JP2023003119A - トンネル掘削管理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】地山の性状に応じた工法を的確に選択するトンネル掘削管理方法を提供する。【解決手段】トンネルの切羽面の掘削方向より前方の所定距離の地山においてノンコアボーリングを実施する工程と、ノンコアボーリングにおける機械データに基づいて単位体積の削孔に要した削孔エネルギーを算出する工程と、削孔エネルギーの値に基づいて地山の掘削素掘り面崩落規模、地山物性、硬軟特性を算出する工程と、算出結果に基づいて削孔エネルギー及び掘削素掘り面崩落規模の関係と、削孔エネルギー及び地山強度の関係とのデータベースを構築する工程と、データベースに基づいて地山強度比を算出し地山強度比に基づいて地山に施工する工法を判定する工程と、所定距離の間の地山の掘削において掘削面に対して三次元スキャナーを用いて3次元出来形測量を行い測量結果に基づいて掘削素掘り面崩落規模を再評価する工程と、を備えるトンネル掘削管理方法である。【選択図】図1
Description
本発明は、掘削時の地山の性状に応じた工法を行うためのトンネル掘削管理方法に関する。
トンネルを掘削する場合、所定の掘削工程毎に測量を行い、掘削箇所が計画通りに施工されているか管理される。常に変化する地山を相手に施工するトンネル施工現場では、正確な観察、測量により現場情報を出来るだけ早く収集して適切な対応をする掘削管理することが重要である。
山岳トンネルを掘削するNATM(New Austrian Tunneling Method)において、掘削対象の地山が地山等級で区分され、地山等級別に崩落を防止するために実施される支保パターンが選択されている。各地山等級に応じて、標準支保パターンと標準的な施工法が定められている。実施される支保パターンは、掘削面が露出した切羽で地山性状を目視観察して、掘削面の自立性、天端崩落の規模で掘削補助工を選択、切羽評価点などで選択される。
未固結状地山における掘削面は、切羽が不安定になり、余掘り以上に崩落が発生したり、先抜けが発生したりして切羽崩壊が引き起こされる虞がある。このような崩落が生じた場合は、吹付けコンクリート吹付けや空洞充填工などの対策工が行われる。このような対策工は、多大な費用と労力、時間を要すると共に、作業に危険が生じる虞がある。従って、施工においては、掘削補助工が検討され、適宜選択的に実施される。
一方、地山強度比が1を下回る低強度地山において、切羽観察で標準的な支保パターンを選択し、標準的な掘削工法を用いて施工した場合、トンネルは不安定になり、過大な変位が発生し、再施工を余儀なくされる虞がある。このように、目視による切羽観察に基づいて、切羽周辺の前方地山の性状予測を行い、地山の状態を評価する場合、掘削補助工の必要性を判断し、地山に最適な支保パターンや掘削工法を選択する際に、不正確さが伴う。従って、従来の山岳トンネル掘削管理技術においては、地山が掘削位置や経時的に変化する場合、地山性状評価及び地山性状変化に対応する施工法を的確に選択することが困難であった。
本発明は、切羽面から掘削する地山の性状に応じた支保パターンを的確に選択することができるトンネル掘削管理方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、本発明は、トンネルの切羽面の掘削方向より前方の所定距離の地山においてノンコアボーリングを実施する工程と、前記ノンコアボーリングにおける機械データに基づいて単位体積の削孔に要した削孔エネルギーを算出する工程と、前記削孔エネルギーの値に基づいて、前記地山の掘削素掘り面崩落規模、地山物性、硬軟特性を算出する工程と、算出結果に基づいて、前記削孔エネルギー及び前記掘削素掘り面崩落規模の関係と、前記削孔エネルギー及び地山強度の関係とのデータベースを構築する工程と、前記データベースに基づいて、地山強度比を算出し、前記地山強度比に基づいて前記地山に施工する工法を判定する工程と、前記所定距離の間の前記地山の掘削において掘削面に対して三次元スキャナーを用いて3次元出来形測量を行い、測量結果に基づいて前記掘削素掘り面崩落規模を再評価する工程と、を備える、トンネル掘削管理方法である。
本発明によれば、切羽前方地山の削孔エネルギーと掘削素掘り面崩落規模、削孔エネルギーと地山強度の対応に基づいて、切羽前方未施工地山の掘削補助工および全断面早期閉合工法の必要性を掘削に先立ち判定できる。
また、本発明は、前記掘削素掘り面崩落規模を再評価する工程において、前記掘削面において原位置試験を実施し、試験結果に基づいて、前記データベースを更新する工程を備えていてもよい。
本発明によれば、掘削後の削孔エネルギーと崩落規模および地山強度の対応で、既施工データに基づいてデータベースを更新し、推定精度を向上させることができる。
また、本発明の前記削孔エネルギーは、前記地山の前記所定距離に対して前記ノンコアボーリングを所定回数実施し、所定単位距離毎に前記機械データを取得し、所定間隔毎に前記機械データを統計処理した平均値に基づいて算出されてもよい。
本発明によれば、複数回行われたノンコアボーリングにより得られた機械データを削孔エネルギーとして統計処理することにより、トンネル支保構造の選択に必要な地山強度比を算出することができる。
本発明によれば、切羽面から掘削する地山の性状に応じた支保パターンを的確に選択することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るトンネル掘削管理方法の実施形態について説明する。トンネル掘削管理方法には、トンネル内の形状を三次元的に測量することができる管理システムが用いられる。先ず、管理システムについて説明する。
図1に示されるように、トンネル掘削管理方法において用いられる掘削管理システム1は、トンネル内の三次元形状を測量するレーザースキャナー10(三次元スキャナー)と、レーザースキャナー10の測量データに基づいてトンネルの施工を管理する管理装置20とを備える。
レーザースキャナー10は、例えば、レーザー光を照射して反射光の一部を受光するレーザーセンサー11と、レーザーセンサー11を回転自在に支持すると共に回転駆動する本体部12とを備える。レーザーセンサー11は、レーザー光の発光部(不図示)と、受光部(不図示)とを備える。レーザーセンサー11は、例えば、上下方向や左右方向に回転しながら面的にレーザー光を対象物に照射して、対象物から反射した一部の反射光を受信した時間を計測し、点群データを生成する。
レーザーセンサー11は、本体部12によりy軸回り(チルト方向に)に回転自在に支持されていると共に、回転駆動される。これによりレーザーセンサー11は、対象物に対して上下方向をスキャンすることができる。本体部12は、三脚Sに載置されている。本体部12は、自体を三脚Sに対してz軸回りに回転駆動する。これにより、レーザーセンサー11は、z軸回り(水平方向に)に回転自在に支持されていると共に、回転駆動される。
このよう、レーザースキャナー10は、対象物の所定領域を三次元的にスキャンすることができ、所定領域における対象物の表面形状のデータを取得することができる。
レーザースキャナー10は、例えば、掘削が終了した際にトンネルの掘削面や、切羽鏡面の表面を測量し、表面形状のデータを取得する。点群データを管理装置20に出力する。レーザースキャナー10は、例えば、掘削面にコンクリートが一次吹付けされた後にコンクリートの吹付け面を測量し、表面形状のデータを取得する。また、レーザースキャナー10は、例えば、支保工が建て込まれコンクリートが支保工の表面を覆うように二次吹付けされた後にコンクリートの吹付け面の表面形状を測量し、表面形状のデータを取得する。
管理装置20は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット型端末装置、スマートフォン等の端末装置により実現される。管理装置20は、有線または無線によりレーザーセンサー11と通信可能に接続されている。
図2に示されるように、管理装置20は、レーザーセンサー11から取得したデータに基づいて対象物の三次元形状を演算する演算部21と、演算部21の演算結果に基づいて生成される各種の情報を表示する表示部22と、各種データを記憶する記憶部23とを備える。
演算部21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
演算部21は、レーザーセンサー11が対象物に対して三次元スキャンした計測データを取得する。演算部21は、取得したデータに基づいて、対象物の三次元形状の画像データを生成する。演算部21による計測原理の詳細な説明は特許文献1に記載されている。演算部21は、例えば、対象物の三次元形状の画像データや数値データを生成することの他に、記憶部23に記憶された設計データと測定データとを比較した管理情報を生成する。演算部21は、表示部22を制御して生成した画像データ等の表示内容を表示させる。
表示部22は、演算部21により生成されたトンネル内の三次元形状の画像IMや管理情報を表示する。表示部22は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ等の表示装置により実現される。
記憶部23は、レーザーセンサー11により測量された測量データ、演算部により生成された画像データ、トンネルの設計事項を含む設計データ等を記録する。記憶部23は、HDDやフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶装置である。
図3に示されるように、施工中のトンネルTの最前部には、掘削対象の地山が露出した切羽面T1が形成されている。トンネルTは、例えば、山岳トンネルであり、掘削対象は山岳の地山である。トンネル掘削管理方法において、以下の工程が行われる。
先ず、トンネルの切羽面T1の掘削方向より前方の所定距離の地山においてノンコアボーリングを実施する。ノンコアボーリングは、切削対象の地山のコア(サンプル)を採取せずに削孔機を用いて削孔するものである。ノンコアボーリングは、切羽面T1における異なる位置において所定回数実施される。図示するように、ノンコアボーリングは、例えば、切羽面T1の外周に沿って5箇所の穿孔位置Cに削孔して行われる。
ノンコアボーリングは、地山の削孔に必要な削孔エネルギーを算出するために行われる。削孔エネルギーは、削孔時に取得される機械データに基づいて単位体積の削孔に要するエネルギーである。削孔エネルギーは、地山の所定距離に対して単位距離毎に機械データを取得し、所定間隔毎に機械データを統計処理した平均値に基づいて算出される。具体的に、ノンコアボーリングは、例えば、1施工毎に9mの所定距離において削孔される。削孔において、所定単位距離毎(例えば、2cm間隔毎)に削孔時に検出される機械データが取得される。検出された機械データに基づいて削孔エネルギーが算出される。
図4に示されるように、削孔エネルギーEd(N/mm2)は、掘削方向において所定間隔毎(例えば、1m間隔毎)に複数のノンコアボーリングの平均値を算出する統計処理により算出される。次に、算出した削孔エネルギーの値に基づいて、地山の掘削素掘り面崩落規模(深さ)、地山物性、硬軟特性が算出される。
算出した削孔エネルギーの値に基づいて、地山の掘削素掘り面崩落規模、地山物性、硬軟特性が数値により可視化される。削孔エネルギー及び掘削素掘り面崩落規模の関係と、削孔エネルギー及び地山強度の関係とのデータベースが構築される。データベースに基づいて、地山に施工する工法が判定される。具体的には、データベースに基づいて、切羽前方未施工区間の削孔エネルギーに対崩落規模、地山強度と地山強度比を推定し、掘削補助工の必要性、全断面早期閉合工法への変更を検討、判定する。
図5に示されるように、算出された切羽前方未施工区間の削孔エネルギーEdに基づいて地山の掘削素掘り面崩落深さ(規模)が推定される。これにより、切羽面T1に対して掘削補助工を採用する必要性が判定される。
図6に示されるように、削孔エネルギーEdに基づいて地山強度quから算出された地山強度比cfが推定される。これにより、切羽面T1に対して全断面早期閉合工法への変更の必要性が判定される。次に、トンネルTにおいて、所定距離(9m)の間の地山を掘削する。この所定距離の間の掘削区間では、掘削面に対して切羽観察を行って地山等級を判定し、その後、3次元出来形測量を行う。
図7に示されるように、3次元出来形測量には、レーザー光を用いた3次元レーザースキャナー(3次元スキャナー:図1参照)等が用いられ、掘削面の出来形の3次元データが取得される。測量において、切羽面の周囲の崩落深さの3次元データが経時的に取得される。3次元データの経時的な観察により、掘削素掘り面崩落規模及び、初期変形速度が評価される。取得した掘削素掘り面崩落規模の3次元データとデータベースに記憶された地山の掘削素掘り面崩落規模の演算結果を比較して掘削素掘り面崩落規模が再評価される。また、3次元測量と共に、地山の性状が変化する切羽の位置において原位置試験が実施される。
図8に示されるように、原位置試験においては、地山の性状に応じた試験が行われる。例えば、粘土質地山に対しては、針貫入試験が行われ地山強度が推定される。破砕質地山に対しては、簡易弾性波試験や点載荷試験が行われ地山強度が推定される。早期閉合した地山に対しては、吹付けコンクリート軸応力を測定し地山強度が推定される。原位置試験に基づいて地山強度、及び地山強度比が新たに算出される。
原位置試験の試験結果に基づいて、地山物性値が再評価される。具体的には、原位置試験により得られたデータに基づいて、その位置における削孔エネルギーと対応付けられた地山強度比が計算され、地山性状を数値化した地山強度比に対応する掘削工法やトンネル支保構造が評価される。原位置試験により得られたデータに基づく再計算値に基づいてデータベースが更新される。更新されたデータベースを用いることにより、予測精度が向上する。図示するように、地山強度比に基づいて、切羽面T1の掘削の進捗毎に切羽面T1の状態が評価される。
図9には、トンネル掘削管理方法の処理の流れが示されている。トンネル掘削管理方法は、以下の各工程が行われる。先ずトンネルTの切羽面T1の掘削方向より前方の所定距離の地山においてノンコアボーリングを実施する工程が行われる(ステップS10)。管理装置20において、ノンコアボーリングにおける機械データに基づいて単位体積の削孔に要した削孔エネルギーを算出する(ステップS12)。管理装置20において、削孔エネルギーの値に基づいて、地山の掘削素掘り面崩落規模、地山物性、硬軟特性を算出する(ステップS14)。
管理装置20において、算出結果に基づいて、削孔エネルギー及び掘削素掘り面崩落規模の関係と、削孔エネルギー及び地山強度の関係とのデータベースを構築する(ステップS16)。管理装置20において、データベースに基づいて、地山強度比を算出、これから地山に施工する工法を判定する(ステップS18)。所定距離の間の地山の掘削において掘削面に対して3次元出来形測量を行い、測量結果に基づいて掘削素掘り面崩落規模を再評価する(ステップS20)。掘削面において地山の性状に応じた試験方法に基づく原位置試験を実施し、管理装置20において、試験結果に基づいて、データベースを更新する(ステップS22)。地山を所定距離掘削した後、上記各工程が繰り返し実行される。
上述したように、トンネル掘削管理方法によれば、切羽前方地山の削孔エネルギーと掘削素掘り面崩落規模、削孔エネルギーと地山強度の対応に基づいて、切羽前方未施工地山の掘削補助工および全断面早期閉合工法の必要性を掘削に先立ち判定できる。トンネル掘削管理方法によれば、掘削後の削孔エネルギーと崩落規模および地山強度の対応で、既施工データに基づいてデータベースを更新し、推定精度を向上させることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態においては山岳トンネルを例示したが、本発明は山岳トンネル以外のトンネル施工に適用してもよい。
1 掘削管理システム
10 レーザースキャナー
20 管理装置
T トンネル
T1 切羽面
C 穿孔位置
10 レーザースキャナー
20 管理装置
T トンネル
T1 切羽面
C 穿孔位置
Claims (3)
- トンネルの切羽面の掘削方向より前方の所定距離の地山においてノンコアボーリングを実施する工程と、
前記ノンコアボーリングにおける機械データに基づいて単位体積の削孔に要した削孔エネルギーを算出する工程と、
前記削孔エネルギーの値に基づいて、前記地山の掘削素掘り面崩落規模、地山物性、硬軟特性を算出する工程と、
算出結果に基づいて、前記削孔エネルギー及び前記掘削素掘り面崩落規模の関係と、前記削孔エネルギー及び地山強度の関係とのデータベースを構築する工程と、
前記データベースに基づいて、地山強度比を算出し、前記地山強度比に基づいて前記地山に施工する工法を判定する工程と、
前記所定距離の間の前記地山の掘削において掘削面に対して三次元スキャナーを用いて3次元出来形測量を行い、測量結果に基づいて前記掘削素掘り面崩落規模を再評価する工程と、を備える、トンネル掘削管理方法。 - 前記掘削素掘り面崩落規模を再評価する工程において、前記掘削面において原位置試験を実施し、試験結果に基づいて、前記データベースを更新する工程を備える、
請求項1に記載のトンネル掘削管理方法。 - 前記削孔エネルギーは、前記地山の前記所定距離に対して前記ノンコアボーリングを所定回数実施し、所定単位距離毎に前記機械データを取得し、所定間隔毎に前記機械データを統計処理した平均値に基づいて算出される、
請求項1または2に記載のトンネル掘削管理方法。
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