JP2022541270A - 肝臓癌に対するクロシンとソラフェニブの併用療法 - Google Patents

肝臓癌に対するクロシンとソラフェニブの併用療法 Download PDF

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Abstract

肝臓癌の治療のための薬剤の組み合わせであって、クロシンまたは薬学的に許容されるプロドラッグと、ソラフェニブとを含む組み合わせである。

Description

本発明は、クロシンを単独またはソラフェニブと併用して癌を治療するための治療用製剤及び方法に関する。
肝臓癌は、関与する細胞の種類によって異なる。肝臓癌には、肝細胞癌(HCC)、胆管癌及び血管肉腫が含まれる。肝臓癌の進行はいくつかの要因によって肝臓へ頻繁に傷害を与えることから始まる。肝臓への繰り返しの傷害は急性の炎症を引き起こし、それが持続すると繊維化や肝硬変を引き起こし、最終的には肝新生物が形成されることになる。HCCは、原発性肝臓癌の中でも最も多く見られるタイプであり、2021年には米国だけで782000例が診断され、746000人が死亡している。HCCは、世界で5番目に多い癌であり、癌関連死の3番目の原因とされている。UAEでは、肝臓疾患の患者数が増加しており、放置すると肝臓癌に進行することから、肝臓癌の発生率が上昇している。肝臓癌は、UAEでは男女ともに癌関連死の4番目の原因となっている(図2;Department of Health - Abu-Dhabi, 2015)。肝臓癌の発生率の上昇は、アルコール摂取、脂肪肝、C型及びB型のウイルス性肝炎などの複数のリスク因子に起因している。ほとんどの癌の場合と同様に、化学療法が防御の最前線となる。HCCの治療に使用される化学療法薬には、シスプラチン、ドキソルビシン、マイトマイシンなどがある。これらの薬はすべて生存率を高めることを目的としており、癌の発生過程を逆転させることはほとんどない。化学療法の大きな課題の1つは、非選択的な細胞毒性である。予後が最も良好な患者は、癌を早期に発見し、腫瘍の外科的切除と肝移植を受けることを選択した患者である。しかし、ほとんどの場合、患者は末期に肝臓癌と診断され、介入の機会が限られており、あまり効果的ではない場合がほとんどである。
ソラフェニブは、米国食品医薬品局(FDA)が承認した唯一のHCCの標的療法である。ソラフェニブは、経口ミルチキナーゼ阻害剤であり、Raf/MEK/ERKシグナルを標的とすることで腫瘍細胞の増殖を阻害し、血管内皮増殖因子(VEGF)及び血小板由来増殖因子(PDGF)受容体を標的とすることで血管新生を阻害する。ソラフェニブの有用性にもかかわらず、さらなる先進のHCC治療法が必要とされている。単剤療法と比較して、複数のシグナル伝達経路を標的とする併用療法は、抵抗性、フィードバック活性化、及び生存促進経路の代償的活性化を回避できる可能性があり、より良い治療法の選択肢となり得る。
クロシンとして知られているクロセチンジゲンチオビオースエステルは、サフランの主要な化合物であることがわかっている。クロシンは水溶性の数少ないカロテノイドの1つである。クロシンは多くの薬理作用を有しており、強力な抗酸化作用や抗炎症作用が確認されている。骨肉腫細胞であるMG63細胞及びOS732細胞にクロシンとシスプラチンを単独あるいは併用して投与したところ、骨肉腫細胞に対して強力な殺傷効果が認められ、MG63細胞の浸潤を抑制した結果、アポトーシスの活性化を示すマーカーであるカスパーゼ-3およびカスパーゼ-8の発現が上昇した。また、クロシンをコーディングしたナノ粒子をマウスの前癌性肝臓に投与したところ、前癌性病変の著しい退縮とアポトーシスの上昇が認められた。別の研究では、クロシンがHepG2細胞とWistarラットの肝臓がんの初期病変を予防することが示された。クロシンは結腸直腸癌(HCT116野生型及びHCT116 p53-/-細胞株)の増殖を抑制し、クロシン治療はオートファジーに依存しない古典的なプログラム細胞死を誘発することが示されている。
本発明の第1の態様によれば、対象の肝臓癌を治療、抑制、または重症度を軽減する方法であって、対象に第1の量のソラフェニブを投与することと、対象に第2の量のクロシンまたはその薬学的に許容されるプロドラッグを投与することとを含む方法を提供する。一の実施形態では、クロシンはα-クロシンである。クロシンまたはそのプロドラッグとソラフェニブは、両化合物を含む組成物に一緒に配合してもよい。あるいは、クロシンまたはそのプロドラッグとソラフェニブは、別々の医薬組成物で別々に投与してもよい。クロシンまたはそのプロドラッグとソラフェニブは、一緒に投与してもよく、順次投与してもよい。例えば、クロシンまたはそのプロドラッグを先に投与して、ソラフェニブに曝露する前に癌細胞を感作し、ソラフェニブを後に投与してもよい。クロシンプロドラッグの例としては、クロシン塩、水和物、ヘミアセタール、アセタール、チオアセタール、シリルエーテル、互変異性体、異性体、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。肝癌は、肝細胞癌(HCC)、線維層板状HCC、胆管癌、血管肉腫、及び/または転移性肝癌であってもよい。
本発明の第2の態様によれば、クロシンまたはその薬学的に許容されるプロドラッグ、及びソラフェニブを含む、肝臓癌治療のための薬物の治療的組み合わせを提供する。非限定的な実施形態では、クロシンは、クロセチンのモノグリコシルポリエンエステル、クロセチンのジグリコシルポリエンエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。例示的な実施形態では、クロシンはα-クロシンである。プロドラッグは、クロシン塩、水和物、ヘミアセタール、アセタール、チオアセタール、シリルエーテル、互変異性体、異性体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。クロシンとソラフェニブは、両化合物を含む同じ単一の医薬組成物に一緒に配合されてもよい。あるいは、クロシンとソラフェニブは、別々の医薬組成物で提供されてもよい。ソラフェニブの配合量は、クロシンの含有量に対して、重量で0.1:1から10:1である。また、対象の肝臓癌を治療、抑制、または重症度を軽減する方法も提供する。この方法は、本発明の第2の態様の薬物の治療的組み合わせの、治療有効量を対象に投与することを含む。
本発明の第3の態様によれば、対象の肝臓癌を治療、抑制、または重症度を軽減するための改良された治療方法が提供される。この方法は、第1の量のソラフェニブを投与することと、改良として、対象に第2の量のクロシンを投与することとを含む。例示的な実施形態として、クロシンはα-クロシンである。クロシンとソラフェニブは、両方の化合物を含む同じ単一の医薬組成物に一緒に配合してもよく、別々に、例えばキットに含まれる別々の容器に配合してもよい。
本発明は、以下の図及び説明を参照することにより、よりよく理解することができる。図中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、分子、細胞、細胞小器官、組織、またはそれらの相互作用を正確に表すことを意図したものではなく、代わりに本発明の原理を説明することに重点が置かれている。
本願で報告されている研究で行われた実験計画を示す。 いくつかのパラメータを評価するために使用された血液及び肝臓のサンプルの概略図を示す。 薬剤の治療的抗腫瘍効果を示すために使用した動物の肝臓の代表的な画像を示す。PBS、DEN誘発HCCラット(HCC)、またはクロシン(HCC CR)、ソラフェニブ(HCC SB)を別々に、または組み合わせて処理したものである(HCC CR+SB)。 未治療(HCC単独群)またはソラフェニブ(HCC SB)、クロシン(HCC CR)を別々にまたは組み合わせて(HCC CR+SB)処置したラットにおけるDEN誘発HCCからの肝結節の数の定量分析を示す。統計的有意性は、Microsoft Excelデータ分析ツールパック、t検定を用い、2群間で分散が等しいと仮定して判定した。(a:対PBS、b:対HCC; *P<0.05、**<0.01)。 レチクリン染色した肝臓の切片の画像を示す。切片は、コントロールグループ(PBS)、未治療ラット(HCC)、またはクロシン(HCC CR)、ソラフェニブ(HCC SB)を別々にまたは組み合わせて治療した(HCC CR SB)DEN誘発HCCから採取した。高倍率40倍、低倍率10倍である。矢印は細網線維を指す。 クロシンが、誘導されたHCCの増殖を阻害することを示す。(a)はコントロール(PBS)及びDEN誘発HCC(HCC)、またはクロシン(HCC CR)、ソラフェニブ(HCC SB)で別々にまたは組み合わせて(HCC CR SB)処理した実験においてPCNAを評価したウエスタンブロットの画像を示す。(b)はImageJを使用してシグナルを定量化し、肝臓の総タンパク質に従って正規化した定量化プロットを示す。結果は、各グループのn=4匹の平均±SDで表される。統計的有意性は、Microsoft Excelデータ分析ツールパック、t検定を用い、2群間で分散が等しいと仮定して判定した。a:対PBS、b:対HCC; *P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。 コントロールグループ及び実験グループの、肝臓の内因性アポトーシス経路に関与する主要タンパク質(PARP、プロカスパーゼ-9、プロカスパーゼ-3、Bax、Bcl-2)のウエスタンブロット分析を示す。結果として、クロシンがDEN誘導HCCの内因性アポトーシス経路を活性化することを示している。コントロールグループ(PBS)、未治療ラット(HCC)またはクロシン(HCC CR)、ソラフェニブ(HCC SB)を別々にまたは組み合わせて治療した(HCC CR SB)DEN誘発性HCCを分析した。 コントロールグループ及び実験グループのプロカスパーゼ-3、プロカスパーゼ-3、PARPの定量分析を示す。コントロールグループ(PBS)、未治療ラット(HCC)またはクロシン(HCC CR)、ソラフェニブ(HCC SB)を別々にまたは組み合わせて(HCC CR SB)治療したDEN誘発HCCを分析した。バンド強度は、ImageJを使用して定量化され、肝臓の総タンパク質に従って正規化された。結果は、各グループのn=4匹の平均±SDとして表される。統計的有意性は、Microsoft Excelデータ分析ツールパック、t検定を使用し、2群間で分散が等しいと仮定して決定した。a:対PBS、b:HCC; *P<0.05、**P<0.01、***P<0である。 コントロールグループ及び実験グループから得られたBax、Bcl-2、Bax/Bcl比の定量化分析を示す。コントロールグループ(PBS)、未治療ラット(HCC)またはクロシン(HCC CR)、ソラフェニブ(HCC SB)を別々にまたは組み合わせて治療した(HCC CR SB)DEN誘発HCCの切片を分析した。バンド強度は、ImageJを使用して定量化され、肝臓の総タンパク質に従って正規化された。結果は、各グループのn=4匹の平均±SDとして表される。統計的有意性は、Microsoft Excelデータ分析ツールパック、t検定を用い、2群間で分散が等しいと仮定して判定した。a:対PBS、b:対HCC; *P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。 コントロールグループ及び実験グループの肝臓の組織病理学的評価の代表的な画像を示す。サンプルはコントロールグループ(PBS)、未治療ラット(HCC)またはクロシン(HCC CR)、ソラフェニブ(HCC SB)を別々にまたは組み合わせて(HCC CR SB)治療したDEN誘発HCCから採取した。高倍率は40倍、低倍率は10倍である。矢印はAHFの代表的な領域を指す。 血清中で測定された肝酵素(AST、ALT)の活性を示す。(n=8)。統計的有意性は、Microsoft Excelデータ分析ツールパック、t検定を用い、2群間で分散が等しいと仮定して判定した。(a:対PBS、b:対HCC、c:対HCC+SB; *P<0.05、**P<0.01、P<0.001) 米国食品医薬品局のガイドライン草案から得られたデータに基づく、他の生物種の体表面積に基づくヒト等価用量(HED)の投与係数を報告する表を示す。
化学的に誘発された肝細胞癌に対するクロシンの治療効果を調べる研究が行われた。まず、雄のWistarラットに化学的にHCCを誘発した。その後、クロシンを投与し、肝機能のバイオマーカーを評価した。次に、肝臓組織を組織病理学的に評価し、主要な腫瘍マーカーをウエスタンブロッティングによって調べた。本研究で評価された生化学的、組織学的、及び分子マーカーに基づいて、サフランベースのクロシンは、DEN誘発HCCに対する強力な新規治療候補であることが証明された。
また、この研究により、クロシンとソラフェニブとを併用して投与することで、驚くほど優れた治療効果を得ることができることが明らかとなった。したがって、本発明は、クロシンとソラフェニブとが実験用ラットのHCCに対して相乗的な抗癌作用を発揮するという発見に少なくとも部分的に基づいている。この治療効果は、肝臓癌の治療に利用することができる。ソラフェニブ単独による単剤療法と比較して、複数のシグナル伝達経路を標的とするソラフェニブとクロシンとの併用療法は、より優れた治療の選択肢となる。特定の理論に縛られることなく、クロシンを投与することで、肝臓癌細胞の内因性アポトーシス経路が活性化されると考えられている。興味深いことに、クロシンとソラフェニブとの併用治療は、クロシン単独療法やソラフェニブ単独療法に比べて、内因性アポトーシス経路の活性化に優れた効果を発揮するようである。この知見は、ソラフェニブとクロシンとの特定の組み合わせが、相乗効果すなわち相加効果よりも大きな効果を奏することを示し、肝臓癌においてクロシンまたはソラフェニブのいずれかによる単剤療法よりも高い改善効果を奏することを示している。
例示的な実施形態において、本明細書では、第1の量のクロシン(またはその薬学的に許容されるプロドラッグ)及び第2の量のソラフェニブを含む薬物の治療的組み合わせが提供される。本質的に、クロシンとソラフェニブの組み合わせは、薬剤単独または2つの薬剤の単純な合計よりも効果的な治療上の組み合わせであり得る。さらに、組み合わせの用量が異なると、クロシンまたはソラフェニブ単独のいずれかよりも肝臓癌の治療に追加の利益をもたらす可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、本出願は、肝臓癌を治療するための予想外に有利な方法および組成物を提供し、それにより、ソラフェニブおよびクロシンは、特に有効な比率(例えば、相乗的または相加的以上)で投与される。
[クロシン]
化学的には、クロシンは二糖類のゲンチオビオースとジカルボン酸のクロセチンから形成されるジエステルである。
Figure 2022541270000001
クロシンは、純粋な化合物として単離された場合、濃い赤色を呈し、融点が186℃の結晶を形成する。水に溶かすとオレンジ色の溶液となる。広い意味でのクロシンという用語は、クロセチンのモノグリコシルまたはジグリコシルポリエンエステルである一連の関連する親水性カロテノイドのメンバーを指すこともある。サフランの香りのもととなっているクロシンは、α-クロシン(トランス-クロセチンジ(β-D-ゲンチオビオシル)エステル)であり、体系名(IUPAC)は8,8-ヂアポ-8,8-カロテン酸である。サフランの主要な活性成分は、分子の両端にゲンチオビオース(二糖類)基を持つ黄色の色素クロシン2であり、他にもグリコシル化の異なる3つの誘導体が知られている。
クロシンを含む組成物は、以下に適合したものを含む固体または液体形態など、投与のための特殊な形で製剤することができる。(1)経口投与では、例えば、頬、舌下、全身吸収のためのドレンチ(水性または非水性の溶液または懸濁液)、錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、舌への塗布用のペースト等。(2)非経口投与では、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射のための、例えば、滅菌溶液、懸濁液、または徐放性製剤。(3)局所投与では、例えば、クリーム、軟膏、皮膚に適用される制御放出パッチまたはスプレー等。(4)膣内または直腸内には、例えば、ペッサリー、クリーム、泡剤等、あるいは(5)舌下、(6)眼球、(7)経皮、(8)経鼻等に適合した製剤を含む。
組成物は、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、潤滑剤、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味料や芳香剤、防腐剤や抗酸化剤を含んでいてもよい。
クロシンの製剤には、非経口(皮下、静脈内、髄内、関節内、筋肉内、または腹腔内注射を含む)、直腸、局所、経皮、または経口(例えば、カプセル、懸濁液、または錠剤など)投与に適した製剤が含まれる。製剤は、便宜上、単位投与量で提示され、薬学の技術分野でよく知られている任意の方法で調製することができる。単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができるクロシンまたはその薬学的に許容されるプロドラッグの量は、治療対象や投与様式に応じて変わる。担体材料と組み合わせて単回投与形態に生成できる活性成分の量は、通常、治療効果を有する化合物の量になる。通常この量は、100パーセントのうち、活性成分を、約1重量%~約99重量%、好ましくは約5重量%~約70重量%、最も好ましくは約10重量%~約30重量%の範囲である。
選択された投与経路に関係なく、クロシンまたはそのプロドラッグは、当業者に知られている従来の方法により、薬学的に許容される投与状態に製剤することができる。クロシンは、他の医薬品と同様に、ヒトまたは獣医学で使用するための任意の便利な方法で投与するために製剤されてもよい。
[ソラフェニブ]
様々な実施形態において、本発明は、例えば、トシル酸ソラフェニブの形態や、他の薬学的に許容されるソラフェニブの形態、塩、及びエステルなどといったソラフェニブの使用を含む。ソラフェニブは、ソラフェニブのトシル酸塩であるNEXAVAR(R)として市販されている。トシル酸ソラフェニブのIUPAC化学名は4-(4-{3-[4-クロロ-3(トリフルオロメチル)フェニル]ウレイド}フェノキシ)N-メチルピリジン-2-カルボキサミド4メチルベンゼンスルホネートであり、構造式は次の通りである。
Figure 2022541270000002
トシル酸ソラフェニブの1日の推奨用量は800mgであり、1日2回、400mg(2錠)を経口投与する。ただし、疑わしい副作用を管理するために、治療の中断及び/または用量の削減が必要になる場合がある。そのような場合には、400mgを1日1回、または400mgを1日おきにと、投与量を削減することができる。当業者であれば、ソラフェニブの投与量および投与方法は、医学的に承認されたガイドラインに従うだけでなく、医学的に認められたガイドラインからの逸脱や変更も可能であることを理解するであろう。
[肝臓癌]
一態様では、本発明は、対象の体内の癌細胞または単離された癌細胞のin vitro治療を含む、肝臓癌細胞の治療のための方法を提供する。癌細胞が対象の体内にある場合、対象は、肝臓癌を有するヒトなどの霊長目であってもよい。対象は哺乳動物であってもよい。対象は、成人(すなわち、18歳以上)であってもよく、若年者(18歳未満)であってもよい。様々な実施形態において、肝臓癌は、肝細胞癌(HCC)、線維層板状HCC、胆管癌、血管肉腫、または転移性肝癌であってもよい。
いくつかの実施形態では、肝臓癌はソラフェニブに耐性を持たない。あるいは、肝臓癌はソラフェニブに対して一次または二次耐性を示す場合がある。対象は、クロシンがない場合にソラフェニブへ反応する可能性がある。対象は、クロシンの非存在下でソラフェニブに反応しない可能性がある。いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1、2、4、6、8、10ヶ月またはそれ以上の期間ソラフェニブによる先行治療を受けている。他の実施形態では、対象は、ソラフェニブに対する1つまたは複数の重大で有害な副作用を経験し、したがって、用量の減少を必要とする患者である。
いくつかの実施形態において、肝臓癌は、中期、進行期、または末期である。肝臓癌は転移性または非転移性であり、切除可能または切除不能であり得る。肝臓癌には、単一の腫瘍、複数の腫瘍、または(門脈または肝静脈への)浸潤性増殖パターンを伴う明確に定義されていない腫瘍が含まれ得る。肝臓癌には、線維層状、偽腺状(アデノイド)、多形性(巨細胞)、または明細胞パターンが含まれ得る。肝臓癌は、高分化型を含む場合があり、腫瘍細胞は、肝細胞に類似し、小柱、索、および巣を形成し、及び/または細胞質に胆汁色素を含む。肝臓癌は、低分化型を含む可能性があり、悪性上皮細胞は、非粘着性、多形性、未分化、及び/または巨大である。いくつかの実施形態では、肝臓癌は、B型肝炎、C型肝炎、肝硬変、または2型糖尿病に関連している場合がある。
いくつかの実施形態では、対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータスが2以下のヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、以下に定義される、許容可能な肝機能を有するヒトである。(i)総ビリルビンが正常の上限(ULN)の1.5倍以下、肝細胞癌のみの患者の場合には、総ビリルビンが3mg/dL(すなわち、ビリルビンのChildPughは2以下)。(ii)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアルカリホスファターゼ(ALP)がULNの5倍以下である、または(iii)許容される腎機能:血清クレアチニンがULNの1.5倍以下、またはクレアチニンレベルが正常値の1.5倍を超える患者の場合はクレアチニンクリアランスの計算値が60mL/min/1.73m以上である。
いくつかの実施形態において、対象は、以下に定義される許容可能な血液学的状態を有するヒトである。(i)絶対好中球数(ANC)≧1500細胞/mm(ii)血小板数≧100,000plts/mm(輸血なし)、肝細胞癌のみの患者の場合は、血小板数≧75,000plts/mm、または(iii)ヘモグロビン≧9g/dL。
いくつかの実施形態では、対象は、プロトロンビン時間(PT)または国際標準化比(INR)≦1.25×ULN、INR<1.7またはプロトロンビン時間(PT)がULNより上4秒未満(Child-Pughスコアが凝固パラメータで1以下)、または血清アルブミン>2.8g/dL(アルブミンのChild-Pughスコアは2以下)、を有するヒトである。
[併用療法]
併用療法または多剤療法は、単独の薬剤で行われる療法である単剤療法とは対照的に、複数の薬または他の療法を使用することである。本発明の一態様において、本明細書で提供されるのは、肝臓癌の治療のための薬物の治療的組み合わせであり、その組み合わせにはクロシン及びソラフェニブが含まれる。組み合わせの例示的な実施形態では、クロシン及びソラフェニブは、両方の化合物を含む同じ単一の医薬組成物に一緒に配合される。別の例示的な実施形態においては、クロシン及びソラフェニブは、別個の医薬組成物である。対象に治療量の組み合わせを投与することにより、対象の肝臓癌を治療、抑制、または重症度を低下させるための方法も提供される。
いくつかの実施形態において、治療的組み合わせとは、クロシン及びソラフェニブの特定の組み合わせ(例えば、比率及び/または投薬スケジュール)を使用することを指す。より具体的には、本発明は、クロシン及びソラフェニブが特に有効な比率(例えば、相乗的または相加的以上)で投与される、肝臓癌を治療するための治療の組み合わせ及び方法を提供する。代表的な実施形態では、クロシン:ソラフェニブの質量比は、約50:1、40:1、30:1、25:1、20:1、10:1、5:1、2:1、1:2、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、または1:50である。いくつかの実施形態では、比率は少なくとも約1、2、5、10、12、15、20、または50である。いくつかの実施形態では、比率は約5、10、15、20、30、40、50、60、または70未満である。例示的な重量対は、約1、2、5、8、10、15、20、25、30、40、及び50である。
クロシン:ソラフェニブの質量比は、様々な期間にわたって測定することができる。例えば、質量比は、1日、1週間、14日、21日、または28日で対象に投与されたクロシン及びソラフェニブのそれぞれの量に基づいてもよい。
ソラフェニブの投与量及び/または投与スケジュールは、臨床的に承認された、または実験的なガイドラインに従うことができる。様々な実施形態において、ソラフェニブの用量は、約800、600、400、または200mg/日である。200mg/日の用量は、1日おきに400mgの用量として投与することができる。
同様に、クロシンの投与量及び/または投与スケジュールは、臨床的に承認された、または実験的なガイドラインに従うことができる。また、動物実験から得られたデータは、ヒトで使用するためのクロシンの用量範囲を策定する際に使用できる。例えば、ある動物種で達成された有効な投与量は、図12の変換表に示されるように、ヒトを含む別の動物で使用するために外挿でき、図12においては、他の種の体表面積に基づくヒト等価用量(HED)の投与係数が報告されている。例示的な実施形態では、クロシンの用量は、対象の体重1kgあたり約0.001、0.01、0.1、0.5、1、10、15、20、25、50、100、200、300、400、500、600、または750から1000mg/日の範囲である。特定の実施形態において、クロシンの用量は、典型的には、対象の体重1kgあたり約100mg/日から約1000mg/日の範囲、具体的には、約200mg/日から約750mg/日の範囲である。より具体的には、約250mg/日から約500mg/日の範囲である。一実施形態では、用量は1kgあたり約50mg/日から約250mg/日の範囲である。さらなる実施形態において、1kgあたり約100mg/日から約200mg/日の範囲の用量である。一実施形態では、用量は1kgあたり約15mg/日から60mg/日の範囲である。さらなる実施形態において、用量は約1kgあたり20mg/日から50mg/日の範囲である。追加の実施形態において、用量は1kgあたり約25mg/日から45mg/日の範囲である。
クロシンの投与量は、選択された比率とソラフェニブの投与量とに基づいて、治療上有効な範囲内で設定することができる。上述のように、比率は、1日、1週間、14日、21日、または28日にわたって対象に投与されたソラフェニブの量を使用して決定することができる。
いくつかの実施形態において、クロシンは、1週間(7日)にわたって1、2、3、4、5、6、または7回の1日用量が対象に投与される。クロシンは、14日間にわたって1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14回の1日用量が対象に投与されてもよい。クロシンは、21日間にわたって1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21回の1日用量が対象に投与されてもよい。クロシンは、28日間にわたって1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28回の1日用量が対象に投与されてもよい。
様々な実施形態において、クロシンは、次の期間投与される。2週間(合計14日間)、1週間投与と1週間の休薬期間(合計14日)、3週間連続投与(合計21日)、2週間投与と1週間の休薬期間(合計21日)、1週間投与と2週間の休薬期間(合計21日)。4週間連続投与(合計28日)、3週間投与と1週間の休薬期間(合計28日)、2週間投与と2週間の休薬期間(合計28日)、1週間投与と3週間の休薬期間(合計28日)。
さらなる実施形態において、クロシンは、7、14、21または28日の投与サイクルの1日目に投与され、または、21または28日の投与サイクルの1日目と15日目に投与され、または、21または28日の投与サイクルの1、8、および15日目に投与され、または、21または28日サイクルの1、2、8、および15日目に投与される。クロシンは、1、2、3、4、5、6、7、または8週間ごとに1回投与できる。
一連のクロシン-ソラフェニブ療法は、臨床評価項目が満たされるまで継続することができる。いくつかの実施形態では、治療は、疾患の進行または許容できない毒性が生じるまで続けられる。いくつかの実施形態において、治療は、肝臓癌(例えば、HCC)が存在しないと定義される病理学的完全奏効率を達成するまで継続される。いくつかの実施形態において、治療は、肝臓癌の部分的または完全な寛解まで継続される。クロシンとソラフェニブとを、肝臓癌を患っている複数の被験者に投与すると、全体的な生存率(OS)、無増悪生存率(PFS)、無病生存率(DFS)、応答率(RR)、生活の質(QoL)、またはその組み合わせが向上する可能性がある。
様々な実施形態では、治療により、肝臓癌腫瘍のサイズ及び/または数を減少させる。治療により、肝臓癌の腫瘍のサイズ及び/または数が増加することを防ぐことができる。治療により、肝臓癌腫瘍の転移を防ぐことができる。
本発明の方法において、クロシン及びソラフェニブの投与は、特定の送達システムに限定されず、非経口(皮下、静脈内、髄内、関節内、筋肉内、または腹腔内注射を含む)、直腸、局所、経皮、または経口(カプセル、懸濁液、またはタブレットなど)によるものを含んでもよいが、それに限定されない。個体への投与は、単回投与または反復投与が可能であり、様々な生理学的に許容されるプロドラッグまたは塩の形態のいずれかで、及び/または医薬組成物の一部として許容される医薬担体及び/または添加剤とともに、投与し得る。生理学的に許容される塩形態および標準的な医薬製剤技術、投薬量、および賦形剤は、当業者によく知られている。さらに、ある動物で達成された有効な投与量は、当技術分野で知られている変換係数を使用して、ヒトを含む別の動物で使用するために外挿することができる。
本発明の併用療法は、特定のコースまたはレジメンに特に限定されず、別個に、または他の治療法(例えば、化学療法または放射線療法)と組み合わせて使用することができる。
いくつかの実施形態において、クロシンは、ソラフェニブの投与前、ソラフェニブと同時投与、ソラフェニブの投与後、またはそれらの組み合わせで投与される。クロシンは全身投与または局所投与される。
本発明による併用療法は、クロシン及びソラフェニブ以外の他の追加の療法(例えば、医薬品、放射線など)を含むことができる。同様に、本発明は、補助療法として(例えば、手術と組み合わせた場合)使用することができる。様々な実施形態において、対象はまた、外科的切除、経皮的エタノールまたは酢酸注射、経カテーテル動脈化学塞栓療法、高周波アブレーション、レーザーアブレーション、冷凍アブレーション、集光外照射定位放射線治療、選択的内部放射線療法、動脈内ヨウ素131リピオドール投与、及び/または高強度集束超音波によっても治療される。
クロシンとソラフェニブの組み合わせは、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、併用療法、同時療法、または緩和療法として使用できる。クロシンとソラフェニブの組み合わせは、一次治療、二次治療、またはクロスオーバー療法として使用できる。
いくつかの実施形態において、ソラフェニブの治療上有効な用量は、クロシンとの組み合わせによって低減される。例えば、ソラフェニブの1日、1週間、または1か月の投与量は、最大推奨用量または最大耐量に対して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上減らすことができる。他の実施形態では、ソラフェニブは、クロシン投与がない場合に有効であるために必要な用量よりも少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低い有効用量で投与される。いくつかの実施形態において、ソラフェニブのIC50は、クロシンの非存在下でのIC50と比較して、少なくとも2、4、5、10、20、30、40、50、または100倍減少する。
[キット]
本発明は、肝臓癌を治療するためのキットも提供する。例えば、キットは、上記のようなクロシン及びソラフェニブの1つまたは複数の医薬組成物を含み得る。組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であってもよい。キットを含む他の実施形態では、クロシンを含む第1の薬学的に許容される組成物、ソラフェニブを含む第2の薬学的に許容される組成物、及び必要に応じて肝臓癌の治療におけるそれらの使用方法の説明を含むキットが提供される。さらに他の実施形態では、1つ以上の医薬組成物およびそのような組成物の投与を達成するための1つ以上の装置を含むキットが提供される。例えば、対象となるキットは、医薬組成物と、組成物を癌へ直接動脈内注射するためのカテーテルとを含んでいてもよい。一実施形態では、デバイスは動脈内カテーテルである。
[実験結果]
(in vivoモデル:動物)
オスのWistarラットは、UAE大学医学健康科学部の動物研究施設から入手した。当初、動物の体重は約110gで、24~26℃において12時間の明暗サイクルで飼育され、標準的な実験動物食餌で維持され、餌と水は自由に摂取できた。すべての動物実験は、UAE大学医学健康科学部の動物研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号A8-15)。
(実験計画)
発癌
この研究では、4週齢のオスのWistarラットを使用した。ラットはランダムに2つのグループに分けられた。腹腔内(ip)注射により1xPBSを投与されたコントロールグループ(n=8)と、50mg/kg体重のDEN(Sigma Aldrich、USA)を、PBSに溶解して週に1回、ipを介して16週間投与した実験グループである。このHCC誘導プロトコルは、(DePeralta et al.,2016; Schiffer et al.,2005)によって記述されたプロトコルを改変したものである。
治療プロトコル
16週目に、実験グループにHCCが確立したので、動物を以下の4つのグループ(n=8)に分けた。HCC単独、HCC+クロシン、HCC+ソラフェニブ、HCC+クロシン+ソラフェニブのグループである(図1参照)。17週目から19週目まで、クロシン及び/またはソラフェニブの投与を1日1回、週5日で開始した。すべての薬剤は胃内チューブを用いて経口投与された(強制経口投与)。投与量および投与経路は、これまでに文献で報告されているものに従った。
実験の最初の週に、PBSグループは実験の全期間にわたって1xPBSのip注射を受けた。一方、HCC実験グループには50mg/kg体重のDEN(Sigma Aldrich、USA)をPBSに溶解したものを、週に1回、16週間にわたって投与した。17週目に、クロシンとソラフェニブとを週に5回、19週目まで強制経口投与した。
HCC+クロシンのグループでは、クロシン(Sigma Aldrich、USA)を200mg/kg体重の用量で投与した。HCC+ソラフェニブのグループでは、ソラフェニブ(Carbosynth Limited)を10mg/kg体重の用量で投与した。HCC+クロシン+ソラフェニブのグループの動物は、200mg/kg体重のクロシンを投与され、すぐに10mg/kg体重のソラフェニブが投与された。クロシンは1xPBSで希釈した。ソラフェニブの溶解には0.3%のDMSOを使用した。オスのWistarラットに対しip注射をした場合のクロシンの経口LD50は1~5g/kg体重である。実験期間の終わりであり、最後の薬物投与の24時間後に、ジエチルエーテルを使用して動物を安楽死させ、制御された条件下で解剖した。血液及び肝臓組織のサンプルを採取し、組織学的分析のために緩衝ホルマリンに室温で保存するか、または生化学的及びイムノブロッティング分析のためにPBSに-80℃で保存した。
(サンプル準備)
血液サンプル
血液サンプルを採取するために、ラットを安楽死させてから断頭し、血液を収集チューブ(BD Vacutainer)に収集した。全血から血清を分離するために、サンプルを1200rpmで10分間遠心分離した。血清を収集し、液体窒素で瞬間冷凍した後、さらなる調査のために-80℃で保存した。
生化学的分析
肝臓酵素アラニントランスアミナーゼ(ALT)、及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルを、市販の比色分析を使用して評価した。キットはAbeam(Cambridge、United Kingdom)から購入し、提供されたプロトコルに従い、Promega GloMax Discoverマイクロプレートリーダーを使用してALTおよびASTの濃度を測定した(図2参照)。
肝臓サンプル
PBSを使用して肝臓組織を洗浄し、肝臓全体の写真を撮影した。次に、採取した各肝臓を2つの部分に分け、1つの部分を空のエッペンドルフチューブに保存し、直ちに液体窒素で瞬間冷凍し、後でさらに調査するために-80℃で保存した。もう一方の肝臓の部分は、組織病理学的検査のために、10%の中性緩衝ホルマリンに浸して室温で保存した(図2参照)。
組織病理学的準備
組織の完全性を維持するために、肝臓組織サンプルを10%の中性緩衝ホルマリン溶液で固定した。続いて、組織を3μmの厚さの切片に切断し、脱水して組織の水分を除去した。脱水のプロセスは、一連のエタノール溶液を、濃度を上げながら使用することにより達成された。その後、キシレンを使用して組織に残っているエタノールをすべて除去した。次に、パラフィンワックスに組織切片を埋め込んでパラフィンブロックを準備し、ワックスが組織に浸透できるようにした。次に、得られたブロックを厚さ3μmの切片に切断した。細胞レベルで形態学的変化を観察するために、H&E染色とレチクリン染色の2つの染色を使用した。製造元の指示書(Abeam)に沿ったプロトコルに従い、組織スライドを光学顕微鏡で観察及び検査した。発癌モデルの有効性と本研究で使用した治療法の影響を評価するために、全ての肝臓組織サンプルは、アラブ首長国連邦のタワム病院の病理学者によって盲検試験された。
ウエスタンブロット分析
肝臓組織サンプル(10mg)を冷やしたRIPA緩衝液(Sigma Aldrich、USA)に入れ、2mLのプロテアーゼ阻害剤とホスファターゼ阻害剤を加えてホモジナイズした。各肝臓サンプルのタンパク質濃度は、Promega GloMax Discoverを用いたブラッドフォード法(Bio-Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を用いて測定した。タンパク質をゲルにブロットするために、肝臓組織をホモジナイズして得られた細胞溶解物にローディング用色素である2-メルカプトエタノールを添加した。次に、細胞溶解物とローディング用色素との混合物をSDS-PAGEゲルにロードした。決定するタンパク質のサイズに応じて、ゲルのパーセンテージを変化させた。SDS-PAGEゲルで各サンプルのタンパク質含有量を分離した後、タンパク質をPVDF膜に転写し、5%BSAを加えたTBSTまたは5%(w/v)無脂肪ミルクで1時間、室温でブロックした。ブロッキング段階の後、膜を一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。本研究では、ここで選択した一次抗体は、抗増殖細胞核抗原(PCNA)、抗カスパーゼ-3(Cell Signaling Technology Inc.)、抗カスパーゼ-9(Nous Biologicals)、抗ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)、抗Bcl-2、抗Bax(サンタクルーズ)である。一次抗体と一晩インキュベートした後、膜をTBSTで広範囲に洗浄し、抗ウサギIgG(Cell Signaling Technology、Inc、MA、USA)や抗マウスIgGなどの二次抗体で再プローブし、室温で1時間培養して西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた。次に、WesternSure PREMIUMとして知られる化学発光溶液を使用してタンパク質バンドを検出し、Bio-Rad ChemiDoc XRS+システムを使用してシグナルを検出し、視覚化した。バンドの強度は、ImageJソフトウェアを使用して測定した。製造元(Thermo Fisher Scientific)の指示するプロトコルに従って、SYPRO Rubyタンパク質ゲル染色を使用して総タンパク質を染色し、内部コントロールとして使用した。
総タンパク質
ハウスキーピングタンパク質は、すべてのウエスタンブロット分析のコントロールとして使用される。ハウスキーピングタンパク質は組織内で安定して発現するため、SDS-PAGEゲルにロードされたタンパク質サンプルの完全性を検証するための優れた指標となり、サンプル中のタンパク質の量を正確に反映する。現在の研究では、これらのハウスキーピングタンパク質がさまざまな実験条件下で安定性を維持できるかどうかが調査されている。この研究では、GAPDH、b-アクチン、b-チューブリンなどのさまざまなハウスキーピングタンパク質がローディングコントロールとして使用され、一貫性がないことがわかった。2003年に発表された研究論文では、GAPDHやb-アクチンなどの一般的に使用されるローディングコントロールの遺伝子発現が増加し、7倍から23倍の間で変動していることが示されており、興味深いことに、これは癌組織で示された(Kim & Kim、2003)。そこで、この問題を解決するために別のアプローチを用いた。ローディングコントロールとして総タンパク質を使用した。このプロトコルは、1つのタンパク質に依存するのではなく、サンプル全体のタンパク質含有量を測定するもので、結腸直腸癌及びHCCにおいて信頼できるローディングコントロールであることが証明されている。
[結果]
(血清中の肝酵素)
肝細胞から血流に放出される酵素のレベルを評価するために、肝機能分析を実施した。これらのレベルは、肝臓の完全性と機能性を反映している。肝臓が損傷すると、これらの酵素は肝細胞から広範囲に放出される。ALTとASTは、肝臓の効率を評価するために最も一般的にチェックされる酵素である。
血清酵素に対する治療の効果
ALT(P<0.01)及びASTレベルは、コントロールグループと比較してHCCグループで有意に増加しており、腫瘍形成による肝障害の重症度を示している。クロシンの単独投与及びソラフェニブとの併用投与では、HCCグループと比較してALTレベルの値が低下した(P<0.01)。クロシンの単独投与及びクロシンとソラフェニブとの併用投与では、ソラフェニブ単独投与グループ(HCC+ソラフェニブ)と比較して、ALTレベルが有意に低下した(P<0.05)。
(ラットにおけるDEN誘発HCCに対するクロシンの抗癌効果)
肝臓の肉眼的外観
PBSグループの動物の肝臓は、正常な構造、サイズ、質感、および光沢のある暗褐色を呈し、肉眼で病変は観察されなかった。HCCの肝臓は、肉眼で明らかな複数の病変を伴う顕著な淡い色と外観を示した(図3参照)。治療を受けた肝臓は、HCCグループと比較してストレスが少ないように見えた。DEN誘発HCCラットへの薬物の治療的投与は、HCC単独グループと比較して肝臓の正常な形態を回復させた。クロシン単独投与(HCC+CR)およびクロシンとソラフェニブとの併用投与(HCC+CR+SB)では、HCC動物と比較して病変の数が減少した。クロシンを投与した動物は、ソラフェニブ単独投与(HCC+SB)の肝臓と比較して、有意に少ない病変数を示した(図4参照)。
肝臓の組織病理学的評価
DEN誘導HCCラットに対するクロシンの治療効果をさらに検討するために、臓組織の組織病理学的検査(図10参照)を実施した。肝臓の切片を光学顕微鏡で観察し、代表的な画像を得た。細胞成分と組織を顕微鏡で可視化するために、核を青色に染色するヘマトキシリン(H)と細胞質をピンク色に染色するエオシン(E)を使用して切片を染色した。H&Eは、組織学で使用される標準的な染色剤である。コントロールPBSグループは、動物の肝臓の正常な構造と組織、中心静脈を伴う正常な肝小葉を示し、肝細胞は中心静脈から放射状に正常なスパンに配置されている。また、組織学的検査により、無傷のコアと正常な血管の関係が門脈路と肝細静脈との間に存在することが明らかとなった。HCCグループの組織学的評価では、HCCの進行と一致する異常な細胞形態が認められ、肝索は正常な肝板よりも広く見え、小葉の正常な構造は失われていた。クロシンの単独投与またはソラフェニブとの併用により、HCCグループでは肝臓の正常な構造が大幅に回復した。
レチクリン染色
レチクリンは、肝臓の組織病理学を調査するために主に使用される免疫染色である。細網繊維の可視化に役立ち、十分に分化したHCCの診断に有用である。全てのグループの肝臓切片を処理してレチクリンで染色し、光学顕微鏡で観察した(図5参照)。コントロールPBSグループは正常な網状ネットワークを示した。実験HCCグループでは、網状組織の明らかな崩壊が見られた。クロシン単独投与(HCC+クロシン)及びソラフェニブとの併用投与(HCC+クロシン+ソラフェニブ)では、DEN誘発の癌による損傷を回復し、HCCグループと比較して繊維の破損はそれほど頻繁に見られなかった。
ウエスタンブロット分析及びPCNAの定量化により、コントロールグループと比較してHCC動物の肝臓におけるPCNAの発現量が有意に(P<0.01)増加していることが示され、またクロシン単独投与またはソラフェニブとの併用投与により、PCNAの発現量が有意に(P<0.01)低下することが示された。また、クロシンとソラフェニブとの併用投与は、クロシンまたはソラフェニブの単独投与と比較して、有意に(P<0.001)PCNAのレベルが低下することがわかった(図6参照)。
(アポトーシスにおけるクロシンの役割)
DEN誘発HCCのアポトーシス経路におけるクロシンの役割を、特にミトコンドリアを介する(内因性)アポトーシスに関与する重要なマーカーの発現を評価することによって調べた。その結果、クロシンを投与した場合に、抗アポトーシスタンパク質Bcl-2の発現がHCCグループに比べて有意に(P<0.05)減少した一方で、アポトーシス経路の活性化に重要な役割を果たす促進タンパク質Baxの発現が有意に(P<0.05)増加することがわかった。また、ソラフェニブとクロシンとを組み合わせて投与することで、クロシン単独またはソラフェニブ単独のいずれかと比較して、DEN誘発HCCに対してより強い(P<0.05)効果があることが分かった。アポトーシスに対するクロシンの役割を徹底的に調査するために、複数のウエスタンブロット実験を行った結果、プロカスパーゼ-3、プロカスパーゼ-9、及びPARPが内因性アポトーシス経路を活性化することを確認した。これらのタンパク質の発現は、クロシン投与グループ及びクロシンをソラフェニブと組み合わせて使用した場合に、HCCグループ単独と比較して、クロシン投与及びクロシンとソラフェニブとの併用投与で有意に(それぞれP<0.01、P<0.01、P<0.001)減少した(図8、図9参照)。
[考察]
肝臓は、恒常性を維持するために不可欠な機能を果たす複雑な器官である。肝臓で起こる主要な生物学的プロセスには、様々な異物の取り込み、代謝、及び排泄が含まれる。肝臓は、免疫応答、食作用、微生物の除去にも関与している。また、タンパク質、炭水化物、脂肪を代謝する場所でもある。肝機能のルーチン分析では、ALTやASTなどのバイオマーカーの値をチェックする。これらの値は、肝臓の損傷や機能障害のレベルを大きく反映している。ALTは肝臓に高濃度で存在するが、腎臓や心臓などの他の部位にも存在する。肝細胞の細胞質では、ALTはアミノ基転移反応の触媒として重要な役割を果たしている。ALTはアミノ基転移反応にも関与しており、肝細胞のミトコンドリアや細胞質に存在しているが、主に心臓組織に集中している。肝臓にわずかな損傷があると、血清中のALTとASTの値は大幅に上昇する。
DEN誘発HCCに対するサフランの化学的予防効果を調査したところ、サフランはラットのALTとASTのレベルを有意に回復させることを示した。ソラフェニブと併用投与しても、これらの肝酵素のレベルに同様の効果があった。ALTとASTのレベルは治療グループで顕著に低く、肝機能の改善を示している。本研究では、PBSコントロールグループと比較してDEN誘発HCCグループにおいてALTとASTの両方の肝血清酵素のレベルが高く、重度の肝障害に直結していることが分かった。この調査で得られたデータは、クロシンの単独投与が、DEN誘発HCCラットと比較して血中のALTとASTの両方のレベルを低下させることに大きな影響を及ぼしたことを示している(図11参照)。クロシンとソラフェニブと併用療法は、ソラフェニブ単独投与と比較して、これらの血清酵素のレベルを低下させることに有意に強い影響を及ぼした(P<0.05)。特定の理論にとらわれることなく、この事実は、クロシンとソラフェニブが相乗的に作用し、DENによって誘発される肝臓への損傷を改善するより良い効果をもたらすことを示している(図11参照)。
(組織学的変化を改善におけるクロシンの影響)
肝臓は小葉に分かれており、それぞれの小葉は、中心静脈と肝動脈の分岐、及び胆管を備えた六角形の構造を備えている。肝細胞は通常、中心静脈から放射状に広がる単細胞のプレート状に配置される。クロシンの有効性を評価するために、肝生検を分析した。肝生検は伝統的に、肝疾患の原因や重症度を特定するための診断ツールとして実施されている。この研究では、図3に示すように、DEN処理した動物から収集された肝臓において、肉眼で見える結節が観察された。DEN誘発動物の肝臓を組織病理学的に検査したところ、索状型を示し、透明な細胞質を特徴とするHCC病変の明確な特徴が認められた。肝細胞の正常な六角形は失われていた。プレートは、単細胞の厚さに配置されなくなった。リンパ球の浸潤が観察された。これらはすべて、HCCの発生を示している。他の研究でも同様の結果が観察された。クロシンの単独投与及びソラフェニブの補助剤としての投与は、観察される肝結節の数を減らすことに大きな影響を与えた(図4参照)。クロシンでコーティングされたD-MNPsナノ粒子を使用してマウスのDEN誘発マウス前癌性肝臓を治療した研究では、クロシンを投与された動物の肝臓が、明らかな肝臓組織学回復を示したことが明らかとなった。
(網状ネットワークに対するクロシンの影響)
結合組織は、体内の4つの主要なタイプの組織の1つである。結合組織は、免疫防御、成長、修復、及び機械的支持の提供において重要な役割を担う。結合組織は、上皮組織のバックボーンとなる。結合組織は、主に細胞外マトリックスと様々な種類の細胞とで構成されている。細胞外繊維には、コラーゲン、エラスチン、細網線維を含む3種類がある。細網線維は主にIII型コラーゲンで構成されており、主に肝臓と筋線維とに見られる細網ネットワークを形成している。レチクリン染色は、高分化型肝細胞癌と良性肝病変を区別するための鑑別診断に有用であることが示されている。HCCの場合、細網ネットワークは完全に失われるか、異常なパターンを示す。そのパターンには、細胞層の厚さが増すことに伴う索状の拡大が含まれる。
チオアセトアミドと胆管結紮によって誘発された肝線維症における細網線維パターンの変化を明らかにすることを目的として、ラットを用いた研究が行われた。線維症誘導の1週間後、細網線維の顕著な減少が見られ、肝臓の細網ネットワーク損傷に応答した細網ネットワークの崩壊が示唆された。HCCの鑑別診断に現在使用されている免疫組織化学染色をレビューした論文によると、HCC患者の生検のレチクリン染色ではレチクリンの消失が認められ、この染色がHCCの診断に確実に使用でき、肝臓癌の異なる表現型を鑑別することができることが確認された。
本研究では、肝臓切片を処理しレチクリンで染色し、光学顕微鏡で観察した(図5参照)。PBSグループは、薄いプレートで無傷のレチクリンネットワークを示した。実験HCCグループでは、HCC結節の領域に異常なパターンを示し、レチクリンネットワークが明らかに崩壊して、より厚いプレートが見られた。クロシン単独投与(HCC+クロシン)及びソラフェニブの補助剤として投与(HCC+クロシン+ソラフェニブ)した場合に、DENによる癌の誘発によって受けた損傷が大幅に回復した。繊維の破損は、HCCグループと比較してそれほど頻繁に見られなかった。本研究の結果は、上述の研究と一致している。
(DEN誘発HCCラットにおけるクロシンの抗癌および抗増殖効果)
増殖に対するクロシンの影響
PCNAは、DNA複製、DNA修復、細胞周期の進行など、多くの細胞プロセスで重要な役割を果たすことが分かっている。DNA複製中の変異は、PCNAの翻訳後修飾に反映され、それによってPCNAの機能が変化する。PCNAは、複製中にその役割を果たすことから、増殖のマーカーとされている。複製の間、PCNA分子はDNA螺旋の周りにスライディングクランプを形成し、複製のプロセスを制御するためのプラットフォームを作成する。PCNAの発現は、乳癌および肝臓癌の転移で増加する。PCNAはS期にピークに達するため、細胞増殖の指標となる。PCNAの発現レベルを評価することは、癌を評価するための診断および予後ツールとして使用される。乳癌患者を対象に実施された研究では、隣接する正常組織と比較して、患者の癌組織でPCNAが高発現していることが明らかとなった。また、ミツバチの抗腫瘍効果を評価するためにSprague Dawleyラットを用いた他の研究では、コントロールグループと比較してDEN誘発動物においてPCNAが高レベルで発現していた。本研究では、ウエスタンブロット分析により、DEN誘発HCC動物におけるPCNAのレベルがコントロールグループと比較して有意に高いことが示された。クロシン及びクロシンとソラフェニブと両方を投与すると、PCNAの発現が減少した(図6参照)。クロシンは、A549及びSPC-A1肺癌細胞において細胞増殖を抑制し、アポトーシスを誘導することがわかっている。乳癌細胞を対象とした別の研究では、クロシンは微小管ネットワークを破壊することによって増殖を抑制した。B16G10癌細胞を移植したC57BL/6マウスのメラノーマ治療に対するクロシンの抗腫瘍効果を調査した研究では、クロシンを21日間投与したところ、腫瘍が縮小し、生存期間が有意に延長したことが示された。
ウエスタンブロット分析
アポトーシスの誘導におけるクロシンの役割
プログラムされた細胞死であるアポトーシスは、細胞生物学で最も研究されているトピックの1つである。アポトーシスは、生理学的状態と病理学的状態との両方で発生する複雑なプロセスである。アポトーシスは、恒常性を維持し、細胞の発達を調節するために不可欠である。アポトーシスの不均衡は、自己免疫疾患や癌を含む多くの疾患の発症につながる。癌の場合、細胞死と細胞分裂の間の平衡が失われる。この問題は、癌細胞が非常に賢く適応性があり、死のシグナルをスキップして無限に増殖し続ける能力を持っているために発生する。これにより、変異した細胞の塊である腫瘍が形成される。
アポトーシスの活性化には2つの経路が関与している。異なるデスレセプターによってスイッチを入れられる外因性経路と、ミトコンドリアによって制御され、アポトーシス因子の放出につながる内因性経路である。両方の経路に関与する酵素は、アポトーシスの活性化と非活性化に重要な役割を果たしている。これらの酵素の中で最も重要なファミリーは、「カスパーゼ」と呼ばれている。カスパーゼは主に特定の基質を切断して活性化する機能を持つ。本研究では、内因性アポトーシス経路の調査に集中した。
内因性経路は、低酸素、DNA損傷、酸化ストレスなどを含む、細胞外または細胞内ストレスによって活性化される。これらの刺激は、ミトコンドリア外膜の浸透性に変化を引き起こし、シトクロムcの放出を引き起こす。ミトコンドリア外膜の浸透性は、BCL-2タンパク質ファミリー、特にBcl-2とBaxによって制御されている。シトクロムcが放出されると、シトクロムcはApaf-1とプロカスパーゼ-9を活性化し、アポトソームを形成する。プロカスパーゼ-9が蓄積すると、誘導型カスパーゼ-9が活性化される。通常の状況下では、アポトーシス促進タンパク質であるBaxは、抗アポトーシスタンパク質Bcl-2と結合して、ミトコンドリアの膜の浸透性を制御している。シトクロムcが放出されると、実行型カスパーゼ-3と誘導型カスパーゼ-9が活性化される。
通常の生理学的条件下では、PARPはDNA損傷を検出及び修復するように機能し、アポトーシスの制御に不可欠な役割を果たす。活性化されると、PARPはNAD+を転移し、PARをDNAポリメラーゼに結合させ、DNA複製中に発生する問題を修復する。PARPが過剰に活性化すると、内因性アポトーシス経路のスイッチが入る。PARPはアポトーシス促進シグナルであり、PARPの活性化後、PARPは核から細胞質に移動してミトコンドリアの外膜と相互作用する。この過程で、アポトーシス誘導因子が放出され、細胞はアポトーシスを起こす。
アポトーシスは、発癌を促進し、従来の治療法に対して癌細胞を化学的抵抗性にする上で重要な役割を果たす。アポトーシスをスキップする癌の能力は、癌の顕著な特徴の1つである。肺癌細胞を対象とした研究では、A549細胞のアポトーシスの誘導に対するサフランの効果が検証され、サフラン処理した細胞ではカスパーゼのレベルが上昇していることがわかった。これは、サフランによる治療によって、癌細胞のアポトーシスが活性化されたことを示唆している。別の研究では、メラトニンを投与したWistarラットのDEN誘発HCCにおいて、アポトーシスが活性化されていることが示された。これは、カスパーゼと切断されたPARPのレベルの上昇によって示されており、メラトニンはBax/Bcl-2比の増加をもたらした。Wistarラットにおけるグリセロール治療の効果を調査した研究では、アポトーシスが増加したことを示し、それはカスパーゼ-3の活性化とBax/Bcl-2比の増加によっても示された。サフランに含まれるもう一つの主要な生理活性分子であるクロシンの効果を調査した研究では、クロシンがHepG2細胞のアポトーシスを誘導し、BaxのBcl-2に対する比率が増加し、カスパーゼ-3、カスパーゼ-9が上昇したことが示された。別の調査では、Wistarラットにおいて肝臓癌の病変に対する予防策としてクロシンを使用すると、クロシンを投与した動物の肝臓ではアポトーシスが有意に上昇したことがM30 CytoDeath抗体を用いた組織学的検査で実証され、クロシンのアポトーシス活性化作用が確認された。クロシンでコーティングされたD-MNPsを使用した研究では、DNEを注射したマウスと比較した場合、クロシンD-MNPsによる細胞死の増加率が非常に大きいことが示された。また、クロシンは、HCT116野生型及びHCT116 p53-/-細胞株などの結腸直腸癌細胞において、オートファジーに依存しない古典的なプログラム細胞死を誘発することが示されている。
本研究では、ウエスタンブロット分析(図7、8、9参照)により、クロシンによる治療が内因性アポトーシス経路の活性化を引き起こすことが示された。これは、Bax、Bcl-2、PARP、カスパーゼ-3、カスパーゼ-9などの内因性経路における主要なプレーヤーの発現を測定することで結論付けられた。今回の研究結果では、クロシンを投与した結果、HCCラットと比較してBaxの発現が上昇し、Bcl-2の発現が減少した。したがって、Bax/Bcl-2比の増加はこの結論を裏付けるものと思われる。興味深いことに、クロシンとソラフェニブとの補助療法は、クロシン単独またはソラフェニブ単独での治療よりも内因性経路の活性化に優れた効果を発揮するようであった。さらなる内因性経路の調査により、HCC動物と比較してクロシンを投与したラットでは、PARP全体、プロカスパーゼ-3、及びプロカスパーゼ-9の発現が顕著に減少していることが明らかになった。結腸直腸癌細胞株に対するサフランの抗アポトーシス効果を評価するために行われた研究では、HCT116細胞においてサフランがp53依存性カスパーゼ-3の活性化を誘導することが示された。
[定義]
本明細書及び付随する特許請求の範囲で使用されるように、以下の用語は、文脈上別段の必要がない限り、次の意味を有するものとする。
本明細書で使用される「治療」という用語は、癌に罹患している患者への1つまたは複数の薬物の投与を指すと理解される。
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、例えば、研究者または臨床医によって求められている、組織、システム、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発する薬物または薬剤の量を意味する。さらに、「治療有効量」という用語は、そのような量を受けていない対応する対象と比較して、疾患、障害、または副作用の改善された治療、治癒、予防、または改善、または、疾患または障害の進行速度の低下をもたらす任意の量を意味する。この用語には、正常な生理学的機能を増強するのに有効な量もその範囲内に含まれる。

Claims (20)

  1. 対象の肝臓癌を治療、抑制、または重症度を軽減する方法であって、
    前記対象に第1の量のソラフェニブを投与することと、
    前記対象に第2の量のクロシンまたはその薬学的に許容されるプロドラッグを投与することを含む方法。
  2. 前記クロシンがα-クロシンである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記クロシンまたはそのプロドラッグ及び前記ソラフェニブが、両方の化合物を含む1つの組成物に一緒に配合されている、請求項1に記載の方法。
  4. 前記クロシンまたはそのプロドラッグ及び前記ソラフェニブが、別々の医薬組成物で別々に投与される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記クロシンまたはそのプロドラッグ及び前記ソラフェニブが順次投与される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記ソラフェニブに曝露する前に、前記クロシンまたはそのプロドラッグを最初に投与して癌細胞を感作し、次に前記ソラフェニブを投与する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記プロドラッグが、クロシン塩、水和物、ヘミアセタール、アセタール、チオアセタール、シリルエーテル、互変異性体、異性体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記肝臓癌が、肝細胞癌(HCC)、線維層板状HCC、胆管癌、血管肉腫、転移性肝臓癌、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記肝臓癌が肝細胞癌である、請求項1に記載の方法。
  10. クロシンまたはその薬学的に許容されるプロドラッグ、及びソラフェニブを含む、肝臓癌治療のための薬物の治療的組み合わせ。
  11. 前記クロシンが、クロセチンのモノグリコシルポリエンエステル、クロセチンのジグリコシルポリエンエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の薬物の治療的組み合わせ。
  12. 前記クロシンがα-クロシンである、請求項10に記載の薬物の治療的組み合わせ。
  13. 前記プロドラッグが、クロシン塩、水和物、ヘミアセタール、アセタール、チオアセタール、シリルエーテル、互変異性体、異性体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の薬物の治療的組み合わせ。
  14. 前記クロシン及び前記ソラフェニブが、両方の化合物を含む同じ単一の医薬組成物に一緒に配合されている、請求項10に記載の薬物の治療的組み合わせ。
  15. 前記クロシン及び前記ソラフェニブが別々の医薬組成物である、請求項10に記載の薬物の治療的組み合わせ。
  16. 前記ソラフェニブの量が、組み合わせられる前記クロシンの含有量に対して、質量比で0.1:1から10:1の範囲である、請求項10に記載の薬物の治療的組み合わせ。
  17. 対象の肝臓癌を治療、抑制、または重症度を軽減する方法であって、請求項10に記載の薬物の治療的組み合わせの、治療有効量を前記対象に投与することを含む方法。
  18. 対象の肝臓癌を治療、抑制、または重症度を軽減する方法において、
    前記対象に第1の量のソラフェニブを投与することと、
    改良として、前記対象に第2の量のクロシンを投与することとを含む方法。
  19. 前記クロシンがα-クロシンである、請求項18に記載の方法。
  20. 前記クロシン及び前記ソラフェニブが、両方の化合物を含む同じ単一の医薬組成物に一緒に配合されている、請求項18に記載の方法。
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