詳細な説明及び特定の例は、当該装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、解説のみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図するものではないと理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他のフィーチャ、態様及び利点は、以下の説明、添付請求項及び添付図面から一層良く理解されるであろう。図は単なる概略的なものであり、実寸通りには描かれていないと理解されたい。また、同一又は類似の部分を示すために、図面全体を通して同じ参照番号が使用されていることも理解されたい。
前述したように、従来の汗分析技術は、測定を可能にするのに十分な発汗を誘発する目的で運動に関わっている人に制限される傾向がある。このことは、患者がほとんど動かない状態にあり、発汗量が、それに対応して、相対的に低い(例えば、0.2nl/分/腺のオーダ)医療環境では不適切である。
従来の汗感知装置の関連する問題は、そのような低い発汗量における発汗とバイオマーカ測定との間の大きな時間遅延である。このような装置で使用される汗収集チェンバの充填は、数時間までもの時間が掛かり得る。
いわゆる発汗量依存性バイオマーカは、バイオマーカデータが意味のあるものとなるために、腺(汗腺)当たりの発汗量の測定を必要とする。しかしながら、汗腺当たりの発汗量を測定する能力を備えた既知のシステムは、非常に複雑な設計という欠点を有する。例えば、複数の汗収集チェンバにおける汗の流れを監視するために、10個以上の複雑な流量センサが必要とされ得る。例えば、国際特許出願公開第WO2018/125695号は、汗腺当たりの平均発汗量を決定するために、多数の発汗量センサ及びナトリウムバイオマーカセンサを協調して利用する複雑なシステムを開示している。
少ない発汗量においては、蒸発が妨害要因になり、バイオマーカの濃度が不自然に上昇する。蒸発は、特に少ない発汗率(0.2nl/分/腺のオーダ)及び量において、汗がセンサに到達するのを抑制又は妨害し得る。
従来の汗感知装置の更なる欠点は、しばしば半連続的測定に使用される電気化学センサが、頻繁な再較正及びオフライン較正を必要とし得ることである。このことは、このような装置が被験者を監視するために使用される場合、ワークフローに対して悪影響を有し得る。
汗腺当たりの発汗量の決定に使用できるシステムが提供される。このシステムは、装置及びセンサを有する。該装置は、皮膚から汗を受け取り、該汗を個別の(離散的な)汗滴として前記センサに輸送する。該センサは汗滴の各々を感知する。当該システムは、或る期間における感知された汗滴の数を記録するプロセッサを更に有する。該プロセッサは、連続する感知された汗滴の間の時間間隔も決定し、オプションとして、感知された汗滴の各々の体積の尺度を受け取ることができる。上記時間間隔及びオプションとして上記体積の尺度は、次いで、プロセッサにより、汗を生成する汗腺又は複数の汗腺の発汗バースト期間及び休止期間を識別するために使用される。この識別プロセスは、必然的に、発汗バースト期間及び休止期間を汗腺又は複数の汗腺に割り当てることを含み、前記プロセッサが汗の生成に関与する汗腺の数を決定することが可能とされるようにする。
次いで、汗腺当たりの発汗量を、前記感知された汗滴の数、汗滴の各々の体積の尺度、及び決定された汗腺の数から決定できる。
前記装置は、皮膚から汗をサンプリングし、該汗をセンサに液滴状で輸送する。該装置の設計に依存して、各汗サンプルは、単一の汗腺又は2以上の汗腺からの汗により構成され得る。このことは、汗腺当たりの発汗量の決定を複雑にし得る。汗腺の数が曖昧になるからである。
汗腺は汗を周期的に排出することが知られている。汗腺が汗を排出している活性又は「発汗バースト」期間は、汗腺が汗を排出していない休止期間により分離されている。発汗バースト期間は通常約30秒間続く傾向がある一方、休止期間は約150秒であり得る。
本発明は、この汗腺の周期的挙動を、センサにより感知される汗を供給した汗腺の数を決定するために使用できるという認識に基づいている。発汗バーストの間においては、1以上の活性汗腺が汗を排出し、該汗は一連の離散的汗滴の形でセンサに送られる。この結果、斯かる離散的汗滴がセンサにより検出されることに対応して、一連の離散的なセンサ信号、すなわちパルスが生成される。連続する汗滴(パルス)の間の時間間隔、及び、オプションとして、感知された汗滴の各々の体積の尺度(例えば、パルスの幅に対応する)を考慮することにより、当該汗腺又は複数の汗腺の活性期間及び休止期間を決定できる。
上記時間間隔及びカウントされた汗滴の各々の体積の尺度の両方を考慮すると、或る汗腺の活性期間に対応するセンサ信号が他の汗腺のものと重なり合う又は他の汗腺のものを上書きしたセンサ信号パターンの解釈が容易になり得る。前記活性期間及び休止期間を識別するプロセスは、必然的に、このような活性期間及び休止期間を1以上の汗腺に割り当てることを含む。次いで、汗腺の数を決定することができる。
前記或る期間の間にセンサにより感知された汗滴の数及びカウントされた汗滴の各々の体積の尺度は、該決定された汗腺の数と共に、汗滴当たりの発汗量の計算を可能にする。
当該装置は、従来の汗感知装置で使用されていた連続的な汗の流れの代わりに、離散化された汗の流れをセンサに供給する。前記流体輸送アセンブリは、汗滴が前記チェンバの出口から放出され、センサに輸送されるようにする。センサへの、及び幾つかの例においてはセンサを経ての液滴の移動は、例えば、本明細書で更に後述されるように、界面張力法を介する及び/又は圧力の印加によるものであり得る。
汗の滴状の又は離散化された流れは、連続的な流れに対して幾つかの特有の利点を提供する。汗の排出とバイオマーカ濃度の実際の決定との間の遅延は、余り動かない状態の被験者の場合、例えば、通常の1~2時間から約10~15分に低減できる。微量の汗を扱う能力及びこれをセンサに相対的に迅速に輸送できる能力は、バイオマーカセンサを含むセンサの場合、被験者が余り動かない状態にある場合でさえ、バイオマーカ濃度が決定されることを可能にし得る。更に、発汗量は、汗が連続的な流れとしてではなく離散的な汗滴として供給される場合、例えば、より単純なセンサを使用して一層容易に決定できる。
当該装置は、センサに輸送する前に汗滴を前記出口から放出するので、例えば、従来技術の装置の幾つかにおけるように、液滴をチェンバに集められた汗の大部分にまだ付着している間に感知するようにチェンバ毎にセンサを設ける必要はない。本装置は、これに対応して、より大きな設計上の柔軟性を提供し得る。例えば、当該装置は、出口から空間的に隔てられたセンサに汗を輸送することができる。
図を参照して以下でより詳細に説明されるように、前記流体輸送アセンブリは、出口とセンサとの間に延びる表面(面)を有し得る。該面は、例えば、当該装置の使用中に汗滴がセンサへと移動する位相幾何学的(トポロジカルな)及び/又は化学的勾配を有し得る。エレクトロウェッティング技術を代替的又は追加的に使用することもできる。このようなエレクトロウェッティング技術は、上記面に沿いセンサに向かって汗滴を移動させるために、電場を使用して該面の濡れ特性の一時的変更を行う。
前記流体輸送アセンブリは、代替的に又は追加的に、汗滴を出口から放出し及び/又は放出された汗滴をセンサに輸送するために当該汗滴に圧力を加えることもできる。該圧力は、例えばセンサの方向に流れる、汗滴が混ざらない搬送流体の流れを介して印加できる。
結果として生じる汗滴の列は、例えば、それらの間を各汗滴が通過する一対の電極を有する単純な検出器を使用することにより検出及び計数できる。これに対応して、発汗量を測定する簡単な手段が設けられる。
図1は、一例による装置100の一部を断面図で模式的に示す。装置100は、入口(流入口)104を有するチェンバ102を備える。入口104は、皮膚106から汗を受け取る。図1に示されるように、入口104は皮膚106の表面に隣接して配置され得る。図1には単一のチェンバ102が示されているが、これは限定することを意図するものではなく、他の例では、以下で更に説明するように、複数のチェンバ102が装置100に含まれ得る。
入口104は、汗腺108の近傍に示されている。この場合、汗腺108により排出される汗は入口104を介してチェンバ102に入り、該チェンバを充填する。図1に示されるように、装置100は、皮膚106の表面に付着されるプレート110を有し得る。図示の例において、プレート110の下面は皮膚106の表面と直に接触している。この場合、チェンバ102はプレート110により区切られた(画定された)開口の形態をとる。プレート110は、例えばポリマ等の、皮膚上に配置することができる任意の適切な材料で形成できる。例えば、プレート110は、皮膚106の表面への共形的な貼り付けを可能にするために少なくとも或る程度の柔軟性を有し得る。入口104が皮膚106から汗を受け取ることができるならば、より剛性のプレート110も想定できる。
被験者から汗を収集するために、プレート110は、例えば、適切な生体適合性接着剤を使用して皮膚106の表面に接着され得る。他の例として、プレート110は、該プレート110を被験者の身体に取り付けるために、例えばストラップ(紐)等の固定具により皮膚106の表面に保持され得る。
一実施形態において、複数のチェンバ102の各入口104は、平均して、0.1から1個の活性汗腺から汗を受け取るように寸法決めされる。このことは、後により詳細に説明されるように、当該装置100が汗腺当たりの発汗量の決定に使用されることの助けとなり得る。
各入口104は、例えば、0.005mm2から20mm2の間の面積を有し得る。 入口面積は、チェンバ102の他の寸法、及び装置100に含まれるチェンバ102の数に従って選択することができる。入口面積及び寸法の背後にある理論的根拠は、本明細書で以下により詳細に論じられる。
皮膚106から汗を受け取るための入口104の直径は、例えば約360μm又は約1130μmのような300~1200μm等の、例えば、200~2000μmのように相対的に小さく選択されることが好ましい。皮膚106の表面上における汗腺出口の直径は、通常、約60μmから120μmの範囲内である。相対的に小さな入口104は、以下で更に詳細に検討されるように、センサ信号の解釈を複雑にし得る2以上の汗腺108が同じ入口104に排出する可能性を低減する助けとなり得る。限られた量の汗しか個々のチェンバ102に受け取られないことを補償するために、装置100は、例えば、約25のチェンバ102のように10から40のチェンバ102等の、例えば2から50のチェンバ102の複数の斯様なチェンバ102を含むことができる。
チェンバ102が汗で満たされたら、汗滴112がチェンバ102の出口114からはみ出る。図1に示される例において、出口114はプレート110の上面により区切られ、チェンバ102が汗で満たされると、半球状の汗滴112が出口114の上部に形成される。
より一般的には、当該装置100は、汗滴112の形成速度は発汗量により決定される一方、汗滴112の体積は前記流体輸送アセンブリにより決定されるように構成され得る。これについては、更に詳しく説明されるであろう。
入口104及び出口114の各面積は、或る範囲の発汗量(率)にわたって効率的なチェンバ102の充填及び汗滴112の形成を保証するように選択され得る。幾つかの例において、入口104及び出口114は、この目的のために選択された固定寸法を有する。代わりに、装置100は、汗滴112の形成に関連する寸法及び幾何学形状の少なくとも幾つかを変更できるように構成可能であり得る。
好ましい例(図1には示されていない)において、チェンバ102は10~15分以内に汗で満たされるように寸法決めされる。チェンバ102の充填に続く半球状汗滴112の形成は、好ましくは、相対的に低い発汗率、例えば0.2nl/分/腺において、典型的に、10秒以内に生じるものとする。
出口114の直径は、例えば、汗滴112のサイズを該汗滴の体積が均一で再現性のあるものとなるように制御するのを補助するために、約33μmのように、例えば15μmから60μm等の10μmから100μmの範囲内であり得る。出口114が斯様な直径を有することにより、0.2nl/分/腺程度の少ない発汗量であっても、汗腺108の単一の発汗バースト(典型的には、30秒続く)の間に、幾つかの汗滴112が形成され得る。結果として、発汗量を確実に推定するために、十分な汗滴112が生成され、装置100によりセンサに輸送され得る。
装置100は、相対的に均一なサイズの汗滴112の形成を可能にし得ると共に、更に、変化する汗滴112の体積も扱うことができる。後者に関しては、装置100が汗滴112を輸送するセンサは、汗滴112を計数(カウント)すると同時に、各汗滴112がセンサを通過するのに掛かる時間も決定するように構成できる。この時間は、図15を参照して後に更に詳細に説明されるように、事前に既知の移動速度を介して汗滴112の体積に線形に関連する。
図1に示される例示的装置100の部分の縮尺の指標として、長さ116(両方向矢印で示される)は約500μmである。より一般的には、チェンバ102、入口104及び出口114の寸法は、例えば、被験者の発汗量に従って選択できる。前記充填時間を短縮するために、チェンバ102の容積は最小化できる。このことは、実際の汗の排出と汗滴112の感知/監視との間の最小の遅延を保証するのに役立ち得る。例えば、チェンバ102の容積は、例えば1~20nlのような0.5~50nl等の、0.1~100nlの範囲内であり得る。
チェンバ102の容積は、該チェンバ102を汗で満たすのに要する時間を最小化するために、様々な方法で最小化できる。そのような改変は、例えば、チェンバ102を区切るプレート110に対するものであり得る。
図2は、チェンバ102が入口104から出口114に向かって先細りになる例を示している。このような先細りのチェンバ102の容積は、例えば、図1に示された装置100のもののような、同じ高さ及び基部直径寸法を持つ円筒状チェンバ102よりも小さい。
実例として、図2に示されるプレート110の長さ寸法118は約500μmである。この例における先細りチェンバ102は、円錐幾何学形状を、すなわち、1/3πh[R2+Rr+r2](h=50μm;R=360μm;r=33μm)の切頭円錐形状を有する。0.2nl/分/腺の相対的に低い発汗率の場合、この先細りチェンバ102の充填時間は約10分であり得、汗滴112の形成は約12秒掛かり得る。対照的に、同じ高さ(50μm)及び底部(360μm)寸法を有する図1に示された円筒状チェンバ102の充填は約50分掛かり得、半球状汗滴112の形成時間は3時間を超え得る。
この点において、汗腺108は汗のバーストとして排出する傾向があり、各発汗バーストには汗腺108が排出しない休止期間が後続することに注意されたい。発汗バースト期間の間において、発汗量は平均発汗量より約6倍大きくなり得る。その理由は、180秒の時間枠内には、典型的に、30秒の発汗バースト及び通常は150秒の休止期間が存在し、従って、平均発汗量と発汗バースト中の発汗量との間には6なる倍数が存在することである。切頭円錐形を有するチェンバ102の上述した解説例において、図示された汗滴112を形成する時間は、汗腺108の発汗バーストの間における約12秒である。
図2に示される例において、汗滴112の表面積の56%はプレート110の上側表面と接触する。プレート110の該上側表面は、流体輸送アセンブリに関して後に更に説明されるように、汗滴112を出口114から放出すると共に該汗滴112をセンサに輸送する目的で、位相幾何学(トポロジ)的及び/又は化学的勾配を備え得る。この点において、このような位相幾何学的及び/又は化学的勾配の場合、汗滴112を出口114から放出するために必要とされるプレート110の上側表面と接触する該汗滴112の表面積は、上記化学的及び/又はトポロジ的勾配の急峻さ及び汗滴112の体積に依存し得ると言うだけで十分であろう。
図3は、チェンバ102の容積をどの様に最小化できるかの他の例を示している。この例において、チェンバ102はコンパートメントに分割され、これらコンパートメントの少なくとも幾つかはチェンバ102が汗で満たされることを可能にするために互いに流体的に接続されている。図3に示されるように、上記コンパートメントはピラー120により形成され得る。このようなピラー120は、プレート110の一部を形成し得、そのような例においては、プレート110の下側表面をパターン化する(例えば、エッチングする)ことにより形成できる。このようなピラー120を形成する他の適切なやり方は、当業者には容易に明らかになるであろう。
図4は、多孔質材料(例えば、焼結ガラス材料等のフリット状材料)122がチェンバ102をコンパートメントに分割する他の例を概略的に示している。チェンバ102の容積は、多孔質材料122の細孔間の仕切りにより占められる空間により減少され得る。チェンバ102の形状及び細孔を仕切る材料がチェンバ102を占める程度に応じて、チェンバ102の充填時間は、例えば、1~4分短縮され得る。
多孔質材料122は、更に、さもなければ出口114又は前記流体輸送アセンブリ等の当該装置100の下流側の構成要素を閉塞させ得る、凝集されたタンパク質等の種のためのフィルタとしても機能できる。更に、多孔質材料122は、特定の汗成分及び不純物による装置100の汚れを防止する助けとなり得る。該多孔質材料は、例えば、チェンバ102内に入る又は含まれる汗から除去することが望ましいタンパク質及び他の種に対して特定の吸着特性を有するように選択できる。このような不純物を除去することは、エレクトロウェッティング装置のエレクトロウェッティングタイル上等の前記流体輸送アセンブリの表面への吸着により(このようなエレクトロウェッティング装置が該流体輸送アセンブリに含まれる場合)、上記不純物が該流体輸送アセンブリにおける表面特性を変化させるリスクを低減する故に有利であり得る。このように、該多孔質材料は、上記のような不純物が、出口114からの汗滴112の放出及び該汗滴112のセンサへの移動に必要とされる親水性/疎水性バランスを損なうリスクを軽減する助けとなり得る。
多孔質材料122が皮膚106の表面に隣接して配置される非圧縮性フリット状材料を有する又は斯かる非圧縮性フリット状材料である例において、該多孔質材料122は、皮膚106のチェンバ102内への膨らみによる閉塞を、部分的に該材料の非圧縮性により防止できる。
多孔質材料122の細孔の直径は、例えば、100nmから10μmの範囲内であり得る。これら細孔の間の仕切りの直径も、このような仕切り自体が汗腺108の出口を閉塞するリスクを最小限にするために、例えば、100nmから10μmの範囲内とすることができる。この点に関し、汗腺108の出口の直径は、通常、約60μmから120μmの範囲内である。
誤解を避けるために、図1~図3を参照して説明された体積最小化対策は、相対的に低い発汗率においても汗滴112の形成を補助すべく、チェンバ102の容積を最小化するために任意の組み合わせで使用できることに注意すべきである。例えば、装置100は、例えばピラー状構造120及び/又は多孔質材料122を含めることによりコンパートメントに更に分割された先細りチェンバ102を備えることができる。
前述したように、装置100は出口114からはみ出た汗滴112の放出を可能にするように構成された流体輸送アセンブリを備える。このように、該流体輸送アセンブリは、例えば、汗滴112(半球状の汗滴112)を出口114から切り離す構造を含み得る。
形成された汗滴112は、汗の水分子間の引き合う分子間力により、チェンバ102を充填した汗の塊に固定(係留)され得る。
実際には、汗滴112は単一の接触角値を有するのではなく、むしろ、前進接触角及び後退接触角と各々呼ばれる最大接触角から最小接触角までの範囲を有する。該前進接触角と後退接触角との間の差は接触角ヒステリシスとして知られている。
これらの力は、汗滴112の出口114からの動きに抗する。このような力は、充填されたチェンバ102上での汗滴112の保持につながる。前記流体輸送アセンブリは、これらの力が汗滴112を切り離す(そして、該汗滴112をセンサに向かって下流側に輸送する)等のために克服されることを可能にする。該流体輸送アセンブリは、チェンバ102からの汗滴112の明確に定まった取り外しを可能にするよう構成され得る。言い換えれば、汗滴112の分離は、明確な個別の汗滴112の画定を確かなものとする。
当該流体輸送アセンブリは、例えば、汗滴112を取り外す(すなわち、放出する)ための受動的及び/又は能動的勾配を備え得る。受動的勾配は、化学的及び/又はトポロジ的勾配を含み得る。能動的勾配は、印加される圧力により、及び/又はエレクトロウェッティング装置の電場により提供され得る。
汗滴112の切り離し又は放出は、幾つかの例では、汗滴112が特定の直径に達した瞬間に起こり得る。この直径において、例えば汗滴112の少なくとも一部、好ましくは全体が受け得る能動的及び/又は受動的勾配は、汗滴112の接触角ヒステリシスを克服するのに十分なほど大きくされ、汗滴112が出口114から放出されるようにする。
図5は、汗滴112の切り離しがエレクトロウェッティング技術により行われる一例を概略的に示している。この例は、汗滴112の接触角ヒステリシスを克服するために力が能動的に印加される「能動的」界面張力法の一例と見なすことができる。
図5に示されるように、プレート110の上面は離散的なエレクトロウェッティングタイル124の系列を備えている。水性汗滴を出口114から分離し及び/又は輸送する目的で、エレクトロウェッティングタイル124はフルオロポリマ等の疎水性材料でコーティングされた電極を有し得る。当該輸送アセンブリは、上記系列のエレクトロウェッティングタイル124の各々を順番に帯電及び放電させるための電界発生器(図示せず)を有し得る。エレクトロウェッティングタイル124の帯電は、該エレクトロウェッティングタイル124の表面特性を疎水性から親水性に切り替えさせ、これにより、汗滴112の接触角ヒステリシスを瞬時に克服し得る。汗滴112は、これに応じて、帯電されたエレクトロウェッティングタイル124上に移動し得る。該帯電されたエレクトロウェッティングタイル124のその後の放電及び当該系列における後続のエレクトロウェッティングタイル124の帯電は、当該汗滴112を該後続のエレクトロウェッティングタイル124に移動させることができ、等々となる。このシーケンスは「エレクトロウェッティング波」と見なすことができる。
図5に示される例において、出口114からの分離は、汗滴112が一対のエレクトロウェッティングタイル124と少なくとも部分的に重なるほど十分に大きな直径を獲得するまで成長した場合に起こり得る。この場合、エレクトロウェッティング波がエレクトロウェッティングタイル124を通過すると、上記一対のエレクトロウェッティングタイル124にまたがる汗滴112は、それに応じて出口114から放出されるであろう。この例において、汗滴112は全てが均一なサイズ又は体積のものとはならない可能性がある。汗滴112は、当該汗滴112が必要な直径に到達する時点とエレクトロウェッティング波の到着時点との間の期間において様々な程度に成長し続け得るからである。この点に関し、汗滴112のサイズはエレクトロウェッティング波の周波数により決定され得る。
代替例において、当該流体輸送アセンブリは汗滴112を出口114から放出するために「受動的」勾配を採用できる。この文脈における「受動的」という用語は、一般的に、該流体輸送アセンブリが汗滴112の接触角ヒステリシスを克服するために力を能動的に印加しないことを意味する。
例えば、プレート110の上面は、出口114からの汗滴112の分離を可能にする化学的及び/又はトポロジ的勾配を備え得る。トポロジ的勾配は、プレート110の上面が傾斜され、当該装置100が使用のために配向された場合に、汗滴112の直径にまたがる該傾斜の勾配が接触角ヒステリシスを克服するほど十分に大きくなるようにすることにより提供され得る。
化学的勾配は、当該表面が親水性部分及び疎水性部分を有し、これら部分が該表面に沿って濡れ性勾配をもたらように配置されることにより提供され得る。例えば、化学的勾配を生成するために疎水性CH3部分(皮膚106に向かう)及び親水性OH部分(センサに向かう)で機能化されたマイクロ流体チャネルを使用することができる(Morgenthaler他、Langmuir;2003;19(25)pp10459~10462)。
化学的勾配は、例えば、分子レベルで親水性/疎水性領域を備えることができ、濡れ性勾配が当該表面に沿って実質的に連続的に変化するようにする。このような化学的勾配は、例えば、プレート110の表面を機能化するグラフトポリマ鎖により提供され得る。代わりに又は加えて、段階的な濡れ性勾配を提供するために、当該表面にμm寸法の親水性/疎水性領域を設けることもできる。好ましくは、上記領域は当該表面の長さにわたってセンサの方向に分布が徐々に変化するように配置される。
このような受動的(例えば化学的及び/又はトポロジ的)勾配が汗滴112の分離に使用される場合、分離は汗滴112(例えば、半球状汗滴112)が特定のサイズに達した場合に起こり得る。汗滴112の直径が、該直径にまたがる勾配が接触角ヒステリシスを克服するのに十分なほど大きくなると、該汗滴112は出口114から分離されるようになるであろう。この意味で、このような勾配の結果、センサに輸送される汗滴112の各々は互いに同様のサイズ/体積を有するようになる。汗滴112が分離された後では、粘性抗力も、表面エネルギ勾配により生成される駆動力により汗滴112の動きを阻害する役割を果たし得る。
図5及び6に示される例において、当該流体輸送アセンブリは、チェンバ102を画定するプレート110から分離されて該プレート110に対向する他のプレート128を有する。該他のプレート128は、汗滴112の体積に対して制御が発揮されることを可能にし得る。このことは、例えば、該他のプレート128がプレート110から規定された距離130で分離されることにより達成され得る。汗滴112は、他のプレート128と接触するまでサイズが増加し得る。実際に、汗滴112が他のプレート128と接触すると、該汗滴112は他のプレート128に「ジャンプ」することにより分離されたものとなり得る。このことは、汗滴112を出口114から分離するための界面張力法の他の例と考えることができる。
図6を参照すると、プレート110と他のプレート128との間の分離距離130は、形成する汗滴112(例えば、半球状汗滴112)の直径が他のプレート128(即ち、プレート110の上面に対向する該他のプレート128の下面)に接触する前に十分に大きくなることを保証するほど十分に大きいものであるように選択され得る。
図6に示される例において、他のプレート128の下面は、汗滴112をセンサに向かって矢印126の方向に輸送する受動的(例えば、化学的及び/又はトポロジ的)及び/又は能動的(例えば、印加される圧力及び/又は電場を介しての)勾配を備え得る。汗滴112の他のプレート128への「ジャンプ」による分離に続いて、該汗滴112は上記勾配を介して移動し始めることができる。上記で簡単に説明したように、プレート110と他のプレート128との間の分離距離130は、形成する汗滴112の直径が他のプレート128と接触する前に十分に大きくなることを保証するように選択され得る。このことは、均一なサイズの汗滴112の即座の移動/輸送を保証する助けとなり得る。
図6に示されるように、他のプレート128の下面はエレクトロウェッティングタイル124を備える。該エレクトロウェッティングタイル124及び電界発生器(図示せず)は、図5に関して先に説明された配置と同様であり得る。しかしながら、図6の場合、エレクトロウェッティングタイル124を介した他のプレート128上での汗滴112の移動は、汗滴112の移動が、次のエレクトロウェッティング波が他のプレート128上へと分離された汗滴112に到達した際に生じることを意味し得る。したがって、十分に高いエレクトロウェッティング波の周波数が、センサへの相対的に均一なサイズ/体積の汗滴112の輸送/移動を確かのもとすることができる。一方、エレクトロウェッティング波の周波数が相対的に低い場合、汗滴112のサイズ/体積はエレクトロウェッティング波の周波数と、プレート110及び他のプレート128の隔たり130との両方により決定され得る。汗滴112はエレクトロウェッティング波の間の期間で成長し得るからである。
限定するものでない例において、前記流体輸送アセンブリはプレート110と他のプレート128との間の分離130を制御するように構成できる。この構成は、例えば、該流体輸送アセンブリがプレート110、128のうちの少なくとも1つと係合する機構(メカニズム)であって、これらプレート110、128のうちの少なくとも1つを該プレート110、128の上記分離を調整するように移動させるよう構成されたメカニズムを有することにより達成できる。該メカニズムに対してなされる上記制御は手動及び/又は自動であり得る。自動的制御に関して、前記流体輸送アセンブリは、例えば、汗腺108の発汗率に従って分離130を制御することができる。このような例において、該流体輸送アセンブリは、プレート110、128のうちの少なくとも1つを、例えば、前記センサにより検出された決定された発汗率にしたがって移動させるように前記メカニズムを制御するよう構成されたコントローラを含み得る。このように、該流体輸送アセンブリは前記分離130を動的に制御するように構成できる。
相対的に高い発汗率においては、汗滴112の形成が速すぎるリスクがあり得、制御不能な汗滴合体が発生する可能性がある。このことは、前記分離130を増加させることにより軽減できる。より大きな汗滴112を前記他のプレート128上へと分離するのに一層長い時間が掛かり得るからである。
相対的に低い発汗率では、センサに輸送される汗滴112の数が相対的に小さくなり得る。この問題は、前記他のプレート128上に形成される(より小さな)汗滴112の数を増加させるために分離130を減少させることにより軽減できる。
図7は、汗滴112の分離が、プレート110の上面及び他のプレート128の下面の両方が受動的勾配、例えば化学的及び/又はトポロジ的勾配を備えた流体輸送アセンブリを用いて達成される例を示している。この点に関し、矢印126A及び126Bは、汗滴112をセンサに向かって輸送するためにプレート110の上面及び他のプレート128の下面に各々設けられる勾配の方向を示している。
定まった汗滴112の分離は、代替的に又は追加的に、前記流体輸送アセンブリが出口114からはみ出る汗滴112に圧力勾配を付与することより達成され得る。これは、汗滴112の接触角ヒステリシスを克服するために能動的勾配を供給する一例と考えることができる。前記流体輸送アセンブリが汗滴112の接触角ヒステリシスを克服するために該汗滴112に圧力/力を能動的に印加するからである。
上記圧力勾配は、例えば、はみ出る汗滴112を搬送流体の流れと接触させることにより付与することができる。該搬送流体は、好ましくは、汗滴112が混ざり合わない流体である。このように汗滴112が該搬送流体と混合するのを実質的に防止することにより、センサは、該搬送流体により自身に対し搬送される各個別の汗滴112を検出できる。このような搬送流体の適切な例は、水分を吸収しない、すなわち、吸湿性が相対的に低い又は無視できる、例えばオキシサイト等の油を含む。オキシサイトは、血液置換物として一般的に使用されるパーフルオロカーボン化合物である。
搬送流体の流れが汗滴112を分離する斯様な例においては、前述したように、チェンバ102を画定するプレート110に対向して他のプレート128を設けることができる。汗滴112は、該汗滴112が他のプレート128と接触するまで形成及び成長でき、そうなると、該汗滴112は各プレート110、128の間の空間により画定される通路を閉塞し得る。該汗滴112は、次いで、搬送流体の流れにより移動され得る。このようにして、相対的に均一なサイズの汗滴112が供給され得る。これら汗滴のサイズは、図6に関連して前述したように、プレート110、128の間の距離130により決定される。上記搬送流体の流れは、更に、汗滴112をセンサに輸送するのを支援し得る。
例えば、この搬送流体の流れが汗滴112を分離させるのに不十分である場合、当該流体輸送アセンブリは流速にパルス又はピークを誘起するように構成でき、これらパルスが汗滴112を出口114から放出するのに十分な圧力を提供し得る。例えば、このようなピークを当該搬送流体の流速に誘起させるために圧電(ピエゾ)ポンプを使用することができる。このことは、該ポンプのパルス周波数を変化させることにより容易に実現できる。
図8は、当該流体輸送アセンブリが、例えばエレクトロウェッティング装置との関連で印加される電界を介して能動的勾配をもたらすように構成された例示的装置100を概略的に示している。更に、出口114を画定するプレート110は輪郭付き(上面)表面132を有し、チェンバ102の出口110は該輪郭付き表面132の頂部134に配置される。
当該流体輸送アセンブリが汗滴112に対し搬送流体の流れを介して矢印136により示されるように圧力を加える場合、該流れは輪郭付き表面132の頂部134においてはみ出る汗滴112に向けられ得る。図8に示されるように、チェンバ102は該輪郭付き表面132の頂部134まで延びる狭い首領域を含み得る。この構造は汗滴112の分離を容易にし得る。接触角ヒステリシスにより引き起こされる汗滴の慣性を克服するために、より少ないエネルギしか必要とされないからである。後者のことは、上記輪郭付き表面が疎水性である場合に特にそうである。
この構造は受動的支持構造と見なすことができるもので、「茎(ストーク)」構造と呼ぶことができ、前記出口114は該茎部上に位置され、該茎部はチェンバ102の首部を画定する。上述したように、この構造は、特に能動的圧力勾配を利用する場合に汗滴112の分離を支援し得る。したがって、この支持構造は、図7に関連して前述したようなプレート110と他のプレート128との間の能動的圧力勾配の前後関係において有利に使用され得る。
この輪郭付き「茎」構造は、如何なる適切なやり方によっても製造できる。例えば、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)、リソグラフィ、電気めっき及びモールド成形(LIGA)、湿式エッチング、熱溶解積層法(FDM)、投影マイクロステレオリソグラフィ、並びに直接書き込み積層造形等のマイクロマシニング技術を利用できる(KSTeh.Additive direct-write microfabrication for MEMS:A review.Front.Mech.Eng.2017;12(4):490~509)。
汗滴112の分離に続いて、該汗滴112は前記流体輸送アセンブリを介してセンサ(発汗量センサ及び/又はバイオマーカセンサ)に輸送される。該センサは、例えば、汗滴112が輸送され得るセルを有し得る。このような例において、該流体輸送アセンブリは汗滴112のセンサへの、及びセンサを経る輸送又は移動を行い得る。
放出された汗滴112は、後続の汗滴112が出口114からはみ出るのと少なくとも同じ程度速く輸送される。好ましくは、汗滴112の移動は後続の汗滴112の形成、すなわちはみ出るよりも速いものとする。このことは、明確な汗滴112の画定を確実なものとするため、すなわち、センサへの一連の離散的な汗滴112の輸送を確実にするためである。
言い換えれば、当該流体輸送アセンブリは、汗滴112の形成に対して迅速な輸送/移動を確実にすることにより、汗滴112の離散的な液滴特性を維持することができる。このことは、異なる時点で収集された汗サンプル間のバイオマーカ等の成分の拡散を低減又は回避するという点で、特に低い発汗率での連続的な汗の流れよりも有利であり得る。
各汗滴112におけるバイオマーカ濃度は、主に又は唯一、当該汗滴112のサイズ/体積により決定され得、このことは、図15に関して本明細書で更に説明されるように、相対的に容易な測定につながる。したがって、一連の離散的汗滴112が輸送されるセンサが各汗滴112におけるバイオマーカの濃度の検出を可能にするように構成される場合、時間の関数としてのバイオマーカの濃度は、異なる時点でサンプリングされた汗の間のバイオマーカの拡散に関連する誤差の可能性を余り伴わずに決定できる。このような蓄積効果は、そうでなければ、特定の期間中にサンプリングされた汗における実際の濃度よりも低いバイオマーカ濃度が測定されることにつながり得る。このように、当該装置100は従来の連続流汗監視法の重大な欠点を克服する手段を提供できる。
汗腺108は周期的に働く。汗腺108は、典型的に、発汗バースト期間の間において通常30秒間にわたり排出し、約150秒の休止期間が続く。当該流体輸送アセンブリによりセンサに供給される汗滴112の離散化された流れのおかげで、時間の関数としてのバイオマーカ濃度に関する詳細な情報の決定を可能にする装置100の能力は、上記発汗バースト期間の間でさえ適用され得る。汗腺のバーストは、これに対応して検出され得、このことは、図29及び図30を参照して後に詳細に説明されるように、乳酸塩濃度を決定する能力を含む様々な利点を有し得る。
当該流体輸送アセンブリを介しての汗滴112のセンサへの相対的に迅速な輸送は、センサに移動する際の汗の蒸発の問題を軽減/最小化する助けにもなり得る。このような蒸発は、最も深刻な場合、汗滴112がセンサに到達するのを妨げ得る。汗滴112の最小限の蒸発を保証することは、低い発汗率/量において特に重要である。
汗滴112の分離に関する前記説明と同様に、当該流体輸送アセンブリは、分離された汗滴112をセンサに輸送するための受動的及び/又は能動的勾配を備えることができる。このように、汗滴112の輸送は、本明細書で以下に更に説明するように、界面張力技術を介する及び/又は圧力の印加によるものであり得る。
受動的勾配に関連する注目すべき利点は、離散的汗滴112をセンサに輸送するために当該流体輸送アセンブリに供給されるべきパワーを必要としないことである。
化学勾配が使用される場合、該化学勾配の軌道の長さは、一方では約20°の下側接触角及び170°の上側接触角に到達する親水性/疎水性バランスの限られた範囲により、他方では輸送/移動される汗滴112のサイズにより、制限され得る。より小さい汗滴112は、より大きな汗滴112よりも急峻な勾配を必要とし得る。特に、相対的に小さい汗滴112は、汗滴112の相対的に短い長さは勾配に対する該汗滴112の曝露を実効的に制限するので、該汗滴112の動きを開始するために一層急な勾配を必要とする。
例えば、5~10mmの輸送距離が、達成可能であり、基本的に、装置100が汗滴112のサイズに応じて機能するために実際的には十分である。
汗滴112の接触角ヒステリシスを最小化する目的で、当該化学勾配は様々な方法で形成できる。化学勾配を介しての汗滴112の分離に関して前述したように、例えば、段階的な(ステップ状の)化学勾配を使用することができる。好ましくは、各領域(ドメイン)は、前記表面の長さにわたってセンサの方向において徐々に変化する分布を有するように配置される。このような段階的な勾配は、例えば、ナノピラーから形成された疎水性ドメイン及びシロキシ種から形成された親水性ドメインから製造できる。実際に、当該化学勾配により、約15°から約166°の間の接触角を得ることができ、これらは超親水性及び超疎水性に典型的なものである。
他の例において、当該化学勾配は親水性/疎水性ドメインを分子レベルで備え、濡れ性勾配が当該表面に沿って実質的に連続的に変化するようにできる。このような化学的勾配は、例えば、汗滴112の分離に関して前述したように、プレート110の表面を機能化するグラフト化ポリマ鎖により設けることができる。
これらの例は、交互の接触角を持つ固体表面に沿って液滴の動きを支配する化学濡れ性勾配の理論により実証される。このような交互の接触角は、前述したように、固体表面の化学組成を変化させて該表面上に化学的異方性を獲得することにより形成できる。結果として生じる濡れ性勾配は、液体/固体界面における表面張力を変化させる。汗滴112は自身の表面エネルギを最小化しようとする傾向があるので、該汗滴は濡れ性の小さい(より大きな水接触角の)領域から濡れ性の大きい(より小さな水接触角の)領域に向かって移動する。
水平な化学濡れ性勾配表面上に配置された汗滴112は、2つの主たる反作用力、すなわち駆動力及び粘性抗力を受ける。駆動力は汗滴112の運動を促進する表面エネルギ勾配により生成される一方、粘性抗力は該汗滴112の運動に対抗する。前記接触角ヒステリシスは運動に対する抵抗力として作用し、汗滴を静止位置に保持しようとする。汗滴112は、これらの反対の力の合力の下で加速する。
化学的濡れ性勾配を介して達成できる汗滴112速度の推定値は、理論モデルから得られている。このモデルは、直径が100μm(サイズ?0.26nl)で疎水性接触角150°に対して4°のヒステリシスの水滴の場合、化学勾配が線形であると仮定すれば、ヒステリシスを克服し、これにより液滴の動きを開始するために、濡れ性勾配の最小値はdcosθ/dx=0.83mm-1であり得ると推定する。空気/水表面張力が0.072N/mであり、水の動的粘度が8.8871x10-4Pa.sであるとすると、この特定の例において、該理論モデルは0.6~10cm/sの範囲の液滴速度も予測する。
図9は、当該流体輸送アセンブリが受動的な位相幾何学的(トポロジ的)勾配を備えた例示的装置100を概略的に示している。この例において、該トポロジ的勾配は傾斜された面138によりもたらされる。傾斜面138は出口114に向かって傾斜し、すなわち上昇し、装置100が使用のために、例えば図示されたように水平に配向された場合に汗滴112がセンサの方向に傾斜面138を下って輸送されるようにする。
図9に示される例において、傾斜面138はプレート110の上面に対応する。水平142に対する傾斜角140は、汗滴112の接触角ヒステリシスを克服するために十分に大きく選択される。
図9に示される傾斜面138は線形な(トポロジ的)勾配を有するが、代替タイプの傾斜面も想定できる。これに関し、図10は、異なる傾斜角を備えた部分を有する斜面の形態の傾斜面138を有する装置100を概略的に示している。
図9及び図10において、傾斜面138はプレート110の外側又は外部の面として示されているが、これは限定することを意図するものではない。プレート110内に設けられる傾斜するチャンネル又は内部通路が傾斜面138を備えることが好ましい。
より一般的には、そして図1~図10に示される断面図では見えないが、汗滴112をセンサに向かって輸送するための当該流体輸送アセンブリに含まれる通路は、汗滴112の蒸発を最小限にするために、少なくとも部分的に、好ましくは完全に取り囲まれ得る。
傾斜面138は、例えば深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)、リソグラフィ、電気めっき及びモールド成形(LIGA)、湿式エッチングを伴う又は伴わないビーズブラスト、熱溶解積層法(FDM)、投影マイクロステレオリソグラフィ及び直接書き込み積層造形のような種々のマイクロマシニング技術の適用による等の、如何なる適切なやり方でも形成できる。
汗滴112の受動的移動は、実際には、上述した化学的及びトポロジ的勾配の組み合わせにより達成され得る。
他の例として、当該流体輸送アセンブリは、汗滴112を輸送するために、例えば圧力勾配等の能動的勾配を備えることもできる。該圧力勾配は、汗滴112の分離に関連して前述したように、例えば汗滴112を搬送流体の流れと接触させることにより付与することができる。
上記搬送流体及び汗滴112が互いに混和しない例において、前記センサは該搬送流体により運ばれてくる各個別の汗滴112を検出できる。そのような搬送流体の適切な例は、水分を吸収しない、すなわち、相対的に低い又は無視できる吸湿性しか有さない、例えばオキシサイト等の油を含む。
当該流体輸送アセンブリは、他のプレート128に対向するプレート110を有し得る。このような例において、汗滴112は該汗滴112が他のプレート128と接触するまで形成及び成長でき、そうなると、該汗滴112は各プレート110、128により画定される通路を閉塞し得る。次いで、汗滴112は前記圧力勾配により推進される搬送流体の流れ(例えば、該搬送流体の一定な流れ)により移動され得る。このようにして、相対的に均一なサイズの汗滴112がセンサに輸送され得、これら汗滴のサイズは、図5に関連して前述したように、プレート間の距離130により決定される。
例えば、この搬送流体の流れが汗滴112を分離させるには不十分である場合、前記流体輸送アセンブリは当該流速にパルス又はピークを誘起するように構成でき、これらパルスが汗滴112を出口114から放出するために十分な圧力を提供できる。当該搬送流体の流速に斯様なピークを誘起させるために、例えば、圧電ポンプを使用できる。このことは、該ポンプのパルス周波数を変化させることにより容易に実現できる。
当該流体輸送アセンブリは、例えば、上記搬送流体の貯留器(図示せず)を含み又は斯かる貯留器に接続可能とすることができ、これにより、装置100の動作中に搬送流体の連続供給を可能にする。好ましくは、該流体輸送アセンブリは、それ自体は装置100に含まれない搬送流体の外部貯留器に接続可能にする。複数日(例えば、7日)にわたる24時間連続運転のためには、相対的に大量の(例えば、1リットル以上の)搬送流体が必要とされ得るからである。
限定するものでない例において、上記搬送流体(例えば、油)は、前述したような当該流体輸送アセンブリに含まれるポンプにより循環させることができる。汗は、感知後に該搬送流体から分離でき、汗を収集する廃棄物容器(図示せず)に受け渡され得る。汗が当該担体流体と混ざり合わない場合、担体流体からの汗の分離の助けとなり得る。このようにして、搬送流体はリサイクルでき、これにより、必要な搬送流体の量も削減される。上記廃棄物容器は、例えば、ミリリットルの量の汗を保持する能力を有し得る。
図5及び図6に関連して前述したように。当該流体輸送アセンブリはエレクトロウェッティングタイル124(「エレクトロウェッティングタイル」という用語は「エレクトロウェッティング電極」という用語の代替である)並びに汗滴112を分離及び輸送するための電界発生器を有し得る。エレクトロウェッティングタイル124及び上記電界発生器は少なくとも部分的にエレクトロウェッティング装置144を構成することができ、該装置の例が図11a及び図11bに概略的に示されている。
水性の汗滴112を輸送するために、タイル124は、各々、クロロポリマ(例えばパリレンC)又はフルオロポリマ(例えば、CYTOP(登録商標))等の疎水性材料でコーティングされた電極、及びエレクトロウェッティングタイル124を帯電/放電させるための電界発生器を有する。パリレンも疎水性材料として使用でき、電極上に五酸化タンタルをスパッタリングし、パリレンでコーティングし、最後にCYTOP(登録商標)でコーティングする等の、種々の物質の層状コーティングも使用できる。エレクトロウェッティング装置144は、実際には、印加される電界がエレクトロウェッティングタイル124を帯電させるようにし、これにより、前述したように、疎水性から親水性に切り換えることにより動作し得る。
エレクトロウェッティング装置144は、汗滴112を能動的に輸送するために制御電子回路及びエネルギ源を必要とし得る。図11aは、エレクトロウェッティング装置144が、それにもかかわらず、相対的に簡単な態様で実現できる例を示す。
この例においては、複数のエレクトロウェッティング波を生成するために3~8個のみの制御された局所電圧が使用され得る。このようなエレクトロウェッティング波は、当該流体輸送アセンブリの必要とされる長さ、例えば全長にわたる汗滴112の輸送/移動を実行できる。即ち、汗滴112はセンサへと、及びオプションとして該センサを経て輸送されるようになる。
図11aは、平面状の二次元電極設計を含むエレクトロウェッティング装置144を示している。図11aは、簡略化のために、15個のエレクトロウェッティングタイル124の接続を示している。しかしながら、それにもかかわらず、当業者は、このエレクトロウェッティング装置144を、例えば、100個以上のエレクトロウェッティングタイル124を含むように拡大できることを理解するであろう。
図11aは、3組の構成を示し、各第1のライン146は1から5の番号のエレクトロウェッティングタイルのうちの1つを対応する外部接続パッド148A~Eに接続し、各第2のライン150は1から5の番号のエレクトロウェッティングタイルのうちの1つを6から10の番号の対応するエレクトロウェッティングタイルに接続し、各第3のライン152は6から10の番号のエレクトロウェッティングタイルのうちの1つを11から15の番号の対応するエレクトロウェッティングタイルに接続する。図11aにおいて明らかなライン146、150及び152の太さの変化は、読者の目を誘導するためだけのものである。
エレクトロウェッティング装置144は、第1のパッド148Aから第2のパッド148Bへ、第3のパッド148Cへ、第4のパッド148Dへ、そして最後に第5のパッド148Eへの、帯電/放電動作のシーケンス(例えば、各動作は例えば10分の1秒で隔てられる)を適用することにより動作され得る。このようにして、エレクトロウェッティング波がエレクトロウェッティングタイル1からエレクトロウェッティングタイル15に伝播し得る。該シーケンスは、エレクトロウェッティング波がエレクトロウェッティングタイル124のアレイを繰り返し掃引するように繰り返すことができる。該シーケンスは、エレクトロウェッティング波をエレクトロウェッティングタイル15からタイル1に向かって伝播させるように逆転することもできる。エレクトロウェッティング波が当該アレイに沿って通過する周波数(頻度)は、図5に関連して前述したように、汗滴112のサイズ/体積を少なくとも部分的に決定し得る。
図11aは、2次元電極設計を備えたエレクトロウェッティング構成144を示しているが、同じ原理を、例えば垂直相互接続アクセス(VIA)接続を使用して3次元設計に適用することもできる。
しかしながら、図11aに示す同一平面内の電気配線は1つの平面内の単一の構造を可能にし、他の層へのVIAを回避する。このように、この設計は製造するのが相対的に安価であり得る。このような配線設計の欠点は、かなりの表面積が使用され、エレクトロウェッティング配線経路の構造が制限され得ることである。例えば、図11aに示されている設計は、図12に示される分岐構造のような分岐を伴う配線経路をサポートすることができない。
図11bに示される代替例においては、平行なエレクトロウェッティング経路が配線されている。エレクトロウェッティングタイルの番号付けの方向は、図11aに対して図11bでは逆になっていることに留意されたい。エレクトロウェッティング波は1から15に進行し、タイル1にチェンバ102の出口が存在する。番号を逆にする理由は、タイル15の側に発汗量センサが設けられ得るからである。
図11bに示される配線パターンのために、各エレクトロウェッティング経路は、例えば、単一の発汗量センサに供給するために収束できる。図11bは、面内設計により複数のチェンバ102に対処できることも示している。
もっと一般的には、汗滴112を輸送/移動させるためのエレクトロウェッティング装置144の使用は、相対的に迅速な移動、及び汗滴112の輸送(例えば、速度)に対する正確な制御を提供することを可能にする。エレクトロウェッティング波の伝播は、原理的に、相対的に長い距離にわたって汗滴112を輸送するために適用できる。後者の利点は、当該流体輸送アセンブリが汗滴112に圧力を印加する例にも当てはまり得る。もっとも、両方の場合にエネルギ源が必要とされる。
汗滴112の移動のためにエレクトロウェッティングが採用される場合、勾配の長さは2つのエレクトロウェッティングタイル124の間であるので、化学的勾配を使用する場合よりも遙かに強い力を達成できる。それにもかかわらず、移動原理の選択は、装置100に対して意図される用途に依存し得る。前述したように、化学的勾配を介しての汗滴112の移動は、エネルギ源を必要としない。
図1~図10は汗滴112がセンサへと輸送される単一のチェンバ102を示しているが、装置100は複数のチェンバ102を含むことができ、前記流体輸送アセンブリは、これらチェンバ102の各出口114からはみ出る汗滴112を放出し、各汗滴112をセンサに輸送する。
そのような例において、当該流体輸送アセンブリは各汗滴112を、前述したように、界面張力法により及び/又は印加される圧力を介して輸送できる。
当該流体輸送アセンブリは、複数のチェンバ102の各出口をセンサに並列に流体的に接続できる。各チェンバ102をセンサに直列ではなく並列に接続することにより、或るチェンバ102からの完全に形成された移動する汗滴112は、センサに向かう経路において他のチェンバ102の出口114を通過することはない。このようにして、該並列配置は、このような完全に形成された汗滴112が、下流のチェンバ102の出口114から成長する部分的に形成された汗滴112と衝突することを効果的に防止する。更に、該並列配置は、完全に形成された移動する汗滴112が下流のチェンバ102の出口114により妨げられる(留められる)ことを回避する。
図12は、複数のチェンバ102からの各汗滴112が、分岐構造を規定する経路の配置を介して輸送される装置100を概略的に示している。複数のチェンバ102はグループ154で配置されている。上記複数のチェンバのうちの部分組が、各グループに属する。該複数のグループ154は互いに空間的に分離され得、各グループ154には他のグループ154のチェンバ102に供給する皮膚の各領域から空間的に隔てられた皮膚106の領域から汗が供給されるようにする。
図12に示すように、第1の枝路156は、対応するグループ154の各チェンバ102を第1の相互接続部158に流体的に接続する。この点に関し、このような第1の相互接続部158は各グループ154に対して設けられ得る。第2の枝路160は第1の相互接続部158を対応する第2の相互接続部162に流体的に接続する。図12に示されるように、このような第2の相互接続部は、2以上のグループ毎に設けることができる。第2の相互接続部は、センサ(図12には示されていない)に流体的に接続可能であり得る。
任意選択で、第3の枝路164が、第2の相互接続部の2以上を、図12ではアスタリスクで示された対応する第3の相互接続部に流体的に接続する。センサは、この第3の相互接続部を介して複数のチェンバ102の各々から汗滴112を受け取ることができる。
前述した界面張力法を、例えば、図12に示される装置100の各枝路に沿って汗滴112を輸送するために採用できる。このことは、各チェンバ102からセンサへの相対的に高い速度での汗滴112の輸送を可能にし得る。汗滴112の移動の速度が汗滴112の形成と少なくとも同じくらい速い(この例では、好ましくは該形成よりも大幅に速い)ことは、前述したように、必要とされる離散化された汗滴112の列がセンサに輸送されることをもたらし得る。
この分岐構造ではチェンバ102のいずれも他のチェンバ102のいずれの下流にも存在しないので、移動する汗滴112が各出口114からはみ出る部分的に形成された汗滴112と衝突するリスクが効果的に除去される。完全に形成された汗滴112が部分的に形成された汗滴112と合体することは、該完全に形成された及び部分的に形成された汗滴112の該合体された汗滴112の体積に対する各寄与度を決定することが困難であるため、困難さを提起し得る。したがって、このような衝突のリスクを除去することにより、該分岐構造は、汗腺当たりの発汗量を決定する際の汗のサンプリングに関連する曖昧さを低減する助けとなり得る。
この分岐構造は、完全に形成された移動する汗滴112が妨げられる(例えば、留められる)ことも防止する。更に、該分岐構造は、相対的にコンパクトな装置100を使用した相対的に多数の汗滴112の輸送も可能にし得る。
該分岐構造は、センサ(例えば、発汗量センサ)の数を最小限に維持できることも意味し得る。多数のチェンバ102から発生する汗滴112が、同じ宛先に向けられるからである。このことは、各汗収集チェンバに対してセンサを使用する既知の解決策を超える重要な利点を示し得る。
異なるチェンバ102から発生する完全に形成された移動する汗滴112は、センサに到達する前に互いに衝突する可能性がある。例えば、100個のチェンバ102及びチェンバ102当たり平均0.1個の汗腺108を有する装置100の場合、平均して9個のチェンバ102が単一の腺108に由来する汗滴112を生成し、平均して約0から1個のチェンバ102が2つの汗腺108に由来する汗滴112を生成する。
先に簡単に述べたように、単一の腺108に由来する完全に発達した汗滴112の衝突は、センサを通過する合体した汗滴のサイズ/体積が増加するため、相対的に容易に検出できる。このことは、センサに輸送される汗滴112の大部分が他のものと結合されておらず、これによりベースラインを提供するとしたら、特にそうである。装置100が汗滴112を輸送するセンサは、汗滴112を計数すると同時に、各汗滴112がセンサを通過するのに掛かる時間も決定するように構成され得る。この時間は、図15を参照して後に更に詳細に説明されるように、事前に知られている移動速度を介して、汗滴112の体積に線形に関連している。2つの汗腺108に由来する汗滴112の問題は、以下で更に説明される。
好ましくは、各汗滴112は、自身が形成されたチェンバ102の出口114から当該流体輸送アセンブリの終端まで同じ距離を移動するものとする。図12に示された設計においては、100個の汗滴112を効率的に輸送できる。一層小さな及び一層大きな分岐構造も、想定できる。当該分岐構造は、装置100の特定の用途に従っても、特に皮膚106上の活性汗腺108の密度に従っても最適化できる。
段階的な化学勾配を提供するために使用される前述したエレクトロウェッティングタイル124及び領域は、例えば、当該分岐構造を形成するのに特によく適し得る。該分岐構造は、圧力勾配の使用とも適合性があり得る。この場合、圧力は図12に示されるチェンバ102の上流側で印加され得る。しかしながら、印加される圧力は、該圧力が汗の排出を妨げることを回避するために制限され得る。
当該センサは、幾つかの例において、装置100の前記流体輸送アセンブリを介して自身に供給される個別の汗滴112をカウントできる。これにより、以下で更に説明するように、発汗率を決定できる。
この目的のためには、任意の好適な感知原理を使用できる。離散的汗滴112の列を生成する装置100の能力に関連する利点は、相対的に単純なセンサを使用して各液滴112を検出でき、これにより発汗量を推定することを可能にすることである。
例えば、静電容量感知原理は、汗滴112をカウントするのに特に有用であり得る。このような感知原理は、汗滴112が当該検出器を通過する時間、すなわち当該コンデンサのプレート間を通過する時間の推定も可能にし得る。空気と汗滴112(約99%の水)との間の誘電変化は相対的に大きい(約80倍)からである。汗滴112がセンサを通過するのに掛かる時間は、図15に関連して更に説明されるように、汗滴112の体積を示し得る。
図13は、装置100を介して供給される汗滴112をカウントするセンサ166を示す。図13に示されるように、センサ166は、汗滴112が通過するセル168を備える。セル168は、例えば、装置100の流体輸送アセンブリに関して前述した汗滴112の輸送原理の1以上を採用できる。この点に関し、図13に示される例のセル168は、該セル168を介して汗滴112を輸送するためにエレクトロウェッティングタイル124(図示せぬ疎水性コーティングでコーティングされている)を含む。限定するものでない例において、セル168は装置100の流体輸送アセンブリと一体であり得る。代わりに、セル168は装置100の流体輸送アセンブリの末端を規定するポートに接続可能な部品であり得る。
図13に示される例示的センサは一対の電極170を有する。これら電極170の一方又は両方はセル168を通過する汗滴112と直接接触し得る。代わりに、これら電極170の一方又は両方は、例えば適切なコーティング、層等を介して、通過する汗滴112により直接接触されることから防止され得る。図13に示される電極170は互いに対向しているが、図14を参照して説明されるように、これら電極170の代替的な相対配置も考えられる。
空気が電極170の間の間隙を占める、すなわち、電極170の間に汗滴112が存在しない場合、電極170の間の相対誘電値は約1である。汗滴112が電極170間を通過する場合、相対誘電値は、汗滴112が約99%は水であるため、約80に増加する。この大きな違いは、汗滴112は容易に検出でき、したがって、汗滴112を斯様なセンサ166を使用して容易にカウントできることを意味する。
図13に示されるコンデンサの静電容量は電極170及びセル168の幾何学的形状のために相対的に小さいものであり得るので、該コンデンサは前置増幅器回路に接続され得、該前置増幅器回路は電気AC信号172を使用して応答信号を、汗滴112の通過を記録すると共に該汗滴112が電極170の間を通過するのに掛かる時間を測定するための電子回路の残りの部分に供給する。演算増幅器174及び抵抗176の使用により、この小さな電流は、図13に電圧計178で示されるように、後続の読み取り電子回路による上記コンデンサの最小限の電流流出でもって、測定可能な電圧に変換することができる。ノイズを更に低減するために、当該センサ及び前置増幅器は例えばシールドすることができる。当業者によれば、多数の代替的センサ回路設計が即座に明らかになるであろう。
上述した容量センサの代替又は追加として、センサ166は汗滴112をカウントするための導電率センサを有することもできる。この点に関し、コンダクタンスセルを有するセンサ166は、汗滴112におけるイオン濃度を測定することも望まれる場合に特に好適であり得る。したがって、コンダクタンスセルは、汗滴112をカウントし、汗滴112の各々が当該セルを通過するのに掛かる時間を測定し、及びイオン濃度の測定を可能にすることができる。
上記導電率センサは、汗滴112が直接接触できる2つの電極170を備え得る。導電率は、電極170間を汗滴112が通過する間に測定できる。図14を参照して更に詳細に説明するように、このような導電率センサを実施するために様々なセンサ構成を考えることができる。
電気コンダクタンスを測定するために、如何なる適切な電気的方式も使用することができる。通常は、コンダクタンスを調べるためにAC信号が使用される。電圧を、例えば、100から10000Hzのオーダの周波数で印加できる。このことは、さもなければ測定を妨害し得る電気分解効果を防ぐのに役立ち得る。このような電気的方式は、センサ166を経る汗滴112の通過を記録すると共に、汗滴112が該センサを通過するのに掛かる時間を測定するための電子回路を更に有し得る。当業者によれば、多数の代替の電気的方式が直ぐに明らかになるであろう。
汗滴112の電気伝導率の変化は、溶解した塩、特に塩化ナトリウムの濃度の変化に由来し得る。塩化ナトリウムは、汗における電気コンダクタンスの変化を主に決定する主要な化合物である。汗における塩化ナトリウム濃度は、0.06g/100mLと0.76g/100mLとの間で変化する。すなわち、該濃度は約12倍変化し得る。このことは、このような塩化ナトリウム濃度の変化が容易に測定可能であることを意味する。
先に簡単に述べたように、センサ166は汗滴112中のイオン濃度の測定を可能にし得る。このような測定が臨床的解釈を行うのに有用であるためには、汗腺当たりの発汗量が高信頼度で推定されることを必要とし得る。したがって、各チェンバ102に汗を供給する汗腺108の数の決定を行う必要があり得る。イオン濃度を測定することは、以下で更に説明されるように、この汗腺108の数の決定を可能にし得る。
図14はセンサ166の幾つかの例を概略的に示している。図14の例A~Cは、センサ166、特に電極170を、装置100の流体輸送アセンブリに対してどの様に配置できるかを示している。
図14の例Aは、化学勾配180が汗滴112をセンサ166の電極170へ、及び該電極を経て輸送する流体輸送アセンブリを示す。この例において、汗滴112(例えば、ほぼ半球形状を有する)は、該化学勾配を介して輸送され、一対の電極170の間を通過する際にセンサ166により検出される。汗滴112は、電極170と接触し得るか、又は例えば前述したように絶縁コーティングが電極170に塗布されることにより接触することから防止され得る。
図14の例Bは、化学勾配180がエレクトロウェッティングタイル124に置き換えられていることを除いて例Aと同じである。この例において、汗滴112は、由来するチェンバ102からの該汗滴112の移動を行うために前記流体輸送アセンブリにより採用されたエレクトロウェッティング波により、センサ166へ及び該センサを経て輸送される。
図14の例Cは、エレクトロウェッティングタイル182が、センサ166を介して汗滴112を輸送すると同時に、電極170と一緒に、汗滴112を検出するようにも機能することを除いて、例Bと同じである。この例において、二重機能電極182は、自身の汗滴112の輸送機能を果たすために、例えば疎水性コーティング等の絶縁コーティングによりコーティングされている。
図14の例Dは、長方形チャネルの形態のセル168を持つセンサ166を示している。エレクトロウェッティングタイル124がセル168内に取り付けられ、センサ166の電極170は該エレクトロウェッティングタイル124に対して垂直に配置されている。この例において、チャネルの寸法は、汗滴112がセル168の壁に接触し、これにより、汗滴112の頭部及び尾部に該セル168の断面(例えば、正方形、長方形、三角形、円形等の断面)にわたりメニスカスを形成するように選択され得る。この例において、電極170は、例えば適切な絶縁コーティングを介して又はそれ以外で、汗滴112と直接接触することを防ぐことができる。セル168を通過する結果としての「ビーム状」汗滴112は、図15を参照して更に詳細に説明されるように、汗滴112の体積の推定を容易にし得る。
図14の例Eは、汗センサ166の電極170が互いに隣り合って取り付けられている;即ち、電極170が両方ともエレクトロウェッティングタイル124に対向していることを除いて、例Dと同じである。
図14の例Fは、勾配、例えば化学勾配180及び/又は圧力勾配がセル168内のチャネルに設けられる点を除いて例Eと同じである。当該チャネルの長さに沿って圧力勾配が設けられる場合、セル168を介して汗滴112を輸送するために化学勾配又はエレクトロウェッティングタイルは必要とされない。
静電容量感知法が使用される場合、例A~Fの全てを、汗滴112と電極170との間の直接的接触を防止するための絶縁体を備えて又は備えないで想定することができる(もっとも、前述したように、例Cの場合、電極182の1つは絶縁される)。
コンダクタンス感知法が採用される場合、例A、B、D、E及びFが想定され、この場合、電極170に絶縁体は適用(例えば、コーティング)されない。
多数の代替的センサ配置を考えることができる。例えば、センサ166は、エレクトロウェッティングタイル124を2つの別個の部分に分割することにより設けることができる。1つの部品は、例えば、絶縁体でコーティングされた外縁、及び該外縁に接続されていない中央部分の形をとることができる。この同心的電極構造は、代わりに、コンダクタンス測定のための各々のコーティングされていない電極を有し得る。
当該装置100によりセンサ166に輸送される汗滴112は、異なるサイズ/体積を有し得る。これは、チェンバ(又は複数のチェンバ)102の出口(又は複数の出口)114において形成される汗滴112のサイズの変動によるものであり得る。このようなサイズ/体積の変動は、センサへの輸送の間における汗滴112の併合又は合体によっても生じ得る。
汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間を測定することにより、汗滴112の体積を決定できる。次いで、発汗率(量)を、所与の期間の間にセンサにより感知された、すなわち計数された汗滴112の数、及び汗滴112の体積から決定できる。
汗滴112は、当該流体輸送アセンブリにおいてセンサ166の上流側で呈したのと実質的に同一の形態又は形状(例えば、半球形状)でセンサ166を介して輸送され得る。他の例として、汗滴112は、図13に関連して先に簡単に説明したように、汗滴112を再成形するためにチャネル168(例えば、円筒形、立方体形又は角柱状のチャネル168)に供給することもできる。このように、半球状の汗滴112は、チャネル168の断面の形状に依存して、例えば、円柱形状又はビーム(梁)形状に形成され得る。センサ166は、チャネル168を通過する際に、再成形された汗滴112を感知するよう構成できる。
界面張力法の場合、前記勾配又はエレクトロウェッティングタイル124は、チャネル168の2以上の壁に拡張することができ、円筒形チャネル168の場合、周面の相当の部分を覆うことができる。このことは、前記勾配又はエレクトロウェッティングタイル124の表面積が該勾配又はエレクトロウェッティングタイル124により覆われていないチャネルの表面積に対して相対的に小さいことにより、チャネル168を介しての輸送が妨げられることを回避するのに役立ち得る。
汗滴112の体積の関数としての該汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間は、汗滴112がセンサを通過するときにとるチャネル168の断面形状に依存し得る。これが図15に示され、該図は、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間の該汗滴112の体積の関数としてのプロットを、ビーム状の汗サンプル(点線184)及び半球状の汗サンプル(実線186)に関して示す。
図15の非限定的な例において、移動する汗滴112の速度は700μm/秒であり、センサ166は、センサ166を通る下流方向の長さが60μmである。汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間は、汗滴112がセンサ166(例えば、センサ166の電極170)と重なり始めてから、この重なりが終わるまでの時間として定義される。
半球状汗滴112の場合、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間は、(汗滴112の直径+センサ長)/(汗滴112の移動速度)にほぼ等しい。
長方形の角柱状チャネル168の形状をとったビーム状の汗滴112の場合、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間は、(汗滴112の長さ+センサ長)/(汗滴112の移動速度)にほぼ等しい。
図15に示されるように、半球状の汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間は、円柱状又はビーム状の汗滴112の場合におけるよりも、汗滴112の体積に対して余り敏感ではない。例えば、半球状の汗滴112は、センサ166を通過するのに、半分の体積の半球状汗滴112よりも約1.14倍長く掛かり得る。しかしながら、円柱状又はビーム状の汗滴112は、センサ166を通過するのに、半分の体積の同様の形状の汗滴112よりも約2倍長く掛かるであろう。
したがって、汗滴112がセル168の断面にまたがる該汗滴112の頭部及び尾部にメニスカスを形成するように寸法が定められたチャネル168を備えるセンサ166は、汗滴112の体積の変化を決定する該センサ166の能力を改善し得る。
参考までに、図15におけるプロットが及ぶ体積の範囲は、半球状の汗滴の場合は70~140μmの汗滴112の直径に対応し、ビーム状の液滴の場合は40~340μmの汗滴112の長さに対応する。
ビーム形状の汗滴112がセンサ166を通過されると共に、勾配、例えば化学勾配が該センサを経て汗滴112を輸送するために使用される場合、移動速度は汗滴112の長さが増加するにつれて増加するであろう。この増加された移動速度は、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間の、該汗滴112の体積に対する上述した改善された敏感さを打ち消し得る。
センサ166を経てビーム形状の汗滴112を輸送するためにエレクトロウェッティングタイル124が使用される場合、例えば約70μmよりも短い長さの汗滴112は、センサ166を通過することが防止され得る。これらの液滴112は、隣接するエレクトロウェッティングタイル124の対と重なるには短すぎるからである。一方、例えば約140~200μmより長い汗滴112の輸送は、1つの帯電されたエレクトロウェッティングタイル124により発生される力は斯様に大きな汗滴112を移動させるには不十分であり得るので、阻止され得る。
図16は、前述したように、汗滴112を成形するためのチャネル168を備えたセンサ166を示している。該チャネル168内には複数のエレクトロウェッティング経路188が設けられ、これらエレクトロウェッティング経路188はセンサ166を経る流れの方向に対して垂直な方向に互いに空間的に分離され、汗滴112が当該センサ166を介して該汗滴112の体積に応じてエレクトロウェッティング経路188の1以上により輸送されるようにする。これらエレクトロウェッティング経路188は、各々、汗滴112を当該流体輸送アセンブリからセンサ166に及び該センサを経て輸送するために複数のエレクトロウェッティングタイル124を有している。
エレクトロウェッティング経路188に供給される各エレクトロウェッティング波は、互いに実質的に同時であり得、その結果、2以上のエレクトロウェッティング経路188にまたがる汗滴112は、これらのエレクトロウェッティング経路188により同期して輸送される。
相対的に大きな汗滴112が当該流体輸送アセンブリを介してセンサ166に輸送される場合、汗滴112は先ずチャネル168に入り得る。最初にチャネル168に入ると、汗滴112は、前述したように、チャネル168の入口部分の断面の形状に依存して半球形状からビーム形状へと形状を変化させ得る。図16に示される非限定的な例において、チャネル168の上流側の当該流体輸送アセンブリの通路の高さは、例えば約150μmであり得、センサ166のチャネル168は、例えば、約30μmの高さを有し得る。
次いで、上記汗滴112は、該汗滴112の体積に応じて、複数のエレクトロウェッティング経路188にわたって分配され得る。図16に示される非限定的な例においては、4つのエレクトロウェッティング経路188がチャネル168内に設けられている。相対的に小さい汗滴112は、主に、4つのエレクトロウェッティング経路188のうちの1つのエレクトロウェッティングタイル124上に留まり得る。より大きな汗滴112は、これらエレクトロウェッティング経路188のうちの2つ、3つ又は4つ全ての各エレクトロウェッティングタイル124にわたり分散され得る。
実質的に同時のエレクトロウェッティング波が、その後、センサ166を経て汗滴112又は複数の汗滴112を輸送し得る。図16に示される特定の例において、このエレクトロウェッティング波は、汗滴112によりチャンネル168に入った後に最初に出会う4つのエレクトロウェッティングタイル124(図16の左側の輸送方向に幅が増加するエレクトロウェッティングタイル124)の各々を、先ず同時に帯電させることにより生成される。次いで、これらの4つのエレクトロウェッティングタイル124は、例えば、0.1秒後に放電され、そうするやいなや、最初に帯電及び放電されたエレクトロウェッティングタイル124に直に隣接する4つの中央のエレクトロウェッティングタイル124が、例えば0.1秒間同時に帯電される。該4つの中央のエレクトロウェッティングタイル124が放電されるとすぐに、次の組のエレクトロウェッティングタイル124が同時に帯電され、以下同様となる。
このようにして、エレクトロウェッティング経路188の各々に同時に供給されるエレクトロウェッティング波は、汗滴(又は複数の汗滴)112がセンサ166を経て、すなわち図16において左から右に輸送されるようにし得る。
センサ166は、輸送されている汗滴112又は複数の汗滴112、及び該汗滴(複数の汗滴)112が該センサを通過するのに掛かる時間を検知するために、エレクトロウェッティング経路188毎にセンサモジュール190を備え得る。したがって、このセンサ166は、相対的に小さい及び相対的に大きい汗滴112の移動に対応することができる。エレクトロウェッティング経路188の各々に対して対応するセンサモジュール190が設けられるため、当該装置100を介してセンサ166に輸送される汗滴112は、チャネル168を経て汗滴112を輸送するためにエレクトロウェッティング法を使用することを可能にしながら、これら汗滴のサイズ/体積により一層良好に弁別され得る。
並列の複数のセンサモジュール190は、例えば、汗滴112の直径による線形な区別を提供するものと見なすことができる。例えば、汗滴112が2つのセンサモジュール190上に分割される場合、2倍の直径を有する汗滴112は4つのセンサモジュール190上に分割され、その結果、2倍の数のセンサモジュール190により検出されるであろう。
図16に示される非限定的な例において、感知モジュール190の各々は1対の電極170を含み、これら電極170は、前述したように、汗滴112の静電容量及び/又は導電率に基づく感知を可能にする。該感知モジュール190に対して、光学的及び/又はバイオマーカ検出技術等の代替的感知原理も、代替的に又は追加的に、想定され得る。
エレクトロウェッティング装置144は、当該流体輸送アセンブリ及び/又はセンサ166に採用されるエレクトロウェッティングタイル124の対の間における相対的に小さな汗滴112の移動を支援するように設計できる。例えば、隣接するエレクトロウェッティングタイル124は、例えばエレクトロウェッティングタイル124の対が相補的なジグザグの輪郭を持つ隣接する各表面を有することを介して、互いに連動するように成形できる。このような連動する対のエレクトロウェッティングタイル124は、各々、隣接する平らな各プロファイルを有する1対のエレクトロウェッティングタイル124に対して、汗滴112との重なりが増加し得る。したがって、該連動するエレクトロウェッティングタイル124は、相対的に小さな汗滴112のセンサ166への及び/又はセンサ166を経る輸送を支援できる。
相対的に大きな汗滴112の場合、エレクトロウェッティングタイル124は輸送方向に対して垂直な方向に拡幅でき、これにより、そのような相対的に大きな汗滴112とエレクトロウェッティングタイル124との間の接触力を増大させる。相対的に小さな汗滴112は、例えば、帯電されていないエレクトロウェッティングタイル124上では、依然として半球状の汗滴112の形をとることができ、特に、例えば、連動するエレクトロウェッティングタイル124が採用される場合、前述したように隣接するエレクトロウェッティングタイル124と依然として重なることができる。
更に、幾つかの小さな汗滴112を、単一の相対的に大きな汗滴112から「摘み取る」ことができる。このことは、例えば、図12を参照して前述した分岐構造を介して達成できる。このような例においては、汗滴112が相互接続部に到達する前に、段階的な手順を使用して、相対的に大きな汗滴112を斯様な小さな汗滴112に分割することができる。複数のチェンバ102をセンサ166に並列に流体的に接続する分岐構造は、このような小さな汗滴112が、該分岐構造を介して輸送される他の汗滴112により妨害される可能性を低減又は除去する助けとなり得る。
幾つかの例において、センサ166は汗滴112を感知するための光学センサを含み得る。このような光学センサは、前述した静電容量及び導電率センサに対して代替となり得るか、又は付加的に含まれ得る。
該光学センサは、任意の適切なやり方で汗滴112を感知できる。例えば、該光学センサは、汗滴112がたどる経路を横切って光ビームを送出するための光源、及び該光ビームを感知するための対向する光検出器を含み得る。該光ビームは、汗滴112のメニスカスが横切った場合に逸らされ得る。汗滴112は、当該光学検出器により感知される透過光の付随する変化により検出できる。
代替的に又は追加的に、上記光学センサは、汗の成分による光の吸収を検出するようにも構成できる。汗は、汗の各成分の分光学的特性に由来する特定の分光学的指紋を有し得る。したがって、該光学センサは、例えば、そのような分光学的指紋を参照して汗滴112を感知することができる。
他の例において、センサ166はバイオマーカセンサを含み得る。バイオマーカセンサは、各汗滴112内のバイオマーカ濃度の検出を可能にすると同時に、汗滴112の計数も可能にし得る。バイオマーカセンサは、更に、汗滴112が該バイオマーカセンサを通過する時間を決定することも可能にし得、汗滴112の体積の尺度を導出できるようにする。したがって、バイオマーカセンサは、当該装置100及びバイオマーカセンサを組み込んだシステムを単純化できる幾つかの機能を有利にも果たすことができる。特に、追加のセンサタイプが当該システムに含まれることを要さないからである。
当該バイオマーカセンサは、特定のバイオマーカ、すなわち化学バイオマーカを、該バイオマーカセンサを通過する汗滴112のバイオマーカ濃度を決定できる程十分に速い応答で感知できる。この点に関し、当該バイオマーカ検出器の応答時間は、汗滴112が該バイオマーカセンサを通過する時間よりも短いものであり得る。
汗の特定の成分は、発汗量に依存する濃度を有する。このような成分のバイオマーカセンサを使用した検出は、汗腺当たりの発汗量が明確に決定されることを可能にし得る。
バイオマーカセンサの応答時間が、汗滴112の塊から該バイオマーカセンサの検出表面への関連するバイオマーカの拡散により制限される場合、該バイオマーカセンサが配置されるチャネル168の寸法を可能な限り小さく選択でき、これにより、拡散するバイオマーカが通過すべき距離を最小化する。アインシュタインの拡散方程式によれば、拡散距離は時間の平方根に比例する。その結果、例えば、チャネル168の高さが2分の1に減少された場合、拡散に必要な時間は4分の1に減少し得、これにより、バイオマーカセンサの一層速い応答を可能にする(関連するバイオマーカのバイオマーカセンサへの拡散が律速段階である場合)。
図17に示される装置100は、エレクトロウェッティングタイル124を含む流体輸送アセンブリを有する。図17に示される装置100を介して輸送される汗滴112のサイズ/体積は、エレクトロウェッティング波の間の期間に依存し得る。
先に簡単に述べたように、汗腺108は周期的に働く。汗腺108は、通常、バースト期間の間に約30秒間排出し、約150秒の休止期間が続く。汗のバーストは、20~40秒の間で、又は10~50秒の間でさえ変化し得る(Chen他による文献“In vivo single human sweat gland activity monitoring using coherent anti-Stokes Raman scattering and two-photon excited autofluorescence microscopy”,British Journal of Dermatology(2016),174,pp803~812)。
発汗率が1.2nl/分/腺である発汗バーストフェーズの間においては、約0.24nlの汗滴112が約12秒毎に形成され得る。汗滴112が半球形状であると仮定すると、該汗滴112の高さは約50μmであり、直径は約100μmであろう。余り動かない被験者からの汗の収集に適用される場合、平均発汗率の上限は、約5nl/分/腺であると予想され得る。この場合、半球状の汗滴112の体積は約6nlであり、その直径は285μmであろう。
装置100及びセンサ166を含む汗感知システムは、発汗率が上記上限に近づいていることを示す閾値を超えた場合、例えば音響的及び/又は視覚的アラーム等の警報を供給するように構成できる。このような高い発汗率は、それ自体で臨床的介入の正当な理由になり得る。前にも述べたように、発汗バースト及び休止期間は、各々、約30秒及び約150秒であり得る。同じ平均発汗率での休止期間が減少すると、発汗バースト期間中の発汗率は減少するであろう。
当該流体輸送アセンブリが汗滴112を輸送するためにエレクトロウェッティング装置144を使用する場合、幾つかの要因を考慮に入れることができる。汗滴112の輸送を可能にするために、形成された汗滴112は、1つのエレクトロウェッティングタイル124を覆うと共に、当該系列における後続のエレクトロウェッティングタイル124を部分的に覆わなければならない。通常、直径100μmの半球状の液滴の場合、例えば、60μmの長さ(輸送方向の)を有するエレクトロウェッティングタイル124が使用され得、隣接するエレクトロウェッティングタイル124の間には10μmの間隔(輸送方向の)を伴う。
上記のエレクトロウェッティングタイル124の寸法は、直径100μmの汗滴112には適しているが、より多くのエレクトロウェッティングタイル124を覆う一層大きな汗滴112には適していない。そのような場合、帯電された場合に一時的に親水性にされるエレクトロウェッティングタイル124の面積は、該汗滴112が当該系列における後続のエレクトロウェッティングタイル124に移動されるには小さ過ぎるであろう。
しかしながら、相対的に大きな汗滴112に関連する上記問題は、例えば図17に示される装置100の場合、連続するエレクトロウェッティング波を分離する期間を調整することにより対処できる。
例えば、連続するエレクトロウェッティング波の間で12秒の期間が経過する代わりに、エレクトロウェッティング波は毎秒開始され得る。この場合、0.2nl/分/腺の発汗率において、1秒間に形成される半球状の汗滴112の直径は約42μmとなり得、これは2つの隣接するエレクトロウェッティングタイル124と部分的に重なるには小さ過ぎ、結果として汗滴112の移動は開始されない。しかしながら、6つの後続のエレクトロウェッティング波の後、汗滴112は77μmの直径を有するように成長しているであろうから、該汗滴112は2つの隣接するエレクトロウェッティングタイル124と部分的に重なり、該汗滴112の出口114からの放出及び該汗滴112の移動が生じ得る。
5nl/分/腺の発汗率の場合、1秒後に、半球状の汗滴112の直径は124μmとなり、該汗滴112は殆ど2つの隣接するエレクトロウェッティングタイル124と重なり得る(2つのエレクトロウェッティングタイル124及びそれらの間のギャップは130μmの長さに対応し得る)。このように、この汗滴112の直径は該汗滴112の移動にとり十分であり得る。したがって、エレクトロウェッティング波が毎秒開始される場合、0.2nl/分/腺から5nl/分/腺までのダイナミックレンジに対応することができる。この場合、センサ166によりカウントされる汗滴112の数、及び各汗滴がセンサ166を通過する時間を、汗腺108の発汗バースト期間中の発汗率を計算するために使用できる。
プレート110の上面にエレクトロウェッティングタイル124が設けられている図17に示される装置100の場合、異なる発汗率により、異なるサイズの汗滴112がセンサ166に輸送され得る。しかしながら、このことは困難さをもたらすことはない。センサ166は、該センサに輸送された汗滴112の数をカウントすると共に、各汗滴112が該センサを通過するのに掛かる時間を決定できるからである。後者は、汗滴112の体積に比例する。したがって、発汗率を汗腺108ごとに明確に評価できる。
より一般的には、エレクトロウェッティング装置144が汗滴112をセンサ166に及び該センサを経て輸送するために使用される場合、エレクトロウェッティング波の速度は、前記電界発生器が前記系列の各エレクトロウェッティングタイル124を帯電/放電させる周波数により決定できる。この切り換え周波数は、例えば、約10Hzであり得る。長さが60μmのエレクトロウェッティングタイル124であって、隣接するエレクトロウェッティングタイル124の間のギャップが10μmである前述したエレクトロウェッティングタイル124の場合、各「ステップ」において、汗滴112は0.1秒内に70μm移動し得る。したがって、汗滴112が輸送される速度は、この場合、毎秒700μmであろう。
図18は、2つの発汗バースト192A、192B及び2つの休止期間194A、194Bを示すグラフ(上側の部分図)、第1の発汗バースト192A及び第1の休止期間194Aの拡大図(中央の部分図)、及びセンサ信号の時間の関数としてのグラフ(下側の部分図)を示す。
上側の部分図においては、発汗量が時間の関数として示されている。この例では、30秒の2つのバースト192A、192B、及び150秒の2つの休止期間194A、194Bが示されている。中央の部分図は、1.2nl/分/腺のバースト中の発汗率を持つ汗腺108の第1の発汗バースト192Aを示す拡大図を示している。下側の部分図には、発汗量センサ信号が第1の発汗バースト192Aに関して時間の関数として示されている。
遅延196が、第1の汗バースト192Aの開始と、センサ166により記録される第1の汗滴112との間に明らかに見られる。この遅延196は、当該バーストの第1の汗滴112が形成される、すなわち出口114からはみ出るのに要する時間、及びこの汗滴112を前記流体輸送アセンブリがセンサ166に輸送するのに要する時間に起因し得る。
図18に示す例において、第1の発汗バースト192Aの第1の汗滴112を形成するのに掛かる時間は6秒である。換言すれば、汗滴112がチェンバ102の出口114を区切るエレクトロウェッティングタイル124と重なる程十分な大きさの直径を有するように成長し、その結果、前述したようにエレクトロウェッティング波が該汗滴112を出口114から切り離すようになるのに6秒掛かる。この点に関し、図18は発汗率が相対的に少ないシナリオを示している。
更に、この限定するものでない例において、チェンバ102とセンサ166との間の距離は5mmである。毎秒700μmの移動速度によれば、完全に形成された汗滴112をセンサ166に輸送するのに約7秒掛かる。
図18は、第1の発汗バースト192Aの間において各汗滴112が6秒ごとにセンサ166により感知されることを示している。したがって、第1の発汗バースト192Aについては5つの汗滴112がセンサ166により記録され、該第1の発汗バースト192Aは30秒の持続時間を有する。
汗滴112は直径77μmの半球形状を有し得、輸送方向におけるセンサ166の長さは60μmである。汗滴112の輸送速度が毎秒700μmである場合、該汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間は0.196秒である。
図17及び図18に対応する例において、発汗バースト192A、192Bの開始時及び終了時の各々における発汗率の上昇及び下降は、エレクトロウェッティング波の周期(1秒)に対して速い。しかしながら、汗滴112は発汗バースト192A、192Bの上昇時及び下降時の間においてサイズが変化し得、その結果、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間も、それに対応して変化し得る。
この点に関し、前記毎秒700μmなる速度は、エレクトロウェッティング波を介した汗滴112の輸送の場合の汗滴の平均速度を表すことに留意されたい。しかしながら、0.1秒ごとに当該系列における後続のエレクトロウェッティングタイル124が電界発生器により帯電されるので、結果的に、汗滴112はステップ状に移動するものと見なすことができる。このように汗滴112がセンサ166を経て輸送される場合、各ステップについて2つの特徴が測定され得る。すなわち、センサ166出力が上昇する時間、及びセンサ166の出力が一定である時間である。これらの測定値から、汗滴112がセンサを通過する平均時間を導き出すことができる。
他の限定するものでない例において、エレクトロウェッティングタイル124は、代わりに、出口114に対向して配置された他のプレート128の下面に配置され得る。このような例において、汗滴112のサイズ/体積は出口114と他のプレート128との間の距離130に依存し得る、したがって、汗滴112のサイズ/体積は、前述したように、エレクトロウェッティング波の間の期間とは無関係であり得る。この場合、発汗率を明確に評価するには、特定の期間内でカウントされた汗滴112の数で十分であり得る。汗滴112の体積は先験的に分かるからである。
汗滴112が、該汗滴112が他のプレート128の下面に接触する程度にまで出口114からはみ出た後、エレクトロウェッティング波は、該汗滴112をエレクトロウェッティングタイル124の系列に沿ってセンサ166へと輸送し得る。出口114と他のプレート128との間の距離130のみが半球状の汗滴112のサイズ/体積を決定するのと同時に、エレクトロウェッティング波を供給できる周波数、例えば毎秒0.1も、汗滴112の形成の周波数よりも速くされ得る。このことは、連続する汗滴112が互いに分離された状態に保たれることを保証し得る。この例は、例えば、当該システムが激しい運動に関わるアスリートの発汗を監視するために使用される場合等の、発汗率が相対的に高い場合に適し得る。発汗バースト192A、192Bの上昇時及び下降時の間において、汗滴112の形成は、例えば、図17に示される例の場合におけるよりも長い時間が掛かり得る。したがって、このような上昇及び下降期間中に形成された汗滴112がセンサ166に到達するのに掛かる時間は、発汗バースト192A、192Bの最大時において形成される汗滴112の場合におけるよりも長くなり得る。
動的発汗率測定範囲は、例えば、決定された発汗率に従ってエレクトロウェッティング波の周波数を動的に変化させることにより改善できる。換言すれば、前記電界発生器を、エレクトロウェッティング波の周波数をセンサ166により供給される発汗率フィードバックに基づいて調整するように構成できる。
勾配、例えば化学的及び/又はトポロジ的勾配が汗滴112を出口114から放出するよう作用する例において、汗滴112は、図5を参照して前述したように、全て同様のサイズ/体積を有し得る。
ボランティア検査からのデータに依存せずに腺当たりの発汗量を決定する能力は、重要な目標を表す。そのようなデータを使用することは、重要であり得る個人間の違いを無視するからである。この目的のために、汗腺当たりの発汗量を決定するためのシステムが提供される。該システムは、汗滴112を感知するためのセンサ166と、1以上の汗腺108から汗を受け取ると共に、該汗を離散的汗滴112としてセンサ166に輸送するための装置100とを備える。該装置100は、例えば前述したタイプの装置100とすることができる。センサ166は、例えば、前述したタイプ(例えば、静電容量、導電率、インピーダンス、電気化学的、光学的、及び/又はバイオマーカセンサ)のセンサ166であり得る。
当該システムは、ある期間にわたりセンサ166により感知された汗滴112の数をカウントすると共に、該期間において連続して感知された汗滴112間の時間間隔を決定するように構成されたプロセッサを備える。該プロセッサは、カウントされた汗滴112の各々の体積の尺度も受信する。
該プロセッサは、更に、前記時間間隔及び前記カウントされた汗滴112の各々の体積の尺度を使用して、前記1以上の汗腺が汗を排出している該1以上の汗腺108の活性(すなわち発汗バースト)期間、及び前記1以上の汗腺108が汗を排出していない該1以上の汗腺108の休止期間を識別するように構成される。該1以上の汗腺108の発汗バースト192A、192B及び休止期間194A、194Bを識別するプロセスは、活性期間192A、192B及び休止期間194A、194Bを前記1以上の汗腺108に割り当てることも、付随的に含む。
該プロセッサは、次いで、活性期間及び休止期間が割り当てられた汗腺108の数を決定し、続いて、汗腺当たりの発汗量を、汗滴112の数、カウントされた汗滴112の各々の体積の尺度、及び決定された汗腺の数108から決定する。
このように、該システムは、汗腺当たりの発汗量を、汗腺108の間欠的な汗排出挙動に基づいて汗滴112を特定の汗腺108に割り当てることにより決定する。該システムは、従来の汗感知システムよりも物理的に単純であり得る。装置100は、前述したように、汗滴112を幾つかのチェンバ102から共通のセンサ166に輸送できるからである(例えば、図12を参照)。
また、当該システムは、例えば、連続的な汗の流れを監視する汗感知システムよりも少ないエネルギしか消費しないものとなり得る。これは、そのような従来のシステムが、一対の温度プローブ及びヒータを含む相対的に高いエネルギを消費する熱発汗量センサを使用し得るからである。対照的に、本システムのセンサ166は、それらの間の各汗滴112の通過を感知する一対の電極を単に備えるだけであり得る。
更に、離散化された汗の流れを介して発汗量を測定することにより、特に相対的に低い発汗率において、発汗量のより正確な測定が可能になり得る。対照的に、汗が連続的な流れとして輸送される従来のシステムにおける流量センサは、特に発汗率が低い場合、汗の流量を正確に決定することが相対的に困難となり得る。上述したタイプの熱発汗量センサは、例えば、熱拡散のために、少ない流量を正確に測定することが困難であり得る。誘電値の累積的変化を感知する等の他の既知の技術も、相対的に精度が低く、汗腺当たりの発汗量を確定するためにナトリウムセンサ等の追加のセンサを必要とし得る。
各チェンバ102をセンサ166に並列に流体的に接続する前記流体輸送アセンブリにより、汗滴112は、完全に形成された汗滴112と部分的に形成された汗滴112との間の衝突を回避する態様で共通のセンサ166に供給され得る。更に、下流側のチェンバ102の出口114による負荷も回避できる。該センサ166は、例えば、前述したように、静電容量、インピーダンス及び/又は導電率センサとして機能するために一対の電極170を備え得る。
汗滴112が2つの電極170の間を、すなわちセンサ166を通過する際、これら電極170間の電気的特性(誘電性/コンダクタンス)が変化し、感知電子回路が該変化を記録し、これにより前記プロセッサがセンサ166を通過する各汗滴112をカウントできるようにする。
更に、上記感知電子回路は、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間を記録できる。該プロセッサは、例えば、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間、及び汗滴112が該センサを経て輸送される既知の速度を使用して、汗滴112の体積を計算できる。該移動速度は、汗滴112のサイズ/体積に幾らか依存し得るが、これは、事前に容易に決定することができる。当該プロセッサは、適切な補正係数を適用して、センサ166を経る輸送速度の汗滴112サイズ依存性を、例えばルックアップテーブルを介して考慮することができる。
2つの完全に発達した汗滴112が衝突して互いに融合した場合、該合体した汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間は、例えば、図15に関連して前述したように、センサ166内の汗滴112の形状に応じて、他の汗滴112と融合していない汗滴112よりも約2倍長くなり得る。このことは、このような一層大きな体積の汗滴112を、2つの完全に形成された汗滴112の合体に容易に且つ明確に帰属させることができることを意味する。
図17に示される装置100は、切頭円錐形状のチェンバ102を有する。第1の限定するものでない例(例1)において、チェンバ102は、直径360μmの円形入口104及び直径33μmの円形出口114を有する。第2の特定の限定するものでない例(例2)において、チェンバ102は直径1130μmの円形入口104及び直径33μmの円形出口114を有する。
cm2当たり100個の活性汗腺108の皮膚106上の活性汗腺密度を仮定すると、入口104と接触する汗腺108の平均数は、例1及び例2について、各々、0.1個の汗腺及び1個の汗腺となる。
第1及び第2の例の装置100の入口104と一致する汗腺108の数に関連する確率は、ポアソン分布を使用して計算できる。その結果が表1に示される。
ここで、PXはX個の汗腺104がチェンバ102の入口104と接触することが発生する可能性である。
一解説例として、装置100は皮膚106上の4つの収集領域から汗を収集するように構成される。この目的のために、装置100は、収集領域当たり図17に示されるタイプのチェンバ102を25個有する。この例において、チェンバ102の各入口104は360mmの直径を有し(例1)、各入口104の面積は0.1mm2となる。
上記25個のチェンバ102(収集領域当たり)のうち、通常、如何なる汗腺108からも汗を受け取らないチェンバ102が22個又は23個存在する。幾つかの例外的な場合には、2以上の汗腺102から汗を収集するチェンバ102が存在する(200分の1の確率で)。
上記25個のチェンバ102(収集領域当たり)のうち、約2~3個のチェンバ102は1つの汗腺108から汗を受け取る。これらの2~3個のチェンバ102の各々により収集された汗滴112は、センサ166により感知され得る。しかしながら、汗滴112の形成に寄与する汗腺108の数を確定するという問題が残る。
更に、被験者が余り動かない状態にある場合、汗腺108当たりの発汗量は0.2nl/分から1nl/分まで変化し得る一方、被験者が激しい運動に関わっている場合、汗腺108当たりの発汗量は5nl/分又は10nl/分にさえ増加し得る。更に、活性汗腺108の数は神経刺激レベルの関数として増加し得、これは深部体温により制御される。解剖学的観点から、汗腺108は異なるサイズも有し得、これは、発汗バーストフェーズ192A、192Bの間における発汗率の変動につながり得る。
上述したシステムは、これらの問題に、汗腺108の上述した周期的挙動を寄与している汗腺108の数を決定するために使用できるという認識に基づいて対処する。このことは、汗腺当たりの平均発汗量を測定することを可能にし得る。更に、当該システムは、以下に説明するように、汗腺108間の発汗量の変化を確定することを可能にし得る。
チェンバ102が如何なる汗腺108からも汗を受け取らないシナリオでは、それに対応して、汗滴112はセンサ166に輸送されない。
チェンバ102が単一の汗腺108から汗を受け取るシナリオにおいて、該汗腺108は0.2nl/分の平均発汗量を示し得、発汗バースト192A、192Bの間の発汗量は、約1.2nl/分となる(典型的なバースト期間192A、192Bは約30秒持続し、休止フェーズ194A、194Bは約150秒持続すると仮定する)。チェンバ102の対応する汗腺108により排出された汗での充填(これには約1から10分掛かり得る)の後、図17に概略的に示されるように、汗滴112が出口114からはみだし得る。
互いに相対的に近い汗腺108は、これら汗腺を活性化する神経パルスを同時に受け得る。しかしながら、汗腺細胞のポンピング効果に必要とされる代謝が尽くされるのに掛かる時間は、汗腺108間で異なり得、したがって、部分的に重なるサイクルが生じ得る。
図12に示されたもの等の少なくとも幾つかの例において、チェンバ102の各々とセンサ166との間の距離は同じであり得る。このことは、汗腺108が各チェンバ102に同時に排出することにより、同期した汗バーストが検出されるようにさせ得る。この問題に対処する1つの方法は、各チェンバ102とセンサ166との間の該距離を変えることであろう。しかし、様々なチェンバ102に排出する汗腺108が同時に発汗バーストを実行するかは不明である。更に、各汗腺108の非同期的な汗バーストが、各チェンバ102とセンサ166との間の距離が異なるために、偶然に重なり合うこともあり得る。前記プロセッサにより実行される識別は、汗腺ごとの発汗率の明確な決定を、異なる汗腺108に対応するセンサ信号間に重なりがあるかに関係なく可能にし得る。したがって、150秒の休止期間が後続する30秒の排出の典型的なサイクルを考慮に入れた以下のシナリオが考察される。
図19は、各汗腺108が互いに対して異なる時間に発汗バースト192A、192B、198A、198Bを有する場合の発汗量対時間(上の部分図)、及びセンサ信号対時間(下の部分図)のグラフを示す。
図19に示されるシナリオにおいて、或る汗腺108が第1のチェンバ102に供給し、別の汗腺108が第2のチェンバ102に供給する。各腺108に由来する汗滴112は、例えば、センサ166データの分析により互いに区別できる。特に、期間200、202及び204が休止期間に対応する可能性は除外され得る。これらの期間200、202、204は、前述したように約150秒であり得る典型的な休止期間よりも著しく短いからである。194A及び206Aとして示される期間は、休止期間に典型的な期間を有するので、これらは、これに対応して、各汗腺108の休止期間194A、206Aとして識別され得る。
最初の2つの汗腺バースト192A、198Aが誤って第1の汗腺108に帰属され、第2の2つの汗腺バースト192B、198Bが誤って第2の汗腺108に帰属されたとしても、前記プロセッサにより決定される汗腺当たりの平均発汗量は、それにもかかわらず、正しいであろう。更に、第2の汗腺108の発汗バースト198Aが第1の汗腺108の発汗バースト192Aに正に続くべきものであって、結果としてのセンサ166のデータが単一の汗腺108の単一の長い汗バーストとして解釈されるべきであったというありそうもないケースにおいて、この誤った割り当ては、発汗バースト期間中の決定される発汗量を変えるものではないので、重要ではないであろう。
特定のバイオマーカの発汗率依存性は、汗腺108の(活性)発汗バースト期間中にのみ発生し得、明らかに休止期間には発生しない。特に、皮膚106への汗の排出につながる一次汗の生成及び吸収は、発汗バースト期間中にのみ起こり得る。一次汗腺量を発汗速度依存バイオマーカの吸収量で割った比率は、発汗量の関数としてのみ変化し得る。したがって、発汗バーストの持続時間は発汗量に影響を与えないであろう。しかしながら、以下で更に説明するように、上昇及び下降は発汗量に影響する。
図20に示されるシナリオにおいて、汗滴112は汗を各チェンバ102に排出する2つの汗腺108に由来するものであるが、これら汗滴112は互いに正確に一致する。このことは、図20においてセンサ信号の各々の幅により示されるように、合体した汗滴112の各々がセンサ166を通過するのに掛かる時間が、単一の汗滴112に対する0.196秒(前記図18を参照)から0.224秒に増加されるという効果を有する。
一連のエレクトロウェッティングタイル124が出口114に対向する他のプレート128の下面に設けられる図6に示される例の場合、汗滴112の全ては同じサイズ/体積で形成され、これは、前述したように、出口114と他のプレート128との間の距離130により決定される。汗滴112は、先験的に分かるサイズ/体積で形成されるので、これらの汗滴112がセンサを通過するのに掛かる時間により決定される斯かる合体した汗滴112のサイズは、センサ信号の該パターンが2つの汗腺108により引き起こされていることを明確に示す。
一連のエレクトロウェッティングタイル124がプレート110の上面に設けられ、汗滴112を出口114から分離するためにそれ以上のプレートは使用されない図17に示される例のような代替的な場合において、該センサ信号パターンは、一見すると、2つの汗腺108が同じ発汗率で排出している実際のシナリオというより、1つの汗腺108が2倍の発汗率で排出していることを指し得る。しかしながら、この単一の汗腺108の解釈は除外され得る。連続する汗滴112が検出される間の時間は、それに応じて短くなければならないが、これは、図20の場合には当てはまらないからである。
図21に示されるシナリオにおいて、汗滴112は各チェンバ102に汗を排出する2つの汗腺108に由来するが、各汗腺108により生成される汗滴112の幾つかは互いに一致している。この場合、センサ166により感知された最初の2つの汗滴112に対応する信号208、210は、第1の汗腺108に割り当てられる。最後の2つの汗滴112に関する信号218、220は第2の汗腺108に割り当てられる。残りの信号212、214、216は、両方の汗腺108の各汗滴112に由来する合体した汗滴112に対応する。
図6に示される例の場合、装置100は同じサイズ/体積を有する汗滴112をセンサ166に輸送するので、合体した汗滴112が各々の汗腺108に属さなければならないことは明らかである。
しかしながら、図17に示す例の場合、次のことを考慮すべき可能性が存在する。すなわち、(a)各々が5つの汗滴112となる2つの汗のバーストが、感知の間において時間的にずれている;及び(b)第1の汗腺からの発汗バーストが7つの汗滴112を形成し、第2の汗腺からの1つの短い発汗バーストが3つの液滴を形成する、ことである。後者の場合、1つのバーストの長さは42秒で、2番目のバーストの長さは18秒となり、これは、ありそうにない。更に重要なことに、(a)及び(b)の両方の可能性は、汗腺当たり同じ平均発汗量が決定されることになり得る。どちらの場合も、発汗バースト期間中の汗腺当たりの平均発汗量は同じであるからである。
汗滴112が様々なサイズで形成され得る、一連のエレクトロウェッティングタイル124がプレート110上に設けられる該場合において、一見すると、図21に示されるデータパターンは、1つの汗腺108から相対的にゆっくりとした上昇及び下降でも生じ得る。しかしながら、これは除外され得る。連続するセンサ信号間の時間も変化すべきであるが、このことは、この例では当てはまらないからである。
図22に示されるシナリオにおいて、汗滴112は、汗を各チェンバ102に排出する2つの汗腺108に由来する。信号222A~222Eは第1の汗腺108に割り当てられる一方、信号223A~223Eは第2の汗腺に割り当てられる。センサ信号の各組の間には幾らかの重なりが存在するが、各々の汗滴112は互いに合体していない。このようなセンサ信号パターンは、各汗腺108が時間的にシフトされた5つの汗滴112の組を生成することに帰すことができる。他の説明は、1つの汗腺108の非常に不規則な動作、すなわち発汗バースト中に変動する発汗率を必要とするが、これは、生理学的にはありそうもない。後者は、これに対応して除外できる。
図17に示される例であって、エレクトロウェッティング波が毎秒開始される場合、相対的に低い発汗率(例えば、0.2nl/分/腺)において、汗滴112は約6秒ごとにセンサ166に向かって移動し得、30秒間続く1つの発汗バースト内で5つの汗滴112が形成されるであろう。これには、約150秒の休止期間が続き、その間では、汗滴112は形成されない。その後、このパターンが繰り返され得る。2つの汗腺108が活性状態である場合、これらのパターンが2つ発生する。この説明は、各チェンバ102が対応する汗腺108から汗を受け取る2つのチェンバ102に限定されることに留意されたい。1つのチェンバ102が2以上の汗腺108から汗を受け取る場合も、以下で説明されるであろう。
2つの汗腺108に関する各々のセンサ信号パターンが互いに重なり合わない場合、前記プロセッサは、各パターンを容易に識別でき、汗腺毎の発汗率は、図19を参照して上述したシナリオにおけるように、データパターンから容易に導出できる。したがって、個々の汗腺108の汗滴112は、これら汗腺108の周期的挙動(汗バースト及び休止期間)を考慮することにより区別できる。発汗バーストが誤って割り当てられた場合においてさえ、前述したように、汗腺毎に決定された平均発汗量に対する影響はないであろう。
もっと一般的に言うと、前記プロセッサは、汗腺又は複数の汗腺108の周期的挙動を探し、何の汗滴112が何の汗腺又は複数の汗腺108に由来するかを識別するように構成できる。このことは、該プロセッサが、汗腺の数及び汗腺当たりの発汗率を決定することを可能にし得る。
図23は、汗腺当たりの発汗量を決定するための方法224のフローチャートを示している。該方法224は、1以上の汗腺から汗を受け取るステップ226、該汗を離散的な汗滴としてセンサに輸送するステップ228を含む。ステップ226及び228は、例えば、前述した装置100により実施され得る。
ステップ230において、上記汗滴は、或る期間の間にセンサを使用して感知される。ステップ230は、例えば、前記センサ166を使用して実施できる。これら汗滴は、ステップ232において、或る期間の間にカウントされる。ステップ234において、上記期間の間における連続して感知された汗滴の間の時間間隔が決定される。該時間間隔は、センサ信号がベースラインに戻る時点と、後続のセンサ信号のベースラインからのその後の増加時点との間の期間に対応し得る。カウントされた汗滴の各々の体積の尺度が、ステップ236において、前述したようにセンサからで受け取られる。
ステップ238において、前記1以上の汗腺の該1以上の汗腺が汗を排出している活性(即ち、発汗バースト)期間、及び前記1以上の汗腺の該1以上の汗腺が汗を排出していない休止期間が識別され、該活性及び休止期間が前記1以上の汗腺に割り当てられる。この識別及び割り当ては、図19~図22を参照して前述したように、前記時間間隔及びカウントされた汗滴の各々の体積の尺度を使用する。
ステップ240において、上記活性期間及び休止期間が割り当てられる汗腺の数が決定される。次いで、ステップ242において、汗腺当たりの発汗量が決定される。この汗腺当たりの発汗量の決定は、汗滴の数、カウントされた汗滴の各々の体積の尺度、及び決定された汗腺の数を使用する。
ステップ232~242は、例えば前述したシステムのプロセッサを使用して実施できる。
図24は、1以上の汗腺の発汗バースト及び休止期間を識別し、該発汗バースト及び休止期間を上記1以上の汗腺に割り当てるために使用できるアルゴリズム243の一例を示している。言い換えれば、図24に示されるアルゴリズム243は、例えば、当該システムのプロセッサにより、前記方法224のステップ238を実施するために使用され得る。
該アルゴリズム243のブロック244において、定められた期間(例えば、10分)にわたるセンサ信号(すなわち、データパターン)がセンサから受信される。ブロック246において、該受信されたデータはテンプレートモデルに当てはめられる。特に、該当てはめ処理(フィッティング)は、上記期間内に感知されたセンサ信号、すなわちパルスの数;各センサ信号の幅、すなわちパルス幅(これは、感知された各汗滴の体積の尺度であり得る);及び連続するセンサ信号の間の時間間隔;を考慮に入れる。該モデルフィッティングは、生理学的に妥当な発汗バースト及び休止期間も考慮に入れる。
ブロック248において、受信されたデータのテンプレートモデルに対する当てはまりの良さ(適合度)が決定される。ブロック250において、上記データのうちの少なくとも幾つかが、当該発汗率の決定が基づくのに適したものとして識別される。この識別は、この識別されたデータの適合度が所定のしきい値に達するか又は超えることに基づいて実行され得る。ブロック252において、上記の識別されたデータに対応する元々受信されたデータの割合(分率)が決定され、この割合が十分に高い場合、当該アルゴリズムはブロック256で終了する。一方、この割合が所定の値(例えば、80%)より低い場合、新たなフィッティングがブロック254において実施され、ブロック246~252が繰り返される(すなわち、これにより反復を実行する)。
特定の例において、当該アルゴリズムは、(i)発汗バーストにおける汗滴の数、(ii)パルス時間、(iii)汗滴がセンサを通過する時間、(iv)発汗バースト期間の持続時間、及び(v)休止期間の持続時間のテンプレートで開始する。
この例においては、このテンプレートモデルに十分に類似するデータセットの各部分が、元々受信されたデータから減算される。適合度基準を、受信されたデータ、すなわち実際のデータのどれだけ多くが該モデルから逸脱できるかを制御するために使用できる。このような減算により、広いパルスが部分的に除去された場合、残りのパルスが該データセットに残存する。このような残りのパルスは、例えば、次いで、他の汗腺に割り当てられ得る。
このテンプレートに類似するデータセットの各部分は再び減算でき、このプロセスは
が再び繰り返される。該アルゴリズムの更なる繰り返しは必要とされないであろう。4つの汗腺から各々発生する汗滴が重なる可能性は非常に低いからである。
前記の残存するデータセットのサイズが評価され、例えば、これが元のデータセットの5~20%より大きい場合、新たな反復がフィッティングパラメータの新しい値で開始される。このようにして、重なり合わないデータパターン及び重なり合うデータパターンを高い信頼度で評価でき、これにより、汗腺当たりの平均発汗量が決定されることを可能にする。
装置100、例えば、前述した流体輸送アセンブリが所定の体積を有する汗滴をセンサに輸送するように構成された例において、上記フィッティングパラメータの空間は、これに対応して限定され得る。例えば、図6に示される装置100が使用される場合、チェンバ102の出口114から放出される汗滴112の各々の体積は、前述したように、出口114と他のプレート128の対向する表面との間の距離130により規定される。このようにして規定された均一な体積を持つ汗滴をもたらすことにより、前述した識別ステップ238は、一層容易に、すなわち、(合体していない)汗滴112の体積が事前に分からない場合よりも容易に実施できる。
例えば、図17に示される装置100が汗滴112をセンサ166に輸送するために使用される場合、汗滴112は、特に汗バーストの上昇及び下降フェーズの間において、異なるサイズ/体積を有し得る。このことは、例えば、パルス時間が可変である一層複雑なモデルを使用する等の、ステップ238の一層複雑な実施を必要とし得る。代わりに、当該分析において発汗バーストのエッジ、すなわち上昇及び下降フェーズを無視するテンプレートを使用することもできる。
この点において、3つを超える汗腺108が同じセンサ166に汗滴112を供給している場合、結果として生じるパターンの分析は解釈するのが一層困難になり得ることに留意されたい。このような理由で、各入口104の寸法、及びセンサ166当たりのチェンバ102の数は、表1を参照して前述したように、2~3個のチェンバ102のみが活性汗腺により供給されるように制限され得る(例えば、25個に)。
データ量を増やすために、2以上の装置100を単一のウェアラブルパッチに組み合わせることができる。例えば、単一のパッチは4つの装置100を含み得、各装置100は25個のチェンバ102を有する。装置100の数、したがってチェンバ102の数は、例えば、必要とされる精度に従って変化され得る。より多くの汗腺から汗がサンプリングされることは、汗腺当たりの決定される平均発汗量の変動を減少させることにつながり得るからである。
図20は、異なる汗腺108の汗バーストに由来する各々の汗滴112が互いに正確に一致し、その結果、1つのセンサ信号パターンのみが生じるという非常にありそうもないシナリオを示している。所定の体積を有する汗滴112が装置100によりセンサ166に輸送される場合、該所定の体積よりも大きい感知された体積を有する汗滴112は、前述したように、各汗腺108に由来する汗滴112の合体により生じたものでなければならない。
しかしながら、図17に示される装置の場合、より大きな汗滴112は、汗滴112の合体により生じたもの、又はより高い発汗率(この例において、半球状の汗滴の直径は、腺当たりの発汗率に応じて、77μmと124μmの間で変化し得ることを思い出されたい)により生じたもの、の何れかであり得る。
各汗腺108が同時に発汗バーストを示し、結果として生じる汗滴112が同時に検出されるシナリオにおいて、0.2nl/分/腺なる最低の平均発汗率における合体(半球)汗滴112の体積は、約97μmの直径を有し得る。一見すると、これは、2.5nl/分/腺の平均発汗率で汗を排出する単一の汗腺108に起因し得る。しかしながら、低い発汗速度(0.2nl/分/腺)における合体汗滴112は6秒ごとに検出され得る一方、より高い発汗率(2.5nl/分/腺)における単一の汗滴112は毎秒検出され得るので、汗滴112の合体と相対的に高い発汗率との間の区別は可能であり得る。この情報は、前述したアルゴリズムに含められる。
汗腺108の排出サイクルが変化し得ることは知られている。例えば、このことは、休止期間の持続時間が変化し得ることを意味し得る。したがって、前記アルゴリズムはセンサ信号パターン、特にセンサ信号間の間隔を、この休止期間の変動性を考慮に入れて評価することができる。
発汗量が増加するにつれて、より多くの汗腺108が活性状態になり得ることにも留意されたい。前記アルゴリズムは、このような汗腺108の活性化も考慮できる。この点に関し、当該システムは、例えば、1cm2当たり100個の活性汗腺が存在すると仮定して構成することができる。この相対的に高い推定値は、高い発汗率での更なる汗腺108の活性化を考慮することができる。
図6に示される例示的な装置100は、発汗率が相対的に高い場合(例えば、5nl/分/腺)でさえ、汗滴112の明確に定まった分離をもたらし得る。エレクトロウェッティング波が毎秒開始されることにより、汗滴112が毎秒センサに輸送され、30秒続く発汗バースト内で、30個の汗滴112が形成されるであろう。後続の休止期間の間、例えばその後の150秒の間、汗滴112は形成されない。エレクトロウェッティング波の各増分ステップは0.1秒継続し得るので、前述したように、汗滴112は互いに明確に分離され得る。したがって、発汗率が相対的に低い場合と同じ分析方法を適用できる。図25は、発汗率が相対的に高い場合の、発汗量センサ信号の時間の関数としてのグラフを示している。
図25に示す例において、平均発汗率は5nl/分/腺であり、発汗バースト期間は30秒間続き、休止期間は150秒間続く。バーストの開始と最初のセンサ信号との間の遅延は、汗滴112が形成されるのに掛かる時間(この場合、発汗バーストの間における1秒)、及び汗滴112のセンサ166までの輸送に掛かる時間(この場合は7秒である。移動速度は毎秒700μmであり、チェンバ102とセンサ166との間の距離は5mmであるからである)に起因する。上述したように、30秒の発汗バーストの間に30個の汗滴112が形成される。この場合、各センサ信号の幅は0.26秒である(半球状汗滴112は124μmの直径を有し、センサ166の幅は60μmであり、合成長184μmを700μm/秒の移動速度で除算するからである)。
例1に関連して前述したように、2つの汗腺108が同じチェンバ102に汗を排出する確率は、200分の1であり得る。チェンバ102が単一の汗腺108から汗を受け取るよりは可能性は低いが、2つの汗腺108が同じチェンバ102に汗を排出するという余り有りそうにないシナリオは、それでも、汗腺当たりの平均発汗量の決定に幾らかの影響を及ぼし得る。センサ信号パターンから2つの汗腺108(又はそれ以上)が共通のチェンバ102に排出しているかを決定するために、2つの方法が考えられる。
第1の例として、システムは、各装置100が25のチェンバ102を有する4つの装置100を有する。発汗量センサ166は、該4つの装置100の各々に設けられる。したがって、該システムは合計で100個のチェンバ102を有する。各入口104の面積が0.1mm2である場合、何の汗腺108もチェンバ102に排出しない確率(P0)は90.5%であり、1つの汗腺108がチェンバ102に排出する確率(P1)は9%であり、2つ以上の汗腺108がチェンバ102に排出する確率(P≧2)は0.5%である(前記表1を参照)。このように、単一の汗腺の発生に対して、2つ以上の汗腺の発生は18分の1となるであろう。
前記100個のチェンバ102に対して4つ以下のチェンバ102が2つ以上の汗腺108から汗を受け取り得るという要件が設定される場合、確率論を使用すると、この要件に違反するリスクは10000に約3つである。更に、少なくとも4つのチェンバ102が単一の汗腺108から汗を受け取るという要件が設定された場合、この要件に違反するリスクは1000に約3つである。したがって、このような境界要件は、ベースラインセンサ信号パターン、すなわち、単一の汗腺108が単一のチェンバ102に排出することに対応するパターンを確立するために、十分な数の単一汗腺108イベントがもたらされることを保証する助けとなり得る。このベースラインが確立されると、2つの汗腺108が1つのチェンバ102に排出することに起因するセンサ信号パターンを識別することができる。
原理上、4つのチェンバ102が単一の汗腺108から汗を受け取るという要件は、例えば2つのチェンバ102が単一の汗腺108から汗を受け取ることに緩和できる。この場合、該要件に違反する可能性は10000に9つであろう。
図26は、汗滴112がチェンバ102当たり1つの汗腺108に由来する場合(上側部分図)、及び汗滴112がチェンバ102当たり2つの汗腺108に由来する場合(下の部分図)における発汗量センサ信号の時間の関数としてのグラフを示す。後者のシナリオは、汗滴112が対応するチェンバ102に汗を排出する2つの汗腺108に由来する図19~図21に示されたシナリオとは明らかに異なることに留意されたい。
図26の下側部分図のシナリオに関して、1つの汗腺108の発汗量が図26の上側部分図のセンサ信号パターンに対応する場合、同じチェンバ102に排出する2つの汗腺108のうちの1つは、単一のチェンバ102に排出する汗腺108の近くに位置し得る。これは、互いに同一区域にある汗腺108は汗を同様又は同一の率で排出し得るという仮定に基づいている。一見すると、下の部分図に示されているセンサ信号パターンは、0.4nl/分/腺の発汗率でチェンバ102に汗を排出している単一の汗腺に帰され得る。しかしながら、上述した単一汗腺のベースラインを確立していれば、この解釈は除外され得る。
図26の下の部分図に示された共通のチェンバ102に排出する2つの汗腺108は、発汗バーストを同時に実行しているように示されていることに留意されたい。このことは合理的である。各々の汗腺108は互いに相対的に近くにあり得、神経パルスは2つの汗腺108に同時に且つ同じ強度で到達し得るからである。しかしながら、2つの汗腺108の各々の発汗バーストが同期されていない場合、汗滴112のパターンは、例えば、発汗バーストの開始時及び終了時においてセンサ信号は6秒隔てられ、発汗バースト中においてセンサ信号は3秒隔てられるようになり得る(例えば、図22を参照)。このことは、2つの同期されていない排出汗腺を即座に示し、容易に認識できる。
2つの汗腺108が共通のチェンバ102に排出する汗滴パターンの事象は、ブロック246において、当該アルゴリズムが、最初に、単一の汗腺108がチェンバ102に排出すること(「最小の汗滴112のカウント」)に基づくモデルテンプレートに当該データパターンをフィッティングさせ、次いで、該データパターンを2つの汗腺108がチェンバ102に排出すること(「2倍大きな汗滴112のカウント」)に基づく第2のテンプレートモデルにフィッティングさせることを除いて、図24に示したアルゴリズムにより分析できる。
これら汗滴112を感知でき、これら汗滴のセンサ166との接触時間を、例えば、前述したように静電容量及び/又は導電率センサを使用して決定できる。特に、導電率センサは、汗腺当たりの発汗量の決定に役立ち得る。
これら汗滴112の該導電率は、汗滴112中のイオンの濃度により部分的に決定され得る。汗中のナトリウムイオン濃度は、発汗率の関数として、0.06g/100mlから0.76g/100mlまで変化し得る。汗滴112の測定された導電率は、ナトリウムイオン濃度の代用として使用できる。他の例として、当該センサの応答速度が通過する汗滴112のナトリウム濃度を感知するのに十分に速いならば、ナトリウム用の特定の電気化学センサを使用することもできる。
以下の3つのシナリオが考えられ得る。即ち、1つの汗腺108が5nl/分/腺の発汗率でチェンバ102に排出する;2つの汗腺108が、各汗腺108が2.5nl/分/腺の率で排出するようにして、チェンバ102に例えば同期して排出する;及び3つの汗腺108が、各汗腺108が1.67nl/分/腺の率で排出するようにして、チェンバ102に例えば同期して排出する;というものである。
汗滴112をカウントし、各汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間を決定することのみに依存する発汗量センサは、これらの状況を区別できないであろう。センサ信号のパターンが、各々のシナリオにおいて同一であるためである。汗滴当たりの発汗量を決定するために、上述したタイプのアルゴリズムを使用することができるか、又は、代わりに、発汗量の関数として濃度が変化する分析物の濃度に関連するパラメータを検出するための感知装置を使用することもできる。例えば、この目的のために導電率センサを使用することもでき、その場合、パラメータは導電率であり、分析物はナトリウムイオンである。
導電率センサが使用される場合、測定されるイオン濃度は、イオン濃度(及びナトリウムイオン濃度)の発汗量依存性により、第1のシナリオから第2のシナリオへ、第3のシナリオへと段階的に減少する。各シナリオ間のイオン濃度の該相違は、容易に検出できる。イオン濃度と発汗量との間の関係を事前に正確に知る必要はない。単一の汗腺108のみがチェンバ102に排出するシナリオの上述した優位性のためである。この優位性は、単一の汗腺108のベースラインイオン濃度を決定するために使用でき、上述した様々なシナリオを互いに区別できるようにする。
したがって、もっと一般的には、上記1以上の汗腺108を識別するステップ238は、分析物の測定された濃度に基づくもの、例えば導電率測定を介するものとすることもできる。
以下の追加の対のシナリオも考えられ得る。すなわち、1つの汗腺108が5nl/分/腺の発汗率でチェンバ102に排出するシナリオ;及び2つの汗腺108が、各汗腺108が5nl/分/腺の率で排出するようにして、チェンバ102に例えば同期して排出するシナリオ;である。
この一対のシナリオの第1のものに関し、発汗量センサは毎秒汗滴112を感知し得、第2のシナリオにおいて、該発汗量センサは半秒ごとに汗滴112を感知し得る。
このことは、当該センサ信号パターンが、第1のシナリオにおいては1つの汗腺108のみがチェンバ102に排出する一方、第2のシナリオにおいては同じ収集チェンバ102に排出する2つの汗腺108が存在することを示すと解釈されることにつながり得る。しかしながら、他の解釈は、第1のシナリオにおいては1つの汗腺108のみがチェンバ102に排出する一方、第2のシナリオにおいてもチェンバ102に排出する1つの汗腺108が存在するが、該汗腺は第1のシナリオに対して2倍の発汗率で排出するというものである。
第2の状況はありそうにないように思われるが、同一区域内の汗腺108は生理学的観点から斯様に大幅に異なる発汗率を示す傾向はないので、濃度が発汗率の関数として変化する分析物の濃度に関連するパラメータ、例えば導電性を検出することにより、明確な解釈が得られ得る。この特定の解説例において、第1の解釈は各々のシナリオで測定されるイオン濃度が等しくなることにつながるのに対し、第2の解釈は異なるイオン濃度が測定されることにつながるので、これらの解釈のうちの1つだけが測定されたパラメータと合致し得る。
以下の更なる一対のシナリオも考えられ得る。即ち、1つの汗腺108が5nl/分/腺の発汗率でチェンバ102に排出し;2つの汗腺108が同じチェンバ102に非同期的に排出するが、各汗腺108は2.5nl/分/腺の発汗率で排出する;というものである。
2つの汗腺108が各々のチェンバ102に排出する場合、該2つのチェンバ102からの汗滴112の偶発的な合体は、該合体された汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間の増加につながり(前述したように、半球状の汗滴112の場合、約1.14倍長く;ビーム形状の汗滴112の場合、約2倍長い)、測定されるパラメータ、例えば、イオン濃度は、単一の汗滴112の場合と同じであろう。このことは、各々のチェンバ102からの汗滴112の該偶発的な合体は容易に認識できることを意味する。
これら考察は、2つの汗腺108が非同期的に同じチェンバ102に排出する場合には異なる。各々のセンサ信号パターンが互いに重ならない場合、別個の汗腺108の排出が容易に識別され得、汗滴112は全て同様のイオン濃度を有し得る。
他方、同じチェンバ102に排出する2つの汗腺108の発汗バーストが互いに重なり合う場合、センサ信号パターンは、発汗バーストの開始時及び終了時の信号が発汗バースト中よりも一層広く隔てられるものとなり得る(例えば、図22を参照)。このことは、2つの同期していない排出汗腺を即座に示し、容易に認識できる。チェンバ102に排出する1つではなく2つの汗腺108の存在の追加の証拠として、前述したように、パラメータ測定、例えば、イオン濃度の測定も考えられる。
汗滴112の輸送がエレクトロウェッティングを介して行われる場合、エレクトロウェッティング波の開始が汗バーストの開始と同期されないことがあり得る。この問題は、エレクトロウェッティングタイル124がチェンバ102を画定するプレート110の上面に設けられる図17に示された例の場合に顕著である。発汗バーストの間に入る期間におけるよりも、発汗バーストの上昇及び下降フェーズにおいて、異なるサイズ/体積を有する汗滴112が検出され得る。前述したように、エレクトロウェッティング波は毎秒開始され得る。発汗バーストは、この秒の間の或る時点で開始し得、その結果、センサ166に輸送される最初の汗滴112のサイズ/体積は、連続するエレクトロウェッティング波の間の完全な秒の間に形成される後続の汗滴112よりも小さくなり得る。後者は「完全に形成された」汗滴112と見なされ得る一方、汗バーストの上昇又は下降の間に生成される一層小さな汗滴112は「部分的に形成された」ものと見なされ得る。
図17に示される例においては、低い発汗率において、汗滴112は出口114を部分的に区切るエレクトロウェッティングタイル124の両方と重なるには小さ過ぎることがあり得ることを繰り返し述べる。したがって、この汗滴112はセンサ166に輸送されないかも知れない。しかし、6つのエレクトロウェッティング波の後、平均発汗率を0.2nl/分/腺と仮定すると、汗滴112は、これらの2つのエレクトロウェッティングタイル124と部分的に重なる程十分に大きく成長したものとなり得る。
しかしながら、最初のエレクトロウェッティングサイクルの間において0.5秒しか汗滴112の形成に利用できない場合、汗滴112の成長のための合計時間は5.5秒となり得、このような汗滴112は、それに対応して、完全な6秒の間に形成される汗滴112よりも小さくなり得る。平均発汗率が5nl/分/腺である更なる例においては、形成されている汗滴112が、約0.2秒後に出口114を部分的に区切るエレクトロウェッティングタイル124と重なり始め得る。
したがって、センサに移動する部分的に形成された汗滴112は、完全に発達した汗滴112よりも大幅に小さくなり得る。
図27は、発汗量の時間の関数としてのグラフを、汗滴112の形成と同期していない場合のエレクトロウェッティング波260の周波数の概略図と一緒に示す(上側部分図)と共に、関連する発汗量センサ信号の時間の関数としてのグラフを示す(下側の部分図)。図示の例において、平均発汗率は5nl/分/腺であり、発汗バースト192Aの開始はエレクトロウェッティング波260より0.2秒先行し、その結果、最初の汗滴112は、センサ166に輸送される前に、形成するのにわずか0.2秒しかなかった。このことは、連続するエレクトロウェッティング波260の間の完全な秒の間に形成される汗滴112(0.26秒)と比較して、最初の汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる一層短い時間(0.19秒)に反映されている。
最後の汗滴112は、形成するのに0.8秒を有し、このことは、この汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かった、エレクトロウェッティング波260の間の完全な秒の間に形成される汗滴112よりも短い時間(0.25秒)に反映されている。
図28は、図27に示したものと類似したグラフを示しているが、発汗バーストの開始時及び終了時に、各々、より顕著な上昇傾斜及び下降傾斜を有している。この時点までは、当該傾斜はエレクトロウェッティング装置144の1秒サイクルに対して速いと仮定されていた。しかしながら、ここでは、上昇及び下降に約5秒掛かると考える。この場合、上昇及び下降の間の発汗量は、発汗バーストの中間におけるよりも少ない。
図27に関連して上述したのと同様の理由で、上昇/下降中に形成される汗滴112は、バーストの途中で形成される汗滴112に対して一層小さなサイズを有する。しかしながら、このことは、図28の下側の部分図に示されるように、特徴的なセンサ信号パターンが生成されることにつながる。前述したアルゴリズムは、このようなパターンを認識するか、このような開始効果を無視することができる。後者は、所定の閾値パルス幅を満たすか又は超えるパルス幅を有するパルスのみを考慮することを含み得る。
図28からは、矢印で示されているように、発汗バーストの開始時及び終了時にセンサ信号が欠落していることが分かる。上昇及び下降フェーズの、これらの最端の開始点及び終了点においては、発汗量は非常に小さいため、形成される汗滴112は出口114を部分的に区切る2つのエレクトロウェッティングタイル124と部分的に重なり合わない。これに対応して、該部分的に形成された汗滴112の移動はなく、したがって、センサ信号は記録されない。
発汗バーストの開始時において、汗滴112は、エレクトロウェッティング波の2回目の通過後のみにおいて、輸送されるのに十分な大きさとなり得る。この例において、最初及び2番目に感知される汗滴112は、センサ166を通過するのに同じ時間が掛かる(0.2秒)。上昇中にセンサ166により感知される後続の汗滴112は、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間が増加することから明らかなように、益々大きくなる。バーストの途中では、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間は一定である(0.26秒)。
下降時において、発汗量は減少し、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間が一層短いことから分かるように、それに応じて汗滴112のサイズが減少する。
最初と最後の汗滴112がセンサ166を通過するのに同一の時間が掛かると予想され得るが、上昇の間において最初の汗滴112は2秒内で形成され、下降の間において最後の汗滴112は1秒内で形成される。したがって、最初の汗滴112の接触時間は、最後の汗滴112のものよりも長い。下降時に形成される部分的な汗滴112はセンサ166に輸送されるには小さすぎ、後続の汗バーストにおいて移動される可能性が高い。この部分的な汗滴112は、後続の発汗バースト中に受け取られる新たに形成される汗と組み合わさり得、このことは、この後続の発汗バーストにおける上昇時には欠落したセンサ信号が存在しないことを意味するであろう。
上記の考察は、汗滴112の輸送の開始がエレクトロウェッティング波の印加周波数によっては決定されず、結果として、汗滴112が全て同様の(事前に決定された)サイズのものとなり得る図6に示される装置100の場合とは対照的である。上昇又は下降フェーズの間において、汗滴112は一層ゆっくりと出現し得、連続する汗滴112間の間隔は、バーストの途中で生成される連続する汗滴112間の間隔よりも大きくなり得る。一層大きな汗滴112が感知された場合、これらは、各々のチェンバ102に排出する異なる汗腺108に由来する汗滴112の合体に起因するであろう。
第2の例として、システムは、各々が3つのチェンバ102を備えた3つの装置100を有する。これら3つの装置100の各々に対して発汗量センサ166が設けられる。したがって、該システムは合計で9つのチェンバ102を有する。これらチェンバ102の各々は、直径1130μmの円形の入口104及び直径33μmの円形の出口114を有する(前記例2を参照)。
各入口104の面積が1mm2である場合、何の汗腺108もチェンバ102に排出しない確率(P0)は36.8%であり、1つの汗腺108がチェンバ102に排出する確率(P1)は36.8%であり、2つの汗腺108がチェンバ102に排出する確率(P2)は18.4%であり、3つの汗腺108がチェンバ102に排出する確率(P3)は6.1%であり、4つ以上の汗腺108がチェンバ102に排出する確率(P?4)は1.9%である(前記表1を参照)。
1つの装置100により対応される収集領域が3つのチェンバ102を有する場合、典型的には、汗腺108により汗が供給されない1つのチェンバ102、1つの汗腺108から汗が供給される1つのチェンバ102、及び2つ以上の汗腺108から汗が供給される1つのチェンバ102が存在するであろう。
1以上の汗腺108から生じるセンサ信号パターンは、前述したように、適切に区別できるので、汗腺当たりの平均発汗量は決定することができる。しかしながら、この場合においては、前述した例におけるよりも2以上の汗腺108が同じチェンバ102に排出する一層高い発生率が存在し得る。潜在的な欠点は、ごく少数の場合において、4つ又は5つの汗腺108が同じチェンバ102に汗を排出することがあり得ることである。このことは、特に複雑な重なり合うデータパターンを生じさせ得るが、前記アルゴリズムにおける適切な評価基準の助けにより、該結果は無効であると宣言でき、それに応じてパッチを交換することができる。
より一般的には、各入口104の面積は、例えば、0.05mm2から2mm2の範囲、例えば、0.75mm2から1.5mm2であり得る。このことは、チェンバ102が汗腺108からは汗を受け取るが、センサ信号パターンの解釈が過度に複雑になるほど多くの汗腺108からは受け取らないことを保証し得る。
9つのチェンバ102(各々が1130μmの入口直径を有する)が存在する例において、前記アルゴリズムは前述したように使用され得るが、当該システムの物理的設計は、例えば、100個のチェンバ102を有するシステムよりも単純になり得る。
100個のチェンバ102(各々が360μmの入口直径を有する)が存在する例において、当該システムの物理的設計は一層複雑になり得るが、前記アルゴリズムは、単一の汗腺108による所与のチェンバ102の供給に対応するデータパターンに焦点を合わせることにより単純化できる。余りありそうにないデータパターンは破棄できる。
製造する観点から、各チェンバ102に自身の発汗量センサ166、例えば静電容量又は導電率センサ(このようなセンサの相対的に単純な設計のため)を設けることが現実的であり得る。この場合、当該アルゴリズムは、特定のチェンバ102に排出する1以上の汗腺108を区別する目的のみを果たし得る。
当業者は、感知されるデータの変動を処理するために、より多くのチェンバ102を使用できることを理解するであろう。本例で使用される1cm2当たり100個の汗腺の汗腺密度は、説明のみを目的としていると見なされるべきである。異なる平均汗腺108の密度の場合、チェンバ102のサイズ及び数を、結果を最適化する目的で適合させることができる。例えば、装置100が、相対的に少ない活性汗腺108が存在する皮膚の場所に適用される場合、十分な意味のあるデータを得るために、サンプリングのための皮膚の表面積をそれに応じて増加させることができる。
乳酸(乳酸塩)は、酸素欠乏が発生した場合に細胞により生成されるため、重要なバイオマーカである。血中の乳酸値の上昇はショックの兆候である。ショックには、循環血液量減少性ショック、閉塞性ショック、心原性ショック及び分布性ショックの4つのタイプが存在する。分布性ショックの原因の1つは敗血症である。ショック及び敗血症は、生命を脅かす深刻な障害である。
したがって、汗中の乳酸濃度を目立たないように測定することが非常に望ましい。しかしながら、汗中の乳酸塩の濃度を血中の乳酸塩の濃度と相関させるには、2つの複雑にする要因が存在する。すなわち、(i)汗中の乳酸塩濃度は発汗量に依存し;(ii)乳酸塩は汗腺細胞自体から分泌される;ことである。更に、血液から汗へのバイオマーカの移動は人体内では最大約10分掛かることがよく知られている(これは、臨床的な観点からは許容できる遅延である)。
これまでの本開示は、第1の複雑さ(i)に対する解決策を提供している。第2の複雑さ(ii)に関しては、汗で皮膚上に排出される乳酸の大部分(90~95%)は汗腺自体に由来し、残り(5~10%)は血液に由来し得ることに更に注意すべきである。汗腺細胞自体に由来する乳酸及び血液に由来する乳酸は、何らかの方法で区別する必要がある。
汗腺細胞は神経で神経支配されており、神経パルスが汗腺を活性化する。活性化中において、代謝により間質液が汗腺のコイル状の管状部分に送り込まれる。該代謝はエネルギを必要とし、その結果、酸素が消費される。神経活動が相対的に高い場合、生成される発汗量は増加し、より多くの酸素が必要とされる。酸素の欠乏が、汗腺を代替の(無酸素性)パスウェイに切り換えさせ、これにより乳酸を生成すると考えられる。
しかしながら、汗腺が発汗バースト(約30秒継続する)において汗を生成し、各発汗バーストには休止期間(約150秒継続する)が続くという認識によれば、汗腺細胞は約180秒のオーダの周期を持つ類似の周期的態様で乳酸を生成すると合理的に仮定できる。
更に、血中の乳酸濃度の臨床的に関連する増加は、数時間(例えば、1~3時間)のオーダの著しく異なる時間尺度を有し得る。皮膚上に排出される汗中の乳酸濃度の汗腺関係の及び血液関係の変化に関連する異なる時間尺度を使用して、前者の乳酸源を後者から区別できる。したがって、汗中の乳酸濃度を時間の関数として測定することは、乳酸濃度の汗腺由来の及び血液由来の変化の適切な区別をもたらし得る。
この目的のために、上記の装置、システム、及び方法は、汗中の乳酸濃度を時間の関数として測定するために有用に適用され得る。上述した実施形態の簡単な要約として、汗腺108により生成された汗は、チェンバ102(プレート110により画定される)により個々の汗滴112に変換される。次いで、これらの汗滴112は、前記流体輸送アセンブリにより例えば界面張力法(トポロジ的及び/又は化学的勾配、又はエレクトロウェッティング技術を採用する)又は圧力法を使用してセンサ166に向けて移動される。
この特定の場合において、センサ166は乳酸塩センサを含み得る(しかしながら、他のバイオマーカの時間の関数としての濃度が重要である場合、該特定のバイオマーカに固有のバイオマーカセンサがセンサ166に含まれ得る)。各汗滴112が該乳酸塩センサに接触する(例えば、該センサの検出面を横切る)と、該汗滴112中の乳酸塩の濃度が検出され得る。
上記乳酸塩センサの応答が十分に速いならば、該乳酸塩センサは汗滴112が該センサの検出面を通過するのに掛かる時間を更に感知できる。該乳酸塩センサの応答時間が十分に速くない場合は、前述したように、他のセンサ、例えば静電容量、インピーダンス、導電率及び/又は光学検出器を使用することができる。
上記で詳述した様々な例において、前記流体輸送アセンブリは汗滴を毎秒700μmの速度で輸送するように構成されている。例えば、汗滴112の輸送方向における長さが約60μmの乳酸塩センサによれば、各汗滴112が該乳酸塩センサを通過するのに掛かる時間は、図15を参照して前述したように、汗滴112が半球状である場合は約0.19~0.29秒であり得、汗滴112がセンサ166のチャネル168によりビーム形状の汗滴112に成形される場合は0.15~0.57秒であり得る。
従来の電気化学的乳酸塩センサの応答時間は、最速で1~2秒であり、一般的に1~90秒の間で変動し得るので、汗滴112がセンサ166の検出面上を移動する速度を低下させるための以下の措置が採られ得る。それにもかかわらず、汗滴112が輸送される速度は、同じチェンバ102に由来する汗滴112の合体が起こる程度までには低下され得ないことに留意されたい。
第1の例において、汗滴112は、化学的勾配を介して乳酸塩センサの検出面を横切るように輸送され得る。移動速度は、当該乳酸塩センサの上流(場合により下流)の流体輸送アセンブリにより使用されるものよりも「低いパワー」の化学勾配を使用することにより、当該汗滴112が該乳酸塩センサを介して輸送されている際に低下させることができる。このことは、当該乳酸塩センサと一致する移動方向における単位長当たりの一層小さな局部的親水性/疎水性変化を設けることにより達成できる。
第2の例において、汗滴112は、エレクトロウェッティング装置144を使用することにより当該乳酸センサの検出面を横切って輸送され得る。図29は、例示的なエレクトロウェッティング装置144の一部を示す。エレクトロウェッティングにより駆動される汗滴112の移動は、前述したように一連のエレクトロウェッティングタイル124を帯電及び放電させることにより実行され得る。図29に示される例において、エレクトロウェッティング波は、1から8の番号が付けられたエレクトロウェッティングタイル124にわたって生成される。図29の上側部分図に示される接続構成は、8タイル毎に新しいエレクトロウェッティング波が生成され得るようにする。
したがって、以下の接続構成は、汗滴112を1から32とラベル付けされた一連のエレクトロウェッティングタイル124を横切って一定の速度で輸送するために用いることができる。図29の上側部分図に示されるように(接続構成A)、タイル1はタイル9、17、25に接続され;タイル2はタイル10、18、26に接続され;タイル3はタイル11、19、27に接続され;タイル4はタイル12、20、28に接続され;タイル5はタイル13、21、29に接続され;タイル6はタイル14、22、30に接続され;タイル7はタイル15、23、31に接続され;タイル8はタイル16、24、32に接続される。
エレクトロウェッティング波は、例えば、電気発生器が以下のシーケンスを実施することにより生成され得る。即ち、タイル1(及び接続されている全てのタイル)を帯電させる;0.1秒待機する;タイル1(及び接続されている全てのタイル)を放電すると同時にタイル2(及び接続されている全てのタイル)を帯電させる;0.1秒待機する;タイル2(及び接続されている全てのタイル)を放電すると同時にタイル3(及び接続されている全てのタイル)を帯電させる;0.1秒待機する;タイル3(及び接続されている全てのタイル)を放電すると同時にタイル4(及び接続されている全てのタイル)を帯電させる;0.1秒待機する;タイル4(及び接続されている全てのタイル)を放電すると同時にタイル5(及び接続されている全てのタイル)を帯電させる;0.1秒待機する;タイル5(及び接続されている全てのタイル)を放電すると同時にタイル6(及び接続されている全てのタイル)を帯電させる;0.1秒待機する;タイル6(及び接続されている全てのタイル)を放電すると同時にタイル7(及び接続されている全てのタイル)を帯電させる;0.1秒待機する;タイル7(及び接続されている全てのタイル)を放電すると同時にタイル8(及び接続されている全てのタイル)を帯電させる;0.1秒待機する;タイル8(及び接続されている全てのタイル)を放電する;1秒間待機する;そして上記サイクルを繰り返す。
この接続構成によれば、新しいエレクトロウェッティング波が8タイル毎に生成される。更に、該エレクトロウェッティング波は全て、0.1秒当たり1タイルという同じ速度を有する。エレクトロウェッティングタイル124は、例えば、各々が60μmの輸送方向の長さを有し得、隣接するエレクトロウェッティングタイル124の各対は、輸送方向において10μmだけ互いに分離され得る。したがって、各汗滴112は0.1秒ごとに70μm移動することができ、これは、毎秒700μmの汗滴112の速度に対応する。1秒の期間が連続するサイクルを分割するので、エレクトロウェッティング波の発生周波数は、この特定の例においては1Hzである。
図29の上側部分図に示される接続構成の場合、8つのタイルごとに生成される各々のエレクトロウェッティング波は、効果的に組み合わさって、当該一連のエレクトロウェッティングタイル124の全長にわたって1つのエレクトロウェッティング波を形成する。明瞭化のために、当該接続は2次元で描かれているが、実際には、該接続を形成するためにVIAを3次元で使用できる。後者は、図11に示されるエレクトロウェッティング装置144にも当てはまる。
異なる接続構成(接続構成B)が図29の下側の部分図に示されており、この構成は、当該エレクトロウェッティング装置144の上流側及び下流側部分と比較して、乳酸塩センサを介しての汗滴112の一層遅い移動速度をもたらすように設計されている。これは、前述したように、乳酸塩センサ(例えば、電気化学的乳酸塩センサ)の相対的に遅い応答に対応するためである。
図29の下側の部分図に示されている接続構成Bは、上側の部分図に示されているものと似ているが、タイル1はAとラベル付けされたタイルにも接続され、タイル4はBとラベル付けされたタイルにも接続され、タイル8はCとラベル付けされたタイルにも接続されている。タイルA、B及びCは、当該乳酸塩センサにとり局所的なものである。黒点274は電気的接続を示すが、黒点なしの交差276は電気的接続がないことを意味することに留意されたい。
タイル1が帯電され(タイルAを含む接続されたタイルと一緒に)、0.1秒の遅延が存在し、タイル1が(接続されたタイルと一緒に)放電されると共に、タイル2が同時に帯電され、等々となる。局所的な接続構成により、タイルBはタイルAの0.4秒後に帯電され、タイルCはタイルBの0.4秒後に帯電される。結果的に、当該乳酸塩センサの局所における移動速度は、図29の上側部分図に示された接続構成Aに対し四分の一に減少される。
このように、当該乳酸塩センサを通過する局所的速度は、0.1秒毎に1タイルではなく、0.4秒毎に1タイルとなる。したがって、この例において乳酸塩センサを通過する汗滴112の局所的平均速度は、毎秒175μmである。エレクトロウェッティング波が印加される周波数は依然として1Hzであり得るので、当該乳酸塩センサの領域における汗滴112の制御されない衝突のリスク、すなわち、汗滴112が互いに追いつくことによるリスクは最小化され得る。0.4秒未満しか離れていない汗滴112はタイルA上で合体するであろうが、一般的に1秒の分解能で十分であり得るので、このことは問題を課すことはないであろうことに留意されたい。更に、当該乳酸塩センサの検出面がタイルA~Cと同じ面積にまたがる場合、例えば、該乳酸塩センサの検出面がエレクトロウェッティングタイルA~Cと対向することにより、該乳酸塩センサとの接触時間が増加され得る。
前述したように、移動速度が毎秒700μmの場合、各汗滴112が当該乳酸塩センサを通過するのに掛かる時間は、汗滴112が半球状である場合は約0.19~0.29秒であり得、汗滴112がビーム状の汗滴112である場合は0.15~0.57秒であり得る。しかしながら、汗滴112を4倍遅く輸送するエレクトロウェッティング波が使用される場合(例えば、接続構成B)、汗滴112が該乳酸塩センサを通過する最短時間は、0.60秒に延長され得る。更に、前記検出面が3つのエレクトロウェッティングタイル124にまたがるシナリオにおいては、当該センサとの汗滴112の合計接触時間は1.80秒となるであろう。これは、従来の乳酸塩センサの最短応答時間よりも長い。
当該接続構成は、センサ166の局所におけるステップ持続時間が1秒以上とはならないようなものであり得ることに留意されたい。このことは、該局所における汗滴112が1秒のサイクル時間のエレクトロウェッティング波により輸送される汗滴112に追いつかれ、これにより、制御されていない汗滴112の衝突が発生されるという危険性を生じさせ得るからである。
3つの局所タイル(A、B及びC)の繰り返しは、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間を更に延長できる。例えば、接続構成Bにおける斯かる3つのタイルの4つの連続する組(ABCABCABCABC)は、汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間を2.40秒に増加させ得る。同時に、当該検出面の面積もこれらの12個のタイルにまたがるように拡大された場合、接触時間は9.60秒に延長され得る。このセンサ166を介しての局所的な減速の後、当該速度は、第1の接続構成Aを適用することにより、センサ166の下流で再び増加され得ることに留意されたい。勿論、前記3つの局所的タイル(A、B及びC)の更なる繰り返しにより、センサ166との接触時間を更に増加させることもできる。例えば、10回の繰り返し、及びセンサ166の検出面がこれらのタイルにまたがることを保証することで、約60秒の接触時間を達成できる。エレクトロウェッティング波のサイクル時間を1秒から2秒に増加させることは、一見すると、センサ166との接触時間を増加させる手段を提供するように見えるが、このことは、汗滴112の成長も引き起こし、より大きなタイルの使用を必要とし、接触時間の増加を打ち消し得る。
当該乳酸塩センサとの各汗滴112の接触時間が該乳酸塩センサの応答時間と合致され得ることが確立されたなら、当該システムは、これに対応して、汗滴112当たりの乳酸塩濃度を測定するために使用できる。発汗率に依存して、典型的に汗腺108の発汗バースト当たり5から30の汗滴が乳酸塩センサに輸送され得る。このようにして、時間の関数としての乳酸塩濃度を決定できる。
先に簡単に説明したように、発汗バーストの時間尺度において、血液に由来する乳酸の実質的に一定の寄与が存在し得、汗腺細胞により生成される乳酸の変化する寄与が存在し得る。例えば、血液由来の乳酸は3分の期間の間実質的に変化しないままであり得る一方、汗腺により生成される乳酸は汗腺の3分間のサイクル時間に従って変化し得る。
本開示の装置、システム及び方法は、汗中の乳酸濃度の時間の関数としての変化を密に監視することを可能にし得る。換言すれば、本開示は、汗腺における乳酸生成の動態が相対的に高度の詳細さ/解像度で観察されることを可能にし得る。発汗バースト中の汗腺における乳酸生成の動態は、血中の乳酸のみに由来する汗中の実質的に一定の乳酸塩濃度とは異なる可能性が高い。
結果的に、例えば、適切なフィルタリング技術を使用することにより、各々の時間尺度を決定でき、血中の乳酸に由来する汗中の乳酸塩濃度を決定できる。このようにして、乳酸血中値及び汗中の乳酸値との間の信頼できる相関関係を確定することができる。正確な相関関係を見つける必要はないかもしれないが、時間にわたる乳酸塩濃度の増加又は減少傾向は、血液と汗との間を相関させるはずである。最低限、本開示は乳酸の動態の問合せを可能にし得、このことは、乳酸塩濃度の汗腺由来の及び血液由来の変化の時間尺度に基づく区別が可能であることを検証するための前提条件である。
図30の上の部分図は、30秒の発汗バーストの間における発汗量センサ信号の時間の関数としてのプロットを示す。この例においては、0.4nl/分/腺の平均発汗率で排出する1つの汗腺が存在する。図30の左下及び右下の部分図は、汗腺代謝の関数としての変化する乳酸塩濃度のための2つの妥当なモデルを示す。血液由来の汗中の基底レベルの乳酸塩濃度278が、左下及び右下の両方の部分図に示されている。30秒の期間において、この基底レベルは実質的に一定であるが、例えば、差し迫った感染が存在する場合は上昇し得る。
図30の左下の部分図に示されているモデルは、汗腺バーストの間において、汗腺細胞は特定の最大値まで益々高くなる乳酸塩濃度を生成し、その後、この濃度が再び減少することを示している。
図30の右下の部分図に示されているモデルは、各発汗バーストにおいて乳酸塩濃度は増加し、続く休止期間中において該乳酸塩濃度は、組織への逆拡散のため、緩やかにのみ減少することを示している。後続の各汗バーストにおいて、乳酸塩濃度は更に増加し、最後に、複数の発汗バーストの後、最終最大値に達し、更なる神経刺激にもかかわらず、汗腺は一層長い時間にわたり不活性になる。
基底レベルの乳酸塩濃度は数時間にわたってゆっくりとしか変化せず、この基底レベルの乳酸塩濃度は10回の発汗バースト(約30分の期間と等価)内では実質的に一定と見なせることは注目に値する。したがって、発汗バースト間のランダムな偏差は、真の濃度変化というより、乳酸塩センサの応答の変化に起因し得る。したがって、このような観察は、乳酸塩センサが何時較正されるべきかを示すために使用でき、例えば、図31を参照して以下で更に説明されるように、乳酸塩センサのオンライン較正を起動する。
もっと一般的には、センサ166は、汗中に存在するバイオマーカの濃度を決定するためのバイオマーカセンサを有し得る。該バイオマーカセンサには、前述したように、装置100により汗滴112が供給され得る。この点に関し、該バイオマーカセンサは、発汗量センサとして機能することを目的とする静電容量、インピーダンス、導電率及び/又は光学センサの代替として、又はそのような発汗量センサに加えて設けることができる。当該バイオマーカセンサが斯様な発汗量センサに加えて設けられる場合、該バイオマーカセンサは、発汗量センサと直列とされるか、又は並列の独立したマイクロ流体回路のいずれかであり得る。
当該バイオマーカセンサは、それ自体、各汗滴112を感知すると共に、汗滴が該バイオマーカセンサの検出面を通過するのに掛かる時間を測定するよう機能するものであることを繰り返し述べる。これは、バイオマーカセンサの感度が相対的に高いことによる。このようなバイオマーカセンサは、ブドウ糖等のバイオマーカの相対的に低い(例えば、サブミリモルの)濃度を感知することを必要とされる傾向があるからである。したがって、バイオマーカセンサは、汗滴112をカウントすると共に、各汗滴112のセンサ166との接触時間を測定するために使用するのに十分な感度があり得る。したがって、当該システムは、前述したように、幾つかの例ではバイオマーカセンサのみを用いて実施化され得る。追加の汗流量センサを省略することは、有利にも、当該システムの複雑さを低減できると共に、エネルギも節約でき、したがって、当該システム又は該システムの少なくとも一部が含まれる汗パッチの動作寿命を延ばすことができる。
当該バイオマーカセンサは、個別の汗滴112が該バイオマーカセンサを通過する間においてバイオマーカ濃度を連続的に測定するために、バイオマーカ濃度の変化に十分に迅速に応答しなければならない。通常、半連続的モニタリングに使用される電気化学センサは、酵素毎に1秒当たり100回を超える変換を含み得る酵素変換ステップに基づいている。1秒の応答時間が報告されている(例えば、前述した乳酸塩検知例を参照されたい)。したがって、電気化学センサは、本システムに適用するのに十分に迅速に応答し得る。
しかしながら、バイオマーカセンサは頻繁な較正及び/又はプライミングを必要とし得る。これには、バイオマーカセンサの徐々の化学的劣化、電子部品に関連するドリフト、一層高い又は一層低い温度及び湿度等の環境条件の変化、大気圧の変化、関心の対象分析物の相対的に高濃度への曝露、バイオマーカセンサが硬い表面上に落下され若しくはぶつけられ又は液体に浸される場合等の過酷な保管及び動作条件、並びにセンサごとの製造のばらつきを含む幾つかの理由が存在する。
バイオマーカセンサのオフライン較正は、当該システムが被験者の監視に使用されている場合、ワークフローに悪影響を与える可能性がある。したがって、以下に説明するように、当該システムはオンライン較正を可能にするように構成され得る。
一例において、当該システムは、バイオマーカセンサ用の較正流体(較正液)を貯蔵するための貯留器、及び該較正液をバイオマーカセンサに滴下して供給するための投与装置を含む。
当該バイオマーカセンサ(例えば、電気化学的バイオマーカセンサ)への較正液の滴下供給を実施するための様々な方法が考えられる。該較正液は、バイオマーカセンサを較正するために必要とされる溶解された較正成分を既知の濃度で含む。前記貯留器は、例えば、最初に使用する前に、不可逆的にバルブを開くことにより呼び水され、これにより該貯留器を当該システムの残りの部分に流体的に接続できる。このような「ブレーカー」は、輸血技術において、斯様な密封された液体の容器を不可逆的に開ける手段として一般的に使用されている。
較正成分を含むだけでなく、当該較正流体は、例えば、結果として生じるバイオマーカセンサの読み取り値を安定化するための追加の成分を更に含み得る。これらの追加の成分には、例えば、汗にも存在するタンパク質が含まれ得る。汗においては斯様なタンパク質は種々の濃度で存在し得、したがってセンサ測定に種々の程度で影響を与え得るが、当該較正液では、これらのタンパク質は一定の相対的に高い濃度で存在し得る。このことは、該追加の成分にバイオマーカセンサに対する吸収及び相互作用を飽和させ得、これにより、関心のバイオマーカ(又は複数のバイオマーカ)の濃度により実質的又は単独で支配される一層安定したセンサ出力を生成する。
図31に示されるように、投与装置278は較正液滴を導管280に注入するように構成でき、該導管280は較正液滴をバイオマーカセンサ(図示されていない)に受け渡す。流体輸送アセンブリに関連して前述したタイプの化学的及び/又はトポロジ的な(すなわち受動的な)勾配を、例えば、該較正液滴をバイオマーカセンサに輸送するために使用できる。
投与装置278は、例えば、貯留器282から導管280への較正液滴の注入を制御するための弁を含み得る。該弁は、較正液滴がバイオマーカセンサに供給されるべき都度に、該較正液滴の注入を、閉状態から開状態へ及びその逆に切り換えることにより制御できる。該較正液滴は、次いで、導管280を介してバイオマーカセンサに輸送され得る。
図31に示されるように、導管280は汗滴112をセンサ166に輸送する通路284に出会う。該通路284は、例えば、前述したように、プレート110と他のプレート128との間に設けられる。この点に関し、上記導管は当該流体輸送アセンブリの一部であると見なすことができる。汗滴112と同様に、当該較正液滴は、矢印126A及び126Bにより表される化学的及び/又はトポロジ的勾配に沿ってバイオマーカセンサに輸送され得る。
他の例として、較正液滴はエレクトロウェッティング装置144のエレクトロウェッティングタイル124を介してバイオマーカセンサに輸送できる。そのような例において、投与装置278は較正液滴を貯留器282から導管280に注入するための弁を含む。しかしながら、代替例において、該投与装置もエレクトロウェッティングタイル124を有し、エレクトロウェッティング波がエレクトロウェッティングタイル124を介して較正液滴を貯留器282からバイオマーカセンサに向かって移動させ得る。
導管280内のエレクトロウェッティングタイル124は前記流体輸送アセンブリのエレクトロウェッティングタイル124と出会い得る。前記電界発生器は、例えば、汗滴112を輸送するために使用されるエレクトロウェッティング波の間において、導管280のエレクトロウェッティングタイル124にエレクトロウェッティング波を供給できる。このようにして、較正液滴は、通路284の一連のエレクトロウェッティングタイル124に沿って供給される更なるエレクトロウェッティング波によりバイオマーカセンサに輸送される前に、導管280及び前記流体輸送アセンブリの通路284の両方に共通なエレクトロウェッティングタイル124に到達できる。
より一般的には、当該システムは、較正液滴のバイオマーカセンサへの輸送のタイミングを、該較正液滴が移動している汗滴112と一致しないように制御するよう構成される。これにより、該システムは較正液滴と汗滴112との間を、汗滴112の輸送に対する較正液滴の投与のタイミングにより区別する。
他の例において、較正液滴は圧力勾配によりバイオマーカセンサに輸送できる。該圧力勾配は、較正流体を大気圧より高い圧力、例えば約3~4バールで貯留器282に貯蔵することにより付与できる。したがって、投与装置278の前記弁のセンサ166側の圧力は、貯留器282内の圧力より低く(例えば、ほぼ大気圧に)なり得る。このような加圧は、例えば、加圧空気を使用して達成できる。
前記弁が開かれると、較正液滴は上記圧力により(導管280を介して)バイオマーカセンサにつながる通路284に送り込まれる。
図32は、汗感知システム300の非限定的な例を概略的に示している。明瞭化のために単一のチェンバ102しか示されていないが、汗は種々のチェンバ102により収集される。この例において、汗は入口104を介してチェンバ102に入り、半球状の汗滴112が形成されて出口114からはみ出る。該汗滴112は、特定のサイズ/体積に成長すると、出口114に対向する他のプレート128に接触し得、そして該他のプレート128上へと放出される。該他のプレート128には、この例では、図6を参照して前述したように、汗滴112をセンサ166に輸送するための一連のエレクトロウェッティングタイル124が設けられている。
このケースにおける流体輸送アセンブリは、図12に関連して前述した分岐構造を有するが、図32は、明瞭化のために、チェンバ102をセンサ166に流体的に接続する経路のみを示している。表示の簡略化のために、図32のシステムで使用されるエレクトロウェッティング装置144については、限られた数のエレクトロウェッティングタイル124しか示されていないことにも留意されたい。
図32に示されるシステム300の流体輸送アセンブリは、他のプレート128及び側壁を含み、これらはセンサ166への移動中の汗滴112の蒸発を最小化するための囲まれた通路を少なくとも部分的に画定する。
この例において、出口114と他のプレート128の下面との間の距離130は、通常、150μmである。この距離130は、前述したように、汗滴112のサイズ/体積を規定し得る。タイル1におけるエレクトロウェッティング波の開始に続いて、汗滴112はセンサ166の方向に輸送される。
センサ166はチャンネル168を含み、該チャンネルは、前述したように、汗滴112の各々がチャネル168の断面にまたがる汗滴112の頭部及び尾部にメニスカスを形成するように寸法が定められる。この点に関し、この例においては、上記チャネルの高さ(約30μm)は前記通路の高さ(約150μm)に比べて減少される。
A1、B1、C1;A2、B2、C2;A3、B3、C3;及びA4、B4、C4とラベルが付されたエレクトロウェッティングタイルを各々有する複数のエレクトロウェッティング経路188が、チャネル168内に設けられている。センサ166は複数のセンサモジュール190を有し、これらセンサモジュール190の各々は、対応するエレクトロウェッティング経路又は複数の経路188により輸送されている汗を感知するよう構成されている。
上記センサモジュール190の各々は、例えば、発汗量センサ及び/又はバイオマーカセンサを含み得る。この目的のために、チャネル168は、例えば、該チャネル168の1以上の表面に取り付けられた電極及び/又はバイオマーカ感知面を備え得る。上記発汗量センサは、チャネル168を通過する汗滴112の数がカウントされることを可能にすると共に、各汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間を感知することを可能にする。該発汗量センサは、例えば、容量センサ、インピーダンスセンサ、導電率センサ及び/又は光学センサを含み得る。上記バイオマーカセンサ(又は複数のセンサ)は汗滴112当たりのバイオマーカ濃度を決定するが、該バイオマーカセンサは、それ自体で、前述したようにして汗滴112の数がカウントされること及び/又は各汗滴112がセンサ166を通過するのに掛かる時間を感知することも可能にし得る。
他の例として、システム300は、図32に示されるセンサ166の下流に更なるセンサ166(図32では見られない)を含み得る。この点に関し、発汗量及びバイオマーカセンサは、例えば、汗滴112の移動経路に沿って互いに異なる場所に設けられ得る。17~24とラベル付けされたエレクトロウェッティングタイル124は、汗滴112を、そのような追加の下流側センサ及び/又は廃棄物容器に輸送することができる。
タイルA1~4、B1~4及びC1~4により画定された領域において、汗滴の移動速度は、図29に関連して前述された電気的接続構成を介して遅くすることができる。
1から24とラベル付けされたエレクトロウェッティングタイルに沿って通過するエレクトロウェッティング波の間において、一定の間隔で、IからIVとラベル付けされたエレクトロウェッティングタイル124が活性化され、これにより、較正液の液滴が13とラベル付けされたエレクトロウェッティングタイル124に輸送される。該較正液滴は、その後、1~24とラベルが付されたエレクトロウェッティングタイルに沿って通過する後続のエレクトロウェッティング波を介して、センサ166に、例えばバイオマーカセンサに移動され得る。次いで、該較正液滴中の既知のバイオマーカ濃度が測定され得、必要に応じて、当該汗滴112中の該測定されたバイオマーカ濃度に対する補正が、それに対応して、適用され得る。
図12に示された装置100は、完全に発達された汗滴112と完全には発達されていない汗滴112との衝突を防止する助けとなり得るが、皮膚106にアクセスする収集チェンバ102の密度を増加できる他の装置100が提案される。
例えば、25μmの高さを有するチェンバ102を充填することは、余り動かない状態の人にとって数時間かかる可能性がある。しかしながら、装置100に一層小さな容積の一層多くのチェンバ102を設けることは、チェンバ102が満たされるのに要する時間を短縮する助けとなり得る。この目的のために、図33は、チェンバ102の密度が増加された装置100の一部を示している。
該装置100は少なくとも1つの第1の通路(トラック)を有し、該少なくとも1つの第1のトラックのうちの1つのトラック406Aが図33に見られる。該少なくとも1つの第1のトラックの各々は、皮膚106の表面から汗を受け取る複数のチェンバ102を有する。該少なくとも1つの第1のトラックの各々は、第2のトラック408に流体的に結合されている。
この例におけるチェンバ102は円筒形であり得る。このことは、チェンバ102の密度を増加させ得るからである。
図33に示される例において、第1のトラック406Aのチェンバ102は、各々、プレート110により画定されている。チェンバ102の1以上を汗で満たすことに続いて、前述したように、1以上の汗滴112が1以上の対応する出口114からはみ出し得る。
第1のトラックのうちの少なくとも幾つか(例えば、各々)は、第2のトラック408に対して垂直に延在できる。図33に示す例において、第1のトラックは各々y軸に平行に延在し、第2のトラック408はx軸に平行に延在する。
図33に示される例において、汗滴112は、以下に詳細に説明されるように、電極124Bを含むエレクトロウェッティングアセンブリを介して、第1のトラック406A及び第2のトラック408に沿ってセンサの方向に輸送される。当該流体輸送アセンブリの代替的設計(例えば、前述した搬送流体を使用する)も考えられる。
図33に示される非限定的な例において、各々の第1のトラック406Aは6つの円筒状チェンバ102を有するが、2、3、4、5、7、8又はそれ以上等の他のチェンバ102の数(及び形状)も考えられる。
図33に示されるように、各チェンバ102はz軸と平行に向けられ、プレート110により画定される。
プレート110は皮膚106に当てて配置され、円筒状チェンバ102の入口104は皮膚106のサンプリング部位に配置される。図示されるように、各円筒状チェンバ102の出口114は第1のトラック406Aに出る。
第1のトラック406A及び第2のトラック408の各々は、2つの物理的境界、すなわち、(i)出口114を区切るプレート110、及び(ii)他のプレート128を有し得る。第1及び第2のトラックは、必ずしも側壁を有さない。スペーサーが、例えば、収集プレート110と他のプレート128との間の距離を定めることができる。
装置100は、第1のトラック406Aと直接接触する疎水性層404の下に配置された導電層402、例えばインジウムスズ酸化物層を有し得る。該導電層402は接地電極として機能し得る。
他のプレート128は、第1のトラック406Aと直接接触する疎水性層124Aを有し得る。この疎水性層124Aに隣接するものは、少なくとも1つの誘電体層124C(例えば、1つ、2つ、又はそれ以上の誘電体層124C)である。当該エレクトロウェッティングアセンブリの電極124Bが、上記少なくとも1つの誘電体層124Cに隣接して配置される。このように、少なくとも1つの誘電体層124Cが、電極124Bと疎水性層124Aとの間に配置される。
第1のトラック406Aにおいて、各出口114は、整列された電極を有さない第2のトラック408から最も遠い出口114を除いて、当該エレクトロウェッティングアセンブリの電極124Bと整列されている。
第2のトラック408には、チェンバ102は存在せず、したがって出口114も存在しない。このように、第2のトラック408は、このような例では、汗滴112を少なくとも1つのセンサ(図33では見られない)に輸送するためにのみ使用され得る。
図34は、収集プレート110の一部の平面図を示している。図35は、他のプレート128の一部を示すもので、特に、当該エレクトロウェッティングアセンブリの電極124Bを示している。
図36は、図34及び35に示された平面図の重ね合わせを示している。図38は、図36の重ね合わせを示すものであるが、2つの汗滴112が第1のトラック406A及び406Cに沿って輸送されている。
図37Aは、図34~図36に示された出口114の設計に対するチェンバの代替的出口114の平面図を示す。この例において、出口114の半径は、汗滴112と出口114との間の接触線の長さを最小にするために、減少されている。他の収集チェンバ102の出口114における完全に発達された汗滴112の固定のリスクは、それに応じて低減され得る。
このことは、代わりに又は加えて、図37Bに示されるように、各々の対向する電極124Bに対して心を外して配置された出口114を利用することにより達成できる。
より一般的に言うと、この例の装置100の場合、完全に発達した汗滴112と、完全には発達していない汗滴112との衝突をほとんど防止でき、さもなければ問題となる汗滴112の体積を生じるであろう。
電極124Bは、前述したように、これら電極124Bを順次帯電/放電させることによりエレクトロウェッティング波を生成するために利用できる。電極124Bは、図39に示すように互いに電気的に結合でき、結果として、エレクトロウェッティング波を第1及び第2のトラック406A~D及び408にわたって連続的に移動させるべく電極124Bを帯電/放電させるために、この例では、5つの電気接続部のみが必要とされ得るだけである。このように、当該エレクトロウェッティングアセンブリの複雑さは、例えば全ての電極124Bが個別に帯電/放電されるエレクトロウェッティングアセンブリと比較して低減され得る。
複数のVIA412、例えば導電性貫通孔(スルーホール)を使用することができ、インターフェースコネクタに対して5つの電気的接続(410)がなされる、図39に示されるような相対的に単純なアセンブリを提供できる。他の例として、VIA412の数を減らすために、各電極124Bに、例えば、受動型電気帯域幅フィルタを取り付けることができ、該帯域幅は、同じ数(図39に示す例においては、「1」、「2」、「3」、「4」又は「5」)で番号が付された全ての電極124Bに対して同一である。後者の場合、1つの電力線上で5つの異なるAC周波数を使用して、電極124Bを順次活性化することにより、エレクトロウェッティング波を生成することができる。
図35、図36、図38及び図39に示される例においては、正方形の電極124Bが明らかとなっているが、これは限定することを意図するものではない。図40及び図41は、六角形の電極124Bが使用される代替例の平面図を示す。このようにして、チェンバ102/出口114の密度を増加させることができる。
図41及び図42に示される例において、エレクトロウェッティング波は、第1のトラック406A~Jにおける1から5と番号が付された電極124Bを帯電/放電させることにより誘起される。第2のトラック408における第2のエレクトロウェッティング波は、1から4の番号が付された電極124Bを順に帯電/放電させることにより誘起される。
図42は、図40及び図41に示される装置100を使用して輸送される汗滴112を示している。図43は、図41及び図42に示される電極124Bの電気的接続を示す。図39を参照して前述した例と同様に、図43に示される例の電極124B、例えば、電極124Bの大部分は、VIA412を使用して接続できる。
図43に示される装置100の部分は、「収集ユニット」と呼ぶことができる。この例における収集ユニットは、10個の第1のトラック406A~Jを有し、合計で60個の出口114を備えている。第2のトラック408には、20個の電極124B及び15個のVIA412が存在する(図示された電極124Bのうちの3つ、及び図示されたVIA412のうちの2つは、後続の収集ユニットからのものである)。
図44は、「スネークハイウェイ及び収集ユニット」と見なすことができる例示的な装置100を示しており、該装置は、3つの収集ユニット、例えば図43に示される収集ユニットを3つ含む。矢印416はセンサ(図44には見られない)を指し、矢印418は第2のトラック408の開始を指す。
例えば、5つの収集ユニットを行に及び4つの収集ユニットを列に組み合わせること等により、様々な代替の「スネークハイウェイ及び収集ユニット」アセンブリを想定することができる。収集ユニットの数及び配置は自由に選択できる。
ステップ状に進むエレクトロウェッティングのために使用されるタイルは、「スネークハイウェイ及び収集ユニット」を形成するのに非常に適しており、この例示的な装置100を、前述したように相対的に少数のVIA412を使用して実際に実施化するのを容易にさせることに留意されたい。
図45は、代替的な電気接続設計を有する装置100を示している。電極124Bを導電経路と、トラック406A~L、408に対して対角線状に接続することにより、VIAの数を大幅に減らすことができる。例えば、幾つかのユニットを上から下へのジグザグ態様で(対角の向きを90度切り換えることにより)接続することは、僅かなVIAのみが装置100の上部及び下部で必要とされ得ることを意味する。この例においては、第1及び第2のトラック406、408が電気的に接続され得る一方、図39、図43及び図44に示される例においては、第1及び第2のトラック406、408は異なる電気的接続を採用する。
注目に値するのは、センサから最も遠い位置にある出口114から発生する汗滴112が該センサに到達するのに掛かる時間である。この計算のために、センサは図44に示されるスネーク(蛇行)の端部に配置され、約240個の電極124Bに相当すると仮定できる。0.5秒で或る電極から次の電極にステップ的に進行する(歩進する)エレクトロウェッティング波によれば、移動時間は約2分になり得る。0.1秒の歩進時間を利用する場合、移動時間は24秒になるであろう。
限定するものでない例において、各第1のトラックは6つの出口114を含み、各出口114は、汗をチェンバ102に排出する汗腺108に対応し得る。したがって、所与の出口114に関連する汗腺108が存在し得るか又は存在しない。直径が30μmである円筒形のチェンバ102を仮定すると共に、汗腺108が40μmの直径で皮膚106に露出し、チェンバ102と正確に整列され得るか又はチェンバ102にかろうじて接触し得ると仮定すると、チェンバ102は直径110μmの円に近い皮膚表面にアクセスできる。これは、約9.5x103μm2の皮膚表面積を構成する。6つのチェンバ102を備えた第1のトラックの場合、これは、約5.7x104μm2の汗を収集するための合計のアクセス可能な皮膚表面に相当する。余り動かない状態の人、例えば患者の場合、皮膚106のcm2当たり約7から10個の活性汗腺が存在し得る。これは、腺当たりの十分に信頼できる平均発汗量を得るために監視されるべき活性汗腺108の最小数と見なされ得る。したがって、発汗モニタリングのために評価されるべき最小皮膚表面は、1cm2に設定できる。しかしながら、高い活動状態にある人又は身体を冷やそうとしている患者は、通常、1cm2当たり最大で100個の活性汗腺を持つ可能性がある。活性汗腺108が多いほど、完全に発達した汗滴と完全には発達していない汗滴との間の液滴衝突が多く発生し得る。したがって、完全に発達した汗滴112と完全には発達していない汗滴112との間の衝突の数を決定するために、cm2当たり100個の活性汗腺が更なる説明のために使用される。
かくして、汗の収集のための1cm2の皮膚表面にアクセスするために、1754の第1のトラックが必要とされ得る。活性汗腺の数は、身体の位置の間で変化し得ると共に、人毎にも変化し得る。これらの数が更なる説明のために以下では使用されるが、当業者であれば、他の数も例えば身体位置に応じて使用でき、したがって、当該装置100及び方法は、それに応じて適合できることを理解することができる。
平方センチメートル当たり100個の活性汗腺、及び第1のトラック当たり6個のチェンバ102により汗を収集するためのアクセス可能な皮膚表面、5.7x104μm2を考慮すると、平均して、指定されたアクセス可能な皮膚表面積に0.057の活性汗腺が存在し得る。ポアソン分布方程式:
PX = [ <x>x / x! ] * exp(-<x>)
(ここで、PXは第1のトラックにとりアクセス可能な皮膚表面積内にx個の活性汗腺が存在する確率、<x>は該特定の皮膚表面積における活性汗腺の平均数、及びx!係数はxの階乗値である)によれば、下記の確率を決定できる。
P0=0.9446
P1=0.0538
P2=0.0015
これらは、各々、第1のトラックに汗を排出する活性汗腺がない、1つの活性汗腺がある、及び2つの活性汗腺がある可能性である。これらの数値は四捨五入されるが、その後の計算では小数点以下8桁が使用される。第1のトラックにおいて汗滴の形成に寄与する2以上の活性汗腺が存在し得、完全に発達した汗滴が完全には発達していない汗滴に当たる相当の可能性が存在し得る。更なる計算のために、最悪のケースとして、2以上の活性汗腺の発生の確率は、完全に発達した汗滴と完全には発達していない汗滴との間の衝突の確率に等しいと仮定され得る。
第1のトラック上で液滴が衝突しない可能性と、完全に発達した汗滴が完全には発達していない汗滴と衝突する可能性との間の係数を計算するために、以下の可能性が評価される。
P>1=1-(P0+P1)=0.00156
P>2=1-(P0+P1+P2)=0.00003
これらは、各々、第1のトラック当たり2以上の活性汗腺及び3以上の活性汗腺が発生する可能性である。ここでも、これらの数値は四捨五入されるが、小数点以下8桁が後続の計算で使用される。
1つの活性汗腺が発生する可能性と2以上の活性汗腺が発生する可能性と間の比は:P1/(1-(P0+P1)=34.4
である。
このように、34回の測定のうち約1回で、汗滴は1から2の完全に発達した汗滴の範囲の不定なサイズを有し得る。これは、測定の2.9%が不定の液滴サイズを示すことに相当する。前述した減算アルゴリズムによれば、2.9%の残差は許容できる。更に、より大きな汗滴(合併された完全に発達した汗滴+完全には発達していない汗滴)は、依然として、完全に発達した汗滴+何らかの未確認の汗滴として識別できるので、すでに許容できる残留物が減少する。
第1の考察においては、完全に発達した液滴のサイズを有する所与の汗滴は、完全に発達した汗滴のサイズで融合した完全には発達していない2つの汗滴;又は完全に発達した汗滴のサイズで融合した3つの完全には発達していない汗滴;に帰され得る。しかしながら、これは不可能であり得る。完全にまで発達していない液滴は第1のトラック(のエレクトロウェッティングアセンブリ)により輸送され得ないからである。
他の考察においては、2つの完全に発達した汗滴のサイズを有する所与の汗滴は、2つの融合された完全に発達して汗滴;又は完全に発達した汗滴の合計サイズを持つ2つの液滴と融合した完全に発達した汗滴;に帰され得る。後者の構成は、3つの活性汗腺が1つの第1のトラックに汗を排出することを必要とする。1つの活性汗腺が発生する可能性と3以上の活性汗腺が発生する可能性との間の比は:
P1/(1-(P0+P1+P2)=1820
である。
これは更に小さな残差を構成し得る。
完全に発達した汗滴の間ではサイズに幾らかの変動があり得ることに注意されたい。汗滴は、通過するエレクトロウェッティング波の直前又は通過するエレクトロウェッティング波の直後に完全に発達した状態に達する可能性があるからである。発汗量センサは、汗滴の数だけでなく通過時間(汗滴のサイズとの関係で)もカウントできるので、汗滴当たりの正確な汗の量を依然として決定できる。前記分析から、35回の測定のうち1回は、汗滴のサイズが誤って識別され得る。それにもかかわらず、当該信号の大部分は汗滴の正しいサイズを表し得、前述したアルゴリズムを使用して、許容可能な残差に到達できる。
更に、完全に発達した汗滴は、第2のトラック上で他の完全に発達した汗滴と衝突する可能性があることに留意されたい。幸いなことに、このことは、ほとんど困難さを提起しない。例えば、2つの完全に発達した汗滴が衝突した場合、2倍大きな体積を持つ合体汗滴が形成され、これは、前述したように、当該発汗量センサにより容易に認識できる。このことは、例えば、2倍のサイズの汗滴に対して事前に明確に定義され得るパルス幅を調べることにより達成できる。実際に、ほとんどの汗滴は単一の/融合していない汗滴であり得るので、このような汗滴のベースラインサイズを確定することができる。
[チェンバ表面積の計算]
典型的な表面積は、約0.1から1の活性汗腺を有し得る。そのようであることは、前述したように、当該装置が汗腺当たりの発汗量の決定のために使用されることを助け得る。
身体の位置に応じて、1cm2の皮膚面積当たり50から600の間の汗腺が存在する。
余り動かない状態では、これら汗腺のうちの約10%が活性汗腺を構成する。激しい運動に関わっている及び/又は相対的に高い温度に曝されている人の場合、活性汗腺は100%に近くなり得る。その結果、活性汗腺の数は、cm2の皮膚面積当たり5から600個の汗腺のオーダで変化する。これは、1mm2の皮膚面積当たり0.05~6個の活性汗腺に相当する。
下記は、必要な表面積の計算を示す。
これらの表面積は、幾つかの例においては、1つのチェンバに帰属され得る。
チェンバの充填時間は、例えば、更に、1分程度ではあるが30~60分を超えることはない最大値を有し得る。後者の場合、2つの決定の間の時間は非常に大きくなるので、用途に依存して臨床的関連性が争われ得る。好ましくは、全ての用途をカバーするために、チェンバの充填時間は、数秒から数分のオーダとされ得る。
余り動かない状態での発汗量は、1つの汗腺に対して0.2nl/分のオーダであり、これは1秒当たり3.3x103μm3に相当する。運動をしている人の場合、これは1つの汗腺に対して5nl/分に達し得る。例外的なケースにおいて、発汗量は例えば5nl/分等のように更に高くなり得、これは毎秒8.25x104μm3に相当する。
チェンバの充填時間を計算するために、10μmの例示的チェンバ高を導入する。充填時間は、チェンバの容積を発汗量で割ったものに等しい。
明らかに、余り動かない状態の人のチェンバ充填時間は、全ての汗腺表面積密度に対して最大充填時間要件を満たすことができない。したがって、チェンバの容積は一層小さくなければならず、下の表において、範囲が決定される。
この場合、最大充填時間は最大で1分のオーダである。
分析上の理由から、少なくとも5~10個の活性汗腺が測定され得る。汗腺ごとの発汗量には多少のばらつきが存在し得るからである。
例えば、(i)1mm2当たり0.1の活性汗腺という活性汗腺表面積密度、及び(ii)平均して10個の活性汗腺が測定されるべきことを考慮すると、100mm2(1 cm2)の皮膚表面積がサンプリングされることを要する。以下の表には、種々の汗腺密度に対する計算が示されている。
余り動かない状態の、少数の活性汗腺の患者の場合、少なくとも1cm2の皮膚面積が必要とされ得る。
相対的に小さなチェンバの適切な表面積は、0.0078mm2のオーダであり得、100μm直径を構成する。直径の適切な範囲は、50~200μmの間である。
このような小さなチェンバの数は、12800(100mm2/0.0078mm2)のオーダであり得る。適切な範囲は、3200~51200の間である。
当該装置の設計においては、例えば図33~図45に示された例におけるように、個々の小さなチェンバを全てエレクトロウェッティング経路に入るようにできる。
他の例として、当該装置の設計においては、図12に示された例におけるように、多数の個別の小さなチェンバ及び汗滴を単一の経路に向かって収束させることもできる。例えば、100個の小さなチェンバは全て1つの経路を経由して出力する。このようにすることで、概念的には、該100個の小さなチェンバを単一の収集容器と見なすことができる。
最後に、他の代替案において、上記チェンバは0.0167から20mm2の範囲の表面積を有することができ、例えば、各々は図12に示された設計において1つのチェンバを構成する。この場合、2つの最小のチェンバ(表3参照)のみが、最大充填時間の基準を満たすことができ、0.0167~0.167mm2の間の表面積となる。
表面積が1~10mm2のチェンバは、少なくとも5nl/分/腺で運動をしている人のみに対し、この基準を満たすことができる。20mm2の最大のチェンバは、該充填基準の範囲外であり得るが、5nl/分/腺を超えて発汗する人には適し得る。
本開示の装置、システム及び方法は、健康及び健康状態を示すバイオマーカの非侵襲的、半連続的及び長期間の監視のために、例えば、脱水、ストレス、睡眠、子供の健康を監視するため及び周術期の監視において適用できる。対象の監視全般に適用可能であるのと同時に、本装置、システム及び方法は、一般病棟及び集中治療室における患者の突然の悪化に対して早期警告を提供するために、又は睡眠障害の調査のために特に適用できる。現在のところ、測定は患者が医師を訪問している場合にスポットチェック方式でのみ行うことができるが、本開示は、そのようなスポットチェック測定を行う際にも有効に適用できることに留意されたい。
開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、開示及び添付請求項の精査から、請求項に記載された発明を実施する当業者により理解され、実施され得る。請求項において、「有する(含む)」という語は他の要素又はステップを除外せず、単数形は複数を除外しない。相互に異なる従属請求項に記載されている手段は、有利に組み合わせることができる。請求項における如何なる参照記号も、当該範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。