JP2022547692A - 免疫複合体介在性腎臓障害の処置のための組み換えIgG Fc多量体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、免疫複合体介在性腎臓障害の処置のための組み換えIgG Fc多量体の使用、及び上記多量体を投与することにより免疫複合体介在性腎臓障害を処置する方法に関する。
Description
発明の分野
本開示は、免疫複合体介在性腎臓傷害の処置のための組み換えIgG Fc多量体の使用、及び上記多量体を投与することにより免疫複合体介在性腎臓障害を処置する方法を提供する。
本開示は、免疫複合体介在性腎臓傷害の処置のための組み換えIgG Fc多量体の使用、及び上記多量体を投与することにより免疫複合体介在性腎臓障害を処置する方法を提供する。
背景
血漿由来免疫グロブリンG(IgG)は、原発性及び続発性免疫不全症を処置するために診療所において使用される。この場合、IgGは静脈内(IVIG)又は皮下(SCIG)のいずれかに投与される。両方とも10,000より多くのドナーの大きな血漿プールから製造され、多様な抗体レパートリーを確実にする。
血漿由来免疫グロブリンG(IgG)は、原発性及び続発性免疫不全症を処置するために診療所において使用される。この場合、IgGは静脈内(IVIG)又は皮下(SCIG)のいずれかに投与される。両方とも10,000より多くのドナーの大きな血漿プールから製造され、多様な抗体レパートリーを確実にする。
高用量のIVIG又はSCIG(1~2g/kg/用量)の投与は、免疫血小板減少症(ITP)、ギラン・バレー症候群、川崎病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、重症筋無力症(MG)、及びいくつかの他の希少疾患のような慢性又は急性の自己免疫及び炎症性疾患を有する患者の処置のためにますます使用されてきた。さらに、いくつかの他の適応症のためのIVIG又はSCIGの適応外の使用は、例えば、関節リウマチ(RA)の処置のためのように現在調査中である。
多数の作用機序が、高用量IVIG/SCIGの抗炎症性効果について提案された。これらとしては、Fcγ受容体(FcγR)の遮断、自己抗体クリアランスを増強する新生児FcR(FcRn)の飽和、阻害性FcγRIIBの上方調節(CD32B)、補体タンパク質断片の除去及び補体断片沈着の阻害、IVIG/SCIGにおける抗イディオタイプ抗体(Ab)、免疫メディエーター(例えば、サイトカイン)の結合もしくは中和、又は免疫細胞の調節(例えば、制御性T細胞、B細胞もしくは免疫寛容原性樹状細胞の誘導)が挙げられる。
免疫複合体介在性腎臓障害のための効果的かつ安全な治療が必要である。これらの障害には、腎臓又は腎臓形構造の炎症が介在する。それらとしては、とりわけ、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎炎、抗糸球体基底膜(抗GBM)糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、自己免疫腎臓疾患、ループス腎炎、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、及びブライト病が挙げられる。
抗GBM抗体は、糸球体基底膜に沿ったこれらの抗体の沈着を特徴とする生命を脅かす腎疾患であるグッドパスチャー症候群の発症において本質的な役割を果たす(非特許文献1)。これらの沈着は、半月体形成、瘢痕及び腎機能の喪失をもたらす。
様々な組み換えFcベースの治療剤が開発中であり、これにはFc融合及び多量体タンパク質が含まれ、これらは関節炎、ITP及び炎症性ニューロパチーの実験的動物モデルにおいて有効性を示した(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。
複数のFcドメインを含む有望なIVIG置換タンパク質が、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4又は特許文献5に記載される。複数のFcフラグメントを有する構築物の多様な異なる構成が想定されるが、開示されるこのような構築物の主要なクラスはいわゆるストラドマー(stradomers)であり、これらはIgG2ヒンジ領域のような多量体化ドメインを有するFcフラグメントを含む。しかし、特許文献1において想定される多量体タンパク質の有効性に関する実施例は提供されていない。
Sunらは、補体依存性疾患の処置における特定のストラドマーの使用を記載する(非特許文献8)。詳細には、Sunらは、2つの組み換えFc多量体(ストラドマーGL-2045から開発された)の試験を記載し、これらは、FcγRと低い/中程度の親和性で相互作用するが、C1qについては高い親和性で相互作用する限られた能力を有するように改変されている。これらの化合物は、連続した高度に組織化されたFc多量体から構成されることがわかった。著者らは、GL-2045と同様に、これらの薬物がC1qシンクとして作用することにより機能したと結論づけた。Zuercherらは、GL-2045が、ヒトIgG1 FcにヒトIgG2ヒンジ領域を融合させることにより設計されているので、これによりIgG1 Fcフラグメントが連続的に重合して様々な長さ又は多量体化の程度のFc多量体の不均一なプールを生じ、本質的にラダーを形成することを可能にすると考察する(非特許文献9)。
本発明において有用であるかもしれない多量体化ドメインを有する他のFc多量体構築物としては、IgM尾部がIgG Fcフラグメントを多量体化するために使用される六量体構築物が挙げられる。例えば、特許文献6は、切断型ヒンジ領域を有するIgG1 Fc領域、FcのC末端における4アミノ酸リンカー、及びIgM尾部を含むFc多量体構築物を開示し、これは多量体化して主に六量体構造となる。Fc残基309及び310における変異(L309C及びH310L)は、IgMの配列を模倣するために導入された。
特許文献7及び特許文献8は、5アミノ酸ヒンジ領域、IgG1、IgG4、又はIgG1とIgG4 CH2及びCH3ドメインとのハイブリッド由来のFc領域、並びにIgM又はIgA尾部を含むいくつかのFc多量体構築物を開示する。これらの開示は、融合ペプチドのFc領域においてアミノ酸変化を導入することによりIgG Fc多量体の安全性及び有効性を改善する事に関する。
最適化された六量体Fc-μTP構築物が特許文献9に開示されており、これらは以前に記載されたものよりもインビボ、エクスビボ、及びインビトロでいくつかの利点を有することが示された。Fc-μTP-及びFc-μTP-L309C-結合C1qは、補体タンパク質C2の切断を誘導せず、従ってC3コンバターゼが形成されなかった(C4b2a)。Fc-μTP及びFc-μTP-L309Cは、完全古典的補体経路の活性化を選択的に阻害し;代替経路との干渉は全く観察されなかった。
他のFc多量体が特許文献10、特許文献11及び特許文献12において開示された。これらのFc多量体は、多量体化ドメインを使用せずに構築された複数のFc単量体を含む。代わりに、2つ又はそれ以上のFcポリペプチドが、例えば可動性ペプチドリンカーを介して線状配置で融合され、そしてさらなるFcポリペプチドと同時発現され得;Fc単量体の構築は選択性モジュール(例えば、ノブ-イン-ホール又は静電変異)の使用により方向づけられ、これにより特定のFcポリペプチドのみが組み合わされ得ることになる。
Otten et al.、J Immunol 2009; 183:3980-3988
Anthony et al.、2008、Science 320、373-376
Czajkowsky et al.、2015、Sci. Rep. 5、9526
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Lin et al.、2007、J. Neuroimmunol. 186、133-140
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本発明者らは、驚くべきことに、Fc-μTP-L309C、CC、SIF1、及びQ1を含めて本発明において使用されるFc多量体が、例えば抗GBM糸球体腎炎のような免疫複合体介在性腎臓障害の処置において有効であることを今や見出した。
本発明において使用されるFc多量体は、Sunらのストラドマーのような例えばC1qのような補体系タンパク質への増強された結合のためのいずれの変異も欠いているが、免疫複合体介在性腎臓障害の病理形成を強く阻害することができる。例えば、抗GBM糸球体腎炎のマウスモデルにおいて、C1qに対する増強された結合を誘導する任意の変異を有していない本発明のFc多量体は、補体依存性細胞傷害及び抗体依存性細胞性細胞傷害を阻害することによるアルブミン尿の予防において優れた有効性を示した。
要旨
本開示は、免疫複合体介在性腎臓障害を処置する方法を提供し、該方法は、多量体化ドメインもしくはリンカーの存在を介して構築され、かつ補体系タンパク質に対する結合親和性を増加させる任意の変異を含まないFc多量体を投与することを含む。
本開示は、免疫複合体介在性腎臓障害を処置する方法を提供し、該方法は、多量体化ドメインもしくはリンカーの存在を介して構築され、かつ補体系タンパク質に対する結合親和性を増加させる任意の変異を含まないFc多量体を投与することを含む。
本発明のいくつかの実施形態において、本発明において使用されるFc多量体は、2~6つのIgG Fc融合単量体を含む。IgG Fc融合単量体はそれぞれ2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、そして各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み、ここでFc多量体は、補体系タンパク質に対するその結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。いくつかの好ましい実施形態において、補体系タンパク質はC1qである。いくつかの実施形態において、本発明において使用されるFc多量体において存在しない変異は、位置267、268、又は324のいずれか1つにおけるFc多量体のIgG1 Fcドメインにおける少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F又はS324Tの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、除外された変異は、位置267、268、及び324のいずれか1つにおける少なくとも1つの変異を含み、そしてさらに位置233、234、235、236、238、265、297、299、又は328のいずれか1つにおける少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、又はL328Fの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、位置299におけるアミノ酸は、スレオニンからセリン又はシステイン以外の任意の他のアミノ酸に変異していない。いくつかの実施形態において、位置298におけるアミノ酸は、プロリン以外のいずれかのアミノ酸に変異していない。いくつかの実施形態において、位置236におけるアミノ酸は欠失していない。好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異はS267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異はG236R、S267E、H268F、S324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異はP238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異はS267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異はP238D、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
いくつかの実施形態において、Fc多量体はストラドマーではない。いくつかの実施形態において、Fc多量体は、多量体化ドメインとしてIgG2ヒンジドメインを含まない。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、ここで各Fc融合ポリペプチド鎖はIgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み、そしてここで多量体化ドメインはIgG2ヒンジを含まない。これらの実施形態のいくつかの態様において、Fc多量体はストラドマーではない。
本発明のいくつかの実施形態において、Fc多量体は2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、ここで各Fcポリペプチド鎖はIgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み;そしてここでFc多量体はストラドマーではない。
いくつかの好ましい実施形態において、Fc多量体は、6つのIgG Fc融合単量体を含むFc六量体である。いくつかの好ましい実施形態において、Fc多量体は多量体化ドメインとしてIgM尾部を含む。
いくつかの好ましい実施形態において、Fc融合ポリペプチド鎖は、IgGヒンジ領域をさらに含み、そしてFc融合ポリペプチド鎖はFabポリペプチドを含まない。
例えば、いくつかの好ましい実施形態において、本発明において使用されるFc融合ポリペプチド鎖は、IgG1ヒンジ領域、IgG1 Fcドメイン、及びIgM尾部を含み、そしてFabポリペプチドを含まない。好ましい実施形態において、各融合ポリペプチド鎖におけるIgM尾部は、IgG1 Fcポリペプチドの定常領域のC末端における232アミノ酸と融合された18アミノ酸を含む。好ましい実施形態において、Fc融合ポリペプチド鎖は配列番号1である。さらなる好ましい実施形態において、Fc融合ポリペプチド鎖は配列番号1であり、5つまでの保存的アミノ酸変化を有する。別の好ましい実施形態において、Fc融合ポリペプチド鎖は、配列番号2として表され(WO2017/129737の配列番号7に対応する)、これから分泌及び成熟Fc六量体の形成の間にシグナルペプチドが切断される。いくつかの実施形態において、Fc六量体はストラドマーではない。
いくつかの好ましい実施形態において、成熟Fc六量体は、組み換えヒトFc六量体である。いくつかの実施形態において、Fc六量体は、補体系タンパク質に対するその結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。いくつかの好ましい実施形態において、補体系タンパク質はC1qである。いくつかの実施形態において、本発明において使用されるFc多量体に存在しない変異は、位置267、268、又は324のいずれか1つにおいてFc六量体のIgG1 Fcドメインにおける少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F又はS324Tの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、除外された変異は、位置267、268、及び324のいずれか1つにおいて少なくとも1つの変異を含み、そしてさらに、位置233、234、235、236、238、265、297、299、又は328のいずれか1つにおいて少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、又はL328Fの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、位置299におけるアミノ酸は、スレオニンから、セリン又はシステイン以外の任意の他のアミノ酸に変異されない。いくつかの実施形態において、位置298におけるアミノ酸は、プロリン以外の任意のアミノ酸に変異されない。いくつかの実施形態において、位置236におけるアミノ酸は欠失されない。好ましい実施形態において、除外された変異はS267E、H268F及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
好ましい実施形態において、Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG1ヒンジ領域、IgG1 Fcドメイン、及びIgM尾部を含み、ここでIgG1 Fcドメインは、位置309 (EUナンバリングに従う)においてロイシンの代わりにシステインを有し、そしてここでFc融合ポリペプチドはFabポリペプチドを含まず、そしてFc融合ポリペプチド鎖は配列番号3である(WO2017/129737の配列番号2に対応する)。さらに好ましい実施形態において、Fc融合ポリペプチド鎖は、5つまでの保存的アミノ酸変化を含む配列番号3である。別の好ましい実施形態において、Fc融合ポリペプチド鎖は配列番号4(WO2017/129737の配列番号8に対応する)として発現され、これから、分泌及び成熟Fc六量体の形成の間にシグナルペプチドが切断される。
本発明において使用されるさらなる実施形態は、Fc融合ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドであり、好ましくは該ポリヌクレオチドは、Fc融合ポリペプチド鎖に連結されたシグナルペプチドもコードする。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は多量体化ドメインを含有しない。
一実施形態において、Fc多量体は、3つの単量体を形成する4つのポリペプチドから構成される。第一のポリペプチドは、第一のFcポリペプチド、第一のリンカー、及び第二のFcポリペプチドを含む。第二のポリペプチドは、第三のFcポリペプチド、第二のリンカー、及び第四のFcポリペプチドを含む。第三のポリペプチドは第五のFcポリペプチドを含み、そして第四のポリペプチドは第六のFcポリペプチドを含む。この態様において、第一のFcポリペプチド及び第三のFcポリペプチドは、組み合わさって第一のFc単量体を一緒に形成し;第五のFcポリペプチド及び第二のFcポリペプチドは、組み合わさって第二のFc単量体を一緒に形成し;そして第六のFcポリペプチド及び第四のFcポリペプチドは、組み合わさって第三のFc単量体を一緒に形成する。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は、抗原認識領域、例えば、可変ドメイン(例えば、VH、VL、超可変領域(HVR))又は相補性決定領域(CDR)を含有しない。
この態様のいくつかの実施形態において、第一及び第三のFcポリペプチドはそれぞれ、第一のFcポリペプチドと第三のFcポリペプチドとの間の二量体化を促進する相補的二量体化選択性モジュールを含み;かつ/又は第二及び第五のFcポリペプチドはそれぞれ、第二のFcポリペプチドと第五のFcポリペプチドとの間の二量体化を促進する相補的二量体化選択性モジュールを含み;かつ/又は第四及び第六のFcポリペプチドはそれぞれ、第四のFcポリペプチドと第六のFcポリペプチドとの間の二量体化を促進する相補的二量体化選択性モジュールを含む。
いくつかの実施形態において、相補的二量体化選択性モジュールは、Fcポリペプチドの選択的二量体化を促進する。Fcポリペプチドの選択的二量体化を促進するために相補的二量体化選択性モジュールを使用する本明細書に記載されるFc構築物のいずれかにおいて、Fcポリペプチドは、2つのFcポリペプチド間で(すなわち、Fc構築物のFcポリペプチドと別のFcポリペプチドとの間で)異なる配列、例えば、20以下のアミノ酸だけ異なる(例えば、15以下、10以下のアミノ酸)、例えば、20、15、10、8、7、6、5、4、3又は2以下のアミノ酸だけ異なる配列を有し得る。例えば、いずれのFc構築物の相補的二量体化選択性モジュールも、一方のFcポリペプチドのCH3抗体定常ドメインにおける操作された空隙及び他方のFcポリペプチドのCH3抗体定常ドメインにおける操作された隆起を含み得、ここで操作された空隙及び操作された隆起はFcポリペプチドの空隙中に入る隆起の対(protuberance-into-cavity pair)を形成するように位置づけられるので、本明細書において記載される構築物のFcポリペプチド配列は異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、Fc構築物はCH3ドメインにアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態において、Fc構築物は、Fcポリペプチド(1つ又はそれ以上のFcポリペプチド)のCH3ドメインに 選択的二量体化のためのアミノ酸修飾を含む。例となる操作された空隙及び隆起は当該分野で公知である。他の実施形態において、相補的二量体化選択性モジュールは、一方のFcポリペプチドのCH3抗体定常ドメインにおいて操作された(置換された)負に荷電したアミノ酸、及び他方のFcポリペプチドのCH3抗体定常ドメインにおいて操作された(置換された)正に荷電したアミノ酸を含み、ここで負に荷電したアミノ酸及び正に荷電したアミノ酸は、相補的Fcポリペプチド間でFcドメインの形成を促進するように位置づけられる。例となる相補的アミノ酸変化は当該分野で公知である。いくつかの実施形態において、Fcポリペプチドの1つ又はそれ以上は同じ配列である。いくつかの実施形態において、Fcポリペプチドの1つ又はそれ以上は同じ改変を有する。いくつかの実施形態において、Fcポリペプチドの1つ、2つ、3つ、又は4つのみが同じ改変を有する。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は、3つのFc単量体を形成する4つのポリペプチドを含み、ここで第一のポリペプチドは、第一のFcポリペプチド、第一のリンカー、及び第二のFcポリペプチドを含み、ここで第二のポリペプチドは、第三のFcポリペプチド、第二のリンカー、及び第四のFcポリペプチドを含み、ここで第三のポリペプチドは第五のFcポリペプチドを含み、第四のポリペプチドは第六のFcポリペプチドを含み、ここで第一のFcポリペプチド及び第三のFcポリペプチドは第一のFc単量体を形成し、ここで第五のFcポリペプチド及び第二のFcポリペプチドは第二のFc単量体を形成し、そして第六のFcポリペプチド及び第四のFcポリペプチドは第三のFc単量体を形成する。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は、リンカーを介して接合された少なくとも2つのFc単量体を含む。いくつかの実施形態において、Fc多量体は少なくとも1つのリンカーを含む。リンカーは、アミノ酸3~200個(例えば、3~150、3~100、3~60、3~50、3~40、3~30、3~20、3~10、3~8、3~5、4~30、5~30、6~30、8~30、10~20、10~30、12~30、14~30、20~30、15~25、15~30、18~22及び20~30アミノ酸)を含むアミノ酸スペーサーであってもよい。適切なペプチドリンカーは当該分野で公知であり、これらとしては、例えば、グリシン及びセリンのような可動性アミノ酸残基を含有するペプチドリンカーが挙げられる。特定の実施形態において、リンカーは、モチーフ、例えばGS、GGS、GGSG、GGGGS、GGG、GGGGの単一、複数又は繰り返しのモチーフを含有し得る。特定の実施形態において、リンカーは、GS、GGS、GGSG、GGGGS、GGG、GGGG又は配列番号128~155のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、直列に連続して2つのFcポリペプチドを接続するために使用される。他の実施形態において、リンカーは、CL及びCH1抗体定常ドメインを接続するために使用される。他の実施形態において、リンカーは、グリシン及びセリン以外のアミノ酸も含有し得る、例えば配列番号156~162。
本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、Fc多量体は、配列番号97~127、又は10個まで(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個まで)の単一アミノ酸改変(例えば、置換、例えば、保存的置換)を有する配列番号97~127を含むポリペプチドを含み得る。いくつかの実施形態において、構築物のFcドメインのFcポリペプチドは、2つのFcポリペプチドの間で(すなわち、Fc構築物のFcポリペプチドと別のFcポリペプチドとの間で)、異なる配列、例えば、20個以下のアミノ酸(例えば、15、10以下のアミノ酸)、例えば、20、15、10、8、7、6、5、4、3又は2個以下のアミノ酸だけ異なる配列を有し得る。
いくつかの実施形態において、Fc構築物中の1つ又はそれ以上のポリペプチドは、末端リジン残基を含有する。いくつかの実施形態において、Fc構築物中の1つ又はそれ以上のFcポリペプチドは、末端リジン残基を含有しない。いくつかの実施形態において、Fc構築物中の全てのFcポリペプチドは、末端リジン残基を含有する。いくつかの実施形態において、Fc構築物中の全てのFcポリペプチドは、末端リジン残基を含有しない。いくつかの実施形態において、配列番号98、100、101、103、105、107、109、111、113、115、及び117のいずれか1つの配列を含むか、その配列からなるか、又は本質的にその配列からなるFcポリペプチド中の末端リジン残基は、末端リジン残基を含有しない対応するFcポリペプチドを生成するために除去され得る。いくつかの実施形態において、末端リジン残基は、末端リジン残基を含有する対応するFcポリペプチドを生成するために、配列番号97、99、102、104、106、108、110、112、114、116、及び118~127の配列を含むか、それらの配列からなるか、又は本質的にそれらの配列からなるFcポリペプチドに付加され得る。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は、補体系タンパク質に対するFc多量体の結合親和性を増加させるいずれの変異も欠失している。いくつかの好ましい実施形態において、補体系タンパク質はC1qである。いくつかの実施形態において、本発明において使用されるFc多量体に存在しない変異は、位置267、268、又は324のいずれか1つにおいてFc多量体のIgG1 Fcドメインにおける少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F又はS324Tの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、除外された変異は、位置267、268、及び324のいずれか1つにおける少なくとも1つの変異を含み、そして位置233、234、235、236、238、265、297、299、又は328のいずれか1つにおける少なくとも1つの点変異を更に含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、又はL328Fの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、位置299におけるアミノ酸は、スレオニンから、セリン又はシステイン以外の任意の他のアミノ酸に変異されない。いくつかの実施形態において、位置298におけるアミノ酸は、プロリン以外の任意のアミノ酸に変異されない。いくつかの実施形態において、位置236におけるアミノ酸は欠失されない。好ましい実施形態において、除外された変異はS267E、H268F及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異はS267E、H268F、S324T、及びN297Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異はS267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
好ましい実施形態において、Fc多量体は静脈内又は非静脈内に投与される。一実施形態において、Fc多量体は皮下投与される。一実施形態において、Fc多量体は、経口、又は髄腔内、又は吸入により肺内に適用される。
好ましい実施形態において、Fc多量体は、約3mg/kgから約200mg/kgの範囲に及ぶ量で投与される。一実施形態において、Fc多量体は、約1mg/kgから約500mg/kgの範囲に及ぶ量で投与される。全ての用量はFc多量体が投与される対象の体重1kgあたりである。
代替の実施形態において、本発明において使用されるFc多量体はストラドマーであり、この場合、IgG Fcフラグメントは、WO2008/151088、WO2012/016073、WO2017/214321又はWO2017/019565に開示されるように、多量体化ドメイン、好ましくはIgG2ヒンジ領域を備えているが、ここでFc多量体は、補体系タンパク質に対するその結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。いくつかの好ましい実施形態において、補体系タンパク質はC1qである。好ましい実施形態において、Fc多量体は、配列番号5を含むポリペプチド鎖を発現させることにより製造され、これにより成熟Fc多量体は配列番号5の残基21~264を含む。
当然のことながら、前述の全般的な記載及び以下の詳細な記載は、例示及び説明のみのためであり、開示のさらなる非限定的な説明を提供することを意図される。
詳細な説明
以下の詳細な説明及び実施例は、本開示の特定の実施形態を説明する。当業者には当然のことながら、その範囲に包含される本開示の多数の変形及び改変がある。従って、特定の実施形態の記載は、限定とみなされるべきではない。
以下の詳細な説明及び実施例は、本開示の特定の実施形態を説明する。当業者には当然のことながら、その範囲に包含される本開示の多数の変形及び改変がある。従って、特定の実施形態の記載は、限定とみなされるべきではない。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、そして各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み;そしてここでFc多量体は、補体系タンパク質に対するFc多量体の結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。
いくつかの実施形態において、補体系タンパク質に対するFc多量体の結合親和性を増加させ、かつ従って本発明において使用されるFc多量体から除外される変異は、Fc多量体の1つ又はそれ以上のIgG1 Fcドメインにおける少なくとも1つの点変異であり得る。いくつかの実施形態において、除外された変異は、IgG1 Fcドメインの位置267、268、及び/又は324における点変異に対応する。いくつかの実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、除外された変異は、位置267、268、及び/又は324の少なくとも1つに対応する1つ又はそれ以上の点変異であり得、そしてさらに位置233、及び/又は位置234、及び/又は位置235、及び/又は位置236、及び/又は位置238、及び/又は位置265、及び/又は位置297、及び/又は位置299、及び/又は位置328における少なくとも1つの点変異を更に含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、位置233、及び/又は位置234、及び/又は位置235、及び/又は位置236、及び/又は位置238、及び/又は位置265、及び/又は位置297、及び/又は位置299、及び/又は位置328における少なくとも1つの点変異であり得る。いくつかの実施形態において、除外された変異は、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、及びL328Fの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、位置299におけるアミノ酸は、スレオニンから、セリン又はシステイン以外の任意の他のアミノ酸に変異していない。いくつかの実施形態において、位置298におけるアミノ酸は、プロリン以外の任意のアミノ酸に変異していない。いくつかの実施形態において、位置236におけるアミノ酸は欠失されない。いくつかの実施形態において、補体系タンパク質C1qであり得る。
いくつかの実施形態において、Fc多量体はストラドマーではない。いくつかの実施形態において、Fc多量体は、多量体化ドメインとしてIgG2ヒンジを含まない。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、そして各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み、そしてここで多量体化ドメインはIgG2ヒンジを含まない。さらなる実施形態において、Fc多量体はストラドマーではない。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、そして各Fc融合ポリペプチド鎖はIgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み;そしてここでFc多量体はストラドマーではない。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は6つのIgG融合単量体を含む。いくつかの実施形態において、Fc多量体は多量体化ドメインとしてIgGM尾部を含む。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は組み換えヒトFc六量体である。いくつかの実施形態において、組み換えヒトFc六量体は6つのヒトIgG1 Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのヒトFc融合ポリペプチド鎖を含み、そして各Fc融合ポリペプチド鎖は、ヒトIgG1 Fcポリペプチド及びヒトIgM尾部を含み、そしてさらに、各Fc融合ポリペプチド鎖におけるIgM尾部は、IgG1 Fcポリペプチドの定常領域のC末端における232アミノ酸と融合した18アミノ酸を含む。
いくつかの実施形態において、組み換えヒトFc六量体は、補体系タンパク質に対するその結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。いくつかの好ましい実施形態において、補体系タンパク質はC1qである。いくつかの実施形態において、本発明において使用されるFc多量体に存在しない変異は、位置267、268、又は324のいずれか1つにおけるFc六量体のIgG1 Fcドメインにおける少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F又はS324Tの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、除外された変異は、位置267、268、及び324のいずれか1つにおける少なくとも1つの変異を含み、そしてさらに、位置233、234、235、236、238、265、297、299、又は328のいずれか1つにおける少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、又はL328Fの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、位置299におけるアミノ酸は、スレオニンから、セリン又はシステイン以外の任意の他のアミノ酸に変異されない。いくつかの実施形態において、位置298におけるアミノ酸は、プロリン以外の任意のアミノ酸に変異されない。いくつかの実施形態において、位置236におけるアミノ酸は欠失されない。好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異はP238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異はP238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。いくつかの実施形態において、組み換えヒトFc六量体はストラドマーではない。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は、3つのFc単量体を形成する4つのポリペプチドを含み、ここで第一のポリペプチドは、第一のFcポリペプチド、第一のリンカー、及び第二のFcポリペプチドを含み、ここで第二のポリペプチドは、第三のFcポリペプチド、第二のリンカー、及び第四のFcポリペプチドを含み、ここで第三のポリペプチドは第五のFcポリペプチドを含み、ここで第四のポリペプチドは第六のFcポリペプチドを含み、ここで第一のFcポリペプチド及び第三のFcポリペプチドは第一のFc単量体を形成し、ここで第五のFcポリペプチド及び第二のFcポリペプチドは第二のFc単量体を形成し、そしてここで第六のFcポリペプチド及び第四のFcポリペプチドは第三のFc単量体を形成する。
さらなる実施形態において、Fc多量体は、補体系タンパク質に対するその結合を増加させる任意の変異を欠失している。いくつかの好ましい実施形態において、補体系タンパク質はC1qである。いくつかの実施形態において、本発明において使用されるFc多量体に存在しない変異は、位置267、268、又は324のいずれか1つにおいてFc多量体のIgG1 Fcドメインにおける少なくとも1つ点変異を含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F又はS324Tの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、除外された変異は、位置267、268、及び324のいずれか1つにおける少なくとも1つの変異を含み、そしてさらに、位置233、234、235、236、238、265、297、299、又は328のいずれか1つにおける少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、又はL328Fの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、位置299におけるアミノ酸は、スレオニンから、セリン又はシステイン以外の任意の他のアミノ酸に変異していない。いくつかの実施形態において、位置298におけるアミノ酸はプロリン以外の任意のアミノ酸に変異していない。いくつかの実施形態において、位置236におけるアミノ酸は欠失していない。好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
本明細書で使用されるように用語「Fc単量体」は、IgGの重鎖CH2及びCH3ドメインを含有する免疫グロブリンG(IgG)重鎖定常領域の一部、又はそのバリアントもしくはフラグメントとして定義される。IgG CH2及びCH3ドメインは、それぞれCγ2及びCγ3ドメインとも呼ばれる。
Fc単量体は、ポリペプチドのN末端部分においてシステイン残基間のジスルフィド結合により連結された2つの同一なFcポリペプチドから構成され得る。IgGについて記載されたジスルフィド連結の配置は、天然ヒト抗体に関するものである。他の脊椎動物種由来の抗体間ではいくらかの変動があるが、このような抗体は、本発明の状況において適切であるかもしれない。Fcポリペプチドは、組み換え発現技術により製造され得、そして天然抗体において起こるようにジスルフィド結合により結合する。あるいは、1つ又はそれ以上の新しいシステイン残基が、ジスルフィド結合を形成させることを可能にするためにFcポリペプチドにおける適切な位置に導入され得る。
一実施形態において、本発明において使用されるFc単量体は、WO2017/129737に記載されるようにヒトIgG1 CH2及びCH3ドメインを含む2つの同一のポリペプチド鎖を含む。
別の実施形態において、本発明において使用されるFc単量体は、CH2及びCH3ドメイン全体を含み、そしてWO2017/129737において開示されるように、それぞれCH2のN末端又はCH3のC末端で切断されている。典型的に、Fc単量体は免疫グロブリンのFabポリペプチドを欠いている。Fabポリペプチドは、CH1ドメイン及び重鎖可変領域ドメインから構成される。
本発明において使用されるFc単量体は、免疫グロブリンのCH2及びCH3部分より多くを含み得る。例えば、一実施形態において、単量体は、免疫グロブリンのヒンジ領域、それらのフラグメントもしくはバリアント、又は改変されたヒンジ領域を含む。天然ヒンジ領域は、天然免疫グロブリンにおいてCH1ドメインとCH2ドメインとの間に存在する免疫グロブリンの領域である。バリアント又は改変されたヒンジ領域は、天然ヒンジ領域と長さ及び/又は組成が異なる任意のヒンジである。このようなヒンジは、他の種由来のヒンジ領域を含む場合がある。他の改変されたヒンジ領域は、Fc部分のクラス又はサブクラスと異なるクラス又はサブクラスの抗体に由来する完全ヒンジ領域を含む。あるいは、改変されたヒンジ領域は、天然ヒンジの一部又は繰り返し中の各単位が天然ヒンジ領域由来である繰り返し単位を含む。別の代替において、天然ヒンジ領域は、システイン残基の数を増加させるか又は減少させることにより変更される。他の改変されたヒンジ領域は完全に非天然であり、そして長さ、システイン組成、及び可動性のような所望の特性を有するように設計される。
本発明の使用のための多数の改変されたヒンジ領域は、例えば、US5,677,425、WO1998/25971、WO1999/15549、WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171において記載されている。
本発明の一実施形態において使用されるFc多量体におけるFcポリペプチドは、そのN末端にヒトIgG1ヒンジ領域を有する。一実施形態において、ヒンジ領域は配列番号1の残基1~15の配列を有する。
本発明のいくつかの実施形態において使用されるFcポリペプチド鎖は、WO 2017/129737に開示されるようなシグナルペプチドを含んで発現される。シグナルペプチドは、Fcポリペプチド鎖の分泌を方向づけ、その後、Fcポリペプチド鎖の残りの部分から切断される。
本発明の実施形態において使用されるFcポリペプチドは、ヒンジ領域のN末端に融合されたシグナルペプチドを含む。シグナルペプチドは、配列番号2の残基1~19の配列を有し得る;しかし、当業者には当然のことながら、哺乳動物細胞からのタンパク質の分泌を方向づける他のシグナル配列も使用され得る。
2つ又はそれ以上のFc単量体の多量体構造の形成を改善するために、Fcポリペプチドは尾部に融合され、これは単量体単位を集合させて多量体にする。Fcポリペプチドの尾部への融合の生成物は、本明細書で使用されるように「Fc融合ポリペプチド」である。Fcポリペプチドが二量体化してFc単量体を形成するように、Fc融合ポリペプチドも同様に二量体化してFc融合単量体を形成する。
従って、本明細書で使用されるように「Fc融合単量体」は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、そして各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG Fcポリペプチド及びIgM尾部又はIgA尾部、好ましくはIgM尾部を含む。
適切な尾部は、IgM又はIgA由来である。IgM及びIgAは、共通のH2L2抗体単位の共有結合多量体としてヒトにおいて天然に存在する。IgMは、J鎖を組み込んだ場合は五量体として、又はJ鎖を欠いている場合には六量体として存在する。IgAは単量体として存在し、そして二量体を形成する。IgM及びIgAの重鎖はそれぞれ、尾部として知られるC末端定常ドメインへのそれぞれ18アミノ酸伸長を有する。この尾部は、ポリマーにおいて重鎖間にジスルフィド結合を形成するシステイン残基を含み、そして重合において重要な役割を有すると考えられる。尾部はグリコシル化部位も含む。
本開示の尾部は、任意の適切なアミノ酸配列を含む。尾部は、天然に存在する抗体において見られる尾部であるか、またあるいは、天然の尾部とは長さ及び/又は組成が異なる改変された尾部である。他の改変された尾部は、完全に非天然であり、そして長さ、可動性及びシステイン組成のような多量体化に望まれる特性を有するように設計される。
本発明の実施形態において使用されるFc多量体における尾部は、配列番号1の残基233~250において及び配列番号9において示されるようなヒトIgM由来の18アミノ酸配列の全て又は一部を含む。あるいは、尾部は、ヒトIgM尾部のフラグメント又はバリアントでもよい。
本発明の一実施形態において使用されるFc多量体における尾部は、Fcポリペプチドの定常領域のC末端に直接融合されて、Fc融合ポリペプチドを形成する。あるいは、尾部はFcポリペプチド、好ましくはヒトIgG1 Fcポリペプチドの定常領域のC末端で232アミノ酸のセグメントに融合される。あるいは、尾部は、介在するアミノ酸配列を用いて間接的に融合される。例えば、短いリンカー配列は、尾部とFcポリペプチドとの間に提供され得る。リンカー配列は、1アミノ酸長と20アミノ酸長との間であり得る。
多量体構造の形成は、Fc融合ポリペプチドのFc部分のロイシン309をシステインに変異させることにより更に改善され得る。L309C変異は、Fc融合単量体間のさらなるジスルフィド結合形成を可能にし、これがさらに、Fc融合単量体の多量体化を促進する。IgG Fc部分の残基は、Edelman GM et al (1969)、Proc Natl Acad Sci 63、78-85に記載される、IgGについてのEUナンバリングシステムに従って番号付けられる;Kabat et al.、1983、Sequences of proteins of immunological interest、US Department of Health and Human Services、National Institutes of Health、Washington、DCも参照のこと。IgGのLeu309は、配列相同性により、IgMのCμ3ドメインにおけるCys414及びIgAのCα2ドメインにおけるCys309に対応する。
他の変異はさらに、又はあるいは、所望の効果を達成するためにFc融合ポリペプチドに導入される。本明細書において使用されるように用語「変異」は、1つ又はそれ以上のアミノ酸の置換、付加、又は欠失を含む。いくつかの実施形態において、WO2017/129737に記載されるように、Fc融合ポリペプチドは、20個まで、10個まで、5個まで、又は2個までのアミノ酸変異を含む。
本発明の一実施形態において使用されるFc多量体における変異は、WO2017/129737に記載されるような保存的アミノ酸変化である。本明細書において使用されるように用語「保存的アミノ酸変化」は、あるアミノ酸の、電荷、疎水性、構造、及び/又は寸法のような類似した生化学的特性を有する異なるアミノ酸への変化を指す。本発明の一実施形態において使用されるFc融合ポリペプチドは、20個まで、10個まで、5個まで、又は2個までの保存的アミノ酸変化を含む。例えば、Fc融合ポリペプチドは、5個までの保存的アミノ酸変化を含む。
保存的アミノ酸変化は、以下の残基の群の間での変化を含む:Val、Ile、Leu、Ala、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr、Gly、Ala;Lys、Arg、His;及びPhe、Tyr、Trp。
ペプチド、タンパク質、又はそれらのフラグメントを記載するために本明細書において使用される場合の「バリアント」は、改変されたアミノ酸を有し得る。適切な改変としては、アセチル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、ヌクレオチジル化、リン酸化、ADP-リボシル化、及び当該分野で公知の他の改変が挙げられる。このような改変は、ペプチドが組み換え技術により製造される場合には翻訳後に起こり得る。それ以外の場合には、改変は当該分野で公知の技術を使用して合成ペプチドに対して行われ得る。改変は、アミノ酸のペプチドへの組み込みの前に含められ得る。カルボン酸基はエステル化されても、アミドに変換されてもよく、アミノ基は、アルキル化、例えばメチル化され得る。バリアントはまた、例えば炭水化物側鎖又は個々の糖部分を除去又は付加するために、翻訳後に改変され得る。
本明細書において使用されるように用語「Fc多量体」は、2つ又はそれ以上の重合したFc単量体を記載する。Fc単量体はFc融合単量体であり得る。Fc多量体は、2~6つのFc単量体を含み、Fc二量体、Fc三量体、Fc四量体、Fc五量体、及びFc六量体を生じる。Fc単量体は結合して、様々な数の単量体単位を有するポリマーとなる。
本明細書で使用されるように、用語「接合された」は、化学的結合体化、組み換え手段、並びに化学結合、例えばジスルフィド結合及びアミド結合を含む手段による、2つ又はそれ以上のエレメント、成分、又はタンパク質ドメイン、例えばポリペプチドの組み合わせ又は連結を記載するために使用される。例えば、2つの単一のポリペプチドは、化学的結合体化、化学結合、ペプチドリンカー、又は任意の他の共有結合連結手段を介して接合されて、1つの連続的タンパク質構造を形成し得る。いくつかの実施形態において、第一のFcポリペプチドは、リンカー、例えばペプチドリンカーを用いて第二のFcポリペプチドに接合され、ここでペプチドリンカーのN末端は、化学結合、例えばペプチド結合を介して第一のFcポリペプチドのC末端に接合され、そしてペプチドリンカーのC末端は、化学結合、例えばペプチド結合を介して第二のFcポリペプチドのN末端に接合される。
本明細書で使用されるように、用語「リンカー」は、2つのエレメント、例えばFcポリペプチドの間の「スペーサー」を指す。用語「スペーサー」は、2つのポリペプチド又はポリペプチドドメインの間に存在して、2つのポリペプチド又はポリペプチドドメインの間に空間及び/又は可動性をもたらす、部分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー)又はアミノ酸配列(例えば、3~200アミノ酸、3~150アミノ酸、又は3~100アミノ酸配列)を指す。アミノ酸スペーサーは、ポリペプチドの一次配列の部分である(例えば、ポリペプチド骨格を介して間を空けられたポリペプチド又はポリペプチドドメイン)。「リンカー」は、2つのポリペプチドの間に存在して可動性及び/又は空間をもたらすことができる。
WO2017/129737において、Fc多量体の大部分は六量体である。本明細書で使用されるように、用語「大部分」は、50%より多い、60%より多い、70%より多い、80%より多い、又は90%より多いことを指す。一実施形態において、Fc多量体の80%より多くがFc六量体である。
特定の数の単量体を含有するFc多量体が必要な場合、Fc多量体は、分子サイズによって、例えばゲルろ過(サイズ排除クロマトグラフィー)により分離され得る。
一実施形態において、本発明において使用されるFc多量体は、例えば、WO2008/151088、又はWO2012/016073に記載されるように、複数のFcドメインを含む有望なIVIG置換タンパク質である。
別の実施形態において、WO2008/151088に記載されるように、多量体Fcは、IgG2ヒンジ領域のような多量体化ドメインを有するストラドマーであり、ここでストラドマーは、補体系タンパク質に対するその結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。好ましい実施形態において、補体系タンパク質はC1qである。
一実施形態において、例えば、WO2008/151088、WO2012/016073及びWO2017/214321(それら全体として参照により本明細書に加入される)において開示されるように、本発明において使用されるFc多量体は、2つ又はそれ以上の多量体化単位を含む化合物であり、ここで上記単位はそれぞれ、多量体化領域、及びFcγ受容体に結合することができる少なくとも1つのFcドメインを含む領域を含み、ここで上記単位はそれぞれ、多量体化領域単量体、及び少なくとも1つのFcポリペプチドを含む領域を含み、ここで2つの単量体の二量体化は、多量体化領域、及びFcγ受容体に結合することができる少なくとも1つのFcドメインを含む領域を形成し、ここで2つ又はそれ以上の単位の多量体化領域は多量体化して化合物を形成し、そしてここでこの化合物は、第一のFcドメインを介して第一のFcγ受容体に、そして第二のFcドメインを介して第二のFcγ受容体に結合することができ、ここで多量体化領域は、IgG2ヒンジ、IgE CH2ドメイン、ロイシンジッパー、イソロイシンジッパー及び亜鉛フィンガーからなる群から選択され、そしてここでFcγ受容体に結合することができる少なくとも1つのFcドメインを含む領域はそれぞれ、IgG1ヒンジ、IgG1 CH2ドメイン及びIgG1 CH3ドメインを含む。しかし、本発明の実施形態は、例えばC1qのような補体系タンパク質に対するそれらの結合親和性を増加する任意の変異を欠失している。いくつかの実施形態において、多量体化領域は、IgG2ヒンジ領域、例えば、IgG2 12アミノ酸ヒンジ領域ERKCCVECPPCP(配列番号5における残基253~264)である。より好ましくは、Fc多量体は、配列番号5のポリペプチド(WO2012/016073における配列番号4)の発現により得られ、これはIgG2ヒンジ多量体化ドメインを介して自発的に多量体化する。
別の代替の実施形態において、本発明において使用される組み換えFc化合物は、その全体として参照により本明細書に加入されるWO2017/172853いおいて開示されるとおりである。好ましくは、組み換えFc化合物は、2つのCH2-CH3 Fcドメインを含む単鎖Fcペプチド、及びオリゴマー化ペプチドドメインを含む。好ましくは、組み換えFc化合物は、配列番号6(WO2017172853における配列番号6)又は配列番号7(WO2017172853における配列番号4)のタンパク質を含む。
いくつかの実施形態において、Fc多量体は、補体系タンパク質に対するFc多量体の結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。補体系タンパク質の例はC1qである。いくつかの実施形態において、除外された変異は、267、268、又は324のいずれか1つにおいてFc多量体のIgG1 Fcドメインにおける少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F又はS324Tの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、除外された変異は、位置267、268、及び324のいずれか1つにおける少なくとも1つの変異を含み、そしてさらに、位置233、234、235、236、238、265、297、299、又は328のいずれか1つにおける少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、除外された変異は、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、又はL328Fの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、位置299におけるアミノ酸は、スレオニンから、セリン又はシステイン以外の任意の他のアミノ酸に変異されない。いくつかの実施形態において、位置298におけるアミノ酸は、プロリン以外の任意のアミノ酸に変異されない。いくつかの実施形態において、位置236におけるアミノ酸は欠失されない。好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。別の好ましい実施形態において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
別の代替の実施形態において、本発明において使用される組み換えFc化合物は、WO2015/168643、WO2017/205436、WO2017/205434及びWO2018/129255(それら全体として参照により本明細書に加入される)において開示されるとおりである。好ましくは、組み換えFc化合物は、2~10のFcドメイン、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のFcドメインを有するFc構築物を含む。いくつかの実施形態において、組み換えFc化合物は3つのFcドメインを含む。
一態様において、本開示は、3つのFcドメインを形成する4つのポリペプチドを含むFc構築物を特徴とする。第一のポリペプチドは式A-L-Bを有し、式中、Aは第一のFcポリペプチドを含み;Lはリンカーであり;そしてBは第二のポリペプチドを含む。第二のポリペプチドは式A’-L’-B’を有し、ここでA’は第三のFcポリペプチドを含み;L’はリンカーであり;そしてB’は第四のFcポリペプチドを含む。第三のポリペプチドは第五のFcポリペプチドを含み、そして第四のポリペプチドは第六のFcポリペプチドを含む。この態様において、A及びA’は、組み合わさって第一のFcドメインを形成し、B及び第五のFcポリペプチドは組み合わさって第二のFcドメインを形成し、そしてB’及び第六のFcポリペプチドは組み合わさって第三のFcドメインを形成する。
この態様のいくつかの実施形態において、A及びA’はそれぞれ、これらのFcポリペプチド間の二量体化を促進する二量体化選択性モジュールを含む。他の実施形態において、B及び第五のFcポリペプチドはそれぞれ、これらのFcポリペプチド間の二量体化を促進する二量体化選択性モジュールを含む。さらに他の実施形態において、B’及び第六のFcポリペプチドはそれぞれ、これらのFcポリペプチド間の二量体化を促進する二量体化選択性モジュールを含む。
この態様のいくつかの実施形態において、A、B、A’、B’、第三のポリペプチド、及び第四のポリペプチドの1つ又はそれ以上は、Fcポリペプチドからなる。いくつかの実施形態において、A、B、A’、B’、第三のポリペプチド及び第四のポリペプチドはそれぞれ、Fcポリペプチドからなる。
この態様のいくつかの実施形態において、B及びB’の各々は変異D399K及びK409Dを含み、A及びA’の各々は変異S354C、T366W、及びE357Kを含み、そして第五及び第六のFcポリペプチドの各々は、変異Y349C、T366S、L368A、Y407V、及びK370Dを含む。
この態様のいくつかの実施形態において、A及びA’の各々は変異D399K及びK409Dを含み、B及びB’の各々は変異S354C、T366W、及びE357Kを含み、そして第五及び第六のFcポリペプチドの各々は、変異Y349C、T366S、L368A、Y407V、及びK370Dを含む。
この態様のいくつかの実施形態において、L及びL’の各々は、少なくとも4、8、12、14、16、18、又は20個のグリシンを含む。いくつかの実施形態において、L及びL’の各々は、4~30、8~30、又は12~30個のグリシンを含む。この態様のいくつかの実施形態において、L及びL’の各々は、GGGGGGGGGGGGGGGGGGGG(配列番号155)を含むか、それからなるか、又は本質的それからなる。
いくつかの実施形態において、Fc構築物は、IgG CL抗体定常ドメイン及びIgG CH1抗体定常ドメインをさらに含んでいてもよく、ここでIgG CL抗体定常ドメインは、リンカーを用いてIgG CH1 抗体定常ドメインのN末端に結合され、そしてIgG CH1 抗体定常ドメインは、例えば、リンカーを用いて、AのN末端に結合される。一実施形態において、Fc構築物は、第二のIgG CL抗体定常ドメイン及び第二のIgG CH1抗体定常ドメインを更に含み、ここで第二のIgG CL抗体定常ドメインは、例えばリンカーを用いて、第二のIgG CH1抗体定常ドメインのN末端に結合され、そして第二のIgG CH1抗体定常ドメインは、例えばリンカーを用いて、A’のN末端に結合される。
いくつかの実施形態において、Fc構築物は、B又はB’のN末端又はC末端に、例えばリンカーを用いて接合された異種部分、例えばペプチド、例えばアルブミン結合ペプチドを更に含む。
他の実施形態において、Fc構築物の第一及び第二のポリペプチドは、同じアミノ酸配列を有し、そしてFc構築物の第三及び第四のポリペプチドは、同じアミノ酸配列を有する。
いくつかの実施形態において、第一及び第二のポリペプチドは配列番号120の配列を含むか、配列番号120の配列からなるか、又は本質的に配列番号120の配列からなり、そして第三及び第四のポリペプチドは、配列番号119の配列を含むか、配列番号119の配列からなるか、又は本質的に配列番号119の配列からなる。本開示のいくつかの実施形態において、第一及び第二のポリペプチドの各々は、10個まで(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個まで)の単一アミノ酸改変(例えば、置換、例えば保存的置換)を有する配列番号120の配列を含むか、その配列からなるか、又は本質的にその配列からなり、そして第三及び第四のポリペプチドは、10個まで(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個まで)の単一アミノ酸改変(例えば、置換、例えば保存的置換)を有する配列番号119の配列を含むか、その配列からなるか、又は本質的にその配列からなる。いくつかの場合、第一及び第二のポリペプチドは、配列番号125の配列を含むか、配列番号125の配列からなるか、又は本質的に配列番号125の配列からなり、そして第三及び第四のポリペプチドは、配列番号124の配列を含むか、配列番号124の配列からなるか、又は本質的に配列番号124の配列からなる。本開示のいくつかの実施形態において、第一及び第二のポチペプチドの各々は、10個まで(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個まで)の単一アミノ酸改変(例えば、置換、例えば、保存的置換)を有する配列番号125の配列を含むか、その配列からなるか、又は本質的にその配列からなり、そして第三及び第四のポリペプチドは、10個まで(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個まで)の単一アミノ酸改変(例えば、置換、例えば、保存的置換)を有する配列番号124の配列を含むか、その配列からなるか、又は本質的にその配列からなる。いくつかの実施形態において、第一及び第二のポリペプチドは、配列番号113もしくは114の配列を含むか、配列番号113もしくは114の配列からなるか、又は本質的に配列番号113もしくは114の配列からなり、そして第三及び第四のポリペプチドは、配列番号107もしくは108の配列を含むか、配列番号107もしくは108の配列からなるか、又は本質的に配列番号107もしくは108の配列からなる。本開示のいくつかの実施形態において、第一及び第二のポリペプチドの各々は、10個まで(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個まで)の単一アミノ酸改変(例えば、置換、例えば、保存的置換)を有する配列番号113もしくは114の配列を含むか、その配列からなるか、又は本質的にその配列からなり、そして第三及び第四のポリペプチドは、10個まで(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個まで)の単一アミノ酸改変(例えば、置換、例えば、保存的置換)を有する配列番号107もしくは108の配列を含むか、その配列からなるか、又は本質的にその配列からなる。いくつかの実施形態において、第一及び第二のポリペプチドは、配列番号126の配列を含むか、配列番号126の配列からなるか、又は本質的に配列番号126の配列からなり、そして第三及び第四のポリペプチドは、配列番号122の配列を含むか、配列番号122の配列からなるか、又は本質的に配列番号122の配列からなる。本開示のいくつかの実施形態において、第一及び第二のポリペプチドの各々は、10個まで(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個まで)の単一アミノ酸改変(例えば、置換、例えば保存的置換)を有する配列番号126の配列を含むか、その配列からなるか、又は本質的にその配列からなり、そして第三及び第四のポリペプチドは、10個まで(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個まで)の単一アミノ酸改変(例えば、置換、例えば、保存的置換)を有する配列番号122の配列を含むか、その配列からなるか、又は本質的にその配列からなる。
本開示のこの態様のいくつかの実施形態において、第一及び第三のFcポリペプチドの各々は、第一のFcポリペプチドと第三のFcポリペプチドとの間の二量体化を促進する相補的二量体化選択性モジュールを含み、そして第二及び第四のFcポリペプチドの各々は、第二のFcポリペプチドと第四のFcポリペプチドとの間の二量体化を促進する相補的二量体化選択性モジュールを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第二のFcポリペプチドの各々の相補的二量体化選択性モジュールは操作された隆起を含み、そして第三及び第四のFcポリペプチドの各々の相補的二量体化選択性モジュールは操作された空隙を含む。
いくつかの実施形態において、Fcポリペプチドの1つ又はそれ以上は、IgGヒンジドメイン又はその部分、IgG CH2抗体定常ドメイン、及びIgG CH3抗体定常ドメインを含む。いくつかの実施形態において、Fcポリペプチドの各々は、IgGヒンジドメイン又はその部分、IgG CH2抗体定常ドメイン、及びIgG CH3抗体定常ドメインを含む。いくつかの実施形態において、Fcポリペプチドの各々はIgG1 Fcポリペプチドである。
本開示の前の2つの態様のいくつかの実施形態において、第一、第二、第三、及び第四のポリペプチドの1つ又はそれ以上におけるN末端Aspは、Glnに変異される。いくつかの実施形態において、第一、第二、第三、及び第四のポリペプチドの各々におけるN末端AspはGlnに変異される。
いくつかの実施形態において、第一、第二、第三、及び第四のポリペプチドの1つ又はそれ以上は、C末端リジンを欠失している。いくつかの実施形態において、第一、第二、第三、及び第四のポリペプチドの各々は、C末端リジンを欠失している。
いくつかの実施形態において、第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドは同じアミノ酸配列を有し、そして第三のポリペプチド及び第四のポリペプチドは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドは、同じアミノ酸配列を有していない。いくつかの実施形態において、第三のポリペプチド及び第四のポリペプチドは、同じアミノ酸配列を有していない。
いくつかの実施形態において、Fcドメインの少なくとも1つは、(i)1つもしくはそれ以上のFc受容体に対する結合親和性、(ii)エフェクター機能、(iii)Fcドメイン硫酸化のレベル、(iv)半減期、(v)プロテアーゼ耐性、(vi)Fcドメイン安定性、及び/又は(vii)分解に対する感受性の1つ又はそれ以上を変更するアミノ酸改変を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、1つ又はそれ以上のFc受容体に対する結合親和性を変更するアミノ酸改変、例えば、S267E/L328Fを含む。いくつかの実施形態において、Fc受容体はFcγRIIbである。いくつかの場合、本明細書において記載される改変は、FcγRIIb受容体に対する親和性を増加させる。いくつかの場合、S267E/L328F改変は、FcγRIIbに対する結合親和性を増加させる。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、Fcドメイン硫酸化のレベルを変更するアミノ酸改変、例えば、241F、243F、246K、260T、又は301Rを含む。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、例えば以下の組から選択される、プロテアーゼ耐性を変更するアミノ酸改変を含む:233P、234V、235A、及び236欠失;237A、239D、及び332E;237D、239D、及び332E;237P、239D、及び332E;237Q、239D、及び332E;237S、239D、及び332E;239D、268F、324T、及び332E;239D、326A、及び333A;239D及び332E;243L、292P、及び300L;267E、268F、324T、及び332E;267E及び332E;268F、324T、及び332E;326A、332E、及び333A;又は326A及び333A。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、分解に対するFcドメイン感受性を変更するアミノ酸改変、例えば、C233X、D234X、K235X、S236X、T236X、H237X、C239X、S241X、及びG249Xを含み、ここでXは任意のアミノ酸である。
いくつかの実施形態において、本開示は、a) i)第一のFcポリペプチド;ii)第二のFcポリペプチド;及びiii)第一のFcポリペプチドを第二のFcポリペプチドに接合するリンカー、を含む第一のポリペプチド;b) i)第三のFcポリペプチド;ii)第四のFcポリペプチド;及びiii)第三のFcポリペプチドを第四のFcポリペプチドを接合するリンカー、を含む第二のポリペプチド;c) 第五のFcポリペプチドを含む第三のポリペプチド;並びにd) 第六のFcポリペプチドを含む第四のポリペプチド、を含むFc構築物を特徴とし;ここで第一のFcポリペプチド及び第五のFcポリペプチドは、組み合わさって第一のFcドメインを形成し、第二のFcポリペプチド及び第四のFcポリペプチドは、組み合わさって第二のFcドメインを形成し、そして第三のFcポリペプチド及び第六のFcポリペプチドは、組み合わさって第三のFcドメインを形成し、そしてここで少なくとも1つのFcドメインは、位置I253においてアミノ酸改変(例えば、位置I253における単一アミノ酸改変)を含む。
いくつかの実施形態において、第一及び第二のポリペプチドは互いに同一であり、そして第三及び第四のポリペプチドは互いに同一である。いくつかの実施形態において、第一のFcドメインは、位置I253においてアミノ酸改変を含む。いくつかの場合、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方は、位置I253においてアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、第二のFcドメインは、位置I253においてアミノ酸改変を含む。いくつかの実施形態において、第二及び第四のFcドメイン単量体の一方又は両方は、位置I253においてアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、第三のFcドメインは、位置I253におけるアミノ酸改変を含む。いくつかの実施形態において、第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方は、位置I253においてアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、位置I253における各アミノ酸改変(例えば、置換)は、I253A、I253C、I253D、I253E、I253F、I253G、I253H、I253I、I253K、I253L、I253M、I253N、I253P、I253Q、I253R、I253S、I253T、I253V、I253W、及びI253Yからなる群から独立して選択される。いくつかの実施形態において、位置I253における各アミノ酸改変(例えば、置換)はI253Aである。
別の態様において、本開示は:a):i).第一のFcポリペプチド;ii).第二のFcポリペプチド;及びiii).第一のFcポリペプチドを第二のFcポリペプチドを接合するリンカー、を含む第一のポリペプチド;b).i).第三のFcポリペプチド;ii).第四のFcポリペプチド;及びiii).第三のFcポリペプチドを第四のFcポリペプチドに接合するリンカー、を含む第二のポリペプチド;c).第五のFcポリペプチドを含む第三のポリペプチド;並びにd).第六のFcポリペプチドを含む第四のポリペプチド、を含むFc構築物を特徴とし;ここで第一のFcポリペプチド及び第五のFcポリペプチドは、組み合わさって第一のFcドメインを形成し、第二のFcポリペプチド及び第四のFcポリペプチドは組み合わさって第二のFcドメインを形成し、そして第三のFcポリペプチド及び第六のFcポリペプチドは、組み合わさって第三のFcドメインを形成し、そしてここで少なくとも1つのFcドメインは、位置R292にアミノ酸改変(例えば、単一アミノ酸改変)を含む。
いくつかの実施形態において、第一のFcドメインは、位置R292においてアミノ酸改変を含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方は、位置R292においてアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、第二のFcドメインは、位置R292においてアミノ酸改変を含む。いくつかの実施形態において、第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方は、位置R292においてアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、第三のFcドメインは、位置R292においてアミノ酸改変を含む。いくつかの実施形態において、第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方は、位置R292においてアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、第一、第二、及び第三のFcドメインの各々は、位置R292においてアミノ酸改変(例えば、置換)を含む。いくつかの実施形態において、第一、第二、及び第三のFcドメインの各々は、アミノ酸改変(例えば、置換)R292Pを含む(すなわち、各FcモノマーはR292P改変を有する)。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み、第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み、そして第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。
いくつかの実施形態において、位置R292における各アミノ酸改変(例えば、置換)は、R292D、R292E、R292L、R292P、R292Q、R292R、R292T、又はR292Yから独立して選択される。いくつかの実施形態において、位置R292における各アミノ酸改変(例えば、置換)はR292Pである。いくつかの実施形態において、第一及び第三のFcドメインの各々はアミノ酸改変(例えば、置換)I253Aを含み、そして第一、第二、及び第三のFcドメインの各々は、アミノ酸改変(例えば、置換)R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み、第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み、第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み、そして第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一、第二、及び第三のFcドメインの各々は、アミノ酸改変(例えば、置換)I253A及びR292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み、第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み、そして第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み、第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み、そして第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。
いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン及び第三のFcドメインの各々はアミノ酸置換I253A及びR292Pを含み、そして第二のFcドメインはアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの場合、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;そして第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。
いくつかの実施形態において、第二のFcドメインはアミノ酸置換I253Aを含む。いくつかの実施形態において、第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方は、アミノ酸置換I253Aを含む。いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン及び第三のFcドメインの各々は、アミノ酸置換I253Aを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み、そして第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含む。いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン、第二のFcドメイン、及び第三のFcドメインの各々は、アミノ酸置換I253Aを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み、第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み、そして第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含む。
いくつかの実施形態において、第二のFcドメインはアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第二のFcドメインはアミノ酸置換I253A及びR292Pを含む。いくつかの実施形態において、第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み、そして第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン及び第三のFcドメインの各々はアミノ酸置換I253Aを含み、そして第二のFcドメインはアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;そして第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。
いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン及び第三のFcドメインの各々はアミノ酸置換I253Aを含み、そして第二のFcドメインはアミノ酸置換I253A及びR292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;そして第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン及び第三のFcドメインの各々はアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み、そして第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。
いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン及び第三のFcドメインはアミノ酸置換R292Pを含み、そして第二のFcドメインはアミノ酸置換I253Aを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;そして第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含む。いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン及び第三のFcドメインの各々は、I253A及びR292Pを含む(例えば、アミノ酸置換I253A及びR292Pを含む)。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;そして第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。
いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン及び第三のFcドメインの各々は、アミノ酸置換I253A及びR292Pを含み、そして第二のFcドメインはアミノ酸置換I253Aを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;そして第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含む。いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン、第二のFcドメイン、及び第三のFcドメインの各々は、アミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;そして第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。
いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン及び第三のFcドメインの各々はアミノ酸置換R292Pを含み、そして第二のFcドメインはアミノ酸置換I253A及びR292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;そして第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一のFcドメイン、第二のFcドメイン、及び第三のFcドメインの各々は、アミノ酸置換I253A及びR292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含み;第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換I253Aを含み;そして第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。
いくつかの実施形態において、第一、第二、及び第三のFcドメインの各々はアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第一及び第五のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第三及び第六のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。いくつかの実施形態において、第二及び第四のFcポリペプチドの一方又は両方はアミノ酸置換R292Pを含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるFc構築物は、抗原認識領域、例えば、可変ドメイン又は相補性決定領域(CDR)を含まない。いくつかの実施形態において、Fc構築物(又はFc構築物内のFcドメイン)は、全体に又は部分的に、異なるポリペプチドに存在するFcポリペプチドの結合により形成される。特定の実施形態において、Fc構築物は、2つのポリペプチドの結合を促進する追加のドメイン(例えば、IgM尾部又はIgA尾部)を含まない。他の実施形態において、共有結合連結(例えば、ジスルフィド架橋)は、接合してFcドメインを形成する2つのFcポリペプチド間のみに存在する。他の実施形態において、Fc構築物は、Fcドメイン間に共有結合連結(例えば、ジスルフィド架橋)を含まない。なお他の実施形態において、Fc構築物は、Fc構築物中のFcドメインの全て又は実質的に全てが、細胞表面上のFc受容体と同時に相互作用できるような十分な構造的可動性をもたらす。一実施形態において、Fcポリペプチドは、それらが二量体化選択性モジュールを有するという点において、野生型と又は互いに一次配列が異なる。
別の態様において、本開示は、Fcポリペプチドの選択的二量体化を促進するための組成物及び方法を特徴とする。本開示は、Fcドメインの2つのFcポリペプチドが、CH3抗体定常ドメイン間の境界部で荷電した残基の環内の少なくとも2つの位置において同一の変異を含む、Fcドメインを含む。本開示はまた、上記Fcドメインを製造する方法を含み、該方法は、CH3抗体定常ドメイン間の境界部で荷電した残基の環内の少なくとも2つの位置において、2つのFcポリペプチド配列において同一の変異を有する相補的二量体化選択性モジュールを導入することを含む。CH3抗体定常ドメイン間の境界部は、荷電した残基の環により取り囲まれた疎水性パッチからなる。1つのCH3抗体定常ドメインが別のものと一緒になる場合、これらの荷電した残基は、反対の電荷の残基と対になる。2つ又はそれ以上の相補的残基対の両方のメンバーの電荷を逆にすることにより、変異したFcポリペプチドは、同じ変異した配列のFcポリペプチドに対して相補的なままであるが、それらの変異を有していないFcポリペプチドに対してより低い相補性を有する。この実施形態において、同一の二量体化選択性モジュールは、ホモ二量体化を促進する。このようなFcドメインは、二重変異K409D/D399K、K392D/D399K、E357K/K370E、D356K/K439D、K409E/D399K、K392E/D399K、E357K/K370D、又はD356K/K439Eを含有するFcポリペプチドを含む。別の実施形態において、Fcドメインは、二重変異のいずれかの対、例えば、K409D/D399K/E357K/K370Eを組み合わせた四重変異を含むFcポリペプチドを含む。
別の実施形態において、同一の二量体化選択性モジュールに加えて、FcドメインのFcポリペプチドは、特定の結合を促進する非同一の変異(例えば、操作された空隙及び隆起)を有する相補的二量体化選択性モジュールを含む。結果として、2つのFcポリペプチドは、2つの二量体化選択性モジュールを含み、そして互いに対して相補的なままであるが、他のFcポリペプチドに対して減少した相補性を有する。この実施形態は、空隙含有Fcポリペプチドと隆起含有Fcポリペプチドとの間のヘテロ二量体化を促進する。一例において、両方のFcポリペプチドの荷電した残基対において非同一の変異を有する相補的二量体化選択性モジュールは、一方のFcポリペプチド上の隆起及び他方のFcポリペプチド上の空隙と組み合わされる。別の実施形態において、FcドメインのFcポリペプチドは、特定の結合を促進する非同一の変異を有する相補的二量体化選択性モジュール(例えば、操作された空隙及び隆起)を含み、かつ同一の二量体化選択性モジュールを含まない。
本明細書に記載されるFc構築物のいずれにおいても、Fcポリペプチドの順序は交換可能であるということが理解される。例えば、式A-L-Bを有するポリペプチドにおいて、Aのカルボキシ末端はLのアミノ末端に接合され得、これが今度はそのカルボキシ末端においてBのアミノ末端に接合される。あるいは、Bのカルボキシ末端は、Lのアミノ末端に接合され得、これが今度はそのカルボキシ末端においてCのアミノ末端に接合される。これらの構成の両方が式A-L-Bにより包含される。
これらの構築物の特性は、実質的に均一な組成物の効率的な生成を可能にする。組成物の均一性の程度は、組成物の薬物動態及びインビボ性能に影響を及ぼす。組成物におけるこのような均一性は、その組成物の安全性、有効性、均一性、及び信頼性を確実にするために望ましい。本開示のFc構築物は、実質的に均一である集団又は組成物(例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、又は99%均一)中に存在し得る。
本明細書においてさらに詳細に記載されるように、本開示は、全て同じ数のFcドメインを有するFc構築物を含有する実質的に均一な組成物、さらにはこのような実質的に均一な組成物を製造する方法を特徴とする。
本開示のFc構築物は、2~10個のFcドメイン(例えば、2~8個のFcドメイン、2~6個のFcドメイン、2~4個のFcドメイン、2~3個のFcドメイン、3~5個のFcドメイン、又は5~10個のFcドメイン)を有するFc構築物、例えば、本明細書に記載されるような、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のFcドメインを有する構築物の、実質的に均一な集団(例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、又は99%均一)を含む医薬組成物中に存在し得る。その結果として、Fc構築物の実質的な凝集又は望ましくない多量体化を有しない医薬組成物が製造され得る。
ポリヌクレオチド
本開示はさらに、Fc融合ポリペプチド又はFc多量体のためのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。用語「ポリヌクレオチド」は、一般に、未改変のRNA又はDNAでも改変されたRNA又はDNAでもよい任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖DNA、一本鎖又は二本鎖RNAであり得る。本明細書において使用されるように、用語「ポリヌクレオチド」はまた、イノシンのような、1つ又はそれ以上の改変された塩基及び/又は異常な塩基を含むDNA又はRNAを含む。当然のことながら、当業者に公知の多くの有用な目的に役立つ様々な改変がDNA及びRNAに対して行われ得る。本明細書において使用されるように用語「ポリヌクレオチド」は、このようなポリヌクレオチドの化学的、酵素的、又は代謝により改変された形態、さらにはウイルス、並びに例えば、単純な及び複雑な細胞を含めて細胞に特徴的なDNA及びRNAの化学形態を包含する。
本開示はさらに、Fc融合ポリペプチド又はFc多量体のためのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。用語「ポリヌクレオチド」は、一般に、未改変のRNA又はDNAでも改変されたRNA又はDNAでもよい任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖DNA、一本鎖又は二本鎖RNAであり得る。本明細書において使用されるように、用語「ポリヌクレオチド」はまた、イノシンのような、1つ又はそれ以上の改変された塩基及び/又は異常な塩基を含むDNA又はRNAを含む。当然のことながら、当業者に公知の多くの有用な目的に役立つ様々な改変がDNA及びRNAに対して行われ得る。本明細書において使用されるように用語「ポリヌクレオチド」は、このようなポリヌクレオチドの化学的、酵素的、又は代謝により改変された形態、さらにはウイルス、並びに例えば、単純な及び複雑な細胞を含めて細胞に特徴的なDNA及びRNAの化学形態を包含する。
当業者には当然のことながら、遺伝コードの縮重に起因して、所定のポリペプチドは異なるポリヌクレオチドによりコードされ得る。これらの「バリアント」は、本明細書において開示されるFc多量体により包含される。
Fc多量体のポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドであってよい。用語「単離された」ポリヌクレオチドは、他の核酸配列、例えば限定されないが、他の染色体及び染色体外DNA及びRNAを実質的に含まないポリヌクレオチドを指す。一実施形態において、単離されたポリヌクレオチドは、宿主細胞から精製される。当業者に公知の従来の核酸精製方法が、単離されたポリヌクレオチドを得るために使用され得る。この用語はまた、組み換えポリヌクレオチド及び化学的に合成されたポリヌクレオチドも含む。
本開示の別の態様は、本開示に従うポリヌクレオチドを含むプラスミド又はベクターである。一実施形態において、WO2017/129737において開示されるように、プラスミド又はベクターは発現ベクターを含む。一実施形態において、ベクターは、ヒト遺伝子治療における使用のための導入ベクターである。本開示の別の態様は、本開示のポリヌクレオチド、プラスミド、又はベクターを含む宿主細胞である。
本開示の宿主細胞は、Fc多量体を製造する方法において使用される。該方法は:
(a) 本開示の宿主細胞を、所望の挿入タンパク質が発現されるような条件下で培養すること;及び
(b) 場合により、宿主細胞から又は培地から所望の挿入タンパク質を回収すること
を含む。
(a) 本開示の宿主細胞を、所望の挿入タンパク質が発現されるような条件下で培養すること;及び
(b) 場合により、宿主細胞から又は培地から所望の挿入タンパク質を回収すること
を含む。
別の実施形態において、Fc多量体は、混入高分子、例えば他のタンパク質及び核酸に関して純度≧80%、純度≧90%、純度≧95%、純度≧99%、又は純度≧99.9%まで精製され、そして感染性及び発熱性の物質を含まない。本開示の単離されたFc多量体は、他の無関係なポリペプチドを実質的に含まないものであり得る。
本発明の特定の実施形態において、Fc多量体は/060712において記載されるものである。例としては、5、6又は7つのポリペプチド単量体単位を含むポリマータンパク質が挙げられ、ここで各ポリペプチド単量体単位は、2つの免疫グロブリンG重鎖定常領域を含むFc受容体結合部分を含み、ここで各免疫グロブリンG重鎖定常領域は、隣接するポリペプチド単量体単位の免疫グロブリンG重鎖定常領域のシステイン残基にジスルフィド結合を介して連結されるシステイン残基を含み、ここでポリマータンパク質は、哺乳動物対象に投与された場合に抗原特異的免疫抑制を引き起こすさらなる免疫調節性部分又は抗原部分を含まない。特定の態様において、2つの免疫グロブリンG重鎖定常領域は、単鎖Fcとしてポリペプチドリンカーを介して連結される。他の態様において、ポリペプチド単量体単位は、Fc受容体結合部分及び2つの免疫グロブリンG重鎖定常領域に融合された尾部領域からなり、これは単量体単位のポリマーへの構築を促進する。
別の実施形態において、免疫グロブリンG重鎖定常領域の各々は、哺乳動物重鎖定常領域、好ましくはヒト重鎖定常領域のアミノ酸配列;又はそのバリアントを含む。適切なヒトIgGサブタイプはIgG1である。
Fc受容体結合部分は、免疫グロブリンのFc部分より多くを含んでいてもよい。例えば、WO2014/060712に記載されるように、天然免疫グロブリンにおいてCH1ドメインとCH2ドメインとの間に存在する免疫グロブリンのヒンジ領域を含み得る。特定の免疫グロブリンについて、ヒンジ領域は、Fc受容体への結合のために必要である。好ましくは、Fc受容体結合部分は、CH1ドメイン及び重鎖可変領域ドメイン(VH)を欠失している。Fc受容体結合部分は、対応する免疫グロブリンのFc部分と比較して、C末端及び/又はN末端において切断され得る。ポリマータンパク質は、隣接するポリペプチド単量体単位の免疫グロブリンG重鎖定常領域のシステイン残基へのジスルフィド結合を介して連結されたシステイン残基を含む各免疫グロブリンG重鎖定常領域により形成される。IgG重鎖定常領域に基づく単量体単位のポリマーを形成する能力は、IgG重鎖定常領域の部分を、IgM又はIgAの対応する部分により似るように改変することにより改善され得る。免疫グロブリン重鎖定常領域又はそのバリアントの各々は、位置309においてシステイン残基、及び好ましくは位置310におけるロイシン残基を含むアミノ酸配列を含むIgG重鎖定常領域である。
尾部領域が存在する本発明の態様について、各ポリペプチド単量体単位は、2つの免疫グロブリンGは、重鎖定常領域の各々に融合された尾部領域を含み、ここで各ポリペプチド単量体単位の尾部領域は、単量体単位の、WO2014/060712に記載されるようなポリマーへの構築を促進する。例えば、尾部領域は、2つの免疫グロブリン重鎖定常領域の各々に対してC末端に融合される。尾部領域はIgMもしくはIgA尾部でも、又はそれらのフラグメントもしくはバリアントでもよい。
一実施形態において、介在するアミノ酸配列は、重鎖定常領域と尾部との間に提供され得、又は尾部は、WO2014/060712において開示されるように、重鎖定常領域のC末端に直接融合され得る。例えば、短いリンカー配列が、尾部領域と免疫グロブリン重鎖定常領域との間に提供され得る。典型的なリンカー配列は、1アミノ酸長と20アミノ酸長との間であり、典型的には2、3、4、5、6又は8、10、12、もしくは16アミノ酸長までである。重鎖領域と尾部領域との間を含めるために適切なリンカーは、Leu-Val-Leu-Gly(配列番号8)をコードする。好ましい尾部領域はヒトIgMの尾部領域であり、これはPTLYNVSLVMSDTAGTCY(配列番号9)である(Rabbitts TH et al、1981. Nucleic Acids Res.9 (18)、4509-4524;Smith et al(1995) J Immunol 154:2226-2236)。この尾部は、最初のThrをProで置換することによりN末端において改変され得る。これは尾部が単量体の重合を促進する能力に影響を及ぼさない。ヒトIgM尾部のさらに適切なバリアントは、Sorensen et al (1996) J Immunol 156:2858-2865に記載される。さらなるIgM尾部配列は、齧歯動物由来のGKPTLYNVSLIMSDTGGTCY(配列番号10)である。代替の好ましい尾部領域はヒトIgAの尾部領域であり、これはPTHVNVSVVMAEVDGTCY(配列番号11)である。他の種のIgMもしくはIgA由来の他の適切な尾部、又は単量体単位のポリマーへの構築を促進する合成の配列も使用され得る。免疫グロブリン重鎖定常領域が由来する種と同じ種由来の免疫グロブリン尾部を使用することは、必ずしも必要ではないが、そうすることが好ましい。
特定の態様において、ポリマータンパク質は、補体の古典的経路を活性化しないが、C1qに結合することはできるかもしれない。ポリマータンパク質は、15~25nm又は30nmまでのような典型的には直径約20nmを有する。分子サイズ及び直径の結果として、ポリマータンパク質は、典型的には良好な程度の組織浸透を有する。
WO2014/060712に記載される好ましいFc多量体は、配列番号12(WO2014/060712における配列番号8)の六量体であり、これからシグナルペプチドが分泌の間に切断され、その結果成熟産物は配列番号12の残基21~269を含む。
本発明の特定の実施形態において、使用されるFc多量体はWO2015/132364に記載されるものであり、これはヒトFc受容体に結合する多量体融合タンパク質に関する。融合タンパク質は、尾部を含み、位置309にシステイン残基は存在しない。
一実施形態において、多量体融合タンパク質は、2つ又はそれ以上のポリペプチド単量体単位を含み、ここで各ポリペプチド単量体単位は、2つの重鎖Fc領域を含む抗体Fcドメインを含む。各重鎖Fc領域は、位置309においてシステイン以外の任意のアミノ酸残基を含み、そしてそのC末端において尾部に融合される、単量体単位をの多量体への構築を引き起こす。各ポリペプチド単量体単位は、抗体可変領域を含まない。
特定の態様において、多量体融合タンパク質は融合パートナーを更に含み、これは抗原、病原体関連分子パターン(PAMP)、薬物、リガンド、受容体、サイトカイン又はケモカインである場合がある。融合パートナーは、各重鎖Fc領域のN末端に、直接的に、又はヒンジのような介在するアミノ酸配列をもちいて間接的に融合される。あるいは、短いリンカー配列が、融合パートナーと重鎖Fc領域との間に提供され得る。
他の態様において、多量体融合タンパク質は、1つ又はそれ以上の抗体可変領域を含まない。典型的には、分子はVH又はVL抗体可変領域のどちらも含まない。特定のさらなる態様において、WO2015/132364の多量体融合タンパク質はFabフラグメントを含まない。
別の実施形態において、多量体融合タンパク質の各ポリペプチド単量体単位は、抗体Fcドメインを含み、これは例えばヒトを含む任意の適切な種由来であってよい。さらに、抗体Fcドメインは、IgA(サブクラスlgA1及びlgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(サブクラスlgG1、lgG2、lgG3及びlgG4を含む)、及びIgMを含む任意の適切な抗体クラス由来であってよい。
抗体Fcドメインは、それぞれ重鎖Fc領域と呼ばれる2つのFcポリペプチド鎖を含む。2つの重鎖Fc領域は二量体化して抗体Fcドメインを生成する。抗体Fcドメイン内の2つの重鎖Fc領域は、互いに異なっていてもよいが、典型的には同じものである。
典型的に、各重鎖Fc領域は、2つもしくは3つの重鎖定常ドメインを含むか又はそれらからなる。例えば、IgA、IgD及びIgGは、2つの重鎖定常ドメイン(CH2及びCH3)から構成されるが、IgE及びIgMは、3つの重鎖定常ドメイン(CH2、CH3及びCH4)から構成される。重鎖Fc領域は、1つ又はそれ以上の異なる抗体クラス、例えば1、2又は3つの異なるクラス由来の重鎖定常ドメインを含み得る。
従って、本発明の一実施形態において使用されるFc多量体における重鎖Fc領域は、WO2015/132364において開示されるようなlgG1由来のCH3ドメインを含む。別の実施形態において、重鎖Fc領域は、lgG4由来のCH2ドメイン及びlgG1由来のCH3ドメインを含む。特定の実施形態において、重鎖Fc領域は位置355にアルギニン残基を含む。他の実施形態において、重鎖Fc領域は位置355にシステイン残基を含む。
本発明の一実施形態において使用されるFc多量体における重鎖Fc領域は、IgM由来のCH4ドメインを含む。IgM CH4ドメインは、典型的にはCH3ドメインと尾部との間に位置する。
他の態様において、重鎖Fc領域は、IgG由来のCH2及びCH3ドメイン並びにIgM由来のCH4ドメインを含む。
多量体融合タンパク質の尾部は、任意の適切なアミノ酸配列を含み得る。それは天然に存在する抗体において見いだされる尾部であってもよく、またあるいは、天然の尾部と長さ及び/又は組成が異なる改変された尾部であってもよい。他の改変された尾部は、全体的に合成されてもよく、そして長さ、可動性及びシステイン組成のような多量体化に望ましい特性を有するように設計されてもよい。尾部は、ヒトを含む任意の適切な種由来のものであり得る。
尾部は、配列番号9又は配列番号11に示されるヒトIgM又はIgA由来の18アミノ酸尾部配列の全て又は一部を含み得る。
尾部は、重鎖Fc領域のCの末端に直接的に、またあるいは、介在するアミノ酸配列を用いて間接的に融合され得る。例えば、短いリンカー配列が、尾部と重鎖Fc領域との間に供給され得る。
尾部は、上記の天然の配列のバリアント又はフラグメントを含み得る。IgM又はIgA尾部のバリアントは、典型的には、18個のアミノ酸位置のうち8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17個において天然の配列と同一であるアミノ酸配列を有する。フラグメントは、典型的には8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17個のアミノ酸を含む。尾部はハイブリッドIgM/lgA尾部であり得る。
本発明の実施形態において使用されるFc多量体における各重鎖Fc領域は、場合により、そのN末端に天然又は改変されたヒンジ領域を有し得る。本発明において使用されるFc多量体に組み込むことができる改変されたヒンジ領域の種類は、WO2015/132364において開示される。例えば、重鎖Fc領域は、そのN末端にインタクトなヒンジ領域を有する。特定の態様において、WO2015/132364で開示されるように、重鎖Fc領域及びヒンジ領域はlgG4に由来し、そしてヒンジ領域は、変異した配列CPPC(配列番号13)を含む。
適切なヒンジ配列の例を配列番号13~35に示す。
例えば、多量体融合タンパク質は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12又はそれ以上のポリペプチド単量体単位を含み得る。さらに、多量体融合タンパク質は、様々な数のポリペプチド単量体単位を有する、様々なサイズの多量体融合タンパク質の混合物を含み得る。
従って、特定の実施形態において、本発明において使用される多量体融合タンパク質は、6つのポリペプチド単量体単位からなり、ここで各ポリペプチド単量体単位は、抗体Fcドメイン及び尾部領域からなり、ここで各抗体Fcドメインは、位置309におけるアミノ酸残基がシステイン以外の任意のアミノ酸残基である2つの重鎖Fc領域からなり、そして場合により、各重鎖Fc領域はN末端にヒンジ領域を有し、そしてここで尾部領域は、各重鎖Fc領域のC末端に融合され、そして単量体単位の多量体への構築を引き起こす。
同様に、特定の多量体融合タンパク質内のポリペプチド単量体単位は、互いと同じであっても、互いに異なっていてもよい。
特定の実施形態において、ポリペプチド単量体単位のポリペプチド鎖は、場合により代替のヒンジ又は尾部配列を有する、配列番号36~57において提供されるアミノ酸配列を含む。
別の例において、本発明において使用される多量体融合タンパク質は、2つ又はそれ以上、好ましくは6つのポリペプチド単量体単位を含むか又はそれらからなり、ここで各ポリペプチド単量体単位は、2つの同一のポリペプチド鎖を含み、各ポリペプチド鎖は、上の配列番号36~57(WO2015/132364の配列番号26~47)のいずれか1つにおいて示される配列を含むか又はその配列からなり、そしてここで各ポリペプチド単量体単位は、抗体可変領域を含まない。
特定の実施形態において、多量体融合タンパク質は、未改変の多量体融合タンパク質と比較した場合に、サイトカイン放出を減少させ、かつ/又は血小板活性化を減少させ、かつ/又はC1q結合を減少させ、かつ/又は抗体被覆標的細胞のマクロファージ食作用の阻害の効力を増加させ、かつ/又は1つもしくはそれ以上のFc受容体に対する結合を変更する、1つ又はそれ以上の変異を含む。
本発明の特定の実施形態において、使用されるFc多量体はWO2015/132365に記載されるものであり、これはヒトFc受容体に結合する多量体融合タンパク質に関する。
本発明の実施形態において使用される多量体融合タンパク質は2つ又はそれ以上のポリペプチド単量体単位を含み、ここで各ポリペプチド単量体単位は、WO2015/132365において開示されるもののような2つの重鎖Fc領域を含む抗体Fcドメインを含む。各重鎖Fc領域は、位置309にシステイン残基、及びFcR結合を変更する少なくとも1つのさらなる変異を含み、そしてそのC末端において尾部に融合されて、これが単量体単位を多量体に集合させる。各ポリペプチド単量体単位は、抗体可変領域を含まない。
特定の態様において、多量体融合タンパク質は、上記のような融合パートナーを更に含む。他の態様において、多量体融合タンパク質は、上記のように、1つ又はそれ以上の抗体可変領域もFabフラグメントも含まない。一実施形態において、多量体融合タンパク質の各ポリペプチド単量体単位は、上記のように、重鎖Fc領域を有する抗体Fcドメインを含む。本発明の多量体融合タンパク質の尾部、改変されたヒンジ領域、及びポリペプチド単量体単位は、上に記載される特徴を含む。
本発明の特定の実施形態において使用される多量体融合タンパク質は、6つのポリペプチド単量体単位からなり、ここで各ポリペプチド単量体単位は、抗体Fcドメイン及び尾部領域からなり、ここで各抗体Fcドメインは、各重鎖Fc領域における位置309のアミノ酸残基がシステイン残基である2つの重鎖Fc領域からなり、そして各重鎖Fc領域は、FcR結合を変更する少なくとも1つのさらなる変異を含み、そして場合により、各重鎖Fc領域はN末端にヒンジ領域を有し、そしてここで尾部領域は各重鎖Fc領域のC末端に融合され、そして単量体単位の多量体への集合を引き起こす。
特定の実施形態において、ポリペプチド単量体単位のポリペプチド鎖は、上記のアミノ酸配列を含む。
別の例において、多量体融合タンパク質は、2つ又はそれ以上、好ましくは6つのポリペプチド単量体単位を含むか、又はそれらからなり、ここで各ポリペプチド単量体単位は、2つの同一のポリペプチド鎖を含み、各ポリペプチド鎖は、配列番号58~94(WO2015/132365の配列番号26~32及び50~64に対応する)のいずれか1つにおいて示される配列を含むかその配列からなり、そしてここで各ポリペプチド単量体単位は、抗体可変領域を含まない。
特定の実施形態において、WO2015/132365において教示されるように、本発明において使用される多量体融合タンパク質は、上に記載されるような機能を可能にする1つ又はそれ以上の変異を含む。
本開示の様々な生成物は医薬として有用である。したがって、本開示は、Fc多量体を含む医薬組成物、本開示のポリヌクレオチド、又は本開示のプラスミドもしくはベクターに関する。
本発明の一態様は、処置を必要とする対象において免疫複合体介在性腎臓障害を処置する方法である。該方法は、治療有効量のFc多量体を該対象に投与することを含む。別の実施形態において、該方法は、治療有効量の本開示のポリヌクレオチド又は本開示のプラスミドもしくはベクターを該対象に投与することを含む。
提案されるFc多量体の発現
適切な宿主細胞における高レベルでの組み換えタンパク質の製造は、当業者に公知の方法に従って、様々な発現系において増殖され得る組み換え発現ベクターにおいて適切な調節エレメントと一緒に、有効な転写単位に上述の改変されたcDNAを構築することが必要である。有効な転写調節エレメントは、それらの天然宿主として動物細胞を有するウイルス由来又は動物細胞の染色体DNA由来であり得る。例えば、サルウイルス40、アデノウイルス、BKポリオーマウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、もしくはラウス肉腫ウイルスの末端反復配列由来のプロモーター-エンハンサーの組み合わせ、又はベータ-アクチンもしくはGRP78のような動物細胞において強く恒常的に転写される遺伝子を含むプロモーター-エンハンサーの組み合わせが使用され得る。cDNAから転写される安定した高レベルのmRNAを達成するために、転写単位は、その3’-近位部分において、転写終結-ポリアデニル化配列をコードするDNA領域を含有するべきである。例えば、この配列は、サルウイルス40初期転写領域、ウサギベータグロビン遺伝子、又はヒト組織プラスミノーゲン活性化因子遺伝子由来であり得る。
適切な宿主細胞における高レベルでの組み換えタンパク質の製造は、当業者に公知の方法に従って、様々な発現系において増殖され得る組み換え発現ベクターにおいて適切な調節エレメントと一緒に、有効な転写単位に上述の改変されたcDNAを構築することが必要である。有効な転写調節エレメントは、それらの天然宿主として動物細胞を有するウイルス由来又は動物細胞の染色体DNA由来であり得る。例えば、サルウイルス40、アデノウイルス、BKポリオーマウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、もしくはラウス肉腫ウイルスの末端反復配列由来のプロモーター-エンハンサーの組み合わせ、又はベータ-アクチンもしくはGRP78のような動物細胞において強く恒常的に転写される遺伝子を含むプロモーター-エンハンサーの組み合わせが使用され得る。cDNAから転写される安定した高レベルのmRNAを達成するために、転写単位は、その3’-近位部分において、転写終結-ポリアデニル化配列をコードするDNA領域を含有するべきである。例えば、この配列は、サルウイルス40初期転写領域、ウサギベータグロビン遺伝子、又はヒト組織プラスミノーゲン活性化因子遺伝子由来であり得る。
次いで、cDNAは、Fc多量体の発現のために適した宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、この細胞株は、正確なフォールディング、ジスルフィド結合形成、アスパラギン連結グリコシル化及び他の翻訳後修飾、さらには培地中への分泌を確実にするために、脊椎動物起源の動物細胞株であるべきである。他の翻訳後修飾の例は、チロシンO-硫酸化及び新生ポリペプチド鎖のタンパク質分解プロセシングである。使用され得る細胞株の例は、サルCOS細胞、マウスL細胞、マウスC127細胞、ハムスターBHK-21細胞、ヒト胎児由来腎臓293細胞、及びハムスターCHO細胞である。
対応するcDNAをコードする組み換え発現ベクターは、いくつかの異なる方法で動物細胞株に導入され得る。例えば、組み換え発現ベクターは、異なる動物ウイルスに基づくベクターから生成され得る。これらの例は、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、及びウシパピローマウイルスに基づくベクターである。
組み換えDNAをそれらのゲノム中に組み込んだ特定の細胞クローンの単離を容易にするために、これらの細胞において優性選択可能マーカーとして機能し得る別の組み換え遺伝子と一緒に、対応するDNAをコードする転写単位を動物細胞中に導入することもできる。この種の優性選択可能マーカー遺伝子の例は、ジェネテシン(G418)に対する耐性を付与するTN4アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ハイグロマイシンに対する耐性を付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、及びピューロマイシンに対する耐性を付与するピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼである。このような選択可能マーカーをコードする組み換え発現ベクターは、所望のタンパク質のcDNAをコードするものと同じベクター上にあっても、又は宿主細胞のゲノムに同時に導入されて組み込まれる別個のベクター上にコードされてもよく、これはしばしば、異なる転写単位間に緊密な物理的連結を生じる。
所望のタンパク質のcDNAと一緒に使用することができる他の種類の選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)をコードする様々な転写単位に基づく。内因性dhfr活性を欠いている細胞、例えばCHO細胞(DUKX-B11、DG-44)へのこの種の遺伝子の導入後に、ヌクレオシドを欠いている培地中でこれらを増殖させることが可能となる。このような培地の例は、ヒポキサンチン、チミジン、及びグリシンを含まないHam F12である。これらのdhfr-遺伝子は、同じベクター上で連結されるか又は異なるベクター上で、上記の種類のCHO細胞中に、IgG Fc融合単量体をコードするcDNAと一緒に導入され得、結果として組み換えタンパク質を産生するdhfr-ポジティブ細胞株を生成する。
上記細胞株が細胞傷害性dhfr阻害剤メトトレキサートの存在下で増殖される場合、メトトレキサートに耐性の新しい細胞株が現れる。これらの細胞株は、増幅された数の連結されたdhfr及び所望のタンパク質の転写単位に起因して、増加した速度で組み換えタンパク質を産生し得る。増加する濃度のメトトレキサート(1~10,000nM)中でこれらの細胞株を増殖させる場合、所望のタンパク質を非常に高速に産生する新しい細胞株を得ることができる。
所望のタンパク質を産生する上記細胞株は、懸濁培養又は様々な固体支持体上で大規模に増殖させることができる。これらの支持体の例は、デキストランもしくはコラーゲンマトリックスに基づくマイクロキャリア、又は中空繊維もしくは様々なセラミック材料の形態の固体支持体である。細胞懸濁培養又はマイクロキャリア上で増殖される場合、上記細胞株の培養は、槽培養として又は長期に渡る条件培地の連続製造を用いた灌流培養のいずれかで行われ得る。したがって、本開示によれば、上記細胞株は、所望の組み換えタンパク質の製造のための工業工程の開発に十分適している。
精製及び製剤化
組み換えタンパク質は、所望のタンパク質と宿主細胞中又は細胞培養培地中の他の物質との間のサイズ、電荷、疎水性、可溶性、特異的親和性などの差異を利用する方法を含む、様々な生化学的及びクロマトグラフィー方法により濃縮され精製され得る。
組み換えタンパク質は、所望のタンパク質と宿主細胞中又は細胞培養培地中の他の物質との間のサイズ、電荷、疎水性、可溶性、特異的親和性などの差異を利用する方法を含む、様々な生化学的及びクロマトグラフィー方法により濃縮され精製され得る。
このような精製の例は、例えば、固体支持体に固定された、Fc多量体のFc部分又は別のFc結合リガンド(例えば、プロテインA又はプロテインG)に特異的なモノクローナル抗体への組み換えタンパク質の吸着である。Fc多量体の支持体への吸着、洗浄及び脱離後に、タンパク質は、上記の特性に基づいた様々なクロマトグラフィー技術によりさらに精製され得る。精製工程の順序は、例えば、工程の容量及び選択性、支持体の安定性又は他の局面によって選択される。精製工程は、例えば、限定されないが、イオン交換クロマトグラフィー工程、免疫アフィニティークロマトグラフィー工程、アフィニティークロマトグラフィー工程、色素クロマトグラフィー工程、及びサイズ排除クロマトグラフィー工程であり得る。
ウイルス混入の理論的リスクを最小にするために、ウイルスの有効な不活化又は除去を可能にする追加の工程が、プロセスに含まれ得る。例えば、このような工程は、液体もしくは固体状態での熱処理、溶媒及び/もしくは界面活性剤での処理、可視もしくはUVスペクトルでの照射、ガンマ線照射、精製の間の分配、又はウイルス濾過(ナノ濾過)を含み得る。
本明細書に記載されるFc多量体は、治療用途のために医薬製剤に製剤化され得る。医薬製剤の成分は、医薬製剤を提供するために、そこに添加され得る従来の生理学的に適合性の水性緩衝水溶液、場合により医薬品賦形剤に再懸濁又は溶解され得る。医薬製剤の成分は、全ての必要な薬学的、生理学的に適合性の賦形剤を既に含有していてもよく、そして医薬製剤を提供するために注射用水中に溶解されてもよい。
このような医薬担体及び賦形剤、さらには適切な医薬製剤の製造は、当該分野で周知である(例えば、「Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins」 Frokjaerら、Taylor&Francis (2000)又は「Handbook of Pharmaceutical Excipients」第3版、Kibbeら、Pharmaceutical Press (2000)を参照のこと)。特定の実施形態において、医薬組成物は、増量剤、緩衝剤、又は安定剤のような少なくとも1つの添加剤を含み得る。標準的な医薬製剤技術は、当業者に周知である(例えば、2005 Physicians’ Desk Reference(登録商標)、Thomson Healthcare:Monvale、NJ、2004;Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Gennaroら編 Lippincott Williams & Wilkins:Philadelphia、PA、2000を参照のこと)。適切な医薬添加剤としては、例えば、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、又はその他のような糖類、ヒスチジン、アルギニン、リジン、グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、スレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、フェニルアラニン、プロリン、又はその他のようなアミノ酸、塩化ナトリウム又は他の塩のような等張条件を達成する添加剤、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、塩化カルシウム、又はその他のような安定剤、トリス(ヒドロキシメチルアミノメタン)のような生理的pH緩衝化剤などが挙げられる。特定の実施形態において、医薬組成物は、pH緩衝化試薬及び湿潤剤もしくは乳化剤を含有し得る。さらなる実施形態において、組成物は、保存料又は安定剤を含有し得る。特に、本明細書に記載されるFc多量体を含む医薬製剤は、凍結乾燥された形態又は安定な可溶性形態で製剤化され得る。Fc多量体は、当該分野で公知の様々な手順により凍結乾燥され得る。凍結乾燥された製剤は、注射用滅菌水又は滅菌生理食塩水又は適切な緩衝液のような1つ又はそれ以上の薬学的に許容しうる希釈剤の添加により、使用前に再構成される。
Fc多量体の医薬製剤の組成物は、任意の薬学的に適切な手段により個体に送達され得る。様々な送達系が公知であり、そして任意の都合の良い経路により組成物を投与するために使用され得る。Fc多量体の医薬製剤の組成物は、従来の方法に従う静脈内又は非静脈内注射用に、又は経腸(例えば、経口、経膣、又は直腸)送達用に製剤化され得る。非静脈内投与については、Fc多量体の組成物は、皮下、筋肉内、関節内、腹腔内、脳内、髄腔内、肺内(例えば、噴霧)、鼻腔内、皮内、経口又は経皮投与のために製剤化され得る。一実施形態において、Fc多量体の組成物は、静脈内注射のために製剤化される。他の実施形態において、Fc多量体の組成物は、皮下、筋肉内、又は経皮投与のため、好ましくは皮下投与のために製剤化される。製剤は、注入により連続的に、又はボーラス注射により投与され得る。いくつかの製剤は、持続放出系を包含し得る。
Fc多量体の医薬製剤の組成物は、治療有効用量で患者に投与される。用語「治療有効」は、本明細書で使用されるように、許容されない有害副作用を生じる用量を教示することなく、所望の効果、免疫複合体介在性腎臓障害の重症度もしくは広がりの予防もしくは低減をもたらすため、又は検出可能な治療効果もしくは予防効果を示すために十分な用量を記載する。正確な用量は、例えば処方及び投与様式のような多くの因子に依存する。治療有効量は、細胞培養アッセイにおいて、又は動物モデル、例えば齧歯動物、ウサギ、イヌ、ブタ、又は霊長類モデルにおいて最初に見積もられ得る。次いでこのような情報は、ヒトにおける投与について有用な用量及び経路を決定するために使用され得る。
一実施形態において、1つの静脈内又は1つの非静脈内注射のためのFc多量体の用量は、体重1kgあたり1,000mg未満、体重1kgあたり800mg未満、体重1kgあたり600mg未満、体重1kgあたり400mg未満、体重1kgあたり200mg未満、又は体重1kgあたり100mg未満である。例えば、一実施形態において、Fc多量体の用量は、体重1kgあたり約0.1mg~体重1kgあたり約1,000mg、体重1kgあたり約1mg~体重1kgあたり約800mg、体重1kgあたり約1mg~体重1kgあたり約700mg、体重1kgあたり約1mg~体重1kgあたり約600mg、体重1kgあたり約1mg~体重1kgあたり約500mg、体重1kgあたり約1mg~体重1kgあたり約400mg、体重1kgあたり約1mg~体重1kgあたり約300mg、又は体重1kgあたり約3mg~体重1kgあたり約200mgである。一実施形態において、Fc多量体の用量な、体重1kgあたり約3mg~体重1kgあたり約1,000mg、体重1kgあたり約3mg~体重1kgあたり約800mg、体重1kgあたり約3mg~体重1kgあたり約600mg、体重1kgあたり約3mg~体重1kgあたり約500mg、体重1kgあたり約3mg~体重1kgあたり約400mg、体重1kgあたり約3mg~体重1kgあたり約300mg、体重1kgあたり約3mg~体重1kgあたり約200mg、又は体重1kgあたり約3mg~体重1kgあたり約100mgである。一実施形態において、Fc多量体の用量は、体重1kgあたり約10mg~体重1kgあたり約500mg、体重1kgあたり約10mg~体重1kgあたり約400mg、体重1kgあたり約10mg~体重1kgあたり約300mg、又は体重1kgあたり約10mg~体重1kgあたり約200mgである。
別の実施形態において、Fc多量体の医薬組成物は、単独で、又は他の治療剤と併せて投与される。一実施形態において、これらの薬剤は、同じ医薬の一部として組み込まれる。一実施形態において、Fc多量体は、ステロイドのような免疫抑制治療と併せて投与される。別の実施形態において、Fc多量体は、任意のB細胞もしくはT細胞調節剤又は免疫調節薬とともに投与される。
Fc多量体の投与頻度は、処方、投薬量、及び投与様式のような多くの因子に依存する。一実施形態において、Fc多量体の用量は、1日に複数回、1日に1回、1日おきに1回、3日ごとに1回、週に2回、週に1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、又は月に1回投与される。
治療効果
用語「治療効果」は、本明細書で使用されるように、それが特徴づけるパラメーターを改善することにより、またあるいは、その疾患/障害パラメターを全体で防止することにより疾患もしくは障害を処置することを記載する。例えば、治療効果は、(1)細胞培養モデルにおいてインビトロで、又は(2)ある用量のFc多量体を投与することにより疾患のマウスモデルにおいてインビボで決定され得る。Fc多量体の用量は、10~1000mg/kg、例えば、200mg/kgであり得る。Fc多量体は、静脈内もしくは非静脈内注射又は静脈内注入により投与され得る。動物の臨床評価は、Fc多量体の投与後の最終時点まで所定の時点で行われ得る。臨床評価は、特定の疾患又は障害の臨床症状に基づいてスコア付けすることを含み得る。生物学的サンプルはまた、Fc多量体の投与後の最終時点まで所定の時点に動物から採取され得る。用語「生物学的サンプル」は、本明細書で使用されるように、例えば、組織、血液、及び尿を指す。次いで生物学的サンプルは、免疫複合体介在性腎臓障害のマーカー又は指標の改善について評価され得る。
用語「治療効果」は、本明細書で使用されるように、それが特徴づけるパラメーターを改善することにより、またあるいは、その疾患/障害パラメターを全体で防止することにより疾患もしくは障害を処置することを記載する。例えば、治療効果は、(1)細胞培養モデルにおいてインビトロで、又は(2)ある用量のFc多量体を投与することにより疾患のマウスモデルにおいてインビボで決定され得る。Fc多量体の用量は、10~1000mg/kg、例えば、200mg/kgであり得る。Fc多量体は、静脈内もしくは非静脈内注射又は静脈内注入により投与され得る。動物の臨床評価は、Fc多量体の投与後の最終時点まで所定の時点で行われ得る。臨床評価は、特定の疾患又は障害の臨床症状に基づいてスコア付けすることを含み得る。生物学的サンプルはまた、Fc多量体の投与後の最終時点まで所定の時点に動物から採取され得る。用語「生物学的サンプル」は、本明細書で使用されるように、例えば、組織、血液、及び尿を指す。次いで生物学的サンプルは、免疫複合体介在性腎臓障害のマーカー又は指標の改善について評価され得る。
用語「誘導する」は、本明細書で使用されるように、引き起こす、供給する、達成する、生成する、生じる、もたらす、又は促進することとして定義される。
好ましい実施形態において、Fc多量体の治療効果は、Fc多量体を用いた処置の際に抗GBM糸球体腎炎のマウスモデルにおいて尿アルブミンレベルの減少により示され得る。抗GBM糸球体腎炎のマウスモデルは、Ottenらにより記載される(Otten et al.、J Immunol 2009;183:3980-3988)。この研究において、著者は、FcγR及び補体プロセスの両方が、抗GBM疾患の新規な弱毒化受動的モデルにおける悪化した炎症に必須であると結論づけた。このモデルにおいて、腎炎下(subnephritogenic)用量のウサギ抗GBM抗体を動物に投与し、続いてウサギIgGに対する固定用量のマウスmAbを投与し、糸球体腎炎の誘導のためのタイミング及び投薬を可能にした。これにより、野生型マウスにおいて補体古典的経路を経た再現性のある補体活性化及びアルブミン尿が生じた。アルブミン尿は、FcR-γ鎖-/-であるマウス又はC3-/-が減少したマウスにおいて検出されず、両方についての役割がこのモデルの病態形成におけるFcR-γ及び補体であることを示唆した。さらに、おそらく機能的古典的及びレクチン経路を欠いているC1q-/-及びC4-/-マウスは、アルブミン尿を生じたことがわかったので、Ottenらは、代替補体経路の関与を示唆した。
古典的補体経路の活性化
古典的補体経路は、特定の抗体応答を媒介し、そして補体成分のカスケードにより媒介される。このカスケードは、主に抗原-抗体複合体により活性化される。この経路の初期成分はタンパク質複合体C1であり、これは1つのC1q及びC1r2s2の2つのサブユニットから構成される。免疫グロブリンのC1qへの結合は、古典的補体経路の活性化からC1r2s2の触媒活性サブユニットへの活性化までの第一の工程をもたらす。活性化C1はC4をC4a及びC4bに、そしてC2をC2a及びC2bに切断する。次いでC2aはC4bに結合してC4b2aを形成し、これはC3転換酵素としても知られる。C3転換酵素は、C3のC3a及びC3bへの切断を触媒する。次いでC3bは活性化C4b2aに結合してC4b2a3bを形成し、これはC5転換酵素としても知られる。C5転換酵素は、C5をフラグメントC5a及びC5bに転換する。C5bは、C6、C7、C8、及びC9成分と一緒に、C5b-9複合体として知られる複合体を形成する。この複合体は、膜侵襲複合体(MAC)又は終末補体複合体(TCC)としても知られ、そして標的細胞において膜貫通チャネルを形成し、細胞溶解をもたらす。
古典的補体経路は、特定の抗体応答を媒介し、そして補体成分のカスケードにより媒介される。このカスケードは、主に抗原-抗体複合体により活性化される。この経路の初期成分はタンパク質複合体C1であり、これは1つのC1q及びC1r2s2の2つのサブユニットから構成される。免疫グロブリンのC1qへの結合は、古典的補体経路の活性化からC1r2s2の触媒活性サブユニットへの活性化までの第一の工程をもたらす。活性化C1はC4をC4a及びC4bに、そしてC2をC2a及びC2bに切断する。次いでC2aはC4bに結合してC4b2aを形成し、これはC3転換酵素としても知られる。C3転換酵素は、C3のC3a及びC3bへの切断を触媒する。次いでC3bは活性化C4b2aに結合してC4b2a3bを形成し、これはC5転換酵素としても知られる。C5転換酵素は、C5をフラグメントC5a及びC5bに転換する。C5bは、C6、C7、C8、及びC9成分と一緒に、C5b-9複合体として知られる複合体を形成する。この複合体は、膜侵襲複合体(MAC)又は終末補体複合体(TCC)としても知られ、そして標的細胞において膜貫通チャネルを形成し、細胞溶解をもたらす。
「完全古典的補体経路の活性化」は、本明細書において使用されるように、上記のような古典的補体経路全体の全行程の活性化として定義される。完全古典的補体経路の活性化は、古典的補体経路の活性化の最初の工程であるFc多量体のC1qへの結合、及び典的補体経路における最終エフェクターであるC4a、C5a又は可溶性もしくは膜結合C5b-9複合体の形成を調べることにより決定することができる。例えば、タンパク質がC1qに結合するが可溶性C5b-9は本質的に形成されない、すなわち、それぞれのポジティブコントロールの50%未満しか形成されない、好ましくは40%未満、好ましくは30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満しか形成されない場合、Fc多量体は、古典的補体経路の完全活性化を誘導しない。古典的補体経路の活性化はまた、C4aの生成、C2の切断、又はC3転換酵素の形成を評価することにより決定され得る。例えば、Fc多量体は、C4aの生成を誘導するがC2の切断を誘導しないか又はC3転換酵素の形成を誘導しない場合には、完全古典的補体経路の活性化を誘導しない。「誘導しない」は、それぞれのポジティブコントロールの50%未満、好ましくは40%未満、好ましくは30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満が形成されることを意味する。
Fc多量体のC1qに結合する能力は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイにより決定され得る。例えば、96ウェルプレートのウェルは、ヒトC1qでプレコーティングされ得、その後Fc多量体が加えられる。精製されたペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG結合体を加えてもよく、そして結合した結合体は発色性ペルオキシダーゼ基質、例えば3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)を使用することにより可視化され得る。
Fc多量体による古典的補体経路の活性化は、インビトロアッセイにより決定することができ、そしてC4a及び可溶性C5b-9の生成により示され得る。例えば、様々な濃度のFc多量体を、所定の時間の間、全血又は血清中でインキュベートし、そしてC4a又は可溶性C5b-9(sC5b-9)の結果としての生成を、ELISAのような免疫検出により決定することができる。使用されるFc多量体の濃度は、0.01mg/ml~2mg/ml、例えば、0.04mg/ml、0.2mg/ml、又は1.0mg/mlであり得る。
Fc多量体により誘導されたC4a及びsC5b-9の生成は、古典的補体経路の強力な活性化因子である熱凝集ガンマグロブリン(HAGG)により誘導されるこれらの成分の生成と比較され得る。例えば、このアッセイは全血において行われ得る。いくつかの実施形態によれば、WO2017/129737に記載されるように、Fc多量体は、HAGGにより誘導されたsC5b-9生成と比較して、50%未満のsC5b-9生成、40%未満のsC5b-9生成、30%未満のsC5b-9生成、20%未満のsC5b-9生成、又は10%未満のsC5b-9生成を誘導する。一実施形態において、Fc多量体は、全血においてHAGGにより誘導されたsC5b-9生成と比較して、全血において20%未満のsC5b-9生成を誘導する。別の実施形態において、Fc多量体は、全血においてHAGGにより誘導されたsC5b-9生成と比較して、全血において10%未満のsC5b-9生成を誘導する。さらに別の実施形態において、Fc多量体はsC5b-9生成を誘導しない。
用語「熱凝集IgGを用いて活性化された正常ヒト血清」は、本明細書で使用されるように、ほとんど全てのC4の切断が熱凝集IgGを用いて誘導された正常ヒト血清サンプルを指す。
Fc多量体による古典的補体経路の活性化はまた、C2タンパク質を検出することにより決定され得る。C2タンパク質がC2a及びC2bに切断される場合、C2タンパク質のレベルは減少し、古典的補体経路の活性化を示す。様々な濃度のFc多量体は、全血又は血清中で所定の時間の間、例えば2時間インキュベートされ得、その後C2タンパク質レベルが、免疫ブロット法のような免疫検出により決定され得る。古典的補体経路の活性化は、C2タンパク質の切断により示される。正常ヒト血清中のC2タンパク質のレベルを、Fc多量体とのプレインキュベーション後のC2タンパク質のレベルと比較して、C2切断の量を決定することができ、したがって、古典的補体経路の活性化を決定することができる。HAGGのような古典的補体経路の既知の活性化因子を、正常ヒト血清においてC2タンパク質の大部分の切断を誘導するためのポジティブコントロールとして使用することができる。用語「大部分」は、本明細書において使用されるように、50%より多く、60%より多く、70%より多く、80%より多く、又は90%より多くを含むと定義される。いくつかの実施形態において、WO2017/129737に記載されるように、Fc多量体は、C2タンパク質の大部分の切断を誘導しない。
Fc多量体による古典的補体経路の活性化は、C3転換酵素の形成を評価することによっても決定され得る。上記のように、C3転換酵素は、C2a及びC4bサブユニット(C4b2a)からなる。C2タンパク質がC2a及びC2bに切断されない場合、C3転換酵素は形成され得ない。そのようにして、C3転換酵素形成は、C2タンパク質切断を決定するために上記のように評価され得る。いくつかの実施形態において、WO2017/129737に記載されるように、Fc多量体は、C3転換酵素の形成を誘導しない。
古典的補体経路の阻害
Fc多量体による古典的補体経路の阻害は、C5a及びsC5b-9生成の阻害を決定することにより、又はC2タンパク質の切断の阻害を決定することにより、決定され得る。様々な濃度のFc多量体を、古典的補体経路の既知の活性化因子とともに全血又は血清中でインキュベートし得る。次いで、Fc多量体及び古典的補体経路の既知の活性化因子の存在下で生成されたsC5b-9のレベルを、古典的補体経路の既知の活性化因子のみを用いて生成されたsC5b-9のレベルと比較し得る。生成されたsC5b-9のレベルは上記のように決定され得る。使用されるFc多量体の濃度は、0.01mg/ml~2mg/ml、例えば、0.04mg/ml、0.2mg/ml、又は1.0mg/mlであり得る。古典的補体経路の既知の活性化因子はHAGGであり得る。古典的補体経路の活性化因子のみの存在下で生成されたsC5b-9のレベルと比較して、Fc多量体及び古典的補体経路の活性化因子の存在下で生成されたsC5b-9のレベルが低いほど、Fc多量体によるsC5b-9生成の阻害は大きい。いくつかの実施形態において、Fc多量体は、HAGGにより誘導されたsC5b-9生成と比較して、50%より多くのsC5b-9生成、60%より多くのsC5b-9生成、70%より多くのsC5b-9生成、80%より多くのsC5b-9生成又は90%より多くのsC5b-9生成を阻害する。一実施形態において、WO2017/129737に記載されるように、Fc多量体は、HAGGにより誘導されたsC5b-9生成の80%より多くを阻害する。
Fc多量体による古典的補体経路の阻害は、C5a及びsC5b-9生成の阻害を決定することにより、又はC2タンパク質の切断の阻害を決定することにより、決定され得る。様々な濃度のFc多量体を、古典的補体経路の既知の活性化因子とともに全血又は血清中でインキュベートし得る。次いで、Fc多量体及び古典的補体経路の既知の活性化因子の存在下で生成されたsC5b-9のレベルを、古典的補体経路の既知の活性化因子のみを用いて生成されたsC5b-9のレベルと比較し得る。生成されたsC5b-9のレベルは上記のように決定され得る。使用されるFc多量体の濃度は、0.01mg/ml~2mg/ml、例えば、0.04mg/ml、0.2mg/ml、又は1.0mg/mlであり得る。古典的補体経路の既知の活性化因子はHAGGであり得る。古典的補体経路の活性化因子のみの存在下で生成されたsC5b-9のレベルと比較して、Fc多量体及び古典的補体経路の活性化因子の存在下で生成されたsC5b-9のレベルが低いほど、Fc多量体によるsC5b-9生成の阻害は大きい。いくつかの実施形態において、Fc多量体は、HAGGにより誘導されたsC5b-9生成と比較して、50%より多くのsC5b-9生成、60%より多くのsC5b-9生成、70%より多くのsC5b-9生成、80%より多くのsC5b-9生成又は90%より多くのsC5b-9生成を阻害する。一実施形態において、WO2017/129737に記載されるように、Fc多量体は、HAGGにより誘導されたsC5b-9生成の80%より多くを阻害する。
用語「阻害する」は、本明細書で使用されるように、抑制すること、制限すること、防止すること、干渉すること、止めること、又は遮断することとして定義される。
C2タンパク質の切断の阻害は、同様に決定され得る。様々な濃度のFc多量体を、古典的補体経路の既知の活性化因子とともに全血又は血清中でインキュベートし得る。古典的補体経路の既知の活性化因子のみの存在下でのC2タンパク質のレベルと比較して、Fc多量体及び古典的補体経路の既知の活性化因子の存在下でのC2タンパク質のレベルが高いほど、Fc多量体によるC2切断の阻害は高い。C2タンパク質のレベルは上記のように決定され得る。使用されるFc多量体の濃度は、0.01mg/ml~2mg/ml、例えば、0.04mg/ml、0.2mg/ml、又は1.0mg/mlであり得る。古典的補体経路の既知の活性化因子はHAGGであり得る。いくつかの実施形態において、WO2017/129737に記載されるように、Fc多量体は、HAGGによるC2タンパク質の大部分の切断を阻害する。
古典的補体経路の阻害はまた、抗体感作又はオプソニン化赤血球を使用して古典的補体経路についての溶血アッセイを使用して決定することもできる。例えば、ヒツジ赤血球は、ウサギ抗ヒツジ抗体を用いてオプソニン化され得る。正常ヒト血清(NHS)は、オプソニン化赤血球の溶解を誘導する。Fcタンパク質はNHSとともにプレインキュベートされ、次いで赤血球に加えられ、そして
1時間37℃でインキュベートされ得る。Fc構築物の濃度は、1~1000μg/ml、例えば2.5、25、50、125、250、又は500μg/mlであり得る。あるいは、Fc単量体もまた、Fc構築物について示された濃度と同じ濃度でNHSとともにプレインキュベートされ得る。インキュベーション後に、混合物を遠心分離し、そして上清の412nmでの放出されたヘモグロビンの吸光度を測定することにより溶解の程度を決定することができる。
1時間37℃でインキュベートされ得る。Fc構築物の濃度は、1~1000μg/ml、例えば2.5、25、50、125、250、又は500μg/mlであり得る。あるいは、Fc単量体もまた、Fc構築物について示された濃度と同じ濃度でNHSとともにプレインキュベートされ得る。インキュベーション後に、混合物を遠心分離し、そして上清の412nmでの放出されたヘモグロビンの吸光度を測定することにより溶解の程度を決定することができる。
Fc多量体による古典的補体経路の阻害は、NHSを有するがFc多量体を有しない混合物と比較して、Fc多量体を含有する混合物における赤血球の減少した溶解により示され得る。Fc多量体によるオプソニン化赤血球の溶解の阻害は、Fc単量体の存在下でのオプソニン化赤血球の溶解と比較され得る。いくつかの実施形態において、Fc多量体は、Fc単量体と比較して、オプソニン化ヒツジ赤血球の溶解を阻害する。一実施形態において、WO2017/129737に記載されるように、Fc多量体は、Fc単量体と比較して、オプソニン化ヒツジ赤血球の溶解を70%より多く阻害する。
本発明の実施形態において、Fc多量体は、古典的補体経路又は副補体経路の活性化を阻害することにより、免疫複合体介在性腎臓障害の病態形成を防止する。
抗体依存性細胞毒性の活性化
抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)とも呼ばれる抗体依存性細胞傷害は、抗体が標的細胞を被覆し、そしてエフェクター細胞を動員して非食作用機序により標的細胞死を誘導するプロセスである(Zahavi et al. Antibody Therapeutics 2018;1(1):7-12)。抗体は、それらの抗原結合フラグメント(Fab)部分を介して標的細胞表面上のそれらの特異的抗原に結合し、そしてそれらのフラグメント結晶化可能領域(Fc)部分を介してエフェクター細胞と相互作用し、それによりエフェクターを標的に連結する架橋として作用する。エフェクター細胞は、抗体に結合するFc受容体(FcR)の発現によりADCCを行うことができる。ADCC活性は、好中球、単球及びFc受容体保有(FcR+)T及び非Tリンパ球について報告されている(Katz et al.、J Clin Invest. 1980;65(1):55-63)。公知のクラスのFcRとしてはFcγR[IgGに結合する];FcαR[IgAに結合する];及びFcεR[IgEに結合する]が挙げられる。FcγRは、骨髄系細胞による腫瘍細胞クリアランスのために最も重要であり、そして活性化するFcγRI (CD64)、FcγRIIA (CD32A)、FcγRIIIA(CD16A)、及び阻害性FcγRIIB(CD32B)受容体から構成される(Zahaviら)。抗体のFc部分にFcγRが結合すると、受容体架橋及び下流シグナル伝播が起こる。これらのエフェクター細胞が活性化されると、それらは細胞傷害性顆粒放出、Fasシグナル伝達、又は反応性酸素種生成により抗体被覆標的細胞の死を媒介する。ADCCにおいて利用される最もよく特徴づけされた機序は、エフェクター細胞顆粒からのパーフォリン及びグランザイムの放出である。
抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)とも呼ばれる抗体依存性細胞傷害は、抗体が標的細胞を被覆し、そしてエフェクター細胞を動員して非食作用機序により標的細胞死を誘導するプロセスである(Zahavi et al. Antibody Therapeutics 2018;1(1):7-12)。抗体は、それらの抗原結合フラグメント(Fab)部分を介して標的細胞表面上のそれらの特異的抗原に結合し、そしてそれらのフラグメント結晶化可能領域(Fc)部分を介してエフェクター細胞と相互作用し、それによりエフェクターを標的に連結する架橋として作用する。エフェクター細胞は、抗体に結合するFc受容体(FcR)の発現によりADCCを行うことができる。ADCC活性は、好中球、単球及びFc受容体保有(FcR+)T及び非Tリンパ球について報告されている(Katz et al.、J Clin Invest. 1980;65(1):55-63)。公知のクラスのFcRとしてはFcγR[IgGに結合する];FcαR[IgAに結合する];及びFcεR[IgEに結合する]が挙げられる。FcγRは、骨髄系細胞による腫瘍細胞クリアランスのために最も重要であり、そして活性化するFcγRI (CD64)、FcγRIIA (CD32A)、FcγRIIIA(CD16A)、及び阻害性FcγRIIB(CD32B)受容体から構成される(Zahaviら)。抗体のFc部分にFcγRが結合すると、受容体架橋及び下流シグナル伝播が起こる。これらのエフェクター細胞が活性化されると、それらは細胞傷害性顆粒放出、Fasシグナル伝達、又は反応性酸素種生成により抗体被覆標的細胞の死を媒介する。ADCCにおいて利用される最もよく特徴づけされた機序は、エフェクター細胞顆粒からのパーフォリン及びグランザイムの放出である。
抗体依存性細胞毒性の阻害
高い生理学的レベルの免疫グロブリンGは、ADCCの誘導を目的とした抗体ベースのがん処置においてADCCを強く阻害することが見いだされた(Preithner et al.Mol Immunol.2006;43(8):1183-93)。この知見の説明は、Fc受容体への結合についての血清IgGと治療用抗体との競合において見いだされた。この競合機序は、自己免疫及び炎症性疾患の処置において利用され得る。以前に言及されたように、高用量IVIGの抗炎症性効果について提案された作用機序の1つは、Fcγ受容体(FcγR)の遮断である。いくつかの実施形態において、本発明のFc多量体は、Fc受容体に結合し、疾患抗体と競合し、そして抗体依存性細胞毒性を阻害することができる。
高い生理学的レベルの免疫グロブリンGは、ADCCの誘導を目的とした抗体ベースのがん処置においてADCCを強く阻害することが見いだされた(Preithner et al.Mol Immunol.2006;43(8):1183-93)。この知見の説明は、Fc受容体への結合についての血清IgGと治療用抗体との競合において見いだされた。この競合機序は、自己免疫及び炎症性疾患の処置において利用され得る。以前に言及されたように、高用量IVIGの抗炎症性効果について提案された作用機序の1つは、Fcγ受容体(FcγR)の遮断である。いくつかの実施形態において、本発明のFc多量体は、Fc受容体に結合し、疾患抗体と競合し、そして抗体依存性細胞毒性を阻害することができる。
例となる実施形態
いくつかの態様において、本発明は、免疫複合体介在性腎臓障害の処置における使用のためのFc多量体に関し、ここでFc多量体は2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、ここで各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み;そしてここでFc多量体は、補体系タンパク質に対するFc多量体の結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。発明のいくつかの態様において、除外された変異は、Fc多量体のIgG1 FcドメインにおけるS267E、H268F、S324T、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、及びL328Fの少なくとも1つである。本発明の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
いくつかの態様において、本発明は、免疫複合体介在性腎臓障害の処置における使用のためのFc多量体に関し、ここでFc多量体は2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、ここで各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み;そしてここでFc多量体は、補体系タンパク質に対するFc多量体の結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。発明のいくつかの態様において、除外された変異は、Fc多量体のIgG1 FcドメインにおけるS267E、H268F、S324T、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、及びL328Fの少なくとも1つである。本発明の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体はストラドマーではない。本発明のいくつかの態様において、多量体化ドメインはIgG2ヒンジを含まない。
いくつかの態様において、本発明は、免疫複合体介在性腎臓障害の処置における使用のためのFc多量体に関し、ここでFc多量体は2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、ここで各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み、そしてここで多量体化ドメインはIgG2ヒンジを含まない。本発明のいくつかの態様において、Fc多量体はストラドマーではない。
いくつかの態様において、本発明は、免疫複合体介在性腎臓障害の処置における使用のためのFc多量体に関し、ここでFc多量体は、2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、ここで各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み;そしてここでFc多量体はストラドマーではない。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体は、6つのIgG Fc融合単量体を含む六量体である。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体は、IgG Fcポリペプチドと多量体化ドメインとの間にリンカー配列を更に含む。
本発明のいくつかの態様において、多量体化ドメインはIgM尾部を含む。本発明のいくつかの態様において、IgM尾部は、IgM尾部ドメイン由来の18個又はそれ以下のアミノ酸を含む。本発明のいくつかの態様において、IgM尾部は、配列番号1の残基233~250を含む。本発明のいくつかの態様において、IgM尾部は、IgG FcポリペプチドのC末端の232アミノ酸配列セグメントに融合される。
本発明のいくつかの態様において、IgG FcポリペプチドはIgG1 Fcポリペプチドを含む。本発明のいくつかの態様において、IgG1 Fcポリペプチドは、N末端において切断されたCH2ドメイン及び/又はC末端において切断されたCH3ドメインを含む。
本発明のいくつかの態様において、少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は、免疫グロブリンヒンジ領域、そのフラグメント、その変形、又はその改変された形態を更に含む。本発明のいくつかの態様において、少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖はIgG1ヒンジ領域を更に含む。本発明のいくつかの態様において、少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は、配列番号1の残基1~15を含む免疫グロブリンヒンジ領域を更に含む。本発明のいくつかの態様において、少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は配列番号1を含む。
本発明のいくつかの態様において、少なくとも1つFc融合ポリペプチド鎖は、配列番号2、又は配列番号2の残基20~269を含む。本発明のいくつかの態様において、少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は、少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖のIgG Fcポリペプチドの位置309においてロイシンがシステインに変異した配列番号3を含む。本発明のいくつかの態様において、少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は、配列番号4、又は配列番号4の残基20~269を含み、そして少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖のIgG Fcポリペプチドの位置309におけるロイシンがシステインに変異している。
本発明のいくつかの態様において、少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は、5つまでの保存的アミノ酸変化を有する。
本発明のいくつかの態様において、少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は、Fabポリペプチドを含まない。
いくつかの態様において、本発明は、免疫複合体介在性腎臓障害の処置における使用のための組み換えヒトFc六量体に関し、ここで組み換えヒトFc六量体は、6つのヒトIgG1 Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのヒトFc融合ポリペプチド鎖を含み、そして各Fc融合ポリペプチド鎖は、ヒトIgG1 Fcポリペプチド及びヒトIgM尾部を含み、そしてさらにここで各Fc融合ポリペプチド鎖におけるIgM尾部は、IgG1 Fcポリペプチドの定常領域のC末端において232アミノ酸と融合した18アミノ酸を含む。
本発明のいくつかの態様において、Fc六量体は、補体系タンパク質に対するFc六量体の結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。本発明のいくつかの態様において、除外された変異は、Fc六量体のIgG1 FcドメインにおけるS267E、H268F、S324T、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、及びL328Fの少なくとも1つである。本発明の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
本発明のいくつかの態様において、Fc六量体はストラドマーではない。
本発明のいくつかの態様において、Fc六量体の各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG1ヒンジ領域をさらに含み、そしてFabポリペプチドを含まない。
本発明のいくつかの態様において、Fc六量体の各IgG1 Fcポリペプチドは、位置309においてロイシンからシステインの変異を含む。
いくつかの態様において、本発明は、免疫複合体介在性腎臓障害の処置における使用のためのFc多量体に関し、ここでFc多量体は3つのFc単量体を形成する4つのポリペプチドを含み、ここで第一のポリペプチドは第一のFcポリペプチド、第一のリンカー、及び第二のFcポリペプチドを含み、ここで第二のポリペプチドは、第三のFcポリペプチド、第二のリンカー及び第四のFcポリペプチドを含み、ここで第三のポリペプチドは第五のFcポリペプチドを含み、ここで第四のポリペプチドは第六のFcポリペプチドを含み、ここで第一のFcポリペプチド及び第三のFcポリペプチドは第一のFc単量体を形成し、ここで第五のFcポリペプチド及び第二のFcポリペプチドは第二のFc単量体を形成し、そしてここで第六のFcポリペプチド及び第四のFcポリペプチドは第三のFc単量体を形成する。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体は、Fc多量体の補体系タンパク質に対する結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。本発明のいくつかの態様において、除外された変異は、Fc多量体のIgG1 FcドメインにおけるS267E、H268F、S324T、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、及びL328Fの少なくとも1つである。本発明の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
いくつかの態様において、本発明は、Fc多量体を対象に投与することを含む、免疫複合体介在性腎臓障害を処置する方法に関し、ここでFc多量体は、2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、ここで各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み、そしてここでFc多量体は、補体系に対するFc多量体の結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。本発明のいくつかの態様において、除外された変異は、Fc多量体のIgG1 FcドメインにおけるS267E、H268F、S324T、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、及びL328Fの少なくとも1つである。本発明の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体はストラドマーではない。本発明のいくつかの態様において、多量体化ドメインはIgG2ヒンジを含まない。
いくつかの態様において、本発明は、Fc多量体を対象に投与することを含む、免疫複合体介在性腎臓障害を処置する方法に関し、ここでFc多量体は2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、ここで各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み、そしてここで多量体化ドメインはIgG2ヒンジを含まない。本発明のいくつかの態様において、Fc多量体はストラドマーではない。
いくつかの態様において、本発明は、対象にFc多量体を投与することを含む、免疫複合体介在性腎臓障害を処置する方法に関し、ここでFc多量体は2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFcポリペプチド鎖を含み、ここで各Fc融合ポリペプチド鎖は、IgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含み;そしてここでFc多量体はストラドマーではない。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体の多量体化ドメインはIgM尾部を含む。本発明のいくつかの態様において、IgM尾部は配列番号1の残基233~250を含む。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体の少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は、IgGヒンジ領域を含み、かつFabポリペプチドを含まない。本発明のいくつかの態様において、Fc多量体の少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は、IgG1ヒンジ領域及びIgG1 Fcポリペプチドを含む。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体の少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は、配列番号1又は配列番号3を含む。本発明のいくつかの態様において、Fc多量体の少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は配列番号3を含み、そして少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖のIgG Fcポリペプチドの位置309においてロイシンはシステインに変異している。本発明のいくつかの態様において、少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は配列番号4を含み、そして少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖のIgG Fcポリペプチドの位置309においてロイシンはシステインに変異している。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体の少なくとも1つのFc融合ポリペプチド鎖は、5つまでの保存的アミノ酸変化を有する。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体は、6つのIgG Fc融合単量体を含む六量体である。
いくつかの態様において、本発明は、組み換えヒトFc六量体を対象に投与することを含む、免疫複合体介在性腎臓障害を処置する方法に関し、ここで組み換えヒトFc六量体は6つのヒトIgG1 Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのヒトFc融合ポリペプチド鎖を含み、そして各Fc融合ポリペプチド鎖は、ヒトIgG1 Fcポリペプチド及びヒトIgM尾部を含み、そしてさらにここで各Fc融合ポリペプチド鎖におけるIgM尾部は、IgG1 Fcポリペプチドの定常領域のC末端における232アミノ酸と融合した18アミノ酸を含む。
本発明のいくつかの態様において、組み換えヒトFc六量体は、補体系タンパク質に対する組み換えヒトFc六量体の結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。本発明のいくつかの態様において、除外された変異は、Fc六量体のIgG1 FcドメインにおけるS267E、H268F、S324T、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、及びL328Fの少なくとも1つである。本発明の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
本発明のいくつかの態様において、Fc六量体はストラドマーではない。
本発明のいくつかの態様において、Fc六量体の各Fc融合ポリペプチド鎖はIgG1ヒンジ領域を含み、かつFabポリペプチドを含まない。
本発明のいくつかの態様において、fc六量体の各IgG1 Fcポリペプチドは、位置309においてロイシンからシステインへの変異を含む。
いくつかの態様において、本発明は、Fc多量体を対象に投与することを含む、免疫複合体介在性腎臓障害を処置する方法に関し、ここでFc多量体は、3つのFc単量体を形成する4つのポリペプチドを含み、ここで第一のポリペプチドは、第一のFcポリペプチド、第一のリンカー、及び第二のFcポリペプチドを含み、ここで第二のポリペプチドは、第三のFcポリペプチド、第二のリンカー、及び第四のFcポリペプチドを含み、ここで第三のポリペプチドは第五のFcポリペプチドを含み、ここで第四のポリペプチドは第六のFcポリペプチドを含み、ここで第一のFcポリペプチド及び第三のFcポリペプチドは、第一のFc単量体を一緒に形成し、ここで第五のFcポリペプチド及び第二のFcポリペプチドは、第二の単量体を一緒に形成し、そしてここで第六のFcポリペプチド及び第四のFcポリペプチドは、第三のFc単量体を形成する。
いくつかの態様において、Fc多量体は、補体系タンパク質に対するFc多量体の結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している。本発明のいくつかの態様において、除外された変異は、Fc多量体のIgG1 FcドメインにおけるS267E、H268F、S324T、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、及びL328Fの少なくとも1つである。本発明の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びN297Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、L234A、及びL235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、N297A、E233P、L234V、L235A及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、L234A、L235Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びD265Aである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、G236R、S267E、H268F、S324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、G236R、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265G、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、D265W、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、E233P、L234V、L235A、S267E、H268F、N297A、S324T、S328F、及びG236の欠失である。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、S267E、H268F、S324T、及びL328Fである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、及びS324Tである。本発明の別の好ましい態様において、除外された変異は、P238D、S267E、H268F、S324T及びN297Aである。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体又は組み換えヒトFc六量体は、インビトロで補体依存性細胞傷害及び抗体依存性細胞傷害を阻害する。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体又は組み換えヒトFc六量体は、古典的補体経路又は副補体経路の活性化を阻害する。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体又は組み換えヒトFc六量体は、免疫複合体介在性腎臓障害のマウスモデルにおいてインビボで病態形成を阻害する。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体又は組み換えヒトFc六量体の少なくとも1つのFc単量体又はFc融合単量体は、Fcγ受容体に結合することができる。本発明のいくつかの態様において、第一のFc単量体又はFc融合単量体は、第一のFcγ受容体に結合することができ、第二のFc単量体又は第二のFc融合単量体は、第二のFcγ受容体に結合することができる。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体又は組み換えヒトFc六量体は、免疫複合体介在性腎臓障害の処置において使用され、ここで免疫複合体介在性腎臓障害は、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎炎、抗糸球体基底膜抗体(抗GBM)病、グッドパスチャー症候群、自己免疫腎疾患、ループス腎炎、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、又はブライト病のうちの1つである。本発明のいくつかの態様において、免疫複合体介在性腎臓障害はループス腎炎である。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体又は組み換えヒトFc六量体は、静脈内、皮下、経口、髄腔内、又は噴霧により肺内に投与される。
本発明のいくつかの態様において、Fc多量体又は組み換えヒトFc六量体は、約3mg/kg~200mg/kgの範囲に及ぶ量で対象に投与される。本発明のいくつかの態様において、Fc多量体又は組み換えヒトFc六量体は、約25mg/kg~約500mg/kgの範囲に及ぶ量で投与される。
実施例1:IgG1 Fc多量体の製造
ヒトIgM尾部の18アミノ酸残基(PTLYNVSLVMSDTAGTCY 配列番号9)を、ヒトIgG1 Fcフラグメントの定常領域(アミノ酸残基216~447、EUナンバリング;UniProtKB - P01857)のC末端に融合させることにより、Fc-μTPを生成した。Fc-μTPのLeu残基309(EUナンバリング)をCysに変異することによりFc-μTP-L309Cを生成した。Fc-μTP及びFc-μTP-L309CをコードするDNAフラグメントを合成し、そしてThermoFisher Scientific (MA、USA)によるヒト細胞発現のためにコドン最適化した。DNAフラグメントを、pRhG4哺乳動物細胞発現ベクターのApaLI及びXbaI部位にInTagポジティブ選択法(Chen、CG et al、(2014).Nucleic Acids Res 42(4):e26;Jostock T、et al (2004). J. Immunol. Methods.289:65-80)を使用してクローン化した。手短には、Fc-μTP及びFc-μTP-L309Cフラグメントを、ApaLI及びAscI消化により単離した。BGH polyA付加部位(BGHpA)及びクロラムフェニコール耐性遺伝子(CmR)から構成されるCmR InTagアダプターも、AscI及びSpeI消化により単離した(Chen、CG et al、(2014).Nucleic Acids Res 42(4):e26)。Fc分子及びCmR InTagアダプターを、pRhG4ベクターのApaLI及びXbaI部位にT4 DNAリガーゼを使用して同時クローン化(co-cloned)した。ポジティブクローンを、34μg/mlクロラムフェニコールを含有する寒天プレート上で 選択した。ミニプレップ(Miniprep)プラスミドDNAを、QIAprep Spinミニプレップキット(QIAGEN、Hilden、Germany)を使用して精製し、そして配列をDNA配列決定分析により確認した。制限酵素及びT4 DNAリガーゼはNew England BioLabs(MA、USA)から購入された。
ヒトIgM尾部の18アミノ酸残基(PTLYNVSLVMSDTAGTCY 配列番号9)を、ヒトIgG1 Fcフラグメントの定常領域(アミノ酸残基216~447、EUナンバリング;UniProtKB - P01857)のC末端に融合させることにより、Fc-μTPを生成した。Fc-μTPのLeu残基309(EUナンバリング)をCysに変異することによりFc-μTP-L309Cを生成した。Fc-μTP及びFc-μTP-L309CをコードするDNAフラグメントを合成し、そしてThermoFisher Scientific (MA、USA)によるヒト細胞発現のためにコドン最適化した。DNAフラグメントを、pRhG4哺乳動物細胞発現ベクターのApaLI及びXbaI部位にInTagポジティブ選択法(Chen、CG et al、(2014).Nucleic Acids Res 42(4):e26;Jostock T、et al (2004). J. Immunol. Methods.289:65-80)を使用してクローン化した。手短には、Fc-μTP及びFc-μTP-L309Cフラグメントを、ApaLI及びAscI消化により単離した。BGH polyA付加部位(BGHpA)及びクロラムフェニコール耐性遺伝子(CmR)から構成されるCmR InTagアダプターも、AscI及びSpeI消化により単離した(Chen、CG et al、(2014).Nucleic Acids Res 42(4):e26)。Fc分子及びCmR InTagアダプターを、pRhG4ベクターのApaLI及びXbaI部位にT4 DNAリガーゼを使用して同時クローン化(co-cloned)した。ポジティブクローンを、34μg/mlクロラムフェニコールを含有する寒天プレート上で 選択した。ミニプレップ(Miniprep)プラスミドDNAを、QIAprep Spinミニプレップキット(QIAGEN、Hilden、Germany)を使用して精製し、そして配列をDNA配列決定分析により確認した。制限酵素及びT4 DNAリガーゼはNew England BioLabs(MA、USA)から購入された。
Expi293TM発現系(Life Technologies、NY、USA)を使用した一過性トランスフェクションを、製造者の指示に従って行った。手短には、プラスミドDNA(0.8μg)を0.4ml Opti-MEM中で希釈し、そして穏やかに混合した。Expifectamine 293試薬(21.6μL)を0.4ml Opti-MEM中で希釈し、穏やかに混合し、そして5分間室温でインキュベートした。次いで希釈したExpifectamineを希釈したDNAに加え、穏やかに混合し、そして室温で20~30分間インキュベートし、DNA-Expifectamine複合体を形成させた。次いでDNA-Expifectamine複合体を、Expi293細胞 6.8ml(2x107細胞)を入れた50mlバイオリアクターチューブに加えた。細胞を37℃で8%CO2のインキュベーターで250rpmで振盪しながら約16~18時間インキュベートした。40μlエンハンサー1(Life Technologies、NY、USA)、400μlエンハンサー2(Life Technologies、NY、USA)及び200μl LucraToneTM Lupinからなるマスター混合物を調製し、そして各バイオリアクターチューブに加えた。細胞を更に4日間37℃、8% CO2のインキュベーターで250rpmで振盪しながらインキュベートした。4000rpmで20分間の上清の遠心分離からタンパク質を採取し、そしてきれいなチューブ中に0.22μmフィルターを使用して濾過した後、HPLC定量及び精製を行った。
IgG1 Fc多量体を製造するために、組み換えヒトIgG1 FcのC末端を、IgMの18アミノ酸の尾部に融合した。IgM尾部(μTP)は、五量体及び六量体の形成を促進する。残基309におけるロイシンからシステインへの点変異を有するFc融合タンパク質(Fc-μTP-L309C)を、野生型(WT)ヒトIgG1 Fcペプチド(Fc-μTP)又はそれらのバリアントのいずれかを用いて製造した。ロイシン309からシステインへの点変異(Fc-μTP-L309C)は、Fc分子間の共有結合の形成に起因して、WT(Fc-μTP)よりも安定な構造を生じると期待された。この安定化はJ鎖無しで達成される。
Fc-μTP及びFc-μTP-L309C融合単量体サブユニットは、以下の領域(残基番号はそれぞれ配列番号2及び4における残基番号を指す)を含む2つのペプチドから生じる:
シグナルペプチド 残基1~19
ヒトIgG1のヒンジ領域 残基20~34
ヒトIgG1のFc領域 残基35~251
ヒトIgMの尾部 残基252~269
Fc-μTP及びFc-μTP-L309Cペプチドの成熟形態についてのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1及び配列番号3として提供する。核酸コード配列をそれぞれ配列番号95(WO2017/129737の配列番号9に対応する)及び配列番号96(WO2017/129737の配列番号10に対応する)として提供する。
シグナルペプチド 残基1~19
ヒトIgG1のヒンジ領域 残基20~34
ヒトIgG1のFc領域 残基35~251
ヒトIgMの尾部 残基252~269
Fc-μTP及びFc-μTP-L309Cペプチドの成熟形態についてのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1及び配列番号3として提供する。核酸コード配列をそれぞれ配列番号95(WO2017/129737の配列番号9に対応する)及び配列番号96(WO2017/129737の配列番号10に対応する)として提供する。
発現の間、シグナルペプチドは切断されて、成熟Fc-μTP及びFc-μTP-L309C融合ペプチドを形成する。未成熟融合ペプチドの配列をそれぞれ配列番号2及び4に示す。
多量体Fcタンパク質のSDS-PAGEは、Fc構築物の単量体、二量体、三量体、四量体、五量体及び六量体に対応する各調製物についてのはしご状パターンを示した。Fc-μTP-L309Cは、予測される六量体位置に主要なバンドを有しているが、Fc-μTPは有しておらず、これは破壊的な電気泳動緩衝条件下でのより安定な構造と一致していた。より高次の構造、最も可能性が高いのは六量体の二量体、もまたFc-μTP-L309Cについて明白であった。以下の実施例について、この物質の六量体フラクションを精製した。
組み換えヒトIgG1 Fc単量体(配列番号1の残基1~232)もまた製造し、対照として使用した。
実施例4において使用される三価Fc構築物のために、Fc DNA配列をヒトIgG1 Fcから誘導した。隆起、空隙及び電荷変異を親Fc配列において置換した。ヒト免疫グロブリンカッパ軽鎖由来のリーダーペプチドをコードするDNAを、5’領域に結合させた。当然のことながら、様々なリーダーペプチドのいずれか1つを本発明に関連して使用してもよい。リーダーペプチドは、通常は小胞体内腔において切り取られる。5’末端EcoR1部位を含有する11ヌクレオチド配列を、ATG開始コドンの上流に加えた。3’末端Xho1部位を含有する30ヌクレオチド配列 を、3’末端TGA翻訳終止コドンの下流に加えた。DNA配列を哺乳動物細胞における発現のために最適化し、そしてpcDNA3.4哺乳動物発現ベクターにクローン化した。
実施例4において使用される分泌されたポリペプチドのアミノ酸配列を以下に示す。
SIF1
配列番号107又は108
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(K)
配列番号113又は114
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKSGGGSGGGSGGGSGGGSGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLKSDGSFFLYSDLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(K)
CC
配列番号124
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVDGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号125
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDKLTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLKSDGSFFLYSDLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
Q1
配列番号122
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMASRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVDGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号126
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMASRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDKLTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLKSDGSFFLYSDLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号107又は108
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(K)
配列番号113又は114
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKSGGGSGGGSGGGSGGGSGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLKSDGSFFLYSDLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(K)
CC
配列番号124
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVDGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号125
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDKLTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLKSDGSFFLYSDLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
Q1
配列番号122
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMASRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVDGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号126
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMASRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDKLTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPPEEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLKSDGSFFLYSDLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
Fc構築物のタンパク質発現のために、上に示したポリペプチド対を発現するDNAプラスミド構築物の2つををEXPI293細胞(LifeTechnologies)にトランスフェクトした。リポソームトランスフェクションを使用して、プラスミドDNAをEXPI293細胞に導入した。トランスフェクトしたプラスミド構築物の総量を固定したが、異なるプラスミド構築物の比を所望の構築物の収量を最大にするように変えた。
タンパク質発現後、発現された構築物を、プロテインAベースのアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより細胞培養上清から精製した。培地上清を、Poros MabCapture A (LifeTechnologies)カラム上にAKTA Avant分取クロマトグラフィーシステム(GE Healthcare Life Sciences)を使用してロードした。次いで捕捉されたFc構築物を、リン酸緩衝化食塩水(低濃度塩洗浄)、続いて500mM NaClを添加したリン酸緩衝化食塩水(高濃度塩洗浄)を用いて洗浄した。Fc構築物を100mMグリシン、150mM NaCl、pH3緩衝液で溶出した。カラムから出てきたタンパク質溶液に1M TRIS pH7.4を加えて中和し、最終濃度100mMとした。Fc構築物を、Poros(登録商標) XS樹脂(Applied Biosciences カタログ番号4404336)を使用するイオン交換クロマトグラフィーによりさらに分画した。このカラムを10mM MES、pH6(緩衝液A)を用いて予め平衡化し、そしてサンプルを、10mM MES、500mM塩化ナトリウム、pH6(緩衝液B)に対する勾配を用いて溶出した。
精製されたFc構築物をSDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)により還元条件下及び非還元条件下の両方で分析し、続いてクーマシーブルー染色を行って期待されたサイズのタンパク質バンドの存在を確認した。
実施例2:Fc-μTP-L309C(CHO)は抗GBM糸球体腎炎を阻害する
CHO細胞から生成されたFc-μTP-L309C[Fc-μTP-L309C(CHO)]の効果を、抗糸球体基底膜(GBM)糸球体腎炎のインビボモデルにおいて測定した。
CHO細胞から生成されたFc-μTP-L309C[Fc-μTP-L309C(CHO)]の効果を、抗糸球体基底膜(GBM)糸球体腎炎のインビボモデルにおいて測定した。
手短には、0日目に抗GBM糸球体腎炎をC57BL/6マウスにおいて、ポリクローナルウサギ抗GBM抗体1mgを静脈内(i.v.、尾静脈)注射し、その後、マウスモノクローナル抗ウサギIgG(ハイブリドーマCRL-1753 (ATCC)から製造されたMsαRb IgG)2mgを6日目に腹腔内(i.p.)注射することにより誘導した。マウスに、PBS又は50、100もしくは200mg/kgのFc-μTP-L309Cを6日目にi.p.注射し、これはMsαRb IgG mAbの注射の約1時間前であった。MsαRbの注射後に、マウスを個別に代謝ケージ(Tecniplast)に入れて、24時間の間尿を集めた。尿アルブミンレベルをELISAキット(Bethyl Laboratories)により測定し、マウスあたりのアルブミン尿を24時間あたりのμgとしてプロットした。
図1に示されるように、尿アルブミンレベルは、試験した用量の全てにおいてFc-μTP-L309Cで処置されたマウスにおいて有意に減少した(PBS 対 200mg/kgのFc-μTP-L309C:p=0.0016;PBS 対 100mg/kgのFc-μTP-L309C:p=0.0036;PBS 対 50mg/kgのFc-μTP-L309C:p=0.0101)。表1は測定された値を示す。
実施例3:Fc-μTP-L309C及び減少したC1q結合能を有するそのバリアントは抗GBM糸球体腎炎を阻害する
CHO[Fc-μTP-L309C(CHO)]及びHEK293細胞[Fc-μTP-L309C(HEK)]から生成されたFc-μTP-L309C及び減少したC1q結合能を有するその変異体(HEK293細胞から生成されたK322A)の効果を、抗GBM糸球体腎炎のインビボモデルにおいて決定した。
CHO[Fc-μTP-L309C(CHO)]及びHEK293細胞[Fc-μTP-L309C(HEK)]から生成されたFc-μTP-L309C及び減少したC1q結合能を有するその変異体(HEK293細胞から生成されたK322A)の効果を、抗GBM糸球体腎炎のインビボモデルにおいて決定した。
手短には、0日目にポリクローナルウサギ抗GBM抗体1mgを静脈内(i.v.、尾静脈)注射し、その後、6日目にマウスモノクローナル抗ウサギIgG(ハイブリドーマCRL-1753(ATCC)から製造されたMsαRb IgG)2mgを腹腔内(i.p.)注射することによりC57BL/6マウスにおいて抗GBM糸球体腎炎を誘導した。MsαRb IgG mAbの注射の約1時間前に、マウスにPBS、50mg/kgのFc-μTP-L309C(CHO)、Fc-μTP-L309C(HEK)又はK322Aをi.p.注射した。MsαRbの注射後に、マウスを個別に代謝ケージ(Tecniplast)に入れて、24時間の間尿を集めた。尿アルブミンレベルをELISAキット(Bethyl Laboratories)により測定し、マウスあたりのアルブミン尿を24時間あたりのμgとしてプロットした。
図2に示されるように、尿アルブミンレベルは、全ての形態のFc-μTP-L309Cを用いて処置されたマウスにおいて有意に減少した(PBS 対 CHO細胞から生成されたFc-μTP-L309C:p=0.0038;PBS 対 HEK293細胞からのFc-μTP-L309C:p=0.0012;PBS 対 Fc-μTP-L309C K322Aバリアント:p=0.0011)。表2は測定された値を示す。
実施例4:Fc-μTP-L309C、CC SIF1、及びQ1は抗GBM糸球体腎炎を阻害する
HEK293細胞から生成されたFc-μTP-L309C、すなわちFc-μTP-L309C(HEK)、及び三価Fc多量体(実施例1に記載されるとおり) CC、SIF1及びQ1の効果を、抗GBM糸球体腎炎のインビボモデルにおいて決定した。
HEK293細胞から生成されたFc-μTP-L309C、すなわちFc-μTP-L309C(HEK)、及び三価Fc多量体(実施例1に記載されるとおり) CC、SIF1及びQ1の効果を、抗GBM糸球体腎炎のインビボモデルにおいて決定した。
手短には、C57BL/6マウスにおいて0日目にポリクローナルウサギ抗GBM抗体1mgを静脈内(i.v.、尾静脈)注射し、その後、6日目にマウスモノクローナル抗ウサギIgG (ハイブリドーマCRL-1753(ATCC)から製造されたMsαRb IgG)2mgを腹腔内(i.p.)注射することにより抗GBM糸球体腎炎を誘導した。MsαRb IgG mAbの注射の約1時間前に、マウスにPBS、Fc-μTP-L309C(HEK)又は3つの三価Fc多量体(CC、SIF1及びQ1)のうちの1つを50mg/kgでi.p.注射した。MsαRbの注射後に、マウスを個別に代謝ケージ(Tecniplast)に入れて、24時間の間尿を集めた。尿アルブミンレベルをELISAキット(Bethyl Laboratories)を用いて測定し、マウスあたりのアルブミン尿を24時間あたりのμgとしてプロットした。
図3に示されるように、尿アルブミンレベルは、Fc-μTP-L309C又は三価Fc多量体を用いて処置されたマウスにおいて有意に減少した。(PBS 対 Fc-μTP-L309C:p=0.0220;PBS 対 CC:p=0.0190;PBS 対 SIF1:p=0.0208;PBS 対 Q1:p=0.0119)。表3は測定された値を示す。
実施例5:Fc-μTP-L309Cは用量依存的に抗GBM糸球体腎炎を阻害する
HEK293細胞から生成されたFc-μTP-L309C[Fc-μTP-L309C(HEK)]の用量-応答効果を、抗糸球体基底膜(GBM)糸球体腎炎のインビボモデルにおいて決定した。
HEK293細胞から生成されたFc-μTP-L309C[Fc-μTP-L309C(HEK)]の用量-応答効果を、抗糸球体基底膜(GBM)糸球体腎炎のインビボモデルにおいて決定した。
手短には、C57BL/6マウスにおいて0日目にポリクローナルウサギ抗GBM抗体1mgを静脈内(i.v.、尾静脈)注射し、その後、6日目にマウスモノクローナル抗ウサギIgG(ハイブリドーマCRL-1753(ATCC)から製造されたMsαRb IgG)2mgを腹腔内(i.p.)注射することにより抗GBM糸球体腎炎を誘導した。6日目にマウスに、PBS又は1、5、10、20もしくは50mg/kgのFc-μTP-L309Cを腹腔内注射した。これはMsαRb IgG mAbの注射の約1時間前だった。MsαRbの注射後に、マウスを個別に代謝ケージ(Tecniplast)に入れて、24時間の間尿を集めた。尿アルブミンレベルをELISAキット(Bethyl Laboratories)により測定し、マウスあたりのアルブミン尿を24時間あたりのμgとしてプロットした。
図4に示されるように、Fc-μTP-L309Cは、用量依存性様式で抗GBM抗体誘導wwwww糸球体腎炎を阻害した(PBS 対 50mg/kgのFc-μTP-L309C:p=0.0194;PBS 対 20mg/kgのFc-μTP-L309C:p=0.0201;PBS 対 10mg/kgのFc-μTP-L309C:p=0.0286;PBS 対 5mg/kgのFc-μTP-L309C:p=0.2505;PBS 対 1mg/kgのFc-μTP-L309C:p=0.7875)。表4は測定された値を示す。
Claims (14)
- 免疫複合体介在性腎臓障害の処置における使用のためのIgG Fc多量体であって、ここでFc多量体は、C1qに対するFc多量体の結合親和性を増加させる任意の変異を欠失している、上記Fc多量体。
- 欠失した変異は、Fc多量体のIgG1 FcドメインにおけるS267E、H268F、S324T、N297A、T299A、P238D、E233P、G236R、L234V、E233P、L234A、L235A、P238D、D265A、D265W、N297A、N297Q、T299A、及びL328Fの少なくとも1つである、請求項1に記載の使用のためのFc多量体。
- Fc多量体は2~6つのIgG Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は2つのFc融合ポリペプチド鎖を含み、各Fc融合ポリペプチド鎖はIgG Fcポリペプチド及び多量体化ドメインを含む、請求項1又は請求項2に記載の使用のためのIgG Fc多量体。
- Fc多量体化ドメインはIgG2ヒンジを含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のためのFc多量体。
- Fc多量体はストラドマーではない、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のためのFc多量体。
- Fc多量体は6つのヒトIgG1 Fc融合単量体を含み、ここで各Fc融合単量体は、2つのヒトFc融合ポリペプチド鎖を含み、そして各Fc融合ポリペプチド鎖は、ヒトIgG1 Fcポリペプチド及びヒトIgM尾部を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のためのFc多量体。
- 各Fc融合ポリペプチド鎖におけるIgM尾部は、IgG1 Fcポリペプチドの定常領域のC末端で232アミノ酸と融合した18アミノ酸を含む、請求項6に記載のFc多量体。
- 各IgG1 Fcポリペプチドは、位置309にロイシンからシステインへの変異を含む、請求項6又は請求項7に記載の使用のためのFc多量体。
- Fc融合ポリペプチド鎖は配列番号3の配列を含む、請求項8に記載の使用のためのFc多量体。
- Fc多量体は、3つのFc単量体を形成する4つのポリペプチドを含み、ここで第一のポリペプチドは、第一のFcポリペプチド、第一のリンカー、及び第二のFcポリペプチドを含み、ここで第二のポリペプチドは、第三のFcポリペプチド、第二のリンカー、及び第四のFcポリペプチドを含み、ここで第三のポリペプチドは第五のFcポリペプチドを含み、ここで第四のポリペプチドは第六のFcポリペプチドを含み、ここで第一のFcポリペプチド及び第三のFcポリペプチドは第一のFc単量体を形成し、ここで第五のFcポリペプチド及び第二のFcポリペプチドは第二のFc単量体を形成し、そしてここで第六のFcポリペプチド及び第四のFcポリペプチドは第三のFc単量体を形成する、請求項1又は請求項2に記載の使用のためのFc多量体。
- 第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドは同一であり、そしてさらに、第三のポリペプチド及び第四のポリペプチドは同一である、請求項10に記載の使用のためのFc多量体。
- 第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドは配列番号120を含み、そして第三のポリペプチド及び第四のポリペプチドは配列番号119を含むか;又は第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドは配列番号125を含み、そして第三のポリペプチド及び第四のポリペプチドは配列番号124を含むか;又は第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドは配列番号126を含み、そして第三のポリペプチド及び第四のポリペプチドは配列番号122を含むか;又は第一のポリペプチド及び第二のポリペプチドは配列番号107もしくは配列番号108を含み、そして第三のポリペプチド及び第四のポリペプチドは配列番号113もしくは配列番号114を含む、請求項11に記載の使用のためのFc多量体。
- 免疫複合体介在性腎臓障害は、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎炎、抗糸球体基底膜抗体(抗GBM)病、グッドパスチャー症候群、自己免疫腎疾患、ループス腎炎、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、又はブライト病のうちの1つである、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のためのFc多量体。
- Fc多量体は、補体依存性細胞傷害及び/又は抗体依存性細胞性細胞傷害を阻害する、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のためのFc多量体。
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