JP2022548535A - Uv消毒のためのデバイスおよび方法 - Google Patents

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Abstract

UV消毒のためのデバイスおよび方法本発明は、UV消毒、特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や表皮ブドウ球菌(MRSE)などの多耐性病原体(MRPs、multiresistant pathogens)が定着した場合の人体および動物体の体内の生体内UV消毒のためのデバイスおよび方法に関する。UV消毒用の本発明に係るデバイス(100)は、UVCスペクトル範囲の放射線を放出するように構成された発光ダイオードチップ(LEDチップ)(12)(LEDチップ(12)がパッケージ(16)を有する発光ダイオード(LED)(10)を形成する)、発光ダイオード(12)と、LEDチップ(12)によって放出される放射線を実質的に235nm未満の波長に制限するように設定された分光フィルタ素子(14)、およびLED(10)によって放出される放射線の指向性発光ための光学素子(18)を備える。本発明に係るUV消毒方法は、本発明に係るデバイス(100)を用いて、除菌される表面(O)に照射するステップを含む。【選択図】図3

Description

本発明は、UV消毒、特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や表皮ブドウ球菌(MRSE)などの多耐性病原体(MRPs、multiresistant pathogens)が定着した場合の人体および動物体の体内の生体内UV消毒のためのデバイスおよび方法に関する。
多耐性病原体(MRPs)のパンデミックにより、世界中で感染が増加し、特に集中治療患者の間で死亡率が増加している。既存の除菌コンセプトは十分に成功しているとはいえない。現在、MRPsの除菌は主に消毒によって行われている。しかし、この成功率は50%を大きく下回っている。さらに、消毒をする身体のかなりの部分に届かない。
表面(肌)や医療器具のUV消毒(UV滅菌、UV殺菌ともいう)は、典型的には、254nmまたは250nm~285nmの波長範囲で発光するUV水銀ランプやUVLEDを用いて行われる。この波長は、UV放射の効果(「殺菌効果」)がこの波長範囲で最も高くなるという事実に基づいて選択される。これは、特にUVC範囲からの放射であり、100nm~280nmの波長が定義上割り当てられる。UV消毒では、照射された放射線が細菌やウイルスの遺伝情報に不可逆的な損傷を引き起こし、結果としてこれらの代謝過程を破壊することになる。UVC放射線はヒトにも使用することができるが(例えば、病原体、特にMRSAやMRSEの消毒)、この波長範囲のUVC放射線は皮膚の層に深く浸透し、健康なヒトの組織にも相応の損傷を与えることになるという問題を含む。
最近発表された研究は、特に230nm以下の波長の短波放射線は、皮膚上層における吸収率が高いため、皮膚、粘膜、傷に深く浸透しない、つまり、皮膚バリアを乗り越えられないことを明らかにしている(B. Ponnaiya et al., Far-UVC light prevents MRSA infection of superficial wounds in vivo, PLOS ONE 2018, 13(2): e0192053))。この理由の1つは、皮膚の吸収係数の波長依存性であり、250nm未満の波長で大幅に増加する(M. Bounnano et al.207nm UV Light - A Promising Tool for Safe Low-Cost Reduction of Surgical Site Infections. I: In Vitro Studies., PLOS ONE 2013, 8(10): e76968)。そこから、皮膚表面から18μmの深さでは、233nmのUV放射線は、254nmのUV放射線よりも約100倍強く減衰すると結論づけることができる。このときの相対的な強度は、表面での強度と比較して10-4倍も減衰している。222nmと254nmの異なる線量のUV放射による有害な影響の違いは、すでにマウスの皮膚上にcis-synシクロブタンピリミジンダイマー(CPD)を用いた基底細胞で実証されている(Saadati S., Study of ultraviolet C light penetration and damage in skin, Columbia Univ/Univ Gothenburg, 2016: https://radfys.gu.se/digitalAssets/1616/1616169_study-of-ultraviolet-c-light-penetration-and-damage-in-skin.pdf).
国際公開第2019/077817号には、190nm以上230nm以下の波長範囲の放射によるUV消毒が、この際に動物細胞またはヒト細胞を損傷することなく、除菌すべき標的生物に消毒作用をもたらすのに適していることが開示されている。特に黄色ブドウ球菌(S. aureus)が定着した場合の滅菌用の対応するデバイスおよび方法が提案されている。しかしながら、開示されたデバイスは、ガス放電ランプまたはエキシマランプに基づいており、したがって、UV放射に必要な複雑な光誘導のために、臨床体内消毒の用途には適していない。さらに、これらのデバイスは、かなりの量の熱放射を発生する。これは、同様に、生体の皮膚での直接の生体内使用が、限られた範囲でのみ可能であることを意味する。
しかし、これとは別に、波長230nm以下のUVC放射線は、いかなる副作用のリスクもなしに、体内であっても表面上の病原体、特にMRPsを殺すのに原則として適している。MRPsを死滅させるのに必要とされる放射線量は100mJ/cm未満である。したがって、鼻腔、咽喉または傷にMRSAが定着している患者では、消毒剤なしで除菌を実現できる。MRPs、特にグラム陰性菌や腸球菌が副鼻腔、子宮、膀胱または腸管などの体腔内に定着した場合、消毒剤の使用は不可能である。抗生物質は治療的にのみ使用でき、除菌には使用できない。このような場合、生体内原位置で殺菌効果を有する局所治療が望まれる。しかし、このためには、人体および動物体で体内の生体内UV消毒を行うのにも適したデバイスや方法が必要である。特に、UV域の波長誘導が複雑で、さらに体内の3次元組織構造に対して均一かつ大面積の局所照射を行うことが不可能であることが、これまでのところ臨床適用を阻んできた。これまで使用されてきた放射線源は、放射線源から熱が放出され、皮膚または組織の表面間から最小限の距離を必要とし、したがって、適用可能な範囲が限定されるというさらなる難点もある。
本発明の目的は、先行技術の問題点を克服、または少なくとも低減し、特に人体および動物体に対する体内の生体内UV消毒のためのデバイスおよび方法を提供することである。本発明の本質的な目的は、対応する治療される組織(皮膚、粘膜)にいかなる損傷も引き起こすことなく、特にヒトの種々の表面および空洞(例えば、鼻腔、咽喉、傷)の除菌を可能にするデバイスを提供することである。本発明に係る目的は、独立請求項1、7および11によって達成される。好ましいさらなる展開は、それぞれに従属する従属請求項の主題を構成する。
本発明は、UVCスペクトル範囲の放射線を放出するように構成された発光ダイオードチップ(LEDチップ)(前記LEDチップが、パッケージを有する前記発光ダイオード(LED)を形成する)、前記LEDチップによって放出される放射線を実質的に235nm未満、より好ましくは230nm未満、さらに好ましくは225nm未満の波長に制限するように設定された分光フィルタ素子、および前記LEDによって放出される放射線の指向性発光ための光学素子を備える、UV消毒用デバイスに関する。
LEDチップは、好ましくは、サファイア(Al)またはAlNの基板に適用されたエピタキシャル多層構造を有するIII族窒化物系UVLEDとできる。これは実質的に210nm~240nmの波長範囲で発光する。UVLEDは通常、フリップチップ方式を用いて製造される。LEDチップのコンタクト層は、金属電極が設けられたサブマウントによって接触される。この場合、発生した放射線は、基板を通して、つまりLEDチップの底面を通り、放出される。従来、LEDチップを有するサブマウントは、封止により外部の影響から保護されている。封止がパッケージを形成し、この封止されたコンポーネントを通常、LEDと総称する。LEDによって放出される放射線の指向性発光のために、パッケージは、出射窓、出射レンズ、またはビーム成形素子などの透過性光学素子を含むことができる。UV域では透過性材料の選択肢が厳しく制限されるため、従来、光学素子には高純度シリカガラスが使用される。特に、光学素子は、パッケージ封止のキャップを形成してもよい。発光という用語は、除菌される表面への直接的な発光を意味し、この後にさらなる光学素子が関与することはない。指向性という用語は、特に、除菌される表面上に向けることができる発光を意味する。
また、UV消毒のための本発明に係るデバイスは、本発明に係る複数のLEDを備えることができ、共通のLEDモジュールを形成する。好ましくは、このようなLEDモジュールは、LEDを収容するためのハウジングを有する。このハウジングを、順に、共通の回路担体(PCB-プリント回路基板)上に配置することができる。パッケージと同様に、ハウジングは、LEDによって放出される放射線の指向性発光のための光学素子を有することができる。特に、これにはシリカガラスで作製されたカバーを使用することができる。LEDモジュールは、個々のパッケージの有無にかかわらず、複数のLEDチップを含むことができる。広義には、複数のLEDチップまたはLEDを共通のハウジング内に配置することも、パッケージングとみなすことができる。
特に、MRSAや他のMRPsが定着した患者の臨床現場での適用が期待される。鼻腔、喉、傷および他の体腔内をUVLED照射で除菌することにより、患者への感染やMRPsの拡散を防ぐことができるであろう。特に、本発明は、大きな損傷を与えることなく微生物を死滅させるために、患者の皮膚、粘膜、または傷に直接照射するための、LEDからの特に短波長のUVC放射線の使用を説明する。UV消毒の作用モードは、微生物のDNAを損傷させることに存する。LED光の波長が短いため、この結果、この光は皮膚の角質層で事実上に完全に吸収され、この下の生体の表皮に損傷を与えないこととなり、この方法の忍容性が確保される。
また、本発明に係るデバイスは、DUV(深紫外)LEDエミッタモジュールとも呼ばれ、特に体内の生体内消毒によく適している。適切なLEDは、単位面積当たりのパワー密度が十分に高く、広いUVスペクトルを有する。これらは、照射効率が高く、熱の放出が害を及ぼさない可能性があり有利である。しかし、DUVLEDエミッタモジュールを設計する際の課題は、235nm未満の波長範囲で単位面積当たり十分に高いパワー密度を達成すると同時に、より長波長のUVC放射線およびUVB放射線成分(すなわち235nmを超える波長の放射線)の発光を避けることである。UVC放射線およびUVB放射線成分は、より深い皮膚の層まで浸透し、ヒトの組織に損傷を与えるおそれがある。短い照射時間で効率よく消毒を行うためには、できるだけ高い照射パワーを選択するべきである。しかし、パワー密度が高すぎると、特に熱の影響による組織の損傷が起こる可能性がある。この点、熱の影響による組織の損傷を避けるためには、動作電流の増加(したがってパワー密度が高まる)に伴って増加するLEDまたはLEDモジュールの自己発熱を制限しなければならないことに留意しなければならない。したがって、選択されるカットオフ波長(放射に起因する組織の損傷を避けるため)と、十分な消毒効果を得るために必要な放射線量の間で最適な点を見出さなければならない。
フィルタ付きKr-Clエキシマランプ(発光波長222nm)を用いた調査では、この波長および照射線量50mJ/cmでは組織への損傷は生じず、またはほとんど生じず、それにもかかわらず表面の除菌が観察されたことを示している。また、摘出した皮膚で周波数を倍加させたArレーザー(レーザー発光波長229nm)を用いた初期調査では、照射線量300mJ/cmまでは組織への損傷がない、またはほとんどないことが分かった。エキシマランプは熱の放出が著しく、それに伴う皮膚の加熱によって使用が制限されるのに対し、UVLEDは本質的に、廃熱を皮膚から離れた側に効果的に放散し、電力を制限することによって制御される低温エミッタ(cold emitters)である。この点で、UVLEDの熱の放出は致命的なものではない。さらに、エキシマランプは管状に設計されているため、アクセスが困難な皮膚領域や任意のサイズの皮膚領域の場合、UV照射は限られた範囲でしかできないが、複数のUVLED配置を使用することで柔軟な大面積照射形状を実現することも可能である。
UVLEDの発光スペクトルは有限の半値幅(FWHMは典型には8~14nm)を有し、さらに、場合によっては、より長波長のUV域では寄生ルミネセンス(parasitic luminescence)(「欠陥ルミネセンス」)も生じるので、UV消毒用DUVLEDモジュールでは、これらのスペクトル成分が可能な限り最も低い強度となるように、あるいは完全に除去できることが確実になるように注意しなければならない。この目的のために、デバイスは分光フィルタ素子を有する。これを実施する1つの方法は、光学ショートパスフィルタ(または代替的に、ショートパスフィルタとして使用するとき、対応するより低いバンドエッジを有するバンドパスフィルタ)をパッケージに集積化するか、直接LEDチップ中またはLEDチップ上に集積化することである。このような光学ショートパスフィルタを、例えば、UV透過性誘電体層のスタックによって製造することができる。例えば、III族窒化物ベースのUVLEDでは、このようなショートパスフィルタを、10対のAlO/SiOミラーで構成することができる。このような光学DBR(分布ブラッグ反射鏡)を、エピタキシー中にLEDチップに直接集積化することができる。しかし、例えば、LEDチップの研磨されたサファイア基板の裏面にミラー対を成膜することによって、DBRをLEDチップに適用することもできる。別の可能性は、ミラー対をUVLEDパッケージに(例えば、パッケージのシリカガラスキャッピングの一部として)集積化することである。また、LEDチップの発光のスペクトル分布に適合する分光フィルタ素子を設計する際、サイドバンドの反射率を調整したり(例えば、チャープDBRミラー)、ストップバンドの幅(例えば、HfOなどの他の誘電体)に影響を与えたりすることも可能である。
例えば、AlO/SiODBRの反射率を、233nmで最小となり、より長いUV波長では非常に急速に増加する(つまり、これらの波長はフィルタで除去される)ように設定することができる。可能なフィルタ層の数には現実的な限界があるため、一般にショートパスは、所望のストップバンド波長で、対応するバンドエッジを持つバンドストップフィルタとなる。しかし、10対のAlO/SiOミラーを用いれば、約60nmのストップバンド幅を達成することがすでに可能であり、このようなフィルタ素子は、233nm未満の波長に対しては実質的に透過で、233nmから約293nmの間の波長に対しては反射(すなわち遮断)させることが可能である。233nmが最大強度であるDUVLEDの典型的な発光スペクトルは、実質的に220nm~260nmの波長に制限されるので、これは皮膚の損傷を防止するのに十分である。
log10の除菌に必要な放射線量も同様に波長依存性である(また、微生物によっても異なる)。大腸菌のUV消毒では、265nm~270nmで作用スペクトルが最大であり、短波長になるにつれて減少する。大腸菌をlog10減少させるためには、波長265nmで照射線量7mJ/cm、一方230nmで20mJ/cmという高い照射線量が必要である。黄色ブドウ球菌は、大腸菌に比べて不活性化定数kがわずかに低く(大腸菌:k=0.10575m/J、黄色ブドウ球菌:k=0.07132m/J、共に照射波長254nmの表面照射の場合)、230nmでlog10減少するには、わずかに高い30mJ/cmの照射線量を見込まなければならない(W.Kowalski, "Ultraviolet Germicidal Irradiation Handbook", Springer 2009)。
波長233nmで最大強度を有するUVLEDの最大パワーは現在約1.5mWである。これは典型的には100時間の間に出力パワーが30%~50%に低下し、次いで、わずかに低下する。すなわち長期安定パワーは現在最大約0.5mWである。しかし、この比較的低いパワーでも、臨床環境で使用できるDUVLEDモジュールを製造することは可能である。このパワーを1平方センチメートルの面積に照射したとき、単位面積当たりのパワー密度は0.5mW/cmである。したがって、30mJ/cmの照射線量を達成するためには、最大でも60秒、すなわち約1分の照射時間が必要である。これはすでに臨床的なUV消毒として実現可能な時間である。しかし、LED技術の向上により、将来的にはさらに大幅に照射時間を短くすることが可能になると思われる。ここでは、例えば、バルクAlN上にDUVLEDを成長させることによって、出力パワーを少なくとも1桁増やすことが現実的であるように思われる。次いで、必要な照射時間は6秒未満に短縮され、したがって、外科手術中の臨床適用でさえ可能になるであろう。OR環境における術後創傷感染(SSI、Surgical Side Infection)を効果的に低減できる方法はまだ知られていない。特に長時間の手術の場合、中間の消毒治療は通常不可能である。外科手術に伴う放射線消毒は、外科手術を受ける人に病原体が定着することを防ぐのに有効である可能性がある。手術前にMRSAや他のMRPsの除菌が不可能、または成功しなかった場合、OR環境での手術に伴う消毒が特に重要である。
DUVLEDの光出力を増加させる別の方法は、LEDをパルスモードで動作させることである。非常に短い電気パルス(数100ns~1μs)で駆動させることによって、LEDチップ内の熱の影響を避けることができる。これにより、LEDはより高い電流または電流密度で動作することが可能となり、パルスエネルギーが高くなる。これを利用して、最大平均パワーを増加させたり、不活性化効率を向上させたりすることができる。また、パルス照射は、途切れることのない連続動作に比べて、現在のDUVLEDで必要な照射時間を短縮させることもできる。
光学フィルタとUVLEDの集積化の問題の1つは、LEDからの発光が全ての立体角のいたるところから発生することである。フリップチップ方式で構築されたUVLEDの場合、UV光は、典型にUV透過性基板(例えばサファイア)を通して全ての立体角で上半分の空間に放出される。分光フィルタ素子の平面層構造の場合、光線は入射角に応じて異なる有効層厚を通過しなければならないので、誘電体ショートパスフィルタ(または対応して用いられるバンドパスフィルタ)のカットオフ波長は、UVの入射角に応じて変化する。したがって、最適なフィルタリングを行うためには、誘電体ショートパスフィルタやバンドパスフィルタのカットオフ波長が角度に依存してシフトすることを避けるべきである。
好ましくは、分光フィルタ素子の形状をLEDの発光特性に適合させることができる。特に、これは、上述した分光フィルタ素子(DBR)の個々のミラー層を、例えばUV透過性シリカガラスまたはシリコーンの半球状のキャップ(またはカバー)に適用することによって達成することができる。この場合、放射線が横断する有効層厚は、すべての空間方向に対して同じである。また、複数のLEDをアレイ状に配置する場合、代わりに半円筒状のキャップ(カバー)を使用することもできる。次いで、少なくともアレイの線の方向と直交する軸において、角度的に非依存性をもたらすことができる。
角度依存性のないフィルタに対する他のアプローチとして、Yi-Jun Jen et al.(Design and Fabrication of Narrow Bandpass Filter with Low Dependence on Incidence, Coatings, 8(7):231 (2018))や、L. Lin et al.(Angle-Robust resonances in cross-shaped aperture arrays, Applied Physics Letters 97, 061109 (2010))が既知である。
Yi-Jun Jen et al.では、ガラス上の厚さ140nmの銀膜の十字型の穴に局在する表面プラズモンを励起することで、実質的に角度に依存しないバンドパスフィルタが得られた。十字型の穴は約240nmの長さを有し、2次元では360nmの周期で配置されている。しかし、この設計は、赤外域のフィルタ(波長約1000nmのバンドパス)のためのものである。好ましくは、このような設計をUV波長に適用して、本発明の目的のための分光フィルタ素子として使用する。しかし、十字構造の寸法および周期は、本目的のために著しく小さく(好ましくは3~5倍小さく)設計されなければならない。さらに、銀の代わりに、より高いプラズマ周波数を有する他の金属(例えばアルミニウム)が好ましくは製造に使用される。次いで、対応する分光フィルタ素子を、例えば、UV透過性シリカガラスまたは別のUV透過性誘電体材料に適用することができる。
L. Lin et al.も、実質的に角度に依存しないバンドパスフィルタを開示している。Fabry-Perot(eはeの上にアキュートアクセント)フィルタコンセプト(FPフィルタコンセプト)は、ここでは、金属層とミラー層としての誘電体の組み合わせに基づいている。FPフィルタは、空気/Ag(13nm)/シリコーン(90nm)/Ag(10nm)/シリコーン(97nm)/Ag(20nm)の順の5層からなり、ガラス上に成膜されている。この層順により、波長900nmの赤外域において、実質的に角度に依存しないバンドパスフィルタが実現できる。また、好ましくは、この設計はUV波長にも適用され、本発明の目的のための分光フィルタ素子として使用される。層厚は、適宜適合させなければならない。すなわち、好ましくは3~5倍減少させる。好ましくは、銀の代わりに、より高いプラズマ周波数を有する他の金属(例えばアルミニウム)が製造のために使用される。次いで、UV透過性誘電体(AlまたはHfO、CaF)を、例えばUV透過性シリカガラスまたは別のUV透過性誘電体材料に適用することができる。
好ましくは、少なくとも1つのモニターダイオード(フォトダイオード)を、除菌される表面に照射される放射パワーを監視するための検出器として、発光ダイオードまたはデバイスに集積化することができる。これにより、放出または放射されたパワーを連続的に監視することができ、特に、デバイスの欠陥または不適切な使用を検出するために使用することができる。
LEDの空間発光特性は、LEDチップのバンド構造の幅、組成、歪み、LEDチップの外部ジオメトリ、またはパッケージに集積化されたリフレクタや開口部によって決定されることが好ましい。UVLEDとこれに基づくランプの設計に対応する自由度によって、画定された方法で空間放射特性を調整することが可能となる。このことは、特に生体内照射への適応に有用である。例えば、UVC放射による皮膚への損傷の影響を最小限に抑えるために、一方では波長をできるだけ小さくし、もう一方では皮膚への垂直入射よりもより小さい角度の入射で照射を行うことができる。波長を230nmよりもかなり下げると、関連する放射パワーが低下するために問題があるが、入射角はLEDやこれに基づく放熱体の設計における放射の幾何学的な自由度によって影響を受けることができる。
さらに、表面を照射する際、照射された領域で方法の有効性を確保するために、放射パワーの空間的な均一性が重要である。他方、身体の開口部に放射する際は、身体の開口部の内面を完全に照射できるように、立体角全体にわたってできるだけ均一な発光であるべきである。トポロジー的に複雑な身体表面の病原体を根絶するためには、遮光構造の下に照射するために浅い発光角が必要とされる。したがって、本発明に係る光学素子は、それぞれの照射状況に適合するか、適合できることが好ましい。例えば、体腔が光学素子によっておおむね形態に合うように満たされるように、体腔内で発光が進行し、体腔内に位置する素子構造全体を介して照射が進行することが有利である。最大限に形態に合うような方法で満たすことによって、照射される表面と光学素子との間に均一な距離を設けることができる。
UVLEDとこれに基づく放射体の空間的な発光は、多くの方法で個々に適合させることができる。また、LEDチップの空間的な発光は、特に、活性ゾーンのバンド構造にも依存する。LEDチップの幅、組成および歪みは、バンド構造に(したがって、UV光の偏光にも)影響を与えることができる。これらの特徴の1つは、空間発光(例えば、ビーム角)の制限特徴を表す場合、常に決定されると考えられる。UVLEDチップの外部ジオメトリ、特にチップの側面のサイズは、角度放射特性を決定し、また適宜調整することもできる。また、発光に影響を与える、リフレクタ、開口部、レンズおよび/またはジオメトリが異なる形状のポッティングをUVLEDのパッケージに集積化することができる。大面積の放射体の場合、UVLEDの配置の柔軟性および放射体内のリフレクタの利用により、照射領域にわたる強度の均質化が可能となる。
分光フィルタ素子は、LEDチップ内の固有ブラッグ反射鏡、LEDチップに適用されるブラッグ反射鏡、またはパッケージに集積化されるブラッグ反射鏡の形態をとることが好ましい。LEDチップ内に配置された固有ブラッグ反射鏡の場合、複数のAlGa1-xN/AlGa1-yN層対(x≠y)をUVLEDのエピタキシャル層構造中に集積化することができる。LEDチップに適用されるブラッグ反射鏡は、基板上に適用される層スタックとできる。パッケージに集積化されたブラッグ反射鏡は、封止の透過性キャップ(例えば、石英キャップ)に適用されてもよい。あるいは、分光フィルタ素子は、パッケージ内の外部光学コンポーネントとして配置されてもよい。複数のUVLEDを共通のハウジングに配置する場合、分光フィルタ素子を、関連する透過性カバー(例えば石英カバー)上とハウジング内の外部光学コンポーネントとしての両方に同様に配置することができる。
光学素子は、好ましくは、レンズ、ライトパイプ、または光ファイバを備える。上に示したように、光学素子は、単純な出射窓(例えばパッケージの石英キャップの形態)であってもよい。特に、表面の大面積照射の場合、出射領域、すなわち放出された放射線が透過して通過する領域は、ビーム成形または視準(collimation)用のレンズも含んでよい。これは、例えば、石英キャップまたは石英カバーに集積化することができ、また、パッケージ内またはハウジング中に外付けすることもできる。外部から直接アクセス可能な身体開口部(咽頭や鼻腔など)に放出された放射線を導入するために、ライトパイプを使用することができる。また、光ファイバを光学素子として用いると、例えば「低侵襲」外科手術中に、身体の届きにくい部分や開口部に、放出された放射を明確に照射することもできる。光学素子の材料としては、シリカガラスが好ましい。
ライトパイプへのUVLEDの結合は、特に鼻腔や咽頭腔への照射を想定している。UVLEDによって放出される光を最大限に効率よく結合するために、ライトパイプはできるだけUVLEDの近くに配置するべきである。また、ライトパイプとUVLEDの間の突合せ結合(butt coupling)も可能であり、好ましくはUV透過性接着材料(例えばSchott DUV 200)により補助される。照射には、1つまたは複数のLEDを使用することができ、また、共通のパッケージ中に組み立てられたUVLEDのアレイを使用することも可能である。最も単純な場合では、ライトパイプを、内面がUV域で反射する導波管として設計することができる(例えば、アルミニウムでコーティングすることによって反射する)。好ましくは、可撓性、すなわち曲げることができる材料を使用することで、ライトパイプを身体の開口部まで容易に持っていくことができ、角度のついた体腔内の、照射されるのに好ましい領域に容易に到達させることができる。
充填されたライトパイプの場合、充填材料はUV透過性とすることが望ましく、好ましくは、210nm~240nmの波長範囲である。ライトパイプおよび他のUV透過性素子に適した材料には、シリカガラス(例えば、Suprasil、Ultrasil、Infrasil)、CaF、MgFまたはサファイア(Al)が含まれる。ライトパイプのジオメトリは、鼻腔および咽頭腔の周囲環境に人間工学的に適合させることができる。鼻や口の外側の放射伝達領域は、UV反射層(例えば、アルミニウムやテフロン(登録商標))で覆うことができ、これによりUV放射線が周囲に漏れないようにすることができる。また、この領域に1つまたは複数のモニターダイオード(フォトダイオード)を配置して、UV放射パワーとこの分布を測定または監視することができる。ライトパイプの端部でUV放射線を狙い通りの方法で逃がすために、散乱中心をライトパイプに局所的に組み込むことができる。石英などで作られた光導波管の場合、このような光散乱体を、特に、材料表面の局所的な粗面化によって得ることができる。
同様に、人体内の届きにくい場所(例えば、耳、尿道、膀胱、子宮など)への適用に特に適したファイバ結合型UVLEDを設計することができる。光ファイバは、(任意選択でUV反射性)非UV透過性クラッドによって部分的に囲まれ、これらの場所でUV放射線が周囲に漏れるのを防止することができる。さらに、複数のファイバ結合型UVLEDからの光を共通の光ファイバに結合して、利用可能なパワーを増加させることができる。さらに、動作中のUV放射パワーの連続的な測定を可能にするために、ここに検出器としてモニターダイオード(フォトダイオード)を集積化することもできる。
光学素子は、好ましくは、交換可能である。これはまた、本発明に係るデバイスを、追加の放射線源を必要とすることなく、異なるタスクに適合することもできるという利点を有する。したがって、このデバイスを、同じ放射線源で大面積照射とスポット照射の両方に使用することができる。特に、これによって人の皮膚への外部適用と人の身体内への体内適用の切り替えも可能となる。別の利点は、治療後の光学素子を従来の方法で洗浄・除菌できることである。特にライトパイプや光ファイバの場合、迅速な切り替えや簡単な準備によって、デバイスの使用に対して高い有用性を確保することができる。また、光学素子の交換可能性は、対応する結合によって確保することができる。また、使い捨てのみに適した光学素子も使用することができる。
本発明のさらなる態様は、UV消毒用の医療用パッドに関する。これは、アレイを形成するように配置された本発明に係る複数のデバイスを備え、デバイスが可撓性または剛性の支持要素上に配置されている。このようなパッドは、例えば、一種のドレッシングとして外部の皮膚領域に直接適用され、照射領域の広範なUV消毒のために使用されることが可能である。剛性の支持要素の場合、パッドは身体の形状に適合しないが、可撓性の支持要素(例えば、プラスチック製や織布フィルム製)を用いて、パッドの形状を適宜適合させることもできる。したがって、対応するパッドのサイズを用いることで、例えば脚や腕をパッドによって事実上形態に合わせて包むことができる。しかし、剛性の支持要素は、本発明に係るパッドを容易に適用できるという利点を有している。
支持要素は、好ましくは、除菌される表面上に配置されたとき、アレイを形成するように配置されたデバイスと表面との間の距離を設けるように構成された可撓性または剛性のスペーサ要素を含む。ここで、スペーサ要素は、デバイスによって放出される放射線で表面を照射することが可能になる。照射される表面とパッド内のLEDとの間の一定の距離は、スペーサ要素によって確立されることができる。つまり、この距離はユーザに依存せず、正確に決められた放射線量を表面に照射することができる。さらに、皮膚との接触はスペーサを介してのみ生じるため、LEDの汚染を防ぐことができる。特に、これによって、光学素子の汚損や汚染を防ぐこともできる。
スペーサ要素は、支持要素に交換可能に接続されていることが好ましい。これは、スペーサ要素を従来の方法で除菌または滅菌することができるという利点を有する。これにより、感染病原体で汚染されている可能性のあるスペーサ要素の部分、すなわち、特に、治療された人の皮膚と接触したパッドの箇所を、パッドをさらに使用する前に洗浄することができる。また、いくつかのスペーサ要素をかわるがわる使用したり、使い捨てしたりすることも可能である。これにより、パッドの使用に関する高い有用性を確保することができる。
少なくとも1つのモニターダイオードは、除菌される表面に照射される放射パワーを監視するための検出器として、パッドに集積化されることが好ましい。パッドから放射されるパワーを、モニターダイオード(フォトダイオード)を介して監視することができる。パッド上に分布する多数のモニターダイオードによって、表面の明るさが均一であるかどうかを確認することも可能である。
好ましくは、内側にUV反射層(例えば、アルミニウム、テフロン(登録商標))を有するパッドのエンベロープを設けることによって、UV放射の分布を均一化することができる。エンベロープの外側は、漏れるUV放射線から周囲を保護するために、非UV透過性とすべきである。
本発明のさらなる態様は、ヒトの皮膚の生体内消毒のための方法に関する。皮膚の表面は、UVC範囲のUVLEDによって放出される放射線で照射され、放射線のスペクトルは、分光フィルタ素子によって、235nm未満、より好ましくは230nm未満、さらにより好ましくは225nm未満の波長に実質的に制限されている。LEDチップの放出された放射線の強度の最大値は、235nm未満、より好ましくは230nm未満、さらにより好ましくは225nm未満の波長である。
デバイスについて述べた付加的な特徴および好ましいさらなる展開は、本発明に係る方法に必要な変更を加えて適用される。また、このような方法は、慢性創傷の治療にも使用することができる。慢性創傷は、MRSAの好適な逃げ場であり、これまでのところ放射線療法で治療できなかった。これは特に、慢性創傷の場合、組織は、それぞれの担体器官(例えば皮膚)の付随する炎症のために外部の影響に対して非常に敏感に反応し、例えば、治療によって生じる付加的な入熱(例えばエキシマランプからの廃熱)は、治療される人にとって受け入れがたい負担を意味するという事実によるものである。
本発明のさらなる態様では、本発明に係るデバイス(または本発明に係るパッド)を用いて、除菌される表面に照射するステップを含む、UV消毒方法が開示される。デバイスまたはパッドについて言及された付加的な特徴および好ましいさらなる展開は、本発明に係る方法に必要な変更を加えて適用される。
本発明のさらに好ましい構成は、従属請求項に記載された残りの特徴によって明らかにされる。
本願で言及された本発明の様々な実施形態は、個々の場合に関して別段の記載がない限り、有利に共に組み合わせることができる。
本発明を以下の例示的実施形態を参照し、添付の図面に基づいて説明する。
図1は、サブマウント上のIII族窒化物系UVLEDチップの典型的な層構造の概略図を示す。
図2は、10層のミラー層を有するAlO/SiO-DBRの反射スペクトル(左図)と、このような分光フィルタ素子を有する典型的なUVLEDの発光スペクトル(右図)を示す。
図3は、分光フィルタ素子の集積化についての種々の実施形態の概略図を示す。
図4は、本発明に係るデバイスの種々の実施形態を示す概略図を示す。
図5は、本発明に係るパッドの第1の実施形態の概略図を示す。
図6は、本発明に係るパッドの第2の実施形態の概略図を示す。
図7は、発光角度に依存しない分光フィルタ素子を集積化するための一実施形態の概略図を示す。
図1は、サブマウント上のIII族窒化物系UVLEDチップの典型的な層構造の概略図である。通常、層構造を製造するための基板として、サファイア(Al)またはAlNのいずれかが使用される。どちらの基板材料も原則としてUV透過性であるため、従来のAlGa1-xN量子膜で生じるUV放射線は、基板を通して効率的に結合されることができる。UVLEDの発光波長を、AlGa1-xN量子膜および典型的な周辺のAlGa1-yN量子障壁中のアルミニウム含有量、ならびにAlGa1-xN量子膜の幅の選択により調整することができる。発光波長が210nm~240nmの範囲では、量子膜中のアルミニウム含有量はx=0.99~x=0.6の範囲であり、障壁の組成はy=1~y=0.65の間の範囲である。量子膜の幅は、従来、0.5nm~20nmで変化し、量子膜の厚さは、約1nmのものが典型的に使用される。量子膜の数は、N=1~N=20の範囲であり、典型的にはN=3である。また、基板を通じて光抽出を可能にするために、任意のAlGa1-zN電流拡散層は、UV透過性でなければならない。したがって、AlGa1-zN電流拡散層中のアルミニウム含有量は、この層がUV放射線の光子エネルギーよりも大きいバンドギャップを有するように選択されたい。すなわち、組成は、z=1~z=0.65の範囲にあることが好ましい。
同様に、UVLEDの発光スペクトルの幅は、ヘテロ構造の設計ならびに材料組成および個々の層厚のばらつきに影響される可能性がある。UVLEDの発光波長が調整可能であることによって、UVLEDの発光スペクトルをそれぞれの用途に最適に適合させることが可能になる。したがって、本発明によれば、例えば、UVLEDの放出パワー、達成される消毒効果、および照射される組織への損傷の回避の間で、可能な限り最良の妥協点を確立することができる。波長が短くなると、通常、UVLEDのパワーと効率も同様に低下する。すなわち消毒効果が低くなるか、同じ線量を達成するために照射時間を長くしなければならない。しかし、より短い波長では、UV放射線は組織表面に深く浸透しない。つまり損傷はほとんどない。UVLEDのパワーと効率は、波長が長くなるにつれて顕著に増加する。すなわち消毒効果が高くなる。しかし、より長いUV波長では、UV放射線は組織表面により深く浸透し、これは損傷が大きくなることを意味する。さらに、UVLEDの典型的な発光スペクトルには、照射された組織に損傷の影響を与える可能性がある、より長波長の成分(特に、より深い皮膚の層まで浸透することができる240nmを超える範囲の波長成分)も含まれる。
図2は、10層のミラー層を有するAlO/SiO-DBRの反射スペクトル(左図)と、このような分光フィルタ素子を有する典型的なUVLEDの発光スペクトル(右図)を示す。
左図に示す反射スペクトルは、垂直入射の場合の転送行列法を用いて計算されている。分光フィルタ素子は、DBR(分布ブラッグ反射鏡)を形成する10対のAlO/SiOミラーで構成される。均一層に対応する屈折率および厚さは、次の値が仮定された。AlOn=1.85およびd=35.16nmならびにSiOn=1.46およびd=44.52nm。AlO/SiO-DBRの反射率は233nmで最小(R=0.7%)であり、より長いUV波長では非常に急速に増加する(つまり、これらの波長はフィルタで除去される)。波長240nmでは、反射率はすでにR=82%であり、波長250nmではR=97%である。
ストップバンド(DBR)の傾きを、ミラー対の数によって調整することができる。つまり、より多くのミラー対を使用すれば、ストップバンドはより急峻になる。さらに、ストップバンド(DBR)の幅を、個々の誘電体の選択によって制御することができる。誘電体の屈折率の差がより大きいと、ストップバンド(DBR)の幅は広くなる。
右図は、典型的なUVLEDの発光スペクトルを、上記の分光フィルタがある場合とない場合を対数表現で示す。フィルタなしのUVLED(破線)の場合、この例のピーク波長は231.8nm、半値幅は11.9nmである。上記のようにフィルタ素子を集積化することで、短波長のUV域の分光パワーを顕著に低下させることなく、発光スペクトルのより長波長のUV成分を大幅に低下させることができる。フィルタ付きUVLEDのピーク波長(連続曲線)は232.2nmにわずかにシフトし、半値幅は7.7nmに大幅に減少している。特に、より長波長(240nmを超える波長)のUV成分が大きく低減されている。
また、UVLED発光スペクトルの幅は、ヘテロ構造の設計ならびに材料組成および個々の層厚のばらつきにも影響され得る。
図3は、分光フィルタ素子14を集積化するための種々の実施形態の概略図を示す。
図a)は、サブマウント36上のUVLEDチップ12の典型的な構造を示している。LEDチップ12の活性層32は、コンタクト34を介してサブマウント36に電気的に導通している。接続は、典型的にはフリップチップ方式を用いて実現される。すなわち、対応する半導体層構造が成長したLEDチップ12の基板30は、活性層32の上に位置し、放射線デカップリングのためにこの底部側から底部を通過して放射される。分光フィルタ素子14の集積化について示された実施形態では、後者は、基板30の自由な上面に適用された。したがって、分光フィルタ素子14と活性層32は、基板30の異なる側で互いに向き合う。あるいは、分光フィルタ素子14は、活性層32の側、すなわち活性層32中または活性層32に隣接して配置されてもよい。
図b)は、パッケージ16を有し、サブマウント36(分光フィルタ素子の適用なし)上の上述したLEDチップ12を示す。パッケージ16は、LEDチップ12を汚染や損傷から保護する。パッケージの上部には、UV放射線に対して透過性であるキャップ(例えば、シリカガラス製の出射窓)が設けられていてもよい。分光フィルタ素子14は、このキャップに適用されてもよい。これは、図a)に係る基板30への適用に対応する。また、示された図では、キャップは、放出された放射線の指向性発光に役立つことも意図している。したがって、キャップは、同時に本発明に係る光学素子18でもある。したがって、図示された本発明に係るデバイス100を、局所的なUV消毒のために直接使用することができる。
図c)では、複数のUVLED10(またはLEDチップ12)が接続されてモジュールを形成している。この文脈では、LED10は、本発明に係る分光フィルタ素子14または光学素子18を必要としない、パッケージ16を有するLEDチップ12であると理解することができる(ここでの個々のパッケージの被覆は単に内部構成を表し、発光目的のためには役立たない)。個々のLED10は、ハウジング40内の共通の回路担体42(例えばPCB-プリント回路基板)上に配置されてもよい。図b)のパッケージと同様に、ハウジング40は、UV放射に対して透過性であるカバー(例えば、シリカガラス製の出射窓)を有していてもよい。カバーを通して直接発光が起こる場合、これは本発明に係る光学素子18である。分光フィルタ素子14を、カバーに適用することができる。したがって、記載されたモジュールは、単にマルチLEDパッケージであることを表し、根本的な原理は、図b)と同じである。したがって、この実施形態は、単に、複数のLED10またはLEDチップ12を有するパッケージの拡張形態に過ぎない。
分光フィルタ素子に関して、UVLEDの発光スペクトルのFWHM半値幅(FWHM=full-width half-maximum)は一般に5nm~25nm、典型に10~12nmの範囲であることに留意されたい。210nm~235nmの集積化発光パワーは300μW弱であり、全波長での総パワーは約475μWである。深く浸透するUV光による組織の損傷を避けるために、より長波長の成分(235nm超)を可能な限りスペクトルから排除するべきである。上述したように、特に、光学ショートパスフィルタ(波長に関するショートパスフィルタ)として分光フィルタ素子をモジュールに集積化するか、またはUVLEDチップに(例えば、自由基板側上に)、もしくはパッケージに直接集積することによって、これを行うことができる。しかし、分光フィルタ素子は、付加的な素子としてLEDモジュールに集積化することも可能である。このような光学ショートパスフィルタは、例えば、屈折率の異なるUV透過層の層スタックを用いてDBR(分布ブラッグ反射鏡)として得ることができる。この目的のために、特に、複数のAlGa1-xN/AlGa1-yN層対(x≠y)をUVLEDのエピタキシャル層構造に集積化することができる。さらに、屈折率の異なる誘電体の層対を、基板の裏面またはパッケージ(例えば石英キャップ上)に集積化することができる。DBRフィルタの製造に適した他の誘電体には、例えばHfO、Ta、CaF、MgF、GaまたはAlNが含まれる。ショートパスフィルタの分光特性を、特に、適当な材料ならびにDBRミラー層の厚さおよび数を選択することによって、それぞれの用途に最適化することができる。
図4は、本発明に係るデバイス100の様々な実施形態の概略図を示す。すべての実施形態は、放射パワーを監視するための1つまたは複数のモニターダイオード52を任意選択で含むことができる。これらの実施形態の背後にある基本的な考え方は、本発明に係る光学素子18の特定の設計によって、除菌される領域にできるだけ最適に発光を適合させることである。特に、身体適合ライトパイプ50および光ファイバ54がこの目的のために使用される。この図は、個々のエミッタの使用に関して限定的に解釈されるべきではない。例えば、図示したLED10と分光フィルタ素子14との組み合わせの代わりに、図3に示した任意の実施形態を用いて、分光フィルタ素子14を集積化してもよい。
図a)は、鼻腔内に適用するためのUV消毒用デバイス100の例示的な図を示す。本発明に係る光学素子18は、ライトパイプ50を備える。ライトパイプ50は、UVLED10によって生成され、分光フィルタ素子14を用いてフィルタリングされた放射を、治療される人の鼻腔内に狙い通りの方法で向けるように構成される。特に、ライトパイプ50を、導波管の形態のシリカガラスロッドまたは固体シリカガラスロッドとできる。ライトパイプ50は、UV透過性の充填材を含んでもよい。好ましくは、ライトパイプ50の形状は、治療される身体の開口部(この場合、鼻腔)のサイズおよび形状に適合する。鼻腔の場合、これは、鼻孔に挿入するための直線部分と、鼻腔を満たすために、直線部分に対して傾斜した球面状とに対応する。鼻腔への局所的な照射のみを実現するために、放射線の出射領域を制限することができる。さらに、ライトパイプ50は、異なるサイズおよび形状の他のライトパイプ50によって交換可能であることが有利である。これにより、特定のユーザに対する照射を最適に適合させることが可能となる。
図b)は、咽頭腔に適用するためのUV消毒用デバイス100の例示的な図を示す。この図は、a)で示されたものにおおむね対応し、参照符号が準用される。しかしながら、a)の図とは対照的に、ライトパイプ50の形状は異なる。特に、典型的なヒトの咽頭腔の構造に対応する、平面視での構成(風船状の部分に直接隣接する直線部分)と側面視での構成(ヘラ状部分に直接隣接する直線部分)とが異なっている。ここでも、交換することによってライトパイプ50のサイズおよび形状を適合できることが有利である。
図c)は、届きにくい場所や狭いダクトに適用するためのUV消毒用デバイス100の例示的な図を示す。この図もまた、a)で示されたものにおおむね対応し、参照符号が準用される。しかしながら、a)の図とは対照的に、光学素子18は、ライトパイプ50ではなく、UV透過性光ファイバ54(例えば、シリカガラス製)である。このようなファイバは、可撓性があり、曲げることができるという利点を有する。したがって、他の方法ではアクセスすることが困難な場所(通常は外部に開かれていない体腔など)に、ファイバを挿入することができる。この場合、ファイバの先端は、照射するのに好ましい形状を有することができ、例えば、平面形状、球状、または尖った形状である。UV放射線がフィードラインの早い段階でファイバから放出されるのを防ぐために、LED10に面するファイバの一部の周囲に、UV放射線を透過しないなクラッド56を設けてもよい。
図5は、アレイを形成するように配置された本発明に係る複数のデバイス100を備える、本発明に係るパッド200の第1の実施形態の概略図を示す。デバイス100は、可撓性または剛性の支持要素110上に配置されている。特に、支持要素110は、可撓性(例えば、織布)とできる。織布の場合、個々のデバイス100を、織り込まれた可撓性フィードラインを用いて電気的に接触させてもよい。支持要素110は、可撓性または剛性のスペーサ要素112を含んでもよい。可撓性または剛性のスペーサ要素112は、アレイを形成するように配置されたデバイス100と、除菌される表面O上に置かれたときに表面Oとの間に距離Aを設けるように構成される。スペーサ要素112はデバイス100によって放出される放射線で表面Oの照射が可能となる。スペーサ要素112は、特に衛生上の理由から、支持要素110に、交換可能に接続されてもよい。さらに、少なくとも1つのモニターダイオード114が、除菌される表面Oに照射される放射パワーを監視するための検出器としてパッド200に集積化されてもよい。
図6は、本発明に係るパッド200の第2の実施形態の概略図を示す。この図は、図5に示されたものにおおむね対応し、参照符号は準用される。しかしながら、図5の図とは対照的に、ここでは、複数の付加リフレクタ116を有する本発明に係るパッド200の側面図が示されている。特に、このパッドは、剛性支持要素110(例えば、(プラスチック)フレーム)を有するパッドであってもよい。ここでは例として、スペーサ要素112が湾曲したベアリング面を有して示されている。これにより、例えば、対応する湾曲した表面上に直接載せることが可能になる。しかしながら、リフレクタ116とスペーサ要素112のベアリング面の自由な構成のいずれをも、可撓性支持要素110で実施することも可能である。
図7は、発光角度に依存しない分光フィルタ素子を集積化するための一実施形態の概略図を示す。図は、図3b)に示されたものにおおむね対応しており、参照符号が準用される。しかし、図3b)の図とは対照的に、光学素子18として使用される透過性キャップの形状は異なる。特に、ここでは透過性キャップはドーム状であり、パッケージ16上に位置している。示された図では、キャップは、同時に本発明に係る光学素子18でもある。しかしながら、キャップは、代替的に、本発明に係るデバイスの内部光学素子(窓またはレンズ)であってもよい。
キャップは、好ましくは、例えばUV透過性シリカガラスまたはシリコーンで作製された半球の形態をとることができる。分光フィルタ素子14の個々の層を、キャップの湾曲した表面に直接適用することができる。これにより、LEDチップ12からのUV光線がDBRミラー層に対してほぼ垂直になり、分光フィルタ素子14のカットオフ波長が発光角度によって変化しないことが確実となる。このような構成により、UVLEDからの光抽出が向上するため、効率や出力パワーが高まるという別の利点もある。半球状のキャップの均一なコーティングは、特に、コーティング設備における適当なホルダによって、またはコーティングプロセス中にキャップを回転させることによって、達成され得る。
図3c)に対応する複数のUVLED10(またはLEDチップ12)が一緒に接続されて1つのモジュールを形成する場合、分光フィルタ素子14を、例えばUV透過性シリカガラスまたはシリコーンの半円筒形に構成されたキャップ(またはカバー)にも適用することができる。次いで、図7に示す図は、一連の分光フィルタ素子14の層は、この深さにわたって変化しないままで図に表される面に引き伸ばされる。このような円筒形配置の欠点は、放出されたUV放射線の一部が、分光フィルタ素子に斜めに衝突し続けることである。しかしながら、利点は、LEDラインアレイが、発光特性に適合した分光フィルタ素子14を備えることもでき、誘電体による半円筒の均質なコーティングが比較的容易に(例えば、コーティング中に半円筒を回転させることによって)実施できることである。
また、摘出皮膚サンプルに対するUV消毒の放射線および線量依存性の調査結果を以下に追加で示す。
この調査は、波長229nmの周波数を倍加させたアルゴンイオンレーザー(LEXEL laser, 95-SHG)を用いて行われた。この目的のために、傷跡を除去した後のヒトの皮膚を切除したものを用意した。サンプルは、実験が行われる前日に新たに採取された。0.2mW/cmで5分間および30分間、皮膚を照射した。パワーは、パワーメータを用いて測定された。対応する放射線量は、60mJ/cmと300mJ/cmであった。さらに、300mJ/cmで、1mW/cmで、照射時間5分で照射した。同じ線量のUVB放射線をポジティブコントロールとして使用した。未照射のサンプルをネガティブコントロールとした。
各サンプルから4mmのパンチを1つずつ取り、包埋カセットに移した。組織を、4%のホルムアルデヒド溶液を用いて固定した。サンプルは同日中に研究所に持ち込まれ、分析された。固定した組織サンプルからパラフィン切片(厚さ1~2μm)を作製し、ヘマトキシリンとエオシンで染色し、異なる組織構造を識別できるようにした。次いで、シクロブタン-ピリミジンダイマー(CPDs)および6-4型光産物(6-4PP)として知られる、UV放射によって引き起こされる典型的なDNA損傷を適切な抗体を用いて検出した。CPDsはUVに起因するDNA損傷の約70~80%を占め、残りは6-4PPとこれらの異性体またはDewar型光産物である。特に基底膜では、UVC照射とUVB照射の両方によって引き起こされるDNA修飾を防止すべきである。実際のサンプルと比較してポジティブコントロールの染色が著しいことから、229nmの放射線はUVB放射線と異なり、細胞内にCPDを全く、あるいはほとんど生成しないことが明確に示された。拡大すると、300mJ/cmで表皮上部に「CPD細胞」が確認できる。2回目の300mJ/cmの照射では、このような細胞は見られない。これに反して、UVB照射では、真皮上層部までCPD損傷が非常に明瞭かつ集中的に起こっている。さらに、229nmのUV照射では、放射線量に関係なく6-4PPの損傷は見られなかった。これに対して、UVB照射では、このような損傷が非常に顕著である。
したがって、これらの調査により、229nmのUV照射では摘出皮膚サンプルへのDNA損傷はほとんどまたは全くなく、300mJ/cmという高線量でさえ、生体の表皮にごく浅い損傷を与えるにすぎないことを実証することに成功した。
さらに、豚の耳で微生物減少(microbial reduction)の調査を行った。豚の耳のマーキングされた領域について、以下の消毒曝露量を比較した。
- エタノールベースの皮膚消毒(AHD 2000)、暴露時間1分。
- UVC 60mJ/cm、(0.2mW/cm、5分)、
- UVC 300mJ/cm、(0.2 mW/cm、30分)、
- UVC 300mJ/cm、(1mW/cm、2.5分)および
- 未処理コントロール。
未処理コントロールでは、コロニー形成密度が低いため、サンプル量1mlでわずか15コロニー形成単位しか検出できなかった。すべての消毒治療モードで、明らかな組織損傷なく、皮膚細菌叢を完全に除去した。このことから、意図した放射範囲の殺菌効果が実証された。
10 LED
12 LEDチップ
14 分光フィルタ素子
16 パッケージ
18 光学素子
30 基板
32 活性層
34 コンタクト
36 サブマウンド
40 ハウジング
42 回路担体
50 ライトパイプ
52 モニターダイオード
54 グラスファイバ
56 クラッド
100 デバイス
110 支持要素
112 スペーサ要素
114 モニターダイオード
116 リフレクタ
200 パッド
A 距離
O 表面

Claims (10)

  1. 特に皮膚、粘膜、傷、体腔内、ならびに外科的に露出した組織および器官に対するUV消毒用デバイス(100)であって、
    UVCスペクトル範囲の放射線を放出するように構成された発光ダイオードチップ(LEDチップ)(12)、
    前記LEDチップ(12)によって放出される放射線を実質的に235nm未満の波長に制限するように設定された分光フィルタ素子(14)、および
    発光ダイオード(LED)(10)によって放出される放射線の指向性発光のための光学素子(18)を備え、
    前記LEDチップ(12)が、パッケージ(16)を有する前記LED(10)を形成する、デバイス。
  2. 前記LED(10)の空間発光特性は、前記LEDチップ(12)のバンド構造の幅、組成および歪み、前記LEDチップ(12)の外部ジオメトリによって、または前記パッケージ(16)に集積化されたリフレクタ、開口部、レンズおよび/もしくは形成されたポッティングによって決定される、請求項1に記載のデバイス。
  3. 前記分光フィルタ素子(14)が、前記LEDチップ(12)内の固有ブラッグ反射鏡、前記LEDチップ(12)に適用されるブラッグ反射鏡、または前記パッケージ(16)に集積化されるブラッグ反射鏡の形態をとる、請求項1または2に記載のデバイス。
  4. 前記光学素子(18)は、レンズ、ライトパイプ(50)または光ファイバ(54)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
  5. 前記光学素子(18)は交換可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
  6. UV消毒用の医療用パッド(200)であって、アレイを形成するように配置された請求項1~5のいずれか一項に記載の複数のデバイス(100)を備え、
    前記デバイス(100)が、可撓性または剛性の支持要素(110)上に配置されている、パッド。
  7. 前記支持要素(110)が、除菌される表面(O)上に置かれたときに、アレイを形成するように配置されたデバイス(100)と前記表面(O)との間に距離(A)を設けるように構成された、可撓性または剛性のスペーサ要素(112)を備え、
    前記スペーサ要素(112)が、前記デバイス(100)によって放出される放射線で前記表面(O)の照射を可能にする、請求項6に記載のパッド(200)。
  8. 前記スペーサ要素(112)が、前記支持要素(110)に交換可能に接続されている、請求項7に記載のパッド(200)。
  9. 少なくとも1つのモニターダイオード(114)が、前記除菌される表面(O)上に照射される放射パワーを監視するための検出器として前記パッド(200)に集積化されている、請求項6~8のいずれか一項に記載のパッド(200)。
  10. 請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス(100)を用いて、除菌される表面(O)に照射するステップを含む、UV消毒方法。
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