を含む外部の接続対象との間で実行された電気の送受について、ブロックチェーンによる分散型台帳管理を行うことが可能な太陽光発電設備である。
そして、複数の本設備が相互に接続され、電力ラインによる双方向的な電気の送受、及び、情報ラインによる双方向的な情報の送受が可能であり、エネルギーマネジメントシステムとシステムコントロールユニットにより、発電装置の発電情報と蓄電装置の蓄電情報を双方向的に交換し、電力ラインによる電気の送受を行い、複数の本設備の間で各々の発電及び蓄電の状況に関する様々な情報を相互に交換しつつ、システム全体として電力需給の平準化を自律的に実行する太陽光発電ネットワークとした。
本設備は、発電装置・放電装置・蓄電装置・車両収納装置の協働により、建物や車両収納装置内の電動車を始めとする外部の様々な接続対象との間において、双方向的な電力の送受を可能とするV2Xシステムとして機能する。蓄電装置は、本設備の放電装置を介して発電装置及び電動車又は既存の電力網等から送電される電力を蓄え、放電装置と連携しつつ、必要に応じて外部への給電を実行することが可能である。そのため、本設備は、家庭や事業所等における非常用電源設備や電動車用充電設備として独立して機能するものである。
更に、建物やその内部のIoT機器、停車中又は走行中の電動車やこれが通信を行う情報網等と、電力ラインや情報ラインにより接続され、電力と情報を相互に送受可能なネットワークを構成し、本設備はそのネットワークの一部となる。
このように、単独の本設備は様々な場所に設置されて独立して機能するとともに、遠近様々な場所に設置される複数の本設備も相互に接続されて分散型のP2Pネットワークを構成し、個別の本設備はそのようなP2Pネットワークのノードとして機能する。更に、このネットワークは既存の電力網やインターネット等の通信網という公共インフラに接続され得るものであり、それらの中で実行される接続対象間の電力取引やその決済状況等の情報交換については、ブロックチェーン技術に基づき処理され、ノード間で共有されて管理される。そして、本設備が構成するネットワークは、地域社会における再生可能エネルギーの需給管理を確実に実行するための基礎的な社会基盤となり、本設備はその一翼を担うとともに、地域を越えて更に拡張可能な広域連携にも貢献できるものとなる。この時、本設備のネットワークでは、ブロックチェーン技術による強靱な情報管理が担保され、P2Pの分散型ネットワークとなることから、中央管理サーバを必須とせず、単一障害点の不存在によるシステムの脆弱性を回避した安定性に優れたサービス提供が可能な設備及びネットワークとなる。
本設備の概要図である。 本設備の構成図である。 本設備の外観を表す斜視図である。 決済システムの概要図である。 本設備の相互連携を示す概要図である。
以下、図を用いて本発明の説明を行う。
図1に本設備の概要とその利用状況の一例を示した。
本発明の太陽光発電設備1は、発電装置2・放電装置3・蓄電装置4・車両収納装置5を一体的に備え、電力ライン6と情報ライン7によって、本設備の外部に在る接続対象と接続される。図1中に明示された接続対象は主に建物8や電動車9であるが、建物8内のIoT機器等も接続対象となり得るものである。その建物8に本設備の車両収納装置5が隣接しており、その中に電動車9が停車中の状態として図示されている。
また、情報通信端末10は、利用者が本設備を操作し、必要な情報を確認するために使用するスマートフォンやパーソナルコンピュータ等であるが、これらは必ずしも本設備の構成機器となるものではない。
図1では、発電装置2を構成する機器類の一部であるソーラーパネルと、ガレージ型の車両収納装置5の屋根とが一体化された状態で図示されている。また、建物8の屋根には、本設備とは異なる既設のソーラーパネルも表示されている。これら二つのソーラーパネルで発電された電気は、本設備の放電装置3から建物8や電動車9に給電されて自家消費され、余剰電力は将来の需要に備えて蓄電装置4に蓄えられ、若しくは、既存の電力網11を通じて電力会社に売電される。
また、本設備の利用者は、手持ちの情報通信端末10を操作し、インターネット等の通信網12を経由して本設備にアクセスする。そして、例えば、電動車9への給電開始を指示する操作情報を本装置に送信し、適宜に充電の進捗状況を確認し、又は、買電や建物8での電力消費、本設備の蓄電状況などの諸情報を受信することができる。
本設備は、太陽光エネルギーを有効に活用し、それによって発電した電気を地産地消することで送電ロスを極小化し、現在と将来における電力の需給変動に備えることを目的の一つとする。そのため、住居や事業所などの建物8に近接して、図1のように設置されることが多いものだが、本設備の立地環境に関しては、必ずしもこのような事例に限定すべきものではない。
本設備の他の用途としては、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の急速な普及が確実視される現状を踏まえ、公共用地や駐車場等に単独又は複数の本設備を不特定多数の電動車9によって共用される急速充電ステーションとして設置することも想定される。
また、発電装置2で発電される電気と、必要に応じて既存の電力網11から供給される電気とを、平常時及び災害等の非常時に備えて蓄電装置4に常時蓄えることにより、地域における公共的な電源設備として本設備を設置することも可能である。
更に、本設備は、建物8と電動車9とが本設備を介して電気を双方向的に融通し合うことを可能にし、これらを始めとする様々な接続対象の間における相互の電力送受を媒介するコネクテッド技術を備えるV2Xシステムとして構築される。なお、V2Xシステムの「V」とは「自動車(Vehicle)」であり、「2」は「to」を意味し、変数的な意味合いをも含む「X」は接続対象の多様性を表す「全てのもの(Everything)」を表象する。そのようなことから、本設備が連携する主たる接続対象の一つは、図1に示したように、我々の日常生活や就労環境の基盤になる建物8である。もう一つの主たる接続対象は我々の生活で必要不可欠な移動手段であり、近い将来の著しい普及拡大が見込まれる電動車9である。そして、それらの更に向こう側には、建物8に繋がる既存の電力網11や通信網12、電動車9の安全運行を支える交通関連の通信網12などの広大な社会基盤が存在する。この時、本設備とそれらの多様な接続対象とが電力ライン6と情報ライン7とによって接続されて相互連携的なネットワークシステムを構築し、地域における再生可能エネルギーの有効活用に関して大きな役割を果たす社会基盤の一部となる。
このように、この太陽光発電設備1は、発電・放電・蓄電、車両収納という各機能を主として担う複数の設備(発電装置2・放電装置3・蓄電装置4・車両収納装置5)が一体化されて機能し、本設備の全体がV2Xシステムとして機能するものである。そのようなことから、本設備における前記の機能を細分化して各装置に限定的に割り振ることは、必ずしも適切な取り扱いではない。
しかし説明の便宜上、以下においては、本設備の全体的機能を実現するための個別の装置毎に、具体的には、発電装置2・放電装置3・蓄電装置4・車両収納装置5・電力ライン6・情報ライン7の各々に関し、その概要と主たる機能について順次説明を行いたい。
発電装置2は、一般的には、ソーラーパネルやパワーコンディショナ等の機器類を中心に構成される。それらの仕組みや機能に関し改めて詳述するまでもないが、例えば、シリコン系の太陽電池セルが組み合わされたモジュールやそれを複数接続したアレイを備えるソーラーパネルでは、太陽光の照射を受けて発電が行われる。この時、発生した電子はn型半導体側に、正孔はp型半導体側に移動することで電流が生じ、太陽光から電気へのエネルギー変換が実現される。発電後の直流電流は、モジュールやアレイからの配線を取り纏めた接続箱からパワーコンディショナへと送電される。パワーコンディショナのインバータで、直流電流が交流電流に変換され、建物8の分電盤を経由し、各部屋の電源コンセント等へ電力が供給されるものである。
太陽光エネルギーは、化石燃料の大量消費による地球温暖化が人類生存の脅威になる状況下で、環境負荷が低く枯渇の虞がない最も潤沢で有用な自然エネルギーである。東日本大震災後における火力発電所の稼働状況、我が国のエネルギー政策、持続可能な開発目標(SDGs)に対する国際的取り組み等に対応して、我々を取り巻くエネルギー環境は大きく変わってきた。太陽光発電に対する関心と投資が官民ともに大幅に高まり、工場敷地や農地等の事業用地の他にも、我々に極めて身近な一般住宅や空地等において、非常に数多くのソーラーパネルを目にすることができる状況になっている。
前記のように、本設備は、発電機能・放電機能・蓄電機能・車両収納機能を備える各装置から構成され、更にそれらの各装置は、ソフトウェアを含む複数の機器類が組み合わされており、それらの機器類及び各装置が一体化されて太陽光発電設備1として機能する。そして、その中でも多機能な機器類、例えば、前記のパワーコンディショナや制御機器等が実行する様々な機能に関しては、本設備内の各装置によって共有されることが多い。
図2は、本設備を構成する各装置間の関係について簡略化して表したものである。内側の太線内が放電装置3を表し、その左側に発電装置2と蓄電装置4が接続された状態として図示している。そして、それらを取り巻く外側の太線とその左下の車両収納装置5とが組み合わされて、本発明の太陽光発電設備1となっている。
本設備の発電装置2では、好天の昼間に潤沢な太陽光によって発電を行い、その電力が建物8等で使用され、余剰電力を蓄電装置4に蓄える。そして、更に余剰となる電力は、図1のように電力ライン6を介して本設備と接続される電力網11に逆潮流して売電が行われる系統連系型の太陽光発電設備1である。また逆に、本設備で電力が不足する場合には、電力網11から適時に必要な電力の供給を受けることも可能である。そのため、余剰電力を電力会社に売却するための売電用電力計や、電力会社から電力を購入する際の買電用電力が本設備や建物8に設置される。但し、本設備の利用者は、発電装置2や蓄電装置4から供給される電力と、外部の電力網11から供給される電力とを、いずれの場合でも特別に意識をすることなくシームレスに利用することができる。
また、電力網11との間で良質の電気を安定的に売買するため、パワーコンディショナを含め、本設備を構成する機器類が満たすべき要件とそれを反映させた仕様等は「電力品質確保に係る系統連係技術要件ガイドライン」等の所定の基準に従ったものとなる。
放電装置3は、本設備の接続対象となる建物8や電動車9の間で、本設備が電力の相互的な融通を媒介する際の中心的な役割を果たし、コネクテッド技術に基づくV2Xシステムとして構成される。そして、利用者からの要求や予め設定された所定の条件等に基づきながら、必要な電気を発電装置2や蓄電装置4から建物8や電動車9に放電して利用に供し、また、発電装置2・電動車9・電力網11から受電した電気を蓄電装置4に送電して蓄電を行わせる。
発電装置2・放電装置3・蓄電装置4・車両収納装置5の関係を示した図2では、中央内部の太線で放電装置3を表し、パワーコンディショナをその中に位置付けており、電流変換機能を実現するためのインバータ等を概念的に例示している。
このパワーコンディショナの主要な機能は、建物8内で電気を使用するために、本設備の発電装置2や蓄電装置4からの直流電流をインバータにおいて交流電流に変換するものである。また、これとは逆に、交流電流から直流電流への変換をコンバータにおいて実行することもある。そして、発電装置2の発電量を最適化する最大電力点追従制御機能や、電圧や周波数を監視して既存の電力網11との接続や遮断を適時に切り替える系統連系保護機能などを備えている。
なお、前記のように、各装置を構成する機器類は、その機能の一部を相互に共有しながら一体化され、各装置はシステム化された太陽光発電設備1として機能する。そのため、便宜上、図2中央の太線内にパワーコンディショナを簡略化して位置付けているのであるが、これによって提供される機能が放電装置3のみに帰属することを必ずしも意味するものではない。
同様に、各装置により機能が共有される機器類は、前記のパワーコンディショナのみに限らない。
図2には、本設備を全体として制御する機器類として、エネルギーマネジメントシステム(以下、「EMS」と略す。)やシステムコントロールユニット(以下、「SCU」と略す。)も放電装置3を表す太線内に内包されるように図示している。本設備の利用者は、スマートフォン等の情報通信端末10を用いることで、所定のウェブ画面やアプリケーションソフトウェア(以下、「アプリ」と略す。)からルータやWi-Fi等、そして情報ライン7を介して、EMS及びSCUにアクセスし、本設備の発電装置2・放電装置3・蓄電装置4・車両収納装置5を遠隔で制御し、必要な情報を取得することが可能になる。
なお、放電装置3から接続対象に放電する際の接続方法としては、主に一般家庭向きで高電圧を要しない単相によるものと、事業所等で利用されることが多い三相によるものとを選択することが可能である。そのような放電装置3の一例として、リユース蓄電池を備え、単相及び三相の両接続方法と各種プロトコル(BACnet、Modbus、Sep2.0)にも対応したEMSを備えるV2Xシステムとしての放電装置3が既に開発されて提供されている状況である。
蓄電装置4は、リチウムイオン電池等の蓄電池を中心的な機器類として構成された設備である。本設備の発電装置2や既存のソーラーパネル、更に、既存の電力網11から受電した電気を蓄電池に充電して蓄え、電力需要の変動等に柔軟に対応し、必要に応じて蓄えた電気を放電する設備である。図1のような設置状況において、天候・季節又は日々の時間帯によって不安定とならざるを得ない発電装置2での発電量と、同様に季節や時間帯等によって大きく変動し得る電力消費量との間において、電力の需給調整を可能とするものである。そして、停電や災害発生時の非常用電源としても機能する。なお、蓄電池には、ハイブリッド自動車や電気自動車の実用化の過程において、その性能・信頼性・安全性の高さが既に実証された使用済みリチウムイオン電池を再生利用することが有用である。そして現に、そのようなリユース蓄電池を活用した蓄電装置4が実用化されている。
この蓄電装置4は、EMSやSCUによって制御され、発電装置2や放電装置3と密接に連携しながら機能する。そして、建物8から離れた駐車場に電動車9の急速充電ステーションとして設置するような場合には、EMS等によって制御されて、利用者が必要な時に速やかに充電が行えるように、電気を自律的に蓄えようとする。また、住居や事業所等に設置される場合には、発電装置2からの電気や、必要に応じて電動車9から受電した電気を蓄え、放電装置3と蓄電装置4とが協働することで、建物8と電動車9との間において電力需給の最適化を実現する。
図1の太陽光発電設備1は、ガレージ型の車両収納装置5を備えるものだが、これと異なる形態となる本設備の一例を示すものが図3である。これはカーポート型の太陽光発電設備1であり、基本的に駐車スペースの前後左右に壁面が存在せず、支柱と屋根との組み合わせで構成されるため、ガレージ型よりも簡素かつ省スペースであるという物理的な設置上の利点がある。また、都市計画法及び建築基準法の建蔽率に関する緩和措置を受けやすいなどの法的な設置上の有利性もあり、本設備以外の一般的なカーポートは広く社会に普及しているところである。
カーポートには、片側の支柱のみで屋根を支える片支持タイプや、両側の支柱で屋根を支える両支持タイプなど、その形状や支柱の数なども様々である。本設備における車両収納装置5の形態や構造も多様であって、その詳細な仕様等に関しては、屋根上に設置するソーラーパネルの大きさや重量等を考慮して個別具体的に決定される。
屋根の素材としては、ポリカーボネートやアルミ等が多用され、支柱や梁など構造体もアルミやスチールが多く用いられる。しかし、本設備の開発目的の一つである地球温暖化対策という観点からは、地域の木材資源の地産地消と再生のため、木製の構造体を積極的に採用すべきと考える。また、重量物となる場合の各装置に関しては、車両収納装置5の支柱等と一体的にユニット化するか、車両収納装置5に隣接する地上又は地下に設置することが容易である。
更に、本設備は太陽光の効果的な照射を受けて発電が行われるものであるから、ソーラーパネルの形状や向き・角度についても、図1や図4の例に限られるものではない。太陽光エネルギーを最も有効に得ることが重要であり、また、降雨や積雪等による悪影響を回避するため、所定の傾斜角を必要に応じて付与し、ソーラーパネル等に融雪用電熱線を適宜に設置することも考慮される。
本設備は、図1のように一般家庭や事業所など様々な電力消費者のもとに単体で設置されて、各々が独立的に機能する。太陽光の照射を受けて発電装置2で発生した電気は、本設備に隣接する建物8で利用され、車両収納装置5に停車した電動車9が充電される。更に、余剰電力は蓄電装置4に蓄えられ、電力会社に売却される。また、本設備を介して、蓄電装置4や電動車9に蓄えられた電気を建物8で利用することも可能になる。一方で、発電装置2や蓄電装置4、更には電動車9から建物8への電気の供給に不足が生じる場合や、将来の電力需要の変動に予め備えるため、必要に応じて電力会社から購入した電気が蓄電装置4や電動車9に蓄えられる。
このように、本設備が単体で独立して機能するほか、複数の本設備が相互に接続され、更には、各々の本設備が個別に連携する多様な接続対象が繋がって、P2Pの分散型ネットワークを構成し、本設備がネットワークのノードとして機能することが想定される。
次に、外部の接続対象との間において、本設備が電力や情報の送受を行う際の経路の一部(特に本設備側)となるものが、電力ライン6と情報ライン7である。
前記のように、本設備の利用者は、離れた場所でスマートフォン等を操作して、本設備に様々な指示を出し、必要な情報を入手することも可能である。所定のアプリからインターネット等の通信網12に接続し、本設備の仕様によっても異なるが、Wi-Fi等への接続用機器類や通信線等で構成される情報ライン7を経由して、本設備にアクセスする。そして、本設備を操作するための指示情報をSCUに送信し、例えば、車両収納装置5に停車中の電動車9に対する給電開始等を遠隔で操作し、必要となる情報を入手する。この時、SCUとEMSとが協働することで、パワーコンディショナ等が自動的に制御されて、放電装置3での電流変換や電力ライン6から電動車9への給電が開始される。利用者は、その途中経過を照会することも可能であり、充電完了の際には、情報ライン7から通信網12を介して、利用者の手元のスマートフォンにその旨を報告する情報が送信される。
また、この電力ライン6と情報ライン7は、複数の本設備を接続する際に電力と情報を双方向的に送受するための経路となる。同一の駐車場、又は、近接した、若しくは、遠隔にある複数の駐車場に設置された複数の本設備の間が、これらのラインによって相互に接続される。そして、情報ライン7を通して情報の交換を随時に行い、各々の状況を相互に照応しながら、電力ライン6を通じて電気を送受し、電力需給や蓄電状況の偏りを修正し、相互に補完し合う。同時に、それらの詳細な情報は分電盤や電力計からEMSに送信されて集計管理され、情報ライン7からインターネット等の通信網12を介し、本設備によって構成される分散型ネットワーク内で情報の送受が行われて、各装置の間で即時に共有される。
このように、本設備と接続対象の間、及び、複数の本設備の間では、電力と情報を共有するための密接な連携が予め想定されている。そのため、建物8や電動車9と本設備との間、更には社会インフラである電力網11や通信網12と本設備との間、複数の本設備の間には、必要に応じて前記の二つのラインが設けられる。即ち、電気を双方向的に送受するための電力ライン6、そして、本設備の操作や管理、電力の需給管理や決済等に関する情報などを相互に共有するための情報ライン7である。
本設備は、単独で設置された場合でも充分に有用なものであるが、社会全体に張り巡らされた既存の電力網11や通信網12に接続されて、人々の暮らしと産業を支える社会インフラの一部になる。また、複数の本設備で構成される分散型ネットワークに関しても、再生可能エネルギー利活用の推進において、地域の社会基盤の一つになることが期待されるものである。
そして、単数又は複数の本設備が有料急速充電ステーションとして設置され、相互に電力と情報を送受し合う太陽光発電ネットワークを構築する際には、電動車9への給電や本設備間で送受する電力量と料金等を適正管理し、決済が確実に履行される必要がある。本設備は、そのような様々な情報管理や料金決済等に関し、情報ライン7からブロックチェーンネットワーク13へのアクセスを行い、それらの履歴情報などをブロックチェーン技術によって自律的かつ確実に管理する。
この時、本設備はネットワークにおけるノードとして機能するため、少なくとも次の三つの機能を備えることになる。即ち、第一の機能は、ネットワーク上で他の本設備を自動的に検索して接続するルーティング機能である。第二の機能は、履歴情報としてのブロックチェーンをコピーして保存するブロックチェーンデータベース機能である。第三の機能は、秘密鍵を管理してアドレスを生成し、トランザクションに署名して送金等の指示を行うためのウォレット機能である。
なお、ブロックチェーン技術を利用した情報管理に関しては、P2Pの分散型ネットワークであり、単一障害点となり得る中央管理サーバの存在を必須の要素とせず、運営コスト上の有利性やシステムの脆弱性を回避可能で安定性に優れる利点がある。また、改竄が極めて困難なブロックチェーンを分散型の台帳管理を行うことにより、非常にセキュアなネットワークとなる。
複数の利用者によって本設備が共用される場合、ブロックチェーン技術で管理される仮想通貨15の決裁プラットフォームにおいて、使用した電力量や料金決済等の情報管理を実行することが可能である。その決済システムの概要を図4に示した。
本設備は、情報ライン7から通信網12を経て、図4の左上に示されたブロックチェーンネットワーク13にアクセスすることができる。この時、ブロックチェーンネットワーク13の取引所にアクセスし、現に流通済みのビットコイン(bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)を始めとする既存の仮想通貨15を使用した料金決裁を行うことが可能である。そして、この他に、本システム独自の通貨や権利情報としてのトークンを生成し、取引情報の交換と保存、料金の決裁を実施することも可能である。また、仮想通貨15を利用して行う決済等の他にも、クレジットカード16等を利用する従来型の決済方法を選択することも考えられ、図4の左下に示したデータベース14に、それらの履歴情報を適宜に保存することも考えられる。
電動車9の利用者は、スーパーマーケットや道の駅などでの買物や休憩の合間に電動車9の充電を行うことも多い。例えば、本設備の各々やその所在を示すウェブ上の地図画面上に固有のウォレットアドレスを示す二次元コード等が個別に表示され、利用者はスマートフォン等の情報通信端末10を用いて、その二次元コード等の読み取りを行う。そして、その二次元コード等に含まれるアクセス情報から、情報通信端末10の所定のアプリが自動的に起動され、そのアプリを利用してブロックチェーンネットワーク13との接続が行われる。利用者は、本設備の利用条件と料金支払を確認したうえで、利用の申し込みを確定するためのトランザクションをブロックチェーンネットワーク13に送信する。情報ライン7により通信網12に接続されている本設備は、ブロックチェーンネットワーク13に送信された多数のトランザクションの中から、自己のウォレットアドレスに基づいて利用申込みに係るトランザクションを自動的に選別する。そして、給電許可の際に必要となる権利情報としてのトークンを受信することで、電動車9に対する給電を許可するコントラクトを実行するための条件が整う。
その後に、利用者が本設備に接近すると、本設備は利用者が所持する情報通信端末10との通信を行う。そして、情報通信端末10に記憶されたウォレットアドレスと、本設備がブロックチェーンネットワーク13から受信したトランザクションに記載されたウォレットアドレスとが照合される。これらが合致する場合には、情報通信端末10と本設備が直ちに接続されて、前記のコントラクトを即時に実行することが可能になり、利用者は本設備を利用して電動車9の充電を行うことができる。この時、複数ある本設備の中からコントラクトを実行した本設備が特定されて、その設置場所・利用者・使用電力量・料金等の諸情報が、その利用者による本設備の利用状況に関する履歴情報としてブロックチェーンに記録される。
また、本設備の利用に関しては、急速充電ステーションの他にも、他の様々な用途に供することが考えられる。
例えば、期間貸しの宿泊施設や家具家電製品付きの賃貸住宅など、その建物8における詳細な施設の利用状況を即時に把握し、速やかで正確な情報の取得と決済を実行するため、本設備を設置することも想定される。これにより、電気や家具等の詳細な使用実績を反映させて、従来よりも正確で公正な料金設定や利用状況の管理を行うことが可能になる。また、建物8の使用料のみならず、IoTデバイスを備えたテレビや冷蔵庫などを接続対象とし、これらを個別に貸し出して、その詳細な使用実態に合わせた料金の課金と徴収を行うような新たなサービスの提供を行うことができる。ブロックチェーン技術を有効に活用する本設備との連携により、このような様々な場面において、多数のトランザクションの管理と実行を確実できめ細やかに実行させることが可能となる。
特に、世界共通の決済手段としての期待が高い仮想通貨15に関しては、我が国への海外渡航客や留学生等において有用なものとなる。IoT家電等が設置された宿泊施設や賃貸住宅を利用する場合、更には、電動車9を賃借して利用する場合など、仮想通貨15やトークンを利用することで、通貨の換金等を行わなくても、本設備を介して、それらを即時に利用することが可能になる。なお、我が国から外国に渡航して観光や生活をする場合にも同様の利点がある。
最後に、本設備の相互連携を表した概要図として、図5を示す。
一軒の賃貸住宅の駐車場に複数の本設備が設置される場合、また、遠隔の複数の建物8等に本設備が設置される場合など、各設備は、本設備の電力ライン6と既存の電力網11、本設備の情報ライン7とインターネット等の通信網12で相互に接続される。そして、複数の本設備が相互に接続されることにより、それぞれの間で電力ライン6による電気の送受と情報ライン7による情報の送受を双方向的に行うことが可能となる。本装置は、EMSとSCUにより、各々の発電情報と蓄電情報を双方向的に交換し、必要に応じて電力ライン6により電気の送受を行う。即ち、複数の本設備の間で発電状況と蓄電状況に係る情報を相互に交換しつつ、必要に応じて各設備の間で電力を融通し合い、電力需給を平準化して、その履歴情報を相互に交換して管理することが可能になる。このような少数の本設備によるネットワークが更にノードの数を増して拡張されることにより、図5のような太陽光エネルギーによる地域分散型のエネルギー管理基盤を容易に構築できる。
そして、電力や情報の取引等に係る他のネットワークと、本設備が構成するネットワークとが双方向的に接続されることによって、地域の枠を超えて更に広域に拡がるエネルギー管理基盤の構築を実現することが可能になる。この時、ネットワークのノードとなる本設備は、平常時から災害発生等の非常時まで、枯渇する虞のない太陽光を有効に活用して我々の社会を支え、トランザクションの送受を通じて様々なコントラクトを実行し、それらの履歴情報をセキュアに管理し共有する。即ち、本設備は様々なレベルにおいて社会基盤の構成手段の一つとなり得るものである。
また、発展途上国等の未電化地域においては、発電所の建設や電力網11の敷設など大規模な設備投資を必ずしも要しないという利点がある。最も電気を必要とする地域に単独又は複数の本設備を優先的に設置し、必要に応じてそれらを相互に接続することで太陽光発電ネットワークの拡張を図る。そのようにして、順次に連携の拡大を実現することにより、太陽光エネルギーを有効に活用して持続可能性が高く、分散型のために安定性に優れたエネルギー管理基盤を様々な場所に低コストで構築することが可能となる。
太陽光発電設備1
発電装置2
放電装置3
蓄電装置4
車両収納装置5
電力ライン6
情報ライン7
建物8
電動車9
情報通信端末10
電力網11
通信網12
ブロックチェーンネットワーク13
データベース14
仮想通貨15
クレジットカード16

Claims (3)

  1. 発電装置・放電装置・蓄電装置・車両収納装置を備え、
    外部の接続対象との間で、電力ラインによる電気の送受、及び、情報ラインによる情報の送受を行うことが可能であり、
    電気の送受を管理するエネルギーマネジメントシステムと、
    前記発電装置・前記放電装置・前記蓄電装置・前記車両収納装置を管理するシステムコントロールユニットとが連携して、これらの内部及び前記接続対象との間における電気の送受を実行する系統連系型の太陽光発電設備であり、
    前記発電装置は、ソーラーパネルで発電した電気を前記放電装置に送電し、
    前記放電装置は、前記発電装置から受電した電気を必要に応じて電流変換を行い、前記蓄電装置・前記車両収納装置・前記接続対象との間における双方向的な電気の送受を媒介し、
    前記蓄電装置は、前記放電装置の媒介により、前記発電装置・前記車両収納装置・前記接続対象から受電した電気を蓄電し、必要に応じて前記放電装置に送電し、
    前記車両収納装置は、少なくとも支柱と前記発電装置の前記ソーラーパネルを上部に載置する屋根とを有し、前記車両収納装置に接続される前記接続対象との間で電気の送受が可能であることを特徴とする太陽光発電設備。
  2. ルーティング機能・ブロックチェーンデータベース機能・ウォレット機能を有し、ブロックチェーンネットワークとの間で前記情報ラインによる情報の送受が可能であり、前記接続対象との間で実行する前記電力ラインによる電気の送受に関する情報をブロックチェーンに基づき分散型台帳管理することが可能であることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電設備。
  3. 請求項2記載の前記太陽光発電設備を相互に複数接続して構成する太陽光発電ネットワークであり、各々の前記太陽光発電設備の前記電力ラインによる前記太陽光発電ネットワークに接続された前記太陽光発電設備及び前記接続対象との間での双方向的な電気の送受と、各々の前記太陽光発電設備の前記情報ラインによる前記太陽光発電ネットワークに接続された前記太陽光発電設備及び前記接続対象との間での双方向的な情報の送受とが可能であり、各々の前記太陽光発電設備が双方向的に交換し合う前記発電装置の発電情報及び前記蓄電装置の蓄電情報に基づき、各々の前記太陽光発電設備における発電及び蓄電の平準化を自律的に実行することが可能であることを特徴とする太陽光発電ネットワーク。
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