JP2022545682A - IgMグリコバリアント - Google Patents

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Abstract

本開示は、少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖を含む、単離されたIgM由来結合分子、例えばIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子を提供し、少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖は、標的に特異的に結合する結合ドメインと連結されているバリアントIgM重鎖定常領域を含み、バリアントIgM重鎖定常領域の少なくとも1つのアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフが当該モチーフにおけるグリコシル化を防止するように変異しており、且つ/または、少なくとも1つのN結合型グリコシル化モチーフがバリアントIgM重鎖に導入されている。TIFF2022545682000016.tif56128

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月23日に出願された米国仮特許出願第62/891,263号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ASCIIの写しは、2020年8月21日に作成されたものであり、026WO1-Sequence-Listingと名付けられ、166,573バイトのサイズである。
多量体化することができる抗体及び抗体様分子(例えば、IgA及びIgM抗体)は、例えば、免疫腫瘍学及び感染性疾患の分野で、特異性の改善、アビディティーの改善、及び複数の結合標的への結合能を可能にする有望な薬物候補として浮上している。例えば、米国特許第9,951,134号(特許文献1)、及び同第9,938,347号(特許文献2)、ならびに、PCT公開第2016/141303号(特許文献3)、同第2016/154593号(特許文献4)、同第2016/168758号(特許文献5)、同第2017/059387号(特許文献6)、同第2017059380号(特許文献7)、同第2018/017888号(特許文献8)、同第2018/017763号(特許文献9)、同第2018/017889号(特許文献10)、及び、同第2018/017761号(特許文献11)を参照されたい。それらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
多価抗体の薬学動態(PK)及び薬力学(PD)は複雑であり、モノクローナル抗体の翻訳時の、及び翻訳後での構造、加えて、モノクローナル抗体が標的にする生理学的系に左右される。さらに、異なる抗体クラスは典型的には、異なる細胞及び生理学的系を介して、対象の中で処理される。例えば、IgG抗体クラスは20日の血清半減期を有する一方で、IgM及びIgA抗体の半減期は、わずか約5~8日である。Brekke,OH.,and I.Sandlie,Nature Reviews Drug Discovery 2: 52-62(2003)(非特許文献1)。
抗体またはその生物学的治療薬のPKの、鍵となる決定因子の1つは、その濃度、及びグリコシル化の種類である(Higel,F.et al.Eur.J.Pharm.Biopharm.139:123-131(2019)(非特許文献2))。抗体の特定の残基に共有結合した糖部分及びその誘導体は、アシアロ糖タンパク質(ASGP)受容体などの受容体により、その抗体がどのように認識されるかを決定し得、これにより転じて、抗体が体循環内からどれほど速く排出されるかを決定する。各IgMの重鎖定常領域は、アスパラギン(N)結合型グリコシル化の5つの部位を有し、J鎖は、1つのN結合型グリコシル化部位を有する。したがって、五量体のJ鎖含有IgMは、最大で51個のグリカン部分を含有し、これが複雑なグリコシル化プロファイルをもたらす(Hennicke,J.,et al.,Anal.Biochem.539:162-166(2017)(非特許文献3))。グリカンの複雑性により、均質にグリコシル化した物質の製造が困難となる可能性がある。
多量体抗体の設計においてなされる進歩にもかかわらず、これらの分子の物理的、薬物動態的、及び薬力学的性質を操作できることが、依然として必要とされている。
米国特許第9,951,134号 米国特許第9,938,347号 PCT公開第2016/141303号 PCT公開第2016/154593号 PCT公開第2016/168758号 PCT公開第2017/059387号 PCT公開第2017059380号 PCT公開第2018/017888号 PCT公開第2018/017763号 PCT公開第2018/017889号 PCT公開第2018/017761号
Brekke,OH.,and I.Sandlie,Nature Reviews Drug Discovery 2: 52-62(2003) Higel,F.et al.Eur.J.Pharm.Biopharm.139:123-131(2019) Hennicke,J.,et al.,Anal.Biochem.539:162-166(2017)
本開示は、少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖、例えばIgM抗体、IgM様抗体、または、他のIgM由来結合分子を含む単離されたIgM由来結合分子を提供し、当該単離されたIgM由来結合分子は、バリアントIgM重鎖定常領域を含み、少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖は、標的に特異的に結合する結合ドメインと連結されているバリアントIgM重鎖定常領域を含み、そこでは、バリアントIgM重鎖定常領域の少なくとも1つのアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフが、当該モチーフにおけるグリコシル化を防止するように変異しており、N結合型グリコシル化モチーフが、アミノ酸配列N-X-S/T[配列中、Nはアスパラギンであり、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸であり、S/Tはセリンまたはトレオニンである]を含む。ある特定の実施形態では、バリアントIgM重鎖定常領域は、配列番号1(アレルIGHM03)または配列番号2(アレルIGHM04)のアミノ酸46(モチーフN1)、アミノ酸209(モチーフN2)、アミノ酸272(モチーフN3)、アミノ酸279(モチーフN4)、及びアミノ酸440(モチーフN5)に対応するアミノ酸位置から始まる5つのN結合型グリコシル化モチーフN-X-S/Tを含むヒトIgM重鎖定常領域に由来する。ある特定の実施形態では、N-X-S/Tモチーフのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つが、当該モチーフのグリコシル化を防止する、アミノ酸挿入、欠失、または置換を含む。ある特定の実施形態では、IgM由来結合分子は、モチーフN1、モチーフN2、モチーフN3、モチーフN5、またはモチーフN1、N2、N3、もしくはN5のうちの2つ以上、3つ以上、もしくは4つ全ての、任意の組合せにおけるアミノ酸挿入、欠失、または置換を含むことができ、当該アミノ酸挿入、欠失、または置換は、当該モチーフにおけるグリコシル化を防止する。
ある特定の実施形態では、IgM由来結合分子は、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸N46、N209、N272、もしくはN440に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換[当該置換アミノ酸は任意のアミノ酸である];配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸S48、S211、S274、もしくはS442に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換[当該置換後のアミノ酸は、トレオニンを除く任意のアミノ酸である];または当該アミノ酸置換のうちの2つ以上、3つ以上、もしくは4つ以上の任意の組合せを含むことができる。ある特定の実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1もしくは配列番号2のN46X、N46A、N46D、N46Q、N46K、S48X、S48A、N229X、N229A、N229D、N229Q、N229K、S231X、S231A、N272X、N272A、N272D、N272Q、N272K、S274X、S274A、N440X、N440A、N440D、N449Q、N449K、S242X、もしくはS424A、または当該アミノ酸置換のうちの2つ以上、3つ以上、もしくは4つ以上の任意の組合せ[ここで、Xは任意のアミノ酸であり、Xはトレオニンを除く任意のアミノ酸である]に対応することができる。
ある特定の実施形態では、バリアントIgM重鎖定常領域は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、または配列番号18のアミノ酸配列を含むバリアントヒトIgM定常領域である。
ある特定の実施形態では、バリアントIgM重鎖定常領域は、少なくとも1つの新しいアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフをバリアントIgM重鎖定常領域に導入するように変異しており、少なくとも1つの新しいアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフは、バリアントIgM重鎖定常領域における、IgM抗体において自然にはグリコシル化されない部位に導入されている。ある特定の実施形態では、新しいアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフは、バリアントIgM重鎖定常領域における、異なる免疫グロブリンアイソタイプ(例えば、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4、ヒトIgA1、ヒトIgA2、ヒトIgD、及びヒトIgEからなる群から選択されるヒト免疫グロブリンアイソタイプ)に存在するアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフの位置に対応する位置に存在する。
ある特定の実施形態では、標的は、標的エピトープ、標的抗原、標的細胞、標的器官、または標的ウイルスである。
ある特定の実施形態では、IgM由来結合分子は、それぞれ5つまたは6つの2価IgM結合ユニットを含む五量体または六量体IgM抗体であり、各結合ユニットは、バリアントIgM定常領域に対してアミノ末端側に位置するVHをそれぞれ含む2つのIgM重鎖と、免疫グロブリン軽鎖定常領域に対してアミノ末端側に位置する軽鎖可変ドメイン(VL)をそれぞれ含む2つの免疫グロブリン軽鎖とを含み、VH及びVLは、組み合わさって、標的に特異的に結合する抗原結合ドメインを形成する。ある特定の実施形態では、5つまたは6つのIgM結合ユニットは同一である。
ある特定の実施形態において、IgM由来結合分子は、五量体であり、且つJ鎖またはその機能性断片またはその機能性バリアントをさらに含む。ある特定の実施形態では、J鎖は、配列番号20のアミノ酸配列を含む成熟ヒトJ鎖、またはその機能性断片、またはその機能性バリアントである。ある特定の実施形態では、J鎖は、参照J鎖と比較して1つ以上の単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を含む機能性バリアントJ鎖であり、参照J鎖は、当該1つ以上の単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を除いてバリアントJ鎖と同一であり、バリアントJ鎖を含むIgM由来結合分子は、対象動物に投与された際に、バリアントJ鎖における1つ以上の単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を除いて同一であり且つ同一の動物種に同一の方法で投与される参照IgM由来結合分子と比較して、増加した血清半減期を示す。ある特定の実施形態では、バリアントJ鎖またはその機能性断片は、参照J鎖と比較して、1つ、2つ、3つ、または4つの単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を含む。ある特定の実施形態では、バリアントJ鎖またはその機能性断片は、野生型成熟ヒトJ鎖(配列番号20)のアミノ酸Y102に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を含み、例えば配列番号20のY102に対応するアミノ酸をアラニン(A)で置換することができる。ある特定の実施形態では、J鎖はバリアントヒトJ鎖Jであり、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
ある特定の実施形態では、バリアントJ鎖またはその機能性断片は、成熟ヒトJ鎖(配列番号20)のアミノ酸49(モチーフN6)に対応するアミノ酸位置から始まるアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフN-X-S/T[モチーフ中、Nはアスパラギンであり、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸であり、S/Tはセリンまたはトレオニンである]内での変異を含み、当該変異は、当該モチーフにおけるグリコシル化を防止する。例えば、バリアントJ鎖またはその機能性断片は、配列番号20のアミノ酸N49もしくはアミノ酸S51に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を含むことができ、S51に対応するアミノ酸は、トレオニン(T)で置換されていないか、または、バリアントJ鎖は、配列番号20のアミノ酸N49及びS51の両方に対応するアミノ酸位置においてアミノ酸置換を含む。ある特定の実施形態では、配列番号20のN49に対応する位置は、アラニン(A)、グリシン(G)、トレオニン(T)、セリン(S)、またはアスパラギン酸(D)で置換されている。ある特定の実施形態では、配列番号20のN49に対応する位置は、アラニン(A)で置換されている。J鎖がバリアントヒトJ鎖である場合、J鎖は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、配列番号20のN49に対応する位置は、アスパラギン酸(D)で置換されている。J鎖がバリアントヒトJ鎖である場合、J鎖は、配列番号23のアミノ酸配列を含む。
ある特定の実施形態では、J鎖またはその断片もしくはバリアントは、異種部分をさらに含む改変J鎖であり、異種部分は、J鎖またはその断片もしくはバリアントに融合、またはコンジュゲートしている。ある特定の実施形態では、異種部分は、J鎖またはその断片もしくはバリアントに融合しているポリペプチドである。例えば、異種ポリペプチドは、例えば、少なくとも5個のアミノ酸、ただし25個以下のアミノ酸を含む、ペプチドリンカーを介したJ鎖またはその断片もしくはバリアントに融合することができ、例えば、ペプチドリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号29)からなることができる。ある特定の実施形態では、異種ポリペプチドは、J鎖またはその断片もしくはバリアントのN末端、J鎖またはその断片もしくはバリアントのC末端、あるいはJ鎖またはその断片もしくはバリアントのN末端及びC末端の両方に融合することができる。ある特定の実施形態では、異種ポリペプチドは、結合ドメイン、例えば、抗体またはその抗原結合断片を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合断片は、scFv断片である。ある特定の実施形態では、異種scFv断片は、CD3εに特異的に結合する。ある特定の実施形態では、改変J鎖は、ペプチドリンカーを介して、それぞれ、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号52、配列番号53、及び配列番号54;配列番号57、配列番号59、配列番号62、配列番号65、配列番号67、及び配列番号69;配列番号57、配列番号59、配列番号62、配列番号65、配列番号67、及び配列番号70;配列番号58、配列番号60、配列番号63、配列番号66、配列番号68、及び配列番号71;配列番号58、配列番号61、配列番号63、配列番号66、配列番号68、及び配列番号72;配列番号58、配列番号61、配列番号64、配列番号66、配列番号68、及び配列番号73を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む、抗CD3ε scFvに融合している、配列番号24(V15J)、配列番号25(V15J)、配列番号26(V15J N49D)、もしくは配列番号55(SJ)、または配列番号20、21、22、もしくは23のアミノ酸配列を含む。
本開示は、本明細書で提供する少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、またはそのようなポリヌクレオチドを含む組成物をさらに提供する。ある特定の実施形態では、当該組成物は、軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列をさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする核酸配列、及び、軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列は、別のベクター上に存在する。ある特定の実施形態では、これらは単一のベクター上に存在する。ある特定の実施形態では、提供する組成物は、J鎖またはその機能性断片またはその機能性バリアントをコードする核酸配列をさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする核酸配列、軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列、及び、J鎖をコードする核酸配列は、単一のベクター上に存在するか、または、2つ以上の別のベクター上に存在することができる。そのようなベクターは本開示によって提供される。本開示は、提供するポリヌクレオチドまたはベクターのいずれか1つ以上を含む宿主細胞もまた提供する。本開示は、提供するIgM由来結合分子の作製方法もまた提供し、当該方法は、提供する宿主細胞を培養することと、定常領域または抗体を回収することとを含む。
図1A~1Bは、様々なヒト免疫グロブリンアイソタイプ及びサブタイプ、すなわち、ヒトIgG1(IGHG1、配列番号34、GenBank AIC63046.1のアミノ酸141~470)、ヒトIgG2(IGHG2、配列番号35、GenBank AXN93662.2のアミノ酸1~326)、ヒトIgG3(IGHG3、配列番号36、GenBank AXN93659.2のアミノ酸1~377)、ヒトIgG4(IGHG4、配列番号37、GenBank sp|P01861.1のアミノ酸1~327)、ヒトIgA1(IGHA1、配列番号38、GenBank AIC59035.1のアミノ酸144~496)、ヒトIgA2(IGHA2、配列番号39、GenBank P01877.4のアミノ酸1~340)、ヒトIgD(IGHD、配列番号40、GenBank P01880.3のアミノ酸1~384)、ヒトIgE(IGHE、配列番号41、GenBank P01854.1のアミノ酸1~428)、及びヒトIgM(IGHM、アレルIGHM04、配列番号2)の重鎖定常領域のアラインメントを示す。アスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフは二重下線で示されており、アスパラギン残基が太字となっている。鎖内ジスルフィド結合に関与するシステイン(C)アミノ酸残基は矢印で示されており、鎖間ジスルフィド結合に関与するシステイン残基はバーベル形状で示されている。図1Aは、CH1ドメイン、ヒンジ領域または等価なドメイン、及びCH2/CH3ドメインを示す。図1Bは、CH3/CH4ドメイン及びテールピースドメインを示す。 図1Aの説明を参照。 マウス(GenBank:CAC20701.1、配列番号42)、カニクイザル(GenBank:EHH62210.1のアミノ酸14~487、配列番号43)、アカゲザル(GenBank:EHH28233.1のアミノ酸147~600、配列番号45)、チンパンジー(GenBank:PNI88330.1、配列番号44)、及び、スマトラオランウータン(GenBank:PNJ04968.1、配列番号46)のものを含む、ヒトIgM重鎖定常領域アミノ酸配列(アレルIGHM04、配列番号2)のアラインメントを示す。アスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフに対応するアミノ酸を枠で囲っている。 図2Aの続きを示す。 ヒトIgM重鎖の空間充填モデルであり、5つの、N結合型グリコシル化部位の位置を示す。 N1、N2、N3、N4、N5、及びN6において単一のアラニン変異を有する、IgM+VJH改変J鎖グリコバリアントの発現及び組み立てを示す、染色した非還元ポリアクリルアミドゲルを示す。 N1、N2、N3、N4、N5、及びN6において単一のアスパラギン酸変異を有する、IgM+VJH改変J鎖グリコバリアントの発現及び組み立てを示す、染色した非還元ポリアクリルアミドゲル、及びウェスタンブロット(抗J鎖抗体と反応)を示す。 N1及びN2、N2及びN3、N1及びN3、ならびに、N5及びN6において二重アスパラギン酸変異を有する、IgM+VJH改変J鎖グリコバリアントの発現及び組み立てを示す、抗J鎖抗体と反応した、非還元ポリアクリルアミドゲルのウェスタンブロットを示す。 グリコバリアントの、標的抗原へのELISA結合を示す。
詳細な説明
定義
本明細書で使用する場合、「1個の」(「a」または「an」)実体という用語は、1個または複数個のその実体を指す。例えば、「1個の結合分子(a binding molecule)」は、1個または複数個の結合分子を表すように理解される。したがって、「1個の」(「a」または「an」)、「1個または複数個」、及び「少なくとも1個」という用語は、本明細書では互換的に使用することができる。
さらに、本明細書で使用する場合の「及び/または」は、他方を伴うまたは伴わない2個の指定された特徴または構成要素の各々を具体的に開示するものとして解釈するものとする。したがって、「及び/または」という用語は、本明細書で「A及び/またはB」のような表現で使用される場合、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、ならびに「B」(単独)を含むように意図されている。同様に、「及び/または」という用語は、「A、B、及び/またはC」のような表現で使用される場合、以下の実施形態の各々を包含するように意図されている:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
別途定義されない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びthe Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用されている用語の多くについての全般的辞書を当業者に提供する。
単位、接頭語、及び記号は、国際単位系(SI)で承認された形態で表される。数値範囲は、その範囲を画定する数字を含む。別途指示されない限り、アミノ酸配列はアミノからカルボキシの方向に左から右に記載される。本明細書に提供される見出しは、本明細書を全体的に参照することによって得ることができる、本開示の種々の実施形態(単数または複数)の制限ではない。したがって、すぐ後に定義される用語は、明細書全体を参照することによって、より十分に定義される。
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、単数形の「ポリペプチド」ならびに複数形の「ポリペプチド」を包含するように意図されており、アミド結合(ペプチド結合の別名でも知られている)によって直線的に結合した単量体(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2個以上のアミノ酸からなる任意の鎖(単数または複数)を指し、特定の長さの生成物を指すわけではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2個以上のアミノ酸からなる鎖(単数または複数)を指すために使用される他の用語が、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のうちのいずれかの代わりに、またはこれらの用語のうちのいずれかと互換的に使用することができる。また、「ポリペプチド」という用語は、ポリペプチドの発現後修飾の産物を指すようにも意図されており、発現後修飾としては、限定されるものではないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、及び既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、または非天然アミノ酸による修飾が挙げられる。ポリペプチドは、生体供給源から誘導するか、または組換え技術によって生成することができるが、指定された核酸配列から必ずしも翻訳されるわけではない。ポリペプチドは、化学合成を含む任意の様態で生成することができる。
本明細書に開示されるポリペプチドのサイズは、約3アミノ酸以上、5アミノ酸以上、10アミノ酸以上、20アミノ酸以上、25アミノ酸以上、50アミノ酸以上、75アミノ酸以上、100アミノ酸以上、200アミノ酸以上、500アミノ酸以上、1,000アミノ酸以上、または2,000アミノ酸以上であり得る。ポリペプチドは定義された3次元構造を有し得るが、必ずしもそのような構造を有するわけではない。定義された3次元構造を有するポリペプチドは折り畳まれていると言われ、定義された3次元構造を有するのではなく、多くの異なる立体構造をとり得るポリペプチドは、折り畳まれていないと言われる。本明細書で使用する場合、糖タンパク質という用語は、アミノ酸(例えば、セリンまたはアスパラギン)の酸素含有側鎖または窒素含有側鎖を介してタンパク質に付着されている少なくとも1個の炭水化物部分に結合したタンパク質を指す。
「単離された」ポリペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体とは、その天然の環境にあるのではないポリペプチドが意図されている。特定の精製レベルは要求されない。例えば、単離されたポリペプチドは、その本来のまたは天然の環境から取り出されていることができる。宿主細胞内で発現した組換え産生ポリペプチド及びタンパク質は、本明細書で開示される場合、単離されているとみなされ、任意の好適な技法によって分離、分画、または部分的もしくは実質的に精製された天然または組換えポリペプチドも同様である。
本明細書で使用する場合、「非天然ポリペプチド」という用語またはその文法上の変化形は、「天然」であるもしくは「天然」であり得る、あるいは裁判官、または行政機関もしくは司法機関によって「天然」であると判定または解釈されるポリペプチドの形態を明示的に除外し、ただしこのような形態のみを除外する、条件付き定義である。
本明細書で開示される他のポリペプチドは、上記ポリペプチドの断片、誘導体、類似体、またはバリアント、及びこれらの任意の組合せである。本明細書で開示される場合、「断片」、「バリアント」、「誘導体」、及び「類似体」という用語は、対応する天然の抗体またはポリペプチドの少なくともいくつかの特性(例えば、ある抗原に対し特異的に結合する特性)を保持する任意のポリペプチドを含む。ポリペプチドの断片としては、例えば、本明細書の他の箇所で論じられている特定の抗体断片に加えて、タンパク質分解断片及び欠失断片が挙げられる。バリアント、例えばポリペプチドのバリアントには、上述の断片が含まれ、また、アミノ酸の置換、欠失、または挿入による改変アミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。ある特定の実施形態では、バリアントは非天然であり得る。非天然バリアントは、当該技術分野で既知の変異誘発技法を用いて生成することができる。バリアントポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸の置換、欠失、または付加を含んでもよい。誘導体は、元のポリペプチドには見られない追加的な特徴を示すように改変されたポリペプチドである。例としては、融合タンパク質が挙げられる。バリアントポリペプチドは、本明細書では「ポリペプチド類似体」と呼ばれることもある。本明細書で使用する場合、ポリペプチドの「誘導体」は、官能性側鎖の反応によって化学的に誘導体化された1個または複数個のアミノ酸を有する主題ポリペプチドも指すことができる。また、20種の標準的なアミノ酸の1つまたは複数の誘導体を含有するペプチドも「誘導体」として含まれる。例えば、4-ヒドロキシプロリンはプロリンの代用とすることができ、5-ヒドロキシリジンはリジンの代用とすることができ、3-メチルヒスチジンはヒスチジンの代用とすることができ、ホモセリンはセリンの代用とすることができ、オルニチンはリジンの代用とすることができる。
「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸で置換される置換である。塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、極性無電荷側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含めた、類似の側鎖を有するアミノ酸のファミリーが当該技術分野で定義されている。例えば、チロシンのフェニルアラニンへの置換は保存的置換である。ある特定の実施形態では、本開示のポリペプチド、結合分子、及び抗体の配列における保存的置換は、当該アミノ酸配列を含むポリペプチドまたは抗体が、結合分子が結合する抗原に結合するのを抑止しない。抗原結合を排除しないヌクレオチド及びアミノ酸保存的置換を特定する方法は、当技術分野で周知されている(例えば、Brummell et al.,Biochem.32:1180-1 187(1993);Kobayashi et al.,Protein Eng.12(10):879-884(1999);及びBurks et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:.412-417(1997)を参照されたい)。
「ポリヌクレオチド」という用語は、単一の核酸及び複数の核酸を包含するように意図されており、単離された核酸分子またはコンストラクト、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来的なホスホジエステル結合または従来的でない結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるようなアミド結合)を含むことができる。「核酸」または「核酸配列」という用語は、ポリヌクレオチド中に存在する任意の1個以上の核酸セグメント、例えば、DNAまたはRNA断片を指す。
「単離された」核酸またはポリヌクレオチドとは、その天然の環境から分離されている任意の形態の核酸またはポリヌクレオチドが意図される。例えば、ゲルから精製されたポリヌクレオチド、またはベクターに含有されるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、「単離された」ものとみなされよう。また、クローニングのための制限部位を有するように操作されたポリヌクレオチドセグメント(例えば、PCR産物)は、「単離された」とみなされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例としては、異種宿主細胞中で維持された組換えポリヌクレオチド、または緩衝液もしくは食塩水などの非天然溶液中にある(部分的もしくは実質的に)精製されたポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたRNA分子としては、その転写物が自然界で見られるものではない、ポリヌクレオチドのインビボまたはインビトロRNA転写物が挙げられる。単離されたポリヌクレオチドまたは核酸は、合成により生成されたそのような分子をさらに含む。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、または転写ターミネーターなどの制御エレメントであり得るか、またはこれを含み得る。
本明細書で使用する場合、「非天然ポリヌクレオチド」という用語またはその文法上の変化形は、「天然」であるもしくは「天然」であり得る、あるいは裁判官、または行政機関もしくは司法機関によって「天然」であると判定または解釈される核酸またはポリヌクレオチドの形態を明示的に除外し、ただしこのような形態のみを除外する、条件付き定義である。
本明細書で使用する場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部である。「ストップコドン」(TAG、TGA、またはTAA)はアミノ酸に翻訳されないものの、コード領域の一部とみなすことができる。ただし、任意の隣接する配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどは、コード領域の一部ではない。2個以上のコード領域が、(例えば、単一のベクター上の)単一のポリヌクレオチドコンストラクト内に、または(例えば、別々の(異なる)ベクター上の)別々のポリヌクレオチドコンストラクト内に存在してもよい。さらに、任意のベクターは、単一のコード領域を含んでも2個以上のコード領域を含んでもよく、例えば、単一のベクターが、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を別々にコードしてもよい。加えて、ベクター、ポリヌクレオチド、または核酸は、別のコード領域と融合したまたは融合していない異種コード領域を含んでもよい。異種コード領域としては、限定されるものではないが、分泌シグナルペプチドまたは異種機能的ドメインのような、特化したエレメントまたはモチーフをコードする領域が挙げられる。
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、通常、プロモーター及び/または、1個以上のコード領域と作動可能に連結された他の転写もしくは翻訳コントロールエレメントを含むことができる。作動可能な連結とは、遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)のためのコード領域が、制御配列(複数可)の影響下またはコントロール下で遺伝子産物を発現させるような方法で1個以上の制御配列と連結されている場合にいう。2個のDNA断片(例えば、ポリペプチドコード領域及びそれと連結されたプロモーター)は、プロモーター機能の誘導が所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらす場合、且つ、当該2個のDNA断片間の結合の性質が、発現調節配列が遺伝子産物の発現を指示する能力を妨害しない、またはDNAテンプレートが転写される能力を妨害しない場合、「作動可能に連結」されている。したがって、プロモーター領域が、ポリペプチドをコードする核酸と作動可能に連結されているとされるのは、当該プロモーターが当該核酸の転写をもたらすことができた場合である。プロモーターは、所定の細胞におけるDNAの実質的な転写を指示する細胞特異的プロモーターであり得る。プロモーター以外の他の転写制御エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー、及び転写終結シグナルが、細胞特異的転写を指示するためにポリヌクレオチドと作動可能に連結され得る。
様々な転写制御領域が当業者に知られている。このような領域としては、限定されるものではないが、脊椎動物細胞内で機能する転写制御領域、例えば、限定されるものではないが、サイトメガロウイルス(最初期プロモーター、イントロンAと連携)、シミアンウイルス40(初期プロモーター)、及びレトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)由来のプロモーター及びエンハンサーセグメントが挙げられる。他の転写制御領域としては、アクチン、ヒートショックタンパク質、ウシ成長ホルモン、及びウサギβ-グロビンなどの脊椎動物遺伝子に由来するもの、ならびに真核細胞内で遺伝子発現を制御可能な他の配列が挙げられる。追加の好適な転写制御領域としては、組織特異的プロモーター及びエンハンサー、ならびにリンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が挙げられる。
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に知られている。このようなエレメントとしては、リボソーム結合部位、翻訳開始及び終止コドン、ならびにピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、内部リボソーム進入部位またはIRES(CITE配列とも呼ばれる))が挙げられるが、これらに限定されない。
他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、RNA、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、またはリボソームRNAの形態のRNAであり得る。
ポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、本明細書に開示されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指示する分泌またはシグナルペプチドをコードする追加のコード領域と連結され得る。シグナル仮説によれば、哺乳類細胞によって分泌されるタンパク質は、シグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有し、これは、粗面小胞体を通した伸長中のタンパク質鎖の搬出が開始されると成熟タンパク質から切断される。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが、ポリペプチドのN末端に融合されたシグナルペプチドを有し得、このシグナルペプチドが完成したまたは「完全長」ポリペプチドから切断されて、ポリペプチドの分泌または「成熟」形態をもたらすことを認識している。ある特定の実施形態では、天然シグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖または軽鎖シグナルペプチド、または、配列に作動可能に連結されているポリペプチドの分泌を指示する能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。代替的に、異種哺乳類シグナルペプチドまたはその機能的誘導体を使用することができる。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)またはマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換することができる。
本明細書で使用する場合、「結合分子」という用語は、その最も広い意味において、受容体(例えば、エピトープまたは抗原決定基)に対し特異的に結合する分子を指す。本明細書でさらに記載されるように、結合分子は、本明細書に記載の1個以上の結合ドメイン、例えば、「抗原結合ドメイン」を含むことができる。結合分子の非限定例は、特異的結合を保持する、本明細書で詳細に説明される抗体または抗体様分子である。ある特定の実施形態では、「結合分子」は、本明細書で詳細に説明される、抗体、または抗体様分子もしくは抗体由来の分子を含む。
本明細書で使用する場合、「結合ドメイン」または「抗原結合ドメイン」という用語(同じ意味で用いることができる)とは、標的、例えばエピトープ、ポリペプチド、細胞、または器官に特異的に結合するのに必要であり、且つ十分である結合分子、例えば抗体、または抗体様分子もしくは抗体由来分子の領域を意味する。例えば、「Fv」、例えば、抗体の重鎖可変及び軽鎖可変領域は、2個の別々のポリペプチドサブユニットまたは単鎖のいずれかとして、「結合ドメイン」であるとみなされる。他の抗原結合ドメインとしては、限定されるものではないが、ラクダ種に由来する抗体の単一ドメイン重鎖可変領域(VHH)、またはフィブロネクチン足場内で発現する6個の免疫グロブリン相補性決定領域(CDR)が挙げられる。本明細書に記載の「結合分子」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個以上の「抗原結合ドメイン」を含むことができる。
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、本明細書では互換的に使用することができる。抗体(または、本明細書で開示するその断片、バリアント、もしくは誘導体、例えばIgM様抗体)は、少なくとも、重鎖の可変ドメイン(例えば、ラクダ種由来のもの)、または少なくとも、重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は、比較的十分に理解されている。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)を参照されたい。別段の明記がない限り、「抗体」という用語は、抗体の小さな抗原結合断片からフルサイズの抗体(例えば、2個の完全な重鎖及び2個の完全な軽鎖を含むIgG抗体、4つの完全な重鎖及び4つの完全な軽鎖を含み、J鎖及び/または分泌成分を含む2量体IgA抗体、あるいは、IgM由来結合分子、例えば、10個または12個の完全な重鎖及び10個または12個の完全な軽鎖を含み、任意選択でJ鎖またはその機能性断片もしくはバリアントを含む、例えばIgM抗体またはIgM様抗体)に及ぶ任意のものを包含する。
「免疫グロブリン」という用語は、生化学的に区別することができるポリペプチドの様々な広範なクラスを含む。当業者であれば、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、β、ε)に分類され、それらの間にいくつかのサブクラス(例えば、γ1~γ4またはα1~α2)が存在することを理解しよう。この鎖の性質が、抗体の「アイソタイプ」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEとして決定する。免疫グロブリンのサブクラス(サブタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、IgAなどは、十分に特徴づけられており、機能的な特殊化をもたらすことが知られている。これらの免疫グロブリンのそれぞれの改変バージョンは、本開示を考慮すれば当業者に容易に認識可能であり、したがって、これは本開示の範囲内である。
軽鎖は、カッパまたはラムダ(κ、λ)のいずれかに分類される。各重鎖クラスは、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のいずれかと結合し得る。概して、軽鎖及び重鎖は互いに共有結合しており、免疫グロブリンが、例えば、ハイブリドーマ、B細胞、または遺伝子操作宿主細胞によって発現したとき、2個の重鎖の「テール」部分は、共有結合的なジスルフィド結合または非共有結合によって互いに結合する。重鎖では、アミノ酸配列は、Y配置の分岐した端部のN末端から各鎖の底部のC末端まで続く。ある特定の抗体(例えば、IgG抗体)の基本構造は、ジスルフィド結合により接続して「Y」構造を形成する2個の重鎖サブユニット及び2個の軽鎖サブユニットを含み、本明細書においてこの構造は「H2L2構造」または「結合ユニット」とも呼ばれる。
「結合ユニット」という用語は、本明細書では結合分子の一部を指し、例えば、標準的な「H2L2」免疫グロブリン構造に対応する抗体、抗体様分子もしくは抗体由来分子、その抗原結合断片、またはその多量体化断片、すなわち、2個の重鎖またはその断片、及び2個の軽鎖またはその断片を指す。ある特定の実施形態では、例えば、結合分子が2価のIgG抗体またはその抗原結合断片である場合、「結合分子」及び「結合ユニット」という用語は等価である。他の実施形態では、例えば、結合分子が多量体、例えば二量体IgA抗体もしくはIgA様抗体、五量体IgM抗体もしくはIgM様抗体、もしくは、六量体IgM抗体もしくはIgM様抗体、またはこれらの任意の誘導体である場合、結合分子は、2つ以上の「結合ユニット」を含む。それぞれ、IgA二量体の場合は2つ、または、IgM五量体もしくは六量体の場合は5つもしくは6つである。結合ユニットは、全長抗体の重鎖及び軽鎖を含む必要はないが、典型的には2価であり、すなわち、上で定義されるような、2個の「抗原結合ドメイン」を含む。本明細書で使用する場合、本開示で提供されるある特定の結合分子は「二量体」であり、IgA定常領域またはその多量体化断片を含む、2価の結合ユニットを含む。本開示で提供されるある特定の結合分子は「五量体」または「六量体」であり、5個または6個の2価結合ユニットを含み、この結合ユニットは、IgM定常領域またはその多量体化断片もしくはバリアントを含む。結合分子、例えば、2つ以上、例えば、2つ、5つ、または6つの結合ユニットを含む、抗体、または抗体様分子もしくは抗体由来結合分子は、本明細書では「多量体」と呼ばれる。
本明細書で使用する場合の「J鎖」という用語は、任意の動物種の天然配列IgMまたはIgA抗体のJ鎖、その任意の機能性断片、その誘導体、及び/またはそのバリアントを指し、アミノ酸配列が配列番号20として示される成熟ヒトJ鎖を含む。種々のJ鎖バリアント及び改変されたJ鎖誘導体が本明細書に開示される。「機能性断片」または「機能性バリアント」は、IgM重鎖定常領域と結合し、五量体IgM抗体を形成できる(あるいは、IgA重鎖定常領域と結合し、二量体IgA抗体を形成できる)、それらの断片及びバリアントを含むことを、当業者は理解するであろう。
「改変J鎖」という用語は、本明細書では、天然J鎖配列に導入された、または取り付けられた、異種部分、例えば異種ポリペプチド、例えば外来の結合ドメインまたは機能性ドメインを含む、天然配列J鎖ポリペプチドの誘導体を指するように使用される。導入は、異種ポリペプチドもしくは他の部分の直接的もしくは間接的融合を含む手段、またはペプチドもしくは化学リンカーを介した付着による手段を含む、任意の手段によって達成することができる。「改変ヒトJ鎖」という用語は、異種部分、例えば異種ポリペプチド、例えば外来の結合ドメインの導入により改変された、配列番号20のアミノ酸配列の天然配列ヒトJ鎖、またはその機能性断片、またはその機能性バリアントを包含するが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、異種部分は、IgMの五量体への、またはIgAの二量体への効率的な重合、及びそのような重合体の標的への結合を妨害しない。例示的な改変J鎖は、例えば、米国特許第9,951,134号及び同第10,618,978号、ならびに、米国特許出願公開第2019-0185570号に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本明細書で使用する場合、「IgM由来結合分子」という用語は、総称的に、天然IgM抗体、IgM様抗体、ならびに、抗体抗原結合ドメインまたはそのサブユニットの代わりに非抗体結合ドメイン及び/または機能的ドメインを含む他のIgM由来結合分子、ならびにそれらの任意の断片、例えば、多量体化断片、バリアント、または誘導体を指す。
本明細書で使用する場合、「IgM様抗体」という用語は、一般に、六量体を形成するかまたはJ鎖と結合して五量体を形成する能力を依然として保持している、バリアント抗体または抗体由来結合分子を指す。IgM様抗体または他のIgM由来結合分子は、典型的には、IgM定常領域の少なくともCμ4-tpドメインを含むが、同じ種由来または異なる種由来の他の抗体アイソタイプ、例えば、IgGからの重鎖定常領域ドメインを含み得る。IgM様抗体または他のIgM由来結合分子は、同様に、IgM様抗体が六量体及び/または五量体を形成できる限り、1個または複数個の定常領域が欠失している抗体断片であることができる。したがって、IgM様抗体または他のIgM由来結合分子は、例えば、ハイブリッドIgM/IgG抗体であることができるか、または、IgM抗体の「多量体化断片」であることができる。
「価数」、「2価」、「多価」という用語、及び文法的等価物は、結合ドメイン、例えば、所与の結合分子、例えば抗体、抗体由来分子、もしくは抗体様分子、または所与の結合ユニットにおける、抗原結合ドメインの数を指す。そのため、所与の結合分子、例えばIgM抗体、IgM様抗体、他のIgM由来結合分子、またはその多量体化断片を参照した「2価」、「4価」、及び「6価」という用語はそれぞれ、2つの抗原結合ドメイン、4つの抗原結合ドメイン、及び6つの抗原結合ドメインが存在することを表す。各結合ユニットが2価である場合の、典型的なIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、10~12個の価数を有することができる。2価または多価の結合分子、例えば抗体または抗体由来分子は、単一特異性、すなわち、抗原結合ドメインの全てが同一であることができるか、または、例えば、2つ以上の抗原結合ドメインが異なる、例えば、同一抗原の異なるエピトープに結合するか、もしくは、完全に異なる抗原に結合する場合、二重特異性もしくは多重特異性であることができる。
「エピトープ」という用語は、抗体、抗体様分子、または抗体由来分子の抗原結合ドメインに特異的に結合できる、任意の分子決定基を含む。ある特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面グルーピングを含むことができ、ある特定の実施形態においては、3次元構造特性、及びまたは特定の電荷特性を有することができる。エピトープは、抗体の抗原結合ドメインによって結合される標的の領域である。
「標的」という用語は、最も広い意味で用いられ、結合分子、例えば抗体、抗体様分子、または抗体由来分子により結合され得る物質を含む。標的は、例えば、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、もしくは他の分子、または、このような分子上の最小エピトープであり得る。さらに、「標的」は例えば、結合分子、例えば抗体、抗体様分子、または抗体由来分子により結合可能なエピトープを含む、細胞、器官、または生命体、例えば動物、植物、微生物、もしくはウイルスであることができる。
抗体、抗体様分子、または抗体由来分子の軽鎖及び重鎖の両方は、構造的及び機能的に相同な領域に分割される。「定常」及び「可変」という用語は、機能的に使用される。この点において、可変軽鎖(VL)部分及び可変重鎖(VH)部分両方の可変ドメインが、抗原の認識及び特異性を決定することが理解されよう。逆に、軽鎖(CL)の定常領域ドメイン及び重鎖の定常領域(例えば、CH1、CH2、CH3、またはCH4)は、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などの生物学的特性を付与する。慣例により、定常領域ドメインのナンバリングは、定常領域ドメインが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠位になるにつれて増加する。N末端側部分は可変領域であり、C末端側部分は定常領域であり、CH3(または、例えばIgMの場合はCH4)ドメイン及びCLドメインは実際に、それぞれ重鎖及び軽鎖のカルボキシ末端を含む。
「完全長IgM抗体重鎖」とは、N末端からC末端への方向に、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常重鎖定常ドメイン1(CM1またはCμ1)、抗体重鎖定常ドメイン2(CM2またはCμ2)、抗体重鎖ドメイン3(CM3またはCμ3)、及びテールピースを含み得る抗体重鎖定常ドメイン4(CM4またはCμ4)を含むポリペプチドである。
上述のとおり、可変領域(複数可)により、結合分子、例えば抗体、抗体様分子、または抗体由来分子が、抗原上のエピトープを選択的に認識し、これに特異的に結合することが可能になる。すなわち、結合分子、例えば抗体、抗体様分子、または抗体由来分子のVLドメイン及びVHドメイン、または相補性決定領域(CDR)のサブセットは、結合して抗原結合ドメインを形成する。より具体的には、抗原結合ドメインは、VH鎖及びVL鎖の各々の3個のCDRによって定義することができる。ある特定の抗体は、より大きな構造を形成する。例えば、IgAは、2個のH2L2結合ユニット及びジスルフィド結合を介して共有結合したJ鎖を含む分子を形成することができ、この分子はさらに分泌成分と連結されることができ、IgMは、5個または6個のH2L2結合ユニット及び、場合によっては、ジスルフィド結合を介して共有結合したJ鎖を含む五量体または六量体の分子を形成することができる。
抗体の抗原結合ドメイン内に存在する6個の「相補性決定領域」または「CDR」は、短い非連続的なアミノ酸配列であり、抗体が水性環境内で3次元構成を呈するときに抗原結合ドメインを形成するように特異的に配置される。抗原結合ドメイン内の残りのアミノ酸は、「フレームワーク」領域と呼ばれ、より小さい分子間可変性を示す。フレームワーク領域は主としてβシート立体構造を採用し、CDRは、βシート構造を接続するループを形成し、このループは場合によってはβシート構造の一部を形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合的相互作用によってCDRを正しい方向に配置する足場を形成するように作用する。配置されたCDRによって形成された抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに対し相補的な表面を定義する。この相補的表面は、抗体がその同族エピトープに対し非共有結合的に結合するのを促進する。CDR及びフレームワーク領域をそれぞれ構成するアミノ酸は、様々な異なる方法で定義されているため、任意の所与の重鎖または軽鎖可変領域が当業者によって容易に同定することができる(”Sequences of Proteins of Immunological Interest,”Kabat,E.,et al.,U.S.Department of Health and Human Services,(1983)、及びChothia and Lesk,J.Mol.Biol.,196:901-917(1987)を参照されたい(これらの全体が参照により本明細書に援用される))。
当技術分野内で使用及び/または許容されている用語の定義が2つ以上存在する場合、本明細書で使用する用語の定義は、反対のことが明示的に述べられていない限り、このような意味全てを含むように意図されている。具体的な例は、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内にある非連続的な抗原結合部位を説明するための「相補性決定領域」(「CDR」)という用語の使用である。これらの特定の領域は、例えば、Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”(1983)及びChothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)によって説明されており、これらの文献は参照による本明細書に援用される。Kabat及びChothiaの定義は、アミノ酸を互いに比較した場合のアミノ酸の重複またはサブセットを含む。それでも、抗体またはそのバリアントのCDRに言及するためのいずれかの定義(または当業者に知られている他の定義)の適用は、別段の指示がない限り、本明細書で定義及び使用される用語の範囲内であるように意図されている。上記で引用した各参考文献によって定義されるCDRを包含する適切なアミノ酸を、比較として以下の表1に示す。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列及びサイズに応じて異なる。当業者は、抗体の可変領域のアミノ酸配列を考慮して、どの残基が特定のCDRを含むかを通例的に決定することができる。
(表1)CDRの定義*
Figure 2022545682000002
*表1中の全てのCDR定義のナンバリングは、Kabatらによって示されるナンバリング慣例に従う(下記参照)。
また、抗体可変ドメインは、CDRを含めた可変領域セグメントを特定するために、例えば、IMGT情報システム(www://imgt.cines.fr/)(IMGT(登録商標)/V-Quest)を用いて分析することもできる。(例えば、Brochet et al.,Nucl.Acids Res.,36:W503-508,2008を参照されたい)。
Kabatらは、任意の抗体に適用可能な可変ドメイン配列のためのナンバリングシステムも定義した。当業者は、配列そのものを上回る実験データに依存せずに、この「Kabatナンバリング」のシステムを明瞭に任意の可変ドメイン配列に割り当てることができる。本明細書で使用する場合、「Kabatナンバリング」とは、Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,”Sequence of Proteins of Immunological Interest”(1983)によって示されるナンバリングシステムを指す。ただし、Kabatナンバリングシステムの使用が明示的に述べられない限り、本開示における全てのアミノ酸配列について連続したナンバリングが使用される。
ヒトIgM定常ドメインに対するKabatナンバリングシステムは、Kabat,et.al.“Tabulation and Analysis of Amino acid and nucleic acid Sequences of Precursors,V-Regions,C-Regions,J-Chain,T-Cell Receptors for Antigen,T-Cell Surface Antigens,β-2 Microglobulins,Major Histocompatibility Antigens,Thy-1,Complement,C-Reactive Protein,Thymopoietin,Integrins,Post-gamma Globulin,α-2 Macroglobulins,and Other Related Proteins,” U.S.Dept.of Health and Human Services(1991)に見出すことができる。IgM定常領域は、連続的に(すなわち、アミノ酸番号1が定常領域の第1のアミノ酸から開始する)、またはKabatナンバリングシステムを用いることによってナンバリングされ得る。ヒトIgM定常領域の2つのアレルの連続的なナンバリング(本明細書で配列番号1(アレルIGHM03)及び配列番号2(アレルIGHM04)として提示される)と、Kabat体系によるナンバリングとの比較が下記に記載される。下線付きのアミノ酸残基は、Kabat体系においては考慮されない(下記の二重下線付きの「X」は、セリン(S)(配列番号1)またはグリシン(G)(配列番号2)であり得る)。
IgM重鎖についての連続的ナンバリング(配列番号1または配列番号2)/Kabatナンバリングキー
Figure 2022545682000003
結合分子、例えば、抗体、抗体様分子、もしくは抗体由来分子、もしくはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体、及び/または多量体断片としては、限定されるものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体、1本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab’、及びF(ab’)、Fd、Fvs、1本鎖Fv(scFv)、1本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VLまたはVLドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって産生された断片が挙げられる。ScFv分子は当技術分野で知られており、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。
「特異的に結合する」とは、概して、結合分子(例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体)が、抗原結合ドメインを介しエピトープに結合し、その結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間に何らかの相補性を伴うことを意味する。この定義によれば、結合分子、例えば、抗体、抗体様分子、または抗体由来分子が自らの抗原結合ドメインを介し、ランダムな無関係のエピトープに結合するよりも容易にあるエピトープに結合する場合、結合分子はそのエピトープに対し「特異的に結合する」と言われる。「特異性」という用語は、本明細書では、ある特定の結合分子がある特定のエピトープに結合する相対的親和性を称するために使用される。例えば、結合分子「A」は、所与のエピトープにおいて結合分子「B」よりも高い特異性を有するとみなすことができ、または結合分子「A」は、関連するエピトープ「D」に対するよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言うことができる。
結合分子、例えば、本明細書で開示される抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、標的抗原に対し、5×10-2-1、10-2-1、5×10-3-1、10-3-1、5×10-4-1、10-4-1、5×10-5-1、または10-5-1、5×10-6-1、10-6-1、5×10-7-1、または10-7-1以下のオフレート(k(off))で結合すると言うことができる。
結合分子、例えば、本明細書で開示される抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、標的抗原に対し、10-1-1、5×10-1-1、10-1-1、5×10-1-1、10-1-1、5×10-1-1、10-1-1、または5×10-1-1、または10-1-1以上のオンレート(k(on))で結合すると言うことができる。
結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体が、参照抗体または抗原結合断片の所与のエピトープとの結合をある程度遮断する範囲において、そのエピトープに優先的に結合する場合、参照抗体または抗原結合断片のそのエピトープとの結合を競合的に阻害すると言われる。競合的阻害は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、競合ELISAアッセイによって測定することができる。結合分子は、参照抗体または抗原結合断片の所与のエピトープとの結合を少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%競合的に阻害すると言うことができる。
本明細書で使用する場合、「親和性」という用語は、個々のエピトープにおける、1個以上の抗原結合ドメイン(例えば、免疫グロブリン分子の結合ドメイン)との結合の強さの尺度を指す。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)の27~28ページを参照されたい。本明細書で使用する場合、「アビディティー」という用語は、抗原結合ドメイン集団と抗原との間における複合体の全体的安定性を指す。例えば、Harlowの29~34ページを参照されたい。アビディティーは、集団内の個々の抗原結合ドメインにおける特定のエピトープとの親和性と、さらに免疫グロブリン及び抗原の結合価との両方に関連する。例えば、2価のモノクローナル抗体と、高度に反復するエピトープ構造(例えば、ポリマー)との間の相互作用は、高いアビディティーの1つと考えられる。2価のモノクローナル抗体と、細胞表面に高密度で存在する受容体との間の相互作用も、高いアビディティーを有すると考えられる。
本明細書で開示される結合分子、例えば、その抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、その交差反応性の観点からも説明または特定することができる。本明細書で使用する場合、「交差反応性」という用語は、ある抗原に特異的な結合分子(例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体)が第2の抗原と反応する能力を指し、2つの異なる抗原物質間の関連性の尺度である。したがって、結合分子は、その形成を誘発したもの以外のエピトープに結合する場合、交差反応性である。交差反応性エピトープは、概して、誘発性エピトープと同じ相補的な構造的特徴の多くを含み、場合によっては、実際に元のエピトープよりも良好に適合する。
結合分子、例えば、抗体またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、抗原に対するその結合親和性の観点からも説明または特定することができる。例えば、結合分子は、解離定数すなわちKが5×10-2M、10-2M、5×10-3M、10-3M、5×10-4M、10-4M、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M、または10-15M以下で抗原に結合することができる。
1本鎖抗体または他の抗原結合ドメインを含めた「抗原結合抗体断片」は、単独で存在する場合も、ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3、もしくはCH4ドメイン、J鎖、または分泌成分のうちの1つ以上と組み合わせて存在する場合もある。また、可変領域(複数可)と、ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3、もしくはCH4ドメイン、J鎖、または分泌成分のうちの1つ以上との任意の組合せを含むことができる抗原結合断片も含まれる。結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、鳥類及び哺乳類を含めた任意の動物起源からのものとすることができる。抗体は例えば、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、リャマ、ウマ、またはニワトリの抗体であり得る。別の実施形態では、可変領域は、(例えば、サメからの)コンドリコイド起源であり得る。本明細書で使用する場合、「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、また、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つ以上のヒト免疫グロブリンに対しトランスジェニックな動物から単離された抗体を含み、後述のように、及び例えばKucherlapati et al.による米国特許第5,939,598号で説明されているように、場合によっては内在的免疫グロブリンを発現することがあり、また発現しないこともある。本開示の実施形態によれば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、IgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子が多量体、例えば六量体またはペンタマーを形成できるあるのであれば、抗体の抗原結合断片、例えば、scFv断片を含むことができる。本明細書で使用する場合、そのような断片は、「多量体化断片」を含む。
本明細書で使用する場合、「重鎖サブユニット」という用語は、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列を含み、結合分子(例えば、重鎖サブユニットを含む抗体、抗体様分子、または抗体由来分子)は、VHドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中部、及び/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、またはこれらのバリアントもしくは断片のうちの少なくとも1個を含むことができる。例えば、結合分子(例えば、抗体、抗体様分子、もしくは抗体由来分子、またはその断片、例えば多量体化断片、バリアント、もしくは誘導体)は、限定されるものではないが、VHドメインに加えて、CH1ドメイン;CH1ドメイン、ヒンジ、及びCH2ドメイン;CH1ドメイン及びCH3ドメイン;CH1ドメイン、ヒンジ、及びCH3ドメイン;またはCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含むことができる。ある特定の実施形態では、結合分子、例えば、抗体、抗体様分子、もしくは抗体由来分子、またはその断片、例えば、多量体化断片、バリアント、もしくは誘導体は、VHドメインに加えて、CH3ドメイン及びCH4ドメイン;またはCH3ドメイン、CH4ドメイン、及びJ鎖を含み得る。さらに、本開示で使用するための結合分子、例えば、抗体、抗体様分子、または抗体由来分子は、ある特定の定常領域部分、例えば、CH2ドメインの全部または一部が欠如してもよい。当業者は、このようなドメイン(例えば、重鎖サブユニット)が、元の免疫グロブリン分子とはアミノ酸配列が異なるように改変されてもよいことを理解するであろう。本開示の実施形態によれば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、IgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子が多量体、例えば、六量体または五量体を形成することを可能にするのに十分なIgM重鎖定常領域の部分を含む。本明細書で使用する場合、そのような断片は、「多量体化断片」を含む。
本明細書で使用する場合、「軽鎖サブユニット」という用語は、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。軽鎖サブユニットは少なくともVLを含み、さらに、CL(例えば、CκまたはCλ)ドメインを含んでもよい。
結合分子(例えば、抗体、抗体様分子、抗体由来分子、抗原結合断片、バリアント、もしくはその誘導体、またはその多量体化断片)は、結合分子が認識または特異的に結合する標的、例えば標的抗原のエピトープ(複数可)または一部(複数可)の観点から説明または特定することができる。抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用する標的抗原の一部は、「エピトープ」または「抗原決定基」である。標的抗原は、単一のエピトープまたは少なくとも2個のエピトープを含むことができ、抗原のサイズ、立体構造、及びタイプに応じて、任意の数のエピトープを含むことができる。
先に示したように、様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造及び3次元構成は周知されている。本明細書で使用する場合、「VHドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端側の可変ドメインを含み、「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖の最初(最もアミノ末端側)の定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに隣接し、典型的なIgG重鎖分子のヒンジ領域に対してアミノ末端側にある。
本明細書で使用する場合、「ジスルフィド結合」という用語は、例えば、ポリペプチドのシステイン残基における、2個の硫黄原子の間に形成された共有結合を含む。アミノ酸システインはチオール基を含み、このチオール基によって第2のチオール基とのジスルフィド結合または架橋が形成され得る。ジスルフィド結合は、「鎖内」(すなわち、単一のポリペプチドまたはポリペプチドサブユニットにおいてシステイン残基に結合する)であり得るか、または「鎖間」(すなわち、2個の別々のポリペプチドサブユニット、例えば、抗体重鎖及び抗体軽鎖、2本の抗体重鎖、またはIgMもしくはIgA抗体重鎖定常領域及びJ鎖を結合する)であり得る。
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」という用語は、免疫反応性領域または部位が第1の種から得られるかまたはそれに由来し、定常領域(インタクト、部分的、または改変されたものであり得る)が第2の種から得られる抗体を指す。いくつかの実施形態では、標的結合領域または部位は、非ヒト供給源(例えば、マウスまたは霊長類)に由来し、定常領域はヒトのものである。
「多重特異性抗体」または「二重特異性抗体」という用語は、単一の抗体分子内に2個以上の異なるエピトープに対する抗原結合ドメインを有する抗体、抗体様分子、または抗体由来分子を指す。カノニカルな抗体構造に追加される他の結合分子は、2つの結合特異性を用いて構築され得る。二重特異的または多重特異的抗体によるエピトープ結合は、同時であっても順次であってもよい。トリオーマ及びハイブリッドハイブリドーマは、二重特異的抗体を分泌することができる細胞株の2つの例である。二重特異的抗体は、組換え手段によって構築することもできる。(Strohlein and Heiss,Future Oncol.6:1387-94(2010)、Mabry and Snavely,IDrugs.13:543-9(2010))。二重特異的抗体はダイアボディでもあってもよい。
本明細書で使用する場合、「組換え抗体」という用語は、可変ドメイン、定常領域、及び/またはJ鎖が、1個以上のアミノ酸の少なくとも部分的な置換により変化している抗体を指す。ある特定の実施形態では、既知の特異性を有する抗体からの全体のCDRを異種抗体のフレームワーク領域に移植することができる。代替的CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同じクラスに由来するか、またはサブクラスの抗体にさえも由来することができるが、CDRは、異なるクラスの抗体、例えば異なる種からの抗体に由来することもできる。既知の特異性を有する非ヒト抗体からの1つ以上の「ドナー」CDRがヒト重鎖または軽鎖フレームワーク領域に移植される組換え抗体は、本明細書では「ヒト化抗体」と呼ばれる。ある特定の実施形態では、全てのCDRがドナー可変領域からの完全なCDRで置き換えられるわけではないが、それでもドナーの抗原結合能力をレシピエントの可変ドメインに移行させることができる。例えば、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、及び第6,180,370号に記載の説明を考慮すれば、これは十分に当業者の技能範囲内であり、通例の実験を行うことにより、または試行錯誤試験により、機能的組換え抗体またはヒト化抗体が得られる。
本明細書で使用する場合、「組み換えられた」という用語は、合成手段(例えば、組換え技術、in vitroペプチド合成、ペプチドの酵素的もしくは化学的カップリング、またはこれらの技法の何らかの組合せ)による核酸またはポリペプチド分子の操作を含む。
本明細書で使用する場合、「結合した」、「融合した」、もしくは「融合」という用語、または他の文法上の同等語は、互換的に使用することができる。これらの用語は、化学的コンジュゲーションまたは組換え手段を含めた任意の手段により、2つ以上のエレメントまたは構成要素が一緒に連結することを指す。「インフレーム融合」とは、2つ以上のポリヌクレオチドオープンリーディングフレーム(ORF)が連結して、元のORFの翻訳リーディングフレームを維持する様態で、連続的なより長いORFを形成することを指す。したがって、組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされたポリペプチドに対応する2つ以上のセグメントを含む単一のタンパク質である(これらのセグメントは、自然界では通常そのように連結されることはない)。リーディングフレームは、融合したセグメント全体にわたってこのように連続的に作製されるものの、セグメントは、例えば、インフレームリンカー配列によって、物理的または空間的に分離することができる。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドは、インフレームで融合することができるが、「融合」CDRが連続的なポリペプチドの一部として同時翻訳される限り、少なくとも1個の免疫グロブリンフレームワーク領域または追加のCDR領域をコードするポリヌクレオチドによって分離することができる。
ポリペプチドの文脈において、「線状配列」または「配列」とは、アミノ末端側からカルボキシル末端側への方向におけるポリペプチド内のアミノ酸の順序であり、配列内で隣り合ったアミノ酸は、ポリペプチドの一次構造内で連続している。ポリペプチドの別の部分に対して「アミノ末端側」または「N末端側」であるポリペプチドの部分は、連続したポリペプチド鎖内で先に現れる部分である。同様に、ポリペプチドの別の一部に対し「カルボキシ末端側」または「C末端側」であるポリペプチドの一部は、連続したポリペプチド鎖内で後に現れる一部分である。例えば、典型的な抗体において、可変ドメインは定常領域に対して「N末端側」であり、定常領域は可変ドメインに対して「C末端側」である。
本明細書で使用する場合、「発現」という用語は、遺伝子が生化学物質、例えばポリペプチドを生成するプロセスを指す。このプロセスは、細胞内における遺伝子の機能的存在の任意の顕在化を含み、これには、限定されるものではないが、遺伝子ノックダウンならびに一過性発現及び安定性発現の両方が含まれる。これには、限定されるものではないが、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))への遺伝子転写、及びポリペプチド(複数可)へのこのようなmRNAの翻訳が含まれる。最終的な所望の産物が生化学物質である場合、発現にはその生化学物質及び任意の前駆体の創出が含まれる。遺伝子の発現は「遺伝子産物」をもたらす。本明細書で使用する場合、遺伝子産物は、核酸(例えば、遺伝子の転写によってもたらされるメッセンジャーRNA)、または転写物から翻訳されるポリペプチドのいずれかであり得る。本明細書に記載される遺伝子産物には、転写後修飾(例えば、ポリアデニル化)を伴う核酸、または翻訳後修飾(例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、タンパク質分解切断など)を伴うポリペプチドがさらに含まれる。
「治療する」もしくは「治療」もしくは「治療すること」、または「緩和する」もしくは「緩和すること」などの用語は、既存の診断された病的状態または障害を治癒する、減速する、その症状を軽減する、及び/またはその進行を停止もしくは減速する治療的措置を指す。「防止する」、「防止」、「回避する」、「阻止」などといった用語は、診断されていない標的とされる病的状態または障害の発症を防止する予防的または防止的措置を指す。したがって、治療を必要とする者には、障害を既に有する者、障害を有する傾向にある者、及び障害が防止されるべきである者を含むことができる。
本明細書で使用する場合、「血清半減期」または「血漿半減期」という用語は、投与後に薬物、例えば、本明細書に記載するような抗体、抗体様分子、もしくは抗体由来分子、またはその断片、例えば多量体断片などの結合分子の、血清中または血漿中濃度が50%減少するのにかかる時間(例えば、分、時間、または日単位)を指す。下記の2つの半減期が説明され得る:中央コンパートメント(例えば、静脈内送達の場合は血液)から末梢コンパートメント(例えば、組織または臓器)への薬物の再分布プロセスに起因する血漿中濃度の低下速度である、アルファ半減期、α半減期、またはt1/2α、及び排泄または代謝プロセスに起因する低下速度である、ベータ半減期、β半減期、またはt1/2β。
本明細書で使用する場合、「血漿中薬物濃度-時間曲線下面積」または「AUC」という用語は、ある用量の薬物を投与した後の薬物への実際の身体曝露を反映し、mgh/L単位で表される。この曲線下面積は、0時間(t)から無限大時間(∞)まで測定され、身体からの薬物の排出速度及び投与された用量に依存する。
本明細書で使用する場合、「平均滞留時間」または「MRT」という用語は、薬物が体内に留まる平均的な時間の長さを指す。
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳類」とは、診断、予後、または治療が所望される任意の対象、特に哺乳類対象を意味する。哺乳類対象には、ヒト、飼育動物、家畜、及び動物園、スポーツ、または愛玩動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ブタ、ウシ、クマなどが含まれる。
本明細書で使用する場合、「療法から恩恵を受ける対象」及び「治療を必要とする動物」といった表現は、所与の治療薬、例えば、1つ以上の抗原結合ドメインを含む抗体などの結合分子の投与の恩恵を受ける、全ての候補対象のうちの、対象のサブセットを意味する。そのような結合分子(例えば、抗体)は、例えば、診断手順及び/または疾患の治療もしくは防止のために使用することができる。
IgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子
IgMは、抗原による刺激に応答してB細胞によって産生される第1の免疫グロブリンであり、血清中におよそ1.5mg/mlで自然に存在し、半減期は約5日である。IgMは五量体または六量体分子であり、故に、5つまたは6つの結合ユニットを含む。IgM結合ユニットは典型的には、2個の軽鎖及び2個の重鎖を含む。IgG重鎖定常領域は3つの重鎖定常領域(CH1、CH2、及びCH3)を含有するが、IgMの重鎖(μ)定常領域はさらに、4つの定常ドメイン(CH4)を含有し、C末端「テールピース」を含む。ヒトIgM定常領域は典型的には、配列番号1(例えば、GenBank寄託番号pir||S37768、CAA47708.1、及びCAA47714.1アレルIGHM03と同一)、または、配列番号2(例えば、GenBank寄託番号sp|P01871.4、アレルIGHM04と同一である)のアミノ酸配列を含む。ヒトCμ1領域は配列番号1または2の約アミノ酸5から約アミノ酸102の範囲であり、ヒトCμ2領域は配列番号1または2の約アミノ酸114から約アミノ酸205の範囲であり、ヒトCμ3領域は配列番号1または2の約アミノ酸224から約アミノ酸319の範囲であり、Cμ4領域は配列番号1または2の約アミノ酸329から約アミノ酸430であり、テールピースは配列番号1または2の約アミノ酸431から約アミノ酸453の範囲である。
微小な配列バリエーションを伴うヒトIgM定常領域の他の形態及びアレルとしては、GenBank寄託番号CAB37838.1、及びpir||MHHUが存在するが、これらに限定されない。本開示の他の箇所で説明及び特許請求される、配列番号1または配列番号2に対応する位置におけるアミノ酸置換、挿入、及び/または欠失も同様に、代替のヒトIgM配列、加えて、他の種のIgM定常領域アミノ酸配列に組み込むことができる。
本明細書で提供するヒトIgM定常領域、及び同じくある特定の非ヒト霊長類IgM定常領域は、典型的には、5個の天然アスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフまたは部位を含む。図1を参照されたい。本明細書で使用する場合、「N結合型グリコシル化モチーフ」は、アミノ酸配列N-X-S/Tを含むか、またはそれからなる[配列中、Nはアスパラギンであり、Xは、プロリン(P)を除く任意のアミノ酸であり、S/Tはセリン(S)またはトレオニン(T)である]。グリカンは、アスパラギン残基の窒素原子に付着している。例えば、Drickamer K,Taylor ME(2006),Introduction to Glycobiology(2nd ed.).Oxford University Press,USA.を参照されたい。N結合型グリコシル化モチーフは、配列番号1または配列番号2のヒトIgM重鎖定常領域において生じ、46位(「N1」)、209位(「N2」)、272位(「N3」)、279位(「N4」)、及び440位(「N5」)から始まる。これらの5つのモチーフは、非ヒト霊長類IgM重鎖定常領域において保存されており、5つのうちの4つは、マウスIgM重鎖定常領域において保存されている。図2を参照されたい。本明細書の他の箇所で示すように、ヒトIgM重鎖定常領域における、N4を除くこれらの部位の各々は、その部位でのグリコシル化を防止しながらも、依然としてIgM発現、及び六量体または五量体への集合を可能にするように変異させることができる。
各IgM重鎖定常領域は、結合ドメイン、例えば抗原結合ドメイン、例えばscFvもしくはVHH、または、抗原結合ドメインのサブユニット、例えばVH領域と連結されることができる。ある特定の実施形態では、結合ドメインは、非抗体結合ドメイン、例えば受容体エクトドメイン、そのリガンドまたは受容体結合断片、サイトカインもしくはその受容体結合断片、成長因子もしくはその受容体結合断片、神経伝達物質もしくはその受容体結合断片、ペプチドもしくはタンパク質ホルモンもしくはその受容体結合断片、免疫チェックポイントモジュレーターリガンドもしくはその受容体結合断片、または細胞外マトリックスタンパク質の受容体結合断片であることができる。例えば、全体が参照により本明細書に援用されるPCT公開第202000867号を参照されたい。
5つのIgM結合ユニットは、さらなる小型ポリペプチド鎖(J鎖)またはその機能性断片、バリアント、もしくは誘導体との複合体を形成し、五量体IgM抗体またはIgM様抗体を形成することができる。ヒトJ鎖の前駆体形態は、配列番号19として提示される。シグナルペプチドは、配列番号19のアミノ酸1から、およそアミノ酸22まで延び、成熟ヒトJ鎖は、配列番号19のおよそアミノ酸23からアミノ酸159まで延びる。成熟ヒトJ鎖は、配列番号20のアミノ酸配列を含む。
例示的なバリアント、及び改変J鎖を、本明細書の他の箇所で示す。J鎖がないと、IgM抗体またはIgM様抗体は、典型的には、12個の抗原結合ドメインからなる六量体に集合する。J鎖があると、IgM抗体またはIgM様抗体は典型的には集合して、10個の抗原結合ドメインを含む五量体になり、J鎖が、さらなる抗原結合ドメイン(複数可)を含む1つ以上の異種ポリペプチドを含む改変J鎖である場合、10個以上の抗原結合ドメインを含む五量体になる。5個または6個のIgM結合ユニットが、五量体または六量体のIgM抗体またはIgM様抗体に集合することは、Cμ4及びテールピースドメインを伴うと考えられている。例えば、Braathen,R.,et al.,J.Biol.Chem.277:42755-42762(2002)を参照されたい。したがって、本開示で提供される五量体または六量体のIgM抗体は、典型的には、少なくともCμ4及び/またはテールピースドメイン(本明細書では、まとめてCμ4-tpとも呼ばれる。)を含む。IgM重鎖定常領域の「多量体化断片」はそれ故、少なくともCμ4-tpドメインを含む。IgM重鎖定常領域は、Cμ3ドメインもしくはその断片、Cμ2ドメインもしくはその断片、Cμ1ドメインもしくはその断片、及び/または他のIgM重鎖ドメインを追加的に含み得る。ある特定の実施形態では、IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、完全IgM重(μ)鎖定常ドメイン、例えば、本明細書で提供するものといった、例えば配列番号1もしくは配列番号2、またはそのバリアント、誘導体、もしくは類似体を含むことができる。
特定の実施形態では、本開示は、5つの2価結合ユニットを含む、五量体IgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子を提供し、各結合ユニットは、それぞれが抗原結合ドメインまたはそのサブユニットと連結された、2つのIgM重鎖定常領域またはその多量体化断片もしくはバリアントを含む。ある特定の実施形態では、2個のIgM重鎖定常領域は、ヒト重鎖定常領域である。
いくつかの実施形態では、多量体結合分子は六量体であり、6個の2価結合ユニットまたはそのバリアントもしくは断片を含む。いくつかの実施形態では、多量体結合分子は六量体であり、6個の2価結合ユニットまたはそのバリアントもしくは断片を含み、各結合ユニットは、2つのIgM重鎖定常領域、またはその多量体化断片もしくはバリアントを含む。
IgM重鎖定常領域は、定常領域が、IgMもしくはIgM様抗体で所望の機能を果たす、例えば、第2のIgM定常領域と会合して1、2、もしくは3個の抗原結合ドメイン(複数可)を含む結合ユニットを形成する、且つ/または、他の結合ユニットと会合し(及び、五量体、J鎖の場合に)六量体または五量体を形成することができることを条件として、Cμ1ドメインまたはその断片もしくはバリアント、Cμ2ドメインまたはその断片もしくはバリアント、Cμ3ドメインまたはその断片もしくはバリアント、Cμ4ドメインまたはその断片もしくはバリアント、及び/あるいはテールピース(tp)またはその断片もしくはバリアントのうちの1つ以上を含むことができる。ある特定の実施形態では、個別の結合ユニット内にある2つのIgM重鎖定常領域またはその断片もしくはバリアントはそれぞれ、Cμ4ドメインまたはその断片もしくはバリアント、テールピース(tp)またはその断片もしくはバリアント、あるいはCμ4ドメイン及びtpまたはそれらの断片もしくはバリアントの組合せを含む。ある特定の実施形態では、個別の結合ユニット内にある2つのIgM重鎖定常領域またはその断片もしくはバリアントはそれぞれ、Cμ3ドメインまたはその断片もしくはバリアント、Cμ2ドメインまたはその断片もしくはバリアント、Cμ1ドメインまたはその断片もしくはバリアント、あるいはこれらのいずれかの組合せをさらに含む。
いくつかの実施形態では、IgMまたはIgM様抗体の結合ユニットは、2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、IgMまたはIgM様抗体の結合ユニットは、軽鎖の2つの断片を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖はカッパ軽鎖である。いくつかの実施形態では、軽鎖はラムダ軽鎖である。いくつかの実施形態では、各結合ユニットは、免疫グロブリン軽鎖定常領域に対してアミノ末端側に位置するVLをそれぞれ含む2つの免疫グロブリン軽鎖を含む。
本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子が五量体である場合、IgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、典型的には、J鎖、またはその機能性断片もしくはバリアントをさらに含む。ある特定の実施形態では、J鎖は、本明細書の他の箇所に記載されているような、J鎖に結合した1つ以上の異種部分をさらに含む、改変J鎖またはそのバリアントである。ある特定の実施形態では、J鎖は、本明細書の他の箇所で論じるように、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子の血清半減期に影響を及ぼす、例えば、これを向上させるように、変異することができる。ある特定の実施形態では、J鎖は、本明細書の他の箇所で論じるように、グリコシル化に影響を及ぼすように変異することができる。
IgM重鎖定常領域は、定常領域が、IgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子において所望の機能を果たすことができる、例えば、第2のIgM定常領域と会合して1、2、もしくは3個の抗原結合ドメインを含む結合ユニットを形成することができ、且つ/または他の結合ユニットと会合して(五量体、J鎖の場合に)六量体または五量体を形成することができることを条件として、Cμ1ドメインまたはその断片もしくはバリアント、Cμ2ドメインまたはその断片もしくはバリアント、Cμ3ドメインまたはその断片もしくはバリアント、及び/あるいはCμ4ドメインまたはその断片もしくはバリアントのうちの1つ以上を含むことができる。ある特定の実施形態では、個別の結合ユニット内にある2つのIgM重鎖定常領域またはその断片もしくはバリアントはそれぞれ、Cμ4ドメインまたはその断片もしくはバリアント、テールピース(tp)またはその断片もしくはバリアント、あるいはCμ4ドメイン及びTPまたはそれらの断片もしくはバリアントの組合せを含む。ある特定の実施形態では、個別の結合ユニット内にある2つのIgM重鎖定常領域またはその断片もしくはバリアントはそれぞれ、Cμ3ドメインまたはその断片もしくはバリアント、Cμ2ドメインまたはその断片もしくはバリアント、Cμ1ドメインまたはその断片もしくはバリアント、あるいはこれらのいずれかの組合せをさらに含む。
改変J鎖
ある特定の実施形態では、五量体IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体またはIgM様抗体のJ鎖は、例えば、IgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子が、その結合標的(複数可)に集合及び結合する能力に干渉することなく、異種部分、または2つ以上の異種部分、例えばポリペプチドを導入することにより、改変することができる。全体が本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第9,951,134号及び同第10,618,978号、ならびに、米国特許出願公開第US-2019-0185570号を参照されたい。したがって、本明細書の他の箇所に記載する多重特異性IgMまたはIgM様抗体を含む、本明細書で提供するIgMまたはIgM様抗体は、J鎖またはその断片もしくはバリアントに導入、例えば融合または化学的にコンジュゲートした、異種部分、例えば異種ポリペプチドを含む、改変J鎖またはその機能性断片もしくはバリアントを含むことができる。ある特定の実施形態では、異種部分は、J鎖にインフレームで融合しているか、あるいはJ鎖またはその断片もしくはバリアントに化学的にコンジュゲートしている、ペプチドまたはポリペプチド配列であることができる。ある特定の実施形態では、異種ポリペプチドは、典型的には、少なくとも5個のアミノ酸、ただし25個以下のアミノ酸からなる、ペプチドリンカー、例えばペプチドリンカーを介して、J鎖またはその機能性断片に融合する。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、GGGGS(配列番号27)、GGGGSGGGGS(配列番号28)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号29)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号30)、または、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号31)からなる。ある特定の実施形態では、異種部分は、J鎖にコンジュゲートした化学的部分であることができる。J鎖に結合させるべき異種部分としては、結合部分、例えば、抗体もしくはその抗原結合断片、例えば、単鎖Fv(scFv)分子、サイトカイン、例えばIL-2もしくはIL-15(例えば、その全体が本明細書に参照により組み込まれている、PCT出願第PCT/US2020/046379号を参照されたい。)、IgM抗体、IgM様抗体、もしくは他のIgM由来結合分子の半減期を増加させることができる安定化ペプチド、または、ポリマーもしくは細胞毒素などの化学的部分が挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、異種部分は、結合分子、例えばヒト血清アルブミン(HSA)またはHSA結合分子の半減期を増加させることができる、安定化ペプチドを含む。
いくつかの実施形態では、改変J鎖は抗原結合ドメインを含むことができ、抗原結合ドメインとしては、限定されるものではないが、標的抗原に対し特異的に結合することができるポリペプチド(小ペプチドを含む)が挙げられる。ある特定の実施形態では、改変J鎖と連結された抗原結合ドメインは、本明細書の他の箇所に記載される抗体またはその抗原結合断片であり得る。ある特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、例えば、ラクダ科抗体またはコンドリクトイド(condricthoid)抗体からの、scFv抗原結合ドメインまたは一本鎖抗原結合ドメインであり得る。抗原結合ドメインは、J鎖の機能または結合したIgMまたはIgA抗体の機能を妨害することなく、抗原結合ドメインのその結合標的への結合を可能にする任意の位置でJ鎖に導入することができる。挿入箇所としては、限定されるものではないが、C末端もしくはその付近、N末端もしくはその付近、またはJ鎖の3次元構造に基づいてアクセス可能な内部の箇所が挙げられる。ある特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号20のシステイン残基92と101との間で配列番号20の成熟ヒトJ鎖に導入することができる。さらなる実施形態では、抗原結合ドメインは、グリコシル化部位またはその付近で配列番号20のヒトJ鎖に導入することができる。さらなる実施形態では、抗原結合ドメインは、C末端から約10アミノ酸残基以内、または、N末端から約10アミノ酸以内の、配列番号20のヒトJ鎖に導入することができる。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子のJ鎖は、例えば、本明細書で提供する、IgM抗体、IgM様抗体、IgA抗体、IgA様抗体、またはIgMもしくはIgA由来結合分子の血清半減期を変化させることができる1つ以上のアミノ酸置換を含む、バリアントJ鎖である。例えば、ある特定のアミノ酸置換、欠失、または挿入は、バリアントJ鎖内の1つ以上の単独のアミノ酸置換、欠失、または挿入を除いて同一であり、且つ同一の動物種に対して同一の方法を用いて投与される、IgM由来参照結合分子と比較して、対象動物への投与された際に、増加した血清半減期を示す、IgM由来結合分子をもたらすことができる。ある特定の実施形態では、バリアントJ鎖は、参照J鎖と比較して、1つ、2つ、3つ、または4つの単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を含むことができる。
いくつかの実施形態では、多量体結合分子は、1つ以上のポリマーIg受容体(例えば、pIgR、Fcα-mu受容体(FcαμR)、またはFc mu受容体(FcμR))に対するグリコシル化の低下、または結合の低下を伴う、本明細書に記載するバリアント配列などの、バリアントJ鎖配列を含むことができる。例えば、全体が参照により本明細書に援用されるPCT公開番号第2019/169314号を参照されたい。ある特定の実施形態では、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子のJ鎖は、成熟野生型ヒトJ鎖(配列番号20)のアミノ酸Y102に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を含む。「成熟野生型ヒトJ鎖のアミノ酸Y102に対応するアミノ酸」とは、ヒトJ鎖におけるY102に相同である任意の種のJ鎖の配列におけるアミノ酸を意味する。全体が参照により本明細書に援用されるPCT公開番号第2019/169314号を参照されたい。配列番号20におけるY102に対応する位置は、少なくとも43の他の種のJ鎖アミノ酸配列において保存されている。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,951,134号の図4を参照されたい。配列番号20のY102に対応する位置におけるある特定の変異は、ある特定の免疫グロブリン受容体、例えば、ヒトもしくはマウスFcαμ受容体、マウスFcμ受容体、及び/または、ヒトもしくはマウスポリマーIg受容体(pIg受容体)の、変異J鎖を含むIgM五量体への結合を示すことができる。配列番号20のY102に対応するアミノ酸において変異を含む、IgM抗体、IgM様抗体、及び他のIgM由来結合分子は、置換を除いて同一であり、且つ同一の方法で同一種に投与される、対応する抗体、抗体様分子、または結合分子よりも、動物に投与されるときに、改善された血清半減期を有する。ある特定の実施形態では、配列番号20のY102に対応するアミノ酸を、任意のアミノ酸で置換することができる。ある特定の実施形態では、配列番号20のY102に対応するアミノ酸は、アラニン(A)、セリン(S)、またはアルギニン(R)で置換することができる。特定の実施形態では、配列番号20のY102に対応するアミノ酸を、アラニンで置換することができる。特定の実施形態では、J鎖、またはその機能性断片もしくはバリアントは、「J」と本明細書では呼ばれる、バリアントヒトJ鎖であり、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
グリコバリアントIgM由来結合分子
本開示は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、または少なくとも12個のバリアントIgM由来重鎖を含む、単離されたIgM由来結合分子、例えば、IgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子を提供する。本開示により提供されるように、バリアントIgM由来重鎖(複数可)は、結合ドメイン(例えば、対象となる標的に特異的に結合する抗体の抗原結合ドメイン)と連結されている、完全長IgM重鎖定常領域のバリアント、IgM重鎖定常領域の多量体化断片、または、多量体化に必要なIgM重鎖定常領域の少なくとも最小部分を含むハイブリッド定常領域であることができる、バリアントIgM重鎖定常領域を含む。標的に結合する結合ドメインは、例えば、抗原結合ドメイン、または抗原結合ドメインのサブユニット、例えば、抗体の重鎖可変領域(VH)であることができる。本開示は、対象となる任意の標的に結合する結合分子に関する。
本明細書で提供する1つまたは複数のバリアントIgM重鎖定常領域としては、結合分子のグリコシル化、例えば、アスパラギン(N)結合型グリコシル化に影響を及ぼす変化を含む。例えば、バリアントIgM重鎖定常領域(複数可)は、例えば、5つの自然に存在するアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフ(ヒトIgM重鎖定常領域の場合)におけるグリコシル化を防止するために変異した、バリアントIgM重鎖定常領域の当該モチーフのうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、または4つにおいて、グリコシル化を破壊する、例えば防止する、1つ以上の単独のアミノ酸挿入、欠失、または置換を含むことができ、N結合型グリコシル化モチーフはアミノ酸配列N-X-S/Tを含む[配列中、Nはアスパラギンであり、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸であり、S/Tはセリンまたはトレオニンである]。ヒト及び非ヒト霊長類IgM重鎖定常領域は典型的には、5つのN結合型グリコシル化モチーフを有し、マウスIgM重鎖定常領域は典型的には、4つのN結合型グリコシル化モチーフを有する。図2を参照されたい。
結合分子のグリコシル化に影響を及ぼす変化を有するIgM由来結合分子は、当該結合分子のある特定の生理的、薬物動態学的、または薬力学的特性を変化させる、例えば、改善することができる。例えば、そのような結合分子は、発現及び製造の間に、改善された血清半減期を示すことができ、且つ/または、より均質な抗体の調製を可能にすることができる。したがって、そのような結合分子を組み込んで、より安全に、より効果的に、且つより容易に、バイオ製剤を製造することができる。
本明細書で提供するように、バリアントIgM重鎖定常領域は、配列番号1(アレルIGHM03)または配列番号2(アレルIGHM04)のアミノ酸46(モチーフN1)、アミノ酸209(モチーフN2)、アミノ酸272(モチーフN3)、アミノ酸279(モチーフN4)、及びアミノ酸440(モチーフN5)に対応するアミノ酸位置から始まる5つのN結合型グリコシル化モチーフN-X-S/Tを含むヒトIgM重鎖定常領域(例えば、配列番号1または配列番号2)に由来することができる。バリアントIgM重鎖定常領域は同様に、例えば、他のヒトIgMアレルに、非ヒト霊長類IgM重鎖定常領域に、または、他の種、例えば、げっ歯類IgM重鎖定常領域、例えばマウスIgM重鎖定常領域のIgM重鎖定常領域に由来することができる。ヒトIgM重鎖定常領域中の5つのN結合型グリコシル化モチーフ、すなわちN1~N5は、他の霊長類種で保存されているが、マウスIgM重鎖定常領域では、位置N3におけるN結合型グリコシル化モチーフが保存されていない。図2を参照されたい。
ある特定の実施形態では、モチーフN1、モチーフN2、モチーフN3、及び/またはモチーフN5に対応するN-X-S/Tモチーフのうちの、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つは、当該モチーフにおけるグリコシル化を防止するアミノ酸挿入、欠失、または置換を含む。グリコシル化の防止は、アスパラギン残基を置換する、もしくは、アスパラギン残基を非アスパラギン残基で置換することにより、または、モチーフの3番目の位置におけるセリンもしくはトレオニン残基を取り除く、もしくは、セリンもしくはトレオニン残基を、非セリンもしくは非トレオニン残基で置換することにより、達成することができる。モチーフにおけるグリコシル化の防止は、モチーフの位置Xにおいて、プロリン残基を挿入することによってもまた実現することができる。
したがって、IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、モチーフN1、モチーフN2、モチーフN3、モチーフN5、またはモチーフN1、N2、N3、もしくはN5の2つ以上、3つ以上、もしくは4つ全てのいずれかの組合せの、N、X、またはS/T位置のいずれかにおける、アミノ酸挿入、欠失、または置換を含むことができ、アミノ酸挿入、欠失、または置換は、当該モチーフにおけるグリコシル化を防止する。
ある特定の実施形態では、IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸N46、N209、N272、もしくはN440に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換、または、配列番号1もしくは配列番号2のN46、N209、N272、もしくはN440におけるアミノ酸置換を含むことができ、置換アミノ酸は、任意のアミノ酸である。本明細書で使用する場合、配列中の特定のアミノ酸に対応する「アミノ酸位置」は、相同配列、例えば非ヒト霊長類重鎖定常領域中の保存モチーフ、または、ヒトIgM定常領域の別のアレル中の、アミノ酸であることができる。ある特定の実施形態では、IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸S48、S211、S274、もしくはS442に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換;または、配列番号1もしくは配列番号2のS48、S211、S274、もしくはS442におけるアミノ酸置換[置換後のアミノ酸は、トレオニンを除く任意のアミノ酸である];または当該アミノ酸置換のうちの2つ以上、3つ以上、もしくは4つ以上の任意の組合せを含むことができる。
例えば、IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、配列番号1もしくは配列番号2のN46X、N46A、N46D、N46Q、N46K、S48X、S48A、N229X、N229A、N229D、N229Q、N229K、S231X、S231A、N272X、N272A、N272D、N272Q、N272K、S274X、S274A、N440X、N440A、N440D、N449Q、N449K、S242X、もしくはS424Aに対応するアミノ酸置換、または当該アミノ酸置換のうちの2つ以上、3つ以上、もしくは4つ以上の任意の組合せを含むことができ、ここで、Xは任意のアミノ酸であり、Xはトレオニンを除く任意のアミノ酸である。当業者は、さらなるアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入が同様に所与のモチーフにおいてN結合型グリコシル化を防止することができることを容易に理解するであろう。
ある特定の実施形態では、IgM由来結合分子、例えば、IgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子のバリアントIgM重鎖定常領域は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、または配列番号18のアミノ酸配列を含むバリアントヒトIgM定常領域である。これらの配列のそれぞれにおいて、X191は、GまたはSであることができる。
IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子のバリアントIgM重鎖定常領域をさらに変異させ、少なくとも1つの新しいアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフをバリアントIgM重鎖定常領域に導入することができ、少なくとも1つの新しいN結合型グリコシル化モチーフは、バリアントIgM重鎖定常領域における、IgM抗体において自然にはグリコシル化されない部位に導入される。このような新しいN結合型グリコシル化モチーフは、例えば、血清半減期を改善する、製造収率を改善する、または、結合分子により担持されるグリカンに一層の一貫性を付与することにより、IgM由来結合分子の物理的、薬物動態学的、または薬力学的性質を改善することができる。ある特定の実施形態では、新しいN結合型グリコシル化モチーフは、異なる免疫グロブリンアイソタイプ中に存在するN結合型グリコシル化モチーフの位置に対応する、バリアントIgM重鎖定常領域中の位置において導入することができる。例えば、図1のアラインメントを参照されたい。ある特定の実施形態では、異なる免疫グロブリンアイソタイプは、ヒトIgG1(例えば配列番号34)、ヒトIgG2(例えば配列番号35)、ヒトIgG3(例えば配列番号36)、ヒトIgG4(例えば配列番号37)、ヒトIgA1(例えば配列番号38)、ヒトIgA2(例えば配列番号39)、ヒトIgD(例えば配列番号40)、及び、ヒトIgE(例えば配列番号41)からなる群から選択されるヒト免疫グロブリンアイソタイプである。これらの配列を以下に提示する。当業者は容易に、これらの配列のアレル多様体が存在し、本開示に含められることを理解するであろう。
本明細書で提供するIgM由来結合分子は、結合ドメインまたはそのサブユニット、例えば、抗体抗原結合ドメイン、例えば、対象となる標的に特異的に結合する、抗体抗原結合ドメインのscFv、VHH、またはVHサブユニットと連結されている、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、または少なくとも12個のグリコバリアントIgM重鎖定常領域を含む。ある特定の実施形態では、標的は、標的エピトープ、標的抗原、標的細胞、標的器官、または標的ウイルスである。標的としては、腫瘍抗原、他の腫瘍学的標的、免疫腫瘍学的標的(免疫チェックポイント阻害剤など)、感染症標的(例えば、感染細胞の表面で発現するウイルス性抗原)、血液脳関門輸送に関与する標的抗原、神経変性疾患及び神経炎症性疾患に関与する標的抗原、ならびにこれらのいずれかの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。このような標的に結合する例示的な標的及び結合ドメインは、本明細書の他の箇所で示され、例えば、米国特許公開公報第US-2019-0100597号、PCT公開番号第WO 2017/059387号(及び、関連する米国公開番号第US-2019-0185570号)、WO/2017/196867、WO 2018/017888、WO 2018/017889、WO 2018/017761、WO 2018/017763、WO 2018/187702、WO2019165340、WO 2019/169314、もしくはWO 2020086745、PCT出願第PCT/US2020/046379号、もしくはPCT/US2020/046335、または、米国特許第9,951,134号、同第9,938,347号、同第8,377,435号、同第9,458,241号、同第9,409,976号、同第10,351,631号、同第10,570,191号、同第10,604,559号、もしくは同第10,618,978号に見出すことができる。これらの出願及び/または特許のそれぞれは、それら全体が本明細書に参照により組み込まれる。
ある特定の実施形態では、標的は、腫瘍特異的抗原、すなわち、主として腫瘍もしくはがん細胞のみで発現する、または、成人の通常の健常細胞にてのみ、検出不可能な濃度で発現し得る、標的抗原である。ある特定の実施形態では、標的は、腫瘍関連抗原、すなわち、健常細胞及びがん性細胞の両方で発現するが、通常の健常細胞よりも、がん性細胞にてはるかに高い密度で発現する、標的抗原である。例示的な腫瘍特異的及び腫瘍関連抗原としては、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD19、CD20、上皮成長因子受容体(EGFR)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2、ErbB2とも呼ばれる)、HER3(ErbB3)、受容体チロシン-プロテインキナーゼErbB4、細胞毒性Tリンパ球抗原4(CTLA4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム死リガンド1(PD-L1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF受容体-1(VEGFR1)、VEGFR2、CD52、CD30、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、ガングリオシドGD2、シグナル伝達リンパ球性活性化分子ファミリーメンバー7(SLAMF7)の自己リガンド受容体、血小板由来成長因子A(PDGFRA)、CD22、FLT3(CD135)、CD123、MUC-16、がん胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM-1)、メソセリン、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達物質2(Trop-2)、グリピカン-3(GPC-3)、ヒト血液群H型1三糖(Globo-H)、シアリルTn抗原(STn抗原)、またはCD33が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、これらの標的抗原は、いくつかの異なる名前で文献に現れるが、これらの周知の治療標的は、オンラインで入手可能なデータベース、例えばEXPASY.orgを用いて、容易に識別可能であることを理解するであろう。
他の腫瘍関連及び/または腫瘍特異的抗原としては、DLL4、Notch1、Notch2、Notch3、Notch4、JAG1、JAG2、c-Met、IGF-1R、パッチド、ヘッジホッグファミリーポリペプチド、WNTファミリーポリペプチド、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、LRP5、LRP6、IL-6、TNFα、IL-23、IL-17、CD80、CD86、CD3、CEA、Muc16、PSCA、CD44、c-Kit、DDR1、DDR2、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、BMPファミリーポリペプチド、BMPR1a、BMPR1b、または、TNF受容体スーパーファミリータンパク質(例えば、TNFR1(DR1)、TNFR2、TNFR1/2、CD40(p50)、Fas(CD95、Apo1、DR2)、CD30、4-1BB(CD137、ILA)、TRAILR1(DR4、Apo2)、DR5(TRAILR2)、TRAILR3(DcR1)、TRAILR4(DcR2)、OPG(OCIF)、TWEAKR(FN14)、LIGHTR(HVEM)、DcR3、DR3、EDAR、もしくはXEDARなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
ある特定の実施形態では、IgM由来結合分子、例えば、IgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、それぞれ5個または6個の2価IgM結合ユニットを含む五量体または六量体のIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子である。ある特定の実施形態に従うと、各結合ユニットは、バリアントIgM定常領域に対してアミノ末端側に位置するVHをそれぞれ有する、本明細書に記載する2つのグリコバリアントIgM重鎖と、免疫グロブリン軽鎖定常領域(例えば、カッパまたはラムダ定常領域)に対してアミノ末端側に位置する軽鎖可変ドメイン(VL)をそれぞれ有する2つの免疫グロブリン軽鎖とを含む。提供されるVH及びVLは、組み合わさって、対象となる標的に特異的に結合する抗原結合ドメインを形成する。ある特定の実施形態では、5つまたは6つのIgM結合ユニットは同一である。
IgM由来結合分子が五量体であるこれらの実施形態では、本明細書の他の箇所に記載されている、J鎖、またはその機能性断片、またはその機能性バリアントをさらに含むことができる。例えば、J鎖は、配列番号20のアミノ酸配列を含む成熟ヒトJ鎖、またはその機能性断片、またはその機能性バリアントであることができる。当業者が理解するように、本文脈における「機能性断片」または「機能性バリアント」は、IgM結合ユニット(例えば、IgM重鎖定常領域)と結合して五量体IgM抗体を形成することが可能な断片及びバリアントを含む。
ある特定の実施形態では、五量体IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子のJ鎖は、1つ以上の単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を除いてバリアントJ鎖と同一である参照J鎖と比較して、1つ以上の単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を含む、機能性バリアントJ鎖である。例えば、ある特定のアミノ酸置換、欠失、または挿入は、バリアントJ鎖内の1つ以上の単独のアミノ酸置換、欠失、または挿入を除いて同一であり且つ同一の動物種に対して同一の方法で投与されるIgM由来参照結合分子と比較して、対象動物に投与された際に増加した血清半減期を示す、IgM由来結合分子をもたらすことができる。ある特定の実施形態では、バリアントJ鎖は、参照J鎖と比較して、1つ、2つ、3つ、または4つの単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を含むことができる。
本明細書の他の箇所に詳細に記載するように、ある特定の実施形態では、本明細書で提供する五量体IgM由来結合分子のバリアントJ鎖またはその機能性断片は、野生型成熟ヒトJ鎖(配列番号20)のアミノ酸Y102に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を含む。Y102は、アミノ酸、例えばアラニンで置換することができる。特定の実施形態では、バリアントヒトJ鎖は、「J」と本明細書で呼ばれる、配列番号21のアミノ酸配列を含むことができる。
バリアントまたは野生型アミノ酸配列のいずれかを有する、五量体IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子のJ鎖または断片は、異種部分をさらに含む「改変J鎖」であることができ、異種部分は、J鎖またはその断片もしくはバリアントに融合またはコンジュゲートしている。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第9,951,134号、及び同第10,618,978号、ならびに、米国特許公開公報第2019/0185570号において、例示的ではあるが非限定的な異種部分が提供される。ある特定の実施形態では、異種部分は、J鎖またはその断片もしくはバリアントに融合しているポリペプチドであるか、あるいはJ鎖またはその断片もしくはバリアントの中に存在する。異種ポリペプチドは、場合によっては、ペプチドリンカーを介して、J鎖またはその断片もしくはバリアントに融合していてもよいし、J鎖またはその断片もしくはバリアントの中に存在してもよい。任意の好適なリンカーを用いることができ、例えば、ペプチドリンカーは、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、及び、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、またはそれ以上などを含むことができる。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、25個以下のアミノ酸を含む。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、5個のアミノ酸、10個のアミノ酸、15個のアミノ酸、20個のアミノ酸、または25個のアミノ酸からなることができる。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、グリシン及びセリン、例えば、(GGGGS)n[nは1、2、3、4、5、またはそれ以上であることができる](配列番号84)を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、GGGGS(配列番号27)、GGGGSGGGGS(配列番号28)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号29)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号30)、または、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号31)からなる。ある特定の実施形態では、異種ポリペプチドは、J鎖またはその断片もしくはバリアントのN末端、J鎖またはその断片もしくはバリアントのC末端、あるいはJ鎖またはその断片もしくはバリアントのN末端及びC末端の両方に融合することができる。ある特定の実施形態では、異種ポリペプチドは、J鎖の中で内的に融合するすることができる。ある特定の実施形態では、異種ポリペプチドは結合ドメイン、例えば抗原結合ドメインであることができる。例えば、異種ポリペプチドは、抗体、抗体のサブユニット、または抗体の抗原結合断片、例えばscFv断片であることができる。ある特定の実施形態では、結合ドメイン、例えばscFv断片は、エフェクター細胞、例えばT細胞またはNK細胞に結合することができる。ある特定の実施形態では、結合ドメイン、例えばscFv断片は、細胞傷害性T細胞上でCD3、例えばCD3εに特異的に結合することができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供する五量体IgM由来結合分子の改変J鎖は、配列番号24(V15J)、配列番号25(V15J)、配列番号26(V15J N49D)のアミノ酸配列、または、ネズミ抗体SP34の、6つの相補性決定領域、すなわち、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3のアミノ酸配列、すなわち、それぞれ配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号52、配列番号53、及び配列番号54を含む、抗CD3ε scFv抗原結合ドメインを含むJ鎖、例えば、配列番号55のアミノ酸配列を含む改変J鎖 SJ、または、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3のアミノ酸配列、すなわち、それぞれ、配列番号57、配列番号59、配列番号62、配列番号65、配列番号67、及び配列番号69;配列番号57、配列番号59、配列番号62、配列番号65、配列番号67、及び配列番号70;配列番号58、配列番号60、配列番号63、配列番号66、配列番号68、及び配列番号71;配列番号58、配列番号61、配列番号63、配列番号66、配列番号68、及び配列番号72;配列番号58、配列番号61、配列番号64、配列番号66、配列番号68、及び配列番号73、例えば、それぞれ、配列番号74及び配列番号75、配列番号76及び配列番号77、配列番号78及び配列番号79、配列番号80及び配列番号81、または配列番号82及び配列番号83の、VH及びVLを含む、抗CD3ε scFv抗原結合ドメインを含む。
血清半減期が増加したIgM由来結合分子
ある特定のIgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、本明細書に記載するグリコシル化変異に加えて、さらに組み換えをして、血清半減期を増加させることができる。IgM由来結合分子の血清半減期を増加させることができる例示的なIgM重鎖定常領域変異は、WO 2019/169314に開示されており、本明細書中に、その全体が参照により組み込まれる。例えば、本明細書の他の箇所に記載されるグリコシル化変異のうちの1つまたは複数に加えて、本明細書で提供するIgM由来結合分子のバリアントIgM重鎖定常領域は、野生型ヒトIgM定常領域(例えば、配列番号1または配列番号2)のアミノ酸S401、E402、E403、R344、及び/またはE345に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を含み得る。「野生型ヒトIgM定常領域のアミノ酸S401、E402、E403、R344、及び/またはE345に対応するアミノ酸」とは、ヒトIgM定常領域におけるS401、E402、E403、R344、及び/またはE345に相同である、任意の種のIgM定常領域の配列におけるアミノ酸を意味する。ある特定の実施形態では、配列番号1または配列番号2のS401、E402、E403、R344、及び/またはE345に対応するアミノ酸は、任意のアミノ酸、例えば、アラニンで置換され得る。
野生型J鎖は典型的には、1つのN結合型グリコシル化部位を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供する五量体IgM由来結合分子のバリアントJ鎖またはその機能性断片は、例えば、成熟ヒトJ鎖(配列番号20)またはJ(配列番号21)のアミノ酸49(モチーフN6)に対応するアミノ酸位置から始まるアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフN-X-S/T内の変異[モチーフ中、Nはアスパラギンであり、Xはプロリン以外のアミノ酸であり、S/Tはセリンまたはトレオニンである]を含み、当該変異は、当該モチーフにおけるグリコシル化を防止する。PCT国際公開特許第WO2019/169314号で示されるように、この部位におけるグリコシル化を防止する変異は、バリアントJ鎖におけるグリコシル化を防止する1つまたは複数の変異を除いて同一であり且つ同一の動物種に同一の方法で投与される参照IgM由来結合分子と比較して、対象動物に投与されると増加した血清半減期を示す、IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子をもたらすことができる。
例えば、ある特定の実施形態では、本明細書で提供する五量体IgM由来結合分子のバリアントJ鎖またはその機能性断片は、配列番号20のアミノ酸N49またはアミノ酸S51に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を含むことができる。ただし、S51に対応するアミノ酸がトレオニン(T)で置換されていないか、または、バリアントJ鎖が、配列番号20のアミノ酸N49及びS51の両方に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を含む。ある特定の実施形態では、配列番号20のN49に対応する位置は、任意のアミノ酸、例えば、アラニン(A)、グリシン(G)、トレオニン(T)、セリン(S)、またはアスパラギン酸(D)で置換されている。特定の実施形態では、配列番号20のN49に対応する位置は、アラニン(A)で置換することができる。特定の実施形態では、本明細書で提供する五量体IgM由来結合分子のJ鎖は、バリアントヒトJ鎖であり、配列番号22のアミノ酸配列を有する。別の特定の実施形態では、配列番号20のN49に対応する位置は、アスパラギン酸(D)で置換することができる。特定の実施形態では、本明細書で提供する五量体IgM由来結合分子のJ鎖は、バリアントヒトJ鎖であり、配列番号23のアミノ酸配列を有する。
CDC活性が低下したバリアントヒトIgM定常領域
ある特定のIgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子は、本明細書に記載するグリコシル化変異に加えて、さらに組み換えをして、CDC活性の低下を付与する変異を除いて同一であり、対応する参照ヒトIgM定常領域を含む参照IgM抗体またはIgM様抗体と比較して、補体の存在下において、細胞に対して補体依存性細胞傷害(CDC)の低下を示すことができる。これらのCDC変異を、本明細書で提供するような、N結合型グリコシル化を遮断する、及び/または、血清半減期の増加を付与する変異のいずれかと組み合わせることができる。「対応する参照ヒトIgM定常領域」とは、CDC活性に影響を及ぼす定常領域における1つまたは複数の変異を除いてバリアントIgM定常領域と同一である、ヒトIgM定常領域またはその部分、例えば、Cμ3ドメインを意味する。ある特定の実施形態では、バリアントヒトIgM定常領域は、例えば、PCT公開第WO2018/187702号(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、野生型ヒトIgM定常領域と比べて、例えばCμ3ドメインにおいて、1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。CDCを測定するためのアッセイが当業者に周知されており、例示的なアッセイが、例えば、PCT公開第WO2018/187702号に記載されている。
ある特定の実施形態では、CDC活性の低下を付与するバリアントヒトIgM定常領域は、配列番号1(ヒトIgM定常領域アレルIGHM03)または配列番号2(ヒトIgM定常領域アレルIGHM04)の、位置L310、P311、P313、及び/またはK315における野生型ヒトIgM定常領域に対応する、アミノ酸置換を含む。ある特定の実施形態では、CDC活性の低下を付与するバリアントヒトIgM定常領域は、配列番号1または配列番号2の位置P311における野生型ヒトIgM定常領域に対応する、アミノ酸置換を含む。他の実施形態では、本明細書で提供するバリアントIgM定常領域は、配列番号1または配列番号2の位置P313における野生型ヒトIgM定常領域に対応する、アミノ酸置換を含有する。他の実施形態では、本明細書で提供するバリアントIgM定常領域は、配列番号1もしくは配列番号2の位置P311、及び/または、配列番号1もしくは配列番号2の位置P313における野生型ヒトIgM定常領域に対応する、置換の組合せを含有する。これらのプロリン残基は独立して、任意のアミノ酸、例えば、アラニン、セリン、またはグリシンで置換することができる。ある特定の実施形態では、CDC活性の低下を付与するバリアントヒトIgM定常領域は、配列番号1または配列番号2の位置K315における野生型ヒトIgM定常領域に対応する、アミノ酸置換を含む。リジン残基は独立して、任意のアミノ酸、例えばアラニン、セリン、グリシン、またはアスパラギン酸で置換することができる。ある特定の実施形態では、CDC活性の低下を付与するバリアントヒトIgM定常領域は、配列番号1または配列番号2の位置K315における野生型ヒトIgM定常領域に対応する、アスパラギン酸でのアミノ酸置換を含む。ある特定の実施形態では、CDC活性の低下を付与するバリアントヒトIgM定常領域は、配列番号1または配列番号2の位置L310における野生型ヒトIgM定常領域に対応する、アミノ酸置換を含む。リジン残基は独立して、任意のアミノ酸、例えばアラニン、セリン、グリシン、またはアスパラギン酸で置換することができる。ある特定の実施形態では、CDC活性の低下を付与するバリアントヒトIgM定常領域は、配列番号1または配列番号2の位置L310における野生型ヒトIgM定常領域に対応する、アスパラギン酸でのアミノ酸置換を含む。
ポリヌクレオチド、ベクター、及び宿主細胞
本開示は、IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子のポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、例えば、単離された、組換え、及び/または自然に存在しないポリヌクレオチドをさらに提供する。「ポリペプチドサブユニット」とは、独立して翻訳できる結合分子、結合ユニット、IgM抗体、IgM様抗体、または抗原結合ドメインの一部を意味する。例としては抗体可変ドメイン、例えばVHもしくはVL、J鎖、分泌性成分、一本鎖Fv、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖定常領域、抗体軽鎖定常領域、及び/または、これらの断片、バリアント、もしくは誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
ある特定の実施形態では、ポリペプチドサブユニットは、バリアントIgM重鎖定常領域を含む、本明細書で提供するバリアントIgM由来重鎖を含むことができ、そこでは、バリアントIgM重鎖定常領域の少なくとも1つのアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフが、当該モチーフにおけるグリコシル化を防止するように変異している。バリアントIgM重鎖定常領域は、全てが本明細書で提供される、結合ドメイン、例えば抗原結合ドメインまたはそのサブユニット、例えば、抗原結合ドメインのVH部分に融合することができる。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、バリアントヒトIgM由来重鎖定常領域を含むポリペプチドサブユニットをコードすることができる。例えば、IgM由来重鎖ポリペプチドサブユニットは、配列番号3~18のいずれかのアミノ酸配列を含むことができる。
ある特定の実施形態では、ポリペプチドサブユニットは、本明細書の他の箇所に記載されている抗原結合ドメインの抗体VL部分を含むことができる。ある特定の実施形態では、ポリペプチドサブユニットは、VLのC末端に融合できる抗体軽鎖定常領域、例えば、ヒト抗体軽鎖定常領域、またはその断片を含むことができる。
ある特定の実施形態では、ポリペプチドサブユニットは、本明細書で提供するJ鎖、改変J鎖、またはその任意の機能性断片もしくはバリアントを含むことができる。ある特定の実施形態では、ポリペプチドサブユニットは、改変J鎖を含む、ヒトJ鎖、またはその機能性断片もしくはバリアントを含むことができる。ある特定の実施形態では、J鎖ポリペプチドサブユニットは、配列番号19~26または55のいずれかのアミノ酸配列を含むことができる。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供するポリヌクレオチド、例えば、プラスミドなどの発現ベクターは、1つのポリペプチドサブユニット(例えば、バリアントIgM由来重鎖、軽鎖、もしくはJ鎖)をコードする核酸配列を含むことができるか、または、本明細書で提供するIgM由来結合分子のポリペプチドサブユニットのうちの2つ以上もしくは3つ全てをコードする、2つ以上の核酸配列を含むことができる。あるいは、それらの3つのポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列は、個別のポリヌクレオチド、例えば、個別の発現ベクター上に存在することができる。本開示は、そのような1つまたは複数の発現ベクターを提供する。本開示は、提供するポリヌクレオチド(複数可)または発現ベクター(複数可)をコードする、1つ以上の宿主細胞もまた提供する。
したがって、ある特定の実施形態では、抗原結合ドメインを形成させるために、抗体の可変領域をコードする核酸配列を、IgM由来の構造のための発現ベクター、特に本明細書で提供するバリアントIgM重鎖定常領域(例えば、配列番号3~18のいずれか)をコードするものに挿入することができ、さらに、本明細書で提供するJ鎖またはその機能性断片もしくはバリアントをコードする(例えば、配列番号19~26または55のいずれかをコードする)ポリヌクレオチド、及び軽鎖と組み合わせることができ、これにより、本明細書の他の箇所に記載されている1つ以上のN結合型グリコシル化モチーフにおけるグリコシル化が損なわれている5つまたは6つの結合ユニットを有するIgM由来結合分子を作製する。簡潔に述べると、重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列をコードする核酸配列を、発現の際に、ベクターが所望の完全長重鎖または軽鎖を得るように、既存の分子から合成または増幅して、適切な向き及びフレームで、1つ以上のベクターに挿入することができる。これらの目的に有用なベクターが当該技術分野で知られている。そのようなベクターはまた、エンハンサー、及び所望の鎖の発現を達成するのに必要とされる他の配列を含み得る。複数のベクターまたは1つのベクターを使用することができる。このベクター、またはこれらのベクターを宿主細胞にトランスフェクションすることができ、次いで、バリアントIgM由来重鎖、及び/もしくは軽鎖、及び/もしくはJ鎖、またはこれらの機能性断片もしくはバリアントが発現し、IgM由来結合分子が組み立てられ、その後、単離及び/または精製することができる。発現の際に、鎖は、完全に機能性の多量体IgM由来結合分子、例えば、血清半減期が向上した、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子を形成する。発現及び精製プロセスは、必要であれば商業規模で行うことができる。
本開示は、2つ以上のポリヌクレオチドを含む組成物をさらに提供し、2つ以上のポリヌクレオチドはまとめて、上述した改変グリコシル化を有するIgM由来結合分子をコードすることができる。ある特定の実施形態では、組成物は、本明細書の他の箇所で提供する、バリアントIgM由来重鎖またはその多量体化断片(例えば、配列番号3~18のいずれか)をコードするポリヌクレオチドを含むことができ、IgM様重鎖は、結合ドメイン、例えば抗原結合ドメイン、またはそのサブユニット、例えばVHドメインをさらに含む。組成物は、軽鎖またはその断片(例えば、少なくとも抗原結合ドメインのVLを含む、ヒトカッパまたはラムダ軽鎖)をコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができる。提供するポリヌクレオチド組成物は、本明細書で提供するJ鎖またはその機能性断片もしくはバリアント(例えば、配列番号19~26または55のいずれか)をコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供する組成物を構成するポリヌクレオチドは、2つ、3つ、またはそれ以上の個別のベクター、例えば発現ベクター上に位置することができる。そのようなベクターは本開示によって提供される。ある特定の実施形態では、本明細書で提供する組成物を構成するポリヌクレオチドのうちの2個以上が、単一のベクター、例えば、発現ベクター上に位置することができる。そのようなベクターは本開示によって提供される。
本開示はさらに、本明細書で提供するIgM由来結合分子もしくはその任意のサブユニットをコードする1個のポリヌクレオチドもしくは2個以上のポリヌクレオチド、本明細書で提供するポリヌクレオチド組成物、または1個のベクター、もしくは本明細書で提供するIgM由来結合分子もしくはその任意のサブユニットを合わせてコードする2個、3個、もしくはそれよりも多くのベクターを含む、宿主細胞、例えば、原核または真核宿主細胞を提供する。
関連する実施形態では、本開示は、本開示により提供される、グリコシル化が低下したIgM由来結合分子を作製する方法を提供し、当該方法は、本明細書で提供する宿主細胞を培養することと、IgM由来結合分子を回収することと、を含む。
使用方法
本開示は、治療を必要とする対象において疾患または障害を治療する方法であって、当該対象に、治療上有効な量のIgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子を投与することを含む、上記方法をさらに提供する。本開示により提供される、グリコシル化が低下したIgM由来結合分子は、結合分子上でのグリコ形態の数を簡略化し、より均一に結合分子に結合する糖の特性をより均一にすること、例えば、シアル酸基のグリカンへの、より完全な付加により、より均質な治療用組成物をもたらすことができる。均質性に対してこのような改善を行うことにより、グリコシル化の低下を除いて同一である参照IgM由来結合分子と比較して、製造の一層の容易さ、及びまた、結合分子上でのより大きな安全性を付与することができる。さらに、グリコシル化が低下したIgM由来結合分子は、グリコシル化の低下を除いて同一である参照IgM由来結合分子と比較して、増加した血清半減期を示すことができる。「治療上有効な用量または量」または「有効量」とは、投与されたときに、対象の治療に関して正の治療応答をもたらすIgM由来結合分子の量が意図されている。
例えばがん治療に対する組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、対象の生理的状態、対象がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬剤、及び治療が予防的なものであるか治療的なものであるかを含む、多くの異なる要因に応じて変化する。通常、対象はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含めた非ヒト哺乳動物もまた治療することができる。当業者に知られている通例の方法を用いて治療用量を滴定して、安全性及び有効性を最適化することができる。
治療が行われる対象は、治療を必要とする任意の動物、例えば哺乳動物であり得、ある特定の実施形態では、対象はヒト対象である。
対象に投与される調製物は、その最も単純な形態において、従来的な剤形で投与される本明細書で提供するIgM由来結合分子、またはその多量体抗原結合断片であり、このIgM由来結合分子は、本明細書の他の箇所に記載されるような医薬賦形剤、担体、または希釈剤と組み合わせることができる。
本開示の組成物は、任意の好適な方法により、例えば、非経口、脳室内、経口、吸入スプレーにより、局所的、経直腸、経鼻、頬側、経膣で、または移植リザーバーを介して、投与することができる。本明細書で使用する場合、「非経口的」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内、及び頭蓋内の注射または輸注技法を含む。
医薬組成物及び投与方法
IgM由来結合分子、例えば、本明細書で提供するIgM抗体、IgM様抗体、または他のIgM由来結合分子の調製方法、及び、当該分子の投与を必要とする対象への当該分子の投与方法は、当業者に周知されているか、または本開示を考慮して当業者によって容易に決定される。ある特定の実施形態では、投与形態は、注射用溶液、特に、腫瘍内、静脈内、もしくは動脈内注射、または点滴用溶液である。好適な医薬組成物は、緩衝液(例えば、酢酸、リン酸、またはクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、任意選択で安定化剤(例えば、ヒトアルブミン)などを含むことができる。
開示するIgM由来結合分子は、活性剤の投与を容易にし、活性剤の安定性を促進するために製剤化することができる。したがって、医薬組成物は、医薬的に許容される無毒性の無菌担体、例えば、生理食塩水、無毒性緩衝液、保存料などを含むことができる。本明細書で提供するIgM由来結合分子の医薬有効量は、標的に対する有効な結合を達成し、且つ治療上の有益性を達成するのに十分な量を意味する。好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、例えば、21st Edition (Lippincott Williams & Wilkins)(2005)に記載されている。
本明細書で提供するある特定の医薬組成物は、許容される剤形で経口投与することができ、このような剤形には、例えば、カプセル、錠剤、水性懸濁液または水溶液が含まれる。ある特定の医薬組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与することもできる。そのような組成物は、食塩水溶液として、ベンジルアルコールもしくは他の好適な防腐剤、生物学的利用能を強化するための吸収促進剤、及び/または他の従来的な可溶化剤もしくは分散剤を用いて調製され得る。
単一の剤形をもたらすために担体材料と組み合わされ得るIgM由来結合分子の量は、例えば、治療される対象及び特定の投与様式に応じて変動する。組成物は、単回用量、複数回用量として、または輸注において確立された期間にわたり、投与することができる。薬用量レジメンも、最適な所望の応答(例えば、治療または予防応答)を提供するように調整され得る。
本開示はまた、がんなどの疾患を治療するか、予防するか、または管理するための医薬品の製造における、本明細書で提供するIgM由来結合分子の使用を可能にする。本開示は、がんなどの疾患の治療、予防、または管理に使用するための、本明細書で提供するIgM由来結合分子もまた提供する。
本開示は、別段の指示がない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来的技法を採用し、このような技法は当業者の技能の範囲内である。そのような技法は、文献において十分に説明されている。例えば、Green and Sambrook,ed.(2012)Molecular Cloning A Laboratory Manual(4th ed.;Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Sambrook et al.,ed.(1992)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(Cold Springs Harbor Laboratory,NY)、D.N.Glover and B.D.Hames,eds.,(1995)DNA Cloning 2d Edition(IRL Press),Volumes 1-4;Gait,ed.(1990)Oligonucleotide Synthesis(IRL Press)、Mullisらの米国特許第4,683,195号、Hames and Higgins,eds.(1985)Nucleic Acid Hybridization(IRL Press)、Hames and Higgins,eds.(1984)Transcription And Translation(IRL Press)、Freshney(2016)Culture Of Animal Cells,7th Edition(Wiley-Blackwell)、Woodward,J.,Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press)(1985)、Perbal(1988)A Practical Guide To Molecular Cloning;2d Edition(Wiley-Interscience);Miller and Calos eds.(1987)Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells,(Cold Spring Harbor Laboratory)、S.C.Makrides(2003)Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells(Elsevier Science)、Methods in Enzymology,Vols.151-155(Academic Press,Inc.,N.Y.)、Mayer and Walker,eds.(1987)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press,London)、Weir and Blackwell,eds.、及びAusubel et al.(1995)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons)を参照されたい。
抗体工学の一般原理は、例えば、Strohl,W.R.,and L.M.Strohl(2012),Therapeutic Antibody Engineering(Woodhead Publishing)に記載されている。タンパク質工学の一般原理は、例えば、Park and Cochran,eds.(2009),Protein Engineering and Design(CDC Press)に記載されている。免疫学の一般原理は、例えば、Abbas and Lichtman(2017)Cellular and Molecular Immunology 9th Edition(Elsevier)に記載されている。追加として、当該技術分野で既知の免疫学の標準的方法は、例えば、Current Protocols in Immunology(Wiley Online Library)、Wild,D.(2013),The Immunoassay Handbook 4th Edition(Elsevier Science)、Greenfield,ed.(2013),Antibodies,a Laboratory Manual,2d Edition(Cold Spring Harbor Press)、及びOssipow and Fischer,eds.,(2014),Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols(Humana Press)に従って得ることができる。
上記で引用される参考文献の全て、ならびに本明細書で引用された全ての参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
以下の実施例は、限定としてではなく例示説明として提供されるものである。
実施例1:IgMグリコバリアントの構造及び特性決定
全てのヒト免疫グロブリンの、N結合型グリコシル化部位を、図1A及び図1Bで比較する。様々な異なる種のIgM抗体の、N結合型グリコシル化部位を、図2A及び図2Bに示す。ヒトIgM重鎖の空間充填モデルを、図3に示す。5つのN結合型グリコシル化モチーフを、Cμ1ドメイン内のN1(配列番号1または配列番号2のN46)、Cμ2ドメイン内のN2(配列番号1または配列番号2のN209)、Cμ3ドメイン内のN3(配列番号1または配列番号2のN272)、Cμ3ドメイン内のN4(配列番号1または配列番号2のN279)、及び、テールピースドメイン内のN5(配列番号1または配列番号2のN440)として示す。
配列番号2のヒトIgM定常領域内に存在する5つのN結合型グリコシル化モチーフ内の、アスパラギン(N)残基の1つのアラニンまたはアスパラギン酸変異を有する、改変ヒトIgM定常領域をコードするDNAバリアントを設計し、合成のために商業ベンダーに提出した。野生型または改変IgM定常領域を含む、野生型または改変ヒト五量体または六量体IgM抗体を発現でき、CD20に特異的に結合可能な、例示的なプラスミド構築物を、以下の方法により作製した。
1.5.3のVH及びVL領域(それぞれ、配列番号32及び33、米国特許出願第2019-0100597号を参照されたい)、ならびに、N1~N5における、様々な単一の、アスパラギンのアラニンへの変異、または、アスパラギンのアスパラギン酸への変異をコードするDNA断片を、商業ベンダーにより、標準的な分子生物学的技術によって、重鎖及び軽鎖発現ベクターにサブクローニングするために合成した。
IgM重鎖、軽鎖、及び改変J鎖(V15J、配列番号24)をコードするプラスミド構築物を、CHO細胞に同時トランスフェクションし、グリコバリアント抗CD20IgM抗体を発現する細胞を選択した。これらは全て、標準的な方法に従った。N49(N6)においてV15J J鎖内のN結合型グリコシル化モチーフ内で6番目の単一のアラニン変異を作製し、野生型IgMと結合させた。
細胞上清に存在する抗体を、メーカーの手順に従い、Capture Select IgM(Catalog 2890.05, BAC, Thermo Fisher)を用いて回収した。非還元条件下にて、SDS PAGE上で抗体を評価すると、例えば、PCT公開第WO2016/141303号において以前に記載したような集合を示した。抗J鎖抗体と反応したウェスタンブロットと共に、アラニン変異を図4に示し、アスパラギン酸変異を図5に示す。図4に示すように、発現し組み立てられた、N1、N2、及びN3における、単一のアラニン変異を含むバリアントIgM、ならびに、バリアントIgMが、N4にて単一のアラニン変異を有する、対応する野生型IgM(1.5.3IgM V15J)は、発現の低下を示し、N5にて単一のアラニン変異を有するバリアントIgMは、六量体として組み立てられた。N6にて単一のアラニン変異を有するIgMもまた、適切に発現して組み立てられた。図5に示すように、N1、N2、N3、N5、及びN6にて単一のアスパラギン酸変異を有するバリアントIgMは、五量体として適切に発現及び組み立てられ、N4における変異は発現しなかった、または組み立てられなかった。
次に、選択した二重アスパラギン酸変異体を上述のとおりに構築し、非還元条件下にて、SDS PAGE上で評価すると、例えば、PCT公開第WO2016/141303号において以前に記載したような組み立てを示した。J鎖を伴うIgM結合ユニットの適切な組み立てを示すために、これらの変異体を、抗J鎖抗体を用いるウェスタンブロットにより評価した。結果を図6に示す。N1D及びN2D、N2D及びN3D、及びN1D及びN3Dにおける二重変異体は全て、五量体として適切に発現及び組み立てられたが、N1D及びN5Dにおける二重変異体は、構築物が抗J鎖抗体と反応しなかったため、J鎖なしでは六量体として発現、または組み立てられなかった。
実施例2:補体依存性細胞傷害
実施例1で生成した、1.5.3IgM V15J、1.5.3IgM V15J N1A、1.5.3IgM V15J N2A、及び1.5.3IgM V15J N3A抗体を、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイを用いて比較した。
CD20を発現するRaji細胞株(ATCCカタログ番号CCL-86)を使用して、各抗体のCDC有効性を測定した。5万個の細胞を、96ウェルプレートに播種した。細胞を、連続希釈した抗体で処理した。ヒト血清補体(Quidelカタログ番号A113)を、10%の最終濃度で各ウェルに添加した。反応混合物を37℃で4時間、インキュベートした。Cell Titer Glo試薬(Promegaカタログ番号G7572)を、各ウェルに存在する培地の体積と等しい体積で添加した。プレートを2分間振盪し、室温で10分間インキュベートして、ルミネセンスを照度計で測定した。試験した抗体の間で、CDC活性の有意差はなかった(データは図示せず)。
実施例3:T細胞活性化アッセイ
実施例1で生成した、1.5.3IgM V15J、1.5.3IgM V15J N1A、1.5.3IgM V15J N2A、及び1.5.3IgM V15J N3A抗体を、T細胞活性化アッセイを用いて比較した。
組み換えたJurkat T細胞(Promega CS176403)及びRPMI8226細胞(ATCC CCL-155)を、10%ウシ胎児血清(Invitrogen)を補充したRPMI(Invitrogen)中で培養した。5%のCOを伴い、白色384ウェルアッセイプレート内で、2時間37℃で、20μLの7500個のRPMI8226細胞と共に、抗体の連続希釈液をインキュベートした。組換えJurkat細胞(25000)を混合物に添加し、最終体積を40μLにした。混合物を、5%のCOと共に、5時間37℃でインキュベートした。次に、細胞混合物を20μLの、ルシフェリンを含有する細胞溶解緩衝液(Promega,Cell Titer Glo)と混合し、ルシフェラーゼレポーター活性を測定した。光の出力を、Envisionプレートリーダーにより測定した。EC50を、Prismソフトウェアを用いて、4つのパラメーター曲線適合により測定した。試験した抗体の間で、T細胞活性化の有意差はなかった(データは図示せず)。
実施例4:ELISA結合
例示的な結合ドメインに融合しているWTヒトIgM定常領域(配列番号1)、N3D IgM定常領域(配列番号8)、または、N3K IgM定常領域(配列番号56)を使用して、抗CD3Jを含む、抗体を生成した。抗体が例示的な結合ドメインの標的に結合する能力を、実施例1で生成した1.5.3 WT IgM VJと比較した。
96ウェルの白色ポリスチレンELISAプレート(Pierce 15042)を、ウェル当たり100μLの、10μg/mLまたは0.3μg/mLの標的タンパク質で、一晩4℃でコーティングした。次に、プレートを0.05%のPBS-Tweenで洗浄し、2%のBSA-PBSでブロックした。ブロックした後、100μLの、抗体の連続希釈液をウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。次に、プレートを洗浄し、HRPがコンジュゲートしたマウス抗ヒトカッパ(Southern Biotech,9230-05、2%のBSA-PBSに、1:6000で希釈)と共にインキュベートした。0.05%のPBS-Tweenを用いた10回の最終洗浄の後、プレートを、SuperSignal化学発光基質(ThermoFisher,37070)を用いて読み取った。発光データを、Envisionプレートリーダー(Perkin-Elmer)上で収集し、4つのパラメーターのロジスティックモデルを用いて、GraphPad Prismにより分析した。
結果を図8に示す。結合は、例示的抗体の間で拮抗した。抗CD20 IgM抗体は、標的に結合しなかった。
本開示の広がり及び範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従ってのみ定義されるべきである。
(表2)本開示における配列
Figure 2022545682000004
Figure 2022545682000005
Figure 2022545682000006
Figure 2022545682000007
Figure 2022545682000008
Figure 2022545682000009
Figure 2022545682000010
Figure 2022545682000011
Figure 2022545682000012
Figure 2022545682000013
Figure 2022545682000014
(表3)追加の抗CD3 VH及びVL配列
Figure 2022545682000015
結果を図に示す。結合は、例示的抗体の間で拮抗した。抗CD20 IgM抗体は、標的に結合しなかった。
本開示は、本明細書で提供する少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、またはそのようなポリヌクレオチドを含む組成物をさらに提供する。ある特定の実施形態では、当該組成物は、軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列をさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする核酸配列、及び、軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列は、別のベクター上に存在する。ある特定の実施形態では、これらは単一のベクター上に存在する。ある特定の実施形態では、提供する組成物は、J鎖またはその機能性断片またはその機能性バリアントをコードする核酸配列をさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする核酸配列、軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列、及び、J鎖をコードする核酸配列は、単一のベクター上に存在するか、または、2つ以上の別のベクター上に存在することができる。そのようなベクターは本開示によって提供される。本開示は、提供するポリヌクレオチドまたはベクターのいずれか1つ以上を含む宿主細胞もまた提供する。本開示は、提供するIgM由来結合分子の作製方法もまた提供し、当該方法は、提供する宿主細胞を培養することと、定常領域または抗体を回収することとを含む。
[本発明1001]
少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖を含む、単離されたIgM由来結合分子であって、前記少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖が、標的に特異的に結合する結合ドメインと連結されているバリアントIgM重鎖定常領域を含み、前記バリアントIgM重鎖定常領域の少なくとも1つのアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフが、前記モチーフにおけるグリコシル化を防止するように変異しており、N結合型グリコシル化モチーフがアミノ酸配列N-X 1 -S/Tを含み、配列中、Nはアスパラギンであり、X 1 は、プロリンを除く任意のアミノ酸であり、S/Tはセリンまたはトレオニンである、前記結合分子。
[本発明1002]
前記バリアントIgM重鎖定常領域が、配列番号1(アレルIGHM 03)または配列番号2(アレルIGHM 04)のアミノ酸46(モチーフN1)、アミノ酸209(モチーフN2)、アミノ酸272(モチーフN3)、アミノ酸279(モチーフN4)、及びアミノ酸440(モチーフN5)に対応するアミノ酸位置から始まる5つのN結合型グリコシル化モチーフN-X 1 -S/Tを含むヒトIgM重鎖定常領域に由来する、本発明1001のIgM由来結合分子。
[本発明1003]
前記N-X 1 -S/Tモチーフのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つが、前記モチーフにおけるグリコシル化を防止するアミノ酸挿入、欠失、または置換を含む、本発明1002のIgM由来結合分子。
[本発明1004]
前記IgM由来結合分子が、モチーフN1、モチーフN2、モチーフN3、モチーフN5、またはモチーフN1、N2、N3、もしくはN5のうちの2つ以上、3つ以上、もしくは4つ全ての任意の組合せにおいて、アミノ酸挿入、欠失、または置換を含み、前記アミノ酸挿入、欠失、または置換が、前記モチーフにおけるグリコシル化を防止する、本発明1003のIgM由来結合分子。
[本発明1005]
置換後のアミノ酸が任意のアミノ酸である、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸N46、N209、N272、もしくはN440に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換;置換後のアミノ酸がトレオニンを除く任意のアミノ酸である、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸S48、S211、S274、もしくはS442に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換;または前記アミノ酸置換のうちの2つ以上、3つ以上、もしくは4つ以上の任意の組合せを含む、本発明1004のIgM由来結合分子。
[本発明1006]
前記IgM由来結合分子が、配列番号1もしくは配列番号2のN46X 2 、N46A、N46D、N46Q、N46K、S48X 3 、S48A、N229X 2 、N229A、N229D、N229Q、N229K、S231X 3 、S231A、N272X 2 、N272A、N272D、N272Q、N272K、S274X 3 、S274A、N440X 2 、N440A、N440D、N449Q、N449K、S242X 3 、もしくはS424Aに対応するアミノ酸置換、または前記アミノ酸置換のうちの2つ以上、3つ以上、もしくは4つ以上の任意の組合せを含み、X 2 は任意のアミノ酸であり、X 3 はトレオニンを除く任意のアミノ酸である、本発明1005のIgM由来結合分子。
[本発明1007]
前記バリアントIgM重鎖定常領域が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、または配列番号18のアミノ酸配列を含むバリアントヒトIgM定常領域である、本発明1001~1006のいずれかのIgM由来結合分子。
[本発明1008]
前記バリアントIgM重鎖定常領域が、前記バリアントIgM重鎖定常領域に少なくとも1つの新しいアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフを導入するように変異しており、前記少なくとも1つの新しいアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフが、前記バリアントIgM重鎖定常領域における、IgM抗体において自然にはグリコシル化されない部位に導入されている、本発明1001~1007のいずれかのIgM由来結合分子。
[本発明1009]
前記新しいアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフが、前記バリアントIgM重鎖定常領域における、異なる免疫グロブリンアイソタイプに存在するアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフの位置に対応する位置に存在する、本発明1008のIgM由来結合分子。
[本発明1010]
前記異なる免疫グロブリンアイソタイプが、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4、ヒトIgA1、ヒトIgA2、ヒトIgD、及びヒトIgEからなる群から選択されるヒト免疫グロブリンアイソタイプである、本発明1009のIgM由来結合分子。
[本発明1011]
前記標的が、標的エピトープ、標的抗原、標的細胞、標的器官、または標的ウイルスである、本発明1001~1010のいずれかのIgM由来結合分子。
[本発明1012]
前記IgM由来結合分子が、それぞれ5つまたは6つの2価IgM結合ユニットを含む五量体または六量体IgM抗体であり、各結合ユニットが、前記バリアントIgM定常領域に対してアミノ末端側に位置するVHをそれぞれ含む2つのIgM重鎖と、免疫グロブリン軽鎖定常領域に対してアミノ末端側に位置する軽鎖可変ドメイン(VL)をそれぞれ含む2つの免疫グロブリン軽鎖とを含み、前記VH及びVLが、組み合わさって、前記標的に特異的に結合する抗原結合ドメインを形成する、本発明1001~1011のいずれかのIgM由来結合分子。
[本発明1013]
前記5つまたは6つのIgM結合ユニットが同一である、本発明1012のIgM由来結合分子。
[本発明1014]
五量体であり、且つJ鎖またはその機能性断片またはその機能性バリアントをさらに含む、本発明1012または本発明1013のIgM由来結合分子。
[本発明1015]
前記J鎖が、配列番号20のアミノ酸配列を含む成熟ヒトJ鎖、またはその機能性断片、またはその機能性バリアントである、本発明1014のIgM由来結合分子。
[本発明1016]
前記J鎖が、参照J鎖と比較して1つ以上の単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を含む、機能性バリアントJ鎖であり、前記参照J鎖が、前記1つ以上の単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を除いて前記バリアントJ鎖と同一であり、前記IgM由来結合分子が、対象動物に投与された際に、前記バリアントJ鎖における前記1つ以上の単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を除いて同一であり且つ同一の動物種に同一の方法で投与される参照IgM由来結合分子と比較して、増加した血清半減期を示す、本発明1014または本発明1015のIgM由来結合分子。
[本発明1017]
前記バリアントJ鎖またはその機能性断片が、前記参照J鎖と比較して1つ、2つ、3つ、または4つの単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を含む、本発明1016のIgM由来結合分子。
[本発明1018]
前記バリアントJ鎖またはその機能性断片が、野生型成熟ヒトJ鎖(配列番号20)のアミノ酸Y102に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を含む、本発明1016または本発明1017のIgM由来結合分子。
[本発明1019]
配列番号20のY102に対応するアミノ酸がアラニン(A)で置換されている、本発明1018のIgM由来結合分子。
[本発明1020]
前記J鎖が、配列番号21のアミノ酸配列を含むバリアントヒトJ鎖J である、本発明1019のIgM由来結合分子。
[本発明1021]
前記バリアントJ鎖またはその機能性断片が、成熟ヒトJ鎖(配列番号20)のアミノ酸49(モチーフN6)に対応するアミノ酸位置から始まるアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフN-X 1 -S/T内での変異を含み、モチーフ中、Nはアスパラギンであり、X 1 はプロリン以外の任意のアミノ酸であり、S/Tはセリンまたはトレオニンであり、前記変異が、前記モチーフにおけるグリコシル化を防止する、本発明1016~1019のいずれかのIgM由来結合分子。
[本発明1022]
前記バリアントJ鎖またはその機能性断片が、配列番号20のアミノ酸N49もしくはアミノ酸S51に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を含み、S51に対応するアミノ酸がトレオニン(T)で置換されていないか、または、前記バリアントJ鎖が、配列番号20のアミノ酸N49及びS51の両方に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を含む、本発明1021のIgM由来結合分子。
[本発明1023]
配列番号20のN49に対応する前記位置が、アラニン(A)、グリシン(G)、トレオニン(T)、セリン(S)、またはアスパラギン酸(D)で置換されている、本発明1022のIgM由来結合分子。
[本発明1024]
配列番号20のN49に対応する前記位置がアラニン(A)で置換されている、本発明1023のIgM由来結合分子。
[本発明1025]
前記J鎖がバリアントヒトJ鎖であり、且つ配列番号22のアミノ酸配列を含む、本発明1024のIgM由来結合分子。
[本発明1026]
配列番号20のN49に対応する前記位置がアスパラギン酸(D)で置換されている、本発明1023のIgM由来結合分子。
[本発明1027]
前記J鎖がバリアントヒトJ鎖であり、且つ配列番号23のアミノ酸配列を含む、本発明1026のIgM由来結合分子。
[本発明1028]
前記J鎖またはその断片もしくはバリアントが、異種部分をさらに含む改変J鎖であり、前記異種部分が、前記J鎖またはその断片もしくはバリアントに融合またはコンジュゲートしている、本発明1014~1027のいずれかのIgM由来結合分子。
[本発明1029]
前記異種部分が、前記J鎖またはその断片もしくはバリアントに融合しているポリペプチドである、本発明1028のIgM由来結合分子。
[本発明1030]
前記異種ポリペプチドが、ペプチドリンカーを介して前記J鎖またはその断片もしくはバリアントに融合している、本発明1029のIgM由来結合分子。
[本発明1031]
前記ペプチドリンカーが、少なくとも5個のアミノ酸、ただし25個以下のアミノ酸を含む、本発明1030のIgM由来結合分子。
[本発明1032]
前記ペプチドリンカーが、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号29)からなる、本発明1030または本発明1031のIgM由来結合分子。
[本発明1033]
前記異種ポリペプチドが、前記J鎖またはその断片もしくはバリアントのN末端、前記J鎖またはその断片もしくはバリアントのC末端、あるいは前記J鎖またはその断片もしくはバリアントのN末端及びC末端の両方に融合している、本発明1029~1032のいずれかのIgM由来結合分子。
[本発明1034]
前記異種ポリペプチドが結合ドメインを含む、本発明1029~1033のいずれかのIgM由来結合分子。
[本発明1035]
前記異種ポリペプチドの前記結合ドメインが、抗体またはその抗原結合断片である、本発明1034のIgM由来結合分子。
[本発明1036]
前記抗原結合断片がscFv断片である、本発明1035のIgM由来結合分子。
[本発明1037]
前記異種scFv断片がCD3εに特異的に結合する、本発明1036のIgM由来結合分子。
[本発明1038]
前記改変J鎖が、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号52、配列番号53、及び配列番号54;配列番号57、配列番号59、配列番号62、配列番号65、配列番号67、及び配列番号69;配列番号57、配列番号59、配列番号62、配列番号65、配列番号67、及び配列番号70;配列番号58、配列番号60、配列番号63、配列番号66、配列番号68、及び配列番号71;配列番号58、配列番号61、配列番号63、配列番号66、配列番号68、及び配列番号72;配列番号58、配列番号61、配列番号64、配列番号66、配列番号68、及び配列番号73をそれぞれ含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む抗CD3ε scFvにペプチドリンカーを介して融合している、配列番号24(V15J)、配列番号25(V15J )、配列番号26(V15J N49D)、もしくは配列番号55(SJ )、または配列番号20、21、22、もしくは23のアミノ酸配列を含む、本発明1037のIgM由来結合分子。
[本発明1039]
本発明1001~1037のいずれかの少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
[本発明1040]
本発明1039のポリヌクレオチドを含む、組成物。
[本発明1041]
軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列をさらに含む、本発明1040の組成物。
[本発明1042]
前記少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする前記核酸配列と、前記軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする前記核酸配列とが、別のベクター上にある、本発明1041の組成物。
[本発明1043]
前記少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする前記核酸配列と、前記軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする前記核酸配列とが、単一のベクター上にある、本発明1041の組成物。
[本発明1044]
J鎖またはその機能性断片またはその機能性バリアントをコードする核酸配列をさらに含む、本発明1041~1043のいずれかの組成物。
[本発明1045]
前記少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする前記核酸配列と、前記軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする前記核酸配列と、前記J鎖をコードする前記核酸配列とが、単一のベクター上にある、本発明1044の組成物。
[本発明1046]
前記少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする前記核酸配列と、前記軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする前記核酸配列と、前記J鎖をコードする前記核酸配列とが、それぞれ別のベクター上にある、本発明1044の組成物。
[本発明1047]
本発明1042、1043、1045、または1046のいずれかの1つまたは複数のベクター。
[本発明1048]
宿主細胞であって、本発明1039のポリヌクレオチド、本発明1040~1046のいずれかの組成物、または、本発明1047の1つもしくは複数のベクターを含み、前記宿主細胞が、本発明1001~1037のいずれかのIgM由来結合分子を発現することができる、前記宿主細胞。
[本発明1049]
本発明1001~1037のいずれかのIgM由来結合分子を作製する方法であって、本発明1048の宿主細胞を培養することと、前記定常領域または抗体を回収することとを含む、前記方法。

Claims (49)

  1. 少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖を含む、単離されたIgM由来結合分子であって、前記少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖が、標的に特異的に結合する結合ドメインと連結されているバリアントIgM重鎖定常領域を含み、前記バリアントIgM重鎖定常領域の少なくとも1つのアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフが、前記モチーフにおけるグリコシル化を防止するように変異しており、N結合型グリコシル化モチーフがアミノ酸配列N-X-S/Tを含み、配列中、Nはアスパラギンであり、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸であり、S/Tはセリンまたはトレオニンである、前記結合分子。
  2. 前記バリアントIgM重鎖定常領域が、配列番号1(アレルIGHM03)または配列番号2(アレルIGHM04)のアミノ酸46(モチーフN1)、アミノ酸209(モチーフN2)、アミノ酸272(モチーフN3)、アミノ酸279(モチーフN4)、及びアミノ酸440(モチーフN5)に対応するアミノ酸位置から始まる5つのN結合型グリコシル化モチーフN-X-S/Tを含むヒトIgM重鎖定常領域に由来する、請求項1に記載のIgM由来結合分子。
  3. 前記N-X-S/Tモチーフのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つが、前記モチーフにおけるグリコシル化を防止するアミノ酸挿入、欠失、または置換を含む、請求項2に記載のIgM由来結合分子。
  4. 前記IgM由来結合分子が、モチーフN1、モチーフN2、モチーフN3、モチーフN5、またはモチーフN1、N2、N3、もしくはN5のうちの2つ以上、3つ以上、もしくは4つ全ての任意の組合せにおいて、アミノ酸挿入、欠失、または置換を含み、前記アミノ酸挿入、欠失、または置換が、前記モチーフにおけるグリコシル化を防止する、請求項3に記載のIgM由来結合分子。
  5. 置換後のアミノ酸が任意のアミノ酸である、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸N46、N209、N272、もしくはN440に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換;置換後のアミノ酸がトレオニンを除く任意のアミノ酸である、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸S48、S211、S274、もしくはS442に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換;または前記アミノ酸置換のうちの2つ以上、3つ以上、もしくは4つ以上の任意の組合せを含む、請求項4に記載のIgM由来結合分子。
  6. 前記IgM由来結合分子が、配列番号1もしくは配列番号2のN46X、N46A、N46D、N46Q、N46K、S48X、S48A、N229X、N229A、N229D、N229Q、N229K、S231X、S231A、N272X、N272A、N272D、N272Q、N272K、S274X、S274A、N440X、N440A、N440D、N449Q、N449K、S242X、もしくはS424Aに対応するアミノ酸置換、または前記アミノ酸置換のうちの2つ以上、3つ以上、もしくは4つ以上の任意の組合せを含み、Xは任意のアミノ酸であり、Xはトレオニンを除く任意のアミノ酸である、請求項5に記載のIgM由来結合分子。
  7. 前記バリアントIgM重鎖定常領域が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、または配列番号18のアミノ酸配列を含むバリアントヒトIgM定常領域である、請求項1~6のいずれか一項に記載のIgM由来結合分子。
  8. 前記バリアントIgM重鎖定常領域が、前記バリアントIgM重鎖定常領域に少なくとも1つの新しいアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフを導入するように変異しており、前記少なくとも1つの新しいアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフが、前記バリアントIgM重鎖定常領域における、IgM抗体において自然にはグリコシル化されない部位に導入されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のIgM由来結合分子。
  9. 前記新しいアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフが、前記バリアントIgM重鎖定常領域における、異なる免疫グロブリンアイソタイプに存在するアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフの位置に対応する位置に存在する、請求項8に記載のIgM由来結合分子。
  10. 前記異なる免疫グロブリンアイソタイプが、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4、ヒトIgA1、ヒトIgA2、ヒトIgD、及びヒトIgEからなる群から選択されるヒト免疫グロブリンアイソタイプである、請求項9に記載のIgM由来結合分子。
  11. 前記標的が、標的エピトープ、標的抗原、標的細胞、標的器官、または標的ウイルスである、請求項1~10のいずれか一項に記載のIgM由来結合分子。
  12. 前記IgM由来結合分子が、それぞれ5つまたは6つの2価IgM結合ユニットを含む五量体または六量体IgM抗体であり、各結合ユニットが、前記バリアントIgM定常領域に対してアミノ末端側に位置するVHをそれぞれ含む2つのIgM重鎖と、免疫グロブリン軽鎖定常領域に対してアミノ末端側に位置する軽鎖可変ドメイン(VL)をそれぞれ含む2つの免疫グロブリン軽鎖とを含み、前記VH及びVLが、組み合わさって、前記標的に特異的に結合する抗原結合ドメインを形成する、請求項1~11のいずれか一項に記載のIgM由来結合分子。
  13. 前記5つまたは6つのIgM結合ユニットが同一である、請求項12に記載のIgM由来結合分子。
  14. 五量体であり、且つJ鎖またはその機能性断片またはその機能性バリアントをさらに含む、請求項12または請求項13に記載のIgM由来結合分子。
  15. 前記J鎖が、配列番号20のアミノ酸配列を含む成熟ヒトJ鎖、またはその機能性断片、またはその機能性バリアントである、請求項14に記載のIgM由来結合分子。
  16. 前記J鎖が、参照J鎖と比較して1つ以上の単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を含む、機能性バリアントJ鎖であり、前記参照J鎖が、前記1つ以上の単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を除いて前記バリアントJ鎖と同一であり、前記IgM由来結合分子が、対象動物に投与された際に、前記バリアントJ鎖における前記1つ以上の単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を除いて同一であり且つ同一の動物種に同一の方法で投与される参照IgM由来結合分子と比較して、増加した血清半減期を示す、請求項14または請求項15に記載のIgM由来結合分子。
  17. 前記バリアントJ鎖またはその機能性断片が、前記参照J鎖と比較して1つ、2つ、3つ、または4つの単一アミノ酸置換、欠失、または挿入を含む、請求項16に記載のIgM由来結合分子。
  18. 前記バリアントJ鎖またはその機能性断片が、野生型成熟ヒトJ鎖(配列番号20)のアミノ酸Y102に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項16または請求項17に記載のIgM由来結合分子。
  19. 配列番号20のY102に対応するアミノ酸がアラニン(A)で置換されている、請求項18に記載のIgM由来結合分子。
  20. 前記J鎖が、配列番号21のアミノ酸配列を含むバリアントヒトJ鎖Jである、請求項19に記載のIgM由来結合分子。
  21. 前記バリアントJ鎖またはその機能性断片が、成熟ヒトJ鎖(配列番号20)のアミノ酸49(モチーフN6)に対応するアミノ酸位置から始まるアスパラギン(N)結合型グリコシル化モチーフN-X-S/T内での変異を含み、モチーフ中、Nはアスパラギンであり、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸であり、S/Tはセリンまたはトレオニンであり、前記変異が、前記モチーフにおけるグリコシル化を防止する、請求項16~19のいずれか一項に記載のIgM由来結合分子。
  22. 前記バリアントJ鎖またはその機能性断片が、配列番号20のアミノ酸N49もしくはアミノ酸S51に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を含み、S51に対応するアミノ酸がトレオニン(T)で置換されていないか、または、前記バリアントJ鎖が、配列番号20のアミノ酸N49及びS51の両方に対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項21に記載のIgM由来結合分子。
  23. 配列番号20のN49に対応する前記位置が、アラニン(A)、グリシン(G)、トレオニン(T)、セリン(S)、またはアスパラギン酸(D)で置換されている、請求項22に記載のIgM由来結合分子。
  24. 配列番号20のN49に対応する前記位置がアラニン(A)で置換されている、請求項23に記載のIgM由来結合分子。
  25. 前記J鎖がバリアントヒトJ鎖であり、且つ配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項24に記載のIgM由来結合分子。
  26. 配列番号20のN49に対応する前記位置がアスパラギン酸(D)で置換されている、請求項23に記載のIgM由来結合分子。
  27. 前記J鎖がバリアントヒトJ鎖であり、且つ配列番号23のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載のIgM由来結合分子。
  28. 前記J鎖またはその断片もしくはバリアントが、異種部分をさらに含む改変J鎖であり、前記異種部分が、前記J鎖またはその断片もしくはバリアントに融合またはコンジュゲートしている、請求項14~27のいずれか一項に記載のIgM由来結合分子。
  29. 前記異種部分が、前記J鎖またはその断片もしくはバリアントに融合しているポリペプチドである、請求項28に記載のIgM由来結合分子。
  30. 前記異種ポリペプチドが、ペプチドリンカーを介して前記J鎖またはその断片もしくはバリアントに融合している、請求項29に記載のIgM由来結合分子。
  31. 前記ペプチドリンカーが、少なくとも5個のアミノ酸、ただし25個以下のアミノ酸を含む、請求項30に記載のIgM由来結合分子。
  32. 前記ペプチドリンカーが、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号29)からなる、請求項30または請求項31に記載のIgM由来結合分子。
  33. 前記異種ポリペプチドが、前記J鎖またはその断片もしくはバリアントのN末端、前記J鎖またはその断片もしくはバリアントのC末端、あるいは前記J鎖またはその断片もしくはバリアントのN末端及びC末端の両方に融合している、請求項29~32のいずれか一項に記載のIgM由来結合分子。
  34. 前記異種ポリペプチドが結合ドメインを含む、請求項29~33のいずれか一項に記載のIgM由来結合分子。
  35. 前記異種ポリペプチドの前記結合ドメインが、抗体またはその抗原結合断片である、請求項34に記載のIgM由来結合分子。
  36. 前記抗原結合断片がscFv断片である、請求項35に記載のIgM由来結合分子。
  37. 前記異種scFv断片がCD3εに特異的に結合する、請求項36に記載のIgM由来結合分子。
  38. 前記改変J鎖が、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号52、配列番号53、及び配列番号54;配列番号57、配列番号59、配列番号62、配列番号65、配列番号67、及び配列番号69;配列番号57、配列番号59、配列番号62、配列番号65、配列番号67、及び配列番号70;配列番号58、配列番号60、配列番号63、配列番号66、配列番号68、及び配列番号71;配列番号58、配列番号61、配列番号63、配列番号66、配列番号68、及び配列番号72;配列番号58、配列番号61、配列番号64、配列番号66、配列番号68、及び配列番号73をそれぞれ含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む抗CD3ε scFvにペプチドリンカーを介して融合している、配列番号24(V15J)、配列番号25(V15J)、配列番号26(V15J N49D)、もしくは配列番号55(SJ)、または配列番号20、21、22、もしくは23のアミノ酸配列を含む、請求項37に記載のIgM由来結合分子。
  39. 請求項1~37のいずれか一項に記載の少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
  40. 請求項39に記載のポリヌクレオチドを含む、組成物。
  41. 軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列をさらに含む、請求項40に記載の組成物。
  42. 前記少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする前記核酸配列と、前記軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする前記核酸配列とが、別のベクター上にある、請求項41に記載の組成物。
  43. 前記少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする前記核酸配列と、前記軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする前記核酸配列とが、単一のベクター上にある、請求項41に記載の組成物。
  44. J鎖またはその機能性断片またはその機能性バリアントをコードする核酸配列をさらに含む、請求項41~43のいずれか一項に記載の組成物。
  45. 前記少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする前記核酸配列と、前記軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする前記核酸配列と、前記J鎖をコードする前記核酸配列とが、単一のベクター上にある、請求項44に記載の組成物。
  46. 前記少なくとも1つのバリアントIgM由来重鎖をコードする前記核酸配列と、前記軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする前記核酸配列と、前記J鎖をコードする前記核酸配列とが、それぞれ別のベクター上にある、請求項44に記載の組成物。
  47. 請求項42、43、45、または46のいずれか一項に記載の1つまたは複数のベクター。
  48. 宿主細胞であって、請求項39に記載のポリヌクレオチド、請求項40~46のいずれか一項に記載の組成物、または、請求項47に記載の1つもしくは複数のベクターを含み、前記宿主細胞が、請求項1~37のいずれか一項に記載のIgM由来結合分子を発現することができる、前記宿主細胞。
  49. 請求項1~37のいずれか一項に記載のIgM由来結合分子を作製する方法であって、請求項48に記載の宿主細胞を培養することと、前記定常領域または抗体を回収することとを含む、前記方法。
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